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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857  A23L
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
管理番号 1386111
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-04-20 
確定日 2022-04-08 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6775930号発明「タンパク質を含んだジェランガムゲル及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6775930号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜22〕について訂正することを認める。 特許第6775930号の請求項7〜22に係る特許を維持する。 特許第6775930号の請求項1〜6に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6775930号の請求項1〜12に係る特許についての出願は、平成27年9月9日に出願され、令和2年10月9日にその特許権の設定登録がなされ、同年10月28日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和3年4月20日に特許異議申立人中谷浩美(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、当審は、同年6月29日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年9月2日に意見書を提出し、訂正の請求を行った。当審は、申立人に対して、令和4年1月6日付けで訂正請求があった旨の通知をしたが、申立人からの応答はなかった。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
特許権者は、令和3年9月2日に訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)を行った。本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項のとおりである。

[訂正事項1]
請求項1〜6を削除する。

[訂正事項2−1]
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。」とあるところ、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「タンパク質を含有した脱アシル型ジェランガムゲルの製造方法であって、
脱アシル型ジェランガム及びタンパク質を含有するpH3.0〜4.6の溶液を、加圧し、そして以下の1)〜5)のうち少なくとも1つの処理をする、ゲル化工程:
1)キャビテーションを発生する;
2)摩擦力を発生する;
3)前記溶液に衝突を起こす;
4)前記脱アシル型ジェランガム及びタンパク質に剪断力を加える;
5)前記脱アシル型ジェランガム及びタンパク質を微細化される、
と、
5℃以上50℃以下になるように、前記ゲル化工程後の溶液を冷却する工程を含み、
前記ゲル化工程において、前記溶液を50MPa以上の圧力で処理する、製造方法。」に訂正する。

[訂正事項2−2]
請求項7の記載を引用する請求項8も訂正事項2−1と同様に訂正する。

[訂正事項2−3]
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。」とあるところ、「請求項7または8に記載の製造方法。」に訂正する。

[訂正事項2−4]
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。」とあるところ、「請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法。」に訂正する。

[訂正事項2−5]
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。」とあるところ、「請求項7〜10のいずれか1項に記載の製造方法。」に訂正する。

[訂正事項2−6]
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。」とあるところ、「請求項7〜11のいずれか1項に記載の製造方法。」に訂正する。

[訂正事項2−7]
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。」とあるところ、請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、
「タンパク質を含有した脱アシル型ジェランガムゲルの製造方法であって、
脱アシル型ジェランガム及びタンパク質を含有するpH3.0〜4.6の溶液を、高圧ホモジナイザー、高圧噴射装置又は湿式微粒化装置を用いて処理する、ゲル化工程と、
5℃以上50℃以下になるように、前記ゲル化工程後の溶液を冷却する工程を含み、
前記ゲル化工程において、前記溶液を50MPa以上の圧力で処理する、製造方法。」に訂正し、新たに請求項13とする。

[訂正事項2−8]
特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載の製造方法。」とあるところ、「請求項7又は13に記載の製造方法。」に訂正し、新たに請求項14とする。

[訂正事項2−9]
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1又は2に記載の製造方法。」とあるところ、「請求項7、又は13に記載の製造方法。」に訂正し、新たに請求項15とする。

[訂正事項2−10]
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。」とあるところ、「請求項7、13〜15のいずれか1項に記載の製造方法。」に訂正し、新たに請求項16とする。

[訂正事項2−11]
特許請求の範囲の請求項6に「請求項5に記載の製造方法。」とあるところ、「請求項16に記載の製造方法。」に訂正し、新たに請求項17とする。

[訂正事項2−12]
特許請求の範囲の請求項8に「請求項7に記載の製造方法。」とあるところ、「請求項13〜17に記載の製造方法。」に訂正し、新たに請求項18とする。

[訂正事項2−13]
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。」とあるところ、「請求項13〜18のいずれか1項に記載の製造方法。」に訂正し、新たに請求項19とする。

[訂正事項2−14]
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。」とあるところ、「請求項13〜19のいずれか1項に記載の製造方法。」に訂正し、新たに請求項20とする。

[訂正事項2−15]
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。」とあるところ、「請求項13〜20のいずれか1項に記載の製造方法。」に訂正し、新たに請求項21とする。

[訂正事項2−16]
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。」とあるところ、「請求項13〜21のいずれか1項に記載の製造方法。」に訂正し、新たに請求項22とする。

2 一群の請求項について
訂正前の請求項3〜12は、それぞれ訂正前の請求項1及び2を引用しているものであって、訂正事項1及び訂正事項2−1〜16によって記載が訂正される請求項1及び2のそれぞれに連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1〜12に対応する訂正後の請求項1〜22に係る本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。

3 願書に添付した特許請求の範囲の訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び新規事項の有無
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1〜6を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2−1について
訂正事項2−1は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項1を引用するものであったところを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとするための訂正であって、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項2−2について
訂正事項2−2は、訂正前の請求項7を引用する訂正前の請求項8について、引用する請求項7の内容を訂正事項2−1と同様に訂正するものであって、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項2−3について
訂正事項2−3は、訂正事項1に整合させるために、訂正前の請求項9の引用先から請求項1〜6を削除するものであるから、当該訂正事項2−3は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項2−3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、新規事項の追加に該当しない。

(5)訂正事項2−4について
訂正事項2−4は、訂正事項1に整合させるために、訂正前の請求項10の引用先から請求項1〜6を削除するものであるから、当該訂正事項2−4は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項2−4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、新規事項の追加に該当しない。

(6)訂正事項2−5について
訂正事項2−5は、訂正事項1に整合させるために、訂正前の請求項11の引用先から請求項1〜6を削除するものであるから、当該訂正事項2−5は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項2−5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、新規事項の追加に該当しない。

(7)訂正事項2−6について
訂正事項2−6は、訂正事項1に整合させるために、訂正前の請求項12の引用先から請求項1〜6を削除するものであるから、当該訂正事項2−6は、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項2−6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、新規事項の追加に該当しない。

(8)訂正事項2−7について
訂正事項2−7は、訂正前の請求項7が訂正前の請求項2を引用するものであったところを、請求項間の引用関係を解消し、請求項2を引用しないものとし、新たな請求項13とする訂正であって、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(9)訂正事項2−8について
訂正事項2−8は、訂正事項2−1及び訂正事項2−7に整合させるために、訂正前の請求項3の引用先を請求項1又は2から請求項7又は13に変更し、新たな請求項14とする訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(10)訂正事項2−9について
訂正事項2−9は、訂正事項2−1及び訂正事項2−7に整合させるために、訂正前の請求項4の引用先を請求項1又は2から請求項7又は13に変更し、新たな請求項15とする訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(11)訂正事項2−10について
訂正事項2−10は、訂正事項2−1及び訂正事項2−7に整合させるために、訂正前の請求項5の引用先を請求項1〜4から請求項7、13〜15のいずれか1項に変更し、新たな請求項16とする訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(12)訂正事項2−11について
訂正事項2−11は、訂正事項2−1及び訂正事項2−7に整合させるために、訂正前の請求項6の引用先を請求項5から請求項16に変更し、新たな請求項17とする訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(13)訂正事項2−12について
訂正事項2−12は、訂正事項2−1及び訂正事項2−7に整合させるために、訂正前の請求項8の引用先を請求項7から請求項13〜17に変更し、新たな請求項18とする訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(14)訂正事項2−13について
訂正事項2−13は、訂正事項2−1及び訂正事項2−7に整合させるために、訂正前の請求項9の引用先を請求項1〜8のいずれか1項から請求項13〜18のいずれか1項に変更し、新たな請求項19とする訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(15)訂正事項2−14について
訂正事項2−14は、訂正事項2−1及び訂正事項2−7に整合させるために、訂正前の請求項10の引用先を請求項1〜9のいずれか1項から請求項13〜19のいずれか1項に変更し、新たな請求項20とする訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(16)訂正事項2−15について
訂正事項2−15は、訂正事項2−1及び訂正事項2−7に整合させるために、訂正前の請求項11の引用先を請求項1〜10のいずれか1項から請求項13〜20のいずれか1項に変更し、新たな請求項21とする訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(17)訂正事項2−16について
訂正事項2−16は、訂正事項2−1及び訂正事項2−7に整合させるために、訂正前の請求項12の引用先を請求項1〜11のいずれか1項から請求項13〜21のいずれか1項に変更し、新たな請求項22とする訂正であるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(18)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び同条第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜22について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1〜22に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜22に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】
タンパク質を含有した脱アシル型ジェランガムゲルの製造方法であって、
脱アシル型ジェランガム及びタンパク質を含有するpH3.0〜4.6の溶液を、加圧し、そして以下の1)〜5)のうち少なくとも1つの処理をする、ゲル化工程:
1)キャビテーションを発生する;
2)摩擦力を発生する;
3)前記溶液に衝突を起こす;
4)前記脱アシル型ジェランガム及びタンパク質に剪断力を加える;
5)前記脱アシル型ジェランガム及びタンパク質を微細化される、
と、
5℃以上50℃以下になるように、前記ゲル化工程後の溶液を冷却する工程を含み、
前記ゲル化工程において、前記溶液を50MPa以上の圧力で処理する、製造方法。
【請求項8】
前記ゲル化工程において、前記溶液を70MPa以上の圧力で処理する、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ゲル化工程後の溶液の温度が、100℃以上にならないように、前記ゲル化工程を行う、請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ジェランガム及びタンパク質を含有する溶液中のジェランガム濃度が0.001〜4.00質量%である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記タンパク質がホエイタンパク質又は大豆タンパク質である、請求項7〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記タンパク質が、前記脱アシル型ジェランガムゲル中、8質量%以上〜40質量%含まれる、請求項7〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
タンパク質を含有した脱アシル型ジェランガムゲルの製造方法であって、
脱アシル型ジェランガム及びタンパク質を含有するpH3.0〜4.6の溶液を、高圧ホモジナイザー、高圧噴射装置又は湿式微粒化装置を用いて処理する、ゲル化工程と、
5℃以上50℃以下になるように、前記ゲル化工程後の溶液を冷却する工程を含み、
前記ゲル化工程において、前記溶液を50MPa以上の圧力で処理する、製造方法。
【請求項14】
前記溶液がカリウム塩またはカルシウム塩を含む、請求項7又は13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ゲル化工程後の溶液にカリウム塩またはカルシウム塩を添加する工程を含む、請求項7、又は13に記載の製造方法。
【請求項16】
前記溶液を前記ゲル化工程前に加熱しないことを特徴とする、請求項7、13〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記溶液を前記ゲル化工程前に90℃以上に加熱しないことを特徴とする、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記ゲル化工程において、前記溶液を70MPa以上の圧力で処理する、請求項13〜17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記ゲル化工程後の溶液の温度が、100℃以上にならないように、前記ゲル化工程を行う、請求項13〜18のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記ジェランガム及びタンパク質を含有する溶液中のジェランガム濃度が0.001〜4.00質量%である、請求項13〜19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項21】
前記タンパク質がホエイタンパク質又は大豆タンパク質である、請求項13〜20のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項22】
前記タンパク質が、前記脱アシル型ジェランガムゲル中、8質量%以上〜40質量%含まれる、請求項13〜21のいずれか1項に記載の製造方法。」
(以下、「本件発明7」〜「本件発明22」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1〜6、9〜12に係る特許に対して、当審が令和3年6月29日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

取消理由1:本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 取消理由1(サポート要件)について
(1)本件発明の解決しようとする課題
本件発明は、特許請求の範囲、明細書の全体の記載事項(特に、段落0005)及び出願時の技術常識からみて、「新規な、タンパク質を含んだジェランガムゲル及びその製造方法」の提供を解決しようとする課題とするものであると認められる。

(2)判断
本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落0003にも記載されているように、ジェランガムとタンパク質は反応してゲル化が阻害されやすいために、通常、ジェランガムゲルにタンパク質を含有させるためには、大豆多糖類などの安定剤を添加してジェランガムとタンパク質との反応を抑制する必要があった。
そして、発明の詳細な説明の段落0017の「本発明にかかるタンパク質を含んだジェランガムゲルの製造方法は、ジェランガム及びタンパク質を含有する溶液を加圧処理する工程を含む。これによって、ゲル化前に加熱する必要がなくなるが、加熱によってゲル化したジェランガムよりゼリーの食感が強くなり、より良好な食感が得られるようになる。また、ジェランガムゲルに、より高濃度のタンパク質を含有させることができる。」との記載から、タンパク質を含んだジェランガムゲルを得るという課題を解決する手段として、加圧処理が重要であることが理解される。
さらに、発明の詳細な説明の段落0025には、「加圧の際の圧力は特に限定されないが、50MPa以上であることが好ましく、70MPa以上であることがより好ましく、100MPa以上であることがさらに好ましい。」との記載があり、実施例では、70〜280MPaに加圧処理する工程を含む方法により、タンパク質を含んだジェランガムゲルを製造できることが示されている。
してみると、実施例で用いられた70〜280MPaに近い圧力である50MPa以上の圧力で加圧処理されれば、タンパク質を含んだジェランガムゲルを生成することができるであろうことを、当業者は認識できる。
よって、本件発明7〜22は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、上記取消理由1には理由がない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、異議申立書において、証拠方法として次の2に示す甲号証を提出して、訂正前の請求項1〜12に係る発明の特許について、取消理由通知において採用した理由以外に、次の申立ての理由を主張している。

申立ての理由1−1:請求項1、2、5、6、9、10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、5、6、9、10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。

申立ての理由1−2:請求項1、2、5、6、9、10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、5、6、9、10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。

申立ての理由2−1:請求項1、2、9〜11に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、9〜11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。

申立ての理由2−2:請求項1、2、9〜11に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、9〜11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。

申立ての理由3:請求項1〜11に係る発明は、甲第1、3〜9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。

申立ての理由4:請求項1〜4、7〜11に係る発明は、甲第2〜9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜4、7〜11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2項に該当するから、取り消されるべきものである。

申立ての理由5:請求項1〜12に係る発明は、以下の理由A〜Cのため、発明の詳細な説明に記載されたものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合しない。
理由A:実施例で用いられたスターバーストやシステマイザーと呼ばれる高圧噴射装置や湿式微粒化装置ではない、高圧ホモジナイザーを用いてゲル化を試みた場合に、本件発明にかかるゲルが得られるかは不明である。
理由B:甲第10号証では、「大豆蛋白質源1部に対して有機酸たるクエン酸の配合比率を0.15〜0.45部とすることにより、酸性域において大豆蛋白質が沈殿しない」ことが実証されていることから、本件明細書の実施例は、酸沈殿を起こさない条件設定がなされたものであり、酸沈殿を起こす条件設定の下で、本件発明にかかるゲルが得られるかは不明である
理由C:本件の発明の詳細な説明では、実施例として、カルシウム塩を含む態様であって、pH3.0〜4.6のものの記載がないことから、カルシウム塩を含み、且つpH3.0〜4.6の場合に、本件発明にかかるゲルが得られるかは不明である。

2 甲号証とその記載

甲第1号証:特開2013−198475号公報
甲第2号証:特表2014−521345号公報
甲第3号証:国際公開第2004/010796号
甲第4号証:特開2006−61035号公報
甲第5号証:特開2010−35517号公報
甲第6号証:特開2014−212735号公報
甲第7号証:特開2001−314177号公報
甲第8号証:特開2005−270891号公報
甲第9号証:日本食品工学会誌,2009年12月,Vol.10,No.4,pp.215−222
甲第10号証:国際公開第2014/016917号

(1)甲第1号証の記載

記載(1a)
「【請求項1】
タンパク質及び酸性多糖類をpH2.5〜6の酸性条件下で併用する場合に生じる凝集物の形成を抑制する方法であって、ιカラギナン、λカラギナン、κ2カラギナン、並びにμ成分及びν成分を含有するカラギナンからなる群から選択される一種以上のカラギナンを添加することを特徴とする、タンパク質含有酸性ゲル状飲食品の凝集物形成を抑制する方法。
【請求項2】
酸性多糖類が、κカラギナン、キサンタンガム、ジェランガム、アルギン酸類及びLMペクチンからなる群から選択される一種以上である、請求項1に記載のタンパク質含有酸性ゲル状飲食品の凝集物形成を抑制する方法。」(請求項1〜2)

記載(1b)
「本発明は、タンパク質及び酸性多糖類を含有する酸性ゲル状飲食品における凝集物形成を抑制する方法に関する。具体的には、タンパク質及び酸性多糖類をpH2.5〜6の酸性条件下で併用する場合に生じる凝集物の形成や、ゲル化阻害を抑制する方法に関する。本発明はまた、タンパク質及び酸性多糖類を含有しつつも、pH2.5〜6の酸性条件下で均一な組織を有するタンパク質含有酸性ゲル状飲食品に関する。」(段落0001)

記載(1c)
「上記従来技術に鑑み、本発明ではタンパク質及び酸性多糖類をpH2.5〜6の条件下で併用する場合に生じる、凝集物の形成を抑制する方法を提供することを目的とする。
ひいては、タンパク質及び酸性多糖類を含有しつつも、均一な食感や組織を有する酸性ゲル状飲食品を提供すること、並びに酸性多糖類が有する本来の機能(食感改良、離水防止、耐熱性付与機能等)を期待した酸性ゲル状飲食品の処方設計を可能とすることを目的とする。」(段落0011)

記載(1d)
「タンパク質の種類は、従来から食品に使用されているものであれば特に限定されず、各種タンパク質を用いることができる。例えば、乳タンパク質(牛乳、脱脂粉乳、全粉乳、乳清タンパク質、カゼイン等)、大豆タンパク質(豆乳等)、小麦タンパク質、米タンパク質等が挙げられる。目安として、牛乳に含まれるタンパク質は約3質量%、脱脂粉乳は約35質量%、全粉乳は約25質量%、豆乳は約3.5質量%である。好ましくは乳タンパク質である。なお、本発明においてタンパク質とはペプチドも含む。」(段落0022)

記載(1e)
「実施例中の「部」「%」は、それぞれ「質量部」「質量%」、文中「*」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを意味する。」(段落0053)

記載(1f)
「実験例6 タンパク質含有 酸性ゲル状飲食品(モデル系)
表10の処方に基づき、タンパク質含有酸性ゲル状飲食品(モデル系)を調製した。具体的には、水に砂糖、脱脂粉乳、ゲル化剤及び安定剤を添加し、80℃で10分間加熱溶解した。色素及びクエン酸を添加し、全量が100質量部となるようにイオン交換水で補正した。15MPaで均質化処理を行なった後、容器に充填した。85℃で30分間殺菌後、冷却することでタンパク質含有酸性ゲル状飲食品を調製した。
得られたタンパク質含有酸性ゲル状飲食品の状態(ゲル化の有無、ゲル強度及び凝集物の形成)を評価した。結果を表10に示す。

」(段落0081〜0082)

(2)甲第2号証の記載

記載(2a)
「【請求項1】
a)水と、
b)ホエー透過液、ミルク透過液、ラクトース及びそれらの混合物からなる群から選択されたラクトース成分と、
c)ゲランガムと、
d)バターミルクと、
e)乳酸菌と、
f)任意選択で糖と、
g)任意選択で糖以外の感覚刺激製調節剤と
を含む組成物。
・・・
【請求項11】
a)水、b)ラクトース成分、c)ゲランガム及びd)バターミルクを含む混合物に乳酸菌を播種するステップと、発酵させるステップとを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物の調製方法。
【請求項12】
− a)、b)、c)及びd)を混合するステップA)と、
− ステップA)で得られた混合物にe)乳酸菌を播種し、少なくとも30℃の温度で発酵させてpH5未満となるようにするステップB)と、
− 場合により酸を加えてpHを少なくとも0.1単位低下させるステップC)と
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップA)が、
− c)場合によりゲランガムとa)水、又は一部のa)水とを水和させるステップA1)と、
− a)水、b)ラクトース成分、c)ゲランガム及びd)バターミルクを混合するステップA2)と、
− 少なくとも90℃の温度で低温殺菌するステップA3)と、
− 均質化し50℃未満の温度まで冷却するステップA4)と
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも20barsの圧力で撹拌するか、又は動的スムージングを行ない、20mPa.sまでの粘度を有する組成物を得るステップD)をさらに含む、請求項11又は12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項11から14のいずれか一項に記載の方法により得られる組成物の経口摂取用食品としての使用。」(特許請求の範囲)

記載(2b)
「本発明は新規組成物、一般的には乳製品発酵組成物に関する。本組成物は低粘度を示すと同時に改善された安定性を有し得る。本組成物は乳酸菌、特にプロバイオティクスを高含有量で含み得る。また本発明は、このような組成物の製造方法に関する。」(段落0001)

記載(2c)
「本発明の特定の実施形態によれば、ホエー透過液は3%のタンパク質、85%のラクトース、7%のミネラルを含み、脂質は含まない。本発明のさらに詳細な実施形態においては、ホエー透過液は、ARLA Foodsによって提供されているVariolac 850又はARLA Foodsによって提供されているVariolac 836である。」(段落0027)

記載(2d)
「本発明の好ましい実施形態では、ゲランガムは、好ましくは低アシル型ゲランガムである。そのような化合物の例としては、CP Kelcoから販売されているKelcogel Fが挙げられる。
好ましい実施形態では、本組成物は0.01〜0.2重量%、好ましくは0.02〜0.1%のゲランガム、好ましくは低アシル型ゲランガムを含む。
・・・
バターミルクは当業者に公知である。バターミルクは、一般的に粉末形態である。バターミルクは、一般的にバター製造過程でクリームを撹拌した後に得られる残留物である。撹拌によって一般的にリン脂質から構成される脂肪球膜が破壊され、それは主としてバターミルクで回収される。バターミルクは、一般的に以下を含む:
− 一般的に32重量%〜36重量%の乳タンパク質、
− 一般的に40重量%〜52重量%のラクトース、
− 一般的に5〜8重量%の乳脂、
− 一般的に0.05重量%〜0.15重量%のリン脂質。」(段落0036〜0039)

記載(2e)
「特定の実施形態において、ステップA)は、
− c)場合によりゲランガムとa)水、又は一部のa)水とを水和させるステップA1)と、
− a)水、b)ラクトース成分、c)ゲランガム及びd)バターミルクを混合するステップA2)と、
− 少なくとも90℃の温度で低温殺菌するステップA3)と、
− 均質化し50℃未満の温度まで冷却するステップA4)と
を含む。
ステップA)は、混合装置、熱交換器及びホモジナイザーなどの従来の設備を使用して実施することができる。
ステップA)は均質化のステップを含むことができる。これは、好ましくはステップA4)で行なう。このような操作は当業者に公知であり、従来の設備で行なうことができる。均質化は、少なくとも25barsの圧力で行なうことができる。特定の実施形態では、均質化の過程は少なくとも100barsの圧力、好ましくは少なくとも200barsの圧力で行なう。」(段落0059〜0061)

記載(2f)
「発酵中、混合物のpHは細菌による乳酸の産生とともに低下する。発酵終了時のpHは、一般的に5未満であってもよく、好ましくは3.5〜4.5である。」(段落0065)

記載(2g)
「ステップB)又は任意選択のステップC)の後、本方法は、好ましくは、少なくとも20barsの圧力で撹拌するか、又は動的スムージングを行ない、所望の粘度、典型的には20mPa.sまでの粘度の組成物を得る、さらなるステップD)を含む。撹拌操作又は動的スムージングの操作によって、一般的に粘度を低下させる若干の剪断を組成物が受ける。このような操作は当業者に公知であり、従来の適切な設備で操作することができる。ステップD)は、一般的に低温で、例えば1℃〜20℃の温度で行なわれる。
いかなる理論にも束縛されるものではないが、一般的に高圧下での撹拌又は動的スムージングの実施により、低温である程度の剪断を適用すると、組成物内に流体ゲルが形成されるため、20mPa.sまでの低粘度であっても安定性を改善することができると考えられる。」(段落0067〜0068)

記載(2h)
「製品は、0℃〜10℃、好ましくは4℃〜10℃の冷却温度で保存、輸送及び/又は分配することができる。」(段落0070)

記載(2i)
「組成物を調製するための方法を下記に詳述する。別段の定めがない限り、量は、(乾燥物質としての量ではなく)「そのままの」成分の重量%で示している。
・・・
成分
− ホエー透過液はARLA Foodsによって提供されているVariolac 836又はVariolac 850である。
− ゲル化剤はCp Kelcoによって提供されているKelcogel Fゲランガムである。
− バターミルクはARLA Foodsによって提供されているMILEX 500である。
− 「発酵体」は、CNCM I-2494としてCNCMに保存されているストレプトコッカス・サーモフィルス及びラクトバチルス・ブルガリカス、及びビフィドバクテリウム・ラクティス株を含む所有者の乳酸菌発酵体である。
− 「粉乳」はEPI Ingredientsによって提供されているスキムミルク990である。
− 「ラクトース」は、ラクトース含有量が99%のラクトース粉末である、Lactoserumによる市販品である。
− 「相対的収率安定剤」はCpKelcoによって提供されているキサンタンガムのKeltrolである。
調製
本発明による組成物1)は、86.3%の水、3.9%のホエー透過液、0.0675%のゲランガム、1.7%のバターミルク及び8%の糖を混合することにより調製した。上記のプレミックスを45分間水和し、95℃で6分間低温殺菌した。次いで、均質化のステップを200barsで実施し、その後37℃まで冷却のステップを行なった。均質化のステップによって熱処理中に形成された潜在的なタンパク質凝集体のサイズを小さくすることができると考えられる。CNCM I-2494としてCNCMに保存されているストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・ブルガリカス、及びビフィドバクテリウム・ラクティス株を含む乳酸発酵体を0.1%の割合で加え、発酵を37℃で10時間行なった。その後、乳酸を加えてpHを3.7まで低下させた。次いで、50barsの圧力で均質化を行なった。得られた組成物1)を4℃で保存した。
組成物2)〜6)は、上記で詳述した調製と同じ方法で製造した。
【表1】

組成物1)〜6)のそれぞれの粘度、安定性及び口腔内での濃厚さの分析
本発明による組成物の各粘度は、製造日に10℃で、1290s-1の剪断で、Rheomat 180 mobile 1-1を使用して、一測定点を10秒で測定した。下記の表IIにおいて、粘度はmPa.sで示す。
安定性は下記のようにして視覚的に確認した。
− a)500mLのボトルにおいて10日後にセラム相の分離を目視確認することによる。
下記の表IIの「あり」という表現は、試験した組成物がセラム相の分離を示さないことを意味し、言いかえれば、組成物が安定していることを意味する。下記の表IIの「なし」という表現は、試験した組成物がセラム相の分離を示すことを意味し、言いかえれば、組成物が安定していないことを意味する、及び
− b)500mLのボトルにおいて10日後の沈殿を目視確認することによる。
下記の表IIの「あり」という表現は、試験した組成物が沈殿相を示さないことを意味し、言いかえれば、組成物が安定していることを意味する。下記の表IIの「なし」という表現は、試験した組成物が沈殿相を示すことを示し、言いかえれば、組成物が安定していないことを意味する。
口腔内での濃厚さは、8〜14人のトレーニングを積んだ人で構成されている集団において、組成物1)〜6)についてダノンから販売されている評価基準のActimel(登録商標)と比較することにより試験した。下記の表IIの「良好」という表現は、試験した組成物がActimel(登録商標)製品に匹敵する口腔内での濃厚さを有していることを意味する。下記の表IIの「濃厚」という表現は、試験した組成物がActimel(登録商標)製品よりも口腔内で高い濃厚さを有することを意味し、言いかえれば、試験した組成物がActimel(登録商標)製品よりもより濃厚であることを意味する
【表2】

」(段落0074〜0083)

(3)甲第3号証の記載

記載(3a)
「1.3〜4の範囲のpHを有するゲル状物であって、組成物全重量に対して、
糖質5〜20重量%、
脂質0.1〜5重量%、
pH3〜4で凝集しない蛋白質素材2.5〜6重量%、
クエン酸0.2〜3重量%、
アスコルビン酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、グルコン酸、リン酸、フィチン酸およびクエン酸・3Naからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸成分0.2〜1.5重量%、
乳化剤0.01〜0.5重量%、
寒天0.1〜1重量%、および
水65〜90重量%
を含有することを特徴とする総合栄養補給用ゲル状飲料組成物。
2.pH3〜4で凝集しない蛋白質素材が、ホエイ蛋白濃縮物、ホエイ蛋白分離物、脱塩ホエイおよび数平均分子量が500〜10000である蛋白加水分解物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のゲル状飲料組成物。
3.pH3〜4で凝集しない蛋白質素材が、ホエイ蛋白濃縮物およびホエイ蛋白分離物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載のゲル状飲料組成物。
4.酸成分が、グルコン酸および乳酸からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のゲル状飲料組成物。
5.更に、ジェランガム、カラギーナン、ペクチンおよびゼラチンからなる群から選ばれる少なくとも1種のゲル化剤0.05〜0.3重量%を含有する請求項1に記載のゲル状飲料組成物。」(請求の範囲1〜5)

記載(3b)
「ミネラル類(電解質および微量元素)としては、通常のもの、例えば塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、シッフカルシウム、リン酸二カリウム、リン酸一ナトリウム、グリセロリン酸カルシウム、卵殻カルシウム、牛骨粉、ミルクカルシウム、クエン酸鉄、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第二鉄、コハク酸クエン酸鉄ナトリウム、硫酸マンガン、硫酸銅、硫酸亜鉛、ヨウ化ナトリウム、ソルビン酸カリウム、亜鉛、マンガン、銅、ヨウ素、コバルトなどを例示することができる。」(11頁20〜27行)

記載(3c)
「上記各成分の混合操作(乳化操作)は、常温下に実施してもよいが、加温条件を採用して実施するのが好適である。また上記乳化操作は、通常の方法に従い、適当な乳化機、例えばホモミキサー、高圧ホモジナイザーなどを用いて、完全通過方式でもまた循環方式でも実施することができる。」(13頁13〜16行)

(4)甲第4号証の記載

記載(4a)
「【請求項1】
ホエーたんぱく質を含有する乳原料と、ゲル化剤と、増粘剤と、ナトリウム塩類とを含む原料液をゲル化してなることを特徴とするプリン状食品。
【請求項2】
前記ホエーたんぱく質1g当りの、前記ナトリウム塩類由来のナトリウムの含有量が10〜30mgである請求項1記載のプリン状食品。
【請求項3】
前記ナトリウム塩類が、クエン酸三ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、及びピロリン酸ナトリウムからなる群より選択される1種類以上である請求項1または2に記載のプリン状食品。
【請求項4】
前記ゲル化剤が、寒天、カラギーナン、ファーセルラン、ゼラチン、ローメトキシルペクチン、脱アシルジェランガム、及びアルギン酸ナトリウムからなる群より選択される一種類以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載のプリン状食品。
【請求項5】
前記増粘剤が、ローカストビーンガム、グアーガム、タマリンドシードガム及びグルコマンナンからなる群より選択される一種類以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載のプリン状食品。
【請求項6】
前記乳原料が、ホエーパウダー、ホエープロテインアイソレイト(WPI)、及びホエープロテインコンセントレイト(WPC)からなる群より選択される1種類以上を含む請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリン状食品。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載のプリン状食品を製造する方法であって、ホエーたんぱく質を含む乳原料、ゲル化剤、増粘剤、およびナトリウム塩類を含有する原料液を加熱する工程と、前記加熱後の原料液を均質化する工程と、前記均質化後の原料液を冷却する工程を有することを特徴とするプリン状食品の製造方法。」(請求項1〜7)

記載(4b)
「<試験1>
(目的)
この試験は、脱脂粉乳由来のたんぱく質をホエーたんぱく質で置換した時の、好ましい構成成分を検索する目的で実施した。
(試料の調製)
表1に示す配合で、各原料を混合・溶解し、沸騰水浴中で攪拌しながら90℃に加温し、水浴中で一次冷却して80℃にした。続いて均質機(商品名;Homogenizer:三丸機械工業社製)で15MPaの圧力で均質化した後、水浴中で二次冷却して50℃にした。この後、プラスチックカップ(生駒化学社製)に100gづつ充填し、蓋を被せ、冷蔵庫にて10℃で静置冷却してゲル化させることにより試料(No.1〜5)を調製した。」(段落0024)

(5)甲第5号証の記載

記載(5a)
「【請求項1】
タンパク質及び/又はタンパク加水分解物を剪断力のある分散手段で、分散粒子の体積分布のメジアン径が0.1〜10μmになるまで水性液中に分散し、安定剤を加えてさらに混合して原料Aを得、これとジェランガムを含むゲル化剤を加熱溶解した原料Bを混合して、その後、冷却してゲル化することを特徴とするpHが3.0〜4.6である酸性ゲル状食品の製造方法。」(請求項1)

記載(5b)
「上記剪断力のある分散手段としては、公知の技術を用いればよいが、具体的にはホモゲナイザー(例えば、イズミフード社製、HV−0A−1−1.55)、ファインミキサー(例えば、ヤスダファインテ社製、50Lファインミキサー乳化機EMG05−2.2)、TKミキサー(例えば、プライミクス社製、MARKII MODEL2.5)、粉体溶解ポンプ(関西乳機社製、15A)を粉体溶解装置として例示できる。」(段落0021)

記載(5c)
「また、ミネラル類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、乳酸カルシウム等が挙げられる。」(段落0051)

記載(5d)
「[実施例1]
下記表1に示す原料及びその配合量(実施例1は1000g製造した)を水に溶かし、全量を300gとした。これに乳ペプチド30gを添加して卓上攪拌機(東京理科器機社製、マゼラZ−2100)で1200rpmの条件で1分間攪拌した。続いて、大豆多糖類を下記表2に示す終濃度になるように2g〜6g添加して、再び卓上攪拌機で2000rpmの条件で5分間攪拌した。この後、全量を600gになるように調整して、ベース原料を製造した。このベース原料をホモゲナイザー(イズミフード社製、HV−0A−1−1.55)に20MPaの圧力条件で2回かけて、分散させた。この分散させたベース原液は、体積分布のメジアン径の測定に供した。
次に、下記表2に示す終濃度になるようにジェランガム2g〜4gを水に分散させて400gになるように調整した。このゲル化剤原料は、95℃まで加熱し、95℃になったら、分散させたベース原料をゲル化剤原料に混合した。混合したものを90℃になるまで再び加熱し、90℃になったら、スパウト付パウチに充填をした。充填したスパウト付パウチは、口部を90℃以上の湯にどぶ漬けすることで殺菌し、殺菌の後、25℃で15分間水冷して、酸性ゲル状食品を製造した。」(段落0057〜0058)

(6)甲第6号証の記載

記載(6a)
「【請求項1】
ゲル化剤及び総合乳蛋白質を含むゲル状栄養組成物であって、
アミノ酸スコアが80〜100であり、
該組成物中の蛋白質含量が6〜20質量%であり、
ゲルの破断強度が1800〜10000N/m2であり、並びに
該総合乳蛋白質中のカゼインとホエイ蛋白質の比率が83:17〜100:0である、
ことを特徴とするゲル状栄養組成物。」(請求項1)

記載(6b)
「(ゲル状栄養組成物の製造方法)
本発明のゲル状栄養組成物の製造方法は、本発明の目的から逸脱しなければ、特には限定されず一般な方法を使用できる。
例えば、各種原料を水に投入し、プロペラ撹拌しながら加温し充分に溶解させる。ゲル化剤の溶解温度と蛋白質の変性温度を考慮し、ゲル化剤を60℃以上、好ましくは75℃以上、最も好ましくは90℃以上の条件で溶解した後に、70℃以下まで冷却し蛋白質原料を溶解すると良い。最終的に水分調整し、可能であれば均質化を行った方が蛋白質成分の均質性から好ましい。均質化のための機械、条件は特に限定されないが、例えば、高圧ホモジナイザーを用いて、3〜75MPaで均質化する。好ましくは10MPa以上、より好ましくは30MPa以上で、処理回数は2回以上が好ましい。また、菌による腐敗を避けるための加熱滅菌処理を行う必要がある。加熱滅菌の方法は、通常2つの方法が行われる。1つは調合液を短時間で加熱滅菌した後に、無菌的に密封可能容器に充填するUHT・無菌充填法であり、もう1つは、密封可能容器に充填した後に長時間加熱滅菌するレトルト法であり、そのいずれでも構わない。
一般的にはレトルト殺菌で製造されるが、レトルト法は長時間加熱されるため、熱によるゲル状栄養組成物へのダメージが過酷であり、風味の悪化や分離や凝集が起きたりゲルが硬くなったりしやすい。しかし、本発明のゲル状栄養組成物は、レトルト法によっても、良質な蛋白質を高濃度で含み、適切なゲルの破断強度であり、かつ風味が良好なゲル状栄養組成物を得ることができる。
また、レトルト法は、UHT・無菌充填法とは異なり、滅菌後に均質化処理を行うことができないため、凝集物や沈殿物を再分散できず、レトルト法の方が良好な品質を保つために高度な技術が求められる。レトルト滅菌条件は、滅菌されうる条件ならいずれでも構わないが、一般的に110〜130℃で1分〜2時間である。本発明の効果を発揮し易いレトルト滅菌条件は、110〜120℃で15分〜2時間であり、さらに発揮し易い条件は、110〜115℃で30分〜1時間である。また、加熱による局所的な変質や焦げを抑制するため、回転または揺動または摺動させながら滅菌することが望まれる。」(段落0037)

記載(6c)
「(実施例4の製造及び評価)
表1に記載の配合量に従い、実施例2と同様の製造方法により、実施例4のゲル状栄養組成物を製造した。なお、実施例2とは異なり、寒天ではなく、脱アシル型ジェランガムを使用した。
実施例4の評価の結果を表1に示す。
蛋白質含量は9質量%であり、アミノ酸スコアは100である。また風味は5名全員が良好(○)と評価し、状態(外観)も分離や凝集が無く均一な状態(○)であった。ゲルの破断強度は4047N/m2であり、破断後の応力低下率も40%と嚥下性が良好な飲食に適した物性であった。よって、総合乳蛋白質の量及びゲル化剤の種類を変えても良好な栄養組成物が得られた。」(段落0053)

(7)甲第7号証の記載

記載(7a)
「【請求項1】 溶液に未水和増粘剤を添加した後、500kg/cm2以上の圧力で均質化し、該未水和増粘剤を溶液中に水和させることを特徴とする澱粉粒子もしくはココア粒子を含有する高粘度食品の製法。
【請求項2】 溶液に未水和増粘剤を添加した後、500kg/cm2以上の圧力で均質化し、該未水和増粘剤を溶液中に水和させることを特徴とする澱粉粒子もしくはココア粒子を含有する高粘度食品の沈殿防止方法。」(請求項1〜2)

記載(7b)
「次に、上記溶液を、500kg/cm2以上の圧力で均質化する。均質化の圧力は、500kg/cm2以上、好ましくは700〜1500kg/cm2にする。圧力が500kg/cm2未満であると、均質化が不十分となる。この均質化により、溶液の見掛け粘度を40cP(20℃)以上とすることが好適である。見掛け粘度が40cP未満であると、食品成分の沈殿防止効果が得られにくい。なお、見掛け粘度とは、B型粘度計(例えば、ビスメトロン粘度計VDA−L(芝浦システム))にて低粘度用アダプター(回転数6rpm、40秒)を用い、20℃の試料を測定した数値である。」(段落0015)

記載(7c)
「また、上記均質化に使用する装置は、図2に示すような高速ホモミキサーや、図3に示すようなマントンゴーリン、図1に示すような液体流路が分岐後合流する機構となった均質機等が挙げられるが、特に図1に示すような機構の均質機を用いると、乳化安定性の点で更に好適である。」(段落0017)

(8)甲第8号証の記載

記載(8a)
「【請求項1】
多糖類の分散液を一対のノズルから70〜250MPaの高圧でそれぞれ噴射させると共に、その噴射流を互いに衝突させて多糖類を粉砕する方法であって、上記一対のノズルから噴射される多糖類分散液の高圧噴射流の角度を、噴射流同士が各々のノズル出口より先方の一点で適正な角度において衝合衝突するように調製する、及び/又は、高圧流体の噴射回数を調整して粉砕回数を調整することにより、平均粒子長が1/4以下に粉砕された多糖類の重合度低下を10%未満とすることを特徴とする多糖類の湿式粉砕方法。」(請求項1)

記載(8b)
「本発明は、セルロース、キチン、キトサン又はこれらの誘導体等の多糖類の重合度の低下をほとんど起こすことなく、分子が水中に分散した状態に近い程度まで微細に粉砕分散させることができる多糖類の湿式粉砕方法に関する。」(段落0001)

記載(8c)
「本発明の多糖類の湿式粉砕方法によれば、多糖類の構造が変化することなく、粉砕に伴う重合度の低下を最小限にしつつ、多糖類の微細粉砕品を得ることができるため、セルロースをはじめとする多糖類の成形加工が容易となる。」(段落0009)

記載(8d)
「本発明の多糖類の湿式粉砕方法は、多糖類の分散液を一対のノズルから70〜250MPaの高圧でそれぞれ噴射させると共に、その噴射流を互いに衝突させて多糖類を粉砕する方法であって、上記一対のノズルから噴射される多糖類分散液の高圧噴射流の角度を、噴射流同士が各々のノズル出口より先方の一点で適正な角度において衝合衝突するように調製する、及び/又は、高圧流体の噴射回数を調整して粉砕回数を調整するもので、本発明の粉砕方法によれば、平均粒子長が1/4以下又は10μmにまで粉砕する際において、噴射流同士の衝合角度と粉砕回数を可変とすることにより、多糖類の重合度の低下を10%未満に抑えることができる。」(段落0017)

記載(8e)
「本発明の粉砕方法に用いる装置としては、高圧をもってバルブの隙間から処理液を噴射させる高圧式ホモジナイザーが挙げられる。例えば、三和機械社製の「ホモジナイザー」、スギノマシン(株)製の「アルテマイザーシステム」、みずほ工業社製の「マイクロフルイダイザー」、ゴーリン社製の高圧ホモジナイザー等が挙げられるが、特にアルティマイザーシステムが好ましく、特開平10−337457号公報に記載されているような噴流液体の衝合角度(図1においてθ)が変えられるチャンバーを有する装置が好ましい。」(段落0019)

(9)甲第9号証の記載

記載(9a)
「1.緒言
圧力式乳化機は安定した乳化が得られるため,食品,化学,医薬など幅広い分野の乳化工程で利用されている.
Walstraは,圧力式乳化機では,せん断・乱流・キャビテーションが同時に引き起こされ,乳化作用に対し重要度が高いものから,せん断・乱流・キャビテーションをランク付けすることは非常に難しいと述べている[1].」(215頁左下欄1〜8行)

(10)甲第10号証の記載

記載(10a)
「ここで、一般的な液状経腸栄養剤には、蛋白質の原料として、MPCや、カゼイン、大豆蛋白質等が使用されているが、蛋白質の原料の多くは、酸性側に等電点を有するものである。こうした蛋白質原料は、酸性域では、蛋白質は凝集や、沈殿等が生じてしまう。そのため、現在、市場に出回っている液状経腸栄養剤の多くはpH6.5〜7.5程度の中性タイプのものである。」(段落0003)

記載(10b)
「本発明者は、上記問題点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、蛋白質と有機酸の配合比率を設定することにより上記課題が解決できることを見出して本発明を完成した。すなわち、本発明は次の酸性液状栄養剤に係る。
(1)糖質、蛋白質源、脂質、および有機酸を含む酸性液状栄養剤であって、前記有機酸の配合比率が、蛋白質源1部に対して、0.15〜0.45部である酸性液状栄養剤。」(段落0013〜0014)

記載(10c)
「(実施例1〜11)
以下に6000g仕込み時の調合方法を記す。各原料の配合量は、表1−1および表1−2に示す通りである。10Lのステンレスバケツに調合水2000gを計量し、湯浴にて50〜60℃に加温した。次いで、消泡剤(アワブレークG−109(太陽化学株式会社製))、ホエイ蛋白質(WPC392(Fonterra社製))、大豆蛋白(プロリーナ(登録商標)900(不二製油株式会社製))、糖質であるデキストリン(TK−16(松谷化学工業株式会社製))、および上白糖を添加した。当該溶液に、脂質、乳化剤であるグリセリン脂肪酸エステル、および大豆多糖類(ソヤファイブ−S−DN(不二製油株式会社製))、ペクチンを添加し、混合した。さらに、ビタミンとして、水溶性ビタミンミックスおよび脂溶性ビタミンミックス、ミネラルとして、グルコン酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムおよびクエン酸三カリウム、酵母として、酵母ミックス、有機酸として、クエン酸およびリンゴ酸、その他に、アスコルビン酸、香料等を適宜添加して撹拌した。得られた混合液が6000gとなるまで水を添加し、均一な状態となるまで溶解分散させた。」(段落0093)

記載(10d)
「(表1−2)

」(段落0097)

記載(10e)
「(5)沈殿量は、酸性液状栄養剤40gを50mLファルコンコニカルチューブ(ファルコン社製)に量りとり、遠心分離機 日立CF9RX(日立社製)で3000rpm、10分間、遠心分離を行った後、上澄みを除去し、チューブに残った沈殿物の重量を測定した。
○:沈殿物の量が2.0g以下
△:沈殿物の量が4.0g未満
×:沈殿物の量が4.0g以上」(段落0106)

記載(10f)
「(表3)


」(段落0109)

3 当審の判断
(1)申立ての理由1−1、1−2、2−1及び2−2について
申立ての理由1−1及び1−2は、訂正前の請求項1、2、5、6、9、10に係る発明に対するものであり、申立ての理由2−1及び2−2は、訂正前の請求項1、2、9〜11に係る発明に対するものであるところ、本件訂正請求により、訂正前の請求項1、2、5、6は削除され、訂正前の請求項9〜11は、それぞれ訂正前の請求項7の発明特定事項を含むものとなったため、これらの申立ての理由には、理由がない。

(2)申立ての理由3について
ア 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、タンパク質及びジェランガム等の酸性多糖類をpH2.5〜6の酸性条件下で併用する場合に生じる凝集物の形成を抑制する方法であって、特定のカラギナンを添加する方法が記載されており(記載(1a)、(1b)、(1c))、該タンパク質としては、例えば、乳性タンパク質、大豆タンパク質が挙げられることが記載されている(記載(1d))。そして、実施例として、水に、砂糖10質量部、脱脂粉乳3質量部、ゲル化剤として脱アシル型ジェランガム0.2質量部及び安定剤としてιカラギナン0.6質量部を添加し、80℃で10分間加熱溶解し、色素0.08質量部及びクエン酸を、クエン酸はpH3.8となるまで添加し、全量が100質量部となるようにイオン交換水で補正したものについて、15MPaで均質化処理を行った後、容器に充填し、85℃で30分間殺菌した後、冷却することでタンパク質含有酸性ゲル状食品を調製したことが記載されている(記載(1e)、(1f))。
よって、甲第1号証には、
「水に、砂糖10質量部、脱脂粉乳3質量部、ゲル化剤として脱アシル型ジェランガム0.2質量部及び安定剤としてιカラギナン0.6質量部を添加し、80℃で10分間加熱溶解し、色素0.08質量部及びクエン酸を、クエン酸はpH3.8となるまで添加し、全量が100質量部となるようにイオン交換水で補正したものについて、15MPaで均質化処理を行った後、容器に充填し、85℃で30分間殺菌した後、冷却する、タンパク質含有酸性ゲル状食品の製造方法。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明7について
(ア)対比
甲1発明の「タンパク質含有酸性ゲル状食品」は、ゲル化剤として脱アシル型ジェランガムを用いたものであるから、「タンパク質を含有した脱アシル型ジェランガムゲル」に相当し、15MPaでの均質化処理は、「加圧」処理に相当する。甲1発明の「水に、砂糖10質量部、脱脂粉乳3質量部、ゲル化剤として脱アシル型ジェランガム0.2質量部及び安定剤としてιカラギナン0.6質量部を添加し、80℃で10分間加熱溶解し、色素0.08質量部及びクエン酸を、クエン酸はpH3.8となるまで添加し、全量が100質量部となるようにイオン交換水で補正したもの」は、タンパク質を含むものであることが技術常識である脱脂粉乳を含むものであり、その組成から、水に少なくとも砂糖及びクエン酸が溶解した溶液であることは明らかであるから、「脱アシル型ジェランガム及びタンパク質を含有するpH3.8の溶液」である。そして、甲1発明は、「溶液」から「タンパク質含有酸性ゲル状食品」が製造されるものであるから、ゲル化工程を含むものである。
本件発明7と甲1発明を対比すると、「タンパク質を含有した脱アシル型ジェランガムゲルの製造方法であって、脱アシル型ジェランガム及びタンパク質を含有するpH3.0〜4.6の溶液を加圧する工程、ゲル化工程、及び冷却する工程を有する、製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1−1:本件発明7は、ゲル化工程であって、溶液を加圧し、溶液を50MPa以上の圧力で処理し、そして以下の1)〜5)のうち少なくとも1つの処理をするゲル化工程:1)キャビテーションを発生する;2)摩擦力を発生する;3)前記溶液に衝突を起こす;4)前記脱アシル型ジェランガム及びタンパク質に剪断力を加える;5)前記脱アシル型ジェランガム及びタンパク質を微細化される、を有し、そのゲル化工程後の溶液を、5℃以上50℃以下となるように冷却する工程を含むことを特定しているのに対して、甲1発明は、溶液を15MPaで均質化処理を行い、冷却する点。

(イ)相違点の判断
相違点1−1について検討する。
甲第1号証には、溶液の処理圧力を50MPa以上とすることは、記載も示唆もされていないから、甲1発明において、溶液の処理圧力を15MPaから50MPa以上とすることの動機付けはない。
甲第7号証には、溶液に未水和増粘剤を添加した後、500kg/cm2以上の圧力で均質化し、該未水和増粘剤を溶液中に水和させる、澱粉粒子もしくはココア粒子を含有する高粘度食品の沈殿防止方法が記載されており(記載(7a))、均質化の圧力は好ましくは700〜1500kg/cm2(68.6〜147MPa)であることが記載されているが(記載(7b))、甲1発明は、澱粉粒子を含有するものでもココア粒子を含有するものでもないから、甲1発明において、甲第7号証に記載の均質化の圧力を適用する動機付けはない。
甲第8号証には、多糖類の分散液を一対のノズルから70〜250MPaの高圧でそれぞれ噴射させると共に、その噴射流を互いに衝突させて多糖類を粉砕する方法が記載されており、当該方法により、多糖類の構造が変化することなく、粉砕に伴う重合度の低下を最小限にしつつ、多糖類の微細粉砕品を得ることができるため、多糖類の成形加工が容易となることが記載されているが(記載(8a)、(8b)、(8c)、(8d))、甲1発明は、ゲル状食品を製造するものであって、成形加工を行うものでもないから、甲1発明において、甲第8号証に記載の70〜250MPaの高圧での処理を適用する動機付けはない。
また、甲第3〜6、9号証にも、甲1発明において、溶液の処理圧力を50MPa以上とすることの動機付けとなる記載は見当たらない。
たとえ、甲1発明において、溶液の処理圧力を50MPa以上とすることが容易に想到し得たものであったとしても、溶液の処理圧力を50MPa以上とすることにより、タンパク質及び脱アシル型ジェランガムを含む溶液をゲル化することができるという本件発明の効果は、甲第1号証、甲第3〜9号証の記載から、当業者が予測し得た範囲のものではない。
したがって、本件発明7は、甲1発明、並びに甲第3〜9号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明13について
(ア)対比
本件発明13と甲1発明を対比すると、両者は「タンパク質を含有した脱アシル型ジェランガムゲルの製造方法であって、脱アシル型ジェランガム及びタンパク質を含有するpH3.0〜4.6の溶液を加圧する工程、ゲル化工程、及び冷却する工程を有する、製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1−2:本件発明13は、溶液を高圧ホモジナイザー、高圧噴射装置又は湿式微粒化装置を用いて処理し、溶液を50MPa以上の圧力で処理する、ゲル化工程を有し、そのゲル化工程後の溶液を、5℃以上50℃以下となるように冷却する工程を含むことを特定しているのに対して、甲1発明は、溶液を15MPaで均質化処理を行い、冷却する点。

(イ)相違点の判断
相違点1−2について検討する。
甲第1号証には、溶液を高圧ホモジナイザー、高圧噴射装置、湿式微粒化装置を用いて処理することや、溶液の処理圧力を50MPa以上とすることは、記載も示唆もされていないから、甲1発明において、これらの装置を用いることや、溶液の処理圧力を15MPaから50MPa以上とすることの動機付けはない。
甲第7号証には、溶液に未水和増粘剤を添加した後、500kg/cm2以上の圧力で均質化し、該未水和増粘剤を溶液中に水和させる、澱粉粒子もしくはココア粒子を含有する高粘度食品の沈殿防止方法が記載されており(記載(7a))、均質化の圧力は好ましくは700〜1500kg/cm2(68.6〜147MPa)であることが記載されており(記載(7b))、均質化に高速ホモミキサーを用いることも記載されているが(記載(7c))、甲1発明は、澱粉粒子を含有するものでもココア粒子を含有するものでもないから、甲1発明において、甲第7号証に記載の均質化の圧力を適用する動機付けはない。
甲第8号証には、多糖類の分散液を一対のノズルから70〜250MPaの高圧でそれぞれ噴射させると共に、その噴射流を互いに衝突させて多糖類を粉砕する方法が記載されており、当該方法により、多糖類の構造が変化することなく、粉砕に伴う重合度の低下を最小限にしつつ、多糖類の微細粉砕品を得ることができるため、多糖類の成形加工が容易となることが記載されており(記載(8a)、(8b)、(8c)、(8d))、粉砕に高圧式ホモジナイザーを用いることも記載されているが(記載(8e))、甲1発明は、ゲル状食品を製造するものであって、成形加工を行うものでもないから、甲1発明において、甲第8号証に記載の70〜250MPaの高圧での処理を適用する動機付けはない。
また、甲第3〜6、9号証にも、甲1発明において、溶液の処理圧力を50MPa以上とすることの動機付けとなる記載は見当たらない。
たとえ、甲1発明において、溶液の処理圧力を50MPa以上とすることが容易に想到し得たものであったとしても、溶液の処理圧力を50MPa以上とすることにより、タンパク質及び脱アシル型ジェランガムを含む溶液をゲル化することができるという本件発明の効果は、甲第1号証、甲第3〜9号証の記載から、当業者が予測し得た範囲のものではない。
したがって、本件発明13は、甲1発明、並びに甲第3〜9号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明8〜12、14〜22について
本件発明8〜12、14〜22は、いずれも本件発明7又は本件発明13を引用し、さらに限定するものであるから、本件発明7又は本件発明13と同様に、甲1発明、並びに甲第3〜9号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ 小括
以上のとおりであるから、申立ての理由3には理由がない。

(3)申立ての理由4について
ア 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証には、水、ラクトース成分、ゲランガム及びバターミルクを含む混合物に乳酸菌を播種するステップと、発酵させるステップとを含む、水と、ラクトース成分と、ゲランガムと、バターミルクと、乳酸菌とを含む組成物の調製方法が記載されており、均質化し50℃未満の温度まで冷却するステップを含む態様も記載されている(記載(2a)、(2c)、(2g))。また、発酵中、混合物のpHは細菌による乳酸の産生とともに低下し、発酵終了時のpHは好ましくは3.5〜4.5であること(記載(2f))、製品は、0℃〜10℃、好ましくは4℃〜10℃の冷却温度で保存、輸送及び/又は分配することができること(記載(2h))、ゲランガムは、好ましくは低アシル型ゲランガムであり、そのような化合物の例としては、CP Kelcoから販売されているKelcogel Fが挙げられることが記載されており(記載(2d))、実施例として、水86.3重量%、ホエー透過液3.9重量%、Kelcogel Fゲランガム0.0675重量%、バターミルク1.7重量%及び糖8重量%を混合することにより組成物を調製し、45分間水和し、95℃で6分間低温殺菌し、200barで均質化を行い、その後37℃まで冷却し、CNCM I−2494としてCNCMに保存されているストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・ブルガリカス、及びビフィドバクテリウム・ラクティス株を含む乳酸発酵体を0.1重量%の割合で加え、発酵を37℃で10時間行い、その後、乳酸を加えてpHを3.7まで低下させ、次いで、50barの圧力で均質化を行い、得られた組成物1を4℃で保存したことが記載されており、得られた組成物1が、タンパク質含有量が0.7質量%であり、粘度が11mPa.sであり、口腔内で良好な濃厚さを有していることが記載されている(記載(2i))。
よって、甲第2号証には、
「水86.3重量%、ホエー透過液3.9重量%、低アシル型ゲランガム0.0675重量%、バターミルク1.7重量%及び糖8重量%を混合することにより組成物を調製し、45分間水和し、95℃で6分間低温殺菌し、200barで均質化を行い、その後37℃まで冷却し、CNCM I−2494としてCNCMに保存されているストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・ブルガリカス、及びビフィドバクテリウム・ラクティス株を含む乳酸発酵体を0.1重量%の割合で加え、発酵を37℃で10時間行い、その後、乳酸を加えてpHを3.7まで低下させ、次いで、50barの圧力で均質化を行い、4℃で保存した、経口摂取用食品の製造方法。」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。

イ 本件発明7について
(ア)対比
甲2発明の「水86.3重量%、ホエー透過液3.9重量%、低アシル型ゲランガム0.0675重量%、バターミルク1.7重量%及び糖8重量%を混合することにより組成物を調製し、45分間水和し、95℃で6分間低温殺菌し、200barで均質化を行い、その後37℃まで冷却し、CNCM I−2494としてCNCMに保存されているストレプトコッカス・サーモフィルス、ラクトバチルス・ブルガリカス、及びビフィドバクテリウム・ラクティス株を含む乳酸発酵体を0.1重量%の割合で加え、発酵を37℃で10時間行い、その後、乳酸を加えてpHを3.7まで低下させ」て得られた組成物は、水に少なくともホエー透過液に含まれる成分、糖が溶解したものであって、低アシル型ゲランガムは脱アシル型ジェランガムのことであり、記載(2c)及び(2d)に記載のとおり、ホエー透過液及びバターミルクはタンパク質を含むから、「脱アシル型ジェランガム及びタンパク質を含有するpH3.7の溶液」に相当する。そして、甲2発明の「50barの圧力で均質化」は、加圧する工程であり、甲2発明は、「発酵を37℃で10時間行」った後から、4℃で保存するまでの間に、冷却が行われているものであるから、甲2発明は冷却する工程を含むものである。
本件発明7と甲2発明を対比すると、両者は「タンパク質及び脱アシル型ジェランガムを含む組成物の製造方法であって、脱アシル型ジェランガム及びタンパク質を含有するpH3.0〜4.6の溶液を加圧する工程、冷却する工程を含む、製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点2−1:本件発明7は、ゲル化工程であって、溶液を加圧し、溶液を50MPa以上の圧力で処理し、そして以下の1)〜5)のうち少なくとも1つの処理をするゲル化工程:1)キャビテーションを発生する;2)摩擦力を発生する;3)前記溶液に衝突を起こす;4)前記脱アシル型ジェランガム及びタンパク質に剪断力を加える;5)前記脱アシル型ジェランガム及びタンパク質を微細化される、を有し、そのゲル化工程後の溶液を、5℃以上50℃以下となるように冷却する工程を含み、ゲルを製造することを特定しているのに対して、甲2発明は、溶液を50bar(5MPa)で均質化処理を行い、冷却して経口摂取用食品を製造している点。

(イ)相違点の判断
相違点2−1について検討する。
甲第2号証には、均質化を少なくとも25bar(2.5MPa)で行うことができ、好ましくは少なくとも200bar(20MPa)で行うことが記載されているが(記載(2e))、50MPa以上もの高圧で均質化を行うことは記載されておらず、均質化の目的で50MPa以上の圧力で処理することが本件出願時の技術常識であるとも認められないから、甲2発明において、均質化の圧力を50MPa以上とする動機付けはない。
甲第7号証には、溶液に未水和増粘剤を添加した後、500kg/cm2以上の圧力で均質化し、該未水和増粘剤を溶液中に水和させる、澱粉粒子もしくはココア粒子を含有する高粘度食品の沈殿防止方法が記載されており(記載(7a))、均質化の圧力は好ましくは700〜1500kg/cm2(68.6〜147MPa)であることが記載されているが(記載(7b))、甲2発明は、澱粉粒子を含有するものでもココア粒子を含有するものでもないから、甲2発明において、甲第7号証に記載の均質化の圧力を適用する動機付けはない。
甲第8号証には、多糖類の分散液を一対のノズルから70〜250MPaの高圧でそれぞれ噴射させると共に、その噴射流を互いに衝突させて多糖類を粉砕する方法が記載されており、当該方法により、多糖類の構造が変化することなく、粉砕に伴う重合度の低下を最小限にしつつ、多糖類の微細粉砕品を得ることができるため、多糖類の成形加工が容易となることが記載されているが(記載(8a)、(8b)、(8c)、(8d))、甲2発明は、多糖類の成形加工を行うものでもないから、甲2発明において、甲第8号証に記載の70〜250MPaの高圧での処理を適用する動機付けはない。
また、甲第3〜6、9号証にも、甲2発明において、溶液の処理圧力を50MPa以上とすることの動機付けとなる記載は見当たらない。
たとえ、甲2発明において、溶液の均質化を行う処理圧力を50MPa以上とすることが容易に想到し得たものであったとしても、溶液の処理圧力を50MPa以上とすることにより、タンパク質及び脱アシル型ジェランガムを含む溶液をゲル化することができるという本件発明の効果は、甲第2号証、甲第3〜9号証の記載から、当業者が予測し得た範囲のものではない。
したがって、本件発明7は、甲2発明、並びに甲第3〜9号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明13について
(ア)対比
本件発明13と甲2発明を対比すると、両者は「タンパク質及び脱アシル型ジェランガムを含む組成物の製造方法であって、脱アシル型ジェランガム及びタンパク質を含有するpH3.0〜4.6の溶液を加圧する工程、冷却する工程を含む、製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点2−2:本件発明13は、溶液を高圧ホモジナイザー、高圧噴射装置又は湿式微粒化装置を用いて処理し、溶液を50MPa以上の圧力で処理する、ゲル化工程を有し、そのゲル化工程後の溶液を、5℃以上50℃以下となるように冷却する工程を含み、ゲルを製造することを特定しているのに対して、甲2発明は、溶液を50bar(5MPa)で均質化処理を行い、冷却して経口摂取用食品を製造している点。

(イ)相違点の判断
相違点2−2について検討する。
甲第2号証には、均質化を少なくとも25bar(2.5MPa)で行うことができ、好ましくは少なくとも200bar(20MPa)で行うことが記載されているが(記載(2e))、50MPa以上もの高圧で均質化を行うことは記載されておらず、均質化の目的で50MPa以上の圧力で処理することが、本件出願時の技術常識であるとも認められないから、甲2発明において、均質化の圧力を50MPa以上とする動機付けはない。
甲第7号証には、溶液に未水和増粘剤を添加した後、500kg/cm2以上の圧力で均質化し、該未水和増粘剤を溶液中に水和させる、澱粉粒子もしくはココア粒子を含有する高粘度食品の沈殿防止方法が記載されており(記載(7a))、均質化の圧力は好ましくは700〜1500kg/cm2(68.6〜147MPa)であることが記載されているが(記載(7b))、甲2発明は、澱粉粒子を含有するものでもココア粒子を含有するものでもないから、甲2発明において、甲第7号証に記載の均質化の圧力を適用する動機付けはない。
甲第8号証には、多糖類の分散液を一対のノズルから70〜250MPaの高圧でそれぞれ噴射させると共に、その噴射流を互いに衝突させて多糖類を粉砕する方法が記載されており、当該方法により、多糖類の構造が変化することなく、粉砕に伴う重合度の低下を最小限にしつつ、多糖類の微細粉砕品を得ることができるため、多糖類の成形加工が容易となることが記載されているが(記載(8a)、(8b)、(8c)、(8d))、甲2発明は、多糖類の成形加工を行うものでもないから、甲2発明において、甲第8号証に記載の70〜250MPaの高圧での処理を適用する動機付けはない。
また、甲第3〜6、9号証にも、甲2発明において、溶液の処理圧力を50MPa以上とすることの動機付けとなる記載は見当たらない。
たとえ、甲2発明において、溶液の均質化を行う処理圧力を50MPa以上とすることが容易に想到し得たものであったとしても、溶液の処理圧力を50MPa以上とすることにより、タンパク質及び脱アシル型ジェランガムを含む溶液をゲル化することができるという本件発明の効果は、甲第2号証、甲第3〜9号証の記載から、当業者が予測し得た範囲のものではない。
したがって、本件発明13は、甲2発明、並びに甲第3〜9号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 本件発明8〜12、14〜22について
本件発明8〜12、14〜22は、いずれも本件発明7又は本件発明13を引用し、さらに限定するものであるから、本件発明7又は本件発明13と同様に、甲2発明、並びに甲第3〜9号証に記載の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

オ 小括
以上のとおりであるから、申立ての理由4には理由がない。

(4)申立ての理由5について
ア 当審の判断
取消理由では、サポート要件違反の申立ての理由を採用しなかった訂正前の請求項7〜8に係る発明が、訂正後の請求項7〜22に係る発明(本件発明7〜22)に対応する。
上記第4 2で述べたとおり、本件発明7〜22は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

イ 申立人の主張について
(ア)ゲル化工程における装置の種類について
申立人は、異議申立書において、実施例で用いられたスターバーストやシステマイザーと呼ばれる高圧噴射装置や湿式微粒化装置ではない、高圧ホモジナイザーを用いてゲル化を試みた場合に、本件発明にかかるゲルが得られるかは不明である旨主張している。
しかしながら、上記第4 2で述べたとおり、装置の種類の特定が無くても、当業者は、実施例で用いられた70〜280MPaに近い圧力である50MPa以上の圧力で加圧処理されれば、タンパク質を含んだジェランガムゲルを生成することができるであろうことを認識できるから、上記主張は採用できない。

(イ)酸沈殿を起こす条件設定の場合について
申立人は、異議申立書において、甲第10号証では、「大豆蛋白質源1部に対して有機酸たるクエン酸の配合比率を0.15〜0.45部とすることにより、酸性域において大豆蛋白質が沈殿しない」ことが実証されていることから、本件明細書の実施例は、酸沈殿を起こさない条件設定がなされたものであり、酸沈殿を起こす条件設定の下で、本件発明にかかるゲルが得られるかは不明である旨主張している。
しかしながら、本件の発明の詳細な説明の段落0003に、「ジェランガムゲルにタンパク質を含有させるためには、一般に、カルシウムイオンを含有しない水性溶媒に脱アシル型ジェランガムを分散させ、90℃以上に加熱溶解した後、別途調整したカルシウムイオンを含むタンパク質溶液と混合し、90℃程度に再加熱し、30〜40℃に冷却しゲル化させるという方法が用いられている(特許文献1参照)。このとき、タンパク質の最終濃度は、多くても4〜7%であって、また、その場合でも大豆多糖類などの安定剤を添加して、ジェランガムとタンパク質との反応を抑制する必要がある。また、タンパク質とジェランガムを別々に加熱するのではなく、あらかじめ混合してから加熱し、冷却した場合も、タンパク質とジェランガムが反応し、ゲル化が阻害される。」との記載があることからも明らかなように、タンパク質とジェランガムの反応は、ジェランガムのゲル化を阻害するものであるところ、申立人のいう「酸沈殿を起こす条件設定」では、タンパク質は酸沈殿を起こし、タンパク質とジェランガムの反応は少なくなり、むしろジェランガムのゲル化を阻害する要素が減るのであるから、本件発明にかかるゲルを得やすくなると考えられる。よって、上記主張は採用できない。

(ウ)カルシウム塩を含む態様について
申立人は、異議申立書において、本件の発明の詳細な説明では、実施例として、カルシウム塩を含む態様であって、pH3.0〜4.6のものの記載がないことから、カルシウム塩を含み、且つpH3.0〜4.6の場合に、本件発明にかかるゲルが得られるかは不明である旨主張している。
しかしながら、本件の発明の詳細な説明の段落0020の「ジェランガム及びタンパク質を含有する溶液のpHは特に限定されないが、ジェランガムは酸性側でゲル化しやすいためpH1.0以上7.0以下が好ましく、・・・pH3.0以上4.6以下がさらに好ましく、pH3.0以上4.0以下が最も好ましい。」との記載からも明らかなように、pH3.0以上4.6以下というのは、ジェランガムのゲル化のために好ましい条件であるから、カルシウム塩を含み且つpH3.0〜4.6の実施例の記載が無くても、カルシウム塩を含む態様であってもpH3.0以上4.6とした場合に、本件発明にかかるゲルが得られるであろうことは、当業者が把握できることである。よって、上記主張は採用できない。

ウ 小括
以上のとおり、申立ての理由5には理由がない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項7〜22に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項7〜22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件請求項1〜6は、本件訂正請求により、削除されたため、請求項1〜6に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなり、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【書類名】特許請求の範囲
【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】(削除)
【請求項7】
タンパク質を含有した脱アシル型ジェランガムゲルの製造方法であって、
脱アシル型ジェランガム及びタンパク質を含有するpH3.0〜4.6の溶液を、加圧し、そして以下の1)〜5)のうち少なくとも1つの処理をする、ゲル化工程:
1)キャビテーションを発生する;
2)摩擦力を発生する;
3)前記溶液に衝突を起こす;
4)前記脱アシル型ジェランガム及びタンパク質に剪断力を加える;
5)前記脱アシル型ジェランガム及びタンパク質を微細化される、
と、
5℃以上50℃以下になるように、前記ゲル化工程後の溶液を冷却する工程を含み、
前記ゲル化工程において、前記溶液を50MPa以上の圧力で処理する、製造方法。
【請求項8】
前記ゲル化工程において、前記溶液を70MPa以上の圧力で処理する、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ゲル化工程後の溶液の温度が、100℃以上にならないように、前記ゲル化工程を行う、請求項7または8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ジェランガム及びタンパク質を含有する溶液中のジェランガム濃度が0.001〜4.00質量%である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記タンパク質がホエイタンパク質又は大豆タンパク質である、請求項7〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記タンパク質が、前記脱アシル型ジェランガムゲル中、8質量%以上〜40質量%含まれる、請求項7〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
タンパク質を含有した脱アシル型ジェランガムゲルの製造方法であって、
脱アシル型ジェランガム及びタンパク質を含有するpH3.0〜4.6の溶液を、高圧ホモジナイザー、高圧噴射装置又は湿式微粒化装置を用いて処理する、ゲル化工程と、
5℃以上50℃以下になるように、前記ゲル化工程後の溶液を冷却する工程を含み、
前記ゲル化工程において、前記溶液を50MPa以上の圧力で処理する、製造方法。
【請求項14】
前記溶液がカリウム塩またはカルシウム塩を含む、請求項7又は13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ゲル化工程後の溶液にカリウム塩またはカルシウム塩を添加する工程を含む、請求項7、又は13に記載の製造方法。
【請求項16】
前記溶液を前記ゲル化工程前に加熱しないことを特徴とする、請求項7、13〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記溶液を前記ゲル化工程前に90℃以上に加熱しないことを特徴とする、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記ゲル化工程において、前記溶液を70MPa以上の圧力で処理する、請求項13〜17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記ゲル化工程後の溶液の温度が、100℃以上にならないように、前記ゲル化工程を行う、請求項13〜18のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記ジェランガム及びタンパク質を含有する溶液中のジェランガム濃度が0.001〜4.00質量%である、請求項13〜19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項21】
前記タンパク質がホエイタンパク質又は大豆タンパク質である、請求項13〜20のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項22】
前記タンパク質が、前記脱アシル型ジェランガムゲル中、8質量%以上〜40質量%含まれる、請求項13〜21のいずれか1項に記載の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照
異議決定日 2022-03-28 
出願番号 P2015-177610
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 113- YAA (A23L)
P 1 651・ 857- YAA (A23L)
P 1 651・ 851- YAA (A23L)
P 1 651・ 537- YAA (A23L)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 関 美祝
吉岡 沙織
登録日 2020-10-09 
登録番号 6775930
権利者 森永製菓株式会社
発明の名称 タンパク質を含んだジェランガムゲル及びその製造方法  
代理人 一色国際特許業務法人  
代理人 一色国際特許業務法人  

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