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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B66B
管理番号 1386150
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-09-09 
確定日 2022-04-11 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6841379号発明「エレベーターの自動呼び登録システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6841379号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める。 特許第6841379号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6841379号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、2019年(平成31年) 3月15日を国際出願日とするものであって、令和 3年 2月22日にその特許権の設定登録がされ、令和 3年 3月10日に特許掲載公報が発行された。その後、その請求項1に係る特許について、令和 3年 9月 9日に特許異議申立人金田綾香(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和 3年11月26日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和 4年 1月28日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)に対する意見の求めの指定期間内に、申立人は、意見書を提出しなかった。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下のアないしウのとおりである(下線は、訂正事項である。)。
ア 請求項1に係る「エレベーターの自動呼び登録システム」について、「かごに設けられたかご側ビーコン装置」を備えることを追加して「検出するセンサと、」を「検出するセンサと、前記かごに設けられたかご側ビーコン装置と、」に訂正するとともに、「携帯端末」について「携帯端末は、前記かご側ビーコン装置からの電波を受信した場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求の自動送信を一定期間抑止する」ことを追加して「備えたエレベーターの自動呼び登録システム」を「備え、前記携帯端末は、前記かご側ビーコン装置からの電波を受信した場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求の自動送信を一定期間抑止するエレベーターの自動呼び登録システム」と訂正する。
イ それぞれ請求項1の記載を引用する請求項2及び3の記載をともに請求項1の記載を引用しない記載に訂正する。
ウ 発明の詳細な説明の段落【0006】の「この発明に係るエレベーターの自動呼び登録システムは、エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置と、前記エレベーターのかごへ出入りする物体を検出するセンサと、携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録しない制御装置と、を備えた。」という記載を「この発明に係るエレベーターの自動呼び登録システムは、エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置と、前記エレベーターのかごへ出入りする物体を検出するセンサと、前記かごに設けられたかご側ビーコン装置と、携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録しない制御装置と、を備え、た前記携帯端末は、前記かご側ビーコン装置からの電波を受信した場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求の自動送信を一定期間抑止する。
この発明に係るエレベーターの自動呼び登録システムは、エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置と、前記エレベーターのかごへ出入りする物体を検出するセンサと、携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録しない制御装置と、を備え、前記携帯端末は、前記乗場側ビーコン装置から電波を受信した際に、呼び登録システムアプリケーションが起動しており、表示部において呼び登録システムアプリケーションの操作画面を操作できる状態である場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信しない。
この発明に係るエレベーターの自動呼び登録システムは、エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置と、前記エレベーターのかごへ出入りする物体を検出するセンサと、携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録しない制御装置と、を備え、前記携帯端末は、前記乗場側ビーコン装置から電波を受信した際に、呼び登録システムアプリケーションが起動しており、表示部において呼び登録システムアプリケーションの操作画面を操作できない状態である場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信する。」に訂正する。
そして、本件訂正請求の請求項1ないし3に係る訂正は、本件訂正前の一群の請求項〔1−3〕に対して請求されたものであり、明細書に係る訂正は、上記一群の請求項〔1−3〕について請求されたものである。したがって、本件訂正請求は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第120条の5第4項の規定に適合する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否等
ア 請求項1に係る訂正について
請求項1に係る「かごに設けられたかご側ビーコン装置」を備えることを追加する訂正は、「エレベーターの自動呼び登録システム」についての構成を具体的に特定して限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。また、請求項1に係る「前記携帯端末は、前記かご側ビーコン装置からの電波を受信した場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求の自動送信を一定期間抑止する」ことを追加する訂正は、「携帯端末」の機能を特定することで、「エレベーターの自動呼び登録システム」についての構成を具体的に特定し限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
次に、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、「エレベーターの自動呼び登録システム」に関して、「かごに設けられたかご側ビーコン装置」を備えることを追加する訂正については、段落【0052】に「図10に示されるように、かご側ビーコン装置16は、かご6の内部に設けられる。かご側ビーコン装置16はかご上に設置してもよい。」と記載され、また、「前記携帯端末は、前記かご側ビーコン装置からの電波を受信した場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求の自動送信を一定期間抑止する」ことを追加する訂正については、段落【0061】に「携帯端末15は、かご側ビーコン装置16からの電波を受信した場合に一定期間、呼びの要求の自動送信を抑止する。」と記載されているから、それぞれ願書に添付した明細書に記載されており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
そして、請求項1に係る特許に本件特許異議の申立てがされているから、請求項1に係る訂正については、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
イ 請求項2及び3に係る訂正について
請求項2及び3に係る訂正は、それぞれ請求項1の記載を引用する請求項2及び3の記載をともに請求項1の記載を引用しない記載に訂正するものであるから、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
次に、請求項2及び3に係る訂正は、上記のとおり、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであるから、願書に添付した特許請求の範囲に記載されており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められ、その目的からして、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
ウ 段落【0006】の訂正について
上記段落【0006】に係る訂正は、上記ア及びイの特許請求の範囲の訂正に伴う明細書の訂正である。そうすると、上記(1)ウの訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないと認められ、その目的からして、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という、)は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
また、訂正後の請求項2および3については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正する求めがされている。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを認める。

3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし3に係る発明(以下「本件発明1ないし3」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
(本件発明1)
「エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置と、
前記エレベーターのかごへ出入りする物体を検出するセンサと、
前記かごに設けられたかご側ビーコン装置と、
携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録しない制御装置と、
を備え、
前記携帯端末は、前記かご側ビーコン装置からの電波を受信した場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求の自動送信を一定期間抑止するエレベーターの自動呼び登録システム。」
(本件発明2)
「エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置と、
前記エレベーターのかごへ出入りする物体を検出するセンサと、
携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録しない制御装置と、
を備え、
前記携帯端末は、前記乗場側ビーコン装置から電波を受信した際に、呼び登録システムアプリケーションが起動しており、表示部において呼び登録システムアプリケーションの操作画面を操作できる状態である場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信しないエレベーターの自動呼び登録システム。」
(本件発明3)
「エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置と、
前記エレベーターのかごへ出入りする物体を検出するセンサと、
携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録しない制御装置と、
を備え、
前記携帯端末は、前記乗場側ビーコン装置から電波を受信した際に、呼び登録システムアプリケーションが起動しており、表示部において呼び登録システムアプリケーションの操作画面を操作できない状態である場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信するエレベーターの自動呼び登録システム。」

4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)取消理由の概要
本件訂正前の請求項1に係る特許に対して、当審が令和 3年11月26日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
・引用文献等一覧
引用文献1:特開2018−95439号公報(申立人が提出した甲第8号証)
引用文献2:特開2016−94290号公報(申立人が提出した甲第1号証)
引用文献3:特開2018−90400号公報(申立人が提出した甲第2号証)
引用文献4:特開2015−20888号公報(申立人が提出した甲第3号証)
引用文献5:特開昭61−169454号公報(申立人が提出した甲第4号証)
引用文献6:特開2013−170035号公報(申立人が提出した甲第5号証)
引用文献7:特開2017−24858号公報(申立人が提出した甲第6号証)
引用文献8:特開2005−170529号公報(申立人が提出した甲第7号証)

(2)引用文献1に記載された事項及び引用発明
引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。以下同様。)。
1) 「【0007】
実施形態は、エレベータを使用する際の利便性を向上させる技術を提供することを目的とする。」

2) 「【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態のエレベータ呼び出しシステムは、ビーコン発信装置と、携帯端末と、サーバとを有する。ビーコン発信装置は、エレベータの乗場に設置され、電波信号であるビーコン信号を発信する。携帯端末は、出発階と目的階との対応付けが事前になされたデータに対し、ビーコン信号を検出した階を出発階として検索して目的階を取得し、出発階と目的階とを送信する。サーバは、携帯端末より送信された2つの階の情報を受信し、エレベータのかご室の移動を制御するエレベータ制御部に、出発階から目的階まで移動するよう設定する。」

3) 「【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態のエレベータ呼び出しシステムは、携帯端末を用いてエレベータの出発階および目的階を登録することにより、次回以降、エレベータ乗場に携帯端末を持った利用者が到着した際に、自動的にエレベータを呼び、さらに目的階への呼びを登録する。これにより、利用者はエレベータを呼ぶ際に毎回必要であった手動操作が不要となる。」

4) 「【0013】
携帯端末2は、エレベータを利用する各利用者が所持するスマートフォンなどの端末であり、1つまたは複数存在する。携帯端末2は、エレベータの出発階および目的階への呼び登録と、過去の乗車情報を保持する。携帯端末2は、無線通信装置8と、乗車情報データベースJ(詳細は後述)を持つ。尚、図面ではデータベースをDBと記す。携帯端末2の無線通信装置8は、エレベータシステム4のアクセスポイント12およびビーコン装置13との間で無線通信によりデータ接続される。」

5) 「【0015】
エレベータシステム4は、利用者に運搬等のエレベータ機能を提供する。エレベータシステム4内には、各階毎にエレベータ乗場11が複数存在し、それぞれアクセスポイント12と、ビーコン装置13と、乗場情報データベースHが設置される。
【0016】
アクセスポイント12は、例えばIEEE802.11シリーズの規格に準拠した無線LANでデータ通信を行う。アクセスポイント12は、携帯端末2とサーバシステム3との間のデータ通信を中継/制御する。ビーコン装置13は、例えばIEEE802.15シリーズの規格に準拠した近距離無線通信を行う。またビーコン装置13は、本例ではエレベータ10の開閉ドア近傍に設置されている。ビーコン装置13は、無線電波(ビーコン信号)を発信する。利用者が保持する携帯端末2は、ビーコン装置13から出力されるビーコンを検知することで、自機や利用者がビーコン装置13の近傍にいるか否かを判定する。すなわち携帯端末2は、エレベータ10の開閉ドア近傍に利用者がいるか否かを判定することができる。」

6) 「【0021】
エレベータ制御部41は、本例では、遠隔制御基板5やエレベータ制御盤14により実現され、エレベータ10のかご室の昇降移動や指定階での停止、利用者の操作による停止維持などを制御する。」

7) 「【0044】
・・・(略)・・・
(I−10) 携帯端末2の制御情報送信部24は、制御情報(出発階情報:1、目的階情報:5)を作成し、サーバシステム3へ送信する。・・・(略)・・・」

8) 「【0047】
(I−12) サーバシステム3の制御情報送信部34は、受け取った制御情報の出発階情報:1と、目的階情報:3を、エレベータシステム4へ送信する。
(I−13) エレベータシステム4内のエレベータ制御部41は、サーバシステム3から受け取った制御情報(出発階情報:1、目的階情報:3)をもとに、エレベータ10の出発階呼び、および目的階呼びをエレベータの状況に応じて設定/登録する。」

9) 「【0051】
(II.自動呼び出しの動作)
引き続き自動呼び出しの動作について説明する。本例では、物件情報データベースBと、制御情報データベースCと、乗場情報データベースHは、図4〜図6に示した状態とする。乗車情報データベースJは、図3の情報に加え、上記(I)新規登録時の動作で登録した乗車情報(物件ID:00000123、出発階情報:1、目的階情報:5、自動呼び出し要否フラグ:要(1))が登録されたものと仮定して説明する。また、エレベータ呼び出しシステム1による呼び出しが実行中でないと仮定する。
【0052】
(II−1) 前記I−1〜I−4と同様の流れで処理を実施する。
(II−2) 携帯端末2の乗車情報確認部22は、受け取った物件情報内の物件ID:00000123と、乗場階情報:1との組み合わせをもとに、携帯端末2の乗車情報データベースJ内を検索する(図10:ACT101)。乗車情報確認部22は、出発階と目的階との対応付けが事前になされた乗車情報データベースJに対し、ビーコン信号を検出した階を出発階として検索して目的階を取得する。ここでは、上記I.で登録した情報(物件ID:00000123、出発階情報:1、目的階情報:5、自動呼び出し要否フラグ:要(1))が一致するため(図10:ACT101−Yes)、次に自動呼び出しフラグが要(1)であることを確認し(図10:ACT102:要(1))、携帯端末2の制御情報送信部24へ、出発階情報:1と、検索結果として得られた目的階情報:5を出力する(図10:ACT103)。
(II−3) 上記I−10〜I−18と同様の流れで処理を実施する。」

10) 「【0055】
本実施形態では装置内部に発明を実施する機能が予め記録されている場合で説明をしたが、これに限らず同様の機能をネットワークから装置にダウンロードしても良いし、同様の機能を記録媒体に記憶させたものを装置にインストールしてもよい。記録媒体としては、CD−ROM等プログラムを記憶でき、かつ装置が読み取り可能な記録媒体であれば、その形態は何れの形態であっても良い。またこのように予めインストールやダウンロードにより得る機能は装置内部のOS(オペレーティング・システム)等と協働してその機能を実現させるものであってもよい。」

上記摘記事項1)ないし10)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(引用発明)
「エレベータを使用する際の利便性を向上させるように、
エレベータ乗場11に設置されたビーコン装置13と、
前記エレベータ10のかご室と、
所定の機能をインストールしてもよいスマートフォンなどの携帯端末2が前記ビーコン装置13から無線電波を検知して出発階と目的階との対応付けが事前になされたデータに対しビーコン信号を検出した階を出発階として検索して目的階を取得し、出発階と目的階とを自動で送信し、前記携帯端末2により自動で送信された制御情報をもとに出発階呼びを登録し、前記携帯端末2により自動で送信された制御情報をもとに目的階呼びを登録する、エレベータ制御部41と、
を備えたエレベータ呼び出しシステム1。」

(3)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
1) 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、行先階登録装置に不要な行先階が入力されてしまうことがある。例えば、行先階を入力した後に何らかの理由により乗車しない場合、誤操作によって複数の行先階を入力してしまう場合、さらには、乗車予定はなく単にいたずらで行先階が入力される場合もある。これらの不要な行先階の入力が、かご呼び情報として登録されることで、かごの運行効率が悪化するだけでなく、他の乗客の行先階への到着の遅れや待ち時間増などを招くことになる。
【0005】
本発明の目的は、不要な行先階の入力からかご呼び情報が登録されてしまうことを抑制し、かごの運転効率を向上させることのできるエレベータシステム及び行先階登録制御方法を提供することである。」

2) 「【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエレベータシステムは、
1又は複数のかごと、
かごの昇降を制御する運行制御手段と、
前記かごのドアの開閉を制御するドア制御手段と、
前記ドアの閉状態を検知するドア検知手段と、
前記かごへの乗客の乗降を検知する乗客検知手段と、
前記かごの乗場となる階床に配置され、行先階の入力を受け付ける乗場行先階登録手段と、
前記乗場行先階登録手段によって受け付けられた行先階を、特定のかごに対する乗場行先階呼び情報として割り当て、前記運行制御手段により、前記特定のかごが行先階の入力された前記乗場行先階登録手段の設置された前記階床に到着し、前記ドア検知手段によってドアの閉動作の完了が検知されたときに、前記特定のかごに割り当てられた乗場行先階呼び情報を前記特定のかごへのかご呼び情報として登録するかご行先階登録手段と、
を具えるエレベータシステムであって、
前記かご行先階登録手段は、前記特定のかごの前記乗客検知手段が、前記階床において前記特定のかごへの乗客の乗降を検知しなかったときに、前記特定のかごに割り当てられた前記階床における乗場行先階呼び情報をかご呼び情報として登録しない。」

3) 「【0019】
そして、本発明では、運行制御装置30は、乗場行先階登録装置40に入力された行先階を、かご(かごが1基のみの場合はそのかご、かごが複数の場合は最短でサービス可能等の条件を満たす最適な特定のかご)に対する乗場行先階呼び情報として割り当てる。「乗場行先階呼び情報」とは、かご20に対して割り当てられる仮のかご呼び情報であって、乗客の行先階として停止する階床として登録される情報である。そして、行先階の入力された乗場行先階登録装置40の設置階床にかご20が到着し、かご20が出発するまで、すなわち、かご20のドア22の閉動作が完了するまでに、かご20に乗客の乗降が検知された場合に、上記乗場行先階呼び情報を、当該かご20へのかご呼び情報として登録するものである。「かご呼び情報」とは、かご20に割り当てられる乗客の行先階として停止する階床の情報である。
【0020】
一方、行先階の入力された乗場行先階登録装置40の設置階床にかご20が到着した後、かご20のドア22の閉動作が完了するまでに、かご20に乗客の乗降が検知されなかった場合には、いたずら等により、乗場行先階登録装置40に不要な行先階の入力がなされたものとみなし、登録されていた乗場行先階呼び情報をかご呼び情報として登録することなく削除するようにしたものである。
【0021】
運行制御装置30は、一実施形態として、運行制御手段34とかご行先階登録手段36を具える。運行制御手段34は、かご20の運行を管理する手段であって、かご20の昇降、停止等を行なう巻上機を制御すると共に、かご20の位置や移動方向、既に割り当てられている乗場行先階呼び情報やかご呼び情報等の運行情報に基づいて、かご20の制御を行なう。
【0022】
かご行先階登録手段36は、乗場行先階登録装置40に入力された行先階を、かご20の運行情報に基づいて最適なかご20(特定のかご)に対する乗場行先階呼び情報として割り当てる。また、その乗場行先階呼び情報が、後述するとおり、不要な乗場行先階呼び情報でないと判断すると、当該乗場行先階呼び情報をかご呼び情報として運行制御手段34に登録する。一方、その乗場行先階呼び情報が、不要な乗場行先階呼び情報であると判断すると、当該乗場行先階呼び情報を、既に登録されている運行制御手段34から削除する。」

4) 「【0029】
かご側制御装置50は、かご20に設置され、ドア22の開閉等を制御する。かご側制御装置50は、一実施形態として、ドア制御手段53と、ドア検知手段54と、乗客検知手段55を具える。」

5) 「【0032】
乗客検知手段55は、かご20への乗客の乗降を検知する。」

6) 「【0034】
上記構成のエレベータシステム10について、上述した行先階の登録及び削除の処理を図3及び図4を参照しつつ詳述する。図3及び図4は、本発明の一実施形態の行先階の登録処理を示すフローチャートである。この処理は、乗客によって行先階が入力された、すなわち、乗場にある行先階登録ボタン41が押下されたことを契機として実行される処理である。なお、行先階の登録処理以外のエレベータシステム10の運行処理については説明を省略する。
【0035】
行先階登録ボタン41が押下されると、乗場行先階登録手段44から通信部32,42を介して運行制御装置30に入力された行先階が送信される。かご行先階登録手段36は、この行先階を新たな乗場行先階呼び情報としてかご20に対して割り当てる。すなわち、当該かご20の運行制御手段34に乗場行先階呼び情報として登録する登録処理が行なわれる(ステップS11)。具体的には、かご行先階登録手段36が、行先階の入力された乗場行先階登録装置40の設置された階床と、その新たな乗場行先階呼び情報を、かご20(運行制御手段34)に対して割り当てる処理である。なお、かご20が複数基ある場合には、群管理制御装置によって最適なかご(特定のかごの運行制御手段34)に割り当てればよい。」

7) 「【0038】
そして、かご20のドア22が開状態で、乗客の乗降が行なわれ、乗客検知手段55の光電検出装置56が、乗客の乗降を検知したか否かを判断する(ステップS13)。なお、光電検出装置56では、かご20に乗車する乗客だけでなく、降車する乗客も検知されるが、このステップでは、少なくとも乗客の乗降が検知されればよい。
【0039】
光電検出装置56が、乗客の乗降を検知したと判断した場合(ステップS13のYES)、その情報は、運行制御装置30に送信される。この場合、この階床における乗場行先階登録装置40に入力された行先階は、いたずら等の不要な入力ではないと判断することができるから、かご行先階登録手段36は、運行制御手段34の乗場行先階呼び情報をかご呼び情報として登録する(ステップS14)。このとき、たとえば、かご呼び情報の行先階に対応するかご20内の操作盤の行先階ボタンを点灯させることができる。その後、ドア22の開放時間が満了する(ステップS15のYES)まで開状態で待機する。」

8) 「【0044】
一方、ステップS23において、行先階の入力がない場合及び入力があったとしても当該かご20に対して乗場行先階呼び情報として割り当てられなかった場合(ステップS23のNO)、すなわち、かご20が到着して以降(ステップS12)、ドア22が開状態となり、ドア22の閉動作が完了するまで(ステップS26)、光電検出装置56が乗客の乗降を検知しなかった場合には(ステップS13のNO)、この階床にて登録されていた乗場行先階呼び情報は、いたずら等の不要な乗場行先階呼び情報であるとかご行先階登録手段36が判断し、運行制御手段34に登録されていた乗場行先階呼び情報をかご呼び情報として登録することなく、その乗場行先階情報を削除する(ステップS27)。これにより、不要なかご呼び情報が発生することを防止できる。」

上記摘記事項1)ないし8)から、引用文献2にはエレベータの呼び登録に関し、次の技術的事項が記載されている。

「不要な行先階の入力からかご呼び情報が登録されてしまうことを抑制し、かごの運転効率を向上させることができるように、エレベータのかご20への乗客の乗降を検知する乗客検知手段55を備え、かご20が乗場に到着して戸開した後に前記乗客検知手段55がかご20への乗客の乗降を検知した場合は行先階情報をかご呼び情報として登録し、検知しない場合は乗場行先階呼び情報をかご呼び情報として登録しない運行制御装置30を備えた、エレベータシステム10。」

(4)引用文献3に記載された事項
引用文献3には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「【0018】
利用者が所持する携帯端末22は、一般的な携帯電話機やスマートフォンなどである。この携帯端末22には、予め呼び登録用のアプリケーションソフト23がインストールされている。携帯端末22が無線信号装置21から発信される無線信号を受信すると、アプリケーションソフト23が自動的に起動される。このアプリケーションソフト23の起動により、携帯端末22はアクセスポイント(AP)24を介してエレベータ制御装置13に無線接続され、利用者の行先階をエレベータ制御装置13に送信して呼び登録(乗場呼びの登録)を行う。
【0019】
この呼び登録用のアプリケーションソフト23は、エレベータ11の関連企業によって開発されたものであり、携帯端末22のOS(Operating System)に依存するWebサイトから自由にダウンロードできる。」

上記摘記事項から、引用文献3にはエレベータの呼び登録に関し、次の技術的事項が記載されている。

「利用者の携帯端末に予めアプリケーションソフトをインストールすること。」

(5)引用文献4に記載された事項
引用文献4には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「【0007】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、エレベーターに利用者が乗り込む前に、遠隔からフロア呼びおよび行先階が登録された場合において、利用者が乗りかごに乗れなかった場合においても、乗りかごが無人のままで稼動することを回避して、エレベーターの運用効率の向上と利用者の利便性低下の防止の双方を実現することにある。」

上記摘記事項から、引用文献4にはエレベータの呼び登録に関し、次の技術的事項が記載されている。

「利用者が乗りかごに乗れなかった場合、遠隔からフロア呼びおよび行先階を登録しても乗りかごが稼動することを回避すること。」

(6)引用文献5に記載された事項
引用文献5には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
1) 「しかし、乗場で行先釦を操作しても、階段を利用するなどしてかごに乗らなかったり、他のかごに乗ってしまったりすると、結局到着したかごに無駄な停止をさせて、かご内の乗客を不快にさせたり、他の乗場での待客の待時間を長くさせたりすることになる。
また、いたずらで行先釦を操作する人もいるので、上記現象は生じやすく、これが乗場で行先階を登録するエレベータの欠点とされている。」(第2ページ左上欄第17行ないし右上欄第5行)

2) 「結局、上記かごに乗車しなかった待客がいると、無駄にかご呼びが登録され、上述と同様の問題点が残されたままになっていた。」(第2ページ右上欄第17ないし19行)

上記摘記事項1)及び2)から、引用文献5にはエレベータの呼び登録に関し、次の技術的事項が記載されている。

「かごに乗車しない場合、乗り場で行先階を登録すると無駄にかご呼びが登録されること。」

(7)引用文献6に記載された事項
引用文献6には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
1) 「【0030】
引き続き、エレベータ制御処理部52は、ステップS11においてかご内荷重(B)がしきい値以上であれば利用者が乗車したと判定すると、予め定める目的階へ自動的にかご呼び登録を実施し(S12)、その登録されたかご呼び登録階に移動する(S13)。」

2) 「【0036】
さらに、乗りかご3のかご内荷重の変化がしきい値未満のとき、乗場呼び登録階に停止して戸閉待機した状態となるので、無駄な運転が無くなって省エネ化を図ることができ、また、利用者が乗り遅れた場合でも乗りかご3は停止階で待機しているので、再度乗場操作ボタン10を押すことで再戸開させて乗車することができる。」

上記摘記事項1)及び2)から、引用文献6にはエレベータの呼び登録に関し、次の技術的事項が記載されている。

「乗りかご内へ利用者が乗車しない場合、予め定めるかご呼び登録階への無駄な運転を無くすこと。」

(8)引用文献7に記載された事項
引用文献7には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
1) 「【0003】
しかし、これらの方法の場合、別の階から利用し、当該階で降りた場合、すなわち利用者が昇降機を利用し終えた場合でも呼びが登録されてしまう、いわゆる不要な呼びを登録してしまう虞がある。・・・(略)・・・利用者が乗り口から離れていくとき・・・(略)・・・には呼びを登録しないことで不要呼びを防止している。」

2) 「【0006】
本発明の目的は、昇降機のかごの呼び登録操作を簡略化しつつ、かつ不要な呼び登録を抑制する技術を提供することにある。」

上記摘記事項1)及び2)から、引用文献7にはエレベータの呼び登録に関し、次の技術的事項が記載されている。

「利用者が利用し終えた場合、すなわち乗車しない場合の不要な呼び登録を防止すること。」

(9)引用文献8に記載された事項
引用文献8には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「【0011】
・・・(略)・・・また、乗場呼びを登録した後、急用が発生し、かごが応答しても乗り込まないケースも考えられる。この場合、実際に乗車していないのに目的階へのかご呼びを自動登録すると、その呼びが無駄になり、エレベータの運行効率を下げる結果になる。そこで、応答かごに乗車したことを検出した時に目的階のかご呼びを自動登録する方法も考えられる。」

上記摘記事項から、引用文献8にはエレベータの呼び登録に関し、次の技術的事項が記載されている。

「かごに乗車してない場合、自動登録した目的階へのかご呼びが無駄になること。」

(10)申立人が提出した甲第9号証に記載された事項
甲第9号証(国際公開第2017/203578号)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「【0017】
図1に示されている人検知ドアセンサである非接触式センサ部11は、例えば図7に示すように、エレベータのかごドアの開閉領域に沿った予め設定された検出領域DEの両側に設けられる復数組のセンサで構成される。センサは例えば光電センサからなり、検出領域DEの両側に符号11abで示すように互いに対向して、送信側と受信側の光電センサが復数組、検出領域DEに沿って設置される。そして検出領域DEを通過する物により光が遮られると受信側の光電センサが移動体検出信号を出力する。光が遮られたセンサの数、位置、光が遮られている時間等から乗客である移動体を検出する。
【0018】
図8に示すように、送信側光電センサ11aと受信側光電センサ11bからなる光電センサの組は、戸閉時の移動体MBの不要な検出を避けるために、例えば乗場ドアFDとかごドアCDの間に設けられる。またかご1側に固定すれば各乗場に設ける必要はない。
なお乗場ドアFDとかごドアCDは、かごドアCD側に着床時に乗場ドアFDと係合すフックがあるため両者はリンクして開閉するので、乗場ドアFDとかごドアCDを総称してエレベータドアとする。
また、非接触式センサ部11に使用される人検知ドアセンサとしては、赤外線ビームを使用したマルチビームセンサ(MBS)を使用してもよい。」

上記摘記事項から、甲第9号証にはエレベータのかごへ出入りする物体のセンサに関し、次の技術的事項が記載されている。

「エレベータのかごへ出入りする物体のセンサとして、赤外線センサを適用できること。」

(11)申立人が提出した甲第10号証に記載された事項
甲第10号証(特開2013−124144号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「【0020】
かご側センサ25は、乗りかご20内の天井部20cの中央部付近に取り付けられ、乗りかご20内にいる乗客を検出する赤外線センサである。かご側センサ25は、乗客から放出される赤外線を受光することで、乗客の存在を検知する機能を有する。かご側センサ25として、例えば、熱型赤外線センサや量子型赤外線センサが用いられるが、もちろん、赤外線センサ以外のセンサを用いてもよい。例えば、超音波や可視光を利用したセンサも用いることができる。」

上記摘記事項から、甲第10号証にはエレベータのかごへ出入りする物体のセンサに関し、次の技術的事項が記載されている。

「エレベータのかごへ出入りする物体のセンサとして、超音波センサを適用できること。」

(12)申立人が提出した甲第11号証に記載された事項
甲第11号証(特開2002−121964号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
1) 「【0021】携帯端末2からの遠隔操作は、遠隔操作ボタン25や操作ボタン21のような機械的なボタンによる操作で行っても良いし、入力装置23のようなタッチパネルによる操作で行っても良い。入力装置23による操作例を図5に示す。
【0022】遠隔操作する内容は、開閉扉11を開ける操作や、エレベータの呼び出し、行き先階の指定等である。携帯端末2から遠隔操作を行うと、光通信部または電波通信部24から遠隔操作信号が送信されるが、遠隔操作信号と合わせて保持している利用者情報も送信される。」

2) 「【図5】



上記摘記事項1)及び2)から、甲第11号証にはエレベータの携帯端末に関し、次の技術的事項が記載されている。

「携帯端末からの遠隔操作により、エレベータ扉の開閉等を行えるようにすること。」

(13)申立人が提出した甲第12号証に記載された事項
甲第12号証(特開2016−60576号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

「【0043】
実施の形態1では、外部情報部2からの利用者予定情報に対応する行先階を判定し、利用者ID情報から登録された行先階を変更することができる。この実施の形態3では、外部情報部2から取得する行先階に対応する時間が想定可能な時間帯である場合、利用者ID情報から登録された行先階を変更する。想定可能な時間帯は、利用者が日常の行動の時間帯である。
【0044】
図1の構成において、外部情報部2から取得する時間情報の行先階が想定可能な時間帯である場合を以下に説明する。
【0045】
この発明の実施の形態3におけるエレベータ呼び登録装置3の動作概略は、図6の動作フローチャートを用いて同符号を付して実施の形態1からの変更点のみを説明する。
【0046】
まず、実施の形態1で説明したとおり、ステップS101〜S103の処理が実行された後、ステップS301へ進む。ステップS301では、外部情報部2から取得する行先階に対応する時間が想定可能な時間帯である場合、ステップS106へ進む。行先階に対応する時間が想定不可能な時間帯である場合、ステップS107へ進み、ステップS107の処理を実行し、終了する。例えば、午前中の時間帯ならば、食堂階を行先階とする場合、想定不可能な時間帯である。昼の時間である場合、食堂階を行先階とする場合、想定可能な時間帯であるため、利用者ID情報から決定された行先階を食堂階に変更する。
【0047】
この実施の形態3では、利用者の予定情報に対応する行先階は、利用者の日常の行動の時間帯である場合、読取った利用者ID情報から決定された行先階を変更する。この実施の形態3によれば、利便性が向上し、利用者がスムーズに行きたい行先階へ行くことができるため、無駄な階間の移動が減ることができる。」

上記摘記事項から、甲第12号証にはエレベータの行先階を登録することに関し、次の技術的事項が記載されている。

「行先階を登録することの可否を、時間帯に応じて判断すること。」

5 当審の判断
(1)対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「エレベータ乗場11」は本件発明1の「エレベーターの乗場」に相当している。
同様に、「設置された」は「設けられた」に、
「ビーコン装置13」は「乗場側ビーコン装置」に、
「エレベータ10のかご室」は「エレベーターのかご」に、
「所定の機能をインストールしてもよいスマートフォンなどの携帯端末2」は「携帯端末」に、
「無線電波を検知し」は「電波を受信し」に、
「出発階と目的階との対応付けが事前になされたデータに対し、ビーコン信号を検出した階を出発階として検索して目的階を取得し、出発階と目的階とを自動で送信し」は「予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に」に、
「制御情報をもとに」は「要求に対応した」に、
「出発階呼び」は「乗場呼び」に、
「目的階呼び」は「かご呼び」に、
「エレベータ制御部41」は「制御装置」に、
「エレベータ呼び出しシステム1」は「エレベーターの自動呼び登録システム」に、
それぞれ相当している。
そして、本件発明1の「エレベーターのかごへ出入りする物体を検出するセンサ」「を備え」ることと、引用発明の「エレベータ10のかご室」「を備え」ることとは、「エレベーターのかごを備え」ることの限りにおいて一致している。
また、本件発明1の「前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録しない」と、引用発明の「前記携帯端末2により自動で送信された制御情報をもとに目的階呼びを登録し」とは、「所定の場合において」「前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録する」の限りにおいて一致している。

以上のとおりであるから、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。

(一致点)
「エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置と、
前記エレベーターのかごと、
携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録し、所定の場合に前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録する制御装置と、
を備えたエレベーターの自動呼び登録システム。」

(相違点1)
「所定の場合」のかご呼びの登録に関し、本件発明1は、「エレベーターのかごへ出入りする物体を検出するセンサ」を備え、「前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は」「かご呼びを登録し」、「前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は」「かご呼びを登録しない」のに対し、引用発明では、「エレベータ10のかご室へ出入りする物体を検出するセンサ」を備えておらず、したがって、前記センサに係る、かごが乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を「検出した場合」及び「検出しない場合」に関わりなく「目的階呼びを登録」するのであって、「検出しない場合」に「目的階呼びを登録しない」構成を備えていない点。

(相違点2)
「携帯端末が」「予め設定された呼びの要求を自動で送信」するのが、本件発明1は、「呼び登録システムアプリケーションにおいて」であるのに対し、引用発明では、「呼び登録システムアプリケーションにおいて」であるかが不明である点。

(相違点3)
本件発明1は、「かごに設けられたかご側ビーコン装置」を備え、「記携帯端末は、前記かご側ビーコン装置からの電波を受信した場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求の自動送信を一定期間抑止する」のに対し、引用発明では、そのような構成を備えていない点。

(2)判断
上記相違点について検討するに、事案に鑑み、まず、相違点3について検討する。
相違点3に係る本件発明1の構成は、「具体的には、携帯端末15は、かご側ビーコン装置16からの電波を受信した場合に一定期間、呼びの要求の自動送信を抑止する。このため、かご6の走行中に呼びが登録されることを抑制できる」(願書に添付した明細書の段落【0061】)ことから、「利用者が意図しない呼びの登録を抑制することができる」(同段落【0007】)との効果を奏するものであるから、引用発明の「エレベータを使用する際の利便性を向上させるように」することに資するといえるので、当該構成を引用発明に適用する動機があるともいえる。
しかしながら、相違点3に係る本件発明1の構成は、引用文献1ないし8及び甲第9ないし12号証のいずれにも記載も示唆もされていないのであって、当該構成により本件発明1は上記所定の効果を奏するものである。
そうすると、引用発明をして相違点3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。

(3)まとめ
したがって、相違点1及び2について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)小括
以上のとおり、本件発明1は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、特許異議申立書において、本件訂正前の請求項1に係る発明は、引用文献2、3あるいは4を主たる引用文献として、それぞれに記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであると、概ね主張する。
この主張に対する当審の判断は以下のとおりである。
(1)引用文献2に記載された事項及び発明
引用文献2には、図面とともに、以下の事項が記載されている(「4 取消理由通知に記載した取消理由について」においてすでに摘記した事項を含む。以下、同様。)。
1) 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、行先階登録装置に不要な行先階が入力されてしまうことがある。例えば、行先階を入力した後に何らかの理由により乗車しない場合、誤操作によって複数の行先階を入力してしまう場合、さらには、乗車予定はなく単にいたずらで行先階が入力される場合もある。これらの不要な行先階の入力が、かご呼び情報として登録されることで、かごの運行効率が悪化するだけでなく、他の乗客の行先階への到着の遅れや待ち時間増などを招くことになる。
【0005】
本発明の目的は、不要な行先階の入力からかご呼び情報が登録されてしまうことを抑制し、かごの運転効率を向上させることのできるエレベータシステム及び行先階登録制御方法を提供することである。」

2) 「【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るエレベータシステム10及びエレベータシステム10の行先階登録制御方法について説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る乗場行先階登録装置40の設置されたエレベータの乗場の外観図である。図1は、一基のエレベータのみを示しているが、複数のエレベータを設置した場合にも本発明は適用される。
【0015】
乗場となる階床には、かご20(図2参照)への乗降口にドア22と、乗場行先階登録装置40の一部をなす行先階登録ボタン41が設けられている。図示では、行先階登録ボタン41は、ドア22の側方に配置しているが、これに限定されるものではない。各行先階登録ボタン41には、行先階に対応した階床番号が付されており、乗客は、所望する階床番号の行先階登録ボタン41を押下等により選択することで、行先階の登録を行うことができる。そして、対応するかご20が階床に到着し、ドア22が開放すると、乗客はかご20に乗車し、所望する行先階で降車することができる。」

3) 「【0019】
そして、本発明では、運行制御装置30は、乗場行先階登録装置40に入力された行先階を、かご(かごが1基のみの場合はそのかご、かごが複数の場合は最短でサービス可能等の条件を満たす最適な特定のかご)に対する乗場行先階呼び情報として割り当てる。「乗場行先階呼び情報」とは、かご20に対して割り当てられる仮のかご呼び情報であって、乗客の行先階として停止する階床として登録される情報である。そして、行先階の入力された乗場行先階登録装置40の設置階床にかご20が到着し、かご20が出発するまで、すなわち、かご20のドア22の閉動作が完了するまでに、かご20に乗客の乗降が検知された場合に、上記乗場行先階呼び情報を、当該かご20へのかご呼び情報として登録するものである。「かご呼び情報」とは、かご20に割り当てられる乗客の行先階として停止する階床の情報である。
【0020】
一方、行先階の入力された乗場行先階登録装置40の設置階床にかご20が到着した後、かご20のドア22の閉動作が完了するまでに、かご20に乗客の乗降が検知されなかった場合には、いたずら等により、乗場行先階登録装置40に不要な行先階の入力がなされたものとみなし、登録されていた乗場行先階呼び情報をかご呼び情報として登録することなく削除するようにしたものである。
【0021】
運行制御装置30は、一実施形態として、運行制御手段34とかご行先階登録手段36を具える。運行制御手段34は、かご20の運行を管理する手段であって、かご20の昇降、停止等を行なう巻上機を制御すると共に、かご20の位置や移動方向、既に割り当てられている乗場行先階呼び情報やかご呼び情報等の運行情報に基づいて、かご20の制御を行なう。
【0022】
かご行先階登録手段36は、乗場行先階登録装置40に入力された行先階を、かご20の運行情報に基づいて最適なかご20(特定のかご)に対する乗場行先階呼び情報として割り当てる。また、その乗場行先階呼び情報が、後述するとおり、不要な乗場行先階呼び情報でないと判断すると、当該乗場行先階呼び情報をかご呼び情報として運行制御手段34に登録する。一方、その乗場行先階呼び情報が、不要な乗場行先階呼び情報であると判断すると、当該乗場行先階呼び情報を、既に登録されている運行制御手段34から削除する。」

4) 「【0032】
乗客検知手段55は、かご20への乗客の乗降を検知する。
【0033】
乗客検知手段55として、ドア22の対向面に設置された赤外線や可視光線の投光器56a及び受光器56bからなる光電検出装置56を例示できる。光電検出装置56は、ドア22が開状態で、ドア22間を乗客が通過すると、受光が遮られたことが受光器56bによって検知する。ただし、光電検出装置56では、ドア22間に乗客(その他の物体を含む)が通過したことを検知するのみであり、乗客がかご20に乗車したのか、降車したのかを検知することはできない。」

5) 「【0035】
行先階登録ボタン41が押下されると、乗場行先階登録手段44から通信部32,42を介して運行制御装置30に入力された行先階が送信される。かご行先階登録手段36は、この行先階を新たな乗場行先階呼び情報としてかご20に対して割り当てる。すなわち、当該かご20の運行制御手段34に乗場行先階呼び情報として登録する登録処理が行なわれる(ステップS11)。具体的には、かご行先階登録手段36が、行先階の入力された乗場行先階登録装置40の設置された階床と、その新たな乗場行先階呼び情報を、かご20(運行制御手段34)に対して割り当てる処理である。なお、かご20が複数基ある場合には、群管理制御装置によって最適なかご(特定のかごの運行制御手段34)に割り当てればよい。
【0036】
上記処理と同時に、運行制御手段34は、行先階の入力された乗場行先階登録装置40の設置された階床を停止する階床とし、さらに、割り当てられた乗場行先階呼び情報を含む運行情報に基づいて、かご20の制御を行なう。また、入力された行先階が運行制御装置30にて乗場行先階呼び情報として登録されたことは、かご行先階登録手段36から乗場行先階登録手段44にフィードバックされ、行先階登録ボタン41(表示手段46)を点灯等したり、音声により報知することで、乗客に視覚的、聴覚的に報知する処理が行なわれる。」

6) 「【0038】
そして、かご20のドア22が開状態で、乗客の乗降が行なわれ、乗客検知手段55の光電検出装置56が、乗客の乗降を検知したか否かを判断する(ステップS13)。なお、光電検出装置56では、かご20に乗車する乗客だけでなく、降車する乗客も検知されるが、このステップでは、少なくとも乗客の乗降が検知されればよい。
【0039】
光電検出装置56が、乗客の乗降を検知したと判断した場合(ステップS13のYES)、その情報は、運行制御装置30に送信される。この場合、この階床における乗場行先階登録装置40に入力された行先階は、いたずら等の不要な入力ではないと判断することができるから、かご行先階登録手段36は、運行制御手段34の乗場行先階呼び情報をかご呼び情報として登録する(ステップS14)。このとき、たとえば、かご呼び情報の行先階に対応するかご20内の操作盤の行先階ボタンを点灯させることができる。その後、ドア22の開放時間が満了する(ステップS15のYES)まで開状態で待機する。」

7) 「【0044】
一方、ステップS23において、行先階の入力がない場合及び入力があったとしても当該かご20に対して乗場行先階呼び情報として割り当てられなかった場合(ステップS23のNO)、すなわち、かご20が到着して以降(ステップS12)、ドア22が開状態となり、ドア22の閉動作が完了するまで(ステップS26)、光電検出装置56が乗客の乗降を検知しなかった場合には(ステップS13のNO)、この階床にて登録されていた乗場行先階呼び情報は、いたずら等の不要な乗場行先階呼び情報であるとかご行先階登録手段36が判断し、運行制御手段34に登録されていた乗場行先階呼び情報をかご呼び情報として登録することなく、その乗場行先階情報を削除する(ステップS27)。これにより、不要なかご呼び情報が発生することを防止できる。」

上記摘記事項1)ないし7)から、引用文献2には、次の甲1発明が記載されている。

(甲1発明)
「不要な行先階の入力からかご呼び情報が登録されてしまうことを抑制し、かごの運転効率を向上させることができるように、
エレベータの乗場に設置された乗場行先階登録装置40と、
前記エレベータのかご20への乗客の乗降を検知する乗客検知手段55と、
前記かご20が行先階の入力された乗場行先階登録装置40の設置階床の乗場に到着してかご20のドア22の開閉動作が完了するまでに前記乗客検知手段55が乗客の乗降を検知した場合は、乗場行先階呼び情報をかご呼び情報として登録し、前記かご20が行先階の入力された乗場行先階登録装置40の設置階床の乗場に到着してかご20のドア22の開閉動作が完了するまでに前記乗客検知手段55が乗客の乗降を検知しない場合は、乗場行先階呼び情報を削除してかご呼び情報として登録しない運行制御装置30と、
を備えエレベータシステム10。」

(2)引用文献3に記載された事項及び発明
引用文献3には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
1) 「【0006】
本発明が解決しようとする課題は、利用者の携帯端末を持って乗場にいくだけで、自主的な端末操作を必要とせずに簡単に呼び登録して目的とする階にスムーズに行くことのできるエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係るエレベータシステムは、利用者が所持している携帯端末を利用して呼び登録を行うエレベータシステムであって、乗りかごの運転を制御するエレベータ制御装置と、任意の階の乗場で無線信号を発信し、上記携帯端末に予めインストールされた呼び登録用のアプリケーションソフトを起動する無線信号装置とを備える。
【0008】
上記携帯端末は、上記アプリケーションソフトの起動により、予め設定された利用者の行先階を上記エレベータ制御装置に送信する。上記エレベータ制御装置は、上記携帯端末から送信された利用者の行先階を乗場呼びとして登録し、上記乗りかごを上記乗場呼びの登録階に応答させる。」

2) 「【0016】
ここで、本実施形態において、乗場20の任意の箇所に例えばBluetooth(登録商標)等からなる無線信号装置21が設置されている。無線信号装置21は、乗場ビーコン(beacon)として用いられ、所定周波数帯の無線信号を発信する。なお、無線信号装置21の設置箇所は、例えば乗場ドア付近の壁などであるが、特に限定されるものではなく、乗場20に来た利用者(乗客)が持つ携帯端末22に無線信号が届く範囲であればどこでも良い。また、無線信号装置21は、例えば基準階などの所定の階に設置されていても良く、すべての階に設置されていても良い。」

3) 「【0018】
利用者が所持する携帯端末22は、一般的な携帯電話機やスマートフォンなどである。この携帯端末22には、予め呼び登録用のアプリケーションソフト23がインストールされている。携帯端末22が無線信号装置21から発信される無線信号を受信すると、アプリケーションソフト23が自動的に起動される。このアプリケーションソフト23の起動により、携帯端末22はアクセスポイント(AP)24を介してエレベータ制御装置13に無線接続され、利用者の行先階をエレベータ制御装置13に送信して呼び登録(乗場呼びの登録)を行う。」

4) 「【0046】
続いて、エレベータ制御装置13側の処理について説明する。
図7に示すように、エレベータ制御装置13は、携帯端末22から送信された利用者の行先階を受信すると(ステップS21のYes)、この行先階を乗場呼びとして記憶部19に登録する(ステップS22)。この場合、携帯端末22が無線信号装置21の無線信号を受信した階を乗場呼びの登録階とする。例えば携帯端末22が1階に設置された無線信号装置21の無線信号を受信し、アプリケーションソフト23の起動により利用者の行先階を送信したとすると、1階を登録階とした乗場呼びが記憶部19に登録されることになる。この乗場呼びは、行先階の情報を有する。
【0047】
なお、無線信号装置21の設置階に関する情報は、無線信号装置21から発信されている。携帯端末22から利用者の行先階を送信するときに、無線信号装置21の設置階に関する情報をエレベータ制御装置13に送るものとする。
【0048】
エレベータ制御装置13は、利用者の行先階を有する乗場呼びを乗りかご12に割り当て、当該乗場呼びの登録階に応答させる(ステップS23)。乗りかご12が登録階に到着したとき、あるいは到着の少し手前で(ステップS24のYes)、エレベータ制御装置13は、登録階の乗場20に設置されたインジケータ26を点灯し、乗りかご12が応答することを乗場20で待つ利用者に通知する(ステップS25)。この場合、登録階と行先階との位置関係から乗りかご12が上方向に行く場合にはインジケータ26の上方向表示部分が点灯され、乗りかご12が下方向に行く場合にはインジケータ26の下方向表示部分が点灯される。
【0049】
また、乗りかご12が登録階で戸開したときに、エレベータ制御装置13は、乗りかご12内に設けられた操作盤14上の利用者の行先階に対応した行先階ボタン15を点灯する(ステップS26)。上述したように、携帯端末22によって登録された乗場呼びには行先階の情報が含まれているので、利用者は乗りかご12内に乗車したときにかご呼びの登録(行先階ボタン15の操作)は不要となる。」

5) 「【0054】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
【0055】
上記第1の実施形態では、無線信号装置21から発信される無線信号によってアプリケーションソフト23が起動された際に、図8に示した確認画面41にて利用者に乗車意志を確認した上で利用者の行先階をエレベータ制御装置13に送って呼び登録した。しかし、このような乗車意志の確認なしに呼びを自動登録して物件がある。例えば住居マンションでは、日常的に利用者は玄関ホールから自分の住居階に行くため、乗車意志の確認なしに呼び登録することが好ましい。一方、例えば本社ビル、支店ビルなどのオフィスビルでは、必ずしも事前に設定した行先階に行くとは限らないため、乗車意志を確認した上で呼び登録することが好ましい。
【0056】
そこで、第2の実施形態では、ユーザが予め呼びの自動登録を任意に設定できるようにしたものである。さらに、呼びの自動登録の他にも、例えば乗場到着の通知、使用言語などの各種の項目を任意に設定できるようにしたものである。」

上記摘記事項1)ないし5)から、引用文献3には、特に、第2の実施形態に関し、次の甲2発明が記載されている。

(甲2発明)
「利用者の携帯端末を持って乗場にいくだけで、自主的な端末操作を必要とせずに簡単に呼び登録して目的とする階にスムーズに行くことのできるように、
エレベータ11の乗場20に設置されている無線信号装置(ビーコン)21と、
携帯端末22が前記無線信号装置(ビーコン)21から無線信号を受信して呼び登録を行うアプリケーションソフト23において予め設定された行き先階を自動で送信した際に、前記携帯端末22により自動で送信された行き先階を乗場呼びとして登録した登録階に応答するエレベータ制御装置13と、
を備えたエレベータシステム。」

(3)引用文献4に記載された事項及び発明
引用文献4には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
1) 「【0007】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、エレベーターに利用者が乗り込む前に、遠隔からフロア呼びおよび行先階が登録された場合において、利用者が乗りかごに乗れなかった場合においても、乗りかごが無人のままで稼動することを回避して、エレベーターの運用効率の向上と利用者の利便性低下の防止の双方を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の特徴は、少なくとも1台の乗りかごと、前記乗りかごを制御するエレベーター制御装置と、前記エレベーター制御装置に接続され前記エレベーター制御装置に前記乗りかごの利用者情報を入力可能な外部制御装置とを備えたエレベーター制御システムにおいて、前記エレベーター制御装置は、前記外部制御装置が備える外部システムが検出した利用者情報により利用者の利用開始する開始階を特定して登録し、この特定した開始階に前記乗りかごを移動させる指令を発生するホール呼び制御部と、前記利用者情報から利用者が前記乗りかごから降車する行先階を特定して登録し、前記開始階からこの特定した行先階に前記乗りかごを移動させる指令を発生する行先階制御部と、前記乗りかごに利用者が乗車したか否かを判定する乗者判定部と、前記乗りかごの昇降およびドアの開閉を制御するエレベーター制御部とを備え、前記行先階制御部は、利用者が未乗車であると前記乗車判定部が判定したときに利用者の行先階の登録を削除することにある。」

2) 「【0011】
以下、図面に基づいて、本発明に係るエレベーター及びその制御装置の一実施例を説明する。図1は、本発明に係るエレベーター制御システム100の一実施例のブロック図である。図2は、図1に示したエレベーター制御システム100を用いてエレベーターを制御する様子を示すフローチャートである。図3は、図1に示したエレベーター制御装置30により、複数台の乗りかご41〜43を制御する場合のエレベーター制御システム100の構成を示すブロック図である。」

3) 「【0015】
ここで本実施例に特徴的な構成として、エレベーター制御装置30に、このエレベーター制御装置30と独立に動作可能な外部システム2aを有する外部制御装置40が接続されている。外部制御装置40は本実施例では上記入退室管理システムであり、保安用のゲートに設けられた個人認識手段であるID読み取り装置2bを用いて、集合住宅の住人や訪問者を認識する。」

4) 「【0019】
ここでセンサ31bは、エレベーター乗りかごのドア32b付近に設置される挟み込み防止用のセンサや、専用の人感センサ、カメラ等の人検出機能を有する手段である。本実施例のセンサ31bは、乗りかご180の内外に設けた2個の遠赤外センサ部材を有しており、エレベーター乗りかご180のドア32b近傍であって、この乗りかご180の内部に居る人および乗りかご180の外部に居る人の体温を検知する。
【0020】
内部のセンサ部材と外部のセンサ部材の検知時間のずれにより、利用者がエレベーターの乗りかご180から下車したのと乗りかご180に乗車したのとを判別する。すなわち、内部のセンサ部材の後に外部のセンサ部材が利用者を検知すれば下車と判断し、その逆であれば乗車と判断する。また、内部のセンサ部材と外部のセンサ部材が同時に利用者を検知したときは、利用者がドアに挟み込まれたと判断できる。」

5) 「【0047】
以上説明したように本実施例によれば、乗りかご180に新たな装置を設置することなく、外部システム2aに接続可能な外部システム制御信号受信部36を設けるだけで、乗りかご180の無駄な移動を抑制し、省エネルギー化が図られる。すなわち、外部システム制御信号受信部36から自動呼び登録された行先階に乗りかご180を移動させる前に、エレベーター制御部が乗りかご180内の乗客の有無の情報に基づいて乗りかご180の移動の要否を決定する。乗りかご180内が無人と判定した場合には、外部システム制御信号受信部からの指令で自動登録された行先階を解除して、エレベーター乗りかごの無人状態の稼動を抑制する。」

上記摘記事項1)ないし5)から、引用文献4には、次の甲3発明が記載されている。

(甲3発明)
「エレベーターの運用効率の向上と利用者の利便性低下の防止の双方を実現するように、
外部制御装置40と、
前記エレベーターの乗りかご180へ乗車・下車する利用者1aを検知するセンサ31bと、
前記外部装置40が検出した利用者1aの利用開始する開始階を自動登録し、利用者1aが前記乗りかご180から降車する行先階を自動登録し、利用者1aが未乗車で乗りかご180内が無人であるときは、行き先階の登録を削除するエレベーター制御装置30と、
を備えたエレベーター制御システム100。」

(4)甲1発明について
1) 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「エレベータ」は、本件発明1の「エレベーター」に相当している。
同様に、「設置された」は「設けられた」に、
「かご20」は「かご」に、
「かご20への乗客の乗降を検知する」ことは「かごへ出入りする物体を検出する」ことに、
「乗客検知手段55」は「センサ」に、
「乗場に到着してかご20のドア22の開閉動作が完了するまでに」は「乗場に到着して戸開した後に」に、
「乗客の乗降を検知した場合」は「物体を検出した場合」に、
「乗客の乗降を検知しない場合」は「物体を検出しない場合」に、
「運行制御装置30」は「制御装置」に、
「エレベータシステム10」は「エレベーターの自動呼び登録システム」に、
それぞれ相当している。
そして、本件発明1の「乗場側ビーコン装置」と、甲1発明の「乗場行先階登録装置40」とは、「所定の装置」の限りにおいて一致している。
また、本件発明1の「携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録し」た「前記乗場呼びに対応した乗場」と甲1発明の「行先階の入力された乗場行先階登録装置40の設置階床の乗場」とは「所定の乗場呼びに係る乗場」の限りにおいて一致している。
さらに、本件発明1の「携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し」と、甲1発明の「乗場行先階呼び情報をかご呼び情報として登録し」とは、それぞれ「所定のかご呼びを登録し」の限りにおいて一致している。

以上のとおりであるから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。

(一致点1)
「エレベーターの乗場に設けられた所定の装置と、
前記エレベーターのかごへ出入りする物体を検出するセンサと、
前記かごが所定の乗場呼びに係る乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、所定のかご呼びを登録し、前記かごが前記所定の乗場呼びに係る乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記所定のかご呼びを登録しない制御装置と、
を備えたエレベーターの自動呼び登録システム。」

(相違点1−1)
「所定の装置」が、本件発明1は、「乗場側ビーコン装置」であるのに対し、甲1発明では、「乗場行先階登録装置40」である点。

(相違点1−2)
「所定の乗場呼びに係る乗場」が、本件発明1は、「携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録し」た「前記乗場呼びに対応した乗場」であるのに対し、甲1発明では、「行先階の入力された乗場行先階登録装置40の設置階床の乗場」である点。

(相違点1−3)
「所定のかご呼びを登録し」に関し、本件発明1は、「携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し」であるのに対し、甲1発明では、「乗場行先階呼び情報をかご呼び情報として登録し」である点。

(相違点1−4)
本件発明1は、「かごに設けられたかご側ビーコン装置」を備え、「記携帯端末は、前記かご側ビーコン装置からの電波を受信した場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求の自動送信を一定期間抑止する」のに対し、甲1発明では、そのような構成を備えていない点。

2) 判断
上記相違点について検討するに、事案に鑑み、まず、相違点1−4について検討する。
相違点1−4に係る本件発明1の構成は、すでに5(2)において相違点3について述べたように、「利用者が意図しない呼びの登録を抑制することができる」(本件特許の願書に添付した明細書の段落【0007】)のであるから、甲1発明の「不要な行先階の入力からかご呼び情報が登録されてしまうことを抑制し、かごの運転効率を向上させることができるように」することに資するといえるので、当該構成を甲1発明に適用する動機があるともいえる。
しかしながら、すでに5(2)において相違点3について述べたように、相違点1−4に係る本件発明1の構成は、引用文献1ないし8及び甲第9ないし12号証のいずれにも記載も示唆もされていないのであって、当該構成により本件発明1は上記所定の効果を奏するものである。
そうすると、甲1発明をして相違点1−4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。

3) まとめ
したがって、相違点1−1ないし1−3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)甲2発明について
1) 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「エレベータ11」は、本件発明1の「エレベーター」に相当している。
同様に、「乗場20」は「乗場」に、
「設置されている」は「設けられた」に、
「無線信号装置(ビーコン)21」は「乗場側ビーコン装置」に、
「携帯端末22」は「携帯端末」に、
「呼び登録を行うアプリケーションソフト23」は「呼び登録システムアプリケーション」に、
「エレベータ制御装置13」は「制御装置」に、
「無線信号」は「電波」に、
「エレベータシステム」は「エレベーターの自動呼び登録システム」に、
それぞれ相当している。
そして、本件発明1の「予め設定された呼びの要求」及び「自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録」することと、甲2発明の「予め設定された行き先階」及び「自動で送信された行き先階を乗場呼びとして登録した登録階に応答」することとは、それぞれ「予め設定された事項」及び「自動で送信された事項に係る内容を処理」することの限りにおいて一致している。

以上のとおりであるから、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。

(一致点2)
「エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置と、
携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された事項を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された事項に係る内容を処理する制御装置と、
を備えたエレベーターの自動呼び登録システム。」

(相違点2−1)
「予め設定された事項を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された事項に係る内容を処理する」ことに関し、本件発明1は、「呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録」するのに対し、甲2発明では、「予め設定された行き先階を自動で送信した際に、前記携帯端末22により自動で送信された行き先階を乗場呼びとして登録した登録階に応答」する点。

(相違点2−2)
本件発明1は、「エレベーターのかごへ出入りする物体を検出するセンサ」を備え、「前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録しない」のに対し、甲2発明では、「エレベータ10のかご室へ出入りする物体を検出するセンサ」を備えておらず、したがって、前記センサに係る、かごが乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を「検出した場合」及び「検出しない場合」に関わりなく「行き先階を乗場呼びとして登録」するのであって、「検出しない場合」に「行き先階を乗場呼びとして登録しない」構成を備えていない点。

(相違点2−3)
本件発明1は、「かごに設けられたかご側ビーコン装置」を備え、「前記携帯端末は、前記かご側ビーコン装置からの電波を受信した場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求の自動送信を一定期間抑止する」のに対し、甲2発明では、そのような構成を備えていない点。

2) 判断
上記相違点について検討するに、事案に鑑み、まず、相違点2−3について検討する。
相違点2−3に係る本件発明1の構成は、エレベータの呼び登録を携帯端末にて行うものであるから、甲2発明と同じ技術分野に属するといえるのでといえるので、当該構成を甲2発明に適用する動機があるともいえる。
しかしながら、すでに5(2)において相違点3について述べたように、相違点2−3に係る本件発明1の構成は、引用文献1ないし8及び甲第9ないし12号証のいずれにも記載も示唆もされていないのであって、当該構成により本件発明1は上記所定の効果を奏するものである。
そうすると、甲2発明をして相違点2−3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。

3) まとめ
したがって、相違点2−1及び2−2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(6)甲3発明について
1) 対比
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「乗りかご180」は、本件発明1の「かご」に相当している。
同様に、「乗りかご180へ乗車・下車する利用者1aを検知するセンサ31b」は「かごへ出入りする物体を検出するセンサ」に、
「開始階」は「乗場呼び」に、
「行先階」は「かご呼び」に、
「エレベーター制御装置30」は「制御装置」に、
「エレベーター制御システム100」は「エレベーターの自動呼び登録システム」に、
それぞれ相当している。
そして、本件発明1の「携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録し、前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録しない」ことと、甲3発明の「前記外部装置40が検出した利用者1aの利用開始する開始階を自動登録し、利用者1aが前記乗りかご180から降車する行先階を自動登録し、利用者1aが未乗車で乗りかご180内が無人であるときは、行き先階の登録を削除する」こととは、本件発明1の「携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録」することと甲3発明の「前記外部装置40が検出した利用者1aの利用開始する開始階を自動登録」することとが「自動で乗場呼びを登録」することの限りにおいて一致していて、本件発明1の「前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録」することと甲3発明の「利用者1aが前記乗りかご180から降車する行先階を自動登録」することとが「かご呼びを登録」することの限りにおいて一致していて、本件発明1の「前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録しない」ことと甲3発明の「利用者1aが未乗車で乗りかご180内が無人であるときは、行き先階の登録を削除する」こととが「所定の条件の場合は、かご呼びを登録しない」ことの限りにおいて一致しているから、結局、「自動で乗場呼びを登録し、かご呼びを登録し、所定の条件の場合は、かご呼びを登録しない」ことの限りにおいて一致している。

以上のとおりであるから、本件発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、以下のとおりとなる。

(一致点3)
「エレベーターのかごへ出入りする物体を検出するセンサと、
自動で乗場呼びを登録し、かご呼びを登録し、所定の条件の場合は、かご呼びを登録しない制御装置と、
を備えたエレベーターの自動呼び登録システム。」

(相違点3−1)
「所定の場合」のかご呼びの登録に関し、本件発明1は、「エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置」を備えるのに対し、甲3発明では、それを備えておらず、「外部制御装置40」を備える点。

(相違点3−2)
「自動で乗場呼びを登録し、かご呼びを登録し、所定の条件の場合は、かご呼びを登録しない」ことに関し、本件発明1は、「携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録し、前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録しない」ことであるのに対し、甲3発明では、「前記外部装置40が検出した利用者1aの利用開始する開始階を自動登録し、利用者1aが前記乗りかご180から降車する行先階を自動登録し、利用者1aが未乗車で乗りかご180内が無人であるときは、行き先階の登録を削除する」ことである点。

(相違点3−3)
本件発明1は、「かごに設けられたかご側ビーコン装置」を備え、「記携帯端末は、前記かご側ビーコン装置からの電波を受信した場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求の自動送信を一定期間抑止する」のに対し、甲3発明では、そのような構成を備えていない点。

2) 判断
上記相違点について検討するに、事案に鑑み、まず、相違点3−3について検討する。
相違点3−3に係る本件発明1の構成は、すでに5(2)において相違点3について述べたように、「利用者が意図しない呼びの登録を抑制することができる」(本件特許の願書に添付した明細書の段落【0007】)のであるから、甲3発明の「エレベーターの運用効率の向上と利用者の利便性低下の防止の双方を実現する」ことに資するといえるので、当該構成を甲3発明に適用する動機があるともいえる。
しかしながら、すでに5(2)において相違点3について述べたように、相違点3−3に係る本件発明1の構成は、引用文献1ないし8及び甲第9ないし12号証のいずれにも記載も示唆もされていないのであって、当該構成により本件発明1は上記所定の効果を奏するものである。
そうすると、甲3発明をして相違点3−3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。

3) まとめ
したがって、相違点3−1及び3−2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(7)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、引用文献2、3あるいは4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、申立人のかかる主張は、採用することができない。

7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】エレベーターの自動呼び登録システム
【技術分野】
【0001】
この発明は、エレベーターの自動呼び登録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エレベーターの自動呼び登録システムを開示する。当該自動呼び登録システムによれば、エレベーターの呼びを自動で登録し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本特開2018−95439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の自動呼び登録システムによれば、乗場側ビーコン装置に近づくと、エレベーターの呼びが登録される。このため、利用者が意図しない呼びが登録されることもある。
【0005】
この発明は、上述の課題を解決するためになされた。この発明の目的は、利用者が意図しない呼びの登録を抑制することができるエレベーターの自動呼び登録システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベーターの自動呼び登録システムは、エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置と、前記エレベーターのかごへ出入りする物体を検出するセンサと、前記かごに設けられたかご側ビーコン装置と、携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録しない制御装置と、を備え、前記携帯端末は、前記かご側ビーコン装置からの電波を受信した場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求の自動送信を一定期間抑止する。
この発明に係るエレベーターの自動呼び登録システムは、エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置と、前記エレベーターのかごへ出入りする物体を検出するセンサと、携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録しない制御装置と、を備え、前記携帯端末は、前記乗場側ビーコン装置から電波を受信した際に、呼び登録システムアプリケーションが起動しており、表示部において呼び登録システムアプリケーションの操作画面を操作できる状態である場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信しない。
この発明に係るエレベーターの自動呼び登録システムは、エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置と、前記エレベーターのかごへ出入りする物体を検出するセンサと、携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録しない制御装置と、を備え、前記携帯端末は、前記乗場側ビーコン装置から電波を受信した際に、呼び登録システムアプリケーションが起動しており、表示部において呼び登録システムアプリケーションの操作画面を操作できない状態である場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信する。
この発明に係るエレベーターの自動呼び登録システムは、エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置と、前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信する携帯端末と、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した呼びを登録する制御装置と、を備え、前記携帯端末は、前記乗場側ビーコン装置から電波を受信した際に、呼び登録システムアプリケーションが起動しており、表示部において呼び登録システムアプリケーションの操作画面を操作できる状態である場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信しない。
この発明に係るエレベーターの自動呼び登録システムは、前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信する携帯端末と、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した呼びを登録する制御装置と、を備え、前記携帯端末は、前記乗場側ビーコン装置から電波を受信した際に、呼び登録システムアプリケーションが起動しており、表示部において呼び登録システムアプリケーションの操作画面を操作できない状態である場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信する。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、制御装置は、携帯端末が乗場側ビーコン装置から電波を受信した際に携帯端末を所持した利用者の位置に基づいて呼びを登録するか否かを判定する。このため、利用者が意図しない呼びの登録を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】 実施の形態1におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの構成図である。
【図2】 実施の形態1におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用される携帯端末にインストールされたアプリケーションの操作画面の正面図である。
【図3】 実施の形態1におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用される携帯端末にインストールされたアプリケーションの操作画面の正面図である。
【図4】 実施の形態1におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用される携帯端末にインストールされたアプリケーションの操作画面の正面図である。
【図5】 実施の形態1におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの要部の構成図である。
【図6】 実施の形態1におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの制御装置と携帯端末15とのブロック図である。
【図7】 実施の形態1におけるエレベーターの自動呼び登録システムに用いられるビーコン設置のテーブルを示す図である。
【図8】 実施の形態1におけるエレベーターの自動呼び登録システムに用いられる呼びパターンのテーブルを示す図である。
【図9】 実施の形態1におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの制御装置と携帯端末との動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【図10】 実施の形態2におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの要部の構成図である。
【図11】 実施の形態2におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの制御装置と携帯端末とのブロック図である。
【図12】 実施の形態2におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用される携帯端末15の動作の概要の第1例を説明するためのフローチャートである。
【図13】 実施の形態2におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用される携帯端末15の動作の概要の第2例を説明するためのフローチャートである。
【図14】 実施の形態3におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの要部構成図である。
【図15】 実施の形態3におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの制御装置と携帯端末とのブロック図である。
【図16】 実施の形態3におけるエレベーターの自動呼び登録システムに用いられる非利用時間のテーブルを示す図である。
【図17】 実施の形態3におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用される携帯端末の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【図18】 実施の形態4におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの要部の構成図である。
【図19】 実施の形態4におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの制御装置と携帯端末とのブロック図である。
【図20】 実施の形態4におけるエレベーターの自動呼び登録システムに用いられる利用時間のテーブルを示す図である。
【図21】 実施の形態4におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用される携帯端末の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【図22】 実施の形態5におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの要部の構成図である。
【図23】 実施の形態5におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの制御装置と携帯端末とのブロック図である。
【図24】 実施の形態5におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの制御装置と携帯端末との動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【図25】 実施の形態6におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの要部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの構成図である。
【0011】
図1のエレベーターにおいて、昇降路1は、図示されない建築物の各階を貫く。機械室2は、昇降路1の直上に設けられる。複数の乗場3の各々は、建築物の各階に設けられる。複数の乗場3の各々は、昇降路1に対向する。
【0012】
巻上機4は、機械室2に設けられる。巻上機4は、図示されないブレーキ等を備える。主ロープ5は、巻上機4に巻き掛けられる。
【0013】
かご6は、昇降路1の内部に設けられる。かご6は、主ロープ5の一側に支持される。釣合おもり7は、昇降路1の内部に設けられる。釣合おもり7は、主ロープ5の他側に支持される。
【0014】
複数の乗場ドア8の各々は、複数の乗場3の各々の出入口に設けられる。かごドア9は、かご6の出入口に設けられる。かご6の出入口近傍には、かご6の出入口を介してかご6へ出入りする物体を検出し得るようにセンサ10が設けられる。例えば、センサ10は赤外線センサ、光電センサ、超音波センサ等である。例えば、センサ10は、かごドア9に設けられる。例えば、センサ10は、かご6の出入口柱に設けられてもよい。かご6には、かご6にかかる荷重を検知し得るように秤装置11が設けられる。例えば、秤装置11は、かご6の床面の直下に設けられる。例えば、秤装置11は、主ロープ5とかご6との接続部に設けられてもよい。
【0015】
複数の乗場側ビーコン装置12の各々は、複数の乗場3の各々の壁面に設けられる。
【0016】
制御装置13は、機械室2に設けられる。制御装置13は、エレベーターを全体的に制御し得るように設けられる。
【0017】
基地局14は、建築物とは離れた個所に設けられる。携帯端末15は、利用者に所持される。例えば、携帯端末15は、スマートフォンである。本システムでは、利用者は、携帯端末15を利用してエレベーターの呼びを手動または自動で要求することができる。携帯端末15を利用した呼び登録を行うためには、携帯端末15に、特定の呼び登録システムアプリケーションが予めインストールされている必要がある。例えば、利用者は、エレベーターの管理を行う保守会社のホームページに携帯端末15からアクセスすることにより、携帯端末15に呼び登録システムアプリケーションをダウンロードおよびインストールを行うことができる。以下の説明では、呼び登録システムアプリケーションは、単に「アプリケーション」と表記される。
【0018】
次に、図2から図4を用いて、アプリケーションの操作画面を説明する。
図2から図4は実施の形態1におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用される携帯端末にインストールされたアプリケーションの操作画面の正面図である。
【0019】
図2はエレベーターが設けられた建築物としてのビルを登録する際の操作画面である。図2において、携帯端末15が乗場側ビーコン装置12から電波を受信すると、操作画面には、乗場側ビーコン装置12に対応したビルの登録を促すダイアログまたは通知メッセージが表示される。この状態において、利用者が操作画面の「OK」の領域に触れると、乗場側ビーコン装置12に対応したビルが登録される。
【0020】
図3はエレベーターの呼びを手動で要求する際の操作画面である。図3において、登録済みのビルが選択されると、呼び登録画面が表示される。利用者は、携帯端末15の呼び登録画面を操作することで、手動で呼びを要求することができる。例えば、利用者は、「現在階」として「1」を選択し、「行先階」として「4」を選択した後、「呼ぶ」の領域に触れることで、1階の乗場UP呼びと4階のかご呼びを要求することができる。その後、利用者は、「閉じる」の領域に触れることで、呼び登録画面を閉じることができる。
【0021】
図4はエレベーターの呼びを自動で要求する際の操作画面である。図4において、歯車アイコンの領域が触れられると、設定画面が表示される。利用者は、携帯端末15の設定画面を操作することで、自動で呼びを要求する設定とすることができる。例えば、利用者は、ハンズフリー設定スイッチをONにすることで階床選択画面を表示させた後、二つの階として、「1」、「8」を選択し、「OK」の領域に触れることで、1階の乗場UP呼びと8階のかご呼び、もしくは8階の乗場DOWN呼びと1階のかご呼びとを自動で要求する設定とすることができる。この場合、1階において乗場側ビーコン装置12に近づくと、1階の乗場UP呼びと8階のかご呼びとが自動で要求される。また、8階において乗場側ビーコン装置12に近づくと、8階の乗場DOWN呼びと1階のかご呼びとが自動で要求される。
【0022】
次に、図5を用いて、エレベーターの呼びの自動登録方法を説明する。
図5は実施の形態1におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの要部の構成図である。
【0023】
図5に示されるように、乗場側ビーコン装置12は、乗場3に向けて電波を送信する。携帯端末15は、当該電波を受信した際にエレベーターの呼びを要求する情報を制御装置13に向けて電波で送信する。当該情報は、基地局14とインターネット網とを介して制御装置13に受信される。
【0024】
制御装置13は、当該情報に基づいてエレベーターの呼びを登録する。例えば、制御装置13は、当該情報に基づいて当該乗場3に対応した乗場呼びを登録する。例えば、制御装置13は、当該情報に基づいて当該乗場3に対応した乗場呼びとかご呼びとを登録する。
【0025】
次に、図6を用いて、制御装置13と携帯端末15とを説明する。
図6は実施の形態1におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの制御装置と携帯端末とのブロック図である。
【0026】
図6に示されるように、制御装置13は、外部通信部13aとセンサ通信部13bと巻上機通信部13cと呼び要求受信部13dと出入り検出部13eとかご呼び可否判定部13fと運行管理部13gと制御部13hとを備える。
【0027】
外部通信部13aは、インターネット網を介して外部の機器と通信し得るように設けられる。センサ通信部13bは、センサ10からの情報を受信し得るように設けられる。巻上機通信部13cは、巻上機4に情報を送信し得るように設けられる。呼び要求受信部13dは、外部通信部13aを介して呼びを要求する情報を受信し得るように設けられる。出入り検出部13eは、センサ通信部13bに受信された情報に基づいて利用者のかご6の出入りを検出し得るように設けられる。運行管理部13gは、呼び要求受信部13dから呼びを要求する情報を受け、制御部13hに乗場呼びの登録要求とかご呼びの登録要求を送信し得るように設けられる。かご呼び可否判定部13fは、呼び要求受信部13dに受信されたかご呼びを要求する情報と出入り検出部13eに検出された利用者のかご6の出入りとに基づいてかご呼びを登録するか否かを判定し判定結果を運行管理部13gに送信し得るように設けられる。制御部13hは、運行管理部13gから送信された呼びの登録要求に基づいて呼び登録を行い巻上機4を制御し得るように設けられる。また、外部通信部13a、呼び要求受信部13d、出入り検出部13e、かご呼び可否判定部13f、運行管理部13gは、制御装置13とは別に設けてもよい。例えば、エレベーターの運行状態を監視する監視装置に設けてもよい。
【0028】
例えば、呼び要求受信部13dと出入り検出部13eとかご呼び可否判定部13fと運行管理部13gと制御部13hとの機能は、プロセッサがメモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0029】
携帯端末15は、外部通信部15aとビーコン通信部15bと呼びパターン記憶部15cと呼び要求作成部15dと呼び要求送信部15eとを備える。
【0030】
外部通信部15aは、図5においては図示されない基地局14を介して外部の機器と通信し得るように設けられる。ビーコン通信部15bは、乗場側ビーコン装置12からの電波を受信し得るように設けられる。呼びパターン記憶部15cは、乗場呼びパターンの情報とかご呼びパターンの情報とを記憶し得るように設けられる。呼び要求作成部15dは、ビーコン通信部15bに受信された電波の情報と呼びパターン記憶部15cに記憶された情報とに基づいて呼びの情報を作成し得るように設けられる。呼び要求送信部15eは、呼び要求作成部15dに作成された呼びを要求する情報を外部通信部15aに送信させ得るように設けられる。
【0031】
例えば、呼び要求作成部15dと呼び要求送信部15eとの機能は、プロセッサがメモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0032】
次に、図7を用いて、ビーコン設置のテーブルを説明する。
図7は実施の形態1におけるエレベーターの自動呼び登録システムに用いられるビーコン設置のテーブルを示す図である。
【0033】
図7に示されるように、ビーコン設置のテーブルにおいては、ビーコン情報と物件IDとエレベーターIDとビーコン設置階の情報が対応付けられる。
【0034】
ビーコン情報は、乗場側ビーコン装置12の識別情報である。例えば、ビーコンがiBeacon(登録商標)であれば、UUID、Major、Minorと呼ぶデータ列の組で識別子を構成する。物件IDは、エレベーターが設けられた建築物の識別情報である。エレベーターIDは、エレベーターを識別し得る情報である。設置階は、当該ビーコンを設置する階の識別情報である。
【0035】
次に、図8を用いて、呼びパターンのテーブルを説明する。
図8は実施の形態1におけるエレベーターの自動呼び登録システムに用いられる呼びパターンのテーブルを示す図である。
【0036】
図8に示されるように、呼びパターンのテーブルにおいては、ビーコン情報と物件IDとエレベーターIDと階1と階2との情報が対応付けられる。
【0037】
ビーコン情報は、乗場側ビーコン装置12の識別情報である。物件IDは、エレベーターが設けられた建築物の識別情報である。エレベーターIDは、エレベーターを識別し得る情報である。階1は、利用者がかご6に乗る階もしくはかご6から降りる階の識別情報である。階2は、利用者がかご6から降りる階もしくはかご6に乗る階の識別情報である。
【0038】
次に、図9を用いて、制御装置13と携帯端末15との動作の概要を説明する。
図9は実施の形態1におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの制御装置と携帯端末との動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【0039】
ステップS1では、携帯端末15は、乗場側ビーコン装置12からの電波を受信した際にアプリケーションを起動する。その後、携帯端末15は、ステップS2の動作を行う。ステップS2では、携帯端末15は、乗場呼びおよびかご呼びを要求する情報を送信する。ビーコンの識別子を受信した携帯端末15の呼び要求作成部15dは、ビーコン設置のテーブルによって、ビーコン情報に対応する物件ID、エレベーターID、設置階を得る。次に、呼びパターンのテーブルにより、ビーコン識別子から得た物件IDとエレベーターIDと一致し、さらに設置階が階1もしくは階2に一致する階1および階2を得る。階1と階2とが得られた場合、階1と階2のうち設置階と一致する階が乗場呼び階と決定され、もう一つの階がかご呼び階と決定される。最後に、乗場呼び階とかご呼び階とが比較され、乗場呼びの方向(UPもしくはDOWN)が決定される。
【0040】
その後、制御装置13は、ステップS3の動作を行う。ステップS3では、制御装置13は、携帯端末15からの情報に基づいて乗場呼びを登録する。その後、制御装置13は、ステップS4の動作を行う。ステップS4では、制御装置13は、乗場呼びに対応した乗場3にかご6を到着させた後に戸開させる。
【0041】
その後、制御装置13は、ステップS5の動作を行う。ステップS5では、制御装置13は、かご6の戸閉までに利用者の出入りを検出したか否かを判定する。
【0042】
ステップS5で利用者の出入りが検出されない場合、制御装置13は、動作を終了する。
【0043】
ステップS5で利用者の出入りが検出された場合、制御装置13は、ステップS6の動作を行う。ステップS6では、制御装置13は、携帯端末15からの情報に基づいてかご呼びを登録する。その後、制御装置13は、動作を終了する。
【0044】
以上で説明した実施の形態1によれば、制御装置13は、携帯端末15が乗場側ビーコン装置12から電波を受信した際に携帯端末15を所持した利用者の位置に基づいて呼びを登録するか否かを判定する。このため、利用者が意図しない呼びの登録を抑制することができる。その結果、エレベーターの運行効率の低下を抑制することができる。
【0045】
具体的には、乗場呼びの登録の後、利用者の出入りが検出されなければ、かご呼びは登録されない。このため、かご6が当該かご呼びに対応した目的階に無用に移動することを抑制できる。
【0046】
なお、秤装置11の検出結果に基づいて利用者の出入りを検出してもよい。この際、秤装置11にかかる荷重が増加しない場合にかご呼びを登録しない設定とすれば、無用なかご呼びが登録されることをより確実に抑制することができる。
【0047】
また、かご6の内部を撮影するカメラの画像に基づいて利用者の出入りを検出してもよい。この際、カメラの画像に基づいて利用者がかご6の内部に乗り込んだことが検出されない場合にかご呼びを登録しない設定とすれば、無用なかご呼びが登録されることをより確実に抑制することができる。
【0048】
また、携帯端末15が乗場側ビーコン装置12から電波を受信した際に、アプリケーションが起動しており、表示部においてアプリケーションの操作画面を操作できる状態である場合に、アプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信しなくてもよい。この場合、利用者が手動で呼びを要求したり目的階を変更したりする可能性がある場合に呼びの要求が無用になされることを抑制できる。
【0049】
また、携帯端末15が乗場側ビーコン装置12から電波を受信した際に、アプリケーションが起動しており、表示部においてアプリケーションの操作画面を操作できない状態にある場合に、アプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信してもよい。例えば、アプリケーションが起動しており、携帯端末15の画面がロックされている場合に、アプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信してもよい。例えば、アプリケーションが起動しており、アプリケーションの画面が表示されていない場合に、アプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信してもよい。これらの場合、利用者が手動で呼びを要求したり目的階を変更したりする可能性がない場合に、即座に呼びを要求することができる。
【0050】
また、アプリケーションの画面において、戸開ボタンと戸閉ボタンとを表示してもよい。例えば、戸開ボタンの領域が触れられた際に、携帯端末15から基地局14とインターネット網とを介してエレベーターの戸開の要求を制御装置13に送信してもよい。例えば、戸閉ボタンの領域が触れられた際に、携帯端末15から基地局14とインターネット網とを介してエレベーターの戸閉の要求を制御装置13に送信してもよい。これらの場合、乗場3から少し離れた位置においても、エレベーターの戸開閉時間を調整することができる。なお、本実施の形態1において、携帯端末15がエレベーターの呼びを要求する情報を制御装置13に向けて電波で送信する際に、基地局14とインターネット網とを介して制御装置13に送信する構成とした。例えば、乗場3に制御装置13に接続された無線LANを構築するアクセスポイントを設置し、携帯端末15がエレベーターの呼びを要求する情報を制御装置13に向けて電波で送信する際に、アクセスポイントを介して制御装置13に送信するようにしてもよい。また、例えば、乗場側ビーコン装置12がアクセスポイント機能を備えることで、携帯端末15がエレベーターの呼びを要求する情報を制御装置13に向けて電波で送信する際に、乗場側ビーコン装置12を介して制御装置13に送信するようにしてもよい。
【0051】
実施の形態2.
図10は実施の形態2におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの要部の構成図である。図11は実施の形態2におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの制御装置と携帯端末とのブロック図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0052】
図10に示されるように、かご側ビーコン装置16は、かご6の内部に設けられる。かご側ビーコン装置16はかご上に設置してもよい。かご側ビーコンは、かご6の内部に向けて電波を送信する。図11に示されるように、携帯端末15において、ビーコン通信部15bは、乗場側ビーコン装置12およびかご側ビーコン装置16からの電波を受信し得るように設けられる。乗降判定部15fは、ビーコン通信部15bからの情報に基づいて利用者のかご6の乗降を検出し得るように設けられる。
【0053】
次に、図12を用いて、携帯端末15の動作の概要の第1例を説明する。
図12は実施の形態2におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用される携帯端末の動作の概要の第1例を説明するためのフローチャートである。
【0054】
ステップS11では、携帯端末15は、乗場側ビーコン装置12またはかご側ビーコン装置16から電波を受信した際にアプリケーションを起動する。その後、携帯端末15は、ステップS12の動作を行う。ステップS12では、携帯端末15は、当該電波を発信したビーコン装置が乗場側ビーコン装置12であるか否かを判定する。
【0055】
ステップS12で当該電波を発信したビーコン装置が乗場側ビーコン装置12である場合、携帯端末15は、ステップS13の動作を行う。ステップS13では、携帯端末15は、乗場呼びおよびかご呼びを要求する情報を送信する。その後、携帯端末15は、ステップS14の動作を行う。ステップS14では、携帯端末15は、一定時間の間に新たに電波を受信しても呼びの登録を要求する情報を送信しない。その後、携帯端末15は、ステップS15の動作を行う。ステップS15では、携帯端末15は、一定時間が経過した際にアプリケーションを終了する。その後、携帯端末15は、動作を終了する。
【0056】
ステップS12で当該電波を発信したビーコン装置が乗場側ビーコン装置12でない場合、携帯端末15は、ステップS16の動作を行う。ステップS16では、携帯端末15は、かご側ビーコン装置16からの電波を検出するか否かを判定する。
【0057】
ステップS16でかご側ビーコン装置16からの電波が検出される場合、携帯端末15は、ステップS16の動作を行う。ステップS16でかご側ビーコン装置16からの電波が検出されない場合、携帯端末15は、ステップS14の動作を行う。ビーコン装置の電波検出においては、受信した電波の強度に対する検出閾値を設け、この閾値を超えるか否かで検出、非検出が判定される。この閾値は、乗場側ビーコン装置12とかご側ビーコン装置16で同じ値でもよいし、異なる値を用いることもできる。この閾値を変更することで、建物やエレベーターの異なる構造に応じて最適な乗降判定を行うことができる。
【0058】
次に、図13を用いて、携帯端末15の動作の概要の第2例を説明する。
図13は実施の形態2におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用される携帯端末の動作の概要の第2例を説明するためのフローチャートである。
【0059】
ステップS21からステップS25は、図12のステップS11からステップS15と同じである。ステップS22で当該電波を発信したビーコン装置が乗場側ビーコン装置12でない場合、携帯端末15は、ステップS24の動作を行う。
【0060】
以上で説明した実施の形態2によれば、制御装置13は、携帯端末15が乗場側ビーコン装置12から電波を受信して呼びを要求した際に、携帯端末15がかご側ビーコン装置16からの電波を受信しなくなってから一定時間が経過していない場合に呼びを登録しない。このため、利用者が意図しない呼びの登録を抑制することができる。
【0061】
具体的には、携帯端末15は、かご側ビーコン装置16からの電波を受信した場合に一定期間、呼びの要求の自動送信を抑止する。このため、かご6の走行中に呼びが登録されることを抑制できる。実施の形態2では、ステップS22で乗場側ビーコン装置12を検出していない場合、この時検出したビーコン装置の電波はかご側ビーコン装置16の電波であり、携帯端末15はステップS24の動作を行うこととしているが、かご側ビーコン装置16の電波を検出してから一定期間乗場側ビーコン装置12の電波の検出がないことを確認してからステップS24の動作を行うようにしてもよい。一定期間内に乗場側ビーコン装置12の電波を検出した場合、ステップS23の動作を行うようにしてもよい。このような動作とすることで、かご6が乗車階に止まっているなど、携帯端末15で受信したかご側ビーコン装置16の電波と乗場側ビーコン装置12の電波との強度に差がない場合に、乗場側ビーコン装置12よりも先にかご側ビーコン装置16が検出されていても、最適な乗降判定を行うことができる。
【0062】
実施の形態3.
図14は実施の形態3におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの要部構成図である。図15は実施の形態3におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの制御装置と携帯端末とのブロック図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0063】
図14と図15とに示されるように、携帯端末15は、加速度検出部15gと利用判定部15hと非利用時間記憶部15iと非利用時間判定部15jとを備える。
【0064】
加速度検出部15gは、携帯端末15の加速度を検出し得るように設けられる。利用判定部15hは、加速度検出部15gの検出結果に基づいて利用者がかご6を利用しているか否かを判定し得るように設けられる。例えば、利用判定部15hは、加速度検出部15gがかご6の走行に伴う加速度変化を検出したときに利用者がかご6を利用していると判定する。非利用時間記憶部15iは、非利用時間帯の情報を記憶し得るように設けられる。非利用時間判定部15jは、非利用時間記憶部15iに記憶された情報に基づいて現時刻が非利用時間帯であるか否かを判定し得るように設けられる。
【0065】
次に、図16を用いて、非利用時間のテーブルを説明する。
図16は実施の形態3におけるエレベーターの自動呼び登録システムに用いられる非利用時間のテーブルを示す図である。
【0066】
図16に示されるように、非利用時間のテーブルにおいては、ビーコン情報と物件IDとエレベーターIDと乗車階と移動方向と非利用時間の情報が対応付けられる。
【0067】
ビーコン情報は、乗場側ビーコン装置12の識別情報である。物件IDは、エレベーターが設けられた建築物の識別情報である。エレベーターIDは、エレベーターを識別し得る情報である。乗車階は、利用者がかご6に乗る階の識別情報である。移動方向は、かご6の移動方向の識別情報である。非利用時間は、かご6を利用しない時間帯の識別情報である。
【0068】
次に、図17を用いて、携帯端末15の動作の概要を説明する。
図17は実施の形態3におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用される携帯端末の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【0069】
ステップS31では、携帯端末15は、乗場側ビーコン装置12からの電波を受信した際にアプリケーションを起動する。その後、携帯端末15は、ステップS32の動作を行う。ステップS32では、携帯端末15は、現時刻が非利用時間帯であるか否かを判定する。
【0070】
ステップS32では、現時刻が非利用時間帯である場合、携帯端末15は、動作が終了する。
【0071】
ステップS32では、現時刻が非利用時間帯でない場合、携帯端末15は、ステップS33の動作を行う。ステップS33では、携帯端末15は、乗場呼びおよびかご呼びを要求する情報を送信する。
【0072】
その後、携帯端末15は、ステップS34の動作を行う。ステップS34では、携帯端末15は、利用者がかご6を利用しているか否かを判定する。
【0073】
ステップS34で利用者がかご6を利用している場合、携帯端末15は、動作を終了する。
【0074】
ステップS34で利用者がかご6を利用していない場合、携帯端末15は、ステップS35の動作を行う。ステップS35では、携帯端末15は、現時刻に対応した時間帯を非利用時間帯に指定する。その後、携帯端末15は、動作を終了する。
【0075】
以上で説明した実施の形態3によれば、制御装置13は、携帯端末15が乗場側ビーコン装置12から電波を受信した際の時刻が非利用時間帯である場合は呼びの要求を受けない。このため、制御装置13は、呼びを登録しない。その結果、利用者が意図しない呼びの登録を抑制することができる。
【0076】
なお、センサ10の検出結果、秤装置11の検出結果、かご側ビーコン装置16の受信状況等に基づいて、利用者がかご6を利用しているか否かの判定を行ってもよい。
【0077】
また、利用者がかご6を利用してなかった通算回数、呼びを登録した回数に対する利用者がかご6を利用してなかった回数の割合等に基づいて、呼びを登録しない条件を設定してもよい。
【0078】
実施の形態4.
図18は実施の形態4におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの要部の構成図である。図19は実施の形態4におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの制御装置と携帯端末とのブロック図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0079】
図18と図19とに示されるように、携帯端末15は、操作部15kと利用履歴記憶部151と利用時間記憶部15mと利用時間判定部15nとを備える。
【0080】
操作部15kは、外部からの操作を受け付け得るように設けられる。利用履歴記憶部151は、操作部15kに対する手動操作に基づいた呼びの要求履歴の情報を記憶し得るように設けられる。利用時間記憶部15mは、利用時間帯の情報を記憶し得るように設けられる。利用時間判定部15nは、利用時間記憶部15mに記憶された情報に基づいて現時刻が利用時間帯であるか否かを判定し得るように設けられる。
【0081】
次に、図20を用いて、利用時間のテーブルを説明する。
図20は実施の形態4におけるエレベーターの自動呼び登録システムに用いられる利用時間のテーブルを示す図である。
【0082】
図20に示されるように、利用時間のテーブルにおいては、ビーコン情報と物件IDとエレベーターIDと乗車階と移動方向と利用時間の情報が対応付けられる。
【0083】
ビーコン情報は、乗場側ビーコン装置12の識別情報である。物件IDは、エレベーターが設けられた建築物の識別情報である。エレベーターIDは、エレベーターを識別し得る情報である。乗車階は、利用者がかご6に乗る階の識別情報である。移動方向は、かご6の移動方向の識別情報である。利用時間は、かご6を利用する時間帯の識別情報である。
【0084】
次に、図21を用いて、携帯端末15の動作の概要を説明する。
図21は実施の形態4におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用される携帯端末の動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【0085】
ステップS41では、携帯端末15は、乗場側ビーコン装置12からの電波を受信した際にアプリケーションを起動する。その後、携帯端末15は、ステップS42の動作を行う。ステップS42では、携帯端末15は、現時刻が利用時間帯であるか否かを判定する。
【0086】
ステップS42で現時刻が利用時間帯である場合、携帯端末15は、ステップS43の動作を行う。ステップS43では、携帯端末15は、乗場呼びおよびかご呼びを要求する情報を送信する。その後、携帯端末15は、動作を終了する。
【0087】
ステップS42で現時刻が利用時間帯でない場合、携帯端末15は、ステップS44の動作を行う。ステップS44では、携帯端末15は、手動で呼びが要求されたか否かを判定する。
【0088】
ステップS44で手動で呼びが要求されない場合、携帯端末15は、動作を終了する。
【0089】
ステップS44で手動で呼びが要求された場合、携帯端末15は、ステップS45の動作を行う。ステップS45では、携帯端末15は、現時刻に対応した時間帯を利用時間帯に指定する。その後、携帯端末15は、ステップS43の動作を行う。
【0090】
以上で説明した実施の形態4によれば、制御装置13は、携帯端末15が乗場側ビーコン装置12から電波を受信した際の時刻が過去に手動で呼びを要求した時刻に対応した時間帯である場合は呼びの要求を受ける。このため、制御装置13は、呼びを登録する。その結果、実施の形態3において非利用時間帯となっている時刻でも手動で利用時間帯に再指定することができる。
【0091】
なお、手動での呼びの要求の通算回数等に基づいて、呼びを登録する条件を設定してもよい。
【0092】
実施の形態5.
図22は実施の形態5におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの要部の構成図である。図23は実施の形態5におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの制御装置と携帯端末とのブロック図である。なお、実施の形態1の部分と同一又は相当部分には同一符号が付される。当該部分の説明は省略される。
【0093】
図22に示されるように、ドアセンサ17は、かごドア9の上方に設けられる。ドアセンサ17は、かごドア9の開閉状態を検出し得るように設けられる。図23に示されるように、制御装置13は、現在階取得部13iと戸開閉判定部13jとを備える。現在階取得部13iは、かご6が存在する階の情報を取得し得るように設けられる。戸開閉判定部13jは、ドアセンサ17の検出結果に基づいてかごドア9の開閉状態を判定し得るように設けられる。
【0094】
次に、図24を用いて、制御装置13と携帯端末15との動作の概要を説明する。
図24は実施の形態5におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの制御装置と携帯端末との動作の概要を説明するためのフローチャートである。
【0095】
ステップS51では、携帯端末15は、乗場側ビーコン装置12からの電波を受信した際にアプリケーションを起動する。その後、携帯端末15は、ステップS52の動作を行う。ステップS52では、携帯端末15は、乗場呼びおよびかご呼びを要求する情報を送信する。
【0096】
その後、制御装置13は、ステップS53の動作を行う。ステップS53では、制御装置13は、かご6が当該乗場呼びに対応した階において戸開しているか否かを判定する。
【0097】
ステップS53でかご6が当該乗場呼びに対応した階において戸開していない場合、制御装置13は、ステップS54の動作を行う。ステップS54では、制御装置13は、当該乗場呼びを登録する。その後、制御装置13は、動作を終了する。
【0098】
ステップS53でかご6が当該乗場呼びに対応した階において戸開している場合、制御装置13は、動作を終了する。
【0099】
以上で説明した実施の形態5によれば、制御装置13は、携帯端末15が乗場側ビーコン装置12から電波を受信して乗場呼びを要求した際に、当該乗場3においてかご6が戸開している場合は、乗場呼びを登録しない。このため、かご6の戸閉時間が無用に延長されることを抑制できる。
【0100】
実施の形態6.
図25は実施の形態6におけるエレベーターの自動呼び登録システムが適用されるエレベーターの要部の構成図である。
【0101】
実施の形態6において、携帯端末15は、乗場側ビーコン装置12からの電波を受信した際にアプリケーションにおいて予め設定されたエレベーターと乗車階と携帯端末15とを特定するための第1信号を自動で送信する。監視装置19は、エレベーターの運行状態を監視し異常が発生した際に、図示しない監視センターに通報を行う。監視装置19は、実施の形態1で説明された外部通信部13a、呼び要求受信部13d、出入り検出部13e、かご呼び可否判定部13f、運行管理部13gを備える。
【0102】
サーバ18は、当該第1信号に基づいて当該携帯端末15に対応付けられた目的階を特定する。サーバ18は、当該乗車階と当該目的階との情報を含む第2信号を当該エレベーターに向けて送信する。
【0103】
当該エレベーターにおいて、監視装置19は、前記サーバ18から第2信号を受信した際に、当該第2信号に基づいて乗場呼びとかご呼びとの要求を把握する。監視装置19は、実施の形態1から実施の形態3の制御装置13と同様に乗場呼びおよびかご呼びを登録するか否かを判定する。
【0104】
例えば、監視装置19は、当該第2信号に基づいて当該乗車階に対応した乗場呼びの登録要求を制御装置13に送信する。例えば、制御装置13は、かご6が当該乗車階に対応した乗場3に到着して戸開した後にセンサ10が物体を検出した場合は、当該目的階に対応したかご呼びの登録要求を制御装置13に送信する。例えば、制御装置13は、かご6が当該乗車階に対応した乗場3に到着して戸開した後にセンサ10が物体を検出しない場合は、当該目的階に対応したかご呼びの登録要求を制御装置13に送信しない。
【0105】
以上で説明した実施の形態6によれば、サーバ18は、当該第1信号に基づいて当該携帯端末15に対応付けられた目的階を特定する。サーバ18は、当該乗車階と当該目的階との情報を含む第2信号を当該エレベーターに向けて送信する。このため、エレベーターと乗車階と目的階と携帯端末15とを特定するための情報をサーバ18に登録しておけば、その後は、携帯端末15から目的階の情報を送信しなくても、乗場呼びおよびかご呼びを自動で登録することができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上のように、この発明に係るエレベーターの自動呼び登録システムは、エレベーターシステムに利用できる。エレベーターシステムには、機械室を備えたエレベーターだけでなく、機械室を備えずに昇降路の内部に卷上機と制御装置とが設置された機械室レスエレベーターも含まれる。
【符号の説明】
【0107】
1 昇降路、 2 機械室、 3 乗場、 4 巻上機、 5 主ロープ、 6 かご、 7 釣合おもり、 8 乗場ドア、 9 かごドア、 10 センサ、 11 秤装置、 12 乗場側ビーコン装置、 13 制御装置、 13a 外部通信部、 13b センサ通信部、 13c 巻上機通信部、 13d 呼び要求受信部、 13e 出入り検出部、 13f かご呼び可否判定部、 13g 運行管理部、 13h 制御部、 13i 現在階取得部、 13j 戸開閉判定部、 14 基地局、 15 携帯端末、 15a 外部通信部、 15b ビーコン通信部、 15c 呼びパターン記憶部、 15d 呼び要求作成部、 15e 呼び要求送信部、 15f 乗降判定部、 15g 加速度検出部、 15h 利用判定部、 15i 非利用時間記憶部、 15j 非利用時間判定部、 15k 操作部、 151 利用履歴記憶部、 15m 利用時間記憶部、 15n 利用時間判定部、 16 かご側ビーコン装置、 17 ドアセンサ、 18 サーバ、 19 監視装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置と、
前記エレベーターのかごへ出入りする物体を検出するセンサと、
前記かごに設けられたかご側ビーコン装置と、
携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録しない制御装置と、
を備え、
前記携帯端末は、前記かご側ビーコン装置からの電波を受信した場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求の自動送信を一定期間抑止するエレベーターの自動呼び登録システム。
【請求項2】
エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置と、
前記エレベーターのかごへ出入りする物体を検出するセンサと、
携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録しない制御装置と、
を備え、
前記携帯端末は、前記乗場側ビーコン装置から電波を受信した際に、呼び登録システムアプリケーションが起動しており、表示部において呼び登録システムアプリケーションの操作画面を操作できる状態である場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信しないエレベーターの自動呼び登録システム。
【請求項3】
エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置と、
前記エレベーターのかごへ出入りする物体を検出するセンサと、
携帯端末が前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信した際に、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した乗場呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出した場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録し、前記かごが前記乗場呼びに対応した乗場に到着して戸開した後に前記センサが物体を検出しない場合は、前記携帯端末により自動で送信された要求に対応したかご呼びを登録しない制御装置と、
を備え、
前記携帯端末は、前記乗場側ビーコン装置から電波を受信した際に、呼び登録システムアプリケーションが起動しており、表示部において呼び登録システムアプリケーションの操作画面を操作できない状態である場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信するエレベーターの自動呼び登録システム。
【請求項4】
エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置と、
前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信する携帯端末と、
前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した呼びを登録する制御装置と、
を備え、
前記携帯端末は、前記乗場側ビーコン装置から電波を受信した際に、呼び登録システムアプリケーションが起動しており、表示部において呼び登録システムアプリケーションの操作画面を操作できる状態である場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信しないエレベーターの自動呼び登録システム。
【請求項5】
エレベーターの乗場に設けられた乗場側ビーコン装置と、
前記乗場側ビーコン装置から電波を受信して呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信する携帯端末と、
前記携帯端末により自動で送信された要求に対応した呼びを登録する制御装置と、
を備え、
前記携帯端末は、前記乗場側ビーコン装置から電波を受信した際に、呼び登録システムアプリケーションが起動しており、表示部において呼び登録システムアプリケーションの操作画面を操作できない状態である場合に、呼び登録システムアプリケーションにおいて予め設定された呼びの要求を自動で送信するエレベーターの自動呼び登録システム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-03-28 
出願番号 P2020-514298
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (B66B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 田村 嘉章
尾崎 和寛
登録日 2021-02-22 
登録番号 6841379
権利者 三菱電機株式会社 三菱電機ビルテクノサービス株式会社
発明の名称 エレベーターの自動呼び登録システム  
代理人 特許業務法人高田・高橋国際特許事務所  
代理人 特許業務法人高田・高橋国際特許事務所  
代理人 特許業務法人高田・高橋国際特許事務所  

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