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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E06B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  E06B
管理番号 1386160
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-12-21 
確定日 2022-06-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第6894554号発明「連窓」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6894554号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6894554号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成29年4月24日を出願日とする特願2017−85589号の一部を、令和2年6月29日に新たな出願としたものであって、令和3年6月7日にその特許権の設定登録がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和3年12月21日に特許異議申立人渡辺 陽子(以下「申立人」という。)により特許異議申立書(以下「申立書」という。)が提出され、請求項1ないし4に係る発明の特許に対して特許異議の申立てがされた。

第2 本件特許発明

本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
互いに隣り合う2つの窓サッシ間に設けられ前記2つの窓サッシが連結される方立と、
前記方立の屋内側に設けられる耐火部材と、
連結される前記2つの窓サッシに跨がるように設けられ前記耐火部材の屋外側に配置されて前記方立に取り付けられる連結部材と、
前記連結部材に取り付けられ前記耐火部材が載置される耐火部材載置部材と、
を有することを特徴とする連窓。
【請求項2】
請求項1に記載の連窓であって、
前記耐火部材載置部材は、前記耐火部材が載置される部位が平坦であることを特徴とする連窓。
【請求項3】
請求項2に記載の連窓であって、
前記耐火部材載置部材は、前記耐火部材が載置される部位の、前記2つの窓サッシが隣り合って並ぶ方向側の両端に、上方に突出する突出部を有していることを特徴とする連窓。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の連窓であって、
前記耐火部材と前記連結部材とを屋内側から覆うカバー部材を有していることを特徴とする連窓。

第3 特許異議申立理由の概要
申立人は、本件特許発明1ないし4に対して、証拠として甲第1号証ないし甲第6号証を提出し、概略、次の特許異議申立理由を申し立てている。

(1)新規性
本件特許発明1ないし4は、甲第1号証に、
本件特許発明1及び2は、甲第2号証に、
本件特許発明1及び2は、甲第3号証に、
本件特許発明1ないし3は、甲第4号証に、
記載された発明であり、新規性を有さない。

(2)進歩性
本件特許発明1ないし4は、甲第1号証及び周知技術に基づき、
本件特許発明1及び2は、甲第2号証及び周知技術に基づき、
本件特許発明1及び2は、甲第3号証及び周知技術に基づき、
本件特許発明1ないし4は、甲第4号証及び周知技術に基づき、
本件特許発明1ないし4は、甲第5号証及び周知技術に基づき、
当業者が容易に発明をすることができたものであり進歩性を有さない。

(証拠一覧)
甲第1号証 特開2011−202353号公報
甲第2号証 実公平3−22412号公報
甲第3号証 実公昭62−23929号公報
甲第4号証 特開平9−32216号
甲第5号証 特開2015−1120号公報
甲第6号証 特開2011−190613号公報

第4 当審の判断

1.甲号証
(1)甲第1号証
ア.本件特許の出願前に頒布された甲第1号証には次の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。

(ア)「【0001】
本発明は、カーテンウォール構造に関する。詳しくは、カーテンウォールの方立部に耐火被覆を設けるためのカーテンウォール構造に関する。」

(イ)「【0005】
本発明は、カーテンウォールの方立部について、耐火被覆の吹き付け範囲を容易に管理できるカーテンウォール構造を提供することを目的とする。」

(ウ)「発明の効果】
【0010】
本発明によれば、方立部の幅方向両端側に屋内に向かって延びる一対の鍔部を形成した。よって、これら鍔部の間に向かって耐火被覆を吹き付けることで、この鍔部よりも外側に耐火被覆が飛散するのを抑制できるから、鍔部の耐火被覆の吹き付け範囲を容易に管理できる。」

(エ)「【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るカーテンウォール構造が適用されたカーテンウォールの方立部の縦断面図である。
【図2】前記実施形態に係るカーテンウォールの方立部の横断面図である。」

(オ)「【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るカーテンウォール構造が適用されたカーテンウォール1の方立部の縦断面図である。図2は、カーテンウォール1の方立部の横断面図である。
カーテンウォール1は、高さ方向に延びる方立部10と、略水平方向に延びてこれら方立部10同士を連結する図示しない無目部と、これら方立部10および無目部で囲まれた開口部11、スパンドレル部12、および図示しない柱形部と、を備える。
【0013】
開口部11は、居住者の足元付近から天井にかけて位置しており、この開口部11には、ガラス部材111が取り付けられている。
スパンドレル部12は、床スラブ40を上下に跨ぐように位置しており、このスパンドレル部12には、ガラス部材121および耐火ボード13が取り付けられている。耐火ボード13は、ガラス部材121よりも屋内側に取り付けられている。
・・・
【0015】
方立部10のうちこのスパンドレル部12を構成する部分の屋内側の面でかつ幅方向両端側には、上述の耐火ボード13を押さえるための一対の鍔部としての押さえ部材30が取り付けられている。これにより、耐火ボード13は、方立部10と押さえ部材30との間に挟み込まれて保持されている。
【0016】
押さえ部材30は、方立部10からこの方立部10の幅方向に突出して延びる第1突出片31と、この第1突出片31の先端から屋内に向かって突出して延びる第2突出片32と、を備える。具体的には、この押さえ部材30は、断面L字形状のアルミ製のアングル材を方立部10にビス33により固定することにより形成され、第1突出片31と第2突出片32とが一体化されている。
【0017】
一対の押さえ部材30の間には、耐火性を有する耐火被覆としてのロックウール20が吹き付けられている。このロックウール20は、第2突出片32の先端までの厚さに吹き付けられている。また、上述のロックウール21は、このロックウール20まで到達している。
押さえ部材30の第1突出片31の突出寸法L1および第2突出片32の突出寸法L2は、予め定められたロックウール20の目標厚さ(例えば、20mmあるいは30mm)に略等しくなっている。これにより、ロックウール20の方立部10の幅方向の厚さおよび屋内方向の厚さが確保されている。
【0018】
このように、押さえ部材30は、耐火ボード13を押さえるほか、ロックウールを吹き付けるためのガイドとしての役割を果たしている。」

(カ)図1及び図2は次のものである。
【図1】


【図2】


(キ)図2からは、方立部10は互いに隣り合う2枚のガラス部材121の間に設けられ、方立部10に2枚のガラス部材121が取り付けられる点を看取することができる。

(ク)なお、申立人は申立書の第14ページにおいて、甲第1号証の図1に加筆した次の図を示すとともに、甲第1号証には「前記連結材及び第1突出片31に取り付けられ前記ロックウール20が載置される第2突出片32の下側の突出片」を有する「カーテンウォール構造」の発明が記載されている旨主張している。



しかしながら、甲第1号証には、段落【0016】(上記「(オ)」参照。)に、「押さえ部材30は、方立部10からこの方立部10の幅方向に突出して延びる第1突出片31と、この第1突出片31の先端から屋内に向かって突出して延びる第2突出片32と、を備える。」との記載があるものの、「第2突出片32の下側の突出片」については何ら記載がない。
また、甲第1号証の図1(上記「(カ)」参照。)は「方立部の縦断面図」(上記「(エ)」参照。)であるから、仮に「第2突出片32の下側の突出片」が存するのであれば、「ロックウール20」の下端側にその断面が示されるべきところ、図1の当該箇所には点線が示されていて、建築製図における通常の用法を踏まえると当該点線は断面図において切断されない「第2突出片32」を示すものと解されるから、図1からも「第2突出片32の下側の突出片」が存することは看取することができない。
そうすると、甲第1号証に「前記連結材及び第1突出片31に取り付けられ前記ロックウール20が載置される第2突出片32の下側の突出片」が記載されているとは認められない。

イ.上記「ア.」を総合すると、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。

(甲1発明)
「方立部と、スパンドレル部と、を備え、
スパンドレル部には、ガラス部材および耐火ボードが取り付けられており、
方立部は互いに隣り合う2枚のガラス部材の間に設けられ、方立部に2枚のガラス部材が取り付けられ、
方立部の屋内側の面でかつ幅方向両端側には、耐火ボードを押さえるための一対の鍔部としての押さえ部材が取り付けられており、
一対の押さえ部材の間には、耐火性を有する耐火被覆としてのロックウールが吹き付けられている
カーテンウォール。」

(2)甲第4号証
ア.本件特許の出願前に頒布された甲第4号証には次の記載がある。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建物の明りとりであるトップライトに係り、特に耐火性および施工性等の向上を図ったトップライトに関する。」

(イ)「【0005】そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされたもので、耐火性、意匠性および施工性の向上が図れるトップライトを提供することを目的としている。」

(ウ)「【0008】
【実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。図1ないし図2において、1は建物の躯体であり、この建物の躯体1には明りとりのための開口2が形成され、この開口2にこれを覆うようにトップライト3が設置されている。図示例では、建物としてビルが示され、その躯体1の上部に長方形の開口2が形成されている。また、建物の躯体1には開口2の周縁部に沿って立ち上がった立上り部4が形成され、この立
上り部4に切妻形の上記トップライト3が設置されている。
【0009】このトップライト3は、その骨組ないしフレームを構成するアルミニウム製のガラス支持部材5と、このガラス支持部材5の室外側に支持されて設けられるガラス6とを備えている。このガラス6は、ガラス内に網を入れてなる耐火性の高い網入ガラスからなっている。また、上記ガラス支持部材5は、図示例では棟部に配置された棟部支持部材5aと、この棟部支持部材5aと躯体1の立上り部4との間に傾斜した状態で適宜間隔で掛け渡された複数の傾斜部支持部材5bとから主に構成されている。
・・・
【0011】上記傾斜部支持部材5bは、図4に示すように角筒状に形成され、その室外側両側縁部に、隣合うガラス6の側縁部がシール部材7bを介して支持される。また、傾斜部支持部材5bの室外側には、隣合うガラス6の側縁部をシール部材8bを介して押えるアルミニウム製の側部押え部材9bがネジ12で着脱可能に取付けられている。上記傾斜部支持部材5bの室外側には、ネジ12を捩じ込むための溝13を有する取付部14が一体形成されている。更に、上記傾斜部支持部材5bの室内側に臨む面は、棟部支持部材5aと同様に耐火性を有する合成ゴム11で被覆されている。
【0012】上記傾斜部支持部材5bの下端部を躯体1の立上り部4に固定するために、図3に示すように立上り部4の上面には傾斜部支持部材5bの両側を挟む左右一対のスチール製のブラケット15がスチール製のベースプレート16を介してアンカーボルト17とナット18により取付けられ、これらブラケット15に傾斜部支持部材5bの下端部がボルト19とナット20で取付けられている。なお、上記傾斜部支持部材5bの上端部は、同様の固定手段(ブラケット等)で上記棟部支持部材5aに連結固定されている(図示省略)。」

(エ)「【0015】また、上記ガラス支持部材5がアルミニウム製の母材を耐火性合成ゴム11で被覆してなるため、意匠性の向上が図れると共に、現場で鉄製のガラス支持部材にアルミニウム製のカバー部材を取付けるようにした従来のトップライトと異なり、このような構成および取付作業が不要であり、施工性の向上およびコストの低減が図れる。また、ガラス支持部材5には耐火性合成ゴム11を押出し一体化、貼着或いは塗布などにより容易に被覆することができ、製造の容易化および製造コストの低減が図れる。」

イ.上記「ア.」を総合すると、甲第4号証には次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。

(甲4発明)
「ガラス支持部材と、このガラス支持部材の室外側に支持されて設けられるガラスとを備えており、
ガラス支持部材は、棟部支持部材と、傾斜部支持部材とから主に構成されており、
傾斜部支持部材の室外側両側縁部に、隣合うガラスの側縁部がシール部材を介して支持され、
傾斜部支持部材の室外側には、隣合うガラスの側縁部をシール部材を介して押える側部押え部材が取付けられており、
上記傾斜部支持部材の室内側に臨む面は、耐火性を有する合成ゴムで被覆されており、
躯体の立上り部の上面には傾斜部支持部材の両側を挟む左右一対のブラケットがベースプレートを介して取付けられ、これらブラケットに傾斜部支持部材の下端部が取付けられている
トップライト。」

(3)甲第5号証
ア.本件特許の出願前に頒布された甲第5号証には次の記載がある。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、方立を介して左右方向に隣接して窓が設けられている窓部連結構造に関する。」

(イ)「【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、室外または室内側での火災等の際に、室内側または室外側への炎の浸入を防ぐことができる窓部連結構造を提供することを目的とする。」

(ウ)「【0012】
また、本発明に係る窓部連結構造では、前記耐火部材は、上端部および下端部が前記建物の躯体と接触していることが好ましい。
このようにすることにより、枠体と方立との間の空間が耐火部材と躯体との隙間から室内と連通することを防止できるため、室内または室外で火災が発生した際に、枠材と方立の間の空間から室外側または室内側へ炎が浸入することを防止することができる。」

(エ)「【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による窓部連結構造について、図1乃至図4に基づいて説明する。
図1および図2に示すように、第1実施形態による窓部連結構造1Aでは、建物11の開口部12に左右方向に2つの窓部2,2が方立3を介して配列されていて、方立3の室内13側に耐火部材4が設けられている。
【0024】
図1および図3に示すように、窓部2は矩形状に枠組みされた枠体21と、枠体21内にはめ込まれた窓ガラス22と、を備えている。ここで、枠体21のうち、窓ガラス22の左右方向の両端部22aに沿って設けられた部材を縦枠23として以下説明する。
・・・
【0026】
方立3は、室内13側に設けられた室内側方立部材31と、室外14側に設けられた室外側方立部材32と、を備えていて、これらの室内側方立部材31および室外側方立部材32は、ともに開口部12の高さ方向全長にわたって上下方向(図2の矢印Dの方向)に延在する部材に形成されている。
・・・
【0038】
また、図2に示すように、耐火部材4は、室外14側の面4aにおける上端部4d近傍および下端部4e近傍、および上端面4f並びに下端面4gが建物11の躯体15と当接(接触)し、板状の取り付け材17を用いて躯体15に固定されている。
なお、本実施形態では、耐火部材4の上端面4fおよび下端面4gが、躯体15のコンクリート部分15aと当接し、室外14側の面4aにおける上端部4d近傍および下端部4e近傍が躯体15の表面に配されたモルタル部分15bと当接している。
【0039】
また、図3に示すように、耐火部材4は、室内13側の面4bと見付け方向Cの両端面4c,4cとがカバー材6に覆われている。ここで、耐火部材4は保持部材7を用いて方立3および一対の縦枠23,23にねじ止めされていて、カバー材6は保持部材7に係止されるように取り付けられている。
カバー材6は、耐火部材4の高さ寸法と略同じ寸法に例えば、樹脂やアルミ合金などで長尺に形成され、水平断面において室外14側に開口する略C字状の本体部61と、本体部61と一体に形成され保持部材7に係止される一対の係止部62,62とを備えている。
【0040】
本体部61は、内部に耐火部材4が配置可能な大きさに構成され、水平断面において見付け方向Cに延びる見付け片63と、見付け片63の両端部からそれぞれ室外14側に延びる一対の見込み片64,64とを備えている。この見付け片63は耐火部材4の室内13側の面4bと対向し、見込み片64,64は耐火部材4の見付け方向Cの両端面4h,4hとそれぞれ対向している。
一対の係止部62,62は、見付け方向Cに互いに所定の間隔をあけて配されていて、本体部61の見付け片63から耐火部材4側(室外14側)に突出し、突出した先端部に互いに近づく方向に突出する係止爪部65,65がそれぞれ形成されている。
・・・
【0049】
次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。」

(オ)「【0069】
(第7実施形態)
図10に示すように、第7実施形態による窓部連結構造1Gは、耐火部材4Gに吹付型のロックウールが使用されている。
また、保持部材7Gは、耐火部材4Gの高さ方向全長にわたって延びる長尺の部材で、水平断面において室内13側に開口した略C字状に形成されている。そして、保持部材7の溝(内側空間)には、耐火部材(ロックウール)4Gが吹付されている。
保持部材7Gは、見付け方向Cに延びる見付け片91と、見付け片91の両端部から室内13側に延びる一対の見込み片92,92とを備えている。一対の見込み片92,92の見付け片91側の端部には、互いに離れる方向に突出する係止爪部93,93がそれぞれ形成されている。
そして、見付け片91は、室外14側の面91aが、室内側方立部材31の室内13側の面31aと、一対の縦枠23,23の室内側見付け片27,27の室内13側の面27aと当接し、室内側方立部材31および一対の縦枠23,23の室内側見付け片27,27にねじ止めされている。
【0070】
カバー材6Gは、第4実施形態のように、本体部61のみで構成され、本体部61の一対の見込み片64,64の室外側の先端部に、互いに近づく方向に突出する係止爪部66,66が形成されている。
そして、カバー材6Gをその内部に耐火部材4および保持部材7Gが入り込むように設置し、カバー材6Gの係止爪部66,66と保持部材7Gの係止爪部93,93とを互いに係止させると、カバー材6Gが耐火部材4Gを覆った状態に保持されるように構成されている。」

(カ)図2及び図10は次のものである。
【図2】


【図10】


(キ)上記「(カ)」の図10からは、「保持部材7G」は「耐火部材4G」の室外側に位置している点を看取することができる。

イ.上記「ア.(エ)」には「次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。」と記載されているところ、第7実施形態に着目するとともに、上記記載の範囲で第1実施形態を参酌して、上記「ア.」を総合すると、甲第5号証には次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されている。

(甲5発明)
「建物の開口部に左右方向に2つの窓部が方立を介して配列されていて、方立の室内側に耐火部材が設けられており、
窓部は矩形状に枠組みされた枠体と、枠体内にはめ込まれた窓ガラスと、を備えており、
縦枠は、枠体のうち、窓ガラスの左右方向の両端部に沿って設けられた部材であり、
方立は、室内側に設けられた室内側方立部材と、室外側に設けられた室外側方立部材と、を備えていて、
耐火部材は、下端面が建物の躯体と当接(接触)し、
耐火部材は保持部材を用いて方立および一対の縦枠にねじ止めされており、
保持部材は、見付け片を備えており、見付け片は、室内側方立部材および一対の縦枠の室内側見付け片にねじ止めされており、
保持部材は耐火部材の室外側に位置している
窓部連結構造。」

2.甲1発明を主引用発明とする場合
(1)本件特許発明1
ア.対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。

(ア)「窓」の一般的な意味は「採光,通風,換気,眺望などを目的とし,日常の人の出入りには供さない開口(部)」(日本建築学会編、『建築学用語辞典』、岩波書店、1993年)であり、「カーテンウォール」における「スパンドレル」の一般的な意味は「特にカーテンウォールの外壁において,上下の窓開口の間の壁の部分」(同『建築学用語辞典』)であるところ、甲1発明の「スパンドレル部」は、その名称からして「上下の窓開口の間の壁の部分」であると解されることや、「ガラス部材および耐火ボードが取り付けられて」いるものであって、採光,通風,換気,眺望等ができるものではないことからして、「窓」といい得るものではなく、「スパンドレル部」に取り付けられる「ガラス部材」も同様に「窓」であるとはいえない。
また、「サッシ」の一般的な意味は「サッシバーを主体として構成された工業製品の建具」(同『建築学用語辞典』)であり、「サッシバー」の一般的な意味は「鋼製建具やアルミニウム製建具などを構成するかまち,桟,枠などの線状部材」(同『建築学用語辞典』)である。そして、本件特許明細書の段落【0022】に「本実施形態の連窓1は、2つの引違い窓用の窓サッシ2、3が連結されて構成されている。各々の窓サッシ2、3は、矩形状をなすガラスの周端部を框が保持して左右方向に移動可能な2枚の障子4と、矩形状に接合されて2枚の障子4が案内されるサッシ枠20、30と、を有している。」と記載されていることからすれば、本件特許発明1の「窓サッシ」は、「ガラス」と、「框」や「サッシ枠20、30」のようなサッシバー(かまち,桟,枠など)とからなるものであると認められる。一方、甲1発明の「ガラス部材」は、サッシバー(かまち,桟,枠など)を有するものではないから、「サッシ」であるとはいえない。
そうすると、甲1発明の「ガラス部材」は「窓」であるとも「サッシ」であるともいえないから、甲1発明の「互いに隣り合う2枚のガラス部材の間に設けられ」、「2枚のガラス部材が取り付けられ」る「方立部」と、本件特許発明1の「互いに隣り合う2つの窓サッシ間に設けられ前記2つの窓サッシが連結される方立」とは、「互いに隣り合う2つの外装材間に設けられ前記2つの外装材が連結される方立」である限りにおいて共通する。

(イ)甲1発明の「耐火性を有する耐火被覆としてのロックウール」は「一対の押さえ部材の間に」吹き付けられるところ、「押さえ部材」は「方立部の屋内側の面でかつ幅方向両端側に」取り付けられるのだから、「ロックウール」が「方立部の屋内側」に位置することは明らかである。
そうすると、甲1発明の当該「耐火性を有する耐火被覆としてのロックウール」は、本件特許発明1の「前記方立の屋内側に設けられる耐火部材」に相当する。

(ウ)甲1発明の「押さえ部材」は、「方立部の屋内側の面でかつ幅方向両端側に」取り付けられるものであり、上記「(イ)」での検討を踏まえれば、「ロックウール」の屋外側に位置することは明らかである。
そうすると、甲1発明の当該「押さえ部材」と、本件特許発明1の「連結される前記2つの窓サッシに跨がるように設けられ前記耐火部材の屋外側に配置されて前記方立に取り付けられる連結部材」とは、「耐火部材の屋外側に配置されて方立に取り付けられる部材」の点で共通する。

(エ)本件特許明細書の段落【0038】に「上記実施形態においては、互いに隣り合う2つの引違い窓が左右方向に連なる連窓1を例に挙げて説明したが、連窓を構成する窓サッシの数は2つに限るものではない。また、隣り合う窓は引違い窓に限るものではなく、窓の種類に拘らず窓サッシが連結されるものであれば構わない。」と記載されていることからすれば、本件特許発明1における「連窓」とは「窓サッシが連結されるもの」であると解される。
一方、甲1発明の「ガラス部材」は、上記「(ア)」で検討したとおり、「窓」であるとも「サッシ」であるとも認められないものの、甲1発明の「カーテンウォール」は「方立部と、スパンドレル部と、を備え」ており、「方立」に「2つの外装材が連結される」ものであると認められるから、外装材が連結された構造であるということができる。
そうすると、甲1発明の当該「カーテンウォール」と、本件特許発明1の「連窓」とは、「外装材が連結された構造」の点で共通する。

(オ)以上を総合すると、本件特許発明1と甲1発明とは、
「互いに隣り合う2つの外装材間に設けられ前記2つの外装材が連結される方立と、
前記方立の屋内側に設けられる耐火部材と、
前記耐火部材の屋外側に配置されて前記方立に取り付けられる部材と、
を有する外装材が連結された構造。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
方立が、本件特許発明1においては互いに隣り合う2つの「窓サッシ」間に設けられ2つの「窓サッシ」が連結されるのに対して、甲1発明においてはそのようなものでない点。

(相違点2)
方立に取り付けられる部材が、本件特許発明1においては「連結部材」であって、「連結される2つの窓サッシに跨がるように設けられ」るのに対して、甲1発明においてはそのようなものであるか明らかでない点。

(相違点3)
本件特許発明1が「連結部材に取り付けられ耐火部材が載置される耐火部材載置部材」を有するのに対して、甲1発明はそのような部材を有するか明らかでない点。

(相違点4)
本件特許発明1が「連窓」であるのに対して、甲1発明は外装材が連結された構造であって窓が連結されたものではない点。

イ.検討
(ア)新規性
本件特許発明1と甲1発明とは、上記相違点1ないし4において相違するから、本件特許発明1と甲1発明とは同一ではない。

(イ)進歩性
a.申立人は申立書において、進歩性に関して、「仮に、本件第1発明における耐火部材がケイ酸カルシウム板であると訂正されたとしても、耐火部材をケイ酸カルシウム板とすることは甲5に記載されているように(段落36)従来周知であるから、当該訂正された発明は当業者が容易に想到しうる発明である。」(申立書第18ページ第5〜8行)と主張しているから、申立人の進歩性に関する主張は、訂正を想定した予備的なものであると解される。
しかしながら、本件特許発明1と甲1発明とは、上記「ア.(オ)」の相違点1ないし4において相違するから、以下では、甲1発明において上記相違点1ないし4に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとすることを、当業者が容易になし得たかについて検討する。
事案に鑑み、まず相違点1について検討する。

b.「サッシ」及び「窓」については、上記「ア.(ア)」で検討したとおりであって、甲1発明は「カーテンウォール」であって「スパンドレル部」に「ガラス部材」を取り付けたものであるところ、「カーテンウォール」の「スパンドレル部」における「ガラス部材」を、上記「ア.(ア)」で検討した意味での「窓サッシ」とすることは、後記「3.及び4.」で詳述するように「カーテンウォール」に係る甲第2号証及び甲第3号証には記載されていないし、「カーテンウォール」の技術分野における周知技術であるとも認められない。
そうすると、甲1発明において、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。

c.また、申立書には甲第6号証に言及して「当該ガラス部材121は「窓」ガラスであり(必要なら、甲6の段落35参照。)」(申立書第15ページ第5〜6行)との記載があり、証拠説明書における甲第6号証の「立証趣旨」の欄には「(技術常識)スパンドレル部のガラス部材が窓サッシである点。」と記載されているから、申立人は甲第6号証によって「スパンドレル部のガラス部材が窓サッシである点」が「技術常識」である旨主張しているものと認められる。
当該主張について検討すると、甲第6号証には次の記載がある。
「【0035】
<カーテンウォールの構成>
図1には、カーテンウォール用複合耐火構造10が適用されたカーテンウォール12が示されている。カーテンウォール12は、水平方向に間隔を空けて立てられた複数の方立14と、方立14の間に上下方向に間隔を空けて架設された複数の無目16を備えている。これらの方立14及び無目16はアルミ製で、格子状に連結されており、この格子枠内に窓ガラス18が配置されている。
・・・
【0038】
カーテンウォール12の上階の窓と下階の窓との間のスパンドレルには、層間区画部材としての耐火ボード34が設けられている。耐火ボード34は、窓ガラス18の室内側に設けられ、方立14及び無目16で囲まれたアルミ枠内に配置されている。耐火ボード34は、繊維混入けい酸カルシウム板、石膏ボード、ロックウールボード、セラミックファイバーボード等で構成されており、その周縁部が方立14及び無目16に設けられたレール36内に配置されている。このレール36によって耐火ボード34がコンクリートスラブ20と隙間D(図2参照)を空けた状態で保持されている。」

上記記載によれば、甲第6号証の「カーテンウォール12」には「窓」の部分と「スパンドレル」の部分とがあり、「窓」の部分と「スパンドレル」の部分の両方で「窓ガラス18」という用語が用いられている。しかしながら、「スパンドレル」の部分は、「耐火ボード34は、窓ガラス18の室内側に設けられ」ていることから、「採光,通風,換気,眺望など」ができるものではないことが明らかであって、上記「(1)ア.(ア)」での検討に照らせば、「窓」といい得るものではない。
また、甲第6号証の「窓ガラス18」は、サッシバー(かまち,桟,枠など)を有するものではないから、上記「(1)ア.(ア)」での検討に照らして、「サッシ」であるとはいえない。
そうすると、甲第6号証によっては「スパンドレル部のガラス部材が窓サッシである点」が技術常識であるとはいえないから、申立人の上記主張は採用することができない。

d.甲第4号証及び甲第5号証についてみても、甲4発明は「トップライト」に係るものであり、甲5発明は「窓部連結構造」に係るものであって、いずれも「窓」の技術分野の技術であると認められる。
一方、上記「2.(1)ア.(ア)」で検討したとおり、「カーテンウォール」における「スパンドレル」の一般的な意味は「特にカーテンウォールの外壁において,上下の窓開口の間の壁の部分」であるから、甲1発明における「スパンドレル部」も「窓開口」ではなく「壁の部分」であると認められるところ、このように「窓開口」とは区別される「壁の部分」に、「窓」の技術分野に属する甲4発明又は甲5発明を適用する動機付けはない。
そうすると、甲第4号証及び甲第5号証を参酌しても、甲1発明において、上記相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ.小括
以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。
また、本件特許発明1は、甲1発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2ないし4
本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えた発明である。
そうすると、上記「(1)」と同様の理由により、本件特許発明2ないし4は、甲第1号証に記載された発明ではない。
また、本件特許発明2ないし4は、甲1発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3.甲第2号証に記載された発明を主引用発明とする場合
(1)甲第2号証の記載
本件特許出願前に頒布された甲第2号証には次の記載がある。

ア.「方立1の後端面に凹溝3を設けたカーテンウオールにおいて、方立と膳板補強兼用の耐火パネル受け部材5a,5bとの間にその部材を受ける連結金具6を介在させ、連結金具6をL字形屈折板に形成すると共に、その下片先端に巾広部9を設け、連結金具6を方立1に凹溝3内でビス止めし、凹溝3より突出する巾広部9を方立1の後面に接合させ、受け部材5a,5bの端部を巾広部9にビス止めしたことを特徴とするカーテンウオールにおける耐火パネル受け部材の取付け装置。」(実用新案登録請求の範囲)

イ.第1図及び第2図は次のものである。





(2)本件特許発明1
上記「(1)」の記載によれば、甲第2号証に記載のものは甲1発明と同様に「カーテンウォール」に係るものであると認められるから、まず、本件特許発明1と甲1発明との相違点1(上記「2.(1)ア.(オ)」)に着目して検討する。

ア.甲第2号証の第1図からは、無目44と無目45との間に板材が設けられている点を看取することができる。また、同図には方立1も示されているものの、方立1と板材との関係を看取することはできない。
一方、同第2図においては、方立1を看取することができるものの、板材を看取することはできない。
そうすると、第1図及び第2図を総合しても、方立1に対して板材がどのように設けられているのかは明らかでない。
また、甲第2号証の全文及び全図をみても、方立1への板材の設置については、何ら記載も示唆もない。

イ.以上を総合すると、本件特許発明1と甲第2号証に記載された発明とは、少なくとも、方立が、本件特許発明1においては互いに隣り合う2つの「窓サッシ」間に設けられ2つの「窓サッシ」が連結されるのに対して、甲第2号証に記載された発明においてはそのように特定されていない点で相違する。

ウ.そして、当該相違点については、上記「2.(1)イ.」における相違点1についての検討と同様のことが言えるから、その余の点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲第2号証に記載された発明ではなく、また、甲第2号証に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件特許発明2
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えた発明である。
そうすると、上記「(2)」と同様の理由により、本件特許発明2は、甲第2号証に記載された発明ではなく、また、甲第2号証に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.甲第3号証に記載された発明を主引用発明とする場合
(1)甲第3号証の記載
本件特許出願前に頒布された甲第3号証には次の記載がある。
ア.「本考案はカーテンウオールにおける耐火材の支持構造に関する。」(第1欄第11〜12行)

イ.「以下実施例について本考案を説明する。
方立1の両側には押縁2とによつて構成したガラス嵌溝3があつて、該嵌溝3にはタイト材4及びシール材5を介して並設した方立1間にガラス板6を嵌装する。上記のガラス板6の屋内側において上部よこ枠7と下部よこ枠8との間にわたつてパネル状の耐火材9及び断熱材10を配設してスパンドレル部Sを構成する。Wはそれぞれスパンドレル部Sの上下に配設した窓部である(第2図)。」(第2欄第13〜22行)

(2)本件特許発明1
上記「(1)ア.」の記載によれば、甲第3号証に記載のものは甲1発明と同様に「カーテンウォール」に係るものであると認められるから、まず、本件特許発明1と甲1発明との相違点1(上記「2.(1)ア.(オ)」)に着目して検討する。

ア.甲第3号証には「方立1の両側」の「ガラス嵌溝3」に「タイト材4及びシール材5を介して」「ガラス板6を嵌装する」とともに、「ガラス板6の屋内側において」「パネル状の耐火材9及び断熱材10を配設してスパンドレル部Sを構成する」ことが記載されている。
そうすると、甲第3号証の「ガラス板6」は、枠材を用いずに「方立1」に嵌装されるから「サッシ」といい得るものではない。また、「ガラス板6」の「屋内側」に「パネル状の耐火材9及び断熱材10を配設スパンドレル部Sを構成する」から、採光や通風ができるものではないことは明らかであって、「窓」といい得るものでもない。

イ.以上を総合すると、本件特許発明1と甲第3号証に記載された発明とは、少なくとも、方立が、本件特許発明1においては互いに隣り合う2つの「窓サッシ」間に設けられ2つの「窓サッシ」が連結されるのに対して、甲第3号証に記載された発明においてはそのようなものでない点で相違する。

ウ.そして、当該相違点については、上記「2.(1)イ.」における相違点1についての検討と同様のことが言えるから、その余の点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲第3号証に記載された発明ではなく、また、甲第3号証に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件特許発明2
本件特許発明2は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えた発明である。
そうすると、上記「(2)」と同様の理由により、本件特許発明2は、甲第3号証に記載された発明ではなく、また、甲第3号証に記載された発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5.甲4発明を主引用発明とする場合
(1)本件特許発明1
ア.対比
本件特許発明1と甲4発明を対比する。

(ア)本件特許発明1の「窓」及び「サッシ」は上記「2.(1)ア.(ア)」で検討したとおりに解される。そして、これを踏まえると、甲4発明は「トップライト」に係るものであって採光が可能であることは明らかであるから、その「ガラス部材」は「窓」であるといえるものの、その一方で、サッシバー(かまち,桟,枠など)を有するものではないから、「ガラス部材」が「サッシ」であるとはいえない。
そうすると、甲4発明の「室外側両側縁部に、隣合うガラスの側縁部がシール部材を介して支持され」る「傾斜部支持部材」と、本件特許発明1の「互いに隣り合う2つの窓サッシ間に設けられ前記2つの窓サッシが連結される方立」とは、「互いに隣り合う2つの窓部材間に設けられ前記2つの窓部材が連結される方立」である限りにおいて共通する。

(イ)なお、申立人は申立書において「他方で、甲4には、互いに隣り合い、ガラス6を挟持する側部押え部材9b間に設けられ、当該2つの側部押え部材9bが連結されるガラス支持部材5が記載されており(段落11、図4)、当該「側部押え部材9b」、「ガラス支持部材5」は、構成要件Aにおける「窓サッシ」、「方立」に相当する。」(申立書第32ページ第6〜9行)と主張している。
しかしながら、本件特許発明1の「窓サッシ」は、上記「2.(1)ア.(ア)」で検討したとおり、「ガラス」と、「框」や「サッシ枠20、30」のようなサッシバー(かまち,桟,枠など)とからなるものであると認められるところ、甲4発明の「側部押え部材」は単独で本件特許発明1の「窓サッシ」に相当するものではない。
また、甲4発明は「傾斜部支持部材の室外側には、隣合うガラスの側縁部をシール部材を介して押える側部押え部材が取付けられて」いることからして、その「側部押え部材」は「傾斜部支持部材」と協働して「ガラス」を支持するものであって、「ガラス」と一体の部材として把握し得るものではないから、甲4発明の「側部押え部材」及び「ガラス」が本件特許発明1の「窓サッシ」に相当するということもできない。
そうすると、申立人の上記主張は採用することができない。

(ウ)甲4発明においては「傾斜部支持部材の室内側に臨む面は、耐火性を有する合成ゴムで被覆されて」いるところ、甲4発明の当該「耐火性を有する合成ゴム」は、本件特許発明1の「前記方立の屋内側に設けられる耐火部材」に相当する。

(エ)本件特許発明1は「連結される前記2つの窓サッシに跨がるように設けられ前記耐火部材の屋外側に配置されて前記方立に取り付けられる連結部材」を有するところ、当該「連結部材」は「方立に取り付けられる」のであるから、「方立」とは別の部材であることは明らかである。
そうすると、甲4発明の「傾斜部支持部材」は、「上記傾斜部支持部材の室内側に臨む面は、耐火性を有する合成ゴムで被覆されて」いることから「耐火性を有する合成ゴム」の室外側に位置するとはいえるものの、上記「(ア)」のとおり、本件特許発明1の「方立」に相当するものであって、「方立に取り付けられる」ものではない。
また、甲4発明のその余の部材も、本件特許発明1の「連結される2つの窓サッシに跨がるように設けられ耐火部材の屋外側に配置されて方立に取り付けられる連結部材」に相当するとは認められない。

(オ)なお、申立人は申立書において「連結部材」に関し、「他方で、甲4には、2つの側部押え部材9bに跨るように傾斜部支持部材5bが設けられ、当該傾斜部支持部材5bは耐火性合成ゴム11の屋外側に配置されてガラス支持部材5に取り付けられており(段落11、図4)、当該「傾斜部支持部材5b」は、構成要件Cにおける「連結部材」に相当する。」(申立書第33ページ第9〜12行)と主張している。
しかしながら、甲第4号証に「また、上記ガラス支持部材5は、図示例では棟部に配置された棟部支持部材5aと、この棟部支持部材5aと躯体1の立上り部4との間に傾斜した状態で適宜間隔で掛け渡された複数の傾斜部支持部材5bとから主に構成されている。」(上記「1.(2)ア.(ウ)」参照。)と記載されていることから明らかなとおり、「傾斜部支持部材5b」は「ガラス支持部材5」の一部であって、申立人は上記「(イ)」で示したように甲第4号証記載の「ガラス支持部材5」については本件特許発明1の「方立」に相当する旨主張しているところ、「ガラス支持部材5」と同一の部材である「傾斜部支持部材5b」が本件特許発明1の「連結部材」に相当するとする主張は、これと整合しないものであって、採用することができない。

(カ)甲4発明の「トップライト」は、「傾斜部支持部材の室外側両側縁部に、隣合うガラスの側縁部がシール部材を介して支持され」るから、「傾斜部支持部材」の両側に「ガラス」が隣合うものと認められるので、本件特許発明1の「連窓」に相当する。

(キ)甲4発明は、「上記傾斜部支持部材の室内側に臨む面は、耐火性を有する合成ゴムで被覆されて」いるものであって、「耐火性を有する合成ゴム」は「傾斜部支持部材」に被覆によって一体化しているものと認められるし、甲4発明は、「躯体の立上り部の上面には傾斜部支持部材の両側を挟む左右一対のブラケットがベースプレートを介して取付けられ、これらブラケットに傾斜部支持部材の下端部が取付けられている」から、「傾斜部支持部材」は「ブラケット」及び「ベースプレート」を介して「躯体の立上り部」に取り付けられているものであり、「耐火性を有する合成ゴム」の荷重が直接「ベースプレート」で支持されるものではない。
そうすると、甲4発明は「耐火性を有する合成ゴム」が「ベースプレート」に載置されるといい得るものではないから、甲4発明の「ベースプレート」は本件特許発明1の「連結部材に取り付けられ耐火部材が載置される耐火部材載置部材」に相当するものではない。

(ク)以上を総合すると、本件特許発明1と甲4発明とは、
「互いに隣り合う2つの窓部材間に設けられ前記2つの窓部材が連結される方立と、
前記方立の屋内側に設けられる耐火部材と、
を有する連窓。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点A)
方立が、本件特許発明1においては互いに隣り合う2つの窓「サッシ」間に設けられ2つの窓「サッシ」が連結されるのに対して、甲4発明においてはそのようなものでない点。

(相違点B)
本件特許発明1が「連結される2つの窓サッシに跨がるように設けられ耐火部材の屋外側に配置されて方立に取り付けられる連結部材」を有するのに対して、甲4発明はそのような部材を有さない点。

(相違点C)
本件特許発明1が「連結部材に取り付けられ耐火部材が載置される耐火部材載置部材」を有するのに対して、甲4発明は「傾斜部支持部材の室内側に臨む面」が「耐火性を有する合成ゴムで被覆され」るものであり、「耐火部材載置部材」を有さない点。

イ.検討
(ア)新規性
本件特許発明1と甲4発明とは、上記相違点AないしCにおいて相違するから、本件特許発明1と甲4発明とは同一ではない。

(イ)進歩性
申立書における甲第4号証に基づく進歩性に関する主張(申立書第34ページ下から5行〜下から2行)も、上記「2.(1)イ.(イ)a.」と同様に訂正を想定した予備的なものであると解される。
しかしながら、本件特許発明1と甲4発明とは、上記「ア.(ク)」の相違点AないしCにおいて相違するから、以下では、甲4発明において上記相違点AないしCに係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとすることを、当業者が容易になし得たかについて検討する。
事案に鑑み、まず上記相違点Cについて検討する。

a.甲4発明は、「上記傾斜部支持部材の室内側に臨む面は、耐火性を有する合成ゴムで被覆されて」いるものであって、「耐火性を有する合成ゴム」は「被覆」によって「傾斜部支持部材」に一体化されているものと認められるから、甲4発明においてさらに「耐火部材が載置される耐火部材載置部材」を採用する動機付けはない。

b.また、甲4発明は、「耐火性および施工性等の向上」(上記「1.(2)ア.(ア)」参照)を課題とし、「上記傾斜部支持部材の室内側に臨む面は、耐火性を有する合成ゴムで被覆されており」との構成を備えることにより、「ガラス支持部材5には耐火性合成ゴム11を押出し一体化、貼着或いは塗布などにより容易に被覆することができ、製造の容易化および製造コストの低減が図れる」(上記「1.(2)ア.(エ)」参照)との効果を奏すると認められるところ、甲4発明において「耐火部材載置部材」を設けて「耐火性を有する合成ゴム」を載置すると、その施工の手間や製造のコストが発生して上記効果が損なわれることになる。

c.そうすると、甲4発明において、上記相違点Cに係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ.小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲第4号証に記載された発明ではない。
また、本件特許発明1は、甲4発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2ないし4
本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えた発明である。
そうすると、上記「(1)」と同様の理由により、本件特許発明2ないし4は、甲第4号証に記載された発明ではなく、また、甲4発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6.甲5発明を主引用発明とする場合
(1)本件特許発明1
ア.対比
本件特許発明1と甲5発明とを対比する。

(ア)甲5発明の「窓部」は、「矩形状に枠組みされた枠体と、枠体内にはめ込まれた窓ガラスと、を備えて」いるから、上記「2.(1)ア.(ア)」における「窓」及び「サッシ」についての検討に照らせば、本件特許発明1の「窓サッシ」に相当する。

(イ)甲5発明の「方立」は、「建物の開口部に左右方向に2つの窓部が方立を介して配列されていて」いるものであるから、本件特許発明1の「互いに隣り合う2つの窓サッシ間に設けられ前記2つの窓サッシが連結される方立」に相当する。

(ウ)甲5発明の「耐火部材」は、「方立の室内側に」「設けられて」いるから、本件特許発明1の「前記方立の屋内側に設けられる耐火部材」に相当する。

(エ)甲5発明の「保持部材」は、「見付け片を備えており、見付け片は、室内側方立部材および一対の縦枠の室内側見付け片にねじ止めされている」から、2つの窓部の一対の縦枠に渡って設けられるとともに、方立の室内側方立部材にねじ止めされているものと認められる。また、甲5発明においては「保持部材は耐火部材の室外側に位置している」。
そうすると、甲5発明の当該「保持部材」は、本件特許発明1の「連結される前記2つの窓サッシに跨がるように設けられ前記耐火部材の屋外側に配置されて前記方立に取り付けられる連結部材」に相当する。

(オ)甲5発明の「窓部連結構造」は、本件特許発明1の「連窓」に相当する。

(カ)以上を総合すると、本件特許発明1と甲5発明とは、
「互いに隣り合う2つの窓サッシ間に設けられ前記2つの窓サッシが連結される方立と、
前記方立の屋内側に設けられる耐火部材と、
連結される前記2つの窓サッシに跨がるように設けられ前記耐火部材の屋外側に配置されて前記方立に取り付けられる連結部材と、
を有する連窓。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点a)
本件特許発明1が「連結部材に取り付けられ耐火部材が載置される耐火部材載置部材」を有するのに対して、甲5発明はそのような部材を有さない点。

イ.検討
上記相違点aについて検討する。

(ア)上記相違点aに関し、申立人は申立書において次のとおり主張している。
「ア.本件第1発明と甲5とを対比すると、耐火部材載置部材が、前者では、連結部材に取り付けられた耐火部材載置部材であるのに対し、後者では、建物の躯体15である点で、両者は相違する。
しかしながら、耐火部材を、方立に取り付けられた連結部材に載置することは、甲1〜4のように従来周知である。
・・・
ウ.以上のように、耐火部材を、方立に取り付けられた連結部材に載置することは甲1〜4のように従来周知であり、甲5において、耐火部材4Gを、方立に取り付けられた連結部材に載置することは当業者であれば容易に推考しうる設計的事項にすぎない。
よって、本件第1発明は、甲5発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到しえた発明である。」(申立書第42ページ第1行〜下から4行)

(イ)申立人の上記主張について検討する。

a.甲5発明は「耐火部材は、下端面が建物の躯体と当接(接触)」するものであって、「耐火部材」は「建物の躯体と当接(接触)」することによって「建物の躯体」に支持されているものと認められるから、甲5発明において「耐火部材」を支持する手段をさらに設ける技術的必要はない。
そうすると、仮に申立人が主張するように「耐火部材を、方立に取り付けられた連結部材に載置すること」が本件特許出願前に周知であったとしても、甲5発明において「耐火部材は、下端面が建物の躯体と当接(接触)」する構成に代えて「耐火部材が載置される耐火部材載置部材」を採用する動機付けはない。

b.また、甲5発明は「耐火部材は、下端面が建物の躯体と当接(接触)」するとの構成を備えることにより、「枠体と方立との間の空間が耐火部材と躯体との隙間から室内と連通することを防止できるため、室内または室外で火災が発生した際に、枠材と方立の間の空間から室外側または室内側へ炎が浸入することを防止することができる。」(上記「1.(3)ア.(ウ)」)という効果を奏すると認められるところ、甲5発明において「耐火部材」を「耐火部材載置部材」に載置すると、「耐火部材」が「建物の躯体」と接触しないものとなって上記効果が損なわれることになる。

c.そうすると、甲5発明において、上記相違点aに係る本件特許発明1の発明特定事項を備えるものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ.小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲5発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2ないし4
本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えた発明である。
そうすると、上記「(1)」と同様の理由により、本件特許発明2ないし4は、甲5発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 むすび

以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-06-17 
出願番号 P2020-111714
審決分類 P 1 651・ 113- Y (E06B)
P 1 651・ 121- Y (E06B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 前川 慎喜
特許庁審判官 森次 顕
土屋 真理子
登録日 2021-06-07 
登録番号 6894554
権利者 YKK AP株式会社
発明の名称 連窓  
代理人 一色国際特許業務法人  

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