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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
管理番号 1385205
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-09-03 
確定日 2022-04-07 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6838614号発明「フルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6838614号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−15〕、18について訂正することを認める。 特許第6838614号の請求項1〜19に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6838614号(請求項の数19。以下、「本件特許」という。)は、平成31年1月31日(優先権主張:平成30年2月2日)を出願日とする特許出願(特願2019−15682号)に係るものであって、令和3年2月16日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和3年3月3日である。)。
その後、令和3年9月3日に、本件特許の請求項1〜19に係る特許に対して、特許異議申立人である宮本邦彦(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立(以下、「申立」という。)がされた。
それ以降の手続の経緯は以下のとおりである。

令和3年11月 1日付け 取消理由通知書
同年12月27日 訂正の請求及び意見書(特許権者)
令和4年 1月13日付け 通知書(申立人宛)
同年 2月15日 意見書(申立人)

第2 訂正の適否
1.訂正事項
令和3年12月27日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりのものである。下線は、訂正箇所を示す。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「X1は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表し;」を、
「X1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜10価の有機基を表し;」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の
「X3は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表し;」を、
「X3は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表し、ただし、シロキサン結合を含む基を除く;」
に訂正する。


(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1の、
「Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し;」を
「Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し、ただし、Raが結合しているSi原子とシロキサン結合を形成する基を除く;」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項18において、
「Mが、各出現においてそれぞれ独立して、塩素原子またはフッ素原子である。」を
「Mが、塩素原子である。」に訂正する。

2.一群の請求項について
訂正前の請求項2〜15は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、訂正事項1〜3によって、訂正される訂正前の請求項1に連動して訂正されるから、訂正前の請求項1〜15は、一群の請求項に該当するものである。
よって、本件訂正のうち訂正事項1〜3の訂正は、一群の請求項である請求項1〜15に対してなされたものである。
一方、本件訂正のうち訂正事項4の訂正は、一群の請求項ではない請求項18に対してなされたものである。

3.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・
変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載されていたX1の選択肢である「単結合または2〜10価の有機基」から、単に「単結合」を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。

(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載されていた「X3」が「2〜10価の有機基」である場合において、「2〜10価の有機基」より「シロキサン結合を含む基」である「2〜10価の有機基」を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件特許の設定登録時の明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0088】に、「X3の例としては、特に限定するものではないが、例えば、X1に関して記載したものと同様のものが挙げられる。」との記載があり、同【0067】に、X1基の具体例として、各種構造を有するシロキサン結合を含む基が挙げられていることから、本件明細書には、「X3」が「2〜10価の有機基」である場合に各種構造を有するシロキサン結合を含む基を採り得ることが記載されてあったと認められる。
一方、下記に示すとおり、甲4発明1、甲5発明、甲6発明の各化合物は、「X3」に相当する位置に特定のシロキサン結合を含む基を有するから、訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載されていた「X3」について、甲4発明1、甲5発明、甲6発明との重なりを除くことを目的としたものと解することができる。
してみると、訂正事項2により、本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項が導入されるとは認められないので、訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。

(3)訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の請求項1に記載されていた「Z3」が「2価の有機基」である場合について、本件明細書の【0097】の「上記Z3は、好ましくは、2価の有機基であり、式(B1)または式(B2)における分子主鎖の末端のSi原子(Raが結合しているSi原子)とシロキサン結合を形成するものを含まない。」との記載に基づき、「2価の有機基」より、「Raが結合しているSi原子とシロキサン結合を形成する基」である「2価の有機基」を除くものである。
したがって、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。

(4)訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の請求項18に記載されていたMの選択肢である「塩素原子またはフッ素原子」から、単に「フッ素原子」を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。

4.小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正事項1〜4は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものであり、いずれも同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合している。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正により訂正された請求項1〜19に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜19に記載された、以下の事項によって特定されるとおりのものである。下線は、訂正箇所を示す。
以下、本件訂正により訂正された請求項1〜19に係る発明を、項番に従い、「本件発明1」〜「本件発明19」といい、これらを総称して、「本件発明」ということがある。これに対し、本件訂正前の請求項1〜19に係る発明、すなわち本件特許の設定登録時の請求項1〜19に係る発明を、「訂正前の本件発明1」〜「訂正前の本件発明19」といい、これらを総称して、「訂正前の本件発明」ということがある。

「【請求項1】
式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)または(C2):
【化1】

のいずれかで表されるフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物。
[式中:
PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
−(OC3F6)d−で表され;
上記式の繰り返し単位OC3F6が、分岐構造からなり、dが、2以上200以下の整数であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素原子数1〜16のアルキル基を表し;
X1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜10価の有機基を表し;
αは、各出現においてそれぞれ独立して、1〜9の整数であり;
α’は、それぞれ独立して、1〜9の整数であり;
R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表し;
R12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
X2は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し;
R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
nは、3であり;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、2〜10の整数であり;
X3は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表し、ただし、シロキサン結合を含む基を除く;
βは、各出現においてそれぞれ独立して、1〜9の整数であり;
β’は、それぞれ独立して、1〜9の整数であり;
Raは、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR71p1R72q1R73r1を表し;
Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し、ただし、Raが結合しているSi原子とシロキサン結合を形成する基を除く;
R72は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
p1は、0であり;
q1は、3であり;
r1は、0であり;
k1は、3であり;
l1およびm1は、0であり;
X5は、それぞれ独立して、下記式:
−(R31)p’−(Xa)q’−
[式中:
R31は、単結合、1以上のフッ素原子により置換されていてもよい−(CH2)s’−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し;
s’は、1〜20の整数であり;
Xaは、−(Xb)l’−を表し;
Xbは、各出現においてそれぞれ独立して、−O−、−(OR35)n4−、−S−、o−、m−もしくはp−フェニレン基、−C(O)O−、−Si(R33)2−、−(Si(R33)2O)m’−Si(R33)2−、−CON(R34)−、−O−CON(R34)−、−N(R34)−および−(CH2)n’−からなる群から選択される基を表し;
R33は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1−6アルキル基またはC1−6アルコキシ基を表し;
R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基を表し;
R35は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6のアルキレン基であり;
n4は、各出現において、それぞれ独立して、1〜5の整数であり;
m’は、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数であり;
n’は、各出現において、それぞれ独立して、1〜20の整数であり;
l’は、1〜10の整数であり;
p’は、0または1であり;
q’は、0または1であり;
ここに、p’およびq’の少なくとも一方は1であり、p’またはq’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である]
で表される2価の基を表し;
γおよびγ’は、1であり;
Reは、各出現においてそれぞれ独立して、−Y−SiR85n2R863−n2を表し;
Yは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基を表し;
R85は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
n2は、3であり;
k2は、0であり;
l2は、3であり;
m2は、0である。]
【請求項2】
PFPEが、式:−(OC3F6)d−で表され、
上記式の繰り返し単位OC3F6が、OCF(CF3)CF2で表され、および
dが、2以上200以下の整数である、請求項1に記載のフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物。
【請求項3】
α、α’、β、およびβ’が、1である、請求項1または2に記載のフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物。
【請求項4】
X1、X3およびX5が、各出現においてそれぞれ独立して、
−X10−CON(R34)−X11−、
−X10−(OR35)n4−X11−、または
C1−6アルキレン基
のいずれかである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物。
[式中:
X10が、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基であり;
X11が、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子または2価の有機基であり;
R34が、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基であり;
R35が、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6のアルキレン基であり;
n4が、各出現においてそれぞれ独立して、1〜5の整数である。]
【請求項5】
式(B1)、(B2)、(C1)、または(C2)で表される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物。
【請求項6】
式(B1)で表される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物。
【請求項7】
式(C1)または(C2)で表される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物。
【請求項8】
式(C1)で表される、請求項1〜5または7のいずれか1項に記載のフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物を含む表面処理剤。
【請求項10】
さらに、溶媒を含む、請求項9に記載の表面処理剤。
【請求項11】
含フッ素オイル、シリコ−ンオイル、アルコ−ル、触媒、遷移金属、ハロゲン化物イオン、および分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物から選択される1種またはそれ以上の他の成分をさらに含有する、請求項9または10に記載の表面処理剤。
【請求項12】
防汚性コ−ティング剤または防水性コ−ティング剤として使用される、請求項9〜11のいずれか1項に記載の表面処理剤。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか1項に記載の表面処理剤を含有するペレット。
【請求項14】
基材と、該基材の表面に、請求項9〜12のいずれか1項に記載の表面処理剤より形成された層とを含む、物品。
【請求項15】
表面における水の接触角が、100度以上であり、かつ、
該水の接触角に対する、310nmの紫外線を照射照度0.63W/m2で96時間照射後の表面における水の接触角の比率が、83%以上である、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
式(C1)または(C2):

[式中:
γおよびγ’は、1であり;
Rf、PFPEは、以下の式(c1−3)および式(c2−3)と同じであり;
X5は、以下の式(c1−3)および式(c2−3)においてX10−CO−NR34−X11で表される基に相当し;
Reは、各出現においてそれぞれ独立して、−Y−SiR85n2R863−n2を表し;
Yは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基を表し;
R85は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
n2は、3であり;
k2は、0であり;
l2は、3であり;
m2は、0である。]
で表されるフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物の製造方法であって、
以下の工程(3):
式(c1−3)または式(c2−3)で表される化合物:
【化2】

[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素原子数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEは、(−OCF(CF3)CF2−)dで表され;
dは、2以上200以下の整数であり;
X10は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基であり;
R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基であり;
X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基であり;
Y11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基である。]
を、
HSiM’3
[式中:
M’は、それぞれ独立して、ハロゲン原子またはC1−6アルコキシ基である。]および、所望により、
式:R85iL’
[式中:
R85は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
L’は、R85と結合可能な基を表し;
iは、1〜3の整数である。]
で表される化合物と反応させる工程、
を含む、方法。
【請求項17】
式(C1)または(C2):

[式中:
γおよびγ’は、1であり;
Rf、PFPEは、以下の式(c1−3)および式(c2−3)と同じであり;
X5は、以下の式(c1−3)および式(c2−3)においてX10−CO−NR34−X11で表される基に相当し;
Reは、各出現においてそれぞれ独立して、−Y−SiR85n2R863−n2を表し;
Yは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基を表し;
R85は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
n2は、3であり;
k2は、0であり;
l2は、3あり;
m2は、0である。]
で表されるフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物の製造方法であって、以下の工程(1)および(2):
工程(1):
式(c1−1)または式(c2−1):
Rf−PFPE−X10−C(O)OH ・・・(c1−1)
HOC(O)−X10−PFPE−X10−C(O)OH ・・・(c2−1)
[式中: Rf、PFPEおよびX10は、請求項16の記載と同意義である。]
で表される化合物を、SOM2
[式中:Mは、各出現においてそれぞれ独立して、塩素原子またはフッ素原子]と反応させて、式(c1−2)または式(c2−2):
【化3】

[式中:
Rf、PFPE、およびX10は、請求項16の記載と同意義であり;
Mは、上記と同意義である。]
で表される化合物を得る工程;
工程(2):
上記式(c1−2)または式(c2−2)で表される化合物を、
式:HN(R34)−X11−C(Y11−CH=CH2)3
[式中、R34、X11およびY11は、請求項16の記載と同意義である。]と反応させて、式(c1−3)または式(c2−3):
【化4】

[式中、Rf、PFPE、X10、R34、およびX11は、請求項16の記載と同意義である。]
で表される化合物を得る工程
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
式(c1−2)または(c2−2):
【化5】

で表される化合物。
[式中:
Rfが、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素原子数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEが、(−OCF(CF3)CF2−)dで表され;
dが、2以上200以下の整数であり;
X10が、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基であり;
Mが、塩素原子である。]
【請求項19】
式(c1−3)または(c2−3):
【化6】

で表される化合物。
[式中:
Rfが、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素原子数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEが、(−OCF(CF3)CF2−)dで表され;
dが、2以上200以下の整数であり;
X10が、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基であり;
R34が、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基であり;
X11が、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基であり;
Y11が、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基である。]」

第4 異議申立ての理由と当審が通知した取消理由
1.異議申立ての理由(以下、「申立理由」という。)
(1)申立理由の概要
ア.申立理由1(新規性の欠如)
訂正前の本件発明1〜12、16、18〜19は、甲第4号証〜甲第7号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

イ.申立理由2(進歩性の欠如)
訂正前の本件発明1〜19は、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

ウ.申立理由3(サポ−ト要件違反)
本件明細書の実施例で具体的に記載され、その作用効果が実証されているのは、式(B1)、(C1)で表される化合物だけであり、式(A1)、(A2)、(B2)、(C2)の化合物についてはその作用効果が全く確認されていない。
特に、式(A1)、(A2)の構造は、式(B1)、(C1)における1つのSi又はCから3つの加水分解性シリル基が分岐した構造とは大きく異なっており、また、式(A1)、(B1)、(C1)群の化合物と式(A2)、(B2)、(C2)群の化合物とは、加水分解性シリル基の構造が大きく異なっているから、式(B1)、(C1)の化合物だけの実施例の結果を、式(A1)、(A2)、(B2)、(C2)の化合物にまで拡張することはできない。
したがって、本件訂正前の請求項1〜5、7、9〜15の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、それらの請求項に係る発明の特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

(2)証拠方法
申立人が、特許異議申立書に添付した証拠方法(甲第1〜7号証)は、以下のとおりである。

・甲第1号証:特開2017−133003号公報
・甲第2号証:特開2005−290323号公報
・甲第3号証:特開2017−125193号公報
・甲第4号証:特開2008−144144号公報
・甲第5号証:特開2007−197425号公報
・甲第6号証:特開2002−348370号公報
・甲第7号証:特開昭58−167597号公報
(以下、「甲第1号証」〜「甲第7号証」を、それぞれ「甲1」〜「甲7」という。)

2.令和3年11月1日付け取消理由通知書に記載した取消理由の概要
(1)取消理由1(新規性の欠如)
訂正前の本件発明1〜6、9〜12、14〜15、18は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された甲4〜7に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(2)取消理由2(進歩性の欠如)
訂正前の本件発明1〜6、9〜15、18は、本件特許の出願前日本国内又は外国において頒布された甲4〜甲7に記載された発明と甲1、3〜7に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

第5 当審の判断
本件発明1〜19に係る特許は、以下のとおり、当審が通知した取消理由通知書に記載した取消理由1〜2、申立人による申立理由1〜3によっては、取り消すことができない、と判断する。

1.取消理由通知書に記載した取消理由の検討
(1)甲4〜7の記載事項及び甲4〜7に記載された発明
ア.甲4(特開2008−144144号公報)の記載事項及び甲4に
記載された発明
(ア)甲4の記載事項
甲4a
「【請求項1】
(A)下記式(1)又は(2)で表される含フッ素有機ケイ素化合物の少なくとも一種
Rf1−QZ1Aα (1)
AαZ1Q−Rf2−(Q−Z2−Q−Rf2)x−QZ1Aα (2)
[式中、Rf1はパ−フルオロアルキル基、またはパ−フルオロオキシアルキル基、Rf2はパ−フルオロオキシアルキレン基、
Z1は単結合又はケイ素原子1〜15個を含む2〜9価の有機基、Z2はケイ素原子2〜100個を含む2価のポリオルガノシロキシレン基であり、
Qは酸素原子及び/又は窒素原子を含んでいてよい炭素数2〜12の、2〜9価の基であり、但し式(2)において、互いに異なっていてもよく、
αは1〜8の整数、xは0〜5の整数であり、及び、Aは下記一般式で示される基である
−CbH2bSiR3−aXa
(式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基、Xは加水分解性基であり、aは2又は3、bは0〜6の整数である)]、及び
(B)数平均分子量が100〜10,000の、分子重量の25重量%以上のフッ素原子を含む含フッ素カルボン酸を、前記(A)成分100質量部に対して、0.001〜10質量部で、
含有することを特徴とするコ−ティング剤組成物。」

甲4b
「【0001】
本発明は、短時間で硬化し、撥水性、撥油性、汚れ防止性に優れた硬化皮膜を得ることができ、種々の基材表面に防汚性を付与するコ−ティング剤組成物を提供する。

【0037】
[(B)成分]
硬化触媒として作用する(B)成分は、数平均分子量が100〜10,000、好ましくは、200〜8000の、分子重量の25重量%以上のフッ素原子を含む含フッ素カルボン酸である。25重量%以上のフッ素原子を含むことによって、フッ素系溶剤への溶解性に優れる。さらに、硬化膜中で撥水撥油作用を奏する。好ましくはパ−フルオロアルキルカルボン酸及び/又はパ−フルオロポリエ−テルカルボン酸が使用される。」

甲4c
「【0054】
[実施例及び比較例]
表1に示す含フッ素有機ケイ素化合物及びカルボン酸を、同表に示す濃度で、Novec HFE−7200(住友3M社製、フッ素系溶媒)中で混合して溶解し、コ−ティング剤溶液を調製した。試験片としてスライドガラスをこの溶液に浸漬したのち、引き上げて25℃、相対湿度50%の室内に放置した。コ−ティング剤を塗布してから30分後にスライドグラス表面の水の接触角を、接触角計(協和界面科学社製A3型)を用いて、滑落法により測定した。結果を表1に示す。
【0055】
表1中のA−1〜A−7は以下の含フッ素有機ケイ素化合物である。
(A−1)
【0056】
【化19】


(A−7)
【0068】
【化31】



(イ)甲4に記載された発明(甲4発明1、甲4発明2)
甲4の【0055】〜【0057】には、
「A−1:

で示される含フッ素有機ケイ素化合物」(甲4発明1)、

甲4の【0067】〜【0069】には、
「A−7:

で示される含フッ素有機ケイ素化合物」(甲4発明2)
が、それぞれ記載されている(甲4c)。

イ.甲5(特開2007−197425号公報)の記載事項及び甲5に
記載された発明
(ア)甲5の記載事項
甲5a
「【請求項1】
下記一般式(A)、(B)又は(C)で表されるオルガノポリシロキサンにおいて、

(R1は、互いに独立に、水素原子又は1価の有機基であり、R2は炭素数2〜6のアルキレン基であり、nは2〜40の整数であり、kは1〜3の整数である)、
R1の少なくとも2つが下記式(i)で表される基に、

(Xは、互いに独立に、加水分解性基であり、R3は炭素数1〜4のアルキル基またはフェニル基であり、yは1〜5の整数であり、aは2又は3である)
及び、
SiR1の1つが下記式(ii)で表される結合に、又は、SiOSi結合の1つが下記式(iii)で表される結合に、

(Rf1はパ−フロロエ−テル残基を有する1価の基であり、Rf2はパ−フロロエ−テル残基を有する2価の基であり、Qは2価の有機基である)置換されている構造を有することを特徴とするオルガノポリシロキサン。 」

甲5b
「【0001】
本発明は、フッ素含有オルガノポリシロキサンに関し、詳細には、基材との密着性に優れ、耐擦傷性に優れた撥水撥油性の層を形成するフッ素含有オルガノポリシロキサン及びそれを含む表面処理剤に関する。

【0051】
該表面処理剤には、必要に応じて、加水分解縮合触媒、例えば、有機錫化合物( ジブチル錫ジメトキシド、ジラウリン酸ジブチル錫など)、有機チタン化合物( テトラn−ブチルチタネ−トなど)、有機酸(酢酸、メタンスルホン酸など)、無機酸(塩酸、硫酸など)を添加してもよい。これらの中では、特に酢酸、テトラn−ブチルチタネ−ト、ジラウリン酸ジブチル錫などが望ましい。…」

甲5c
「【0064】
以上の結果から、得られた化合物の構造式は
【0065】
【化17】

であることがわかった。」

甲5d
「【0092】
表面処理剤の調製
化合物1〜6の各々を、0.1wt%濃度になるように、エチルパ−フロロブチルエ−テル(HFE7200、住友3M社製)に溶解して、表面処理剤1〜6を調製した。反射防止フイルム(8×15×0.2cm、Southwall Technologies社製)を処理剤に10秒間浸漬後150mm/分の速度で引き上げ、25℃、湿度40%の雰囲気下で24時間放置し、硬化皮膜を形成させた。」

(イ)甲5に記載された発明(甲5発明)
甲5の【0065】〜【0066】には、
「化合物1:

で示されるフッ素含有オルガノポリシロキサン」(甲5発明)が記載されている(甲5c)。

ウ.甲6(特開2002−348370号公報)の記載事項及び甲6に
記載された発明
(ア)甲6の記載事項
甲6a
「【請求項1】下記一般式(1):
F(CxF2xO)mCyF2y−Q−Z (1)
〔式中、Qは2価の有機基であり、Zは下記一般式(2):
【化1】

(式中、Aは加水分解性基であり、R1及びR2は独立に1価の有機基であり、a及びbはそれぞれ2又は3の整数である。)で表わされる1価の基であり、mは6〜50の整数であり、x及びyはそれぞれ1〜3の整数である。〕で表されるパ−フルオロポリエ−テル変性シラン。」

甲6b
「【0015】
【発明が解決しようとする課題】このような状況に鑑み、本発明の課題は、被膜形成性が良好で、同時に撥水撥油性、離型性、防汚性等がより優れた硬化被膜を形成することができるパ−フルオロポリエ−テル変性シラン及びそれを利用する表面処理剤を提供することにある。

【0045】
[表面処理剤]本発明の表面処理剤は、上記パ−フルオロポリエ−テル変性シランを利用するもの、すなわち一般式(1)で示されるパ−フルオロポリエ−テル変性シラン及びその部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種を主成分として含有するものである。この場合、この表面処理剤は、必要に応じて、アルコキシシラン加水分解縮合触媒を含有していてもよい。かかる触媒としては、例えば、有機錫化合物(ジブチル銀ジメトキシド、ジラウリン酸ジブチル錫等)、有機チタン化合物(テトラ−n−ブチルチタネ−ト等)、有機酸(酢酸、メタンスルホン酸等)、無機酸(塩酸、硫酸等)が挙げられ、これらの中では特に酢酸、テトラ−n−ブチルチタネ−ト、ジラウリン酸ジブチル錫等が望ましい。」

甲6c
「【0056】
【化16】


【0057】[パ−フルオロポリエ−テル変性シランの評価]前記のようにして合成したパ−フルオロポリエ−テル変性シラン3.0gをノナフロロブチルエチルエ−テル(商品名HFE−7200:3M社製)97.0gに溶解し、ガラス板(2.5×10×0.5cm)に刷毛塗りで塗布した。25℃、湿度70%の雰囲気下で1時間放置し、硬化被膜を形成させた。この試料片を用いて、下記(1)〜(3)の評価を行った。」

(イ)甲6に記載された発明(甲6発明)
甲6の【0056】には、
「【化16】の構造:

を有するパ−フルオロポリエ−テル変性シラン」(甲6発明)が記載されている(甲6c)。

エ.甲7(特開昭58−167597号公報)の記載事項及び甲7に
記載された発明
(ア)甲7の記載事項
甲7a
「2.特許請求の範囲
(1)一般式

で表わされるフルオロアミノシラン化合物。
ただし式中、Rfは

」(1頁左下欄4行〜13行)

甲7b
「第2に、前記化合物を、一般式
H2NR1Si(R2)3−n(OR3)n(ここに、R1、R2、R3、nは前記のものと同じ意味を表す。)で表わされるアミノアルキルアルコキシシランと2〜5量体のへキサフルオロプロペンオキサイド(以下HFPOと略記する。)オリゴマ−とを反応溶媒の存在下又は非存在下脱HF剤の存在又は非存在下に反応させることにより製造することを要旨とする。…
前記本発明に係る製造方法において使用されるHFPOオリゴマ−は

で表わされ、mの数により順次m=0のものを2量体、m=1のものを3量体等と呼ぶ。…
前記アミノアルキルアルコキシシランは分子内にアミノ基を持つアルコキシシランであれば本発明の化合物の製造に使用しうるが、具体的にはアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。」(2頁左下欄6行〜右下欄14行)

(イ)甲7に記載された発明(甲7発明)
甲7には、


(m=0〜8の整数)
を有する化合物」(甲7発明)が記載されている。

(2)甲4発明を主引例とした本件発明1〜6、9〜15の新規性
進歩性の検討
ア.本件発明1と甲4発明1の対比
まず、本件発明1と甲4発明1を対比する。
甲4発明1の含フッ素有機ケイ素化合物の左末端にある「PFPE1」は、その左末端に「F−CF(CF3)−CF2」を有し、「CF(CF3)−CF2O」単位を平均24個有するパ−フルオロオキシアルキレン基であるから、本件発明1の式(B1)で表されるフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物の「β’」が1である「(Rf−PFPE)β‘」に相当する。
甲4発明1の含フッ素有機ケイ素化合物の中央の「Si」及び当該「Si」より三方向に伸びている「−O−Si(CH3)2−C2H4−Si(OCH3)3」は、本件発明1の式(B1)のシラン化合物の「k1」が3、「l1」および「m1」が0、「Ra」が「−Z3−SiR71p1R72q1R73r1」であって、この中の「Z3」が「−O−Si(CH3)2−C2H4−」、「R72」が加水分解可能な基、「q1」が3、「p1」及び「r1」が0である「SiRak1Rbl1Rcm1」に相当する。
そうすると、甲4発明1の含フッ素有機ケイ素化合物の「−O−Si(CH3)2−C2H4−Si(OCH3)3」と、本件発明1の式(B1)のシラン化合物の「−Z3−SiR71p1R72q1R73r1」とは、「Z3」に相当する構造が2価の有機基である限りにおいて一致している。
甲4発明1の「PFPE1」と中央の「Si」を連結している「−CH2−O−C3H6−Si(CH3)2−O−」と本件発明1の「X3」は、2価の基である限りにおいて一致している。

そうすると、本件発明1と甲4発明1は、
「式(B1)のフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物において「(Rf−PFPE−)β’」と「(SiRak1Rbl1Rcm1)β」(いずれの式も式中の記号の説明は省略する。)が、2価の基「X3」に結合し、上記後者の「Ra」中における、「SiR71p1R72q1R73r1」と上記後者の式中の「Si」が、2価の有機基「Z3」に結合している、フルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物」で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本件発明1では、「X3」について、「各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表し、ただし、シロキサン結合を含む基を除く」ものと規定しているのに対して、
甲4発明1では、「X3」に対応するものが「−CH2−O−C3H6−Si(CH3)2−O−」である点

<相違点2>
本件発明1では、「Z3」について、「各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し、ただし、Raが結合しているSi原子とシロキサン結合を形成する基を除く」ものと規定しているのに対して、
甲4発明1では、「Z3」に対応するものが「−O−Si(CH3)2−C2H4−」である点

イ.相違点1の検討
本件発明1の「式(B1)で表される化合物」の二価の基である「X3」は、シロキサン結合を含む基を除くものであり、シロキサン結合である「−Si(CH3)2−O−」を含んでいる甲4発明1の「−CH2−O−C3H6−Si(CH3)2−O−」が、本件発明1の「X3」より除かれていることは明らかなので、相違点1は実質的な相違点である。
また、甲4には、甲4発明1である(A−1)以外に、(A−2)〜(A−7)の「含フッ素有機ケイ素化合物」が具体的に記載され、(A−1)〜(A−7)は、「PFPE1−」と加水分解性シリル基(Si(OCH3)3)を含む点で構造上共通しているが、その余の化学構造は大きく異なっているので、(A−2)〜(A−7)の構造より、甲4発明1の特に「−CH2−O−C3H6−Si(CH3)2−O−」の構造のみに着目して、この構造を、シロキサン結合を含む基を有さない2価の基に改変することを当業者が容易に動機付けられるとはいえない。
更に、甲4の特許請求の範囲や発明の詳細な説明を見ても、二価の基に対応するZ1、Qとして、「Z1は単結合又はケイ素原子1〜15個を含む2〜9価の有機基」、「Qは酸素原子及び/又は窒素原子を含んでいてよい炭素数2〜12の、2〜9価の基」という広範な定義が示されるに止まるから、甲4の記載より、甲4発明1の特に「−CH2−O−C3H6−Si(CH3)2−O−」の構造のみに着目して、この構造を、シロキサン結合を含む基を有さない2価の基に改変することを当業者が容易に動機付けられるとはいえない。
加えて、本件明細書の【0005】(下記の2(2)本a)、【0355】〜【0365】、【0367】〜【0371】(下記の2(2)本c)によると、本件発明1の発明特定事項を満たすフルオロポリエ−テル基を含有するシラン化合物が、紫外線耐久性の良好な表面処理層の形成に寄与し得ることが認められるところ、甲4には、甲4発明1の化合物が当該効果を備えることについて記載も示唆もされていない。
そうすると、甲4発明1において、相違点1として挙げた本件発明1の発明特定事項を想到することが、当業者に容易であったとは認められないので、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明1に基づき当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ.本件発明1と甲4発明2の対比
次に、本件発明1と甲4発明2を対比する。
甲4発明2の含フッ素有機ケイ素化合物の左末端にある「PFPE1」は、その左末端に「F−CF(CF3)−CF2」を有し、「CF(CF3)−CF2O」単位を平均24個有するパ−フルオロオキシアルキレン基であるから、本件発明1の式(A1)で表されるフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物の「α’」が1である「(Rf−PFPE)α’」に相当する。
甲4発明2の含フッ素有機ケイ素化合物において下に向いている「Si(OCH3)3」は、本件発明1の式(A1)の化合物の「X2」が単結合、「n」が3、「R13」が加水分解可能な基である「−X2−SiR13nR143−n」に相当する。
甲4発明2の含フッ素有機ケイ素化合物の「PFPE1」と「Si(OCH3)3」を結合する「−CH2−CH−(CH2−CH)a−(a=1.4(平均値))」と、本件発明1の式(A1)の化合物の「Rf−PFPE)α’」及び「−X2−SiR13nR143−n」を除いた構造は、2価の基である限りにおいて一致している。

そうすると、本件発明1と甲4発明2は、
「式(A1)のフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物において「(Rf−PFPE)α’」及び「−X2−SiR13nR143−n」(いずれの式も式中の記号の説明は省略する。)が2価の基で結合したフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物」で一致し、以下の点で相違している。

<相違点3>
本件発明1では、2価の基が「−X1−((CH2C(R12))t−R11)α」(X1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜10価の有機基を表し;αは、各出現においてそれぞれ独立して、1〜9の整数であり;R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表し;R12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;tは、各出現においてそれぞれ独立して、2〜10の整数であり)であるのに対して、
甲4発明2では、2価の基が「−CH2−CH−(CH2−CH)a−(a=1.4(平均値))」である点

エ.相違点3の検討
甲4発明2は、「−CH2−CH−(CH2−CH)a−(a=1.4(平均値))」の各々の「CH」に「Si(OCH3)3」が結合し、「PFPE1」と「−CH2−CH−(CH2−CH)a−(a=1.4(平均値))」は直接結合しており、本件発明1の式(A1)で表される化合物の「X1」が、「2〜10価の有機基」である構造を含まないものと認められるので、相違点3は実質的な相違点である。
そして、甲4の(A−1)〜(A−6)の構造、甲4の特許請求の範囲又は発明の詳細な説明の記載より、甲4の(A−7)の化合物である甲4発明2において「−CH2−CH−(CH2−CH)a−(a=1.4(平均値))」の構造のみに着目して、本件発明1の「−X1−((CH2C(R12))t−R11)α」で定義される2価の基に改変することを当業者が容易に動機付けられるとはいえないことは、甲4発明1の場合と同様である。
加えて、本件明細書の【0005】(下記の2(2)本a)、【0355】〜【0365】、【0367】〜【0371】(下記の2(2)本c)によると、本件発明1の発明特定事項を満たすフルオロポリエ−テル基を含有するシラン化合物が、紫外線耐久性の良好な表面処理層の形成に寄与し得ることが認められるところ、甲4には、甲4発明2の化合物が当該効果を備えることについて記載も示唆もされていない。
そうすると、甲4発明2において、相違点3として挙げた本件発明1の発明特定事項を想到することが、当業者に容易であったとは認められないので、本件発明1は、甲4発明2に基づき当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ.申立人の主張
申立人は、令和4年2月15日付けの意見書において、「PFPE部分と加水分解性基との連結部分がシロキサン結合を含まない構造を有する分岐型パ−フルオロポリエ−テル基含有化合物であっても、紫外線耐久性の良好な表面処理層の形成が可能であることを示す甲2の記載に基づいて、甲4化合物(A−1)において、PFPE部分と加水分解性基との連結部分−QZ1−について単なるリンカ−として、甲4の段落「0025]〜[0028]に例示されるようなシロキサン結合を含まない2価の基を採用することは容易である。」と主張する。
しかし、上記のウで示したように、甲4の特許請求の範囲には、二価の基に対応するQ、Z1として、「Z1は単結合又はケイ素原子1〜15個を含む2〜9価の有機基」、「Qは酸素原子及び/又は窒素原子を含んでいてよい炭素数2〜12の、2〜9価の基」という広範な定義が示されるに過ぎず、それらを具体化した(A−1)〜(A−7)を見ても、二価の基の化学構造は各々で大きく異なっているから、甲4発明1の特に「−CH2−O−C3H6−Si(CH3)2−O−」の構造のみに着目して、その構造を、Si原子を含まない2価の基に改変することを当業者が容易に動機付けられるとはいえない。
また、甲4発明1の化合物と甲2の【0052】〜【0053】に記載された化合物2は、分岐型パ−フルオロポリエ−テル基を有する点で共通するものの、それ以外の化学構造は大きく異なっているし、甲2の化合物2は比較例として用いられているものでもあるから、甲4の化合物2に関する記載が、甲4発明1の「−CH2−O−C3H6−Si(CH3)2−O−」の構造をSi原子を含まない2価の基に改変することを当業者に動機付けるものとは認められない。
そうすると、申立人の上記主張は理由がなく、甲2の記載を参酌しても、相違点1として挙げた本件発明1の発明特定事項を想到することが、当業者に容易であったとは認められない

カ.甲4を主引例とした新規性進歩性の検討のまとめ
本件発明1は、甲4発明1及び甲4発明2、すなわち甲4に記載された発明ではなく、また、これらの発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明2〜6、9〜15は、本件発明1を直接又は間接的に引用するから、本件発明1と同様の理由より、甲4に記載された発明ではなく、また、これらの発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)甲5発明を主引例とした本件発明1〜6、9〜15の新規性
進歩性の検討
ア.本件発明1と甲5発明の対比
本件発明1と甲5発明を対比する。
甲5発明のフッ素含有オルガノポリシロキサンの左末端にある「Rf」は、その左末端に「C3F7」を有し、「CF(CF3)−CF2−O」単位を24個有するパ−フルオロエ−テル基であるから、本件発明1の式(B1)で表されるフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物の「β’」が1である「(Rf−PFPE)β‘」に相当する。
甲5発明のフッ素含有オルガノポリシロキサンの中央の「Si」及び当該「Si」より三方向に伸びている「−O−Si(Me)2−C2H4−Si(OMe)3」は、本件発明1の式(B1)の化合物の「k1」が3、「l1」および「m1」が0、「Ra」が「−Z3−SiR71p1R72q1R73r1」であって、この中の「Z3」が「−O−Si(Me)2−C2H4−」、「R72」が加水分解可能な基、「q1」が3、「p1」及び「r1」が0である「SiRak1Rbl1Rcm1」に相当する。
してみれば、甲5発明のフッ素含有オルガノポリシロキサンの「−O−Si(Me)2−C2H4−Si(OMe)3」と、本件発明1の式(B1)の化合物の「−Z3−SiR71p1R72q1R73r1」とは、「Z3」に当たる構造が2価の有機基である限りにおいて一致している。
甲5発明のフッ素含有オルガノポリシロキサンの「Rf」と中央の「Si」を連結している「−CH2−O−C3H6−Si(CH3)2−O−」と本件発明1の式(B1)の化合物の「X3」は、2価の基である限りにおいて一致している。

そうすると、本件発明1と甲5発明は、
「式(B1)で表されるフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物において「(Rf−PFPE−)β’」と「(SiRak1Rbl1Rcm1)β」(いずれの式も式中の記号の説明は省略する。)が、2価の基「X3」に結合し、上記後者の「Ra」中における、「SiR71p1R72q1R73r1」と上記後者の式中の「Si」が、2価の有機基「Z3」に結合している、フルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物」で一致し、以下の点で相違している。

<相違点4>
本件発明1では、「X3」について、「各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表し、ただし、シロキサン結合を含む基を除く」ものと規定しているのに対して、
甲5発明では、「X3」に対応するものが「−CH2−O−C3H6−Si(CH3)2−O−」である点

<相違点5>
本件発明1では、「Z3」について、「各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し、ただし、Raが結合しているSi原子とシロキサン結合を形成する基を除く」ものと規定しているのに対して、
甲5発明では、「Z3」に対応するものが「−O−Si(CH3)2−C2H4−」である点

イ.相違点4の検討
本件発明1の「式(B1)で表される化合物」の二価の基である「X3」は、シロキサン結合を含む基を除くものであり、シロキサン結合である「−Si(CH3)2−O−」を含んでいる甲5発明の「−CH2−O−C3H6−Si(CH3)2−O−」が、本件発明1の「X3」より除かれていることは明らかなので、相違点4は実質的な相違点である。
また、甲5には、甲5発明の特に「−CH2−O−C3H6−Si(CH3)2−O−」の構造を、他の2価の基に改変すること示唆する記載は存しないから、上記の構造を、シロキサン結合を含む基を有さない2価の基に改変することを当業者が容易に動機付けられるとはいえない。
加えて、本件明細書の【0005】(下記の2(2)本a)、【0355】〜【0365】、【0367】〜【0371】(下記の2(2)本c)によると、本件発明1の発明特定事項を満たすフルオロポリエ−テル基を含有するシラン化合物が、紫外線耐久性の良好な表面処理層の形成に寄与し得ることが認められるところ、甲5には、甲5発明の化合物が当該効果を備えることについて記載も示唆もされていない。
そうすると、相違点4として挙げた本件発明1の発明特定事項を想到することが、当業者に容易であったとは認められないので、相違点5について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ.甲5を主引例とした新規性進歩性の検討のまとめ
本件発明1は、甲5発明、すなわち甲5に記載された発明ではなく、また、この発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明2〜6、9〜15は、本件発明1を直接又は間接的に引用するから、本件発明1と同様の理由より、甲5に記載された発明ではなく、また、この発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)甲6発明を主引例とした本件発明1〜6、9〜15の新規性
進歩性の検討
ア.本件発明1と甲6発明の対比
本件発明1と甲6発明を対比する。
甲6発明aのパ−フルオロポリエ−テル変性シランの左末端にある「F−CF(CF3)−CF2」と「CF(CF3)CF2O」単位を23個有する構造は、本件発明1の式(B1)で表されるフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物の「β’」が1である「(Rf−PFPE)β‘」に相当する。
甲6発明のパ−フルオロポリエ−テル変性シランの右末端にある「Si[OSi(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3]3」(当審注:(OCH3)が1つであることは構造上あり得ないので添字の3が漏れていると判断した。)は、本件発明1の式(B1)の化合物の「k1」が3、「l1」および「m1」が0、「Ra」が「−Z3−SiR71p1R72q1R73r1」であって、この中の「Z3」が「−OSi(CH3)2CH2CH2−」、「R72」が加水分解可能な基、「q1」が3、「p1」及び「r1」が0である「SiRak1Rbl1Rcm1」に当たる。
そうであれば、甲6発明のパ−フルオロポリエ−テル変性シランのSiに結合している「OSi(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3」と、本件発明1の式(B1)の化合物の「Ra」に当たる「−Z3−SiR71p1R72q1R73r1」とは、「Z3」に当たる構造が2価の有機基である限りにおいて一致している。
甲6発明のパ−フルオロポリエ−テル変性シランの「CF(CF3)CF2O」と「Si[OSi(CH3)2CH2CH2Si(OCH3)3]」とを連結している構造である「−CF(CF3)(C=O)NHCH2CH2CH2Si(CH3)2O−」と本件発明1の式(B1)の化合物の「X3」は、2価の基である限りにおいて一致している。

そうすると、本件発明1と甲6発明は、
「式(B1)で表されるフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物において「(Rf−PFPE−)β’」と「(SiRak1Rbl1Rcm1)β」(いずれの式も式中の記号の説明は省略する。)が、2価の基「X3」に結合し、上記後者の「Ra」中における、「SiR71p1R72q1R73r1」と上記後者の式中の「Si」が、2価の有機基「Z3」に結合している、フルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物」で一致し、以下の点で相違している。

<相違点6>
本件発明1では、「X3」について、「各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表し、ただし、シロキサン結合を含む基を除く」ものと規定しているのに対して、
甲6発明では、「X3」に対応するものが「−CF(CF3)(C=O)NHCH2CH2CH2Si(CH3)2O−」である点

<相違点7>
本件発明1では、「Z3」について、「各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し、ただし、Raが結合しているSi原子とシロキサン結合を形成する基を除く」ものと規定しているのに対して、
甲6発明では、「Z3」に対応するものが「−OSi(CH3)2CH2CH2−」である点

イ.相違点6の検討
本件発明1の「式(B1)で表される化合物」の二価の基である「X3」は、シロキサン結合を含む基を除くものであり、シロキサン結合である「−Si(CH3)2O−」を含んでいる甲6発明の「−CF(CF3)(C=O)NHCH2CH2CH2Si(CH3)2O−」が、本件発明1の「X3」より除かれていることは明らかなので、相違点6は実質的な相違点である。
また、甲6には、甲6発明の特に「−CF(CF3)(C=O)NHCH2CH2CH2Si(CH3)2O−」の構造を、他の2価の基に改変することを示唆する記載は存しないから、上記の構造を、シロキサン結合を含む基を有さない2価の基に改変することを当業者が容易に動機付けられるとはいえない。
更に、本件明細書の【0005】(下記の2(2)本a)、【0370】、【0371】(下記の2(2)本c)によると、本件発明1の発明特定事項を満たすフルオロポリエ−テル基を含有するシラン化合物が、紫外線耐久性の良好な表面処理層の形成に寄与し得ることが認められるところ、甲6には、甲6発明の化合物が当該効果を備えることについて記載も示唆もされていない。
そうすると、相違点6として挙げた本件発明1の発明特定事項を想到することが、当業者に容易であったとは認められないので、相違点7について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ.甲6を主引例とした新規性進歩性の検討のまとめ
本件発明1は、甲6発明、すなわち甲6に記載された発明ではなく、また、この発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明2〜6、9〜15は、本件発明1を直接又は間接的に引用するから、本件発明1と同様の理由より、甲6に記載された発明ではなく、また、この発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)甲7発明を主引例とした本件発明18の新規性
進歩性の検討
ア.本件発明18と甲7発明の対比
本件発明18と甲7発明を対比する。
甲7発明の化合物の左端の「CF3CF2CF2−O−(CF(CF3)CF2O)m−」は、本件発明18の式(c1−2)の化合物の「Rf−PFPE」に相当する。
甲7発明の化合物の左端の「CF3CF2CF2−O−(CF(CF3)CF2O)m−」と「(C=O)F」とを連結する構造は、2価の有機基であるから、本件発明18の式(c1−2)の化合物の「X10」に相当する。
甲7発明の化合物の右端の「(C=O)F」と本件発明18の式(c1−2)の化合物の「(C=O)M」は、「(C=O)」に結合する原子がハロゲン原子である限りにおいて一致する。

そうすると、本件発明1と甲7発明は、
「「Rf−PFPE−X10−(C=O)」の構造を含む化合物」で一致し、以下の点で相違している。

<相違点8>
本件発明18では、「C=O」に塩素原子が結合しているのに対して、
甲7発明では、「C=O」にフッ素原子が結合している点

イ.相違点8の検討
本件発明18と甲7発明は、末端のハロゲン原子で異なるので、相違点8は実質的な相違点である。
また、甲7には、甲7の特許請求の範囲に記載されているフルオロアミノシラン化合物(甲7a)の製造原料であるヘキサフルオロプロペンオキサイド(HFPO)オリゴマ−として、甲7発明の化合物が記載されているが、甲7発明の化合物右端の「(C=O)F」を、他のハロゲン化アシル基に置き換えること、他のハロゲン化アシル基に置き換えてもフルオロアミノシラン化合物の製造原料となり得ることを示唆する記載は見当たらないので、甲7発明の「(C=O)F」を「(C=O)Cl」に置き換えることを当業者が容易に想到し得るとは認められない。

ウ.甲7を主引例とした新規性進歩性の検討のまとめ
本件発明18は、甲7発明、すなわち甲7に記載された発明ではなく、また、この発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(6)当審で通知した取消理由の検討のまとめ
以上のとおり、本件発明1〜6、9〜15、18に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由1(新規性の欠如)、取消理由2(進歩性の欠如)により取り消すことはできない。

2.取消理由通知書で採用しなかった申立理由の検討
申立理由のうち申立理由1(新規性の欠如)、申立理由2(進歩性の欠如)は、取消理由通知で採用した取消理由1(本件発明1〜6、9〜15、18に対する新規性欠如)、取消理由2(本件発明1〜6、9〜15、18に対する進歩性欠如)以外に、本件発明7〜8、16〜17、19に対する新規性欠如の取消理由、進歩性欠如の取消理由を含むものであるから、本件発明7〜8、16〜17、19に対する申立理由1(新規性の欠如)、申立理由2(進歩性の欠如)について、下記の(1)で検討する。
また、取消理由通知で採用しなかった申立理由3(サポ−ト要件違反)について、下記の(2)で検討する。

(1)本件発明7〜8、16〜17、19に対する申立理由1(新規性の欠 如)、申立理由2(進歩性の欠如)の検討
本件発明7〜8は、式(C1)又は(C2)のフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物、本件発明16〜17は、式(C1)又は(C2)のフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物の製造方法、本件発明19は、本件発明16〜17のフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物の製造方法で使用される(c1−3)又は(c2−3)の化合物に関するものである。
申立人は、本件発明7〜8の化合物は、甲1の請求項29、30、甲3の請求項1の記載から想到容易であり、甲4、5の各実施例に記載されている旨、本件発明16の製造方法は、甲1の【0157】に記載され、【0157】及び請求項19から当業者に想到容易である旨、本件発明17の製造方法は、甲7、1、3より当業者に想到容易である旨、本件発明19の前駆体化合物は、甲1の【0157】に記載され、【0157】及び請求項19から当業者に想到容易である旨を主張している。

ア.甲1の記載事項
甲1の請求項1、19、30には、式(D1)、式(D2)の化合物が記載され、同【0156】〜【0157】には、式(D1)、式(D2)の化合物の製造方法が記載されている。

甲1a
「【請求項1】
(1)下記一般式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)、(C2)、(D1)および(D2):
【化1】


[式中:
PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
−(OC4F8)a−(OC3F6)b−(OC2F4)c−(OCF2)d−
(式中、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;

X9は、それぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表し;
δは、それぞれ独立して、1〜9の整数であり;
δ’は、それぞれ独立して、1〜9の整数であり;
Rdは、各出現においてそれぞれ独立して、−Z2−CR81p2R82q2R83r2を表し;
Z2は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し;
R81は、各出現においてそれぞれ独立して、Rd’を表し;
Rd’は、Rdと同意義であり;
Rd中、Z2基を介して直鎖状に連結されるCは最大で5個であり;
R82は、各出現においてそれぞれ独立して、−Y−SiR85n2R863−n2を表し;
Yは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基を表し;
R85は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R86は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
n2は、(−Y−SiR85n2R863−n2)単位毎に独立して、1〜3の整数を表し;
ただし、式(D1)および(D2)において、少なくとも1つのn2は1〜3の整数であり;
R83は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
p2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
q2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
r2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
Reは、各出現においてそれぞれ独立して、−Y−SiR85n2R863−n2を表し;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
k2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
l2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
m2は、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
ただし、式(D1)および(D2)において、少なくとも1つのq2は2または3であるか、あるいは、少なくとも1つのl2は2または3である。]
のいずれかで表される少なくとも1種のパ−フルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物、および
(2)下記一般式(O):
Rf1−PFPE’−Rf2 ・・・(O)

で表される含フッ素オイルを含む表面処理剤であって、上記一般式(O)で表される含フッ素オイルのうち、含フッ素オイルの数平均分子量よりも2.0倍以上の分子量を有する含フッ素オイルの含有量が10mol%以下であることを特徴とする表面処理剤。

【請求項19】
X1、X5、X7およびX9が、それぞれ独立して:

−CONH−(CH2)−、
−CONH−(CH2)2−、
−CONH−(CH2)3−、
−CON(CH3)−(CH2)3−、
−CON(Ph)−(CH2)3−(式中、Phはフェニルを意味する)、
−CONH−(CH2)6−、
−CON(CH3)−(CH2)6−、
−CON(Ph)−(CH2)6−(式中、Phはフェニルを意味する)、
−CONH−(CH2)2NH(CH2)3−、
−CONH−(CH2)6NH(CH2)3−、
−CH2O−CONH−(CH2)3−、
−CH2O−CONH−(CH2)6−、

−CONH−(CH2)3Si(CH3)2OSi(CH3)2(CH2)2−、
−CONH−(CH2)3Si(CH3)2OSi(CH3)2OSi(CH3)2(CH2)2−、
−CONH−(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)2Si(CH3)2(CH2)2−、
−CONH−(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)3Si(CH3)2(CH2)2−、
−CONH−(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)10Si(CH3)2(CH2)2−、
−CONH−(CH2)3Si(CH3)2O(Si(CH3)2O)20Si(CH3)2(CH2)2−、


からなる群から選択される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の表面処理剤。

【請求項30】
パ−フルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物が、式(D1)および(D2)のいずれかで表される少なくとも1種の化合物である、請求項1〜26のいずれか1項に記載の表面処理剤。」

甲1b
「【0156】
式(D1)または式(D2)で表されるパ−フルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物は、公知の方法を組み合わせることにより製造することができる。例えば、Xが2価である式(D1’)で表される化合物は、限定するものではないが、以下のようにして製造することができる。
【0157】
HO−X−C(YOH)3(式中、XおよびYは、それぞれ独立して、2価の有機基である。)で表される多価アルコ−ルに、二重結合を含有する基(好ましくはアリル)、およびハロゲン(好ましくはブロモ)を導入して、Hal−X−C(Y−O−R−CH=CH2)3(式中、Halはハロゲン、例えばBrであり、Rは二価の有機基、例えばアルキレン基である。)で表される二重結合含有ハロゲン化物を得る。次いで、末端のハロゲンと、RPFPE−OH(式中、RPFPEは、パ−フルオロポリエ−テル基含有基である。)で表されるパ−フルオロポリエ−テル基含有アルコ−ルとを反応させて、RPFPE−O−X−C(Y−O−R−CH=CH2)3を得る。次いで、末端の−CH=CH2と、HSiCl3およびアルコ−ルまたはHSiR853と反応させて、RPFPE−O−X−C(Y−O−R−CH2−CH2−SiR853)3を得ることができる。」

イ.甲3の記載事項
甲3の請求項1には、式(1a)、式(1b)の化合物が記載されている。

「【請求項1】
式(1a)または式(1b):
【化1】

[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
−(OC4F8)a−(OC3F6)b−(OC2F4)c−(OCF2)d−
(式中、a、b、cおよびdは、それぞれ独立して、0〜200の整数であって、a、b、cおよびdの和は少なくとも1であり、添字a、b、cまたはdを付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり;
Xは、それぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表し;
αは、それぞれ独立して、1〜9の整数であり;
βは、1〜9の整数であり;
Raは、各出現においてそれぞれ独立して、−Z−CR1pR2qR3rを表し;
Zは、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し;
R1は、各出現においてそれぞれ独立して、Ra’を表し;
Ra’は、Raと同意義であり;
Ra中、Z基を介して直鎖状に連結されるCは最大で5個であり;
R2は、各出現においてそれぞれ独立して、−Y−SiR5nR63−nを表し;
Yは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基を表し;
R5は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
R6は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
nは、(−Y−SiR5nR63−n)単位毎に独立して、1〜3の整数を表し;
R3は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
pは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
qは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
rは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
Rbは、各出現においてそれぞれ独立して、−Y−SiR5nR63−nを表し;
Rcは、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
kは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
lは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
mは、各出現においてそれぞれ独立して、0〜3の整数であり;
ただし、式中、少なくとも1つのqは2または3であるか、あるいは、少なくとも1つのlは2または3である。]
で表されるパ−フルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物。」

ウ.本件発明7〜8、16〜17、19の新規性進歩性の検討
甲1の一般式(D1)および(D2)の化合物の「PFPE」は、「式:−(OC3F6)d−で表され;上記式の繰り返し単位OC3F6が、分岐構造からな」るものに限定されてないし、甲1の実施例等にも、「PFPE」が分岐構造である化合物は具体的に記載されていないので、本件発明7〜8に係る式(C1)又は(C2)のフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物が甲1に記載されているとは認められない。
同じく、甲3の式(1a)、式(1b)の化合物の「PFPE」は、「式:−(OC3F6)d−で表され;上記式の繰り返し単位OC3F6が、分岐構造からな」るものに限定されてないし、甲3の実施例等にも、「PFPE」が分岐構造である化合物は具体的に記載されていないので、本件発明7〜8に係る式(C1)又は(C2)のフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物が甲3に記載されているとは認められない。
一方、甲4〜6には、本件発明1の式(A1)又は式(B1)で表されるフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物と化学構造の類似する甲4発明1、2、甲5発明、甲6発明の化合物が記載されているが、甲1又は3で開示されるような炭素原子から3つの加水分解性シリル基が分岐した構造を有する式(C1)又は式(C2)で表されるフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物は、記載も示唆もされていない。
また、甲2〜7の記載を参照しても、甲1の(D1)および(D2)の化合物の「PFPE」又は、甲3の式(1a)、式(1b)の化合物の「PFPE」において、「式:−(OC3F6)d−で表され;上記式の繰り返し単位OC3F6が、分岐構造からな」るものを採用することを当業者に動機づけるような記載や当該採用により紫外線耐久性の良好な表面処理層が得られることを示唆するような記載は見当たらない。
そうすると、甲1又は甲3と甲2、4〜7を組み合わせても、本件発明7〜8に係る式(C1)又は(C2)のフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物を当業者が容易に想到し得たとは認められない。
同様に、本件発明16〜17に係る(C1)又は(C2)のフルオロ(ポリ)エ−テル基含有シラン化合物の製造方法、及び、本件発明19に係る前記製造方法で使用される(c1−3)又は(c2−3)の化合物は、甲1又は甲3に記載されたものとはいえないうえ、これらは、甲1又は甲3と甲2、4〜7を組み合わせても当業者が容易に想到し得たものとは認められない。

ウ.小括
以上のとおり、申立人が主張する、本件発明8〜9、16〜17、19に対する申立理由1(新規性の欠如)、申立理由2(進歩性の欠如)は、いずれも理由がない。

(2)申立理由3(サポ−ト要件違反)の検討
ア.本件明細書の発明の詳細な説明に記載された事項
本件明細書の発明の詳細な説明には次のような記載がある。

本a.
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような表面処理組成物(表面処理剤)により形成された層(表面処理層と称することがある)には、紫外線(UV)に対する耐久性(「紫外線耐久性」あるいは「UV耐久性」と称することがある)が求められることがある。
【0005】
本開示は、紫外線耐久性の良好な表面処理層の形成に寄与し得る、フルオロポリエ−テル基を含有するシラン化合物(以下、「PFPE含有シラン化合物」と称することがある)に関する。

【発明の効果】
【0007】
本開示によると、紫外線耐久性の良好な表面処理層の形成に寄与し得るPFPE含有シラン化合物を提供できる。」

本b.
「【0310】
(物品)
本開示の物品は、基材と、該基材の表面に、上記本開示のPFPE含有シラン化合物(または、該PFPE含有シラン化合物を含む表面処理剤)より形成された層(表面処理層)とを含む。
【0311】
本開示の表面処理層は、良好な紫外線耐久性を有し、さらに、滑り性の抑制効果、防汚性(例えば、指紋などの汚れの付着を防止する)、耐ケミカル性、高い摩擦耐久性、撥水性、撥油性、耐熱性、耐加水分解性、防湿性等を有し得る。

【0315】
表面処理層の表面における、水の接触角(紫外線照射前の表面における水の接触角)に対する、310nmの紫外線を照射照度0.63W/m2で96時間照射後の表面における水の接触角の割合(UVの積算照射時間96時間後の接触角の値/UV照射時間0時間の接触角の値)は、83%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましい。なお、水の接触角の測定方法は、上記のとおりである。
【0316】
一の態様において、上記表面処理層の表面における、水の接触角は、100度以上であり、110度以上であることが好ましく、および、
該水の接触角に対する、310nmの紫外線を照射照度0.63W/m2で96時間照射後の表面における水の接触角の比率は、83%以上であり、85%以上であることがより好ましい。」

本c.
「【実施例】
【0354】
以下の実施例を通じてより具体的に説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0355】
(合成例1)
還流冷却器、温度計および撹拌機を取り付けた200mLの4つ口フラスコに、平均組成CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]22CF(CF3)COOHで表されるパ−フルオロポリエ−テル変性カルボン酸体32g、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン16g、N,N−ジメチルホルムアミド0.13gおよび、塩化チオニル2.17gを仕込み、窒素気流下、90℃で1時間撹拌した。続いて、減圧下で揮発分を留去した後、16gの1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1.35gのトリエチルアミン、および1.73gのNH2CH2C(CH2CH=CH2)3に仕込み、窒素気流下、室温で6時間撹拌した。続いて、パ−フルオロヘキサン30g、アセトン10gおよび3mol/Lの塩酸20gを加えて30分間撹拌し、その後、分液ロ−トを用いてパ−フルオロヘキサン相を分取した。その後、分取したパ−フルオロヘキサン相を濾過し、続いて減圧下で揮発分を留去することにより、末端にアリル基を有する下記式のパ−フルオロポリエ−テル基含有アリル化合物(A)29.6gを得た。
・パ−フルオロポリエ−テル基含有アリル化合物(A):
CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]22CF(CF3)CONHCH2C(CH2CH=CH2)3
【0356】
(合成例2)
還流冷却器、温度計、および撹拌機を取り付けた200mLの4つ口フラスコに、合成例1にて合成した末端にアリル基を有するパ−フルオロポリエ−テル基含有アリル化合物(A)29g、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン35mlおよびトリクロロシラン6.7gを仕込み、窒素気流下、5℃で30分間撹拌した。続いて、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのPt錯体を2%含むキシレン溶液を0.3ml加えた後、60℃まで昇温させ、この温度にて6時間撹拌した。その後、減圧下で揮発分を留去した。続いて、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン30mlを加えて、55℃で10分間撹拌した後に、メタノ−ル0.73gとオルソギ酸トリメチル16.8gの混合溶液を加えて、この温度にて2時間撹拌した。その後、減圧下で揮発分を留去することにより、末端にトリメチルシリル基を有する下記のパ−フルオロポリエ−テル基含有シラン化合物(B)30.1gを得た。
・パ−フルオロポリエ−テル基含有シラン化合物(B)
CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]22CF(CF3)CONHCH2C[CH2CH2CH2Si(OCH3)3]3
【0357】
(合成例3)
還流冷却器、温度計および撹拌機を取り付けた200mLの4つ口フラスコに、平均組成CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]28CF(CF3)COOHで表されるパ−フルオロポリエ−テル変性カルボン酸体32g、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン16g、N,N−ジメチルホルムアミド0.10gおよび、塩化チオニル1.69gを仕込み、窒素気流下、90℃で1時間撹拌した。続いて、減圧下で揮発分を留去した後、16gの1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1.05gのトリエチルアミン、および1.36gのNH2CH2C(CH2CH=CH2)3を仕込み、窒素気流下、室温で6時間撹拌した。続いて、パ−フルオロヘキサン30g、アセトン10gおよび3mol/Lの塩酸20gを加えて30分撹拌し、その後、分液ロ−トを用いてパ−フルオロヘキサン相を分取した。その後、分取したパ−フルオロヘキサン相を濾過し、続いて減圧下で揮発分を留去することにより、末端にアリル基を有する下記式のパ−フルオロポリエ−テル基含有アリル化合物(C)29.2gを得た。
・パ−フルオロポリエ−テル基含有アリル化合物(C):
CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]28CF(CF3)CONHCH2C(CH2CH=CH2)3
【0358】
(合成例4)
還流冷却器、温度計、および撹拌機を取り付けた200mLの4つ口フラスコに、合成例3にて合成した末端にアリル基を有するパ−フルオロポリエ−テル基含有アリル化合物(C)29g、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン35mlおよびトリクロロシラン5.2gを仕込み、窒素気流下、5℃で30分間撹拌した。続いて、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのPt錯体を2%含むキシレン溶液を0.23ml加えた後、60℃まで昇温させ、この温度にて6時間撹拌した。その後、減圧下で揮発分を留去した。続いて、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン30mlを加えて、55℃で10分間撹拌した後に、メタノ−ル0.57gおよびオルソギ酸トリメチル13.1gの混合溶液を加えて、この温度にて2時間撹拌した。その後、減圧下で揮発分を留去することにより、末端にトリメチルシリル基を有する下記のパ−フルオロポリエ−テル基含有シラン化合物(D)29.6gを得た。
・パ−フルオロポリエ−テル基含有シラン化合物(D)
CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]28CF(CF3)CONHCH2C[CH2CH2CH2Si(OCH3)3]3
【0359】
(合成例5)
還流冷却器、温度計および撹拌機を取り付けた200mLの4つ口フラスコに、平均組成CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]11CF(CF3)COOHで表されるパ−フルオロポリエ−テル変性カルボン酸体32g、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン16g、N,N−ジメチルホルムアミド0.23gおよび、塩化チオニル3.81gを仕込み、窒素気流下、90℃で1時間撹拌した。続いて、減圧下で揮発分を留去した後、16gの1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、2.43gのトリエチルアミン、および3.04gのNH2CH2C(CH2CH=CH2)3を仕込み、窒素気流下、室温で6時間撹拌した。続いて、パ−フルオロヘキサン30g、アセトン10gおよび3mol/Lの塩酸20gを加えて30分撹拌し、その後、分液ロ−トを用いてパ−フルオロヘキサン相を分取した。その後、分取したパ−フルオロヘキサン相を濾過し、続いて減圧下で揮発分を留去することにより、末端にアリル基を有する下記式のパ−フルオロポリエ−テル基含有アリル化合物(E)29.4gを得た。
・パ−フルオロポリエ−テル基含有アリル化合物(E):
CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]11CF(CF3)CONHCH2C(CH2CH=CH2)3
【0360】
(合成例6)
還流冷却器、温度計、撹拌機を取り付けた200mLの4つ口フラスコに、合成例5にて合成したパ−フルオロポリエ−テル基含有アリル化合物(E)29g、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン29.0mlおよびトリクロロシラン11.8gを仕込み、窒素気流下、5℃で30分間撹拌した。続いて、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンのPt錯体を2%含むキシレン溶液を0.8ml加えた後、60℃まで昇温させ、この温度にて6時間撹拌した。その後、減圧下で揮発分を留去した。続いて、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン29.0mlを加えて、55℃で10分間撹拌した後に、メタノ−ル1.30gとオルソギ酸トリメチル29.2gの混合溶液を加えて、この温度にて2時間撹拌した。その後、減圧下で揮発分を留去することにより、末端にトリメチルシリル基を有する下記のパ−フルオロポリエ−テル基含有シラン化合物(F)30.0gを得た。
・パ−フルオロポリエ−テル基含有シラン化合物(F)
CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]11CF(CF3)CONHCH2C[CH2CH2CH2Si(OCH3)3]3
【0361】
(実施例1)
上記合成例2で得られた化合物(B)を、濃度20wt%になるように、ハイドロフルオロエ−テル(スリ−エム社製、ノベックHFE7200)に溶解させて、表面処理剤を調製した。
【0362】
(実施例2)
化合物(B)に代えて、上記合成例4で得られた化合物(D)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製した。
【0363】
(実施例3)
化合物(B)に代えて、上記合成例6で得られた化合物(F)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製した。
【0364】
(実施例4)
化合物(B)に代えて、化合物(G)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製した。
・化合物(G)
CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]22CF(CF3)CH2OCH2CH2CH2Si[CH2CH2CH2Si(OCH3)3]3
【0365】
(実施例5)
化合物(B)に代えて、化合物(H)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤を調製した。
・化合物(H)
CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]22CF(CF3)C[OCH2CH2CH2Si(OCH3)3][CH2CH2CH2Si(OCH3)3]2
【0366】
(比較例1〜3)
化合物(B)に代えて、下記対照化合物1〜3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、表面処理剤をそれぞれ調製した。
・対照化合物1
CF3CF2CF2O(CF2CF2CF2O)30CF2CF2CONHCH2C[CH2CH2CH2Si(OCH3)3]3
・対照化合物2
CF3O(CF2CF2O)22(CF2O)23CF2CONHCH2C[CH2CH2CH2Si(OCH3)3]3
・対照化合物3
CF3CF2CF2O[CF(CF3)CF2O]28CF(CF3)CONHCH2CH2CH2Si(OCH3)3
【0367】
<評価>
実施例1〜5および比較例1〜3で調製した表面処理剤を、それぞれ化学強化ガラス(コ−ニング社製、「ゴリラ」ガラス、厚さ0.7mm)上に真空蒸着した。真空蒸着の処理条件は、圧力3.0×10−3Paとし、化学強化ガラス表面に5nmの二酸化ケイ素膜を形成し、続いて、化学強化ガラス1枚(55mm×100mm)あたり、表面処理剤4mg(即ち、化合物(B)、化合物(D)または対照化合物1〜3を0.8mg含有)を蒸着させた。次に、蒸着膜付き化学強化ガラスを、温度150℃の雰囲気下で30分静置させた後、室温まで放冷させ、表面処理層を形成した。
【0368】
(耐UV性評価)
上記で形成された表面処理層について、UV照射前後の水の静的接触角をそれぞれ測定した。UV照射は、UVB−313ランプ(Q−Lab社製、310nmにおいて放射照度0.63W/m2)を用い、基材のブラックパネル温度は、63度で、ランプと表面処理層との距離を5cmとして行った。水の静的接触角の測定は、接触角測定装置(協和界面科学社製)を用いて、水2μLにて実施した。
【0369】
まず、初期評価として、表面処理層形成後、UV照射前に水の静的接触角を測定した(UV照射時間0時間)。その後、所定の時間UVを照射した後の表面処理層について、水の静的接触角をそれぞれ測定した。評価は、累積照射時間96時間まで行った。結果を表1に示す。また、UV照射時間0時間の接触角の値に対する、UVの積算照射時間96時間後の接触角の値の比率(UVの積算照射時間96時間後の接触角の値/UV照射時間0時間の接触角の値)を、表2に示す。
【0370】

【0371】

【0372】
(n−ヘキサデカンの静的接触角の測定)
上記で形成された表面処理層について、n−ヘキサデカンの静的接触角を測定した。n−ヘキサデカンの静的接触角の測定は、接触角測定装置(協和界面科学社製)を用いて、n−ヘキサデカン2μLにて実施した。結果を以下の表に示す。
【0373】

【0374】
・表面滑り性評価(動摩擦係数の測定)
上記で形成された、表面に表面処理層を有する基材について、表面性測定機(Labthink社製 FPT−1)を用いて、摩擦子として紙を使用し、ASTM D4917に準拠して、動摩擦係数(−)を測定した。具体的には、表面処理層を有する基材を水平に配置し、摩擦子である紙(2cm×2cm)を表面処理層の表面の露出上面に接触させ、その上に200gfの荷重を付与した。その後、荷重を加えた状態で、摩擦子である紙を200mm/秒の速度で平行移動させて、動摩擦係数を測定した。結果を、以下の表に示す。
【0375】

【0376】
・摩擦耐久性評価
上記の実施例1〜5および比較例3の表面処理剤を用いて形成された表面処理層について、消しゴム摩擦耐久試験により、摩擦耐久性を評価した。
まず、初期評価として、消しゴム摩擦耐久試験の水の静的接触角を測定した(摩擦回数0回)。その後、表面処理層を形成した基材を水平配置し、消しゴム(minoan製、型番:MB006004、直径0.6cm)を該表面処理層の表面に接触させ、その上に1000gfの荷重を付与し、その後、荷重を加えた状態で消しゴムを20mm/秒の速度で往復させた。往復回数1000回毎に、水の静的接触角(度)を測定した。結果を以下の表に示す。表中「−」は測定していないことを示す。
【0377】



イ.サポ−ト要件の考え方
特許請求の範囲の記載が明細書のサポ−ト要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

ウ.本件発明のサポ−ト要件の検討
(ア)本件発明が解決しようとする課題
本件明細書の【0005】によると、本件発明が解決しようとする課題は、紫外線耐久性の良好な表面処理層の形成に寄与し得る、フルオロポリエ−テル基を含有するシラン化合物(PFPE含有シラン化合物)を提供することにあると認められる(本a)。

(イ)本件発明が(ア)で示した課題を解決できると当業者が認識できるか
本件明細書の実施例では、【0355】〜【0365】に、分岐構造を有する−(CF(CF3)CF2O)−基を繰り返し単位とする基を有し、かつ、末端に複数の加水分解性シリル基を有する実施例1〜5のPFPE含有シラン化合物(B)、(D)、(F)、(G)、(H)を含む表面処理剤、【0366】に、分岐構造を有しない−(CF2CF2CF2O)−基(対象化合物1)、−(CF2CF2O)−基及び−(CF2O)−基(対象化合物2)を繰り返し単位とする比較例1〜2のPFPE含有シラン化合物を含む表面処理剤がそれぞれ記載され、【0368】〜【0371】に示された耐UV性評価試験の結果によると、実施例1〜5のPFPE含有シラン化合物による表面処理層の方が比較例1〜2のPFPE含有シラン化合物による表面処理層よりもUV耐久性に優れることが示されている(本c)。
そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明に基づき、本件発明1の発明特定事項を満たすPFPE含有シラン化合物が、上記(ア)で示した、本件発明の課題を解決できることは当業者が認識し得たものと認められる。
したがって、本件発明1、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2〜15、本件発明1の(C1)又は(C2)の化合物の製造方法に係る本件発明16〜17、当該製造方法で使用される式(c1−2)または(c2−2)の化合物に係る本件発明18、及び、当該製造方法で使用される(c1−3)又は(c2−3)の化合物に係る本件発明19が、サポ−ト要件に違反しているとはいえない。

(ウ)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、本件発明がサポ−ト要件を満たしていない理由として、「本件明細書の実施例で具体的に記載され、その作用効果が実証されているのは、式(B1)、(C1)で表される化合物だけであり、式(A1)、(A2)、(B2)、(C2)の化合物についてはその作用効果が全く確認されていない。」こと、「特に、式(A1)、(A2)の構造は、式(B1)、(C1)における1つのSi又はCから3つの加水分解性シリル基が分岐した構造とは大きく異なっており、また、式(A1)、(B1)、(C1)群の化合物と式(A2)、(B2)、(C2)群の化合物とは、加水分解性シリル基の構造が大きく異なっているから、式(B1)、(C1)の化合物だけの実施例の結果を、式(A1)、(A2)、(B2)、(C2)の化合物にまで拡張することはできない。」ことを挙げる。
しかし、式(A1)、(A2)、(B2)、(C2)の化合物と式(B1)(C1)の化合物は、分岐構造を有する−(OC3F6)−基を繰り返し単位とし、末端に複数の加水分解性シリル基を含有する点において、重要な化学構造を共有するものである。
また、本件明細書の【0368】〜【0371】に示された耐UV性評価試験の結果によると、分岐構造を有する−(CF(CF3)CF2O)−基を繰り返し単位とする比較例3のPFPE含有シラン化合物は、末端に加水分解性シリル基を1つだけ有し、本件発明のPFPE含有シラン化合物と加水分解性シリル基の数や加水分解性シリル基が結合している部分の構造が相違しているにも関わらず比較例1〜2に比べて良好なUV耐久性が備えることが開示されている。
そうすると、式(B1)(C1)の化合物と比べて、末端の加水分解性シリル基の数や加水分解性シリル基が結合している部分の構造が異なる式(A1)、(A2)、(B2)、(C2)の化合物についても、上記(ア)で示した本件発明の課題を解決できることは、当業者が認識し得るものと認められる。
したがって、上記の申立人の主張は、理由がない。

エ.小括
以上のとおり、申立人が主張する、申立理由3(サポ−ト要件)は、理由がない。

第6 むすび
以上のとおり、本件訂正については、適法であるから、これを認める。
本件特許の請求項1〜19に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1〜19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A1)、(A2)、(B1)、(B2)、(C1)または(C2):
【化1】

のいずれかで表されるフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物。
[式中:
PFPEは、各出現においてそれぞれ独立して、式:
−(OC3F6)d−で表され;
上記式の繰り返し単位OC3F6が、分岐構造からなり、dが、2以上200以下の整数であり;
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素原子数1〜16のアルキル基を表し;
X1は、各出現においてそれぞれ独立して、2〜10価の有機基を表し;
αは、各出現においてそれぞれ独立して、1〜9の整数であり;
α’は、それぞれ独立して、1〜9の整数であり;
R11は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表し;
R12は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し;
X2は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表し;
R13は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
nは、3であり;
tは、各出現においてそれぞれ独立して、2〜10の整数であり;
X3は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2〜10価の有機基を表し、ただし、シロキサン結合を含む基を除く;
βは、各出現においてそれぞれ独立して、1〜9の整数であり;
β’は、それぞれ独立して、1〜9の整数であり;
Raは、各出現においてそれぞれ独立して、−Z3−SiR71p1R72q1R73r1を表し;
Z3は、各出現においてそれぞれ独立して、酸素原子または2価の有機基を表し、ただし、Raが結合しているSi原子とシロキサン結合を形成する基を除く;
R72は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
p1は、0であり;
q1は、3であり;
r1は、0であり;
k1は、3であり;
l1およびm1は、0であり;
X5は、それぞれ独立して、下記式:
−(R31)p’−(Xa)q’−
[式中:
R31は、単結合、1以上のフッ素原子により置換されていてもよい−(CH2)s’−またはo−、m−もしくはp−フェニレン基を表し;
s’は、1〜20の整数であり;
Xaは、−(Xb)1’−を表し;
Xbは、各出現においてそれぞれ独立して、−O−、−(OR35)n4−、−S−、 o−、m−もしくはp−フェニレン基、−C(O)O−、−Si(R33)2−、− (Si(R33)2O)m’−Si(R33)2−、−CON(R34)−、−O−CON(R34)−、−N(R34)−および−(CH2)n’−からなる群から選択される基を表し;
R33は、各出現においてそれぞれ独立して、フェニル基、C1−6アルキル基また はC1−6アルコキシ基を表し;
R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基を表し;
R35は、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6のアルキレン基であり;
n4は、各出現において、それぞれ独立して、1〜5の整数であり;
m’は、各出現において、それぞれ独立して、1〜100の整数であり;
n’は、各出現において、それぞれ独立して、1〜20の整数であり;
l’は、1〜10の整数であり;
p’は、0または1であり;
q’は、0または1であり;
ここに、p’およびq’の少なくとも一方は1であり、p’またはq’を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である]
で表される2価の基を表し;
γおよびγ’は、1であり;
Reは、各出現においてそれぞれ独立して、−Y−SiR85n2R863−n2を表し;
Yは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基を表し;
R85は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
n2は、3であり;
k2は、0であり;
l2は、3であり;
m2は、0である。]
【請求項2】
PFPEが、式:−(OC3F6)d−で表され、
上記式の繰り返し単位OC3F6が、OCF(CF3)CF2で表され、および dが、2以上200以下の整数である、請求項1に記載のフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物。
【請求項3】
α、α’、β、およびβ’が、1である、請求項1または2に記載のフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物。
【請求項4】
X1、X3およびX5が、各出現においてそれぞれ独立して、
−X10−CON(R34)−X11−、
−X10−(OR35)n4−X11−、または
C1−6アルキレン基
のいずれかである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物。
[式中:
X10が、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基であり;
X11が、各出現においてそれぞれ独立して、単結合、酸素原子または2価の有機基であり;
R34が、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基であり;
R35が、各出現においてそれぞれ独立して、C1−6のアルキレン基であり;
n4が、各出現においてそれぞれ独立して、1〜5の整数である。]
【請求項5】
式(B1)、(B2)、(C1)、または(C2)で表される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物。
【請求項6】
式(B1)で表される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物。
【請求項7】
式(C1)または(C2)で表される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物。
【請求項8】
式(C1)で表される、請求項1〜5または7のいずれか1項に記載のフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物を含む表面処理剤。
【請求項10】
さらに、溶媒を含む、請求項9に記載の表面処理剤。
【請求項11】
含フッ素オイル、シリコーンオイル、アルコール、触媒、遷移金属、ハロゲン化物イオン、および分子構造内に非共有電子対を有する原子を含む化合物から選択される1種またはそれ以上の他の成分をさらに含有する、請求項9または10に記載の表面処理剤。
【請求項12】
防汚性コーティング剤または防水性コーティング剤として使用される、請求項9〜11のいずれか1項に記載の表面処理剤。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか1項に記載の表面処理剤を含有するペレット。
【請求項14】
基材と、該基材の表面に、請求項9〜12のいずれか1項に記載の表面処理剤より形成された層とを含む、物品。
【請求項15】
表面における水の接触角が、100度以上であり、かつ、
該水の接触角に対する、310nmの紫外線を照射照度0.63W/m2で96時間照射後の表面における水の接触角の比率が、83%以上である、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
式(C1)または(C2):
(Rf−PFPE)γ’−X5−(CRdk2Rel2Rfm2)γ …(C1)
(Rfm2Rel2Rdk2C)γ−X5−PFPE−X5−(CRdk2Rel2Rfm2)γ …(C2)
[式中:
γおよびγ’は、1であり;
Rf、PFPEは、以下の式(c1−3)および式(c2−3)と同じであり;
X5は、以下の式(c1−3)および式(c2−3)においてX10−CO−NR34−X11で表される基に相当し;
Reは、各出現においてそれぞれ独立して、−Y−SiR85n2R863−n2を表し;
Yは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基を表し;
R85は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
n2は、3であり;
k2は、0であり;
l2は、3であり;
m2は、0である。]
で表されるフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の製造方法であって、
以下の工程(3):
式(c1−3)または式(c2−3)で表される化合物:
【化2】

[式中:
Rfは、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素原子数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEは、(−OCF(CF3)CF2−)dで表され;
dは、2以上200以下の整数であり;
X10は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基であり;
R34は、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6 アルキル基であり;
X11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基であり;
Y11は、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基である。]
を、
HSiM’3
[式中:
M’は、それぞれ独立して、ハロゲン原子またはC1−6アルコキシ基である。]
および、所望により、
式:R85iL’
[式中:
R85は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
L’は、R85と結合可能な基を表し;
iは、1〜3の整数である。]
で表される化合物と反応させる工程、
を含む、方法。
【請求項17】
式(C1)または(C2):
(Rf−PFPE)γ’−X5−(CRdk2Rel2Rfm2)γ …(C1)
(Rfm2Rel2Rdk2C)γ−X5−PFPE−X5−(CRdk2Rel2Rfm2)γ …(C2)
[式中:
γおよびγ’は、1であり;
Rf、PFPEは、以下の式(c1−3)および式(c2−3)と同じであり;
X5は、以下の式(c1−3)および式(c2−3)においてX10−CO−NR34−X11で表される基に相当し;
Reは、各出現においてそれぞれ独立して、−Y−SiR85n2R863−n2を表し;
Yは、各出現においてそれぞれ独立して、2価の有機基を表し;
R85は、各出現においてそれぞれ独立して、水酸基または加水分解可能な基を表し;
n2は、3であり;
k2は、0であり;
l2は、3あり;
m2は、0である。]
で表されるフルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物の製造方法であって、以下の工程(1)および(2):
工程(1):
式(c1−1)または式(c2−1):
Rf−PFPE−X10−C(O)OH ・・・(c1−1)
HOC(O)−X10−PFPE−X10−C(O)OH ・・・(c2−1)
[式中:
Rf、PFPEおよびX10は、請求項16の記載と同意義である。]
で表される化合物を、SOM2
[式中:Mは、各出現においてそれぞれ独立して、塩素原子またはフッ素原子]
と反応させて、式(c1−2)または式(c2−2):
【化3】

[式中:
Rf、PFPE、およびX10は、請求項16の記載と同意義であり;
Mは、上記と同意義である。]
で表される化合物を得る工程;
工程(2):
上記式(c1−2)または式(c2−2)で表される化合物を、
式:HN(R34)−X11−C(Y11−CH=CH2)3
[式中、R34、X11およびY11は、請求項16の記載と同意義である。]
と反応させて、式(c1−3)または式(c2−3):
【化4】

[式中、Rf、PFPE、X10、R34、およびX11は、請求項16の記載と同意義である。]
で表される化合物を得る工程
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
式(c1−2)または(c2−2):
【化5】

で表される化合物。
[式中:
Rfが、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素原子数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEが、(−OCF(CF3)CF2−)dで表され;
dが、2以上200以下の整数であり;
X10が、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基であり;
Mが、塩素原子である。]
【請求項19】
式(c1−3)または(c2−3):
【化6】

で表される化合物。
[式中:
Rfが、各出現においてそれぞれ独立して、1個またはそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素原子数1〜16のアルキル基を表し;
PFPEが、(−OCF(CF3)CF2−)dで表され;
dが、2以上200以下の整数であり;
X10が、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基であり;
R34が、各出現においてそれぞれ独立して、水素原子、フェニル基またはC1−6アルキル基であり;
X11が、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基であり;
Y11が、各出現においてそれぞれ独立して、単結合または2価の有機基である。]
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照
異議決定日 2022-03-30 
出願番号 P2019-015682
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (C08G)
P 1 651・ 537- YAA (C08G)
P 1 651・ 121- YAA (C08G)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 杉江 渉
特許庁審判官 佐藤 健史
福井 悟
登録日 2021-02-16 
登録番号 6838614
権利者 ダイキン工業株式会社
発明の名称 フルオロ(ポリ)エーテル基含有シラン化合物  
代理人 澤内 千絵  
代理人 山田 卓二  
代理人 澤内 千絵  
代理人 式見 真行  
代理人 式見 真行  
代理人 吉田 環  
代理人 山田 卓二  
代理人 吉田 環  
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