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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01R
管理番号 1386777
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-01 
確定日 2022-07-27 
事件の表示 特願2017−559801「電圧センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月24日国際公開、WO2016/187090、平成30年 6月 7日国内公表、特表2018−514787〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)5月16日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年5月18日、アメリカ合衆国)、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 2年 2月10日付け:拒絶理由通知書
同年 5月11日 :意見書、手続補正書の提出
同年10月29日付け:拒絶査定(同年11月10日送達、以下「
原査定」という。)
令和 3年 3月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 9月30日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 1月 4日 :意見書、手続補正書の提出


第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和4年1月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「 【請求項1】
第1接続インターフェースを含む第1端部及び接続を有さない第2端部を有する導体と、
前記導体の上に配置された少なくとも1つのセンサを含むセンサ区分であって、前記センサは、前記導体の少なくとも1つの電圧、又は前記電圧のサンプルを感知する、センサ区分と、
を備え、
前記センサ区分は、
前記導体と接触する内側遮蔽層と、
前記内側遮蔽層上に配置された絶縁層と、
前記絶縁層上に配置され、電気的に絶縁された外側遮蔽層と、
を有する容量性電圧センサと、
前記電圧又は前記電圧のサンプルと前記センサ区分の出力との分圧比を調整するための少なくとも1つの比率調節コンデンサを有するプリント回路基板と、
を備え、
前記外側遮蔽層は、前記外側遮蔽層の他の一部から電気的に絶縁された絶縁区分を有し、
前記プリント回路基板は、前記絶縁区分と直接的に接触している、
電圧センサ。」


第3 当審拒絶理由の概要
令和3年9月30日付けで当審において通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)のうち、請求項1に対する理由(進歩性)の概要は、次のとおりである。

進歩性)本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記引用文献1に記載された発明及び下記引用文献2、6に記載された事項に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1.特開昭51−89124号公報
引用文献2.米国特許第4963819号明細書
引用文献6.国際公開第2014/120792号


第4 当審の判断
1 引用文献に記載された発明の認定等
(1) 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定
ア 引用文献1に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願の優先日前に発行された上記引用文献1には、以下の事項が記載されている。下線は当合議体が付したもので、以下同様である。

(ア) 1頁左欄17行〜右欄20行
「この発明は、密閉形開閉設備用コンデンサ形計器用変圧器に関するもので、その密閉形開閉設備の金属カプセルにはコンデンサ形分圧器部分を含んだ構成単位が取付けられており、そのコンデンサ形分圧器の高圧側コンデンサは合成樹脂体の中に埋め込まれた高圧電極と合成樹脂体表面の導電性被覆からなる測定電極によって構成されている。
公知のこのような電圧測定装置(西ドイツ特許公開第2215928号)においては、高圧側コンデンサが測定電極及びこれを完全に或いは殆んど完全に取り囲んだ低圧電極とから構成されているので、コンデンサ形分圧器の低圧側コンデンサは高圧側コンデンサと構造的に統一されたものになる。
この発明の目的は、密閉形開閉設備の金属カプセルに取付けられ、コンデンサ形分圧器部分を含んだ構成要素を備えた計器用変圧器を比較的大きな静電容量の低圧側コンデンサを用いることにより特に測定技術上の改良を行い、更にその際に特に製造上好都合な構造をも得ようとすることにある。
この目的を達成するには、はじめに述べたような計器用変圧器において、コンデンサ形分圧器の低圧側コンデンサがそれ自体独立した組立体を構成し、合成樹脂体を囲むように配設される。」

(イ) 2頁左上欄1行〜20行
「 この発明に依る計器用変圧器の本質的な利点は次の点にある。即ち、低圧側コンデンサは、それ自体独立した構造部分を形成する構造であるため、この発明のような計器用変圧器の分圧比に有利に作用する比較的大きな静電容量を備え得るという事である。また別の利点が次のような点にも見いだされる。即ち、この発明のような計器用変圧器を製作する場合に、一方では埋め込まれた高圧電極と導電性被覆からなる測定電極とを備えた合成樹脂体が、他方では低圧側コンデンサがひとりでにできてしまい、その事が製作をコスト上最適のものにし、計器用変圧器全体を簡単に試験できるようにするのみならず、事故時には計器用変圧器全体を他のものと交換する必要がないようにしている。更にこの発明に依る計器用変圧器の次のような利点は重要である。即ち、低圧側コンデンサによって合成樹脂体が取囲まれている結果、高圧側コンデンサと低圧側コンデンサ間に比較的良好な熱伝導接触が存在し、その事が温度変化に際して分圧比を一定に保つことに有効に作用している。」

(ウ) 2頁右上欄11行〜左下欄8行
「本発明に依る計器用変圧器の場合、それ自体一つの独立した構造部分を形成する低圧側コンデンサは色々な方法で構成され得る。もし低圧側コンデンサがそれ自体合成樹脂内に鋳込まれていて、一つの合成樹脂構成要素を形成しているとすれば、それは有利なものと見なされる。低圧側コンデンサ用に合成樹脂を使用することは、高圧側コンデンサ用合成樹脂体の外側に配置された低圧側コンデンサに対する機械的保護となる利点を有するのみならず、とりわけ円形に巻いたものと共に特に有利と思われる平板コンデンサの如き低圧側コンデンサの構造の場合に次のような付加的な利点を得ることとなるのである。即ち低圧側コンデンサ用誘電体として合成樹脂が使われることになり、その結果高圧側コンデンサにも、低圧側コンデンサにも誘電体として合成樹脂が存在していることとなる。この事は温度変化があっても分圧比を一定に保つ事に有利に作用する。」

(エ) 2頁左下欄15行〜右下欄11行
「この発明の説明のため第1図には、円形に巻いたコンデンサとして構成された低圧側コンデンサ付き計器用変圧器の一実施例が示されている。一方第2図には平板コンデンサとして構成された低圧側コンデンサ付の実施例が示されている。第3図には第2図の実施例の一部が再掲されている。
第1図の計器用変圧器は内部に内部導体2が埋め込まれた合成樹脂体1を有している。内部導体2は図示されていない方法で同じく図示されていない密閉形開閉設備の内部導体と接続されている。計器用変圧器は合成樹脂体1のモールドフランジ3により密閉形開閉設備と気密接続可能である。円筒状を示す合成樹脂体1は外面の幾分中央寄りの部分に測定電極4を担っている。その測定電極は高圧電極として作用する内部導体2と共に、図中電気的回路記号で示した高圧側コンデンサ5を形成している。」

(オ) 2頁右下欄12行〜3頁左上欄15行
「合成樹脂体1は低圧側コンデンサとして合成樹脂塊7の中に埋め込まれた円形に巻いたコンデンサ6に取り囲まれている。合成樹脂塊7の中の円形に巻いたコンデンサ6と合成樹脂体1との間には、良好な熱伝導性物質で満たされた中間空間8があいている。この物質の場合流体絶縁物か、流動的に注入できて後に硬化する絶縁物かであることが肝要である。合成樹脂塊7の中の円形に巻いたコンデンサ6によって合成樹脂体1のまわりを完全に取り囲んでいるという点から見ると両部品間に良好な熱伝導があることは明らかであり、その熱伝導は中間空間8内の良好な熱伝導性物質によりもっと強められる。この結果、合成樹脂体1により構成される高圧側コンデンサ並びに円形に巻いたコンデンサにより構成される低圧側コンデンサは常に大体同じ温度になっている。このことは高圧側コンデンサと低圧側コンデンサとから成る分圧器の分圧比を一定に保つ上で有利である。接続導体9によって導電性被覆4が円形に巻かれたコンデンサ6と接続され、その円形巻きコンデンサが低電圧側の端で別な導体10により、ここに図示されていない密閉形開閉設備の接地カプセルと接続されることでこの分圧器は完全なものとなる。」

(カ) 3頁左上欄16行〜右上欄3行
「合成樹脂塊7内の円形巻きコンデンサ6の組立は図1に描かれた実施例の場合は、合成樹脂塊7は図1の上端から合成樹脂体1の上に押しかぶされ、合成樹脂体1のフランジ3にぐるりとめぐらされた溝11にその下端をはめ込ませるという方法で良好に実施される。合成樹脂体1の外面で上端部にネジ込むことのできる調整リング12によって合成樹脂塊7はその位置を固定されている。」

(キ) 3頁右上欄4〜12行
「図示されていない方法で接地されているシールド電極を作り出す為に、導電性被覆4を担っている領域の下半分並びに合成樹脂体1の上半分全体に存在する部分にはその表面に別の導電性被覆13と14とが備わっている。これらの被覆は製造する時に導電性被覆4と共にこれと関連した被覆として合成樹脂体1上に作られたものである。後から溝15と16とを施削することによって導電性被覆4とシールド電極13と14が作られる。」

(ク) Fig.1




引用発明の認定
(ア) 引用文献1の2頁左下欄15行〜右下欄11行の「内部導体2は図示されていない方法で同じく図示されていない密閉形開閉設備の内部導体と接続されている。計器用変圧器は合成樹脂体1のモールドフランジ3により密閉形開閉設備と気密接続可能である。」という記載と、Fig.1から、内部導体2の下側に密閉形開閉設備が存在し、内部導体2の下端部は密閉形開閉設備の内部導体と接続され、上端部には何も接続されていないことが読み取れる。

(イ) 前記アの記載事項及び上記(ア)の認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
<引用発明>
「密閉形開閉設備の金属カプセルに取付けられ、コンデンサ形分圧器部分を含んだ構成要素を備えた計器用変圧器であって(1頁左欄17行〜右欄20行)、
コンデンサ形分圧器の低圧側コンデンサはそれ自体独立した組立体を構成し、合成樹脂体を囲むように配設されたものであり(1頁左欄17行〜右欄20行)、
低圧側コンデンサは、計器用変圧器の分圧比に有利に作用する比較的大きな静電容量を備え得るものであり(2頁左上欄1〜20行)、
内部に内部導体2が埋め込まれた、誘電体である合成樹脂体1を有し、
内部導体2の下端部は密閉形開閉設備の内部導体と接続され、上端部には何も接続されておらず、
円筒状を示す合成樹脂体1は外面の幾分中央寄りの部分に測定電極4となる導電性被覆4を担っており、その測定電極は高圧電極として作用する内部導体2と共に、高圧側コンデンサ5を形成しており(2頁左下欄15行〜右下欄11行、Fig.1(「合成樹脂体1」が誘電体である点については2頁右上欄11行〜左下欄8行、「測定電極4」が「導電性被覆4」である点については、3頁右上欄4〜12行))、
合成樹脂体1は低圧側コンデンサとして合成樹脂塊7の中に埋め込まれた円形に巻いたコンデンサ6に取り囲まれ(2頁右下欄12行〜3頁左上欄15行)、
接地されているシールド電極を作り出す為に、導電性被覆4を担っている領域の下半分並びに合成樹脂体1の上半分全体に存在する部分にはその表面に別の導電性被覆13と14とが備わっており、これらの被覆は製造する時に導電性被覆4と共にこれと関連した被覆として合成樹脂体1上に作られたものであり、後から溝15と16とを施削することによって、導電性被覆4とシールド電極13と14が作られる(3頁右上欄4〜12行)、
計器用変圧器。」

(2) 引用文献2に記載された事項の認定
ア 引用文献2に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願の優先日前に発行された前記引用文献2には、以下の事項が記載されている。翻訳文は、当合議体によるものである。

(ア) 12欄25〜33行
「FIG. 5 shows a voltage measuring capacitor 60 having the essential features of the capacitor described with reference to FIG. 2. The capacitor 60 is spliced at one to a high voltage power cable 62.
The capacitor 60 has an inner aluminium tubular electrode 64 with a conductive smoothing layer 66 thereon. A polymeric insulating tube 68 is recovered on to the inner electrode 64 to form the dielectric of the capacitor.」
(図5は、図2を参照して説明したコンデンサの本質的な特徴を有する電圧測定コンデンサ60を示す。コンデンサ60は、高電圧電力ケーブル62に一体となって接続されている。コンデンサ60は、その上に導電性平滑層66を有するアルミニウム管状の内部電極64を有する。ポリマー絶縁管68は、内部電極64を覆い、コンデンサの誘電体を形成する。)

(イ) Fig.5




(ウ) FIg.5等から読み取れる事項
12欄25〜33行の記載とFig.5から、高電圧電力ケーブル62の内部電極64と、高電圧電力ケーブル62に接続される電圧測定コンデンサ60の誘電体を形成する絶縁管68の間に、導電性平滑層66が形成されていることが読み取れる。

イ 引用文献2に記載された事項の認定
前記アを総合すると、引用文献2には、次の事項が記載されているものと認められる。

<引用文献2記載事項>
「高電圧電力ケーブル62の内部電極64と、高電圧電力ケーブル62に接続される電圧測定コンデンサ60の誘電体を形成する絶縁管68の間に、導電性平滑層66を形成すること(12欄25〜33行、Fig.5)。」

(3) 引用文献6に記載された事項の認定
ア 引用文献6に記載された事項
当審拒絶理由に引用され、本願の優先日前に発行された前記引用文献6には、以下の事項が記載されている。なお、翻訳文は前記引用文献6の日本語文献のパテントファミリーである特表2016−511826号公報を参考にして当合議体が作成した。【】内に当該公報の該当箇所の段落番号を示す。

(ア) 1頁6〜10行
「Field of the Invention
The invention relates to sleeves suitable for use on conductors such as those in electrical power cables, to methods for creating such sleeves, to high- or medium-voltage current-carrying devices for power networks, such as power cables, comprising such sleeves, and to power distribution networks comprising current-carrying devices, such as cables, having such sleeves.」
(【0001】本発明の技術分野。
本発明は、送電線の導体などの導体での使用に好適なスリーブ、かかるスリーブの作製方法、かかるスリーブを含む電力ケーブルなど電力ネットワーク用の高電圧又は中電圧通電装置、及びかかるスリーブを有するケーブルなど通電装置を含む配電ネットワークに関する。)

(イ) 1頁36行〜2頁8行
「A voltage sensor for a power cable may require a plurality of electric or electronic components, like, for example, electrodes, wires, capacitors, transistors, resistors, inductors, wire coils, or integrated circuits. These components can be accommodated outside a sleeve, but being exposed outside the sleeve, these components may be damaged, affected by environmental conditions, experience short circuit, or may cause a risk of personal injury by an electrical shock. It would thus be desirable to arrange electric components in a manner that avoids these risks. It is further desirable to arrange the electric components in a mechanically stable and orderly manner, close to each other for facilitating electrical connections between them. The sleeve, that is to protect the cable in the section where a voltage sensor is installed, should furthermore be easy to apply to the cable.」
(【0004】電力ケーブルの電圧センサは、例えば、電極、電線、コンデンサ、トランジスタ、レジスタ、インダクタ、電線コイル、又は集積回路など複数の電気的又は電子的構成要素を必要とし得る。これらの構成要素はスリーブ外に収容できるが、スリーブ外で露出していると、これらの構成要素は損傷し得、環境条件の影響を受け、短絡をし、電気ショックによる人体損傷のリスクを引き起こし得る。したがって、これらのリスクを回避する方法で、電気的構成要素を配置することが望ましい。機械的に安定しており、規則的な方法で、これらの間の電気的接続を促進するために互いに近接して電気的構成要素を配置することが更に望ましい。したがって、スリーブ(電圧センサが設置される区域内のケーブルを保護する)がケーブルに更に容易に適用されるべきである。)

(ウ) 2頁11〜20行
「The present invention addresses these needs. The invention provides, in a first aspect, a sleeve for a high- or medium-voltage power cable, the cable comprising an inner conductor defining axial and radial directions, wherein the sleeve comprises a tubular sleeve body having a first axial electrode section, which section is electrically conductive or semiconductive, characterized in that the sleeve is radially expandable and arrangeable radially outward of the inner conductor when expanded, such that the first axial electrode section is radially separated from the inner conductor by at least an electrically insulating spacer layer, and in that the sleeve further comprises a circuit board, at least partially arranged radially outward of the sleeve body, comprising a first electrical contact which is electrically connected with the first axial electrode section.」
(【0005】本発明は、これらの必要性に対処する。本発明は、第1態様では、高電圧又は中電圧の電力ケーブル用のスリーブを提供し、このケーブルは、軸方向及び径方向を規定する内部導体を含み、このスリーブは、導電性又は半導電性である第1軸方向電極区域を有する管状のスリーブ本体を含み、この区域は導電性又は半導電性であり、スリーブが径方向に拡張可能であってかつ拡張時に内部導体の径方向外側に配置可能である(第1軸方向電極区域が少なくとも電気絶縁性のスペーサ層によって内部導体から径方向に分離される)ことを特徴としており、かつ、スリーブが、スリーブ本体の径方向外側に少なくとも部分的に配置され、第1軸方向電極区域と電気的に接続される第1電気接点を含む回路基板を更に含むことを特徴とする。)

(エ) 2頁32〜33行
「The word "sleeve" implies an arrangement around a cable or elements of a cable. The sleeve according to the disclosure comprises a body and a circuit board.」
(【0007】「スリーブ」という用語は、ケーブル又はケーブルの要素の周囲にある配置物を意味する。本開示によるスリーブは、本体と回路基板を含む。)

(オ) 4頁4〜16行
「The sleeve according to the disclosure comprises a tubular sleeve body, a jacket, and a circuit board. The sleeve body may comprise the radially innermost layer of the sleeve. The tubular sleeve body may have one or more axial sections. An axial section of the body is a section of the body extending in an axial direction. The sleeve body has a first axial electrode section. The first axial electrode section is electrically conductive or electrically semiconductive. It may be a tubular section, but may alternatively have a different shape. In certain embodiments, the first axial electrode section extends over a complete circumference, but in other embodiments it may extend over only a part of the complete circumference, without this affecting the first axial electrode section being operable to form an electrode of a sensing capacitor of a voltage sensor for sensing a voltage of the inner conductor of the power cable. The same applies to further axial electrode sections. In the context of the present disclosure, the term "(semi-) conductive" is to express that an element is electrically conductive or electrically semiconductive. The first axial electrode section is radially expandable or radially shrinkable.」
(【0011】本開示によるスリーブは、管状のスリーブ本体と、ジャケットと、回路基板を含む。スリーブ本体は、スリーブの径方向最内層を含んでよい。管状のスリーブ本体は、1つ以上の軸区域を有してよい。本体の軸区域は、軸方向に延在する本体の区域である。スリーブ本体は第1軸方向電極区域を有する。第1軸方向電極区域は、導電性又は半導電性である。これは、管状区域であってよいが、あるいは別の形状を有してよい。あるいくつかの実施形態では、第1軸方向電極区域は、全周にわたって延在するが、他のいくつかの実施形態では、第1軸方向電極区域が、電力ケーブルの内部導体の電圧を検出する電圧センサの検出コンデンサの電極を形成するように動作可能であることに影響を及ぼすことなく、全周の一部のみにわたって延在してもよい。同じことが更なる軸方向電極区域にも該当する。本開示の文脈において、用語「(半)導電性」は、要素が導電性又は半導電性であることを表す。第1軸方向電極区域は、径方向に拡張可能であるか、径方向に収縮可能である。)

(カ) 4頁34行〜5頁2行
「The first axial electrode section is electrically (semi-) conductive. The first axial electrode section of a shrinkable sleeve body may comprise an elastic, radially shrinkable, electrically (semi-) conductive silicone. The first axial electrode section may be operable as an electrode of a capacitor. The capacitor may form a part of a capacitive voltage divider, which is comprised in a capacitive voltage sensor for sensing a voltage of the inner conductor.」
(【0012】第1軸方向電極区域は、電気的に(半)導電性である。第1軸方向電極区域は、弾性の、径方向に拡張可能な(半)導電性シリコーンを含んでよい。第1軸方向電極区域は、コンデンサの電極として動作可能であってよい。このコンデンサは、容量式分圧器の一部を形成してよく、内部導体の電圧を検出する容量式電圧センサに含まれる。)

(キ) 7頁10〜19行
「The sleeve according to the present disclosure comprises a circuit board, arranged radially outward of the sleeve body. The circuit board may provide a support for electric or electronic components, that can be mounted on the circuit board. It may also provide electrical connections between such components, e.g. by providing conductive traces or conductive paths on one of its surfaces. The circuit board may be a printed circuit board. The circuit board may comprise an electric or electronic component. The electric or electronic component may be operable as a component of a sensor for sensing a voltage or a current or a temperature of the inner conductor of the power cable. The circuit board may comprise at least a capacitor element. The capacitor element may be operable as a secondary capacitor in a capacitive voltage divider, operable for sensing a voltage of the inner conductor of the power cable.」
(【0020】本開示によるスリーブは、スリーブ本体の径方向外側に配置された回路基板を含む。回路基板は、回路基板上に取り付けられ得る電気的又は電子的構成要素を支持してよい。また、例えば、その表面の1つで導電性トレース又は導電路を提供することにより、かかる構成要素間で電気的接続を提供してよい。回路基板は、プリント基板であってよい。回路基板は、電気的又は電子的構成要素を含んでよい。電気的又は電子的構成要素は、電力ケーブルの内部導体の電圧、又は電流、又は温度を検出するセンサの構成要素として動作可能であってよい。回路基板は、少なくともコンデンサ要素を含んでよい。コンデンサ要素は、容量式分圧器内の2次コンデンサとして動作可能であってよく、電力ケーブルの内部導体の電圧を検出するために動作可能である。)

(ク) 17頁23〜29行
「Figure 1 is a longitudinal section of a first sleeve 1 according to the present disclosure. The sleeve is a radially expandable sleeve 1 and comprises a tubular sleeve body 10, a jacket 20 and a circuit board 30. The sleeve 1 is for use on a power cable, the length direction of which defines axial directions indicated by arrow 40, and radial directions perpendicular thereto, one of which is indicated by arrow 50. The sleeve body 10 comprises a single axial electrode section 60, generally also called the first axial electrode section 60. The sleeve body 10, i.e. the first axial electrode section 60, is made of an electrically conductive silicone rubber.」
(【0051】図1は、本開示による第1スリーブ1の長手方向区域である。スリーブは、径方向に拡張可能なスリーブ1であり、管状のスリーブ本体10と、ジャケット20と、回路基板30と、を含む。スリーブ1は電力ケーブル用であり、その長さ方向は、矢印40で示される軸方向及びそれに対して直角であり、そのうちの1つが矢印50で示される径方向を規定する。スリーブ本体10は、単一の軸方向電極区域60(概して、第1軸方向電極区域60とも呼ばれる)を含む。スリーブ本体10、すなわち、第1軸方向電極区域60は、導電性シリコーンゴムで作製されている。)

(ケ) 19頁10〜12行
「Figure 2 shows, in longitudinal section, the sleeve 1 of Figure 1 arranged on an insulating layer 140 of a power cable 120. The Figure is not to scale, and some radial and axial dimensions have been exaggerated for greater clarity.」
(【0054】図2は、電力ケーブル120の絶縁層140に配置された、図1のスリーブ1を長手方向区域で示す。この図は、縮尺に従っていない。一部の径方向寸法及び軸方向寸法は、より明確にするために拡大されている。)

(コ) 19頁33行〜20頁5行
「Figure 3 is a longitudinal section of an alternative expandable sleeve 2 according to the present disclosure. The Figure is not to scale, and some radial and axial dimensions have been exaggerated for greater clarity. The alternative sleeve 2 is similar to the sleeve 1 of Figures 1 and 2 in that it comprises a tubular, radially expandable sleeve body 10, which has one single axial electrode section 60, a jacket 20, and a circuit board 30 having a first electrical contact 100. The circuit board 30 is arranged circumferentially around the sleeve body 10. Unlike in Figures 1 and 2, electric components 170 are shown, which are arranged on the circuit board 30. In contrast to the sleeve 1 of Figure 1 and 2, the circuit board 30 extends along more than half of the circumference of the sleeve body 10.」
(【0056】図3は、本開示による別の拡張可能なスリーブ2の長手方向区域である。この図は、縮尺に従っていない。一部の径方向寸法及び軸方向寸法は、より明確にするために誇張されている。別のスリーブ2は、管状で、径方向に拡張可能なスリーブ本体10を含むという点で図1及び2のスリーブ1に類似であり、単一の軸方向電極区域60と、ジャケット20と、第1電気接点100を有する回路基板30と、を有する。回路基板30は、スリーブ本体10の周囲に円周方向に配置される。図1及び2とは異なって、電気的構成要素170が図示されており、それは回路基板30に配置される。図1及び2のスリーブ1とは対照的に、回路基板30は、スリーブ本体10の外周の半分以上に沿って延在する。)

(サ) 21頁24行〜22頁17行
「While the sleeve bodies 10 of the sleeves 1 , 2 shown in Figures 1 , 2 and 3 have a single axial electrode section 60, an alternative expandable sleeve 3, shown in Figure 4, comprises a radially expandable sleeve body 1 1 having three axial electrode sections, namely a first axial electrode section 60, a second axial electrode section 61 , and a third axial electrode section 62. These axial electrode sections 60, 61 , 62 are electrically conductive. The second axial electrode section 61 and the third axial electrode section 62 cooperate electrically to shape the electric field such that it is more homogenous in the position of the first axial electrode section 60, where a voltage of the inner conductor 130 of the cable 120 is sensed. This increases the precision of the voltage measurement. The axial electrode sections 60, 61 , 62 are made of an electrically conductive silicone rubber. They are separated by a first axial separation section 200 and second axial separation section 201 , respectively. The separation sections 200, 201 are electrically non-conductive. The axial electrode sections 60, 61 , 62 and the axial separation sections 200, 201 are radially expandable. The inner diameters of the axial electrode sections 60, 61 , 62 and of the axial separation sections 200, 201 are identical and chosen such that when the sleeve 3 is not expanded, their inner diameters are slightly smaller than the outer diameter of an insulating layer, arranged around an inner conductor of a power cable, onto which the sleeve 3 is to be pushed or placed. When the sleeve 3 is pushed or placed onto the insulating layer, the sleeve body 10 can be expanded and forms a tight elastic fit around the insulating layer after pushing it on. The sleeve body 10 has a cylindrical outer surface 70. A circuit board 31 with its first electrical contact 101 is arranged on the first axial electrode section 60. It extends circumferentially around more than half of the circumference of the first axial electrode section 60. The circuit board 31 is identical to the circuit board 30 shown in Figures 1 to 3, except that its first electrical contact 101 covers the entire inner major surface 80 of the circuit board 31 . The contact 101 comprises a conductive region which provides an extended surface contact area. This results in a more reliable electrical contact between the first axial electrode section 60 and the first electrical contact 101 . Electric components are arranged on the outer major surface of the circuit board 31 , but they are not shown in Figure 4. The jacket 20 is similar to the jacket 20 shown in Figures 1 to 3. It covers the circuit board 31 and extends axially far enough to cover the axial separation sections 200, 201 and portions of the second and third axial electrode sections 61 , 62, respectively.」
(【0060】図1、2、及び3に示されるスリーブ1、2のスリーブ本体10は単一の軸方向電極区域60を有するのに対して、代替的拡張可能なスリーブ3(図4に示される)は、3つの軸方向電極区域、すなわち、第1軸方向電極区域60、第2軸方向電極区域61、及び第3軸方向電極区域62を有する径方向に拡張可能なスリーブ本体11を有する。これらの軸方向電極区域60、61、62は導電性である。第2軸方向電極区域61及び第3軸方向電極区域62は、ケーブル120の内部導体130の電圧が検出される第1軸方向電極区域60の位置においてより均質な電界を形成するように、電気的に連携する。これによって、電圧測定の精度が向上する。軸方向電極区域60、61、62は、導電性シリコーンゴムで作製されている。これらは、それぞれ第1軸方向分離区域200及び第2軸方向分離区域201によって分離される。分離区域200、201は非導電性である。軸方向電極区域60、61、62、及び軸方向分離区域200、201は、径方向に拡張可能である。軸方向電極区域60、61、62及び軸方向分離区域200、201の内径は同一であり、スリーブ3の非拡張時に、これらの内径が、スリーブ3が押し付けられるか、配置される電力ケーブルの内部導体の周囲に配置された絶縁層の外径よりもやや小さいように選択される。スリーブ3が絶縁層に押し付けられるか、配置されると、スリーブ本体10は拡張でき、押し付け後に、絶縁層の周囲に緊密な弾性適合を形成する。スリーブ本体10は、円筒状の外側表面70を有する。第1電気接点101を有する回路基板31は、第1軸方向電極区域60に配置される。これは、第1軸方向電極区域60の外周の半分以上の周囲に円周方向に延在する。回路基板31は、その第1電気接点101が回路基板31の内側主表面80の全体を被覆する点を除いて、図1〜3に示される回路基板30と同一である。接点101は、拡張表面接触領域をもたらす導電性領域を含む。これは、第1軸方向電極区域60と第1電気接点101との間により信頼性の高い電気接点をもたらす。電気的構成要素は、回路基板31の外側主表面に配置されるが、これらは図4に示されない。ジャケット20は、図1〜3に示されるジャケット20に類似している。これは、回路基板31を被覆し、軸方向に十分に延在して、軸方向分離区域200、201、並びに第2及び第3軸方向電極区域61、62の一部をそれぞれ被覆する。)

(シ) Fig.1




(ス) Fig.2




(セ) Fig.3




(ソ) Fig.4




イ 引用文献6に記載された事項の認定
(ア) 引用文献6のFig.4から、回路基板31が有する第1電気接点101と、スリーブ本体が有する導電性の第1軸方向電極区域60が、直接的に接触していることが読み取れる。

(イ) 前記アの(ウ)及び(サ)の記載から、Fig.1〜4は、高電圧又は中電圧の電力ケーブル用のスリーブであって、スリーブが、スリーブ本体の径方向外側に少なくとも部分的に配置され、第1軸方向電極区域と電気的に接続される第1電気接点を含む回路基板を更に含むものであり、Fig.4に示されるスリーブは、Fig.1〜3に示されるスリーブに対して、代替的なもの、すなわちFig.1〜3に示されるスリーブとは、別構成のスリーブであることが読み取れる。

(ウ) 前記アの記載事項及び前記(ア)及び(イ)の認定事項を総合すると、引用文献6には、次の事項が記載されているものと認められる。

<引用文献6記載事項>
「高電圧の電力ケーブル用のスリーブ本体の径方向外側に、電力ケーブルの内部導体の電圧を検出する容量式分圧器内の2次コンデンサを含むプリント回路基板を配置するものにおいて(2頁11〜20行、7頁10〜19行)、
スリーブ本体が有する導電性の第1軸方向電極区域は、全周にわたって延在し、電力ケーブルの内部導体の電圧を検出する容量式電圧センサに含まれ、容量式分圧器の一部を形成するコンデンサの電極として動作可能であり(4頁4〜16行、4頁34行〜5頁2行)、
回路基板は、第1軸方向電極区域と電気的に接続される第1電気接点を含み(2頁11〜20行)、
第1電気接点101と第1軸方向電極区域60は、直接的に接触し(Fig.4)
第1電気接点101を有する回路基板31は、第1軸方向電極区域60の外周の周囲に円周方向に延在して配置されていること(21頁24行〜22頁17行)。」

2 対比
(1) 本願発明と引用発明の対比
本願発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「内部導体2」は、本願発明の「導体」に相当する。
引用発明の内部導体2の「下端部」は、密閉形開閉設備の内部導体と接続されているから、本願発明の「第1接続インターフェースを含む第1端部」に相当する。
引用発明の内部導体2の「上端部」は、何も接続されていないから、本願発明の「接続を有さない第2端部」に相当する。

イ(ア) 引用発明における「内部導体2」と、本願発明における「導体と接触する内側遮蔽層」は、電気伝導性部材の点で共通する。
(イ) 引用発明の「誘電体である合成樹脂体1」は、本願発明の「絶縁層」に相当する。そして、本願発明における「前記導体と接触する」「内側遮蔽層上に配置された絶縁層」と、引用発明の「内部に内部導体2が埋め込まれた、誘電体である合成樹脂体1」は、「前記電気伝導性部材上に配置された絶縁層」である点で共通する。
(ウ)a 本願発明における「絶縁層上に配置され[た]」「外側遮蔽層」には、明細書における「導電性、又は半導電性材料(絶縁遮蔽)層108」(明細書の段落【0019】、【0023】等を参照)が対応することも考慮すると、引用発明における「合成樹脂体1上に作られた」「導電性被覆4」は、本願発明における「絶縁層上に配置され[た]」「外側遮蔽層」に相当する。
b 本願発明の「外側遮蔽層」は「電気的に絶縁された」との修飾語があるところ、何から絶縁されているのか、必ずしも明瞭でないので、本願の明細書の記載を参照すると、段落【0023】に「電気的に絶縁された区分はしたがって、導電体102に容量結合され、地電位から電気的に絶縁され得る。」との記載があるから、アース電位から絶縁され、容量結合されていることの意味であることが理解される。
c 引用発明においては、「接地されているシールド電極を作り出す為に、導電性被覆4を担っている領域の下半分並びに合成樹脂体1の上半分全体に存在する部分にはその表面に別の導電性被覆13と14とが備わっており、これらの被覆は製造する時に導電性被覆4と共にこれと関連した被覆として合成樹脂体1上に作られたものであり、後から溝15と16とを施削することによって、導電性被覆4とシールド電極13と14が作られる」から、導電性被覆4は、接地されるシールド電極13と14と絶縁されていることは明らかである。
d 上記aからcの検討結果を踏まえると、引用発明の「導電性被覆4」は、本願発明における「前記絶縁層上に配置され、電気的に絶縁された外側遮蔽層」に相当する。
(エ) 前記(ア)から(ウ)の検討結果をまとめると、本願発明における「内側遮蔽層」、「絶縁層」及び「外側遮蔽層」を有する「容量性電圧センサ」と引用発明における「高圧側コンデンサ5」は、次の点で一致する。
「 電気伝導性部材と、
前記電気伝導性部材上に配置された絶縁層と、
前記絶縁層上に配置され、電気的に絶縁された外側遮蔽層と、
を有する容量性電圧センサ」

ウ 引用発明の「低圧側コンデンサ」と、本願発明の「前記電圧又は前記電圧のサンプルと前記センサ区分の出力との分圧比を調整するための少なくとも1つの比率調節コンデンサを有するプリント回路基板」は、分圧するための「コンデンサ」という点で共通する。

エ 引用発明においては、測定電極4となる導電性被覆4、シールド電極13、14となる導電性被覆13、14を備えており、これらの被覆は製造する時に、関連した被覆として合成樹脂体1上に作られ、後から溝15と16とを施削することによって、互いに電気的に絶縁されたものである。
そうすると、引用発明の「測定電極4となる導電性被覆4」及び「シールド電極13、14となる導電性被覆13、14」は、互いに電気的に絶縁されているから、それぞれ本願発明の「絶縁区分」及び「外側遮蔽層の他の一部」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明は、「外側遮蔽層は、前記外側遮蔽層の他の一部から電気的に絶縁された絶縁区分を有」する点で一致する。

オ(ア) 本願発明の「センサ区分」に関して、本願明細書の段落【0005】には、「一態様において、センサ区分は、電圧センサを含む。電圧センサの第1電極は、導体を含み得る。あるいは、電圧センサの第1電極は、導体と接触した内側遮蔽層を備える。電圧センサは更に、絶縁された内側遮蔽層の上に配置された絶縁層と、絶縁層の上に配置された、電気的に絶縁された外側遮蔽層とを含む。」と記載されている。また、段落【0023】には、「感知区分125は、絶縁層106の外側表面と接触する、導電性又は半導電性材料(絶縁遮蔽)層108の電気的に絶縁された区分110を含む。導電性、又は半導電性材料(絶縁遮蔽)層108の電気的に絶縁された区分110は、容量性分圧器又はセンサの感知コンデンサの電極を形成している。電気的に絶縁された区分はしたがって、導電体102に容量結合され、地電位から電気的に絶縁され得る。加えて、絶縁層106は、容量性分圧器又はセンサの感知コンデンサの誘電体を形成するように動作可能である。」と記載されている。
(イ) 上記(ア)の点を踏まえると、分圧するための二つのコンデンサを有し、外側遮蔽層の絶縁区分を有するものは、「センサ区分」であるということができる。
(ウ) 引用発明の「コンデンサ形分圧器部分」が「内部導体2」が取り得る電圧を感知するものであることは、明らかである。
(エ) 上記(イ)及び(ウ)の点並びに前記アからエの点を踏まえると、引用発明における、「測定電極4となる導電性被覆4」を有し、「低圧側コンデンサ」及び「高圧側コンデンサ」を備える「コンデンサ形分圧器部分」は、本願発明における「少なくとも1つのセンサを含む」「前記導体の少なくとも1つの電圧を感知する」「センサ区分」に相当する。

カ 上記アからオの検討結果も踏まえると、「電圧センサ」の発明である本願発明と、「計器用変圧器」の発明である引用発明が、「電圧センサ」の発明の点で一致することは明らかである。

(2) 一致点及び相違点
上記(1)の検討を総合すると、本願発明と引用発明の両者は、次の一致点において一致し、以下の相違点において相違する。

<一致点>
第1接続インターフェースを含む第1端部及び接続を有さない第2端部を有する導体と、
少なくとも1つのセンサを含むセンサ区分であって、前記センサは、前記導体の少なくとも1つの電圧、又は前記電圧のサンプルを感知する、センサ区分と、
を備え、
前記センサ区分は、
電気伝導性部材と、
前記電気伝導性部材上に配置された絶縁層と、
前記絶縁層上に配置され、電気的に絶縁された外側遮蔽層と、
を有する容量性電圧センサと、
少なくとも1つの分圧のためのコンデンサと、
を備え、
前記外側遮蔽層は、前記外側遮蔽層の他の一部から電気的に絶縁された絶縁区分を有している、
電圧センサ、である点。

<相違点1>
本願発明においては、「導体」と「絶縁層」の間に「内側遮蔽層」を有しており、その結果として、「容量性電圧センサ」の伝導性部材は「導体と接触する」「内側遮蔽層」であり、「絶縁層」が「内側遮蔽層上に配置され」ており、「センサ区分」は「前記導体上の上に配置され[ている]」のに対して、
引用発明においては、内側遮蔽層がなく内部導体2が合成樹脂体1に埋め込まれていて内部導体2と合成樹脂体1が直接接触しており、その結果として「容量性電圧センサ」の伝導性部材に相当するものは「内側遮蔽層」ではなく、「導体」に相当するものであり、当該部材は、センサ区分の構成要素となっている点。

<相違点2>
本願発明においては、分圧するためのコンデンサが「絶縁区分と直接的に接触している」「少なくとも1つの」「コンデンサを有するプリント回路基板」の「コンデンサ」であって、分圧するためのコンデンサは「前記電圧又は前記電圧のサンプルと前記センサ区分の出力との分圧比を調整するための少なくとも1つの比率調節コンデンサ」であるのに対して、
引用発明においては、「分圧するためのコンデンサ」は「低圧側コンデンサ」であって、プリント回路基板に実装されておらず、かつ低圧側コンデンサが、コンデンサ形分圧器の分圧比を調整する比率調節コンデンサであるか明示的でない点。

3 判断
(1) 相違点1について
上記相違点1について検討する。
前記1(2)の「イ 引用文献2に記載された事項の認定」において示したとおり、本願優先日前に発行された文献である引用文献2には、「高電圧電力ケーブル62の内部電極64と、高電圧電力ケーブル62に接続される電圧測定コンデンサ60の誘電体を形成する絶縁管68の間に、導電性平滑層66を形成すること」が記載されている。
そして、引用発明及び引用文献2に記載された事項は、いずれも内部導体を取り囲む絶縁物をコンデンサの誘電体とし、当該コンデンサを用いて前記内部導体の電圧を検出するものであるから、引用発明と引用文献2に記載された事項は、技術分野及び機能・作用を共通とするものである。
したがって、引用発明において、引用文献2に記載された事項に倣って、本願発明における「内側遮蔽層」に相当する「導電性平滑層66」を形成するようにして、上記相違点1に係る構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2) 相違点2について
上記相違点2について検討する。
ア 「コンデンサ」が「プリント回路基板」にある点について
(ア) 前記1(3)の「イ 引用文献6に記載された事項の認定」において示したとおり、本願優先日前に発行された文献である引用文献6には、「高電圧の電力ケーブル用のスリーブ本体の径方向外側に、電力ケーブルの内部導体の電圧を検出する容量式分圧器内の2次コンデンサを含むプリント回路基板を配置するものにおいて、スリーブ本体が有する導電性の第1軸方向電極区域は、全周にわたって延在し、電力ケーブルの内部導体の電圧を検出する容量式電圧センサに含まれ、容量式分圧器の一部を形成するコンデンサの電極としての検出コンデンサの電極を形成するように動作可能であり、回路基板は、第1軸方向電極区域と電気的に接続される第1電気接点を含み、第1電気接点101と第1軸方向電極区域60は、直接的に接触し、第1電気接点101を有する回路基板31は、第1軸方向電極区域60の外周の周囲に円周方向に延在して配置すること」が記載されている。

(イ) ここで、引用文献6記載事項の「第1電気接点」は、「プリント回路基板」に含まれ、「第1軸方向電極区域と電気的に接続される」もの、すなわち「プリント回路基板」の外部との接続端子として機能するものであるから、引用文献6記載事項の「第1電気接点」と「第1軸方向電極区域」が直接的に接触していることは、「第1電気接点」を含む「プリント回路基板」が、「第1電気接点」を介して、「第1軸方向電極区域」と直接的に接触していることを意味する。
一方、本願明細書の段落【0030】には、「容量性電圧センサは、電気的に絶縁された区分110と電気的に接触している、容量性要素(本明細書においてPCB120)を更に含む。一態様において、PCB120は、電気的に絶縁された区分110の付近に、又はその上に直接位置し、絶縁区分110と電気接触するようになっており、絶縁区分110は、絶縁層106の上に配置されている。」と記載されているが、PCBと絶縁区分をどのようにして電気的に接触させているかは記載されておらず不明であるが、PCBと外部の電極(絶縁区分)を電気的に接触させるには、PCBの端子を介して外部の電極(絶縁区分)と接触させることが一般的であることからすれば、本願発明の上記構成と、引用文献6記載事項の「プリント回路基板」が「第1電気接点」を介して「第1軸方向電極区域」と直接的に接触する構成とに実質的に相違するものがあると認められない。

(ウ) そうすると、引用発明は、コンデンサ形分圧器の低圧側コンデンサがそれ自体独立した組立体を構成し、高圧側コンデンサを構成する合成樹脂体1及び測定電極4を取り囲むように設けられているものであるところ、引用文献6に記載された事項における、容量式分圧器内の2次コンデンサを含むプリント回路基板も、1次コンデンサである検出コンデンサを備える電力ケーブルの円周方向に配置し、電力ケーブルとは独立した構造を備えるものであるから、引用発明において、引用文献6に記載された事項に倣い、低圧側コンデンサをプリント回路基板に実装し、プリント回路基板が備える接続端子を介して、プリント回路基板を高圧側コンデンサの電極である「測定電極4」に直接的に接触させるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、相違点2のうち、分圧するためのコンデンサが「絶縁区分と直接的に接触している」「少なくとも1つの」「コンデンサを有するプリント回路基板」の「コンデンサ」である点は、引用発明及び引用文献6に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

イ 「前記電圧と前記センサ区分の出力との分圧比を調整する」「比率調節コンデンサ」である点について
(ア) 本願明細書の段落【0049】には、「別の態様において、感知区分125の電圧比は、絶縁区分110の長さを変化させることによって、又は別の態様においては、絶縁区分110の代わりの、PCB120の長さを変化させることによって調節することができる。」と記載されている。
また、本願明細書の段落【0047】には、「電圧センサ100の設計及び構成により促進される、正確な寸法制御は、センサ区分125の容量性電圧センサによる、正確な電圧測定を可能にする。例えば、コンデンサを形成する、2つの導電性電極、及び絶縁体の幾何学的形状に直接関連する。導電性電圧センサに関し、感知コンデンサは、内側導体102/内側遮蔽層104、絶縁層106、及び電気絶縁区分110から形成される。」と記載されている。
そして、絶縁区分110やPCB120の長さを変化させることや、コンデンサを形成する2つの導電性電極及び絶縁体の正確な寸法制御を行うことは、設計段階又は製造段階のみで可能であることから、上記明細書の記載を参酌すると、本願発明の「分圧比を調整するための」「比率調節コンデンサ」の調節は、「容量が可変であるコンデンサ」の意味ではなく、「設計段階又は製造段階にその容量値を調整する」という意味であり、少なくとも、このような技術的意味が含まれていることは明らかである。

(イ) さらに、本願明細書の段落【0029】には、「上記のように、電圧センサの出力は、電力線の電圧と正比例する波形であり得る。実際の線電圧の、出力電圧に対する分圧比は、任意の所望の電圧に調節することができる。」と記載されているところ、この記載に対応する、本願の国際段階の原文(国際公開第2016/187090号の7ページ32〜34行)には、「As mentioned previously, the output of the voltage sensor can be a waveform that is directly proportional to the voltage of the power line. The division ratio of the actual line voltage to the output voltage can be tailored to any desired voltage.」と記載されており、「任意の所望の電圧に調節する」における「調整」は、原文の「tailored」を翻訳したものであると認められる。
そして、動詞の「tailor」の意味は、「(服を)仕立てる」、「(目的・必要などに)合わせて作る、合わせる」(「ライトハウス英和辞典」第6版、研究社、2012年、1431頁)ということからすれば、【0029】に記載の、「任意の所望の電圧に調節する」は、コンデンサを形成する導電性電極や絶縁体の寸法を正確に制御して、設計段階又は製造段階においてコンデンサの容量値を調整する意味であることは明らかである。

(ウ) 上記(ア)及び(イ)で検討したとおり、本願発明の「調整」は、「設計段階又は製造段階に調整する」という意味、少なくとも、このような意味のものも含まれるところ、引用発明は、低圧側コンデンサに「計器用変圧器の分圧比に有利に作用する比較的大きな静電容量を備え得る」ものであるから、設計段階又は製造段階には当然に、低圧側コンデンサの容量値を比較的大きなものとして設計することで、分圧比の比率調節を行っていることは明らかである。したがって、相違点2のうち、分圧するためのコンデンサは「前記電圧又は前記電圧のサンプルと前記センサ区分の出力との分圧比を調整するための少なくとも1つの比率調節コンデンサ」である点は、実質的には相違点ではない。

ウ 相違点2についてのまとめ
上記ア及びイで検討したとおり、引用発明において上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3) 総合検討
前記相違点1及び相違点2を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献6に記載された技術事項から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献6に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

(4) 請求人の主張について
ア 請求人の主張の内容
請求人は、令和4年1月4日付け意見書において、次の主張をしている。

(ア) 主張1
引用文献1,2,6は、本願発明で特定された事項「前記プリント回路基板が前記絶縁区分と直接的に接触している点」を開示又は示唆していない。この点において、引用文献1の図1では、合成樹脂塊7内に設けられた低圧側コンデンサ6と導電性被膜4との間には中間空間8が設けられており、低圧側コンデンサ6と導電性被膜4は互いに直接的に接触していない。

さらに、引用文献6の図6では、絶縁区分に相当する電極区域60と、電極区域60から電気的に分離した電極区域61,62にそれぞれ配置された回路基板32が開示されている。回路基板32は、第1電気接点100を介して電極区域60上に配置されており、電極区分60には直接的に配置されていない。このように、引用文献6は、本願発明で特定された事項「前記プリント回路基板が前記絶縁区分と直接的に接触している点」を開示又は示唆していない。また、引用文献6では、各電気接点100,102,103によって各電極区域60,61,62の電圧を感知することが可能となる点が記載されている(23頁目の1−15行参照)。このように、引用文献6では各電気接点を設けることは必要不可欠であると考えられる。(意見書2頁18〜31行参照)

(イ) 主張2
引用文献1では、合成樹脂体1と合成樹脂塊7との間の熱導電性を向上させるために、良好な熱伝導性物質からなる中間空間8が測定電極4と低圧側コンデンサ6との間に設けられている。この結果、高圧側コンデンサと低圧側コンデンサ6との間の分圧比を一定に保つことが可能となる。このような引用文献1の作用効果を鑑みれば、中間空間8を測定電極4と低圧側コンデンサ6との間に設けずに、低圧側コンデンサ6が測定電極4上に直接配置された場合には、高圧側コンデンサと低圧側コンデンサ6との間の分圧比を一定に保つといった引用文献1の動作原理が大きく変更されてしまう。このように、引用文献1では、低圧側コンデンサ6が測定電極4上に直接配置される点に対して阻害要因が存在する。(意見書2頁32〜40行参照)

イ 請求人の主張についての判断
(ア) 主張1について
前記(2)ア(イ)において説示したとおり、本願発明の「プリント回路基板は、前記絶縁区分と直接的に接触している」構成と、引用文献6記載事項の「第1電気接点」を含む「プリント回路基板」が、「第1電気接点」を介して「第1軸方向電極区域」と直接的に接触する構成に、実質的に相違するものがあると認められない。

(イ) 主張2について
前記(2)アにおいて説示したとおり、引用文献6には、1次コンデンサの電極を形成する第1軸方向電極区域に、2次コンデンサを含むプリント回路基板の第1電気接点を直接的に接触させることが記載されている。そして、このように1次コンデンサと2次コンデンサを直接的に接触させた方が、熱伝導率がさらに向上することは明らかであり、そうすると分圧比を一定に保つという引用発明の動作原理が変更されることはないから、引用発明に引用文献6に記載された事項を適用することを阻害する要因が存在するものと認められない。

(ウ) まとめ
したがって、請求人の主張1及び主張2はいずれも採用できないものであり、前記(3)の結論を左右するものではない。


第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献6に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。




 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 岡田 吉美
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-02-17 
結審通知日 2022-02-22 
審決日 2022-03-10 
出願番号 P2017-559801
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01R)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱本 禎広
居島 一仁
発明の名称 電圧センサ  
代理人 野村 和歌子  
代理人 赤澤 太朗  
代理人 浅村 敬一  
代理人 佃 誠玄  

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