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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
管理番号 1386106
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-03-05 
確定日 2022-04-08 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6753540号発明「ポリオレフィンフィルム、および離型用フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6753540号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜9〕、10、11について訂正することを認める。 特許第6753540号の請求項1〜4、6〜11に係る特許を維持する。 特許第6753540号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6753540号の請求項1〜9に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)9月27日(優先権主張 平成30年10月5日)を国際出願日とする出願であって、令和2年8月24日にその特許権の設定登録がされ、令和2年9月9日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和3年3月 5日 :特許異議申立人茂田郁(以下「申立人1」という。)による請求項1〜9に係る特許に対する特許異議の申立て
令和3年3月 9日 :特許異議申立人豊田英徳(以下「申立人2」という。)による請求項1〜9に係る特許に対する特許異議の申立て
令和3年6月30日付け:取消理由通知書
令和3年8月31日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年1月17日付け:訂正拒絶理由通知書
令和4年2月18日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出(以下「本件補正」という。)

なお、訂正の請求がされたので、申立人1及び申立人2にそれぞれ期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、当該期間内に申立人からは何ら応答がなかった。

第2 本件訂正の適否
1 本件補正の適否
(1)本件補正の内容
本件補正は令和3年8月31日に提出された訂正請求書について、その「7 請求の理由」及び当該訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲を補正するものであって、その内容の概要は次のとおりである。

ア 補正事項1(本件補正前の訂正事項1−2に係る訂正特許請求の範囲についての補正)
訂正事項1−2に係る本件補正前の訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された「示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで昇温した際に、165℃以上に融解ピークを有するポリオレフィンフィルム」を、「示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで昇温した際に、165℃以上に融解ピークを有する、ポリオレフィンフィルム」に補正する。

イ 補正事項2(本件補正前の訂正事項2による請求項5の削除に伴う補正)
請求項6〜9において引用する請求項から、(訂正事項2により削除された)請求項5を削除して、引用する請求項をそれぞれ「請求項1〜4」、「請求項1〜4、6」、「請求項1〜4、6、7」、「請求項1〜4、6〜8」と補正する。

(2)判断
ア 補正事項1について
補正事項1は、上記(1)アに示したとおり、「示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで昇温した際に、165℃以上に融解ピークを有する」と「ポリオレフィンフィルム」との間に読点を挿入するものであって、補正前後において、「示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで昇温した際に、165℃以上に融解ピークを有する」の記載は、「ポリオレフィンフィルム」を修飾する点で変わりはない。
そうすると、補正事項1は、「請求の趣旨」に記載されて特定された「請求を申し立てている事項」を実質的な変更を加えるものではないから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。

イ 補正事項2について
補正事項1は、訂正事項2による請求項5の削除に伴い、請求項6〜9の記載を整合させるものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。

ウ 小括
よって、本件補正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第131条の2第1項の規定に適合するから、本件補正を認める。

2 本件訂正の内容
上記1(2)のとおり、本件補正は認められるから、補正後の訂正請求書(以下「訂正請求書」という。)により、特許権者が求める補正後の訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。

(1)訂正事項1−1
本件訂正前の請求項1に記載された
「少なくとも一方の表層は、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂、及び230℃、21.18Nの荷重で測定したメルトフローレートが5g/10分以上30g/10分以下のポリプロピレン樹脂の少なくとも一方を含有し、」を、
「少なくとも一方の表層は、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を10質量%以上80質量%以下、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を20質量%以上90質量%以下含み、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2〜4、6〜9も同様に訂正する)。

(2)訂正事項1−2
本件訂正前の請求項1に記載された
「ヘイズが30%以下である、ポリオレフィンフィルム」を、
「ヘイズが30%以下であり、
示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで昇温した際に、165℃以上に融解ピークを有する、ポリオレフィンフィルム」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2〜4、6〜9も同様に訂正する)。

(3)訂正事項2
本件訂正前の請求項5を削除する。

(4)訂正事項3
新たな請求項10として、以下の請求項を追加する。
「少なくとも両側の表層と内層からなる積層構成を有し、
少なくとも一方の表層は、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を10質量%以上80質量%以下、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を20質量%以上90質量%以下含み、
前記内層は、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を主成分とする延伸フィルムであり、
少なくとも片面(A面)の平均粗さSaが65〜600nmであり、
前記A面の山高さSp及び前記A面の谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であり、ヘイズが30%以下であり、
前記融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂として、ホモポリプロピレン樹脂を含有する、ポリオレフィンフィルム。」

(5)訂正事項4−1
本件訂正前の請求項7に記載された「請求項1〜6」を、「請求項1〜4、6」に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8、9も同様に訂正する)。

(6)訂正事項4−2
新たな請求項11として、以下の請求項を追加する。
「少なくとも両側の表層と内層からなる積層構成を有し、
少なくとも一方の表層は、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を10質量%以上80質量%以下、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を20質量%以上90質量%以下含み、
前記内層は、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を主成分とする延伸フィルムであり、
少なくとも片面(A面)の平均粗さSaが65〜600nmであり、
前記A面の山高さSp及び前記A面の谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であり、ヘイズが30%以下であり、
主収縮方向、及び、その直交方向の150℃15分の熱収縮率の和が8.0%以下である、ポリオレフィンフィルム。」

(7)訂正事項5
本件訂正前の請求項6に記載された「請求項1〜5」を、「請求項1〜4」に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7〜9も同様に訂正する)。

(8)訂正事項6
本件訂正前の請求項8に記載された「請求項1〜7」を、「請求項1〜4、6、7」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する)。

(9)訂正事項7
本件訂正前の請求項9に記載された「請求項1〜8」を、「請求項1〜4、6〜8」に訂正する。

3 一群の請求項
本件訂正前の請求項1〜9は、請求項2〜9が、訂正事項1−1及び訂正事項1−2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正請求は、一群の請求項に対して請求されたものである。
また、本件訂正後の請求項10、11について、特許権者は、当該訂正が認められるときに、本件訂正前の一群の請求項とは別の訂正単位とすることを求めている。

4 本件訂正の適否
(1)訂正事項1−1について
訂正事項1−1は、本件訂正前の請求項1の「表層」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1−1は、本件特許の明細書の【0022】、【0027】、【0043】、【0058】〜【0061】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1−1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項1−2について
訂正事項1−2は、本件訂正前の請求項1を、本件補正前の請求項5に記載された事項で限定するとともに、当該請求項5の「示差操作熱量計」が「示差走査熱量計」の誤記であったものを本来の記載に正すものであるから、訂正事項1−2は、特許請求の範囲の減縮及び誤記の訂正を目的とするものである。
訂正事項1−2は、本件特許の願書に最初に添付した明細書の【0051】、及び本件特許の特許請求の範囲の【請求項5】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面、及び本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1−2は、本件訂正前の請求項5の記載が、本件特許の明細書の【0051】の記載との関係で誤りであることが明らかであり、かつ、本件特許明細書等の記載全体から、正しい記載が自明な事項として定まるときにおいて、その誤りを正しい記載にする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項2が、請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項10に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
また、訂正事項3は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項4−1、訂正事項5〜7について
訂正事項4−1、訂正事項5〜7は、訂正事項2により請求項5を削除する訂正に伴って引用する請求項を整理するための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項4−1、訂正事項5〜7は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(6)訂正事項4−2について
訂正事項4−2は、本件訂正前の請求項7が、請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項11に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
また、訂正事項4−2は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(7)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1ないし4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜9〕、10、11について訂正することを認める。

第3 本件訂正後の本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1〜4、6〜11に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜4、6〜11に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも両側の表層と内層からなる積層構成を有し、
少なくとも一方の表層は、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を10質量%以上80質量%以下、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を20質量%以上90質量%以下含み、
前記内層は、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を主成分とする延伸フィルムであり、
少なくとも片面(A面)の平均粗さSaが65〜600nmであり、
前記A面の山高さSp及び前記A面の谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であり、ヘイズが30%以下であり、
示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで昇温した際に、165℃以上に融解ピークを有する、ポリオレフィンフィルム。
【請求項2】
前記融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂として、ホモポリプロピレン樹脂を含有する、請求項1に記載のポリオレフィンフィルム。
【請求項3】
前記A面の山高さSp、及び、前記A面の平均粗さSaの比であるSp/Saの値が、13未満である、請求項1または2に記載のポリオレフィンフィルム。
【請求項4】
厚み方向の弾性率が2.3GPa以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィンフィルム。
【請求項6】
フィッシュアイの個数が5.0個/m2以下である、請求項1〜4のいずれかに記載のポリオレフィンフィルム。
【請求項7】
主収縮方向、及び、その直交方向の150℃15分の熱収縮率の和が8.0%以下である、請求項1〜4、6のいずれかに記載のポリオレフィンフィルム。
【請求項8】
130℃で測定した場合のフィルム主収縮方向の直交方向の最大点強度が70MPa以上である、請求項1〜4、6、7のいずれかに記載のポリオレフィンフィルム。
【請求項9】
請求項1〜4、6〜8のいずれかに記載のポリオレフィンフィルムを用いてなる離型用フィルム。
【請求項10】
少なくとも両側の表層と内層からなる積層構成を有し、
少なくとも一方の表層は、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を10質量%以上80質量%以下、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を20質量%以上90質量%以下含み、
前記内層は、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を主成分とする延伸フィルムであり、
少なくとも片面(A面)の平均粗さSaが65〜600nmであり、
前記A面の山高さSp及び前記A面の谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であり、ヘイズが30%以下であり、
前記融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂として、ホモポリプロピレン樹脂を含有する、ポリオレフィンフィルム。
【請求項11】
少なくとも両側の表層と内層からなる積層構成を有し、
少なくとも一方の表層は、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を10質量%以上80質量%以下、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を20質量%以上90質量%以下含み、
前記内層は、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を主成分とする延伸フィルムであり、
少なくとも片面(A面)の平均粗さSaが65〜600nmであり、
前記A面の山高さSp及び前記A面の谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であり、ヘイズが30%以下であり、
主収縮方向、及び、その直交方向の150℃15分の熱収縮率の和が8.0%以下である、ポリオレフィンフィルム。」

第4 取消理由通知書に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
(1)取消理由1(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が次の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して、されたものである。
請求項1〜9に係る発明は、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである。

(2)取消理由2(明確性
本件特許は、特許請求の範囲の記載が次の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対して、されたものである。
請求項5に記載された「示差操作熱量計」について、当該用語の意味内容を当業者が理解できない結果、請求項5〜9に係る発明が不明確である。

(3)取消理由3(進歩性
本件特許の請求項1、3、4、6、8、9に係る発明は、引用文献1に記載された発明又は引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1 国際公開第2018/97161号(申立人2が提出した甲第5号証。以下「甲2−5」という。他も同様。)
2 国際公開第2016/6578号(甲2−1)
3 特開2014−152240号公報(甲2−3)
4 国際公開第2017/77752号(甲2−9)
5 国際公開第2018/147335号(甲2−2)
6 国際公開第2016/43172号(甲2−10)

2 当審の判断
(1)取消理由1(サポート要件)について
本件特許に係る発明が解決しようとする課題は、「離型性、品位に優れたポリオレフィンフィルムを提供すること」(【0007】)である。
上記発明の課題を解決する手段に関して、発明の詳細な説明には次の記載がある。
「【0010】
本発明のポリオレフィンフィルムは、少なくとも片面(A面)の平均粗さSaが65〜600nmであり、前記A面の山高さSp及びA面の谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であり、ヘイズが30%以下である。
本発明のポリオレフィンフィルムの少なくとも片面(A面)の平均粗さSaは、より好ましくは150〜480nm、さらに好ましくは200〜400nmである。Saが65nm未満の場合、表面保護用の離型フィルムとして用いたとき、被着体との接触面積が大きく、被着体の粘着が強い場合、きれいに剥離できず、被着体表面の形状が変化したり、被着体表面に剥離痕が残る場合がある。また、Saが600nmを超えると、表面保護用の離型フィルムとして用いたとき、被着体との接触面積が小さく、貼り合わせの搬送中に剥離してしまう場合がある。Saを65〜600nmの範囲とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とし、特に、フィルム表層に融点の低い樹脂を添加し、その融点以上の温度で、延伸することで、フィルム表面を部分的に溶融させることで粗面化することが効果的である。・・・」
「【0012】
本発明のポリオレフィンフィルムにおいて、前記A面の山高さSp及びA面の谷深さSvの比であるSp/Svの値は、・・・Sp/Svの値が2.5を超えると、例えば光学用部材の離型フィルムとして用いた際に、離形性が不足したり、フィルムの表面凹凸が光学用部材に転写する場合があり、特に被着体の粘着が強い場合、きれいに剥離できず、被着体表面の形状が変化したり、被着体表面に剥離痕が残る場合がある。Sp/Svの値の下限は、特に限定されないが、実質的には0.05程度が下限である。また、背面の打痕転写や、フィルムの搬送性の観点から、フィルムの両面共にSp/Svの値が2.5以下であることが好ましい。Sp/Svの値を2.5以下とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とし、特に表層の厚みや、低融点樹脂の割合、延伸温度を制御して、フィルム表面の低融点樹脂を部分溶融させながら延伸することで、均一に凹みを形成しながら、突起高さを一定に抑えることが効果的である。」
「【0013】
本発明のポリオレフィンフィルムのヘイズは、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下である。ヘイズ値が30%を超えると、フィルムの透明性が低いため、感光性樹脂と貼り合わせ後、欠点観察などの工程検査を行う際に妨げとなる場合がある。ヘイズ値の下限は、特に限定されないが、実質的には0.1%程度が下限である。ヘイズ値を30%以下とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とし、特に表層に添加する低融点樹脂と、フィルムの主成分を構成するポリオレフィン樹脂との相溶性を高めることが効果的である。」
「【0022】
次に本発明のポリオレフィンフィルムの原料について説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
本発明のポリオレフィンフィルムは、少なくとも表層と内層からなる積層構成であって、少なくとも一方の表層に、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂(以下、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を、ポリプロピレン原料Iともいう)を含有することが好ましい。より好ましくは60℃以上130℃以下、さらに好ましくは60℃以上120℃以下、最も好ましくは60℃以上100℃以下のポリプロピレン樹脂を含有することが好ましい。予熱/延伸ロールを搬送する際に、フィルム表面の溶融、ロールへの粘着を起こさない観点から、ポリプロピレン原料Iの融点は50℃以上が好ましい。また、延伸時にフィルム表面を部分的に溶融し粗面化する観点から、ポリプロピレン原料Iの融点は135℃以下が好ましい。ポリプロピレン原料Iの含有量は、ポリプロピレン原料Iが含まれる表層を100質量%とした際に、10質量%以上80質量%以下であることが好ましく、20質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上60質量%以下であることが更に好ましい。」
「【0025】
本発明のポリオレフィンフィルムは、単層構成であってもよい。単層構成の本発明のポリオレフィンフィルムの主成分、並びに、積層構成の本発明のポリオレフィンフィルムの内層の主成分は、ポリオレフィン樹脂(以下、ポリオレフィンフィルムの内層の主成分のポリオレフィン樹脂を、ポリオレフィン原料IIともいう)が好ましい。本発明において「主成分」とは、特定の成分が全成分中に占める割合が50質量%以上100質量%以下であることを意味し、より好ましくは90質量%以上100質量%以下、さらに好ましくは95質量%以上100質量%以下、より一層好ましくは96質量%以上100質量%以下、特に好ましくは97質量%以上100質量%以下、最も好ましくは98質量%以上100質量%以下である。」
「【0027】
ポリオレフィン原料IIは、融点が155℃以上であることが好ましく、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは165℃以上である。融点が155℃未満である場合、耐熱性に乏しく、例えば離型フィルムとして用いた際に、被着体と貼り合わせた後に熱のかかる工程を通過する際に、本フィルムが軟化し、張力方向に伸びてしまい、被着体が変形する場合がある。」
「【0043】
まず、ポリプロピレン原料Iを50質量部とポリオレフィン原料IIを50質量部をドライブレンドしてA層(表層)用の単軸押出機に供給し、ポリオレフィン原料IIをB層(内層)用の単軸押出機に供給し、200〜280℃、より好ましくは220〜280℃、更に好ましくは240〜270℃にて溶融押出を行う。そして、ポリマー管の途中に設置したフィルターにて異物や変性ポリマーなどを除去した後、マルチマニホールド型のA層/B層/A層複合Tダイにて積層し、キャスティングドラム上に吐出し、A層/B層/A層の層構成を有する積層未延伸シートを得る。この際、積層厚み比は、1/8/1〜1/60/1の範囲が好ましい。上記範囲とすることで、ポリプロピレン原料Iを含有する表層がフィルム表面に薄く均一に形成され、延伸時に形成される突起の高さの均一性が増し、粗大突起の形成を抑制することができる。」
「【0045】
得られた未延伸シートは、縦延伸工程に導入される。縦延伸工程では、まず80℃以上130℃以下、好ましくは90℃以上120℃以下、更に好ましくは100℃以上110℃以下に保たれた複数の金属ロールに未延伸シートを接触させて予熱し、周速差を設けたロール間で長手方向に3〜8倍に延伸した後、室温まで冷却する。延伸温度は130℃以上160℃以下、好ましくは140℃以上155℃以下、更に好ましくは145℃以上150℃以下である。縦延伸の予熱工程は低温で搬送し、一気に高温で延伸することで、縦延伸後の一軸延伸フィルム表面に高融点部と低融点部を形成することができ、フィルムを粗面化する上で重要となる。予熱温度と延伸温度が大きく異なる場合、フィルムが高温の延伸ロールに触れた際に幅方向に収縮する。その際に、不均一にフィルムが収縮することで、流れ方向のシワが入る場合がある。その対策として、延伸ロールにセラミックロールを用いることができる。セラミックロール上では、フィルムが滑りやすくなり、フィルムが均一に収縮することでシワ無く延伸が可能であることを見出した。延伸倍率は3倍未満であるとフィルムの配向が弱くなり、強度が低下する場合があることから、3倍以上6倍以下が好ましく、4倍以上5.5倍以下が更に好ましい。
【0046】
次いで縦一軸延伸フィルムをテンターに導いてフィルムの端部をクリップで把持し予熱後、幅方向に7〜13倍に横延伸する。縦一軸延伸フィルム表面の低融点部を部分的に溶融しながら延伸することで、低融点部は延伸倍率が高くなり、フィルム表面の実質的な延伸倍率に差が生まれることで、フィルム表面が粗面化する。このことから、予熱、及び延伸温度は165〜180℃であり、より好ましくは170〜180℃、更に好ましくは173〜180℃である。この様に、非常に高温で横延伸するには、内層は高融点の樹脂を主成分とし、フィルムの表層にのみ低融点樹脂を添加することで達成可能となる。」

これらの記載によると、発明の課題を解決するための手段は、少なくとも一方の表層は、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を10質量%以上80質量%以下、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を含み(本件特許の明細書の【0022】、【0025】、【0027】、【0043】、【0045】及び【0046】)、内層は、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を主成分とする延伸フィルムであり(本件特許の明細書の【0025】、【0027】、【0043】及び【0046】)、少なくとも片面(A面)の平均粗さSaが65〜600nmであり(本件特許の明細書の【0010】)、A面の山高さSp及びA面の谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であり(本件特許の明細書の【0012】)、かつ、ヘイズが30%以下であること(本件特許の明細書の【0013】)である。
そして、本件発明1〜4、6〜11は、いずれも、これらの構成要件を包含するものであるから、本件発明1〜4、6〜11は、上記課題を解決するものであるといえる。
よって、本件発明1〜4、6〜11は、発明の詳細な説明に記載したものである。

(2)取消理由2(明確性)について
訂正事項1−2により、本件訂正前の請求項5に記載された「示差操作熱量計」は「示差操作熱量計」に訂正されたため、本件発明1〜9は明確である。

(3)取消理由3(進歩性)について
ア 引用文献の記載事項
(ア)引用文献1
引用文献1には、次の事項が記載されている。
「[0002] ポリプロピレンフィルムは、透明性、機械特性、電気特性等に優れるため、包装用途、離型用途、テープ用途、ケーブルラッピングやコンデンサをはじめとする電気用途等の様々な用途に用いられている。特に、表面の離型性や機械特性に優れることから、プラスチック製品や建材や光学部材など、様々な部材の離型用フィルムや工程フィルムとして好適に用いられる。
[0003] 離型用フィルムへの要求特性はその使用用途によって適宜設定されるが、近年、感光性樹脂などの粘着性を有する樹脂層のカバーフィルムとして用いられる場合がある。粘着性を有する樹脂層をカバーする場合、カバーフィルムの離型性が悪いと、剥がす際にきれいに剥離できず、保護面である樹脂層の形状が変化したり、保護面に剥離痕が残る場合があるため、表面自由エネルギーの低い離型性の良いフィルムが求められる。また、カバーフィルムの表面平滑性が悪いと、たとえば光学用部材の離型フィルムとして用いたときに、フィルムの表面凹凸が光学用部材に転写して製品の視認性に影響を及ぼす場合がある。さらに、カバーフィルムの透明性が悪いと、感光性樹脂と貼り合わせた後、欠点観察などの工程検査を行う際に妨げとなる場合がある。以上のことから、光学部材など要求特性の高い離型フィルムで用いるためには、離型性、表面平滑性、透明性を兼ね備えたフィルムが求められる場合がある。」
「[0006] 本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、離型性、表面平滑性、透明性に優れた積層ポリプロピレンフィルムを提供することにある。」
「[0017] また、本発明の積層ポリプロピレンフィルムの表層(I)は、オレフィン系樹脂の中でも、その一部が、4−メチルペンテン−1単位であるオレフィン系樹脂であることが好ましく、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体であることがより好ましい。4−メチルペンテン−1単位を含む樹脂は表面自由エネルギーを下げる効果があり、また非オレフィン系樹脂と比較して、ポリプロピレン樹脂との親和性が高いため、ポリプロピレン樹脂への分散性を高めることができる。その一部が、4−メチルペンテン−1単位であるオレフィン系樹脂としては、例えば、三井化学株式会社製、TPX(登録商標)DX310、TPX(登録商標)DX231、TPX(登録商標)MX004などが例示できる。また、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体はポリプロピレン樹脂との相溶性が高いため特に好ましく用いられる。α−オレフィンとしては、炭素原子数2〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンが好ましく、炭素原子数2〜10がより好ましく、炭素原子数2〜5がさらに好ましい。例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられるが、これに限らず使用することができる。例えば特開2013−194132号公報に開示されているような4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体が好ましく用いられる。」
「[0031] 本発明の積層ポリプロピレンフィルムは、ポリプロピレンを主成分とする基材層(II)の少なくとも一方の面に表層(I)を有する積層構成である。このとき、前記表層(I)の厚みをT1、前記基材層(II)の厚みをT2としたとき、T1/T2の値が0.3以下であることが好ましい。より好ましくは0.2以下、さらに好ましくは0.12以下である。T1/T2の値が0.3を超えると、内層と表層の積層界面での界面剥離が発生したり、透明平滑性が損なわれる場合がある。積層厚み比を上記範囲内とするためには、表層(I)と基材層(II)に使用するそれぞれの押出機のスクリュー回転数により調整可能である。ここで、A層/B層/A層の3層構成を有する積層ポリプロピレンフィルムの場合、表裏の各表層(A層)の厚みの合計を表層(I)の厚みT1とする。・・・」
「[0044] (4)ヘイズ値
一辺が5cmの正方形状のフィルムサンプルを3点(3個)準備する。次にサンプルを常態(23℃、相対湿度50%)において、40時間放置する。それぞれのサンプルを日本電色工業(株)製濁度計「NDH5000」を用いて、JIS「透明材料のヘイズの求め方」(K7136 2000年版)に準ずる方式で実施する。それぞれの3点(3個)のヘイズ値を平均して、フィルムのヘイズ値とした。」
「[0050] (実施例1)
ホモポリプロピレン(プライムポリマー(株)製、TF850H、MFR:2.9g/10分)を4質量部、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(融点:130℃)96質量部を、この比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、260℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットして表層(I)用のポリプロピレン原料(A)を得た。なお、前記4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体は、共重合比率が4−メチル−1−ペンテンが73モル%、プロピレンが27モル%であった。
[0051] 表層(I)用のポリプロピレン原料として、上記ポリプロピレン原料(A)を、表層(I)用の単軸の溶融押出機に供給し、基材層(II)用のポリプロピレン原料として、上記ホモポリプロピレン(TF850H)100質量部を基材層(II)用の単軸の溶融押出機に供給し、260℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、フィードブロック型のA/B/A複合Tダイにて1/25/1の厚み比で積層し、18℃に表面温度を制御したキャスティングドラムに吐出し、エアナイフによりキャスティングドラムに密着させた。その後、キャスティングドラム上のシートの非冷却ドラム面に、温度25℃、圧力0.3MPaの圧空エアーを噴射させて冷却し、未延伸シートを得た。続いて、該シートをセラミックロールを用いて125℃に予熱し、周速差を設けた125℃のロール間でフィルムの長手方向に4.5倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、165℃で3秒間予熱後、155℃で幅方向に7.8倍に延伸し、幅方向に13%の弛緩を与えながら158℃で熱処理をおこない、その後100℃の冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、フィルムをコアに巻き取り、厚み11μm(表層0.4μm)の積層ポリプロピレンフィルムを得た。積層ポリプロピレンフィルムの物性および評価結果を表1に示す。」
「[0072]
[表1]



引用文献1の上記記載事項から、引用文献1には、特に実施例1に着目して記載を総合すると、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「表裏の各表層(I)と基材層(II)の3層構成を有し、
表層(I)は、ホモポリプロピレン(プライムポリマー(株)製、TF850H、MFR:2.9g/10分)を4質量部、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(融点:130℃)96質量部を表層(I)用のポリプロピレン原料とし、
基材層(II)は、ホモポリプロピレン(TF850H)100質量部を基材層(II)用のポリプロピレン原料とし、延伸したフィルムであり、
ヘイズが2.8%である、積層ポリプロピレンフィルム。」

(イ)引用文献2
引用文献2には、次の事項が記載されている。
「[0002] ポリプロピレンフィルムは、透明性、機械特性、電気特性等に優れるため、包装用途、離型用途、テープ用途、ケーブルラッピングやコンデンサをはじめとする電気用途等の様々な用途に用いられている。特に、ポリプロピレンフィルムは表面の離型性や機械特性に優れることから、プラスチック製品や建材や光学部材など、様々な部材の離型用フィルムや工程フィルムとして好適に用いられる。」
「[0007] 本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、離型性、表面粗度均一性、生産性に優れたポリプロピレンフィルムおよび離型用フィルムを提供することにある。」
「[0019] 本発明のポリプロピレンフィルムの第1の形態では、表層(I)の中心線平均粗さRaは10〜150nmであることが好ましい。より好ましくは10〜100nm、更に好ましくは10〜60nmである。Raが150nmを超えると、たとえば光学用部材の離型用フィルムとして用いたときに、離型用フィルムの表面凹凸が光学用部材に転写して製品の視認性に影響を及ぼす場合がある。Raは低いほど好ましいが、本発明のポリプロピレンフィルムの第1の形態では、10nm程度が下限である。Raを上記範囲内とするためには、フィルムの積層構成や表層(I)の原料組成を後述する範囲とするとともに、製膜条件を後述する範囲とし、特に押出条件、延伸条件を後述する範囲とすることが効果的である。」
「[0034] 本発明のポリプロピレンフィルムの第1の形態は、上記ポリプロピレン原料Aからなる基材層の少なくとも片面に、上記ポリプロピレン原料Bからなる表層(I)が積層された積層構成であることが好ましい。・・・」
「[0042] 本発明のポリプロピレンフィルムの第2の形態では、後述するポリプロピレン原料を主成分とする表層(I)の表面に、特定の表面形状に制御された凹凸を形成する。これにより、表面粗度の均一性と離型性を両立することができる。
[0043] 本発明のポリプロピレンフィルムの第2の形態では、表層(I)の中心線平均粗さRaが200〜1,000nmであることが好ましい。より好ましくは200〜800nm、更に好ましくは200〜500nmである。Raが200nm未満では、表面が平滑になりすぎて、第2の形態における離型性向上の効果が得られない場合がある。Raが1,000nmを超えると、製膜時にフィルムが破断しやすくなったり、また、Raが大きすぎて離型性が低下する場合がある。Raを上記範囲内とするためには、フィルムの積層構成や各層の原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とし、特に押出条件、延伸条件を後述する範囲とすることが効果的である。
・・・」
「[0084] (実施例1)
まず、融点165℃、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプロピレンFLX80E4を99.7質量部、β晶核剤であるN,N’−ジシクロヘキシル−2,6−ナフタレンジカルボキシアミド(新日本理化(株)製、NU−100)を0.3質量部、さらに酸化防止剤であるチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製IRGANOX(登録商標)1010、IRGAFOS(登録商標)168を各々0.1質量部ずつがこの比率で混合されるように計量ホッパーから二軸押出機に原料供給し、300℃で溶融混練を行い、ストランド状にダイから吐出して、25℃の水槽にて冷却固化し、チップ状にカットしてポリプロピレン原料Bを得た。
基材層(A層)用のポリプロピレン原料Aとして結晶性PP(a)((株)プライムポリマー製、TF850H、MFR:2.9g/10分、アイソタクチック指数:96%)をA層用の単軸の溶融押出機に供給し、表層(I)(B層)用のポリプロピレン原料Bとして、上記ポリプロピレン原料BをB層用の単軸の溶融押出機に供給し、240℃で溶融押出を行い、60μmカットの焼結フィルターで異物を除去後、フィードブロック型のA/B複合Tダイにて8/1の厚み比で積層し、90℃に表面温度を制御したキャストドラムに吐出してキャストシートを得た。このとき、表層(I)のポリプロピレン原料Bをキャストドラムに接地する面とした。ついで、複数のセラミックロールを用いて125℃に予熱を行いフィルムの長手方向に4.6倍延伸を行った。次にテンター式延伸機に端部をクリップで把持させて導入し、165℃で3秒間予熱後、160℃で8.0倍に延伸した。続く熱処理工程で、幅方向に10%の弛緩を与えながら160℃で熱処理を行ない、その後130℃で冷却工程を経てテンターの外側へ導き、フィルム端部のクリップを解放し、フィルムをコアに巻き取り、厚み15μmのポリプロピレンフィルムを得た。ポリプロピレンフィルムの物性および評価結果を表1に示す。」
「[0096]
[表1]



引用文献2の上記記載事項から、引用文献2には、特に実施例1に着目して記載を総合すると、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「表層と基材層とを積層し、
表層は、融点165℃、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプレンFLX80E4を原料とし、
基材層は、結晶性PP(a)((株)プライムポリマー製、TF850H、MFR:2.9g/10分、アイソタクチック指数:96%)を原料とし、延伸したフィルムであり、
表層の中心線平均粗さRaが57nmである、ポリプロピレンフィルム。」

(ウ)引用文献3
引用文献3には、次の事項が記載されている。
「【0077】
【表1】



(エ)引用文献4
引用文献4には、次の事項が記載されている。
「[0091]
[表1]



(オ)引用文献5
引用文献5には、次の事項が記載されている。
「[0003] 離型用フィルムへの要求特性はその使用用途によって適宜設定されるが、近年の機器の小型化、高精度化により、保護する対象となる製品にも薄膜かつ高品位が求められる場合があり、ポリプロピレンフィルムの表面平滑性が悪いと、たとえば光学用部材の離型フィルムとして用いたときに、フィルムの表面凹凸が光学用部材に転写して製品の視認性に影響を及ぼす場合があるが、二軸配向ポリプロピレンフィルムの表面には、数μm〜数十μmの微小なポリプロピレン(PP)粉が存在する場合があった。PP粉は目視では確認できないほど非常に小さいものであるが、近年、製品の高精度化や小型化などにより、該PP粉の凹凸が製品に転写し、品位や歩留まりの低下に繋がる場合が出てきた。」
「[0009] 本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、ナノインデンテーション法により測定した少なくとも片面の23℃における厚み方向の弾性率が2.0GPa以上である。厚み方向の弾性率はより好ましくは2.3GPa以上、さらに好ましくは2.5GPa以上、さらに好ましくは2.7GPa以上である。厚み方向の弾性率が2.0GPa未満であると、製膜工程中に搬送ロールとフィルム間のわずかな速度差によりフィルム表面が削れてPP粉が発生する、あるいはその発生量が増加する場合がある。PP粉抑制の観点からは厚み方向の弾性率は高いほど好ましいが、実質的には5.0GPa程度が上限である。厚み方向の弾性率を上記範囲とするためには、フィルムの原料組成やフィルムの積層構成を後述する範囲とし、また、フィルム製膜時のキャスト(溶融押出した樹脂のシート化工程)条件や縦延伸条件を後述する範囲内とすることが好ましい。」
「[0017] 本発明の二軸配向ポリプロピレンフィルムは、フィッシュアイの個数が20個/m2以下であることが好ましい。フィッシュアイの個数はより好ましくは10個/m2以下、さらに好ましくは5個/m2以下である。フィッシュアイの個数が20個/m2を超えると、ディスプレイ部材など高品位が求められる製品の保護フィルムや製造用基材フィルムとして用いた際に歩留まりが低下する場合がある。フィッシュアイの個数を上記範囲とするためには、原料の組成や調整方法、フィルムの積層構成を後述する範囲内とし、原料中の添加剤成分や熱劣化してフィッシュアイの原因となるような樹脂の使用量を低減させることが効果的である。また、フィルム製膜時の条件を後述する範囲内とし、原料を溶融してシート化するまでにろ過により異物を除去することや、樹脂の滞留部を低減させることが効果的である。」
「[0046] ・・・フィルムの両表面に表層(I)を設ける場合が好ましく、その場合は、それぞれの層について、上記範囲を満たすことが好ましい。」
「[0097] (実施例1)
結晶性ポリプロピレン(PP(a))(プライムポリマー(株)製、TF850H、MFR:2.9g/10分、メソペンタッド分率:0.94、融点:164℃)を90質量部・・・」
「[0110]
[表1]



(カ)引用文献6
引用文献6には、次の事項が記載されている。
「[0015] また本発明のポリプロピレンフィルムは、125℃で測定した場合のフィルム主軸直交方向の破断強度が80MPa以上であることが好ましい。より好ましくは、100MPa以上、さらに好ましくは120MPa以上である。上限は特に限定されないが、フィルムの剛性が高過ぎた場合、柔軟性が損なわれハンドリング性に劣る場合があるので300MPaが上限である。125℃で測定した場合のフィルム主軸直交方向の破断強度が80MPa未満の場合には、高温下でのフィルムの耐電圧性の低下を招いたり、異物が混入した場合に短絡が生じる場合があり、コンデンサとしたときの容量低下やショート破壊を引き起こす可能性がある。125℃で測定した場合のフィルム主軸直交方向の破断強度をかかる範囲に制御する方法としては、たとえば、使用原料や縦・横延伸倍率、延伸温度を後述する範囲に制御したり、二軸延伸後の熱処理および弛緩処理工程において、まず延伸温度より低温での処理工程(1段目処理工程)を経て、再度、前記処理温度より高温でかつ二軸延伸時の幅方向延伸温度未満の熱処理工程(2段目処理工程)を施すことが挙げられる。」

イ 引用文献1を主引例とした進歩性についての理由
(ア)本件発明1について
引用文献1を主引例とした本件発明1に係る進歩性の理由は、取消理由で通知しなかった申立人2の申立理由をなすものであるが、便宜上この箇所で検討する。
a 対比
引用発明1の「表層(I)」は、本件発明1の「表層」に相当し、以下同様に、「基材層(II)」は「内層」に、「3層構成」は「積層構成」に、「積層ポリプロピレンフィルム」は「ポリオレフィンフィルム」に相当する。
引用文献5の[0097]の記載によると、TF850Hの融点は164℃であるから、引用発明1の「表層(I)」が、「ホモポリプロピレン(プライムポリマー(株)製、TF850H、MFR:2.9g/10分)を4質量部、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(融点:130℃)96質量部を表層(I)用のポリプロピレン原料」とすることと、本件発明1の「表層」が、「融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を10質量%以上80質量%以下、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を20質量%以上90質量%以下含」むこととは、表層が、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂と、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂とを含む限りで一致する。
引用文献5の[0097]の記載によると、TF850Hの融点は164℃であるから、引用発明1の「基材層(II)は、ホモポリプロピレン(TF850H)100質量部を基材層(II)用のポリプロピレン原料とし、延伸したフィルム」は、本件発明1の「融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を主成分とする延伸フィルム」である「内層」に相当する。
これより、請求項1に係る発明と引用発明1とは、次の点で一致し、相違する。

<一致点>
「少なくとも両側の表層と内層からなる積層構成を有し、
少なくとも一方の表層は、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂と、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂とを含む、ポリオレフィンフィルム。」
<相違点1>
両側にある表層のうち、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂と、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂とを含むものに関して、本件発明1は、「表層」が、「融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を10質量%以上80質量%以下、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を20質量%以上90質量%以下含」むのに対して、引用発明1は、「表層(I)」が、「ホモポリプロピレン(プライムポリマー(株)製、TF850H、MFR:2.9g/10分)を4質量部、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(融点:130℃)96質量部を表層(I)用のポリプロピレン原料」とする点。
<相違点2>
本件発明1のポリオレフィンフィルムは、「少なくとも片面(A面)の平均粗さSaが65〜600nmであ」るのに対して、引用発明1の積層ポリプロピレンフィルムは、その点が不明である点。
<相違点3>
本件発明1のポリオレフィンフィルムは、「前記A面の山高さSp及び前記A面の谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であ」るのに対して、引用発明1の積層ポリプロピレンフィルムはその点が不明である点。
<相違点4>
本件発明1は、「示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで昇温した際に、165℃以上に融解ピークを有する」のに対して、引用発明1は、その点が不明である点。

b 判断
事案に鑑み、相違点4について検討する。
相違点4に係る本件発明1の構成について、本件特許の明細書には、「本発明のポリオレフィンフィルムは、示差操作熱量計DSCで30℃から260℃まで昇温した際に、165℃以上に融解ピークを有することが好ましい。・・・本発明のポリオレフィンフィルムが165℃以上に融解ピークを有する場合、例えば離型フィルムとして用いた際に、被着体と貼り合わせた後に高温の熱のかかる工程を通過する際でも、フィルムの軟化により変形せず、品位の点で好ましい」(【0016】)と記載されている。一方、引用文献1には、離型フィルムとして用いた際に、被着体と貼り合わせた後に高温の熱のかかる工程を通過する際のフィルムの軟化による変形について何ら記載されていないから、相違点4に係る本件発明1の構成とする動機付けがない。
したがって、引用発明1において、相違点4に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、相違点1〜3を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明2〜4、6〜9について
本件発明2〜4、6〜9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものであるから、上記(ア)bで検討したのと同じ理由により、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)本件発明10について
引用文献1を主引例とした本件発明10に係る進歩性の理由は、取消理由で通知しなかった申立人2の申立理由をなすものであるが、便宜上この箇所で検討する。
本件発明10と引用発明1とは、次の点で相違する。
<相違点5>
両側にある表層のうち、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂と、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂とを含むものに関して、本件発明10は、「表層」が、「融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を10質量%以上80質量%以下、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を20質量%以上90質量%以下含」むのに対して、引用発明1は、「表層(I)」が、「ホモポリプロピレン(プライムポリマー(株)製、TF850H、MFR:2.9g/10分)を4質量部、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(融点:130℃)96質量部を表層(I)用のポリプロピレン原料」とする点。
<相違点6>
本件発明10のポリオレフィンフィルムは、「少なくとも片面(A面)の平均粗さSaが65〜600nmであ」るのに対して、引用発明1の積層ポリプロピレンフィルムは、その点が不明である点。
<相違点7>
本件発明10のポリオレフィンフィルムは、「前記A面の山高さSp及び前記A面の谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であ」るのに対して、引用発明1の積層ポリプロピレンフィルムはその点が不明である点。
<相違点8>
「融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂」に関して、本件発明10は「ホモポリプロピレン樹脂」を含有するのに対して、引用発明1は、「4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(融点:130℃)」である点。

事案に鑑み、相違点8について検討する。
引用文献1には、「4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(融点:130℃)」に関して、「積層ポリプロピレンフィルムの表層(I)は、オレフィン系樹脂の中でも、その一部が、4−メチルペンテン−1単位であるオレフィン系樹脂であることが好ましく、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体であることがより好ましい。4−メチルペンテン−1単位を含む樹脂は表面自由エネルギーを下げる効果があり、また非オレフィン系樹脂と比較して、ポリプロピレン樹脂との親和性が高いため、ポリプロピレン樹脂への分散性を高めることができる。」(上記ア(ア)[0017])と記載されており、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体を、4−メチルペンテン−1単位であるオレフィン系樹脂ではないホモポリプロピレン樹脂を含有するようにすることについて何ら記載されていないから、相違点5に係る本件発明10の構成とする動機付けがない。
したがって、引用発明1において、相違点8に係る本件発明10の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明10は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)本件発明11について
引用文献1を主引例とした本件発明11に係る進歩性の理由は、取消理由で通知しなかった申立人2の申立理由をなすものであるが、便宜上この箇所で検討する。
本件発明11と引用発明1とは、次の点で相違する。
<相違点9>
両側にある表層のうち、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂と、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂とを含むものに関して、本件発明11は、「表層」が、「融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を10質量%以上80質量%以下、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を20質量%以上90質量%以下含」むのに対して、引用発明1は、「表層(I)」が、「ホモポリプロピレン(プライムポリマー(株)製、TF850H、MFR:2.9g/10分)を4質量部、4−メチル−1−ペンテン・プロピレン共重合体(融点:130℃)96質量部を表層(I)用のポリプロピレン原料」とする点。
<相違点10>
本件発明11のポリオレフィンフィルムは、「少なくとも片面(A面)の平均粗さSaが65〜600nmであ」るのに対して、引用発明1の積層ポリプロピレンフィルムは、その点が不明である点。
<相違点11>
本件発明11のポリオレフィンフィルムは、「前記A面の山高さSp及び前記A面の谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であ」るのに対して、引用発明1の積層ポリプロピレンフィルムはその点が不明である点。
<相違点12>
本件発明11は「主収縮方向、及び、その直交方向の150℃15分の熱収縮率の和が8.0%以下である」のに対して、引用発明1は、その点が不明である点。

事案に鑑み、相違点12について検討する。
相違点12に係る本件発明11の構成について、本件特許の明細書には、「主収縮方向、及び、その直交方向の150℃15分の熱収縮率の和が8.0%以下の場合、例えば離型フィルムとして用いた際に、被着体と貼り合わせた後に高温の熱のかかる工程を通過する際に、フィルムが変形せず、被着体から剥がれたり、シワが入るなどの不具合が起こりにくく好ましい」(【0019】)と記載されているところ、引用文献1には当該点について何ら記載されていないから、相違点12に係る本件発明11の構成とする動機付けがない。
したがって、引用発明1において、相違点12に係る本件発明11の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明11は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 引用文献2を主引例とした進歩性についての理由
(ア)本件発明1について
a 対比
引用発明2の「表層」は、本件発明1の「表層」に相当し、以下同様に、「基材層」は「内層」に、「ポリプロピレンフィルム」は「ポリオレフィンフィルム」に相当する。
引用発明2の「表層」が、「融点165℃、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプレンFLX80E4を原料」とすることと、本件発明1の「表層」が、「融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を10質量%以上80質量%以下、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を20質量%以上90質量%以下含」むこととは、表層が、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を含む限りで一致する。
引用文献5の[0097]の記載によると、TF850Hの融点は164℃であるから、引用発明2の「基材層は、結晶性PP(a)((株)プライムポリマー製、TF850H、MFR:2.9g/10分、アイソタクチック指数:96%)を原料とし、延伸したフィルム」は、本件発明1の「融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を主成分とする延伸フィルム」である「内層」に相当する。
これより、本件発明1と引用発明2とは、次の点で一致し、相違する。

<一致点>
「少なくとも一方の表層は、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂とを含む、ポリオレフィンフィルム。」
<相違点13>
本件発明1は、「少なくとも両側の表層と内層からなる」のに対して、引用発明2は、「表層と基材層とを積層し」たものである点。
<相違点14>
表層が、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を含むことに関して、本件発明1は、「表層」が、「融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を10質量%以上80質量%以下、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を20質量%以上90質量%以下含」むのに対して、引用発明2は、「表層」が、「融点165℃、MFR=7.5g/10分の住友化学(株)製ホモポリプレンFLX80E4を原料」とする点。
<相違点15>
本件発明1のポリオレフィンフィルムは、「少なくとも片面(A面)の平均粗さSaが65〜600nmであ」るのに対して、引用発明2のポリプロピレンフィルムは、「表層の中心線平均粗さRaが57nmである」点。
<相違点16>
本件発明1のポリオレフィンフィルムは、「前記A面の山高さSp及び前記A面の谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であ」るのに対して、引用発明2のポリプロピレンフィルムはその点が不明である点。
<相違点17>
本件発明1のポリオレフィンフィルムは、「ヘイズが30%以下である」のに対して、引用発明2のポリプロピレンフィルムのヘイズは不明である点。

b 判断
事案に鑑み、相違点14について検討する。
相違点14に係る本件発明1の構成は、フィルム表面に高融点部と低融点部を形成し、低融点部を部分的に溶融しながら延伸することで、フィルムを粗面化するための構成であるところ、引用文献2には当該点について何ら記載されていないから、相違点14に係る本件発明1の構成とする動機付けがない。
したがって、引用発明2において、相違点14に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明2〜4、6〜11について
本件発明2〜4、6〜9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものであり、本件発明10、11は、相違点14に係る本件発明1の構成を含むものであるから、上記(ア)bで検討したのと同じ理由により、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由の概要
特許異議申立理由中、取消理由通知に採用しなかったものについては、以下のとおりである。

(1)国際公開第2015/12165号(甲1−1)を主引例とした新規性進歩性についての理由(申立人1が提出した特許異議申立書の9ページ12行〜12ページ15行)
申立人1は、本件特許の請求項1、3、4、5、7、8に係る発明は、甲1−1に記載された発明であり、また、甲1−1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、3、4、5、7、8に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものである旨を述べている。

本件発明1と甲1−1に記載された発明(特に[0083]〜[0091]の実施例1〜6、比較例1〜3に着目した。以下「甲1−1発明」という。)とは、少なくとも、次の点で相違する。
<相違点A>
少なくとも一方の表層は、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を含むことに関して、本件発明1は、「少なくとも一方の表層は、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を10質量%以上80質量%以下、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を20質量%以上90質量%以下含」むのに対して、甲1−1発明は、「ヒートシール層」を構成する「ヒートシール樹脂」が、「プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体(Pr−Et−Bu)(密度0.89g/cm3、MFR9.0g/10分、融点128℃)を85重量%、プロピレン−ブテンランダム共重合体(Pr−Bu)(密度0.89g/cm3、MFR9.0g/10分、融点130℃)を15重量%とした混合樹脂」である点。

相違点Aは実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1−1発明ではない。
甲1−1には、「ヒートシール層」を構成する「ヒートシール樹脂」に関して、「[0047] また、本発明において、ヒートシール層(B)に用いる樹脂は、融点が150℃以下の低融点のプロピレンランダム共重合体またはエラストマー成分を含むプロピレンブロック共重合体が好ましく、また、これらを単独または混合して使用することができる。コモノマーとしては、エチレン、または、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセン等の炭素数が3〜10のα−オレフィンから選ばれた1種以上を用いることが好ましい。[0048] さらにまた、ヒートシール層(B)を形成するプロピレンランダム共重合体の融点は、好ましくは60〜150℃にすることが望ましい。これにより、延伸ポリプロピレン系樹脂積層フィルムに十分なヒートシール強度を与えることができる。ヒートシール層(B)を形成するプロピレンランダム共重合体の融点が60℃未満ではヒートシール部の耐熱性が乏しく、150℃を越えるとヒートシール強度の向上が期待できない。また、プロピレンブロック共重合体中に含まれるエラストマー成分の融点も150℃以下であることが好ましい。・・・」と記載されており、甲1−1発明のヒートシール樹脂が、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を20質量%以上90質量%以下含むようにすることについて何ら記載されていないから、相違点Aに係る本件発明1の構成とする動機付けがない。
したがって、甲1−1発明において、相違点Aに係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

同様に、本件発明3、4、7、8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものであり、本件発明11は、相違点Aに係る本件発明1の構成を含むものであるから、甲1−1発明ではなく、甲1−1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)甲2−1(引用文献2)又は甲2−5(引用文献1)を主引例とした新規性についての理由(申立人2が提出した特許異議申立書の56ページ5行〜74ページ7行)
申立人2は、本件特許の請求項1〜9に係る発明は、甲2−1(引用文献2)又は甲2−5(引用文献1)に記載された発明であるから、請求項1〜9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである旨を述べている。

しかしながら、本件発明1〜4、6〜11は、上記第4の2(3)イで述べたとおり甲2−5(引用文献1)に記載された発明と相違し、また、上記第4の2(3)ウで述べたとおり甲2−1(引用文献2)に記載された発明と相違するから、本件発明1〜4、6〜11は、引用発明1又は引用発明2ではない。

(3)特開2016−30825号公報(甲2−11)を主引例とした新規性進歩性についての理由(申立人2が提出した特許異議申立書の74ページ8行〜78ページ下から6行)
申立人2は、本件特許の請求項1〜9に係る発明は、甲2−11に記載された発明であり、また、甲2−11に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜9に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものである旨を述べている。

本件発明1と甲2−11に記載された発明(特に【0074】の実施例1に着目した。以下「甲2−11発明」という。)とは、少なくとも、次の点で相違する。
<相違点B>
本件発明1は、「前記A面の山高さSp及び前記A面の谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であ」るのに対して、甲2−11発明は、その点が不明である点。

相違点Bは実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲2−11発明ではない。
相違点Bについて検討する。
本件特許の明細書【0012】には、「Sp/Svの値が2.5以下とするには、フィルムの原料組成を後述する範囲とし、また、製膜条件を後述する範囲とし、特に表層の厚みや、低融点樹脂の割合、延伸温度を制御して、フィルム表面の低融点樹脂を部分溶融させながら延伸することで、均一に凹みを形成しながら、突起高さを一定に抑えることが効果的である。」と記載され、延伸温度の制御に関して、「縦延伸工程では、まず80℃以上130℃以下、好ましくは90℃以上120℃以下、更に好ましくは100℃以上110℃以下に保たれた複数の金属ロールに未延伸シートを接触させて予熱し、周速差を設けたロール間で長手方向に3〜8倍に延伸した後、室温まで冷却する。延伸温度は130℃以上160℃以下、好ましくは140℃以上155℃以下、更に好ましくは145℃以上150℃以下である。縦延伸の予熱工程は低温で搬送し、一気に高温で延伸することで、縦延伸後の一軸延伸フィルム表面に高融点部と低融点部を形成することができ、フィルムを粗面化する上で重要となる。」(【0045】)、「次いで縦一軸延伸フィルムをテンターに導いてフィルムの端部をクリップで把持し予熱後、幅方向に7〜13倍に横延伸する。縦一軸延伸フィルム表面の低融点部を部分的に溶融しながら延伸することで、低融点部は延伸倍率が高くなり、フィルム表面の実質的な延伸倍率に差が生まれることで、フィルム表面が粗面化する。このことから、予熱、及び延伸温度は165〜180℃であり、より好ましくは170〜180℃、更に好ましくは173〜180℃である。」(【0046】)と記載されている。
一方で、甲2−11の【0074】には、延伸温度の制御として、「延伸条件は、装置の設定温度として予熱温度165℃、予熱時間2分、延伸温度(縦延伸温度および横延伸温度)145℃、延伸速度100%/秒とし、樹脂シートを縦方向に4.5倍、横方向に10倍に延伸した。」と記載されている。
すなわち、本件特許の明細書では、低融点樹脂(50℃以上135℃以下)の融点と高融点樹脂(155℃以上)の融点程度又はその間の延伸温度(130℃以上160℃以下)で縦延伸して、一軸延伸フィルム表面に高融点部と低融点部を形成し、その後、高融点樹脂の融点程度の延伸温度(165〜180℃)で横方向に延伸することで、「Sp/Svの値」を「2.5以下」としているが、甲2−11では、スキン層(本件発明1の「表層」に相当。)の樹脂の融点に着目したものではないだけでなく、横延伸の延伸温度は145℃と本件特許の明細書に記載された横延伸の延伸温度よりも低いため、甲2−11発明において、相違点Bに係る本件発明1の構成とする動機付けがない。
したがって、甲2−11発明において、相違点Bに係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

同様に、本件発明2〜4、6〜9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものであり、本件発明10、11は、相違点Bに係る本件発明1の構成を含むものであるから、甲2−11発明ではなく、甲2−11発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)実施可能要件
ア 申立人1は、甲1−1の実施例には、本件特許の明細書に記載された方法で作成されたフィルムが記載されているので、甲1−1に記載された実施例が本件特許の請求項1、3、4、5、7、8に係る発明のフィルムではない場合は、当業者に過度の試行錯誤を強要することになり、実施可能要件違反である旨を述べている(申立人1が提出した特許異議申立書の12ページ17〜下から3行)。

本件特許の明細書の【0022】〜【0040】には、ポリオレフィンフィルムの原料の説明が記載され、【0041】〜【0047】には、ポリオレフィンフィルムの製造方法の説明が記載され、さらに、【0049】〜【0068】には実施例が記載されており、当業者であれば、これら記載に基づいて本件発明1、3、4、7、8、11の実施をすることができる。

イ 申立人1は、本件特許の明細書に記載された、「フィッシュアイの個数が5.0個/m2以下」とする手段は、当業者の技術常識に過ぎず、本件特許の請求項6の発明特定事項が技術的特徴であるなら、実施可能要件違反である旨を述べている(申立人1が提出した特許異議申立書の12ページ下から2行〜13ページ9行)。

本件特許の明細書には、「フィッシュアイの個数を5.0個/m2以下とするためには、原料の組成や調整方法、フィルムの積層構成を後述する範囲内とし、原料中の添加剤成分や熱劣化してフィッシュアイの原因となるような樹脂の使用量を低減させることが効果的である。また、フィルム製膜時の条件を後述する範囲内とし、原料を溶融してシート化するまでにろ過により異物を除去することや、樹脂の滞留部を低減させることが効果的である。」(【0017】)と記載されており、さらに、【0022】〜【0040】には、ポリオレフィンフィルムの原料の説明が記載され、【0041】〜【0047】には、ポリオレフィンフィルムの製造方法の説明が記載され、さらに、【0049】〜【0068】には実施例が記載されており、当業者であれば、これら記載に基づいて本件発明6〜9の実施をすることができる。

ウ 申立人2は、本件特許の発明の詳細な説明が、発明を実施するための特定の態様しか示されておらず、当業者が発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない旨を述べている(申立人2が提出した特許異議申立書の78ページ末行〜81ページ4行)。

本件特許の明細書の【0022】〜【0040】には、ポリオレフィンフィルムの原料の説明が記載され、【0041】〜【0047】には、ポリオレフィンフィルムの製造方法の説明が記載され、さらに、【0049】〜【0068】には実施例が記載されており、当業者であれば、これら記載に基づいて本件発明1〜4、6〜11の実施をすることができる。

(5)明確性
申立人2は、本件特許の請求項1に係る発明は、試験片の厚さ(フィルムの厚さ)を特定することが欠けているため、ヘイズの値を一義的に特定することができないので、不明確である旨を述べている(申立人2が提出した特許異議申立書の81ページ6行〜82ページ下から5行)。

本件発明1のポリオレフィンフィルムの厚さが測定できない理由はなく、本件発明1に係るポリオレフィンフィルムのヘイズの値の測定も可能である。
したがって、本件発明1〜4、6〜11は明確である。

第6 結び
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1〜4、6〜11に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1〜4、6〜11に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
また、本件特許の請求項5は、本件訂正により削除されたため、請求項5に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも両側の表層と内層からなる積層構成を有し、
少なくとも一方の表層は、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を10質量%以上80質量%以下、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を20質量%以上90質量%以下含み、
前記内層は、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を主成分とする延伸フィルムであり、
少なくとも片面(A面)の平均粗さSaが65〜600nmであり、
前記A面の山高さSp及び前記A面の谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であり、ヘイズが30%以下であり、
示差走査熱量計DSCで30℃から260℃まで昇温した際に、165℃以上に融解ピークを有するポリオレフィンフィルム。
【請求項2】
前記融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂として、ホモポリプロピレン樹脂を含有する、請求項1に記載のポリオレフィンフィルム。
【請求項3】
前記A面の山高さSp、及び、前記A面の平均粗さSaの比であるSp/Saの値が、13未満である、請求項1または2に記載のポリオレフィンフィルム。
【請求項4】
厚み方向の弾性率が2.3GPa以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィンフィルム。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
フィッシュアイの個数が5.0個/m2以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリオレフィンフィルム。
【請求項7】
主収縮方向、及び、その直交方向の150℃15分の熱収縮率の和が8.0%以下である、請求項1〜6のいずれかに記載のポリオレフィンフィルム。
【請求項8】
130℃で測定した場合のフィルム主収縮方向の直交方向の最大点強度が70MPa以上である、請求項1〜7のいずれかに記載のポリオレフィンフィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のポリオレフィンフィルムを用いてなる離型用フィルム。
【請求項10】
少なくとも両側の表層と内層からなる積層構成を有し、
少なくとも一方の表層は、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を10質量%以上80質量%以下、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を20質量%以上90質量%以下含み、
前記内層は、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を主成分とする延伸フィルムであり、
少なくとも片面(A面)の平均粗さSaが65〜600nmであり、
前記A面の山高さSp及び前記A面の谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であり、ヘイズが30%以下であり、
前記融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂として、ホモポリプロピレン樹脂を含有する、ポリオレフィンフィルム。
【請求項11】
少なくとも両側の表層と内層からなる積層構成を有し、
少なくとも一方の表層は、融点が50℃以上135℃以下のポリプロピレン樹脂を10質量%以上80質量%以下、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を20質量%以上90質量%以下含み、
前記内層は、融点が155℃以上のポリオレフィン樹脂を主成分とする延伸フィルムであり、
少なくとも片面(A面)の平均粗さSaが65〜600nmであり、
前記A面の山高さSp及び前記A面の谷深さSvの比であるSp/Svの値が2.5以下であり、ヘイズが30%以下であり、
主収縮方向、及び、その直交方向の150℃15分の熱収縮率の和が8.0%以下である、ポリオレフィンフィルム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-03-31 
出願番号 P2019-555044
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (C08J)
P 1 651・ 536- YAA (C08J)
P 1 651・ 121- YAA (C08J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 藤原 直欣
藤井 眞吾
登録日 2020-08-24 
登録番号 6753540
権利者 東レ株式会社
発明の名称 ポリオレフィンフィルム、および離型用フィルム  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
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