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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06Q
管理番号 1386153
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-10-08 
確定日 2022-07-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第6941495号発明「点検情報管理システム、点検情報管理方法及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6941495号の請求項1〜3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6941495号の請求項1〜3に係る特許についての出願は、平成29年8月2日に出願され、令和3年9月8日にその特許権の設定登録がされ、同年9月29日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年10月8日に特許異議申立人吉田真理奈(以下、「申立人」という。)は特許異議の申立てを行った。


第2 本件発明

特許第6941495号の請求項1〜3に係る特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明3」という。また、これらの発明をまとめて「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるものであって、次のとおりのものである。

「【請求項1】
ゴム製品を点検する作業員が所持する携帯端末と、上記携帯端末とネットワーク通信可能な情報管理サーバーとを備えるゴム製品の点検情報管理システムであって、
上記情報管理サーバーが、
複数の点検項目情報を蓄積するデータベースを有し、
上記ゴム製品の管理番号及び上記ゴム製品を使用する顧客情報を含む管理識別情報を登録する管理識別情報登録手段と、
上記管理識別情報に基づき、上記データベースの点検項目情報から上記ゴム製品の個別点検リストを決定する個別点検リスト決定手段と、
上記個別点検リストを上記携帯端末に送信する個別点検リスト送信手段と、
上記個別点検リストを送信した携帯端末から上記ゴム製品の管理番号と共に点検結果情報を受信する点検結果情報受信手段と、
上記点検結果情報受信手段により受信した点検結果情報を顧客別に集計する点検結果情報集計手段と
を備え、
上記携帯端末又は上記情報管理サーバーが、少なくとも1以上の点検項目について、その点検項目に起因するゴム製品の寿命を上記点検結果情報に基づいて予測する寿命予測解析手段を備え、
上記情報管理サーバーが、上記寿命予測解析手段の予測値に基づき上記個別点検リストを修正する個別点検リスト修正手段を備え、
上記顧客情報が、予め顧客ごとに決定された個別点検リストを有し、上記個別点検リスト決定手段が、上記管理番号のゴム製品に対応する上記顧客情報から顧客を特定し、上記ゴム製品及び特定した顧客に対応する個別点検リストを選択する点検情報管理システム。
【請求項2】
ゴム製品を点検する作業員が所持する携帯端末と、上記携帯端末とネットワーク通信可能な情報管理サーバーとを用いるゴム製品の点検情報管理方法であって、
上記情報管理サーバーが、
複数の点検項目情報を蓄積するデータベースを有し、
上記ゴム製品の管理番号及び上記ゴム製品を使用する顧客情報を含む管理識別情報を登録する管理識別情報登録ステップと、
上記管理識別情報に基づき、上記データベースの点検項目情報から上記ゴム製品の個別点検リストを決定する個別点検リスト決定ステップと、
上記個別点検リストを上記携帯端末に送信する個別点検リスト送信ステップと、
上記個別点検リストを送信した携帯端末から上記ゴム製品の管理番号と共に点検結果情報を受信する点検結果情報受信ステップと、
上記点検結果情報受信ステップにより受信した点検結果情報を顧客別に集計する点検結果情報集計ステップと
を備え、
上記携帯端末又は上記情報管理サーバーが、少なくとも1以上の点検項目について、その点検項目に起因するゴム製品の寿命を上記点検結果情報に基づいて予測する寿命予測解析ステップを備え、
上記情報管理サーバーが、上記寿命予測解析ステップの予測値に基づき上記個別点検リストを修正する個別点検リスト修正ステップを備え、
上記顧客情報が、予め顧客ごとに決定された個別点検リストを有し、上記個別点検リスト決定ステップで、上記管理番号のゴム製品に対応する上記顧客情報から顧客を特定し、上記ゴム製品及び特定した顧客に対応する個別点検リストを選択する点検情報管理方法。
【請求項3】
ゴム製品を点検する作業員が所持する携帯端末と、上記携帯端末とネットワーク通信可能な情報管理サーバーとを用いるゴム製品の点検情報管理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
上記情報管理サーバーが、複数の点検項目情報を蓄積するデータベースを有し、
上記情報管理サーバーを
上記ゴム製品の管理番号及び上記ゴム製品を使用する顧客情報を含む管理識別情報を登録する管理識別情報登録手段と、
上記管理識別情報に基づき、上記データベースの点検項目情報から上記ゴム製品の個別点検リストを決定する個別点検リスト決定手段と、
上記個別点検リストを上記携帯端末に送信する個別点検リスト送信手段と、
上記個別点検リストを送信した携帯端末から上記ゴム製品の管理番号と共に点検結果情報を受信する点検結果情報受信手段と、
上記点検結果情報受信手段により受信した点検結果情報を顧客別に集計する点検結果情報集計手段と
して機能させ、
上記携帯端末又は上記情報管理サーバーを、少なくとも1以上の点検項目について、その点検項目に起因するゴム製品の寿命を上記点検結果情報に基づいて予測する寿命予測解析手段として機能させ、
上記情報管理サーバーを、上記寿命予測解析手段の予測値に基づき上記個別点検リストを修正する個別点検リスト修正手段として機能させ、
上記顧客情報が、予め顧客ごとに決定された個別点検リストを有し、上記個別点検リスト決定手段で、上記管理番号のゴム製品に対応する上記顧客情報から顧客を特定し、上記ゴム製品及び特定した顧客に対応する個別点検リストを選択させるためのプログラム。」


第3 申立理由の概要

申立人は、甲第1号証〜甲第8号証を提出して、以下の理由のとおりであるから、請求項1〜3に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。なお、理由の番号は、当審が付与した。

1 証拠方法
申立人は、次の甲第1号証〜甲第8号証を証拠として提出した。
甲第1号証:特開2004−362347号公報
甲第2号証:特開2006−103463号公報
甲第3号証:特開2002− 32470号公報
甲第4号証:特開2002− 92137号公報
甲第5号証:国際公開第2013/179903号
甲第6号証:特開2003−166818号公報
甲第7号証:国際公開第2016/88180号
甲第8号証:特開2008−257299号公報

甲第5号証について、提出された証拠は再公表特許(WO2013/179903号、平成28年1月18日発行、本件特許の出願前公知。)であるため、特許異議申立書における甲第5号証は、提出された再公表特許であるとして、検討を行った。
また、甲第1号証〜甲第8号証を、以下、それぞれ、「甲1」〜「甲8」という。

2 理由1(特許法第29条第1項第3号
請求項1〜3に係る特許は、請求項1〜3に係る発明が、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項に該当する(以下、請求項1〜3について、それぞれ、「理由1−1」〜「理由1−3」という。)。

3 理由2(特許法第29条第2項
請求項1〜3に係る特許は、請求項1〜3に係る発明が、甲1〜甲8に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項に該当する(以下、請求項1〜3について、それぞれ、「理由2−1」〜「理由2−3」という。)。


第4 文献の記載

1 甲1に記載されている事項、甲1に記載された発明
(1)甲1に記載されている事項
甲1には、次の事項が記載されている(下線は、当審が付与した。以下同じ。)。
「【0019】
【発明の実施の形態】
図1は本願発明の一実施形態にかかるユーザー車検支援システムにおけるシステム構成図を示す。図において、10はユーザー車検支援サービスを提供するWebサーバ、20はユーザー車検点検をサポートする検査員が使用する検査員端末、30は通信回線としてのインターネット、40はユーザーが使用する携帯端末、50はユーザー車検の対象となる自動車、60は提携している修理工場である。
【0020】
Webサーバ10は、インターネット30に接続され、携帯端末40からのアクセスを受付け、ユーザー車検支援サービスを提供するWWWサーバである。Webサーバ10は、ユーザー車検支援サービスを提供するためのデータベース(以下DBと記述する)12を備え、自動車情報DB、顧客情報DB、修理工場DBが登録される。図2に示すように、自動車情報DBには、対象とする自動車の車種毎に点検項目と、各点検項目についての点検箇所画像、点検方法、点検結果項目、撮影基準画像、処理手順情報、処理見積り情報と、消耗品項目等が登録され、顧客情報DBには、顧客ID毎に車種情報を含む個人情報、点検結果情報、取得画像・取得音、消耗品交換情報等が登録され、修理工場DBには、地域毎に名称と連絡先と地図等が登録される。

「【0022】
携帯端末40は、ユーザー車検点検を行う自動車の点検箇所から無線によりWebサーバ10にアクセスしてユーザー車検点検の支援を受けるもので、表示部42とデータ入力部44と無線通信部46とカメラ部48とから構成され、Webサーバ10にアクセスするための通信機能とブラウザ機能とを備える。」

「【0025】
次に、ユーザー車検支援サービスを提供するための処理について説明する。図3〜10にWebサーバ10における処理手順の例を、図12〜20にユーザーの携帯端末40に表示される画面の例を、図21に検査員端末20に表示される画面の例を示す。
図3に示すように、ユーザーが携帯端末40によりWebサーバ10にアクセスすると、図12に示すようなユーザー車検支援システム受付画面が表示される(S100)。ここで、ユーザーがあらかじめ与えられたユーザーIDとパスワードを入力し、「ログイン」を選択すると(S102)、入力情報が取得され(S104)、顧客情報DBと照合して正規登録者であることが確認されると(S106)、図13に示すようなメニュー画面が表示される(S108)。正規登録者でない場合は再入力が要求され(S110)、S102に戻る。また、未登録のユーザーは「こちらへ」を選択すると(S112)、図14に示すような個人情報登録画面が表示され(S114)、「登録」が選択されると(S116)、入力情報が取得され(S118)、顧客情報DBに登録され(S120)、顧客IDとパスワードが発行される(S122)。
【0026】
メニュー画面において「ユーザー車検点検」が選択されると(S124)、図4の処理に進み、顧客情報DBから車種情報が取得され(S200)、自動車情報DBを参照して当該車種の点検項目が抽出され(S202)、図15に示すような点検項目画面が表示される(S204)。点検項目はここではユーザー車検のための点検を対象とするので、原則として24ヶ月定期点検と日常点検のうちユーザーの車種に該当する項目を対象とするが、自動車の安全走行に直接関係しないものは省略し、ユーザー車検で指摘のあった場合に処置するようにしたり、修理工場に出すときに併せて点検を依頼するようにしてもよい。
また、排気ガス検査等のように専用の測定装置(テスター等)が必要なものは、予備検査場等で点検するようにしてもよい。
点検項目画面において、点検項目欄には点検項目の名称が表示され、ユーザー車検区分欄には当該点検項目とユーザー車検との関係として必須・推奨・任意の区分が表示され、点検結果欄にはユーザーまたは検査員による点検結果として点検日・点検結果項目番号・測定データが表示され、判定区分欄には点検による判定結果として良好・分解・調整・締付・交換・清掃・補給の区分が表示され、画像・音取得欄には画像・音の取得の有無が記入され、処置手順欄には点検により処置が必要と判定された場合にユーザーが処置手順を確認するための「確認」ボタンが表示され、処置見積り欄にはユーザーが処置を修理工場に依頼する場合に要する処置費用、処置日数、契約修理工場の名称・連絡先・地図等を確認するための「確認」ボタンが表示され、処置完了欄にはユーザーまたは修理工場において処置を完了した処置完了日が表示される。
尚、点検項目画面はデフォルトで最新の車検点検状況が表示されるが、車検区分欄を選択することで過去の車検点検状況を確認することもできる。
【0027】
点検項目画面において点検項目の番号が選択されると(S206)、自動車情報DBから当該点検項目に対応する点検箇所画像と点検方法と点検結果入力項目が抽出され(S210)、判定の基準となる画像や音がある場合は判定基準画像・判定基準音が抽出され(S214)、図16に示すような点検画面が表示される(S216)。点検画面には点検箇所画像と点検方法と点検結果入力項目が表示される。また、ユーザーが自分で判定できない場合のために「画像・音取得」ボタンが設けられ、ユーザーは点検対象の画像の撮影や音の収集を行って検査員端末20から検査員に遠隔で判定することを依頼できる。また、取得された点検対象の画像を画像処理して自動判定する機能も備えている。更に、点検対象の場所や点検方法が理解できない場合のために「検査員呼出」ボタンが設けられ、ユーザーは検査員端末を呼出して検査員に相談することができる。
点検箇所画像は、点検対象がどこにあるか判らないユーザーのために画像表示するもので、例えばブレーキオイルの液量の点検では、エンジンルームの全体画像にブレーキオイルのリザーバータンクの位置を矢印で表示したものを使用する。尚、点検箇所画像は複数毎の画像を用い、点検方法の説明をクリックすることで順次表示させるようにしてもよい。
点検方法は、例えば、ブレーキオイル量の点検では、「1.運転席のボンネット開放レバーを引いてボンネットを開ける」「2.開けたボンネットをステイで固定する」「3.ブレーキオイル・リザーバータンクを探す」「3.液面の位置が2本の目盛の間にあるかどうかを調べる」のように箇条書きで点検手順を示す。ここで、アンダーライン部分が選択されると、それに対応した画像が点検対象表示欄に表示される。
尚、例えば「点検準備」という項目を設け、点検に際して準備する書類(車検証等)や工具類(レンチ・スパナ・ジャッキ・メジャー等)の説明を行うようにしてもよい。また、前述のボンネット開閉のような共通事項は、例えば「HELP」ボタンを設け、それが選択されたときに手順を表示するようにしてもよい。
点検結果入力項目は、例えばブレーキオイル量の点検では「1.2つの目盛の間に液面がある」「2.下の目盛より下に液面がある」「3.上の目盛より上に液面がある」のように表示する。また、例えばブレーキオイルの汚れの点検では各点検結果入力項目にブレーキオイルの汚れに対応した色見本を判定基準画像として表示する。尚、点検結果入力項目には判定基準画像のアイコンを表示し、これが選択されたときに拡大画像を表示するようにしてもよい。また、例えばエンジン音の点検のように音によってエンジンの異常を判断する場合には、正常時の判定基準音と代表的な異常時の判定基準音を登録しておき、各点検結果入力項目欄には対応する判定基準音のアイコンを表示し、これが選択されたときに各判定基準音を再生する。また、ブレーキペダル踏み代の点検、タイヤの溝の深さ点検、ベルトのたわみ量等の点検では、ユーザーに対してメジャー等を用いて測定して測定値をデータ入力欄に入力するように促す。
【0028】
点検画面において、「送信」が選択されると(S230)、入力情報が取得され(S232)、入力情報に基づいて判定結果がセットされ(S234)、入力情報と判定結果が顧客情報DBに登録され(S236)、S204に戻る。
点検画面において「画像・音取得」が選択されると(S240)、図17に示すような画像・音取得画面が表示される(S242)。
画像・音取得画面には、当該点検対象の画像を撮影する際の基準となる撮影基準画像とカメラ48による画像とが並べて表示され、携帯端末のカメラ部48により撮影基準画像と同じ条件で点検対象を捉えて「撮影」ボタンを選択することで、画像処理により自動判定可能な画像が取得される。また、携帯端末のマイク部(図示省略)を点検対象に向けて「集音」ボタンを選択することで点検対象の音が取得される。尚、マイク部は通常の通話用のマイクでもよいが、指向性のよい外付の集音マイクを用いることが好ましい。
画像・音取得画面において、「撮影」が選択されると(S244)、画像が取得され(S246)、「集音」が選択されると(S248)、音が取得され(S250)、「終了」が選択されると(S252)、取得画像・取得音が顧客情報DBに登録され(S254)、画像・音取得フラグがセットされる(S256)。
点検画面において「検査員呼出」が選択されると(S260)、検査員端末に通知され(S262)、検査員端末から応答があると(S264)、応答画面(図示省略)が表示され(S266)、携帯端末と検査員端末を対話可能に接続する(S268)。応答画面において、「切断」が選択されると(S270)、検査員端末との接続を切断する(S272)。
点検画面において「戻る」が選択されると(S274)、S204に戻る。」

「【0033】
次に、上記点検により取得された消耗品の現在の消耗量から消耗品の交換時期を予測してユーザーに通知する処理について説明する。
自動車情報DBには、各消耗品iについて安全に走行可能な限界消耗量Miと単位走行距離当りの平均消耗量Aiとが登録されている。上記点検によりユーザーの自動車が備える消耗品の現在の消耗量Piが測定されると、各消耗品について次式により安全に走行可能な安全走行距離Diを演算する。
Di=(Mi―Pi)/Ai
消耗品の交換通知は、上記演算されたDiを各消耗品の交換時期予想情報として、例えば電子メール等を用いて、ユーザーの携帯端末等に通知するようにしてもよく、ユーザーの自動車に搭載されているカーナビゲーション装置等の車載表示装置52が通信回線に接続されている場合は、当該車載表示装置に文字や音声によって通知するようにしてもよい。これにより、消耗品の交換がリアルタイムに通知され、ユーザーが自動車の使用中に発生するトラブルを未然に防止することが可能となる。通知の内容は、例えば「走行距離が××Kmになったら○○を交換して下さい」でもよく、当該ユーザーの1日当りの平均走行距離から日数に換算して「何月何日頃に○○を交換して下さい」としてもよい。また、例えばユーザー車検時に次の車検までに交換が必要と予測されるすべての消耗品について交換時期を通知し、その後は予測された交換時期が近づいてきたときに通知するようにしてもよい。尚、消耗品の交換を通知してから実際に交換するまでの時間的余裕を設けるため、例えば限界消耗量Miには所定の余裕を設けるようにしてもよく、また例えば当該ユーザーの1ヶ月の平均走行距離を求めておき、消耗品の交換通知をDiに対して当該平均走行距離手前で消耗品の交換を通知するようにしてもよい。」

(2)甲1の記載から把握できる事項
上記(1)から、甲1には、次の事項が記載されているといえる。
ア 上記【0019】の記載、上記【0020】の「Webサーバ10は、インターネット30に接続され、携帯端末40からのアクセスを受付け」との記載、及び、上記【0022】の記載から、甲1には、ユーザー車検支援サービスを提供するWebサーバ10と、ユーザーが使用する携帯端末40とが、通信回線としてのインターネット30に接続されているユーザー車検支援システム、が記載されているといえる。

イ 上記【0020】の記載から、甲1には、Webサーバ10は、ユーザー車検支援サービスを提供するためのデータベース(以下DBと記述する)12を備え、データベース12には、自動車情報DB、顧客情報DBが登録され、自動車情報DBには、対象とする自動車の車種毎に点検項目等が登録され、顧客情報DBには、顧客ID毎に車種情報を含む個人情報、点検結果情報等が登録される、ことが記載されている。

ウ 上記【0025】の「図3〜10にWebサーバ10における処理手順」及び「図12〜20にユーザーの携帯端末40に表示される画面」との記載、並びに、【0026】の「図4の処理に進み、顧客情報DBから車種情報が取得され(S200)、自動車情報DBを参照して当該車種の点検項目が抽出され(S202)(S202)、図15に示すような点検項目画面が表示される(S204)。」との記載から、甲1には、Webサーバ10が、顧客情報DBから車種情報を取得し、自動車情報DBを参照して当該車種の点検項目を抽出し、ユーザーの携帯端末40では、点検項目画面が表示される、ことが記載されている。

エ 上記ウのように、ユーザーの携帯端末に点検項目画面が表示された後、上記【0027】の「点検結果入力項目は、例えばブレーキオイル量の点検では「1.2つの目盛の間に液面がある」「2.下の目盛より下に液面がある」「3.上の目盛より上に液面がある」のように表示する。また、例えばブレーキオイルの汚れの点検では各点検結果入力項目にブレーキオイルの汚れに対応した色見本を判定基準画像として表示する。尚、点検結果入力項目には判定基準画像のアイコンを表示し、これが選択されたときに拡大画像を表示するようにしてもよい。また、例えばエンジン音の点検のように音によってエンジンの異常を判断する場合には、正常時の判定基準音と代表的な異常時の判定基準音を登録しておき、各点検結果入力項目欄には対応する判定基準音のアイコンを表示し、これが選択されたときに各判定基準音を再生する。また、ブレーキペダル踏み代の点検、タイヤの溝の深さ点検、ベルトのたわみ量等の点検では、ユーザーに対してメジャー等を用いて測定して測定値をデータ入力欄に入力するように促す。」との記載から、甲1には、ユーザ車検を実施するユーザーに対し、点検表示画面に表示されている点検項目に対する点検結果の入力を促し、ユーザーにより点検結果が入力されることが記載されているといえる。
そして、上記【0028】の「点検画面において、「送信」が選択されると(S230)、入力情報が取得され(S232)、入力情報に基づいて判定結果がセットされ(S234)、入力情報と判定結果が顧客情報DBに登録され」との記載から、甲1には、ユーザーの携帯端末40の点検画面において「送信」が選択されると、入力された点検結果が取得され、顧客情報DBに登録される、ことが記載されているといえる。

オ 上記【0033】の記載から、甲1には、点検によりユーザーの自動車が備える消耗品の現在の消耗量Piが測定されると、次式により安全に走行可能な安全走行距離Diを演算し、演算されたDiを各消耗品の交換時期予想情報とする、ことが記載されているといえる。
Di=(Mi―Pi)/Ai
Mi:自動車情報DBに登録された、各消耗品iについて安全に走行可能な限界消耗量Mi
Ai:自動車情報DBに登録された、各消耗品iについて単位走行距離当りの平均消耗量Ai

(3)甲1に記載された発明
上記(2)から、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
ユーザー車検支援サービスを提供するWebサーバ10と、ユーザーが使用する携帯端末40とが、通信回線としてのインターネット30に接続されているユーザー車検支援システムであって((2)ア)、
Webサーバ10は、ユーザー車検支援サービスを提供するためのデータベース(以下DBと記述する)12を備え、データベース12には、自動車情報DB、顧客情報DBが登録され、自動車情報DBには、対象とする自動車の車種毎に点検項目等が登録され、顧客情報DBには、顧客ID毎に車種情報を含む個人情報、点検結果情報等が登録され((2)イ)、
Webサーバ10が、顧客情報DBから車種情報を取得し、自動車情報DBを参照して当該車種の点検項目を抽出し、ユーザーの携帯端末40では、点検項目画面が表示され((2)ウ)、
ユーザーの携帯端末40の点検画面において「送信」が選択されると、入力された点検結果が取得され、顧客情報DBに登録され((2)エ)、
点検によりユーザーの自動車が備える消耗品の現在の消耗量Piが測定されると、次式により安全に走行可能な安全走行距離Diを演算し、演算されたDiを各消耗品の交換時期予想情報とする((2)オ)
ユーザー車検支援システム。
Di=(Mi―Pi)/Ai
Mi:自動車情報DBに登録された、各消耗品iについて安全に走行可能な限界消耗量Mi
Ai:自動車情報DBに登録された、各消耗品iについて単位走行距離当りの平均消耗量Ai

2 甲2に記載されている事項
甲2には、次の事項が記載されている。
「【0032】
図3は、車両の所有者に関する所有者情報と当該車両の車両情報を記憶した車両情報データベースの一例を示す。車両情報データベースは、例えば、自動車検査証に記載されている自動車の種類や用途など車両に関する情報と当該車両の所有者に関する情報を有する。車両情報データベースでは、入庫した車両の所有者(顧客)の顧客ID等をキーにして車両情報や所有者情報を抽出できる。車両情報が抽出されれば、当該車両の車種に適合する点検表や指定整備記録簿を抽出できる。
【0033】
なお、顧客IDは、車両が販売された時点や過去に整備を受注した時点で付与され、車両情報及び所有者情報と共に車両情報データベースに登録される。以降は、原則的に当該車両が車検を迎える毎に更新される。なお、車両情報はその全てが記録されていなくとも、車種に適合する点検表等を抽出できるように記録されていればよい。」

「【0040】
車両情報抽出手段は、入庫した車両の所有者を識別する所有者識別情報に基づき、車両情報データベースを参照し、当該車両の車両情報や所有者情報を抽出する。所有者識別情報は、好適には顧客IDであるが、当該所有者を識別できれば生年月日等であってもよい。点検表データ抽出手段は、車両情報抽出手段により抽出した車両情報に基づき、点検表データベースから当該車両の車種に適合する点検表データを抽出する。点検表データ抽出手段により、当該車両に適合する点検表を誤りなく用意できる。点検表データ送信手段は、点検表データ抽出手段が抽出した点検表データを点検結果入力装置23に送信する。点検結果入力装置23は、送信された点検表に登録された点検順に、当該車両に必要な点検項目を表示する。帳票データ抽出手段は、車両情報抽出手段により抽出した車両情報に基づき、帳票データベースから当該車両の車種に適合する帳票データを抽出する。帳票データ抽出手段により、当該車両に適合する専用帳票を誤りなく用意できる。点検結果印刷手段は、帳票データ抽出手段により抽出した帳票データが形成する帳票と共に、点検結果を印刷する。また、点検結果印刷手段が、点検結果を印刷する際には、車両情報抽出手段が抽出した所有者情報と車両情報が印刷される。点検可否判定手段は、車両情報抽出手段により抽出した入庫した車両の車両情報に基づき点検可否判定テーブルを参照し、点検が可能か否かを判定する。これにより、整備できない車両を受けつけることが防止される。残存車検期間算出手段は、車両情報が有する入庫した車両の車検の満了日に基づき、当該満了日までの日数を算出する。また、残存期間管理手段は、残存期間が所定の日数以下の場合にはその旨を警告し、残存期間が所定の日数以上の場合には継続審査が可能となる時期を報知する等、車検に関する日程を一括管理する。」

3 甲3に記載されている事項
甲3には、次の事項が記載されている。
「【0012】上記「操作変更−オプション設定」によりシステム運用環境設定を行った上で、業務処理メニュー画面で「車輌マスター」を選択すると、例えば図5に示すような車輌マスター画面が表示される。タイヤショップは、地区センター2から車輌管理を受託した時に、この車輌マスター画面を介して車輌登録データを入力する。即ち、図5の四角で示した各入力欄に、管理を受託した車輌の車輌登録No.(例えば、ナンバープレートの番号等を入力する)、管理コード(例えば、車輌登録No.の末尾の数字を入力する)、センター名、配送会社(運送会社)名、車台No.、車輌用途、登録日、(フランチャイズチェーン店に対する)リース開始日、リース終了日等を入力する。また、メンテナンス契約内容欄において、メンテナンス開始日(顧客である配送会社の各センターと車輌管理会社であるタイヤメーカの各タイヤショップとの間で締結されたメンテナンス契約の開始日)、メンテナンス開始時走行距離、メンテナンスの契約年数、メンテナンスの契約距離、車輌重量、道路区分(高速道路を主に使用するか、一般道路を主に使用するか等)、降雪区分、車輌のタイヤサイズを入力する。これら入力は、カーソルによる選択入力やキーボードによる文字入力により可能である。以上により、管理を受託した車輌の登録が完了する。登録されたデータはデータベース5や端末3の記憶手段3dに保管される。」

「【0015】定期点検時においては、まず、業務処理メニューでインプット記入票(紙票)出力メニューを選択して、インプット記入票出力メニュー画面を表示させる。インプット記入票出力メニュー画面では、定期点検結果記入票、ローテンション位置変更記入票、メンテナンス作業結果記入票の出力を選択することができる。この場合、車輌指定、センター指定、配送会社指定することが可能である。例えば、車輌指定の場合、車輌の管理コードを指定することで、図7に示すように、管理コード、車輌登録No.、タイヤサイズが記入され、点検日、走行距離、コメント、前輪、後輪、スペアタイヤに関するパタン、空気圧、残溝、外傷、異常摩耗、H&T(ヒール&トゥ)の記入欄が設けられた定期点検結果記入紙票が印刷される。尚、残溝の番号は溝の数であり、ここでは4本の溝を有するタイヤが想定しており、従って、溝の数が3本の時は、4の欄には0を記入する。」

4 甲4に記載されている事項
甲4には、次の事項が記載されている。
「【0035】格納部14は、測定値入力部12よって入力された上記複数の測定値、当該複数の測定値それぞれの測定時、当該複数の測定値それぞれの測定時における自動車の走行距離を格納する。より詳細には、格納部14には、測定履歴データベース20が格納されている。図2は、測定履歴データベース20の構成図である。測定履歴データベース20には、図2に示すように、当該寿命予測システム10を利用する複数の顧客それぞれについて、顧客情報、自動車部品の購入履歴、それぞれの自動車部品関して当該自動車部品の寿命に影響を与える物理量の測定履歴が格納されている。より詳細には、測定履歴データベース20には、顧客情報として、顧客の顧客No.、氏名、住所、電話番号、使用する自動車の車名および車番が格納されている。また、測定履歴データベース20には、自動車部品の購入履歴として、当該顧客が購入した自動車部品の部品名、商品名及び購入日が格納されている。さらに、測定履歴データベース20には、それぞれの自動車部品に関して当該自動車部品の寿命に影響を与える物理量の測定履歴として、測定対象部品名、自動車部品の寿命に影響を与える物理量(測定項目)、当該物理量の測定日(測定時)、測定値、寿命値、予測寿命、測定者の氏名(あるいは担当者コード)、測定機器の名称(あるいは機器コード)、測定者によるコメントが格納されている。また、タイヤの如く寿命が自動車の走行距離に大きく依存する自動車部品に関しては、上記物理量の測定値とともに、当該測定値それぞれの測定時における自動車の走行距離が併せて格納されている。ここで、寿命値とは、当該自動車部品の寿命と考えられるような上記物理量の値である。また、予測寿命とは、格納部14に格納されている上記複数の測定値に基づいて予測された当該自動車部品の寿命である。尚、予測寿命の算出方法については後述する。また、当該部品の購入時(第1回目の測定時)の予測寿命の欄には、メーカなどによって公表された平均寿命が格納されている。ここで、当該物理量の測定日、測定値、測定者の氏名、測定機器の名称、測定者によるコメント、走行距離に関しては、複数の測定日におけるデータが格納されている。」

5 甲5に記載されている事項
甲5には、次の事項が記載されている。
「【0023】
<ベルト寿命予測部11>
ベルト寿命予測部11は、端末2から一定の周期(一定周期)毎に時系列に送られてくるベルトの厚さを示すベルト残厚データから、ベルトの摩耗速度(時間を単位とする単位変化量)を算出する。なお、ベルト残厚データが送られてくるのは一定周期でなくても、所定の期間毎でもよく、例えば、端末2が残厚データを送信する間隔が、1週間であったり、3日間であったりと不定期であってもよい。このベルト残厚データは、ベルト交換のための指標として端末2から前記端末2の識別情報が付加されて供給されるデータである。作業員が測定して端末2に入力したデータでも、後述するように測定装置が測定して、端末2がこの測定装置から予め設定された測定の周期(一定の周期であり、この期間を使用量単位とする)において収集して送信するデータでもどちらでも良い。使用量とは、本実施形態において、使用した期間、あるいは後述するように、搬送した搬送物の搬送量とする。
また、ベルト寿命予測部11は、予め設定された管理限界値から現在のベルト残厚データを減算し、減算結果の差分を摩耗速度で除算することにより、今後の使用可能の期間を算出し、残存寿命として出力する。ここで、管理限界値とは、ベルトの厚さが下回ると損壊の可能性が高くなる数値として設定され、ベルトコンベアのメンテナンスを行う作業者が、搬送する搬送物の種類やベルトの種類により、従来の経験を加味して、ベルトコンベアのライン毎に予め設定する。
【0024】
次に、図3A、図3B及び図3Cは、ベルト寿命予測部11による残存寿命の算出を説明する図である。図3Aは、周期的に端末2から供給されるベルトの幅方向のベルト残厚データを示す図である。ここでベルトの幅方向とは、ベルトコンベアのベルトの搬送物を載せる面において、搬送方向に対して垂直な方向を示している。図3Aにおいて、横軸がベルトの幅方向の位置(例えば、P0が右端、P4が中央、P8が左端)を示し、縦軸がベルトの厚さ(残厚)を示している。」

「【0035】
ここで、ベルト寿命予測部11は、求めた残存寿命が、予め管理データベース15に記憶されている基本残存寿命を下回った場合、端末2及びデータサーバ3に対して、ベルトの交換を促す通知を、このラインを識別する情報(いずれの場所においてどのベルトコンベアで用いられているかを示す情報、すなわちIDコード及びパスワード、ライン名など)を付加して送受信部10を介して行う。
また、この基本残存寿命は、例えば、ベルト寿命予測部11が、測定の一周期の間の摩耗量、すなわち一周期の時間に摩耗速度を乗じて求め、ベルト寿命予測部11により予め管理データベース15に書き込まれている。なお、基本残存寿命は一定の周期に基づいて算出しなくてもよく、予め定めた所定の時間に摩耗速度を乗じる等により求めてもよい。」

6 甲6に記載されている事項
甲6には、次の事項が記載されている。
「【0014】タイヤ・車両情報は、本実施形態では主要な4つのデータベースを含むものが例示される。第一は、顧客データベースであって、これには点検の対象となる複数の顧客を管理するために必要な情報が記録される。例えば、顧客を特定するために特定のコードが振り当てられた「顧客コード番号」や「顧客名称」の他、必要な顧客住所等が含まれている。図3には、この顧客データベースの1つのレコードをモニタに表示させた一例が示される。
【0015】第二は、タイヤ・車両データベースである。このタイヤ・車両データベースは、前記顧客データベースで管理される各顧客毎に、当該顧客が保有する車両及びその車両に装着されているタイヤについての必要な情報が含まれている。例えば、陸運局に登録されている「車両ナンバー」、顧客の車両管理番号である「車番」、車両の製造メーカ名である「車両メーカ名」、タクシー、自家用、土砂運搬用など車両の主な用途である「使用区分」、車両が主に走行する「主な走行路面」、積載可能な「最大積載量」、新品タイヤ(又は再生タイヤ)を装着した「タイヤ装着日」、「タイヤサイズ」、タイヤのパターン形状をコード番号で特定する「タイヤのパターン」、新品で装着されたのか或いは更生したものを取り付けたのかの区別するための「新品、更生の区分」、又はタイヤの車両に対する配置位置を示す「タイヤの配置」などの情報が含まれうる。」

「【0018】第三は、点検データベースである。この点検データベースは、図2の如く、顧客が保有する各車両について、各点検日におけるタイヤ等の点検結果が記録されている。例えば、一つの点検日に記録される情報として、点検を行った「点検者」、車両の走行メータの読み取り値である「走行距離」、点検時における「タイヤの残り溝深さ」、点検時の「タイヤの外傷」、「偏摩耗状況」、「内圧」などの情報が記録される。またこの点検データベースには、前記顧客データベース、タイヤ・車両情報データベースと共通の項目「顧客コード番号」や「車両ナンバー」が含まれており、これらの項目を用いてそれぞれのデータベースを相互に参照することができる。」

「【0020】第四は、解析データベースである。この解析データベースは、点検データベース等の結果から後述の計算により求められた種々の解析結果が各タイヤ毎に記録されている。例えば、複数位置で測定された残りの溝深さの平均値である「平均溝深さ」、単位摩耗量当たりの走行可能距離である「耐摩耗性能」、点検日以降の任意に指定された日における残りの溝深さである「指定日における残り溝深さの推定量」、タイヤの交換が必要となる日を推定した「タイヤ寿命」などの情報が含まれうる。」

「【0027】次に、このような装置1を用いて行われる点検方法の一例について、図8に示すフローチャートに基づいき説明する。先ず、点検を行う点検対象の顧客を特定する(ステップS1)。このステップは、通常、クライアントコンピュータ4を設置している営業所などにおいて行われる。顧客の特定に際しては、例えば予め定められた点検スケジュール等に従って行っても良いし、またクライアントコンピュータ4を用いて前記サーバーコンピュータ2を検索し、寿命に近づいたタイヤを保有する顧客を抽出して特定することもできる。またサーバーコンピュータ側に、タイヤ寿命に近づいたタイヤ(例えばタイヤ寿命までの日数が30日未満など)が現れた場合、その顧客を管理する営業所のクライアントコンピュータ4に点検を促す情報を送信させるステップを設定しておくのも良い。これにより、優先して点検が必要な顧客の特定が能率良く行える。
【0028】次に、特定された顧客のタイヤ・車両情報をサーバーコンピュータ2からクライアントコンピュータ4に取り込む(ステップS2)。この取り込まれる情報には、顧客データベース、タイヤ・車両データベース、点検データベース、及び解析データベースの情報が含まれる。次に、クライアントコンピュータ4に取り込まれたタイヤ・車両情報を携帯用コンピュータ3に取り込む(ステップS3)。クライアントコンピュータ4と携帯用コンピュータ3との接続インターフェースは、ケーブルによる有線方式、無線方式、さらには記憶媒体を介在させて行う方式など種々の態様で行うことができる。携帯用コンピュータ3に取り込まれた情報は、表示部3Aに適宜表示させることができ、点検を行う担当者が自由に参照することができる。従って、点検に先立ち、顧客の保有する車両や点検対象のタイヤの種類、パターンなどを迅速に確認することができ、点検の準備作業を能率化しうる。とりわけ、携帯用コンピュータ3に取り込まれる情報の中に、指定日における残りの溝深さの推定量を含むことによって、特に注意して点検すべきタイヤなどが予め把握できる結果、個々の状況に応じた最適な点検作業を可能とする。」

7 甲7に記載されている事項
甲7には、次の事項が記載されている。
「[0101] そして、電力設備保守管理センター50においては、ステップS111により特定された場所を対象とする資機材の点検計画を策定する(ステップS112)。ステップS112は、特定された場所についての点検計画を策定する点検計画策定ステップの一例である。
[0102] ステップS112による点検計画の策定の態様の一具体例として、電力設備保守管理センター50では、特定された関連資機材が設置された場所について定められた保全重要度に基づいて関連資機材が設置された場所の点検の順序を決定することができる。
保全重要度は、対応の場所についての保全の重要性の高さを示す。本実施形態において、保全重要度は、安全度と支障度との少なくともいずれか一方である。
安全度は、対応の場所について要求される安全性の高さを示す。例えば、市街地などで人通りが多いような地域では安全度は高くなる。
支障度は、電力供給が停止した場合に生じる支障の度合いの高さを示す。例えば、病院などの施設は、電力供給が停止することにより適切な医療を行うことができなくなることから、例えば住宅などと比較して支障度が高くなる。
[0103] そこで、本実施形態の電力設備保守管理センター50では、安全度と支障度との少なくともいずれか一方を利用して点検に関する優先度(点検優先度)を算出する。ここで、点検優先度を算出することは、点検に関する優先順位を決定することに相当する。そして、電力設備保守管理センター50では、算出された点検優先度の高い順に従って、関連資機材が設置された場所の点検の順序を決定する。
このように、保全重要度を利用して求められる点検優先度に基づいて関連資機材が設置された場所の点検の順序を定めることにより、安全性や電力供給が停止した場合の影響の大きさなどに応じて適切な順序で資機材の点検を行っていくことができる。」

8 甲8に記載されている事項
甲8には、次の事項が記載されている。
「【0030】
以下、図1乃至図3を参照しながら、本実施の形態の実施例1に係る優先順位評価システムについて説明する。図2は本実施例に係る優先順位評価システムを用いた点検対象物に対する補修工事あるいは対応策などの優先順位を決定する評価方法を示すフローチャートである。図3(a)は、点検対象物における健全性劣化の要因数を2とする2次元の要因データを考慮した場合に、9点の点検データをその2次元の座標空間の座標にプロットした概念図であり、(b)は、仮想データとして、1点目は危険データとしての仮想データを、2点目は安全データとしての仮想データを、2次元の座標空間の座標にプロットした状態を示す概念図である。本実施例では、説明容易なために2次元の座標空間を用いるが、必ずしも2次元に限定するものではなく、2次元以上であれば、要因数(n)は多数でもよく、一般には後の実施例でも示すように3次元やそれ以上の次元となることが多い。また、9点の点検データ14を示すが、これは点検対象物がその数だけ存在しているということを意味するものである。
表1に橋梁を例にとり、実際の点検データ14が記載された表を示す。表1では、橋梁の健全性劣化に係る要因として、「ボルトのゆるみ」、「ボルトの欠損」、「異常音」、「排水樋のつまり」、「排水樋の損傷」、「漏水」、「止水工」、「その他(さび・腐食)」が示されている。
管理番号として、符号でP−2などが示されているが、これは点検対象物を符号化するものである。また、各要因の欄の数値は、「0」が全く安全側で問題がない場合の数値、数値が大きくなるにつれて危険側で問題がある場合の数値を示している。ここでは、「3」が危険側で問題がある場合の数値を示している。この数値は特にこれらに限定するものではなく、その大小や、符号自体も予め点検者が決定してもよい。」

「【0049】
図2のステップS5では、優先順位決定部5が評価情報データベース15から危険度に関する危険度データ16を読み出し、この危険度を指標に、所望の条件により並べ替えを実行してY個の点検対象物に関する優先順位データ17を生成する。この並べ替えは、例えば危険度を昇順すなわち、危険度が小さい方から大きい方へ並べ替えるものであったり、危険度を降順すなわち、危険度が大きい方から小さい方へ並べ替えるものであったりする。もちろん、その際には、危険度とその危険度を備える点検対象物に関するデータをパッケージにして並べ替えて、危険度を介して、点検対象物の危険度が表示される必要がある。また、点検データ14も同時にパッケージデータとして並べ替えて、危険度を介して、点検対象物の危険度に加えて、点検データ14も出力部8で表示されるようにしてもよい。
このようにして得られた順序を優先順位として、この優先順位に関するデータを優先順位データ17と呼ぶ。今回の点検データ14はY個あるため、優先順位データ17では、1位からY位までとなる。
このように危険度を指標として点検対象物に対して優先順位を付した状態を模式的に示すのが、図4である。前述の符号1は、危険度の高いものとして優先順位が1位であることを示すものであった。分離面aよりも外側の領域(以下、便宜上、危険領域と呼ぶ。)では、分離面aから離れるにつれて、すなわち、分離面aからの距離が大きくなるにつれて、危険度が高くなるので、優先順位が高い。一方、分離面aよりも内側の領域(以下、便宜上、安全領域と呼ぶ。)では、分離面aから離れるにつれて、すなわち、分離面aからの距離が大きくなるにつれて、危険度が低くなるので、優先順位が低い。
このように得られた優先順位データ17は、優先順位決定部5によって評価情報データベース15に格納される。」


第5 当審の判断

1 理由1−1、理由2−1について
(1)本件発明1と甲1発明との対比
ア 甲1発明の「ユーザー車検支援サービスを提供するWebサーバ10」は、点検対象がユーザ車検の対象となる自動車である点で異なるものの、点検に関するサービスを提供する点で、本件発明1の「情報管理サーバー」に相当する。甲1発明の「ユーザー」は、点検対象となる自動車の点検を行う者である点で、本件発明1の「作業員」に相当し、「ユーザーが使用する携帯端末40」は、本件発明1の「作業員が所持する端末装置」に相当する。甲1発明の「通信回線としてのインターネット30」は、本件発明1の「ネットワーク」に相当する。そして、甲1発明の、Webサーバ10と携帯端末40とが、「ネットワーク30に接続される」ことは、これにより、Webサーバ10と携帯端末40との間で通信を行うことができることから、本件発明1の、携帯端末と情報管理サーバーとが「ネットワーク通信可能な」ことに相当する。
そうすると、甲1発明の「ユーザー車検支援サービスを提供するWebサーバ10と、ユーザーが使用する携帯端末40とが、通信回線としてのインターネット30に接続されているユーザー車検支援システム」と、本件発明1の「ゴム製品を点検する作業員が所持する携帯端末と、上記携帯端末とネットワーク通信可能な情報管理サーバーとを備えるゴム製品の点検情報管理システム」とは、上述した相違点及び後述する相違点は別にして、「点検対象を点検する作業員が所持する携帯端末と、上記携帯端末とネットワーク通信可能な情報管理サーバーとを備える点検対象の点検情報管理システム」との点で、共通する。

イ 甲1発明の「対象とする自動車の車種毎に点検項目」は、複数の項目があることは明らかである点で、本件発明1の「複数の点検項目情報」に相当する。甲1発明の、対象とする自動車の車種毎に点検項目等が登録される自動車情報DBが登録される「ユーザー車検支援サービスを提供するためのデータベース(以下DBと記述する)12」は、本件発明1の「複数の点検項目情報を蓄積するデータベース」に相当する。甲1発明の、Webサーバが、複数の点検項目情報を蓄積するデータベースを備えることは、甲1発明の「上記情報管理サーバーが」、「複数の点検項目情報を蓄積するデータベースを有」することに相当する。

ウ 甲1発明の「顧客ID毎に車種情報を含む個人情報」は、顧客が使用している自動車の車種が特定される点で、本件発明1の「上記ゴム製品を使用する顧客情報」と、「上記点検対象を使用する顧客情報」との点で、共通する。また、甲1発明の「顧客ID」は、点検対象の管理番号を含んでいないものの、登録された情報を識別するための情報である点で、本件発明1の「上記ゴム製品の管理番号及び上記ゴム製品を使用する顧客情報を含む管理識別情報」と、「上記点検対象を使用する顧客情報を含む識別情報」との点で、共通する。
そして、甲1発明は、Webサーバ10が備える「データベース12には、自動車情報DB、顧客情報DBが登録され、自動車情報DBには、対象とする自動車の車種毎に点検項目等が登録され、顧客情報DBには、顧客ID毎に車種情報を含む個人情報、点検結果情報等が登録され」ることから、甲1発明は、「データベース12」の「顧客情報DB」に「顧客ID毎に車種情報を含む個人情報」を登録する手段を備えていることは明らかである。そうすると、甲1発明の、Webサーバ10が備える当該登録する手段と、本件発明1の「上記ゴム製品を使用する顧客情報を含む管理識別情報を登録する管理識別情報登録手段」とは、「上記点検対象を使用する顧客情報を含む識別情報を登録する識別情報登録手段」との点で、共通する。

エ 甲1発明の、抽出された「点検項目」は、点検項目画面に表示される点で、本件発明1の「個別点検リスト」に相当する。そして、甲1発明は、「Webサーバ10が、顧客情報DBから車種情報を取得し、自動車情報DBを参照して当該車種の点検項目を抽出」するための手段を備えていることは明らかである。そうすると、甲1発明の、Webサーバ10が備える当該点検項目を抽出するための手段は、点検対象がユーザ車検の対象となる自動車である点で異なるものの、点検項目を抽出することは、点検が行われる点検項目になることから、本件発明1の「上記管理識別情報に基づき、上記データベースの点検項目情報から上記ゴム製品の個別点検リストを決定する個別点検リスト決定手段」と、「上記識別情報に基づき、上記データベースの点検項目情報から上記点検対象の個別点検リストを決定する個別点検リスト決定手段」との点で、共通する。

オ 甲1発明の「ユーザーの携帯端末40では、点検項目画面が表示され」ることは、「Webサーバ10が、顧客情報DBから車種情報を取得し、自動車情報DBを参照して当該車種の点検項目を抽出」し、抽出した点検項目を、ユーザーの携帯端末40に送信することで可能となる処理であるから、Webサーバ10は、抽出された点検項目を、ユーザーの携帯端末40に送信する手段を備えていることは明らかである。そうすると、甲1発明の、Webサーバ10が備える、当該抽出した点検項目をユーザー端末に送信する手段は、本件発明1の「上記個別点検リストを上記携帯端末に送信する個別点検リスト送信手段」に相当する。

カ 甲1発明の「入力された点検結果」は、ユーザーが、点検表示画面に表示された点検項目に基づいて点検をした結果を、ユーザーの端末40に入力したものである点で、本件発明1の「点検結果情報」に相当する。甲1発明の「ユーザーの携帯端末40の点検画面において「送信」が選択される」と、Webサーバ10の「顧客情報DB」に点検結果が登録されることから、甲1発明のWebサーバ10は、点検結果を受信する手段を備えることは明らかである。そして、甲1発明の、Webサーバ10が備える当該点検結果を受信する手段は、入力された点検結果が点検対象の管理番号と共に受信されるか不明である点で相違するものの、本件発明1の「上記個別点検リストを送信した携帯端末から」「点検結果情報を受信する点検結果情報受信手段」に相当する。

キ 甲1発明の、「点検によりユーザーの自動車が備える消耗品の現在の消耗量Piが測定される」ことは、点検項目に基づいて行われるものであるから、甲1発明の、消耗品の現在の消耗量Piを測定するための当該点検項目は、本件発明1の「少なくとも1以上の点検項目」に相当する。そして、甲1発明の「点検によりユーザーの自動車が備える消耗品の現在の消耗量Piが測定されると、次式により安全に走行可能な安全走行距離Diを演算」することは、「演算されたDiを各消耗品の交換時期予想情報」とするものであって、消耗品の交換時期を予想するものである点で、本件発明1の「少なくとも1以上の点検項目について、その点検項目に起因するゴム製品の寿命を上記点検結果情報に基づいて予測する」ことと、「少なくとも1以上の点検項目について、その点検項目に起因する点検対象の寿命を上記点検結果情報に基づいて予測する」との点で、共通する。また、甲1発明の当該「Diを演算」する手段は、検査対象がユーザ車検の自動車である点で異なるものの、Webサーバ10が備えることは明らかであるから、本件発明1の「上記情報管理サーバーが、少なくとも1以上の点検項目について、その点検項目に起因するゴム製品の寿命を上記点検結果情報に基づいて予測する寿命予測解析手段」と、「上記情報管理サーバーが、少なくとも1以上の点検項目について、その点検項目に起因する検査対象の寿命を上記点検結果情報に基づいて予測する寿命予測解析手段」との点で、共通する。


ク そうすると、本件発明1と甲1発明とは、次の点で、一致又は相違する。

<一致点>
点検対象を点検する作業員が所持する携帯端末と、上記携帯端末とネットワーク通信可能な情報管理サーバーとを備える点検対象の点検情報管理システムであって、
情報管理サーバーが、
複数の点検項目情報を蓄積するデータベースを有し、
上記点検対象を使用する顧客情報を含む識別情報を登録する識別情報登録手段と、
上記識別情報に基づき、上記データベースの点検項目情報から上記点検対象の個別点検リストを決定する個別点検リスト決定手段と、
上記個別点検リストを上記携帯端末に送信する個別点検リスト送信手段と、
上記個別点検リストを送信した携帯端末から点検結果情報を受信する点検結果情報受信手段と、
を備え、
上記情報管理サーバーが、少なくとも1以上の点検項目について、その点検項目に起因する点検対象の寿命を上記点検結果情報に基づいて予測する寿命予測解析手段を備える
点検情報管理システム。

<相違点>
(相違点1)
本件発明1は、点検対象が、「ゴム製品」であって、ゴム製品の寿命を予測するものであり、点検対象の点検情報管理システムが、「ゴム製品の点検情報管理システム」であるのに対し、甲1発明は、点検対象が、ユーザー車検の対象となる自動車であって、自動車の消耗品の寿命を予測するものであり、点検対象の点検情報管理システムが、「ユーザー車検支援システム」である点。

(相違点2)
本件発明1は、識別情報が、「上記ゴム製品の管理番号及び上記ゴム製品を使用する顧客情報を含む管理識別情報」であり、「管理識別情報」に基づき、「上記データベースの点検項目情報から上記ゴム製品の個別点検リストを決定する」ものであり、さらに、識別情報登録手段は、「上記ゴム製品の管理番号及び上記ゴム製品を使用する顧客情報を含む管理識別情報」を登録する「管理識別情報登録手段」であるのに対し、甲1発明は、識別情報が、「顧客ID」であって、「上記ゴム製品の管理番号」を含んでおらず、「管理識別情報」に基づき、「上記データベースの点検項目情報から上記ゴム製品の個別点検リストを決定する」ものではなく、さらに、識別情報登録手段は、「データベース12」の「顧客情報DB」に「顧客ID毎に車種情報を含む個人情報」を登録するものであって、「上記ゴム製品の管理番号及び上記ゴム製品を使用する顧客情報を含む管理識別情報」を登録するものではない点。

(相違点3)
本件発明1は、上記個別点検リストを送信した携帯端末から「上記ゴム製品の管理番号と共に」点検結果情報を受信するのに対し、甲1発明は、「入力された点検結果」を受信するものの、点検対象の管理番号と共に受信されるか不明である点。

(相違点4)
本件発明1は、「上記点検結果情報受信手段により受信した点検結果情報を顧客別に集計する点検結果情報集計手段」を備えるのに対し、甲1発明は、そのような手段を備えていない点。

(相違点5)
本件発明1は、「上記情報管理サーバーが、上記寿命予測解析手段の予測値に基づき上記個別点検リストを修正する個別点検リスト修正手段」を備えるのに対し、甲1発明は、そのような手段を備えていない点。

(相違点6)
本件発明1は、「上記顧客情報が、予め顧客ごとに決定された個別点検リストを有し、上記個別点検リスト決定手段が、上記管理番号のゴム製品に対応する上記顧客情報から顧客を特定し、上記ゴム製品及び特定した顧客に対応する個別点検リストを選択する」のに対し、甲1発明は、顧客情報DBは、予め顧客ごとに決定された個別点検リストを有しておらず、「顧客情報DBから車種情報を取得し、自動車情報DBを参照して当該車種の点検項目を抽出」するための手段が、「上記管理番号のゴム製品に対応する上記顧客情報から顧客を特定し、上記ゴム製品及び特定した顧客に対応する個別点検リストを選択する」ものではない点。

(2)理由1−1について
上記(1)クのとおり、本件発明1と甲1発明との間には相違点1〜6があるため、本件発明1は新規性を有する。

(3)理由2−1について
相違点の性質から、相違点5から検討をする。
甲5には、上記「第4」5のとおり、コンベアベルトの寿命を予測することが記載されている。また、甲6には、上記「第4」6のとおり、点検データベース等の結果の解析結果である、タイヤの交換が必要となる日を推定した「タイヤ寿命」が記載されている。
しかしながら、甲5及び甲6には、「上記情報管理サーバーが、上記寿命予測解析手段の予測値に基づき上記個別点検リストを修正する個別点検リスト修正手段」は、記載されておらず、示唆もされていない。このため、甲1発明に、甲5及び甲6に記載された技術的事項を適用しても、上記相違点5の構成には至らない。
また、甲2〜甲4、甲7及び甲8にも、「上記情報管理サーバーが、上記寿命予測解析手段の予測値に基づき上記個別点検リストを修正する個別点検リスト修正手段」は、記載されておらず、示唆もされていない。このため、甲1発明に、甲2〜甲4、甲7及び甲8に記載された技術的事項を適用しても、上記相違点5の構成には至らない。
さらに、甲1〜甲8のいずれの文献にも「上記情報管理サーバーが、上記寿命予測解析手段の予測値に基づき上記個別点検リストを修正する個別点検リスト修正手段」は、記載されておらず、示唆もされていないことから、甲1〜甲8のいずれを主引用文献にしても、上記相違点5の構成に至らないことは明らかである。
そして、当該相違点5の構成を採用することで、「点検精度の低下を抑止しつつ、ゴム製品を効率良く点検でき、かつ補修や交換の要否を的確に判断できる。」(本件特許明細書段落【0020】)という、格別顕著な作用効果を奏するものである。
よって、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1〜甲8に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書で、次のように主張する。
「この拒絶理由通知では、甲2発明、甲3発明、甲4発明、甲7発明、及び、甲8発明によって、本件特許発明1〜3の構成(A)(B)(C)(D)(E)(F)(G)(I)(J)に相当する構成については、進歩性がないと指摘されていた。
一方、上記拒絶理由通知では、本件特許発明1〜3の構成(H)に相当する構成(出願当初の請求項4の内容)については、拒絶の理由を発見しないと指摘されていた。
その後、上記拒絶理由を受けて、本件特許発明1〜3の出願人は、拒絶の理由を発見しないと指摘された、構成(H)に相当する構成(出願当初の請求項4の内容)に限定する補正をすることにより(2021年7月26日付の意見書参照)、本件特許発明1〜3に関して特許査定を受けたものである。
従って、本件特許発明1〜3の構成(A)(B)(C)(D)(E)(F)(G)(I)(J)に相当する構成については、進歩性がないことについて出願人が認諾したものと推察される。
(ウ)上記(イ)の審査経過によれば、出願人は、本件特許発明1〜3は、構成(H)に相当する構成に特徴があると考えていることから、構成(H)に相当する構成として、本件特許発明1〜3と、甲5発明、甲6発明及び甲1発明とを対比する。」
そこで、出願当初の請求項4をみてみる。
「【請求項4】
上記携帯端末又は上記情報管理サーバーが、少なくとも1以上の点検項目について、その点検項目に起因するゴム製品の寿命を上記点検結果情報に基づいて予測する寿命予測解析手段を備え、
上記情報管理サーバーが、上記寿命予測解析手段の予測値に基づき上記個別点検リストを修正する個別点検リスト修正手段を備える請求項3に記載の点検情報管理システム。」
このように出願当初の請求項4は、「上記携帯端末又は上記情報管理サーバーが、少なくとも1以上の点検項目について、その点検項目に起因するゴム製品の寿命を上記点検結果情報に基づいて予測する寿命予測解析手段」を備え、「上記情報管理サーバーが、上記寿命予測解析手段の予測値に基づき上記個別点検リストを修正する個別点検リスト修正手段」を備えるとしている。甲5及び甲6には寿命の予測をすることは記載されており、出願当初の請求項4の上記「上記携帯端末又は上記情報管理サーバーが、少なくとも1以上の点検項目について、その点検項目に起因するゴム製品の寿命を上記点検結果情報に基づいて予測する寿命予測解析手段」と対比可能な構成は記載されているものの、甲5及び甲6には、「上記情報管理サーバーが、上記寿命予測解析手段の予測値に基づき上記個別点検リストを修正する個別点検リスト修正手段」について、記載されておらず、示唆もされていない。
よって、申立人の主張は、この点を看過したものであるから、採用することはできない。
また、申立人は、「(H)(I):図15の点検項目画面の「タイヤの溝(消耗品)」がゴム製品に相当する。そして、段落0033〜0034に、「点検により取得された消耗品の現在の消耗量から消耗品の交換時期を予測してユーザーに通知する処理」が記載されている(消耗品交換時期予測手段)。また、交換が必要と予測される消耗品について交換時期を通知し、その後は予測された交換時期が近づいてきたときに通知するが開示されており、点検の優先度・時期が修正されている。」と、甲1に記載された発明の構成を認定している。
しかしながら、甲1の【図15】は「点検項目画面」を示すものであって、その中の「タイヤの溝」は、ユーザー車検の点検項目の一つにすぎないから、本件発明1の「個別点検リスト」に含まれる項目に相当するものである。
よって、申立人の行った上記認定を採用することはできず、本決定においては、上記(1)のとおり、対比を行った。

甲1【図15】

(5)小括
本件発明1は、甲1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明ではないから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではない。
また、本件発明1は、甲1〜甲8に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたとすることはできないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

2 理由1−2、1−3、理由2−2、2−3について
本件発明2及び本件発明3は、それぞれ、「点検情報管理方法」及び「プログラム」の発明であって、「点検情報管理システム」の発明である本件発明1と、カテゴリー表現が異なるのみである。
そして、本件発明2は、「上記情報管理サーバーが、上記寿命予測解析ステップの予測値に基づき上記個別点検リストを修正する個別点検リスト修正ステップ」を備え、本件発明3は、「上記情報管理サーバーを、上記寿命予測解析手段の予測値に基づき上記個別点検リストを修正する個別点検リスト修正手段として機能させ」る構成を有しており、当該構成は、甲1発明を方法及びプログラムの発明に書き直した発明は、そのような構成を有していない点で、相違するものである。
そして、その判断は、上記1(2)及び(3)のとおりであり、特許異議申立てでする申立人の主張についても、上記1(4)のとおりであって、本件発明2及び本件発明3は、いずれも、甲1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明ではないから、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものではなく(理由1−2、理由1−3の小括)、また、甲1〜甲8に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたとすることはできないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない(理由2−2、理由2−3の小括)。


第6 むすび

請求項1〜3に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-06-30 
出願番号 P2017-149916
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G06Q)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 松田 直也
溝本 安展
登録日 2021-09-08 
登録番号 6941495
権利者 バンドー化学株式会社
発明の名称 点検情報管理システム、点検情報管理方法及びプログラム  
代理人 小川 博生  
代理人 天野 一規  
代理人 池田 義典  
代理人 藤本 勝誠  
代理人 石田 耕治  

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