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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1385204
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-09-03 
確定日 2022-03-29 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6837188号発明「ポリエステル系シュリンクフィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6837188号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[2〜4]について訂正することを認める。 特許第6837188号の請求項1及び4に係る特許を維持する。 特許第6837188号の請求項2及び3に係る特許についての特許異議の申立を却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6837188号(以下、「本件特許」という。)は、2020年(令和 2年) 4月30日を国際出願日とする特許出願であって、令和 3年 2月10日に特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、同年 3月 3日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和 3年 9月 3日に、請求項1〜4に係る特許に対し、特許異議申立人 早川 いづみ(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年11月11日付けで取消理由が通知され、令和 4年 1月 7日に訂正請求書及び意見書が提出されたものである。
そして、下記第2 1のとおり、令和4年 1月 7日にされた訂正請求は、実質的に、請求項2及び3の削除のみの訂正であるので、特許法第120条の5第5項に定める特別な事情に該当し、特許異議申立人に意見書の提出の機会は与えない。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容
本件訂正請求書による訂正の内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1〜3のいずれか一項に記載の」とあるのを、「請求項1に記載の」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項2を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものであり、上記(1)と同様である。
(3)訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項4に「請求項1〜3のいずれか一項に記載の」とあるのを、「請求項1に記載の」に訂正するものであり、引用する請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[2〜4]について訂正することを認める。

第3 本件発明
上記第2で示したとおり、本件訂正は認められたため、本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、それぞれ、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(以下、順に「本件特許発明1」〜「本件特許発明4」という。)

「【請求項1】
下記(a)〜(c)の構成を満足するポリエステル系シュリンクフィルムであって、
非結晶性ポリエステルを、樹脂全体量の90〜100重量%の範囲で含み、
収縮前の前記ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを10〜40μmの範囲内の値とするポリエステル系シュリンクフィルム。
(a)振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される、収縮前の耐衝撃強度をA1とし、それを20〜60J/mm範囲内の値とする。
(b)80℃の温水中で、10%収縮させた後に、振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される耐衝撃強度をA2としたときに、前記A2を21.5〜45J/mmの範囲内の値とし、前記A1との関係で、A2/A1×100で表される数値を60〜110%の範囲内の値とする。
(c)80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB1とし、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB2としたときに、前記B1を35〜80%の範囲内の値とし、前記B2を45〜85%の範囲内の値とし、B1/B2×100で表される数値を70〜90%の範囲内の値とする。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
収縮前のフィルムのJIS K7105に準拠して測定されるヘイズ値を5%以下の値とすることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系シュリンクフィルム。」

第4 特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由の概要

令和 3年 9月 3日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立理由の概要は次のとおりである。

1 申立理由1−1(甲第1号証に基づく新規性及び進歩性
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

2 申立理由1−2(甲第2号証に基づく新規性及び進歩性
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、又は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

3 申立理由3(実施可能要件
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(申立理由3の具体的理由)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明において、本件特許の請求項1で特定する事項を全て満足するポリエステル系シュリンクフィルムを製造する方法が記載されておらず、実施例以外のフィルムを製造する方法を当業者が理解できない。

4 申立理由4(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(申立理由4の具体的理由)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明において、ポリエステル系シュリンクフィルムを構成するポリエステルの組成が何ら限定されていないが、実施例に記載されているのは非結晶性ポリエステルとしてPETG1またはPETG2を使用したフィルムのみであり、それ以外の組成の非結晶性ポリエステルを使用したフィルムにまで権利範囲を含む本件特許の請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものである。

5 申立理由5(明確性
本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(申立理由5の具体的理由)
・申立理由5−1
本件特許の請求項1ないし4に係る発明における「非結晶性ポリエステル」について、非結晶性ポリエステルとそれ以外のポリエステルをどのようにして区別するのかが何ら記載されておらず、発明の範囲が不明確である。

・申立理由5−2
本件特許の請求項2及び3に係る発明は、いわゆるプロダクト・バイ・プロセスクレームであり、「当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在する」根拠が見出せないため、請求の範囲が不明確であり、請求項2及び請求項3を引用する請求項4についても、同様である。

6 証拠方法
特許異議申立人は、証拠方法として書証を申出、以下の文書を提出する。
甲第1号証:特開2011−184690号公報
甲第2号証:特開2007−56156号公報
甲第3号証:PCT/JP2020/018280号の令和 2年 9月23日付け上申書
甲第4号証:特表2011−524921号公報
甲第5号証:特開2010−149521号公報
なお、証拠の表記は、特許異議申立書の記載に従った。以下、順に「甲1」のようにいう。

第5 令和 3年11月11日付け取消理由通知書で通知した取消理由の概要
当審が通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。

本件特許の請求項2ないし4に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。(申立理由5−2と同旨である。)

・本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2、本件特許発明3、及び、請求項2、3を引用する本件特許発明4は、「ポリエステル系シュリンクフィルム」という物の発明である。
そして、請求項2の「収縮前のフィルムのMD方向における延伸倍率を100〜200%の範囲内の値とする」との記載、請求項3の「収縮前のフィルムのTD方向における延伸倍率を300〜600%の範囲内の値とする」との記載は、物の発明に係る請求項に、「その物の製造方法が記載されている場合」に該当するものと認められる。
ここで、物の発明に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁第二小法廷平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号、平成24年(受)第2658号)。
(「プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する当面の審査・審判の取扱い等について」
(URL:https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/patent/tukujitu_kijun/product_process_C150706.html)も参照してください。)

しかしながら、本件特許明細書等には不可能・非実際的事情について何ら記載がないから、当業者にとって不可能・非実際的事情が明らかであるとはいえない。
したがって、本件特許発明2、3は明確でない。
そして、請求項2、3を引用する本件特許発明4も、同様の理由により明確でない。

第6 取消理由についての当審の判断
上記第2で述べたとおり、訂正により特許請求の範囲の請求項2及び3は削除された。
すると、請求項2及び3については取消理由の対象が存在しない。
そして、請求項4は請求項2、3を引用しないものとなったから、請求項4についての取消理由は解消している。
よって、取消理由によって本件特許の請求項4に係る特許を取り消すことはできない。

第7 取消理由で採用しなかった申立ての理由についての判断

1 申立理由1−1(甲1に基づく新規性進歩性
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、おおむね次の事項が記載されている。

「【請求項1】
主収縮方向の熱収縮率の温度による変化率(%/℃)が、60〜70℃の範囲で1.5〜3.0、70〜80℃の範囲で2.5〜3.5、80〜90℃の範囲で1.0〜2.0、及び90〜100℃の範囲で0.1〜1.0であることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項2】
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、
(i)テレフタル酸残渣を含む二塩基酸成分、及び
(ii)ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びエチレングリコールを含むジオール成分を含む共重合ポリエステル組成物から製造されることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項3】
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムは、
(i)二塩基酸成分100モル%を基準にして、テレフタル酸残渣を90モル%以上含む二塩基酸成分、及び
(ii)ジオール成分100モル%を基準にして、(a)ジエチレングリコール1〜20モル%、(b)ネオペンチルグリコール5〜30モル%、及び(c)エチレングリコール50〜90モル%を含むジオール成分を含む共重合ポリエステル組成物から製造されることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項4】
前記熱収縮性ポリエステル系フィルムを90℃の熱水に10秒間浸漬させる場合、主収縮方向の収縮率が58%以上であり、下記式(1)で表されるスカート比(skirt ratio;S/R)の値が14%以下であり、収縮時に発生する最大応力が6N以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
スカート比(%)=(W−d)/L×100(1)
(ここで、Lはフィルムサンプルの主収縮方向の長さ、Wは収縮前のフィルムサンプルの幅、dは収縮後のフィルムサンプルの幅である)
【請求項5】
前記共重合ポリエステル組成物は反応触媒、ポリマー安定剤、反応添加剤、及び無機材料のうち少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項6】
前記共重合ポリエステル組成物は固有粘度が0.6〜0.9dl/gであることを特徴とする請求項2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項7】
共重合ポリエステル組成物を溶融押出して得たシートをTg+5〜Tg+20℃の温度で主延伸方向に延伸して延伸フィルムを得る段階、及び
前記延伸フィルムをTg+5〜Tg+50℃の温度で熱処理させる段階を含む、熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記共重合ポリエステル組成物は、
(i)二塩基酸成分100モル%を基準にして、テレフタル酸残渣を90モル%以上含む二塩基酸成分、及び
(ii)ジオール成分100モル%を基準にして、(a)ジエチレングリコール1〜20モル%、(b)ネオペンチルグリコール5〜30モル%、及び(c)エチレングリコール50〜90モル%を含むジオール成分を含むことを特徴とする請求項7に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。」

「【0001】
本発明は、外部包装材などに用いられる熱収縮性ポリエステル系フィルムに関するものであり、特に、外観仕上がり性に優れているため、容器のラベル用に適した熱収縮性ポリエステル系フィルムに関する。」

「【0012】
したがって、本発明の目的は、ポリエステル系フィルムの基本的なメリットである印刷加工性、機械的強度、耐熱性、及びフルラベルに必要な高い収縮率を有すると同時に、前記スカート現象及び持ち上がり現象が抑制され、温度による熱収縮率の変化率が比較的に一定に維持され、特定温度範囲で熱収縮率が急激に変化しないため、熱収縮時、外観仕上がり性に優れた熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することである。」

「【0021】
本発明の好ましい実施例によれば、本発明のポリエステル系フィルムは(i)二塩基酸成分100モル%を基準にして、テレフタル酸残渣を90モル%以上含む二塩基酸成分、及び(ii)ジオール成分100モル%を基準にして、(a)ジエチレングリコール1〜20モル%、(b)ネオペンチルグリコール5〜30モル%、及び(c)エチレングリコール50〜90モル%を含むジオール成分を含む共重合ポリエステル組成物から製造され得る。
【0022】
本発明の共重合ポリエステル組成物のうち二塩基酸成分としては、例えば、ジメチルテレフタレート(DMT)またはテレフタル酸(TPA)などの通常的に用いられる酸成分を用いることができるが、特に、テレフタル酸残渣を90モル%以上含む二塩基酸成分が好ましい。テレフタル酸残渣を90モル%以上含む場合には、延伸及び熱処理過程において配向などによる微細結晶構造が生成されてフィルムの耐熱性が向上するというメリットがある。
【0023】
本発明の共重合ポリエステル組成物のうちジオール成分としては、ジオール成分100モル%を基準にして、ジエチレングリコール1〜20モル%、ネオペンチルグリコール5〜30モル%、及びエチレングリコール50〜90モル%を含むジオール成分を用いることができる。
【0024】
本発明の前記ジオール成分がジエチレングリコール成分を3モル%以上含有する場合、スカート比(skirt ratio;S/R)の低下及び一定収縮速度などのような本発明の効果がさらに向上し、ジエチレングリコール成分を16モル%以下で含有場合、熱収縮性フィルムの耐熱性劣化が殆ど発生しなくなる。
【0025】
また、本発明の前記ジオール成分はネオペンチルグリコールを10〜25モル%の範囲で含む場合、延伸後の熱処理過程において多過ぎる量の結晶の生成を抑制することで十分な収縮率が得られ得、収縮機内で容器上に収縮させる過程において、二次配向結晶の生成を抑制し、最終製品におけるラベルのクラック性を最小化することができる。」

「【実施例】
【0036】
以下、本発明を下記実施例によってさらに詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためものであり、本発明の範囲がこれらの実施例にのみ制限されない。
【0037】
1.共重合ポリエステル樹脂の製造
共重合ポリエステル樹脂を下記表1に記載のように組成を変化させながら製造した。これらの共重合ポリエステル樹脂の製造は、本発明の属する技術分野において通常的に用いられ、周知のポリエステル標準製法に従った(例:韓国特許第10−0987065号の実施例1〜7)。
【0038】
【表1】

【0039】
2.ポリエステル系フィルムの物性比較
前記製造した樹脂11〜14を用いてポリエステル系フィルムを製造した。具体的に、該当樹脂を溶融押出して得たシートを80℃で主収縮方向に4倍延伸比で一軸延伸した後、延伸されたフィルムを主延伸方向に両端部を85〜105℃の温度に加熱された区間に速い速度で通過させて厚さ40μmのポリエステル系フィルムを製造した。
【0040】
【表2】



「【0045】
(4)熱収縮率
フィルムを測定しようとする方向に長さ300mm及びその垂直方向に幅が15mmになるように裁断して試料を製造し、60℃、70℃、80℃、90℃または100℃を維持する恒温水槽で10秒間熱処理した後、収縮された長さを測定し、下記式によって計算した:
熱収縮率(%)=[(300−熱処理後の試料の長さ)/300]×100」

「【0047】
【表3】

【0048】
4.ポリエステル系フィルムの熱収縮率パターン分析
実施例1〜3、比較例1及び2、そしてPVC及びOPSフィルムの熱収縮率パターンを測定した結果を下記表4及び図1に示した。
【0049】
【表4】

【0050】
また、前記本発明のフィルムの温度別熱収縮率測定値を用い、区間別温度による変化率を得て下記表5に示した。
【0051】
【表5】

【0052】
前記表3〜5及び図1から分かるように、本発明による実施例の熱収縮性ポリエステルフィルムは耐熱性及び熱収縮率に優れており、スカート比及び収縮応力が低く、温度による熱収縮率の変化が比較的に一定であり、比較例のポリエステルフィルムより全般的に優れている。」

イ 甲1発明
甲1に記載された事項を、特に実施例1について整理すると、甲1には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
なお、表1の「TA」、「EG」、「NPG」との記載は、段落【0021】の記載から、それぞれテレフタル酸残渣、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールを意味するものと解される。

「テレフタル酸残渣100重量部、エチレングリコール80重量部、ネオペンチルグリコール20重量部からなる共重合ポリエステルからなる厚さ40μmの熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、該ポリエステルフィルムを80℃の恒温水槽で10秒間熱処理した場合の熱収縮率が59%であり、90℃の恒温水槽で10秒間熱処理した場合の熱収縮率が71%である、熱収縮性ポリエステル系フィルム。」

(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「熱収縮性ポリエステル系フィルム」は、本件特許発明1の「ポリエステル系シュリンクフィルム」に相当する。
また、甲1発明の「厚さ40μm」、「80℃の恒温水槽で10秒間熱処理した場合の熱収縮率が59%であり、90℃の恒温水槽で10秒間熱処理した場合の熱収縮率が71%」は、それぞれ、本件特許発明1の「収縮前の前記ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを10〜40μmの範囲内の値」とする点、「80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB1とし、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB2としたときに、前記B1を35〜80%の範囲内の値とし、前記B2を45〜85%の範囲内の値」とする点に相当する。
そして、甲1発明の「80℃の恒温水槽で10秒間熱処理した場合の熱収縮率」と「90℃の恒温水槽で10秒間熱処理した場合の熱収縮率」との比は、0.831(59/71)であるから、本件特許発明1の「B1/B2×100で表される数値を70〜90%の範囲内の値とする」事項を満足するものである。
してみると、両者の一致点、相違点はそれぞれ次のとおりである。

<一致点>
ポリエステル系シュリンクフィルムであって、
80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB1とし、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB2としたときに、前記B1を35〜80%の範囲内の値とし、前記B2を45〜85%の範囲内の値とし、B1/B2×100で表される数値を70〜90%の範囲内の値とし、
収縮前の前記ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを10〜40μmの範囲内の値とする、ポリエステル系シュリンクフィルム。

<相違点1−1>
原材料について、本件特許発明1が「非結晶性ポリエステルを、樹脂全体量の90〜100%の範囲で含み」と特定するのに対し、甲1発明においてはそのような特定を有しない点。

<相違点1−2>
ポリエステル系シュリンクフィルムについて、本件特許発明1が「振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される、収縮前の耐衝撃強度をA1とし、それを20〜60J/mm範囲内の値とする」と特定するのに対し、甲1発明においてはそのような特定を有しない点。

<相違点1−3>
ポリエステル系シュリンクフィルムについて、本件特許発明1が「80℃の温水中で、10%収縮させた後に、振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される耐衝撃強度をA2としたときに、前記A2を21.5〜45J/mmの範囲内の値とし、前記A1との関係で、A2/A1×100で表される数値を60〜110%の範囲内の値とする」と特定するのに対し、甲1発明においてはそのような特定を有しない点。

事案に鑑み、まず、相違点1−2について検討する。
甲1には、熱収縮性ポリエステル系フィルムの収縮前の耐衝撃強度についての記載がなく、また、甲1発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの収縮前の耐衝撃強度が20〜60J/mmの範囲内の値となる蓋然性が高いといえる根拠もない。
したがって、相違点1−2は実質的な相違点であるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明ではない。
また、甲1を含め他の証拠をみても、甲1発明において当該パラメータに着目し、「20〜60J/mmの範囲内の値」とする動機もない。
よって、本件特許発明1は甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものともいえない。

なお、特許異議申立書において特許異議申立人は、甲3の参考図2に記載されたフィルムの厚さとA2の関係、及び、本件特許明細書の図8に記載されたA2/A1とB1/B2の関係を根拠として、甲1実施例1〜3の熱収縮性ポリエステル系フィルムの収縮前の耐衝撃強度は20〜60J/mmの範囲内となる蓋然性が高いと主張している。
しかしながら、甲3の参考図2の関係式は、甲1実施例1〜3とは異なる材料のフィルムにおける測定値に基づくものであるから、甲1実施例1〜3のフィルムに当てはまるとはいえないし、また、フィルムの厚さから収縮前の耐衝撃強度を推定できるという技術常識もないから、特許異議申立人の主張は採用できない。

イ 本件特許発明4について
請求項4の記載は、請求項1の記載を引用するものである。
そして、上記アで検討したとおり、本件特許発明1は甲1発明ではないし、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明1の全ての特定事項を有する本件特許発明4もまた、甲1発明ではないし、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)小括
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張する申立理由1には理由がない。

2 申立理由1−2(甲2に基づく新規性進歩性
(1)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2には、おおむね次の事項が記載されている。

「【請求項1】
熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とし全ポリエステル樹脂成分中における非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分を含有し、その合計が15モル%以上であり、かつ前記ポリエステル系フィルムの温湯熱収縮率が、フィルム長手方向において、処理温度75℃・処理時間10秒で20%以上であり、処理温度80℃・処理時間10秒で40%以上であり、フィルム幅方向における温湯収縮率90℃・処理時間10秒で10%以下あり、フィルムのヘーズ値がフィルム厚さ30μm当たりで9%以下である事を特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項2】
フィルム長手方向の熱収縮応力が6(MPa)以上である事を特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項3】
フィルムの溶剤接着強度が4(N/15mm)以上である事を特徴とする請求項1又は2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項4】
示差走査熱量測定(DSC)におけるフィルム融点測定時の吸熱曲線のピークが検出されない事を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項5】
フィルム製膜時の延伸工程で、最初にフィルム幅方向に2倍以上延伸し、次いでフィルム長手方向に2倍以上延伸する事を特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを製造する方法。
【請求項6】
フィルム製膜時の延伸工程で、フィルム幅方向に延伸後にフィルムガラス転移点(Tg)+20℃以上の温度で熱処理し、かつ長手方向に延伸する前にフィルム幅方向で中央部より厚みが1.2倍以上ある端部を切断する事を特徴とする請求項5に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、全ポリステル樹脂成分中における非晶質成分となりうるモノマーがネオペンチルグリコール、及び又は1,4−シクロヘキサンジメタノールであることを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルム。
【請求項8】
請求項1〜4、7のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムを用いて作成された熱収縮性ラベル。」

「【0001】
本発明は、熱収縮性ポリエステル系フィルムに関し、さらに詳しくはラベル用途に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルム及びその製造方法と該熱収縮性ポリエステル系フィルムからなる熱収縮性ラベルに関するものである。特にラベル用途に好適な熱収縮性ポリエステル系フィルムに関する。さらに詳しくは、収縮不足が発生しにくく、かつ透明性が良好な長手方向に収縮する熱収縮性ポリエステル系フィルムに関する。」

「【0013】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、その目的とするところは、ボトルのフルラベル用やお弁当のラベル用、特にペットボトルやガラス瓶の熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、収縮不足が発生しにくく低温での熱収縮性を有し、フィルムの透明性に優れ、溶剤接着性に優れ、かつミシン目開封性が良好で、フィルム長手方向に収縮する熱収縮性ポリエステル系フィルムを提供することである。」

「【0020】
本発明で使用するポリエステルを構成するジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。
【0021】
脂肪族ジカルボン酸(例えばアジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等)を含有させる場合、含有率は3モル%未満であることが好ましい。これらの脂肪族ジカルボン酸を3モル%以上含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、高速装着時のフィルム腰が不十分である。
【0022】
また、3価以上の多価カルボン酸(例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物等)を含有させないことが好ましい。これらの多価カルボン酸を含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。
【0023】
本発明で使用するポリエステルを構成するジオール成分としては、エチレングリコール、1−3プロパンジオール、1−4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等が挙げられる。
【0024】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルはエチレンテレフタレートを主たる構成成分として、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の環状ジオールや、炭素数3〜6個を有するジオール(例えば1−3プロパンジオール、1−4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等)のうち1種以上を含有させて、ガラス転移点(Tg)を60〜80℃に調整したポリエステルが好ましい。
【0025】
層として全ポリステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中の非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分の合計が15モル%以上であることが好ましく、17モル%以上であることがより好ましく、特に20モル%以上であることが好ましい。
ここで非晶質成分となりうるモノマーとは、例えばネオペンチルグリコールや1,4−シクロヘキサンジオールが挙げられる
【0026】
炭素数8個以上のジオール(例えばオクタンジオール等)、又は3価以上の多価アルコール(例えば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリン等)は、含有させないことが好ましい。これらのジオール、又は多価アルコールを含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。
【0027】
また、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールはできるだけ含有させないことが好ましい。特にジエチレングリコールは、ポリエステル重合時の副生成成分のため、存在しやすいが、本発明で使用するポリエステルでは、ジエチレングリコールの含有率が4モル%未満であることが好ましい。」

「【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
本発明のフィルムの評価方法は下記の通りである。
【0048】
(1)熱収縮率
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、所定温度±0.5℃の温水中において、無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた後、フィルムの縦および横方向の寸法を測定し、下記(1)式に従いそれぞれ熱収縮率を求めた。該熱収縮率の大きい方向を主収縮方向とした。
熱収縮率={(収縮前の長さ−収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%) (1)」

「【0059】
実施例に用いたポリエステルは以下の通りである。
【0060】
ポリエステル1 : ジオール成分としてエチレングリコール70モル%とネオペンチルグリコール30モル%、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸100モル%とからなるポリエステル(IV 0.72dl/g)
ポリエステル2 : ポリエチレンテレフタレート(IV 0.75dl/g)
【0061】
(実施例1)
ポリエステル1とポリエステル2を重量比90:10で混合して押出し機に投入した。それを280℃で溶融し、Tダイから押出し、表面温度30℃のチルロール上で急冷して厚み360μmの未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムのTgは67℃であった。
該未延伸フィルムを、フィルム温度が90℃になるまで予備加熱した後、テンターで横方向に75℃で4倍に延伸し、110℃・2秒間で熱固定して中央部の厚み90μm、端部の厚み90μm〜150μmのフィルムを得た。
次にTD幅方向で厚みが100μm以上ある端部位置を切り落とし、フィルム幅方向の厚みが90μm〜99μmのフィルムを得た。
次に縦延伸機を用いて、予熱ロール上でフィルム温度が70℃になるまで予備加熱後、延伸ロール表面温度75℃で3倍に延伸後、表面温度25℃の冷却ロールで冷却し、厚み30μmのフィルムを得た。」

「【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ラベルとして使用する場合、熱収縮による収縮不足の発生が極めて少ない良好な仕上がりが可能であり、かつミシン目開封性、透明性も良好でありラベル用途として極めて有用である。」

イ 甲2発明
甲2に記載された事項を、特に実施例1について整理すると、甲2には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。

「該熱収縮性ポリエステル系フィルムはジオール成分としてエチレングリコール70モル%とネオペンチルグリコール30モル%、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸100モル%とからなるポリエステル(以下、「ポリエステル1」という。)とポリエチレンテレフタレート(以下、「ポリエステル2」という。)を重量比90:10で混合してなり、厚み30μmとした熱収縮性ポリエステル系フィルムであって、80℃の温水中において無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた熱収縮率が44%、90℃の温水中において無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた熱収縮率が54%である、熱収縮性ポリエステル系フィルム。」

(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明を対比すると、甲2発明の「熱収縮性ポリエステル系フィルム」は、本件特許発明1の「ポリエステル系シュリンクフィルム」に相当する。
また、甲2発明の「厚さ30μm」、「80℃の温水中において無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた熱収縮率が44%、90℃の温水中において無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた熱収縮率が54%」は、それぞれ、本件特許発明1の「収縮前の前記ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを10〜40μmの範囲内の値」とする点、「80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB1とし、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB2としたときに、前記B1を35〜80%の範囲内の値とし、前記B2を45〜85%の範囲内の値」とする点に相当する。
そして、甲2発明の「80℃の温水中において無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた熱収縮率」と「90℃の温水中において無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた熱収縮率」との比は、0.815(44/54)であるから、本件特許発明1の「B1/B2×100で表される数値を70〜90%の範囲内の値とする」事項を満足するものである。
してみると、両者の一致点、相違点はそれぞれ次のとおりである。

<一致点>
ポリエステル系シュリンクフィルムであって、
80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB1とし、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB2としたときに、前記B1を35〜80%の範囲内の値とし、前記B2を45〜85%の範囲内の値とし、B1/B2×100で表される数値を70〜90%の範囲内の値とし、
収縮前の前記ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを10〜40μmの範囲内の値とする、ポリエステル系シュリンクフィルム。

<相違点2−1>
原材料について、本件特許発明1が「非結晶性ポリエステルを、樹脂全体量の90〜100%の範囲で含み」と特定するのに対し、甲2発明においてはそのような特定を有しない点。

<相違点2−2>
ポリエステル系シュリンクフィルムについて、本件特許発明1が「振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される、収縮前の耐衝撃強度をA1とし、それを20〜60J/mm範囲内の値とする」と特定するのに対し、甲2発明においてはそのような特定を有しない点。

<相違点2−3>
ポリエステル系シュリンクフィルムについて、本件特許発明1が「80℃の温水中で、10%収縮させた後に、振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される耐衝撃強度をA2としたときに、前記A2を21.5〜45J/mmの範囲内の値とし、前記A1との関係で、A2/A1×100で表される数値を60〜110%の範囲内の値とする」と特定するのに対し、甲2発明においてはそのような特定を有しない点。

事案に鑑み、まず、相違点2−2について検討する。
甲2には、熱収縮性ポリエステル系フィルムの収縮前の耐衝撃強度についての記載がなく、また、甲2発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの収縮前の耐衝撃強度が20〜60J/mmの範囲内の値となる蓋然性が高いといえる根拠もない。
したがって、相違点2−2は実質的な相違点であるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明ではない。
また、甲2を含め他の証拠をみても、甲2発明において当該パラメータに着目し、「20〜60J/mmの範囲内の値」とする動機もない。
よって、本件特許発明1は甲2発明に基いて容易に発明をすることができたものともいえない。

イ 本件特許発明4について
請求項4の記載は、請求項1の記載を引用するものである。そして、上記アで検討したとおり、本件特許発明1は甲2発明ではないし、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明1の全ての特定事項を有する本件特許発明4もまた、甲2発明ではないし、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)小括
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張する申立理由2には理由がない。

3 申立理由3(実施可能要件
(1)判断基準
物の発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為であるから、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、かつ、使用することができる程度の記載があることを要する。

(2)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている。

「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル系シュリンクフィルムに関する。
より詳しくは、耐衝撃性に優れ、かつ、収縮温度付近における収縮率が均一なポリエステル系シュリンクフィルムに関する。」

「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたポリオレフィン系シュリンクフィルムは、多層構造であっても、弾性率の値が小さく、耐熱性が低く、かつ、比較的透明性に乏しい等の欠点を有していた。
そのため、高速自動包装適性や印刷適性が劣り、また、引裂強度の低下により、自動包装機で付与されるエアー抜きの針孔から破れが生じやすくなるという製造上の問題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載された、乳酸を脱水縮合した構造単位を含むポリエステル系シュリンクフィルムは、特殊なポリエステル樹脂を用いていること等から、製造コストが高く、経済的に不利であるという問題が見られた。
更に、かかる乳酸由来の構造単位を含むシュリンクフィルムは、機械的強度が低い上に、吸水性が高く、そのため、収縮温度や結晶性の違いによって、収縮率のばらつきが大きいという問題点が見られた。特に、吸水性との関係で、100℃程度の収縮温度付近の温度における収縮率のばらつきが大きいという問題が見られた。
しかも、従来のシュリンクフィルムは、特許文献2に記載された、乳酸を脱水縮合した構造単位を含むポリエステル系シュリンクフィルムを含めて、収縮前の耐衝撃強度、収縮後の耐衝撃強度、更には、収縮温度付近の収縮率等の好適範囲について何ら考慮していなかった。
そのため、従来のシュリンクフィルムは、耐衝撃性に劣り、更には、収縮温度付近における収縮性のばらつきの大きいシュリンクフィルムしか得られないという問題が見られた。
【0008】
そこで、本発明の発明者らは、乳酸由来の構造単位を事実上含まない場合において、所定の耐衝撃強度を所定範囲内の値に制限し、かつ収縮温度付近の収縮率の比率等を制限することによって、均一かつ安定的に収縮するシュリンクフィルムが得られることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、優れた耐衝撃性を有し、かつ、収縮温度付近における収縮率の均一性や安定性に優れたシュリンクフィルム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、ポリエステル樹脂に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、下記(a)〜(c)の構成を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムが提供され、上述した問題を解決することができる。
(a)振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される、収縮前の耐衝撃強度をA1とし、それを20〜60J/mmの範囲内の値とする。
(b)80℃の温水中で、10%収縮させた後に、振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される耐衝撃強度をA2としたときに、A1との関係で、A2/A1×100で表される数値を60〜110%の範囲内の値とする。
(c)80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB1とし、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB2としたときに、B1/B2×100で表される数値を70〜90%の範囲内の値とする。
すなわち、構成(a)を満足することによって、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される所定範囲の数値である、良好な耐衝撃強度を得ることができる。
また、構成(b)を満足することによって、A1やA2の耐衝撃強度の値が多少ばらついた場合であっても、所定影響因子の要因を低下させることによって、所定条件で収縮させたポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、良好な耐衝撃強度A1やA2に由来した所定割合(A2/A1×100)を得ることができる。
更にまた、構成(c)を満足することによって、構成(a)や構成(b)の耐衝撃強度のA1やA2の値が多少ばらついた場合であっても、所定影響因子の要因を低下させて、
ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮温度付近(例えば、80〜90℃、以下同様である。)において、安定的かつ均一な収縮率に由来した所定割合(B1/B2×100)を得ることができる。
よって、このように、(A2/A1×100)と、(B1/B2×100)を、それぞれ所定範囲内の値に制限することによって、優れた耐衝撃性を有し、かつ、収縮温度付近における収縮率の均一性や安定性に優れたシュリンクフィルムを提供することができる。
その上、後述するように、所定の落下試験において、良好な結果を得ることができる。
【0010】
また、本発明を構成するにあたり、耐衝撃強度のA2を20〜45J/mmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように耐衝撃強度のA2を所定範囲内の値に具体的に制限することによって、A2/A1×100で表される数値を、所定範囲内の値に制御しやすくなる。
【0011】
また、本発明を構成するにあたり、収縮率のB1を35〜80%の範囲内の値とし、収縮率のB2を40〜85%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように収縮率のB1および収縮率のB2を、それぞれ所定範囲内の値に具体的に制限することによって、B1/B2×100で表される数値を、所定範囲内の値に制御しやすくなる。
【0012】
また、本発明を構成するにあたり、収縮前のフィルム厚さを10〜100μmの範囲内の値とすることが好ましい。
このように収縮前のフィルム厚さを所定範囲内の値に具体的に制限することによって、A2/A1×100で表される数値やB1/B2×100で表される数値等を、それぞれ所定範囲内の値に更に容易に制御しやすくなる。
【0013】
また、本発明を構成するにあたり、収縮前のフィルムのMD方向における延伸倍率を100〜200%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように収縮前のフィルムのMD方向における延伸倍率を所定範囲内の値に具体的に制限することにより、A2/A1×100で表される数値やB1/B2×100で表される数値等を、それぞれ所定範囲内の値に更に容易かつ定量性をもって制御しやすくなる。
【0014】
また、本発明を構成するにあたり、収縮前のフィルムのTD方向における延伸倍率を300〜600%の範囲内の値とすることを特徴とすることが好ましい。
このように収縮前のフィルムのMD方向のみならず、TD方向における延伸倍率を所定範囲内の値に具体的に制限することによって、A2/A1×100で表される数値やB1/B2×100で表される数値等を、それぞれ所定範囲内の値に更に容易かつ定量性をもって制御しやすくなる。
【0015】
また、本発明を構成するにあたり、収縮前のフィルムのJIS K 7105に準拠して測定されるヘイズ値を5%以下の値とすることが好ましい。
このようにヘイズ値を所定範囲内の値に具体的に制限することによって、ポリエステル系シュリンクフィルムの透明性についても、定量性をもって制御しやすくなる。
【0016】
また、本発明を構成するにあたり、非結晶性ポリエステル樹脂の含有量を、樹脂全体量の90〜100重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように非結晶性ポリエステル樹脂の含有量を具体的に制限することによって、耐衝撃強度や、収縮温度付近における収縮率を所望範囲に、更に容易に調整しやすくできるとともに、ヘイズ値等についても、定量性をもって制御しやすくなる。
なお、樹脂全体量のうち、非結晶性ポリエステル樹脂の残分は、結晶性ポリエステル樹脂やポリエステル樹脂以外の樹脂が寄与する値である。」

「【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、ポリエステル樹脂に由来したポリエステル系シュリンクフィルムであって、下記(a)〜(c)の構成を満足することを特徴とするポリエステル系シュリンクフィルムである。
(a)振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される、収縮前の耐衝撃強度をA1とし、それを20〜60J/mmの範囲内の値とする。
(b)80℃の温水中で10%収縮させた後に、振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される耐衝撃強度をA2としたときに、A1との関係で、A2/A1×100で表される数値を60〜110%の範囲内の値とする。
(c)温水80℃、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB1とし、温水90℃、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB2としたときに、B1/B2×100で表される数値を70〜90%の範囲内の値とする。
以下、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの構成に分けて、具体的に各種パラメータ等を説明する。
【0019】
1.ポリエステル樹脂
基本的に、ポリエステル樹脂の種類は問わないが、通常、ジオール及びジカルボン酸からなるポリエステル樹脂、ジオール及びヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル樹脂、ジオール、ジカルボン酸、及びヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル樹脂、あるいは、これらのポリエステル樹脂の混合物であることが好ましい。
ここで、ポリエステル樹脂の化合物成分としてのジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4ーシクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、芳香族ジオール等の少なくとも一つが挙げられる。
また、同じくポリエステル樹脂の化合物成分としてのジカルボン酸としては、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪酸ジカルボン酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4ーシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、あるいは、これらのエステル形成性誘導体等の少なくとも一つが挙げられる。
また、同じくポリエステル樹脂の化合物成分としてのヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、ヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン等の少なくとも一つが挙げられる。
【0020】
また、非結晶性ポリエステル樹脂として、例えば、テレフタル酸少なくとも80モル%からなるジカルボン酸と、エチレングリコール50〜80モル%及び、1,4ーシクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール及びジエチレングリコールから選ばれた1種以上のジオール20〜50モル%からなるジオールよりなる非結晶性ポリエステル樹脂を好適に使用できる。必要に応じ、フィルムの性質を変化させるために、他のジカルボン酸及びジオール、あるいはヒドロキシカルボン酸を使用してもよい。また、それぞれ単独でも、あるいは、混合物であっても良い。
一方、結晶性ポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等があるが、それぞれ単独であっても、あるいは混合物であっても良い。
【0021】
また、ポリエステル樹脂が、非結晶性ポリエステル樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂との混合物である場合、良好な耐熱性や収縮率等を得るために、ポリエステル系シュリンクフィルムを構成する樹脂の全体量に対し、非結晶性ポリエステル樹脂の配合量を、90〜100重量%の範囲内の値とすることが好ましく、91〜100重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0022】
2.構成(a)
構成(a)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される、収縮前の耐衝撃強度(A1と称する場合がある。)を20〜60J/mmの範囲内の値とする旨の必要的構成要件である。
この理由は、このように収縮前の耐衝撃強度を所定範囲内の値とすることにより、ポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、良好な耐衝撃強度を得ることができるためである。
【0023】
より具体的には、収縮前の耐衝撃強度(A1)が20J/mm未満の値になると、機械的強度が低下し、ポリエステル系シュリンクフィルムに対する高速自動包装適性や印刷適性等が劣ったり、あるいは、自動包装機で付与されるエアー抜きの針孔から破れが生じやすくなったりする場合があるためである。
一方、収縮前の耐衝撃強度(A1)が60J/mmを超えた値になると、収縮温度付近において、良好かつ均一な収縮率を得ることが困難となる場合があるためである。
したがって、構成(a)として、収縮前の耐衝撃強度を23〜50J/mmの範囲内の値とすることがより好ましく、25〜40J/mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0024】
ここで、図2及び図3に、それぞれ、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムの耐衝撃強度(A1)と、所定条件で加熱処理したポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率(B1、B2)との関係を示す。
これらの図2及び図3中に示される測定データは、いずれもかなりばらついており、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムの耐衝撃強度(A1)と、所定条件で加熱処理したポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率(B1、B2)との相関関係に乏しいことが理解される。
【0025】
また、図4及び図5に、それぞれ、所定条件で収縮させた後のポリエステル系シュリンクフィルムの耐衝撃強度(A2)と、所定条件で加熱処理したポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率(B1、B2)との関係を示す。
これらの図4及び図5に中に示されるデータは、いずれもかなりばらついており、収縮後のポリエステル系シュリンクフィルムの耐衝撃強度(A2)と、所定条件で加熱処理したポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率(B1、B2)との相関関係に乏しいことが理解される。
なお、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにおける収縮率は、下記式で定義される。
収縮率(%)=(L0-L1)/L0×100
L0:熱処理前のサンプルの寸法(長手方向又は幅方向)
L1:熱処理後のサンプルの寸法(L0と同じ方向)
【0026】
3.構成(b)
構成(b)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの耐衝撃強度をA1とし、80℃の温水中、10%収縮させた後に、振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される耐衝撃強度をA2としたときに、A2/A1×100で表される数値を60〜110%の範囲内の値とする旨の必要的構成要件である。
この理由は、このようにA2/A1×100で表される数値を所定範囲内の値とすることにより、構成(a)等の耐衝撃強度の値が多少ばらついた場合であっても、所定影響因子の要因を低下させ、ポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、良好な耐衝撃強度及び所定割合を得ることができるためである。
【0027】
より具体的には、A2/A1×100で表される数値が、60%未満の値になったり、あるいは、110%を超えたりすると、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率(B1、B2)のばらつきが大きくなって、80〜90℃等の収縮温度付近において、安定的かつ均一な収縮率を得ることが困難となる場合があるためである。
したがって、構成(b)として、A2/A1×100で表される数値を65〜105%の範囲内の値とすることがより好ましく、68〜100%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0028】
そして、A2/A1×100で表される数値を所定範囲内により確実に制御すべく、80℃の温水中で、10%収縮させた後に、振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される耐衝撃強度A2を20〜45J/mmの範囲内の値とすることが好ましく、23〜40J/mmの範囲内の値とすることがより好ましく、25〜38J/mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0029】
ここで、図6及び図7に、それぞれ、A2/A1×100の数値と、所定条件で加熱処理したポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率(B1、B2)との関係を示す。
そして、図6中に示される測定データのばらつきに関し、A2/A1×100の数値と、80℃、10秒で加熱処理したポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率(B1)との関係において、それなりの相関関係(一次式による近似で、相関係数(R)が、0.57)があることが理解される。
同様に、図7中に示される測定データのばらつきに関し、A2/A1×100の数値と、90℃、10秒で加熱処理したポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率(B2)との関係において、それなりの相関関係(一次式による近似で、相関係数(R)が、0.54)があることが理解される。
【0030】
4.構成(c)
構成(c)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにつき、80℃、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB1とし、90℃、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB2としたときに、B1/B2×100で表される数値を70〜90%の範囲内の値とする旨の必要的構成要件である。
この理由は、このようにB1/B2×100で表される数値を所定範囲内の値とすることにより、構成(a)や構成(b)の耐衝撃強度の値が多少ばらついた場合であっても、所定影響因子の要因を下げて、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮温度付近において、安定的かつ均一な収縮率を得ることができるためである。
【0031】
より具体的には、B1/B2×100で表される数値が、70%未満になったり、あるいは、90%を超えたりすると、それぞれ収縮率のばらつきが大きくなって、収縮温度付近において、安定的かつ均一な収縮率を得ることが困難となる場合があるためである。
したがって、構成(c)として、B1/B2×100で表される数値を72〜88%の範囲内の値とすることがより好ましく、75〜86%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0032】
ここで、図8(a)、図8(b)に、B1/B2×100で表される数値と、A2/A1×100の数値との関係を示す。
とすると、A2/A1×100の数値が60%未満になると、B1/B2×100で表される数値のばらつきが大きくなる場合がある。
また、A2/A1×100の数値が110%を過ぎると、B1/B2×100で表される数値のばらつきが、若干大きい傾向が得られている。
【0033】
よって、A2/A1×100の数値を60〜110%の範囲内の値とすることが、B1/B2×100で表される数値の均一化、安定化のためには有効であると考えられる。
したがって、よりB1/B2×100で表される数値の均一化、安定化のためには、A2/A1×100の数値を62〜108%の範囲内の値とすることが好ましく、65〜105%の範囲内の値とすることが更に好ましいと言える。
【0034】
5.任意的構成要件
(1)構成(d)
また、構成(d)は、80℃の温水中で、10%収縮させた際のポリエステル系シュリンクフィルムにつき、振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される耐衝撃強度(A2)を20〜45J/mmの範囲内の値とする旨の任意的構成要件である。
この理由は、このように、かかるA2を具体的に制限することにより、A2/A1×100で表される数値を、所定範囲内の値に制御しやすくなるためである。
【0035】
より具体的には、耐衝撃強度のA2が、20J/mm未満の値になると、高速自動包装適性や印刷適性が劣ったり、あるいは、自動包装機で付与されるエアー抜きの針孔から破れが生じやすくなったりする場合があるためである。
一方、耐衝撃強度のA2が、45J/mmを超えた値になると、収縮温度付近において、安定的かつ均一な収縮率を得ることが困難となる場合があるためである。
したがって、構成(d)として、耐衝撃強度のA2を23〜43J/mmの範囲内の値とすることがより好ましく、25〜40J/mmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0036】
(2)構成(e)
また、構成(e)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにつき、80℃、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率であるB1を35〜80%の範囲内の値とし、かつ、90℃、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率であるB2を40〜85%の範囲内の値とする旨の任意的構成要件である。
この理由は、かかるB1及びB2を、それぞれ具体的に制限することにより、結果として、B1/B2×100で表される数値を、所定範囲内の値に制御しやすくなるためである。
【0037】
逆に言えば、収縮率のB1が、35%未満の値になったり、あるいは、80%を超えたりした値になると、それぞれB1/B2×100で表される数値を、所定範囲内の値に制御することが困難となる場合があるためである。
一方、収縮率のB2が、40%未満の値になったり、あるいは、85%を超えた値になったりすると、装飾用ラベルとして、PETボトルに装着した際に、ラベルがボトルにしっかりと密着せず、隙間が生じる場合があるためである。
また、それぞれB1/B2×100で表される数値を、所定範囲内の値に制御することが困難となる場合もあるためである。
したがって、構成(e)として、収縮率のB1を40〜75%の範囲内の値とし、収縮率のB2を45〜80%の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、構成(e)として、収縮率のB1を45〜70%の範囲内の値とし、収縮率のB2を50〜75%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0038】
なお、ポリエステル系シュリンクフィルムにつき、80℃、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率であるB1、及び、90℃、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率であるB2を、それぞれ所定範囲内の値に調整して、B1/B2×100で表される数値を、所定範囲内の値に制限することが好ましい。
より具体的には、B1/B2×100で表される数値を70〜90%の範囲内の値とすることが好ましく、72〜88%の範囲内の値とすることがより好ましく、75〜86%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
この理由は、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮温度付近における収縮率の値をより狭く制限し、収縮時の温度反応性を良好なものとし、PETボトルの装飾用ラベル等としての歩留まりを高めることができるためである。
【0039】
(3)構成(f)
また、構成(f)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにつき、収縮前のフィルム厚さを10〜100μmの範囲内の値とする旨の任意的構成要件である。
この理由は、このように収縮前のフィルム厚さを所定範囲内の値に具体的に制限することにより、A2/A1×100で表される数値やB1/B2×100で表される数値等を、それぞれ所定範囲内の値に更に容易に制御しやすくなるためである。
より具体的には、収縮前のフィルム厚さが10μm未満の値になったり、あるいは、100μmを超えたりすると、それぞれ収縮率や耐衝撃強度の調整が困難となって、A2/A1×100で表される数値やB1/B2×100で表される数値等の正確な調整もまた、困難となる場合があるためである。
したがって、構成(f)として、収縮前のフィルム厚さを10〜100μmの範囲内の値とすることがより好ましく、25〜40μmの範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0040】
(4)構成(g)
また、構成(g)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにつき、収縮前のフィルムのMD方向における延伸倍率を100〜200%の範囲内の値とする旨の任意的構成要件である。
この理由は、このように収縮前のフィルムのMD方向における延伸倍率を所定範囲内の値に具体的に制限することにより、A2/A1×100で表される数値やB1/B2×100で表される数値等を、それぞれ所定範囲内の値に更に容易かつ定量性をもって制御しやすくなるためである。
【0041】
より具体的には、収縮前のフィルムのMD方向における延伸倍率が、100%未満の値になると、製造上の歩留まりが著しく低下する場合があるためである。
一方、MD方向における延伸倍率が200%を超えると、TD方向における収縮率に影響し、その収縮率の調整自体が困難となる場合があるためである。
したがって、構成(g)として、収縮前のフィルムのMD方向における延伸倍率を110〜180%の範囲内の値とすることがより好ましく、120〜170%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0042】
(5)構成(h)
また、構成(h)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにつき、収縮前のフィルムのTD方向における延伸倍率を300〜600%の範囲内の値とする旨の任意的構成要件である。
この理由は、このように収縮前のフィルムのMD方向のみならず、TD方向における延伸倍率を所定範囲内の値に具体的に制限することにより、A2/A1×100で表される数値やB1/B2×100で表される数値等を、それぞれ所定範囲内の値に更に容易かつ定量性をもって制御しやすくなるためである。
【0043】
より具体的には、収縮前のフィルムのTD方向における延伸倍率が、300%未満の値になると、TD方向における収縮率が著しく低下し、使用可能なポリエステル系シュリンクフィルムの用途が過度に制限される場合があるためである。
一方、収縮前のフィルムのTD方向における延伸倍率が、600%を超えた値になると、収縮率が著しく大きくなって、使用可能なポリエステル系シュリンクフィルムの用途が過度に制限されたり、あるいは、その延伸倍率自体を一定に制御することが困難となったりする場合があるためである。
したがって、構成(h)として、収縮前のフィルムのTD方向における延伸倍率を350〜550%の範囲内の値とすることがより好ましく、400〜500%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0044】
(6)構成(i)
また、構成(i)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにつき、収縮前のフィルムのJIS K 7105に準拠して測定されるヘイズ値を5%以下の値とする旨の任意的構成要件である。
この理由は、このようにヘイズ値を所定範囲内の値に具体的に制限することにより、ポリエステル系シュリンクフィルムの透明性についても、定量性をもって制御しやすくなるためである。
より具体的には、収縮前のフィルムのヘイズ値が、5%を超えた値になると、透明性が低下し、PETボトルに対する装飾用途等への適用が困難となる場合があるためである。
一方、収縮前のフィルムのヘイズ値が、過度に小さくなると、安定的に制御することが困難になって、生産上の歩留まりが著しく低下する場合がある。
したがって、構成(i)として、収縮前のフィルムのヘイズ値を0.1〜3%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜1%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0045】
(7)構成(j)
また、構成(j)は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムにつき、非結晶性ポリエステル樹脂を、全体量の90〜100重量%含む旨の任意的構成要件である。
この理由は、このように非結晶性ポリエステル樹脂の含有量を所定範囲内の値に具体的に制限することにより、構成(a)や構成(b)の耐衝撃強度の値が多少ばらついた場合であっても、適宜配合量等を調整し、所定影響因子の要因を低下させることができるためである。
したがって、結果として、ポリエステル系シュリンクフィルムの耐衝撃強度や、収縮温度付近における収縮率を所望範囲に調整できるとともに、ヘイズ値等についても、定量性をもって制御しやすくなる。
【0046】
より具体的には、非結晶性ポリエステル樹脂の含有量が90%未満の値になると、ポリエステル系シュリンクフィルムの耐衝撃強度や、収縮温度付近における収縮率の制御が困難となる場合があるためである。
但し、非結晶性ポリエステル樹脂の含有量が過度に多くなると、所定影響因子の要因を低下させる範囲が著しく狭くなる可能性がある。
したがって、構成(j)として、非結晶性ポリエステル樹脂の含有量を、全体量の90〜100重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、91〜100重量%の範囲内の値とすることが更に好ましい。
【0047】
(8)その他
第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルム中、又は、その片面、あるいは両面に、各種添加剤を配合したり、それらを付着させたりすることが好ましい。
より具体的には、加水分解防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、着色剤、有機フィラー、無機フィラー、有機繊維、無機繊維等の少なくとも一つを、ポリエステル系シュリンクフィルムの全体量に対して、通常、0.01〜10重量%の範囲で配合することが好ましく、0.1〜1重量%の範囲で配合等することがより好ましい。
【0048】
また、図1(b)に示すように、これらの各種添加剤の少なくとも一つを含む他の樹脂層10a、10bを、ポリエステル系シュリンクフィルム10の片面、又は両面に、積層することも好ましい。
その場合、ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを100%としたときに、追加で積層する他の樹脂層の単層厚さ又は合計厚さを、通常、0.1〜10%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0049】
そして、他の樹脂層を構成する主成分としての樹脂は、ポリエステル系シュリンクフィルムと同様のポリエステル樹脂であっても良く、あるいは、それとは異なるアクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂等の少なくとも一つであることが好ましい。
【0050】
更に、ポリエステル系シュリンクフィルムを多層構造にして、加水分解防止効果や機械的保護を更に図ったり、あるいは、図1(c)に示すように、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が、面内で均一になったりするように、ポリエステル系シュリンクフィルム10の表面に、収縮率調整層10cを設けることも好ましい。
かかる収縮率調整層は、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮特性に応じて、接着剤、塗布方式、あるいは加熱処理等によって、積層することができる。
【0051】
より具体的には、収縮率調整層の厚さは、0.1〜3μmの範囲であって、所定温度におけるポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が過度に大きい場合には、それを抑制するタイプの収縮率調整層を積層することが好ましい。
また、所定温度におけるポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率が過度に小さい場合には、それを拡大するタイプの収縮率調整層を積層することが好ましい。
よって、ポリエステル系シュリンクフィルムとして、収縮率が異なる各種シュリンクフィルムを作成することなく、収縮率調整層によって、所望の収縮率を得ようとするものである。
【0052】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、第1の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの製造方法に関する実施形態である。
【0053】
1.原材料の準備及び混合工程
まずは、原材料として、非結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、ゴム系樹脂、帯電防止剤、加水分解防止剤等の、主剤や添加剤を準備することが好ましい。
次いで、攪拌容器内に、秤量しながら、準備した結晶性ポリエステル樹脂や非結晶性ポリエステル樹脂等を投入し、攪拌装置を用いて、均一になるまで、混合攪拌することが好ましい。
【0054】
2.原反シートの作成工程
次いで、均一に混合した原材料を、絶乾状態に乾燥することが好ましい。
次いで、典型的には、押し出し成形を行い、所定厚さの原反シートを作成することが好ましい。
より具体的には、例えば、押出温度180℃の条件で、L/D24、押出スクリュー径50mmの押出機(田辺プラスチック(株)製)により、押し出し成形を行い、所定厚さ(通常、10〜100μm)の原反シートを得ることができる。
【0055】
3.ポリエステル系シュリンクフィルムの作成
次いで、得られた原反シートにつき、シュリンクフィルム製造装置を用い、ロール上やロール間を移動させながら、加熱押圧して、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成する。
すなわち、所定の延伸温度、延伸倍率で、フィルム幅を基本的に拡大させながら、加熱押圧しながら、所定方向に延伸することにより、ポリエステル系シュリンクフィルムを構成するポリエステル分子を所定形状に結晶化させることが好ましい。
そして、その状態で固化させることによって、装飾やラベル等として用いられる熱収縮性のポリエステル系シュリンクフィルムを作成することができる。
【0056】
4.ポリエステル系シュリンクフィルムの検査工程
作成したポリエステル系シュリンクフィルムにつき、連続的又は間断的に、下記特性等を測定し、所定の検査工程を設けることが好ましい。
すなわち、所定の検査工程によって、下記特性等を測定し、所定範囲内の値に入ることを確認することによって、より均一な収縮特性等を有するポリエステル系シュリンクフィルムとすることができる。
1)ポリエステル系シュリンクフィルムの目視検査
2)厚さむら測定
3)引張弾性率測定
4)引裂強度測定
5)SSカーブによる粘弾性特性測定
【0057】
そして、第2の実施形態のポリエステル系シュリンクフィルムの製造において、下記(a)〜(c)の測定を加味することが好ましいと言える。
(a)振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される、収縮前の耐衝撃強度A1。
(b)80℃の温水中で、10%収縮させた後に、振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される耐衝撃強度をA2としたときに、A2/A1×100で表される数値。
(c)80℃、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB1とし、90℃、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB2としたときに、B1/B2×100で表される数値。
【0058】
[第3の実施形態]
第3の実施形態は、ポリエステル系シュリンクフィルムの使用方法に関する実施形態である。
したがって、公知のシュリンクフィルムの使用方法を、いずれも好適に適用することができる。
【0059】
例えば、ポリエステル系シュリンクフィルムの使用方法を実施するに際して、まずは、ポリエステル系シュリンクフィルムを、適当な長さや幅に切断するとともに、長尺筒状物を形成する。
次いで、当該長尺筒状物を、自動ラベル装着装置(シュリンクラベラー)に供給し、更に必要な長さに切断する。
次いで、内容物を充填したPETボトル等に外嵌する。
【0060】
次いで、PETボトル等に外嵌したポリエステル系シュリンクフィルムの加熱処理として、所定温度の熱風トンネルやスチームトンネルの内部を通過させる。
そして、これらのトンネルに備えてなる赤外線等の輻射熱や、90℃程度の加熱蒸気を周囲から吹き付けることにより、ポリエステル系シュリンクフィルムを均一に加熱して熱収縮させる。
よって、PETボトル等の外表面に密着させて、ラベル付き容器を迅速に得ることができる。
【0061】
ここで、本発明のポリエステル系シュリンクフィルムによれば、少なくとも構成(a)〜(b)を満足することによって、構成(a)の耐衝撃強度の値が多少ばらついた場合であっても、所定影響因子の要因を下げて、ポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、好適な耐衝撃強度を得ることができる。
したがって、後述するように、所定の落下試験において、良好な結果を得ることができる。
しかも、構成(c)を満足することによって、構成(a)や構成(b)の耐衝撃強度の値が多少ばらついた場合であっても、所定影響因子の要因を低下させて、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮温度付近において、安定的かつ均一性に富んだ収縮性を得ることができる。
更に、本発明のポリエステル系シュリンクフィルムは、乳酸由来の構造単位を事実上含まないことから、保管条件における厳格な湿度管理等が不要になるという利点もある。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例に基づき、詳細に説明する。但し、特に理由なく、本発明の権利範囲が、実施例の記載によって狭められることはない。
なお、実施例において、用いた樹脂は、以下の通りである。
(PETG1)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール70モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノール25モル%、ジエチレングリコール5モル%からなる非結晶性ポリエステル
(PETG2)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール72モル%、ネオペンチルグリコール25モル%、ジエチレングリコール3モル%からなる非結晶性ポリエステル
(APET)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:エチレングリコール100モル%からなる結晶性ポリエステル
(PBT)
ジカルボン酸:テレフタル酸100モル%、ジオール:1,4−ブタンジオール100モル%からなる結晶性ポリエステル
【0063】
[実施例1]
1.ポリエステル系シュリンクフィルムの作成
攪拌容器内に、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を100重量部用いた。
次いで、この原料を絶乾状態にしたのち、押出温度180℃の条件で、L/D24、押出スクリュー径50mmの押出機(田辺プラスチック(株)製)により、押し出し成形を行い、厚さ100μmの原反シートを得た。
次いで、シュリンクフィルム製造装置を用い、原反シートから、延伸温度83℃、延伸倍率(MD方向:105%、TD方向:480%)で、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
【0064】
2.ポリエステル系シュリンクフィルムの評価
(1)厚さ
得られたポリエステル系シュリンクフィルムの厚さ(所望値である30μmを基準値として)を、マイクロメータを用いて測定し、以下の基準に準じて評価した。
◎:厚さのばらつきが基準値±0.1μmの範囲内の値である。
〇:厚さのばらつきが基準値±0.5μmの範囲内の値である。
△:厚さのばらつきが基準値±1.0μmの範囲内の値である。
×:厚さのばらつきが基準値±3.0μmの範囲内の値である。
【0065】
(2)耐衝撃強度1
ASTM−D3420に準拠して、振り子の先端部が半円球である、T.S.S.フィルムインパクトテスター(東洋精機製作所製)を用いて、収縮前のポリエステル系シュリンクフィルムの耐衝撃強度(J/mm、A1)を測定し、以下の基準に準じて評価した。
◎:25〜40J/mmの範囲内の値である。
〇:23〜50J/mmの範囲内の値であって、かつ、25〜40J/mmの範囲外の値である。
△:20〜60J/mmの範囲内の値であって、かつ、23〜50J/mmの範囲外の値である。
×:20〜60J/mmの範囲外である。
【0066】
(3)耐衝撃強度2
耐衝撃強度1の測定と同様に、80℃の温水中で、10%収縮させた後のポリエステル系シュリンクフィルムの耐衝撃強度(J/mm、A2)を測定し、以下の基準に準じて評価した。
◎:25〜38J/mmの範囲内の値である。
〇:23〜40J/mmの範囲内の値であって、かつ、25〜38J/mmの範囲外の値である。
△:20〜45J/mmの範囲内の値であって、かつ、23〜40J/mmの範囲外の値である。
×:20〜45J/mmの範囲外である。
【0067】
(4)耐衝撃強度3
収縮前後のポリエステル系シュリンクフィルムの耐衝撃強度(A2/A1)から、A2/A1×100を算出し、以下の基準に準じて評価した。
◎:65〜105%の範囲内の値である。
〇:60〜110%の範囲内の値であって、65〜105%の範囲外である。
△:50〜120%の範囲内の値であって、60〜110%の範囲外である。
×:50〜120%の範囲外の値である。
【0068】
(5)収縮率1
得られたポリエステル系シュリンクフィルム(TD方向)を、恒温槽を用いて、80℃の温水に、10秒間浸漬し(B1条件)、熱収縮させた。
次いで、それぞれの加熱処理前後の寸法変化から、下式に準じて、収縮率(B1)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
収縮率=(熱収縮前のフィルムの長さ−熱収縮後のフィルムの長さ)/熱収縮前のフィルムの長さ×100
◎:収縮率(B1)が35〜80%の範囲内の値である。
〇:収縮率(B1)が30〜85%の範囲内の値であって、かつ、35〜80%の範囲外の値である。
△:収縮率(B1)が25〜90%の範囲内の値であって、かつ、30〜85%の範囲外の値である。
×:収縮率(B1)が25〜90%の範囲外の値である。
【0069】
(6)収縮率2
得られたポリエステル系シュリンクフィルム(TD方向)を、恒温槽を用いて、90℃の温水に、10秒間浸漬し(B2条件)、熱収縮させた。
次いで、それぞれの加熱処理前後の寸法変化から、下式に準じて、収縮率(B2)を算出し、以下の基準に準じて評価した。
収縮率=(熱収縮前のフィルムの長さ−熱収縮後のフィルムの長さ)/熱収縮前のフィルムの長さ×100
◎:収縮率(B2)が50〜75%の範囲内の値である。
〇:収縮率(B2)が45〜80%の範囲内の値であって、かつ、50〜75%の範囲外の値である。
△:収縮率(B2)が40〜85%の範囲内の値であって、かつ、45〜80%の範囲外の値である。
×:収縮率(B2)が40〜85%の範囲外の値である。
【0070】
(7)収縮率3
得られたポリエステル系シュリンクフィルムの収縮率(TD方向のB1、B2)から、B1/B2×100を算出し、以下の基準に準じて評価した。
◎:収縮率3が、75〜85%の範囲内の値である。
〇:収縮率3が、70〜90%の範囲内の値であって、かつ、75〜85%の範囲外の値である。
△:収縮率3が、65〜98%の範囲内の値であって、かつ、70〜90%の範囲外の値である。
×: 収縮率3が、65〜98%の範囲外の値である。
【0071】
(8)ヘイズ
JIS K 7105に準拠して、得られたポリエステル系シュリンクフィルムのヘイズ値を測定し、以下の基準に準じて評価した。
◎:1%以下の値である。
〇:3%以下の値である。
△:5%以下の値である。
×:5%を超えた値である。
【0072】
(9)落下試験
市販の飲料水が充填された状態の円柱状PETボトルを準備した(商品名:エビアン、容積:500ml)。
次いで、ポリエステル系シュリンクフィルムを幅26cmにスリットして得た長尺状のシュリンクフィルムに、長手方向に沿って幅1mmのミシン目を設け、幅方向端部に1,3−ジオキソランを塗布し、重ね代が約1cmとなるよう幅方向端部同士を重ね合わせて接着し、直径約8cmの筒状フィルムとした。さらに、この筒状フィルムを長手方向に5cm毎に切りだし、複数の筒状ラベルを得た。
次いで、当該筒状ラベルを準備した円柱状PETボトルに被せ、85℃に保持された蒸気トンネルの中を、ベルトコンベアの上にのせるとともに、6m/minの通過速度で移動させ、筒状ラベルが円柱状PETボトルに密着するよう熱収縮させた。
次いで、ラベル状のポリエステル系シュリンクフィルムを、ラベル残り幅がミシン目残り1個となるようにミシン目を引き裂いて、落下試験用サンプルとした。
次いで、コンクリート製の床面に対して、1.5mの高さから、落下試験用サンプルを自然落下させ、ラベル状のポリエステル系シュリンクフィルムが、目視にて切断又は破損等されるまでの回数を測定し、以下の基準に沿って、落下試験性を評価した。
◎:3回以上の落下試験に耐える。
〇:2回以上の落下試験に耐える。
△:1回の落下試験に耐える。
×:1回の落下試験に耐えない。
【0073】
[実施例2〜9]
実施例2〜9において、表1及び表2に示すように、それぞれ構成(a)〜(c)等の値を変えて、実施例1と同様に、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、評価した。
【0074】
すなわち、実施例2において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を原材料とし、押出条件を変えて、厚さ25μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様に評価した。
【0075】
また、実施例3において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を原材料とし、押出条件を変えて、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様に評価した。
【0076】
また、実施例4において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を90重量部及び結晶性ポリエステル樹脂(APET)を10重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、厚さ30μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様に評価した。
【0077】
また、実施例5において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)を90重量部及び結晶性ポリエステル樹脂(PBT)を10重量部の割合で混合し、それを原材料とし、押出条件を変えて、厚さ25μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様に評価した。
【0078】
また、実施例6において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG2)のみを原材料とし、押出条件を変えて、厚さ40μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様に評価した。
【0079】
また、実施例7において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG2)のみを原材料とし、押出条件を変えて、厚さ39μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様に評価した。
【0080】
また、実施例8において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG2)のみを原材料とし、押出条件を変えて、厚さ21μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様に評価した。
【0081】
また、実施例9において、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG2)のみを原材料とし、押出条件を変えて、厚さ22μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成したほかは、実施例1と同様に評価した。
【0082】
[比較例1]
比較例1において、表1及び表2に示すように、構成要件(b)を満足しない、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、実施例1と同様に、評価した。
すなわち、実施例1と同じ非結晶性ポリエステル樹脂(PETG1)のみを原材料にして、構成要件(b)を満足しない、厚さ25μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
【0083】
[比較例2]
比較例2において、表1及び表2に示すように、構成要件(b)及び構成要件(c)を満足しない、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、実施例1と同様に、ポリエステル系シュリンクフィルムを作成し、評価した。
すなわち、非結晶性ポリエステル樹脂(PETG2)のみを原材料にして、構成要件(b)及び構成要件(c)を満足しない、厚さ29μmのポリエステル系シュリンクフィルムを作成した。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、従来のポリオレフィン系シュリンクフィルムや、乳酸を脱水縮合した構造単位を含むポリエステル系シュリンクフィルムの欠点を解消し、耐衝撃性に優れ、かつ、収縮温度付近における収縮率が均一なポリエステル系シュリンクフィルム等を提供することができるようになった。」

(3)判断
本件特許の発明の詳細な説明の記載は、上記(2)のとおりであり、本件特許発明1及び4の各発明特定事項について具体的に記載されている。
また、本件特許の明細書【0052】ないし【0057】には、本件特許発明1及び4に係るポリエステル系シュリンクフィルムを生産する方法について好ましい実施形態が具体的に記載され、さらに実施例の記載もある。
してみれば、当業者であれば、本件特許発明1及び4に係るポリエステル系シュリンクフィルムの発明をどのように実施するのか理解できる。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、かつ、使用することができる程度の記載があるから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足するものといえる。

なお、特許異議申立書において特許異議申立人は、「本件特許の請求項1〜4に係る発明において、[A][B][C][D]を全て満足するポリエステル系シュリンクフィルムを製造する方法が記載されておらず、実施例以外のフィルムを製造する方法を当業者が理解できない。本件特許比較例1に記載のフィルムは、樹脂は実施例1〜3と同じPETG1を使用し、かつ[E][F]を満足する延伸倍率で延伸されているにもかかわらず、[C]を満足していない。また、本件特許比較例2に記載のフィルムは、樹脂は実施例6〜9と同じPETG2を使用し、かつ[E][F]を満足する延伸倍率で延伸されているにもかかわらず、[C][D]を満足していない。」(特許異議申立書31頁)等主張している。
しかしながら、所望するフィルム性能を得るために、適切な材料を選択することや種々の加工条件を調整することは、当業者が通常行うことであり、上記のように本件特許の発明の詳細な説明には実施例として具体的な条件が記載されているところ、当業者であれば、実施例の記載を参考に条件を適宜調整することにより、過度の試行錯誤を要することなく本件特許発明1及び4を実施することができるものと認められる。
よって、特許異議申立人の主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張する申立理由3には理由がない。

4 申立理由4(サポート要件)
(1)判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)発明の詳細な説明の記載
上記3(2)のとおりの記載がある。

(3)判断
本件特許発明1及び4の課題は、「優れた耐衝撃性を有し、かつ、収縮温度付近における収縮率の均一性や安定性に優れたシュリンクフィルム等を提供すること」(明細書【0008】)である(以下、「本件特許発明の課題」という。)。
そして、本件特許の発明の詳細な説明には「非結晶性ポリエステル樹脂の含有量を具体的に制限することによって、耐衝撃強度や、収縮温度付近における収縮率を所望範囲に、更に容易に調整しやすくできるとともに、ヘイズ値等についても、定量性をもって制御しやすくなる」(同【0016】)ことが記載され、ポリエステル樹脂が、非結晶性ポリエステル樹脂と、結晶性ポリエステル樹脂との混合物である場合、良好な耐熱性や収縮率等を得るために、「ポリエステル系シュリンクフィルムを構成する樹脂の全体量に対し、非結晶性ポリエステル樹脂の配合量を、90〜100重量%の範囲内の値とする」(同【0021】)こと、良好な耐衝撃強度を得るために「収縮前の耐衝撃強度(A1と称する場合がある。)を20〜60J/mmの範囲内の値とする」(同【0022】)こと、耐衝撃強度の値が多少ばらついた場合であっても、所定影響因子の要因を低下させ、ポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、良好な耐衝撃強度及び所定割合を得るために「80℃の温水中、10%収縮させた後に、振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される耐衝撃強度をA2としたときに、A2/A1×100で表される数値を60〜110%の範囲内の値とする」(同【0026】)こと、さらには、A1やA2の耐衝撃強度の値が多少ばらついた場合であっても、所定影響因子の要因を下げて、ポリエステル系シュリンクフィルムの収縮温度付近において、安定的かつ均一な収縮率を得るため、「80℃、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB1とし、90℃、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB2としたときに、B1/B2×100で表される数値を70〜90%の範囲内の値とする」(同【0030】)が記載されており、かつ、本件特許の発明の詳細な説明には、これらの要件を満たす実施例も記載されている。
これらの記載に接した当業者であれば、ポリエステル系シュリンクフィルムにおいて、ポリエステル系シュリンクフィルムを構成する樹脂の全体量に対して、非結晶性ポリエステル樹脂の配合量を、90〜100重量%の範囲内の値とし、収縮前の耐衝撃強度A1を20〜60J/mm、特定条件下でのA2/A1×100で表される数値を60〜110%の範囲内の値、特定条件下の収縮率の比であるB1/B2×100で表される数値を70〜90%の範囲内の値とするという特定事項を満たすことにより、本件特許発明の課題を解決するものと認識する。
そして、本件特許発明1及び4はいずれも、これら本件特許発明の課題を解決すると認識できる特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1及び4は、本件特許発明の課題を解決するものといえる。
したがって、本件特許発明1及び4に関して、特許請求の範囲に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。

なお、特許異議申立書において特許異議申立人は、「本件特許の請求項1〜4に係る発明において、ポリエステル系シュリンクフィルムを構成するポリエステルの組成が何ら限定されていないが、実施例に記載されているのは非結晶性ポリエステルとしてPETG1またはPETG2を使用したフィルムのみである。それ以外の組成の非結晶性ポリエステルを使用したフィルムまで権利範囲を含む本件特許の請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものである。(特許異議申立書32頁)」と主張している。
しかしながら、シュリンクフィルムとして本件特許発明1及び4の特定する性状を有していれば課題解決できるものと当業者は認識するものであって、発明の課題を解決する上で、ポリエステルの組成は関係がないから、特許異議申立人の主張は採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張する申立理由4には理由がない。

5 申立理由5−1(明確性要件)
(1)判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、発明の詳細な説明の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

(2)判断
特許異議申立書において特許異議申立人は、本件特許発明1及び4について、非結晶性ポリエステルとそれ以外のポリエステルをどのようにして区別するのかが何ら記載されておらず、発明の範囲が不明確である旨主張する。
しかしながら、「非結晶性ポリエステル」との用語は、当業者において一般に認識されるものであって、当業者であれば、非結晶性ポリエステルと結晶性ポリエステルとを通常区別できるものと認められる。加えて、上記3(2)のとおり、本件特許の明細書の【0020】には、結晶性ポリエステル及び非結晶性ポリエステルの具体例が記載されていることからみても、本件特許発明1、4は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
したがって、本件特許発明1及び4は、明確である。

(3)小括
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張する申立理由5−1には理由がない。

第8 むすび
したがって、特許異議申立人の主張する申立理由及び通知した取消理由によっては、請求項1及び4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1及び4に係る特許を取り消す理由を発見しない。
さらに、請求項2及び3に係る特許に対する特許異議の申立ては、上記第2で述べたとおり、特許請求の範囲の請求項2及び3を削除する訂正が認められることに伴い、申立ての対象が存在しないものとなるので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(c)の構成を満足するポリエステル系シュリンクフィルムであって、
非結晶性ポリエステルを、樹脂全体量の90〜100重量%の範囲で含み、
収縮前の前記ポリエステル系シュリンクフィルムの厚さを10〜40μmの範囲内の値とするポリエステル系シュリンクフィルム。
(a)振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される、収縮前の耐衝撃強度をA1とし、それを20〜60J/mm範囲内の値とする。
(b)80℃の温水中で、10%収縮させた後に、振り子式フィルムインパクトテスターにより測定される耐衝撃強度をA2としたときに、前記A2を21.5〜45J/mmの範囲内の値とし、前記A1との関係で、A2/A1×100で表される数値を60〜110%の範囲内の値とする。
(c)80℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB1とし、90℃の温水中で、10秒の条件で収縮させた場合の収縮率をB2としたときに、前記B1を35〜80%の範囲内の値とし、前記B2を45〜85%の範囲内の値とし、B1/B2×100で表される数値を70〜90%の範囲内の値とする。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
収縮前のフィルムのJIS K7105に準拠して測定されるヘイズ値を5%以下の値とすることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系シュリンクフィルム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-03-18 
出願番号 P2020-551435
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08J)
P 1 651・ 536- YAA (C08J)
P 1 651・ 113- YAA (C08J)
P 1 651・ 537- YAA (C08J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 相田 元
植前 充司
登録日 2021-02-10 
登録番号 6837188
権利者 タキロンシーアイ株式会社
発明の名称 ポリエステル系シュリンクフィルム  
代理人 田中 有子  
代理人 江森 健二  
代理人 江森 健二  
代理人 田中 有子  
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