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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 E02B 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 E02B |
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管理番号 | 1385234 |
総通号数 | 6 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-06-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-03-28 |
確定日 | 2022-06-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6941660号発明「水上の上部工の構築方法および上部工の構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6941660号の請求項1、5、6、8、9、10に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許6941660号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、令和1年11月18日(優先権主張:令和1年10月9日)に出願され、令和3年9月8日にその特許権の設定登録がされ、同年同月29日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1、5、6、8、9、10に係る発明の特許に対し、令和4年3月28日に特許異議申立人中川賢治(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件特許発明 特許第6941660号の請求項1、5、6、8、9、10の特許に係る発明(以下それぞれをその請求項番号により「本件発明1」等といい、全体を「本件発明」と総称する。)は、その特許請求の範囲の請求項1、5、6、8、9、10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 1 本件発明1 「【請求項1】 水底地盤に立設されている複数本の杭の上端部に、予め形成された杭頭体を設置し、隣り合う前記杭頭体どうしが梁で連結され、前記杭頭体および前記梁の上方が床版で覆われた状態にすることにより、前記杭に固定されて支持される上部工を構築する水上の上部工の構築方法において、 前記杭頭体が、上下に延在する挿入部と、前記挿入部の上端部側に接合されて水平方向の複数の方向に延在する接続梁部とを有していて、前記杭の上端から所定深さの位置に前記杭の内部を上下に隔離する仕切板を設けておき、 前記挿入部を前記杭の上方から前記杭の内部に遊挿し、前記杭の上端にそれぞれの前記接続梁部を載置して、前記仕切板よりも上方の前記杭の内周面および前記挿入部との間に中詰めコンクリートを充填することで、前記杭頭体を前記杭の上端部に固定することを特徴とする水上の上部工の構築方法。」 2 本件発明5 「【請求項5】 前記床版として、前記杭頭体および前記梁の上方を覆う前に予め形成されたプレキャスト床部を使用する請求項1〜4のいずれかに記載の水上の上部工の構築方法。」 3 本件発明6 「【請求項6】 隣り合う前記杭頭体どうしを、予め形成されたプレキャスト梁部で連結した杭頭体・梁ユニットを予め形成しておき、この杭頭体・梁ユニットのそれぞれの前記杭頭体を、対応する前記杭の上端部に固定する請求項1〜3のいずれかに記載の水上の上部工の構築方法。」 4 本件発明8 「【請求項8】 前記接続梁部が前記挿入部の前後左右の4方向に延在する請求項1〜7のいずれかに記載の水上の上部工の構築方法。」 5 本件発明9 「【請求項9】 前記杭頭体を前記杭の上端部に設置する前に、前記杭頭体の上下位置を調整するスペーサを前記杭の上端部に固定し、前記スペーサから吊り下げられている吊り材によって前記仕切板を前記所定深さの位置に設ける請求項1〜8のいずれかに記載の水上の上部工の構築方法。」 6 本件発明10 「【請求項10】 予め形成されていた杭頭体と、水底地盤に立設されている複数本の杭の上端部に固定されている前記杭頭体の隣り合うどうしを連結している梁と、前記杭頭体および前記梁の上方を覆っている床版とを有して、前記杭に固定されて支持されている水上の上部工の構造において、 前記杭頭体が、上下に延在する挿入部と、前記挿入部の上端部側に接合されていて水平方向の複数の方向に延在している接続梁部とを有して、 前記杭は、その上端から所定深さの位置に内部を上下に隔離する仕切板を、前記杭頭体が前記杭の上端部に固定される前から予め有していて、 前記挿入部が前記杭の上方から前記杭の内周面に対して遊動できるすき間を有して挿入された状態になっていて、前記杭の上端にそれぞれの前記接続梁部が載置されていて、 前記仕切板よりも上方の前記杭の内周面と前記挿入部とのすき間に中詰めコンクリートが充填されていて、固化した前記中詰めコンクリートを介して前記杭頭体が前記杭の上端部に固定されていることを特徴とする水上の上部工の構造。」 第3 特許異議申立理由の概要及び証拠 1 特許異議申立理由の概要 申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概ね以下の申立理由を主張するとともに、証拠方法として、以下の2に示す各甲号証(以下、各甲号証をそれぞれ「甲1」等ということがある。)を提出している。 (1)特許法第29条第1項第3号(新規性) 本件発明1、5及び8は、甲1に記載された発明と同一である。 (2)特許法第29条第2項(進歩性) ア 本件発明1、5及び8は、甲9を参照して、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 本件発明6は、甲1に記載された発明並びに甲2、甲7及び甲8に示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 本件発明9は、甲1に記載された発明及び甲6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 本件発明10は甲1に記載された発明並びに甲3、甲4及び甲5に示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 申立書に添付して提出された証拠方法 甲第1号証:特開2018−25042号公報 甲第2号証:特許第3423394号公報 甲第3号証:特開2000−129690号公報 甲第4号証:特開平4−228714号公報 甲第5号証:特開2013−181309号公報 甲第6号証:特開2007−192017号公報 甲第7号証:特開2005−133485号公報 甲第8号証:特開昭60−19808号公報 甲第9号証:特開2000−104264号公報 第4 当審の判断 1 証拠の記載 (1)甲1 ア 甲1の記載 甲1には以下の記載がある(下線は当審で付与した。以下同様)。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、鋼管杭にプレキャストコンクリート部材を支持させてなる桟橋等の杭支持構造物及びその杭頭部接合方法に関する。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0010】 しかしながら、上述の如き従来の技術では、設置後の鋼管杭に重防食被覆を施すことが困難であり、特に、老朽化した桟橋等を再建する際、飛沫飛来部分を切断した後の鋼管杭に重防食被覆を施すことが困難であった。 【0011】 一方、予め陸上で鋼管杭の上端部に重防食被覆を施しておく場合、水面に対する重防食被覆の位置が鋼管杭の杭頭端部レベルに依存するため、杭頭端部レベルによって当該重防食被覆が飛沫飛来部分に対応した適切な位置に配置されないおそれがあった。 【0012】 そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、鋼管杭の適切な位置に重防食被覆が配置される杭支持構造物及びその杭頭部接合方法の提供を目的としてなされたものである。 【課題を解決するための手段】 ・・・ 【0016】 請求項4に記載の発明の特徴は、鞘管を有するプレキャスト部材を使用し、前記鞘管と鋼管杭の杭頭部とを嵌合させ、前記鞘管内に突出した支承部材を前記杭頭部に支持させた後、前記鞘管と前記杭頭部との間に充填材を打設し、前記杭頭部にプレキャスト部材を接合させる杭支持構造物の杭頭部接合方法において、前記プレキャスト部材には、前記鞘管にプレキャスト部材本体の下面より突出する重複突出部を備えるとともに、該重複突出部の外周に重防食被覆を予め形成しておき、前記鞘管を前記鋼管杭の杭頭部の外側に嵌合させることにより、前記鋼管杭の飛沫飛来部分を前記重防食被覆で覆う杭支持構造物の杭頭部接合方法にある。 ・・・ 【発明の効果】 ・・・ 【0022】 また、鞘管を有するプレキャスト部材を使用し、前記鞘管と鋼管杭の杭頭部とを嵌合させ、前記鞘管内に突出した支承部材を前記杭頭部に支持させた後、前記鞘管と前記杭頭部との間に充填材を打設し、前記杭頭部にプレキャスト部材を接合させる杭支持構造物の杭頭部接合方法において、前記プレキャスト部材には、前記鞘管にプレキャスト部材本体の下面より突出する重複突出部を備えるとともに、該重複突出部の外周に重防食被覆を予め形成しておき、前記鞘管を前記鋼管杭の杭頭部の外側に嵌合させることにより、前記鋼管杭の飛沫飛来部分を前記重防食被覆で覆うことにより、杭頭部に容易に重防食被覆を施工することができる。」 (イ)「【0025】 【図1】本発明に係る杭支持構造物の概要を示す正面図である。 【図2】図1中の梁部を示す同上のA-A線断面図である。 【図3】図1中の杭頭部接合の状態を示す拡大縦断面図である。 【図4】同上のプレキャスト部材を示す拡大縦断面図である。 【図5】図1中の鋼管杭の杭頭部を示す拡大平面図、(b)は同部分拡大正面図、(c)は同B−B線断面図である。 【図6】同上のプレキャスト部材の取り付け工程を示す断面図である。 【図7】同上の取り付け時のプレキャスト部材の状態を示す平面図である。 【図8】本発明に係る杭支持構造物及びその杭頭部接合方法の他の実施例を示す断面図である。」 (ウ)「【発明を実施するための形態】 ・・・ 【0027】 この杭支持構造物1は、図1に示すように、水底地盤2に打設された複数の鋼管杭3,3...と、鋼管杭3,3...の支持されたプレキャスト部材4,4...からなる梁部5とを備え、梁部5上に床版部6が形成されている。 【0028】 梁部5は、図2に示すように、複数のプレキャスト部材4,4...と、各プレキャスト部材4,4...間を連結する場所打ちコンクリート部7とを備え、格子状に形成されている。 【0029】 各プレキャスト部材4,4...は、図3に示すように、少なくとも下面が開口した杭挿入部8を有するプレキャスト部材本体9と、杭挿入部8の内側に支持された鞘管10と、鞘管10内に突出した支承部材11とを備え、鋼管杭3,3...の杭頭部に支承部材11が支持されることにより仮支持され、嵌合された鞘管10と杭頭部との間にグラウト等の充填材12が打設されることにより杭頭部に接合されている。 【0030】 また、この杭支持構造物1では、鋼管杭3,3...の上端より所望の深さまで中詰めコンクリート13が打設されている。 【0031】 プレキャスト部材本体9は、杭挿入部8を有する中心支持部9aと、中心支持部9aより外向きに張り出した1又は複数の梁用片持ち部9bとにより構成され、それぞれ平面視L字状、T字状又は十字状に形成されている。 【0032】 そして、梁部5は、平面視L字状、T字状、十字状の各プレキャスト部材4,4...を組み合わせ、梁用片持ち部9b,9b間に場所打ちでコンクリートを打設し、梁用片持ち部9b,9b間を連結することにより、格子状に形成されている。 【0033】 鞘管10は、プレキャスト部材本体9の高さ(上下方向厚さ)より長く形成され、その上端が杭挿入部8に挿入された状態でプレキャスト部材本体9と一体化されている。 【0034】 また、鞘管10は、プレキャスト部材本体9の下面より突出した重複突出部10aを備え、重複突出部10aの外周に重防食被覆15が形成されている。 【0035】 重防食被覆15は、ポリエチレンやウレタンエラストマー等からなる重防食用被覆材によって構成され、この重防食用被覆材によって重複突出部10aの外周全体又は重複突出部10aの下端より一定範囲の外周が被覆されている。 【0036】 尚、重複突出部10aの高さは、鋼管杭3,3...の打設深度、鋼管杭3,3...の満潮時及び干潮時の水面突出高さ、設計上必要な杭頭モーメントを満たす長さ等を基に決定する。 【0037】 支承部材11は、H型鋼等によって構成され、鞘管10の下端から所定の高さにおいて鞘管10内を直径方向に横切るように配置し、溶接によって固定されている。 【0038】 そして、この支承部材11が鋼管杭3,3...の杭頭部に形成された受け凹部16と係合することにより、鞘管10を介してプレキャスト部材4,4...が鋼管杭3の杭頭部に仮支持されるようになっている。 【0039】 受け凹部16は、図5に示すように、鋼管杭3杭頭部の互いに対称な位置に形成され、鋼管杭3,3...の上端に開口した導入部20と、導入部20の底部と周方向に連続する係合切欠き部21とを備えている。 【0040】 そして、支承部材11は、鞘管10を鋼管杭3,3...の外側に嵌合させる際、導入部20を通して受け凹部16に挿入され、プレキャスト部材4,4...を杭軸回りに回転させることにより係合切欠き部21内に挿入され、係合切欠き部21の上側内縁21a、即ち、鋼管杭3,3...の杭頭部に係合されるようになっている。 ・・・ 【0044】 また、プレキャスト部材4,4...は、鞘管10内に配置された型枠支持部材23,23と、型枠支持部材23,23を鞘管10に支持させた支持片24と、型枠支持部材23,23の下端に支持された底型枠25とを備え、鞘管10を鋼管杭3,3...の外側に嵌合させた際、型枠支持部材23,23が鋼管杭3,3...内に挿入されることによって鋼管杭3,3...の上端から所定の高さに底型枠25が配置され、鋼管杭3,3...内が閉鎖されるようにしている。」 (エ)「【0045】 次に、上述の如き杭支持構造物1の杭頭部接合方法について、図6、図7に基づいて説明する。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明し、符号は水底地盤2に打設された鋼管杭3,3...である。 【0046】 鋼管杭3,3...は、その杭頭端部レベルによって、水面より突出する高さが異なるため、杭頭部3頭部に形成する受け凹部16のレベル、具体的には、調整嵩上げ部22の高さによってレベルを調整しておく。 【0047】 次に、各プレキャスト部材4,4...をクレーン船等によって施工現場まで移送し、図6(a)〜図6(b)に示すように、プレキャスト部材4,4...をクレーンによって吊上げ、鋼管杭3,3...の杭頭部への取り付けを開始する。 【0048】 その際、プレキャスト部材4,4...は、実際の取り付け位置に対し杭軸回りに所定の角度だけ回転させ、支承部材11の周方向位置を鋼管杭3,3...の杭頭部に形成された受け凹部16の導入部20の位置に合わせた状態で吊り下ろす。 【0049】 そして、鞘管10が鋼管杭3,3...の杭頭部の外側に嵌め込まれると、導入部20を通して支承部材11が受け凹部16の下縁に当て止めされるとともに、底型枠25が鋼管杭3,3...内に挿入され、鋼管杭3,3...の所定の位置を閉鎖する。 【0050】 次に、図7(a)の位置から図7(b)に示す位置まで、プレキャスト部材4,4...を杭軸方向に回転させ、支承部材11を係合切欠き部21内に挿入し、係合切欠き部21の上側内縁、即ち、鋼管杭3,3...の杭頭部に係合させる。 【0051】 その際、調整嵩上げ部22を設けておくことにより、支承部材11がスロープ部に案内されて嵩上げ部22上に移動し、レベル調整やがたつきが補正され、安定した状態で係合切欠き部21と係合する。 【0052】 尚、プレキャスト部材4,4...には、プレキャスト部材本体9に1又は複数の梁用片持ち部9bを備え、重心に偏りがあることから、支承部材11を軸にしてモーメントが作用する。 【0053】 しかしながら、プレキャスト部材4,4...は、支承部材11が係合切欠き部21と係合することで、当該偏心によるモーメントが抑制され、杭頭部に安定した状態で仮支持される。 【0054】 次に、図6(c)に示すように、プレキャスト部材4,4...を杭頭部に仮支持させた状態で、鞘管10と鋼管杭3,3...との間の隙間をグラウト等の充填材12で充填し、鋼管杭3,3...の杭頭部にプレキャスト部材4,4...を接合する。 【0055】 また、図6(d)に示すように、杭挿入部8の上端より場所打ちコンクリートにより中詰めコンクリート13を打設してプレキャスト部材4,4...の設置が完了する。 【0056】 そして、鋼管杭3,3...毎に上述したプレキャスト部材4,4...の接合作業を行った後、隣り合う梁用片持ち部9b間に鉄筋等を配設するとともに型枠を設置し、場所打ちコンクリートを打設して各プレキャスト部材4,4...間を連結する場所打ちコンクリート部7を形成する。 【0057】 そして、場所打ちコンクリートを養生固化させることにより、鋼管杭3,3...に支持された格子状の梁部5が形成され、梁部5上に場所打ちコンクリート又はプレキャスト床板を設置することにより床版を設置し、杭支持構造物1が構築される。」 (オ)「【図1】、【図2】、【図3】、【図4】、【図5】、【図6】、【図7】は以下のとおり。 「 【図6】 」 (カ)上記(ウ)の記載を踏まえると、上記(オ)の【図1】及び【図2】からは、梁部5及び床版部6は水上に構築されていることが看取される。 上記(ウ)の記載を踏まえると、上記(オ)の【図4】からは、型枠支持部材23,23は上下に延在すること、及び、梁用片持ち部9bは型枠支持部材23,23の上端部側に位置することが看取される。 上記(ウ)の記載を踏まえると、上記(オ)の【図6】からは、型枠支持部材23,23が鋼管杭3,3...の内周面に対して上方から挿入され、すき間を有した状態となっていて、底型枠25よりも上方の鋼管杭3,3...と型枠支持部材23,23の内周面とのすき間を含む鋼管杭3,3...及びプレキャスト部材4,4...の鞘管10の内部に中詰めコンクリート13が打設されている様子が看取される。 イ 甲1発明 上記アより、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 (甲1発明) 「水底地盤2に打設された複数の鋼管杭3,3...と、梁部5とを備え、梁部5上に床版部6が形成されている杭支持構造物1の杭頭部接合方法であって、 プレキャスト部材4,4...は、杭挿入部8を有するプレキャスト部材本体9と、杭挿入部8の内側に支持された鞘管10と、鞘管10内に突出した支承部材11とを備え、 鞘管10は、プレキャスト部材本体9の下面より突出した重複突出部10aを備え、重複突出部10aの外周に重防食被覆15が形成されており、 プレキャスト部材4,4...は、鞘管10内に配置された、上下に延在する型枠支持部材23,23と、型枠支持部材23,23を鞘管10に支持させた支持片24と、型枠支持部材23,23の下端に支持された底型枠25とを備え、鞘管10を鋼管杭3,3...の外側に嵌合させた際、型枠支持部材23,23が鋼管杭3,3...内に挿入されることによって鋼管杭3,3...の上端から所定の高さに底型枠25が配置され、鋼管杭3,3...内が閉鎖されるようにしており、 プレキャスト部材本体9は、杭挿入部8を有する中心支持部9aと、中心支持部9aより外向きに張り出した1又は複数の梁用片持ち部9bとにより構成され、梁用片持ち部9bは型枠支持部材23,23の上端部側に位置し、 梁部5は、平面視L字状、T字状、十字状の各プレキャスト部材4,4...を組み合わせ、梁用片持ち部9b,9b間に場所打ちでコンクリートを打設し、梁用片持ち部9b,9b間を連結することにより、格子状に形成され、 梁部5及び床版部6は水上に構築されており、 プレキャスト部材4,4...をクレーンによって吊上げ、鋼管杭3,3...の杭頭部に形成された受け凹部16の導入部20の位置に合わせた状態で吊り下ろし、鞘管10が鋼管杭3,3...の杭頭部の外側に嵌め込まれると、底型枠25が鋼管杭3,3...内に挿入され、鋼管杭3,3...の所定の位置を閉鎖し、プレキャスト部材4,4...は、杭頭部に仮支持され、 プレキャスト部材4,4...を杭頭部に仮支持させた状態で、鞘管10と鋼管杭3,3...との間の隙間をグラウト等の充填材12で充填し、鋼管杭3,3...の杭頭部にプレキャスト部材4,4...を接合し、場所打ちコンクリートにより中詰めコンクリート13を打設するものであって、 型枠支持部材23,23が鋼管杭3,3...の内周面に対して上方から挿入され、すき間を有した状態となっていて、底型枠25よりも上方の鋼管杭3,3...と型枠支持部材23,23の内周面とのすき間を含む鋼管杭3,3...及びプレキャスト部材4,4...の鞘管10の内部に中詰めコンクリート13が打設される、 杭支持構造物1の杭頭部接合方法。」 (2)甲9 ア 甲9の記載 甲9には以下の記載がある。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、H鋼杭や鋼管杭等の杭の杭頭処理に関し、特に土中に打ち込み又は建て込んである杭の杭頭と、梁を被せ又は差し込むための仕口部材を有する杭頭部材との連結方法及び連結構造体に関する。」 (イ)「【0040】実施例2 図3は本発明の杭頭と杭頭部材の連結方法の他の実施形態を示す説明図である。図3(a)は杭頭部材の斜視図であり、図3(b)は鋼管杭の杭頭の斜視図であり、図3(c)は杭頭部材のC−C’線断面図である。 【0041】図4は図3の方法により連結された杭頭部材の連結構造体を示す説明図である。図4(a)は杭頭部材の連結構造体の斜視図であり、図4(b)は杭頭部材の連結構造体の部分断面図であり、図4(c)は連結構造体のD−D’線断面図である。 【0042】図3及び図4は鋼管杭の杭頭に杭頭部材を差し込む形式の本発明の連結方法である。図3(a)に示すように、鋼管杭に連結するための杭頭金物1に、梁を取り付けるための仕口部材2(2a〜2c)を取り付けた杭頭部材11には、鋼管杭12の杭頭5に差し込むための差し込み部16が設けられいる(当審注:「設けられいる」は「設けられている」の誤記と認める。)。 【0043】また、この杭頭部材11は、鋼管杭12の杭頭5に差し込んだときに、接着剤を充填する隙間が設けられ、充填した接着剤の硬化後に必要な付着強度が得られるのに十分な隙間が設けられていることが好ましい。 【0044】図3(b)は鋼管杭12の杭頭5を示す。この杭頭5には、接着剤を注入するための注入口4を1個以上設ける。必要に応じて隙間調整のために設けるボルト8を通すボルト穴3を設けても良く、このボルト穴3に通すボルトは接着剤が硬化するまでの仮固定に使用しても良い。 【0045】次に、鋼管杭12と杭頭部材11は、杭頭部材11の差し込み部16を鋼管杭12の杭頭5の中空部17に差し込む。鋼管杭12の杭頭5の内径Xd は、杭頭部材11の差し込み部16の外径YDよりも大きく形成されているために、杭頭5と杭頭部材11の間には隙間15が形成される。 【0046】次に、図4に示す様に、杭頭部材11の下端部と鋼管杭12との隙間15の端部18をシールしてシール部7を形成した後、鋼管杭12に設けた注入口4より隙間15に接着剤6を充填する。この場合、隙間15内の空気を抜くために空気抜きの穴を設けても良い。」 (ウ)【図3】及び【図4】は以下のとおり。 「 」 イ 甲9発明 上記アより、甲9には、以下の発明(以下「甲9発明」という。)が記載されていると認められる。 (甲9発明) 「土中に打ち込み又は建て込んである杭の杭頭と、梁を差し込むための仕口部材を有する杭頭部材との連結方法であって、 梁を取り付けるための仕口部材2(2a〜2c)を取り付けた杭頭部材11には、鋼管杭12の杭頭5に差し込むための差し込み部16が設けられており、 杭頭部材11の差し込み部16を鋼管杭12の杭頭5の中空部17に差し込み、 杭頭5と杭頭部材11の間には隙間15が形成され、 杭頭部材11の下端部と鋼管杭12との隙間15の端部18をシールしてシール部7を形成した後、鋼管杭12に設けた注入口4より隙間15に接着剤6を充填する、杭頭と杭頭部材との連結方法。」 2 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 ア 甲1発明の「水底地盤2に打設された複数の鋼管杭3,3...」及び「プレキャスト部材4,4...」は、本件発明1の「水底地盤に立設されている複数本の杭」及び「予め形成された杭頭体」に相当する。 イ 甲1発明の「プレキャスト部材4,4...」の「プレキャスト部材本体9」の「梁用片持ち部9b,9b間に場所打ちでコンクリートを打設し、梁用片持ち部9b,9b間を連結」したものは、本件発明1の「梁」に相当し、甲1発明が「プレキャスト部材4,4...」の「プレキャスト部材本体9」の「梁用片持ち部9b,9b間に場所打ちでコンクリートを打設し、梁用片持ち部9b,9b間を連結する」ことは、本件発明1の「隣り合う杭頭体どうしが梁で連結され」ることに相当する。 ウ 甲1発明の「梁部5上に床版部6が形成され」ることは、本件発明1の「杭頭体および梁の上方が床版で覆われ」ることに相当する。 エ 甲1発明の「プレキャスト部材4,4...」は「鋼管杭3,3...の杭頭部」に「接合」されるものであって、杭に支持されるといえるから、上記イ及びウの対比を踏まえると、甲1発明の「梁部5」及び「床版部6」は本件発明1の「杭に固定されて支持される上部工」に相当する。また、甲1発明の「梁部5及び床版部6」は「水上に構築され」るから、甲1発明の「水上の上部工」にも相当する。 オ 上記アないしエの対比を踏まえると、甲1発明の「水底地盤2に打設された複数の鋼管杭3,3...」に「プレキャスト部材4,4...」を接合し、「梁用片持ち部9b,9b間に場所打ちでコンクリートを打設し、梁用片持ち部9b,9b間を連結することにより、格子状に」「梁部5」を形成し、「梁部5上に床版部6が形成」される「杭支持構造物1の杭頭部接合方法」は、本件発明1の「水底地盤に立設されている複数本の杭の上端部に、予め形成された杭頭体を設置し、隣り合う杭頭体どうしが梁で連結され、杭頭体および梁の上方が床版で覆われた状態にすることにより、杭に固定されて支持される上部工を構築する水上の上部工の構築方法」に相当する。 カ 甲1発明の「プレキャスト部材4,4...」が、「上下に延在する」「鋼管杭3,3...内に挿入される」「型枠支持部材23,23」を備えることは、本件発明1の「杭頭体」が「上下に延在する挿入部」を有していることに相当する。 キ 甲1発明の「梁用片持ち部9b」は「型枠支持部材23,23の上端部側に位置」するものであり、「梁用片持ち部9b」と「型枠支持部材23,23」とはともに「プレキャスト部材4,4」を構成するものであって接合されているから、甲1発明の「平面視L字状、T字状、十字状の各プレキャスト部材4,4」が「プレキャスト部材本体9」の「複数の梁用片持ち部9b」を備えることは、本件発明1の「杭頭体が、挿入部の上端部側に接合されて水平方向の複数の方向に延在する接続梁部とを有してい」ることに相当する。 ク 甲1発明の「型枠支持部材23,23が鋼管杭3,3...内に挿入されることによって鋼管杭3,3...の上端から所定の高さに底型枠25が配置され、鋼管杭3,3...内が閉鎖され」ることは、本件発明1の「杭の上端から所定深さの位置に杭の内部を上下に隔離する仕切板を設けてお」くことに相当する。 ケ 甲1発明において「鋼管杭3,3...及びプレキャスト部材4,4...の鞘管10の内部に中詰めコンクリート13が打設される」ことにより「プレキャスト部材4,4...」が「鋼管杭3,3...」に固定されることは自明であるから、甲1発明の「型枠支持部材23,23が鋼管杭3,3...の内周面に対して上方から挿入され、すき間を有した状態となっていて、底型枠25よりも上方の鋼管杭3,3...と型枠支持部材23,23の内周面とのすき間を含む鋼管杭3,3...及びプレキャスト部材4,4...の鞘管10の内部に中詰めコンクリート13が打設される」ことと、本件発明1の「挿入部を杭の上方から杭の内部に遊挿し、杭の上端にそれぞれの接続梁部を載置して、仕切板よりも上方の杭の内周面および挿入部との間に中詰めコンクリートを充填することで、杭頭体を杭の上端部に固定する」こととは、「挿入部を杭の上方から杭の内部に遊挿し、仕切板よりも上方の杭の内周面および挿入部との間に中詰めコンクリートを充填することで、杭頭体を杭の上端部に固定する」ことで共通する。 コ 上記アないしケから、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点、相違点を有する。 (一致点) 水底地盤に立設されている複数本の杭の上端部に、予め形成された杭頭体を設置し、隣り合う前記杭頭体どうしが梁で連結され、前記杭頭体および前記梁の上方が床版で覆われた状態にすることにより、前記杭に固定されて支持される上部工を構築する水上の上部工の構築方法において、 前記杭頭体が、上下に延在する挿入部と、前記挿入部の上端部側に接合されて水平方向の複数の方向に延在する接続梁部とを有していて、前記杭の上端から所定深さの位置に前記杭の内部を上下に隔離する仕切板を設けておき、 前記挿入部を前記杭の上方から前記杭の内部に遊挿し、前記杭の上端にそれぞれの前記接続梁部を載置して、前記仕切板よりも上方の前記杭の内周面および前記挿入部との間に中詰めコンクリートを充填することで、前記杭頭体を前記杭の上端部に固定する水上の上部工の構築方法。 (相違点1) 本件発明1は「杭の上端にそれぞれの前記接続梁部を載置して」いるのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。 (2)判断 ア 新規性についての判断 本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者には、上記相違点1があるので、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。 イ 進歩性についての判断 上記相違点1について検討する。 (ア)甲1発明 甲1発明は、「鋼管杭3,3...」(杭)の「外側」に「鞘管10」を嵌合させるものである。すなわち、「鋼管杭3,3...」(杭)の上端は、「鞘管10」の内側にある。一方、甲1発明の「梁用片持ち部9b」(接続梁部)と鞘管10との位置関係について、甲1発明の「鞘管10」が「中心支持部9a」が有する「杭挿入部8の内側に支持された」ものであり、「梁用片持ち部9b」が「中心支持部9aより外向きに張り出した」ものであるから、梁用片持ち部9b」は「鞘管10」の外側にある。そうすると、甲1発明の「鋼管杭3,3...」(杭)の上端は、「梁用片持ち部9b」を「載置」できる位置関係にない。 よって、甲1発明において、「鋼管杭3,3...」(杭)の「上端」に「「梁用片持ち部9b」(接続梁部)を「載置し」たものとすることはできない。 (イ)甲9発明を参照した場合の進歩性について a 甲9発明は、「杭頭部材11の差し込み部16を鋼管杭12の杭頭5の中空部17に差し込」んで連結するものであり、柱頭部材11の仕口部材(本件発明1の「接続梁部」に相当)が鋼管杭12の上端に載置可能な位置関係となっている。 b 以下、甲1発明において、甲9を参照して「鞘管10」をも「鋼管杭3,3...」(杭)の中空部に差し込んで連結し、その際に「鋼管杭3,3...」(杭)の上端に「複数の梁用片持ち部9b」(接続梁部)を載置するものとすることが容易であるか否かについて検討する。 c 甲1発明が「鞘管10を鋼管杭3,3...の外側に嵌合」させるのは、「前記鞘管にプレキャスト部材本体の下面より突出する重複突出部を備えるとともに、該重複突出部の外周に重防食被覆を予め形成しておき、前記鞘管を前記鋼管杭の杭頭部の外側に嵌合させることにより、前記鋼管杭の飛沫飛来部分を前記重防食被覆で覆うことにより、杭頭部に容易に重防食被覆を施工することができる」ようにするためであるから(上記(1)ア(ア))、甲1発明において「鞘管10を鋼管杭3,3...の外側に嵌合」させることは当該効果を奏するための必須の構成である。 そうすると、甲1発明において甲9発明を参照して「鞘管10」をも「鋼管杭3,3...」(杭)の中空部に差し込んで連結することには阻害要因があり、甲1発明に甲9発明を適用して相違点1に係る本件発明の構成とすることはできない。 (3)申立人の主張について ア 申立人の主張 (ア)申立人は、本件発明1と甲1発明との対比に関し、以下の主張をしている。 「はじめに、構成要件Dの「前記杭の上端にそれぞれの前記接続梁部を載置して」の載置とは、前記杭の上端にそれぞれの前記接続梁部を何も介さずに直接、載せて置くと限定していないから、構成要件Dは、「杭の上端」と「それぞれの前記接続梁部」にスペーサ(例えば本件特許明細書の図28のスペーサ9)等を介する態様が含まれる。 一方、甲1発明の構成d「前記型枠支持部材23を前記鋼管杭3の上方から前記鋼管杭3の内部に遊挿し、前記鋼管杭3の上端にそれぞれの前記梁用片持ち部9bを設置して、」は、前記鋼管杭3の上端にそれぞれの前記梁用片持ち部9bを載せているので、構成要件D「前記挿入部を前記杭の上方から前記杭の内部に遊挿し、前記杭の上端にそれぞれの前記接続梁部を載置して、」と一致する。」(申立書第26頁第2〜12行) (イ)申立人は、また、本件発明1の「前記杭の上端にそれぞれの前記接続梁部を載置して」との構成が甲1発明との相違点である場合について、以下の主張をしている。 「甲1発明において、接続梁部(梁用片持ち部9b)が杭(鋼管杭3)の上端のどこに設けられるかは、鞘管10に設けられる支承部材11の位置によって決まるが、甲第1号証の段落【0037】(記載事項1)には、支承部材11は、鞘管10の下端から所定の高さに配置するとしか記載されていないから、適宜所定の高さを設定できる。 また、杭の上端に杭頭部材の接続梁部を載せて載置することは、甲第9号証(特開2000−104264号公報)の、段落0042、図3、4にも記載されるように適宜当業者が行えることである。 よって、甲1発明において、支承部材11を鞘管10の下端から適宜設定して、杭(鋼管杭3)の上端にそれぞれの接続梁部(梁用片持ち部9b)を支承部材11を介して載せて載置することは、当業者が容易にできたことである。」(申立書第27頁第2〜14行) イ 主張の検討 (ア)上記ア(ア)について 本件発明1の「前記杭の上端にそれぞれの前記接続梁部を載置して」は、杭の上端にそれぞれの接続梁部を載せて置くようにすることを意味していると理解できる。そうすると、接続梁部は、杭の上端に直接載せられることも、スペーサを介して載せられることもあるが、いずれにせよ、杭の上端に載せて置かれるものである。 甲1発明は、上記(2)イ(ア)において検討したように、「鋼管杭3,3...」(杭)の上端は、「鞘管10」の内側にあり、「梁用片持ち部9b」(接続梁部)は「鞘管10」の外側にあるものであって、甲1発明の「鋼管杭3,3...」(杭)の上端は、「梁用片持ち部9b」を「載せて置く」すなわち「載置」できる位置関係にない。 そして、上記(2)アにおいて検討したように、本件発明1の「前記杭の上端にそれぞれの前記接続梁部を載置して」は、甲1発明との相違点である。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 (イ)上記ア(イ)について 甲1発明は、「鋼管杭3,3...」(杭)の上端は、「鞘管10」の内側にあり、「梁用片持ち部9b」(接続梁部)は「鞘管10」の外側にあるために「鋼管杭3,3...」(杭)の上端は、「梁用片持ち部9b」を「載せて置く」すなわち「載置」できる位置関係にないものであって、「鋼管杭3,3...」(杭)と「梁用片持ち部9b」(接続梁部)との高さを調節して「載置」可能になるものではない。 よって、申立人の上記主張は採用できない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。 本件発明1は、甲1発明に基いて、または、甲1発明及び甲9発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件発明5及び8について 本件発明5及び8は、本件発明1を引用するものであり、本件発明1と同様の構成を有するから、甲1発明とは、少なくとも上記相違点1で相違する。 そして、上記相違点1に関しては、上記2(2)において検討したとおりである。 よって、本件発明5及び8は、甲1に記載された発明ではない。 本件発明5及び8は、甲1発明に基いて、または、甲1発明及び甲9発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 本件発明6について 本件発明6は、本件発明1を引用するものであり、本件発明1と同様の構成を有するから、甲1発明とは、少なくとも上記相違点1で相違する。 そして、上記相違点1に関しては、上記2(2)イにおいて検討したとおり、甲1発明から容易になし得たものではない。 また、甲2、甲7及び甲8は、杭頭体・梁ユニットを予め形成しておき、この杭頭体・梁ユニットのそれぞれの前記杭頭体を、対応する前記杭の上端部に固定することが周知技術であることを示すために提示された文献であって、相違点1に係る本件発明6の構成については記載も示唆もないから、甲2、甲7及び甲8の記載は、上記相違点に係る判断を左右しない。 よって、本件発明6は、甲1発明並びに甲2、甲7及び甲8に示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 5 本件発明9について 本件発明9は、本件発明1を引用するものであり、本件発明1と同様の構成を有するから、甲1発明とは、少なくとも上記相違点1で相違点する。 そして、上記相違点1に関しては、上記2(2)イにおいて検討したとおり、甲1発明から容易になし得たものではない。 また、甲6は、前記杭頭体を前記杭の上端部に設置する前に、前記杭頭体の上下位置を調整するスペーサを前記杭の上端部に固定し、前記スペーサから吊り下げられている吊り材によって前記仕切板を前記所定深さの位置に設けることが公知技術であることを示すために提示された文献であって、相違点1に係る本件発明9の構成については記載も示唆もないから、甲6の記載は、上記相違点に係る判断を左右しない。 よって、本件発明9は、甲1発明及び甲6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6 本件発明10について 本件発明1は、「水上の上部工の構築方法」の発明であるところ、本件発明10は、本件発明1に対応する「水上の上部工の構造」の発明であり、本件発明10は、「杭の上端にそれぞれの接続梁部が載置され」るという、上記相違点1に係る本件発明1の構成と同様の構成を有する。 また、甲1には、甲1発明の「水底地盤2に打設された複数の鋼管杭3,3...と、梁部5とを備え、梁部5上に床版部6が形成されている杭支持構造物1の杭頭部接合方法」により接合されて構築された「梁部5及び床版部6の構造」の発明(以下「甲1構造発明」という。)も記載されていると認められる。 そして、本件発明10は「杭の上端にそれぞれの接続梁部が載置され」るという、相違点1に係る本件発明1の構成と同様の構成を有するから、本件発明10と甲1構造発明とを対比すると、両者は、少なくとも上記相違点1と同様の相違点を有する。 当該相違点に係る構成は、上記2(2)イで相違点1について検討したのと同様の理由により、甲1構造発明から容易になし得たものではない。 また、甲3ないし甲5は、仕切り板を予め有する杭が周知技術であることを示すために提示された文献であって、当該相違点に係る本件発明10の構成については記載も示唆もないから、甲3ないし甲5の記載は、上記相違点に係る判断を左右しない。 よって、本件発明10は、甲1構造発明並びに甲3、甲4及び甲5に示される周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、5、6、8、9、10に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1、5、6、8、9、10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2022-05-27 |
出願番号 | P2019-208086 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
Y
(E02B)
P 1 652・ 113- Y (E02B) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
前川 慎喜 |
特許庁審判官 |
森次 顕 土屋 真理子 |
登録日 | 2021-09-08 |
登録番号 | 6941660 |
権利者 | 東亜建設工業株式会社 |
発明の名称 | 水上の上部工の構築方法および上部工の構造 |
代理人 | 清流国際特許業務法人 |
代理人 | 境澤 正夫 |
代理人 | 昼間 孝良 |