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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1385845
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-27 
確定日 2022-06-10 
事件の表示 特願2019−517765「自律乗物の知覚および計画のためのレーダによって生成される占有グリッド」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月26日国際公開、WO2018/075895、令和 1年12月 5日国内公表、特表2019−535013〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)10月20日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年10月21日、アメリカ合衆国)、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成31年 4月 1日 :翻訳文の提出
令和 2年 6月25日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 9月24日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 1月22日付け:拒絶査定(同年1月29日送達、以下「原査定」という。)
令和 3年 5月27日 :審判請求書の提出


第2 本願発明
1 「判定する」の解釈について
令和2年9月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、単に「補正後の請求項1」という。)には、「前記1つまたは複数の物体の物体ごとに、それぞれの測定された角度、それぞれの測定された距離、およびそれぞれの測定された速度をプロセッサによって判定する」と記載されているところ、「測定された角度」、「測定された距離」及び「測定された速度」の何を「プロセッサによって判定する」のか不明であって、日本語の記載として明瞭でない。
そこで、本願の国際出願日における請求の範囲の記載を参酌すると、原文には、「determining, by a processor, for each object of the one or more objects, a respective measured angle, a respective measured distance, and a respective measured velocity;」と記載されており、原文と翻訳文の記載を比較すると、補正後の請求項1に記載の「判定する」は、原文の「determining」に対応するものと理解される。
そして、一般に、「determining」は「決定する」という意味であり、上記部分における「判定する」を「決定する」という意味に解釈した場合に明細書の記載に照らして特段の不整合は認められないから、上記部分における「判定する」は「決定する」と翻訳すべきところの誤訳であり、前者を後者の意味に解釈するのが相当である。
また、補正後の請求項1に記載の「前記1つまたは複数の物体に基づいて第1の物体グリッドを判定することであって、・・・、判定する」及び「前記第2のセンサからの前記データに基づいて第2の物体グリッドを判定する」の「判定する」についても、同様の理由により、「決定する」という意味に解釈するのが相当である。

2 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、補正後の請求項1の記載及び上記1の検討結果を踏まえ、次に特定されるものと認める。

「 【請求項1】
乗物のレーダ・ユニットによって、360°方位角にわたってレーダ信号を送信することと、
1つまたは複数の物体による前記送信されたレーダ信号の反射にそれぞれ関連する1つまたは複数の反射信号を受信することと、
前記1つまたは複数の物体の物体ごとに、それぞれの測定された角度、それぞれの測定された距離、およびそれぞれの測定された速度をプロセッサによって決定することと、
前記1つまたは複数の物体に基づいて第1の物体グリッドを決定することであって、前記第1の物体グリッドは、前記360°方位角を一緒にカバーする複数の角度を含み、前記1つまたは複数の物体内の所与の物体の測定された角度に対応する前記複数の角度内の角度ごとに、前記第1の物体グリッドは、前記角度を前記所与の物体の前記測定された距離および測定された速度に関連付ける、決定することと、
第2のセンサからデータを受信することと、
前記第2のセンサからの前記データに基づいて第2の物体グリッドを決定することと、
前記第1の物体グリッドと前記第2の物体グリッドとの比較を実行することと、
前記第1の物体グリッドが1つの物体が特定の位置にあることを示し、前記第2の物体グリッドが前記特定の位置にある2つの物体を区別し、前記比較に基づいて、前記乗物に対する特定の位置における前記第1の物体グリッドと前記第2の物体グリッドとの差を識別することと、
前記第1の物体グリッドおよび前記第2の物体グリッドの少なくとも1つに基づいて自律乗物を制御することと
を含む方法。」(下線は、上記1で指摘した箇所を示すもので、当審において付したものである。)


第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する「理由2(進歩性)」は、次のとおりである。

本願発明は、下記引用文献2に記載された発明及び周知技術に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1.米国特許出願公開第2005/0285774号明細書
(周知例として引用)
引用文献2.米国特許第09097800号明細書
(本願発明と対比される発明を記載したものとして引用)


第4 引用文献に記載された発明の認定等
1 引用文献2に記載された事項と引用発明の認定
(1) 引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に発行された米国特許第09097800号明細書(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。下線及び翻訳文は当審において付したもので、以下同様である。

ア 2欄1〜28行
「Some embodiments of the present disclosure provide a method including scanning a light detection and ranging (LIDAR) device associated with an autonomous vehicle through a scanning zone while emitting light pulses. The method can include scanning a light detection and ranging (LIDAR) device associated with an autonomous vehicle through a scanning zone while emitting light pulses. The method can include determining a three-dimensional (3-D) point map of the scanning zone based on time delays between emitting the light pulses and receiving corresponding returning reflected signals and based on orientations of the LIDAR device while emitting the light pulses. The method can include scanning, with a radio detection and ranging (RADAR) device associated with the autonomous vehicle, one or more regions of the scanning zone corresponding to one or more light-reflective features indicated by the 3-D point map. The method can include determining whether the one or more light-reflective features include a solid material. The method can include, for each of the one or more light-reflective features, determining that the light-reflective feature includes a solid material responsive to detecting a reflected radio signal corresponding to the light-reflective feature. The method can include, for each of the one or more light-reflective features, determining that the light-reflective feature does not include a solid material responsive to not detecting a reflected radio signal corresponding to the light-reflective feature. The method can include controlling the autonomous vehicle to avoid light-reflective features determined to include a solid material.」
(本開示のいくつかの実施形態は、光パルスを放出しながら走査ゾーンの全領域で自律車両に関連付けられたライダ(LIDAR)装置を走査することを含む方法を提供する。本方法は、光パルスを放出しながら走査ゾーンの全領域で自律車両に関連付けられたライダ装置を走査するステップを含むことができる。本方法は、光パルスを放射しつつ、光パルスの放出と対応する戻り反射信号の受信の間の時間遅延とライダ装置の向きとに基づいて走査ゾーンの3次元(3D)点マップを決定することを含むことができる。本方法は、自律車両に関連付けられたレーダ(RADAR)装置を用いて、三次元点マップによって示される一つ又は複数の光反射特徴に対応する走査ゾーンの一つ又は複数の領域を走査するステップを含むことができる。本方法は、一つ以上の光反射特徴部が固体材料を含むかどうかを判定することを含むことができる。本方法は、一つ又は複数の光反射特徴の各々について、光反射特徴に対応する反射された無線信号を検出することに応答して、光反射特徴が固体材料を含むと決定することを含むことができる。本方法は、一つ以上の光反射特徴の各々について、光反射特徴に対応する反射された無線信号を検出しないことに応答して、光反射特徴が固体材料を含まないことを決定することを含むことができる。本方法は、固体材料を含むと判定された光反射特徴を回避するように自律車両を制御することを含むことができる。)

イ 18欄22〜48行
「FIG. 6 is a block diagram of an autonomous vehicle system 600 that employs a RADAR device 630 to determine whether a LIDAR-indicated reflective feature includes a solid material. The system 600 includes both a LIDAR device 620 and a RADAR device 630 configured to actively detect and locate objects in a scanning zone mapped by the system 600. A controller 610 communicates with the LIDAR device 620 and the RADAR device 630 and combines the scanning information from both to create a map of solid objects 612. The LIDAR device 620 can be the same or similar to the LIDAR device 302 discussed in connection with FIGS. 3A-3C above. The LIDAR device 620 can scan the surrounding environment for reflective objects with a visible and/or infrared laser (or other light source). The LIDAR device 620 outputs data to construct a 3-D point cloud of locations of light-reflective points in the surrounding environment where each point corresponds to an emitted pulse of light from the LIDAR device 620. Each point in the 3-D point cloud can be determined based on the orientation of the LIDAR laser and the time delay associated with a detected reflection light pulse. The RADAR device 630 outputs data to construct a point cloud of radio-reflective points in the surrounding environment where each point is determined according to a time delay of a detected radio reflection. It is noted that multiple LIDAR devices and/or RADAR devices can optionally be included in the system 600 to combine to provide coverage of light-reflective and/or radio-reflective features.」
(図6は、ライダ装置が検出する反射物体が固体物であるかを決定するためにレーダ装置630を使用する自律車両システム600のブロック図である。このシステム600は、システム600によってマッピングされた走査ゾーン内の物体を能動的に検出するとともに、その位置を特定するように構成されたライダ装置620及びレーダ装置630の両方を備える。制御装置610は、ライダ装置620及びレーダ装置630と通信し、双方から受信した走査情報を結合して、固体物体のマップ612を作成する。ライダ装置620は、上記の図3A〜3Cに関連して説明したライダ装置302と同じ又は同様であり得る。ライダ装置620は、可視及び/又は赤外レーザ(又は他の光源)を用いて反射物体がないか周囲環境を走査することができる。ライダ装置620は、データを出力し、周囲環境内の光反射点の場所の3次元点群を構築する。ここで、各点はライダ装置620から放出された光パルスに対応する。3次元点群の各点は、ライダ装置のレーザ光の向き及び検出された反射光パルスの遅延時間に基づいて決定される。レーダ装置630は、データを出力し、周囲環境における電波反射点の点群を構築する。ここで、各点は検出された電波反射の遅延時間に従って決定される。複数のライダ装置及び/又は複数のレーダ装置を任意選択的にシステム600に含み、組み合わせて、光反射性及び/又は電波反射性の特徴の測定範囲を提供することができることに留意すべきである。)

ウ 18欄49行〜19欄2行
「The RADAR device 630 can include an illuminating antenna that is used to illuminate the scanning zone with radio radiation. The illuminating antenna can be a directional antenna and/or a phase-controlled array of radio antennas to selectively illuminate portions of the scanning zone. The RADAR device 630 is sensitive to time delays of reflected radio signals to indicate distances to features reflecting the emitted radio signals. Time delays between emitting the illuminating radio frequency radiation and receiving a corresponding reflected signal indicate the distance to the radio-reflective feature. The measured time delay between emission and reception is the time for radiation to travel twice the distance between the RADAR device 630 and the radio-reflective object at the speed of light. A radio-reflective map of the surrounding environment can be dynamically generated based on the distances measured for each reflected signal and the orientations of the illuminating beam of radio radiation during each emission of radio radiation. Other techniques for actively detecting ranges to radio-reflective objects can also be employed by the RADAR device 630.」
(レーダ装置630は、走査ゾーンに電波を放射するために使用されるアンテナを含むことができる。アンテナは、走査ゾーンを選択的に放射するための指向性アンテナ及び/又は位相制御アレイのアンテナであり得る。レーダ装置630は、放射電波を反射する物体までの距離を表す、反射電波の遅延時間を検出する。電波を放射する時間と反射電波を受信する時間の時間遅延は、電波反射物体までの距離を表す。測定された放射と受信の間の時間遅延は、光速の電波が、レーダ装置630と電波反射物体の間の距離の2倍を移動するのにかかる時間である。周囲環境の反射信号のマップは、各反射信号について測定された距離及び放射電波のビームの向きに基づいて、動的に生成することができる。電波反射物体までの距離を能動的に検出するための他の技術もレーダ装置630に採用され得る。)

エ 19欄20〜32行
「The RADAR device 630 and/or LIDAR device 620 can be operated according to instructions (e.g., command/control signals) from the controller 610. Outputs of the RADAR 630 and LIDAR 620 can be communicated to the controller 610 for analysis of the combined information. The controller 610 can, for example, receive data indicative of three dimensional locations of reflective points in the surrounding environment (e.g., from the LIDAR device 620 and/or RADAR device 630). For example, the controller 610 can be implemented via the computer system 112 of the vehicle 100 and the controller can combine the LIDAR and RADAR device outputs 620, 630 via the sensor fusion algorithm 138, and/or computer vision system 140, etc.」
(レーダ装置630及び/又はライダ装置620は、制御装置610からの命令(例えば、コマンド/制御信号)に従って動作することができる。レーダ装置630及びライダ装置620の出力は、結合された情報の分析のために制御装置610に通信され得る。制御装置610は、例えば、(ライダ装置620及び/又はレーダ装置630から)周辺環境にある反射点の3次元位置を示すデータを受信することができる。制御装置610は、例えば車両100のコンピュータシステム112に実装されており、当該制御装置は、センサ融合アルゴリズム138及び/又はコンピュータビジョンシステム140等を介して、ライダ装置620及びレーダ装置630の出力を結合することができる。)

オ 19欄54行〜20欄7行
「Some non-solid objects reflect visible and/or infrared light from the LIDAR device 620, but not radio radiation from the RADAR device 630. For example, a distribution of water droplets can reflect visible or infrared reflect light (such as emitted by the LIDAR device 620), but not reflect radio radiation (such as emitted by the RADAR device 630). Distributions of water droplets can therefore generate reflected returning signals detected by the LIDAR device 620, but not the RADAR device 630. Examples of water droplet distributions detected by the LIDAR device 620, but not the RADAR device 630 can include fog, snow, rain, water spray patterns due to water projected from treads of a rotating tire (e.g., the water spray patterns 522, 524 shown in FIGS. 5A-5B), or exhaust plumes due to droplet formation in cooling exhaust gases (e.g., the exhaust plume 532 shown in FIG. 5C). Other non-solid materials that are detected by the LIDAR device 620, but not the RADAR device 630 can include: splashing mud (e.g., due to another car projecting mud from its rotating tires), smoke (e.g., due to exhaust particulates associated with incomplete combustion reactions or due to a fire, etc.), or snow with embedded soot, etc.」
(いくつかの非固体物体は、ライダ装置620からの可視光及び/又は赤外光を反射するが、レーダ装置630からの電波は反射しない。例えば、水滴の分布は、(ライダ装置620から放射されるような)可視光又は赤外光を反射させることができるが、(レーダ装置630から放射されるような)電波を反射させることはできない。したがって、水滴の分布は、ライダ装置620が検出する反射信号を生成するが、レーダ装置630が検出することはない。ライダ装置620によって検出されるが、レーダ装置630によっては検出されない水滴分布の例として、霧、雪、雨、回転するタイヤのトレッドからの水に起因する水噴霧パターン(例えば、図5A及び図5Bに示す水噴霧パターン522、524)、又は冷却排気ガス中の液滴形成に起因する排気プルーム(例えば、図5Cに示す排気プルーム532)が含まれる。ライダ装置620によって検出されるが、レーダ装置630によっては検出されない他の非固体材料には、飛び散る泥(例えば、別の自動車がその回転するタイヤから泥を出すことによる)、煙(例えば、不完全燃焼反応に関連する排気微粒子による、又は火災による)、又は煤が混じった雪などが含まれ得る。)

カ 20欄8〜27行
「The system 600 can be configured to distinguish among materials in the surrounding environment according to the wavelength-dependent reflectivity of the environmental materials. For example, the outputs from both the LIDAR device 620 (which actively detects objects reflecting visible and/or infrared radiation) and the RADAR device 630 (which actively detects objects reflecting radio radiation) can be combined to characterize objects as light-reflective and/or radio-reflective. For example, patterns of water droplets present in fog, exhaust plumes, splashing water, etc., can reflect light from the LIDAR device 620, but not radio radiation from the RADAR device 630. Where features are indicated by the LIDAR scan and the RADAR scan, such features can be assumed to include solid materials. On the other hand, where features are indicated by the LIDAR scan, but not the RADAR scan, such features can be assumed to not include solid materials. Thus, the absence of radio-reflectivity of non-solid materials can be employed by the system 600 to identify non-solid objects from among light-reflective features indicated by the LIDAR scan.」
(システム600は、材料の波長に依存する反射特性に従って周囲環境内の材料を区別するように構成することができる。例えば、ライダ装置620(可視光及び/又は赤外光を反射する物体を能動的に検出する)及びレーダ装置630(電波を反射する物体を能動的に検出する)の両方からの出力を組み合わせて、物体を、光を反射させるもの及び/又は電波を反射させるものとして特徴付けることができる。例えば、霧、排気プルーム、跳ね水などに存在する水滴のパターンは、ライダ装置620からの光を反射させることができるが、レーダ装置630からの電波を反射させることはできない。ライダによるスキャンによっても、レーダによるスキャンによっても示される場合は、固体材料を含むと仮定することができる。一方、ライダによるスキャンによって示されるが、レーダによるスキャンによって示されない場合は、固体材料を含まないと推定することができる。したがって、非固体材料が、電波を反射させる性質を持たないことは、ライダによるスキャンによって示される光反射特徴の中から非固体物体を識別するために、システム600によって採用され得る。)

キ 20欄28〜44行
「According to some embodiments of the present disclosure, light-reflective features that are not radio-reflective are associated with non-solid materials, whereas light-reflective features that are also radio-reflective are associated solid materials. A map of solid objects 612 in the scanning zone can be constructed based on the output of the LIDAR scan by removing any features indicated by the LIDAR scan that do not have corresponding reflected radio signals (radio signatures) in the RADAR scans.(後略)・・・」
(本開示のいくつかの実施形態によれば、電波反射性を有しない光反射特徴は非固体材料に関連付けられ、電波反射性も有する光反射特徴は固体材料に関連付けられる。走査ゾーン内の固体物体のマップ612は、ライダ走査の結果に基づき、対応する電波反射信号(電波シグネチャ)をレーダ走査において有さない、ライダ走査によって示される任意の特徴を除去することにより構築される。)

ク 20欄44行〜21欄2行
「FIG. 7 is a flowchart 700 of a process for employing the system 600 of FIG. 6 to whether a light-reflective feature includes a solid material. The LIDAR device 620 is scanned through a scanning zone (702). The controller 610 generates a three-dimensional (3-D) point cloud based on information from the LIDAR device 620 (704). For example, the LIDAR device 620 and/or associated optical detectors can output information indicative of time delays for reflected light signals corresponding to emitted light pulses to reach the optical detectors. The LIDAR device 620 can also provide information indicative of the orientation of the LIDAR device 620 for each pulse emission such that a direction and distance is associated with each returned reflected light signal to generate the 3-D point cloud. A region of the scanning zone is scanned with the RADAR device 630 to characterize the radio reflectivity of the region (706). In some embodiments, the RADAR device 630 is regularly and repeatedly scanned across the scanning zone, but in some examples, the RADAR device 630 can be scanned across specified regions of the scanning zone, such as regions including light-reflective features. In some embodiments, the controller 610, sensor fusion algorithm 138, and/or computer visions system 140, etc. analyze the LIDAR indicated 3-D point cloud and identify a region to analyze with the RADAR device 630.」
(図7は、図6のシステム600を使用して、光反射特徴が固体材料を含むかどうかを検出する方法のフローチャート700である。ライダ装置620は、走査ゾーン全体を走査する(ステップ702)。制御装置610は、ライダ装置620からの情報に基づいて3次元点群を生成する(ステップ704)。
例えば、ライダ装置620及び/又は関連する光検出器は、放射光パルスと光検出器に到達する反射光信号の遅延時間を示す情報を出力することができる。ライダ装置620はまた、各放射パルスに対するライダ装置620の向きを示す情報を提供することができる。そのようにして、方向及び距離の情報が、反射光信号毎に関連付けられることで、3次元点群を生成する。走査ゾーンの領域は、この領域の電波反射性を特徴付けるため、レーダ装置630による走査が行われる(ステップ706)。いくつかの実施形態では、レーダ装置630は、走査ゾーンにわたって規則的かつ繰り返し走査されるが、いくつかの例では、レーダ装置630は、光反射特徴が含まれる特定の領域にわたって走査することができる。いくつかの実施形態では、制御装置610、センサ融合アルゴリズム138、及び/又はコンピュータビジョンシステム140等は、ライダが示す3次元点群を分析し、レーダ装置630で分析すべき領域を識別する。)

ケ 21欄3〜24行
「The output from the RADAR device 630 is analyzed to determine whether a solid material is included in the region (708). For example, where the output from the RADAR device 630 includes an indication of a radio-reflective feature in the scanned region, the region can be determined to include a solid material. On the other hand, where the output from the RADAR device 630 does not include an indication of a radio-reflective feature in the scanned region, the region can be determined to not include a solid material. An autonomous vehicle associated with the LIDAR device 620 and RADAR device 630 is controlled to avoid those light-reflective features determined to include a solid material (i.e., solid features) (710). Solid features to avoid can be, for example, LIDAR-indicated reflective features with a corresponding radio-reflective signature. Non-solid features (e.g., light-reflective features to not include a solid material based on their lack of a corresponding radio-reflective signature) can be disregarded for navigational and/or object avoidance purposes. Such non-solid features can include, for example, splashing water, mud, foliage, etc., that have weak or non-existent radio-reflective signatures such that such features are not detected with the RADAR device 630.」
(レーダ装置630からの出力は、固体材料が領域に含まれるかどうかを決定するために分析される(ステップ708)。例えば、レーダ装置630からの出力が、走査領域内の電波反射特徴の表示を含む場合、その領域は固体材料を含むと判定することができる。一方、レーダ装置630からの出力が走査領域内の電波反射特徴の指示を含まない場合、その領域は固体材料を含まないと判定することができる。ライダ装置620及びレーダ装置630を備える自律走行車は、固体材料(例えば、固体特徴部)を含むと判断された光反射特徴を避けるように制御される(ステップ710)。回避すべき固体特徴は、例えば、対応する電波反射シグネチャを有するライダにより示される特徴である。非固体特徴(例えば、対応する電波反射シグネチャがないことに基づいて固体材料を含まないとされる光反射特徴)は、ナビゲーション及び/又は物体回避において無視することができる。そのような非固体特徴は、例えば、跳ね水、泥、群葉等であり、電波反射シグネチャが弱く又は存在せず、レーダ装置630が検出することはない。)

コ 22欄61行〜23欄10行
「In some embodiments, the angular resolution of the points indicated by radio-reflective features detected in the RADAR scan and the angular resolution of the points indicated by light-reflective features detected by the LIDAR scan can be different. As a result of the difference in angular resolutions, the higher angular resolution one of the LIDAR and RADAR scans can have multiple nearby and/or adjacent points associated with a single point in the lower angular resolution one. For example, the RADAR scan can illuminate radio reflective points in the scanning zone approximately every half of a degree, whereas the LIDAR scanner can pulse its laser approximately every tenth of a degree, such that a two-dimensional scan includes five times as many LIDAR points as RADAR points (and can amount to an even greater in a three-dimensional scan where each point approximately maps out a solid angle.」
(いくつかの実施形態では、レーダ走査において検出された電波反射特徴によって示される点の角度分解能と、ライダ走査によって検出された光反射特徴によって示される点の角度分解能は異なり得る。この角度分解能の差の結果として、ライダ及びレーダ走査のうち、より高い角度分解能の走査は、より低い角度分解能の走査における一つの点に関連付けられた複数の近くの及び/又は隣接する点を有することができる。例えば、レーダ走査は、走査ゾーンに電波を約2分の1度毎に放射することができるが、ライダ走査は、レーザパルスを約10分の1度毎に放射することができ、その結果、2次元走査の場合、ライダが検出する点は、レーダが検出する点の5倍となり得る(立体角をマッピングする3次元走査では、さらに多くなる)。

サ 23欄11〜32行
「By associating the motion-corrected estimated positions of the radio-reflective features with positions in the LIDAR-indicated 3-D point map (812), light-reflective features (indicated by LIDAR scan) can be cross-checked for corresponding radio-reflective features at the same location in space and time. The map of solid objects 612 in the scanning zone is generated by including the light-reflective features also represented by corresponding radio-reflective features at the same location (814). The map of solid objects 612 can be created by checking each light-reflective feature (indicated by the LIDAR scan) for the presence of a corresponding radio-reflective feature at the same position (indicated by the RADAR scan). When a radio-reflective feature with comparable size and location is found, the light-reflective feature is included in the map of solid objects 612. When a radio-reflective feature with comparable size and location is not found, the light-reflective feature is not included in the map of solid objects 612. The determination of whether a radio-reflective feature is comparable to a light-reflective feature can be carried out to account for uncertainties in the estimated position and/or differences in angular resolution of the LIDAR and RADAR scans.」
(電波反射特徴の推定位置を速度で補正し、3次元マップに示されるライダ位置と関連付けて(ステップ812)、光反射特徴(ライダ走査で示される)は、対応する同時刻同位置の電波反射特徴により照合される。走査ゾーンの固体物体のマップ612は、同じ場所に対応する電波反射特徴によって示されている光反射特徴を含ませることにより生成される(ステップ814)。固体物体のマップ612は、(ライダ走査によって示される)各光反射特徴について、同じ位置に(レーダ走査によって示される)電波反射特徴が存在しているかを確認することによって作成される。同程度の大きさ及び位置の電波反射特徴が見出される場合、光反射特徴は、固体物体のマップ612に含まれる。同程度の大きさ及び位置の電波反射特徴が見出されない場合、光反射特徴は固体物体のマップ612には含まれない。電波反射特徴が光反射特徴と同程度であるか否かの決定は、ライダ及びレーダ走査の推定位置の不確実性及び/又は角度分解能の差に対処するために実行することができる。)













(2) 引用発明の認定
上記(1)の記載事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「光パルスを放出しながら走査ゾーンの全領域で自律車両に関連付けられたライダ装置を走査すること、
光パルスを放射しつつ、光パルスの放出と対応する戻り反射信号の受信の間の時間遅延とライダ装置の向きとに基づいて走査ゾーンの3次元点マップを決定すること、
自律車両に関連付けられたレーダ装置を用いて、3次元点マップによって示される一つ又は複数の光反射特徴に対応する走査ゾーンの一つ又は複数の領域を走査すること、
一つ以上の光反射特徴が固体材料を含むかどうかを判定するにあたって、
一つ又は複数の光反射特徴の各々について、光反射特徴に対応する反射された無線信号を検出することに応答して、光反射特徴が固体材料を含むと決定し、
一つ以上の光反射特徴の各々について、光反射特徴に対応する反射された無線信号を検出しないことに応答して、光反射特徴が固体材料を含まないことを決定すること、
固体材料を含むと判定された光反射特徴を回避するように自律車両を制御すること
を含む方法であって、(ア 2欄1〜28行)
レーダ装置630は、データを出力し、周囲環境における電波反射点の点群を構築し、ここで、各点は検出された電波反射の遅延時間に従って決定され、
制御装置610は、ライダ装置620及びレーダ装置630と通信し、双方から周辺環境にある反射点の3次元位置を示すデータを受信し、受信した情報を結合して、固体物体のマップ612を作成するものであり(イ 18欄22〜48行、エ 19欄20〜32行)、
周囲環境の反射信号のマップは、各反射信号について測定された距離及び放射電波のビームの向きに基づいて、動的に生成することができ(ウ 18欄49行〜19欄2行)、
レーダ走査は、走査ゾーンに電波を約2分の1度毎に放射することができるが、ライダ走査は、レーザパルスを約10分の1度毎に放射することができ、その結果、2次元走査の場合、ライダが検出する点は、レーダが検出する点の5倍となり得るものであり、(コ 22欄61行〜23欄10行)
同程度の大きさ及び位置の電波反射特徴が見出される場合、光反射特徴は、固体物体のマップ612に含まれ、同程度の大きさ及び位置の電波反射特徴が見出されない場合、光反射特徴は固体物体のマップ612には含まれず、電波反射特徴が光反射特徴と同程度であるか否かの決定は、ライダ及びレーダ走査の推定位置の不確実性及び/又は角度分解能の差に対処するために実行することができる(サ 23欄11〜32行)、
方法。」

2 引用文献1、3に記載された事項と技術常識及び周知技術の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に発行された米国特許出願公開第2005/0285774号明細書(以下、原査定において引用された順番に従って、この文献を「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。

「[0020] Referring to FIG. 1, an autonomous vehicle 10 comprises a radar device 12, such as the Navtech DS2000, that scans an area proximate the autonomous vehicle. The radar device 12 continuously sweeps a real beam radar signal through 360° at a speed of 900°/sec.」
([0020] 図1に示すように、自律走行車10は、Navtech DS2000のような、自律走行車に近接する領域を走査するレーダ装置12を備える。レーダ装置12は、ビームレーダ信号を900°/秒の速度で360°にわたって連続的に掃引する。)





(2) 引用文献3に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の優先日前に発行された特開2016−153775号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている

「【0043】
(実施の形態1)
まず、本開示の実施の形態1に係る物体検出装置について図面を用いて説明する。図3は、本開示の実施の形態1に係る物体検出装置30の主要構成を示すブロック図である。
【0044】
本開示の実施の形態1に係る物体検出装置30は、レーダ装置Rおよびカメラ装置Cに接続される。レーダ装置Rは、所定の角度間隔で順次方向を変えながらレーダ信号を送信する送信部と、レーダ信号が対象物体に反射した反射信号を受信する受信部と、反射信号をベースバンドに変換し、レーダ信号の送信方向毎の遅延プロファイル(伝搬遅延特性)を取得する信号処理部と、を有する。カメラ装置Cは、被写体(対象物体)を撮像し、画像データを取得する。
【0045】
物体検出装置30は、情報生成部31、補足領域算出部32、カメラ画像取得部33、エッジ算出部34、マーカー算出部35、コンポーネント領域算出部36、グループ化処理部37、および、物体確定部38を有する。物体検出装置30の各構成は、LSI回路などのハードウェアで実現可能である。あるいは、物体検出装置30の各構成は、車両を制御する電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)の一部としても実現可能である。
【0046】
情報生成部31は、レーダ装置の信号処理部から出力された遅延プロファイルにより、レーダ信号の送信方向毎に、レーダ装置からの距離を所定の間隔で区切ったセル毎に、反射信号の受信電力の代表値(以下、「反射強度」と云う)を測定する。そして、情報生成部31は、各セルの反射強度を示す電力プロファイル情報を生成し、捕捉点算出部32へ出力する。なお、反射強度は、一般的に連続値であるが、処理を簡単にするために情報生成部31が量子化処理を行ってもよい。なお、情報生成部31が生成する電力プロファイル情報の詳細については、後述する。
【0047】
捕捉領域算出部32は、まず、電力プロファイル情報から反射強度の極大点を算出する。捕捉領域算出部32によって算出される極大点は、対象物体を捕捉する捕捉点となる。具体的に、捕捉領域算出部32は、電力プロファイル情報を画像として取り扱い、公知の方法で極大点を算出する。次に、捕捉領域算出部32は、公知の画像処理の方法を用いて、捕捉点に対する捕捉領域を算出する。捕捉領域は、捕捉点を囲む局所領域であり、捕捉点の周囲の点のうち、所定の値以上の反射強度を有する点で構成される。なお、捕捉領域算出部32における捕捉領域の算出方法については後述する。」

「【0054】
次に、情報生成部31が生成する電力プロファイル情報について説明する。図4は、本開示の実施の形態1における電力プロファイル情報の一例を示す図である。図4の横軸は、レーダ装置Rの方位角を示し、縦軸は、レーダ装置Rからの距離を示す。以降の説明では、レーダ装置Rの方位角とレーダ装置Rからの距離とにより規定される平面をレーダ測定平面と呼ぶ。
【0055】
図4の例では、横軸の方位角を10°毎に区切り、縦軸の距離を10m毎に区切ってセルを構成している。なお、本実施の形態において、セルの角度範囲および距離範囲は、上記のものに限定されない。各範囲は、高い分解能を得られるという点で、より小さい方が好ましい。
【0055】
図4の例では、横軸の方位角を10°毎に区切り、縦軸の距離を10m毎に区切ってセルを構成している。なお、本実施の形態において、セルの角度範囲および距離範囲は、上記のものに限定されない。各範囲は、高い分解能を得られるという点で、より小さい方が好ましい。
【0056】
また、図4において、電力プロファイル情報における各セルの濃淡は、反射強度を示し、色が濃い程反射強度が強いことを示している。なお、説明を簡単にするために、特定のセル以外のセルの色は同じ白色としている。」

「【0121】
(実施の形態2)
図15は、本開示の実施の形態2に係る物体検出装置150の主要構成を示すブロック図である。図15において、図3と共通する構成には、図3と同一の符号を付しその詳しい説明を省略する。図15に示す物体検出装置150は、図3に示す物体検出装置30の情報生成部31および捕捉領域算出部32がそれぞれ情報生成部151および捕捉領域算出部152に置き換わる構成を有する。
【0122】
情報生成部151は、実施の形態1の情報生成部31と同様に、電力プロファイル情報を生成する。更に、情報生成部151は、レーダ装置Rから受け取る遅延プロファイルから、各セルのドップラー速度を示すドップラープロファイル情報を生成する。ドップラープロファイル情報は、横軸が方位角、縦軸が距離を示す。
【0123】
捕捉領域算出部152は、電力プロファイル情報およびドップラープロファイル情報に基づいて、捕捉領域を算出する。
【0124】
具体的には、捕捉領域算出部152は、実施の形態1で説明した方法によって、電力プロファイル情報から捕捉領域を算出する。そして、捕捉領域算出部152は、捕捉領域に含まれる各点(各セル)のドップラー速度を比較し、ドップラー速度が一致するか否かを判定する。捕捉領域算出部152は、ドップラープロファイルの値が一致しない点(セル)を捕捉領域から除外する。
【0125】
捕捉領域算出部152は、算出した捕捉領域をマーカー算出部35へ出力する。マーカー算出部35以降では、実施の形態1で説明した処理と同様の処理を実行する。
【0126】
上記で説明した本実施の形態によれば、ドップラー速度を用いて捕捉領域から一部の点(セル)を除外することによって、異なる物体から反射される反射強度が1つの捕捉領域に含まれてしまうことを避けることをできる。
【0127】
なお、本実施の形態では、捕捉領域算出部152は、電力プロファイル情報およびドップラープロファイル情報に基づいて捕捉領域を算出するとしたが、ドップラープロファイル情報に基づいて捕捉領域を算出してもよい。」

「【図3】



「【図4】



「【図15】



(3) 技術常識及び周知技術の認定
引用文献1の上記(1)の摘記箇所の記載に例示されるように、次の事項は周知技術であると認める(以下「技術常識A」という。)。

<技術常識A>
「自律走行車に近接する領域を走査するレーダ装置において、当該レーダ装置が、ビームレーダ信号を360°にわたって掃引すること。」

また、引用文献3の上記(2)の摘記箇所の記載に例示されるように、次の事項も技術常識であると認める(以下「技術常識B」という。)。

<技術常識B>
「レーダの測定結果を、レーダ装置の方位角、レーダ装置からの距離、当該方位角及び距離におけるドップラー速度(径方向速度)の組合せとして出力すること。」

さらに、引用文献3の上記(2)の摘記箇所の記載に例示されるように、次の事項は周知技術であると認める(以下「周知技術」という。)。

<周知技術>
「レーダの測定結果を、方位角を横軸、距離を縦軸としたレーダ測定平面におけるドップラー速度(径方向速度)の情報(ドップラープロファイル情報)として把握し、さらに当該ドップラープロファイルの各点のドップラー速度が一致する領域を、同一の物体から反射された1つの領域として認識すること。」


第5 対比
1 本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1) 引用発明の「自律車両」及び「レーダ装置」は、それぞれ本願発明の「乗物」及び「レーダ・ユニット」に相当する。
また、引用発明の「レーダ装置」が「走査ゾーン」に無線信号(電波)を放射することは、本願発明の「レーダ信号を送信する」ことに相当する。
したがって、引用発明の「自律車両に関連付けられたレーダ装置を用いて、3次元点マップによって示される一つ又は複数の光反射特徴に対応する走査ゾーンの一つ又は複数の領域を走査する」することと、本願発明の「乗物のレーダ・ユニットによって、360°方位角にわたってレーダ信号を送信すること」は、「乗物のレーダ・ユニットによって、レーダ信号を送信する」という点で共通する。

(2) 引用発明の「レーダ装置」が「光反射特徴に対応する反射された無線信号を検出する」ことは、本願発明の「1つまたは複数の物体による前記送信されたレーダ信号の反射にそれぞれ関連する1つまたは複数の反射信号を受信する」ことに相当する。

(3) 引用発明の「レーダ装置630は、データを出力し、周囲環境における電波反射点の点群を構築し」、「周囲環境の反射信号のマップは、各反射信号について測定された距離及び放射電波のビームの向きに基づいて、動的に生成」されているから、引用発明では、レーダ装置630からのデータに基づいて、周囲環境における電波反射点に存在する物体に関する情報を決定しているといえる。
そうすると、本願発明と引用発明は、「前記1つまたは複数の物体に基づいて、レーダ・ユニットからのデータに基づいて決定される物体に関する情報(以下「レーダ物体情報」という。)を決定する」という点で共通する。

(4) 引用発明の「ライダ装置」は、本願発明の「第2のセンサ」に相当する。
また、引用発明の「ライダ装置」を「走査」することにより「決定」される「3次元点マップ」は、「一つ又は複数の光反射特徴」を示すものであるから、「ライダ装置」からのデータに基づいて決定される物体に関する情報であるといえる。
したがって、引用発明の「光パルスを放出しながら走査ゾーンの全領域で自律車両に関連付けられたライダ装置を走査すること」及び「光パルスを放射しつつ、光パルスの放出と対応する戻り反射信号の受信の間の時間遅延とライダ装置の向きとに基づいて走査ゾーンの3次元点マップを決定すること」と、本願発明の「第2のセンサからデータを受信することと、前記第2のセンサからの前記データに基づいて第2の物体グリッドを決定すること」は、「第2のセンサからデータを受信することと、前記第2のセンサからの前記データに基づいて、第2のセンサからのデータに基づいて決定される物体に関する情報(以下「ライダ物体情報」という。)を決定する」という点で共通する。

(5) 引用発明の「ライダ装置620及びレーダ装置630から受信した走査情報を組み合わせて」、「光反射特徴」と「同程度の大きさ及び位置の電波反射特徴が見出されるか」どうかを決定することと、本願発明の「前記第1の物体グリッドと前記第2の物体グリッドとの比較を実行すること」は、「前記レーダ物体情報と前記ライダ物体情報との比較を実行する」という点で共通する。

(6) 引用発明の「レーダ走査は、走査範囲に電波を約2分の1度毎に放射することができるが、ライダ走査は、レーザパルスを約10分の1度毎に放射するができ、その結果、2次元走査の場合、ライダが検出する点は、レーダが検出する点の5倍となり得る」ことは、例えば、前方に2台の車両が並んで走行している状況において、両車両の間の隙間を、ライダは検出するがライダより角度分解能が低いレーダでは検出しない場合があることを意味するから、その場合、ライダでは、「特定の位置にある2つの物体を区別」するが、レーダでは、2つの物体でなく「1つの物体が特定の位置にある」と認識することになることは明らかである。
よって、引用発明の上記構成と、本願発明の「前記第1の物体グリッドが1つの物体が特定の位置にあることを示し、前記第2の物体グリッドが前記特定の位置にある2つの物体を区別し、前記比較に基づいて、前記乗物に対する特定の位置における前記第1の物体グリッドと前記第2の物体グリッドとの差を識別すること」は、「前記レーダ物体情報が1つの物体が特定の位置にあることを示し、前記ライダ物体情報が前記特定の位置にある2つの物体を区別し、前記比較に基づいて、前記乗物に対する特定の位置における前記レーダ物体情報と前記ライダ物体情報の差を識別する」という点で共通する。

(7) 引用発明は、「ライダ装置620及びレーダ装置630から受信した走査情報」に基づいて、「光反射特徴」と「同程度の大きさ及び位置の電波反射特徴が見出されるか」どうか、すなわち、「光反射特徴が固体材料を含む」かどうかを決定するものである。
したがって、引用発明の「固体材料を含むと判定された光反射特徴を回避するように自律車両を制御すること」と、本願発明の「前記第1の物体グリッドおよび前記第2の物体グリッドの少なくとも1つに基づいて自律乗物を制御すること」は、「前記レーダ物体情報および前記ライダ物体情報の少なくとも1つに基づいて自律乗物を制御する」という点で共通する。

2 一致点及び相違点
上記1の検討を総合すると、本願発明と引用発明の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点において相違する。

<一致点>
乗物のレーダ・ユニットによって、レーダ信号を送信することと、
1つまたは複数の物体による前記送信されたレーダ信号の反射にそれぞれ関連する1つまたは複数の反射信号を受信することと、
前記1つまたは複数の物体に基づいて、レーダ・ユニットからのデータに基づいて決定される物体に関する情報(以下「レーダ物体情報」という。)を決定することと、
第2のセンサからデータを受信することと、
前記第2のセンサからの前記データに基づいて、第2のセンサからのデータに基づいて決定される物体に関する情報(以下「ライダ物体情報」という。)を決定することと、
前記レーダ物体情報と前記ライダ物体情報との比較を実行することと、
前記レーダ物体情報が1つの物体が特定の位置にあることを示し、前記ライダ物体情報が前記特定の位置にある2つの物体を区別し、前記比較に基づいて、前記乗物に対する特定の位置における前記レーダ物体情報と前記ライダ物体情報の差を識別することと、
前記レーダ物体情報および前記ライダ物体情報の少なくとも1つに基づいて自律乗物を制御することと
を含む方法、である点。

<相違点1>
本願発明では、「360°方位角にわたって、レーダ信号を送信」するものであるのに対して、引用発明では、「レーダ装置」の走査範囲が、360°方位角にわたっているか不明である点。

<相違点2>
本願発明では、「1つまたは複数の物体の物体ごとに、それぞれの測定された角度、それぞれの測定された距離、およびそれぞれの測定された速度をプロセッサによって決定」しているのに対して、引用発明では、レーダ装置から受信した周辺環境にある反射点の3次元位置を示すデータに基づいて固体物体のマップを作成する、すなわち固体物体の位置を決定するものであるが、「1つまたは複数の物体の物体ごとに」決定しているか不明であり、また「3次元位置を示すデータ」に「速度」が含まれておらず、「速度」を決定していない点。

<相違点3>
本願発明においては、
「レーダ物体情報」は「第1の物体グリッド」であり、
「ライダ物体情報」は「第2の物体グリッド」であり、
「前記第1の物体グリッドは、前記360°方位角を一緒にカバーする複数の角度を含み」、「前記1つまたは複数の物体内の所与の物体の測定された角度に対応する前記複数の角度内の角度ごとに、前記第1の物体グリッドは、前記角度を前記所与の物体の前記測定された距離および測定された速度に関連付ける」ものとして、「決定をすること」を含むのに対して、
引用発明においては、
「レーダ物体情報」と「ライダ物体情報」は、「固体物体のマップ」を作成するための「3次元点マップ」である点。


第6 判断
1 相違点1について
上記相違点1について検討する。
前記第4の2の「(3) 技術常識及び周知技術の認定」において技術常識Aとして示したとおり、自律走行車に近接する領域を走査するレーダ装置において、当該レーダ装置が、ビームレーダ信号を360°にわたって掃引することは、技術常識である。
よって、引用発明の「レーダ装置630」に前記技術常識Aを適用し、前記相違点1に係る構成とすることに、格別の困難性があるとは認められない。

2 相違点2、3について
上記相違点2、3について併せて検討する。
(1) 相違点2について
ア 前記第4の2の「(3) 技術常識及び周知技術の認定」において、技術常識Bとして示したとおり、レーダの測定結果を、レーダ装置の方位角、レーダ装置からの距離、当該方位角及び距離におけるドップラー速度(径方向速度)の組合せとして出力することは技術常識であり(「技術常識B」)、また、周知技術として示したとおり、ドップラー速度が一致する領域を、同一の物体から反射された1つの領域として認識することは周知技術である。

イ そうすると、引用発明において技術常識Bを踏まえて上記周知技術を適用して、引用発明の「レーダ装置630」の測定結果を、レーダ装置の方位角、レーダ装置からの距離、当該方位角及び距離におけるドップラー速度の組合せとして構成し、ドップラー速度の一致領域から同一の物体であると認識することにより、物体ごとに、それぞれの測定された角度、それぞれの測定された距離及びそれぞれの測定された速度をプロセッサによって決定することは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ そして、引用発明では、「レーダ物体情報」に相当する情報と、「ライダ物体情報」に相当する情報を比較しているから、上記イの検討内容と同様に、引用発明の「ライダ装置620」が行う測定についても、物体ごとに、それぞれの測定された角度、それぞれの測定された距離及びそれぞれの測定された速度をプロセッサによって決定するように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2) 相違点3について
ア 本願発明の「物体グリッド」について
(ア) 本願発明の「物体グリッド」に関して、本願明細書には次の記載がある(下線は当審において付与した。)。
「【0017】
(中略)物体がレーダ信号を反射する時に、レーダ・システムは、物体への角度、物体までの距離、および物体の速度を判定できる場合がある。レーダ・ユニットによって受信された様々な反射に基づいて、物体グリッドを作成することができる。物体グリッドは、様々な反射する物体およびそれに関連するパラメータの空間表現とすることができる。」
「【0100】
(中略)乗物は、ライダ・スキャンおよびレーダ・スキャンのそれぞれに関して物体グリッドを作成できる場合がある。各物体グリッドは、ライダおよびレーダによって検出された様々な物体の角度、距離、および/または速度を指定することができる。」
「【0111】
(中略)第1の物体グリッドは、レーダ・ユニットによって受信された反射の角度、距離、および速度を含むことができる。」

(イ) 上記記載から、本願発明の「物体グリッド」とは、具体的には、例えば、物体に関するパラメータである物体がある方向の角度(方位角α)、物体までの距離(r)、物体の速度(vr)を座標値として有するような三つの直交する座標軸(α軸、r軸、vr軸)からなる空間座標系(α−r−vr空間)を想定し、検出された3つのパラメータの値を上記空間座標系の座標値に対応させることにより、物体に関するパラメータをα−r−vr空間における点として表現したものであると解するのが相当である。
なお、レーダ装置やライダ装置では、非相対論的なドップラー効果(いわゆる縦ドップラーシフト)に由来する物体の速度を検出するのが通常であるから、レーダ/ライダ装置から見た当該物体の視線方向(r軸方向)に沿った速度成分を物体の速度としてvrと表記した。

イ 周知技術の「ドップラープロファイル情報」について
(ア) 前記第4の2の「(3) 技術常識及び周知技術の認定」において、周知技術として示したとおり、レーダの測定結果を、方位角を横軸、距離を縦軸としたレーダ測定平面におけるドップラー速度(径方向速度)の情報(ドップラープロファイル情報)として把握することは周知である。

(イ) 上記「ドップラープロファイル情報」は、レーダ測定平面という2次元平面上に示されたドップラー速度情報であるところ、これは、当該レーダ測定平面に垂直な方向にドップラー速度を示す座標軸を設定した空間座標系(方位角、距離、ドップラー速度の三つの座標軸が直交する座標系)を考えた場合、当該空間座標系にある各点の3次元情報をレーダ測定平面に正射影して2次元情報として表現したものに他ならない。

(ウ) すなわち、上記周知技術における「ドップラープロファイル情報」は、方位角(α)、距離(r)、ドップラー速度(vr)の三つの座標軸が直交する座標系(α−r−vr空間)における各点の3次元座標値と実質的に同じものであるから、上記アにおいて検討した内容を踏まえると、上記「ドップラープロファイル情報」は、本願発明の「物体グリッド」と実質的に同じであるといえる。

ウ 「第1の物体グリッド」及び「第2の物体グリッド」について
(ア) 前記(1)において説示したとおり、技術常識Bも踏まえて引用発明に周知技術を適用して、引用発明の「レーダ装置630」の測定結果を上記周知技術の「ドップラープロファイル情報」(「物体グリッド」に相当)として構成することは当業者が容易に想到し得たことであるところ、「ドップラープロファイル情報」は、本願発明の「物体グリッド」と実質的に同じであるから、本願発明の「第1の物体グリッド」に相当する構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ) そして、引用発明では、「レーダ物体情報」に相当する情報と、「ライダ物体情報」に相当する情報を比較しているから、引用発明の「ライダ装置620」の測定結果についても同様に、本願発明の「第2の物体グリッド」に相当する構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3) 小括
前記(1)及び(2)の検討内容をまとめると、引用発明に、前記技術常識Bを踏まえて前記周知技術を適用し、前記相違点2、3に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

3 本願発明の効果について
本願発明によって奏される効果として、引用発明、技術常識A、B及び周知技術から当業者が予測し得る程度を越えるものを認めることはできない。

4 請求人の主張について
請求人は、審判請求の理由において、次の主張をしている。

(審判請求書3頁9〜21行)
「本願の請求項1に係る発明は、「前記1つまたは複数の物体に基づいて第1の物体グリッドを判定することであって、前記第1の物体グリッドは、前記360°方位角を一緒にカバーする複数の角度を含み、前記1つまたは複数の物体内の所与の物体の測定された角度に対応する前記複数の角度内の角度ごとに、前記第1の物体グリッドは、前記角度を前記所与の物体の前記測定された距離および測定された速度に関連付ける、判定すること」という特徴を備えています。

2020年6月25日付け拒絶理由通知書で「レーダ・ユニットによりレーダ信号を360°方位角に亘り送信する点について、引用文献2に記載はない」と認定されていることからも明らかなように、引用文献2には、本願の請求項1に係る発明における上記特徴は開示も示唆もされていません。

また、引用文献1においても、本願の請求項1に係る発明における上記特徴は開示も示唆もされていません。」

請求人の上記主張は、要するに、前記相違点3に係る構成は、引用文献2、1のいずれにも記載も示唆もされていないというものである。
しかしながら、前記「2 相違点2、3について」で説示したとおり、引用発明に技術常識B及び周知技術を適用し、物体の位置を角度と距離で表すようにし、さらに当該角度にドップラー速度を関連付けるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

5 小括
上記1〜4に検討したとおり、上記相違点1〜3に係る本願発明の構成は、引用発明、技術常識A、B及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本願発明によって奏される効果として、引用発明、技術常識A、B及び周知技術から当業者が予測し得る程度を超えるものは認めることができない。
また、請求人の主張としては、上記結論を左右するものは認めることができない。
したがって、本願発明は、引用発明、技術常識A、B及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、技術常識A、B及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。




 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 岡田 吉美
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-01-13 
結審通知日 2022-01-14 
審決日 2022-01-27 
出願番号 P2019-517765
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01S)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱野 隆
濱本 禎広
発明の名称 自律乗物の知覚および計画のためのレーダによって生成される占有グリッド  
代理人 佐藤 睦  
代理人 稲葉 良幸  

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