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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A23C 審判 全部申し立て 2項進歩性 A23C |
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管理番号 | 1386203 |
総通号数 | 7 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-07-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-03-28 |
確定日 | 2022-07-12 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6941485号発明「食品内包用チーズソース」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6941485号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6941485号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成29年6月9日を出願日とする出願であって、令和3年9月8日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月29日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和4年3月28日に特許異議申立人 落合克弘(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 原料チーズ、安定化剤、並びに水を含有する、食品内包用チーズソースであって、 安定化剤が、ウエランガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、及びιカラギナンからなる群から選択される少なくとも1種以上を含み、 安定化剤の含有量が、チーズソースの全重量に対して0.1〜1.0重量%であり、 (1)円形の金型を用いて10gのチーズソースを直径90mmのろ紙の中央部に配置し、 (2)チーズソースを配置したろ紙を直径90mmのガラスシャーレに配置し、 (3)1mlのイオン交換水をろ紙へ滴下し、 (4)ガラスシャーレに蓋をしてエアオーブンにて90℃、10分間加熱し、加熱後の外観を観察し、 (5)加熱後のチーズソースの最長となる軸の長さを測定し、 (6)ろ紙の外周からチーズソースまでの最も近い位置までの距離を測定する 耐熱保形性試験における、最長の軸の長さが40〜60mmであり、ろ紙の外周からチーズソースまでの最小距離が10〜25mmであり、加熱後のチーズソースにオイルオフが認められない、 チーズソース。 【請求項2】 食品が、加熱処理用の食品である、請求項1に記載のチーズソース。 【請求項3】 チーズソースの水分含有量が、チーズソースの全重量に対して40〜56重量%である、請求項1又は2に記載のチーズソース。 【請求項4】 安定化剤の含有量が、チーズソースの全重量に対して0.1〜0.4重量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のチーズソース。 【請求項5】 原料チーズの含有量が、チーズソースの全重量に対して40〜80重量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のチーズソース。」 第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和4年3月28日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1−1(甲第1号証に基づく新規性) 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由1−2(甲第3号証に基づく新規性) 本件特許の請求項1、2及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 申立理由1−3(甲第4号証に基づく新規性) 本件特許の請求項1、2及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 4 申立理由2−1(甲第1号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証などに記載の技術常識に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 5 申立理由2−2(甲第3号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1、2及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明及び甲第2号証などに記載の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 6 申立理由2−3(甲第4号証に基づく進歩性) 本件特許の請求項1、2及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明及び甲第2号証などに記載の技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 証拠方法 甲第1号証:特開2016−189763号公報 甲第2号証:特開2010−46044号公報 甲第3号証:特開平10−117683号公報 甲第4号証:特開昭63−74450号公報 甲第5号証:Rakuten【ヤヨイ】業務用 やわらかチーズハンバーグ120 1袋(10個入)(1200g)【冷凍食品惣菜総菜】【re_26] URL:https://review.rakuten.co.jp/item/l/201731_10001846/1.1/ なお、証拠の表記は、おおむね特許異議申立書の記載に従った。 以下、順に「甲1」のようにいう。 第4 当審の判断 1 主な証拠の記載事項等 (1)甲1に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項 甲1には、「加熱耐性を有するソース状水中油型乳化物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。(下線については当審において付与した。以下同じ。) ・「【0002】 製菓・製パン用フィリング、惣菜用フィリング等の水中油型乳化物は、例えばペースト状やソース状など様々な形態とすることが可能であり、バラエティーにあふれた品揃えで消費者の多様な嗜好に対応している。」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明の目的は、加熱殺菌や再加熱による水中油型乳化物の乳化状態の破壊を防止し、かつ滑らかなソース状の物性を加熱後も維持できるような、ソース状水中油型乳化物を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、水中油型乳化物に配合される各原材料を調整することで、上記目的が達成されることを見出した。より具体的には、水48〜68重量%、油脂20〜42重量%、タンパク質2〜9重量%、澱粉、ゲル化剤及び/又は増粘剤、及び乳化剤を含有するソース状水中油型乳化物が、再加熱しても流動性を維持し、離水・増粘を起こさないという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。 【0010】 すなわち、本発明は、 (1)水48〜68重量%、油脂20〜42重量%、タンパク質2〜9重量%、澱粉、ゲル化剤及び/又は増粘剤、及び乳化剤を含有することを特徴とする加熱耐性を有するソース状水中油型乳化物、 (2)ゲル化剤及び/又は増粘剤が、グァーガム、スクシノグリカン、ローカストビーンガム、タマリンドガム、ジェランガム、キサンタンガム及びカラギナンからなる群から選ばれる1種以上である(1)記載の加熱耐性を有するソース状水中油型乳化物、 (3)乳化剤が、酵素処理レシチン及び/又はグリセリン有機酸エステルである(1)又は(2)記載の加熱耐性を有するソース状水中油型乳化物、 である。」 ・「【実施例】 ・・・ 【実施例1】 【0030】 パーム油低融点画分35部、ナチュラルチーズ12部、乳清タンパク質(ホエイプロテインコンセントレート)3部、オクテニルコハク酸澱粉0.8部、ヒドロキシプロピル澱粉0.2部、食塩1部、水48部、pH調整剤(クエン酸ナトリウムとして0.6部)、増粘多糖類0.5部、乳化剤0.25部を、50〜55℃で10分間調合し、さらに120Kg/cm2の圧力下で均質化した。均質化後、掻きとり式連続熱交換機に通し、80〜90℃で加熱殺菌し、45℃まで冷却後、充填し、冷蔵庫でエージングを行った。 【0031】 得られた乳化食品の水含量は52%、油脂含量は38%、蛋白質含量は5%であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが18g/19.6mm2(直径3cm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、不動工業株式会社製)であり、ソース状の水中油型乳化物が得られた。 【実施例2】 【0032】 パーム油低融点画分18部、ナチュラルチーズ12部、ホエイプロテインコンセントレート6部、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉2部、食塩1部、水61部、pH調整剤(クエン酸ナトリウムとして0.6部)、増粘多糖類0.6部、乳化剤0.25部を、50〜55℃で10分間調合し、さらに120Kg/cm2の圧力下で均質化した。均質化後、掻きとり式連続熱交換機に通し、80〜90℃で加熱殺菌し、45℃まで冷却後、充填し、冷蔵庫でエージングを行った。 【0033】 得られた乳化食品の水含量は65%、油脂含量は22%、蛋白質含量は8%であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが5g/19.6mm2(直径3cm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、不動工業株式会社製)であり、ソース状の水中油型乳化物が得られた。 【実施例3】 【0034】 パーム油低融点画分31部、ナチュラルチーズ12部、ホエイプロテインコンセントレート1.5部、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉0.8部、ヒドロキシプロピル澱粉0.2部、食塩1部、水53.5部、pH調整剤(クエン酸ナトリウムとして0.6部)、増粘多糖類0.5部、乳化剤0.25部を、50〜55℃で10分間調合し、さらに120Kg/cm2の圧力下で均質化した。均質化後、掻きとり式連続熱交換機に通し、80〜90℃で加熱殺菌し、45℃まで冷却後、充填し、冷蔵庫でエージングを行った。 【0035】 得られた乳化食品の水含量は58%、油脂含量は34%、蛋白質含量は4%であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが6g/19.6mm2(直径3cm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、不動工業株式会社製)であり、ソース状の水中油型乳化物が得られた。 【実施例4】 【0036】 パーム油低融点画分31部、ナチュラルチーズ12部、ホエイプロテインコンセントレート5部、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉0.8部、ヒドロキシプロピル澱粉0.2部、食塩1部、水50部、pH調整剤(クエン酸ナトリウムとして0.6部)、増粘多糖類0.5部、乳化剤0.25部を、50〜55℃で10分間調合し、さらに120Kg/cm2の圧力下で均質化した。均質化後、掻きとり式連続熱交換機に通し、80〜90℃で加熱殺菌し、45℃まで冷却後、充填し、冷蔵庫でエージングを行った。 【0037】 得られた乳化食品の水含量は54%、油脂含量は36%、蛋白質含量は7%であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが8g/19.6mm2(直径3cm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、不動工業株式会社製)であり、ソース状の水中油型乳化物が得られた。 【実施例5】 【0038】 パーム油低融点画分31部、ナチュラルチーズ12部、ホエイプロテインコンセントレート3部、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉0.8部、ヒドロキシプロピル澱粉0.2部、食塩1部、水52部、pH調整剤(クエン酸ナトリウムとして0.6部)、増粘多糖類0.5部、乳化剤0.25部を、50〜55℃で10分間調合し、さらに120Kg/cm2の圧力下で均質化した。均質化後、掻きとり式連続熱交換機に通し、80〜90℃で加熱殺菌し、45℃まで冷却後、充填し、冷蔵庫でエージングを行った。 【0039】 得られた乳化食品の水含量は56%、油脂含量は34%、蛋白質含量は5%であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが6g/19.6mm2(直径3cm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、不動工業株式会社製)であり、ソース状の水中油型乳化物が得られた。 ・・・ 【実施例7】 【0042】 パーム油低融点画分27部、ナチュラルチーズ12部、ホエイプロテインコンセントレート3部、リン酸架橋澱粉0.5部、食塩1部、水56.5部、pH調整剤(クエン酸ナトリウムとして0.6部)、増粘多糖類0.5部、乳化剤0.25部を、50〜55℃で10分間調合し、さらに120Kg/cm2の圧力下で均質化した。均質化後、掻きとり式連続熱交換機に通し、80〜90℃で加熱殺菌し、45℃まで冷却後、充填し、冷蔵庫でエージングを行った。 【0043】 得られた乳化食品の水含量は60%、油脂含量は31%、蛋白質含量は5%であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが20g/19.6mm2(直径3cm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、不動工業株式会社製)であり、ソース状の水中油型乳化物が得られた。 【実施例8】 【0044】 パーム油低融点画分31部、ナチュラルチーズ12部、ホエイプロテインコンセントレート1.5部、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉0.4部、食塩1部、水54部、pH調整剤(クエン酸ナトリウムとして0.6部)、増粘多糖類0.3部、乳化剤0.25部を、50〜55℃で10分間調合し、さらに120Kg/cm2の圧力下で均質化した。均質化後、掻きとり式連続熱交換機に通し、80〜90℃で加熱殺菌し、45℃まで冷却後、充填し、冷蔵庫でエージングを行った。 【0045】 得られた乳化食品の水含量は58%、油脂含量は34%、蛋白質含量は4%であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが60g/19.6mm2(直径3cm円形プランジャー、テーブルスピード50mm/分、不動工業株式会社製)であり、ソース状の水中油型乳化物が得られた。」 ・「【0062】 」 イ 甲1に記載された発明 甲1には、実施例1としてソース状の水中油型乳化物が記載されており、表1の記載内容も合わせみれば、下記の甲1実施例1発明が記載されていると認める。 <甲1実施例1発明> 「パーム油低融点画分35部、ナチュラルチーズ12部、乳清タンパク質(ホエイプロテインコンセントレート)3部、オクテニルコハク酸澱粉0.8部、ヒドロキシプロピル澱粉0.2部、食塩1部、水48部、pH調整剤(クエン酸ナトリウムとして0.6部)、ローカストビーンガム0.5部、酸素処理レシチン0.05部、グリセリンアセチルと酒石酸脂肪酸エステル0.2部を、50〜55℃で10分間調合し、さらに120Kg/cm2の圧力下で均質化し、均質化後、掻きとり式連続熱交換機に通し、80〜90℃で加熱殺菌し、45℃まで冷却後、充填し、冷蔵庫でエージングを行って得られた乳化食品であって、その水含量は52%、油脂含量は38%、蛋白質含量は5%であり、5℃におけるレオメーター測定値による硬さが18g/19.6mm2である、ソース状の水中油型乳化物。」 (2)甲3に記載された事項等 ア 甲3に記載された事項 甲3には、「常温流通可能なチーズソースの製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、数字に関しては、半角数字も含めて全て全角数字として記載した。 ・「【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、乳製品の風味を壊すレトルト殺菌や他の高温加熱殺菌処理、乾燥処理等を行なわず、チーズ本来の風味豊かな味を活かした乳化の安定したペースト状の常温流通可能なチーズソースを製造する方法を提案するものである。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明は、乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを使用することにより、油分離の少ない乳化の安定した常温流通可能なチーズソースを製造する方法に関するものである。」 ・「【0031】実施例5(たらこ入りチーズソース) 乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを使用し、以下の組成からなるたらこ入り生風味ペーストソースを試作した。包装形態は、アルミレトルトパウチに500g充填し、中心温度が85℃となるように後殺菌を実施した。 焼きたらこ20.6部 プロセスチーズ17.2部 白絞油17.2部 濃縮乳13.8部 糖アルコール10.3部 旨味添加物9.4部 バター6.9部 脱脂粉乳2.1部 食塩1.5部 香辛料0.5部 乳化剤0.3部 増粘剤(キサンタンガム)0.2部 合計100.0部 水分35.3% 脂質30.1% 塩分6.2% 水分活性0.840 【0032】このソース10gをおにぎり100gの具材にして試食した。その結果、チーズ,乳製品の風味が良好でタラコの風味によくマッチした味で高い評価が得られた。」 イ 甲3に記載された発明 甲3には、実施例5として、おにぎりの具材として使用されるたらこ入りチーズソースが記載されているから、下記の甲3実施例5発明が記載されていると認める。 <甲3実施例5発明> 「乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを使用し、以下の組成からなるたらこ入りチーズソース。 焼きたらこ 20.6部 プロセスチーズ 17.2部 白絞油 17.2部 濃縮乳 13.8部 糖アルコール 10.3部 旨味添加物 9.4部 バター 6.9部 脱脂粉乳 2.1部 食塩 1.5部 香辛料 0.5部 乳化剤 0.3部 増粘剤(キサンタンガム) 0.2部 合計 100.0部 水分 35.3% 脂質 30.1% 塩分 6.2% 水分活性 0.840」 (3)甲4に記載された事項等 ア 甲4に記載された事項 甲4には、「チーズを主材とした製菓・製パン用のフイリング材の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、半角数字は全角数字として記している。 ・「本発明は、チーズを製菓・製パン用フイリング材として有効に利用するためになされたものであつて、加熱処理時に保形性が失われることがなく、かつ表面に被膜を形成せず、したがつて、膨張による飛散を伴なわない保水性の良好な、チーズを主材とする上記フイリング材を製造するための方法を提供することを課題とする。」(第2頁右上欄第7〜13行) ・「本発明の構成上の特徴は、ナチユラルチーズに、α澱粉及びアルブミンと溶融塩を添加、混合して加熱溶融した後、冷却することにより、製菓・製パン用フイリング材を得ることにある。 ここでいう“製菓・製パン用フイリング材”とは、いわゆる中種を主な対象とするものであるが、この他に製菓用のトツピングとしての適用も包含するものである。」(第2頁右上欄第16〜同頁左下欄第4行) ・「本発明においては、上記加熱溶融に当つて、上記各物質の添加に加えて、ソルビツト、天然ガム類等を更に原料チーズに添加して、得られるフイリング材の保水性を一そう高めることもできる。 なお、これらの物質は原料チーズ100重量部に対してソルビツトで10〜30重量部、好ましくは15重量部、ガム類で0.5〜1.5重量部、好ましくは1重量部をそれぞれ添加するとよい。 また、上記加熱溶融にあたっては、最終的に得られるフイリング材製品の水分が45%〜65%、好ましくは50%程度になるように加水する。」(第2頁右下欄第17〜第3頁左上欄第8行) ・「実施例 下記配合によりチーズを主材とする混合物を調製した。 ナチュラルチーズ100(kg) α澱粉20 卵白アルブミン0.8 ソルビット15 カラギナン0.5 ローガストビンガム0.5 ピロリン酸ナトリウム ―| |―溶解塩2.5 メタリン酸ナトリウム ―| 水80 上記混合物をステファン乳化釜に仕込んで温度が85〜90℃に達するまで加熱溶融した後、冷却してチーズ様のフイリング材219.3gを得た。」(第4頁右上欄第14行〜同頁左下欄第9行) イ 甲4に記載された発明 甲4には、実施例として、チーズ様のフイリング材が記載されているから、下記の甲4発明が記載されていると認める。 <甲4発明> 「下記配合によりチーズを主材とする混合物を調製し、ステファン乳化釜に仕込んで温度が85〜90℃に達するまで加熱溶融した後、冷却して得たチーズ様のフイリング材。 ナチュラルチーズ 100(kg) α澱粉 20 卵白アルブミン 0.8 ソルビット 15 カラギナン 0.5 ローガストビンガム 0.5 ピロリン酸ナトリウム及びメタリン酸ナトリウムである溶解塩 2.5 水 80」 (4)甲2に記載された事項 甲2には、「ハイドロコロイド含有食品組成物及びそれを用いた食品の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 上述の料理の上にかけるソース及びグレーズなどを、室温で取り扱いやすい形態にして保存しておき、それを必要な時に食品の調理に用いることができれば、調理に要する作業時間を短くでき、かつ調理のための手順を簡単にすることができる。また、そのような方法は、料理すなわち食品ためのソース及びグレーズへの応用に限られることなく、加熱時に流動可能な状態であることが好ましい食品又は食品材料にも応用できる。さらに、複数回分の使用量のソース又はグレーズなどを予め調製しておき、それを1回分の使用量に分けて、取り扱い易い状態に保存しておくことができれば、調理作業上便利である。そのためには、加熱時には融解して流動性を有するが、冷却した場合には流動せずに付与された形状を室温で保つことができ、再び加熱した場合には融解して再度流動化するソース又はグレーズがあれば、調理の作業の効率化及び調理時間の短縮などを図ることができて便利である。」 ・「【0010】 本発明者らは、種々検討した結果、加熱された状態で流動性を有するソース及びグレーズなどの食品にハイドロコロイドを添加することによって、冷却したときに付与された所定の形状を25℃において保つことができ、しかも加熱した場合には再度融解して流動可能となるようにした第一の食品組成物を調製しておき、この第一の食品組成物を、調理済み又は半調理済み又は未調理の第二の食品及び/又は食品材料とともに加熱調理して、最終的に完成された食品を製造することによって、調理に手間がかかるソース又はグレーズなどを用いた食品が非常に簡便に製造できることを見出し、本発明を完成させたものである。 【課題を解決するための手段】 【0011】 すなわち、本発明は、ハイドロコロイドが添加されていることによって、付与された所定の形状を25℃において保つことができ、かつ加熱により融解可能である第一の食品組成物を、調理済又は半調理済み又は未調理の第二の食品及び/又は食品材料とともに加熱調理する工程を含む、食品の製造方法を提供するものである。」 ・「【0015】 さらに、本発明に用いるハイドロコロイドは、ペクチン、カラギーナン、及びキサンタンからなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。」 ・「【0028】 第一の食品組成物が、付与された所定の形状を25℃において保つことができ、かつ加熱して融解したときには所望の質感が得られるようにするための、第一の食品組成物に含まれる水及び水溶性固形分の量に対して用いるハイドロコロイドの好ましい量は、当業者であれば極めて容易に決定することができる。一般的には、第一の食品組成物の水及び水溶性固形分の量に対するハイドロコロイドの割合が少ないと、得られる食品組成物は、加熱して融解したときに低粘度で流れやすくなり、かつ25℃における固さは柔らかくなる。一方、第一の食品組成物の水及び水溶性固形分の量に対するハイドロコロイドの割合を多くすると、得られる食品組成物は、加熱して融解したときに高粘度であり、25℃における固さは硬くなる。第一の食品組成物が、付与された所定の形状を25℃で保つことができ、かつ、その食品組成物を加熱して融解したときに所望の質感が得られる量のハイドロコロイドを用いることが好ましい。一般的には、溶融したときに所望の質感を得るためには、ハイドロコロイドは、第一の食品組成物に含まれる水に対して0.01〜20質量%で用いることが好ましく、0.01%〜15質量%の量で用いることがさらに好ましく、0.3〜10質量%の量で用いることが特に好ましい。また、第一の食品組成物に含まれる水溶性固形分の総量(ハイドロコロイドを含む)に対して、ハイドロコロイドの量が0.01〜10質量%であることが好ましく、0.01〜2質量%であることがさらに好ましい。しかし、第一の食品組成物に添加するハイドロコロイドの量はここに記載した量に限定されず、所望の量を用いることができる。」 ・「【0032】 第一の食品組成物がソース又はグレーズなどであり、加熱されて融解した後でも第二の食品の上から流れ去らずにその多くが残っているためには、40〜70%のDE値を有するペクチン、特に40〜50%のDE値を有するペクチンと、0〜35%のDE値を有するペクチンとを併用することが好ましい。0〜35%のDE値のペクチンを用いることによって第一の食品組成物中の水不溶性固形物が良好な分散状態を保つことができ、加熱されて融解された第一の食品組成物が第二の食品上に残りやすいという効果が得られる。また、40〜70%のDE値、特に40〜50%のDE値を有するペクチンを0〜35%のDE値のペクチンと併用することによって、第一の食品組成物が加熱されて融解したときに均一に溶けて、得られた溶けた状態の食品組成物は滑らかな質感をもち、しかも流動性と第二の食品への付着性のバランスにも優れているという効果を得ることができる。」 2 申立理由1−1及び申立理由2−1(甲1に基づく新規性・進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1実施例1発明を対比する。 甲1実施例1発明の「ナチュラルチーズ」、「ローカストビーンガム」は、それぞれ、本件特許発明1における「原料チーズ」、「安定化剤」に相当する。 甲1実施例1発明の「ソーズ状の水中油型乳化物」の主成分は「パーム油低融点画分」の35部(ナチュラルチーズは12部)であるから、本件特許発明1の「チーズソース」とは、チーズを含むソース状組成物である限りで一致する。 そうすると、本件特許発明1と甲1実施例1発明とは 「原料チーズ、安定化剤、並びに水を含有する、チーズを含むソース状組成物であって、 安定化剤が、ウエランガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、及びιカラギナンからなる群から選択される少なくとも1種以上を含み、 安定化剤の含有量が、チーズソースの全重量に対して0.1〜1.0重量%である、 チーズを含むソース状組成物。」 である点で一致し、以下の点で一応相違する。 <相違点1−1> 「チーズを含むソース状組成物」に関し、本件特許発明1は「食品内包用チーズソース」と特定するのに対し、甲1実施例1発明は、このような特定はない点 <相違点1−2> 「チーズを含むソース状組成物」に関し、本件特許発明1は、 「(1)円形の金型を用いて10gのチーズソースを直径90mmのろ紙の中央部に配置し、 (2)チーズソースを配置したろ紙を直径90mmのガラスシャーレに配置し、 (3)1mlのイオン交換水をろ紙へ滴下し、 (4)ガラスシャーレに蓋をしてエアオーブンにて90℃、10分間加熱し、加熱後の外観を観察し、 (5)加熱後のチーズソースの最長となる軸の長さを測定し、 (6)ろ紙の外周からチーズソースまでの最も近い位置までの距離を測定する 耐熱保形性試験における、最長の軸の長さが40〜60mmであり、ろ紙の外周からチーズソースまでの最小距離が10〜25mmであり、加熱後のチーズソースにオイルオフが認められない」ものと特定するのに対し、甲1実施例1発明は、このような特定がない点 イ 判断 まず、新規性について判断する。 ・相違点1−1について 甲1実施例1発明の「ソース状水中油型乳化物」におけるチーズの含有量は12部で水以外の最も多い原料はパーム油低融点画分の35部であるから、本件特許発明1でいうチーズを主原料とするチーズ含有食品(段落【0015】)である「チーズソース」とはいえない。 よって、相違点1−1は、実質上の相違点である。 ・相違点1−2について 仮に、甲1実施例1発明の「ソース状水中油型乳化物」が本件特許発明1の「チーズソース」に相当するといえるとしても、甲1実施例1発明の「ソース状水中油型乳化物」が、相違点1−2の発明特定事項を満たしている蓋然性が高いといえる理由がない。また、特許異議申立人から、甲1実施例1発明のソース状水中油型乳化物が、相違点1−2の発明特定事項を満たしているとの証拠も示されていない。 よって、相違点1−2も実質上の相違点である。 そうすると、本件特許発明1は、甲1実施例1発明、すなわち、甲1に記載された発明であるとはいえない。 次に、進歩性について検討する。 事案に鑑み、相違点1−2から検討する。 相違点1−2に係る本件特許発明1の発明特定事項を開示する文献は提示されておらず、当業者において、相違点1−2に係る発明特定事項が周知であったものともいえない。 そして、甲1実施例1発明のソース状水中油型乳化物において、相違点1−2に係る本件特許発明1の発明特定事項とする動機もない。 してみれば、甲1実施例1発明において、相違点1−2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者といえども容易に想到し得たことではない。 すると、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1実施例1発明、すなわち、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)特許異議申立人の主な主張の検討 特許異議申立人は、申立理由2−1に関して概略以下のような主張をしている。 甲1記載の実施例のソース状水中油型乳化物(チーズソース)が各種惣菜などのフィリング材として利用することは、ごく普通のことであり、その場合に要求される物性として、常温での取り扱いが容易で、加熱しても食品から流出しないという物性は、甲2の記載(特に下線部分)に示されるように従来からよく知られた事項であり、このような物性を得るために、組成の量や添加物の量を調整することも常套手段である。してみれば、甲1に実施例として記載されるチーズソースを各種惣菜などのフィリング材として利用するに当たり、甲5に見られるような「ハンバーグ等に内包して加熱した際に適度に形が残りつつも、ナチュラルチーズのようにとろけ出す」ような物性とすることは、当業者であれば容易になし得たことであり、また、そのような物性のチーズソースであれば、本件特許発明1の相違点1−2を満たすはずであるから、本件特許発明1は、甲1に記載された発明に、甲2などに記載される従来技術に基づけば、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 上記主張について検討する。 まず、上記相違点1−1での検討のとおり、甲1のソース状水中油型乳化物が本件特許発明のチーズソースに相当しないことからその前提が誤りである。また、仮に、「チーズソース」に相当するとしても、ハンバーグ等に内包して加熱した際に適度に形が残りつつも、ナチュラルチーズのようにとろけ出すような物性であれば、相違点1−2を満たすという証拠もない。よって、上記特許異議申立人の主張は失当であり、採用できない。 (3)本件特許発明2ないし4について 本件特許発明2ないし4は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1実施例1発明、すなわち、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものでもない。 (4)まとめ よって、申立理由1−1及び申立理由2−1には理由がない。 3 申立理由1−2及び申立理由2−2(甲3に基づく新規性・進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲3実施例5発明を対比する。 甲3実施例5発明の「プロセスチーズ」、「キサンタンガム」は、それぞれ、本件特許発明1における「原料チーズ」、「安定化剤」に相当する。 甲3実施例5発明の「たらこ入りチーズソース」は、おにぎりの具材として利用されるものであるから「食品内包用」といえるが、その主成分は「焼きたらこ」の20.6部(プロセスチーズは17.2部)であるから、本件特許発明1の「チーズソース」とは、チーズを含むソース状組成物である限りで一致する。 そうすると、本件特許発明1と甲3実施例5発明とは 「原料チーズ、安定化剤、並びに水を含有する、食品内包用のチーズを含むソース状組成物であって、 安定化剤が、ウエランガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、及びιカラギナンからなる群から選択される少なくとも1種以上を含み、 安定化剤の含有量が、チーズソースの全重量に対して0.1〜1.0重量%である、 チーズを含むソース状組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3−1> 「食品内包用のチーズを含むソース状組成物」に関し、本件特許発明1は「チーズソース」と特定するのに対し、甲3実施例5発明は、「たらこ入りチーズソース」である点 <相違点3−2> 「食品内包用のチーズを含むソース状組成物」に関し、本件特許発明1は、 「(1)円形の金型を用いて10gのチーズソースを直径90mmのろ紙の中央部に配置し、 (2)チーズソースを配置したろ紙を直径90mmのガラスシャーレに配置し、 (3)1mlのイオン交換水をろ紙へ滴下し、 (4)ガラスシャーレに蓋をしてエアオーブンにて90℃、10分間加熱し、加熱後の外観を観察し、 (5)加熱後のチーズソースの最長となる軸の長さを測定し、 (6)ろ紙の外周からチーズソースまでの最も近い位置までの距離を測定する 耐熱保形性試験における、最長の軸の長さが40〜60mmであり、ろ紙の外周からチーズソースまでの最小距離が10〜25mmであり、加熱後のチーズソースにオイルオフが認められない」ものと特定するのに対し、甲3実施例5発明は、このような特定がない点 イ 判断 まず、新規性について検討する。 ・相違点3−1について 「たらこ入りチーズソース」におけるチーズの含有量は17.2部で水以外の最も多い原料は焼きたらこの20.6部であるから、本件特許発明1でいうチーズを主原料とするチーズ含有食品(段落【0015】)である「チーズソース」とはいえない。 よって、相違点3−1は実質上の相違点である。 ・相違点3−2について 仮に、「たらこ入りチーズソース」が本件特許発明1の「チーズソース」に相当するといえるとしても、おにぎりに内包される甲3実施例5発明の「たらこ入りチーズソース」が、相違点3−2の発明特定事項を満たしている蓋然性が高いといえる理由がない。また、特許異議申立人から、甲3実施例5発明の「たらこ入りチーズソース」が、相違点3−2の発明特定事項を満たしているとの証拠も示されていない。 よって、相違点3−2も実質上の相違点である。 そうすると、本件特許発明1は、甲3実施例5発明、すなわち、甲3に記載された発明であるとはいえない。 次に、進歩性について検討する。 事案に鑑み、相違点3−2から検討する。 相違点3−2に係る本件特許発明1の発明特定事項を開示する文献は提示されておらず、当業者において、相違点3−2に係る発明特定事項が周知であったものともいえない。 そして、甲3実施例5発明の「たらこ入りチーズソース」において、相違点3−2に係る本件特許発明1の発明特定事項とする動機もない。 してみれば、甲3実施例5発明において、相違点3−2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者といえども容易に想到し得たことではない。 したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲3実施例5発明、すなわち、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件特許発明2及び4について 本件特許発明2及び4は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に、甲3実施例5発明、すなわち、甲3に記載された発明でないし、甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものでもない。 (3)まとめ よって、申立理由1−2及び申立理由2−2には理由がない。 4 申立理由1−3及び申立理由2−3(甲4に基づく新規性・進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲4発明を対比する。 甲4発明の「ナチュラルチーズ」、「ローガストビンガム」は、それぞれ、本件特許発明1における「原料チーズ」、「安定化剤」に相当する。 甲4発明の「チーズ様のフイリング材」は、甲4の原材料からみて、本件特許発明1の「食品内包用のチーズソース」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と甲4発明とは 「原料チーズ、安定化剤、並びに水を含有する、食品内包用チーズソースであって、 安定化剤が、ウエランガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、及びιカラギナンからなる群から選択される少なくとも1種以上を含み、 安定化剤の含有量が、チーズソースの全重量に対して0.1〜1.0重量%である、 チーズソース。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点4−1> 「食品内包用のチーズソース」に関し、本件特許発明1は、 「(1)円形の金型を用いて10gのチーズソースを直径90mmのろ紙の中央部に配置し、 (2)チーズソースを配置したろ紙を直径90mmのガラスシャーレに配置し、 (3)1mlのイオン交換水をろ紙へ滴下し、 (4)ガラスシャーレに蓋をしてエアオーブンにて90℃、10分間加熱し、加熱後の外観を観察し、 (5)加熱後のチーズソースの最長となる軸の長さを測定し、 (6)ろ紙の外周からチーズソースまでの最も近い位置までの距離を測定する 耐熱保形性試験における、最長の軸の長さが40〜60mmであり、ろ紙の外周からチーズソースまでの最小距離が10〜25mmであり、加熱後のチーズソースにオイルオフが認められない」ものと特定するのに対し、甲4発明は、このような特定がない点 イ 判断 ・相違点4−1について まず、新規性について検討する。 甲4発明のチーズ様のフイリング材が、相違点4−1の発明特定事項を満たしている蓋然性が高いといえる理由がない。また、特許異議申立人から、甲4発明のチーズ様のフイリング材が、相違点4−1の発明特定事項を満たしているとの証拠も示されていない。 そうすると、相違点4−1は実質上の相違点であるから、本件特許発明1は、甲4発明、すなわち、甲4に記載された発明であるとはいえない。 次に、進歩性について検討する。 相違点4−1に係る本件特許発明1の発明特定事項を開示する文献は提示されておらず、当業者において、相違点4−1に係る発明特定事項が周知であったものともいえない。 そして、甲4発明のチーズ様のフイリング材において、相違点4−1に係る本件特許発明1の発明特定事項とする動機もない。 してみれば、甲4発明において、相違点4−1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは当業者といえども容易に想到し得たことではない。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は、甲4発明、すなわち甲4に記載された発明であるとはいえないし、甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件特許発明2及び5について 本件特許発明2及び5は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件特許発明1と同様に、甲4発明、すなわち、甲4に記載された発明でないし、甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものでもない。 (3)まとめ よって、申立理由1−3及び申立理由2−3には理由がない。 第5 むすび 上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2022-06-30 |
出願番号 | P2017-114500 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
Y
(A23C)
P 1 651・ 121- Y (A23C) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
植前 充司 大島 祥吾 |
登録日 | 2021-09-08 |
登録番号 | 6941485 |
権利者 | 株式会社明治 |
発明の名称 | 食品内包用チーズソース |
代理人 | 木元 克輔 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |