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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G01M 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G01M |
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管理番号 | 1386123 |
総通号数 | 7 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-07-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-06-17 |
確定日 | 2022-04-08 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6804174号発明「タイヤ検査装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6804174号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−4〕について訂正することを認める。 特許第6804174号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6804174号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、2017年(平成29年)9月15日を国際出願日として出願され、令和2年12月4日にその特許権の設定登録がされ、同月23日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和3年6月17日に特許異議申立人 畑山千里(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、当審は、同年9月3日付けで取消理由を通知し、特許権者は、指定期間内である同年11月8日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」という。)を行い、申立人は、同年12月28日に意見書を提出したものである。 第2 訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。下線は訂正箇所を示す。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「前記タイヤ内に空気を旋回させながら供給する空気旋回供給部と、前記上リムと前記下リムとの間に挿入されたシャフトとを、有し、前記空気旋回供給部は、前記上リムまたは下リムに、前記シャフトの周りの仮想曲線に沿って形成され前記間隔側に開口した溝内に、前記仮想曲線の接線方向に概ね沿って前記空気を噴射する噴射部を有する」と記載されているのを「前記タイヤ内に空気を供給する空気旋回供給部と、前記上リムと前記下リムとの間に挿入されたシャフトとを、有し、前記空気旋回供給部は、前記上リムの下面または下リムの上面に、前記シャフトの周りの仮想円を内部に有して形成され前記間隔側に開口した溝内に、噴射部を有し、前記噴射部は、前記仮想円上に配置され、前記仮想円の接線方向に概ね沿って前記空気を噴射して、前記空気を前記タイヤ内で旋回させる」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2、4、請求項2の記載を引用する請求項3も同様に訂正する。) イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項4に「前記噴射部は、前記噴射部が設けられた上リムまたは下リムに設けられた空気通路に接続されているパイプを有し、前記パイプは、その周壁に前記接線方向に概ね沿って開口を有する」と記載されているのを「前記噴射部は、前記噴射部が設けられた上リムに設けられた空気通路に接続されているパイプを有し、前記パイプは、その周壁に前記接線方向に概ね沿って開口を有し、前記空気旋回供給部は、前記上リムの上面に設けられた凹所に、下面が開口した凹所を有し前記シャフトに挿通された環状体が取り付けられて形成された別の空気通路を有し、この別の空気通路が前記空気通路に連通している」に訂正する。 ウ 訂正事項3 本件特許明細書の【0031】に「この種の曲線として、中心(例えば上リムシャフト10の中心軸)を持ち、上リム2側、下リム4側、および上リム2と下リム4との間のいずれかに描かれた仮想円が用いられている。この種の曲線としては、円形だけではなく、楕円形、アーモンドの断面形状などの閉曲線が考えられ、さらには、本発明の作用効果を発揮できる範囲内においては、閉曲線ではなく開曲線(円弧など)が描かれてもよい。また、本発明の作用効果を発揮できる範囲内においては、中心を持たない閉曲線が描かれてもよい。」と記載されているのを「この種の曲線として、中心(例えば上リムシャフト10の中心軸)を持ち、上リム2側、下リム4側、および上リム2と下リム4との間のいずれかに描かれた仮想円が用いられている。」に訂正する。 エ 訂正事項4 本件特許明細書の【0032】に「仮想円38上にまんべんなく等間隔で各噴射部34を配置するのではなく、本発明の作用効果を発揮できる範囲内においては、仮想の円弧や楕円などの、上記した開曲線または閉曲線上に、噴射部34を1または複数個配置することができる。」と記載されているのを「仮想円38上にまんべんなく等間隔で各噴射部34を配置するのではなく、噴射部34を1または複数個配置することができる。」に訂正する。 オ 訂正事項5 本件特許明細書の【0033】に「この空気の渦は、あたかも、少なくとも、仮想円から上方に空気流が巻き上がる竜巻状(トルネード状)の渦であると考えられる。」とあるのを削除する。 カ 訂正事項6 本件特許明細書の【0037】に「当該空気の渦が壁となり、タイヤ内に滞留しているゴムくずが、空気の渦よりも上方に巻き上がることが防止され、当該滞留状態を維持するものと考えられる。その一方で、」とあるのを削除する。 訂正前の請求項1ないし4は、請求項2ないし4が請求項1の記載を引用する関係にあるから、一群の請求項であり、特許請求の範囲に係る訂正事項1及び2は、一群の請求項1ないし4に対して請求されている。また、明細書に係る訂正事項3ないし6は、訂正前の請求項1ないし4全てに関係している。したがって、本件訂正請求は、一群の請求項〔1−4〕に対して請求されたものである。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1について (ア)訂正の目的について 訂正事項1において、訂正前の「前記タイヤ内に空気を旋回させながら供給する空気旋回供給部・・・を、有し、」を、「前記タイヤ内に空気を供給する空気旋回供給部・・・を、有し、・・・前記空気旋回供給部は、・・・噴射部を有し、前記噴射部は、・・・前記空気を噴射して、前記空気を前記タイヤ内で旋回させる」とする訂正(以下「訂正事項1−1」という。)は、訂正前のタイヤ内に空気を旋回させながら供給することとは、タイヤ内に空気を供給し、空気をタイヤ内で旋回させることであることを明らかにしたものであるから、訂正事項1−1は、「明瞭でない記載の釈明」を目的としたものである。 また、訂正事項1において、訂正前の「前記空気旋回供給部は、前記上リムまたは下リムに、前記シャフトの周りの仮想曲線に沿って形成され前記間隔側に開口した溝内に、前記仮想曲線の接線方向に概ね沿って前記空気を噴射する噴射部を有する」を、「前記空気旋回供給部は、前記上リムの下面または下リムの上面に、前記シャフトの周りの仮想円を内部に有して形成され前記間隔側に開口した溝内に、噴射部を有し、前記噴射部は、前記仮想円上に配置され、前記仮想円の接線方向に概ね沿って前記空気を噴射して、」とする訂正(以下「訂正事項1−2」という。)は、上リムまたは下リムに形成された溝を、(i)上リムの下面または下リムの上面に形成された溝に限定し、また、シャフトの周りの仮想曲線に沿った溝を、(ii)シャフトの周りの仮想円を(溝の)内部に有する溝に限定し、また、仮想曲線の接線方向に概ね沿って空気を噴射する噴射部を、(iii)仮想円上に配置され、仮想円の接線方向に概ね沿って空気を噴射する噴射部に限定したものであるから、訂正事項1−2は、「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものである。 以上のことから、訂正事項1は、「明瞭でない記載の釈明」及び「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものである。 (イ)新規事項について 訂正事項1−1の、タイヤ内に空気を供給し、空気をタイヤ内で旋回させることは、本件特許明細書の【0008】「タイヤ内に空気を供給するにあたっては、空気旋回供給部が、・・・タイヤ内で、空気を旋回させる。」、【0036】「空気供給源から・・・空気を供給すると、空気は、・・・噴射部34の噴出孔42から噴出され、タイヤ6を膨張させる。このとき、各噴出孔42は、図2に示す仮想円38の接線方向に沿って同一方向を向いているので、タイヤ6内に上リムシャフト10の周りを回る旋回流が形成される。」などの記載から導き出せるから、新規事項の追加に該当しない。 また、訂正事項1−2の、(i)上リムの下面または下リムの上面に形成された溝とすることは、本件特許明細書の【0030】「上リム2の下面には、環状の溝32が形成されている。」、【0038】「第2の実施形態のタイヤ検査装置1aでは、・・・下リム4の上面側に、第1の実施形態のタイヤ検査装置1の上リム2に形成した環状の溝32と同様な溝32aが形成されている。」などの記載から導き出せるから、新規事項の追加に該当しない。 また、訂正事項1−2の、(ii)シャフトの周りの仮想円を(溝の)内部に有する溝とすることは、【0030】「溝32内に、・・・噴射部34が、・・・設けられている。」、【0034】「各噴射部34では、・・・上リムシャフト10と平行に連通孔(第2空気通路)36が形成されている。」、【0035】「各連通孔36は、平面視した場合、上リムシャフト10の中心軸を中心として描いた仮想円38上に位置している。」との記載を踏まえると、上リムシャフト10の中心軸を中心として描いた仮想円38上に位置している噴射部34が溝32内に設けられていることを導き出せるから、新規事項の追加に該当しない。 また、訂正事項1−2の、(iii)仮想円上に配置され、仮想円の接線方向に概ね沿って空気を噴射する噴射部とすることは、【0032】「仮想円38上に・・・各噴射部34を配置する」、【0036】「各噴出孔42は、図2に示す仮想円38の接線方向に沿って同一方向を向いているので、タイヤ6内に上リムシャフト10の周りを回る旋回流が形成される。」、【0039】「この第2実施形態のタイヤ検査装置1aでは、第1実施形態のタイヤ検査装置1と同様に、仮想円上に各噴射部34aが位置し、それらそれぞれの噴出孔は、仮想円の接線方向に沿って同一方向に設けられている。」などの記載から導き出せるから、新規事項の追加に該当しない。 以上のことから、訂正事項1は、新規事項の追加に該当しない。 (ウ)特許請求の範囲の拡張・変更について 訂正事項1は、上記(ア)のとおり、「明瞭でない記載の釈明」及び「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 イ 訂正事項2について (ア)訂正の目的について 訂正事項2では、訂正前の「噴射部が設けられた上リムまたは下リム」を、「噴射部が設けられた上リム」に限定し、さらに、「前記空気旋回供給部は、前記上リムの上面に設けられた凹所に、下面が開口した凹所を有し前記シャフトに挿通された環状体が取り付けられて形成された別の空気通路を有し、この別の空気通路が前記空気通路に連通している」との構成を付加することで空気旋回供給部を限定しているから、訂正事項2は、「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものである。 (イ)新規事項について 本件特許明細書の【0028】「上リムシャフト10のフランジ12の周囲には、環状体24が配置され、上リム2の凹面14にボルト(図示せず)によって固定されている。・・・環状体24は、・・・その凹所が、凹面14との間で第1空気通路28を形成している。」、【0034】「図3(a)に拡大して示すように、各噴射部34では、第1空気通路28と溝32とを連通させるように、上リムシャフト10と平行に連通孔(第2空気通路)36が形成されている。」との記載や図1、図3(a)を踏まえると、本件特許明細書の「上リム2の凹面14」、「環状体24の凹所」、「第1空気通路28」及び「連通孔(第2空気通路)36」は、それぞれ、訂正事項2の「上リムの凹所」、「環状体24の凹所」、「別の空気通路」及び「空気通路」に対応することが理解でき、訂正事項2は、本件特許明細書の上記記載や上記図面から導き出せるから、新規事項の追加に該当しない。 (ウ)特許請求の範囲の拡張・変更について 訂正事項2は、上記(ア)のとおり、「特許請求の範囲の減縮」を目的としたものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 ウ 訂正事項3及び4について 訂正事項3及び4は、上記訂正事項1に係る仮想曲線を仮想円とする訂正に伴い、特許請求の範囲の記載との整合を図るための明細書の訂正である。そうすると、訂正事項3及び4は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 エ 訂正事項5及び6について 訂正事項5及び6は、その記載内容が明らかでない記載を削除するための明細書の訂正である。そうすると、訂正事項5及び6は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−4〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「 【請求項1】 タイヤを回転させて検査するタイヤ検査装置であって、間隔を開けて位置する上リム及び下リムによって挟持された前記タイヤ内に空気を供給する空気旋回供給部と、前記上リムと前記下リムとの間に挿入されたシャフトとを、有し、 前記空気旋回供給部は、前記上リムの下面または下リムの上面に、前記シャフトの周りの仮想円を内部に有して形成され前記間隔側に開口した溝内に、噴射部を有し、前記噴射部は、前記仮想円上に配置され、前記仮想円の接線方向に概ね沿って前記空気を噴射して、前記空気を前記タイヤ内で旋回させる タイヤ検査装置。 【請求項2】 請求項1記載のタイヤ検査装置において、 前記下リムは、穴を有し、 前記上リムは、前記シャフトを有し、前記シャフトが前記穴に挿入され、前記穴と前記シャフトとの間に空隙があり、 前記穴は、前記下リムを貫通した貫通孔であり、 前記下リムは、支持回転装置に取り付けられ、 前記シャフトは、前記貫通孔を介して前記支持回転装置内に進入し、 前記下リムと前記上リムとの位置関係を固定するチャック機構が、前記シャフトと前記支持回転装置との間に設けられている タイヤ検査装置。 【請求項3】 請求項2記載のタイヤ検査装置において、 前記下リムは、前記支持回転装置が有するハウジングに取り付けられ、 前記ハウジングは、前記貫通孔に連なる穴を有し、この穴に前記シャフトが挿入され、 前記チャック機構は、前記ハウジングと前記シャフトとの間に設けられている タイヤ検査装置。 【請求項4】 請求項1記載のタイヤ検査装置において、前記噴射部は、前記噴射部が設けられた上リムに設けられた空気通路に接続されているパイプを有し、前記パイプは、その周壁に前記接線方向に概ね沿って開口を有し、前記空気旋回供給部は、前記上リムの上面に設けられた凹所に、下面が開口した凹所を有し前記シャフトに挿通された環状体が取り付けられて形成された別の空気通路を有し、この別の空気通路が前記空気通路に連通している タイヤ検査装置。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 訂正前の請求項1ないし4に係る特許に対して、当審が令和3年9月3日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 理由1(明確性) 本件特許は、請求項1ないし4に係る発明が明確であるとはいえないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 理由2(サポート要件) 本件特許は、請求項1ないし4に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 理由3(進歩性) 請求項1ないし4に係る発明は、甲2発明及び周知技術に基づいて、又は、甲2発明及び参1技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 第5 甲号証等の記載 申立人が異議申立時に、次の甲第1号証〜甲第12号証(以下、それぞれ「甲1」〜「甲12」という。)を証拠として提出した。 甲1:広辞苑 第6版 2008年1月11日 1614頁 甲2:国際公開第2017/135100号 甲3:特開2014−10125号公報 甲4:特開平9−58231号公報 甲5:特開2005−331356号公報 甲6:特開平5−240725号公報 甲7:特開2013−83549号公報 甲8:特開2017−47394号公報 甲9:特開2017−62105号公報 甲10:特表2018−514381号公報 甲11:特開平2−291313号公報 甲12:特開平6−277561号公報 また、本件特許掲載公報の参考文献の欄には、次の文献(以下「参考文献1」という。)が示されている。 参考文献1:特開平11−118655号公報 また、申立人が意見書提出時に、次の文献(以下「参考資料1」という。)を証拠として提出した。 参考資料1:広辞苑 第6版 2008年1月11日 2695頁 いずれも、本件特許の国際出願日である2017年(平成29年)9月15日より前に公知となったものである。 1 甲1について 甲1には、「そ・う【沿う・添う・副う】」について、次の事項が記載されている。 「線条的なもの、または線条的に移動するものに、近い距離を保って離れずにいる意。」 2 甲2について (1)甲2の記載 甲2には、以下の事項が記載されている。 (甲2ア) 「[0021] [第1実施形態] 以降では、まず本発明のタイヤ空気充填機構1が設けられるタイヤ試験装置2を、図面に基づき詳しく説明する。 図1は、第1実施形態のタイヤ空気充填機構1が設けられるタイヤ試験装置2を模式的に示したものである。 [0022] このタイヤ試験装置2は、製品上がりのタイヤTに対してタイヤユニフォミティなどの製品検査を行うものであり、一般にタイヤユニフォミティマシンと言われるものである。このようなタイヤ試験装置2は、例えば図1に示されるような構成となっている。 図1に模式的に示されるように、タイヤ試験装置2は、床面にやぐら状に設けられたフレーム3と、このフレーム3に取り付けられた上下1組のタイヤ軸4U、4Dと、これらのタイヤ軸4U、4Dに設けられてタイヤTを固定する上下1組のリム5U、5Dと、を備えている。これらのタイヤ軸4U、4Dは上下方向を向くタイヤ軸4U、4D回りに回転自在に配備されている。さらに、リム5U、5Dで固定されたタイヤTの側方には外周面に模擬路面が形成されたドラム(図示略)が備えられている。このドラムは、上下方向を向く軸回りに駆動回転できるようになっており、また水平に移動してタイヤTに模擬路面を接触できる構成となっている。 [0023] 以降の説明において、図1の紙面の上下をタイヤ試験装置2を説明する際の上下という。 タイヤ試験装置2のタイヤ軸は、フレーム3の上側に設けられる上タイヤ軸4Uと、この上タイヤ軸4Uと同軸に配備されると共に下方に距離をあけて昇降自在に設けられる下タイヤ軸4Dとを有している。上タイヤ軸4Uの下端には上リム5Uが、また下タイヤ軸4Dの上端には下リム5Dが設けられており、上下タイヤ軸4U、4Dを互いに接近させることで上下リム5U、5D間にタイヤTを挟み込んで固定できるようになっている。 [0024] 上下リム5U、5D又はドラムには、走行中のタイヤTに発生する力を計測する荷重計測器などが設けられており、タイヤTのタイヤユニフォミティを計測できるようになっている。ところで、上述のようなタイヤ試験を行う際には、タイヤTを所定の空気圧に調整しておく必要がある。そこで、タイヤ試験装置2には、タイヤT内に圧縮空気を供給したりタイヤTから圧縮空気を排出したりしてタイヤT内の空気圧を調整する空気圧回路9(タイヤ空気充填機構1)が配備されている。 [0025] 図1に示されるように、空気圧回路9は、空気供給源6からタイヤT内へ至る配管を備えており、上タイヤ軸4Uの内部を上下に貫通するように設けられた空気供給流路7の下側に開口した空気噴出口8でタイヤT内に連通している。空気圧回路9は空気供給流路7及び空気噴出口8を通じて圧縮空気をタイヤT内に流通できるようになっている。」 (甲2イ) 「[0035] 次に、本発明のタイヤ試験装置2に設けられるタイヤ空気充填機構1について、詳しく説明する。 図3A及び図3Bに示すように、第1実施形態のタイヤ空気充填機構1は、空気供給源6からタイヤT内に供給された空気を噴出する空気噴出口8がタイヤ軸に形成されている。 [0036] 具体的には、タイヤ軸4Uの内部には、タイヤ軸4Uの軸心に沿って上下方向に延びる空気供給流路7が形成されており、空気供給流路7におけるタイヤTに対応した下端側には、タイヤT内に圧縮空気を噴出する空気噴出口8が水平方向を向くように形成されている。 この空気噴出口8は、タイヤ軸4Uの軸心回りに複数箇所(図例では4箇所)形成されており、それぞれの空気噴出口8からタイヤT内に圧縮空気を噴出可能とされている。また、第1実施形態のタイヤ空気充填機構1では、それぞれの空気噴出口8は、空気供給流路7の管壁に対して、この管壁の接線方向に沿うように形成されている。つまり、タイヤTの内周面上の一点(空気の吹き付け箇所)から見ると、空気噴出口8からの空気は、タイヤ軸4Uの軸心からではなく、空気供給流路7の流路径の分だけ、タイヤ軸4Uの軸心から少しずれた位置から噴出されてくることになる。そのため、第1実施形態の空気噴出口8から噴出される空気の向きは、空気の噴出方向を径方向に対して傾斜したものとなる。 [0037] このようにタイヤT内部の空気を旋回させれば、停止しているタイヤT内面と、空気噴出口8から噴出された空気との間に相対速度が生じる。その結果、供給された空気からタイヤTやリムへの熱伝達率を大きくすることができる。つまり、タイヤT内の空気が静止している場合は、熱伝達率は4kcal/(m2・h・℃)となる。これに対して、タイヤT内の空気が流れている場合は、熱伝達率は10〜250kcal/(m2・h・℃)と、大きく向上する。 [0038] それゆえ、タイヤT内に供給された空気は、ビードシート圧まで断熱圧縮される過程で高温となるが、この空気の熱はタイヤTやリムへ熱伝達し、温度が低下する。タイヤTやリム自体は熱容量が大きいために、温度の上昇量は僅かである。空気に旋回流を与えることにより、特に中心から離れたタイヤトレッド裏面の流速が高く、そこの空気の熱伝達率が高くなるために、従来のタイヤ空気が非旋回の時に比べて大きな温度低下が生じる。ビードシート圧からテスト圧に移行する際には、上述した空気噴出口8は空気を吐き出す口になるために、タイヤT内の空気に旋回は生じない。急激な空気の吐き出しによる断熱膨張により、タイヤT内空気温度は低下する。このとき、上述した熱伝達率が小さいと、タイヤT内の空気からタイヤTやリムへの熱移動が十分に促進せずに、タイヤT内の空気の温度が高いままとなるが、上述した旋回流を発生させタイヤTに対する熱移動を促進させることができれば、従来に比べてタイヤ内の温度は常温に近い状態となり、試験中のタイヤ温度の変化、これに対応する圧力の変化は小さくなる。」 (甲2ウ)図1 (甲2エ)図3A (甲2オ)図3B (2)甲2に記載された発明 (甲2オ)図3Bを見ると、空気供給流路7の管壁は、タイヤ軸4Uの軸心回りの内周壁であり、タイヤ軸4Uの軸心回りの内周壁からタイヤ軸4Uの軸心回りの外周壁にある空気噴出口8までの空気噴出流路は、空気供給流路7の管壁に対して、この管壁の接線方向に形成されていることが分かる。 このことを含めて上記(1)の記載及び図面を総合すると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「 タイヤ空気充填機構1が設けられるタイヤ試験装置2であって、 製品上がりのタイヤTに対してタイヤユニフォミティなどの製品検査を行うものであり、 床面にやぐら状に設けられたフレーム3と、このフレーム3に取り付けられた上下1組のタイヤ軸4U、4Dと、これらのタイヤ軸4U、4Dに設けられてタイヤTを固定する上下1組のリム5U、5Dと、を備え、 タイヤ空気充填機構1は、空気供給源6からタイヤT内に供給された空気を噴出する空気噴出口8がタイヤ軸4Uに形成されており、 具体的には、タイヤ軸4Uの内部には、タイヤ軸4Uの軸心に沿って上下方向に延びる空気供給流路7が形成されており、空気供給流路7におけるタイヤTに対応した下端側には、タイヤT内に圧縮空気を噴出する空気噴出口8が水平方向を向くように形成され、 この空気噴出口8は、タイヤ軸4Uの軸心回りの外周壁に複数箇所形成されており、それぞれの空気噴出口8からタイヤT内に圧縮空気を噴出可能とされ、 空気供給流路7の管壁は、タイヤ軸4Uの軸心回りの内周壁であり、タイヤ軸4Uの軸心回りの内周壁からタイヤ軸4Uの軸心回りの外周壁にある空気噴出口8までの空気噴出流路は、空気供給流路7の管壁に対して、この管壁の接線方向に形成されており、 それゆえ、タイヤT内に供給された空気に旋回流を与えることになる、タイヤ試験装置2。」 3 甲3について (1)甲3の記載 甲3には、以下の事項が記載されている。 (甲3ア) 「【0013】 (第1実施形態) (タイヤバランス測定装置の構成) 図1〜3は第1実施形態を示す図である。タイヤバランス測定装置1は、環状の下部リム4と環状の上部リム5との間にタイヤを挟み込んで保持し、タイヤ内に空気を供給して膨らませ、その後タイヤを鉛直軸まわりに回転させるように構成されている。 【0014】 タイヤバランス測定装置1は、上端部に下部リム4が装着されたスピンドル2と、上端部に上部リム5が装着されたロックシャフト3と、を備えている。スピンドル2およびロックシャフト3は、それぞれ、本発明におけるリム回転支持軸およびロック軸に相当する。上端部に上部リム5が装着されたロックシャフト3を、スピンドル2の嵌合穴12aに挿入することにより、下部リム4と上部リム5との間にタイヤを挟み込んで保持することができる。 【0015】 ロックシャフト3をスピンドル2の嵌合穴12aに挿入した後、複数のロックピース9を介してスピンドル2とロックシャフト3とを係合して固定することで、下部リム4と上部リム5との間にタイヤが挟み込まれて、保持(挟持)される。ロックピース9は、本発明におけるロック手段に相当する。 ・・・ 【0020】 (ロックシャフト) ロックシャフト3は、ロックピース9を介して上部スピンドル軸12に係合されて固定される部材である。ロックシャフト3には、下部リム4と上部リム5との間隔(タイヤの幅)が調整可能となるよう複数段の溝を有するロック部3bがその外周面に形成されている。下部リム4と上部リム5との間隔は、溝のピッチ単位で任意の間隔に調整可能である。また、ロックシャフト3の中心部にはタイヤに空気を供給するためのエア通路3aが形成されている。」 (甲3イ)図1 (甲3ウ)図3 (2)甲3に記載された技術事項 ア (甲3イ)図1及び(甲3ウ)図3から、上部リム5の中心付近には径の異なる複数の凹部が階段状に形成されていることが見て取れ、それらの凹部とロックシャフト3の側面によって下面に開口した段々溝が形成されているといえる。そして、「ロックシャフト3の中心部にはタイヤに空気を供給するためのエア通路3aが形成され」(【0020】)、エア通路3aのエア出口は、上部リム5の当該段々溝の内部空間に位置することが見て取れる。 イ 上記アを踏まえ上記(1)の記載及び図面から、甲3には、次の技術事項(以下「甲3技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「 環状の下部リム4と環状の上部リム5との間にタイヤを挟み込んで保持し、タイヤ内に空気を供給して膨らませ、その後タイヤを鉛直軸まわりに回転させるように構成されているタイヤバランス測定装置1であって、 上端部に下部リム4が装着されたスピンドル2と、上端部に上部リム5が装着されたロックシャフト3と、を備え、上端部に上部リム5が装着されたロックシャフト3を、スピンドル2の嵌合穴12aに挿入することにより、下部リム4と上部リム5との間にタイヤを挟み込んで保持することができ、 上部リム5の中心付近に形成された径の異なる複数の凹部とロックシャフト3の側面によって下面に開口した段々溝が形成され、ロックシャフト3の中心部にはタイヤに空気を供給するためのエア通路3aが形成され、エア通路3aのエア出口は、上部リム5の当該段々溝の内部空間に位置する、タイヤバランス測定装置1。」 4 甲4について (1)甲4の記載 甲4には、以下の事項が記載されている。 (甲4ア) 「【0013】 【発明の実施の形態】本発明の一実施例を図1および図2を用いて説明する。本実施例に係るタイヤ試験機は、図1に示すように、タイヤ1の上ビード部を保持する上リム2と、タイヤ1の下ビード部を保持する下リム3とを有している。下リム3は、固定側スピンドル4(下リム回転伝達手段)の上縁部に固設されており、この固定側スピンドル4は、ベースフレーム6に設けられたスピンドル支持部材5(下リム支持手段)により回転自在に上下方向に固定された状態で支持されている。 【0014】上記の固定側スピンドル4の下端部には、スピンドル駆動プーリ7(回転駆動手段)が設けられている。スピンドル駆動プーリ7には、図示しないスピンドル駆動モータ(回転駆動手段)がベルト等を介して接続されており、スピンドル駆動モータは、スピンドル駆動プーリ7を介して固定側スピンドル4を回転駆動させるようになっている。また、固定側スピンドル4には、下面から上面にかけて連通された空気導入孔4aが形成されており、下面に接続された図示しない空気圧送手段から圧力空気が供給されるようになっている。さらに、固定側スピンドル4の上面には、雄型係合部材8(下リム回転伝達手段)が固設されており、雄型係合部材8には、固定側スピンドル4の空気導入孔4aに一致するように空気導入孔8aが形成されている。そして、この空気導入孔8aは、下面から側面にかけて連通されており、固定側スピンドル4の空気導入孔4aを通過した圧力空気をタイヤ1内に導入させるようになっている。」 (甲4イ)図1 (2)甲4に記載された技術事項 ア (甲4イ)図1から、下リム3のタイヤ1付近には凸部が形成されていることが見て取れ、その凸部と雄型係合部材8の側面によって上面に開口した溝が形成されているといえる。そして、「空気導入孔8a」(【0014】)の空気出口は、下リム3の当該溝の内部空間に位置することが見て取れる。 イ 上記アを踏まえ上記(1)の記載及び図面から、甲4には、次の技術事項(以下「甲4技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「 タイヤ1の上ビード部を保持する上リム2と、タイヤ1の下ビード部を保持する下リム3とを有し、下リム3は、固定側スピンドル4(下リム回転伝達手段)の上縁部に固設されており、この固定側スピンドル4は、ベースフレーム6に設けられたスピンドル支持部材5(下リム支持手段)により回転自在に上下方向に固定された状態で支持されている、タイヤ試験機であって、 固定側スピンドル4には、下面から上面にかけて連通された空気導入孔4aが形成され、下面に接続された空気圧送手段から圧力空気が供給されるようになっており、さらに、固定側スピンドル4の上面には、雄型係合部材8(下リム回転伝達手段)が固設されており、雄型係合部材8には、固定側スピンドル4の空気導入孔4aに一致するように空気導入孔8aが形成され、そして、この空気導入孔8aは、下面から側面にかけて連通されており、固定側スピンドル4の空気導入孔4aを通過した圧力空気をタイヤ1内に導入させるようになっており、 下リム3のタイヤ1付近に形成された凸部と雄型係合部材8の側面によって上面に開口した溝が形成され、空気導入孔8aの空気出口は、下リム3の当該溝の内部空間に位置する、タイヤ試験機。」 5 甲5について (1)甲5の記載 甲5には、以下の事項が記載されている。 (甲5ア) 「【0014】 以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。 図1〜図3は、本発明に係るタイヤ試験機1の第1実施形態を示している。 タイヤ試験機1は、一端が大きく開口した筒状の第1スピンドル3と、この開口を通って第1スピンドル3に内嵌する外観が柱状の第2スピンドル2と、第2スピンドル2に径方向出退自在に嵌合されたロック部材18と、を有している。この第1スピンドル3と第2スピンドル2とは、上下に配置されていて相対移動自在となっており、第1スピンドル3が下スピンドルとされ、第2スピンドル2が上スピンドルとされている。 【0015】 上スピンドル2にはその下端部に上側リム5がボルト6によって支持固定され、下スピンドル3にはその上端部に下側リム7がボルト8によって支持固定される。上側リム5や下側リム7にとって、上下のスピンドル2,3で支持される位置はそれらの回転中心位置である。 これら上側リム5や下側リム7は、タイヤTにおける両側のビード部に各別に当接可能となった円盤状のもので、タイヤTのタイヤサイズに合わせて複数種類のサイズのものが準備され、この中から測定ごとに適用サイズのものに交換される。 ・・・ 【0017】 ベアリングハウジング10は、装置フレーム9に設けられたスピンドルハウジング42の内部に設けられており、このベアリングハウジング10と下スピンドル3との間に設けたベアリング43によって、下スピンドル3は回転自在となっている。 このタイヤ試験機には、リム5,7に装着したタイヤTをインフレートするインフレート手段20が設けられている。このインフレート手段20は、上下の各リム5,7間でタイヤTを装着保持させた後、このタイヤT内に加圧気体(空気など)を充填させるためのもので、下スピンドル3内を貫通するタイヤ圧供給路21を有している。 【0018】 このタイヤ圧供給路21は、下スピンドル3内を下スピンドル3の下端から上端へ貫通しており、このタイヤ圧供給路21の上端側でリム7を装着した装着部よりも径方向内側に気体出口22が形成されている。この気体出口22から空気をタイヤT内に供給することができるようになっている。また、このタイヤ圧供給路21には、下スピンドル3の下方から給気管23を介して供給源(図示略)から気体が供給されるようになっている。 下スピンドル3は円筒状に形成されており、図3に示すように、下スピンドル3の内壁には、この内壁から径内方向へ突出した凸状の係止部40がその内壁の全周に亘って設けられている。この係止部40は、軸芯方向に複数設けられている。」 (甲5イ) 「【0030】 その後は、インフレート手段20による気体の供給を停止し、上スピンドル2を上昇させてから下スピンドル3に着装してある栓体32を外し、それからタイヤTを手順通り装着させてこのタイヤTのタイヤユニフォミティ測定を行うようにする。 図4は、本発明に係るタイヤ試験機の第2実施形態を示している。 上記第1実施形態では、上スピンドル2が下スピンドル3に内嵌されていたが、この第2実施形態のタイヤ試験機1では、下スピンドル3が上スピンドル2に内嵌している。 即ち、上下のスピンドル2,3の嵌合関係が上下で逆になっている点にある。 【0031】 また、これに伴いロック部材18は下スピンドル3に径方向出退自在に設けられており、上スピンドル2の内壁に係止部40が設けられている。 そしてこの構成の違いから、上スピンドル2に対してインフレート手段20のタイヤ圧供給路21が設けられているものであり、また軸方向係合手段45(タイヤ圧供給路21に対してその中途部に押圧力供給路27が接続され且つタイヤ圧供給路21の気体出口22を遮断する栓体32が着脱自在に設けられる構成)についても、上スピンドル2に対して設けられていることになる。」 (甲5ウ)図1 (甲5エ)図4 (2)甲5に記載された技術事項 ア 第1実施形態では、(甲5ウ)図1から、下側リム7の中心付近には凸部が形成されていることが見て取れ、その凸部と下スピンドル3の側面によって上面に開口した溝が形成されているといえる。そして、下スピンドル3の側面に形成された「気体出口22」(【0018】)は、下側リム7の当該溝の内部空間に位置することが見て取れる。 また、第2実施形態では、(甲5エ)図4から、上側リム5のタイヤT付近には凸部が形成されていることが見て取れ、その凸部と上スピンドル2の側面によって下面に開口した溝が形成されているといえる。そして、上スピンドル2の側面に形成された「気体出口22」は、上側リム5の当該溝の内部空間に位置することが見て取れる。 イ 上記アを踏まえ上記(1)の記載及び図面から、甲5には、次の2つの技術事項(以下「甲5技術事項1」及び「甲5技術事項2」といい、併せて「甲5技術事項」という。)が記載されていると認められる。 (甲5技術事項1) 「 一端が大きく開口した筒状の第1スピンドル3と、この開口を通って第1スピンドル3に内嵌する外観が柱状の第2スピンドル2と、第2スピンドル2に径方向出退自在に嵌合されたロック部材18と、を有し、この第1スピンドル3と第2スピンドル2とは、上下に配置されていて相対移動自在となっており、第1スピンドル3が下スピンドルとされ、第2スピンドル2が上スピンドルとされ、上スピンドル2にはその下端部に上側リム5がボルト6によって支持固定され、下スピンドル3にはその上端部に下側リム7がボルト8によって支持固定される、タイヤ試験機1であって、 リム5,7に装着したタイヤTをインフレートするインフレート手段20が設けられ、このインフレート手段20は、上下の各リム5,7間でタイヤTを装着保持させた後、このタイヤT内に加圧気体(空気など)を充填させるためのもので、下スピンドル3内を貫通するタイヤ圧供給路21を有しており、 このタイヤ圧供給路21は、下スピンドル3内を下スピンドル3の下端から上端へ貫通しており、このタイヤ圧供給路21の上端側でリム7を装着した装着部よりも径方向内側に気体出口22が形成され、この気体出口22から空気をタイヤT内に供給することができるようになっており、また、このタイヤ圧供給路21には、下スピンドル3の下方から給気管23を介して供給源から気体が供給されるようになっており、 下側リム7の中心付近に形成された凸部と下スピンドル3の側面によって上面に開口した溝が形成され、下スピンドル3の側面に形成された気体出口22は、下側リム7の当該溝の内部空間に位置する、タイヤ試験機1。」 (甲5技術事項2) 「 甲5技術事項1において、上下のスピンドル2,3の嵌合関係が上下で逆になっており、これに伴いロック部材18は下スピンドル3に径方向出退自在に設けられ、上スピンドル2の内壁に係止部40が設けられ、そしてこの構成の違いから、上スピンドル2に対してインフレート手段20のタイヤ圧供給路21が設けられているものであり、 上側リム5のタイヤT付近に形成された凸部と上スピンドル2の側面によって下面に開口した溝が形成され、上スピンドル2の側面に形成された気体出口22は、上側リム5の当該溝の内部空間に位置する、タイヤ試験機1。」 6 甲6について (1)甲6の記載 甲6には、以下の事項が記載されている。 (甲6ア) 「【0006】 【発明の実施例】以下、本発明の実施例を図面に基いて説明する。図1は、本発明に係るタイヤバランス測定装置の分割リム固定構造の一実施例を適用したタイヤバランス測定装置の縦断面図、図2は図1のA−A断面図に相当する平面図である。図示タイヤバランス測定装置は、フレーム11に鉛直状態に支持された軸受12により、上端に下部リム13が固定されたリム回転支持軸としての円筒状のスピンドル10が回転自在に支持されると共に、該下部リム13の上側に上部リム14が図示しない昇降機構に支持されて配設されて構成されている。 ・・・ 【0008】スピンドル10は、軸受12によって支持される支持軸部20と、該支持軸部20の軸受12より上側に突出するフランジ部21に固定されたチャックブラケット30と、該チャックブラケット30にその下端で揺動可能に枢支された一対の係合爪としてのチャック爪40,40と、チャックブラケット30の上側に接続固定された円筒状のリングシャフト50と、該リングシャフト50の上端に装着されたガイドスリーブ60と、によって構成されている。 【0009】支持軸部20は、上端にチャックブラケット30が装着される大径のフランジ部21が形成された中空の円筒状であって、軸受12にベアリングを介して回転自在に支持されている。軸受12より下側に突出する下端にはプーリ22が固定され、更にその下側にエンコーダ23が装着されている。又、その中空内部には操作軸としての操作シャフト70が軸方向に摺動可能に嵌合配置されている。プーリ22には、フレーム11側方に軸受12と平行に設けられた図1には示さない回転駆動源であるモータ80のスピンドルに固定されたプーリ81との間にベルト82が掛け渡されており、モータ80の回転によって当該プーリ22(即ちスピンドル10)が回転駆動されるようになっている。チャックブラケット30は、当該部位の拡大断面図である図3に示す如く、支持軸部20のフランジ部21の上面に固定されると共に、その上面にはリングシャフト50が固定されており、又、チャック爪40をその下端で揺動可能に支持している。 ・・・ 【0013】操作シャフト70は、中空の軸状であってその上端にカムプレート44を支持する支持脚45が固定されるフランジ部71が形成され、スピンドル10の支持軸部20内にその軸方向に所定のストローク摺動移動可能に嵌合している。その下端はスピンドル10の支持軸部20の下端より下側に突出し、この下端部に支持軸部20との間にスプリング72を介して操作リング73が固定され、スプリング72によって下側に付勢されている。又、下端には、図示しないコンプレッサーと接続されたロータリージョイント74が装着され、当該操作シャフト70の回転を許容しつつその中空内部に圧搾空気を供給可能となっている。 ・・・ 【0015】リングシャフト50は、大径の円筒状であってその内部にチャック爪40を所定量揺動可能に収容し、その上端にガイドスリーブ60が装着されている。尚、図1中符号51は、気密的に装着された透明アクリル樹脂製の窓である。ガイドスリーブ60は、リングシャフト50の上端に固定されるフランジ部61から、小径のガイド部62が上下に突出形成され、該ガイド部62に貫通形成された挿通穴にライナ63が嵌合装着されて所定の内径として形成されている。フランジ部61には、リングシャフト50内外を連通する通気孔61Aが開口形成されており、又、フランジ部61の上面には、下部リム13が装着されている。下部リム13は、円板状であって、その外周部分に径の異なる複数(図は三種類)のリムが階段状に形成されている。 【0016】下部リム13の上側には、前述の如く上部リム14が配置されている。上部リム14は、下部リム13と同様に径の異なる複数のリムが一体に形成された円板状であって、図示しない支持機構によって昇降可能に支持されたホルダ92にアダプター93を介して固定され、下部リム13と対向する位置で昇降可能として設けられている。尚、ホルダ92は、支持機構に設けられたクランプによって把持されて回転不能となると共に、把持解除によって回転自在となるようになっている。又、その中心位置には、ホルダ92に上端で固定された嵌合軸としてのロックシャフト90が垂下配置されている。ロックシャフト90は、ガイドスリーブ60のガイド部62に所定の公差で嵌合可能であって、その先端部には、チャック爪40の爪と対応する上面が水平で下面が中心側に向かうテーパ状の係合段部としての係合突起91…が、チャック爪40の爪間隔と等しい間隔(0.5インチ)で複数条形成されている。 ・・・ 【0018】而して、上記の如く構成されたタイヤバランス測定装置では、下記の如く作用して下部リム13と上部リム14とで被検タイヤを保持し、バランス測定を行なう。まず、図1に示す如きロックシャフト90がガイドスリーブ60のガイド部62に嵌合してその係合突起91にチャック爪40の爪41が係合した状態から、エアシリンダ76の駆動によって操作シャフト70を上昇駆動させてチャック爪40と係合突起91との係合を解除し、図7に示す如く上部リム14をロックシャフト90が下部リム13に対してタイヤ装着の障害とならない十分離間した位置となる迄上昇させる。このロックシャフト90の上昇時には、ホルダ92(即ちロックシャフト90及び上部リム14)はクランプされて回転不能状態にある。 【0019】次に、図示しないコンベアによって水平状態で搬送された被検タイヤを下部リム13上に中心を一致させて載置した後、上部リム14を下降させてロックシャフト90をガイドスリーブ60のガイド部62に嵌入させ、上部リム14と下部リム13のリム間隔が被検タイヤのリム幅と一致した状態で停止させ、エアシリンダ76の駆動を停止する。これにより、スプリング72の付勢力によって操作シャフト70が下降することとなってチャック爪40がその先端が近接する側に揺動し、爪41がロックシャフト90の係合突起91に係合すると共に、スプリング46の付勢力でチャック爪40がロックシャフト90を確実に喰え込み、被検タイヤが上部リム14と下部リム13とで支持された状態となる。この時、係合突起91とチャック爪40の爪41は前述の如く対応する位置にあり、円滑に係合状態となる。被検タイヤのリム幅が異なる場合でも、チャック爪40の爪の係合する係合突起91がずれることで被検タイヤに応じて0.5インチ間隔で対応することができる。 【0020】その後、ロータリージョイント74を介して操作シャフト70の中空軸内に所定圧力の圧搾空気を供給する。圧搾空気は操作シャフト70の中空軸内からチャックブラケット30及びリングシャフト50内を通り、ガイドスリーブ60のフランジ部61の通気孔61Aを介して被検タイヤ内に供給され、該被検タイヤを所定内圧で膨らませる。この時、被検タイヤの内圧が上部リム14と下部リム13のリム間隔を広げるよう作用するが、これは確実に係合状態にあるチャック爪40とロックシャフト90の係合突起91との係合により阻止され、同時に、上部リム14と下部リム13の間隔(リム幅)は、チャック爪40とロックシャフト90の係合突起91との係合によって正確に維持される。そして、ロックシャフト90のクランプが解除されて回転自在とされ、これによってモータ80の回転でスピンドル10,下部リム13,被検タイヤ及び上部リム14(ホルダ92,ロックシャフト90)が一体となって回転駆動されることとなり、この状態で所定の回転数で回転させてこの回転時にロードセル17により検出される軸受12の変位荷重とエンコーダ23からの回転角度情報に基いて、被検タイヤのバランスを測定するものである。」 (甲6イ)図1 (甲6ウ)図3 (2)甲6に記載された技術事項 上記(1)の記載及び図面から、甲6には、次の技術事項が記載されていると認められる。 「 フレーム11に鉛直状態に支持された軸受12により、上端に下部リム13が固定されたリム回転支持軸としての円筒状のスピンドル10が回転自在に支持されると共に、該下部リム13の上側に上部リム14が昇降機構に支持されて配設されて構成されているタイヤバランス測定装置であって、 スピンドル10は、軸受12によって支持される支持軸部20と、該支持軸部20の軸受12より上側に突出するフランジ部21に固定されたチャックブラケット30と、該チャックブラケット30にその下端で揺動可能に枢支された一対の係合爪としてのチャック爪40,40と、チャックブラケット30の上側に接続固定された円筒状のリングシャフト50と、該リングシャフト50の上端に装着されたガイドスリーブ60と、によって構成され、 支持軸部20は、その中空内部には操作軸としての操作シャフト70が軸方向に摺動可能に嵌合配置され、 操作シャフト70は、当該操作シャフト70の回転を許容しつつその中空内部に圧搾空気を供給可能となっており、 ガイドスリーブ60は、リングシャフト50の上端に固定されるフランジ部61から、小径のガイド部62が上下に突出形成され、フランジ部61には、リングシャフト50内外を連通する通気孔61Aが開口形成されており、又、フランジ部61の上面には、下部リム13が装着されており、下部リム13は、円板状であって、その外周部分に径の異なる複数のリムが階段状に形成されており、 圧搾空気は操作シャフト70の中空軸内からチャックブラケット30及びリングシャフト50内を通り、ガイドスリーブ60のフランジ部61の通気孔61Aを介して被検タイヤ内に供給され、該被検タイヤを所定内圧で膨らませる、タイヤバランス測定装置。」 7 甲7の記載 甲7には、以下の事項が記載されている。 (甲7ア) 「【0020】 以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以降の説明においては、タイヤWの搬入搬出方向を前後方向、これと直交する横方向を左右方向と呼称する。図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ検査装置の側面図である。このタイヤ検査装置には、検査対象のタイヤWを嵌合支持する下リム1が装備された計測部Aと、下リム1と協同してタイヤWを上下から挟持する上リム2を昇降させるリム昇降装置Bと、タイヤWを左右から挟持して前後方向(図1中で紙面に垂直方向)に水平搬送および上下移動させるタイヤ搬送装置Cとが備えられている。このタイヤ搬送装置Cによって計測部Aに搬入されたタイヤWを下リム1と上リム2とで上下に挟持した後、タイヤW内に空気を供給充填して膨張させ、この膨張状態でタイヤWを所定速度で回転させ、アンバランスによって発生する水平方向の遠心力を計測することで、タイヤWの動的釣合いを検査するよう構成されており、以下、各部の構造について説明する。 ・・・ 【0023】 リム昇降装置Bは、計測部Aにおける主フレーム11の側面にフレーム12を介して連結された支柱フレーム13に、縦レール14を介してスライド上下動可能に昇降台15を支持し、この昇降台15に備えた把持機構16を介して上リム2を支持し、ネジ軸17をモータ18で正逆回転して昇降台15をネジ送り移動することで、把持機構16で把持した上リム2を昇降するよう構成されている。 ・・・ 【0025】 図1に示すように、計測部Aの主フレーム11は矩形箱形に構成されており、スピンドル32が回転自在に鉛直に挿通支持され、主フレーム11の上面から突出したスピンドル32の上部に下リム1が連結されている。 【0026】 図2は、計測部Aの構成を示す正面図であり、図3は、計測部Aの横断平面図であり、図4は、上リムを連結した状態の縦断面図である。 【0027】 計測部Aの主フレーム11の中央部位に配備された支持ケーシング31の上下2箇所と主フレーム11の側壁11aとが、平行に水平配備された左右一対ずつのトーションバー33を介して連結されると共に、支持ケーシング31の上下中間部位と主フレーム11の上壁11bとが、鉛直配備された前後一対のトーションバー34を介して連結されている。また、支持ケーシング31の上下2箇所と主フレーム11の側壁11aとに亘って荷重検出用のロードセル35が架設されている。 【0028】 支持ケーシング31は、上方の筒状部31aと、その下部に連設された対向する一対の板状部31bとを備えており、その筒状部31aに前記スピンドル32が上下2組の軸受け36を介して鉛直軸心p周りに回動可能に支承されている。 【0029】 スピンドル32の下端部が支持ケーシング31の対向する板状部31b間に挿入され、その挿入端に備えたプーリ37と、主フレーム11の外側に配備された中継プーリ38とが歯付きのベルト39を介してスリップなく巻き掛け連動されると共に、図3に示すように、中継プーリ軸38aがサーボモータ40にベルト41を介してスリップなく巻き掛け連動されている。 【0030】 また、スピンドル32とロータリエンコーダ42とがベルト43を介してスリップなく等速で巻き掛け連動され、スピンドル32の回転位置がロータリエンコーダ42で検出されるようになっている。 【0031】 スピンドル32の上方大径部32aは、図5に示すように、支持ケーシング31および主フレーム11の上壁11bを越えて上方に突出され、この上方大径部32aに下リム装着用のフランジ44が備えられている。このフランジ44の上面には、例えば、カービックカップリングやハースカップリング(商品名)などの自動調芯カップリング45の下側カップリング45aがスピンドル32と同芯にボルト連結されている。また、自動調芯カップリング45における上側カップリング45bが、下リム1の下面に連結したブラケット46を介して下リム1と同芯にボルト連結されている。 【0032】 自動調芯カップリング45は、周知のように、上面周部に放射状に歯が形成された下側カップリング45aと、下面周部に放射状に歯が形成された上側カップリング45bとからなり、両者を上下方向に咬合させることで、下側カップリング45aと上側カップリング45bとが同芯に結合されると共に、両者が周方向ならびに前後左右に相対移動しない自動調芯機能を備えるものである。 【0033】 従って、下リム1をスピンドル32の上方から下降させ、上側カップリング45bをフランジ44上の下側カップリング45aに載せつけて咬合させるだけで、自動調芯カップリング45の自動調芯機能によって下リム1は高い精度でスピンドル32と同芯状態となる。 【0034】 上記のようにしてスピンドル32と同芯に装着した下リム1をスピンドル32に連結固定する一対のチャック機構47が、図2に示すようにスピンドル32の軸心pに対して対角位置に位置するようフランジ44の外周部位に備えられている。 【0035】 詳細な構造は図示しないが、前記チャック機構47は、図5に示すように、下リム1の下面における対角位置から下方に突出させた一対のロックピン48を、前記フランジ44の外周部に配備固定されたチャックケース49に上方から挿入し、挿入されたロックピン48にロックボールを係合させてチャックケース49からのロックピン48の抜け出しを阻止するよう構成されたものであり、ロックピン48をチャックケース49に挿入して抜け止めロックをかけることで下リム1をスピンドル32と一体化することができる。 【0036】 スピンドル32における上方大径部32aの上端には、上リム2の中心から下方に延出された上記連結軸26が挿入される上リム連結用筒軸51が同芯に連結されると共に、この上リム連結用筒軸51の下半部における上下2箇所に、周方向一定ピッチで複数個(この例では8個)づつロックボール52が組み込まれている。 【0037】 他方、連結軸26の下部外周には、上下2組のロックボール52群が入り込む環状の係合溝53が一定のピッチで多数形成されている。 【0038】 前記ロックボール52は、上リム連結用筒軸51に内外方向に移動可能に外周から挿入されており、内方に移動すると上リム連結用筒軸51の内周にロックボール52の一部が突出し、連結軸26が挿入されている場合にはロックボール52が連結軸26の係合溝53に入り込む。また、ロックボール52が外方に移動して上リム連結用筒軸51の内周から外方へ退避することで連結軸26の挿抜が許容されるようになっている。なお、上リム連結用筒軸51に形成されたボール挿入孔の内端はボール径より若干小さくなっており、連結軸26が挿入されていない状態でもロックボール52が上リム連結用筒軸51の内部に落ち込むことはない。 【0039】 上リム連結用筒軸51の下端外周には、操作筒軸55が上下スライド可能に外嵌配備されている。この操作筒軸55の内周面における上下2箇所には環状溝56が備えられており、操作筒軸55が下方にスライドされると、各環状溝56がロックボール52より下方に外れ、操作筒軸55の内面でロックボール52の外方移動が当接阻止される。また、操作筒軸55が上方にスライドされると、各環状溝56がロックボール52に対向し、ロックボール52の外方への移動空間が形成される。つまり、操作筒軸55が下方スライド位置にあると、ロックボール52が内方に突出されたロック状態に保持され、操作筒軸55が上方スライド位置にあると、ロックボール52の外方後退が許容されたロック解除状態となるのである。 【0040】 操作筒軸55の下端からは小径軸部55aが延出されて、図4に示すように支持ケーシング31の対向する板状部31b間に挿入されている。小径軸部55aの外周には圧縮コイルバネ57が外嵌装着されており、バネ上端がスピンドルに連結固定された上部バネ受けカラー58に支持されると共に、バネ下端が小径軸部51aに外嵌固定した下部バネ受けカラー59に支持されている。従って、この圧縮コイルバネ57の弾発力によって操作筒軸55が下方のロック位置に向けてスライド付勢されている。 【0041】 また、小径軸部55aの下端近くには操作フランジ55bが備えられると共に、支持ケーシング31における板状部31bの内側には、エアシリンダ60で上下移動される操作部材61が配備されており、エアシリンダ60を突出作動させて操作部材61を上方に移動させると、この操作部材61の上端に備えたローラ61aによって操作フランジ55bが突き上げ操作され、操作筒軸55が圧縮コイルバネ57に抗して上方にスライドされ、上記したロック解除状態がもたらされる。 【0042】 このタイヤ検査装置においては、下リム1と上リム2とで挟持したタイヤWへの加圧空気の給気及び排気を下リム側および上リム側から行うよう構成されており、以下その構造について説明する。 【0043】 この実施形態では、上リム2と下リム1とで挟持したタイヤW内に連通する上リム側の第1通気路と、前記タイヤW内に連通する下リム側の第2通気路とを備えている。 【0044】 下リム側においては、第2通気路を構成する操作筒軸55における小径軸部55aの中心に、図4及び図5に示すように、操作筒軸55の内部空間に連通する通気孔aが形成されていると共に、小径軸部55aの下端部にロータリジョイント65が装備され、更に、ロータリジョイント65と図6に示す加圧空気供給装置66とが、図2に示すようにエアシリンダ67によって接続および分離可能なカプラ68を介して連通接続されている。 【0045】 加圧空気供給装置66は、コンプレッサや加圧空気を貯留したエアタンクなどの加圧空気供給源69から送出された加圧空気を、高圧の減圧弁70および電磁開閉弁72を介して、あるいは、低圧の減圧弁71および電磁開閉弁73を介して前記ロータリジョイント65に送り込むよう配管接続されている。また、電磁開閉弁72,73より下手側から大気に連通した第2通気路としての排気路dが分岐されると共に、この排気路dに電磁開閉弁74および消音器75が備えられている。 【0046】 上リム側においては、前記連結軸26と、その上端に連結された支持軸25の中心に亘って第1通気路を構成する通気孔bが穿設されると共に、この通気孔bと連結軸26に外嵌したリム支持軸27の外周に亘って複数の通気孔cが放射状に穿設されている。 【0047】 また、支持軸25の上端部と加圧空気供給装置76とが、図2に示すようにエアシリンダ77によって接続および分離可能なカプラ78を介して連通接続されている。この加圧空気供給装置76も下リム側と同様に、図6に示す加圧空気供給源79から送出された加圧空気を、高圧の減圧弁80および電磁開閉弁82を介して、あるいは、低圧の減圧弁81および電磁開閉弁83を介してカプラ78に送り込むよう配管接続されている。また、電磁開閉弁82,83より下手側から大気に連通した第1通気路としての排気路eが分岐されると共に、この排気路eに電磁開閉弁84および消音器85が備えられている。」 (甲7イ)図1 (甲7ウ)図5 (甲7エ)図6 8 甲8の記載 甲8には、以下の事項が記載されている。 (甲8ア) 「【0012】 <実施形態> 実施形態について図1から図6を参照して説明する。 本実施形態の発酵処理装置10は、図1に示すように、有機性廃棄物11の発酵処理を行うためのもので、発酵処理がされる有機性廃棄物11が収容される処理槽20と、処理槽20に対して、往復移動可能な攪拌装置30と、処理槽20の底部21に埋設され、有機性廃棄物11に空気を供給する空気供給装置50とを備えている。 ・・・ 【0023】 続いて、有機性廃棄物11に空気を供給する空気供給装置50について詳しく説明する。空気供給装置50は、図1に示すように、外部からの空気を取り込む空気供給源51と、空気供給源51からの給気を処理槽20内に送り込む本管53と、本管53から分岐して処理槽20の長手方向に延びる複数本(本実施形態では4本)の給気パイプ60とを備えている。なお、各給気パイプ60を配置する場所には、処理槽20の底部21にU字溝55(「溝部」の一例)が埋設されている。 【0024】 空気供給源51は、図1に示すように、電動送風機(ブロア)等であって、外部に設けられており、外部の空気を取り込んで所定の圧力にして接続された本管53に送風する。本管53は、塩化ビニル等の合成樹脂製であって、処理槽20の回収部27近傍の底部21に埋設されている。また、本管53は内外面とも平滑な円筒形となっており、内径が約200mm程度となっている。そして、本管53の途中には分岐用の配管が接続されており、この分岐用の配管を介して接続された各給気パイプ60に送風可能となっている。本管53の端部(空気供給源51とは反対側の端部)には、エンドキャップ53Aが嵌められている。 【0025】 U字溝55は、図1及び図4に示すように、上面が開口するようにして、処理槽20の底部21に4本平行に埋設されている。U字溝55は、処理槽20の長手方向に沿って、側壁23と平行に投入部25と回収部27の間に設けられており、給気パイプ60よりも上流側まで延伸している各U字溝55が両側壁23の間を等分割した位置に配置されている。また、U字溝55の上面が処理槽20の底部21の表面と面一になるようにU字溝55が底部21に埋設されている。U字溝55は、その幅及び深さの内寸Dが約120mm程度となっており、給気パイプ60を完全に収容できる。このようにU字溝55によって、給気パイプ60を収容する溝部を形成することで、コストダウンを図りつつ、給気パイプ60との寸法誤差を小さくすることができる。 【0026】 給気パイプ60は、ポリエチレン等の合成樹脂製であって、図6に示すように、外周側に突出する複数の環状突部61と、環状突部61間に形成される複数の環状溝部63とが形成された所謂コルゲート管である。給気パイプ60の環状突部61は、各々が独立した台形の山状となっている。各環状突部61の間のピッチは10mmから15mm程度となっている。一方、環状溝部63の谷幅は約3mmから5mm程度となっている。また、給気パイプ60の内面は平滑面となっており、図4に示すように、その内径φ1は約100mmとなっている。また、給気パイプ60の環状突部61の外径φ2は、約118mmとなっており、給気パイプ60をU字溝55内に収容した際に、U字溝55の内面と環状突部61との間にほぼ隙間がない状態となっている。各給気パイプ60の上流側の端部(本管53と接続される側とは反対側の端部)には、エンドキャップ67が嵌められている(図1参照)。 【0027】 環状溝部63には、図4及び図6に示すように、給気パイプ60の周方向に沿って間欠的に空気噴出孔65が形成されている。空気噴出孔65は、周方向に延びる長孔形状をなしており、各環状溝部63に4つ等間隔に設けられている。空気噴出孔65の周方向の長さは約10mm程度となっており、その幅は2〜3mm程度となっている。また、隣接する環状溝部63間において、空気噴出孔65は異なる位置に設けられている。より具体的には、隣接する環状溝部63では、空気噴出孔65間の距離の半分の位置に、交互に空気噴出孔65を並べた所謂千鳥状に配置されている。 【0028】 以上の構成により、処理槽20の底部21にU字溝55を埋設し、このU字溝55に給気パイプ60を収容することによって、処理槽20の底部21に給気パイプ60を配している。そして、U字溝55に給気パイプ60を収容した状態では、U字溝55の側内面と給気パイプ60の環状突部61との間にはほとんど隙間がない状態となっており、U字溝55の底面側に有機性廃棄物11が侵入することが抑制される。一方、U字溝55の内面と給気パイプ60の環状溝部63との間には隙間が設けられているため、U字溝55と接する側(底面側、側面側)の空気噴出孔65から供給された空気も環状溝部63とU字溝55の内面の隙間を通って、処理槽20内に供給される。」 (甲8イ)図4 (甲8ウ)図6 9 甲9の記載 甲9には、以下の事項が記載されている。 (甲9ア) 「【0015】 図1に示すように、ボイラ21には横向きの燃焼室22が形成され、この燃焼室22に本実施形態の燃焼装置31が取り付けられる。 図1及び図11〜図18に示すように、燃焼装置31の風箱32における中心部の水平な軸線100上にはパイプ状の燃焼用空気供給スロート(以下、単にスロートという)33が配置されている。このスロート33は風箱32内の後部の第1送風室34に接続され、この第1送風室34からスロート33内に一次空気が送られて、その一次空気がスロート33の先端開口35から燃焼室22内の前方に向かって噴出される。なお、本実施形態においては、図1の左側を前部とする。 【0016】 図1及び図2に示すように、スロート33内においてその軸線100上には先端を開口した中央燃料供給管36が貫通配置されている。この中央燃料供給管36の先端には一次燃料ノズル37が取り付けられ、その先端外周部には複数(本実施形態では6個)ノズル孔38が等間隔を隔てて配列されている。図3(a),図3(b)に示すように、前記ノズル孔38は軸線100方向から見て軸線100を中心とした半径線上に配置されるとともに、軸線100と直交する方向から見て軸線100に対して中心角θ1が30度〜80度(本実施形態では60度)程度の方向に向かって開口されている。そして、中央燃料供給管36を介して一次燃料ノズル37内には都市ガスよりなる燃料ガスが供給され、その燃料ガスがノズル孔38から燃焼室22内に対して放射方向に、つまり燃焼室22内の外周側の斜め前方に向けて噴射される。 【0017】 なお、スロート33内において一次燃料ノズル37の後部側には、着火用のパイロットバーナ(図示しない)が設けられている。 図1及び図3(a),(b)に示すように、前記ノズル孔38の直近の後部において、一次燃料ノズル37の外周面には、その外周面とスロート33の内周面との間に位置する保炎器41が取り付けられており、この保炎器41の外周部の6箇所には等間隔をおいて複数(実施形態では6箇所)の凸部43が形成されている。これらの凸部43間の凹部が通気口42になっているとともに、凸部43の先端とスロート33の内周面との間が狭い通気間隙44になっている。凸部43は前記ノズル孔38間の部分に対応して位置している。そして、スロート33内の一次空気が通気口42及び通気間隙44を通って燃焼室22内に前記軸線100に沿って噴出される。この保炎器41とスロート33とによって、燃焼室22内に一次空気を噴出するための一次空気ノズルが構成されている。保炎器41の前面は前記スロート33の先端面より所定長さ分だけ奥側に位置している。 ・・・ 【0022】 次に、以上のように構成されたバーナの作用について説明する。 図6及び図7に示すように、バーナの燃焼作動時には、一次燃料ノズル37の軸線100の周囲のノズル孔38から一次燃料ガスが燃焼室22に向かって斜め外周方向に噴出されて、一次火炎201が形成される。このとき、一次燃料ノズル37の周囲において、保炎器41の通気口42及び通気間隙44から一次空気が軸線100の延長方向に沿って燃焼室22内に噴出される。このとき、保炎器41がスロート33内に位置しているため、保炎器41の凸部43の前面側に小さな再循環流204が形成されることによって、この一次火炎201が、高空気比下において保炎されるとともに、一次火炎201が分割状態になって、表面積が増大し、その一次火炎201は温度低下される。」 (甲9イ)図1 (甲9ウ)図2 (甲9エ)図3 10 甲10の記載 甲10には、以下の事項が記載されている。 (甲10ア) 「【0029】 図2は本発明の一実施例によるバグフィルター濾過集塵装置の側断面図であり、図3は本発明の一実施例によるバグフィルター濾過集塵装置の斜視図である。図2及び図3を参照して本発明の構成と作用を詳しく説明する。 【0030】 まず、図2を参照すれば、本発明の一実施例によるバグフィルター濾過集塵装置100は、供給される汚染空気から粉塵などを捕集した後、外部に排出するバグフィルター110を使用するものであって、粉塵を濾過する多数のバグフィルター110が垂直方向に取り付けられている上部ケース120、上部ケース120の下端に設けられ、バグフィルター110から落ちる粉塵を回収する下部ケース130、及び下部ケース130の一面を貫通してバグフィルター濾過集塵装置100の内部に汚染空気を供給する2つ以上の相互平行な給気パイプ140を含む。 ・・・ 【0037】 給気パイプ140a、140bは、一端部が塞がれた円筒型であり、給気パイプ140a、140bの側面には空気噴射が上部ケース120や下部ケース130の側面内壁、すなわち装置内壁に向かうように側面排出孔150a、150bが形成されている。また、給気パイプ140a、140bの塞がれた端部には汚染空気が噴射される端部排出孔152a、152bをさらに含むことができる。端部排出孔152a、152bはスロット状であり得、端部排出孔152a、152bの個数には制限がない。スロットは所定幅を有する孔や隙間を言う。端部排出孔152a、152bは流動方向にも空気を噴射し、粉塵を除去する役割をする。」 (甲10イ)図3 11 甲11の記載 甲11には、以下の事項が記載されている。 (甲11ア)2頁右下欄12行〜3頁左上欄14行 「 本発明ではこの回転型部品供給機に於て円錐ボウル1内に投入された被供給部品をトラック2に移動させるために本発明では該円錐ボウル1の中心からトラック2に向かって空気流を噴射する手段を取りつけ、被供給部品が精選される部位に於て被供給部品が円錐ボウル1の上部まで貯溜されて不正姿勢の被供給部品を排除する妨げとならないように該被供給部品を排除するための空気の噴射の手段を取付けることである。回転軸3をパイプ状とし、該回転軸3を貫通して空気管6を設け該空気管6の下端の注入口8を図示しない空圧源に接続し、空気管3の上端に噴射口9を設ける。該噴射口9は噴射される空気が円錐ボウル1の底からトラック2に向かって円錐ポウル1の表面に沿って噴射流を形成するように、噴射口9は空気管6の上部に空気管6の側面に設置される。該噴射口9の下側は円錐ボウル1の底と同一の面を形成する。 整列部位において円錐ボウル1の上部に滞留する被供給部品を排除のために整列部位のトラック2の内縁の内側に上方から空気を噴射する排除ノズルl6を設け、空気流により被供給部品を円錐ポウル1の底の方に押しやる。」 (甲11イ) (甲11ウ)第2図 12 甲12の記載 甲12には、以下の事項が記載されている。 「【0002】 【従来の技術】従来よりコークス炉やガス発生炉等から発生したガスは導管を通して回収され、所要の後続設備で処理したのち、加熱用等に使用することが為されている。上記発生ガス回収システムにおいては、通常、図5に示すように、発生ガスはガス発生装置1より上昇管2を通して回収し、該上昇管2の上端に屈曲管3を介してダクト4に連続させており、発生ガスは上昇管2より屈曲管3を通してダクト4へと導通され、所要の装置へと送られている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】上記屈曲管3は上昇管2に対して、スペース的な問題やガス発生装置の運転条件等より通常直角方向に屈曲させており、そのため該屈曲部において、ガスは屈曲管3の上側部内壁面3aに衝突して流れる。よって、発生ガス中に含有される不純物が上側部内壁面3aに付着・堆積すると共に、この付着・堆積した不純物が対向する下側部内壁面3bに落下して、下側部内壁面3bにも付着・堆積する。さらに、屈曲管3と上昇管2の下側接続部分には通常噴射流体が上昇管側へ、即ちガス発生炉内へ流下することを防止するためのフランジ部3cが突出して取付られており、このフランジ部3cの背後部ではガスの渦流が発生するので屈曲管3の下部屈曲端部3eの部分の内壁面にもガス中の不純物が付着・堆積する。 【0004】上記の付着した不純物は何も対策をとらないと、次第に堆積・固化して、図6(A)(B)に示すような、大きな不純物の塊A,B,Cへと成長していく。 【0005】上記した問題に対して、図7に示すように、屈曲管3の上側部内壁面3aにノズル5を取り付け、ガス中の不純物の付着・堆積を防止する試みが為されてきた。しかしながら、上記ノズル5の噴射方向はノズル5の軸線と垂直方向の1方向のみであるため、上側部内壁面3aに対する不純物の付着・堆積を防止することは出来ても下側部内壁面3bへの不純物の付着・堆積の防止には不十分であった。また、当然のことながら、下側部の屈曲端部3eへの不純物の付着・堆積は殆んど防止出来なかった。」 (甲12イ)図5 (甲12ウ)図7 13 参考文献1について (1)参考文献1の記載 参考文献1には、以下の事項が記載されている。 (参1ア) 「【0010】図1は本発明に係るタイヤユニフォーミティマシンのタイヤチャッキング装置の実施の形態を示している。本実施の形態においても、タイヤユニフォーミティマシンの全体構成及び機能については、図2〜図4に示す従来例に記載されているものと同等であり、その説明を省略する。本実施の形態のタイヤチャッキング装置は、上方側の昇降軸1に締付ボルト2で取付けられた上チャッキング装置本体3と、駆動軸4に締付ボルト5で取付けられた下チャッキング装置本体6とによって構成されている。 【0011】上チャッキング装置本体3は、フランジ部7と円筒状部8とにより構成され、かつ上記締付ボルト2で昇降軸1に固定される上チャッキングリング9を備えている。そして、上チャッキングリング9の内側であって、円筒状部8に位置する箇所には、後述する下チャッキング装置本体6の下チャッキングリング10と嵌合する円錐状嵌合凹部11が設けられ、上チャッキングリング9の外側には軸方向へ摺動するのに必要な最少限の嵌合代(“零”スキ)を有する上記円筒状部8が同軸芯に形成されている。なお、円筒状部8の外周面は摺動面8aとなっている。 【0012】上チャッキングリング9の円筒状部8の外側には、摺動面8aと嵌合する上下動可能なスライドチャック12が配設されている。このスライドチャック12は、フランジ部7の内部で円周状に複数配置されたスプリング13により図1中で下方へ向かって常時付勢され、その下部側は円筒状部8の下端に固定したストッパブロック14と係合して保持されている。また、スライドチャック12の上面部は、フランジ部7に突設したピン15と係合しており、当該ピン15によりスライドチャック12は回転方向の動きが規制された状態で保持されている。そして、スライドチャック12の内側下端には、後述のロックロッド(ロック部材)16と係合するフック部17が形成されており、スライドチャック12の上下方向の可動ストロークは、当該ロックロッド16が容易にフック部17と係合又は離脱するのに必要な最少限の量Aと、係合した時に上チャッキングリング9と軸方向にスキを残すのに必要な量Bを有するように設定されている。また、上チャッキングリング9とスライドチャック12には、互いに連通する空気通路18,19がそれぞれ穿設されており、タイヤインフレート用の空気が空気通路18,19を通り、上側タイヤリム20を介してタイヤT内へと供給されるようになっている。このため、上側タイヤリム20は、ボルト21によりスライドチャック12に締付固定されている。 【0013】一方、下チャッキング装置本体6は、基端フランジ部22及び中間フランジ部23と先端側円錐状嵌合部24とによって構成され、かつ上記締付ボルト5で基端フランジ部22が駆動軸4に固定される下チャッキングリング10を備えている。そして、下チャッキングリング10の先端は、円錐状嵌合部24を介して上チャッキング装置3の上チャッキングリング9と嵌合するようになっている。なお、下側タイヤリム25は、ボルト26により下チャッキングリング10の中間フランジ部23に締付固定されている。 【0014】また、下チャッキングリング10の内部には、リム反力ロック装置(ロック機構)27が配設されている。このリム反力ロック装置27は、図示しない駆動装置により上下方向へ駆動されるロックシャフト28を備えており、該ロックシャフト28は下チャッキングリング10の内部に上下方向へ沿って貫通配置されている。そして、ロックシャフト28の先端には、外周面に傾斜したあり溝29を有するコーンリング30が固定され、該コーンリング30の外側には、あり溝29と係合する複数のロックロッド16が半径方向へブッシング31を介して摺動自在に取付けられている。」 (参1イ)図1 (参1ウ)図3 (2)参考文献1に記載された技術事項 上記(1)の記載及び図面から、参考文献1には、次の技術事項(以下「参1技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「 タイヤユニフォーミティマシンのタイヤチャッキング装置であって、 上方側の昇降軸1に締付ボルト2で取付けられた上チャッキング装置本体3と、駆動軸4に締付ボルト5で取付けられた下チャッキング装置本体6とによって構成され、 上チャッキング装置本体3は、フランジ部7と円筒状部8とにより構成され、かつ上記締付ボルト2で昇降軸1に固定される上チャッキングリング9を備え、 上チャッキングリング9の円筒状部8の外側には、摺動面8aと嵌合する上下動可能なスライドチャック12が配設され、 上チャッキングリング9とスライドチャック12には、互いに連通する空気通路18,19がそれぞれ穿設されており、タイヤインフレート用の空気が空気通路18,19を通り、上側タイヤリム20を介してタイヤT内へと供給されるようになっており、このため、上側タイヤリム20は、ボルト21によりスライドチャック12に締付固定されている、タイヤチャッキング装置。」 14 参考資料1について 参考資料1には、「みぞ【溝】」について、次の事項が記載されている。 「一般に、細長くくぼんだところ。」 第6 当審の判断 1 特許法第29条第2項(進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 (ア)タイヤユニフォミティの検査はタイヤを回転させて行うものであるから、甲2発明の「製品上がりのタイヤTに対してタイヤユニフォミティなどの製品検査を行う」「タイヤ試験装置2」は、本件発明1の「タイヤを回転させて検査するタイヤ検査装置」に相当する。 (イ)甲2発明の「上下1組のリム5U、5D」に「固定」された「タイヤT内に」「空気を」「供給」し、「タイヤT内に供給された空気に旋回流を与える」「タイヤ空気充填機構1」は、本件発明1の「間隔を開けて位置する上リム及び下リムによって挟持された前記タイヤ内に空気を供給する空気旋回供給部」に相当する。 (ウ)甲2発明では、「上下1組のリム5U、5D」に「固定」された「タイヤT内に圧縮空気を噴出する」「空気噴出口8は、タイヤ軸4U」の「タイヤTに対応した下端側」に「形成されて」いるので、「タイヤ軸4U」は、「上下1組のリム5U、5D」に「固定」された「タイヤT内」に挿入されていることが理解できることから、甲2発明の「タイヤ軸4U」は、本件発明1の「前記上リムと前記下リムとの間に挿入されたシャフト」に相当する。 (エ)甲2発明の「タイヤ軸4Uの軸心回りの内周壁であ」る「空気供給流路7の管壁」は、円状であり、仮想円を想定できることは明らかであるから、本件発明1の「前記シャフトの周りの仮想円」に相当する。また、甲2発明の「空気供給流路7の管壁に対して、この管壁の接線方向に形成されて」いる「空気噴出流路」は、本件発明1の「前記仮想円の接線方向に概ね沿って前記空気を噴射」する「噴射部」に相当する。そして、甲2発明の「タイヤ軸4Uの軸心回りの内周壁からタイヤ軸4Uの軸心回りの外周壁にある空気噴出口8までの空気噴出流路」は、「タイヤ軸4Uの軸心回りの内周壁から」形成されるので、この「空気噴出流路」は、「空気供給流路7の管壁」上に配置されていると理解することもできるから、甲2発明は、本件発明1の「前記噴射部は、前記仮想円上に配置され、」に相当する構成を備えているといえる。 よって、甲2発明の「タイヤ空気充填機構1」は、「タイヤ軸4Uの軸心回りの内周壁からタイヤ軸4Uの軸心回りの外周壁にある空気噴出口8までの空気噴出流路」が、「タイヤ軸4Uの軸心回りの内周壁であ」る「空気供給流路7の管壁に対して、この管壁の接線方向に形成され」、この「空気噴出流路」は、「タイヤT内に圧縮空気を噴出」し、「タイヤT内に供給された空気に旋回流を与える」ことと、本件発明1の「前記空気旋回供給部は、前記上リムの下面または下リムの上面に、前記シャフトの周りの仮想円を内部に有して形成され前記間隔側に開口した溝内に、噴射部を有し、前記噴射部は、前記仮想円上に配置され、前記仮想円の接線方向に概ね沿って前記空気を噴射して、前記空気を前記タイヤ内で旋回させる」こととは、「前記空気旋回供給部は、噴射部を有し、前記噴射部は、前記シャフトの周りの仮想円上に配置され、前記仮想円の接線方向に概ね沿って前記空気を噴射して、前記空気を前記タイヤ内で旋回させる」ことで共通する。 すると、本件発明1と甲2発明は次の点で一致し、次の点で相違する。 (一致点) 「タイヤを回転させて検査するタイヤ検査装置であって、間隔を開けて位置する上リム及び下リムによって挟持された前記タイヤ内に空気を供給する空気旋回供給部と、前記上リムと前記下リムとの間に挿入されたシャフトとを、有し、 前記空気旋回供給部は、噴射部を有し、前記噴射部は、前記仮想円上に配置され、前記仮想円の接線方向に概ね沿って前記空気を噴射して、前記空気を前記タイヤ内で旋回させる タイヤ検査装置。」 (相違点) 噴射部を、本件発明1では、「前記上リムの下面または下リムの上面に、前記シャフトの周りの仮想円を内部に有して形成され前記間隔側に開口した溝内に」有するのに対し、甲2発明では、噴射部に相当する「空気噴出流路」を「タイヤ軸4U」に有しており、「リム5U」の下面に溝が形成されているとの特定はない点。 イ 判断 上記相違点について検討する。 (ア)甲3技術事項(上記第5の3参照。)では、「上部リム5の中心付近に形成された径の異なる複数の凹部とロックシャフト3の側面によって・・・段々溝が形成され」ており、上リムの下面または下リムの上面に溝は形成されていない。 また、甲4技術事項(上記第5の4参照。)では、「下リム3のタイヤ1付近に形成された凸部と雄型係合部材8の側面によって・・・溝が形成され」ており、上リムの下面または下リムの上面に溝は形成されていない。 また、甲5技術事項(上記第5の5参照。)では、「下側リム7の中心付近に形成された凸部と下スピンドル3の側面によって・・・溝が形成され」、又は「上側リム5のタイヤT付近に形成された凸部と上スピンドル2の側面によって・・・溝が形成され」ており、上リムの下面または下リムの上面に溝は形成されていない。 一方、上記相違点に係る本件発明1の構成要素である「前記上リムの下面または下リムの上面に」「形成され」た「溝」は、溝が「面」に形成されているので、上リム内または下リム内に溝の両側壁を有するものと解することが自然である。したがって、甲3〜甲5技術事項における、ロックシャフト3の側面、雄型係合部材8の側面、下スピンドル3又は上スピンドル2の側面を利用し形成された「溝」とは異なるものといえる。 よって、甲2発明において、甲3〜5技術事項を適用しても、上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。 (イ)仮に、上記相違点に係る本件発明1の構成要素である「前記上リムの下面または下リムの上面に」「形成され」た「溝」が、甲3〜甲5技術事項における「溝」のように、溝の一方の側面が、ロックシャフト3の側面、雄型係合部材8の側面、下スピンドル3又は上スピンドル2の側面を利用した溝を含むと解したうえで、甲2発明に甲3〜5技術事項を適用した場合の構成を想定してみると、その場合には、甲2発明の「タイヤ軸4Uの軸心回りの外周壁」を一方の側壁として、「リム5U」の下面にに開口した「溝」が形成され、形成された「溝」内には、「タイヤ軸4Uの軸心回りの外周壁」に、噴射部に相当する「空気噴出流路」の「空気噴出口8」を有するような態様となる可能性はある。しかしながら、上記のような態様であっても、甲2発明において、仮想円は、「タイヤ軸4Uの軸心回りの内周壁であ」る「空気供給流路7の管壁」(具体的には甲2の図3Bの図符号7の点線円)であるから、当該仮想円は「タイヤ軸4Uの軸心回りの外周壁」を利用して形成された「溝」内に位置しないことは明らかである。また、甲2発明における仮想円として、「タイヤ軸4Uの軸心回りの内周壁であ」る「空気供給流路7の管壁」ではなく、その外側の円(具体的には甲2の図3Bの図符号4Uの実線円)を想定したとしても、その場合には、本件発明1と甲2発明の一致点であった、「空気噴出流路」(本件発明の噴射部に相当)が「仮想円の接線方向に概ね沿って前記空気を噴射」するという前提が満たされないこととなる。 したがって、上記のような仮定を想定したとしても、甲2発明において、上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。 (ウ)また、甲6〜12及び参考文献1(上記第5の6〜13参照。)には、上記相違点に係る本件発明1の構成についての記載も示唆もなく、上記相違点に係る本件発明1の構成が周知技術である証拠もない。 (エ)してみれば、甲2発明において、甲3〜12、参考文献1に記載された事項を適用しても、上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。 ウ 小括 よって、本件発明1は、甲2発明及び甲3〜12、参考文献1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明2ないし4について 本件発明2ないし4は、本件発明1を減縮した発明であり、上記相違点に係る本件発明1の構成を備えるものであるから、本件発明1と同じ理由により、甲2発明及び甲3〜12、参考文献1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 特許法第36条第6項第2号(明確性)について (1)請求項1ないし4に係る発明において、「仮想曲線」は具体的に如何なる曲線を含むのか、発明の詳細な説明の記載または当業者の技術常識を参酌しても、明確であるとはいえないとの指摘に対し、本件訂正請求により、本件発明1〜4において、仮想曲線を「仮想円」と訂正したことで、この取消理由は解消した。 (2)請求項1ないし4に係る発明において、「仮想曲線に沿って形成され前記間隔側に開口した溝」は、発明の詳細な説明の記載または当業者の技術常識を参酌しても、明確であるとはいえないとの指摘に対し、本件訂正請求により、本件発明1〜4において、溝を、「前記上リムの下面または下リムの上面に、前記シャフトの周りの仮想円を内部に有して形成され前記間隔側に開口した溝」と訂正したことで、この取消理由は解消した。 (3)請求項1ないし4に係る発明において、「前記タイヤ内に空気を旋回させながら供給する」との特定は、明確であるとはいえないとの指摘に対し、本件訂正請求による訂正によって、本件発明1〜4では、「タイヤ内に空気を供給」し、「前記空気を前記タイヤ内で旋回させる」ことが特定されたので、この取消理由は解消した。 3 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について (1)噴射部が仮想曲線上にない態様を含む請求項1ないし4に係る発明は、発明の詳細な説明に開示された内容を超えて拡張ないし一般化したものであり、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないとの指摘に対し、本件訂正請求により、本件発明1〜4は、噴射部が仮想円上にあるものに訂正されたので、この取消理由は解消した。 (2)本件特許明細書には、【0033】には、「この空気の渦は、あたかも、少なくとも、仮想円から上方に空気流が巻き上がる竜巻状(トルネード状)の渦であると考えられる。」との記載もあり、当該【0033】の記載の下線における現象に注目すると、課題解決のための作用機序が判然としないことから、請求項1ないし4に係る発明は、課題解決できない態様を包含しているとも理解できるので、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないとの指摘に対し、本件訂正請求により、本件発明1〜4に関連して、本件特許明細書【0033】における「この空気の渦は、・・・と考えられる。」との明瞭でない記載を削除する訂正がなされたので、この取消理由は解消した。 4 申立人の意見について (1)特許法第36条第6項第2号(明確性) 申立人は、意見書((2−2)(a)参照。)において、本件訂正請求により訂正された「仮想円を内部に有して形成され前記間隔側に開口した溝」について、当該溝の内部における仮想円の具体的な位置及び半径によって発明の技術的範囲は著しく変動するから、本件訂正後の請求項1の記載は依然として第三者に不測の不利益を及ぼす程度まで明確性を欠くものである旨主張する。 しかしながら、本件発明1は、【0007】「タイヤに空気を供給する際に、ゴムくずがチャック機構に侵入することを防止」することを課題として、「前記上リムの下面または下リムの上面に、前記シャフトの周りの仮想円を内部に有して形成され前記間隔側に開口した溝内に、噴射部を有し、前記噴射部は、前記仮想円上に配置され、前記仮想円の接線方向に概ね沿って前記空気を噴射して、前記空気を前記タイヤ内で旋回させる」ものであるから、噴射部は、溝の内部に有する仮想円上に配置され、仮想円の接線方向に概ね沿って空気を噴射することにより、ゴムくずがチャック機構に侵入することを防止するための空気旋回流を生成するものであり、この空気旋回流の生成との関係において、溝の内部における仮想円の具体的な位置及び半径が規定されることが理解できる。 よって、本件発明1は明確であり、申立人の上記主張は採用できない。 (2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件) 申立人は、意見書((3)(a)参照。)において、本件訂正後の請求項1では、「溝」が「仮想円を内部に有して形成され前記間隔側に開口し」ていることしか特定されておらず、当該溝の具体的な形状及び大きさについては一切特定されていないから、当該請求項1の記載は発明の課題を解決することができない態様、具体的にはタイヤ内に空気の旋回流を形成することができない態様、を明らかに含むものとなっている。したがって、本件訂正後の請求項1の記載は依然として発明の詳細な説明に記載したものとはいえない旨主張する。 しかしながら、本件発明1は、【0007】「タイヤに空気を供給する際に、ゴムくずがチャック機構に侵入することを防止」することを課題として、「前記上リムの下面または下リムの上面に、前記シャフトの周りの仮想円を内部に有して形成され前記間隔側に開口した溝内に、噴射部を有し、前記噴射部は、前記仮想円上に配置され、前記仮想円の接線方向に概ね沿って前記空気を噴射して、前記空気を前記タイヤ内で旋回させる」ものであるから、仮想円の接線方向に概ね沿って空気を噴射することにより、ゴムくずがチャック機構に侵入することを防止するための空気旋回流を生成するものであり、ある態様の溝(例えば四角い溝)では、仮に上記空気旋回流を生成できないとしたら、このような態様の溝が、本件発明1の発明特定事項になり得ないことは明らかである。 よって、本件発明1は発明の詳細な説明に記載したものであり、申立人の上記主張は採用できない。 第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許法第36条第6項第2号(明確性) 申立人は、特許異議申立書((4−2)イ(エ)参照。)において、請求項1には、噴射部が空気を噴射する方向について、「接線方向に概ね沿って」と記載されているが、このような「概ね」との表現を含む当該記載からは、噴射部の噴射方向が具体的に接線方向に対してどのような角度をなす方向であるのかが明確ではない旨主張する。 しかしながら、本件発明1は、【0007】「タイヤに空気を供給する際に、ゴムくずがチャック機構に侵入することを防止」することを課題として、「前記上リムの下面または下リムの上面に、前記シャフトの周りの仮想円を内部に有して形成され前記間隔側に開口した溝内に、噴射部を有し、前記噴射部は、前記仮想円上に配置され、前記仮想円の接線方向に概ね沿って前記空気を噴射して、前記空気を前記タイヤ内で旋回させる」ものであるから、仮想円の接線方向に概ね沿って空気を噴射することにより、ゴムくずがチャック機構に侵入することを防止するための空気旋回流を生成するものであり、この空気旋回流の生成との関係において、接線方向に対する噴射方向の程度が規定されることが理解できる。 よって、本件発明1は明確であり、申立人の上記主張は採用できない。 2 特許法第36条第6項第2号(明確性) 申立人は、特許異議申立書((4−2)イ(オ)参照。)において、請求項1に係る発明は、「溝内に」「空気を噴射する」のか「噴射部を有する」のかを明確に特定できない旨主張する。 しかしながら、本件発明1は、「溝内に、噴射部を有し」とあり、明確に特定できる。 よって、本件発明1は明確であり、申立人の上記主張は採用できない。 3 特許法第36条第6項第2号(明確性) 申立人は、特許異議申立書((4−2)カ(イ)参照。)において、請求項1は、シャフトの配置について、「前記上リムと前記下リムとの間に挿入されたシャフト」と記載されているが、当該記載に基づけばシャフトは上リムと下リムとの間の間隔部分にたとえば水平方向に挿入されているようにも理解され、その具体的な構造を明確に特定することができない旨主張する。 しかしながら、本件発明1は、「前記上リムと前記下リムとの間に挿入されたシャフトとを、有し、前記空気旋回供給部は、前記上リムの下面または下リムの上面に、前記シャフトの周りの仮想円を内部に有して形成され前記間隔側に開口した溝内に、噴射部を有し、前記噴射部は、前記仮想円上に配置され、前記仮想円の接線方向に概ね沿って前記空気を噴射して、前記空気を前記タイヤ内で旋回させる」ものであるから、シャフトは上リムと下リムとを貫通する方向に挿入されていることが理解できる。 よって、本件発明1は明確であり、申立人の上記主張は採用できない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他には、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 タイヤ検査装置 【技術分野】 【0001】 本発明は、タイヤ検査装置に関し、特に検査のためにタイヤに空気を供給する際にタイヤ内に存在することがある粉塵、例えばゴムくず対策に関するものである。 【背景技術】 【0002】 従来、タイヤ検査装置としては、例えば特許文献1に開示されているようなものがある。特許文献1の技術によれば、タイヤを上リムと下リムとで挟持した後に、空気をタイヤ内に供給して、タイヤを膨張させた後に、検査を行う。タイヤへの空気の供給は、上リムと下リムとを貫通し、内部に空気が供給される連通管の上リムと下リムとの間に位置する部分に、連通管の半径方向に貫通した複数の噴射口を所定角度ごとに設け、これら噴射口からタイヤ内に空気を噴射させることによって、行っていた。なお、連通管は、上リムに挿通されたシャフト内に形成され、シャフトは、上リムに嵌合されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】 特開2013−83549号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 ところで、下リムの下方には、上リムの上下移動をロックして下リムとの上下間隔を固定するチャック機構が設けられている。チャック機購による上リムと下リムとの固定状態の変化は、タイヤ検査装置が備えるロードセルによる計測精度に影響を及ぼす。 【0005】 そのため、例えば、シャフトとチャック機構との接触部で摩耗が発生しないように、シャフトには、硬度の高い材質を使用し、またシャフトには摩耗が発生しないような表面処理が行われている。さらには、シャフト接触部には摩耗や焼き付きが起こらないように潤滑剤が塗布される。 【0006】 しかし、タイヤに空気を供給する際に、タイヤ内のゴムくずが巻き上げられ、たとえば、チャック機構のシャフトとの接触部にゴムくずが侵入すると、上記接触部が摩耗したり、接触部にゴムくずを噛み込んだまま上リムを固定したりすることがある。その結果、上リムの固定状態が変化してしまい、上記計測精度に影響を及ぼすおそれがある。チャック機構にゴムくずが侵入する原因としては、例えば、下リムとシャフトとのスキマを通じてゴムくずがチャック機構に侵入することが考えられる。 なお、上記の特許文献1は、上リムに嵌合されたシャフトを下リム下方のチャック機構に挿入する例であるが、下リムに装着されたシャフトを上リム上方のチャック機構に挿入する例もあり、その場合にも同様である。 【0007】 本発明は、タイヤに空気を供給する際に、ゴムくずがチャック機構に侵入することを防止したタイヤ検査装置を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明の1態様のタイヤ検査装置は、上リム及び下リムで挟持したタイヤ内に空気を供給した状態で、前記タイヤを前記上リム及び下リムと共に回転させて、前記タイヤを検査するものである。タイヤ内に空気を供給するにあたっては、空気旋回供給部が、上リム及び下リムによって挟持されたタイヤ内で、空気を旋回させる。この空気の旋回流は、次第に空気の渦を形成する。 【0009】 このように構成したタイヤ検査装置では、タイヤ内に空気を供給する際に、タイヤ内に空気の渦が発生するので、当該空気の渦が壁となり、タイヤ内に滞留しているゴムくずが、空気の渦よりも上方に巻き上がることが防止され、当該滞留状態を維持するものと考えられる。その一方で、仮に、ゴムくずが空気の渦に巻き込まれたとした場合でも、当該ゴムくずは、空気の旋回流にのって回転するのみである。その結果、インフレートによってタイヤ内のゴムくずがチャック機構に侵入することを、適切に防止することができる。 【0010】 上記の態様のタイヤ検査装置において、前記空気旋回供給部は、空気を前記タイヤ内に仮想的に描かれた仮想曲線の接線方向に概ね沿って噴射する噴射部を有している。 【0011】 このように構成されたタイヤ検査装置では、タイヤ内の仮想曲線の接線方向に空気が噴射されることによってタイヤ内で空気の渦が発生する。 【0012】 更に、複数の前記噴射部を前記仮想曲線に沿って間隔をあけて配置することができる。このように構成すると、より確実に空気の渦を発生させることができる。 【0013】 前記噴射部は、前記上リムに設けることもできるし、下リムに設けることもできるし、上リムと下リムとの間に設けることもできる。 【0014】 空気旋回供給部は、具体的には、例えば、前記上リム及び前記下リムの少なくとも一方を貫通して形成され、空気通路を有し、前記仮想曲線は、概ね前記空気通路の周囲に仮想的に描かれている構成とすることができる。 【0015】 あるいは、空気旋回供給部は、前記上リムと前記下リムとの間には、前記空気通路を兼ねるシャフトが挿入されており、前記上リムと前記下リムとの間で前記シャフトを貫通して形成された分岐空気通路が設けられており、前記仮想曲線は、概ね前記分岐空気通路の周囲に仮想的に描かれている構成とすることもできる。 【図面の簡単な説明】 【0016】 【図1】 本発明の第1の実施形態のタイヤ検査装置の部分省略縦断正面図である。 【図2】 図1のタイヤ検査装置の部分省略平面図である。 【図3】 図1のタイヤ検査装置の部分拡大縦断正面図、噴射部の平面図である。 【図4】 第2の実施形態のタイヤ検査装置の部分省略縦断正面図である。 【図5】 第3の実施形態のタイヤ検査装置の部分省略縦断正面図である。 【図6】 第4の実施形態に使用する噴射部の斜視図である。 【発明を実施するための形態】 【0017】 本発明の第1の実施形態のタイヤ検査装置1を図1乃至図3に示す。このタイヤ検査装置1では、図1に示す上リム2と下リム4とがタイヤ6を挟持した状態で、タイヤ6内に空気が供給されて、タイヤ6を膨張させる。この膨張状態で、タイヤ6を所定速度で回転させて、タイヤ6の動的釣り合いを検査する。 【0018】 下リム4は支持回転装置5に取り付けられ、上リム2は破線で示す昇降装置に取り付けられ、下リム4にタイヤ6が取り付けられた状態で、上リム2が昇降装置によって降下させられて、タイヤ6を挟持する。 【0019】 上リム2の中央には貫通孔8が形成され、この貫通孔8には上リムシャフト10が挿通されており、その頭部にあるフランジ12が上リム2の上部の平坦な凹面(凹所の底面)14に接触し、ボルト(図示せず)によって凹面14に結合されている。上リムシャフト10の内部には、その長さ方向に沿って空気供給通路16が形成されている。 【0020】 上リムシャフト10は、下リム4の中央に形成されている貫通孔18を通過して、下リム4の下部に取り付けられている支持回転装置5内に進入している。昇降装置によって上リム2が降下したとき、支持回転装置5の内部にある空気供給源(図示せず)に上リムシャフト10が結合され、また、上リム2、下リム4、タイヤ6が一体化すると共に、下リム4に支持回転装置5によって与えられた回転がタイヤ6と上リムシャフト10と上リム2とに伝達され、上リム2、下リム4、タイヤ6が一体的に回転するように構成されている。上リム2と下リム4との上下の位置関係を固定するためのチャック機構が、このタイヤ検査装置1に設けられている。 【0021】 即ち、チャック機構の一部として、上リムシャフト10の下部外周面には、その長さ方向に沿って間隔をおいて複数の溝500が形成され、チャック機構の他の部分として、これら溝500の周囲の所定位置に90度の間隔をおいて4つの爪ブロック502が位置する。 【0022】 各爪ブロック502は、支持回転装置5のハウジング504に取り付けられており、ハウジング504は、下リム4に取り付けられている。爪ブロック502の上リムシャフト10側の端には、溝500に進入可能な爪506が形成されている。各爪ブロック502は、上リムシャフト10に進退可能にハウジング504に取り付けられている。各爪ブロック502の上リムシャフト10と反対側の端部は、ハウジング504から外部に突出している。 【0023】 その突出部分にガイドピン508が取り付けられ、これらガイドピン508は、ハウジング504の外部に配置されたガイドブロック510のガイド溝512に挿通されている。ガイド溝512は、上部から下方に向かう途中までは直線状に伸び、途中から外方に向かって斜め下方に傾斜して伸び、その後直線に下部まで伸びている。図示していないガイドブロック510の駆動機構によってガイドブロック510が上下動することによってガイドピン508がガイド溝512に案内されることによって爪ブロック502が進退して、爪506が溝500に進入したり後退したりする。 【0024】 図1では、その右側に示した爪ブロック502の爪506が溝500に進入した状態が示され、その左側に示した爪ブロック502の爪506が溝500から後退した状態が示されている。各爪506が1つの溝500に進入した状態で、上リム2と下リム4との上下の位置関係が固定される。爪506が溝500から後退した状態で、上リム2と下リム4との上下の位置関係の固定が解除される。 【0025】 上リム2と下リム4との固定状態の変化は、計測精度に影響を及ぼすので、上リムシャフト10とハウジング504との接触部で摩耗が発生しないように、上リムシャフト10には、硬度の高い材質を使用し、また上リムシャフト10には摩耗が発生しないような表面処理が行われている。さらに、上リムシャフト10とハウジング504との接触部には摩耗や焼き付きが起こらないように潤滑剤が塗布されている。 【0026】 なお、下リム4と上リムシャフト10との間と、ハウジング504と上リムシャフト10との間には、微小な隙間がある。この隙間にゴムくずが侵入すると、上述したように上リム2の固定状態が変化してしまい、計測精度に影響を及ぼすおそれがある。 【0027】 上リムシャフト10のフランジ12には、支持軸20の下端に形成したフランジ22が図示していないボルトによって結合されており、支持軸20と上リムシャフト10とは同心に配置されている。支持軸20が昇降装置に結合されて、支持軸20を昇降させることによって、上リム2が上リムシャフト10と共に昇降される。 【0028】 上リムシャフト10のフランジ12の周囲には、環状体24が配置され、上リム2の凹面14にボルト(図示せず)によって固定されている。環状体24は中央に環状の環状内孔26を有している。環状内孔26は、上リムシャフト12のフランジ12の外周面に接触して、環状体24を位置決めしている。環状体24は、略フランジ状の形状をしており、その凹所が、凹面14との間で第1空気通路28を形成している。 【0029】 この第1空気通路28が上リムシャフト10の空気供給通路16と連通するように、フランジ12には、空気連絡通路30が形成されている。空気連絡通路30は、フランジ12の半径方向に沿って形成されている。空気連絡通路30は、複数、例えば図2に示すように6個設けられている。複数の空気連絡通路30は、フランジ12の中心の周りに配置され、例えば所定角度、例えば60度間隔ごとに配置されている。 【0030】 上リム2の下面には、環状の溝32が形成されている。この溝32は、環状体24の外周面に対応する位置から上リムシャフト10側に幾分よった位置までの幅を有し、下リム4側が開口している。この溝32によって仮想曲線(ここでは仮想円)が描かれており、各溝32内に、例えば複数、具体的には6個の噴射部34が、所定角度、例えば60度ごとに設けられている。この仮想円は、上リムシャフト10の外周面よりも外方の位置にある。 【0031】 ここに、仮想曲線とは、仮想的にタイヤ6内に描かれた曲線であり、本実施形態では、この種の曲線として、中心(例えば上リムシャフト10の中心軸)を持ち、上リム2側、下リム4側、および上リム2と下リム4との間のいずれかに描かれた仮想円が用いられている。 【0032】 そのため、後述の第2〜第4実施形態にも共通するが、仮想円38上にまんべんなく等間隔で各噴射部34を配置するのではなく、噴射部34を1または複数個配置することができる。 【0033】 これら噴射部34それぞれは、第1空気通路28に連通しており、第1空気通路28から供給された空気をタイヤ6内に噴出して、タイヤ6を膨張させる。ここに、噴射部34の空気圧、空気量としては、タイヤ6内で旋回流を生成し、次第に空気の渦を形成できるようなものに、予め設定されている。 【0034】 図3(a)に拡大して示すように、各噴射部34では、第1空気通路28と溝32とを連通させるように、上リムシャフト10と平行に連通孔(第2空気通路)36が形成されている。第1空気通路28と連通孔36とで、本発明にいう「空気通路」が形成されている。 【0035】 各連通孔36は、平面視した場合、上リムシャフト10の中心軸を中心として描いた仮想円38上に位置している。これら連通孔36それぞれには、噴射部34の一構成部材であるパイプ40が、挿通されている。連通孔36とパイプ40との間は、これら連通孔36とパイプ40との間に空気が流入しないように、シーリングなどにより密着状態を保持している。これらパイプ40は、連通孔36側に一端が位置し、他端部は、環状の溝32内に位置している。パイプ40は、連通孔36側の端部が開口し、溝32側の端部は閉塞されているが、溝32側の周壁には、噴出孔42が形成されている。これら噴出孔42は、図2に矢印で示すように、仮想円38のそれぞれ異なる位置における接線方向に沿い、かつ同一方向を向いている。各パイプ40は、図3(b)に示す扇形のフランジ46に溶接等、種々可能な方法で取り付けられ、このフランジ46は、当該フランジ46に形成された長孔48に挿通されたボルト49によって溝32の底33に固定されている。これら噴出孔42から同じ速度、同じ流量で空気が噴出される。これら空気連絡通路30、第1空気通路28、連通孔36及び噴射部34が、空気旋回供給部を構成している。 【0036】 このタイヤ検査装置1では、上リム2と下リム4とでタイヤを挟持し、支持回転装置5内の空気供給源から空気供給通路16に空気を供給すると、空気は、各空気連絡通路30、第1空気通路28、連通孔36を介して噴射部34の噴出孔42から噴出され、タイヤ6を膨張させる。このとき、各噴出孔42は、図2に示す仮想円38の接線方向に沿って同一方向を向いているので、タイヤ6内に上リムシャフト10の周りを回る旋回流が形成される。この旋回流は次第に空気の渦となる。 【0037】 仮に、ゴムくずが空気の渦に巻き込まれたとした場合でも、当該ゴムくずは、空気の旋回流にのって回転するのみである。その結果、インフレートによってタイヤ内のゴムくずがチャック機構に侵入することを、適切に防止することができる。 【0038】 本発明の第2の実施形態のタイヤ検査装置1aを図4に示す。第1の実施形態では、上リム4に噴射部34を設け、上リムシャフト10のフランジ12の周囲に環状体24を設けたが、第2の実施形態のタイヤ検査装置1aでは、これらが除去されている。下リム4の上面側に、第1の実施形態のタイヤ検査装置1の上リム2に形成した環状の溝32と同様な溝32aが形成されている。この第2実施形態のタイヤ検査装置1aでは、環状の溝32aが上リム2側に開口している。この溝32a内に第1の実施形態の噴射部34と同様に構成された噴射部34aが噴射部34と上下が逆の状態で設けられている。 【0039】 この第2実施形態のタイヤ検査装置1aでは、第1実施形態のタイヤ検査装置1と同様に、仮想円上に各噴射部34aが位置し、それらそれぞれの噴出孔は、仮想円の接線方向に沿って同一方向に設けられている。 【0040】 しかしながら、第2実施形態のタイヤ検査装置1aでは、仮想円は、下リム4側に描かれており、この仮想円上に、各噴射部34aが設けられている。また、この第2実施形態では、上リム2の上下移動に影響を与えない空気路として、例えば、パイプ50が、上リムシャフト10の外周面よりも外方の位置で、下リム4を貫通し、噴射部32aに向けて直線的に設けられている。このパイプ50は、ハウジング504の外部に出て、空気供給源(不図示)に接続されている。 【0041】 この第2実施形態では、上リムシャフト10の上部ではなく、下部、たとえば、概ね、空気供給のためのパイプ50の周囲に仮想的に形成された仮想円のそれぞれ異なる位置における接線方向に沿って、各噴射部34aから空気が噴射される。なお、この第2実施形態においても、仮想の円弧上に各噴射部34aを配置してもよいことはいうまでもない。 【0042】 他の構成は、第1の実施形態のタイヤ検査装置と同様であるので、詳細な説明は省略する。 【0043】 このように構成されたタイヤ検査装置1aにおいても、上リム2と下リム4とでタイヤを挟持し、支持回転装置内の空気供給源から空気供給通路16に空気を供給すると、空気は、パイプ50を介して噴射部34aに供給されて噴出され、タイヤ6を膨張させる。このとき、噴出孔は仮想円の接線方向に沿って同一方向を向いているので、タイヤ6内に空気の旋回流が形成される。この旋回流が次第に空気の渦となる。 【0044】 当該空気の渦が壁となり、タイヤ内に存在するゴムくずが、空気の渦よりも上方に巻き上がることが防止され、タイヤ内で滞留しているゴムくずが滞留状態を維持するものと考えられる。その一方で、仮に、ゴムくずが空気の渦に巻き込まれたとした場合でも、当該ゴムくずは、空気の旋回流にのって回転するのみである。その結果、インフレートによってタイヤ内のゴムくずがチャック機構に侵入することを、適切に防止することができる。 【0045】 また、第2実施形態では、空気供給路としてのパイプ50を、空気供給源(不図示)から、上リムシャフト10の外周面よりも外方の位置で、下リム4を貫通し、噴射部32aに向けて直線的に設けているので、上リムシャフト12を貫通し、且つ、タイヤ6内を横切り、上リムシャフト10の空気供給通路18と連通する空気流路となるパイプを設ける場合とは異なり、チャック機構を調整して上リム2の上下位置を調節する際に、パイプ50が下リム4に引っかからず、上リム2の上下位置の調節が、阻害されることがない。 【0046】 第3の実施形態のタイヤ検査装置1bを図5に示す。第1、2の実施形態では、上リム2または下リム4に噴射部34、34aを設けたが、第3の実施形態のタイヤ検査装置1bでは、上リムシャフト10における上リム2と下リム4との間に位置する部分に、噴射部34bが設けられている。この実施形態では、上リム2と下リム4との間に、仮想円が描かれており、その仮想円上に噴射部34bが位置している。なお、この第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、仮想の開曲線または閉曲線が描かれていてもよく、これら開曲線または閉曲線上に1または複数の噴射部34bを設けてもよい。 【0047】 第3実施形態では、上リムシャフト10の中心軸を中心として描いた仮想円上の異なる位置に複数の噴射部34bが位置し、それらそれぞれの噴出孔42aは、仮想円のそれぞれ異なる位置における接線方向に沿って同一方向に設けられている。これら噴射部34bそれぞれは、上リムシャフト10内の空気供給通路16を貫通されてタイヤ6側に突出させたパイプ54の先端部を下リム4側に折り曲げて、噴出孔42aを第1の実施形態の噴出孔42と同様に形成したものである。他の構成は、第1の実施形態のタイヤ検査装置1と同様であるので、詳細な説明は省略する。 【0048】 このように構成されたタイヤ検査装置1bにおいても、上リム2と下リム4とでタイヤを挟持し、支持回転装置内の空気供給源から空気供給通路16に空気を供給すると、空気は、パイプ54を介して各噴射部34bに供給されて噴出され、タイヤ6を膨張させる。このとき、噴出孔42aは仮想円のそれぞれ異なる位置における接線方向に沿って同一方向を向いているので、タイヤ6内に空気の旋回流が形成される。その旋回流は次第に竜巻状の空気の渦となると考えられる。 【0049】 当該空気の渦が壁となり、タイヤ内に滞留しているゴムくずが、空気の渦よりも上方に巻き上がることが防止され、当該滞留状態を維持するものと考えられる。その一方で、仮に、ゴムくずが空気の渦に巻き込まれたとした場合でも、当該ゴムくずは、空気の旋回流にのって回転するのみである。その結果、インフレートによってタイヤ内のゴムくずがチャック機構に侵入することを、適切に防止することができる。 【0050】 第4の実施形態のタイヤ検査装置の噴射部34cを図6に示す。この噴射部34cは、角形のパイプの端部の近傍の側壁に噴出孔42bを形成し、この噴出孔42bと対向するように、傾斜壁56をパイプの内部に設けたものである。他の構成は、第1乃至第3の実施形態のいずれかと同様である。 【0051】 このように傾斜壁56を設けることによっても、仮想円の接線方向に良好に空気を噴射することができる。なお、円形のパイプを利用して、内部に傾斜壁を設けることも無論可能である。 【0052】 第1乃至第3の実施形態では、噴出孔42、42a、42bは、仮想円の接線方向を向くように配置したが、接線方向からずれて配置することもできる。例えば接線方向を挟んで、上リムシャフト10側またはタイヤ6側にずれて噴出孔42、42a、42bを配置することもでき、例えば上リムシャフト10側またはタイヤ6側に30度程度ずれて配置することもできる。 【0053】 第1乃至第3の実施形態では、噴射部34、34a、34bの数を6個としたが、これに限ったものではなく、例えば最低限度1個だけ設けることもできる。また、第1乃至第3の実施形態では、噴射部34、34a、34bは、1つの仮想円の各接線方向にそって設けたが、仮想曲線(仮想の開曲線や閉曲線など)を同心状に複数設け、各仮想曲線の接線方向にそれぞれ少なくとも1つ設けることもできる。 【0054】 第1の実施形態では、環状体24内に空気通路を形成したが、これを除去し、例えばパイプによって空気連絡通路30と噴射部34のパイプ40とを結合するように構成することもできる。同様に第2の実施形態では、空気供給源(不図示)と噴射部34aとをパイプ50で接続したが、第1実施形態のように、下リム4内に、空気連絡通路30と同様構成の空気連絡通路と、空気通路(第1空気通路28及び連通孔36)とを形成し、これらによって空気供給通路16と噴射部34aとを接続してもよい。 【0055】 このように、第2実施形態を第1実施形態と同様の空気供給経路とした場合には、シャフトを貫通し、且つ、タイヤ6内を横切る空気流路となるパイプを設ける場合とは異なり、チャック機構を調整して上リムの上下位置を調節する際に、その上下位置の調節が、パイプが下リムに引っかからず阻害されることがない。 【0056】 第1〜第3実施形態では、仮想円38は、上リムシャフト10の中心軸を中心として描かれていたが、旋回流を生成し、タイヤ内に空気の渦を形成できる範囲内であれば、上リムシャフト10の中心軸から水平方向にずれた位置を中心とした仮想円であってもよい。 【0057】 なお、本発明における空気流路の構成は、第1〜第3実施形態の例には限られない。タイヤ6の外部からタイヤ6内の噴射部34a〜34cに空気を供給できる構成であれば、どのような構成であってもよい。例えば、第1〜第3実施形態では、空気流路が上リム2と下リム4との間の対向領域に開口しているが、特にこれには限られない。これは、噴射部34a〜34cが設けられる場所にもよるが、これら噴射部が上リム2または下リム4の外周面の外方に設置されているような特殊な場合が考えられる。このような場合、空気流路は、最終的に噴射部34a〜34c方向に開口していればよいので、特に、前記対向領域に開口する必要はない。 【0058】 また、空気流路の構造も、第1〜第3実施形態で例示したものには限られず、たとえば、メイン空気流路の先端から複数の分岐流路を持つ空気路の1または複数を、タイヤ6の外部から上リム2または下リム4を貫通させ、各分岐流路を噴射部34a〜34c方向に開口させてもよい。要するに、噴射部34a〜34cによって旋回流を形成することができればよい。 【0059】 あるいは、第3実施形態(図5参照)のように、上リムシャフト12の空気供給通路18から空気流路を分岐するように形成するのではなく、上リムシャフト12の機能を持たない空気供給専用の部材を、上リム2または下リム4を貫通させずに、設け、噴射部34a〜34c方向に開口させてもよい。 【0060】 さらに、仮想円38の直径も、第1〜第3実施形態では、上リム2または下リム4の直径とほぼ同じかそれよりも小さく描かれているが、本発明の作用効果に影響を与えない範囲内であれば、上リム2または下リム4の直径よりも大きくてもよい。 【0061】 本発明の第1〜第3実施形態では、空気の渦は、仮想円よりも上方に空気が巻き上がるあたかもトルネード状であるため、特に、仮想円よりも下方に存在するゴムくず(例えば、タイヤ底のたまり屑)が、空気の渦に阻害されてタイヤ6内で巻き上がらないので、仮想円よりも下のゴムくず対策に特に有益である。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 タイヤを回転させて検査するタイヤ検査装置であって、間隔を開けて位置する上リム及び下リムによって挟持された前記タイヤ内に空気を供給する空気旋回供給部と、前記上リムと前記下リムとの間に挿入されたシャフトとを、有し、 前記空気旋回供給部は、前記上リムの下面または下リムの上面に、前記シャフトの周りの仮想円を内部に有して形成され前記間隔側に開口した溝内に、噴射部を有し、前記噴射部は、前記仮想円上に配置され、前記仮想円の接線方向に概ね沿って前記空気を噴射して、前記空気を前記タイヤ内で旋回させる タイヤ検査装置。 【請求項2】 請求項1記載のタイヤ検査装置において、 前記下リムは、穴を有し、 前記上リムは、前記シャフトを有し、前記シャフトが前記穴に挿入され、前記穴と前記シャフトとの間に空隙があり、 前記穴は、前記下リムを貫通した貫通孔であり、 前記下リムは、支持回転装置に取り付けられ、 前記シャフトは、前記貫通孔を介して前記支持回転装置内に進入し、 前記下リムと前記上リムとの位置関係を固定するチャック機構が、前記シャフトと前記支持回転装置との間に設けられている タイヤ検査装置。 【請求項3】 請求項2記載のタイヤ検査装置において、 前記下リムは、前記支持回転装置が有するハウジングに取り付けられ、 前記ハウジングは、前記貫通孔に連なる穴を有し、この穴に前記シャフトが挿入され、 前記チャック機構は、前記ハウジングと前記シャフトとの間に設けられているタイヤ検査装置。 【請求項4】 請求項1記載のタイヤ検査装置において、前記噴射部は、前記噴射部が設けられた上リムに設けられた空気通路に接続されているパイプを有し、前記パイプは、その周壁に前記接線方向に概ね沿って開口を有し、前記空気旋回供給部は、前記上リムの上面に設けられた凹所に、下面が開口した凹所を有し前記シャフトに挿通された環状体が取り付けられて形成された別の空気通路を有し、この別の空気通路が前記空気通路に連通している タイヤ検査装置。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照 |
異議決定日 | 2022-03-30 |
出願番号 | P2019-541608 |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(G01M)
P 1 651・ 121- YAA (G01M) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
井上 博之 |
特許庁審判官 |
渡戸 正義 ▲高▼見 重雄 |
登録日 | 2020-12-04 |
登録番号 | 6804174 |
権利者 | 大和製衡株式会社 |
発明の名称 | タイヤ検査装置 |
代理人 | 木村 正俊 |
代理人 | 木村 正俊 |