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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  E04G
審判 全部申し立て 2項進歩性  E04G
管理番号 1385225
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-06-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-02-09 
確定日 2022-05-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第6916502号発明「外壁タイル用被膜の除去方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6916502号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6916502号の請求項1ないし3に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成30年10月3日に出願され、令和3年7月20日にその特許権の設定登録がされ、令和3年8月11日に特許掲載公報が発行され、その後、令和4年2月9日付けで特許異議申立人前田 健一(以下「申立人」という。)より、請求項1ないし3に係る特許に対して、特許異議の申立てがされたものである(特許異議申立書について、以下「申立書」という。)。

第2 本件発明
特許第6916502号の請求項1ないし3の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される、下記のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」等という。)。

「【請求項1】
イ)外壁タイル(1)の表面にタイル剥落防止用又は防水用として被覆した透明な被膜(3)に、アルコール系剥離剤(4)を塗布する剥離剤塗布工程。
ロ)前記アルコール系剥離剤(4)の塗布面に、コロナ放電処理した合成樹脂製シート(5)を密着させて、乾燥を防止する塗布面乾燥防止工程。
ハ)所定時間放置させ、前記アルコール系剥離剤(4)が前記被膜(3)に浸透されて、その被膜(3)を軟化させる被膜軟化工程。
ニ)所定時間後、前記合成樹脂製シート(5)を剥がすと、軟化した前記被膜(3)が前記合成樹脂製シート(5)に付着されて、その被膜(3)を除去させる被膜除去工程。
ホ)前記外壁タイル(1)と目地部(2)の表面を、高圧洗浄水で洗浄する洗浄工程。
少なくとも以上の工程を順次行うことを特徴とする外壁タイル用被膜の除去方法。

【請求項2】
前記剥離剤塗布工程に於いて、前記被膜(3)に前記アルコール系剥離剤(4)を塗布する際、ループローラーを用いた請求項1記載の外壁タイル用被膜の除去方法。

【請求項3】
前記塗布面乾燥防止工程に於いて、前記アルコール系剥離剤(4)の塗布面に前記合成樹脂製シート(5)を密着させる際、砂骨ローラーを用いた請求項1記載の外壁タイル用被膜の除去方法。」

第3 申立された取消理由の概要
申立人が主張する取消理由の概要は以下のとおりである。

1 特許法第29条第2項進歩性)(以下「取消理由1」という。)
本件発明1ないし3に係る特許は特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである旨主張し、その理由として以下のとおり主張している。

(1)本件発明1について
ア 本件発明1
「本件発明1を、その構成を区分して記載すると以下のようになる。
A:イ)外壁タイル(1)の表面にタイル剥落防止用又は防水用として被覆した透明な被膜(3)に、アルコール系剥離剤(4)を塗布する剥離剤塗布工程。
B:ロ)前記アルコール系剥離剤(4)の塗布面に、コロナ放電処理した合成樹脂製シート(5)を密着させて、乾燥を防止する塗布面乾燥防止工程。
C:ハ)所定時間放置させ、前記アルコール系剥離剤(4)が前記被膜(3)に浸透されて、その被膜(3)を軟化させる被膜軟化工程。
D:ニ)所定時間後、前記合成樹脂製シート(5)を剥がすと、軟化した前記被膜(3)が前記合成樹脂製シート(5)に付着されて、その被膜(3)を除去させる被膜除去工程。
E:ホ)前記外壁タイル(1)と目地部(2)の表面を、高圧洗浄水で洗浄する洗浄工程。
F:少なくとも以上の工程を順次行うことを特徴とする外壁タイル用被膜の除去方法。」(申立書第11頁4行〜最下行)

イ 甲第1号証に記載された発明
「甲第1号証には、本件発明1の構成の区分に倣い、以下のとおり甲1発明が記載されている。a:外壁タイル面にタイル剥落防止用として被覆されている透明塗膜に、塗膜柔軟剤「プラチナZ」を塗布する工程。
b:塗膜柔軟剤「プラチナZ」の塗布後、養生ビニールを貼り付ける工程。
c:24〜72時間養生し、透明塗膜を軟化・膨潤させる工程。
d:透明塗膜の軟化・膨潤を確認していることを確認し、高圧洗浄を用い壁面から養生ビニールを剥がし、透明塗膜を剥離する工程。
e:高圧洗浄で洗い流す工程。
f:以上の工程を順次行う既存防水層除去システム「YRKシステム」」(申立書第14頁8行〜19行)

ウ 対比
「本件発明1と甲1発明とを対比すると、下記一致点で一致し、下記相違点で相違する。

<一致点>
Aa:イ)外壁タイル(1)の表面にタイル剥落防止用として被覆した透明な被膜(3)に、アルコール系剥離剤(4)を塗布する剥離剤塗布工程。
Bb:ロ)前記アルコール系剥離剤(4)の塗布面に、合成樹脂製シート(5)を密着させて、乾燥を防止する塗布面乾燥防止工程。
Cc:ハ)所定時間放置させ、前記アルコール系剥離剤(4)が前記被膜(3)に浸透されて、その被膜(3)を軟化させる被膜軟化工程。
Dd:ニ)所定時間後、前記合成樹脂製シート(5)を剥がす被膜除去工程。
Ee:ホ)前記外壁タイル(1)の表面を、高圧洗浄で洗浄する洗浄工程。
Ff:少なくとも以上の工程を順次行うことを特徴とする外壁タイル用被膜の除去方法。

<相違点>
本件発明1のBについて、本件発明1の合成樹脂製シート(5)が コロナ放電処理しているのに対し、甲1発明の「養生ビニール」がコロナ放電処理されていることが記載されていない点で異なる。
本件発明1のDについて、本件発明1の被膜(3)が合成樹脂製シート(5)に付着されて除去されるのに対し、甲1発明の透明塗膜が養生ビニールに付着されて除去されるのかが記載されていない点で、 文言上異なる。
本件発明1のEについて、本件発明1の高圧洗浄は、水を用い、外壁タイル(1)と目地部(2)の表面を洗浄するのに対し、甲1発明の高圧洗浄は、水を用いていることと、外壁タイルと目地部の表面を洗浄していることとが記載されていない点で文言上異なる。」(申立書第14頁21行〜15頁12行)

エ 検討
(ア)「本件発明1のBと、甲1発明のbとは、本件発明1の合成樹脂製シート(5)がコロナ放電処理しているのに対し、甲1発明の「養生ビニール」がコロナ放電処理されていることが記載されていない点で異なる。
しかしながら、本件特許の出願時において、塗装面に対するマスキングや養生用のプラスチックについて、当該プラスチックの物性を制御するために、コロナ放電処理を施すことは従来周知である。
例えば、特開平10−165862号公報(甲第2号証)では、作業性や製造性を改良するために、コロナ放電処理が施された塗装用マスキングフィルムを用いることが記載されている(請求項5及び8、【0002】、【0005】〜【0007】)。
また、特開平3−42066号公報(甲第3号証)では、表面に付着した塗料の飛散を防ぐために、前記特定の範囲のぬれ張力となるようにコロナ放電処理を行ったポリオレフィンフィルムをマスキング用フィルムが記載されている(特許請求の範囲(1)、2頁右下欄5〜9行)。
さらに、特開2000-191992号公報(甲第4号証)では、被塗装面以外の周辺部に塗料を飛散付着させず、しかも塗料を吹きける際の噴射により被塗装面周辺の塵埃を飛散させずに塗装するために、合成樹脂製のラミネート部がコロナ放電処理を施したポリエチレンであるマスキングテープを用いることが記載されている(請求項1及び3、【0012】)。
よって、甲1発明の「養生ビニール」に、コロナ放電処理されているものを適用することは、当業者であれば容易に想到することである。」(申立書第15頁19行〜16頁6行)

(イ)「本件発明1のDと、甲1発明のdとは、本件発明1の被膜(3)が 合成樹脂製シート(5)に付着されて除去されるのに対し、甲1発明の透明塗膜が養生ビニールに付着されて除去されるのかが記載されていない点で、文言上異なる。
しかしながら、甲1発明において、高圧洗浄を伴っているとはいえ 透明塗膜に貼り付けられている養生ビニールを剥がすことによって、軟化・膨潤した透明塗膜の少なくとも一部が養生ビニールに付着されて除去されることは当然の作用であるに過ぎない。
よって、本件発明1のDと、甲1発明のdとは一致する。」(申立書第18頁18行〜26行)

(ウ)「本件発明1のEと、甲1発明のeとは、本件発明1の高圧洗浄は、水を用い、外壁タイル(1)と目地部(2)の表面を洗浄するのに対し、甲1発明の高圧洗浄は、水を用いていることと、外壁タイルと目地部の表面を洗浄していることとが記載されていない点で文言上異なる。
しかしながら、本件特許の出願時における技術常識からは、甲1発明において、外壁タイルに対する高圧洗浄として水を用いることは技術常識であるため、甲1発明の高圧洗浄は、水を用いていることは明らかである。また、甲1発明において、透明塗膜が除去された外壁タイルは、外壁タイルと目地部の表面が露出するため、高圧洗浄が外壁タイルと目地部の表面を洗浄していることは当然の作用であるに過ぎない。
よって、本件発明1のEと、甲1発明のeとは一致する。」(申立書第18頁27行〜19頁3行)

(エ)「よって、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。」(申立書第19頁5行〜6行)

(2)本件発明2について
「本件発明2の構成を以下のとおり記載する。
G:前記剥離剤塗布工程に於いて、前記被膜(3)に前記アルコール系剥離剤(4)を塗布する際、ループローラーを用いた請求項1記載の外壁タイル用被膜の除去方法。

本件発明2と甲1発明とは、本件発明2のGは、前記アルコール系剥離剤(4)を塗布する際、ループローラーを用いているのに対して、甲1発明は、外壁塗膜に塗膜柔軟剤「プラチナZ」を塗布する際、砂骨ローラーを用いている点で相違する。
しかしながら、本件発明2において、アルコール系剥離剤(4)を塗布する際、ループローラーを用いていることは単にアルコール系剥離剤(4)を厚く塗布し、効率よく被膜(3)に浸透させるための設計事項に過ぎない(【0011】)。甲1発明において、塗膜柔軟剤「プラチナZ」を塗布する際、砂骨ローラーを用いていることは、透明塗膜を充分に軟化?膨潤させるために必要な塗布量が、砂骨ローラーを用いて塗布することによって確保することができていた。また、一般に、厚く塗布するためには、塗布する速度を遅らせることでも調整可能である。つまり、甲1発明を基に、透明塗膜をより厚く塗布するために、砂骨ローラーから、繊維をループ状に植毛したローラーである公知のループローラーに適宜変更する程度のことは、当業者あれば容易に想到することである。
よって、本件発明2は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。」(申立書第19頁8行〜下から4行)

(3)本件発明3について
「本件発明3の構成を以下のとおり記載する。
H:前記塗布面乾燥防止工程に於いて、前記アルコール系剥離剤(4)の塗布面に前記合成樹脂製シート(5)を密着させる際、砂骨ローラーを用いた請求項1記載の外壁タイル用被膜の除去方法。

本件発明3と甲1発明とは、本件発明3のHは、合成樹脂製シート(5)をアルコール系剥離剤(4)の塗布面に密着させる際、砂骨ローラーを用いているのに対して、甲1発明は、養生ビニールを貼り付ける手段を特定していない点で相違する。
しかしながら、本件発明3において、合成樹脂製シート(5)をアルコール系剥離剤(4)の塗布面に密着させる際、砂骨ローラーを用いていることは単にアルコール系剥離剤(4)を被膜(3)に対して均一に加圧させるための設計事項に過ぎない(【0012】)。甲1発明において、養生ビニールを塗布する際、均一に加圧するために、塗膜柔軟剤「プラチナZ」を塗布する際にも用いた砂骨ローラー又はそれと同様の砂骨ローラーを使用する程度のことは、当業者あれば容易に想到することである。
よって、本件発明3は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。」(申立書第19頁下から2行〜20頁16行)

2 特許法第36条第4項第1号実施可能要件)又は同条第6項第1号(サポート要件)(以下「取消理由2」という。)
本件発明1ないし3に係る特許は特許法第36条第4項第1号又は同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである旨主張し、その理由として以下のとおり主張している。

(1)特許法第36条第4項第1号実施可能要件)について
ア 本件発明1、本件特許の実施形態、本件特許の課題について
「本件発明1は、外壁タイル用被膜の除去方法において、「タイル剥落防止用又は防水用として被覆した透明な被膜(3)」、「アルコール系剥離剤(4)」、及び「コロナ放電処理した合成樹脂製シート(5)」が用いられている。
また、本件特許の実施形態では、被膜(3)として、下塗りとして塗布したアクリルシリコン系樹脂のシーラーの膜と、中塗りとして塗布した剥落防止材であるナイロン繊維入りで且つ透明なアクリル樹脂の膜と、仕上げとして塗布した透明なアクリル樹脂の膜などの少なくとも3層からなる積重被膜、アルコール系剥離剤(4)として、「プラチナZ」(ヤグチ技工社、タイル面透明塗膜剥離除去専用柔軟剤)、及び合成樹脂製シート(5)として、ポリエチレンビニール及び高密度ポリエチレンが開示されている(【0014】〜【0016】、図2)。また、アルコール系剥離剤(4)は、被膜(3)を溶解せず、下地まで浸透させ、被膜(3)全体を膨張させて軟化するものであることが説明されている(【0015】)。
ここで、本件特許の課題は、被膜を剥離させて除去する際、その被膜がきれいに且つ容易に除去できることであり(【0007】)、本件発明は、外壁タイル(1)の表面に被覆された被膜(3)に、被膜 (3)を軟化するアルコール系剥離剤(4)を塗布し、コロナ放電処理した合成樹脂製シート(5)を密着させた後、合成樹脂製シート (5)に付着した被覆(3)を除去することを必須構成としている (【請求項1】)。」(申立書第20頁23行〜21頁9行)

イ 「透明な被膜(3)」について
「しかしながら、請求項1の「透明な被膜(3)」には、アルコール系有機溶剤に常温で溶解せず、膨潤性を示すアクリル系樹脂からなる被膜に限定されず、アルコール系有機溶剤に対して、溶解する樹脂 (例えば軟質の塩化ビニル樹脂)や、溶解せず膨潤性も示さない材質 (例えばポリカーボネートやガラス)からなる被膜も含まれる。なお、このことは、各プラスチックの耐薬品性一覧(甲第5号証)のブチルアルコールに対する耐性(6頁)を参照すると、軟質の塩化ビニル樹脂がアルコール系薬剤への耐性が低く、ポリカーボネートがアルコール系薬剤への耐性が高く、アクリル系樹脂のアルコール系薬剤への耐性がそれらの中間にあることからも裏付けられている。
請求項1の「透明な被膜(3)」に、アルコール系有機溶剤に対して、溶解する樹脂(例えば軟質の塩化ビニル樹脂)からなる被膜を用いた場合には、被膜(3)全体が合成樹脂製シート(5)に付着することは困難であり、合成樹脂製シート(5)に付着した被膜(3)の一部のみが外壁タイル(1)の表面から剥がれ、外壁タイル(1)の表面に被膜(3)の一部が残存し、本件特許の課題を解決することは 困難である。一方、請求項1の「透明な被膜(3)」に、アルコール系有機溶剤に対して、溶解せず膨潤性も示さない材質(例えばポリカーボネートやガラス)からなる被膜を用いた場合には、被膜(3)が合成樹脂製シート(5)に付着すること自体が困難であり、外壁タイル(1)の表面に被膜(3)が残存し、本件特許の課題を解決することは困難である。」(申立書第21頁26行〜22頁10行)

ウ 「合成樹脂製シート(5)」について
「また、請求項1の「合成樹脂製シート(5)」には、ポリエチレンビニール及び高密度ポリエチレンからなるシートに限定されず、合成樹脂からなるシート全般が含まれる。しかし、例えば「透明な被膜(3)」にアクリル系樹脂からなる被膜(3)に対して、剥離性の高い合成樹脂(例えばフッ素系樹脂)製シートを用いた場合には、被膜(3)が合成樹脂製シート(5)に付着すること自体が困難であり、 外壁タイル(1)の表面に被膜(3)が残存し、本件特許の課題を解決することは困難である。」(申立書第22頁11行〜18行)

エ 「アルコール系剥離剤(4)」について
「さらに、請求項1の「アルコール系剥離剤(4)」には、「プラチナZ」(ヤグチ技工社)に限定されず、アルコールを含む剤全般が含まれる。また、「プラチナZ」に含まれるアルコール成分として、具体的にどのようなアルコールの種類が含まれているのかが不明である。よって、「プラチナZ」がどのようなアルコールを含むものであるのか、それが水とどのような割合で含まれているのか、アルコールや水 以外にどのような成分を含むものであるか等、その組成が何ら開示されていないため、どのような「アルコール系剥離剤(4)」を用いれば本件発明の課題を解決し得るかが、本件特許明細書に裏付けられておらず、当業者であっても理解できない。
なお、ヤグチ技工社が執筆した甲第1号証の「プラチナZ」に係る記載を参照しても、「プラチナZ」がどのようなアルコールを含むものであるのか、それが水とどのような割合で含まれているのか、アルコールや水以外にどのような成分を含むものであるか等、その組成は全く不明である。」(申立書第22頁26行〜23頁2行)

オ 小括
「したがって、本件特許の詳細な説明には、当業者が出願時の技術常識を考慮しても、「透明な被膜(3)」にアクリル系樹脂からなる被膜以外の被膜を用いた場合、「合成樹脂製シート(5)」にポリエチレンビニール及び高密度ポリエチレンからなるシート以外の合成樹脂製シートを用いた場合、並びに「アルコール系剥離剤(4)」に「プラチナZ」(ヤグチ技工社)以外のアルコール系剥離剤を用いた場合に、本件発明1〜3を実施できる程度に明確かつ十分に説明されているとはいえない。」(申立書第23頁3行〜10行)

(2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
「上記で説明したとおり、本件特許明細書には、「透明な被膜(3)にアクリル系樹脂からなる被膜以外の被膜を用いた場合、「合成樹脂製シート(5)」にポリエチレンビニール及び高密度ポリエチレンからなるシート以外の合成樹脂製シートを用いた場合、並びに「アルコール系剥離剤(4)」に「プラチナZ」(ヤグチ技工社)以外のアルコール系剥離剤を用いた場合についての実施の形態が具体的に記載されていないため、「透明な被膜(3)」にアクリル系樹脂からなる被膜以外の被膜を用いた場合、「合成樹脂製シート(5)」にポリエチレンビニール及び高密度ポリエチレンからなるシート以外の合成樹脂製シートを用いた場合、並びに「アルコール系剥離剤(4)」に「プラチナZ」(ヤグチ技工社)以外のアルコール系剥離剤を用いた場合の実施の形態に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
よって、本件発明1〜3は、発明の詳細な説明に記載したものでない。」(申立書第23頁12行〜26行)

3 特許法第36条第6項第2号明確性)(以下「取消理由3」という。)
本件発明1ないし3に係る特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである旨主張し、その理由として以下のとおり主張している。

(1)洗浄工程において洗浄によって除去する対象について
「本件特許の請求項1には、洗浄工程において「外壁タイル(1)と目地部(2)の表面を、高圧洗浄水で洗浄する」の表現が記載されている。この点、請求項1には、被膜除去工程において「その被膜(3)を除去させる」とあり、請求項の記載を参照する限り、外壁タイル(1)と目地部(2)の表面には被膜(3)が存しないため、洗浄工程において洗浄によって除去する対象が理解できない。
ここで、本件特許明細書を参照すると、洗浄工程において洗浄によって除去する対象は、被膜(3)の残部であってもよいと記載されている(【0020】)ため、外壁タイル(1)と目地部(2)の表面には被膜(3)が残存しているとも理解できる。一方、被膜除去工程において「被膜(3)が合成樹脂製シート(5)へ確実に付着して剥離されるものとなる」との記載もあり(【0021】)、外壁タイル(1)と目地部(2)の表面には被膜(3)が存しないとも理解できる。また、仮に外壁タイル(1)と目地部(2)の表面には被膜(3)が存しない場合には、洗浄工程において洗浄によって除去する対象が理解できない。
つまり、本件発明には、外壁タイル(1)と目地部(2)の表面には被膜(3)が存する場合があるのかが不明確であるため、洗浄工程において洗浄によって除去する対象が理解できない。したがって、本件発明1は、発明特定事項の技術的意味を当業者が理解できず、さらに、発明特定事項が不足していることが明らかであるため、発明が不明確となる。」(申立書第23頁下から10行〜24頁12行)

(2)「アルコール系剥離剤(4)」について
「また、本件特許の請求項1には、「アルコール系剥離剤(4)」の表現が記載されている。しかしながら、特に「アルコール系」の表現が記載されていることにより、その剤に含まれるアルコールとして、 例えば一級アルコールに限定されず、一以上のヒドロキシル基を有する広範な化合物が含まれると理解でき、また「アルコール系」がアルコールに類似する成分を含むとも理解できる。以上のとおり、範囲を不確定とさせる表現「系」がある結果、発明が不明確である。」(申立書第24頁13行〜19行)

[証拠方法]
甲第1号証:(株)ヤグチ技工 矢口信也、「地震発生でタイル外壁を落とさない技術 外壁タイル面の透明塗膜を除去し再塗膜した集合住宅の改修工事事例」、月刊防水ジャーナル、Vol.46 No.12(2015年12月号)、2015年12月5日、pp.52−53
甲第2号証:特開平10−165862号公報
甲第3号証:特開平3−42066号公報
甲第4号証:特開2000−191992号公報
甲第5号証:「プラスチック耐油性・耐溶剤性・耐薬品性一覧表」
(華陽物産(株)のウエブサイトの
URL:https://kayo-corp.co.jp/common/pdf/pla_proof.pdf
より申立人が令和4年2月3日に出力したとする写し)

第4 当審の判断
1 各甲号証の記載事項
(1)甲第1号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証には、以下の記載がある(決定で下線を付した。以下同様。)。

ア 「はじめに
改修時におけるタイル貼り仕上げ外壁のタイル剥落防止対策として,透明塗膜材・工法が 全国で施工されるようになってから,10年を迎え,そろそろ2回目の改修時期となってきた。
透明塗膜は10年も過ぎると,背面水や紫外線,躯体のひび割れ等により,剥がれや白濁などの劣化現象が見られる場合がある。2回目以降の改修では,安全性はもちろん美観性の観点からも新たに塗膜をかぶせるのではなく,除去してタイル面に直接施工するのが望ましいが,タイルに傷を付けずに既存塗膜を剥がす方法は確立されていない。
例えば,ケレン工具で直接もしくは剥離剤で浮かせた後に工具で剥がすのではタイル表面を痛める可能性があり,また剥離剤を使用する場合でも技能員1人あたり1〜2m2/日程度しか剥がせないため,あまり現実的ではない。
そこで当社は環境対応型柔軟剤と高圧洗浄機で既存塗膜を除去する方法を開発,改修工事を行ったので,ここで報告したい。」(第52頁左欄1行〜右欄5行)

イ 「工事概要
工事名称:S集合住宅改修工事
所在地:静岡県沼津市
施工時期:2015年9月
構造・部位:RC造地上6階・外壁タイル面
使用工法:既存塗膜除去システム「YRKシステム」+外壁タイル剥落防止工法「プラチナコートUP工法」

工事詳細・工事採用の経緯
既存外壁タイルは,第1回改修時に透明塗膜を施工後11年が過ぎ, 屋上天端から雨水の侵入が多少あり,タイル面が白濁している箇所があった。特に目地部には劣化が目立った。
同工法は環境対応型柔軟剤と高圧洗浄により既存塗膜を除去した後, 特殊1成分形ウレタン樹脂積層塗りとステンレスアンカーピンによりタイル剥落を防止する工法である。耐候性が高いこと,仕上がり透明度が高く,白濁した既存塗膜を除去後に施工するため外壁の美観性が向上することから,同工法が採用された。

工法の特徴・施工工程
同柔軟剤は,一般的な塗膜剥離剤に含まれているメチレンクロライドを含まない非塩素系で,揮発性の高い有機溶剤を配合していないため,刺激が少ない。また,作業時の安全性が高く,環境にも配盧している。
使用する高圧洗浄機は,圧力120〜150kg程度と全国で一般的な規格の機器で施工できる。
同工法はこて塗り+砂骨ローラーによる熟練技能が必要だった従来工法に比べ,ウールスモールローラーのみで仕上げることができるため,工期の短縮,仕上がりの安定に貢献する。
施工工程を表−1に示す。」(第52頁右欄6行〜53頁左欄14行)

ウ 「写真−2 砂骨ローラーで塗膜柔軟材をm2あたり0.3〜0.5kg塗布し, 約2時間後にもう一度同量を塗布する。塗布後直ちに養生ビニールを塗膜柔軟材に貼り付け24〜72時間放置する。」(第5頁左欄下)

エ 「写真−3 高圧洗浄を用い圧力120〜150kg程度で壁面から10〜15cm程度離して剥がしてゆく(充分既存塗膜が軟化膨潤していることを確認し養生ビニールを剥がす)」(第5頁右欄上)

オ 表−1は次のものである。



表1の「施工工程」の「1」には「砂骨ローラーで塗膜柔軟剤「プラチナZ」塗布」と、また同「4」には「残ったプライマーをペーパーで目粗しした後,高圧洗浄(120〜150kg程度)で洗い流す」と記載されている。

カ 上記アないしオより、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

[甲1発明]
(a)外壁タイル面にタイル剥落防止対策として施工した既存の透明塗膜に、砂骨ローラーで塗膜柔軟剤「プラチナZ」を塗布する工程。
(b)塗膜柔軟剤「プラチナZ」の塗布後養生ビニールを塗膜柔軟剤に貼り付け養生する工程。
(c)24〜72時間放置して、充分既存塗膜を軟化膨潤させる工程。
(d)充分既存塗膜が軟化膨潤していることを確認し養生ビニールを剥がす工程及び壁面から10〜15cm程度の位置で高圧洗浄(圧力120〜150kg)し、既存塗膜を剥離させる工程。
(e)残ったプライマーをペーパーで目粗しした後、高圧洗浄(120〜150kg程度)で洗い流す工程。
の工程を順次行う、柔軟剤と高圧洗浄機で外壁タイルの既存塗膜を除去する方法。

(2)甲第2号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第2号証には、以下の記載がある。

ア 「【請求項5】帯電防止剤を配合したポリオレフィン系樹脂組成物からなるチューブラーフィルムを長手方向に切り開いたフィルム内面の端縁部に粘着テープがその粘着剤層の一部が重なるように貼合され、該粘着テープが貼合されたフィルム以外の少なくとも一部が長手方向にほぼ平行に折りたたまれており、そして上記フィルムを長手方向に沿ってロール状に巻回してなる帯電防止性塗装用マスキングフィルム。」

イ 「【請求項8】内面および外面のいずれか一方または両方にコロナ放電処理が施され処理面の濡れ張力が40dyn/cm以上であるチューブラーフィルム、または少なくとも一方の面にコロナ放電処理が施され処理面の濡れ張力が40dyn/cm以上であるフィルムが使用される請求項5ないし7のいずれか1項に記載の帯電防止性塗装用マスキングフィルム。」

ウ 「【0002】
【従来の技術】各種建築物、道路、運動場、駐車場、自動車、車両、各種物品等には美観を与えるためや、マーク、規則、説明を表示するために種々の塗装が施される。この場合、塗装部分と非塗装部分を容易に分割するため、非塗装部分に紙、合成紙、不織布、プラスチックフィルム等を被覆し、その表面に塗料が直接付着したり、塗装部分より塗料が移動して付着しても非塗装部分には直接接触せず、紙、合成紙、不織布、プラスチックフィルム等の表面で受け取り、非塗装部分を塗料から遮蔽・保護する。この機能を果たす上記紙等のフィルムを塗装用マスキングフィルムと呼称している。」

エ 「【0005】また、本発明者は、インフレーション法により製造したチューブラーフィルムの内面にコロナ放電処理を施して、それを折りたたみ、切り開いて粘着テープを貼合することにより、製造性が格段に改善され、かつ、粘着テープの粘着剤側にフィルムを折りたたむことなく作業性にすぐれた塗装用マスキングフィルムおよびその製法を開発した(特許第2514899号公報)。上記したように、塗装用マスキングフィルムは各種のタイプのものがあるが、現在最も多く製造販売されているのは、ポリオレフィン系樹脂を主たる原料とし、インフレーション法にて薄いチューブラーフィルムを製造し、これを切り開き、折りたたみ、フィルムの一端縁に粘着テープを貼合し、ロール状に巻いたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ポリオレフィンの薄いフィルムは高速で製造される際に、ダイ、マンドレル、ロール等と接触し、静電気を帯びることが多い。また、塗装用マスキングフィルムは、塗料を吸着し、液だれを防止したり、塗料が乾燥したときフィルムから剥離し、周囲の環境を汚さないようにするため、チューブラーフィルムの外面および内面の少なくとも一方にコロナ放電処理を行うことがあり、これによってもポリオレフィンの薄いフィルムは強く静電気を帯びることがある。上記のように、チューブラーフィルムないしは平坦フィルムが帯電すると、マスキングフィルムの製造工程において、チューブラーフィルム同士がくっついたり、まとわりつくことがあり、製造を中断したり、また不良品になったりする弊害がある。
【0007】特に製品形態をコンパクトにするために、チューブラーフィルムないしは平坦フィルムを幾重にも折りたたむ作業を行う場合、該フィルムが帯電していると、この作業が困難となる。また、できあがった製品が帯電していると、埃を吸着し、塗装時に塗装面を汚したり、ロールを巻き戻し、折りたたまれたフィルムを展開させるとき、フィルム同士がくっつき、展開作業がスムースに進行せず、作業能率が低下したり、また、塗装現場の養生作業において、対象物にフィルムが静電気により吸着し、養生作業が困難になったりすることがある。従って、本発明は静電気を帯びにくい、ないしは帯びない、すなわち帯電防止性の塗装用マスキングフィルムおよびその製法、そして該マスキングフィルムを製造するためのチューブラーフィルムの提供を課題とする。」

(3)甲第3号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第3号証には、以下の記載がある。

ア 「2.特許請求の範囲
(1)少なくとも片面がコロナ放電処理され、該コロナ放電処理面が40ダイン/cm以上のぬれ張力を有するポリオレフィンフィルムよりなることを特徴とする塗装マスキング用フィルム。」

イ 「従来、コロナ放電処理は、主としてポリオレフィンの接着、ラミネート、印刷性改良等のために行なわれているが、これらの特性改良効果とコロナ放電劣化等との関連から、通常、ぬれ張力が38ダイン/cm前後かそれ以下となるように処理が行なわれている。また、マスキング用フィルムにおいて、ポリエステル基材と粘着剤との接着力向上のため、基材のポリエステルフィルムに予めコロナ処理を行なうことも公知である(特開昭61−250082号)。しかしながら、表面に付着した塗料の飛散を防ぐために、前記特定の範囲のぬれ張力となるようにコロナ放電処理を行なったポリオレフィンフィルムをマスキング用フィルムとすることは、未だ提案されていない。」(第2頁左下欄16行〜右下欄9行)

(4)甲第4号証
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第4号証には、以下の記載がある。

ア 「【請求項1】 帯状のクラフト紙の一表面に合成樹脂をラミネートして構成されたマスキングテープ本体に、前記帯状のクラフト紙の他表面の縁部に粘着テープをその一部が外側に張り出すように貼り付けて構成されてなるマスキングテープ。」

イ 「【請求項3】 前記合成樹脂製のラミネート部がコロナ放電処理を施したポリエチレンであることを特徴とする請求項1又は2に記載のマスキングテープ。」

ウ 「【0012】この発明の目的は、このような従来の問題点を解決するためになされたもので、例えば自動車などにおける構成要素単体(部品)を取り外すことなく、その表面を塗装する際に、被塗装面以外の周辺部に塗料を飛散付着させず、しかも塗料を吹きける際の噴射により被塗装面周辺の塵埃を飛散させずに塗装するマスキングテプ及びこのテープを用いたマスキグ方法を提供することにある。」

(5)甲第5号証
本件特許の出願後である令和4年2月3日に申立人が出力したとする写しである甲第5号証には、以下の記載がある。

ア 甲第5号証は「プラスチック耐油性・耐溶剤性・耐薬品性一覧」の表であるところ、そのうち6枚目には「油・溶剤・薬品」として「ブチルアルコール(ブタノール)」は、樹脂として「軟質」の「塩化ビニル樹脂」に対して「×」と記載され、「ポリカーボネート」に対して「○」と記載され、「メタクリル(アクリル)」に対して「△」と記載されている。

イ 表中の「◎」、「〇」、「△」、「×」の記号について、7枚目の表の欄外(表の下)に以下のとおり記載されている。



2 取消理由1(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。

(ア)甲1発明の「外壁タイルの既存塗膜を除去する方法」は、本件発明1の「外壁タイル用被膜の除去方法」に相当する。

(イ)甲1発明の「外壁タイル面にタイル剥落防止対策として施工された既存の透明塗膜」は、本件発明1の「外壁タイル(1)の表面にタイル剥落防止用」「として被覆した透明な被膜(3)」に相当する。
また本件特許の明細書における「【0015】(4)はアルコール系剥離剤であり、該アルコール系剥離剤(4)としては、例えば、発売元の株式会社ヤグチ技工の商品名プラチナZ(タイル面透明塗膜剥離除去専用柔軟剤)を用いるのが好ましい。尚、前記アルコール系剥離剤(4)は、被膜(3)を溶解せず、下地まで浸透させ、被膜(3)全体を膨張させて軟化するものであれば、他の剥離剤でも良い。」(決定で下線を付した。)との説明を踏まえると、甲1発明で「既存塗膜を軟化膨潤」させている「塗膜柔軟剤「プラチナZ」」は、本件発明1の「アルコール系剥離剤(4)」に相当する。
よって、甲1発明の「(a)外壁タイル面にタイル剥落防止対策として施工された既存の透明塗膜に、砂骨ローラーで塗膜柔軟剤「プラチナZ」を塗布する工程。」は、本件発明1の「イ)外壁タイル(1)の表面にタイル剥落防止用」「として被覆した透明な被膜(3)に、アルコール系剥離剤(4)を塗布する剥離剤塗布工程。」に相当する。

(ウ)甲1発明の「(b)塗膜柔軟剤「プラチナZ」の塗布後養生ビニールを塗膜柔軟剤に貼り付け養生する工程。」は、本件発明1の「ロ)前記アルコール系剥離剤(4)の塗布面に、コロナ放電処理した合成樹脂製シート(5)を密着させて、乾燥を防止する塗布面乾燥防止工程。」とは、「前記アルコール系剥離剤(4)の塗布面に、合成樹脂製シート(5)を密着させる工程。」である点で共通する。

(エ)甲1発明の「(c)24〜72時間放置して、充分既存塗膜を軟化膨潤させる工程。」は、本件発明1の「ハ)所定時間放置させ、前記アルコール系剥離剤(4)が前記被膜(3)に浸透されて、その被膜(3)を軟化させる被膜軟化工程。」に相当する。

(オ)甲1発明の「(d)充分既存塗膜が軟化膨潤していることを確認し養生ビニールを剥がす工程及び壁面から10〜15cm程度の位置で高圧洗浄(圧力120〜150kg)し、既存塗膜を剥離させる工程。」と、本件発明1の「ニ)所定時間後、前記合成樹脂製シート(5)を剥がすと、軟化した前記被膜(3)が前記合成樹脂製シート(5)に付着されて、その被膜(3)を除去させる被膜除去工程。」及び「ホ)前記外壁タイル(1)と目地部(2)の表面を、高圧洗浄水で洗浄する洗浄工程。」とは、「所定時間後、前記合成樹脂製シート(5)を剥がす工程」及び「前記外壁タイル(1)の表面を、高圧洗浄水で洗浄する洗浄工程。」である点で共通する。

(カ)前記(ア)ないし(オ)から、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも「A)外壁タイル(1)の表面にタイル剥落防止用として被覆した透明な被膜(3)に、アルコール系剥離剤(4)を塗布する剥離剤塗布工程。」、「B)前記アルコール系剥離剤(4)の塗布面に、合成樹脂製シート(5)を密着させる工程。」、「C)所定時間放置させ、前記アルコール系剥離剤(4)が前記被膜(3)に浸透されて、その被膜(3)を軟化させる被膜軟化工程。」、及び「D)所定時間後、前記合成樹脂製シート(5)を剥がす工程及び前記外壁タイル(1)の表面を、高圧洗浄水で洗浄する洗浄工程。」を行う外壁タイル用被膜の除去方法である点で一致するのみならず、それら「A)」、「B)」、「C)」、「D)」の工程を順に行うものである点でも一致する。
よって、本件発明1と甲1発明とは

[一致点]
「A)外壁タイル(1)の表面にタイル剥落防止用として被覆した透明な被膜(3)に、アルコール系剥離剤(4)を塗布する剥離剤塗布工程。
B)前記アルコール系剥離剤(4)の塗布面に、合成樹脂製シート(5)を密着させる工程。
C)所定時間放置させ、前記アルコール系剥離剤(4)が前記被膜(3)に浸透されて、その被膜(3)を軟化させる被膜軟化工程。
D)所定時間後、前記合成樹脂製シート(5)を剥がす工程及び前記外壁タイル(1)の表面を、高圧洗浄水で洗浄する洗浄工程。
少なくとも以上の工程を順次行う外壁タイル用被膜の除去方法。」

の点で一致し、そして以下の点で相違する。

[相違点1] 本件発明1においては「アルコール系剥離剤(4)の塗布面」に密着させる「合成樹脂製シート(5)」が「コロナ放電処理」され、「合成樹脂製シート(5)」を剥がす工程が「軟化した前記被膜(3)が前記合成樹脂製シート(5)に付着されて、その被膜(3)を除去させる被膜除去」工程とされているのに対して、甲1発明ではそのような特定はされていない点。

[相違点2] 本件発明1においては「アルコール系剥離剤(4)の塗布面に」「合成樹脂製シート(5)を密着」させる工程が「乾燥を防止する塗布面乾燥防止」工程とされているのに対して、甲1発明ではそのような特定はされていない点。

[相違点3] 本件発明1の「洗浄工程」においては外壁タイル(1)と「目地部(2)」の表面を洗浄するとされ、また高圧洗浄「水」で洗浄するとされているのに対し、甲1発明の「高圧洗浄(圧力120〜150kg)」では目地部の洗浄についての特定はされておらず、また水による洗浄との明示もない点。

[相違点4] 本件発明1においては「ニ)所定時間後、前記合成樹脂製シート(5)を剥がすと、軟化した前記被膜(3)が前記合成樹脂製シート(5)に付着されて、その被膜(3)を除去させる被膜除去工程。」と「ホ)前記外壁タイル(1)と目地部(2)の表面を、高圧洗浄水で洗浄する洗浄工程。」を「順次行う」とされているのに対し、甲1発明では「充分既存塗膜が軟化膨潤していることを確認し養生ビニールを剥がす工程」と「壁面から10〜15cm程度の位置で高圧洗浄(圧力120〜150kg)し、既存塗膜を剥離させる工程」の順序が明示されていない点。

イ 判断
(ア)検討
まず相違点1について検討する。
甲第1号証全体をみても、「養生ビニール」にコロナ放電処理もしくは密着性を高める処理をして養生ビニールを剥がす際軟化膨潤した既存塗膜を養生ビニールに付着させ除去することは記載も示唆もされていない。
また甲第2号証ないし甲第4号証をみても、上記1の(2)、(3)、(4)でそれぞれ摘記したように塗装のマスキングについて開示するものであって、コロナ放電処理を行って剥がす際に既存塗膜を付着させ除去することの記載あるいは示唆はなく、すなわち相違点1に係る本件発明1の構成は記載も示唆もされていない。
よって、相違点1に係る本件発明1の構成は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到することができたものではない。

(イ)申立人の主張について
上記第3の1(1)エ(ア)で摘記したように、申立人は申立書において
「しかしながら、本件特許の出願時において、塗装面に対するマスキングや養生用のプラスチックについて、当該プラスチックの物性を制御するために、コロナ放電処理を施すことは従来周知である。
例えば、特開平10−165862号公報(甲第2号証)では、作業性や製造性を改良するために、コロナ放電処理が施された塗装用マスキングフィルムを用いることが記載されている」
「また、特開平3−42066号公報(甲第3号証)では、表面に付着した塗料の飛散を防ぐために、前記特定の範囲のぬれ張力となるようにコロナ放電処理を行ったポリオレフィンフィルムをマスキング用フィルムが記載されている」
「さらに、特開2000-191992号公報(甲第4号証)では、被塗装面以外の周辺部に塗料を飛散付着させず、しかも塗料を吹きける際の噴射により被塗装面周辺の塵埃を飛散させずに塗装するために、合成樹脂製のラミネート部がコロナ放電処理を施したポリエチレンであるマスキングテープを用いることが記載されている」
「よって、甲1発明の「養生ビニール」に、コロナ放電処理されているものを適用することは、当業者であれば容易に想到することである。」
と主張している。しかし上記(ア)で説示したように甲第2号証ないし甲第4号証は塗装のマスキングについて開示するものであって既存塗膜の除去におけるコロナ放電処理の適用についての記載あるいは示唆はなく、甲第2号証ないし甲第4号証の記載に接した当業者といえどもコロナ放電処理を甲1発明に適用することに動機付けはないから 当業者が甲第2号証ないし甲第4号証記載の発明を甲1発明に適用して相違点1に係る本件発明1の構成に容易に到達する論理付けができるものではない。
以上のように、申立人の主張を採用することはできない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は当業者が甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、それぞれ、本件発明1の構成をすべて含み、更に減縮したものであるから、上記(1)と同様の理由により、当業者が甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

(3)小括
したがって、本件発明1ないし3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、申立理由1により特許を取り消すことはできない。

3 取消理由2(実施可能要件又はサポート要件)について
(1)実施可能要件について
ア 特許法第36条第4項第1号の考え方について
一般に「方法の発明における発明の実施とは,その方法の使用をすることをいい(特許法2条3項2号),物の発明における発明の実施とは,その物を生産,使用等をすることをいうから(同項1号),方法の発明については,明細書にその方法を使用できるような記載が,物の発明については,その物を製造する方法についての具体的な記載が,それぞれ必要があるが,そのような記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその方法を使用し,又はその物を製造することができるのであれば,上記の実施可能要件を満たすということができる。」とされている〔平成22年(行ケ)10348号判決参照。〕。
以下、この観点に立って検討する。

イ 検討
(ア)「透明な被膜(3)」について
本件特許の明細書には、
「【0014】
本発明の実施形態を図1、図2に基づいて説明する。(1)は外壁に貼着された外壁タイルであり、(2)は目地部である。(3)は外壁タイル(1)と目地部(2)の表面に塗布したタイル剥落防止用又は防水用の透明な被膜であり、該被膜(3)は、下塗りとして塗布したアクリルシリコン系樹脂のシーラーの膜と、中塗りとして塗布した剥落防止材であるナイロン繊維入りで且つ透明なアクリル樹脂の膜と、仕上げとして塗布した透明なアクリル樹脂の膜などが積重されている。尚、防水用被膜(3)にはナイロン繊維の剥落防止材が入れられていない。
【0015】
(4)はアルコール系剥離剤であり、該アルコール系剥離剤(4)としては、例えば、発売元の株式会社ヤグチ技工の商品名プラチナZ(タイル面透明塗膜剥離除去専用柔軟剤)を用いるのが好ましい。尚、前記アルコール系剥離剤(4)は、被膜(3)を溶解せず、下地まで浸透させ、被膜(3)全体を膨張させて軟化するものであれば、他の剥離剤でも良い」
「【0018】
ハ)所定時間放置させ、前記アルコール系剥離剤(4)が被膜(3)に浸透されて、その被膜(3)を軟化させる被膜軟化工程を行う。この放置時間としては、季節によって異なるが、24時間〜72時間放置し、アルコール系剥離剤(4)の浸透によって被膜(3)が軟化するのを待つ。この時の被膜(3)の軟化の目安としては、合成樹脂製シート(5)の上から指で強く押してへこむ硬さ、更に詳細に説明すると、焼いて食べる際の餅の硬さ程度になるまで待つのが好ましい。尚、前記アルコール系剥離剤(4)が被膜(3)に浸透されると、被膜(3)が図2(d)のように膨らむと共に軟化される。そして、前記アルコール系剥離剤(4)は、被膜(3)に殆ど吸い込まれて、被膜(3)と合成樹脂製シート(5)の間にはベタツキ(黒線部分)だけが残る。」
と、本件発明1ないし3の発明特定事項「透明な被膜(3)」に対応した記載があるから、本件発明1ないし3を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

ここで、上記第3の2(1)イ及びオで摘記したように、申立人は申立書において、本件発明1ないし3の「透明な被膜(3)」にはアクリル系樹脂からなる被膜以外のアルコール系有機溶剤に対して溶解する樹脂やアルコール系有機溶剤に対して溶解せず膨潤性も示さない材質からなる被膜も含まれるところ、アルコール系有機溶剤に対して溶解する樹脂からなる被膜を用いた場合には、被膜(3)全体が合成樹脂製シート(5)に付着することは困難であり合成樹脂製シート(5)に付着した被膜(3)の一部のみが外壁タイル(1)の表面から剥がれ外壁タイル(1)の表面に被膜(3)の一部が残存し、一方アルコール系有機溶剤に対して溶解せず膨潤性も示さない材質からなる被膜を用いた場合には被膜(3)が合成樹脂製シート(5)に付着すること自体が困難であり外壁タイル(1)の表面に被膜(3)が残存するので、本件特許の課題を解決することは困難であり、したがって本件発明1ないし3を実施できる程度に明確かつ十分に説明されているとはいえない旨を主張している。
しかしながら、上で摘記したように本件特許の明細書には被膜(3)についてその例(【0014】)及びアルコール系剥離剤(4)では溶解せず、膨張させて軟化するものであることが記載されている(【0015】、【0018】)。方法の発明として所望する結果を得るために条件を満たす適切な材料を選択することは当業者が通常行うことであり、当業者は、明細書の記載内容及び出願時の技術常識に基づき、本件発明1ないし3の方法を使用することができるということができるものであり、当業者がその実施にあたり、過度の試行錯誤を要するものともいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。

(イ)「合成樹脂製シート(5)」について
本件特許の明細書には、
「【0016】
(5)はコロナ放電処理した合成樹脂製シートであり、該合成樹脂製シート(5)としては、ポリエチレンビニールや高密度ポリエチレンなどを用いると良い。尚、コロナ放電処理した合成樹脂製シートは、処理しないものと比べ、被膜(3)との密着力が向上する。」
「【0019】
二)所定時間後、合成樹脂製シート(5)を図2(e)のように、上から剥がすと、軟化した被膜(3)が、合成樹脂製シート(5)に付着されて一緒に剥がれる。」
と、本件発明1ないし3の発明特定事項「合成樹脂製シート(5)」に対応した記載があるから、本件発明1ないし3を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

ここで、上記第3の2(1)ウ及びオで摘記したように、申立人は申立書において、本件発明1ないし3の「合成樹脂製シート(5)」にはポリエチレンビニール及び高密度ポリエチレンからなるシートに限定されず合成樹脂からなるシート全般が含まれるところ、例えば剥離性の高い合成樹脂製シートを用いた場合には、被膜(3)が合成樹脂製シート(5)に付着すること自体が困難であり、 外壁タイル(1)の表面に被膜(3)が残存し、本件特許の課題を解決することは困難であり、したがって本件発明1ないし3を実施できる程度に明確かつ十分に説明されているとはいえない旨を主張している。
しかしながら、上で摘記したように本件特許の明細書には合成樹脂製シート(5)について例(【0016】)及び軟化した被膜(3)が「付着されて一緒に剥がれる」ものであることが記載されている(【0019】)。方法の発明として所望する結果を得るために条件を満たす適切な材料を選択することは当業者が通常行うことであり、当業者は、明細書の記載内容及び出願時の技術常識に基づき、本件発明1ないし3の方法を使用することができるということができるものであり、当業者がその実施にあたり、過度の試行錯誤を要するものともいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。

(ウ)「アルコール系剥離剤(4)」について
本件特許の明細書には、
「【0014】
本発明の実施形態を図1、図2に基づいて説明する。(1)は外壁に貼着された外壁タイルであり、(2)は目地部である。(3)は外壁タイル(1)と目地部(2)の表面に塗布したタイル剥落防止用又は防水用の透明な被膜であり、該被膜(3)は、下塗りとして塗布したアクリルシリコン系樹脂のシーラーの膜と、中塗りとして塗布した剥落防止材であるナイロン繊維入りで且つ透明なアクリル樹脂の膜と、仕上げとして塗布した透明なアクリル樹脂の膜などが積重されている。尚、防水用被膜(3)にはナイロン繊維の剥落防止材が入れられていない。
【0015】
(4)はアルコール系剥離剤であり、該アルコール系剥離剤(4)としては、例えば、発売元の株式会社ヤグチ技工の商品名プラチナZ(タイル面透明塗膜剥離除去専用柔軟剤)を用いるのが好ましい。尚、前記アルコール系剥離剤(4)は、被膜(3)を溶解せず、下地まで浸透させ、被膜(3)全体を膨張させて軟化するものであれば、他の剥離剤でも良い。」
「【0018】
ハ)所定時間放置させ、前記アルコール系剥離剤(4)が被膜(3)に浸透されて、その被膜(3)を軟化させる被膜軟化工程を行う。この放置時間としては、季節によって異なるが、24時間〜72時間放置し、アルコール系剥離剤(4)の浸透によって被膜(3)が軟化するのを待つ。この時の被膜(3)の軟化の目安としては、合成樹脂製シート(5)の上から指で強く押してへこむ硬さ、更に詳細に説明すると、焼いて食べる際の餅の硬さ程度になるまで待つのが好ましい。尚、前記アルコール系剥離剤(4)が被膜(3)に浸透されると、被膜(3)が図2(d)のように膨らむと共に軟化される。」
と、本件発明1ないし3の発明特定事項「アルコール系剥離剤(4)」に対応した記載があるから、本件発明1ないし3を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。

ここで、上記第3の2(1)エ及びオで摘記したように、申立人は申立書において、本件発明1ないし3の「アルコール系剥離剤(4)」にはアルコールを含む剤全般が含まれ、また「プラチナZ」もその組成が開示されていないため、どのような「アルコール系剥離剤(4)」を用いれば本件発明の課題を解決し得るかが本件発明1ないし3を実施できる程度に明確かつ十分に説明されているとはいえない旨を主張している。
しかしながら、上で摘記したように本件特許の明細書にはアルコール系剥離剤(4)について例(プラチナZ)及び【0014】で説明される被膜(3)を「溶解せず、下地まで浸透させ、被膜(3)全体を膨張させて軟化するもの」であることが記載されている(【0015】)。方法の発明として所望する結果を得るために条件を満たす適切な材料を選択することは当業者が通常行うことであり、当業者は、明細書の記載内容及び出願時の技術常識に基づき、本件発明1ないし3の方法を使用することができるということができるものであり、当業者がその実施にあたり、過度の試行錯誤を要するものともいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。

(2)サポート要件について
ア 特許法第36条第6項第1号の考え方について
一般に「特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきもの」とされている。(平成17年(行ケ)10042号判決参照。)
以下、この観点に立って検討する。

イ 検討
(ア)「透明な被膜(3)」について
本件特許の明細書の段落【0007】の「本発明はタイル貼り面のひび割れやタイルの剥落防止用又は防水用の被膜を、剥離させて除去する際、その被膜がきれいに且つ容易に除去できると共にコストダウンも可能な外壁タイル用被膜の除去方法を提供することを目的とする。」という記載からみて、本件発明1ないし3の課題として「本発明はタイル貼り面のひび割れやタイルの剥落防止用又は防水用の被膜を、剥離させて除去する際、その被膜がきれいに且つ容易に除去できると共にコストダウンも可能な外壁タイル用被膜の除去方法を提供する」ということが認識できる。

そして本件発明1ないし3の発明特定事項の「透明な被膜(3)」についてみれば、本件特許の明細書の
「【0015】
・・・(中略)・・・尚、前記アルコール系剥離剤(4)は、被膜(3)を溶解せず、下地まで浸透させ、被膜(3)全体を膨張させて軟化するものであれば、他の剥離剤でも良い。」
「【0018】
ハ)所定時間放置させ、前記アルコール系剥離剤(4)が被膜(3)に浸透されて、その被膜(3)を軟化させる被膜軟化工程を行う。この放置時間としては、季節によって異なるが、24時間〜72時間放置し、アルコール系剥離剤(4)の浸透によって被膜(3)が軟化するのを待つ。」
「【0019】
二)所定時間後、合成樹脂製シート(5)を図2(e)のように、上から剥がすと、軟化した被膜(3)が、合成樹脂製シート(5)に付着されて一緒に剥がれる。」
「【0021】
このように本発明方法は、特に、イ)コロナ放電処理した合成樹脂製シート(5)を用いてアルコール系剥離剤(4)に密着させて、塗布面乾燥防止工程が行われることにより、アルコール系剥離剤(4)の蒸発が防止でき、被膜(3)への浸透が促進される。更にコロナ放電処理した合成樹脂製シート(5)は、該合成樹脂製シート(5)を剥がす際、被膜(3)が合成樹脂製シート(5)へ確実に付着して剥離されるものとなる。
ロ)アルコール系剥離剤(4)が被膜(3)に浸透されて軟化する被膜軟化工程が行われることにより、塩素系剥離剤のように被膜(3)を溶かすことがないので、プラスチック製ヘラで溶けた被膜(3)を掻き落とす作業が殆ど不要となる。
ハ)被膜(3)の除去工程に於いて、合成樹脂製シート(5)を剥がすと、軟化した被膜(3)が、合成樹脂製シート(5)と一緒に剥がれ、その合成樹脂製シート(5)を丸めるだけで、被膜(3),アルコール系剥離剤(4),合成樹脂製シート(5)が一度に処分できることにより、被膜(3)が軟化するまでの待ち時間以外の作業が、従来の作業よりも数十分の1に短縮でき、且つ、作業が簡単になることにより、作業費が半減し、工期が早くなり、少数の人員でも剥離作業がスムーズに行えるものとなった。」
との記載から、上記課題の解決手段として、被膜(3)は被膜軟化工程において「アルコール系剥離剤(4)が被膜(3)に浸透されて軟化する」ものであることが認められる。
そしてこれらの記載に接した当業者は、被膜(3)が「前記アルコール系剥離剤(4)が前記被膜(3)に浸透されて、その被膜(3)を軟化させる」(本件発明1ないし3の被膜軟化工程)ものとする本件発明1ないし3は上記課題を解決できるものであることを認識することができる
よって、本件発明1ないし3は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件発明1ないし3の課題を解決できると認識できる範囲のものである。

ここで、上記第3の2(1)イ及び(2)で摘記したように、申立人は申立書において、本件発明1ないし3の「透明な被膜(3)」にアクリル系樹脂からなる被膜以外のアルコール系有機溶剤に対して溶解する樹脂やアルコール系有機溶剤に対して溶解せず膨潤性も示さない材質からなる被膜を用いた場合についての実施の形態が具体的に記載されていないため、それらの場合の実施の形態に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、よって、本件発明1ないし3は、発明の詳細な説明に記載したものでない旨を主張している。
しかしながら、上述のように本件発明1ないし3では被膜(3)が「前記アルコール系剥離剤(4)が前記被膜(3)に浸透されて、その被膜(3)を軟化させる」ものとされており、本件発明1ないし3の透明な被膜(3)にはアルコール系有機溶剤に対して溶解する樹脂やアルコール系有機溶剤に対して溶解せず膨潤性も示さない材質からなる被膜も含まれるとの申立人の主張は採用できない。

(イ)「合成樹脂製シート(5)」について
上記(ア)で検討したとおり、本件特許の明細書の記載から、本件発明1ないし3の課題として「本発明はタイル貼り面のひび割れやタイルの剥落防止用又は防水用の被膜を、剥離させて除去する際、その被膜がきれいに且つ容易に除去できると共にコストダウンも可能な外壁タイル用被膜の除去方法を提供する」ということが認識できる。

そして本件発明1ないし3の発明特定事項の「合成樹脂製シート(5)」についてみれば、本件特許の明細書の
「【0016】
(5)はコロナ放電処理した合成樹脂製シートであり、該合成樹脂製シート(5)としては、ポリエチレンビニールや高密度ポリエチレンなどを用いると良い。尚、コロナ放電処理した合成樹脂製シートは、処理しないものと比べ、被膜(3)との密着力が向上する。」
「【0019】
二)所定時間後、合成樹脂製シート(5)を図2(e)のように、上から剥がすと、軟化した被膜(3)が、合成樹脂製シート(5)に付着されて一緒に剥がれる。それを完全に下まで剥がし、その合成樹脂製シート(5)を丸めるだけで、被膜(3),アルコール系剥離剤(4),合成樹脂製シート(5)が一度に処分でき、産業廃棄物として処分すれば被膜除去工程が完了する。」
「【0021】
このように本発明方法は、特に、イ)コロナ放電処理した合成樹脂製シート(5)を用いてアルコール系剥離剤(4)に密着させて、塗布面乾燥防止工程が行われることにより、アルコール系剥離剤(4)の蒸発が防止でき、被膜(3)への浸透が促進される。更にコロナ放電処理した合成樹脂製シート(5)は、該合成樹脂製シート(5)を剥がす際、被膜(3)が合成樹脂製シート(5)へ確実に付着して剥離されるものとなる。
ロ)アルコール系剥離剤(4)が被膜(3)に浸透されて軟化する被膜軟化工程が行われることにより、塩素系剥離剤のように被膜(3)を溶かすことがないので、プラスチック製ヘラで溶けた被膜(3)を掻き落とす作業が殆ど不要となる。
ハ)被膜(3)の除去工程に於いて、合成樹脂製シート(5)を剥がすと、軟化した被膜(3)が、合成樹脂製シート(5)と一緒に剥がれ、その合成樹脂製シート(5)を丸めるだけで、被膜(3),アルコール系剥離剤(4),合成樹脂製シート(5)が一度に処分できることにより、被膜(3)が軟化するまでの待ち時間以外の作業が、従来の作業よりも数十分の1に短縮でき、且つ、作業が簡単になることにより、作業費が半減し、工期が早くなり、少数の人員でも剥離作業がスムーズに行えるものとなった。」
との記載から、上記課題の解決手段として、合成樹脂製シート(5)は被膜除去工程において「合成樹脂製シート(5)を剥がすと、軟化した被膜(3)が、合成樹脂製シート(5)と一緒に剥がれ」るものであることが認められる。
そしてこれらの記載に接した当業者は、合成樹脂製シート(5)が「前記合成樹脂製シート(5)を剥がすと、軟化した前記被膜(3)が前記合成樹脂製シート(5)に付着されて、その被膜(3)を除去させる」(本件発明1ないし3の被膜除去工程」)ものとする本件発明1ないし3は上記課題を解決できるものであることを認識することができる
よって、本件発明1ないし3は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件発明1ないし3の課題を解決できると認識できる範囲のものである。

ここで、上記第3の2(1)ウ及び(2)で摘記したように、申立人は申立書において、本件発明1ないし3の「合成樹脂製シート(5)」にポリエチレンビニール及び高密度ポリエチレンからなるシート以外の例えば剥離性の高い合成樹脂製シートを用いた場合についての実施の形態が具体的に記載されていないため、それらの場合の実施の形態に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、よって、本件発明1ないし3は、発明の詳細な説明に記載したものでない旨を主張している。
しかしながら、上述のように本件発明1ないし3では合成樹脂製シート(5)が「前記合成樹脂製シート(5)を剥がすと、軟化した前記被膜(3)が前記合成樹脂製シート(5)に付着されて、その被膜(3)を除去させる」ものとされており、本件発明1ないし3の合成樹脂製シート(5)には例えば剥離性の高い合成樹脂製シートも含まれるとの申立人の主張は採用できない。

(ウ)「アルコール系剥離剤(4)」について
上記(ア)で検討したとおり、本件特許の明細書の記載から、本件発明1ないし3の課題として「本発明はタイル貼り面のひび割れやタイルの剥落防止用又は防水用の被膜を、剥離させて除去する際、その被膜がきれいに且つ容易に除去できると共にコストダウンも可能な外壁タイル用被膜の除去方法を提供する」ということが認識できる。

そして本件発明1ないし3の発明特定事項の「アルコール系剥離剤(4)」についてみれば、本件特許の明細書の
「【0015】
(4)はアルコール系剥離剤であり、該アルコール系剥離剤(4)としては、例えば、発売元の株式会社ヤグチ技工の商品名プラチナZ(タイル面透明塗膜剥離除去専用柔軟剤)を用いるのが好ましい。尚、前記アルコール系剥離剤(4)は、被膜(3)を溶解せず、下地まで浸透させ、被膜(3)全体を膨張させて軟化するものであれば、他の剥離剤でも良い。」
「【0018】
ハ)所定時間放置させ、前記アルコール系剥離剤(4)が被膜(3)に浸透されて、その被膜(3)を軟化させる被膜軟化工程を行う。この放置時間としては、季節によって異なるが、24時間〜72時間放置し、アルコール系剥離剤(4)の浸透によって被膜(3)が軟化するのを待つ。この時の被膜(3)の軟化の目安としては、合成樹脂製シート(5)の上から指で強く押してへこむ硬さ、更に詳細に説明すると、焼いて食べる際の餅の硬さ程度になるまで待つのが好ましい。尚、前記アルコール系剥離剤(4)が被膜(3)に浸透されると、被膜(3)が図2(d)のように膨らむと共に軟化される。」
「【0021】
このように本発明方法は、特に、イ)コロナ放電処理した合成樹脂製シート(5)を用いてアルコール系剥離剤(4)に密着させて、塗布面乾燥防止工程が行われることにより、アルコール系剥離剤(4)の蒸発が防止でき、被膜(3)への浸透が促進される。更にコロナ放電処理した合成樹脂製シート(5)は、該合成樹脂製シート(5)を剥がす際、被膜(3)が合成樹脂製シート(5)へ確実に付着して剥離されるものとなる。
ロ)アルコール系剥離剤(4)が被膜(3)に浸透されて軟化する被膜軟化工程が行われることにより、塩素系剥離剤のように被膜(3)を溶かすことがないので、プラスチック製ヘラで溶けた被膜(3)を掻き落とす作業が殆ど不要となる。
ハ)被膜(3)の除去工程に於いて、合成樹脂製シート(5)を剥がすと、軟化した被膜(3)が、合成樹脂製シート(5)と一緒に剥がれ、その合成樹脂製シート(5)を丸めるだけで、被膜(3),アルコール系剥離剤(4),合成樹脂製シート(5)が一度に処分できることにより、被膜(3)が軟化するまでの待ち時間以外の作業が、従来の作業よりも数十分の1に短縮でき、且つ、作業が簡単になることにより、作業費が半減し、工期が早くなり、少数の人員でも剥離作業がスムーズに行えるものとなった。」
との記載から、上記課題の解決手段として、アルコール系剥離剤(4)は被膜軟化工程において「被膜(3)に浸透されて軟化する」ものであることが認められる。
そしてこれらの記載に接した当業者は、アルコール系剥離剤(4)が「被膜(3)に浸透されて、その被膜(3)を軟化させる」(本件発明1ないし3の被膜軟化工程」)ものとする本件発明1ないし3は上記課題を解決できるものであることを認識することができる
よって、本件発明1ないし3は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件発明1ないし3の課題を解決できると認識できる範囲のものである。

ここで、上記第3の2(1)エ及び(2)で摘記したように、申立人は申立書において、本件発明1ないし3の「アルコール系剥離剤(4)」にはアルコールを含む剤全般が含まれるが「プラチナZ」以外のアルコール系剥離剤を用いた場合の実施の形態が具体的に記載されていないため、それらの場合の実施の形態に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、よって、本件発明1ないし3は、発明の詳細な説明に記載したものでない旨を主張している。
しかしながら、上述のように本件発明1ないし3ではアルコール系剥離剤(4)は「被膜(3)に浸透されて、その被膜(3)を軟化させる」ものであるとされており、そしてそのような本件発明1ないし3と発明の詳細な説明の記載とを対比し、本件発明1ないし3は発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、申立人の主張は採用できない。

(3)小括
上記(1)で検討したように発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号の要件を満たさないとの主張には理由がなく、また上記(2)で検討したように特許請求の範囲の請求項1ないし3の記載は特許法第36条第6項第1号の要件を満たさないとの主張には理由がない。
よって、申立理由2により本件発明1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。

4 取消理由3(明確性)について
(1)特許法第36条第6項第2号の考え方について
一般に「特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきことはいうまでもない」とされている。(平成21年(行ケ)第10434号判決参照。)
以下、この観点に従って検討する。

(2)検討
ア 洗浄工程の対象について
本件特許の特許請求の範囲1ないし3の「ホ)前記外壁タイル(1)と目地部(2)の表面を、高圧洗浄水で洗浄する洗浄工程。」という記載は、その記載のとおり「外壁タイル(1)と目地部(2)の表面を、高圧洗浄水で洗浄する」工程と理解でき、洗浄の対象も「外壁タイル(1)と目地部(2)の表面」と理解できるから、その記載自体は明確である。

ここで、上記第3の3(1)で摘記したように、申立人は申立書において、
「本件特許の請求項1には、洗浄工程において「外壁タイル(1)と目地部(2)の表面を、高圧洗浄水で洗浄する」の表現が記載されている。この点、請求項1には、被膜除去工程において「その被膜(3)を除去させる」とあり、請求項の記載を参照する限り、外壁タイル(1)と目地部(2)の表面には被膜(3)が存しないため、洗浄工程において洗浄によって除去する対象が理解できない。
ここで、本件特許明細書を参照すると、洗浄工程において洗浄によって除去する対象は、被膜(3)の残部であってもよいと記載されている(【0020】)ため、外壁タイル(1)と目地部(2)の表面には被膜(3)が残存しているとも理解できる。一方、被膜除去工程において「被膜(3)が合成樹脂製シート(5)へ確実に付着して剥離されるものとなる」との記載もあり(【0021】)、外壁タイル(1)と目地部(2)の表面には被膜(3)が存しないとも理解できる。また、仮に外壁タイル(1)と目地部(2)の表面には被膜(3)が存しない場合には、洗浄工程において洗浄によって除去する対象が理解できない。
つまり、本件発明には、外壁タイル(1)と目地部(2)の表面には被膜(3)が存する場合があるのかが不明確であるため、洗浄工程において洗浄によって除去する対象が理解できない。したがって、本件発明1は、発明特定事項の技術的意味を当業者が理解できず、さらに、発明特定事項が不足していることが明らかであるため、発明が不明確となる。」
と主張している。
しかしながら、本件特許の明細書の記載は
「【0019】・・・(中略)・・・軟化した被膜(3)が合成樹脂製シート(5)と一緒に確実に剥がれ、外壁タイル(1)側に殆ど残らずに、きれいに剥がれることが本発明者によって確認されている。」
「【0020】
次に、ホ)外壁タイル(1)と目地部(2)の表面が、高圧洗浄水(圧力120〜150Kg/cm2)で洗浄される洗浄工程を行う。この時、従来の如きプラスチック製ヘラを使用することがなく、外壁タイル(1)と目地部(2)の表面は、被膜(3)が殆ど付着していないので・・・(中略)・・・。」(決定で下線を付した。)
というものであり膜除去工程後は外壁タイル(1)と目地部(2)の表面には被膜(3)が皆無となる(被膜(3)が存しない)という記載はなく、また本件特許の特許請求の範囲1ないし3にもそのような記載はないから、明細書の記載および技術常識を考慮すれば、本件発明1ないし3は明確である。
また仮に、軟化した被膜(3)が合成樹脂製シート(5)と一緒に完全に剥がれて外壁タイル(1)と目地部(2)の表面に被膜(3)が皆無となる可能性もあったとしても、そのことにより第三者に不測の不利益を及ぼすほどの不明確な点が生じるとはいえない。
よって、申立人の主張は採用できない。

イ 「アルコール系剥離剤(4)」について
上記第3の3(2)で摘記したように、申立人は申立書において、本件特許の特許請求の範囲1ないし3の「アルコール系剥離剤(4)」という記載とくに「アルコール系」との記載は、範囲を不確定とさせる表現「系」がある結果、発明が不明確である旨主張している。
しかしながら、上記3(2)イ(ウ)で検討したように、本件発明1ないし3の「アルコール系剥離剤(4)」は「被膜(3)に浸透されて、その被膜(3)を軟化させる」(本件発明1ないし3の被膜軟化工程」)ものであることにより課題を解決するものであって、アルコール「系」という語の厳密な範囲を問題とするものではないから、アルコール「系」という語が付されたことによって、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確になるものというものではない。
よって、申立人の主張は採用できない。

(3)小括
上記(2)で検討したように、特許請求の範囲の請求項1ないし3の記載は特許法第36条第6項第2号の要件を満たさないとの主張には理由がない。
よって、申立理由3により本件発明1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。

第5 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-05-12 
出願番号 P2018-187941
審決分類 P 1 651・ 537- Y (E04G)
P 1 651・ 121- Y (E04G)
P 1 651・ 536- Y (E04G)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 前川 慎喜
土屋 真理子
登録日 2021-07-20 
登録番号 6916502
権利者 株式会社ヤグチ技工
発明の名称 外壁タイル用被膜の除去方法  
代理人 木下 實三  

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