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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03F 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03F |
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管理番号 | 1386785 |
総通号数 | 8 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-08-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-03-01 |
確定日 | 2022-01-27 |
事件の表示 | 特願2017−537810「リソグラフィー用下層膜形成材料、リソグラフィー用下層膜形成用組成物、リソグラフィー用下層膜及びその製造方法、並びにレジストパターン形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月 9日国際公開、WO2017/038643、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続等の経緯 特願2017−537810号(以下「本件出願」という。)は、2016年(平成28年)8月25日(先の出願に基づく優先権主張 平成27年8月31日)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。 令和 2年 4月21日付け:拒絶理由通知書 令和 2年 6月18日提出:手続補正書、意見書 令和 2年11月27日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和 3年 3月 1日提出:審判請求書 令和 3年 3月 1日提出:手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を、「本件補正」という。) 第2 原査定の概要 原査定(令和2年11月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 理由1(進歩性)本願の請求項1、8〜13に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において電気回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。 引用文献1:国際公開第2013/024779号 引用文献2:国際公開第2013/024777号 また、原査定の付記として、次の拒絶の理由も指摘されている。 理由2(新規性・進歩性)本願の請求項1、8〜13に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるか、または当該発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条1項3号に該当し、あるいは、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。 引用文献3:特開2013−83939号公報 引用文献4:特開2015−12721号公報 理由3(サポート要件)本件出願の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が、発明の詳細な説明に記載したものであるということができないから、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。 第3 本願発明 本件出願の請求項1〜12に係る発明は、それぞれ、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1〜請12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」などといい、これらを総称して「本願発明」ということがある。)は次のものである。 「 【請求項1】 下記式(1−1)で表される化合物又は下記式(1−1)で表される化合物に由来する構造単位を含む樹脂の少なくともいずれかを含有する、リソグラフィー用下層膜形成材料。 【化1】 (1−1) (式(1−1)中、R1は、炭素数1〜60の2n価の基又は単結合であり、nは1〜4の整数であり、nが2以上の整数の場合、n個の[ ]内の構造単位の構造式は同一であっても異なっていてもよく、qは各々独立して0又は1であり、R3は、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、チオール基であり、同一のナフタレン環又はベンゼン環において同一であっても異なっていてもよく、m5は各々独立して1〜6の整数であり、m6は各々独立して0〜5の整数であり、m5+m6は1〜6の整数であり、但し、R1及びR3からなる群より選択される少なくとも1つはヨウ素原子を含む基である。) 【請求項2】 前記式(1−1)で表される化合物が、下記式(1−2)で表される化合物である、請求項1に記載のリソグラフィー用下層膜形成材料。 (1−2) (式(1−2)中、R1、R3、m、n及びqは、前記と同義である。R1及びR3からなる群より選択される少なくとも1つはヨウ素原子を含む基である。) 【請求項3】 前記式(1−2)で表される化合物が、下記式(1−3)で表される化合物である、請求項2に記載のリソグラフィー用下層膜形成材料。 【化3】 (1−3) (式(1−3)中、qは前記と同義であり、X´は、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜59の1価の基であり、R0は、各々独立して、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子であり、同一のナフタレン環又はベンゼン環において同一であっても異なっていてもよく、p2は各々独立して0〜5の整数であり、但し、X´及びR0からなる群より選択される少なくとも1つはヨウ素原子を含む基である。) 【請求項4】 前記式(1−3)で表される化合物が、下記式(1−4)で表される化合物である、請求項3に記載のリソグラフィー用下層膜形成材料。 【化4】 (1−4) (式(1−4)中、R5は、ヨウ素原子又はヨウ素原子を含む炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、ヨウ素原子を含む炭素数6〜10のアリール基、ヨウ素原子を含む炭素数6〜10の複素環基、ヨウ素原子炭素数2〜10のアルケニル基及びヨウ素原子を含む炭素数1〜30のアルコキシ基から選ばれる1価の基である。) 【請求項5】 前記式(1−4)で表される化合物が、下記式(1−5)又は下記式(1−6)で表される化合物である、請求項4に記載のリソグラフィー用下層膜形成材料。 【化5】 (1−5) 【化6】 (1−6) (式(1−5)及び式(1−6)中、R6は、ハロゲン原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、チオール基及び水酸基からなる群より選ばれる1種以上である。kは1〜5の整数であり、k'は1〜3の整数である。但し、R6の少なくとも1つはヨウ素原子を含む1価の基である。) 【請求項6】 前記式(1−5)又は前記式(1−6)で表される化合物が、下記化合物からなる群より選ばれる1種以上である、請求項5に記載のリソグラフィー用下層膜形成材料。 【化7】 (A−2) 【化8】 (A−3) 【化9】 (A−4) 【化10】 (B−2) 【化11】 (B−3) 【化12】 (B−4) 【請求項7】 請求項1〜6のいずれか一項に記載のリソグラフィー用下層膜形成材料と溶媒とを含有する、リソグラフィー用下層膜形成用組成物。 【請求項8】 酸発生剤をさらに含有する、請求項7に記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物。 【請求項9】 架橋剤をさらに含有する、請求項7又は8に記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物。 【請求項10】 請求項7〜9のいずれか一項に記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物から形成される、リソグラフィー用下層膜。 【請求項11】 請求項7〜9のいずれか一項に記載のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を用いて基板上に下層膜を形成する工程を有する、リソグラフィー用下層膜の製造方法。 【請求項12】 基板上に、請求項7〜9のいずれか一項に記載の下層膜形成用組成物を用いて下層膜を形成する工程、 前記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程、 前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程を有する、レジストパターン形成方法。」 以下、本件出願の請求項1に係る発明を「本願発明1」といい、以下、同様に本件出願の請求項2に係る発明を「本願発明2」などといい、本件出願の請求項1〜12に係る発明を、「本願発明」と総称することがある。 第4 当合議体の判断 1 理由1(進歩性)について 本件補正により、拒絶の理由の対象とされていない請求項(本件補正前の請求項2)に限定された。そして、改めて検討しても、本願発明1〜12は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 原査定の付記について 原査定には、付記として以下の理由2及び理由3が記載されているため、あわせて検討する。 (1) 理由2(進歩性)について 本件補正により、拒絶の理由の対象とされていない請求項(本件補正前の請求項2)に限定された。そして、改めて検討しても、本願発明1〜12は、引用文献3、引用文献4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2) 理由3(サポート要件)について ア 本件出願の明細書の発明の詳細な説明の記載 本件出願の明細書の発明の詳細な説明(以下「本件明細書」という。)には、次の記載がある。なお、下線は合議体が付したものである。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、リソグラフィー用下層膜形成材料、リソグラフィー用下層膜形成用組成物、リソグラフィー用下層膜及びその製造方法、並びにレジストパターン形成方法に関する。 【背景技術】 【0002】 半導体デバイスの製造において、フォトレジスト材料を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われているが、近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールによる更なる微細化が求められている。そして、現在汎用技術として用いられている光露光を用いたリソグラフィーにおいては、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。 【0003】 レジストパターン形成の際に使用するリソグラフィー用の光源は、KrFエキシマレーザー(248nm)からArFエキシマレーザー(193nm)へと短波長化されている。しかしながら、レジストパターンの微細化が進むと、解像度の問題若しくは現像後にレジストパターンが倒れるといった問題が生じてくるため、レジストの薄膜化が望まれるようになる。ところが、単にレジストの薄膜化を行うと、基板加工に十分なレジストパターンの膜厚を得ることが難しくなる。そのため、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半導体基板との間にレジスト下層膜を作製し、このレジスト下層膜にも基板加工時のマスクとしての機能を持たせるプロセスが必要になってきた。 【0004】 現在、このようなプロセス用のレジスト下層膜として、種々のものが知られている。例えば、・・・中略・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 上述したように、従来数多くのリソグラフィー用下層膜形成材料が提案されているが、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスが適用可能な高い溶媒溶解性を有するのみならず、耐熱性及びエッチング耐性を高い次元で両立させたものはなく、新たな材料の開発が求められている。 【0010】 そこで、本発明は、上記従来技術の課題を鑑みてなされたものであり、湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性及びエッチング耐性に優れるフォトレジスト下層膜を形成するために有用なリソグラフィー用下層膜形成材料を提供することを目的とする。」 (イ)「【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明者らは、上記従来技術の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定構造を有する化合物又は樹脂を含有する下層膜形成材料を用いることにより、耐熱性及びエッチング耐性に優れるフォトレジスト下層膜が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。・・・中略・・・ 【発明の効果】 【0013】 本発明に係るリソグラフィー用下層膜形成材料によれば、湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性及びエッチング耐性に優れるフォトレジスト下層膜を形成することができる。」 (ウ)「【発明を実施するための形態】 【0014】 以下、本発明の実施をするための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されない。 【0015】 [リソグラフィー用下層膜形成材料] 本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料は、下記式(1)で表される化合物又は下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位を含む樹脂の少なくともいずれかを含有する。 【化14】 (1) (式(1)中、R1は、炭素数1〜60の2n価の基又は単結合であり、R2は各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、チオール基又は水酸基であり、同一のナフタレン環又はベンゼン環において同一であっても異なっていてもよく、nは1〜4の整数であり、nが2以上の整数の場合、n個の[ ]内の構造単位の構造式は同一であっても異なっていてもよく、Xは酸素原子、硫黄原子又は無架橋であることを表し、m2は各々独立して0〜7の整数であり、ここで、少なくとも1つのm2は1〜7の整数であり、qは各々独立して0又は1であり、但し、R1及びR2からなる群より選択される少なくとも1つはヨウ素原子を含む基である。) 【0016】 上記式(1)中、Xは酸素原子、硫黄原子又は無架橋であることを表す。このXを介して各々の芳香環が任意の位置で結合している。 【0017】 R1は、炭素数1〜60の2n価の基又は単結合であり、このR1を介して各々の芳香環が任意の位置で結合している。該2n価の基とは、例えば、n=1のときには、炭素数1〜60のアルキレン基、n=2のときには、炭素数1〜60のアルカンテトライル基、n=3のときには、炭素数2〜60のアルカンヘキサイル基、n=4のときには、炭素数3〜60のアルカンオクタイル基のことを示す。また、該2n価の基としては、特に限定されないが、例えば、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基又は脂環式炭化水素基を有するものが挙げられる。ここで、脂環式炭化水素基については、有橋脂環式炭化水素基も含まれる。 【0018】 また、該2n価の基は二重結合、ヘテロ原子又は炭素数6〜30の芳香族基を有していてもよい。さらに、該芳香族基はシアノ基、ニトロ基、複素環基、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の分岐状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の環状脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、チオール基又は水酸基を有していてもよい。 【0019】 R2は各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、チオール基又は水酸基であり、同一のナフタレン環又はベンゼン環において同一であっても異なっていてもよい。 【0020】 nは1〜4の整数であり、nが2以上の整数の場合、n個の[ ]内の構造単位の構造式は同一であっても異なっていてもよい。m2は各々独立して0〜7の整数である。但し、少なくとも1つのm2は1〜7の整数である。qは各々独立して0又は1である。 【0021】 また、上記式(1)中、R1及びR2からなる群より選択される少なくとも1つはヨウ素原子を含む基である。なお、「R1及びR2からなる群より選択される少なくとも1つ」とは、「R1及びR2からなる群より選択される少なくとも1個の基」であることを意味し、「R1及びR2からなる群より選択される少なくとも1種の基」であることを意味するものではない。 【0022】 ヨウ素原子を含む基とは、R1については、特に限定されないが、例えば、ヨウ素原子で置換された炭素数1〜60の直鎖状炭化水素基、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜60の分岐状炭化水素基、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜60の脂環式炭化水素基、ヨウ素原子で置換された炭素数6〜60の芳香族基又はヨウ素原子で置換された炭素数6〜60の芳香族基を有する基等が挙げられる。耐熱性の点から、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜60の分岐状炭化水素基、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜60の脂環式炭化水素基、ヨウ素原子で置換された炭素数6〜60の芳香族基又はヨウ素原子で置換された炭素数6〜60の芳香族基を有する基が好ましく、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜60の脂環式炭化水素基、ヨウ素原子で置換された炭素数6〜60の芳香族基又はヨウ素原子で置換された炭素数6〜60の芳香族基を有する基がより好ましく、ヨウ素原子で置換された炭素数6〜60の芳香族基を有する基がさらに好ましい。 【0023】 ヨウ素原子を含む基とは、R2については、特に限定されないが、例えば、ヨウ素原子、ヨウ素原子で置換された炭素数1〜6の直鎖状脂肪族炭化水素基、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜6の分岐状脂肪族炭化水素基、ヨウ素原子で置換された炭素数3〜6の環状脂肪族炭化水素基、又はヨウ素原子で置換された炭素数6のアリール基等が挙げられる。安全溶媒に対する溶解性等の点から、上記ヨウ素原子を含む基は、ヨウ素原子、ヨウ素原子で置換された炭素数1〜6の直鎖状脂肪族炭化水素基又はヨウ素原子で置換された炭素数3〜6の分岐状脂肪族炭化水素基が好ましく、ヨウ素原子又はヨウ素原子で置換された炭素数1〜6の直鎖状脂肪族炭化水素基がより好ましく、ヨウ素原子がさらに好ましい。 【0024】 上記式(1)で表される化合物は、比較的に低分子量ながらも、その構造の剛直さにより高い耐熱性を有するので、高温ベーク条件でも使用可能である。また、比較的に低分子量で低粘度であることから、段差を有する基板(特に、微細なスペースやホールパターン等)であっても、その段差の隅々まで均一に充填させることが容易であり、その結果、これを用いたリソグラフィー用下層膜形成材料は埋め込み特性が比較的に有利に高められ得る。また、比較的に高い炭素濃度を有する化合物であることから、高いエッチング耐性をも付与される。 【0025】 ここで、上記式(1)で表される化合物は、原料の供給性の観点から、Xが酸素原子である化合物であることが好ましく、有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(1−1)で表される化合物であることがより好ましい。 【化15】 (1−1) 【0026】 上記式(1−1)中、R1、n及びqは、上記式(1)の場合と同義である。R3は、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、又は炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、チオール基であり、同一のナフタレン環又はベンゼン環において同一であっても異なっていてもよい。m5は各々独立して1〜6の整数であり、m6は各々独立して0〜5の整数であり、m5+m6は1〜6の整数である。但し、R1及びR3からなる群より選択される少なくとも1つはヨウ素原子を含む基である。 ・・・中略・・・ 【0151】 [樹脂] 本実施形態に用いる樹脂は、上記式(1)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂であり、上記式(1)で表される化合物に由来する構造単位を含む。本実施形態の樹脂は、例えば、上記式(1)で表される化合物と架橋反応性のある化合物とを反応させることによって得られる。 【0152】 架橋反応性のある化合物としては、上記式(1)で表される化合物をオリゴマー化又はポリマー化し得るものである限り、公知のものを特に制限なく使用することができる。その具体例としては、例えば、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、カルボン酸ハライド、ハロゲン含有化合物、アミノ化合物、イミノ化合物、イソシアネート、不飽和炭化水素基含有化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。 【0153】 本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料は、上記式(1)で表される化合物及び該化合物に由来する構造単位を含む樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を含有する。本実施形態において上記物質は塗布性及び品質安定性の点から、リソグラフィー用下層膜形成材料中、1〜100質量%であることが好ましく、10〜100質量%であることがより好ましく、50〜100質量%であることがさらに好ましく、100質量%であることがよりさらに好ましい。 【0154】 本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料は、湿式プロセスへの適用が可能であり、耐熱性及びエッチング耐性に優れる。さらに、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料は上記物質を用いているため、高温ベーク時の膜の劣化が抑制され、酸素プラズマエッチング等に対するエッチング耐性にも優れた下層膜を形成することができる。さらに、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料はレジスト層との密着性にも優れるので、優れたレジストパターンを得ることができる。」 (エ)「【実施例】 【0217】 以下、本実施形態を合成実施例、合成比較例、実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態は、これらの例によってなんら限定されるものではない。 ・・・中略・・・ 【0224】 (合成実施例1)A−2(キサンテン化合物)の合成 攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mLの容器に2,6−ナフタレンジオール(シグマ−アルドリッチ社製試薬)3.5g(20mmol)と4−ヨードベンズアルデヒド(東京化成工業社製試薬)2.3g(20mmol)とを50mLのγ−ブチロラクトンに仕込み、p−トルエンスルホン酸0.3gを加えて、90℃で28時間撹拌して反応を行って反応液を得た。次に反応液を純水500gに加えたあと、酢酸エチルにより抽出、濃縮を行って溶液を得た。 得られた溶液を、カラムクロマトによる分離後、クロロホルム洗浄を行い、下記式(A−2)で表される目的化合物(A−2)が1.2g得られた。 【0225】 得られた化合物(A−2)について、上記方法により分子量を測定した結果、516であった。 得られた化合物(A−2)について、上記測定条件で、NMR測定を行ったところ、以下のピークが見出され、下記式(A−2)の化学構造を有することを確認した。 δ(ppm)9.7(2H,O−H)、7.2〜8.5(14H,Ph−H)、6.5(1H,C−H) なお、得られた化合物(A−2)において、2,6−ナフタレンジオールの置換位置が1位であることは、3位及び4位のプロトンのシグナルがダブレットであることから確認した。 【0226】 【化118】 (A−2) 【0227】 有機元素分析の結果、得られた化合物(A−2)の炭素濃度は82.9%、酸素濃度は11.8%であった。 熱重量測定(TG)の結果、得られた化合物(A−2)の10%熱減量温度は400℃以上であった。そのため、高い耐熱性を有し、高温ベークへの適用が可能であるものと評価された。 PGMEへの溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価A)であり、また、PGMEAへの溶解性を評価した結果、10質量%以上20質量%未満(評価B)であり、化合物(A−2)は優れた溶解性を有するものと評価された。そのため、化合物(A−2)は溶液状態で高い保存安定性を有し、半導体微細加工プロセスで広く用いられるエッジビートリンス液(PGME/PGMEA混合液)にも十分に適用できるものと評価された。 【0228】 (合成実施例2)A−3(キサンテン化合物)の合成 ・・・中略・・・ 【0230】 【化119】 (A−3) 【0231】 有機元素分析の結果、得られた化合物(A−3)の炭素濃度は82.9%、酸素濃度は11.8%であった。 ・・・中略・・・ 【0232】 (合成実施例3)A−4(キサンテン化合物)の合成 ・・・中略・・・ 【0234】 【化120】 (A−4) 【0235】 有機元素分析の結果、得られた化合物(A−4)の炭素濃度は78.9%、酸素濃度は16.8%であった。 ・・・中略・・・ 【0236】 (合成実施例4)B−2(キサンテン化合物)の合成 ・・・中略・・・ 【0238】 【化121】 (B−2) 【0239】 有機元素分析の結果、得られた化合物(B−2)の炭素濃度は82.9%、酸素濃度は11.8%であった。 ・・・中略・・・ 【0240】 (合成実施例5)B−3(キサンテン化合物)の合成 ・・・中略・・・ 【0242】 【化122】 (B−3) 【0243】 有機元素分析の結果、得られた化合物(B−3)の炭素濃度は82.9%、酸素濃度は11.8%であった。 ・・・中略・・・ 【0244】 (合成実施例6)B−4(キサンテン化合物)の合成 ・・・中略・・・ 【0248】 (合成実施例7)樹脂(IR−1)の合成 ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積1Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流中、合成実施例1で得られた化合物(A−2)を36.6g(70mmol、三菱ガス化学(株)製)、40質量%ホルマリン水溶液21.0g(ホルムアルデヒドとして280mmol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(関東化学(株)製)0.97mLを仕込み、常圧下、100℃で還流させながら7時間反応させた。その後、希釈溶媒としてオルソキシレン(和光純薬工業(株)製試薬特級)180.0gを反応液に加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、オルソキシレンを減圧下で留去することにより、褐色固体の樹脂(IR−1)34.1gを得た。 【0249】 得られた樹脂(IR−1)は、Mn:1875、Mw:3550、Mw/Mn:1.89であった。また、炭素濃度は77.6質量%、酸素濃度は9.5質量%であった。 熱重量測定(TG)の結果、得られた樹脂(IR−1)の10%熱減量温度は350℃以上400℃未満であった。そのため、高温ベークへの適用が可能であるものと評価された。 PGME及びPGMEAへの溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価A)であり、樹脂(IR−1)は優れた溶解性を有するものと評価された。 【0250】 (合成実施例8)樹脂(IR−2)の合成 ・・・中略・・・ 【0251】 得られた樹脂(IR−2)は、Mn:1682、Mw:2910、Mw/Mn:1.73であった。また、炭素濃度は81.2質量%、酸素濃度は8.5質量%であった。 熱重量測定(TG)の結果、得られた樹脂(IR−2)の10%熱減量温度は350℃以上400℃未満であった。そのため、高温ベークへの適用が可能であるものと評価された。 PGME及びPGMEAへの溶解性を評価した結果、20質量%以上(評価A)であり、樹脂(IR−2)は優れた溶解性を有するものと評価された。 【0252】 (合成比較例1)比較例用樹脂(CR−1)の合成 ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積10Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流中、1,5−ジメチルナフタレン1.09kg(7mol、三菱ガス化学(株)製)、40質量%ホルマリン水溶液2.1kg(ホルムアルデヒドとして28mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸(関東化学(株)製)0.97mLを仕込み、常圧下、100℃で還流させながら7時間反応させた。その後、希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製試薬特級)1.8kgを反応液に加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い、エチルベンゼン及び未反応の1,5−ジメチルナフタレンを減圧下で留去することにより、淡褐色固体のジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂1.25kgを得た。 得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒドの分子量は、Mn:562、Mw:1168、Mw/Mn:2.08であった。また、炭素濃度は84.2質量%、酸素濃度は8.3質量%であった。 【0253】 続いて、ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、上述のようにして得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂100g(0.51mol)とパラトルエンスルホン酸0.05gとを仕込み、190℃まで昇温させて2時間加熱した後、攪拌した。その後さらに、1−ナフトール52.0g(0.36mol)を加え、さらに220℃まで昇温させて2時間反応させた。溶剤希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤を減圧下で除去することにより、黒褐色固体の変性樹脂(CR−1)126.1gを得た。 得られた樹脂(CR−1)は、Mn:885、Mw:2220、Mw/Mn:4.17であった。また、炭素濃度は89.1質量%、酸素濃度は4.5質量%であった。 ・・・中略・・・ 【0254】 (実施例1〜8、比較例1) 表に示す組成となるように、リソグラフィー用下層膜形成用組成物を各々調製した。表1に示した材料については、下記のものを使用した。 ・酸発生剤:みどり化学社製 ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウムノナフルオロメタンスルホナート(DTDPI) ・架橋剤:三和ケミカル社製 ニカラックMX270(ニカラック) ・有機溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートアセテート(PGMEA) ・ノボラック:群栄化学社製 PSM4357 【0255】 実施例1〜8、比較例1の下層膜形成用組成物について、下記方法により保存安定性及び薄膜形成を評価した。結果を表1に示す。 【0256】 [保存安定性] 化合物を含む下層膜形成用組成物の保存安定性は、表1に記載の配合割合で下層膜形成用組成物を調製後、23℃にて3日間静置し、析出の有無を目視にて観察することにより、析出のない場合には○、析出が見られる場合には×と評価した。 【0257】 [薄膜形成] 下層膜形成用組成物を清浄なシリコン基板上に回転塗布した後、240℃で60秒間ベークして、膜厚200nmの下層膜を各々作製した。作製した下層膜について、均一溶液であり薄膜形成が良好な場合には○、薄膜形成に欠陥がある場合には×と評価した。 【0258】 [エッチング耐性] ・・・中略・・・ 【0260】 エッチング耐性の評価は、以下の手順で行った。 まず、実施例1で用いた化合物(A−2)に代えてノボラック(群栄化学社製 PSM4357)を用いること以外は、実施例1と同様の条件で、ノボラックの下層膜を作製した。そして、このノボラックの下層膜を対象として、上記のエッチング試験を行い、そのときのエッチングレートを測定した。 次に、実施例1〜8及び比較例1の下層膜を対象として、上記エッチング試験を同様に行い、そのときのエッチングレートを測定した。 そして、ノボラックを用いた下層膜のエッチングレートを基準として、以下の評価基準でエッチング耐性を評価した。 [評価基準] A:ノボラックの下層膜のエッチングレートに比べてエッチングレートが、−10%未満 B:ノボラックの下層膜のエッチングレートに比べてエッチングレートが、−10%〜+5% C:ノボラックの下層膜のエッチングレートに比べてエッチングレートが、+5%超 【0261】 【表1】 【0262】 (実施例9) 次に、実施例1のリソグラフィー用下層膜形成用組成物を膜厚300nmのSiO2基板上に塗布して、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークすることにより、膜厚85nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、ArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚140nmのフォトレジスト層を形成した。なお、ArFレジスト溶液としては、下記式(5)で表される化合物:5質量部、トリフェニルスルホニウムノナフルオロメタンスルホナート:1質量部、トリブチルアミン:2質量部、及びPGMEA:92質量部を配合して調製したものを用いた。 ・・・中略・・・ 【0266】 次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製;ELS−7500,50keV)を用いて、フォトレジスト層を露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することにより、ポジ型のレジストパターンを得た。 【0267】 (比較例2) 下層膜の形成を行わないこと以外は、実施例9と同様にして、フォトレジスト層をSiO2基板上に直接形成し、ポジ型のレジストパターンを得た。 【0268】 [評価] 実施例9及び比較例2のそれぞれについて、得られた40nmL/S(1:1)及び80nmL/S(1:1)のレジストパターンの形状を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−4800)を用いて観察した。現像後のレジストパターンの形状については、パターン倒れがなく、矩形性が良好なものを良好とし、そうでないものを不良として評価した。また、当該観察の結果、パターン倒れが無く、矩形性が良好な最小の線幅を解像性として評価の指標とした。さらに、良好なパターン形状を描画可能な最小の電子線エネルギー量を感度として、評価の指標とした。その結果を、表2に示す。 【0269】 【表2】 【0270】 表2から明らかなように、実施例9では、比較例2に比して、解像性及び感度ともに有意に優れていることが少なくとも確認された。また、現像後のレジストパターン形状もパターン倒れがなく、矩形性が良好であることも確認された。さらに、現像後のレジストパターン形状の相違から、実施例1におけるリソグラフィー用下層膜形成材料は、レジスト材料との密着性がよいことも確認された。 【0271】 (実施例10) 実施例1で用いたリソグラフィー用下層膜形成用組成物を膜厚300nmのSiO2基板上に塗布して、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークすることにより、膜厚90nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、珪素含有中間層材料を塗布し、200℃で60秒間ベークすることにより、膜厚35nmの中間層膜を形成した。さらに、この中間層膜上に、上記ArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚150nmのフォトレジスト層を形成した。なお、珪素含有中間層材料としては、下記で得られた珪素原子含有ポリマーを用いた。 ・・・中略・・・ 【0273】 次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製;ELS−7500,50keV)を用いて、フォトレジスト層をマスク露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することにより、45nmL/S(1:1)のポジ型のレジストパターンを得た。その後、サムコインターナショナル社製 RIE−10NRを用いて、得られたレジストパターンをマスクにして珪素含有中間層膜(SOG)のドライエッチング加工を行い、続いて、得られた珪素含有中間層膜パターンをマスクにした下層膜のドライエッチング加工と、得られた下層膜パターンをマスクにしたSiO2膜のドライエッチング加工とを順次行った。 ・・・中略・・・ 【0275】 [評価] 上記のようにして得られた実施例10のパターン断面(エッチング後のSiO2膜の形状)を、(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−4800)を用いて観察したところ、実施例の下層膜は、多層レジスト加工におけるエッチング後のSiO2膜の形状は矩形であり、欠陥も認められず良好であることが少なくとも確認された。」 イ 検討 本願発明の課題は、「湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性及びエッチング耐性に優れるフォトレジスト下層膜を形成するために有用なリソグラフィー用下層膜形成材料を提供すること」(【0010】)と認める。 そして、本件明細書には、「下記式(1)で表される化合物又は下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位を含む樹脂の少なくともいずれかを含有する」(当合議体注:式(1)については上記「ア(ウ)」のとおりであり摘記を省略する。他の化学式についても同様である。)ことで、「比較的に低分子量ながらも、その構造の剛直さにより高い耐熱性を有するので、高温ベーク条件でも使用可能である。また、比較的に低分子量で低粘度であることから、段差を有する基板(特に、微細なスペースやホールパターン等)であっても、その段差の隅々まで均一に充填させることが容易であり、その結果、これを用いたリソグラフィー用下層膜形成材料は埋め込み特性が比較的に有利に高められ得る。また、比較的に高い炭素濃度を有する化合物であることから、高いエッチング耐性をも付与される。」(【0024】)、「本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料は、湿式プロセスへの適用が可能であり、耐熱性及びエッチング耐性に優れる。さらに、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料は上記物質を用いているため、高温ベーク時の膜の劣化が抑制され、酸素プラズマエッチング等に対するエッチング耐性にも優れた下層膜を形成することができる。さらに、本実施形態のリソグラフィー用下層膜形成材料はレジスト層との密着性にも優れるので、優れたレジストパターンを得ることができる。」(【0154】)との効果を奏すること、樹脂としても使用できること(【0151】及び【0152】)が記載されており、好適な化合物の例示、さらには、キサンテン骨格を有する化合物(即ち、式(1−1)を満たす化合物)を用いた具体的な実施例の記載もある。そうすると、これらの記載に接した当業者であれば、少なくとも「下記式(1−1)で表される化合物又は下記式(1−1)で表される化合物に由来する構造単位を含む樹脂の少なくともいずれか」を含有するリソグラフィー用下層膜形成材料であれば、本願課題を解決するものと認識できるところ、本願発明1のリソグラフィー用下層膜形成材料は、「下記式(1−1)で表される化合物又は下記式(1−1)で表される化合物に由来する構造単位を含む樹脂の少なくともいずれかを含有する」との特定事項を有するものであるから、当然課題を解決することができると認識できるといえる。 また、仮に、リソグラフィー用下層膜形成材料について一般に求められる他の様々な要件や条件等が技術常識であるとしても、本願発明は、審判請求人が主張するように「式(1−1)で表される化合構造の骨格」及び「少なくとも1つのヨウ素原子を含む基」を有する構成により、そのような構成を有しないリソグラフィー用下層膜形成材料と比較して有利な効果を奏するものであって、その技術思想自体は、請求項の記載に十分に反映されているといえる。 したがって、本願発明1は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものといえる。 また、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する本願発明2〜12についても、同様である。 3 小括 したがって、原査定の理由及び付記として指摘された拒絶の理由を維持することはできない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2022-01-14 |
出願番号 | P2017-537810 |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(G03F)
P 1 8・ 121- WY (G03F) |
最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
榎本 吉孝 |
特許庁審判官 |
植前 充司 里村 利光 |
発明の名称 | リソグラフィー用下層膜形成材料、リソグラフィー用下層膜形成用組成物、リソグラフィー用下層膜及びその製造方法、並びにレジストパターン形成方法 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 大貫 敏史 |