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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A01G
審判 全部申し立て 産業上利用性  A01G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A01G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A01G
管理番号 1386195
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-03-15 
確定日 2022-06-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第6940070号発明「ハウス用防風ネット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6940070号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6940070号(以下「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成29年11月10日に出願され、令和3年9月6日にその特許権の設定登録がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和4年3月15日に特許異議申立人鶴田 春美(以下「申立人」という。)により特許異議申立書(以下「申立書」という。)が提出され、請求項1ないし5に係る発明の特許に対して特許異議の申立てがされた。

第2 本件特許発明

1.本件特許発明
本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明5」といい、合わせて「本件特許発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
織編成されたネット状であり、ハウスに被せて使用されるハウス用防風ネットであって、
基布に複数本の遮光テープが間隔をあけて織り込まれており、
前記遮光テープが、一定幅のテープ状をなし全体が白色で光反射性を有するものであるハウス用防風ネット。
【請求項2】
前記遮光テープが不織布製である
請求項1に記載のハウス用防風ネット。
【請求項3】
前記遮光テープが遮熱性を有するものである
請求項1または請求項2に記載のハウス用防風ネット。
【請求項4】
前記遮光テープが、相互間に隙間をあけて平行に織り込まれた
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のハウス用防風ネット。
【請求項5】
前記基布が、透明のモノフィラメントからなる
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のハウス用防風ネット。

2.申立人による本件特許発明1の分説
申立人は、本件特許発明1を次の構成AないしDに分説している(申立書第4ページ第6〜12行)。

構成A:織編成されたネット状であり、ハウスに被せて使用されるハウス用防風ネットであって、
構成B:基布に複数本の遮光テープが間隔をあけて織り込まれており、
構成C:前記遮光テープが、一定幅のテープ状をなし全体が白色で光反射性を有するものである
構成D:ハウス用防風ネット。

第3 特許異議申立理由の概要

申立人は、本件特許発明1ないし5に対して、証拠として甲第1号証ないし甲第4号証を提出し、概略、次の特許異議申立理由を申し立てている。

(1)サポート要件
本件特許発明1ないし5は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合しない。
したがって、本件特許は、特許法第113条第1項第4号の規定に該当するものであり、取り消されるべきものである。

(2)実施可能要件
本件特許発明1ないし5は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合しない。
したがって、本件特許は、特許法第113条第1項第4号の規定に該当するものであり、取り消されるべきものである。

(3)産業上の利用可能性
本件特許発明1ないし5は、特許法第29条第1項柱書の規定に適合しない。
したがって、本件特許は、特許法第113条第1項第2号の規定に該当するものであり、取り消されるべきものである。

(4)進歩性
本件特許発明1ないし5は、甲第2号証により特許法第29条第2項の規定に該当する。
したがって、本件特許は、特許法第113条第1項第2号の規定に該当するものであり、取り消されるべきものである。

(証拠一覧)
甲第2号証 特開平9−172883号公報
甲第3号証 特許第4227063号公報
甲第4号証 特許第6568045号公報

なお、甲第1号証は、本件特許公報である。

第4 当審の判断

1.サポート要件
(1)申立人の主張
申立人は、サポート要件について、概略、本件特許発明1には、構成A、構成D(上記「第2 2.」参照)を有するハウス用防風ネットをハウスに被せて使用すると台風を防げることのみ規定し、明細書を参酌しても、技術常識を踏まえても、ハウス用防風ネットをハウスに被せて使用すること以外の記載も示唆もなく、甲第3号証、甲第4号証のように、台風からハウスの倒壊を防ぐことができるであろうとの合理的な期待が得られる程度に記載されているとは認められないから、本件特許発明1は、サポート要件(特許法第36条第6項第1号)を欠くと主張している(申立書第5ページ第20行〜第8ページ第12行)。

(2)判断基準
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(3)当審の判断
ア.本件特許明細書には、
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、必要な光の入射を確保できるようにするとともに、被覆材の表面環境を良好に保つことを主な目的とする。」
と記載されているから、本件特許発明の課題は、「必要な光の入射を確保できるようにするとともに、被覆材の表面環境を良好に保つ」ことであると認められる。
また、当該課題は「ハウス用防風ネット」におけるものであるところ、本件特許明細書には「ハウス用防風ネット」について、
「【技術分野】
【0001】
この発明は、台風や強風から農業用ハウスを保護するために用いられるようなハウス用防風ネットに関する。」
と記載されているから、上記課題は、本件特許発明の「ハウス用防風ネット」が「台風や強風から農業用ハウスを保護するために用いられる」ことを前提とするものであると認められる。

イ.本件特許明細書には「台風や強風から農業用ハウスを保護するために用いられる」との事項に関連して、次の記載がある。
「【背景技術】
【0002】
農業用ハウス、特に合成樹脂フィルムを被覆材として用いたいわゆるパイプハウスでは、ハウス表面を構成する被覆材を防風ネットで押さえて被覆材の破れを防ぐことが行われている。」
そうすると、当該記載からは、本件特許明細書でいう「農業用ハウスを保護する」とは「被覆材の破れを防ぐ」ことである。

ウ.また、本件特許明細書の段落【0006】に先行技術文献として記載された特許第4556837号公報には次の記載がある。
「【0002】
従来から、金属パイプ等で構築された骨組の外側に、塩化ビニル系樹脂等で作られた農業用フィルムを被覆展設した農業用ハウスが広く用いられてきた。これら農業用ハウスにおいては、強い風雨により吹き飛ばされないようにフィルムを押さえるハウスバンドが使用されている。かかるハウスバンドとしては、両端部が繊維やワイヤー等で補強されたポリエチレン製成形体等で、幅が10mm〜20mmと狭幅の繊維補強された黒色バンドが知られている(例えば、特許文献1参照)。
・・・
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、かかる課題を解決するため鋭意検討した。その結果、幅が40mm〜250mmで、網状織物の繊維交点部が接着固定されたネット成形体からなり、透光率が80%以上である農業用ハウスバンドによって前記課題が解決されることを知りその知見に基づいて本発明を完成した。・・・」
先行技術文献における当該記載からは、農業用フィルムを被覆展設した農業用ハウスにおいて、強い風雨により吹き飛ばされないようにフィルムを押さえるハウスバンドは、本願出願前に周知の技術であって、先行技術文献に記載された「ネット成形体」からなる「農業用ハウスバンド」も、強い風雨により吹き飛ばされないようにフィルムを押さえるものであることが理解できる。

エ.そうすると、上記「イ.」のとおり、本件特許発明は「被覆材の破れ」が生じ得る程度の「台風や強風」について「農業用ハウスを保護する」ものであり、また、上記「ウ.」のとおり、本件特許明細書には先行技術文献として、「強い風雨により吹き飛ばされないようにフィルムを押さえる」との効果を奏する「ネット成形体」からなる「農業用ハウスバンド」が記載されている。
ここで、前者の「台風や強風」は「被覆材の破れ」が生じ得る程度のものであり、後者の「強い風雨」は、「フィルム」が「吹き飛ばされ」得る程度のものであると解されるから、両者はいずれも被覆材に破損が生じる程度の風雨から農業用ハウスを保護する点で共通する。

オ.そうすると、当業者は、「強い風雨により吹き飛ばされないようにフィルムを押さえるハウスバンド」に係る周知技術に基づき、また、本件特許明細書に先行技術文献として記載された「ネット成形体」からなる「農業用ハウスバンド」のような先行技術を参照することにより、本件特許発明の「ハウス用防風ネット」を「台風や強風から農業用ハウスを保護するために用いられる」ものとし、当該「ハウス用防風ネット」が「必要な光の入射を確保できるようにするとともに、被覆材の表面環境を良好に保つ」という本件特許発明の課題を解決できると認識できるから、本件特許発明の特許請求の範囲の記載は、明細書のサポート要件に適合する。

カ.なお、申立人は、本件特許明細書が台風からハウスの倒壊を防ぐことができるであろうとの合理的な期待が得られる程度に記載されているとは認められない旨主張している(上記「(1)」参照。)。
しかしながら、本件特許発明の「ハウス用防風ネット」は、上記「イ.及びエ.」で検討したとおり、「被覆材の破れを防ぐ」、すなわち、被覆材に破損が生じる程度の風雨から農業用ハウスを保護するものであって、そもそも「台風からハウスの倒壊を防ぐ」ものではない。
そうすると、本件特許発明の「ハウス用防風ネット」が「台風からハウスの倒壊を防ぐ」ものであることを前提とする申立人の主張は採用することができない。

2.実施可能要件
(1)申立人の主張
申立人は、実施可能要件について、概略、構成A、構成D(上記「第2 2.」参照)をも含んだ本件特許発明1は、台風からハウスを防止するために過度な試行錯誤を要する必要が生じると認められるため、実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)を欠くと主張している(申立書第8ページ第13行〜第9ページ第21行)。

(2)判断基準
本件特許発明1ないし5は物の発明であるところ、物の発明の実施とは、その物の生産及び使用等をする行為であるから、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。

(3)当審の判断
ア.上記「1.」での検討を踏まえれば、当業者は、「強い風雨により吹き飛ばされないようにフィルムを押さえる農業用ハウスバンド」に係る周知技術や、本件特許明細書に記載の「強い風雨により吹き飛ばされないようにフィルムを押さえる」「ネット成形体」からなる「農業用ハウスバンド」に係る先行技術文献を参照すること等により、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明の「ハウス用防風ネット」を「台風や強風から農業用ハウスを保護する」ように生産し、使用することができるものと認められる。

イ.よって、本件特許発明に関して、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。

3.産業上の利用可能性
(1)申立人の主張
申立人は、産業上の利用可能性について、概略、構成A、及び構成D(上記「第2 2.」参照)を含む本件特許発明1は、「ハウス用防風ネットをハウスに被せて使用する」という課題解決の手段が明示されているものの、「台風からハウスを保護する」という課題を解決することが明らかに不可能なものであるから、構成A、及び構成Dを含む本件特許発明1は、発明に該当しないものであり、特許法第29条第1項柱書の産業上利用可能の要件を欠くと主張している(申立書第9ページ第22行〜第11ページ第1行)。

(2)当審の判断
上記「1.」で検討したとおり、本件特許発明は、本件特許発明の課題を解決することができるものである。
また、他に本件特許発明が、特許法第29条第1項柱書の要件を充足しないとすべき理由はない。
よって、本件特許発明は、特許法第29条第1項柱書の要件を充足する。

4.進歩性
(1)甲号証
ア.甲第2号証
(ア)本件特許出願前に頒布された甲第2号証には次の記載がある。

a.「【請求項1】 合成樹脂の長繊維フィラメントが高密度かつ無方向に堆積接合された不織布を細幅にスリットしたテープ状糸条を経糸または緯糸の少なくとも一方に使用し、編織成または配列交差してなることを特徴とする遮光ネット。」

b.「【0002】
【従来の技術】従来、果物や花卉などの栽培において、促成栽培や防寒、防霜を目的として、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの合成樹脂シートを外側に被覆した所謂ビニールハウス内栽培が行われている。しかし、この種の合成樹脂シートを被覆したハウスは、昼間の温度上昇が大きすぎる傾向にあり、たとえ低温期であっても農作物の生育適温を超えることがあり、また、ハウス内が密閉されることで外気との交換が少なく炭酸ガスの過不足や多湿状態になり易く農作物の生育を阻害することがあるので、通気のためにシートの裾を巻き上げるといった開放作業が必要となる。
【0003】通気性を有して開放作業の必要のない被覆資材として、寒冷紗、或いはモノフィラメントやフラットヤーンからなる編織布など粗目のネット状物が使用され、これらは、シート内を農作物の生育に適した温度と湿度環境を保つことができ、しかも、ネット状物が直射日光を遮断して適当な光量にすると同時に、ネット状物の目隙部から適当に採光することができるので、温度コントロールの必要な茶樹、軟弱農作物、椎茸、果樹などの高温期における過熱、乾燥を防ぐ目的にまで拡大して多くの農作物の栽培に使用され、更には畜産分野においても遮光ネットとして使用されている状況にある。」

c.「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、合成樹脂の長繊維フィラメントが高密度にかつ無方向に堆積接合された不織布を細幅にスリットしたテープ状糸条を、経糸または緯糸の少なくとも一方に使用し、編織成または配列交差してなることを特徴とする遮光ネットである。このテープ状糸条は白色化して光反射率が大となり、蓄熱性の低い性質を有する。」

d.「【0009】
【発明の実施の形態】本発明では、不織布をスリットしてテープ状とした糸条を、従来の合成樹脂製糸条或いはアルミニウム蒸着フラットヤーンに代替して、編織成などすることによって遮光ネットを構成したものである。
・・・
【0013】この不織布は、長繊維を高密度に堆積接合したものであるから、不透明性で白化度が高いものであるが、光に対する分光特性として、光吸収率5%以下であるものが好ましい。即ち、遮光ネットの構成部材として、光吸収率が5%以下と低いことで、不織布自体が蓄熱することが少なく、遮光ネットで覆われた内部の異常な昇温を抑制できるのである。
・・・
【0016】本発明の遮光ネットは、前述の不織布からなるテープ状糸条を経緯条の全てに用いても良いが、不織布からなるテープ状糸条を主な構成要素として他の糸条と混合したものであっても良い。具体的には、緯糸に不織布からなるテープ状糸条を用い、経糸に通常のモノフィラメントやフラットヤーンを用いて構成されるラッセル編布や絡み織布、通常のモノフィラメントやフラットヤーンを多数本略平行に一定間隔をもって配列した経糸の糸条群と、不織布からなるテープ状糸条を同様に配列した緯糸の糸条群が相互に直交するように重ね合わせて一体化したネット状物などである。」

e.「【0023】実施例3
実施例1に示した不織布から作成した6mm幅のテープ状糸条を経緯糸に用いて約4mm間隔の空隔があくように平織メッシュ織物として実施例3の遮光ネットとした。」

f.上記「b.」からは「合成樹脂シートを被覆したハウス」における課題を解決するために、「遮光ネット」が利用されることが理解できるから、「遮光ネット」は「ハウス」を被覆するものと認められる。

(イ)上記「(ア)a.ないしd.及びf.」を総合すると、甲第2号証には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。

(甲2発明)
「不織布を細幅にスリットしたテープ状糸条を使用し、編織成してなり、ハウスを被覆する遮光ネットであって、
テープ状糸条は白色化して光反射率が大となり、蓄熱性の低い性質を有し、
緯糸に不織布からなるテープ状糸条を用い、経糸にモノフィラメントを用いて構成される織布である
遮光ネット。」

また、上記「(ア)e.」の実施例3に着目すると、甲第2号証には次の技術的事項(以下「甲2技術的事項」という。)が記載されている。

(甲2技術的事項)
「遮光ネットにおいて、
不織布から作成したテープ状糸条を経緯糸に用いて約4mm間隔の空隔があくように平織メッシュ織物とした点。」

(2)判断
ア.本件特許発明1
(ア)対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。

a.甲2発明の「遮光ネット」がネット状であることはその名称からみて自明であるから、甲2発明の「編織成してなり、ハウスを被覆する遮光ネット」と、本件特許発明1の「織編成されたネット状であり、ハウスに被せて使用されるハウス用防風ネット」とは、「織編成されたネット状であり、ハウスに被せて使用されるハウス用ネット」の点で共通する。

b.本件特許発明1の「基布に複数本の遮光テープが間隔をあけて織り込まれており」との事項について検討する。
甲2発明の「不織布を細幅にスリットしたテープ状糸条」は、「白色化して光反射率が大となり、蓄熱性の低い性質を有」するから、遮光性を有することは明らかであって、本件特許発明1の「遮光テープ」に相当する。
一方、本件特許発明1の「基布」は、その名称からみて布であって、一般に経糸と緯糸とで織られたものであると認められる。そして、このような解釈は本件明細書の段落【0014】の「基布13は、経糸13aと緯糸13bにポリエチレン等からなる透明のモノフィラメントを使用して平織したものであり、所定幅の帯状に形成される。」との記載とも整合する。
これに対して、甲2発明は、「緯糸に不織布からなるテープ状糸条を用い、経糸にモノフィラメントを用いて構成される織布」であるから、「不織布からなるテープ状糸条」の「緯糸」と「モノフィラメント」の「経糸」とで織られたものであって、予め経糸と緯糸とで織られた布に「不織布からなるテープ状糸条」が「織り込まれて」いるものであるとは認められない。
そうすると、甲2発明の「緯糸に不織布からなるテープ状糸条を用い、経糸にモノフィラメントを用いて構成される織布である」と、本件特許発明1の「基布に複数本の遮光テープが間隔をあけて織り込まれており」とは、「複数本の遮光テープで織られており」の点で共通する。

c.甲2発明の「テープ状糸条は白色化して光反射率が大となり、蓄熱性の低い性質を有し」は、本件特許発明1の「前記遮光テープが、一定幅のテープ状をなし全体が白色で光反射性を有するものである」に相当する。

d.以上を総合すると、本件特許発明1と甲2発明とは、
「織編成されたネット状であり、ハウスに被せて使用されるハウス用ネットであって、
複数本の遮光テープで織られており、
前記遮光テープが、一定幅のテープ状をなし全体が白色で光反射性を有するものであるハウス用ネット。」
の点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本件特許発明1がハウス用「防風」ネットであるのに対して、甲2発明はその点につき明らかでない点。

(相違点2)
複数本の遮光テープが、本件特許発明1においては「基布に」「間隔をあけて織り込まれて」いるのに対して、甲2発明においてはそのようなものでない点。

(イ)判断
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。

a.甲第2号証には、甲2発明に加えて、「不織布から作成したテープ状糸条を経緯糸に用い」る場合に「約4mm間隔の空隔があくように」すること(甲2技術的事項)が記載されているところ、「緯糸に不織布からなるテープ状糸条を用い」る甲2発明においても、「不織布から作成したテープ状糸条を経緯糸に用い」る場合と同様に、「不織布からなるテープ状糸条」を「約4mm間隔の空隔があくように」することは、当業者が容易になし得たものと認められる。

b.しかしながら、「不織布からなるテープ状糸条」が「基布に」「織り込まれ」る点については、上記「(ア)b.」で検討したとおり、甲第2号証には記載も示唆もない。

c.そうすると、甲2発明において「不織布からなるテープ状糸条」を「基布に」「織り込まれ」るものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。

d.申立人は、申立書において、上記相違点2を含む構成B(上記「第2 2.」参照)について、概略、甲第2号証は、請求項1に記載の通り、不繊布を細幅にスリットしたテープ状糸条を経糸または緯糸の少なくとも一方に使用し、編織成して遮光ネットを得ており、この点は、段落【0009】、【0013】、【0016】、【0023】にも記載されているから、「基布に複数本の遮光テープが織り込まれている」点は甲第2号証の段落【0016】に記載されている旨主張している(申立書第11ページ第13行〜第12ページ第8行)。
しかしながら、甲第2号証に記載された「テープ状糸条を経糸または緯糸の少なくとも一方に使用し、編織成」することが、本件特許発明1の「基布に」「織り込まれ」ることに相当するものではないことは、上記「(ア)b.」で説示したとおりであって、申立人の上記主張は採用することができない。

e.なお、甲第3号証及び甲第4号証は、本件特許発明がサポート要件及び実施可能要件を充足しないことを示すために提示されたものであって(申立書第6ページ第15行〜第7ページ下から4行、第8ページ最下行〜第9ページ第5行)、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成については、記載も示唆もない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ.本件特許発明2ないし5
本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えた発明である。
そうすると、本件特許発明2ないし5は、上記「ア.」と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 むすび

以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許発明1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-06-17 
出願番号 P2017-217522
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A01G)
P 1 651・ 536- Y (A01G)
P 1 651・ 121- Y (A01G)
P 1 651・ 14- Y (A01G)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 住田 秀弘
特許庁審判官 森次 顕
有家 秀郎
登録日 2021-09-06 
登録番号 6940070
権利者 日本ワイドクロス株式会社 株式会社興農園
発明の名称 ハウス用防風ネット  
代理人 永田 良昭  
代理人 永田 元昭  
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