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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  C09K
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C09K
審判 全部無効 2項進歩性  C09K
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  C09K
管理番号 1385671
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-09-18 
確定日 2022-06-28 
事件の表示 上記当事者間の特許第6435357号発明「2,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン、2−クロロ−1,1,1−トリフルオロプロペン、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンまたは2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6435357号の請求項1ないし7に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6435357号(以下、「本件特許」という。)は、2009年(平成21年)5月7日(パリ条約による優先権主張 2008年(平成20年)5月7日、米国)を国際出願日とする特願2011−508656号(以下、「親出願」という。)の一部を平成27年2月17日に新たな特許出願とした特願2015−28960号(以下、「子出願」という。)の一部を、平成29年2月10日にさらに新たな特許出願(特願2017−23243号、以下、「孫出願」ということもある。)としたものに係り、平成30年2月16日付けで拒絶理由が通知され、同年5月28日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月18日付けで拒絶査定がされ、同年9月20日に拒絶査定不服の審判請求がされ、同時に、手続補正書が提出され、同年10月16日付けで特許査定がされ、同年11月16日に特許権の設定登録がされたものである。
その後の手続の経緯は、次のとおり。なお、令和3年9月22日付けの審決の予告に対して、被請求人からは応答がなかった。
令和2年 9月18日 無効審判請求(請求人)
令和3年 1月15日受付 審判事件答弁書(被請求人)(書留番号977/565)
同年 2月24日付け 審理事項通知(請求人、被請求人)
同年 4月 5日 上申書提出(請求人)
同年 4月13日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
同年 同月 同日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
同年 5月13日 上申書提出(請求人)
同年 同月 同日 上申書提出(被請求人)
同年 同月20日 口頭審理
同年 6月10日 上申書提出(請求人)
同年 6月10日 上申書提出(被請求人)
同年 9月22日付け 審決の予告
同年12月16日 上申書提出(請求人)

第2 請求人の主張
1 請求の趣旨
本件審判請求の請求の趣旨は、「『特許第6435357号の請求項1乃至7に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする』との審決を求める。」というものである。
2 無効理由の概要
請求人の主張する無効理由の概要は下記の(1)〜(7)の無効理由1〜7であって、下記の甲第1号証〜甲第33号証が提出されている(以下、甲号証は、号証番号に応じて「甲1」などという。)。また、本件請求項に係る発明は、項番号に応じて、「本件発明1」などといい、本件発明1〜7を、まとめて「本件発明」ということもある。

(1)無効理由1(明確性要件)
ア 本件発明1の組成物に含まれる化合物については、
(a)HFO−1234yfと、HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zdを含むこと、及び、
(b)HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zdの合計量は、1重量パーセント未満であること、しか特定されていない。
そうすると、本件発明1において、上記化合物以外については、いかなるものが含まれるのかが不明であり、本件発明1に係る組成物を明確に特定することができない。
イ また、上記「(b)」の「1重量パーセント未満である」という数値限定については、下限値が明確でなく、特許請求の範囲の記載は不明確である。

(2)無効理由2(実施可能要件
本件明細書には、本件発明に係る「組成物」の製法について何ら具体的に記載されていない。また、実施例を見ても、本件発明に該当する組成物は記載されておらず、当該組成物の組成に近い組成物すら記載されていない。よって、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明の組成物を当業者が作ることができるように記載されていないから、本件明細書の記載は実施可能要件を満たさず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(3)無効理由3(サポート要件)
本件明細書の記載からは、本件発明に係る組成物が、発明として、どのような課題を解決しようとするものなのかが明確に理解できない。解決課題が明確でなければ、本件発明によって、発明の課題が解決できないことは明らかであるから、本件特許請求の範囲の記載は、サポート要件を充足せず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
仮に、本件発明に何らかの解決課題が存在するとしても、本件発明の「HFO−1234yfと、HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zdを含む」の構成及び「HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zdの合計量は、1重量パーセント未満である」の構成の技術的意義については、明細書に何ら説明がされていない。
そうすると、いずれにしても、当業者は、本件発明によって、本件発明の課題が解決できるとは認識しないから、本件特許請求の範囲の記載は、サポート要件を充足せず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(4)無効理由4(新規事項)
本件の出願時の請求項1に係る発明は、「HFO−1234yfと、HFO−1243zf、HCFO−1233xf、HCFO−1233zd、およびHFO−1141と、を含む組成物。」(下線は、請求人が付したもの)であり、HFO−1141を含有させることを必須とする発明であった。
一方、出願時の明細書には、本件発明の構成である、「HFO−1234yfと、 HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zd」のみを組成物の必須成分とすること、及び、「HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zdの合計量を1重量%未満」とすることについては何ら記載がされていなかった。
他方、平成30年5月28日付け手続補正書では、上記必須成分から、「HFO−1141」を除外する補正を行った。また、同年9月20日付け手続補正書による補正で、本件発明に補正された。
そうすると、平成30年5月28日付け手続補正書でした補正及び同年9月20日付け手続補正書でした補正は、新たな技術的事項を導入するから、新規事項の追加に該当し、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

(5)無効理由5(甲9に基づく新規性
本件特許の出願日は、現実の出願日である平成29年2月10日である。
すなわち、親出願の特許請求の範囲(甲10)には、HFO−1234yfと、請求項1に記載された29の化合物から選択される少なくとも1つの化合物を組み合わせた以下の組成物が記載されている。
「【請求項1】
HFO−1234yfと、HFO−1234ze、HFO−1243zf、HCFC−243db、HCFC−244db、HFC−245cb、HFC−245fa、HCFO−1233xf、HCFO−1233zd、HCFC−253fb、HCFC−234ab、HCFC−243fa、エチレン、HFC−23、CFC−13、HFC−143a、HFC−152a、HFC−236fa、HCO−1130、HCO−1130a、HFO−1336、HCFC−133a、HCFC−254fb、HCFC−1131、HFO−1141、HCFO−1242zf、HCFO−1223xd、HCFC−233ab、HCFC−226baおよびHFC−227caからなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物とを含む組成物。」
しかし、この親出願の発明における化合物の組み合わせは5億とおり以上であるから、親出願の発明から、HFO−1234yfに対して「HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zd」という特定の化合物の組み合わせを含ませるという技術的事項は、親出願の出願当初の明細書において、何ら読み取ることはできない。
また、この親出願の出願当初の明細書(甲11)においても、本件発明1に係る「HFO−1234yfと、HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zd」という特定の化合物の組み合わせを必須成分とすることや、「HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zdの合計量」を「1重量パーセント未満」という特定の値とすることについては、一切記載されていない。
そうすると、本件特許請求の範囲に記載された事項は、原出願の出願当初の明細書、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内ではないから、本件特許出願は分割要件を満たしていないから、本件の出願日は、現実の出願日である平成29年2月10日となる。
そうであれば、本件発明1〜7は、現実の出願日前に公開された甲9に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

(6)無効理由6(甲16に基づく新規性
同様に、本件発明1〜7は、現実の出願日前に公開された甲16に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

(7)無効理由7(甲17に基づく新規性
同様に、本件発明1〜7は、現実の出願日前に公開された、本件出願の親出願の特許公開公報に係る甲17に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

<証拠方法>
甲1:特許庁、特許・実用新案審査基準・第II部・第2章・第3節・2.2、平成27年9月
甲2:特許庁、特許・実用新案審査基準・第II部・第1章・第1節・3.1.1、平成27年9月
甲3:"Climate Change 2007 -The Physical Science Basis"、Working Group I Contribution to the Fourth Assessment Report of the Intergovernmental Panel on Climate Change、2007年、212頁
甲4:“Atmospheric chemistry of CF3CF=CH2: Kinetics and mechanisms of gas-phase reactions with Cl atoms, OH radicals, and O3 “、Chemical Physics Letters 439 (2007) 18〜22、2007年3月21日(オンライン公開日)www.sciencedirect.com, Science Direct
甲5:平成30年5月28日付け意見書(特願2017−23243号)
甲6:「最近気になる用語28(成績係数(COP:Coefficient of Performance))」、 公益社団法人 日本冷凍空調学会、https://jsrae.or.jp/annai/yougo/28.html(印刷日2020年9月3日)
甲7:平成29年3月2日付け上申書(特願2017−23243号)
甲8:平成30年5月28日付け手続補正書(特願2017−23243号)
甲9:国際公開第2009/003165号
甲10:願書に最初に添付した特許請求の範囲(特願2011−508656号)
甲11:願書に最初に添付した明細書(特願2011−508656号)
甲12:特表2010−531924号公報
甲13:「BINARY IT用語辞典(ヒートシンク)」、ウェブリオ株式会社、https://www.sophia-it.com/content/ヒートシンク
甲14:「図解エレクトロニクス用語辞典」、エレクトロニクス用語研究会、1992年1月10日、337頁
甲15:「カーエアコン[第2版]」、カーエアコン研究会、2003年1月15日、17〜21頁
甲16:特表2014−503494号公報
甲17:特表2011−520017号公報
甲18:東京地裁令和3年3月30日判決(令和元年(ワ)第30991号)
甲19:特許庁、特許・実用新案審査基準・第IV部・第2章・第3節・3.1、第VI部・第1章・第3節・3.2、平成27年(2015年)9月
甲20:「蒸留とは-蒸留の原理と蒸留装置」、関西化学機械製作株式会社のウエブサイト
https://www.kce.co.jp/tec-info/distillation/distillation-facility.html
甲21:特開平6−145083号公報
甲22:Safety Data Sheet, 3,3,3-Trifluoropropene, Version 2.0、DuPont de Nemours, Inc.、2014年12月2日
甲23:James M. Calm, "ARTI REFRIGERANT DATABASE DATA SUMMARIES - VOLUME I: SINGLE-COMPOUND REFRIGERANTS"
(https://www.ahrinet.org/resources/research/public-sector-research/technical-results)、Air-Conditioning and Refrigeration Technology Institute、1999年9月、表紙、1、2、13、305、306頁
甲24:Safety Data Sheet 110070D, 2-Chloro-1,1,1,3-tetrafluoropropane、SYNQUEST LABORATORIES、2016年12月6日
甲25:安全データシート(SDS)、HFO-1234yf、日本フルオロカ−ボン協会、2017年8月1日
甲26:田中勝之、「HCFO-1233zd(E)とHCFO-1233xfの飽和蒸気圧力および飽和液体密度の測定」、Transactions of the Japan Society of Refrigerating and Air Conditioning Engineering、2016年3月31日、105〜111頁
甲27:安全データシート、シス−1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(CELEFIN 1233Z)、セントラル硝子株式会社、2020年4月6日改訂、1〜6頁
甲28:特開2017−14160号公報
甲29:Safety Data Sheet 1100735, 1,2,2-Trichloro-3,3,3-trifluoropropane、SYNQUEST LABORATORIES、2019年5月31日、1〜6頁
甲30:欠番
甲31:特許庁、特許・実用新案審査ハンドブック附属書A「特許・実用新案審査基準」事例集[事例35]、平成27年(2015年)9月
甲32:特願2017−023243号分割出願情報(J-PlatPat 経過情報照会https://www.j-platpat.inpit.go.jp/h0000)
甲33:知財高裁、平成17年(行ケ)第10623号判決(平成18年4月27日判決言渡)

第3 被請求人の主張
被請求人は、「『本件特許無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。』との審決を求め、上記第3(1)〜(7)に対して、次の(1)〜(7)を主張している。また、下記乙第1の1号証〜乙第6号証(以下、乙各号証を号証番号に対応して「乙1の1」などともいう。)を提出した。

(1)無効理由1(明確性要件)
本件発明1では、HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zdの合計量が1重量パーセント未満であるため、その範囲は非常に狭く、明確に定義された組成を非常に具体的に定義している。さらに、この組成物は、冷却または熱伝達組成物としての使用に適している必要があるため、考えられるすべての組み合わせが網羅されているわけではない。また、明確性要件は発明の外縁がその文言として明確であるかどうかという観点から判断されるべきであり、本件発明1の構成(外縁)は極めて明確である。
また、クレームの明確性要件を満たすために量又は量の範囲は必須ではなく、量又は量の範囲の記載がない場合に不明確となるわけではない。

(2)無効理由2(実施可能要件
本件図1には、HFO−1234yfを生成するまでの工程が示されている。
本件明細書では、HFO−1234yf、HFO−1243zf、HCFO−1233xf及びHCFO−1233zdを形成するための手段が記載されている。
本件明細書【0032】〜【0062】では、「HFO−1243zfのフルオロ塩素化」として、HFO−1243zfを他の成分に変換し、HFO−1243zfの含有量を減少させることが記載されている。
本件明細書【0063】〜【0084】では、「HCFC−243dbのフッ素化」する内容が記載されている。
HCFO−1233zd以外の成分を生成するのに好ましい温度帯が示された上で、HCFO−1233zdの形成に好ましい温度帯が示されているのであるから、例えばHCFO−1233zdの形成に好ましい温度帯を外し、HCFO−1233zd以外の成分を生成するのに好ましい温度帯を採用することで、HCFO−1233zdの生成量を少なくすることができることを当業者は当然に認識する。また、当業者であれば、反応物の比率を調整するだけでなく、ループを再循環させたり、蒸留等の従来からある分離方法を使用したりすることもできる。
また本件明細書【0085】〜【0091】では、「HCFO−1233xfのフッ素化」として、HCFO−1233xfを他の成分に変換し、HCFO−1233xfの含有量を減少させることが記載されている。
このように本件明細書では、HFO−1243zfの含有量を減少させること及びHCFO−1233xfの含有量を減少させることが記載され、温度を適宜調整することでHCFO−1233zdの生成量を少なくすることができることが記載されている。

このような開示に加え、本件明細書の実施例では、
「HFO−1234yfと、HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zd」の4つの成分を含む組成物が開示されている。
また、下記表3、表5及び表6のとおり、HFO−1234yf、HFO−1243zf、HCFO−1233xf及びHCFO−1233zdの含有量を適宜調整できることが示されている。
また、濃度を設計するために一緒に成分を混ぜることも一般的な方法である。これらの例は、1233xf及び1233zdがどのようにして生成されるかを示し、そして、混合成分を作るために1234yfに加えられる一つの成分として利用されうることを示している。

以上の本件明細書の記載と技術常識に基づけば、当業者であれば、「HFO−1234yfと、HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zd」を含む組成物に関し、「HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zd」の含有量を減少させて1重量%未満に調整することは過度の試行錯誤を経ることなく十分に可能である。

(3)無効理由3(サポート要件)
本件発明1は、HFO−1234yfと、HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zdとを含むことを要件としている。そして、実施例を含む本件特許明細書の具体的な記載内容からして、本件発明1では、当業者において、技術常識も踏まえて「低地球温暖化係数(低GWP)の組成物」を提供できるであろうとの合理的な期待が得られる程度には十分な記載がなされている。

(4)無効理由4(新規事項)
出願当初は必須であると考えていた構成要素が、後に見直した結果、必須の構成要素から除外されることは許容される補正であり、新規事項の追加に該当するものではない。
本件明細書でHFO−1234yfと、HFO−1243zf、HCFO−1233xf及びHCFO−1233zdとを含む組成物について記載されるとともに、表3では、HFO−1234yfと、HFO−1243zf、HCFO−1233xf及びHCFO−1233zdとを含み、HFO−1141が示されていない態様が開示されている。このため、「HFO−1141」を削除することは、新たな技術的事項を導入するものではない。

(5)無効理由5(甲9に基づく新規性
本件特許は分割要件を満たすことから、甲9は先行文献にはなり得ず、請求人の甲9に基づく主張は失当である。

(6)無効理由6(甲16に基づく新規性
本件特許は分割要件を満たすことから、甲16は先行文献にはなり得ず、請求人の甲16に基づく主張は失当である。

(7)無効理由7(甲17に基づく新規性
本件特許は分割要件を満たすことから、甲17は先行文献にはなり得ず、請求人の甲17に基づく主張は失当である。

<証拠方法>
乙1の1:特許第6583521号公報
乙1の2:特許第6394333号公報
乙2:特許・実用新案審査基準・第II部・第2章・第3節・1.〜4.3.3、平成27年9月
乙3:中山信弘、小泉直樹、「新・注解 特許法〔第2版〕【上巻】」、第2版第1刷、株式会社青林書院、2017年10月5日、138〜139頁
乙4:「News Release」、AGC旭硝子株式会社、2014年1月23日
乙5:Research Chemicals Catalog,2003, SynQuest Laboratories, Inc.、2003年、表紙〜3、98、244、334頁
乙6:Safety Data Sheet 1300715, E-1-Chloro-3,3,3-trifluoropropane-1、SYNQUEST LABORATORIES、2015年11月8日、1〜6頁及び抄訳

第4 本件発明
本件発明1〜7は、本件特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項によって特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
HFO−1234yfと、
HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zdと、を含む冷却用又は熱伝達組成物であって、HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zdの合計量は、1重量パーセント未満である組成物。
【請求項2】
冷媒としての請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項3】
空調、冷凍庫、冷蔵庫、ヒートポンプ、水冷器、満液式蒸発冷却器、直接膨張冷却器、遠心分離冷却器、ウォークインクーラー、可動式冷蔵庫、可動式空調ユニットおよびこれらの組み合わせにおける冷媒としての請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項4】
エアロゾル噴霧剤としての請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項5】
発泡剤としての請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項6】
熱を熱源からヒートシンクへ伝える組成物を含む請求項1に記載の組成物を用いる方法。
【請求項7】
液体から気体まで相転移し戻る組成物を含むサイクルにおいて冷媒として請求項1に記載の組成物を用いる方法。」

第5 当審の判断
(1)無効理由4(新規事項)について
ア 事案に鑑み、無効理由4(新規事項)について、まず検討する。
特許法第17条の2第3項の規定において、補正が、当業者によって、明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができると解するのが相当である(知財高判平20.5.30、平18(行ケ)第10563号参照)。
そこで、平成30年5月28日付けの手続補正及び同年9月20日付けの手続補正について、そのような観点から検討することとする。
イ 本件出願時の特許請求の範囲及び明細書には、次の記載がある。
a「【請求項1】
HFO−1234yfと、
HFO−1243zf、HCFO−1233xf、HCFO−1233zd、およびHFO−1141と、を含む組成物。
【請求項2】
HFO−1243zf、HCFO−1233xf、HCFO−1233zd、およびHFO−1141からなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物を、1重量パーセント未満で含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
冷媒としての請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項4】
空調、冷凍庫、冷蔵庫、ヒートポンプ、水冷器、満液式蒸発冷却器、直接膨張冷却器、遠心分離冷却器、ウォークインクーラー、可動式冷蔵庫、可動式空調ユニットおよびこれらの組み合わせにおける冷媒としての請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項5】
エアロゾル噴霧剤としての請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項6】
発泡剤としての請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項7】
熱を熱源からヒートシンクへ伝える組成物を含む請求項1に記載の組成物を用いる方法。
【請求項8】
液体から気体まで相転移し戻る組成物を含むサイクルにおいて冷媒として請求項1または2に記載の組成物を用いる方法。」
b「【技術分野】
【0001】
本開示内容は、熱伝達組成物、エアロゾル噴霧剤、発泡剤、ブロー剤、溶媒、クリーニング剤、キャリア流体、置換乾燥剤、バフ研磨剤、重合媒体、ポリオレフィンおよびポリウレタンの膨張剤、ガス状誘電体、消火剤および液体またはガス状形態にある消火剤として有用な組成物の分野に関する。特に、本開示内容は、2,3,3,3,−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yfまたは1234yf)または2,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン(HCFC−243dbまたは243db)、2−クロロ−1,1,1−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xfまたは1233xf)または2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン(HCFC−244bb)を含む組成物等の熱伝達組成物として有用な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
新たな環境規制によって、冷蔵、空調およびヒートポンプ装置に用いる新たな組成物が必要とされてきた。低地球温暖化係数の化合物が特に着目されている。
【0003】
出願人は、1234yf等の新たな低地球温暖化係数の化合物を調製する際に、特定の追加の化合物が少量で存在することを見出した。
【0004】
従って、本発明によれば、HFO−1234yfと、HFO−1234ze、HFO−1243zf、HCFC−243db、HCFC−244db、HFC−245cb、HFC−245fa、HCFO−1233xf、HCFO−1233zd、HCFC−253fb、HCFC−234ab、HCFC−243fa、エチレン、HFC−23、CFC−13、HFC−143a、HFC−152a、HFO−1243zf、HFC−236fa、HCO−1130、HCO−1130a、HFO−1336、HCFC−133a、HCFC−254fb、HCFC−1131、HFC−1141、HCFO−1242zf、HCFO−1223xd、HCFC−233ab、HCFC−226baおよびHFC−227caからなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物とを含む組成物が提供される。組成物は、少なくとも1つの追加の化合物の約1重量パーセント未満を含有する。」
c 「【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】HFO−1234yfを243dbから製造する反応を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
HFO−1234yfには、いくつかある用途の中で特に、冷蔵、熱伝達流体、エアロゾル噴霧剤、発泡膨張剤としての用途が示唆されてきた。また、HFO−1234yfは、V.C.Papadimitriouらにより、Physical Chemistry Chemical Physics、2007、9巻、1−13頁に記録されているとおり、低地球温暖化係数(GWP)を有することも分かっており有利である。このように、HFO−1234yfは、高GWP飽和HFC冷媒に替わる良い候補である。
【0011】
一実施形態において、本開示内容は、HFO−1234yfと、HFO−1234ze、HFO−1243zf、HCFC−243db、HCFC−244db、HFC−245cb、HFC−245fa、HCFO−1233xf、HCFO−1233zd、HCFC−253fb、HCFC−234ab、HCFC−243fa、エチレン、HFC−23、CFC−13、HFC−143a、HFC−152a、HFC−236fa、HCO−1130、HCO−1130a、HFO−1336、HCFC−133a、HCFC−254fb、HCFC−1131、HFO−1141、HCFO−1242zf、HCFO−1223xd、HCFC−233ab、HCFC−226ba、HFC−227caからなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物とを含む組成物を提供する。
【0012】
一実施形態において、HFO−1234yfを含む組成物中の追加の化合物の合計量は、ゼロ重量パーセントを超え、1重量パーセント未満までの範囲である。」
d 「【0031】
一実施形態において、HFO−1234yfは、HCFC−243dbから単一工程で生成してよい。他の実施形態において、反応シーケンスは、段階的なやり方で実施してもよい。他の実施形態において、HCFO−1233xfは、HCFC−243dbから生成してから、HCFO−1233xfをHFO−1234yfに直接変換してもよい。さらに他の実施形態において、HCFC−244bbは、HCFC−243dbから生成してから、HCFC−244bbをHFO−1234yfに変換してもよい。
【0032】
HFO−1243zfのフルオロ塩素化
ある実施形態において、HFO−1243zfを用いて、フルオロ塩素化により、HCFC−243db、HCFO−1233xf、HCFC−244dbおよび/またはHFO−1234yfを作製してよい。HFO−1243zfは、E.I.DuPont de Nemours and Company(Wilmington,DE,USA)より市販されている。」
e 「【0063】
HCFC−243dbのフッ素化
ある実施形態において、HCFC−243dbを用いて、HCFC−HCFO−1233xf、HCFC−244dbおよび/またはHFO−1234yfをフッ素化により作製することができる。これらの反応を図1に示す。フッ素化反応は、液相または気相で行うことができる。本発明の液相実施形態について、HCFC−243dbとHFの反応は、バッチ、半バッチ、半連続または連続モードで操作される液相リアクタで実施してよい。バッチモードにおいては、出発HCFC−243dbおよびHFは、オートクレーブまたはその他好適な反応容器で混合して、所望の温度まで加熱される。」
f 「【0085】
HCFO−1233xfのフッ素化
ある実施形態において、HCFO−1233xfを用いて、HCFC−HCFC−244bbおよび/またはHFO−1234yfをフッ素化により作製してもよい。これらの反応を図1に示す。」
g 「【0092】
HCFC−244bbの脱塩化水素化
ある実施形態において、HCFC−244bbの脱塩化水素化を用いて、HFO−1234yfを作製する。」
h 「【0104】
実施例1〜6
HFO−1243zfのクロロフッ素化
上記したとおりに調製した98%クロム/2%コバルト触媒(21.4グラム、15mL、−12〜+20メッシュ(1.68〜0.84mm))を、流動床サンドバスで加熱した直径5/8”(1.58cm)のInconel(登録商標)(Special Metals Corp.(New Hartford,New York))ニッケル合金リアクタ管に入れた。触媒を、次のとおり、HFによる処理で予備フッ素化した。触媒を45℃〜175℃まで、約1.5時間にわたって、窒素フロー(50cc/分)で加熱した。HFをリアクタに、50cc/分の流量で、1.3時間にわたって、175℃の温度で入れた。リアクタ窒素フローを20cc/分まで減じ、HFフローを80cc/分まで増やし、このフローを0.3時間維持した。リアクタ温度を、400℃まで1時間にわたって徐々に上げた。この期間後、HFおよび窒素フローを停止し、リアクタを所望の操作温度とした。HF蒸気、HFO−1243zfおよびCl2のリアクタへのフローを開始した。リアクタ流出物の一部をオンラインGC/MSにより分析した。
【0105】
様々な操作温度ならびにHF、HFO−1243zfおよびCl2の示したモル比での98/2Cr/Co触媒でのHFO−1243zfのクロロフッ素化の結果を表2に示す。分析データは、GC面積%の単位で示されている。名目触媒床容積は15cc、接触時間(CT)は15秒であった。実施例1および2は、触媒なしで行った。
【0106】
【表2】

【0107】
【表3】

i 「【0108】
実施例7〜11
HCFC−243dbのフッ素化
上記したとおりに調製した98%クロム/2%コバルト触媒(21.4グラム、15mL、−12〜+20メッシュ(1.68〜0.84mm))を、流動床サンドバスで加熱した直径5/8”(1.58cm)のInconel(登録商標)ニッケル合金リアクタ管に入れた。触媒を、次のとおり、HFによる処理で予備フッ素化した。触媒を45℃〜175℃まで、約1.5時間にわたって、窒素フロー(50cc/分)で加熱した。HFをリアクタに、50cc/分の流量で、1.3時間にわたって、175℃の温度で入れた。リアクタ窒素フローを20cc/分まで減じ、HFフローを80cc/分まで増やし、このフローを0.3時間維持した。リアクタ温度を、400℃まで1時間にわたって徐々に上げた。この期間後、HFおよび窒素フローを停止し、リアクタを所望の操作温度とした。HF蒸気、HCFC−243db(CF3CHClCH2Cl)のリアクタへのフローを開始した。リアクタ流出物の一部をオンラインGC/MSにより分析した。
【0109】
様々な操作温度ならびにHFおよびHCFC−243dbの示したモル比での98/2Cr/Co触媒でのHCFC−243dbのフッ素化の結果を表3に示す。分析データは、GC面積%の単位で示されている。名目触媒床容積は15cc、接触時間(CT)は15秒であった。実施例7は、触媒なしで行った。
【0110】
【表4】


j 「【0111】
実施例12
TaF5を存在させたHFC−243dbとHFの反応
210mLのHastelloy(登録商標)C管に、10.0グラム(0.0599モル)のHCFC−243dbおよび25.4グラム(0.040モル)の五フッ化タンタルを入れた。次に、管に、40.0グラム(2.0モル)のフッ化水素を入れた。管を150℃まで温め、149℃〜150℃に8時間、振とうしながら保持した。管を、室温まで冷やし、100mLの水で処理した。管の中身を出し、小有機相を集め、中和した。試料は、91.1%の未変換HCFC−243dbであり、変換生成物のGC−MS分析は次のとおりであった。
【0112】
【表5】



k 「【0113】
実施例13
HCFO−1233xfからHCFC−244bbへのフッ素化
20グラムの粘性SbF5の入った小PTFEバイアルの中身を、乾燥400mLのHastelloy(登録商標)振とう管に注いだ。漏れ試験のために、管を閉じ、窒素で加圧した。振とう管を−40℃未満までドライアイスで冷やし、徐々に放出してから排気した。75グラム(3.75−モル)の無水HF、次に、165グラム(1.26−モル)のHCFO−1233xfを振とう管へ凝縮した。振とう管をバリケードに入れ、振とうを開始した。
【0114】
振とう管を周囲温度(〜20−23℃)で攪拌し、圧力は21〜25psigであった。2時間後、振とうを止め、150mLの水を振とう管に用心しながら注いだ。管を一晩放置してから、中身を減圧してプラスチック容器に移す前に、氷浴で0〜5℃まで冷やした。容器を氷上に保った。
【0115】
容器の中身を、少し氷を入れたポリプロピレン分液漏斗に注いだ。下有機層の外観は、明るいコハク色であった。有機層を、〜50−mLの4モルの(pH7)ホスフェートバッファおよび氷(〜100−mL)の入ったCorning(Lowell,MA)よりPyrex(登録商標)(以降、「Pyrex(登録商標)」)という商標で販売されているガラスのメディアボトルに分離した。有機層を再び分離し、少量の無水硫酸マグネシウムの入った乾燥Pyrex(登録商標)メディアボトルに注いだ。粗収量は、164.3グラム(約120−mL、86%)であった。
【0116】
粗材料のGC/MSによれば、大半がHCFC−244bbであったことが示された。他の成分は、0.13%245cb、0.09%245eb、0.16%1233xfおよび合計12.2%のその他副生成物であった。」
l 「【0117】
実施例14
HCFC−244bbへのHCFO−1233xfのフッ素化
20グラムの粘性SbF5の入った小PTFEバイアルの中身を、乾燥400−mLのHastelloy(登録商標)振とう管に入れた。管を閉じ、漏れ試験のために窒素で加圧した。振とう管を、−40℃未満まで、ドライアイスで冷やし、徐々に放出してから排気した。53グラム(2.65−モル)の無水HFを振とう管に移してから、227グラム(1.74モル)のHCFO−1233xfを冷却した振とう管へ凝縮した。振とう管をバリケードに入れ、振とうを開始した。
【0118】
振とう管を周囲温度(約18〜21℃)で攪拌し、圧力は16〜20psigであった。2時間後、振とうを止め、100mLの水を振とう管に用心しながら注いだ。管を一晩放置してから、中身を減圧してプラスチック容器に移す前に、氷浴で0〜5℃まで冷やした。容器を氷上に保った。
【0119】
容器の中身を、少し氷を入れたポリプロピレン分液漏斗に注いだ。下有機層の外観は、明るいコハク色であった。有機層を、約50mLの4モルの(pH7)ホスフェートバッファおよび氷(約100mL)の入ったPyrex(登録商標)メディアボトルへ分離した。有機層を再び分離し、少量の無水硫酸マグネシウムの入った乾燥Pyrex(登録商標)メディアボトルに注いだ。粗収量は、238.8グラム(約170mL、91%)であった。
【0120】
粗材料のGC/MSによれば、大半がHCFC−244bbであったことが示された。他の成分は、0.11%HFC−245cb、0.10%HFC−245eb、0.26%HCFO−1233xfおよび合計9.7%のその他副生成物であった。」
m 「【0121】
実施例15
実施例15は、HCFC−244bb(2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン)のHFO−1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)への触媒なしでの変換を示すものである。
【0122】
加熱ゾーンが約12インチの空のInconel(登録商標)管(1/2インチOD)を、500℃〜626℃の温度まで加熱し、HFC−244bbを、0.52mL/時で、40℃に設定された気化器を通して、2.4sccm(4.0×10−8m3)のN2スイープを用いて供給した。リアクタ流出物を、オンラインGSMSで分析した。結果をモルパーセントで記録してある。
【0123】
【表6】


n 「【0124】
実施例16
実施例16は、HCFC−244bb(2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパン)のHFO−1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロプロパン)への触媒なしでの変換を示すものである。
【0125】
加熱ゾーンが約12インチの空のInconel(登録商標)管(1/2インチOD)を、575℃まで加熱し、HFC−244bbを、0.35mL/時で、40℃に設定された気化器を通して、3.6sccm(6.0×10−8m3)のN2スイープを用いて供給した。リアクタを連続で合計19時間操作し、試料を周期的に採取して、分析し、HFC−244bbの%変換率およびHFO−1234yfへの選択性を求めた。リアクタ流出物を、オンラインGCMSを用いて分析した。以下の表6のデータは、与えられた条件での少なくとも2つのオンライン注入の平均であり、パーセンテージはモルパーセントである。
【0126】
【表7】
・・・
【0130】
【表8】


o 「図1


ウ 平成30年5月28日付けの手続補正及び同年9月20日付けの手続補正において、請求項1に係る発明は、「HFO−1234yfと、HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zdを含む」とともに「HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zdの合計量は、1重量パーセント未満である」組成物であって、「冷却用又は熱伝達組成物」であることが発明特定事項となった。
そこで、本件願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、単に「本件当初明細書等」ということもある。)において、「HFO−1234yfと、HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zdを含む」組成物に関する記載について検討すると、表2(【表2】、【表3】)の実施例1〜3、5及び6のみに、「HFO−1234yfと、HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zdを含む」ものが記載されている。
しかしながら、これらは、リアクタ温度を変更し、リアクタに流入するHF/HFO−1243zf/Cl2の比を変更して、リアクタからの流出物の成分をオンラインGCMSを用いて分析したものであり、表2(【表2】、【表3】)に示された含有量の値はGC面積%である(重量パーセントが不明である)ところ、「HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zdの合計量は、1重量パーセント未満である」組成物は明示的に示されていない。
また、【0003】〜【0004】の記載からみて、本件当初明細書等には、「HFO−1234yf」と、「HFO−1234ze、・・・およびHFC−227caからなる群から選択される少なくとも1つの追加の化合物」の「全ての組合せ」について、それを約1重量パーセント未満を含有する組成物について、形式的には記載されているといえるものの、裏付けをもって実質的に記載されているとは認められない。
エ そうすると、上記(イ)で摘記したその余の記載を勘案し、リアクタの温度を変更し、リアクタに流入するHF/HFO−1243zf/Cl2の比を変更したとしても、本件当初明細書等には、「HFO−1234yfと、HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zdを含む」とともに「HFO−1243zf、HCFO−1233xf、およびHCFO−1233zdの合計量は、1重量パーセント未満である」組成物であって、「冷却用又は熱伝達組成物」であるものは記載されているとは認めることができない。
オ したがって、平成30年5月28日付けの手続補正及び同年9月20日付けの手続補正は、本件当初明細書等の全てを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであって、本件明細書に記載した事項の範囲内においてしたものではないというべきであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

第6 むすび
以上のとおり、無効理由4は理由があるから、他の理由について検討するまでもなく、本件特許の請求項1ないし7に係る発明についての特許は、いずれも無効とすべきものである。
本件審判に関する費用については、特許法第169条2項の規定により準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものである。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。

審判長 亀ヶ谷 明久
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-01-19 
結審通知日 2022-01-26 
審決日 2022-02-15 
出願番号 P2017-023243
審決分類 P 1 113・ 537- Z (C09K)
P 1 113・ 113- Z (C09K)
P 1 113・ 536- Z (C09K)
P 1 113・ 121- Z (C09K)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 亀ヶ谷 明久
特許庁審判官 蔵野 雅昭
川端 修
登録日 2018-11-16 
登録番号 6435357
発明の名称 2,3−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロプロパン、2−クロロ−1,1,1−トリフルオロプロペン、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロプロパンまたは2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む組成物  
代理人 辛川 力太  
代理人 大野 浩之  
代理人 小林 浩  
代理人 黒田 薫  
代理人 大野 聖二  
代理人 大月 雅博  
代理人 加藤 志麻子  
代理人 片山 英二  
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