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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A47G
審判 全部無効 2項進歩性  A47G
審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  A47G
管理番号 1385472
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-10-09 
確定日 2022-06-02 
事件の表示 上記当事者間の特許第5636478号発明「食器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件無効審判の請求に係る特許第5636478号(以下,「本件特許」という。)に係る出願は,平成25年8月30日の出願であって,平成26年10月24日に特許権の設定登録がなされた。その後の本件特許についての手続の経緯は,以下のとおりである。

令和元年10月 9日付け 審判請求書
令和2年 2月12日付け 答弁書及び訂正請求書(被請求人)
令和2年 3月13日付け 訂正拒絶理由通知書
令和2年 4月16日付け 意見書(被請求人)
令和2年 4月17日付け 意見書及び弁駁書(請求人)
令和2年 9月25日付け 審理事項通知書
令和2年 9月28日付け 上申書(請求人)
令和2年11月 5日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)
令和2年12月 8日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)
令和2年12月 9日付け差出し 口頭審理陳述要領書(2)(被請求人)
令和2年12月17日 口頭審理
令和2年12月17日 補正許否の決定
令和3年 3月31日付け 審決の予告
なお、令和3年 3月31日付けで審決の予告をしたが、被請求人及び請求人からは応答がなかった。

第2 訂正の適否
1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容
訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は,特許第5636478号の特許請求の範囲を,本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1〜5について訂正することを求めるものであり,その訂正事項1,2は以下のとおりである(下線は,訂正箇所を示す。)。

訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部とを具備し」と記載されているのを,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成された,スプーンへの食物移載力転換機構としてのR部とを具備し」に訂正するとともに,特許請求の範囲の請求項1に,「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つこと」と記載されているのを,「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を,窪みの深さを視覚的に認識させる構成として持つこと」に訂正する。(以下,それぞれ「訂正事項1−1」及び「訂正事項1−2」といい,これらを総称して,「訂正事項1」という。)

訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されるR部とを具備し」と記載されているのを,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成された,スプーンへの食物移載力転換機構としてのR部とを具備し」に訂正するとともに,特許請求の範囲の請求項2に,「前記第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つこと」と記載されているのを,「前記第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを,窪みの深さを視覚的に認識させる構成として持つこと」に訂正する。(以下,それ
ぞれ「訂正事項2−1」及び「訂正事項2−2」といい,これらを総称して,「訂正事項2」という。)

2 本件訂正の適否の判断
(1)一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1及び3〜5について,訂正前の請求項3〜5は,訂正事項1に係る訂正前の請求項1の記載を直接的又は間接的に引用しているものであって,訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから,当該請求項1及び3〜5は,一群の請求項である。
訂正事項2に係る訂正前の請求項2〜5について,訂正前の請求項3〜5は,訂正事項2に係る訂正前の請求項2の記載を直接的又は間接的に引用しているものであって,訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものであるから,当該請求項2〜5は,一群の請求項である。
これら2つの「一群の請求項」は,共通の請求項を有するから,これら一群の請求項は組み合わされて,1つの一群の請求項となる。したがって,請求項1〜5は,特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。

(2)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
(ア)訂正事項1−1について
訂正後の請求項1に記載された「スプーンへの食物移載力転換機構」とはどのようなことであるのか,発明の詳細な説明を検討すると,発明の詳細な説明の段落【0036】に以下の記載がある。
「ここで,Rが半径10mm程度として形成されているために,スプーン(一般的なスプーン或いは幼児用等の肉厚が厚く窪みが深くなく収容面が若干狭いスプーン等を含む)の掬い面の外面の曲線と好適に適合するために,スプーンSP下部と底面部との間に隙間を生ずることなくスプーンSPにて無理なく底ざらえをすることができる。またRが半径10mm程度であることから曲面の上部の鉛直の立ち上がりが壁となるため,使用者はほんの僅かの力を用いるだけで,食物は立ち上がりからの反力を受けてスプーンSPの方向に押圧されることになる。つまり,幼児や年配者が発する少しの力を効率的にスプーンへの食物移載力に転換することができる。そのために,立ち上がりからの反力を受けた食物FはスプーンSPと立ち上がり(10,30,50等)との間にとどまることなく,スプーンSPの窪みにスムーズに移行することになる(図8(b),図9(b))。」
前記記載によれば,R部が半径10mm程度として形成されることにより,幼児や年配者が発する少しの力を効率的にスプーンへの食物移載力に転換することができるという機能を奏することが理解できる。
そうすると,訂正前の請求項1において,幼児や年配者が発する少しの力を効率的にスプーンへの食物移載力に転換することができるという機能を奏するために「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるように形成されたR部」との事項を特定していることは明らかであるから,訂正後の請求項1における「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成された,スプーンへの食物移載力転換機構としてのR部」とすることは,単に,訂正前の請求項1における「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部」が奏する機能を付加しただけであり,訂正前の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部」を訂正後の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成された,スプーンへの食物移載力転換機構としてのR部」に訂正しても,実質的に発明の範囲が減縮されるものではない。
したがって,訂正事項1−1による訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
また,訂正事項1−1に係る訂正前の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部」が意味するところは明瞭であったといえるから,訂正事項1−1による訂正は,明瞭でない記載の釈明を目的とするものともいえない。
さらに,訂正事項1−1による訂正は,誤記の訂正,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることのいずれかを目的とするものともいえない。

(イ)訂正事項1−2について
訂正後の請求項1に記載された「窪みの深さを視覚的に認識させる構成」とはどのようなことであるのか,発明の詳細な説明を検討すると,発明の詳細な説明の段落【0028】に以下の記載がある。
「竹製食器100は,断面においては,3層の竹平面材a,b,cが積層されて一体に整形されて構成されており,立ち上がり部33は,下から40a,33a,33b,33cが積層された構成となっている。ただし,本実施形態においては,40aと33aとは位置的な区切りにすぎず,40a及び33aは素材的には一体のものとして構成される。また,3層の竹平面材a,b,cのうち,b層の色合いをa層,c層に比して濃いめのものとする。これによって,美観上のアクセントが生まれる。さらに,窪みの深さが視覚的にはっきりと認識・判別することができ,スプーンでの食物かき上げ動作を確実化することを助ける効果を奏する。」
前記記載によれば,3層の竹平面材a,b,cが積層されたもののうち,b層の色合いをa層,c層に比して濃いめのものとすることにより,窪みの深さが視覚的にはっきりと認識・判別することができるという機能を奏することが理解できる。
そうすると,訂正前の請求項1において,窪みの深さが視覚的にはっきりと認識・判別することができるという機能を奏するために「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つこと」との事項を特定していることは明らかであるから,訂正後の請求項1における「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を,窪みの深さを視覚的に認識させる構成として持つこと」とすることは,単に,訂正前の請求項1における「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つこと」が奏する機能を付加しただけであり,訂正前の「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つこと」を訂正後の「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を,窪みの深さを視覚的に認識させる構成として持つこと」に訂正しても,実質的に発明の範囲が減縮されるものではない。
したがって,訂正事項1−2による訂正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
また,訂正事項1−2に係る訂正前の「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つこと」が意味するところは明瞭であったといえるから,訂正事項1−2による訂正は,明瞭でない記載の釈明を目的とするものともいえない。
さらに,訂正事項1−2による訂正は,誤記の訂正,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることのいずれかを目的とするものともいえない。

イ 訂正事項1についてのまとめ
前記アのとおり,本件訂正の訂正事項1に係る訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書第1〜4号のいずれかを目的とするものではない。

(3)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2に係る訂正の目的について検討すると,前記(2)アと同様の理由により,訂正事項2−1及び訂正事項2−2は,いずれも特許請求の範囲の減縮,誤記の訂正,明瞭でない記載の釈明,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることのいずれかを目的とするものとはいえない。

イ 訂正事項2についてのまとめ
前記アのとおり,本件訂正の訂正事項2に係る訂正は,特許法第134条の2第1項ただし書第1〜4号のいずれかを目的とするものではない。

(4)被請求人の主張について
被請求人は,令和2年4月16日付け意見書,及び,令和2年11月5日付け口頭審理陳述要領書において,概略以下の主張をしている。
ア 訂正事項1−1は,「幼児や年配者が発する少しの力を効率的にスプーンへの食物移載力に転換することができる機能」,及び,「食物カスが停留することなくきれいに洗浄することができるという機能」という複数の機能を前者の機能に限定する記載とするものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 訂正事項1−2は,「窪みの深さが視覚的にはっきりと認識・判別することができるという機能」,及び,「食器のデザイン性が向上するという機能」という複数の機能を前者の機能に限定する記載とするものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
以下,前記主張について検討する。
アに対して,訂正事項1−1により,訂正前の請求項1の記載が,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成された,スプーンへの食物移載力転換機構としてのR部」とされたとしても,「幼児用食器」としてのその物の形状・構造を何ら限定するものではないから,実質的に発明の範囲が減縮されるものではない。
イに対しても同様である。
したがって,被請求人の主張を採用することはできない。

3 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおり,特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である請求項1〜5についての訂正請求は,本件訂正の訂正事項1及び2が特許法第134条の2第1項ただし書第1〜4号のいずれにも該当しないから,これを認めることはできない。

第3 本件発明
前記第2で示したように本件訂正は認められないから,本件の請求項1〜5に係る発明(以下,請求項の番号に従って,「本件発明1」などという。)は,請求項1〜5に記載された事項によって特定される,以下のとおりのものである。

「【請求項1】
平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層されるように接着される積層厚板部と,
食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部と,
前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部とを具備し,
前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つ
ことを特徴とする幼児用食器。
【請求項2】
平板上に加工された複数枚の竹材平板である第1,第2,第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順に積層されるように接着されて構成される積層厚板部と,
食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部と,
前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されるR部とを具備し,
前記第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,
前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つことを特徴とする幼児用食器。
【請求項3】
請求項1もしくは2記載の幼児用食器において,前記複数枚の竹材平板の木目方向を略同一方向とすることを特徴とする幼児用食器。
【請求項4】
請求項1もしくは2記載の幼児用食器において,前記複数枚の竹材平板の木目方向を層ごとに互い違いの方向とすることを特徴とする幼児用食器。
【請求項5】
請求項1乃至4のうち1項記載の幼児用食器において,前記幼児用食器の窪み部を形成する底面に対する裏側の面において内周に若干の深さの溝が設けられていることを特徴とする幼児用食器。」

第4 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は,特許第5636478号の特許請求の範囲の請求項1〜5に係る発明についての特許を無効にする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求めている。

2 無効理由
請求人が主張する無効理由は,次のとおりである。なお,口頭審理において,請求人の令和2年4月17日付け弁駁書,令和2年9月28日付け上申書,令和2年12月8日付け口頭審理陳述要領書,令和2年12月9日付け差出しの口頭審理陳述要領書(2)の主張は,審判請求書の請求の理由に記載されていた無効理由とは異なる新たな無効理由を追加するものであり,しかも,当該理由を審判請求当初の審判請求書の請求の理由に記載できなかったことに合理的な理由は認められないことから,これらの補正は許可しないと決定された。
(1)無効理由1
本件発明1〜3は,甲第1号証〜甲第8号証のいずれか1つに記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないものであり,本件発明5は,甲第1号証〜甲第3号証のいずれか1つに記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

(2)無効理由2
本件発明1は,甲第1号証〜甲第17号証に記載された発明に基いて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件発明2は,甲第1号証〜甲第9号証,及び,甲第11号証〜甲第17号証に記載された発明に基いて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件発明3は,甲第1号証〜甲第18号証に記載された発明に基いて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件発明4は,甲第1号証〜甲第17号証,甲第19号証,及び,甲第20号証に記載された発明に基いて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件発明5は,甲第1号証〜甲第20号証に記載された発明に基いて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その特許は同法第123条第1項第2号に該当し,無効とすべきものである。

3 証拠方法
請求人は,審判請求書に添付して以下の甲第1号証〜甲第20号証(以下,証拠の番号に従って,「甲1」などという。)を提出している。
甲1:小学館発行 SAKURA[サクラ]2012年冬号(2012年11月28日発売) 特別付録の25頁
甲2:ブログ(http://funfam.seesaa.net/category/8684247-1.html) 竹のマイスタートリオ 月曜担当:張替 2010年10月4日および2010年9月27日の書き込み
甲3:ブログ(http://funfam.seesaa.net/category/8684250-1.html) 竹のマイスタートリオ 金曜担当:村田 2010年10月8日および2010年10月29日の書き込み
甲4:株式会社阪急コミュニケーションズ発行 著者:中里邦博 ベビーギフト100(初版発行:2012年10月23日) No51
甲5:白泉社発行 こどもMOE vol.4(2012年12月10日発売) 61頁
甲6:株式会社ベネッセコーポレーション発行 ひよこクラブ9月号(平成23年8月11日発売) 28頁
甲7:光文社発行 VERY 2月号(平成24年1月7日発行・発売) 131頁
甲8:光文社発行 VERY 5月号(平成22年4月7日発行・発売) 別冊付録の17頁
甲9:特開平6−39806号公報
甲10:株式会社 山と渓谷社発行 四季のウッドクラフト(1993年8月15日発行) 94,95,142頁
甲11:実願昭59−22475号(実開昭60−138472号)のマイクロフィルム
甲12:登実3136190号公報
甲13:株式会社誠文堂新光社発行 手づくりする木の器(2012年7月30日発行) 11,12,13頁
甲14:登実3068594号公報
甲15:日刊工業新聞社発行 目で見てわかるエンドミルの選び方・使い方(2012年4月25日発行) 33,34頁
甲16の1:学研パブリッシング発行 新トリマー&ルーターテクニック(2012年12月27日発行) 76頁
甲16の2:オフ・コーポレイション Web Shop http://www.off.co.jp/off/index.php?id=4&c=83&b1=&s=11000889
甲17:株式会社コノエ発行 2012 モノづくり大辞典 オレンジブック 1 工具編(平成23年12月発刊)1−239頁,1−260頁
甲18の1:日経BP社 日経デザイン 2009/09号 写真が語る意と匠 SCROLL 輪廻のかたち vol.18
甲18の2:日経デザイン2009/09号に関する告知画面(ウェブサイト)
甲19の1:インターナショナルラグジュアリーメディア発行 OCEANS 2008年8月号(2008年6月24日発売) 37頁
甲19の2:OCEANS2008年8月号に関する告知画面(ウェブサイト https://www.fujisan.co.jp/product/1227344/b/189117/)
甲20:特開2009−61615号公報

第5 被請求人の主張
被請求人は,本件審判請求は成り立たない,審判費用は審判請求人の負担とするとの審決を求める旨主張している。

第6 甲号証の記載及び引用発明
1 各甲号証の記載
(1)甲1の記載事項等
ア 甲1には,以下の事項が記載されている。
(ア)甲1の25ページの左上には,以下の事項が記載されている。



(イ)前記(ア)の「軽くて強く扱いやすいバンブー素材“FUNFAM”のランチプレート(当審注:「“」「”」は、実際には特殊文字で表記。)」という記載,及び,「天然の竹を張り合わせた集成材を使用し,」という記載から,写真にあるランチプレートは,竹を張り合わせた集成材からできていることがわかる。

(ウ)前記(ア)の「厚み2.1cmでくぼみが深いのでこぼれにくく,・・・,熱々の料理をのせても問題なし。」という記載,前記(イ)及びランチプレートの写真から,ランチプレートは,所定の厚みのある部分と,料理を載せるために前記所定の厚みのある部分に形成されたくぼみを具備することがわかる。

(エ)前記(ア)のランチプレートの写真より,くぼみは,底面と前記底面に接続する立ち上がり面を備え,前記底面と前記立ち上がり面は角をなしていることがわかる。

(オ)前記(ア)のランチプレートの写真より,くぼみは,前記底面を含む下部部分,前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分,及び,前記上部部分と前記下部部分により挟まれる中間部分からなり,前記中間部分の色が前記上部部分及び前記下部部分の色と異なることがわかる。

(カ)前記(ア)のランチプレートの写真,及び,前記(オ)より,所定の厚みのある部分は,下から上に向けて,下部部分,中間部分,及び,上部部分からなる竹材から構成されていることがわかる。

(キ)前記(ア)の「HMリーダー 秋谷理恵さん 1歳男のコのママ。『竹素材は抗菌効果があるのが◎。盛りつけが1皿ですむのでラク』」という記載から,写真にあるランチプレートは幼児用のランチプレートであることがわかる。

イ したがって,甲1には,以下の発明が記載されていると認められる。
(甲1−1発明)
「竹を張り合わせた集成材からなる所定の厚みのある部分と,
料理を載せるために前記所定の厚みのある部分に形成されたくぼみとを具備し,
前記くぼみにおいて,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,
前記底面を含む下部部分と前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分により挟まれる中間部分を構成する部分の色が,前記上部部分及び前記下部部分をそれぞれ構成する部分の色とは異なる色を持つ
幼児用のランチプレート。」

(甲1−2発明)
「竹を張り合わせた集成材からなり,下から上に向けて,下部部分,中間部分,上部部分からなる所定の厚みのある部分と,
料理を載せるために前記所定の厚みのある部分に形成されたくぼみとを具備し,
前記くぼみにおいて底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,
前記中間部分の色が前記下部部分及び上部部分のそれぞれの色とは異なる色合いを持つ幼児用のランチプレート。」

(2)甲2の記載事項等
ア 甲2には,以下の事項が記載されている。
(ア)甲2のブログのタイトルが「竹のマイスタートリオ 竹食器ブランドFUNFAMを支える家具職人3人が綴るブログ。」であり,甲2のブログは竹材からなる食器に関するものであることがわかる。

(イ)甲2の2010年10月4日の書き込みには,以下の事項が記載されている。



(ウ)前記(イ)の食器の写真より,食器には所定の厚みがあることがわかる。

(エ)前記(イ)の食器の写真,及び,「表の場合は,まず4つ堀り込みしてある部分の中身を粗く掘り込みます。次に縁に丸みをつけてスプーン等を扱う時にスムーズにすくえるようにします。最後に掘り込んだ時に角に出っ張りができるので,それを取り除きます。」という記載から,写真にある食器は,所定の厚みのある部分と前記所定の厚みのある部分から掘り込まれた部分が形成されており,前記掘り込まれた部分には,底面と立ち上がり面が形成されており,前記底面と前記立ち上がり面とが接続する部分に,丸みをつけてスプーン等でスムーズにすくえるようにした縁が形成されていることがわかる。

(オ)前記(イ)の食器の写真より,掘り込まれた部分の外周部は,底面から立ち上がり面の上端部にかけて連続しており,前記底面を含む下部部分,前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分,及び,前記上部部分と前記下部部分により挟まれる中間部分からなり,前記中間部分の色が前記上部部分及び前記下部部分の色と異なることがわかる。

(カ)前記(イ)の食器の写真,及び,前記(オ)より,所定の厚みのある部分は,下から上に向けて,下部部分,中間部分,及び,上部部分から構成されていることがわかる。

イ したがって,甲2には,以下の発明が記載されていると認められる。
(甲2−1発明)
「竹材からなる所定の厚みのある部分と,
前記所定の厚みのある部分から掘り込まれた部分とが形成され,
前記掘り込まれた部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とが接続する部分に縁が形成され,前記縁は,スプーン等でスムーズにすくえるように丸みがつけられており,
前記底面を含む下部部分と前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分により挟まれる中間部分を構成する部分の色が,前記上部部分及び前記下部部分をそれぞれ構成する部分の色とは異なる色を持つ
食器。」

(甲2−2発明)
「竹材からなり,下から上に向けて,下部部分,中間部分,上部部分からなる所定の厚みのある部分と,
前記所定の厚みのある部分から掘り込まれた部分とが形成され,
前記掘り込まれた部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とが接続する部分に縁が形成され,前記縁は,スプーン等でスムーズにすくえるように丸みがつけられており,
前記中間部分の色が前記下部部分及び上部部分のそれぞれの色とは異なる色合いを持つ食器。」

(3)甲3の記載事項等
ア 甲3には,以下の事項が記載されている。
(ア)甲3の2010年10月8日の書き込みには,以下の事項が記載されている。

































(イ)前記(ア)の食器の写真,及び,「ファンファンの食器は竹で出来ています。」という記載から,食器は,竹材で形成されていることがわかる。

(ウ)前記(ア)の食器の写真より,食器には所定の厚みがあり,その所定の厚みのある部分に窪んだ部分が形成されており,前記窪んだ部分は,底面と立ち上がり面を備えており,前記底面と前記立ち上がり面は角をなしていることがわかる

(エ)前記(ア)の食器の写真より,窪んだ部分の外周部は,底面から立ち上がり面の上端部にかけて連続しており,底面を含む下部部分,前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分,及び,前記上部部分と前記下部部分により挟まれる中間部分からなり,前記中間部分の色が前記上部部分及び前記下部部分の色と異なることがわかる。

(オ)前記(ア)の食器の写真,及び,前記(エ)より,所定の厚みのある部分は,下から上に向けて,下部部分,中間部分,及び,上部部分からなる竹材から構成されていることがわかる。

イ したがって,甲3には,以下の発明が記載されていると認められる。
(甲3−1発明)
「竹材からなる所定の厚みのある部分と,
前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分とが形成され,
前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,
前記底面を含む下部部分と前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分により挟まれる中間部分を構成する部分の色が,前記上部部分及び前記下部部分をそれぞれ構成する部分の色とは異なる色を持つ
食器。」

(甲3−2発明)
「竹材からなり,下から上に向けて,下部部分,中間部分,上部部分からなる所定の厚みのある部分と,
前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分とが形成され,
前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし, 前記中間部分の色が前記下部部分及び上部部分のそれぞれの色とは異なる色合いを持つ食器。」

(4)甲4の記載事項等
ア 甲4には,以下の事項が記載されている。



(ア)甲4として提出された4枚目には,以下の事項が記載されている。

(イ)前記(ア)の「近年では,CO2を吸収して地球温暖化を抑止する天然資源としても期待される竹ですが,これをこども用食器に採用し,国内外で注目を集めるブランドがファンファンです。」という記載,及び,「竹の集成材が見た目にも美しく癒されるアイテムが揃います。」という記載から,写真にある食器は,こども用食器であり,竹の集成材から形成されていることがわかる。

(ウ)前記(ア)の全体写真及び部分拡大写真から,こども用食器は,所定の厚みのある部分と,窪んだ部分が形成されていることがわかる。

(エ)前記(ア)の部分拡大写真より,窪んだ部分は,底面と立ち上がり面を備えており,前記底面と前記立ち上がり面は角をなしていることがわかる。
また,前記底面と前記立ち上がり面とがなす角は丸みがつけられていることがわかる。

(オ)前記(ア)の部分拡大写真より,窪んだ部分の外周部は,底面から立ち上がり面の上端部にかけて連続しており,前記底面を含む下部部分,前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分,及び,前記上部部分と前記下部部分により挟まれる中間部分からなり,前記中間部分の色が前記上部部分及び前記下部部分の色と異なることがわかる。

(カ)前記(ア)の部分拡大写真,及び,前記(オ)より,所定の厚みのある部分は,下から上に向けて,下部部分,中間部分,及び,上部部分からなる竹材から構成されていることがわかる。

イ したがって,甲4には,以下の発明が記載されていると認められる。
(甲4−1発明)
「竹の集成材からなる所定の厚みのある部分と,
前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分とが形成され,
前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,前記角は丸みがつけられており,
前記底面を含む下部部分と前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分により挟まれる中間部分を構成する部分の色が,前記上部部分及び前記下部部分をそれぞれ構成する部分の色とは異なる色を持つ
こども用食器。」

(甲4−2発明)
「竹の集成材からなり,下から上に向けて,下部部分,中間部分,上部部分からなる所定の厚みのある部分と,
前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分とが形成され,
前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,前記角は丸みがつけられており,
前記中間部分の色が前記下部部分及び上部部分のそれぞれの色とは異なる色合いを持つこども用食器。」

(5)甲5の記載事項等
ア 甲5には,以下の事項が記載されている。
(ア)甲5の61ページの右上には,以下の事項が記載されている。



(イ)前記(ア)の「初心者ママでも楽しく料理&盛り付けできる食器セット。丈夫で衛生的に使える竹製でお手入れもラクチン。竹集成材(ウレタン塗装)。」という記載から,写真にある食器は,竹集成材からできていることがわかる。

(ウ)前記(ア)の食器の写真より,食器は,所定の厚みのある部分と,窪んだ部分が形成されており,前記窪んだ部分は,底面と立ち上がり面を備えており,前記底面と前記立ち上がり面は角をなしていることがわかる。

(エ)前記(ア)の食器の写真より,窪んだ部分の外周部は,底面から立ち上がり面の上端部にかけて連続しており,前記底面を含む下部部分,前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分,及び,前記上部部分と前記下部部分により挟まれる中間部分からなり,前記中間部分の色が前記上部部分及び前記下部部分の色と異なることがわかる。

(オ)前記(ア)の食器の写真,及び,前記(エ)より,所定の厚みのある部分は,下から上に向けて,下部部分,中間部分,及び,上部部分からなる竹材から構成されていることがわかる。

(カ)前記(ア)の「1〜5歳」という記載より,写真にある食器は,1〜5歳用の食器であることがわかる。

イ したがって,甲5には,以下の発明が記載されていると認められる。
(甲5−1発明)
「竹集成材からなる所定の厚みのある部分と,
前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分とが形成され,
前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,
前記底面を含む下部部分と前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分により挟まれる中間部分を構成する部分の色が,前記上部部分及び前記下部部分をそれぞれ構成する部分の色とは異なる色を持つ
1〜5歳用の食器。」

(甲5−2発明)
「竹集成材からなり,下から上に向けて,下部部分,中間部分,上部部分からなる所定の厚みのある部分と,
前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分とが形成され,
前記窪んだ部分において底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,
前記中間部分の色が前記下部部分及び上部部分のそれぞれの色とは異なる色合いを持つ1〜5歳用の食器。」

(6)甲6の記載事項等
ア 甲6には,以下の事項が記載されている。
(ア)甲6の28ページの左上には,以下の事項が記載されている。











(イ)前記(ア)の「竹製食器」という記載,及び,食器の写真から,写真にある食器は,竹材から形成されていることがわかる。

(ウ)前記(ア)の食器の写真より,食器は,所定の厚みのある部分と,窪んだ部分が形成されており,前記窪んだ部分は,底面と立ち上がり面を備えており,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなしていることがわかる。

(エ)前記(ア)の食器の写真より,窪んだ部分の外周部は,底面から前記立ち上がり面の上端部にかけて連続しており,底面を含む下部部分,立ち上がり面の上端部を含む上部部分,及び,前記上部部分と前記下部部分により挟まれる中間部分からなり,前記中間部分の色が前記上部部分及び前記下部部分の色と異なることがわかる。

(オ)前記(ア)の食器の写真,及び,前記(エ)より,所定の厚みのある部分は,下から上に向けて,下部部分,中間部分,及び,上部部分からなる竹材から構成されていることがわかる。

(カ)甲6の28ページには,赤ちゃん用の食器が紹介されていることから,前記(ア)の食器も赤ちゃん用の食器であることがわかる。

イ したがって,甲6には,以下の発明が記載されていると認められる。
(甲6−1発明)
「竹材からなる所定の厚みのある部分と,
前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分とが形成され,
前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,
前記底面を含む下部部分と前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分により挟まれる中間部分を構成する部分の色が,前記上部部分及び前記下部部分をそれぞれ構成する部分の色とは異なる色を持つ
赤ちゃん用の食器。」

(甲6−2発明)
「竹板からなり,下から上に向けて,下部部分,中間部分,上部部分からなる所定の厚みのある部分と,
前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分とが形成され,
前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,
前記中間部分の色が前記下部部分及び上部部分のそれぞれの色とは異なる色合いを持つ赤ちゃん用の食器。」

(7)甲7の記載事項等
ア 甲7は,以下の事項が記載されている。
(ア)甲7の131ページの右上には,以下の事項が記載されている。


(イ)前記(ア)の「竹を使ったプレート」という記載,及び,プレートの写真から,写真にあるプレートは,竹材から形成されていることがわかる。

(ウ)前記(ア)のプレートの写真より,プレートは,所定の厚みのある部分と,窪んだ部分が形成されており,前記窪んだ部分は,底面と立ち上がり面を備えており,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなしていることがわかる。

(エ)前記(ア)のプレートの写真より,窪んだ部分の外周部は,底面から立ち上がり面の上端部にかけて連続しており,前記底面を含む下部部分,前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分,及び,前記上部部分と前記下部部分により挟まれる中間部分からなり,前記中間部分の色が前記上部部分及び前記下部部分の色と異なることがわかる。

(オ)前記(ア)のプレートの写真,及び,前記(エ)より,所定の厚みのある部分は,下から上に向けて,下部部分,中間部分,及び,上部部分からなる竹材から構成されていることがわかる。

(カ)甲7の131ページには,ベビー用品が紹介されていることから,前記(ア)の食器もベビー用プレートであることがわかる。

イ したがって,甲7には,以下の発明が記載されていると認められる。
(甲7−1発明)
「竹材からなる所定の厚みのある部分と,
前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分とが形成され,
前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,
前記底面を含む下部部分と前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分により挟まれる中間部分を構成する部分の色が,前記上部部分及び前記下部部分をそれぞれ構成する部分の色とは異なる色を持つ
ベビー用プレート。」

(甲7−2発明)
「竹板からなり,下から上に向けて,下部部分,中間部分,上部部分からなる所定の厚みのある部分と,
前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分とが形成され,
前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,
前記中間部分の色が前記下部部分及び上部部分のそれぞれの色とは異なる色合いを持つベビー用プレート。」

(8)甲8の記載事項等
ア 甲8は,以下の事項が記載されている。
(ア)甲8の17ページの左下には,以下の事項が記載されている。


(イ)前記(ア)の「竹の器」という記載,及び,プレートの写真から,写真にあるプレートは,竹材から形成されていることがわかる。

(ウ)前記(ア)のプレートの写真より,プレートは,所定の厚みのある部分と,窪んだ部分が形成されており,前記窪んだ部分は,底面と立ち上がり面を備えており,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなしていることがわかる。

(エ)前記(ア)のプレートの写真より,窪んだ部分の外周部は,底面から立ち上がり面の上端にかけて連続しており,前記底面を含む下部部分,前記立ち上がり面の上端を含む上部部分,及び,前記上部部分と前記下部部分により挟まれる中間部分からなり,前記中間部分の色が前記上部部分及び前記下部部分の色と異なることがわかる。

(オ)前記(ア)のプレートの写真,及び,前記(エ)より,所定の厚みのある部分は,下から上に向けて,下部部分,中間部分,及び,上部部分からなる竹材から構成されていることがわかる。

(カ)前記(ア)の「プレートにBIBとお箸が付いたVERYオリジナルセットを幼児食のスタートに」という記載から,プレートは幼児用プレートであることがわかる。

イ したがって,甲8には,以下の発明が記載されていると認められる。
(甲8−1発明)
「竹材からなる所定の厚みのある部分と,
前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分とが形成され,
前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,
前記底面を含む下部部分と前記立ち上がり面の上端を含む上部部分により挟まれる中間部分を構成する部分の色が,前記上部部分及び前記下部部分をそれぞれ構成する部分の色とは異なる色を持つ
幼児用プレート。」

(甲8−2発明)
「竹板からなり,下から上に向けて,下部部分,中間部分,上部部分からなる所定の厚みのある部分と,
前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分とが形成され,
前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,
前記中間部分の色が前記下部部分及び上部部分のそれぞれの色とは異なる色合いを持つ幼児用プレート。」

(9)甲9の記載事項等
甲9には,以下の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】 湯中に浸漬しプレスして平板状に成形してなる複数の割竹2を平面状に引き並べた状態下でその割竹2の引き並べ方向を互い違いとなるように三層或は適宜数重合積層し,接着剤を介して圧着一体化してなることを特徴とする竹製合板。
【請求項2】 断面円弧状の割竹2を湯中に浸漬し平面プレスした後,プレス状態のまま乾燥させて該割竹2を平板状に成形し,該平板状に成形した複数の割竹2を平面状に引き並べ,かかる状態下で割竹2の引き並べ方向を互い違いとなるように接着剤を介して適宜数重合積層し圧着一体化することを特徴とする竹製合板の製造方法。」

イ 「【0008】
【実施例】以下,本発明を図示する実施例に基づき説明する。先ず,第1図に示す如きマダケ,モウソウチク等における直径3〜15cm程度の地上茎部分の竹茎1を,第2図に示す如く,二〜三等分等適宜等分に縦割りして断面円弧状の割竹2を形成し,該割竹2の内周面側における隔壁状の節部3を切除して,第3図に示す如き樋状の割竹2を得る。
【0009】かかる樋状の割竹2を90℃以上の湯中に浸漬し,かかる状態下で40分以上第4図に示す如く平面プレス盤4をもってプレスする。湯中に浸漬された割竹2は軟化し,平面プレスによって第5図に示す如く樋状から平板状に変形させることができる。
【0010】かかる平面プレス状態のまま湯中から外部に取出してそのまま高周波をもって急速乾燥する。これによって割竹2は平板状に成形される。
【0011】次に,平板状に成形された割竹2における外表面側の隆起状の節部5を削り落すと共に第6図に示す如く該平板状の割竹2における両側縁部6,6をチップソーを用いて切断除去する。これにより割竹2は帯板状に完全成形される。
【0012】前記の工程を経て成形された複数の帯板状の割竹2を,第7図に示す如く,平面状に引き並べた状態下で上下方向に互い違いに三層或は適宜数重合積層し,エポキシ樹脂系接着剤その他の耐水性に優れた適宜の接着剤を用いて圧着一体化する。」

ウ 図7には,以下の事項が図示されている。


(10)甲10の記載事項等
甲10には,以下の事項が記載されている。
ア 甲10の142ページの中段から下段にかけて,以下の事項が記載されている。


イ 前記アの「このサラダボールは,細い角材を組み合わせて大きなブロックを作り,彫り上げたもの。」という記載,「作例では,48本の角材を12本ずつ交互に木理が直角になるように積層している。接着の際,すき間を作らないように,丁寧なカンナがけが必要である。」という記載,及び説明図より,複数の角材を積層して接着させたブロックを彫り上げて形成したサラダボールが記載されていることがわかる。

(11)甲11の記載事項等
甲11には,以下の事項が記載されている。
ア 「本考案は,色相,模様の異なる複数枚の薄板を積層接着して成る種板を,積層方向に対して斜めに切断して傾斜種板を形成し,これよりおぼん或いは菓子入れサラダボール,皿等の所望形状に形成して成る不定形な模様を有する容器に関するものである。
小田原,箱根地方には伝統工芸として精密な寄木細工がある。寄木は色相の異なる多種類の自然木の木片を必要形状に接着して緻密な幾何模様を表すものである。然るに近年では色付き天然木材の不足によって寄木にふさわしい模様を形成することが困難となっている。
この為先に,本出願人は特許第1113282号(特公昭56−52724号)によって寄木の表面に着色加工を施すことを先に提案した。」(明細書1ページ第17行〜2ページ第11行)

イ 「1は板目に挽いた4種類の厚さ2〜3mmの自然木材2を板目を平行に接着した積層種板である。」)(明細書2ページ第16行〜第18行)

ウ 「また実施例では,板目を平行にした平行合板を用いたが,板目に挽いた板を板目がクロスするように相互に積層接着したクロス合板を用いて良いことは勿論であるが,更にこのクロス合板に塗料を塗布すると,木口は塗料が導管に浸透して充分に色濃く着色され,板目は塗料を吸収せず,これにより鮮明なツートンカラーが表れ,従来の寄木にない斬新な模様が表れ,複雑多彩な製品を提供できる。」(明細書3ページ第10行〜第18行)

エ 図1には,以下の事項が図示されている。


オ 図2には,以下の事項が図示されている。



(12)甲12の記載事項等
甲12には,以下の事項が記載されている。
「【0002】
丸竹を素材にした器や容器などの凹部を有する竹製容器が知られている。例えば,丸竹を縦方向に半割にし,形成された凹部に食材を載せる食器やペンを置くペン皿などとして利用されている。また,丸竹を横方向に輪切りし,横に開口を形成して花を生けたりする花器,筆記具を立てる筆立てなどとして利用されている。」

(13)甲13の記載事項等
甲13には,以下の事項が記載されている。
ア 甲13の12ページの中段には,以下の事項が記載されている。



イ 甲13の11ページの「なぜ,ご飯粒をきれいにすくえるのか。それは,皿のエッジのアールとスプーンとの絶妙なるマッチングにある。」という記載,及び,11ページから13ページにかけての「平皿では,ご飯の量が減ってくるとうまくすくえない。少し周りを立ち上げ,アールをどれくらいにするか考えてすくいやすい形にした。」という記載,及び,前記アより,ご飯粒をきれいにすくうために皿のエッジにスプーンとフィットするアールを形成する点及び前記アールをどれくらいにするか調整する点が開示されている。

(14)甲14の記載事項等
甲14には,以下の事項が記載されている。
ア 「【0015】
【実施例】
以下図面もとづいて本考案の実施例を説明すると,図1においては,1は丸皿で,例えば,18cm,20cmの直径を有し,内側面2には,図2および図3に示すように内側底面に大きなアールでつながる内側面下部2Aと,内側面下部2Aに垂直に近い角度でつながる内側面上部2Bとを有するようにして,料理をすくい易くし,周縁には,図3に示すように内側面上部2Bに小さなアール2Cでつながり,料理をすくい易くするとともに,そのたれこぼしを防ぎ,かつ,様々なメニューに合わせることができる花型リム部3を有し,内側底面を,図2に示すように中央部が高く,周辺部に至るにしたがい除々に低くなる曲面,すなわち,たいこ型底面4にすることにより,料理のすくい残しを無くせるようにするとともに,きざみ食,ペースト食でも楽しい雰囲気で食事ができるようにし,外周面なは,手の滑りを防ぐ複数の彩色化した段状部5を成形する溝部6を有し,外側底面には,安定性を高め,横ずれを防止するため,図2および図3に示すように直径を大きめにした糸尻部7を有するように成形してなる。
この丸皿は,スプーンと内側面との当たりの隙間を無くす内側面形状を有し,直径18cmの丸皿は,和メニューに合わせ,直径20cmの丸皿は,洋メニューに合わせる。」

イ 図3には,以下の事項が図示されている。


(15)甲15の記載事項等
甲15には,以下の事項が記載されている。
ア 甲15の33,34ページには以下の事項が記載されている。




イ 前記アより,ボールエンドミルを使用することにより,曲面加工や傾斜加工を行うことができることがわかる。

(16)甲16の1,甲16の2の記載事項等
甲16の1,甲16の2には,以下の事項が記載されている。
ア 甲16の1の76ページの左下には,以下の事項が記載されている。


イ 甲16の2には,以下の事項が記載されている。


ウ 前記ア,イの写真で示されるディッシュビットは,トレーやお皿の彫込み加工に利用できることがわかる。

エ 前記イより,ディッシュビットの半径(R)が6mmであることが記載されており,このディッシュビットを利用すれば,彫り込んだ部分の縁がカーブ(R6mm)して切削できることがわかる。

(17)甲17の記載事項等
甲17には,以下の事項が記載されている。
ア 甲17の1−260ページの中段には,以下の事項が記載されている。



イ 前記アより品番「XPM−EBD−R5」,「XPM−EBD―R15.0」は,それぞれ,ボール半径が5.00mm,15.00mmであり,5〜15mmの間の半径の品番も存在することから,Rが5〜15mmとなるように形成可能なボールエンドミルが開示されていることがわかる。

(18)甲18の1,甲18の2の記載事項等
甲18の1には,以下の事項が記載されている。
ア 甲18の1には,以下の事項が記載されている。


イ 甲18の1の「煮沸処理した竹と炭化処理の工程を加えた竹の双方を斜めに積層して集成材にした後,くり抜く。」という記載,及び,前記アより,竹集成材の木目方向を略同一にした構成が開示されている。

(19)甲19の1,甲19の2の記載事項等
甲19の1には,以下の事項が記載されている。
ア 甲19の1の37ページには,以下の事項が記載されている。


イ 前記アの「さてそこで,おすすめをしたいのが,これ。ご覧のとおりに愛らしい,子供用の食器セット。」という記載から,写真の食器セットは子供用の食器セットであることがわかる。

ウ 前記アの「また,すべてが竹を使用した手作りというのも素晴らしい点。」という記載から,食器セットは竹から形成されていることがわかる。

エ 前記アの食器セットの写真から,食器セットは,木目方向が異なる部分があることがわかる。

(20)甲20の記載事項等
甲20には,以下の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】
短冊状の竹材を厚さ方向に積層してなる竹積層材をシート状にスライスして形成した3枚の竹材シートと,柔軟性を有するベースシート材とを有する竹材を用いたシート素材において,前記3枚の竹材シートのうち,ベースシート材の一面に積層される第1の竹材シート材は,ベースシート材の他面に積層される第2の竹材シート材及び前記第1の竹材シート材に積層される第3の竹材シート材とは,その繊維方向が異なっていることを特徴とする竹材を用いたシート素材。
【請求項2】
前記第2の竹材シート材と,第3の竹材シート材とは,繊維方向が同じであることを特徴とする請求項1記載の竹材を用いたシート素材。
【請求項3】
前記第1の竹材シート材と,前記第2の竹材シート材及び前記第3の竹材シート材とは,繊維方向が90度異なっていることを特徴とする請求項2記載の竹材を用いたシート素材。」

イ 「【0009】
本発明に係る竹材を用いたシート素材は,短冊状の竹材を厚さ方向に積層してなる竹積層材をシート状にスライスして形成した3枚の竹材シートと,柔軟性を有するベースシート材とを有する竹材を用いたシート素材であって,前記3枚の竹材シートのうち,ベースシート材の一面に積層される第1の竹材シート材は,ベースシート材の他面に積層される第2の竹材シート材及び前記第1の竹材シート材に積層される第3の竹材シート材とは,その繊維方向が異なっている。
【0010】
また,前記第2の竹材シート材と,第3の竹材シート材とは,繊維方向が同じに設定されている。
【0011】
さらに,前記第1の竹材シート材と,前記第2の竹材シート材及び前記第3の竹材シート材とは,繊維方向が90度異なっている。」

ウ 「【0025】
この際,第1の竹材シート100Aの繊維方向(図1における矢印X方向)は,第2の竹材シート100Bと第3の竹材シート100Cとの繊維方向(図1における矢印Y方向)と90度異なるようにする。また,第2の竹材シート100Bの繊維方向と第3の竹材シート100Cの繊維方向とは同一にする。」

エ 図1には,以下の事項が図示されている。



第7 対比・判断
1 本件発明1について
(1)甲1−1発明を主引用発明とした場合
ア 無効理由1について
(ア)本件発明1と甲1−1発明とを対比すると,甲1−1発明における「幼児用のランチプレート」は,その機能に照らして,本件発明1における,「幼児用食器」に相当する。
一般に,「集成材」とは,「木材を,繊維方向を互いに平行にして,接着剤で集成接着して作ったもの」(広辞苑第六版)を意味する用語であり,甲9の段落【0008】〜【0012】,図7等の記載事項を踏まえれば,竹の集成材とは,複数枚の竹材の平板を積層し,接着剤で接着したものであることは,技術常識である。
そして,竹材の平板は,平板上に加工されたものであることは明らかであるので,甲1−1発明の「所定の厚みのある部分」は,平板上に加工された複数枚の竹材平板を積層し,接着して形成された部分であるといえることから,本件発明1の「積層厚板部」に相当し,甲1−1発明の「竹を張り合わせた集成材からなる所定の厚みのある部分」と,本件発明1の「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層されるように接着される積層厚板部」とは,「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数枚の竹材平板が積層されるように接着される積層厚板部」である点で共通する。
また,木材からなる厚板に窪み部を形成する際,穿削して形成することは技術常識であり(甲2,甲10,甲16の1等の記載参照),甲1−1発明は,料理を載せるためにくぼみを形成しているので,その用途に適した所望の形状のくぼみが穿削されていることは明らかである。
そうすると,甲1−1発明の「料理を載せるために前記所定の厚みのある部分に形成されたくぼみ」は,本件発明1の「食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部」に相当する。
甲1−1発明の「底面」,「立ち上がり面」は,穿削によりくぼみが形成されることによって得られるものであり,その機能に照らして対比すると,それぞれ,本件発明1の「底面」,「立面」に相当し,甲1−1発明における,「前記底面」と「前記立ち上がり面」とがなす「角」は,本件発明1における「立面と底面とのなす角」に相当するので,甲1−1発明の「前記くぼみにおいて,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,」と本件発明1の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部とを具備し,」は,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,」という点で共通する。
さらに,甲1のランチプレートの写真より,底面と立ち上がり面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なることがわかるので,甲1−1発明の「前記底面を含む下部部分と前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分により挟まれる中間部分を構成する部分の色が,前記上部部分及び前記下部部分をそれぞれ構成する部分の色とは異なる色を持つ」と本件発明1の「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つ」は,「前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つ」という点で共通する。

(イ)したがって,本件発明1と甲1−1発明とは,以下の点で一致し,相違する。

<一致点1>
「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数枚の竹材平板が積層されるように接着される積層厚板部と,
食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部と,
前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,
前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つ
幼児用食器。」

<相違点1>
本件発明1は,「複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層される」ことにより,「立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる」のに対し,甲1−1発明は,複数の竹材平板が積層され,中間部分の色が上部部分及び下部部分の色とは異なるものであるが,素材色が異なる竹材平板を2種以上,その色が互い違いになるように竹材平板を積層したものであるか不明であり,さらに,立ち上がりの中間部分の色が上部部分及び下部部分の色と異なることが,素材色が異なる竹材平板を互い違いになるように積層したことによるものか否か不明である点。

<相違点2>
本件発明1は,立面と底面とのなす角が「半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部」を具備し,「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つ」のに対し,甲1−1発明は,立面と底面とのなす角を備え,前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つものであるが,前記角がR部を備え,R部が半径略5〜15mmとなるよう形成され,R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なることについて,不明である点。

(ウ)そうすると,本件発明1と甲1−1発明とは,前記相違点1,2において相違する。
したがって,本件発明1は,甲1−1発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。

(エ)請求人の主張について
請求人は,以下の主張をしている(令和2年12月8日付け口頭審理陳述要領書)。
a 「窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部」に関し,甲1等に示されている食材等と比較すれば前記R部が5〜15mmの範囲内にあることは常識的に考えれば明白であり,15mm以上の半径を持つR部がどの程度大きなものになるかは想像すれば容易に理解でき(スープ皿ほど大きなものとなる),5mm以下についても同様であり(食材を窪み部で保持できないようなものとなる),当業者であれば,当該R部は5〜15mmの範囲内であることを直接的に理解するので,当該構成要件は本件発明との相違点ではない。

b 前記主張について検討する。
前記<相違点2>に記載したように,甲1−1発明は,立面と底面とのなす角がR部を備えるか否かが不明である。
仮に,前記角がR部を備えるものであるとしても,甲1に示される写真は寸法を正確に測定することが困難である斜視図(斜め方向から見た図)であり,その写真から,R部の半径を,寸法が不明である食材等から把握することは,たとえ,当業者であっても,困難といわざるを得ない。
そうすると,請求人が主張するように,当業者であれば,甲1等からR部は5〜15mmの範囲内であることを直接的に理解することができるとはいえない。
よって,前記請求人の主張は受け入れることができない。

c 加えて,請求人は,引用発明の認定に関し,補助的に参考資料21〜57を参酌されたい旨主張する(第1回口頭審理調書)。
前記主張について検討すると,そもそも,請求人は,甲1に記載された発明を主引用例として,本件発明の新規性進歩性の欠如を無効理由として主張しているところ,刊行物に記載された発明は,刊行物に記載されている事項,及び,刊行物に記載されているに等しい事項から把握するものである。
そして,参考資料21〜57に記載された事項は,甲1に記載された「ランチプレート」との関係が不明であり,甲1に記載された発明の構成を特定するにあたり,甲1に記載されているに等しい事項を示すものであるともいえず,甲1に記載された発明の認定に際し,参考資料21〜57を参酌することはできない。
したがって,前記請求人の主張は受け入れることはできず,甲1に記載された発明は,前記第6 1(1)イに記載のとおりである。

イ 無効理由2について
以下,前記相違点について検討する。
(ア)相違点1について
甲1には,竹材平板を積層して形成される食器において,素材色の異なる複数の竹材平板を,その色が互い違いになるように積層する点については記載されておらず,また,異なる素材色の竹材平板をその色が互い違いになるように積層する点について,動機付けになるような記載も見当たらない。
また,平板を積層した積層体の作り方に関して,色が互いに異なる複数の平板を積層することで積層体の色を異ならせる手法(甲11等参照)と,複数の平板を積層した上で積層体に着色を施すことで積層体の色を異ならせる手法があることは当業者であれば容易に理解し得ることであるが,甲1−1発明において,立ち上がり面の中間部分の色が上部部分及び下部部分の色とは異なるものであるとするために,どのような手法が用いられているかは不明であるところ,色が互いに異なる複数の平板を積層することで積層体の色を異ならせる手法を積極的に選択する動機は見当たらない。
さらに,甲11には,複数枚の木材平板から形成される皿等の色に関して,木材の素材色によるものと木材の表面に着色加工を施したものの両方が存在することが示されているが(明細書1ページ第17行〜2ページ第11行参照。),木材の色に関して,素材色によるものと木材の表面に着色加工を施したもののうちから素材色を積極的に選択する動機は見当たらない。
加えて,甲2〜10,12〜17においても,竹材平板を積層して形成される食器において,素材色の異なる複数の竹材平板を,その色が互い違いになるように積層する点については記載されておらず,また,異なる素材色の竹材平板をその色が互い違いになるように積層する点について,動機付けになるような記載も見当たらない。
したがって,甲1−1発明において,複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上であり,複数枚の竹材平板が色が互い違いになるように積層されることで,中間部分の色が上部部分及び下部部分の色とは異なるものであるようにする積極的な動機は認められず,甲1〜17に記載された事項から,本件発明1の相違点1に係る構成を備えるようにすることはできない。

(イ)相違点2について
甲2には,窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角にR部が形成された構成が記載されている(前記第6 1(2)ア(エ)参照。)。また,甲4にも,窪み部において形成された立面と底面とのなす角にR部が形成された構成が記載されている(前記第6 1(4)ア(エ)参照)。
しかしながら,甲2,4には,特定の数値範囲の半径を有するR部の立ち上がりの中間部分の色を,前記中間部分を挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分の色とは異ならせる点については記載されておらず,また,そのような構成にすることの動機付けになるような記載も見当たらない。
また,甲1,3,5〜17のいずれの文献にも,特定の数値範囲の半径を有するR部の立ち上がりの中間部分の色を前記中間部分を挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分の色とは異ならせる点については記載されておらず,また,そのような構成にすることの動機付けになるような記載も見当たらない。
さらに,甲2,4には,R部の半径の具体的な数値範囲は示されておらず,甲13,14には,食器の縁の部分のアールをスプーン形状に合わせることで,料理をすくいやすくする点が記載されているが(前記第6 1(13),(14)参照。),甲13,14にも,アールの半径の具体的な数値には言及されていない。
そうすると,甲1−1発明において,立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部とを具備し,前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つようにすることは,当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって,甲1−1発明において,甲1〜17に記載された事項から,本件発明1の相違点2に係る構成を備えるようにすることはできない。

(ウ)本件発明1の効果について
本件発明1は,略5〜15mmのR部を備えることによって形成される曲面状の立ち上がり部の中間部分の素材色を,立ち上がり上部部分及び下部部分の素材色とは異なる色とすることで,窪み断面には積層部分の色が変わって見え,窪みの深さを視覚的に認識させるとともに,スプーンへの食物移載力転換機構として機能し,スプーンでの食物かき上げ動作が確実になるという効果(段落【0016】,【0022】,【0028】,【0036】参照。)を奏するものである。
この効果は,立面と底面とのなす角に,半径が略5〜15mmのR部を形成したことと,前記R部が形成される曲面状の立ち上がり部の中間部分の素材色を,立ち上がり上部部分及び下部部分の素材色とは異なる色としたことによる相乗効果であると認められるところ,甲1〜17には,前記効果についての記載はなく,そのような効果についての示唆もない。また,前記効果は当業者にとって自明なものであるとはいえず,格別の効果であると認められる。
そうすると,甲1−1発明において,甲1〜17に記載された事項から,本件発明1の相違点1及び2に係る構成を備えるようにすることはできない。

(エ)したがって,本件発明1は,甲1−1発明,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 以上のことから,本件発明1は,甲1−1発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。また,本件発明1は,甲1−1発明,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)甲2−1発明を主引用発明とした場合
ア 無効理由1について
(ア)本件発明1と甲2−1発明とを対比する。
甲2−1発明の「所定の厚みのある部分」は,厚みがあるので厚板部ということができ,甲2−1発明の「竹材からなる所定の厚みのある部分」と本件発明1の「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層されるように接着される積層厚板部」は,「竹材からなる厚板部」という点で共通する。
甲2−1発明の「掘り込まれた部分」は,その機能に照らして対比すると,本件発明1の「穿削された窪み部」に相当し,甲2−1発明は,食器であることから,食物を盛るために掘り込まれた部分を形成していることは明らかであり,その用途に適した所望の形状が穿削されているといえる。
そうすると,甲2−1発明の「前記所定の厚みのある部分から掘り込まれた部分」と本件発明1の「食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部」は,「食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部」という点で共通する。
甲2−1発明の「底面」,「立ち上がり面」は,穿削により掘り込まれた部分が形成されることによって得られるものであり,その機能に照らして対比すると,それぞれ,本件発明1の「底面」,「立面」に相当し,甲2−1発明における,「前記底面」と「前記立ち上がり面」とが接続する部分に形成される「縁」は,本件発明1における「立面と底面とのなす角」に相当し,甲2−1発明における,前記縁につけられた「丸み」は,本件発明1における,立面と底面とのなす角に形成された「R部」に相当するので,甲2−1発明の「前記掘り込まれた部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とが接続する部分に縁が形成され,前記縁は,スプーン等でスムーズにすくえるように丸みがつけられており,」と本件発明1の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部とを具備し,」は,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が形成されたR部とを具備し,」という点で共通する。
さらに,甲2の2010年10月4日の書き込みの写真から,底面と立ち上がり面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なることがわかるので,甲2−1発明の「前記底面を含む下部部分と前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分により挟まれる中間部分を構成する部分の色が,前記上部部分及び前記下部部分をそれぞれ構成する部分の色とは異なる色を持つ」と本件発明1の「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つ」は,「前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つ」という点で共通する。
また,甲2−1発明の「食器」と本件発明1の「幼児用食器」は「食器」という点で共通する。

(イ)したがって,本件発明1と甲2−1発明とは,以下の点で一致し,相違する。

<一致点2>
「竹材からなる厚板部と,
食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部と,
前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が形成されたR部とを具備し,
前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つ
食器。」

<相違点3>
本件発明1は,「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層される」ことにより,「立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる」のに対し,甲2−1発明は,竹材からなる厚板部であり,中間部分の色が上部部分及び下部部分の色とは異なるものであるが,複数枚の竹材平板が積層されたものであるか,さらに,複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上であり,複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層されるものであるか,加えて,立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なるかについて,全て不明である点。

<相違点4>
本件発明1は,立面と底面とのなす角が「半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部」を具備し,「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つ」のに対し,甲2−1発明は,立面と底面とのなす角がR部を備え,前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つものであるが,前記R部が半径略5〜15mmとなるよう形成されているか,さらに,前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が,立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なるかについて,ともに不明である点。

<相違点5>
本件発明1は「幼児用食器」であるのに対し,甲2−1発明は「食器」である点。

(ウ)そうすると,本件発明1と甲2−1発明とは,前記相違点3〜5において相違する。
したがって,本件発明1は,甲2−1発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。

イ 無効理由2について
以下,前記相違点について検討する。
(ア)相違点3について
複数枚の竹材の平板を積層し,接着剤で接着して厚板を形成することは周知技術である(例えば,甲9の段落【0008】〜【0012】,図7等参照。)。
しかしながら,甲2には,竹材平板を積層して形成される食器において,素材色の異なる複数の竹材平板を,その色が互い違いになるように積層する点については記載されておらず,また,異なる素材色の竹材平板をその色が互い違いになるように積層する点について,動機付けになるような記載も見当たらない。
また,平板を積層した積層体の作り方に関して,色が互いに異なる複数の平板を積層することで積層体の色を異ならせる手法(甲11等参照)と,複数の平板を積層した上で積層体に着色を施すことで積層体の色を異ならせる手法があるが,甲2−1発明において,立ち上がり面の中間部分の色が上部部分及び下部部分の色とは異なるものであるとするために,どのような手法が用いられているかは不明であるところ,色が互いに異なる複数の平板を積層することで積層体の色を異ならせる手法を積極的に選択する動機は見当たらない。
さらに,甲11には,木材の色に関して,素材色によるものと木材の表面に着色加工を施したものの両方が存在することが示されているが,両者のうち素材色を積極的に選択する動機は見当たらない。
加えて,甲2〜10,12〜17においても,竹材平板を積層して形成される食器において,素材色の異なる複数の竹材平板を,その色が互い違いになるように積層する点については記載されておらず,また,異なる素材色の竹材平板をその色が互い違いになるように積層する点について,動機付けになるような記載も見当たらない。
したがって,甲2−1発明において,複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上であり,複数枚の竹材平板が素材色が互い違いに積層されるようにする積極的な動機は認められず,甲1〜17に記載された事項から,本件発明1の相違点3に係る構成を備えるようにすることはできない。

(イ)相違点4について
甲2と同様に,甲4にも,窪み部において形成された立面と底面とのなす角にR部が形成された構成が記載されている(前記第6 1(4)ア(エ)参照)。
しかしながら,甲2,4には,特定の数値範囲の半径を有するR部の立ち上がりの中間部分の色を,前記中間部分を挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分の色とは異ならせる点については記載されておらず,また,そのような構成にすることの動機付けになるような記載も見当たらない。
また,甲1,3,5〜17のいずれの文献にも,特定の数値範囲の半径を有するR部の立ち上がりの中間部分の色を前記中間部分を挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分の色とは異ならせる点については記載されておらず,また,そのような構成にすることの動機付けになるような記載も見当たらない。
さらに,甲2,4には,R部の半径の具体的な数値範囲は示されておらず,甲13,14には,食器の縁の部分のアールをスプーン形状に合わせることで,料理をすくいやすくする点が記載されているが(前記第6 1(13),(14)参照。),甲13,14にも,アールの半径の具体的な数値には言及されていない。
そうすると,甲2−1発明において,立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部とを具備し,前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つようにすることは,当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって,甲2−1発明において,甲1〜17に記載された事項から,本件発明1の相違点4に係る構成を備えるようにすることはできない。

(ウ)相違点5について
甲2−1発明を幼児用の食器として用いることは当業者が適宜行うことである。
そうすると,甲2−1発明において,本件発明1の相違点5に係る構成を備えるようにすることは当業者が容易になし得たことである。

(エ)本件発明1の効果について
前記(1)イ(ウ)の本件発明1の効果についての検討を参照。

(オ)したがって,本件発明1は,甲2−1発明,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 以上のことから,本件発明1は,甲2−1発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。また,本件発明1は,甲2−1発明,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)甲3−1発明を主引用発明とした場合
ア 無効理由1について
(ア)本件発明1と甲3−1発明とを対比する。
甲3−1発明の「所定の厚みのある部分」は,厚みがあるので厚板部ということができ,甲3−1発明の「竹材からなる所定の厚みのある部分」と本件発明1の「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層されるように接着される積層厚板部」は,「竹材からなる厚板部」という点で共通する。
また,木材からなる厚板に窪み部を形成する際,穿削して形成することは技術常識であり(甲2,甲10,甲16の1等の記載参照),甲3−1発明は,食器であることから,食物を盛るために窪んだ部分を形成していることは明らかであり,その用途に適した所望の形状が穿削されているといえる。
そうすると,甲3−1発明の「前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分」と本件発明1の「食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部」は,「食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部」という点で共通する。
甲3−1発明の「底面」,「立ち上がり面」は,穿削により窪んだ部分が形成されることによって得られるものであり,その機能に照らして対比すると,それぞれ,本件発明1の「底面」,「立面」に相当し,甲3−1発明における,「前記底面」と「前記立ち上がり面」とがなす「角」は,本件発明1における「立面と底面とのなす角」に相当するので,甲3−1発明の「前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,」と本件発明1の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部とを具備し,」は,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,」という点で共通する。
さらに,甲3の2010年10月8日の書き込みの食器の写真より,底面と立ち上がり面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なることがわかるので,甲3−1発明の「前記底面を含む下部部分と前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分により挟まれる中間部分を構成する部分の色が,前記上部部分及び前記下部部分をそれぞれ構成する部分の色とは異なる色を持つ」と本件発明1の「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つ」は,「前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つ」という点で共通する。
また,甲3−1発明の「食器」と本件発明1の「幼児用食器」は「食器」という点で共通する。

(イ)したがって,本件発明1と甲3−1発明とは,以下の点で一致し,相違する。

<一致点3>
「竹材からなる厚板部と,
食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部と,
前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,
前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つ
食器。」

<相違点6>
本件発明1は,「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層される」ことにより,「立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる」のに対し,甲3−1発明は,竹材からなる厚板部であり,中間部分の色が上部部分及び下部部分の色とは異なるものであるが,複数枚の竹材平板が積層されたものであるか,さらに,複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上であり,複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層されるものであるか,加えて,立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なるかについて,全て不明である点。

<相違点7>
本件発明1は,立面と底面とのなす角が「半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部」を具備し,「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つ」のに対し,甲3−1発明は,立面と底面とのなす角を備え,前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つものであるが,前記角が,R部を備えるか,さらに,R部が半径略5〜15mmとなるよう形成されているか,加えて,前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が,立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なるかについて,全て不明である点。

<相違点8>
本件発明1は「幼児用食器」であるのに対し,甲3−1発明は「食器」である点。

(ウ)そうすると,本件発明1と甲3−1発明とは,前記相違点6〜8において相違する。
したがって,本件発明1は,甲3−1発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。

イ 無効理由2について
以下,前記相違点について検討する。
(ア)相違点6について
前記(2)イ(ア)の相違点3についての検討を参照。

(イ)相違点7について
前記(1)イ(イ)の相違点2についての検討を参照。

(ウ)相違点8について
前記(2)イ(ウ)の相違点5についての検討を参照。

(エ)本件発明1の効果について
前記(1)イ(ウ)の本件発明1の効果についての検討を参照。

(オ)したがって,本件発明1は,甲3−1発明,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 以上のことから,本件発明1は,甲3−1発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。また,本件発明1は,甲3−1発明,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)甲4−1発明を主引用発明とした場合
ア 無効理由1について
(ア)本件発明1と甲4−1発明とを対比すると,甲4−1発明における「こども用食器」は,その機能に照らして,本件発明1における,「幼児用食器」に相当する。
既に述べたとおり(前記(1)ア(ア)),竹の集成材とは,複数枚の竹材の平板を積層し,接着剤で接着したものであることは,技術常識である。
そして,竹材の平板は,平板上に加工されたものであることは明らかであるので,甲4−1発明の「所定の厚みのある部分」は,平板上に加工された複数枚の竹材平板を積層し,接着して形成された部分であるといえることから,本件発明1の「積層厚板部」に相当し,甲4−1発明の「竹の集成材からなる所定の厚みのある部分」と,本件発明1の「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層されるように接着される積層厚板部」とは,「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板が積層されるように接着される積層厚板部」である点で共通する。
また,木材からなる厚板に窪み部を形成する際,穿削して形成することは技術常識であり(甲2,甲10,甲16の1等の記載参照),甲4−1発明は,こども用食器であることから,食物を盛るために窪んだ部分を形成していることは明らかであり,その用途に適した所望の形状が穿削されているといえる。
そうすると,甲4−1発明の「前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分」は,本件発明1の「食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部」に相当する。
甲4−1発明の「底面」,「立ち上がり面」は,穿削により窪んだ部分が形成されることによって得られるものであり,その機能に照らして対比すると,それぞれ,本件発明1の「底面」,「立面」に相当し,甲4−1発明における,「前記底面」と「前記立ち上がり面」とがなす「角」は,本件発明1における「立面と底面とのなす角」に相当し,甲4−1発明における,前記角につけられた「丸み」は,本件発明1における,立面と底面とのなす角に形成された「R部」に相当するので,甲4−1発明の「前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,前記角は丸みがつけられており,」と本件発明1の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部とを具備し,」は,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が形成されたR部とを具備し,」という点で共通する。
さらに,甲4の部分拡大写真から,底面と立ち上がり面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なることがわかるので,甲4−1発明の「前記底面を含む下部部分と前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分により挟まれる中間部分を構成する部分の色が,前記上部部分及び前記下部部分をそれぞれ構成する部分の色とは異なる色を持つ」と本件発明1の「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つ」は,「前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つ」という点で共通する。

(イ)したがって,本件発明1と甲4−1発明とは,以下の点で一致し,相違する。

<一致点4>
「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板が積層されるように接着される積層厚板部と,
食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部と,
前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が形成されたR部とを具備し,
前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つ
幼児用食器。」

<相違点9>
本件発明1は,「複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層される」ことで,「立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる」のに対し,甲4−1発明は,複数の竹材平板が積層され,中間部分の色が上部部分及び下部部分の色とは異なるものであるが,素材色が異なる竹材平板を2種以上,その色が互い違いになるように竹材平板を積層したものであるか,さらに,立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分を構成する竹材平板の素材色とは異なるかについて,ともに不明である点。

<相違点10>
本件発明1は,立面と底面とのなす角が「半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部」を具備し,「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つ」のに対し,甲4−1発明は,立面と底面とのなす角がR部を備え,前記立面と前記底面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つものであるが,前記R部が半径略5〜15mmとなるよう形成されているか,さらに,前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が,立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なるかについて,ともに不明である点。

(ウ)そうすると,本件発明1と甲4−1発明とは,前記相違点9,10において相違する。
したがって,本件発明1は,甲4−1発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。

イ 無効理由2について
以下,前記相違点について検討する。
(ア)相違点9について
前記(1)ア(ア)の相違点1についての検討を参照。

(イ)相違点10
前記(2)イ(イ)の相違点4についての検討を参照。

(ウ)本件発明1の効果について
前記(1)イ(ウ)の本件発明1の効果についての検討を参照。

(エ)したがって,本件発明1は,甲4−1発明,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 以上のことから,本件発明1は,甲4−1発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。また,本件発明1は,甲4−1発明,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)甲5−1発明を主引用発明とした場合
ア 無効理由1について
(ア)本件発明1と甲5−1発明とを対比すると,甲5−1発明における「1〜5歳用の食器」は,その機能に照らして,本件発明1における,「幼児用食器」に相当する。
既に述べたとおり(前記(1)ア(ア)),竹の集成材とは,複数枚の竹材の平板を積層し,接着剤で接着したものであることは,技術常識である。
そして,竹材の平板は,平板上に加工されたものであることは明らかであるので,甲5−1発明の「所定の厚みのある部分」は,平板上に加工された複数枚の竹材平板を積層し,接着して形成された部分であるといえることから,本件発明1の「積層厚板部」に相当し,甲5−1発明の「竹集成材からなる所定の厚みのある部分」と,本件発明1の「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層されるように接着される積層厚板部」とは,「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板が積層されるように接着される積層厚板部」である点で共通する。
また,木材からなる厚板に窪み部を形成する際,穿削して形成することは技術常識であり(甲2,甲10,甲16の1等の記載参照),甲5−1発明は,食器であることから,食物を盛るために窪んだ部分を形成していることは明らかであり,その用途に適した所望の形状が穿削されているといえる。
そうすると,甲5−1発明の「前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分」と本件発明1の「食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部」は,「食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部」という点で共通する。
甲5−1発明の「底面」,「立ち上がり面」は,穿削により窪んだ部分が形成されることによって得られるものであり,その機能に照らして対比すると,それぞれ,本件発明1の「底面」,「立面」に相当し,甲5−1発明における,「前記底面」と「前記立ち上がり面」とがなす「角」は,本件発明1における「立面と底面とのなす角」に相当するので,甲5−1発明の「前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,」と本件発明1の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部とを具備し,」は,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,」という点で共通する。
さらに,甲5の1〜5歳用の食器の写真より,底面と立ち上がり面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なることがわかるので,甲5−1発明の「前記底面を含む下部部分と前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分により挟まれる中間部分を構成する部分の色が,前記上部部分及び前記下部部分をそれぞれ構成する部分の色とは異なる色を持つ」と本件発明1の「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つ」は,「前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つ」という点で共通する。

(イ)したがって,本件発明1と甲5−1発明とは,以下の点で一致し,相違する。

<一致点5>
「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板が積層されるように接着される積層厚板部と,
食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部と,
前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,
前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つ
幼児用食器。」

<相違点11>
本件発明1は,「複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層される」ことで,「立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる」のに対し,甲5−1発明は,複数の竹材平板が積層され,中間部分の色が上部部分及び下部部分の色とは異なるものであるが,素材色が異なる竹材平板を2種以上,その色が互い違いになるように竹材平板を積層したものであるか,さらに,立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分を構成する竹材平板の素材色とは異なるかについて,ともに不明である点。

<相違点12>
本件発明1は,立面と底面とのなす角が「半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部」を具備し,「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つ」のに対し,甲5−1発明は,立面と底面とのなす角を備え,前記立面と前記底面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つものであるが,前記角が,R部を備えるか,さらに,R部が半径略5〜15mmとなるよう形成されているか,加えて,前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が,立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なるかについて,全て不明である点。

(ウ)そうすると,本件発明1と甲5−1発明とは,前記相違点11,12において相違する。
したがって,本件発明1は,甲5−1発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。

イ 無効理由2について
以下,前記相違点について検討する。
(ア)相違点11について
前記(1)イ(ア)の相違点1についての検討を参照。

(イ)相違点12
前記(1)イ(イ)の相違点2についての検討を参照。

(ウ)本件発明1の効果について
前記(1)イ(ウ)の本件発明1の効果についての検討を参照。

(エ)したがって,本件発明1は,甲5−1発明,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 以上のことから,本件発明1は,甲5−1発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。また,本件発明1は,甲5−1発明,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(6)甲6−1発明を主引用発明とした場合
ア 無効理由1について
(ア)本件発明1と甲6−1発明とを対比すると,甲6−1発明における「赤ちゃん用の食器」は,その機能に照らして,本件発明1における,「幼児用食器」に相当する。
甲6−1発明の「所定の厚みのある部分」は,厚みがあるので厚板部ということができ,甲6−1発明の「竹材からなる所定の厚みのある部分」と本件発明1の「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層されるように接着される積層厚板部」は,「竹材からなる厚板部」という点で共通する。
また,木材からなる厚板に窪み部を形成する際,穿削して形成することは技術常識であり(甲2,甲10,甲16の1等の記載参照),甲6−1発明は,食器であることから,食物を盛るために窪んだ部分を形成していることは明らかであり,その用途に適した所望の形状が穿削されているといえる。
そうすると,甲6−1発明の「前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分」と本件発明1の「食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部」は,「食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部」という点で共通する。
甲6−1発明の「底面」,「立ち上がり面」は,穿削により窪んだ部分が形成されることによって得られるものであり,その機能に照らして対比すると,それぞれ,本件発明1の「底面」,「立面」に相当し,甲6−1発明における,「前記底面」と「前記立ち上がり面」とがなす「角」は,本件発明1における「立面と底面とのなす角」に相当するので,甲6−1発明の「前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,」と本件発明1の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部とを具備し,」は,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,」という点で共通する。
さらに,甲6の赤ちゃん用の食器の写真より,底面と立ち上がり面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なることがわかるので,甲6−1発明の「前記底面を含む下部部分と前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分により挟まれる中間部分を構成する部分の色が,前記上部部分及び前記下部部分をそれぞれ構成する部分の色とは異なる色を持つ」と本件発明1の「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つ」は,「前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つ」という点で共通する。

(イ)したがって,本件発明1と甲6−1発明とは,以下の点で一致し,相違する。

<一致点6>
「竹材からなる厚板部と,
食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部と,
前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,
前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つ
幼児用食器。」

<相違点13>
本件発明1は,「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層される」ことで,「立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる」のに対し,甲6−1発明は,竹材からなる厚板部であり,中間部分の色が上部部分及び下部部分の色とは異なるものであるが,複数枚の竹材平板が積層されたものであるか,さらに,複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上であり,複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層されるものであるか,加えて,立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なるかについて,全て不明である点。

<相違点14>
本件発明1は,立面と底面とのなす角が「半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部」を具備し,「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つ」のに対し,甲6−1発明は,立面と底面とのなす角を備え,前記立面と前記底面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つものであるが,前記角が,R部を備えるか,さらに,R部が半径略5〜15mmとなるよう形成されているか,加えて,前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が,立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なるかについて,全て不明である点。

(ウ)そうすると,本件発明1と甲6−1発明とは,前記相違点13,14において相違する。
したがって,本件発明1は,甲6−1発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。

イ 無効理由2について
以下,前記相違点について検討する。
(ア)相違点13について
前記(2)イ(ア)の相違点3についての検討を参照。

(イ)相違点14について
前記(1)イ(イ)の相違点2についての検討を参照。

(ウ)本件発明1の効果について
前記(1)イ(ウ)の本件発明1の効果についての検討を参照。

(エ)したがって,本件発明1は,甲6−1発明,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 以上のことから,本件発明1は,甲6−1発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。また,本件発明1は,甲6−1発明,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(7)甲7−1発明を主引用発明とした場合
ア 無効理由1について
(ア)本件発明1と甲7−1発明とを対比すると,甲7−1発明における「ベビー用プレート」は,その機能に照らして,本件発明1における,「幼児用食器」に相当する。
甲7−1発明の「所定の厚みのある部分」は,厚みがあるので厚板部ということができ,甲7−1発明の「竹材からなる所定の厚みのある部分」と本件発明1の「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層されるように接着される積層厚板部」は,「竹材からなる厚板部」という点で共通する。
また,木材からなる厚板に窪み部を形成する際,穿削して形成することは技術常識であり(甲2,甲10,甲16の1等の記載参照),甲7−1発明は,食器であることから,食物を盛るために窪んだ部分を形成していることは明らかであり,その用途に適した所望の形状が穿削されているといえる。
そうすると,甲7−1発明の「前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分」と本件発明1の「食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部」は,「食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部」という点で共通する。
甲7−1発明の「底面」,「立ち上がり面」は,穿削により窪んだ部分が形成されることによって得られるものであり,その機能に照らして対比すると,それぞれ,本件発明1の「底面」,「立面」に相当し,甲7−1発明における,「前記底面」と「前記立ち上がり面」とがなす「角」は,本件発明1における「立面と底面とのなす角」に相当するので,甲7−1発明の「前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,」と本件発明1の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部とを具備し,」は,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,」という点で共通する。
さらに,甲7のベビー用プレートの写真より,底面と立ち上がり面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なることがわかるので,甲7−1発明の「前記底面を含む下部部分と前記立ち上がり面の上端部を含む上部部分により挟まれる中間部分を構成する部分の色が,前記上部部分及び前記下部部分をそれぞれ構成する部分の色とは異なる色を持つ」と本件発明1の「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つ」は,「前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つ」という点で共通する。

(イ)したがって,本件発明1と甲7−1発明とは,以下の点で一致し,相違する。

<一致点7>
「竹材からなる厚板部と,
食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部と,
前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,
前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つ
幼児用食器。」

<相違点15>
本件発明1は,「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層される」ことで,「立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる」のに対し,甲7−1発明は,竹材からなる厚板部であり,中間部分の色が上部部分及び下部部分の色とは異なるものであるが,複数枚の竹材平板が積層されたものであるか,さらに,複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上であり,複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層されるものであるか,加えて,立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なるかについて,全て不明である点。

<相違点16>
本件発明1は,立面と底面とのなす角が「半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部」を具備し,「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つ」のに対し,甲7−1発明は,立面と底面とのなす角を備え,前記立面と前記底面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つものであるが,前記角が,R部を備えるか,さらに,R部が半径略5〜15mmとなるよう形成されているか,加えて,前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が,立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なるかについて,全て不明である点。

(ウ)そうすると,本件発明1と甲7−1発明とは,前記相違点15,16において相違する。
したがって,本件発明1は,甲7−1発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。

イ 無効理由2について
以下,前記相違点について検討する。
(ア)相違点15について
前記(2)イ(ア)の相違点3についての検討を参照。

(イ)相違点16について
前記(1)イ(イ)の相違点2についての検討を参照。

(ウ)本件発明1の効果について
前記(1)イ(ウ)の本件発明1の効果についての検討を参照。

(エ)したがって,本件発明1は,甲7−1発明,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 以上のことから,本件発明1は,甲7−1発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。また,本件発明1は,甲7−1発明,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(8)甲8−1発明を主引用発明とした場合
ア 無効理由1について
(ア)本件発明1と甲8−1発明とを対比すると,甲8−1発明における「幼児用プレート」は,その機能に照らして,本件発明1における,「幼児用食器」に相当する。
甲8−1発明の「所定の厚みのある部分」は,厚みがあるので厚板部ということができ,甲8−1発明の「竹材からなる所定の厚みのある部分」と本件発明1の「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層されるように接着される積層厚板部」は,「竹材からなる厚板部」という点で共通する。
また,木材からなる厚板に窪み部を形成する際,穿削して形成することは技術常識であり(甲2,甲10,甲16の1等の記載参照),甲8−1発明は,食器であることから,食物を盛るために窪んだ部分を形成していることは明らかであり,その用途に適した所望の形状が穿削されているといえる。
そうすると,甲8−1発明の「前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分」と本件発明1の「食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部」は,「食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部」という点で共通する。
甲8−1発明の「底面」,「立ち上がり面」は,穿削により窪んだ部分が形成されることによって得られるものであり,その機能に照らして対比すると,それぞれ,本件発明1の「底面」,「立面」に相当し,甲7−1発明における,「前記底面」と「前記立ち上がり面」とがなす「角」は,本件発明1における「立面と底面とのなす角」に相当するので,甲8−1発明の「前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,」と本件発明1の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部とを具備し,」は,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,」という点で共通する。
さらに,甲8の幼児用プレートの写真より,底面と立ち上がり面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なることがわかるので,甲8−1発明の「前記底面を含む下部部分と前記立ち上がり面の上端を含む上部部分により挟まれる中間部分を構成する部分の色が,前記上部部分及び前記下部部分をそれぞれ構成する部分の色とは異なる色を持つ」と本件発明1の「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つ」は,「前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つ」という点で共通する。

(イ)したがって,本件発明1と甲8−1発明とは,以下の点で一致し,相違する。

<一致点8>
「竹材からなる厚板部と,
食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部と,
前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,
前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つ
幼児用食器。」

<相違点17>
本件発明1は,「平板上に加工された複数枚の竹材平板であって該複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上である複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層される」ことで,「立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる」のに対し,甲8−1発明は,竹材からなる厚板部であり,中間部分の色が上部部分及び下部部分の色とは異なるものであるが,複数枚の竹材平板が積層されたものであるか,さらに,複数の竹材平板の素材色が少なくとも2種以上であり,複数枚の竹材平板が色が互い違いに積層されるものであるか,加えて,立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なるかについて,全て不明である点。

<相違点18>
本件発明1は,立面と底面とのなす角が「半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部」を具備し,「前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が該立ち上がりの中間部分を鉛直方向から挟む立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なる色を持つ」のに対し,甲8−1発明は,立面と底面とのなす角を備え,前記立面と前記底面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色を持つものであるが,前記角が,R部を備えるか,さらに,R部が半径略5〜15mmとなるよう形成されているか,加えて,前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の素材色が,立ち上がり上部部分及び立ち上がり下部部分をそれぞれ構成する竹材平板の素材色とは異なるかについて,全て不明である点。

(ウ)そうすると,本件発明1と甲8−1発明とは,前記相違点17,18において相違する。
したがって,本件発明1は,甲8−1発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。

イ 無効理由2について
以下,前記相違点について検討する。
(ア)相違点17について
前記(2)イ(ア)の相違点3についての検討を参照。

(イ)相違点18について
前記(1)イ(イ)の相違点2についての検討を参照。

(ウ)本件発明1の効果について
前記(1)イ(ウ)の本件発明1の効果についての検討を参照。

(エ)したがって,本件発明1は,甲8−1発明,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 以上のことから,本件発明1は,甲8−1発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。また,本件発明1は,甲8−1発明,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本件発明2について
(1)甲1−2発明を主引用発明とした場合
ア 無効理由1について
(ア)本件発明2と甲1−2発明とを対比すると,甲1−2発明における「幼児用のランチプレート」は,その機能に照らして,本件発明2における,「幼児用食器」に相当する。
既に述べたとおり(前記1(1)ア(ア)),竹の集成材とは,複数枚の竹材の平板を積層し,接着剤で接着したものであることは,技術常識である。
そして,竹材の平板は,平板上に加工されたものであることは明らかであるので,甲1−2発明の「所定の厚みのある部分」は,平板上に加工された複数枚の竹材平板を積層し,接着して形成された部分であるといえることから,本件発明2の「積層厚板部」に相当し,甲1−2発明の「竹を張り合わせた集成材からなり,下から上に向けて,下部部分,中間部分,上部部分からなる所定の厚みのある部分」と,本件発明2の「平板上に加工された複数枚の竹材平板である第1,第2,第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順に積層されるように接着されて構成される積層厚板部」とは,「平板上に加工された複数枚の竹材平板が下層から上層に向けて積層されるように接着されて構成される積層厚板部」である点で共通する。
また,木材からなる厚板に窪み部を形成する際,穿削して形成することは技術常識であり(甲2,甲16の1等の記載参照),甲1−2発明は,料理を載せるためにくぼみを形成しているので,その用途に適した所望の形状のくぼみが穿削されていることは明らかである。
そうすると,甲1−2発明の「料理を載せるために前記所定の厚みのある部分に形成されたくぼみ」は,本件発明2の「食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部」に相当する。
甲1−2発明の「底面」,「立ち上がり面」は,穿削によりくぼみが形成されることによって得られるものであり,その機能に照らして対比すると,それぞれ,本件発明2の「底面」,「立面」に相当し,甲1−2発明における,「前記底面」と「前記立ち上がり面」とがなす「角」は,本件発明2における「立面と底面とのなす角」に相当するので,甲1−2発明の「前記くぼみにおいて,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,」と本件発明2の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されるR部とを具備し,」は,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,」という点で共通する。
さらに,甲1のランチプレートの写真から,底面と立ち上がり面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なることがわかるので,甲1−2発明の「前記中間部分の色が前記下部部分及び上部部分のそれぞれの色とは異なる色合いを持つ」と本件発明2の「前記第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」は,「前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つ」という点で共通する。

(イ)したがって,本件発明2と甲1−2発明とは,以下の点で一致し,相違する。

<一致点9>
「平板上に加工された複数枚の竹材平板が下層から上層に向けて積層されるように接着されて構成される積層厚板部と,
食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部と,
前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,
前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つ幼児用食器。」

<相違点19>
本件発明2は,複数枚の竹材平板が,第1,第2,第3の竹材平板からなり,前記「第1,第2,第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順で積層」され,「前記第2の竹材平板の素材色が,少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」のに対し,甲1−2発明は,複数枚の竹材平板が下層から上層に向けて積層されて厚板部分を構成しており,前記厚板部分の中間部分の色が前記厚板部分の下部部分及び上部部分の色とは異なる色合いを持つものであるが,複数枚の竹材平板が第1,第2,第3の竹材平板からなるか不明であり,さらに,前記第2の竹材平板の素材色が,少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つかについて,ともに不明である点。

<相違点20>
本件発明2は,立面と底面とのなす角が「半径略5〜15mmとなるよう形成されるR部」を具備し,「第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」のに対し,甲1−2発明は,立面と底面とのなす角を備え,前記立面と前記底面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つものであるが,前記角が,R部を備えるか,さらに,R部が半径略5〜15mmとなるよう形成されているか,加えて,第2の竹材平板が,前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つかについて,全て不明である点。

(ウ)そうすると,本件発明2と甲1−2発明とは,前記相違点19,20において相違する。
したがって,本件発明2は,甲1−2発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。

イ 無効理由2について
以下,前記相違点について検討する。
(ア)相違点19について
甲1−2発明において,複数枚の竹材平板を,第1,第2,第3の竹材平板とし,前記第1,第2,第3の竹材平板を下層から上層に向けてこの順で積層することは,当業者が適宜なし得ることである。
しかしながら,甲1には,竹材平板を積層して形成される食器において,素材色の異なる複数の竹材平板を積層する点については記載されておらず,また,異なる素材色の竹材平板を積層する点について,動機付けになるような記載も見当たらない。
また,平板を積層した積層体の作り方に関して,色が互いに異なる複数の平板を積層することで積層体の色を異ならせる手法(甲11等参照)と,複数の平板を積層した上で積層体に着色を施すことで積層体の色を異ならせる手法があるが,甲1−2発明において,立ち上がり面の中間部分の色が上部部分及び下部部分の色とは異なるものであるとするために,どのような手法が用いられているかは不明であるところ,色が互いに異なる複数の平板を積層することで積層体の色を異ならせる手法を積極的に選択する動機は見当たらない。
さらに,甲11には,木材の色に関して,素材色によるものと木材の表面に着色加工を施したものの両方が存在することが示されているが,両者のうち素材色を積極的に選択する動機は見当たらない。
加えて,甲2〜9,12〜17においても,竹材平板を積層して形成される食器において,素材色の異なる複数の竹材平板を,その色が互い違いになるように積層する点については記載されておらず,また,異なる素材色の竹材平板をその色が互い違いになるように積層する点について,動機付けになるような記載も見当たらない。
したがって,甲1−2発明において,甲1〜9,11〜17に記載された事項から,複数の竹材平板の色を異なる素材色で構成する積極的な動機はなく,複数枚の竹材平板のうち真ん中の竹材平板の素材色が上下の竹材平板の素材色と異なるように複数枚の竹材平板を積層することは,当業者といえども容易とはいえない。
よって,甲1−2発明において,甲1〜9,11〜17に記載された事項から,本件発明2の相違点19に係る構成を備えるようにすることはできない。

(イ)相違点20について
甲2には,窪み部おいて穿削されて得られる立面と底面とのなす角にR部が形成された構成が記載されている(前記第6 1(2)ア(エ)参照。)。また,甲4にも,窪み部において形成された立面と底面とのなす角にR部が形成された構成が記載されている(前記第6 1(4)ア(エ)参照)。
しかしながら,甲2,4には,特定の数値範囲の半径を有するR部の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の色を,前記中間部分を構成する竹材平板を挟む竹材平板の色とは異ならせる点については記載されておらず,また,そのような構成にすることの動機付けになるような記載も見当たらない。
また,甲1,3,5〜9,11〜17のいずれの文献にも,特定の数値範囲の半径を有するR部の立ち上がりの中間部分を構成する竹材平板の色を前記中間部分を構成する竹材平板を挟む竹材平板の色とは異ならせる点については記載されておらず,また,そのような構成にすることの動機付けになるような記載も見当たらない。
さらに,甲2,4には,R部の半径の具体的な数値範囲は示されておらず,甲13,14には,食器の縁の部分のアールをスプーン形状に合わせることで,料理をすくいやすくする点が記載されているが(前記第6 1(13),(14)参照。),甲13,14にも,アールの半径の具体的な数値には言及されていない。
そうすると,甲1−2発明において,立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されるR部とを具備し,前記第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つようにすることは,当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって,甲1−2発明において,甲1〜9,11〜17に記載された事項から,本件発明2の相違点20に係る構成を備えるようにすることはできない。

(ウ)本件発明2の効果について
本件発明2は,略5〜15mmのR部を備えることによって形成される曲面状の立ち上がり部の鉛直方向中間部分を構成する第2の竹材平板の素材色を,その上下に配置される第1及び第3の竹材平板の素材色とは異なる色とすることで,窪み断面には積層部分の色が変わって見え,窪みの深さを視覚的に認識させるとともに,スプーンへの食物移載力転換機構として機能させ,スプーンでの食物かき上げ動作が確実になるという効果(段落【0016】,【0022】,【0028】,【0036】参照。)を奏するものである。
この効果は,立面と底面とのなす角に,半径が略5〜15mmのR部を形成したことと,前記R部が形成される曲面状の立ち上がり部の鉛直方向中間部分を構成する第2の竹材平板の素材色を,その上下に配置される第1及び第3の竹材平板の素材色とは異なる色とすることによる相乗効果であると認められるところ,甲1〜9,11〜17には,前記効果についての記載はなく,そのような効果についての示唆もない。また,前記効果は当業者にとって自明なものであるとはいえず,格別の効果であると認められる。
そうすると,甲1−2発明において,甲1〜9,11〜17に記載された事項から,本件発明2の相違点19及び20に係る構成を備えるようにすることはできない。

(エ)したがって,本件発明2は,甲1−2発明,甲1〜9,11〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 以上のことから,本件発明2は,甲1−2発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。また,本件発明2は,甲1−2発明,甲1〜9,11〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)甲2−2発明を主引用発明とした場合
ア 無効理由1について
(ア)本件発明2と甲2−2発明とを対比する。
甲2−2発明の「所定の厚みのある部分」は,厚みがあるので厚板部ということができ,甲2−2発明の「竹材平板からなり,下から上に向けて,下部部分,中間部分,上部部分からなる所定の厚みのある部分」と本件発明2の「平板上に加工された複数枚の竹材平板である第1,第2,第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順に積層されるように接着されて構成される積層厚板部」は,「竹材からなる厚板部」という点で共通する。
甲2−2発明の「掘り込まれた部分」は,その機能に照らして対比すると,本件発明2の「穿削された窪み部」に相当し,甲2−2発明は,食器であることから,食物を盛るために掘り込まれた部分を形成していることは明らかであり,その用途に適した所望の形状が穿削されているといえる。
そうすると,甲2−2発明の「前記所定の厚みのある部分から掘り込まれた部分」と本件発明2の「食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部」は,「食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部」という点で共通する。
甲2−2発明の「底面」,「立ち上がり面」は,穿削により掘り込まれた部分が形成されることによって得られるものであり,その機能に照らして対比すると,それぞれ,本件発明2の「底面」,「立面」に相当し,甲2−2発明における,「前記底面」と「前記立ち上がり面」とが接続する部分に形成される「縁」は,本件発明2における「立面と底面とのなす角」に相当し,甲2−2発明における,前記縁につけられた「丸み」は,本件発明2における,立面と底面とのなす角に形成された「R部」に相当するので,甲2−2発明の「前記掘り込まれた部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とが接続する部分に縁が形成され,前記縁は,スプーン等でスムーズにすくえるように丸みがつけられており,」と本件発明2の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されるR部とを具備し,」は,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が形成されたR部とを具備し,」という点で共通する。
さらに,甲2の2010年10月4日の書き込みの写真より,底面と立ち上がり面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なることがわかるので,甲2−2発明の「前記中間部分の色が前記下部部分及び上部部分のそれぞれの色とは異なる色合いを持つ」と本件発明2の「前記第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」は,「前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つ」という点で共通する。
また,甲2−2発明の「食器」と本件発明2の「幼児用食器」は「食器」という点で共通する。

(イ)したがって,本件発明2と甲2−2発明とは,以下の点で一致し,相違する。

<一致点10>
「竹材からなる厚板部と,
食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部と,
前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が形成されたR部とを具備し,
前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つ食器。」

<相違点21>
本件発明2は,複数枚の竹材平板が,第1,第2,第3の竹材平板からなり,前記「第1,第2,第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順で積層」され,「前記第2の竹材平板の素材色が,少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」のに対し,甲2−2発明は,竹材からなる厚板部であり,中間部分の色が前記厚板部の下部部分及び上部部分の色とは異なる色合いを持つものであるが,第1,第2,第3の竹材平板が積層されたものであるか,さらに,前記第2の竹材平板の素材色が,少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つか,ともに不明である点。

<相違点22>
本件発明2は,立面と底面とのなす角が「半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部」を具備し,「第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」のに対し,甲2−2発明は,立面と底面とのなす角を備え,前記立面と前記底面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つものであるが,R部が半径略5〜15mmとなるよう形成されているか,さらに,第2の竹材平板が,前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つかについて,ともに不明である点。

<相違点23>
本件発明2は「幼児用食器」であるのに対し,甲2−2発明は「食器」である点。

(ウ)そうすると,本件発明2と甲2−2発明とは,前記相違点21〜23において相違する。
したがって,本件発明2は,甲2−2発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。

イ 無効理由2について
以下,前記相違点について検討する。
(ア)相違点21について
複数枚の竹材の平板を積層し,接着剤で接着して厚板を形成することは周知技術である(例えば,甲9の段落【0008】〜【0012】,図7等参照。)。
そして,複数枚の竹材平板を,第1,第2,第3の竹材平板とし,前記第1,第2,第3の竹材平板を下層から上層に向けてこの順で積層することは,当業者が適宜なし得ることである。
しかしながら,甲2には,竹材平板を積層して形成される食器において,素材色の異なる複数の竹材平板を積層する点については記載されておらず,また,異なる素材色の竹材平板を積層する点について,動機付けになるような記載も見当たらない。
また,平板を積層した積層体の作り方に関して,色が互いに異なる複数の平板を積層することで積層体の色を異ならせる手法(甲11等参照)と,複数の平板を積層した上で積層体に着色を施すことで積層体の色を異ならせる手法があるが,甲2−2発明において,立ち上がり面の中間部分の色が上部部分及び下部部分の色とは異なるものであるとするために,どのような手法が用いられているかは不明であるところ,色が互いに異なる複数の平板を積層することで積層体の色を異ならせる手法を積極的に選択する動機は見当たらない。
さらに,甲11には,木材の色に関して,素材色によるものと木材の表面に着色加工を施したものの両方が存在することが示されているが,両者のうち素材色を積極的に選択する動機は見当たらない。
加えて,甲2〜9,12〜17においても,竹材平板を積層して形成される食器において,素材色の異なる複数の竹材平板を,その色が互い違いになるように積層する点については記載されておらず,また,異なる素材色の竹材平板をその色が互い違いになるように積層する点について,動機付けになるような記載も見当たらない。
そうすると,甲2−2発明において,複数の竹材平板の色を異なる素材色で構成する積極的な動機はなく,甲1〜9,11〜17に記載された事項から,第1,第2,第3の竹材平板を下層から上層に向けてこの順で積層し,前記第2の竹材平板の色を前記第1及び第3の竹材平板の色とは異なる色合いを持つようにすることは,当業者といえども容易とはいえない。
したがって,甲2−2発明において,甲1〜9,11〜17に記載された事項から,本件発明2の相違点21に係る構成を備えるようにすることはできない。

(イ)相違点22について
甲4にも,窪み部において形成された立面と底面とのなす角にR部が形成された構成が記載されている(前記第6 1(4)ア(エ)参照)。また,甲4にも,甲2と同様,窪み部において形成された立面と底面とのなす角にR部が形成された構成が記載されている(前記第6 1(4)ア(エ)参照)。
しかしながら,甲2,4には,特定の数値範囲の半径を有するR部の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成する竹材平板の色を,前記中間部分を構成する竹材平板を挟む竹材平板の色とは異ならせる点については記載されておらず,また,そのような構成にすることの動機付けになるような記載も見当たらない。
また,甲1,3,5〜9,11〜17のいずれの文献にも,特定の数値範囲の半径を有するR部の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成する竹材平板の色を前記中間部分を構成する竹材平板を挟む竹材平板の色とは異ならせる点については記載されておらず,また,そのような構成にすることの動機付けになるような記載も見当たらない。
さらに,甲2,4には,R部の半径の具体的な数値範囲は示されておらず,甲13,14には,食器の縁の部分のアールをスプーン形状に合わせることで,料理をすくいやすくする点が記載されているが(前記第6 1(13),(14)参照。),甲13,14にも,アールの半径の具体的な数値には言及されていない。
そうすると,甲2−2発明において,立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されるR部とを具備し,前記第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つようにすることは,当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって,甲2−2発明において,甲1〜9,11〜17に記載された事項から,本件発明2の相違点22に係る構成を備えるようにすることはできない。

(ウ)相違点23について
甲2−2発明を幼児用の食器として用いることは当業者が適宜行うことである。
そうすると,甲2−2発明において,本件発明2の相違点23に係る構成を備えるようにすることは当業者が容易になし得たことである。

(エ)本件発明2の効果について
前記(1)イ(ウ)の本件発明2の効果についての検討を参照。

(オ)したがって,本件発明2は,甲2−2発明,甲1〜9,11〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 以上のことから,本件発明2は,甲2−2発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。また,本件発明2は,甲2−2発明,甲1〜9,11〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)甲3−2発明を主引用発明とした場合
ア 無効理由1について
(ア)本件発明2と甲3−2発明とを対比する。
甲3−2発明の「所定の厚みのある部分」は,厚みがあるので厚板部ということができ,甲3−2発明の「竹材平板からなり,下から上に向けて,下部部分,中間部分,上部部分からなる所定の厚みのある部分」と本件発明2の「平板上に加工された複数枚の竹材平板である第1,第2,第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順に積層されるように接着されて構成される積層厚板部」は,「竹材からなる厚板部」という点で共通する。
甲3−2発明の「窪んだ部分」は,その機能に照らして対比すると,本件発明2の「穿削された窪み部」に相当し,甲3−2発明は,食器であることから,食物を盛るために窪んだ部分を形成していることは明らかであり,その用途に適した所望の形状が穿削されているといえる。
そうすると,甲3−2発明の「前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分」と本件発明2の「食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部」は,「食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部」という点で共通する。
甲3−2発明の「底面」,「立ち上がり面」は,穿削により窪んだ部分が形成されることによって得られるものであり,その機能に照らして対比すると,それぞれ,本件発明2の「底面」,「立面」に相当し,甲3−2発明における,「前記底面」と「前記立ち上がり面」とがなす「角」は,本件発明2における「立面と底面とのなす角」に相当するので,甲3−2発明の「前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,」と本件発明2の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されるR部とを具備し,」は,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,」という点で共通する。
さらに,甲3の2010年10月8日の書き込みの食器の写真より,底面と立ち上がり面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なることがわかるので,甲3−2発明の「前記中間部分の色が前記下部部分及び上部部分のそれぞれの色とは異なる色合いを持つ」と本件発明2の「前記第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」は,「前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つ」という点で共通する。
また,甲3−2発明の「食器」と本件発明2の「幼児用食器」は「食器」という点で共通する。

(イ)したがって,本件発明2と甲3−2発明とは,以下の点で一致し,相違する。

<一致点11>
「竹材からなる厚板部と,
食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部と,
前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,
前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つ食器。」

<相違点24>
本件発明2は,複数枚の竹材平板が,第1,第2,第3の竹材平板からなり,前記「第1,第2,第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順で積層」され,「前記第2の竹材平板の素材色が,少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」のに対し,甲3−2発明は,竹材からなる厚板部であり,中間部分の色が前記厚板部の下部部分及び上部部分の色とは異なる色合いを持つものであるが,第1,第2,第3の竹材平板が積層されたものであるか,さらに,前記第2の竹材平板の素材色が,少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つか,ともに不明である点。

<相違点25>
本件発明2は,立面と底面とのなす角が「半径略5〜15mmとなるよう形成されるR部」を具備し,「第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」のに対し,甲3−2発明は,立面と底面とのなす角を備え,前記立面と前記底面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つものであるが,前記角が,R部を備えるか,さらに,R部が半径略5〜15mmとなるよう形成されているか,加えて,第2の竹材平板が,前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つかについて,全て不明である点。

<相違点26>
本件発明2は「幼児用食器」であるのに対し,甲3−2発明は「食器」である点。

(ウ)そうすると,本件発明2と甲3−2発明とは,前記相違点24〜26において相違する。
したがって,本件発明2は,甲3−2発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。

イ 無効理由2について
以下,前記相違点について検討する。
(ア)相違点24について
前記(2)イ(ア)の相違点21についての検討を参照。

(イ)相違点25について
前記(1)イ(イ)の相違点20についての検討を参照

(ウ)相違点26について
前記(2)イ(ウ)の相違点23についての検討を参照。

(エ)本件発明2の効果について
前記(1)イ(ウ)の本件発明2の効果についての検討を参照。

(オ)したがって,本件発明2は,甲3−2発明,甲1〜9,11〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 以上のことから,本件発明2は,甲3−2発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。また,本件発明2は,甲3−2発明,甲1〜9,11〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)甲4−2発明を主引用発明とした場合
ア 無効理由1について
(ア)本件発明2と甲4−2発明とを対比すると,甲4−2発明における「こども用食器」は,その機能に照らして,本件発明2における,「幼児用食器」に相当する。
一般に,「集成材」とは,「木材を,繊維方向を互いに平行にして,接着剤で集成接着して作ったもの」(広辞苑第六版)を意味する用語であり,甲9の段落【0008】〜【0012】,図7等の記載事項を踏まえれば,竹の集成材とは,複数枚の竹材の平板を積層し,接着剤で接着したものであることは,技術常識である。
そして,竹材の平板は,平板上に加工されたものであることは明らかであるので,甲4−2発明の「所定の厚みのある部分」は,平板上に加工された複数枚の竹材平板を積層し,接着して形成された部分であるといえることから,本件発明2の「積層厚板部」に相当し,甲4−2発明の「竹の集成材からなり,下から上に向けて,下部部分,中間部分,上部部分からなる所定の厚みのある部分」と,本件発明2の「平板上に加工された複数枚の竹材平板である第1,第2,第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順に積層されるように接着されて構成される積層厚板部」とは,「平板上に加工された複数枚の竹材平板が下層から上層に向けて積層されるように接着されて構成される積層厚板部」である点で共通する。
また,木材からなる厚板に窪み部を形成する際,穿削して形成することは技術常識であり(甲2,甲16の1等の記載参照),甲4−2発明は,食器であることから,食物を盛るために窪んだ部分を形成していることは明らかであり,その用途に適した所望の形状が穿削されているといえる。
そうすると,甲4−2発明の「前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分」は,本件発明2の「食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部」に相当する。
甲4−2発明の「底面」,「立ち上がり面」は,穿削により窪んだ部分が形成されることによって得られるものであり,その機能に照らして対比すると,それぞれ,本件発明2の「底面」,「立面」に相当し,甲4−2発明における,「前記底面」と「前記立ち上がり面」とがなす「角」は,本件発明2における「立面と底面とのなす角」に相当し,甲4−2発明における,前記角につけられた「丸み」は,本件発明2における,立面と底面とのなす角に形成された「R部」に相当するので,甲4−2発明の「前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,前記角は丸みがつけられており,」と本件発明2の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されるR部とを具備し,」は,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が形成されたR部とを具備し,」という点で共通する。
さらに,甲4の部分拡大写真から,底面と立ち上がり面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なることがわかるので,甲4−2発明の「前記中間部分の色が前記下部部分及び上部部分のそれぞれの色とは異なる色合いを持つ」と本件発明2の「前記第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」は,「前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つ」という点で共通する。

(イ)したがって,本件発明2と甲4−2発明とは,以下の点で一致し,相違する。

<一致点12>
「平板上に加工された複数枚の竹材平板が下層から上層に向けて積層されるように接着されて構成される積層厚板部と,
食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部と,
前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が形成されたR部とを具備し,
前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つ幼児用食器。」

<相違点27>
本件発明2は,複数枚の竹材平板が,第1,第2,第3の竹材平板からなり,前記「第1,第2,第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順で積層」され,「前記第2の竹材平板の素材色が,少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」のに対し,甲4−2発明は,複数枚の竹材平板が下層から上層に向けて積層されて厚板部分を構成しており,前記厚板部分の中間部分の色が前記厚板部分の下部部分及び上部部分の色とは異なる色合いを持つものであるが,複数枚の竹材平板が第1,第2,第3の竹材平板からなるか不明であり,さらに,前記第2の竹材平板の素材色が,少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つかについて,ともに不明である点。

<相違点28>
本件発明2は,立面と底面とのなす角が「半径略5〜15mmとなるよう形成されたR部」を具備し,「第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」のに対し,甲4−2発明は,立面と底面とのなす角を備え,前記立面と前記底面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つものであるが,R部が半径略5〜15mmとなるよう形成されているか,さらに,第2の竹材平板が,前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つかについて,ともに不明である点。

(ウ)そうすると,本件発明2と甲4−2発明とは,前記相違点27,28において相違する。
したがって,本件発明2は,甲4−2発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。

イ 無効理由2について
以下,前記相違点について検討する。
(ア)相違点27について
前記(1)イ(ア)の相違点19についての検討を参照。

(イ)相違点28について
前記(2)イ(イ)の相違点22についての検討を参照。

(ウ)本件発明2の効果について
前記(1)イ(ウ)の本件発明2の効果についての検討を参照。

(エ)したがって,本件発明2は,甲4−2発明,甲1〜9,11〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 以上のことから,本件発明2は,甲4−2発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。また,本件発明2は,甲4−2発明,甲1〜9,11〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)甲5−2発明を主引用発明とした場合
ア 無効理由1について
(ア)本件発明2と甲5−2発明とを対比すると,甲5−2発明における「1〜5歳用の食器」は,その機能に照らして,本件発明2における,「幼児用食器」に相当する。
既に述べたとおり(前記1(1)ア(ア)),竹の集成材とは,複数枚の竹材の平板を積層し,接着剤で接着したものであることは,技術常識である。
そして,竹材の平板は,平板上に加工されたものであることは明らかであるので,甲5−2発明の「所定の厚みのある部分」は,平板上に加工された複数枚の竹材平板を積層し,接着して形成された部分であるといえることから,本件発明2の「積層厚板部」に相当し,甲5−2発明の「竹集成材からなり,下から上に向けて,下部部分,中間部分,上部部分からなる所定の厚みのある部分」と,本件発明2の「平板上に加工された複数枚の竹材平板である第1,第2,第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順に積層されるように接着されて構成される積層厚板部」とは,「平板上に加工された複数枚の竹材平板が下層から上層に向けて積層されるように接着されて構成される積層厚板部」である点で共通する。
また,木材からなる厚板に窪み部を形成する際,穿削して形成することは技術常識であり(甲2,甲16の1等の記載参照),甲5−2発明は,食器であることから,食物を盛るために窪んだ部分を形成していることは明らかであり,その用途に適した所望の形状が穿削されているといえる。
そうすると,甲5−2発明の「前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分」は,本件発明2の「食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部」に相当する。
甲5−2発明の「底面」,「立ち上がり面」は,穿削により窪んだ部分が形成されることによって得られるものであり,その機能に照らして対比すると,それぞれ,本件発明2の「底面」,「立面」に相当し,甲5−2発明における,「前記底面」と「前記立ち上がり面」とがなす「角」は,本件発明2における「立面と底面とのなす角」に相当するので,甲5−2発明の「前記窪んだ部分において底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,」と本件発明2の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されるR部とを具備し,」は,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,」という点で共通する。
さらに,甲5の1〜5歳用の食器の写真から,底面と立ち上がり面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なることがわかるので,甲5−2発明の「前記中間部分の色が前記下部部分及び上部部分のそれぞれの色とは異なる色合いを持つ」と本件発明2の「前記第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」は,「前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つ」という点で共通する。

(イ)したがって,本件発明2と甲5−2発明とは,以下の点で一致し,相違する。

<一致点13>
「平板上に加工された複数枚の竹材平板が下層から上層に向けて積層されるように接着されて構成される積層厚板部と,
食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部と,
前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,
前記立面と前記底面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つ幼児用食器。」

<相違点29>
本件発明2は,複数枚の竹材平板が,第1,第2,第3の竹材平板からなり,前記「第1,第2,第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順で積層」され,「前記第2の竹材平板の素材色が,少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」のに対し,甲5−2発明は,複数枚の竹材平板が下層から上層に向けて積層されて厚板部分を構成しており,前記厚板部分の中間部分の色が前記厚板部分の下部部分及び上部部分の色とは異なる色合いを持つものであるが,複数枚の竹材平板が第1,第2,第3の竹材平板からなるか不明であり,さらに,前記第2の竹材平板の素材色が,少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つかについて,ともに不明である点。

<相違点30>
本件発明2は,立面と底面とのなす角が「半径略5〜15mmとなるよう形成されるR部」を具備し,「第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」のに対し,甲5−2発明は,立面と底面とのなす角を備え,前記立面と前記底面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つものであるが,前記角が,R部を備えるか,さらに,R部が半径略5〜15mmとなるよう形成されているか,加えて,第2の竹材平板が,前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つかについて,全て不明である点。

(ウ)そうすると,本件発明2と甲5−2発明とは,前記相違点29,30において相違する。
したがって,本件発明2は,甲5−2発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。

イ 無効理由2について
以下,前記相違点について検討する。
(ア)相違点29について
前記(1)イ(ア)の相違点19についての検討を参照。

(イ)相違点30について
前記(1)イ(イ)の相違点20についての検討を参照。

(ウ)本件発明2の効果について
前記(1)イ(ウ)の本件発明2の効果についての検討を参照。

(エ)したがって,本件発明2は,甲5−2発明,甲1〜9,11〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 以上のことから,本件発明2は,甲5−2発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。また,本件発明2は,甲5−2発明,甲1〜9,11〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(6)甲6−2発明を主引用発明とした場合
ア 無効理由1について
(ア)本件発明2と甲6−2発明とを対比すると,甲6−2発明における「赤ちゃん用の食器」は,その機能に照らして,本件発明2における,「幼児用食器」に相当する。
甲6−2発明の「所定の厚みのある部分」は,厚みがあるので厚板部ということができ,甲6−2発明の「竹材平板からなり,下から上に向けて,下部部分,中間部分,上部部分からなる所定の厚みのある部分」と本件発明2の「平板上に加工された複数枚の竹材平板である第1,第2,第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順に積層されるように接着されて構成される積層厚板部」は,「竹材からなる厚板部」という点で共通する。
甲6−2発明の「窪んだ部分」は,その機能に照らして対比すると,本件発明2の「穿削された窪み部」に相当し,甲6−2発明は,食器であることから,食物を盛るために窪んだ部分を形成していることは明らかであり,その用途に適した所望の形状が穿削されているといえる。
そうすると,甲6−2発明の「前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分」と本件発明2の「食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部」は,「食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部」という点で共通する。
甲6−2発明の「底面」,「立ち上がり面」は,穿削により窪んだ部分が形成されることによって得られるものであり,その機能に照らして対比すると,それぞれ,本件発明2の「底面」,「立面」に相当し,甲6−2発明における,「前記底面」と「前記立ち上がり面」とがなす「角」は,本件発明2における「立面と底面とのなす角」に相当するので,甲6−2発明の「前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,」と本件発明2の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されるR部とを具備し,」は,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,」という点で共通する。
さらに,甲6の赤ちゃん用の食器の写真から,底面と立ち上がり面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なることがわかるので,甲6−2発明の「前記中間部分の色が前記下部部分及び上部部分のそれぞれの色とは異なる色合いを持つ」と本件発明2の「前記第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」は,「前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つ」という点で共通する。

(イ)したがって,本件発明2と甲6−2発明とは,以下の点で一致し,相違する。

<一致点14>
「竹材からなる厚板部と,
食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部と,
前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,
前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つ幼児用食器。」

<相違点31>
本件発明2は,複数枚の竹材平板が,第1,第2,第3の竹材平板からなり,前記「第1,第2,第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順で積層」され,「前記第2の竹材平板の素材色が,少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」のに対し,甲6−2発明は,竹材からなる厚板部であり,中間部分の色が前記厚板部の下部部分及び上部部分の色とは異なる色合いを持つものであるが,第1,第2,第3の竹材平板が積層されたものであるか,さらに,前記第2の竹材平板の素材色が,少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つか,ともに不明である点。

<相違点32>
本件発明2は,立面と底面とのなす角が「半径略5〜15mmとなるよう形成されるR部」を具備し,「第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」のに対し,甲6−2発明は,立面と底面とのなす角を備え,前記立面と前記底面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つものであるが,前記角が,R部を備えるか,さらに,R部が半径略5〜15mmとなるよう形成されているか,加えて,第2の竹材平板が,前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つかについて,全て不明である点。

(ウ)そうすると,本件発明2と甲6−2発明とは,前記相違点31,32において相違する。
したがって,本件発明2は,甲6−2発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。

イ 無効理由2について
以下,前記相違点について検討する。
(ア)相違点31について
前記(2)イ(ア)の相違点21についての検討を参照。

(イ)相違点32について
前記(1)イ(イ)の相違点20についての検討を参照。

(ウ)本件発明2の効果について
前記(1)イ(ウ)の本件発明2の効果についての検討を参照。

(エ)したがって,本件発明2は,甲6−2発明,甲1〜9,11〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 以上のことから,本件発明2は,甲6−2発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。また,本件発明2は,甲6−2発明,甲1〜9,11〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(7)甲7−2発明を主引用発明とした場合
ア 無効理由1について
(ア)本件発明2と甲7−2発明とを対比すると,甲7−2発明における「ベビー用プレート」は,その機能に照らして,本件発明2における,「幼児用食器」に相当する。
甲7−2発明の「所定の厚みのある部分」は,厚みがあるので厚板部ということができ,甲7−2発明の「竹材平板からなり,下から上に向けて,下部部分,中間部分,上部部分からなる所定の厚みのある部分」と本件発明2の「平板上に加工された複数枚の竹材平板である第1,第2,第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順に積層されるように接着されて構成される積層厚板部」は,「竹材からなる厚板部」という点で共通する。
甲7−2発明の「窪んだ部分」は,その機能に照らして対比すると,本件発明2の「穿削された窪み部」に相当し,甲7−2発明は,食器であることから,食物を盛るために窪んだ部分を形成していることは明らかであり,その用途に適した所望の形状が穿削されているといえる。
そうすると,甲7−2発明の「前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分」と本件発明2の「食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部」は,「食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部」という点で共通する。
甲7−2発明の「底面」,「立ち上がり面」は,穿削により窪んだ部分が形成されることによって得られるものであり,その機能に照らして対比すると,それぞれ,本件発明2の「底面」,「立面」に相当し,甲7−2発明における,「前記底面」と「前記立ち上がり面」とがなす「角」は,本件発明2における「立面と底面とのなす角」に相当するので,甲7−2発明の「前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,」と本件発明2の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されるR部とを具備し,」は,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,」という点で共通する。
さらに,甲7のベビー用プレートの写真から,底面と立ち上がり面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なることがわかるので,甲7−2発明の「前記中間部分の色が前記下部部分及び上部部分のそれぞれの色とは異なる色合いを持つ」と本件発明2の「前記第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」は,「前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つ」という点で共通する。

(イ)したがって,本件発明2と甲7−2発明とは,以下の点で一致し,相違する。

<一致点15>
「竹材からなる厚板部と,
食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部と,
前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,
前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つ幼児用食器。」

<相違点33>
本件発明2は,複数枚の竹材平板が,第1,第2,第3の竹材平板からなり,前記「第1,第2,第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順で積層」され,「前記第2の竹材平板の素材色が,少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」のに対し,甲7−2発明は,竹材からなる厚板部であり,中間部分の色が前記厚板部の下部部分及び上部部分の色とは異なる色合いを持つものであるが,第1,第2,第3の竹材平板が積層されたものであるか,さらに,前記第2の竹材平板の素材色が,少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つか,ともに不明である点。

<相違点34>
本件発明2は,立面と底面とのなす角が「半径略5〜15mmとなるよう形成されるR部」を具備し,「第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」のに対し,甲7−2発明は,立面と底面とのなす角を備え,前記立面と前記底面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つものであるが,前記角が,R部を備えるか,さらに,R部が半径略5〜15mmとなるよう形成されているか,加えて,第2の竹材平板が,前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つかについて,全て不明である点。

(ウ)そうすると,本件発明2と甲7−2発明とは,前記相違点33,34において相違する。
したがって,本件発明2は,甲7−2発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。

イ 無効理由2について
以下,前記相違点について検討する。
(ア)相違点33について
前記(2)イ(ア)の相違点21についての検討を参照。

(イ)相違点34について
前記(1)イ(イ)の相違点20についての検討を参照。

(ウ)本件発明2の効果について
前記(1)イ(ウ)の本件発明2の効果についての検討を参照。

(エ)したがって,本件発明2は,甲7−2発明,甲1〜9,11〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 以上のことから,本件発明2は,甲7−2発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。また,本件発明2は,甲7−2発明,甲1〜9,11〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(8)甲8−2発明を主引用発明とした場合
ア 無効理由1について
(ア)本件発明2と甲8−2発明とを対比すると,甲8−2発明における「幼児用プレート」は,その機能に照らして,本件発明2における,「幼児用食器」に相当する。
甲8−2発明の「所定の厚みのある部分」は,厚みがあるので厚板部ということができ,甲8−2発明の「竹材平板からなり,下から上に向けて,下部部分,中間部分,上部部分からなる所定の厚みのある部分」と本件発明2の「平板上に加工された複数枚の竹材平板である第1,第2,第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順に積層されるように接着されて構成される積層厚板部」は,「竹材からなる厚板部」という点で共通する。
甲8−2発明の「窪んだ部分」は,その機能に照らして対比すると,本件発明2の「穿削された窪み部」に相当し,甲8−2発明は,食器であることから,食物を盛るために窪んだ部分を形成していることは明らかであり,その用途に適した所望の形状が穿削されているといえる。
そうすると,甲8−2発明の「前記所定の厚みのある部分に形成された窪んだ部分」と本件発明2の「食物を盛るための所望の形状が前記積層厚板部から穿削された窪み部」は,「食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部」という点で共通する。
甲8−2発明の「底面」,「立ち上がり面」は,穿削により窪んだ部分が形成されることによって得られるものであり,その機能に照らして対比すると,それぞれ,本件発明2の「底面」,「立面」に相当し,甲8−2発明における,「前記底面」と「前記立ち上がり面」とがなす「角」は,本件発明2における「立面と底面とのなす角」に相当するので,甲8−2発明の「前記窪んだ部分において,底面と立ち上がり面が形成され,前記底面と前記立ち上がり面とは角をなし,」と本件発明2の「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角が半径略5〜15mmとなるよう形成されるR部とを具備し,」は,「前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,」という点で共通する。
さらに,甲8の幼児用プレートの写真から,底面と立ち上がり面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なることがわかるので,甲8−2発明の「前記中間部分の色が前記下部部分及び上部部分のそれぞれの色とは異なる色合いを持つ」と本件発明2の「前記第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」は,「前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つ」という点で共通する。

(イ)したがって,本件発明2と甲8−2発明とは,以下の点で一致し,相違する。

<一致点16>
「竹材からなる厚板部と,
食物を盛るための所望の形状が前記厚板部から穿削された窪み部と,
前記窪み部において穿削されて得られる立面と底面とのなす角を具備し,
前記立面と前記底面における中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つ幼児用食器。」

<相違点35>
本件発明2は,複数枚の竹材平板が,第1,第2,第3の竹材平板からなり,前記「第1,第2,第3の竹材平板が下層から上層に向けてこの順で積層」され,「前記第2の竹材平板の素材色が,少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」のに対し,甲8−2発明は,竹材からなる厚板部であり,中間部分の色が前記厚板部の下部部分及び上部部分の色とは異なる色合いを持つものであるが,第1,第2,第3の竹材平板が積層されたものであるか,さらに,前記第2の竹材平板の素材色が,少なくとも前記第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つか,ともに不明である点。

<相違点36>
本件発明2は,立面と底面とのなす角が「半径略5〜15mmとなるよう形成されるR部」を具備し,「第2の竹材平板が前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つ」のに対し,甲8−2発明は,立面と底面とのなす角を備え,前記立面と前記底面において,中間部分の色が,前記中間部分を鉛直方向から挟む上部部分及び下部部分の色とは異なる色合いを持つものであるが,前記角が,R部を備えるか,さらに,R部が半径略5〜15mmとなるよう形成されているか,加えて,第2の竹材平板が,前記R部を形成する入隅部の曲面状の立ち上がりの鉛直方向中間部分を構成し,前記第2の竹材平板の素材色が少なくとも第1及び第3の竹材平板のそれぞれの素材色とは異なる色合いを持つかについて,全て不明である点。

(ウ)そうすると,本件発明2と甲8−2発明とは,前記相違点35,36において相違する。
したがって,本件発明2は,甲8−2発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。

イ 無効理由2について
以下,前記相違点について検討する。
(ア)相違点35について
前記(2)イ(ア)の相違点21についての検討を参照。

(イ)相違点36について
前記(1)イ(イ)の相違点20についての検討を参照。

(ウ)本件発明2の効果について
前記(1)イ(ウ)の本件発明2の効果についての検討を参照。

(エ)したがって,本件発明2は,甲8−2発明,甲1〜9,11〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 以上のことから,本件発明2は,甲8−2発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。また,本件発明2は,甲8−2発明,甲1〜9,11〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本件発明3〜5について
ア 無効理由1について
本件発明3は,本件発明1又は2を引用する発明であるので,本件発明1又は2が備える発明特定事項を全て備えている。したがって,本件発明3は,本件発明1又は2と同じ理由により,甲1〜8のいずれか1つに記載された発明であるとはいえない。
本件発明5は,本件発明1又は2を引用する発明であるので,本件発明1又は2が備える発明特定事項を全て備えている。したがって,本件発明5は,本件発明1又は2と同じ理由により,甲1〜3のいずれか1つに記載された発明であるとはいえない。

イ 無効理由2について
本件発明3は,本件発明1又は2を引用する発明であるので,本件発明1又は2が備える発明特定事項を全て備えている。したがって,本件発明3は,本件発明1又は2と同じ理由により,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。また,甲1〜17に記載された事項に加え,甲18に記載された事項を参酌しても,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
本件発明4は,本件発明1又は2を引用する発明であるので,本件発明1又は2が備える発明特定事項を全て備えている。したがって,本件発明4は,本件発明1又は2と同じ理由により,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。また,甲1〜17に記載された事項に加え,甲19,20に記載された事項を参酌しても,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
本件発明5は,本件発明1又は2を引用する発明であるので,本件発明1又は2が備える発明特定事項を全て備えている。したがって,本件発明5は,本件発明1又は2と同じ理由により,甲1〜17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。また,甲1〜17に記載された事項に加え,甲18〜20に記載された事項を参酌しても,当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 以上のことから,本件発明3は,甲1〜8のいずれか1つに記載された発明であるとはいえず,本件発明5は,甲1〜3のいずれか1つに記載された発明であるとはいえないから,特許法第29条第1項第3号に該当しない。また,本件発明3は,甲1〜18に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず,本件発明4は,甲1〜17,19,20に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず,本件発明5は,甲1〜20に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 無効理由1及び2のまとめ
以上のとおりであるから,本件発明1〜3は,甲1〜8のいずれか1つに記載された発明ではなく,本件発明5は,甲1〜3のいずれか1つに記載された発明ではなく,本件発明1は,甲1〜17に記載された発明に基いて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものではなく,本件発明2は,甲1〜9,11〜17に記載された発明に基いて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものではなく,本件発明3は,甲1〜18に記載された発明に基いて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものではなく,本件発明4は,甲1〜17,甲19,及び,甲20に記載された発明に基いて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものではなく,本件発明5は,甲1〜20に記載された発明に基いて,出願前に当業者が容易に発明をすることができたものではないので,その特許は特許法第123条第1項第2号に該当せず,無効とすることはできない。

第8 むすび
以上のとおり,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件発明1〜5に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人が負担すべきものとする。
よって,結論のとおり審決する。


審判長 特許庁審判官 佐々木 芳枝
特許庁審判官 岡澤 洋
特許庁審判官 窪田 治彦

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-08-04 
結審通知日 2021-08-10 
審決日 2021-08-30 
出願番号 P2013-179679
審決分類 P 1 113・ 121- YB (A47G)
P 1 113・ 832- YB (A47G)
P 1 113・ 113- YB (A47G)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 窪田 治彦
岡澤 洋
登録日 2014-10-24 
登録番号 5636478
発明の名称 食器  
代理人 長谷川 二美  
代理人 松下 恵三  
代理人 友野 英三  

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