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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G03B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03B
管理番号 1386762
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-02-19 
確定日 2022-03-08 
事件の表示 特願2018−501733「反射型スクリーン及び反射型スクリーン用シート」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月31日国際公開、WO2017/146093、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)2月22日を国際出願日とする日本語特許出願であって(優先権主張2016年(平成28年)2月25日)、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和2年 7月17日付け:拒絶理由通知書
同年 9月23日 :手続補正書、意見書の提出
同年12月 8日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年12月15日 :原査定の謄本の送達)
令和3年 2月19日 :審判請求書の提出
令和3年10月28日付け:拒絶理由通知書
令和3年12月22日 :手続補正書、意見書の提出


第2 本願発明
本願の請求項1〜5に係る発明(以下、それぞれ請求項の番号に従って「本願発明1」などという。)は、令和3年12月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1〜5の記載は、次のとおりである。

「 【請求項1】
投射光により画像を表示する反射型スクリーンであって、
透明基板と、前記透明基板上に、直接接して設けられた可視光を吸収する光吸収層と、前記光吸収層の上に、直接接して設けられた前記投射光を散乱させる散乱層とを有し、
前記光吸収層が、可視光に対して30〜90%の透過率を有し、且つ金属薄膜からなる層であり、
前記散乱層がダイヤモンド粒子からなる光散乱体を含有することを特徴とする反射型スクリーン。
【請求項2】
請求項1に記載の反射型スクリーンにおいて、前記透明基板がガラス又は透明な高分子樹脂からなることを特徴とする反射型スクリーン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の反射型スクリーンにおいて、前記散乱層がダイヤモンド粒子からなる光散乱体を含有するガラス又は高分子樹脂からなることを特徴とする反射型スクリーン。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の反射型スクリーンにおいて、表面にハードコート層を有することを特徴とする反射型スクリーン。
【請求項5】
投射光により画像を表示する反射型スクリーン用シートであって、
透明な高分子樹脂からなる可撓性を有する透明シートと、前記透明シート上に、直接接して設けられた可視光を吸収する光吸収層と、前記光吸収層の上に、直接接して設けられた前記投射光を散乱させる散乱層とを有し、
前記光吸収層が、可視光に対して30〜90%の透過率を有し、且つ金属薄膜からなる層であり、
前記散乱層がダイヤモンド粒子からなる光散乱体を含有することを特徴とする反射型スクリーン用シート。」


第3 当審における拒絶の理由
当審において通知した拒絶理由の概要は、次のとおりである。

1 理由1(進歩性
本願の令和2年9月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜9に係る発明は、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



理由1(1)について
請求項1〜9に対して、次の引用文献6及び引用文献7を引用する。

引用文献6:国際公開第2015/159829号
引用文献7:国際公開第2015/199026号

理由1(2)について
請求項1〜6、8、9に対して次の引用文献7及び引用文献8を引用する。
請求項7に対して、次の引用文献4、引用文献7及び引用文献8を引用する。

引用文献4:特開2015−075724号公報
引用文献7:国際公開第2015/199026号
引用文献8:特開2011−113068号公報


2 理由2(サポート要件)
本願は、令和2年9月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の記載が下記の点で特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。



(1) 接着剤について
請求項1、8に係る発明は、透明基板と光吸収層の間や光吸収層と散乱層の間に、接着剤を含むものでもある。また、請求項4、9に係る発明は、着色基板と散乱層の間に、接着剤を含むものでもあるが、接着剤は、必ずしも十分な透明性を有するものではなく、不透明なものもあるから、上記請求項1、4、8、9に記載の接着剤には、反射型スクリーンの透明性を損なうものまで含まれているため、上記請求項1、4、8、9に係る発明には、十分な透明性を有するという本願発明の課題を解決するための手段が反映されていない。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、3、6、7に係る発明についても同様の指摘が当てはまる。請求項4の記載を直接または間接的に引用する請求項5〜7に係る発明についても同様の指摘が当てはまる。

(2) 光吸収層又は着色基板の可視光に対する透過率について
請求項1、8には、光吸収層の可視光に対する透過率が30〜90%であることが記載されており、請求項4、9には、着色基板の可視光に対する透過率が30〜90%であることが記載されているが、明細書の【0024】、【0070】〜【0078】の記載及び出願時の技術常識に照らしても、透過率がその30〜90%の範囲内であれば課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されているとは認められない。
よって、請求項1、4、8、9に係る発明にまで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。

請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、3、6、7に係る発明についても同様の指摘が当てはまる。請求項4の記載を直接または間接的に引用する請求項5〜7に係る発明についても同様の指摘が当てはまる。

(3) 本願の請求項1、4、6、8、9には、散乱層がダイヤモンド粒子及び金属系無機粒子を併用して光散乱体として含む場合が特定されているが、光散乱体としてダイヤモンド粒子及び金属系無機粒子の双方を使用する場合には、これらの凝集を抑えることができず、散乱層中に分散できない可能性も想定されるところ、光散乱体を散乱層中に分散できない場合には、投影した画像の明度及びコントラストが十分でないことは明らかであるから、請求項1、4、6、8、9に係る発明にまで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。

請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2、3、7に係る発明、請求項6の記載を引用する請求項7に係る発明についても同様の指摘が当てはまる。請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5〜7に係る発明ついても、同様の指摘が当てはまる。


第4 引用文献に記載された発明の認定等
1 引用文献6に記載された事項と引用発明6の認定
(1) 引用文献6に記載された事項
当審における拒絶の理由において引用された、前記引用文献6(国際公開第2015/159829号)には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付したものであり、後記の引用発明の認定に直接用いるところに付してある。

「[0029]<透明スクリーン用フィルム>
本発明による透明スクリーン用フィルムは、樹脂層と、樹脂層中に少なくとも一部が凝集状態で含まれる無機粒子とを含んでなる。フィルムは、透明パーティション、車両ガラス、住宅用ガラス等に貼付するフィルムとして好適に用いることができ、該透明パーティション、車両ガラス、住宅用ガラス等は透明スクリーンとして好適に用いることができる。透明パーティション、車両ガラス、住宅用ガラス等の透明スクリーンでは透過視認性を損なわないことが要求されるため、透明スクリーン用フィルムは、可視光の透過率が高く、透明性が高いことが好ましい。なお、本発明において、「透明」とは、用途に応じた透過視認性を実現できる程度の透明性があれば良く、半透明であることも含まれる。
[0030] 透明スクリーン用フィルムは、全光線透過率が、好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、さらにより好ましくは85%以上であり、かつヘイズ値が、好ましくは1.3%以上35%未満であり、より好ましくは1.5%以上30%未満である。さらに、透明スクリーン用フィルムは、平行光線透過率が、好ましくは60%以上であり、より好ましくは65%以上である。フィルムの全光線透過率、平行光線透過率、およびヘイズ値が、上記範囲内であれば、透過視認性をより向上させることができる。なお、本発明において、透明スクリーン用フィルムの全光線透過率、平行光線透過率、およびヘイズ値は、ヘイズメータ(日本電色工業(株)製、商品名:NDH−5000)を用いてJIS−K−7361およびJIS−K−7136に準拠して測定することができる。
[0031] 透明スクリーン用フィルムは、写像性が、好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、さらにより好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。当該透明スクリーン用フィルムの写像性が上記範囲内であれば、透明スクリーンを透過して見える像が極めて鮮明となる。なお、本発明において、写像性とは、JIS K7374に準拠して、光学くし幅0.125mmで測定した時の像鮮明度(%)の値である。
[0032] 本発明による透明スクリーン用フィルムの一実施形態の模式図を図1に示す。透明スクリーン用フィルム10は、樹脂層11と、樹脂層11中に少なくとも一部が凝集状態で存在する無機粒子12とを含んでなる。透明スクリーン用フィルムは、樹脂層からなる単層構成であってもよいし、保護層、基材層、および粘着層等をさらに備える複層構成の積層体であってもよい。このような複層構成の透明スクリーン用フィルムの一実施形態の厚さ方向の断面図を図2に示す。透明スクリーン用フィルム20は、基材層23の一方の面に、樹脂層21が積層され、樹脂層21に保護層22がさらに積層されている。また、基材層23の他方の面(樹脂層21と反対側の面)に粘着層24が積層されている。以下、透明スクリーン用フィルムの各構成について、詳述する。
[0033](樹脂層)
樹脂層は、透明性の高いフィルムを得るために、透明性の高い樹脂を用いることが好ましい。透明性の高い樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ならびに電離放射線硬化性樹脂等を用いることができる。透明性の高い樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、およびフッ素系樹脂等が挙げられる。」

「[0038](無機粒子)
無機粒子は、樹脂層中に少なくとも一部が凝集状態で含まれる。凝集状態とは、樹脂層中の無機粒子の一次粒子が、例えば複数個、好ましくは2〜20個程度、より好ましくは3〜15個程度集まって、結合している状態である。例えば、無機粒子は、ぶどうの房状やパールネックレス状に凝集している。
[0039] 無機粒子の一次粒子は、0.1〜50nm、好ましくは0.5〜40nm、より好ましくは1〜35nm、さらに好ましくは1.5〜30nmのメジアン径(D50)を有し、かつ10〜500nm、好ましくは15〜300nm、より好ましくは20〜200nm、さらに好ましくは20〜130nmの最大粒径を有するものである。無機粒子の一次粒子のメジアン径および最大粒径が上記範囲内であると、透明スクリーン用フィルムとして使用した場合に、透過視認性を損なわずに投射光の十分な散乱効果が得られることで、透明パーティション等に商品情報や広告等を鮮明に投射表示することができる。なお、本発明において、無機粒子の一次粒子のメジアン径(D50)および最大粒径は、動的光散乱法により粒度分布測定装置(大塚電子(株)製、商品名:DLS−8000)を用いて測定した粒度分布から求めることができる。
[0040] 樹脂層中の無機粒子の含有量は、樹脂に対して0.015〜1.2質量%、好ましくは0.02〜1.1質量%、より好ましくは0.05〜1.0質量%、さらに好ましくは0.1〜0.8質量%である。樹脂層中の無機粒子の含有量が上記範囲内であれば、透明スクリーン用フィルムとして使用した場合に、透過視認性を損なわずに投射光の十分な散乱効果が得られることで、透明パーティション、車両ガラス、住宅用ガラス等に情報や広告、映像等を鮮明に投射表示することができる。
[0041] 本発明においては、樹脂層中に無機粒子の少なくとも一部が凝集状態で含まれることで、投射光がフィルムに結像する。仮に、無機粒子が全く凝集せずに、一次粒子のまま分散した場合、投射光の十分な散乱効果が得られず、フィルムに結像し難い。また、無機粒子のメジアン径が数百nm〜数μm程度である場合、または最大粒径が数μm程度である場合、フィルムが白濁し、結像した映像は不鮮明となる。さらに、無機粒子の含有量が1.5質量%以上であると、フィルムが白濁し、結像した映像は不鮮明となる。一方、無機粒子の含有量が0.01質量%以下である場合、投射光の十分な散乱効果が得られず、フィルムに結像し難い。したがって、本発明においては、フィルムを構成する樹脂層中に特定範囲のメジアン径および最大粒径を有する無機粒子を特定量で含有させることで、透過視認性を損なわずに投射光の十分な散乱効果を得ることができる。そのため、本発明によるフィルムは、投射光の十分な散乱効果を得るために表面に賦型処理等の後処理を施さなくてもよく、製造コストの点でも優れている。
[0042] 無機粒子は、ナノサイズに微粒化できる無機物であれば用いることができる。無機粒子としては、好ましくはカーボン系粒子を除く無機粒子、より好ましくは金属系粒子が用いられる。ここで、カーボン系粒子とは、カーボンブラックやダイヤモンド粒子等の炭素を主成分とする微粒子を指す。金属系粒子としては、金属酸化物や金属酸化物以外を微粒化したものが用いられる。金属酸化物としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、および酸化セリウム等を挙げることができる。金属酸化物以外では、例えば、チタン酸バリウム等の合金や、銀、金、白金、およびパラジウム等の純金属および硫酸バリウム等を挙げることができる。特に、投射光の散乱性、粒子の凝集性、および製造コストの観点から、酸化ジルコニウム粒子、酸化チタン粒子、酸化セリウム粒子、チタン酸バリウム粒子、硫酸バリウム粒子、および銀粒子を用いることが好ましい。さらに、写像性の観点からは、酸化ジルコニウム粒子、酸化チタン粒子、酸化セリウム粒子、およびチタン酸バリウム粒子を用いることがより好ましい。このような特定の金属系粒子を用いることで、透明スクリーン用フィルムの写像性が向上して、透明スクリーンを透過して見える像が極めて鮮明となる。これらの無機粒子は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。」

「[0045](基材層)
基材層は、上記の樹脂層を支持するための層であり、透明スクリーン用フィルムの強度を向上させることができる。基材層は、透明スクリーン用フィルムの透過視認性や所望の光学特性を損なわないような透明性の高い材料、例えばガラスまたは樹脂を用いて形成することが好ましい。このような樹脂としては、例えば、上記の樹脂層と同様の透明性の高い樹脂を用いることができる。また、上記した樹脂を2種以上積層した複合フィルムまたはシートを使用してもよい。なお、基材層の厚さは、その強度が適切になるように材料に応じて適宜変更することができ、例えば、10〜1000μmの範囲としてもよい。
[0046](保護層)
保護層は、透明スクリーン用フィルムの表面側(観察者側)に積層されるものであり、耐光性、耐傷性、および防汚性等の機能を付与するための層である。保護層は、透明スクリーン用フィルムの透過視認性や所望の光学特性を損なわないような樹脂を用いて形成することが好ましい。このような樹脂としては、例えば、紫外線・電子線によって硬化する樹脂、即ち、電離放射線硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂に熱可塑性樹脂と溶剤を混合したもの、および熱硬化型樹脂を用いることができるが、これらの中でも電離放射線硬化型樹脂が特に好ましい。」

「[0061](機能性層)
本発明による透明スクリーン用フィルムは、上記の各層以外にも、従来公知の様々な機能性層を備えてもよい。機能性層としては、染料や着色剤等を含んだ光吸収層、プリズムシート、マイクロレンズシート、フレネルレンズシート、およびレンチキュラーレンズシート等の光拡散層、紫外線および赤外線等の光線カット層等が挙げられる。」

「[0072]<透明スクリーン>
本発明による透明スクリーンは、上記の透明スクリーン用フィルムを備えてなる。透明スクリーンは、上記の透明スクリーン用フィルムのみからなるものでもよく、透明パーティション等の支持体をさらに備えるものでもよい。
[0073] 透明スクリーンは、背面投射型スクリーン(透過型スクリーン)でもよく、前面投射型スクリーン(反射型スクリーン)でもよい。すなわち、本発明による透明スクリーンを備える映像表示装置においては、投射装置(光源)の位置がスクリーンに対して観察者側にあってもよく、観察者と反対側にあってもよい。また、透明スクリーンは、平面であってもよく、曲面であってもよい。」

「[0076]<画像投影装置>
本発明による画像投影装置は、上記の透明スクリーンと、投射装置とを備えてなる。投射装置とは、スクリーン上に映像を投射できるものであれば特に限定されず、例えば、市販のリアプロジェクタやフロントプロジェクタを用いることができる。
[0077] 本発明による透明スクリーンおよび画像投影装置の一実施形態の模式図を図3に示す。透明スクリーン32は、透明パーティション31と、透明パーティション31の観察者33側に透明スクリーン用フィルム30とを備えてなる。透明スクリーン用フィルム30は、透明パーティション31に貼付するために、粘着層を含むことが好ましい。透明スクリーン32が背面投射型スクリーンである場合、画像投影装置は、透明スクリーン32と、透明スクリーン32に対して観察者32と反対側(背面側)に設置された投射装置34Aとを備えてなる。投射装置34Aから出射された投影光35Aは、透明スクリーン32の背面側から入射し、透明スクリーン32により異方的に拡散することで、観察者33は拡散光36Aを視認できる。一方、透明スクリーン32が前面投射型スクリーンである場合、画像投影装置は、透明スクリーン32と、透明スクリーン32に対して観察者33と同じ側(前面側)に設置された投射装置34Bとを備えてなる。投射装置34Bから出射された投影光35Bは、透明スクリーン32の前面側から入射し、透明スクリーン32により異方的に拡散することで、観察者33は拡散光36Bを視認できる。」










(2) 引用発明6の認定
上記(1)の記載事項を総合すると、引用文献6には、次の発明(以下「引用発明6」という。)が記載されているものと認められる。

「 基材層23の一方の面に樹脂層21が積層され、樹脂層21に保護層22がさらに積層され、基材層23の他方の面(樹脂層21と反対側の面)に粘着層24が積層された透明スクリーン用フィルム20を備え([0032])、
前面投写型スクリーン(反射型スクリーン)、すなわち、投射装置(光源)34Bの位置がスクリーンに対して観察者33側にある([0073])、透明スクリーン32であって([0072]、[0077])、
樹脂層21は、透明性の高い樹脂が用いられ([0033])、無機粒子を含み([0038])、
該無機粒子は、好ましくはカーボン系粒子を除く無機粒子であり([0042])、
無機粒子の1次粒子のメジアン径が0.1〜50nm、かつ最大粒径が10〜500nmの範囲内であると、透過視認性を損なわずに投射光の十分な散乱効果が得られ([0039])、
透明スクリーン用フィルム20には、染料や着色剤等を含んだ光吸収層、紫外線及び赤外線等の光線カット層等の機能性層が備えてられていても良く([0061])、
基材層23は、樹脂層21を支持するための層であり、透明スクリーン用フィルム20の強度を向上させるもので、透明性の高いガラス又は樹脂を用いて形成され([0045])、
保護層22は、透明スクリーン用フィルム20の表面側(観察者側)に積層されるものであり、耐光性、耐傷性、及び防汚性等の機能を付与するための層である([0046])
透明スクリーン32([0072]、[0077])。」

2 引用文献7に記載された事項と引用発明7の認定
(1) 引用文献7に記載された事項
当審における拒絶の理由において引用された前記引用文献7(国際公開第2015/199026号)には、以下の事項が記載されている。

「[0016]<反射型の映像表示透明部材>
本発明の映像表示透明部材の第1の態様は、第1の面およびこれとは反対側の第2の面を有し、第1の面側の光景を第2の面側の観察者に視認可能に透過し、第2の面側の光景を第1の面側の観察者に視認可能に透過し、かつ第1の面側から投射された映像光を第1の面側の観察者に映像として視認可能に表示する映像表示透明部材であって、前記映像表示透明部材は、当該映像表示透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層を有する、反射型の映像表示透明部材である。
[0017] 図1は、本発明の反射型の映像表示透明部材の一例を示す層構成図である。
映像表示透明部材1は、第1の透明基材10と、第2の透明基材20との間に、映像表示部30が配置され、第2の透明基材20に光減衰成分が配合されて着色され、映像表示透明部材1を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっているものである。
第1の透明基材10と映像表示部30とは、接着層12によって接着され、第2の透明基材20と映像表示部30とは、接着層22によって接着されている。
[0018] (第1の透明基材)
第1の透明基材10の材料としては、ガラス、透明樹脂等が挙げられる。
透明基材を構成するガラスとしては、ソーダライムガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス等が挙げられる。ガラスからなる第1の透明基材10には、耐久性を向上させるために、化学強化、物理強化、ハードコーティング等を施してもよい。
[0019] 第1の透明基材10を構成する透明樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルメタクリレート等が挙げられ、耐候性および透明性の観点から、ポリカーボネート、ポリエステル、シクロオレフィンポリマーが好ましい。
[0020] 第1の透明基材10としては、複屈折がないものが好ましい。
第1の透明基材10の厚さは、基材としての耐久性が保たれる厚さであればよい。透明基材の厚さは、たとえば、0.01mm以上であってよく、0.05mm以上であってよく、0.1mm以上であってよい。また、透明基材の厚さは、たとえば、10mm以下であってよく、5mm以下であってよく、0.5mm以下であってよく、0.3mm以下であってよく、0.15mm以下であってよい。
[0021] (第2の透明基材(光減衰層))
第2の透明基材20は、光減衰成分が配合されて着色されており、映像表示透明部材1を透過する光の一部を減衰させる光減衰層にもなっている。
映像表示透明部材1では、第2の透明基材20が光減衰層になっていることで、観察者Yが映像表示透明部材1の向こう側の光景を見る際に、その光景の視認性が優れたものとなる。
[0022] 第2の透明基材20の材料としては、第1の透明基材10の材料として挙げたガラス、透明樹脂等に光減衰成分が配合されたものが挙げられる。
ガラスに含まれる光減衰成分としては、たとえば、Fe2O3、CoO、Ti2O、V2O5、CuO、Cr2O3、NiO、Er2O3、Nd2O3、CeO2、MnO2、SeOx等の金属酸化物が挙げられ、赤外線のカット等の機能付与の点から、Fe、Cuが含まれていることが好ましい。
透明樹脂に含まれる光減衰成分としては、たとえば、カーボンブラック、チタンブラック等の顔料やアジン系化合物等の染料が挙げられ、耐候性の点から、顔料が好ましい。」

「[0030] (接着層)
接着層12および接着層22(以下、まとめて接着層とも記す。)の材料としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、粘着剤(アクリル系粘着剤等)、光硬化性樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物等が挙げられる。各接着層の材料は、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
[0031] 熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂としては、たとえば、可塑化ポリビニルアセタール、可塑化ポリ塩化ビニル、飽和ポリエステル、可塑化飽和ポリエステル、ポリウレタン、可塑化ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等が挙げられる。
[0032] 接着層の厚さは、接着層としての機能が保たれる厚さであればよく、たとえば、0.01〜1.5mmが好ましく、0.05〜1mmがより好ましい。」

「[0033] (映像表示部)
映像表示部30は、第1の透明フィルム31と;第1の透明フィルム31の表面に設けられた、表面に不規則な凹凸構造を有する第1の透明層32と;第1の透明層32の凹凸構造側の面に沿うように形成された、入射した光の一部を透過する反射膜33と;反射膜33の表面を覆うように設けられた第2の透明層34と;第2の透明層34の表面に設けられた第2の透明フィルム35とを有する光散乱シートからなる。」

「[0041] (反射膜)
反射膜33は、反射膜33に入射した光の一部を透過し、他の一部を反射するものであればよい。反射膜33としては、金属膜、半導体膜、誘電体単層膜、誘電体多層膜、これらの組み合わせ等が挙げられる。」

「[0059] 図1に示すように、投影機200から投射され、映像表示透明部材1の第1の透明基材10側の表面(第1の面A)から入射した映像光Lが、反射膜33において散乱することによって結像し、投影機200と同じ側にいる観察者Xに映像として視認可能に表示できる。
また、映像表示透明部材1における反射膜33が入射した光の一部を透過するため、第1の面A側の光景を第2の面B側の観察者Yに視認可能に透過でき、かつ第2の面B側の光景を第1の面A側の観察者Xに視認可能に透過できる。」

「[0073] 本発明の反射型の映像表示透明部材は、図9に示すように、いずれも光減衰成分が配合されず着色されていない第1の透明基材10および第2の透明基材20Aを有し、第2の透明フィルム35Aに光減衰成分が配合されて着色され、透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっている映像表示部30Aを有する映像表示透明部材1Cであってもよい。
映像表示透明部材1Cでは、映像表示透明部材1と同様の理由から、第2の面B側の観察者から見て映像表示透明部材1Cの向こう側の光景のコントラストが向上し、該光景の視認性に優れる。また、第1の面A側の観察者から見て第1の面A側の投影機200(図示省略)から投射された映像光による映像の視認性に優れる。
[0074] また、映像表示透明部材1Cにおいて、第2の透明フィルム35Aの代わりに、第1の透明フィルム31に光減衰成分が配合されて着色され、透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっている映像表示透明部材であってもよい。また、第1の透明フィルム31と第2の透明フィルム35の両方に光減衰成分が配合されて着色され、透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっている映像表示透明部材であってもよい。
また、本発明の反射型の映像表示透明部材は、映像表示透明部材1において、第2の透明基材20の代わりに、光減衰成分が配合されていない第2の透明基材20Aを有し、接着層12および接着層22のいずれか一方もしくは両方に光減衰成分が配合されて着色され、透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっている映像表示透明部材であってもよい。
映像表示部の透明フィルムや接着層に配合される光減衰成分としては、たとえば、光減衰層50で挙げたものと同じものが挙げられる。
[0075] 光減衰層となっている部材の機能としては、透過率を減少させる機能を持っていればよいため、ハーフミラーを光減衰層として用いてもよい。
ハーフミラーの反射率としては、5%以上であればよく、10%以上であると好ましく、場合によっては、25%以上であってもよい。
ハーフミラーを、映像表示部と投影機との間に配置することにより、上記の効果に加えて、両面への投影を可能とできる。また、映像表示部と投影機との間ではない部分に配置することにより、マジックミラーとしての機能を付与できるため、さらに、後方への映像抜けを観察者へ認識させにくくすることができるようになる。
本発明の反射型の映像表示透明部材における光減衰層の態様としては、上述の通り、図1および図3の第2の透明基材20、図4の第1の透明基材10A、図5〜図7の着色透明フィルム、図8における第1の透明基材10Aおよび第2の透明基材20に例示したような透明基材や透明フィルム、およびハーフミラーが挙げられる。」









(2) 引用発明7の認定
上記(1)の記載事項を総合すると、引用文献7には、次の発明(以下「引用発明7」という。)が記載されているものと認められる。

「第1の透明基材10と、第2の透明基材20との間に、映像表示部30が配置され、第2の透明基材20と映像表示部30が接着層22によって接着されている映像表示透明部材1であって([0017])、
映像表示部30は、第1の透明フィルム31と;第1の透明フィルム31の表面に設けられた、表面に不規則な凹凸構造を有する第1の透明層32と;第1の透明層32の凹凸構造側の面に沿うように形成された、入射した光の一部を透過する反射膜33と;反射膜33の表面を覆うように設けられた第2の透明層34と;第2の透明層34の表面に設けられた第2の透明フィルム35とを有する光散乱シートからなり([0033])、該反射膜33は、反射膜33に入射した光の一部を透過し、他の一部を反射するものであって([0041])、
第2の透明基材20の代わりに、光減衰成分が配合されていない第2の透明基材20Aを有し、接着層22に光減衰成分が配合されて着色され、透明部材を透過する光の一部を減衰させる光減衰層となっており([0074]、[図9])、
光減衰層となっている部材の機能としては、透過率を減少させる機能を持っていればよいため、ハーフミラーを光減衰層として用いてもよく([0075])、
投影機200から投射され、第1の面Aから入射した映像光Lが、反射膜33において散乱することによって結像し、投影機200と同じ側にいる観察者Xに映像として視認可能に表示でき([0059])、
また、反射膜33が入射した光の一部を透過するため、第1の面A側の光景を第2の面B側の観察者Yに視認可能に透過でき、かつ第2の面B側の光景を第1の面A側の観察者Xに視認可能に透過できる([0059])、
映像表示部材1C([0074]、[図9])。」

3 引用文献8に記載された事項
(1) 引用文献8に記載された事項
当審における拒絶の理由に引用された前記引用文献8(特開2011−113068号公報)には、以下の事項が記載されている。

「【0004】
自動車においては、これらの情報表示のための機器の多くは、フロントウインドウ下方に配置されているため、運転中に運転者がフロントウインドウ下方の機器を見て情報を読み取る時は、視点を比較的大きく移動させている。そこで安全運転のために視点の移動距離を小さくすべく、ヘッドアップディスプレー(HUD)装置と呼ばれる表示装置が提案されている。HUD装置は、フロントウインドウ下部のウィンドウガラス面や、ウィンドウ近くの運転席(操縦席)内部に配置した透明なプロジェクションスクリーンにプロジェクターからコンテンツ画像を投影して、情報を表示するものであり、運転者は比較的小さな視点移動で情報を読み取ることができる。」

「【0020】
本発明の透過型スクリーンは、透過視認性を損なわず良好な散乱反射性を有するので、ショーウインドーに用いる透過型スクリーンやヘッドアップディスプレー用スクリーンとして好適である。」

「【0022】
[1]透過型スクリーン
(1)構成
透過型スクリーン1は、図1(a)に示すように、基板11と、前記基板11上に設けた透明薄膜層12と、前記透明薄膜層12に含まれるメジアン径0.01〜1μmの光散乱体10からなる。透過型スクリーン1は、図1(b)に示すように、2枚の基板11a,11bの間に、前記光散乱体10を含有する透明薄膜層12を挟んでなるものであってもよい。
【0023】
(2)基板
基板はガラス、高分子樹脂からなるのが好ましい。ガラスとしては、ケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス等の酸化ガラスが実用的であり、特にケイ酸ガラス、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラス等のケイ酸塩ガラスが好ましい。
【0024】
高分子樹脂としては可視光の透過性に優れたものが好ましく、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を用いることができる。
【0025】
(3)透明薄膜層
透明薄膜層は、前記基板に用いることのできる高分子樹脂を用いるのが好ましい。特に好ましいのはポリビニルアセタール系の樹脂であり、最も好ましいのはポリビニルブチラールである。基板及び透明薄膜層の両方を高分子樹脂で構成する場合、それらの樹脂は同じであっても異なっていてもよい。透明薄膜層の厚みは、5〜1000μmであるのが好ましく、10〜800μmであるのがより好ましく、20〜500μmであるのが最も好ましい。5μm未満の場合は十分な反射像が得られなくなり、1000μmを越えると像がぼけてしまう。透明薄膜層そのものを透過型シートとして用いても良い。
【0026】
(4)光散乱体
光散乱体のメジアン径が可視光の波長と同等以上になると前方散乱Sf(図3に示すように、入射光Iに対してスクリーン1の反対側で起こる散乱)が著しく強くなり、透過型スクリーンを透過してくる光が滲んでしまう。従って、前記光散乱体のメジアン径は1μm以下であり、400nm以下であるのが好ましく、200nm以下であるのがより好ましい。光散乱体のメジアン径が0.01μmより小さくなると後方散乱Sb(図3に示すように、入射光Iに対してスクリーン1の手前側で起こる散乱)がほとんど起こらなくなり、透過型スクリーンの散乱反射性が低下する。光散乱体のメジアン径は30nm以上であるのが好ましい。
【0027】
光散乱体は透明薄膜層を構成する材質よりも高い屈折率を有するのが好ましい。透明薄膜層として高分子樹脂を用いた場合、一般に高分子樹脂の屈折率は1.5〜1.6程度であるので、光散乱体の屈折率は2以上であるのが好ましく、2.3以上であるのがより好ましい。このような屈折率を有する光散乱体として、ダイヤモンド(屈折率2.4)が特に好ましい。ダイヤモンドとしては、爆射法で得られたグラファイト相を有するナノダイヤモンドを酸化処理して得られるダイヤモンド微粒子が好ましい。特に前記ダイヤモンド微粒子をフッ素処理して得られたフッ素化ダイヤモンド微粒子は、高分子樹脂への分散性に優れており、前記光散乱体として好適である。メジアン径0.01〜1μmのフッ素化ダイヤモンド微粒子は、1〜10 nm程度の径を有するナノ粒子が凝集した形状のものであるのが好ましい。」

「【0133】
(4)透過型スクリーンの作製
ポリビニルブチラール樹脂(ブチラール化度:65.9モル%、アセチル基量:0.9モル%)100質量部に対し、可塑剤として40質量部のトリエチレングリコール-ビス-2-エチルブチレートと、2質量部のフッ素化ダイヤモンド微粒子Aを添加し、3本ロールミキサーにより約70℃で約15分間混練した後、型押出機を使って180℃で厚さ約0.3 mmにフィルム化し、ロールに巻き取ることにより、樹脂膜Aを得た。この樹脂膜Aを2枚の透明なガラス基板(縦30 cm×横30 cm×厚み3 mm)の間に挟み、これをゴムバックに入れて20 Torrの真空度で20分間脱気した後、脱気したままの状態で90℃のオーブンに移し、90℃で30分間保持しつつ真空プレスし、合わせガラスの予備接着を行った。予備接着された合わせガラスをオートクレーブに入れ、温度135℃、圧力12 kg/cm2の条件で20分間本接着を行って、透過型スクリーンを作製した。」





(2) 引用文献8に記載された技術事項の認定
前記(1)に摘記した事項を総合すると、引用文献8には、次の技術が記載されていると認められる(以下「引用文献8記載事項」という。)。
「基板11と、前記基板11上に設けられ、メジアン径0.01〜1μmの光散乱体10を含む前記透明薄膜層12を備え、透過視認性を損なわず良好な散乱反射性を有するので、ショーウインドーに用いる透過型スクリーンやヘッドアップディスプレー用スクリーンとして好適である透過型スクリーンにおいて、光散乱体10としてダイヤモンド微粒子を用いること。」(【0020】、【0022】、【0027】)

4 引用文献4に記載された事項
(1) 引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された前記引用文献4(特開2015−075724号公報)には、以下の事項が記載されている。

「【0015】
図2は、実施形態の反射型スクリーン10の層構成を説明する図である。
図2では、反射型スクリーン10の画面(表示領域)の幾何学的中心となる点A(図1(a)、(b)参照)を通り、画面上下方向に平行であって、スクリーン面に直交(厚み方向に平行)な断面の一部を拡大して示している。
反射型スクリーン10は、その映像源側(観察者側)から順に、表面層15、基材層14、レンズ層13、反射層12、保護層11等を備えている。以下、各層について説明する。」

「【0027】
表面層15は、基材層14の映像源側(観察者側)に設けられ、各種機能を有する層である。
本実施形態の表面層15は、反射型スクリーン10の映像源側の最表面を形成し、防眩機能とハードコート機能を有している。この表面層15は、ハードコート機能を有する紫外線硬化型樹脂(例えば、ウレタンアクリレート)等の電離放射線硬化型樹脂等により形成されている。
なお、表面層15は、これに限らず、反射防止機能や防眩機能、紫外線吸収機能、防汚機能や帯電防止機能、ハードコート機能、タッチパネル機能等、適宜必要な機能を1つ又は複数選択して設けてよい。
この表面層15は、基材層14とは別層であって不図示の粘着材等により基材層14に接合される形態としてもよいし、基材層14の観察者側の面に、各種機能を有する樹脂等を塗布する等により直接形成される形態としてもよい。」









(2) 周知技術の認定
上記(1)において引用文献4に記載された技術事項を摘記して例示したように、次の技術は周知技術である(以下「周知技術」という。)。

[周知技術]
「反射型スクリーンの最表面に、ハードコート機能を有する表面層を形成すること。」


第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 引用発明6を主引用発明とする場合
ア 対比
本願発明1と引用発明6を対比する。

(ア) 引用発明6の「透明スクリーン32」は、投射装置(光源)34Bの位置がスクリーンに対して観察者33側にある反射型スクリーンであって、投射光により画像を表示するスクリーンであると認められる。
よって、引用発明6の「透明スクリーン32」は、本願発明1の「投射光により画像を表示する反射型スクリーン」に相当する。

(イ) 引用発明6の「基材層23」は、「樹脂層21」を支持するための層であり、「透明スクリーン用フィルム20」の強度を向上させることができるものであって、ガラス又は樹脂等の透明性の高い材料を用いて形成されるものであるから、本願発明1の「透明基板」に相当する。

(ウ) 引用発明6において、「染料や着色剤等を含んだ光吸収層」が「紫外線および赤外線等の光線カット層」と併記されていることから、当該「光吸収層」と「光線カット層」の機能は異なり、当該光吸収層が紫外線、赤外線等の非可視光以外の可視光を吸収するものであることは、明らかである。
よって、引用発明6の「染料や着色剤等を含んだ光吸収層」は、本願発明1の「可視光を吸収する光吸収層」に相当する。
そうすると、本願発明1と引用発明6は、「反射型スクリーン」が「可視光を吸収する光吸収層」を備える点で共通する。

(エ) 引用発明6の「樹脂層21」は、この「樹脂層21」に含まれる無機粒子により「透過視認性を損なわずに投射光の十分な散乱効果が得られ」るものであるから、本願発明1の「前記投射光を散乱」する「散乱層」に相当する。
よって、本願発明1と引用発明6は、「反射型スクリーン」が「投射光を散乱させる散乱層」を有する点で共通する。

イ 一致点及び相違点
上記アにおける対比の検討結果をまとめると、本願発明1と引用発明6は、次の一致点において一致し、次の相違点1及び2において相違する。

<一致点>
「 投射光により画像を表示する反射型スクリーンであって、
透明基板と、可視光を吸収する光吸収層と、前記投射光を散乱させる散乱層とを有する反射型スクリーン。」

<相違点1>
本願発明1は、「光吸収層」が「透明基板上に直接接して設けられた可視光を吸収する」ものであり、「散乱層」が「光吸収層の上に、直接接して設けられた前記投射光を散乱させる」ものであり、該「散乱層」が「ダイヤモンド粒子からなる光散乱体」を含有するものであるのに対して、引用発明6においては、「透明スクリーン用フィルム20」において「光吸収層」を設ける位置が特定されておらず不明であり、「樹脂層21」は、ダイヤモンド粒子を含有しない点。

<相違点2>
本願発明1は、「光吸収層が、可視光に対して30〜90%の透過率を有し、且つ金属薄膜からなる層」であるのに対して、引用発明6においては、「光吸収層」の可視光に対する透過率が特定されておらず、不明であり、さらに、引用発明6の「光吸収層」は、「金属薄膜からなる層」ではなく「染料や着色剤等を含んだ光吸収層」である点。

ウ 相違点についての当審における判断
(ア)相違点1について
引用文献6には、段落[0042]に「樹脂層21」に含まれる無機粒子について、好ましくはカーボン系粒子を除く無機粒子である旨の記載があり、カーボン系粒子の具体例として、ダイヤモンド粒子が記載されている。
そのため、たとえ引用文献8記載事項において、透過型スクリーンの光散乱体としてのダイヤモンド微粒子が開示されていたとしても、引用発明6の無機粒子としてダイヤモンド粒子を採用することには、阻害要因がある。
また、引用発明6において、敢えて無機粒子としてダイヤモンド微粒子を採用しようとする動機付けとなる記載についても、引用文献6〜8及び前記周知技術において見いだすことはできない。

(イ)相違点判断のむすび
上記(ア)の検討のとおりであるから、前記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明6、引用文献7に記載された技術事項、引用文献8に記載された技術事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

(2) 引用発明7を主引用発明とする場合
ア 対比
本願発明1と引用発明7を対比する。

(ア) 引用発明7の「映像表示透明部材1C」は、「第1の面から入射した映像光が」「投影機200と同じ側にいる観察者Xに映像として視認可能に表示でき」るものであるから、本願発明1の「投射光により画像を表示する反射型スクリーン」に相当する。

(イ) 引用発明7の「第2の透明基材20A」は、本願発明1の「透明基板」に相当する。

(ウ) 引用発明7の光減衰成分が配合されて着色され光減衰層とされた「接着層22」は、光減衰成分が配合されて着色されており、可視光を吸収するものであることは明らかであるから、当該「接着層22」は、本願発明1の「光吸収層」に相当する。
また、当該「接着剤層22」は、「第2の透明基材20A」上に「直接接して」設けられている。
よって、本願発明1と引用発明7は、「前記透明基板上に、直接接して設けられた可視光を吸収する光吸収層」を備える点で共通する。

(エ) 引用発明7の「映像表示部30」は、「第1の透明フィルム31と;第1の透明フィルム31の表面に設けられた、表面に不規則な凹凸構造を有する第1の透明層32と;第1の透明層32の凹凸構造側の面に沿うように形成された、入射した光の一部を透過する反射膜33と;反射膜33の表面を覆うように設けられた第2の透明層34と;第2の透明層34の表面に設けられた第2の透明フィルム35とを有する光散乱シート」からなり、このうちの「反射膜33」が「反射膜33に入射した光の一部を透過し、他の一部を反射」するものであるところ、この光散乱シートからなる映像表示部30は、前記「接着層22」に直接接して設けられている。
そして、本願発明1の「散乱層」については、本願明細書の段落【0044】の「散乱層は、・・・あらかじめ作製した光散乱体を含有する樹脂からなるシートを前記光吸収層上に貼り付けて形成しても良い。」という記載を参酌すると、光散乱シートであるといえる。
よって、本願発明1と、引用発明7は、「前記光吸収層の上に、直接接して設けられた前記投射光を散乱させる散乱層」を備える点で共通する。

イ 一致点及び相違点
上記アの対比結果をまとめると、本願発明1と引用発明7は、次の一致点で一致し、相違点3及び4で相違する。

<一致点>
「 投射光により画像を表示する反射型スクリーンであって、
透明基板と、前記透明基板上に、直接接して設けられた可視光を吸収する光吸収層と、前記光吸収層の上に、直接接して設けられた前記投射光を散乱させる散乱層とを有する反射型スクリーン。」

<相違点3>
本願発明1の「光吸収層」が「可視光に対して30〜90%の透過率を有し、且つ金属薄膜からなる層」であるのに対して、引用発明7の「光減衰層」は、光減衰成分を含む「接着層22」であり、可視光線透過率は不明である点。

<相違点4>
本願発明1が、「投射光を散乱させる散乱層」が、「ダイヤモンド粒子からなる光散乱体を含有する」のに対して、引用発明7の「光散乱シート」は、投射光の散乱のために反射膜33を含むものであり、光散乱体を含有する散乱層ではない点。

ウ 相違点についての当審における判断
(ア)相違点3について
引用発明7の接着層22は、光の一部を減衰させる光減衰層の機能に加えて、フィルム状の「第2の透明基材20A」と「映像表示部30」を接着する機能も備えるものである。これに対して、金属薄膜からなる光吸収層は、シート状のもの同士を接着し、貼り合わせる機能を通常は備えないものである。
そのため、引用発明7における接着層22を金属薄膜からなる光吸収層で置き換えたとすると、「第2の透明基材20A」と「映像表示部30」を接着する構成がなくなり、これらを貼り合わせることができなくなるから、引用発明7の接着機能も備える接着層22を、接着機能を通常は有しない金属薄膜からなる光吸収層で置き換えることには、阻害要因がある。
また、引用文献7の段落[0075]の記載に鑑みて、第2の透明基材20Aとして、ハーフミラーを備える透明基材を適用したとしても、金属薄膜よりなるハーフミラーと映像表示部との間に、接着層22が介在することとなるから、本願発明1の備える「光吸収層」が「透明基材上に、直接接して設けられ」るという構成を充足しないこととなる。
そして、引用文献6、8及び前記周知技術にも、「接着層22」が「第2の透明基材20A」と「映像表示部30」を接着する引用発明7において、この「接着層22」に代えて金属薄膜からなる光吸収層を適用するための動機付けとなる記載はない。

(イ)相違点判断のむすび
上記(ア)の検討のとおりであるから、前記相違点4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明7と、引用文献6に記載された技術事項、引用文献8に記載された技術事項、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2〜4について
(1) 引用発明6を主引用発明とする場合
本願の請求項2〜4は、本願の請求項1の記載を引用しており、本願発明2〜4は、引用文献6と対比したときに、前記相違点1及び2に係る構成を備えるものである。
してみると、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明6と、引用文献7に記載された技術事項、引用文献8に記載された技術事項、及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(2) 引用発明7を主引用発明とする場合
本願発明2〜4は、引用文献7と対比したときに、前記相違点3及び4に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明7と、引用文献6に記載された技術事項、引用文献8に記載された技術事項、及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3 本願発明5について
本願発明5は、本願発明1の「投射光により画像を表示する反射型スクリーン」と「透明基板」が、それぞれ「投射光により画像を表示する反射型スクリーン用シート」と「透明な高分子樹脂からなる可撓性を有する透明シート」に置き換えられたものである。
そのため、本願発明5は、引用文献6と対比したときに、前記相違点1及び2に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明6と、引用文献7に記載された技術事項、引用文献8に記載された技術事項、及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
また、本願発明5は、引用文献7と対比したときに、前記相違点3及び4に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明7と、引用文献6に記載された技術事項、引用文献8に記載された技術事項、及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第6 当審において通知した拒絶理由について
進歩性の拒絶理由について
上記第5の1〜3で検討したとおり、本願発明1〜5は、引用文献6に記載の発明と、引用文献4、7、8に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、引用文献7に記載の発明と、引用文献4、6、8に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、当審において通知した理由1の拒絶理由を維持することはできない。

2 理由2(サポート要件)について
(1) 接着剤について
本願の令和2年9月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜9に係る発明は、接着剤を含むものでもあり、十分な透明性を有するという本願発明の課題を解決するための手段が反映されていなかった。
この点について、令和3年12月22日付けの手続補正書により補正された、本願発明1〜5においては、接着剤を含む構成が削除された。
よって、当審において通知した理由2(1)の拒絶理由を維持することはできない。

(2) 光吸収層又は着色基板の可視光に対する透過率について
本願発明1〜5の「光吸収層」については、令和3年12月22日付けの手続補正により、「金属薄膜からなる層」であるという限定がされたことから、「可視光に対して30〜90%の透過率を有する」という構成は、「金属薄膜からなる」「光吸収層」の光学特性について、望ましい数値範囲として限定したものであると認められる。
そして、本願の明細書の段落【0070】の記載を参酌すると、このような数値限定が発明の詳細な説明に裏付けられていないとはいえない。
よって、当審において通知した理由2(2)の拒絶理由を維持することはできない。

(3) ダイヤモンド粒子及び金属系無機粒子が光散乱体である場合について
本願の令和2年9月23日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の本願発明1〜9において、散乱層がダイヤモンド粒子及び金属系無機粒子を併用して光散乱体として含む場合が特定されており、この場合には、高い明度及びコントラストの透視画像を得るという本願発明の課題を解決できないから、請求項1〜9に係る発明にまで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえなかった。
この点について、令和3年12月22日付けの手続補正書により補正された、本願発明1〜5においては、光散乱体がダイヤモンド粒子に限定され、ダイヤモンド粒子及び金属系無機粒子を併用する場合が削除された。
よって、当審において通知した理由2(3)の拒絶理由を維持することはできない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、当審において通知した拒絶理由よっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。


 
審決日 2022-02-17 
出願番号 P2018-501733
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G03B)
P 1 8・ 121- WY (G03B)
P 1 8・ 113- WY (G03B)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 居島 一仁
特許庁審判官 清水 靖記
濱野 隆
発明の名称 反射型スクリーン及び反射型スクリーン用シート  
代理人 清水 義憲  
代理人 酒巻 順一郎  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 阿部 寛  
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