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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1385474
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-17 
確定日 2022-06-09 
事件の表示 特願2016− 56709「ゲームプログラム、ゲーム制御方法、およびゲームコンピュータ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月25日出願公開、特開2016−152928〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年10月30日(以下「分割原出願日」という。)に出願した特願2014−221835号の一部を平成27年6月30日に新たに出願した特願2015−132162号の一部を平成28年3月22日に出願したものであって,平成29年10月30日に手続補正書が提出され,平成30年9月5日付けで拒絶理由が通知され,同年11月9日に意見書及び手続補正書が提出され,平成31年4月12日付けで拒絶理由が通知され,令和1年6月10日に意見書及び手続補正書が提出され,同年10月11日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ,これに対し,令和2年1月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され,令和3年2月2日付けで拒絶理由が通知され,同年3月17日に意見書及び手続補正書が提出され,同年6月15日付けで拒絶理由(最後)(以下,「当審拒絶理由」という。)が通知され,同年8月6日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 令和3年8月6日付けで提出された手続補正書による補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和3年8月6日付けで提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は,特許請求の範囲について,下記(1)に示す本件補正前の(すなわち,令和3年3月17日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1を,下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1へと補正することを含むものである。(下線は審決で付した。以下同じ。)
(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
ユーザによるゲームの進行を処理するコンピュータに,
第1の記憶部に記憶された,所有するゲーム媒体に関する情報を含む複数の他のユーザのゲームの進行に関する情報に基づき,前記他のユーザに関する前記ゲームにおける特定のパラメータ値が,前記ユーザに関する前記ゲームにおける特定のパラメータ値よりも所定値以上低い前記複数の他のユーザを,前記ユーザに選択可能に表示させる表示情報を出力する表示出力機能と,
前記表示情報に基づいて所定の表示部に表示された前記複数の他のユーザに対する,前記ユーザから入力される操作情報を取得する入力取得機能と,
前記複数の他のユーザの中から,前記入力取得機能によって取得された前記操作情報に応じて選択された他のユーザである,選択ユーザに関する情報を,前記ユーザに関連付けて第2の記憶部に記憶する記憶機能と,
前記選択ユーザのうち,所有するゲーム媒体が前記ユーザによるゲームに参加した選択ユーザの前記ゲームの進行に関する情報に応じて,前記ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させ,かつ,
前記選択ユーザのうち,所有するゲーム媒体が前記ユーザによるゲームに参加しない選択ユーザの前記ゲームの進行に関する情報に応じて,前記ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させる,効果発生機能と,
を実現させるゲームプログラム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
ユーザによるゲームの進行を処理するコンピュータに,
第1の記憶部に記憶された,所有するゲーム媒体に関する情報を含む複数の他のユーザのゲームの進行に関する情報に基づき,前記他のユーザに関する前記ゲームにおける特定のパラメータ値が,前記ユーザに関する前記ゲームにおける特定のパラメータ値よりも所定値以上低い前記複数の他のユーザを,前記ユーザに選択可能に表示させる表示情報を出力する表示出力機能と,
前記表示情報に基づいて所定の表示部に表示された前記複数の他のユーザに対する,前記ユーザから入力される操作情報を取得する入力取得機能と,
前記複数の他のユーザの中から,前記入力取得機能によって取得された前記操作情報に応じて選択された他のユーザである,選択ユーザに関する情報を,前記ユーザに関連付けて第2の記憶部に記憶する記憶機能と,
前記選択ユーザのうち,所有するゲーム媒体が前記ユーザによるゲームに参加した選択ユーザの,前記ゲームの進行に関する情報に応じて,前記ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させ,かつ,
少なくとも前記選択ユーザの人数に応じて,前記ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させる,効果発生機能と,を実現させるゲームプログラム。」

2 本件補正の適否について
(1)補正事項1
上記1によれば,本件補正は,本件補正前の【請求項1】の「ゲームプログラム」の発明特定事項である「効果発生機能」について,「ユーザによるゲームの進行中に効果を発生させる」のが,「選択ユーザのうち,所有するゲーム媒体がユーザによるゲームに参加しない選択ユーザのゲームの進行に関する情報」に応じて発生させることから,「少なくとも選択ユーザの人数」に応じて発生させることへと補正すること(以下「補正事項1」という。)を含むものである。
(2)本件補正の目的について
特許法第17条の2第5項の規定によれば,拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知を受けた場合において,最後に受けた拒絶理由通知の指定期間内にする特許請求の範囲についての補正は,請求項の削除(第1号),特許請求の範囲の減縮(第2号),誤記の訂正(第3号),明りょうでない記載の釈明(第4号)のいずれかを目的とするものに限るとされている。
そこで,上記補正事項1について検討する。
ここで,本件補正前の【請求項1】の「ゲームプログラム」の発明特定事項である「選択ユーザのうち,所有するゲーム媒体がユーザによるゲームに参加しない選択ユーザのゲームの進行に関する情報」とは,令和3年3月17日に提出された意見書の「「前記選択ユーザのうち,所有するゲーム媒体が前記ユーザによるゲームに参加した選択ユーザの前記ゲームの進行に関する情報に応じて,前記ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させ」は,明細書全体および段落[0126]の前段である「変形例においても,「登録しておいた仲間リスト」の中から,「低レベルユーザ群」に属する他のユーザの選択の決定がされることによって,ユーザに対してインセンティブとなる効果(動機づけとなる効果)が与えられる。」との記載等に基づくものであり,「前記選択ユーザのうち,所有するゲーム媒体が前記ユーザによるゲームに参加しない選択ユーザの前記ゲームの進行に関する情報に応じて,前記ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させる」は,段落[0126]の後段である「しかし,変形例では,これだけではなく,ユーザ(プレイヤ)が,「低レベルユーザ群」に属する他のユーザを仲間登録しておくだけで,ユーザに対してインセンティブとなる効果(動機づけとなる効果)を与えることもできる。」との記載等に基づくものであり,新規事項を追加するものではありません。」の主張を参酌すれば,請求人は,「選択ユーザのうち,所有するゲーム媒体がユーザによるゲームに参加しない選択ユーザのゲームの進行に関する情報」とは,「ユーザのレベル(Lv)」であると主張していると解される。
また,願書に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,これらを「明細書等」という。)には,
「【0057】
上記所定の条件(1)は,「低レベルユーザ群」に分類される条件である。ここで,「特定のパラメータ値」とは,ユーザが有するパラメータ値であれば,特に限定されるものではなく,例えば,対戦ゲームの実行に従って増加されるユーザのレベル(Lv)又はユーザが保有するゲーム媒体(例えば,武器等のアイテム)のレベル(Lv),対戦ゲームの実行によって獲得されるポイント(パワーポイント),および対戦相手からの攻撃などによって減算されていくポイント(HP:ヒットポイント)等が挙げられる。」
「【0099】
また,ここで「対戦ゲームの進行に用いられるパラメータ」としては,例えば,デッキパラメータの他,ゲーム媒体が有するパラメータ(レベル,HP,攻撃力など),ユーザ又はユーザキャラクタが有するパラメータ(レベル,HP,攻撃力など),ゲームの進行スピードに関するパラメータ,および獲得報酬に係る倍率に関するパラメータ等が挙げられる。」
と記載されていることからすると,「選択ユーザのうち,所有するゲーム媒体がユーザによるゲームに参加しない選択ユーザのゲームの進行に関する情報」とは,ユーザのレベル(Lv)又はユーザが保有するゲーム媒体(例えば,武器等のアイテム)のレベル(Lv),対戦ゲームの実行によって獲得されるポイント(パワーポイント),および対戦相手からの攻撃などによって減算されていくポイント(HP:ヒットポイント),デッキパラメータの他,ゲーム媒体が有するパラメータ(レベル,HP,攻撃力など),ユーザ又はユーザキャラクタが有するパラメータ(レベル,HP,攻撃力など),ゲームの進行スピードに関するパラメータ,および獲得報酬に係る倍率に関するパラメータと解される。
他方,補正事項1の「少なくとも選択ユーザの人数」は,上記の「選択ユーザのうち,所有するゲーム媒体がユーザによるゲームに参加しない選択ユーザのゲームの進行に関する情報」に該当するいずれの事項とは異なる事項であることは明らかであって,補正前の発明特定事項である「選択ユーザのうち,所有するゲーム媒体がユーザによるゲームに参加しない選択ユーザのゲームの進行に関する情報」ことの下位概念とはいえず,上記補正事項1は,特許請求の範囲を変更するものである。
したがって,本件補正は,本件補正前の請求項に記載された発明の発明特定事項の限定であるとは認められないから,特許法第17条の2第5項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて,その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」に該当しない。
また,本件補正前の請求項に対して特許法第36条に基づく記載不備に係る拒絶理由は指摘されていないから,特許法第17条の2第5項第4号に規定される「明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」に該当しない。
さらに,本件補正は,特許法第17条の2第5項第1号に規定される「第36条第5項に規定する請求項の削除」,同項第3号に規定される「誤記の訂正」にも該当しない。
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項に規定されたいずれの事項を目的とするものとも認められないから,特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。

(3)新規事項の追加の有無について
ア 補正事項2
上記1によれば,本件補正は,本件補正前の【請求項1】の「ゲームプログラム」の発明特定事項である「効果発生機能」について,「ユーザによるゲームの進行中に効果を発生させる」のが,「選択ユーザのうち,所有するゲーム媒体が前記ユーザによるゲームに参加した選択ユーザの,前記ゲームの進行に関する情報」に応じて発生させること(以下「補正事項2」という。)を含むものである。

イ 願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,これらを「当初明細書等」という。)に記載の事項について
上記補正事項2に関して,当初明細書等には,以下の記載がある。
(ア)「【0007】
本発明は,上記の問題点に鑑みてなされたものであり,その目的は,ユーザに対して,新規ユーザなどの低レベルユーザを仲間に誘おうという「特定の動機づけ」を与えることができ,ゲームサービスの活性化に寄与する対戦ゲームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために,本発明の一態様に係るゲームプログラムは,対戦ゲームの進行を処理するゲームプログラムであって,ゲームコンピュータに,複数のユーザに関する情報を第1の記憶部に記憶する第1の記憶機能と,ユーザの端末装置に複数の他のユーザを選択可能に表示させる表示情報を出力する表示機能と,ユーザから入力された操作情報を取得する入力取得機能と,入力取得機能によって取得した操作情報に応じて,表示機能によって選択可能に表示させた複数の他のユーザの中から選択された他のユーザの識別情報を,ユーザに関連付けて記憶する第2の記憶機能と,第2の記憶機能によってユーザに関連付けて記憶された他のユーザの識別情報に対応する他のユーザに関する情報と,所定の条件との比較に応じて異なる効果を,ユーザによる対戦ゲームの進行中に発生させる効果発生機能とを実現させる。」
(イ)「【0013】
また,本発明の一態様に係るゲームプログラムにおいて,ユーザに関する情報は,特定のパラメータ情報を含み,所定の条件は,他のユーザが有する特定のパラメータ値が,ユーザが有する特定のパラメータ値よりも所定値以上低いことを含むことができる。」
(ウ)「【0017】
また,本発明の一態様に係るゲームプログラムにおいて,効果発生機能は,他のユーザに関する情報が所定の条件を満たす場合,ユーザに関する情報に含まれるパラメータであって対戦ゲームの進行に用いられるパラメータを変動させる効果を,ユーザによる対戦ゲームの進行中に発生させることができる。
【0018】 上記課題を解決するために,本発明の一態様に係るゲーム制御方法は,対戦ゲームの進行を処理する,ゲームコンピュータが実行するゲーム制御方法であって,複数のユーザに関する情報を第1の記憶部に記憶する第1の記憶ステップと,ユーザの端末装置に複数の他のユーザを選択可能に表示させる表示情報を出力する表示ステップと,ユーザから入力された操作情報を取得する入力取得ステップと,入力取得ステップによって取得した操作情報に応じて,表示ステップによって選択可能に表示させた複数の他のユーザの中から選択された他のユーザの識別情報を,ユーザに関連付けて記憶する第2の記憶ステップと,第2の記憶ステップによってユーザに関連付けて記憶された他のユーザの識別情報に対応する他のユーザに関する情報と,所定の条件との比較に応じて異なる効果を,ユーザによる対戦ゲームの進行中に発生させる効果発生ステップとを含む。
【0019】 上記課題を解決するために,本発明の一態様に係るゲームコンピュータは,対戦ゲームの進行を処理するゲームコンピュータであって,複数のユーザに関する情報を第1の記憶部に記憶する第1の記憶部と,ユーザの端末装置に複数の他のユーザを選択可能に表示させる表示情報を出力する表示部と,前記ユーザから入力された操作情報を取得する入力取得部と,前記入力取得部によって取得した前記操作情報に応じて,前記表示部によって選択可能に表示させた前記複数の他のユーザの中から選択された他のユーザの識別情報を,前記ユーザに関連付けて記憶する第2の記憶部と,前記第2の記憶部によって前記ユーザに関連付けて記憶された他のユーザの識別情報に対応する他のユーザに関する情報と,所定の条件との比較に応じて異なる効果を,前記ユーザによる前記対戦ゲームの進行中に発生させる効果発生部とを備えている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様に係るゲームプログラム,ゲーム制御方法,およびゲームコンピュータは,ユーザ(プレイヤ)に関連付けて記憶された他のユーザの識別情報に対応する他のユーザに関する情報と,所定の条件との比較に応じて異なる効果を,ユーザによる対戦ゲームの進行中に発生させることによって,ゲームサービスの活性化に寄与する対戦ゲームを提供することができるという効果を奏する。」
(エ)「【0025】
(対戦ゲームの概要)
本実施の形態によって提供されるゲームは,ユーザ(プレイヤ)が,複数の他のユーザの中から特定の他のユーザを選択し,(1)選択した特定の他のユーザと共にプレイする対戦ゲーム,または(2)選択した特定の他のユーザが所有するゲーム媒体等を借りてプレイする対戦ゲームである。
【0026】
通常,ユーザ(プレイヤ)は,特定の他のユーザを選択する際,(1)他のユーザが保有するパラメータ,または(2)他のユーザが所有するゲーム媒体等が,対戦ゲームの進行上,ユーザ(プレイヤ)にとって有利に働くかどうかを判断指標としている。
【0027】
この場合,例えば,ゲーム経験が豊富な高レベルのユーザ層は,保有するパラメータが比較的高く及び/又は所有するゲーム媒体が強い傾向にあるため,ユーザ(プレイヤ)に選択される機会を高い確率で得ることができる。
【0028】
一方,ゲーム経験が乏しい低レベルのユーザ層(例えば,新規ユーザ)は,保有するパラメータが比較的低く,所有するゲーム媒体が弱い傾向にあるため,ユーザ(プレイヤ)に選択される機会を低い確率でしか得ることができない。
【0029】
本実施の形態は,新規ユーザなどを含む「低レベルユーザ群」と,「それ以外のユーザ群」との間で,ユーザ(プレイヤ)に選択される機会,すなわち対戦ゲームに誘われる機会に大きな差が生じていたことに着目し,新規ユーザなどを含む「低レベルユーザ群」に属する他のユーザであっても,ユーザ(プレイヤ)に選択される機会が得られ易くなるよう,ユーザ(プレイヤ)に対して「特定の動機づけ」(「低レベルユーザ群」に属する他のユーザを選択することに対するインセンティブ)を与える。これによって,ユーザ(プレイヤ)に選択された新規ユーザなどを含む「低レベルユーザ群」に属する他のユーザには,対戦ゲームを楽しむきっかけが提供され,ゲームサービスの活性化を図ることができる。
【0030】
なお,上記「ゲーム媒体」は,本実施の形態に係るゲームプログラムによって実現されるゲーム,および/または他のゲームプログラムによって実現される他のゲームにおいて,プレイヤに利用される任意の電子データであり,例えば,キャラクタ,アイテム,その他のデータであってよい。」
(オ)「【0045】
例えば,効果発生部(効果発生機能)14は,他のユーザに関する情報が所定の条件を満たす場合,ユーザに関する情報に含まれるパラメータであって対戦ゲームの進行に用いられるパラメータを変動させる効果を,ユーザによる対戦ゲームの進行中に発生させることができる。」
(カ)「【0056】
本実施の形態における「所定の条件」として,(1)他のユーザが有する特定のパラメータ値が,ユーザが有する特定のパラメータ値よりも所定値以上低い場合,(2)他のユーザの登録日が現時点から所定期間内にある場合,(3)他のユーザの最終ログイン日が現時点から所定期間外にある場合が挙げられる。
【0057】
上記所定の条件(1)は,「低レベルユーザ群」に分類される条件である。ここで,「特定のパラメータ値」とは,ユーザが有するパラメータ値であれば,特に限定されるものではなく,例えば,対戦ゲームの実行に従って増加されるユーザのレベル(Lv)又はユーザが保有するゲーム媒体(例えば,武器等のアイテム)のレベル(Lv),対戦ゲームの実行によって獲得されるポイント(パワーポイント),および対戦相手からの攻撃などによって減算されていくポイント(HP:ヒットポイント)等が挙げられる。
【0058】
「低レベルユーザ群」は,他のユーザが有する特定のパラメータ値が,ユーザ(プレイヤ)のパラメータ値よりも低く,且つ,両者のパラメータ値が所定値以上離れている他のユーザで構成されるユーザ群であれば,特に限定されず,当該所定値は,ゲームプログラム上,任意に設定することができる。例えば,特定のパラメータ値として,ユーザのレベル(Lv)を採用すると,他のユーザのレベル値(Lv)が,ユーザ(プレイヤ)のレベル値(Lv)よりも低く,且つ,両者のレベル値が所定値以上離れている他のユーザであって,当該所定値を30に設定すると,ユーザ(プレイヤ)のレベル値(Lv)が100である場合,両者のレベル値が30(所定値)以上離れているレベル値が70以下の他のユーザを,低レベルユーザ群に属するとして分類することができる。
【0059】
また,本実施の形態においては,上記所定の条件(1)を満たす「低レベルユーザ群」と,上記所定の条件(1)を満たさない「それ以外のユーザ群」とに大きく2つのユーザ群に分類することができる。」
(キ)「【0077】
図2(a),(b)および図3には,各々の他のユーザが所有するアイテムの種類として,例示的に釣竿の種類が挙げられ,釣竿A,釣竿B,釣竿C,および釣竿Dの順にランクが上がるように設定されている。ユーザ(プレイヤ)は,各々の他のユーザが所有する「ゲーム媒体(アイテム)の種類」を選択の判断材料とすることができる。」
(ク)「【0092】
ユーザ(プレイヤ)が,図2(c)に示される確認画面を見て,選択の決定をする際には,「ミニゲームに誘う」と表示された所定の領域をタップすることによって,選択の決定をすることができる。これと同時に,選択の決定がされた他のユーザの識別情報が,ユーザ(プレイヤ)に関連付けて記憶(仲間登録)される。これによって,ユーザ(プレイヤ)は,オススメユーザ群およびフレンドユーザ群の中から,(1)選択した他のユーザと共に対戦ゲームをプレイすることができる。または,(2)選択した他のユーザが所有するゲーム媒体等を借りて対戦ゲームをプレイすることができる。なお,仲間登録されたユーザ同士は,例えばチャット等を介して互いに交流可能であってもよい。」
(ケ)「【0095】
本実施の形態においては,上記所定の条件(1)を満たす,低レベルユーザ群に属する他のユーザが,ユーザ(プレイヤ)によって選択される機会が得られ易くなるよう,ユーザ(プレイヤ)に対して「特定の動機づけ」(低レベルユーザ群に属する他のユーザを選択することに対するインセンティブ)を与える。
【0096】
本実施の形態において,ユーザ(プレイヤ)に与える「特定の動機づけ」としては,ユーザ(プレイヤ)に関連付けて記憶された(仲間登録された)他のユーザの識別情報に対応する「他のユーザに関する情報」と,上述した所定の条件との比較に応じて異なる効果を,ユーザ(プレイヤ)による対戦ゲームの進行中に発生させる。
【0097】
例えば,「他のユーザに関する情報」のうち所定の情報が,上述した所定の条件を満たす場合,ユーザ(プレイヤ)に関する情報に含まれるパラメータであって,対戦ゲームの進行に用いられるパラメータを変動させる効果を,ユーザ(プレイヤ)による対戦ゲームの進行中に発生させることができる。」
(コ)「【0099】
また,ここで「対戦ゲームの進行に用いられるパラメータ」としては,例えば,デッキパラメータの他,ゲーム媒体が有するパラメータ(レベル,HP,攻撃力など),ユーザ又はユーザキャラクタが有するパラメータ(レベル,HP,攻撃力など),ゲームの進行スピードに関するパラメータ,および獲得報酬に係る倍率に関するパラメータ等が挙げられる。
【0100】 本発明においては,ユーザ(プレイヤ)が,「低レベルユーザ群」(オススメユーザ群)に属する他のユーザを選択した際に,ユーザに対してインセンティブとなる効果(動機づけとなる効果)を与える。これによって,「低レベルユーザ群」に属する他のユーザであっても,ユーザ(プレイヤ)に選択される機会が得られ易くなる。
【0101】 以下,本発明における,ユーザ(プレイヤ)に与える「特定の動機づけ」について詳述する。
【0102】 本発明においては,ユーザによって選択された他のユーザの識別情報に対応する「他のユーザに関する情報」が,上述した所定の条件を満たす場合と,満たさない場合とで異なる効果を,ユーザ(プレイヤ)による対戦ゲームの進行中に発生させることができる。
【0103】 具体的には,上述した所定の条件(1)を満たす「低レベルユーザ群」(オススメユーザ群)に属する他のユーザを選択した場合に,上述した所定の条件(1)を満たさない「それ以外のユーザ群」に属する他のユーザを選択した場合よりも,ユーザにとって優位となる効果を発生させることができる。これによって,「低レベルユーザ群」に属する他のユーザであっても,ユーザ(プレイヤ)に選択される機会が得られ易くなる。
【0104】 ここで「ユーザにとって優位となる効果を発生させる」とは,例えば,対戦ゲームの進行に用いられるパラメータを変動させる効果を,ユーザ(プレイヤ)による対戦ゲームの進行中に,ユーザ(プレイヤ)にとって有利となるような効果を発生させることができる。
【0105】 さらに,「低レベルユーザ群」に属する他のユーザの中でも,ユーザ(プレイヤ)とのレベル差が大きい他のユーザを選択した場合に,ユーザ(プレイヤ)にとって優位となる効果をより大きく発生させることもできる。」
(サ)「【0108】
このように,「低レベルユーザ群」に属する他のユーザの中でも,ユーザ(プレイヤ)とのレベル差が大きく,ユーザに選択される機会,すなわち対戦ゲームに誘われる機会に非常に乏しかった他のユーザであっても,ユーザ(プレイヤ)にとって優位となる効果をより大きく発生させることによって,ユーザ(プレイヤ)に選択される機会が得られ易くなる。そして,これまで対戦ゲームに誘われ難かった他のユーザには,対戦ゲームを楽しむきっかけが提供され,ゲームサービスの活性化を図ることもできる。」
(シ)「【0114】
図5は,ユーザ(プレイヤ)が,オススメユーザ群の中から3人の他のユーザを選択したことに起因して,ユーザ(プレイヤ)がゲームの進行中に用いるパラメータを上昇させる効果が発生したことを示す画面例である。
【0115】 図5においては,選択したオススメユーザ群に属する他のユーザ1人につき,ユーザ(プレイヤ)がゲームの進行中に用いるパラメータを1%上昇させる効果を発生させる設定がなされた場合,オススメユーザ群に属する他のユーザを3人選択した結果,1%×3人数分のパラメータ,すなわち3%パラメータを上昇させる効果を発生させることができる。
【0116】 ユーザ(プレイヤ)にとって優位となる効果として,例えば,選択された低レベルユーザ1人につき,ユーザ(プレイヤ)がゲームの進行中に用いるパラメータを所定値上昇(例えば,1%上昇)させる効果が挙げられる。これによって,複数の他のユーザの中でも,低レベルユーザを選択しようとする,ユーザ(プレイヤ)の意欲が喚起され,ユーザ(プレイヤ)が低レベルユーザを選択する強い動機づけとなり得る。一方,選択された低レベルユーザには,対戦ゲームを楽しむきっかけが提供され,ゲームサービスの活性化を図ることができる。」
(ス)「【0120】
効果発生部14は,第2の記憶部によってユーザ(プレイヤ)に関連付けて記憶された他のユーザの識別情報に対応する他のユーザに関する情報と,所定の条件との比較に応じて異なる効果を,ユーザ(プレイヤ)による対戦ゲームの進行中に発生させる(S6:効果発生ステップ)。」
(セ)「【0123】
上述した実施形態1では,図2(c)に示される確認画面を介して選択の決定をすると同時に,選択の決定がされた他のユーザの識別情報が,ユーザ(プレイヤ)に関連付けて記憶(仲間登録)される。これによって,ユーザ(プレイヤ)は,(1)選択した他のユーザと共に対戦ゲームをプレイすることができる。または,(2)選択した他のユーザが所有するゲーム媒体等を借りて対戦ゲームをプレイすることができる。
【0124】 一方,変形例においては,図2(c)に示される確認画面を介して選択の決定をすることによって,先ずは,仲間登録だけが行われる。次いで,例えば対戦ゲームにおけるクエスト等のイベントを選択して,当該選択したクエストが開始される際に,「登録しておいた仲間リスト」の中から,1以上の他のユーザを選択して,選択の決定をする。なお,上記「登録しておいた仲間リスト」には,仲間登録されていない他のユーザもゲストとしてリストに含まれていてもよい。
【0125】 上記「登録しておいた仲間リスト」の中から,他のユーザの選択の決定がされることによって,ユーザ(プレイヤ)は,(1)選択した他のユーザと共に対戦ゲーム(クエスト等のイベント)をプレイすることができる。または,(2)選択した他のユーザが所有するゲーム媒体等を借りて対戦ゲーム(クエスト等のイベント)をプレイすることができる。
【0126】 変形例においても,「登録しておいた仲間リスト」の中から,「低レベルユーザ群」に属する他のユーザの選択の決定がされることによって,ユーザに対してインセンティブとなる効果(動機づけとなる効果)が与えられる。しかし,変形例では,これだけではなく,ユーザ(プレイヤ)が,「低レベルユーザ群」に属する他のユーザを仲間登録しておくだけで,ユーザに対してインセンティブとなる効果(動機づけとなる効果)を与えることもできる。
【0127】 例えば,仲間登録した低レベルユーザ1人につき,ユーザ(プレイヤ)がゲームの進行中に用いるパラメータを1%上昇させる効果を発生させる設定がなされた場合,低レベルユーザを5人仲間登録した結果,1%×5人数分のパラメータ,すなわち5%パラメータを上昇させる効果を発生させることができる。
【0128】 このように,通常であればクエスト等のイベントに誘って共にプレイするには,レベルが低いユーザであっても,仲間登録をしておくだけで,ユーザに対してインセンティブとなる効果(動機づけとなる効果)を与えることができる。他方,仲間登録された「低レベルユーザ群」に属する他のユーザを含むユーザ同士には,例えばチャット等を介して互いに交流が生まれるきっかけが提供され,ゲームサービスの活性化を図ることができる。」

イ 判断
(ア)「選択ユーザ」の「所有するゲーム媒体」が「ユーザ」による「ゲームの進行中に効果を発生させること」について
当初明細書等には,「選択ユーザ」の所有する「ゲーム媒体」が「ユーザ」による「ゲームの進行」に与える影響について具体的な記載はなく,「ユーザ」により「選択ユーザが所有するゲーム媒体」をゲームの進行中に利用することについては,「ユーザ」が「選択した他のユーザが所有するゲーム媒体等を借りて対戦ゲームをプレイすることができる」ことについて記載されているのみである。
具体的には,明細書の段落【0026】には,ユーザ(プレイヤ)がプレイする対戦ゲームが,「ユーザ(プレイヤ)が,複数の他のユーザの中から特定の他のユーザを選択し」,「(2)選択した特定の他のユーザが所有するゲーム媒体等を借りてプレイする対戦ゲームである」ことが記載され,同【0092】,【0123】には,「選択の決定がされた他のユーザの識別情報が,ユーザ(プレイヤ)に関連付けて記憶(仲間登録)され」ることによって,「ユーザ(プレイヤ)は,オススメユーザ群およびフレンドユーザ群の中から,「(2)選択した他のユーザが所有するゲーム媒体等を借りて対戦ゲームをプレイすることができる」ことが記載されているのみである。
以上のことからすれば,本願当初明細書等には,「選択された他のユーザ」の「所有するゲーム媒体」が「ユーザによる」「ゲームの進行中」に効果を発生させることについては,「ユーザが選択ユーザの所有するゲーム媒体等を借りてプレイすること」のみしか記載されていないから,それ以外に,例えば,「選択された他のユーザ」の「所有するゲーム媒体」をプレイユーザのパラメータ(レベル,HP,攻撃力など)に変換すること等の「選択ユーザの所有するゲーム媒体等」が「ユーザによるゲームの進行中に効果を発生させる」ことについては記載されていない。
(イ)「選択ユーザ」のうち,「ユーザによるゲームに参加した選択ユーザ」の「所有するゲーム媒体」が「ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させる」について
当初明細書等には,ユーザがプレイする「ゲーム」について,「(1)選択した他のユーザと共に対戦ゲームをプレイすることができる。」ことと「(2)選択した他のユーザが所有するゲーム媒体等を借りて対戦ゲームをプレイすることができる。」こととが,「または」との接続詞で排他的選択肢として記載されているだけであるから(【0025】,【0092】,【0123】,【0125】),「選択ユーザ」のうち,「ユーザによるゲームに参加した選択ユーザ」の「所有するゲーム媒体」が「ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させる」ことについても,当初明細書等に記載されているということはできない。
明細書の段落の【0126】の記載は,同段落【0123】及び【0124】において,「実施形態1」では,選択の決定をすると同時に,選択の決定がされた他のユーザの識別情報が,ユーザ(プレイヤ)に関連付けて記憶(仲間登録)され,ユーザ(プレイヤ)は,選択した他のユーザが所有するゲーム媒体等を借りて対戦ゲームをプレイすることができる」ものであったが,「変形例」は,選択の決定をすることによって,先ず,仲間登録だけが行われ,次いで,対戦ゲームにおけるクエスト等のイベントを選択して,当該選択したクエストが開始される際に,「登録しておいた仲間リスト」の中から,1以上の他のユーザを選択して,選択の決定をするものであり,「登録しておいた仲間リスト」の中から,他のユーザの選択の決定がされることによって,ユーザ(プレイヤ)は,選択した他のユーザが所有するゲーム媒体等を借りて対戦ゲーム(クエスト等のイベント)をプレイすることができる」ものであることの説明がされていることを前提に変形例の説明がされているのであって,明細粗書の段落【0126】には,「選択された他のユーザ」である「選択ユーザ」が,当該「選択ユーザ」の所有するゲーム媒体を借りてプレイするゲームに,参加するか否かについては記載も示唆もされていないし,当該「選択ユーザ」がユーザのゲームに参加することがそれらの記載から理解することはできない。
また,段落【0126】の後半において,その変形例においてさらに,「ユーザ(プレイヤ)が,「低レベルユーザ群」に属する他のユーザを仲間登録しておくだけで,ユーザに対してインセンティブとなる効果(動機づけとなる効果)を与えることもできる」旨が説明されているが,ここでの記載は,仲間登録をしておくことで,「ユーザ」が当該選択ユーザの所有するゲーム媒体に対してユーザに対してインセンティブとなる効果(有利な効果)を与えるようにしても良いことが読み取れるのみであるところ,この記載は,「仲間登録された他のユーザ」が所有するゲーム媒体を借りてゲームをプレイすることを説明したものではないし,当該記載から,「仲間登録された他のユーザ」が所有するゲーム媒体が,仲間登録するだけで,「ユーザ」のプレイするゲームにおいて効果を発揮することが読み取れるものでもない。
仮にここでの「変形例」において,「ユーザ(プレイヤ)が,「低レベルユーザ群」に属する他のユーザを仲間登録しておくだけで,ユーザに対してインセンティブとなる効果(動機づけとなる効果)を与えることもできる。」との記載が,「仲間登録」された「ユーザ」の所有するゲーム媒体についてユーザに対してインセンティブとなる効果を与えることができることが記載されていると解釈できるとしても,当該「仲間登録」されたユーザの所有するゲーム媒体を借りてゲームをプレイする際に,有利な効果が与えられることが読み取れるにとどまるのであって,当該「仲間登録されたユーザ」が所有するゲーム媒体を借りてユーザがプレイするゲームに,当該仲間登録されたユーザが参加しているか否かが明示的に読み取れるものとはいえないし,選択ユーザの所有する媒体等をユーザが借りることなく,当該選択ユーザの所有する媒体等が,ユーザによるゲームの進行中に効果を発生させることが記載されているということはできない。
(ウ)請求人の主張について
令和3年8月6日に提出された意見書において,請求人は,“句読点を追加することにより文章の区切り位置を明確化する目的で行われたものです。”,“前段の「前記選択ユーザのうち,所有するゲーム媒体が前記ユーザによるゲームに参加 した選択ユーザの,前記ゲームの進行に関する情報に応じて,前記ユーザによる前記ゲー ムの進行中に効果を発生させ」については,拒絶理由通知において審判官が,…と認定されているとおり,本願の明細書に記載されています。”旨,主張する。
しかし,当審拒絶理由で説示したのは,“「選択ユーザ」が「所有するゲーム媒体」が「前記選択ユーザの前記ゲームの進行 に関する情報に応じて,前記ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させる」ことについて,「ユーザ」が「選択した他のユーザが所有するゲーム媒体等を借りて対戦ゲームをプレイすることができる」ことについて記載されているのみ”であって,上記(ア)の通り,それ以外の効果については記載されていないし,補正事項2によって,請求項1の記載は,実質的に何ら変更されているものではないのであるから,当審拒絶理由が解消されていないことは明らかである。
よって,請求人の主張は採用できない。
(エ)まとめ
以上検討したとおり,当初明細書等には,「「選択ユーザ」が「所有するゲーム媒体」が「前記選択ユーザの前記ゲームの進行に関する情報に応じて,前記ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させる」」こと,及び「ユーザ(プレイヤ)が「選択ユーザ」の「所有するゲーム媒体」を借りることにより,当該「所有するゲーム媒体」によりゲーム進行中にユーザにとって有利な効果が発生する」ことは記載されているものの,それ以外に「選択ユーザの所有するゲーム媒体等」が「ユーザによるゲームの進行中に効果を発生させる」ことについては記載されておらず,「選択ユーザ」のうち,「ユーザによるゲームに参加した選択ユーザ」の「所有するゲーム媒体」が「ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させる」ことについても記載されているということはできない。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項に規定する要件に違反するものであり,また,特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって,上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本件発明について
1 本件発明
令和3年8月6日に提出された手続補正書による手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,令和3年3月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至11に記載された事項により特定されるものであり,そのうち,請求項1に係る発明(以下,「本件発明」という。)は,上記「第2の1(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1」の【請求項1】に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 当審拒絶理由
当審拒絶理由の内容は,概略,以下のとおりである。
補正要件(新規事項追加)違反について
本願について,令和3年3月17日に提出された手続補正書でした補正(以下,「本願補正」という。)は,下記の点で当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

当初明細書等には,「「選択ユーザ」が「所有するゲーム媒体」が「前記選択ユーザの前記ゲームの進行に関する情報に応じて,前記ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させる」こと,「ユーザ(プレイヤ)が「選択ユーザ」の「所有するゲーム媒体」を借りることにより,当該「所有するゲーム媒体」によりゲーム進行中にユーザにとって有利な効果が発生する」ことは記載されているものの,それ以外に「選択ユーザの所有するゲーム媒体等」が「ユーザによるゲームの進行中に効果を発生させる」ことについては記載されておらず,「選択ユーザ」のうち,「ユーザによるゲームに参加した選択ユーザ」,「ゲームに参加しない選択ユーザ」それぞれの「所有するゲーム媒体」が「ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させる」ことについても記載されているということはできない。

3 当審の判断
(1)本願補正事項について
本願補正は,令和2年1月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲を補正するものであるところ,本願補正のうち,請求項1,10及び11に係る補正事項(以下,「本願補正事項」という。)は,請求項1,10及び11において,「効果発生部」が「前記選択ユーザのうち,所有するゲーム媒体が前記ユーザによるゲームに参加した選択ユーザの前記ゲームの進行に関する情報に応じて,前記ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させ,かつ,前記選択ユーザのうち,所有するゲーム媒体が前記ユーザによるゲームに参加しない選択ユーザの前記ゲームの進行に関する情報に応じて,前記ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させる」ものであることを特定するものである。

(2)当初明細書等に記載の事項について
ア 本願補正事項に関連する記載としては,当初明細書等には,上記「(3)イ」と同様に記載がある。

(3)当審の判断
ア 「選択ユーザ」の「所有するゲーム媒体」が「ユーザ」による「ゲームの進行中に効果を発生させること」について
(ア)当初明細書等には,「選択ユーザ」の所有する「ゲーム媒体」が「ユーザ」による「ゲームの進行」に与える影響について具体的な記載はなく,「ユーザ」により「選択ユーザが所有するゲーム媒体」をゲームの進行中に利用することについては,「ユーザ」が「選択した他のユーザが所有するゲーム媒体等を借りて対戦ゲームをプレイすることができる」ことについて記載されているのみである。
(イ)具体的には,明細書の段落【0026】には,ユーザ(プレイヤ)がプレイする対戦ゲームが,「ユーザ(プレイヤ)が,複数の他のユーザの中から特定の他のユーザを選択し」,「(2)選択した特定の他のユーザが所有するゲーム媒体等を借りてプレイする対戦ゲームである」ことが記載され,同【0092】,【0123】には,「選択の決定がされた他のユーザの識別情報が,ユーザ(プレイヤ)に関連付けて記憶(仲間登録)され」ることによって,「ユーザ(プレイヤ)は,オススメユーザ群およびフレンドユーザ群の中から,「(2)選択した他のユーザが所有するゲーム媒体等を借りて対戦ゲームをプレイすることができる」ことが記載されているのみである。
(ウ)以上のことからすれば,本願当初明細書等には,「選択された他のユーザ」の「所有するゲーム媒体」が「ユーザによる」「ゲームの進行中」に効果を発生させることについては,「ユーザが選択ユーザの所有するゲーム媒体等を借りてプレイすること」のみしか記載されていないから,それ以外に,例えば,「選択された他のユーザ」の「所有するゲーム媒体」をプレイユーザのパラメータ(レベル,HP,攻撃力など)に変換すること等の「選択ユーザの所有するゲーム媒体等」が「ユーザによるゲームの進行中に効果を発生させる」ことについては記載されていない。

イ 「選択ユーザ」のうち,「ユーザによるゲームに参加した選択ユーザ」,「ゲームに参加しない選択ユーザ」それぞれの「所有するゲーム媒体」が「ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させる」について
(ア)当初明細書等には,ユーザがプレイする「ゲーム」について,「(1)選択した他のユーザと共に対戦ゲームをプレイすることができる。」ことと「(2)選択した他のユーザが所有するゲーム媒体等を借りて対戦ゲームをプレイすることができる。」こととが,「または」との接続詞で排他的選択肢として記載されているだけであるから(【0025】,【0092】,【0123】,【0125】),「選択ユーザ」のうち,「ユーザによるゲームに参加した選択ユーザ」の「所有するゲーム媒体」が「ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させる」ことについても,当初明細書等に記載されているということはできない。
(イ)請求人は,令和3年3月17日に提出した意見書において,「「前記選択ユーザのうち,所有するゲーム媒体が前記ユーザによるゲームに参加した選択ユーザの前記ゲームの進行に関する情報に応じて,前記ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させ」は,明細書全体および段落【0126】の前段である「変形例においても,「登録しておいた仲間リスト」の中から,「低レベルユーザ群」に属する他のユーザの選択の決定がされることによって,ユーザに対してインセンティブとなる効果(動機づけとなる効果)が与えられる。」との記載等に基づくものであり,「前記選択ユーザのうち,所有するゲーム媒体が前記ユーザによるゲームに参加しない選択ユーザの前記ゲームの進行に関する情報に応じて,前記ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させる」は,段落【0126】の後段である「しかし,変形例では,これだけではなく,ユーザ(プレイヤ)が,「低レベルユーザ群」に属する他のユーザを仲間登録しておくだけで,ユーザに対してインセンティブとなる効果(動機づけとなる効果)を与えることもできる。」との記載等に基づくものであると主張している。
(ウ)しかし,明細書の段落の【0126】の記載は,同段落【0123】及び【0124】において,「実施形態1」では,選択の決定をすると同時に,選択の決定がされた他のユーザの識別情報が,ユーザ(プレイヤ)に関連付けて記憶(仲間登録)され,ユーザ(プレイヤ)は,選択した他のユーザが所有するゲーム媒体等を借りて対戦ゲームをプレイすることができる」ものであったが,「変形例」は,選択の決定をすることによって,先ず,仲間登録だけが行われ,次いで,対戦ゲームにおけるクエスト等のイベントを選択して,当該選択したクエストが開始される際に,「登録しておいた仲間リスト」の中から,1以上の他のユーザを選択して,選択の決定をするものであり,「登録しておいた仲間リスト」の中から,他のユーザの選択の決定がされることによって,ユーザ(プレイヤ)は,選択した他のユーザが所有するゲーム媒体等を借りて対戦ゲーム(クエスト等のイベント)をプレイすることができる」ものであることの説明がされていることを前提に変形例の説明がされているのであって,明細粗書の段落【0126】には,「選択された他のユーザ」である「選択ユーザ」が,当該「選択ユーザ」の所有するゲーム媒体を借りてプレイするゲームに,参加するか否かについては記載も示唆もされていないし,当該「選択ユーザ」がユーザのゲームに参加することがそれらの記載から理解することはできない。
また,段落【0126】の後半において,その変形例においてさらに,「ユーザ(プレイヤ)が,「低レベルユーザ群」に属する他のユーザを仲間登録しておくだけで,ユーザに対してインセンティブとなる効果(動機づけとなる効果)を与えることもできる」旨が説明されているが,ここでの記載は,仲間登録をしておくことで,「ユーザ」が当該選択ユーザの所有するゲーム媒体に対してユーザに対してインセンティブとなる効果(有利な効果)を与えるようにしても良いことが読み取れるのみであるところ,この記載は,「仲間登録された他のユーザ」が所有するゲーム媒体を借りてゲームをプレイすることを説明したものではないし,当該記載から,「仲間登録された他のユーザ」が所有するゲーム媒体が,仲間登録するだけで,「ユーザ」のプレイするゲームにおいて効果を発揮することが読み取れるものでもない。
仮にここでの「変形例」において,「ユーザ(プレイヤ)が,「低レベルユーザ群」に属する他のユーザを仲間登録しておくだけで,ユーザに対してインセンティブとなる効果(動機づけとなる効果)を与えることもできる。」との記載が,「仲間登録」された「ユーザ」の所有するゲーム媒体についてユーザに対してインセンティブとなる効果を与えることができることが記載されていると解釈できるとしても,当該「仲間登録」されたユーザの所有するゲーム媒体を借りてゲームをプレイする際に,有利な効果が与えられることが読み取れるにとどまるのであって,当該「仲間登録されたユーザ」が所有するゲーム媒体を借りてユーザがプレイするゲームに,当該仲間登録されたユーザが参加しているか否かが明示的に読み取れるものとはいえないし,選択ユーザの所有する媒体等をユーザが借りることなく,当該選択ユーザの所有する媒体等が,ユーザによるゲームの進行中に効果を発生させることが記載されているということはできない。

ウ まとめ
以上検討したとおり,当初明細書等には,「「選択ユーザ」が「所有するゲーム媒体」が「前記選択ユーザの前記ゲームの進行に関する情報に応じて,前記ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させる」」こと,及び「ユーザ(プレイヤ)が「選択ユーザ」の「所有するゲーム媒体」を借りることにより,当該「所有するゲーム媒体」によりゲーム進行中にユーザにとって有利な効果が発生する」ことは記載されているものの,それ以外に「選択ユーザの所有するゲーム媒体等」が「ユーザによるゲームの進行中に効果を発生させる」ことについては記載されておらず,「選択ユーザ」のうち,「ユーザによるゲームに参加した選択ユーザ」,「ゲームに参加しない選択ユーザ」それぞれの「所有するゲーム媒体」が「ユーザによる前記ゲームの進行中に効果を発生させる」ことについても記載されているということはできない。
したがって,本願補正は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであって,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願補正は,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず特許を受けることができないものである。

したがって,本願は拒絶すべきものである。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-03-29 
結審通知日 2022-04-01 
審決日 2022-04-19 
出願番号 P2016-056709
審決分類 P 1 8・ 56- WZ (A63F)
P 1 8・ 55- WZ (A63F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 藤本 義仁
畑井 順一
発明の名称 ゲームプログラム、ゲーム制御方法、およびゲームコンピュータ  
代理人 高梨 玲子  

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