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審決分類 審判 一部無効 特174条1項  G06F
審判 一部無効 2項進歩性  G06F
管理番号 1387404
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2021-02-19 
確定日 2022-03-14 
事件の表示 上記当事者間の特許第3254422号発明「ウェブページ閲覧方法およびこの方法を用いた装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第3254422号(以下,「本件特許」という。)は,平成10年6月26日を出願日とする特願平10−180815号が平成13年11月22日に設定登録されたものである。
その後の手続の経緯は,概ね次のとおりである。
平成21年 1月23日 無効審判(無効2009−800014号
)の請求
平成21年 8月19日付け 審決(請求不成立)
令和 3年 2月19日 本件無効審判の請求
令和 3年 6月 1日 (請求人)営業秘密に関する申出書の提出
令和 3年 6月 7日 答弁書の提出
令和 3年 8月10日付け 審理事項通知書
令和 3年 9月 3日 (請求人)口頭審理陳述要領書の提出
令和 3年 9月 3日 (被請求人)口頭審理陳述要領書の提出
令和 3年 9月24日 口頭審理
令和 3年10月15日 (請求人)上申書の提出
令和 3年10月15日 (被請求人)上申書の提出

なお,本件特許に関する特許権侵害訴訟として,平成29年(ワ)第24942号事件が存在し,その控訴事件として,令和3年(ネ)第10022号事件が存在している。

第2 本件発明
本件特許の請求項1,6に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」,「本件発明2」という。)は,本件特許の願書に添付した明細書(以下,「本件特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1,6に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。

1 本件発明1
「通信ネットワークを介して,ウェブ情報をユーザ端末に提供するウェブ情報提供方法において,
ユーザ端末に接続されたアクセスポイントが該ユーザ端末に割り当てた前記アクセスポイントのIPアドレス,およびIPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベースを用いて,前記ユーザ端末に割り当てられたIPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域を判別する第1の判別ステップと,
前記判別された地域に基づいて,該地域に対応したウェブ情報を選択する第1の選択ステップと,
前記選択されたウェブ情報を,前記IPアドレスが割り当てられたユーザ端末に送信する送信ステップと,
を有したことを特徴とするウェブ情報提供方法。」

2 本件発明2
「通信ネットワークを介して,ウェブ情報をユーザ端末に提供するウェブ情報提供装置において,
ユーザ端末に接続されたアクセスポイントが該ユーザ端末に割り当てた前記アクセスポイントのIPアドレス,およびIPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベースを用いて,前記ユーザ端末に割り当てられたIPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域を判別する第1の判別手段と,
前記判別された地域に基づいて,該地域に対応したウェブ情報を選択する第1の選択手段と,
前記選択されたウェブ情報を,前記IPアドレスが割り当てられたユーザ端末に送信する送信手段と,
を有したことを特徴とするウェブ情報提供装置。」

第3 請求人の主張,証拠方法
1 主張の概要
請求人は,「本件発明1及び本件発明2についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め,概略,以下の無効理由1〜3を主張している。また,証拠方法として甲第1〜18号証(以下,「甲1」〜「甲18」と表記する。)を提出している。

(1)無効理由1(新規事項追加)
平成11年11月12日に提出された手続補正書による請求項1の記載についてした補正(以下,「本件補正」という。)は,新規事項を追加するものであり,請求項6の記載についてした補正及び請求項の補正と併せて発明の詳細な説明の記載についてした補正も同様であるから,本件特許は,特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであり,特許法123条1項1号に該当し,無効とされるべきである。
本件補正により,本件特許の請求項1の記載に導入された,
IPアドレスを入力情報とし,
IPアドレスとアクセスポイントに対応する地域(アクセスポイントが属する地域)とが対応したデータベースを用いて「アクセスポイントが属する地域」を判別し,
当該「アクセスポイントが属する地域」をユーザの発信地域として用いる
という一連の情報処理に係る技術的事項は,新規事項の追加に該当する。
請求項6の記載についてした補正及び請求項の補正と併せて発明の詳細な説明の記載についてした補正も同様のことが当てはまる。

(2)無効理由2(甲2(主引例)と甲3(副引例)とに基づく進歩性欠如)
本件発明1,2は,甲2に記載された発明及び甲3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,特許法123条1項2号に該当し,無効とされるべきである。

(3)無効理由3(甲4(主引例)と甲3(副引例)とに基づく進歩性欠如)
本件発明1,2は,甲4に記載された発明及び甲3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,特許法123条1項2号に該当し,無効とされるべきである。

2 証拠方法
甲1 平成11年11月12日付け手続補正書
甲2 特開平9−305518号公報
甲3 特開平10−13471号公報
甲4 Stephen E. Lamm, Daniel A. Reed, "Real-Time Geographic Visualization of World Wide Web Traffic", Fifth International World Wide Web Conference, May 6-10, 1996, Paris, France
甲5 特許・実用新案審査基準第IV部第2章
甲6 本件特許に係る出願の願書に最初に添付した明細書,図面
甲7 平成11年3月9日付け拒絶理由通知書
甲8 平成11年5月11日付け手続補正書
甲9 平成11年9月9日付け拒絶理由通知書
甲10 平成12年8月29日付け拒絶査定
甲11 平成12年10月4日付け拒絶査定不服審判請求書(不服2000−15766号)
甲12 平成13年10月16日付け審決(不服2000−15766号)
甲13 特開平6−224901号公報
甲14 平成29年(ワ)第24942号判決(抜粋)
甲15 小泉修,「図解でわかるサーバのすべて」,日本実業出版社,2000年12月15日,p.86〜89
甲16 田上岳夫,舟茂弘,「インターネットの仕組み−13 二つのダイヤルアップIP接続」,日経コミュニケーション,日経BP社,1997年10月6日,第255号,p.142〜143
甲17 特開平9−153054号公報
甲18 特開平9−114783号公報

第4 被請求人の主張,証拠方法
1 主張の概要
被請求人は,「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め,請求人の主張する各無効理由には理由がない旨,主張している。また,証拠方法として乙第1〜9号証(以下,「乙1」〜「乙9」と表記する。)を提出している。

2 証拠方法
乙1 第1回無効審判事件(無効2009−800014号)の答弁書
乙2 第1回無効審判審決
乙3 平成29年(ワ)第24942号判決(特許の有効性判断の部分)
乙4 日経BPデジタル大事典1998年度版,日経BP社,1998年4月10日,p.760
乙5の1 社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)のウェブサイトの「WHOISとは」のページ(http://www.nic.ad.jp/ja/whois/index.html)
乙5の2 社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)のウェブサイトの「公開・開示対象情報一覧」のページ(http://www.nic.ad.jp/doc/jpnic-00999.html)
乙6 株式会社日本レジストリサービス(JPRS)のウェブサイトの「Whoisとは」のページ(http://jprs.jp/info/whois/)
乙7 コンピュータ&情報通信用語事典,株式会社オーム社,平成13年7月25日,p.468〜469
乙8 通信・ネットワーク事典03〜04年版,日経BP社,2003年3月31日,p.986〜987
乙9 広辞苑,株式会社岩波書店,2018年1月12日,p.1877

第5 当審の判断
1 無効理由1(新規事項追加)について
(1)請求項1の補正について
ア 請求人の,本件補正によって導入された「一連の情報処理に係る技術的事項」が新規事項の追加に該当する旨の主張(上記第3の1(1))は,要するに,本件特許の請求項1の
「IPアドレス,およびIPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベースを用いて,前記ユーザ端末に割り当てられたIPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域を判別する第1の判別ステップと,
前記判別された地域に基づいて,該地域に対応したウェブ情報を選択する第1の選択ステップと,
前記選択されたウェブ情報を,前記IPアドレスが割り当てられたユーザ端末に送信する送信ステップ」
との記載において,新規事項が追加されていると主張するものである。
なお,請求人の主張の趣旨が上記のとおりであることは,当審が令和3年8月10日付けの審理事項通知書において,請求人の主張についての確認を求めたこと(同通知書の第1の2(1)ウ(ア))に対して,請求人が回答した内容(口頭審理陳述要領書(3頁)の第6の1(2)イ)から把握される(同様に,請求項6の記載についてした補正及び発明の詳細な説明の記載についてした補正についても請求人の主張の趣旨が把握される。)。
そこで,本件補正が,本件特許の請求項1の上記記載に関して,願書に最初に添付した明細書又は図面(以下,「当初明細書等」という。また,願書に最初に添付した明細書については,以下,「当初明細書」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるか否かについて,以下,検討する。

イ 上記アで述べた記載のうち,まず,前段の「第1の判別ステップ」に関する記載部分について検討する。

(ア)当初明細書(甲6。以下同様。)の段落【0028】には,「アクセスポイント109aのサーバ111aは所持する複数のIPアドレスの中から一つのIPアドレスを選択してユーザ端末101aに割り当てる(ステップ413)。この割り当ては,ユーザ端末101aが地域情報としての一つのIPアドレスを獲得したことを意味する。」と記載されているから,「アクセスポイント」が「所有する(所持する)」「IPアドレス」が,「ユーザ端末に割り当てられ」ることについては,当初明細書に実質的に記載されているといえる。

(イ)また,上記(ア)の段落【0028】の記載から,「アクセスポイント109a」が所有する「複数のIPアドレス」は,いずれも,同じ「地域情報」を表すことが理解できる。

(ウ)当初明細書の段落【0034】には,「Webサーバ119a」の動作について「IPアドレスと地域とが一対一に対応した例としてのデータベースから成る図5に示すようなIPアドレスプールデータベース201およびユーザ端末101aが送信したIPアドレスを用いてユーザの発信地域を判別する(ステップ425)。」と記載されているから,「IPアドレス,およびIPアドレスと地域とが対応したIPアドレス対地域データベースを用いて」,「地域を判別する」ことについては,当初明細書に実質的に記載されているといえる。

(エ)当初明細書の段落【0038】には,「ユーザの発信地域以外の地域の情報を閲覧したい場合には,ユーザが発信地域以外の地域のアクセスポイントに接続す・・・ればよい」旨が記載されており,ここで,「発信地域以外の地域のアクセスポイント」とは,上記(ウ)の段落【0034】の記載における「発信地域」以外の「地域」の,上記(ア)の段落【0028】の記載における「アクセスポイント109a」とは異なる「アクセスポイント」(例えば,アクセスポイント109b)であることが明らかである。
つまり,段落【0038】の上記記載は,複数の「地域」のそれぞれに対応して,各「地域」に固有の「アクセスポイント」が存在していることを示すものであり,このことにより,上記(イ)の「地域情報」が「アクセスポイント」ごとに異なるものとなる結果,上記(ウ)の「IPアドレス,およびIPアドレスと地域とが対応したデータベースを用いて」,「判別」される「地域」が,「アクセスポイント」によって変化することから,「ユーザの発信地域以外の地域の情報を閲覧」可能であることが理解できる。
ここで,複数の「地域」のそれぞれに対応して,各「地域」に固有の「アクセスポイント」が存在することは,換言すれば,「地域」が「アクセスポイント」に「対応する」,あるいは,「アクセスポイント」が「地域」に「属する」ことである。
そうすると,「地域」が「アクセスポイント」に「対応する」こと,及び,「アクセスポイント」が「地域」に「属する」ことは,当初明細書に実質的に記載されているといえる。
そして,この点は,本件特許の願書に最初に添付した図面の図1において,3つの異なるアクセスポイント109a,109b,109cに,それぞれ,「(東京)」,「(大宮)」,「(福岡)」との表記があることからも裏付けられる。

(オ)上記(ア),(ウ),(エ)を総合すると,「IPアドレス,およびIPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベースを用いて,前記ユーザ端末に割り当てられたIPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域を判別する」との,「第1の判別ステップ」に関する記載部分は,当初明細書に実質的に記載されているといえるから,本件補正は,本件特許の請求項1における当該部分の記載に関して,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。

ウ 次に,前段の「第1の判別ステップ」に関する記載部分に加え,これに引き続いて記載されている
「前記判別された地域に基づいて,該地域に対応したウェブ情報を選択する第1の選択ステップと,
前記選択されたウェブ情報を,前記IPアドレスが割り当てられたユーザ端末に送信する送信ステップ」
との後段の記載部分を含めて検討する。
当該後段の部分の記載は,本件補正によっては変更されていない。
そうすると,上記イのとおり,「第1の判別ステップ」に関する記載部分が当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない以上,「第1の選択ステップ」及び「送信ステップ」に関する記載部分を含めて検討しても,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。

エ したがって,本件補正は,本件特許の請求項1における上記アで述べた記載に関して,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。

(2)請求項6の補正について
請求項6の記載についてした補正も同様に新規事項を追加するものである旨の請求人の主張は,要するに,本件特許の請求項6の
「IPアドレス,およびIPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベースを用いて,前記ユーザ端末に割り当てられたIPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域を判別する第1の判別手段と,
前記判別された地域に基づいて,該地域に対応したウェブ情報を選択する第1の選択手段と,
前記選択されたウェブ情報を,前記IPアドレスが割り当てられたユーザ端末に送信する送信手段」
との記載において,新規事項が追加されていると主張するものである。
ここで,「第1の判別手段」に関する記載部分は,本件特許の請求項1の「第1の判別ステップ」に関する記載部分と内容が一致しているから,上記(1)で検討した点が,請求項6の記載についてした補正についても同様に当てはまる。
したがって,請求項6の記載についてした補正は,本件特許の請求項6の上記記載に関して,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。

(3)発明の詳細な説明の補正について
請求項の補正と併せて発明の詳細な説明の記載についてした補正も同様に新規事項を追加するものである旨の請求人の主張は,要するに,本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0014】,【0019】における,それぞれ本件特許の請求項1,請求項6と同一の記載について,新規事項が追加されていると主張するものであるが,それらの請求項の記載については,上記(1),(2)で検討したとおりである。
したがって,発明の詳細な説明の記載についてした補正も,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。

(4)無効理由1についてのまとめ
以上のとおりであるから,無効理由1によっては,本件発明1,2についての特許を無効とすることはできない。

2 無効理由2(甲2(主引例)と甲3(副引例)とに基づく進歩性欠如)について
(1)甲2の記載,甲2発明
ア 甲2には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。

(ア)「【0012】図1は,WWW(World-Wide Web)システムにおける利用者から見た本発明内容を説明した図である。WWWシステムは,ネットワーク1200に接続されたWWWサーバシステムである情報提供サーバシステム1000とWWWクライアント端末である情報検索クライアント端末1100から構成されている。情報提供サーバシステム1000は,情報検索クライアント端末1100からの情報コンテンツ転送要求1110を受け,要求された情報コンテンツファイルを転送1120,1121する。情報検索クライアント端末1100は,受信した情報コンテンツファイルを表示する。1101と1102は情報検索クライアント端末1100に表示される画面例を示したものである。
【0013】本発明は,情報検索クライアント端末1100の所在場所や情報検索クライアント端末1100利用者の属性情報に応じて,情報提供サーバシステム1000が提供する情報コンテンツを変えることを特徴としている。今,図1に示すように,情報検索クライアント端末1100は異なる地域エリア(エリアa,エリアb)に存在すると仮定する。情報検索クライアント端末1100からの同一URL転送要求1110に対して,情報提供サーバシステム1000はエリアaに存在する情報検索クライアント端末1100にはエリアa対応の情報コンテンツファイルを転送1121し,エリアbに存在する情報検索クライアント端末1100にはエリアb対応の情報コンテンツファイルを転送1120する。この結果,同一URL転送要求でも,エリアaにおける表示画面1101とエリアbにおける表示画面1102が異なることになる。従来,同一のURLアクセスに対しては同一の情報コンテンツを提供するため,利用者(アクセス者)がどこにいても,また利用者がどんな属性をもっていようが画一的な情報を見ることになっている。本発明によれば,たとえば日本国内にいる利用者に対しては日本語,米国国内にいる利用者に対しては英語で情報提供することができる。また,商品情報を提供する場合,利用者の最寄りの店舗情報を付加するなど地域エリアに応じた情報提供が可能になる。」

(イ)「【0015】図2から図4は,第一の実施形態を説明する図面である。第一の実施例は,WWWシステムで情報提供サーバシステム1000と情報検索クライアント端末1100間の通信時に相手を特定する論理アドレス(IPアドレス)を活用する。情報提供サーバシステム1000は,情報検索クライアント端末1100の論理アドレスからドメインを特定し,特定したドメインに応じて情報コンテンツを選択して情報検索クライアント端末1100に提供する形態である。
【0016】図2は第一の実施例の全体システム構成を示したもので,情報提供サーバシステム1000,情報検索クライアント端末1100およびドメインネームサーバ2100がネットワーク1200に接続された構成をとる。ドメインネームサーバ2100は,ネットワーク1200上の論理アドレス(IPアドレス)とホスト名(ドメイン名)を一元管理するサーバであり,ネットワーク1200に接続されたコンピュータマシン1000,1100からの問合わせに対して,ホスト名から論理アドレスへの変換をしたり,論理アドレスからホスト名への変換などをする。第一の実施形態における情報提供サーバシステム1000は,情報選択処理部2000,選択条件テーブル2010,情報提供処理部2020,通信処理部2030,情報検索クライアント端末1100に提供する情報コンテンツを格納する情報コンテンツファイル2040,選択条件テーブル2010および情報コンテンツファイル2040を格納する記憶部2050,および入出力処理部2060から構成する。情報選択処理部2000は,URL提供要求元である情報検索クライアント端末1100のドメインを特定し,当該ドメインに対応した情報コンテンツファイル2040を選択する処理を行う。本処理部2000の処理フローは図4を用いて後述する。選択条件テーブル2010はドメインと情報コンテンツファイル2040の対応情報を示すテーブルである。本テーブル2010の構成は,図3を用いて後述する。情報提供処理部2020は,情報検索クライアント端末1100からのURL提供要求を受付けたり,情報選択処理部2000で選択された情報コンテンツファイル2040を要求元の情報検索クライアント端末1100に転送したりする。本処理部2020の処理フローは,ほかの処理部との関係を示しながら図4を用いて後述する。通信処理部2030は,情報検索クライアント端末1100やドメインネームサーバ2100との通信制御処理を行う部分である。選択条件テーブル2010や情報コンテンツファイル2040のアクセス管理は記憶部2050が行い,選択条件テーブル2010や情報コンテンツファイル2040のデータ設定は入出力処理部2060を介して行う。」

(ウ)「【0018】図3に示したテーブル内容を例に,選択条件テーブル2010が意味するところを説明する。情報検索クライアント端末1100から”URL−A”なるURL提供要求があった場合,要求元の情報検索クライアント端末1100のドメインが”jpドメイン”であればファイル名が”FILE−a1”である情報コンテンツファイル2040を,”deドメイン”であれば”FILE−a2”を,その他のドメインである場合はデフォルトレコード3000のファイル名格納部3030の値である”FILE−a3”をファイル名に持つ情報コンテンツファイル2040を情報検索クライアント端末1100に提供することを意味する。選択条件テーブル2010の各格納部3010,3020,3030へのデータ設定は,入出力処理部2060を介して行う。
【0019】図4は,情報提供処理部2000を中心にした第一の実施形態の全体処理フローを示したものである。情報検索クライアント端末1100からのURL提供要求がある(ステップ4100)と,情報提供処理サーバシステム1000の情報提供処理部2020が,要求元情報検索クライアント端末1100の論理アドレスと要求URLを受け取る(ステップ4200)。情報提供処理部2020は次ステップ4201で,要求元の論理アドレスと要求URLを情報選択処理部2000に渡す。情報選択処理部2000は,情報提供処理部2020から要求元論理アドレスと要求URLを受け取り(ステップ4300),ステップ4301を処理する。ステップ4301は,選択条件テーブル2010のURL格納部3010を検索して,要求URLのエントリがあるか否かを判定する。ステップ4301でエントリされていると判定された場合はステップ4310を,エントリされていないと判定された場合はステップ4320を処理する。まず,ステップ4301でエントリされていると判定された場合の処理ステップを説明する。ステップ4310で,要求元論理アドレスのホスト名をドメインネームサーバ2100に問合わせる。ドメインネームサーバ2100はステップ4310の問合わせに対して,論理アドレスに対応するホスト名を情報選択処理部2000に応答する(ステップ4400)。情報選択処理部2000は,ドメインネームサーバ2100からホスト名を受け取り(ステップ4311),ステップ4312を処理する。ステップ4312では,問合わせたホスト名が示すドメインと要求URLを条件に選択条件テーブル2010から,情報コンテンツファイル2040のファイル名を検索する。本ステップ(ステップ4312)では,検索条件(ドメインと要求URL)に合致するレコード3000を検出できなかった場合,デフォルトレコード3000に格納されているファイル名を検索結果とする。図3に示す選択条件テーブル2010を例にとり,本ステップ(ステップ4312)の処理結果がどのようになるか説明する。たとえば,問合わせたホスト名のドメインが”jpドメイン”,要求URLが,”URL−A”の場合,選択条件テーブル2010のURL格納部3010に”URL−A”,条件値格納部3020に”jpドメイン”が格納されているレコード3000のファイル名格納部3030に格納されているファイル名”FILE−a1”が本ステ3bプ(ステップ4312)の検索結果となる。また,問合わせたホスト名のドメインが”ssドメイン”,要求URLが”URL−A”の場合,選択条件に合致するレコード3000が存在しないので,URL格納部3010に”URL−A”,条件値格納部3020に"default”が格納されているデフォルトレコード3000のファイル名格納部3020に格納されているファイル名”FILE−a3”が本ステップ(ステップ4312)の検索結果となる。ステップ4312実行後,次ステップ4313で,検索したファイル名の情報コンテンツファイル2040を情報提供処理部2020に渡す。以上が,ステップ4301でエントリされていると判定された場合の一連の処理ステップである。ステップ4301でエントリされていないと判定された場合,情報選択処理部2000は要求URLが示すファイル名の情報コンテンツファイル2040を情報提供処理部2020に渡す(ステップ4320)。情報提供処理部2020は,ステップ4313またはステップ4320によって情報選択処理部2000から情報コンテンツファイル2040を受け取り(ステップ4202),受け取った情報コンテンツファイル2040を要求元の情報検索クライアント端末1100に転送する(ステップ4203)。情報検索クライアント端末1100は,情報提供処理部2020から転送される情報コンテンツファイル2040を受信してファイル内容を表示する(ステップ4101)。
【0020】以上,第一の実施形態を図2から図4を用いて説明した。第一の実施形態における本発明の利用形態の一例を,図3に示したテーブル内容を例にとり説明する。情報提供者が,情報提供サーバシステム1000で商品情報を提供することを想定する。この商品情報のURLを”URL−A”とする。情報提供者は,商品情報を日本語で記述したコンテンツを”FILE−a1”に,ドイツ語で記述したコンテンツを”FILE−a2”に,英語で記述したコンテンツを”FILE−a3”に作成して情報提供サーバシステム1000に格納する。本発明の第一の実施形態によれば,情報検索クライアント端末1100利用者が,この商品情報をアクセスした場合,”jpドメイン”であれば日本語記述,”deドメイン”であればドイツ語,その他のドメインであれば英語記述の商品情報を見ることになる。通常”jpドメイン”の所属カントリは日本,”deドメイン”はドイツを表わすので,利用者は日常利用する言語で商品情報を得ることができる。逆に情報提供者側からいえば,利用者のアクセスポイント(ここでは具体的にはカントリードメイン)に応じた言語で商品情報を提供することができる。また,提供する商品が電源事情や法制度などの違いにより同じ商品でもその仕様が国ごとに異なる場合,カントリーごとに提供する情報コンテンツを変えることができるので,利用者は所属するカントリーに適した仕様の商品情報を得ることができる。また,カントリーごとに提供する情報コンテンツのなかで次のリンク先をも変更したものにしておけば,そこから次々たぐれる情報をも変えていくことができる。以上のように本発明によれば,情報提供者は利用者のアクセスポイントに応じて適した内容や記述言語の情報を提供することができ,利用者はその情報サービスを享受することができる。」

(エ)「【図1】



「【図2】



「【図3】



イ したがって,甲2には次の発明(以下,「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。なお,段落【0019】の中ほどの「本ステ3bプ」は,「本ステップ」の誤記と認められるので,その点を考慮している。

「ネットワーク1200に接続されたWWWサーバシステムである情報提供サーバシステム1000とWWWクライアント端末である情報検索クライアント端末1100から構成されているWWWシステムにおける情報提供サーバシステム1000が,情報検索クライアント端末1100の論理アドレスからドメインを特定し,特定したドメインに応じて情報コンテンツを選択して情報検索クライアント端末1100に提供する方法であって,
情報提供サーバシステム1000,情報検索クライアント端末1100およびドメインネームサーバ2100がネットワーク1200に接続された構成をとり,
ドメインネームサーバ2100は,ネットワーク1200上の論理アドレス(IPアドレス)とホスト名(ドメイン名)を一元管理するサーバであり,ネットワーク1200に接続されたコンピュータマシン1000,1100からの問合わせに対して,ホスト名から論理アドレスへの変換をしたり,論理アドレスからホスト名への変換などをし,
情報提供サーバシステム1000は,情報選択処理部2000,選択条件テーブル2010,情報提供処理部2020,情報検索クライアント端末1100に提供する情報コンテンツを格納する情報コンテンツファイル2040から構成し,
情報選択処理部2000は,URL提供要求元である情報検索クライアント端末1100のドメインを特定し,当該ドメインに対応した情報コンテンツファイル2040を選択する処理を行い,選択条件テーブル2010はドメインと情報コンテンツファイル2040の対応情報を示すテーブルであり,
情報検索クライアント端末1100からのURL提供要求があると,情報提供処理サーバシステム1000の情報提供処理部2020が,要求元情報検索クライアント端末1100の論理アドレスと要求URLを受け取り,情報提供処理部2020は,要求元の論理アドレスと要求URLを情報選択処理部2000に渡し,情報選択処理部2000は,情報提供処理部2020から要求元論理アドレスと要求URLを受け取り,要求元論理アドレスのホスト名をドメインネームサーバ2100に問合わせ,ドメインネームサーバ2100は問合わせに対して,論理アドレスに対応するホスト名を情報選択処理部2000に応答し,情報選択処理部2000は,ドメインネームサーバ2100からホスト名を受け取り,問合わせたホスト名が示すドメインと要求URLを条件に選択条件テーブル2010から,情報コンテンツファイル2040のファイル名を検索し,
たとえば,問合わせたホスト名のドメインが”jpドメイン”,要求URLが,”URL−A”の場合,選択条件テーブル2010のURL格納部3010に”URL−A”,条件値格納部3020に”jpドメイン”が格納されているレコード3000のファイル名格納部3030に格納されているファイル名”FILE−a1”が検索結果となり,
検索したファイル名の情報コンテンツファイル2040を情報提供処理部2020に渡し,
情報提供処理部2020は,情報選択処理部2000から情報コンテンツファイル2040を受け取り,受け取った情報コンテンツファイル2040を要求元の情報検索クライアント端末1100に転送する,方法。」

(2)甲3の記載,甲3発明
ア 甲3には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【0015】
【発明の実施の形態】図1は本発明の第一の実施形態を示すブロック構成図であり,二つの地域A,BのLANとその接続形態の概要を示す。地域Aには,それぞれホストネームが付与された複数の端末11−1〜11−mと,この複数の端末11−1〜11−mが接続された信号伝送路12と,複数の端末11−1〜11−mのそれぞれのホストネームとIPアドレスとの対応を管理するDNSサーバ14とを備え,さらに,地域BのLANと接続するためのルータ15を備える。地域Bにも同様に,端末21−1〜21−mと,DNSサーバ24と,ルータ25とを備える。端末11−1〜11−m,21−1〜21−mにはその地域のLAN内で他の地域のLANと独立に用いられるプライベートIPアドレスが割り当てられ,DNSサーバ14,24は,複数の端末のそれぞれのホストネームとそのプライベートIPアドレスとの対応を管理すると共に,端末11−1〜11−mあるいは21−1〜21−mのいずれかが他の地域のLANと通信する場合にはその端末のホストネームにグローバルIPアドレスを対応付けて管理する構成であり,DNSサーバ14,24による対応付けに対応して,他の地域のLANと通信する端末のアドレスについてプライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスとの変換を行うゲートウェーサーバ16,26を備える。地域Aにはまた,ルータ15およびゲートウェーサーバ16と信号伝送路12との間を接続するルータ17を備え,地域Bには同様に,ルータ25およびゲートウェーサーバ26と信号伝送路22との間を接続するルータ27を備える。
【0016】この実施形態の動作について以下に説明する。この実施形態では,DNSサーバ14,24を設けたことにより,ホストIPアドレスの代わりにホストネームを用いて通信ができる。ただし,従来例とは異なり,ホストネームとホストIPアドレスとの対応テーブルを地域内通信と他地域接続とで書き換える構成となっている。
【0017】ここで,地域A,Bの上位のドメインを「jp」,地域Aのドメイン名を「area-a.jp」,地域Bのドメイン名を「area-b・ jp」とし,端末11−1にはホストネームとして「a1.area-a.jp」,ホストアドレスとしてプライベートIPアドレス「P-A1」が割り当てられ,端末21−1にはホストネームとして「b1.area-b.jp」,ホストアドレスとしてプライベートIPアドレス「P-B1」が割り当てられているものとする。なお,上位の「jp」ドメインにもDNSサーバが設けられ,下部の地域Aおよび地域BのDNSサーバのアドレスを管理し,各々のドメイン上のホストアドレスに対する問い合わせに対しては対応するDNSサーバを指定することができるが,簡略化のため図示は省略する。
【0018】この構成において,DNSサーバ14は,地域A内のLANのすべての端末11−1〜11−mのそれぞれのホストネームとホストアドレスとの対応(ホストネーム「a1.area-a.jp」とホストアドレス「P-A1」との対応を含む)をテーブルにより管理する。DNSサーバ24も同様に,地域B内のLANのすべての端末21−1〜21−nのそれぞれのホストネームとホストアドレスとの対応(ホストネーム「b1.area-b.jp」とホストアドレス「P-B1」との対応を含む)をテーブルにより管理する。ルータ15,25はそれぞれ,LAN間の接続のためのインタフェースボードを備え,地域A,B間でのIPパケットのルーティング処理を行う。ルータ17,27はそれぞれ,外部接続のためのネットワークと地域内ネットワークとを分離する。ゲートウェーサーバ16,26はそれぞれ,プライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスの変換を行うとともに,グローバルIPアドレスが変換処理中であるか空きであるかの識別などの管理を行う。グローバルIPアドレスの数は端末より少なくし,通信時に割り当てることによりアドレスリソースを有効利用する。
【0019】ここで,端末21−1から端末11−1に対して通信を行う場合について説明する。このとき,端末21−1は端末11−1のホストネーム「a1.area-a.jp」をキーとしてDNSサーバ24に問い合わせる。DNSサーバ24は,上位のDNSサーバへの問い合わせを経由してDNSサーバ14に問い合わせる。このときDNSサーバ24は,ゲートウェーサーバ26から空いているグローバルIPアドレス「G-B1」を得て,対応テーブル内の端末21−1のホストネームに対するアドレスをプライベートIPアドレス「P-B1」からグローバルIPアドレス「G-B1」に変更する。これによりゲートウェーサーバ26は,端末21−1から外部へのパケットに対してその送信元アドレスをグローバールIPアドレス「G-B1」に変換し,外部から端末21−1へのパケットに対してはその宛先アドレスをグローバルIPアドレス「G-B1」からプライベートアドレス「P-B1」に変換する。したがって,外部からは端末21−1のパケットがホストアドレス「G-B1」に見えることになる。そして,通信が終了,あるいは最終パケットからのタイムアウトが経過した時点で,DNSサーバ24の対応テーブルのホストアドレスを元のプライベートIPアドレス「P-B1」に戻す。
【0020】一方,DNSサーバ14では,対応テーブル内の端末11−1のホストアドレスをプライベートIPアドレス「P-A1」からグローバルIPアドレス「G-A1」に変更し,端末21−1に応答する。ゲートウェーサーバ16は,端末11−1から外部へのパケットに対してその送信元アドレスをグローバルIPアドレス「G-A1」に変換し,外部から端末11−1へのパケットに対しては,その宛先アドレスをグローバルIPアドレス「G-A1」からプライベートIPアドレス「P-A1」に変換する。したがって,外部からは端末11−1のパケットがホストアドレス「G-A1」に見えることになる。すなわち,端末21−1からは宛先の端末11−1のIPアドレスが見かけ上「G-A1」となり,これを用いてIP通信が可能となる。」

「【図1】



イ したがって,甲3には次の発明(以下,「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。なお,段落【0017】の第1文の「area-b・ jp」は,「area-b.jp」の誤記と認められるので,その点を考慮している。

「地域Aには,それぞれホストネームが付与された複数の端末11−1〜11−mと,複数の端末11−1〜11−mのそれぞれのホストネームとIPアドレスとの対応を管理するDNSサーバ14とを備え,さらに,地域BのLANと接続するためのルータ15を備え,地域Bにも同様に,端末21−1〜21−mと,DNSサーバ24と,ルータ25とを備え,DNSサーバ14,24は,複数の端末のそれぞれのホストネームとそのプライベートIPアドレスとの対応を管理すると共に,端末11−1〜11−mあるいは21−1〜21−mのいずれかが他の地域のLANと通信する場合にはその端末のホストネームにグローバルIPアドレスを対応付けて管理する構成において,ホストIPアドレスの代わりにホストネームを用いて通信する方法であって,
地域A,Bの上位のドメインを「jp」,地域Aのドメイン名を「area-a.jp」,地域Bのドメイン名を「area-b.jp」とし,端末11−1にはホストネームとして「a1.area-a.jp」,ホストアドレスとしてプライベートIPアドレス「P-A1」が割り当てられ,端末21−1にはホストネームとして「b1.area-b.jp」,ホストアドレスとしてプライベートIPアドレス「P-B1」が割り当てられており,上位の「jp」ドメインにもDNSサーバが設けられ,下部の地域Aおよび地域BのDNSサーバのアドレスを管理し,各々のドメイン上のホストアドレスに対する問い合わせに対しては対応するDNSサーバを指定することができ,
この構成において,DNSサーバ14は,地域A内のLANのすべての端末11−1〜11−mのそれぞれのホストネームとホストアドレスとの対応(ホストネーム「a1.area-a.jp」とホストアドレス「P-A1」との対応を含む)をテーブルにより管理し,DNSサーバ24も同様に,地域B内のLANのすべての端末21−1〜21−nのそれぞれのホストネームとホストアドレスとの対応(ホストネーム「b1.area-b.jp」とホストアドレス「P-B1」との対応を含む)をテーブルにより管理し,
端末21−1から端末11−1に対して通信を行う場合,端末21−1は端末11−1のホストネーム「a1.area-a.jp」をキーとしてDNSサーバ24に問い合わせ,DNSサーバ24は,上位のDNSサーバへの問い合わせを経由してDNSサーバ14に問い合わせ,このときDNSサーバ24は,ゲートウェーサーバ26から空いているグローバルIPアドレス「G-B1」を得て,対応テーブル内の端末21−1のホストネームに対するアドレスをプライベートIPアドレス「P-B1」からグローバルIPアドレス「G-B1」に変更し,これによりゲートウェーサーバ26は,端末21−1から外部へのパケットに対してその送信元アドレスをグローバールIPアドレス「G-B1」に変換し,外部から端末21−1へのパケットに対してはその宛先アドレスをグローバルIPアドレス「G-B1」からプライベートアドレス「P-B1」に変換し,
一方,DNSサーバ14では,対応テーブル内の端末11−1のホストアドレスをプライベートIPアドレス「P-A1」からグローバルIPアドレス「G-A1」に変更し,端末21−1に応答し,ゲートウェーサーバ16は,端末11−1から外部へのパケットに対してその送信元アドレスをグローバルIPアドレス「G-A1」に変換し,外部から端末11−1へのパケットに対しては,その宛先アドレスをグローバルIPアドレス「G-A1」からプライベートIPアドレス「P-A1」に変換し,
したがって,端末21−1からは宛先の端末11−1のIPアドレスが見かけ上「G-A1」となり,これを用いてIP通信が可能となる,方法。」

(3)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると,次のことがいえる。

(ア)甲2発明の
「ネットワーク1200に接続されたWWWサーバシステムである情報提供サーバシステム1000とWWWクライアント端末である情報検索クライアント端末1100から構成されているWWWシステムにおける情報提供サーバシステム1000が,情報検索クライアント端末1100の論理アドレスからドメインを特定し,特定したドメインに応じて情報コンテンツを選択して情報検索クライアント端末1100に提供する方法」
において,「ネットワーク1200」,「情報コンテンツ」,「情報検索クライアント端末1100」は,それぞれ,本件発明1の「通信ネットワーク」,「ウェブ情報」,「ユーザ端末」に相当する。
また,上記において,「情報提供サーバシステム1000」が,「情報コンテンツを選択して情報検索クライアント端末1100に提供する」ことは,甲2発明の
「情報提供サーバシステム1000,情報検索クライアント端末1100およびドメインネームサーバ2100がネットワーク1200に接続された構成」
によれば,「ネットワーク1200」を介して行われることが明らかである。
したがって,甲2発明の「情報コンテンツを選択して情報検索クライアント端末1100に提供する方法」は,後述する相違点は別として,本件発明1の「通信ネットワークを介して,ウェブ情報をユーザ端末に提供するウェブ情報提供方法」に相当する。

(イ)甲2発明は,「情報検索クライアント端末1100の論理アドレスからドメインを特定」することが行われるものであり,ここで,「情報検索クライアント端末1100の論理アドレス」は,「情報検索クライアント端末1100」に「割り当てた」ものであることが明らかである。
また,甲2発明には「論理アドレス(IPアドレス)」とあることから,上記「論理アドレス」は,本件発明1の「IPアドレス」に相当する。

(ウ)甲2発明は,
「ドメインネームサーバ2100は,ネットワーク1200上の論理アドレス(IPアドレス)とホスト名(ドメイン名)を一元管理するサーバであ」る
との構成及び
「情報検索クライアント端末1100からのURL提供要求があると,情報提供処理サーバシステム1000の情報提供処理部2020が,要求元情報検索クライアント端末1100の論理アドレスと要求URLを受け取り,情報提供処理部2020は,要求元の論理アドレスと要求URLを情報選択処理部2000に渡し,情報選択処理部2000は,情報提供処理部2020から要求元論理アドレスと要求URLを受け取り,要求元論理アドレスのホスト名をドメインネームサーバ2100に問合わせ,ドメインネームサーバ2100は問合わせに対して,論理アドレスに対応するホスト名を情報選択処理部2000に応答し,情報選択処理部2000は,ドメインネームサーバ2100からホスト名を受け取り,問合わせたホスト名が示すドメインと要求URLを条件に選択条件テーブル2010から,情報コンテンツファイル2040のファイル名を検索」する
との構成を備えるものである。
ここで,「ドメインネームサーバ2100」は,「要求元論理アドレスのホスト名」の「問合わせ」に対して,「論理アドレスに対応するホスト名」を「応答」するものであるから,「論理アドレス」と「ホスト名」との対応関係を保持するデータベースであるといえ,本件発明1の「IPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベース」と,「データベース」という点で共通している。
また,甲2発明は,「論理アドレス」,および「ネットワーク1200上の論理アドレス(IPアドレス)とホスト名(ドメイン名)を一元管理する」,「ドメインネームサーバ2100」を用いて,「論理アドレスに対応するホスト名」が示す「ドメイン」を判別することが行われるといえ,上記(イ)も踏まえると,「論理アドレスに対応するホスト名」が示す「ドメイン」と,本件発明1の「IPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域」とは,「IPアドレスの属性」という点で共通している。

(エ)上記(イ),(ウ)で検討した点について(ア)も踏まえると,甲2発明と,本件発明1の
「ユーザ端末に接続されたアクセスポイントが該ユーザ端末に割り当てた前記アクセスポイントのIPアドレス,およびIPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベースを用いて,前記ユーザ端末に割り当てられたIPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域を判別する第1の判別ステップ」
を「有した」こととは,
「ユーザ端末に割り当てたIPアドレス,およびデータベースを用いて,前記ユーザ端末に割り当てられたIPアドレスの属性を判別する第1の判別ステップ」
を「有した」ことにおいて共通している。

(オ)上記(ア)で述べた甲2発明の構成において,「特定したドメインに応じて情報コンテンツを選択して情報検索クライアント端末1100に提供する」ことは,具体的には,上記(ウ)で述べた,甲2発明の「情報検索クライアント端末1100からのURL提供要求があると,・・・問合わせたホスト名が示すドメインと要求URLを条件に選択条件テーブル2010から,情報コンテンツファイル2040のファイル名を検索」するとの構成,及び,
「検索したファイル名の情報コンテンツファイル2040を情報提供処理部2020に渡し,
情報提供処理部2020は,情報選択処理部2000から情報コンテンツファイル2040を受け取り,受け取った情報コンテンツファイル2040を要求元の情報検索クライアント端末1100に転送する」
との構成によって行われることが明らかである。
この点について上記(ウ)で更に検討した点も踏まえると,甲2発明では,判別された「ドメイン」に基づいて,該「ドメイン」に対応した「情報コンテンツ」を「選択」すること,及び,該「選択」された「情報コンテンツ」を,「情報検索クライアント端末1100に転送する」ことが行われるといえる。
ここで,「転送する」ことは,本件発明1の「送信する」ことに相当する。
以上の点について更に上記(ア),(イ)も踏まえると,甲2発明と,本件発明1の
「前記判別された地域に基づいて,該地域に対応したウェブ情報を選択する第1の選択ステップと,
前記選択されたウェブ情報を,前記IPアドレスが割り当てられたユーザ端末に送信する送信ステップと,
を有した」
こととは,
「前記判別された属性に基づいて,該属性に対応したウェブ情報を選択する第1の選択ステップと,
前記選択されたウェブ情報を,前記IPアドレスが割り当てられたユーザ端末に送信する送信ステップと,
を有した」
ことにおいて共通している。

(カ)上記(ア),(エ),(オ)から,本件発明1と甲2発明とは以下の点で一致し,また,相違する。
(一致点)
「通信ネットワークを介して,ウェブ情報をユーザ端末に提供するウェブ情報提供方法において,
ユーザ端末に割り当てたIPアドレス,およびデータベースを用いて,前記ユーザ端末に割り当てられたIPアドレスの属性を判別する第1の判別ステップと,
前記判別された属性に基づいて,該属性に対応したウェブ情報を選択する第1の選択ステップと,
前記選択されたウェブ情報を,前記IPアドレスが割り当てられたユーザ端末に送信する送信ステップと,
を有したウェブ情報提供方法。」

(相違点1)
ユーザ端末に割り当てたIPアドレスについて,本件発明1では,「ユーザ端末に接続されたアクセスポイント」が「割り当てた前記アクセスポイントのIPアドレス」であるのに対して,甲2発明では,どのような通信装置または組織が割り当てた,どのようなアドレス(論理アドレス)であるのか特定されない点。

(相違点2)
第1の判別ステップにおける判別で用いる「データベース」について,本件発明1では,「IPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベース」であるのに対して,甲2発明では,「ネットワーク1200上の論理アドレス(IPアドレス)とホスト名(ドメイン名)を一元管理する」,「ドメインネームサーバ2100」である点。

(相違点3)
第1の判別ステップにおける判別の対象及び第1の選択ステップにおける選択の基となる「IPアドレスの属性」について,本件発明1では,「IPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域」であるのに対し,甲2発明では,「論理アドレスに対応する」「ホスト名が示すドメイン」である点。

イ 判断
そこで,相違点1〜3について検討する。

(ア)相違点1について
ユーザ端末に接続されたアクセスポイントが,当該アクセスポイントが所持するIPアドレスをユーザ端末に割り当てることは,例えば,田上岳夫,舟茂弘,「インターネットの仕組み−13 二つのダイヤルアップIP接続」,日経コミュニケーション,日経BP社,1997年10月6日,第255号,p.142〜143(甲16)の「端末型ダイヤルアップIP接続は,1台のパソコンをインターネットへ接続するときに利用するサービスです(図1)。IPアドレスは,接続開始時にプロバイダ側から1個だけ割り当てられますが,接続するたびに変わります。アクセス・ポイントにあるアクセス・サーバーは,登録されているIPアドレスの中から,使われていないものをその都度割り当てます。」(142頁右欄「端末型はパソコン1台の接続に最適」の項)との記載が示すように周知技術である。
一方,甲2発明は,ユーザ端末(情報検索クライアント端末1100)にアクセスポイントが接続される点について(明示的には)特定されるものではないが,甲2の段落【0020】(上記(1)ア(ウ))の「利用者のアクセスポイント(ここでは具体的にはカントリードメイン)に応じた言語で商品情報を提供する」,「情報提供者は利用者のアクセスポイントに応じて適した内容や記述言語の情報を提供する」との記載に鑑みると,甲2発明において,アクセスポイントを介してユーザ端末を「ネットワーク1200に接続」することは明らかである。
そして,甲2発明におけるユーザ端末へのIPアドレス(論理アドレス)の割り当てのために,それを介してユーザ端末を「ネットワーク1200に接続」することが明らかな上記アクセスポイントに関して,上記周知技術を適用し,ユーザ端末に接続されたアクセスポイントが,アクセスポイントのIPアドレスを割り当てるものとすることは,当業者が容易に想到し得ることである。

(イ)相違点2,3について
本件発明1は,相違点2に係る「IPアドレス対地域データベース」を用いて,相違点3に係る「IPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域を判別する」動作を行うものである点で,相違点2,3は関連しているから,それらについてまとめて検討する。

a 甲3発明は,
「地域A,Bの上位のドメインを「jp」,地域Aのドメイン名を「area-a.jp」,地域Bのドメイン名を「area-b.jp」とし,端末11−1にはホストネームとして「a1.area-a.jp」,ホストアドレスとしてプライベートIPアドレス「P-A1」が割り当てられ,端末21−1にはホストネームとして「b1.area-b.jp」,ホストアドレスとしてプライベートIPアドレス「P-B1」が割り当てられて」いる
とともに,
「DNSサーバ14は,地域A内のLANのすべての端末11−1〜11−mのそれぞれのホストネームとホストアドレスとの対応(ホストネーム「a1.area-a.jp」とホストアドレス「P-A1」との対応を含む)をテーブルにより管理し,DNSサーバ24も同様に,地域B内のLANのすべての端末21−1〜21−nのそれぞれのホストネームとホストアドレスとの対応(ホストネーム「b1.area-b.jp」とホストアドレス「P-B1」との対応を含む)をテーブルにより管理」する
との構成を備えるものである。
また,甲3発明は,「端末21−1から端末11−1に対して通信を行う場合」において,例えば,「地域A」の「DNSサーバ24」が,「対応テーブル内の端末21−1のホストネームに対するアドレスをプライベートIPアドレス「P-B1」からグローバルIPアドレス「G-B1」に変更し,これにより」,「ゲートウェーサーバ26は,端末21−1から外部へのパケットに対してその送信元アドレスをグローバールIPアドレス「G-B1」に変換」する,といった動作,すなわち,特定の地域において,「テーブル」を用いて「プライベートIPアドレス」と「グローバルIPアドレス」との間の「変換」を行うものである。なお,甲3発明において,「テーブル」と「対応テーブル」とは,同じものを指していることが明らかである。

b ここで,「ホストネーム」は,例えば「a1.area-a.jp」のような文字列であって,「地域Aのドメイン名」である「area-a.jp」を含むことから,「地域A」の「上位のドメイン」である「jp」よりもきめ細かな,「地域A」に固有の情報であり,「テーブル」は,「プライベートIPアドレス」又は「グローバルIPアドレス」,及び上記のような地域に固有の情報を含むデータベースであるものと理解することができる。
しかしながら,甲3には,IPアドレス(「プライベートIPアドレス」又は「グローバルIPアドレス」),および「テーブル」を用いて,地域を判別することは,記載されていない。
甲3発明は,上記のような地域に固有のデータベースとしての「テーブル」を用いて,上記aで述べた,特定の地域においてアドレスの「変換」を行うものであって,地域を判別するものではない。

c また,甲3発明は,「上位の「jp」ドメインにもDNSサーバが設けられ,下部の地域Aおよび地域BのDNSサーバのアドレスを管理し,各々のドメイン上のホストアドレスに対する問い合わせに対しては対応するDNSサーバを指定することができ」るとともに,「DNSサーバ24は,上位のDNSサーバへの問い合わせを経由してDNSサーバ14に問い合わせ」るものでもあるが,これらの点については,「DNSサーバ24」が,「a1.area-a.jp」という「ホストネーム」に含まれる「ドメイン名」である「area-a.jp」を用いて,「上位のDNSサーバ」へ「問い合わせ」,この「問い合わせ」に対して,「上位のDNSサーバ」が,当該「上位のDNSサーバ」が「管理」している「下部の地域Aおよび地域BのDNSサーバのアドレス」を参照することで,「DNSサーバを指定」し,これにより,「問い合わせ」への応答として,「DNSサーバ24」が,「DNSサーバ14」の「ホストアドレス」(グローバルIPアドレス)を得て,これを用いて,「DNSサーバ24」が「DNSサーバ14に問い合わせ」る,という動作であるものと理解することができる。
つまり,「上位のDNSサーバ」の動作としては,「上位のDNSサーバ」が自ら管理する「下部の地域Aおよび地域BのDNSサーバのアドレス」を参照して,「ドメイン名」から「ホストアドレス」への変換を行うものである。
このように理解することは,上記bで述べた甲2発明の動作が同様のものである(この点に関する甲2の記載としては,段落【0016】に「ドメインネームサーバ2100は,ネットワーク1200上の論理アドレス(IPアドレス)とホスト名(ドメイン名)を一元管理するサーバであり,ネットワーク1200に接続されたコンピュータマシン1000,1100からの問合わせに対して,ホスト名から論理アドレスへの変換をしたり・・・する。」と記載されている。)ことや,乙8の「ホスト名」の項に,「ドメイン名は,インターネットのネーム・サービスであるDNS (Domain name system) を介して,IPアドレスに変換できる。」と記載されていることとも付合する。
以上から明らかなように,甲3発明における「上位」の「DNSサーバ」に関する構成は,そもそも,上記aで述べた,甲3発明の「DNSサーバ14」や「DNSサーバ24」の「テーブル」に関する構成とは無関係である。

d 上記bのとおり,甲3には,IPアドレス,および「テーブル」を用いて地域を判別することは記載されていない。
結局のところ,「IPアドレス対地域データベース」を用いて地域を判別することについては,甲2及び甲3のいずれにも記載されていないから,甲2発明に甲3発明を適用しても,本件発明1の相違点2,3に係る構成には至らない。
よって,本件発明1の相違点2,3に係る構成は,甲2発明及び甲3発明に基づいて当業者が容易に想到し得るとはいえない。

ウ 小括
したがって,本件発明1は,甲2発明及び甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本件発明2について
本件発明2のウェブ情報提供装置は,本件発明1のウェブ情報提供方法と発明のカテゴリが相違するのみであるところ,それぞれ方法の発明である甲2発明及び甲3発明についても,甲2及び甲3の記載に基づき,装置の発明として認定することができる。そうすると,本件発明2も,本件発明1と同様の理由により,甲2に記載された発明及び甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)請求人の主張について
ア 請求人は,甲3に関して,DNSサーバ14が管理する対応テーブル及びDNSサーバ24が管理する対応テーブルを合わせた全体が,本件発明1の「IPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベース」に相当する旨主張した(口頭審理陳述要領書4頁)上で,甲2発明のドメインネームサーバとして甲3のDNSサーバを適用した場合には,本件発明1の「相違点1」に係る構成が必然的に得られることになる旨,主張する(同4〜5頁)。
また,甲2発明のドメインネームサーバとして甲3のDNSサーバを適用することにより,甲2発明における「IPアドレスとドメイン名の対応関係を保持するドメインネームサーバ2100」は「IPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベース」に置き換えられることとなり,甲2発明の「IPアドレスに対応するドメイン名が示す地域」も「アクセスポイントに対応する地域」ないし「前記ユーザ端末に割り当てられたIPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域」に置き換えられることとなるから,甲2発明のドメインネームサーバとして甲3のDNSサーバを適用することによって,当業者は,本件発明1に容易に想到可能である旨,主張する(同12〜13頁)。
しかしながら,上記(3)イ(イ)dで述べたように,甲2発明に甲3発明を適用しても,本件発明1の構成には至らない。
また,甲3発明では,「テーブル」の利用形態は,同bで述べたように,地域に固有の「テーブル」を用いて特定の地域においてアドレスの「変換」を行うというものであって,請求人が主張するような,「DNSサーバ14が管理する対応テーブル及びDNSサーバ24が管理する対応テーブルを合わせた全体」を利用する形態については,甲3には記載されていない。

イ 請求人は,甲3に,端末21−1は端末11−1のホストネーム「a1.area-a.jp」をキーとしてDNSサーバ24に問い合わせると,DNSサーバ24は,上位のDNSサーバへの問い合わせを経由してDNSサーバ14に問い合わせることが記載されていることに関し,上位の「jp」ドメインのDNSサーバは,端末11−1のホストネームである,地域Aを示す情報が含まれる「a1.area-a.jp」をDNSサーバ24から取得し,取得したホストネーム「a1.area-a.jp」に対応する端末11−1に接続され,地域Aに配置されたDNSサーバ14を特定することができ,したがって,上位の「jp」ドメインのDNSサーバにおいて,地域Aに対応づけられたホストネーム「a1.area-a.jp」に基づいて,地域Aに配置されたDNSサーバ14を特定するためには,少なくともホストネーム「a1.area-a.jp」を含む対応テーブルであって,地域Aに関連づけられたDNSサーバ14が管理する対応テーブルを参照する必要があり,当該対応テーブルを管理するDNSサーバ14を特定するということは,DNSサーバ14に関連づけられた地域Aを特定していることは明らかである旨,主張する(口頭審理陳述要領書8〜9頁)。
しかしながら,上記(3)イ(イ)cで述べたように,甲3発明における「上位」の「DNSサーバ」に関する構成は,そもそも甲3発明の「DNSサーバ14」や「DNSサーバ24」の「テーブル」に関する構成とは無関係であって,甲3の記載について,「上位の「jp」ドメインのDNSサーバ」において,「地域Aに関連づけられたDNSサーバ14が管理する対応テーブルを参照する必要があ」ると理解するのは誤りである。

ウ 請求人は,甲2及び甲3は,いずれも,論理アドレス(IPアドレス)とホストネーム(ドメイン名)との対応を管理するドメインネームサーバ(DNSサーバ:ドメインネームシステムサーバ)を備えた通信ネットワークシステムが記載された特許文献であり,技術分野も共通するばかりか,甲2及び甲3のドメインネームサーバとしての作用・機能は基本的に共通し,また,甲2及び甲3は,出願公開された時期も極めて近接しており,しかも,甲2には,甲2発明に対し,よりきめ細かいエリアを特定する技術を適用することについての示唆もあるから,甲2発明に甲3に記載された技術を組み合わせることについて動機付けがあったことは明らかである旨,主張する(審判請求書43〜44頁)。
しかしながら,仮に,甲2発明に甲3発明を適用する動機付けがあるとしても,当該適用によっては本件発明1の構成には至らないことは,上記(3)イ(イ)dのとおりである。

エ よって,請求人の上記の各主張は,いずれも採用できない。

(6)無効理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから,無効理由2によっては,本件発明1,2についての特許を無効とすることはできない。

3 無効理由3について
(1)甲4の記載,甲4発明
ア 甲4には,図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「To support WWW performance analysis, we expanded Avatar, a virtual reality system designed to analyze and display real-time performance data [17], and we applied it to the analysis of WWW traffic. One variant of Avatar supports real-time display of WWW server accesses by mapping them to their geographic point of origin on various projections of the Earth.」(第2ページ第20〜23行)

(訳: WWWの性能分析をサポートするために,我々は,リアルタイム性能データの分析と表示を行うために設計された仮想現実システムであるアバター(Avatar)を拡張して,WWWトラフィックの分析に適用した。アバターのある変形例は,WWWサーバアクセスを,地球の様々な投影図上におけるそれらの地理的な起点へ写像することによって,WWWサーバアクセスのリアルタイム表示をサポートする。)

(イ)「All the WWW servers execute NCSA’s Hypertext Transfer Protocol daemon (httpd). In turn, each copy of this daemon maintains four logs (document accesses, agents, errors, and referers) that are written on the local disk of the associated workstation server. We focus on the document access logs, the most interesting because they record the characteristics of each request.」(第3ページ第19〜22行)

(訳: 全てのWWWサーバは,NCSAのハイパーテキスト転送プロトコルデーモン(httpd)を実行する。その結果,このデーモンの各コピーは,4つのログ(文書アクセス,エージェント,エラー,そしてリファラ)を保持し,これらは,関連するワークステーションサーバのローカルディスク上に書き込まれる。我々は,文書アクセスログに注目し,それらは最も興味深いのであるが,なぜなら,それらは各要求の特徴を記録するからである。)

(ウ)「Each of the access log entries consists of seven fields [13], including the IP address of the requesting client, the time of the request, the name of the requested document, and the number of bytes sent in response to the request.」(第3ページ第27〜29行)

(訳: アクセスログの各項目は7つのフィールドで構成され,要求クライアントのIPアドレス,要求時刻,要求された文書名,そして,要求に応答して送信されたバイト数を含む。)

(エ)「The IP addresses provide additional information. By converting an IP address to a domain name, one can determine the components of the domain name and, often, the location of the requester. In the United States, common domain name extensions include education (edu), commercial (com), government (gov), and other (us). Outside the United States, countries typically use the ISO 3166 (1993) two letter country codes, or the network (net) extension. By exploiting these two letter country codes, one can identify the request’s country of origin. As we shall see, IP addresses and domain names are thestarting point for finer geographic distinctions, including mapping requests to specific latitude and longitude.」(第4ページ第4〜10行)

(訳: IPアドレスは追加的な情報を提供する。IPアドレスをドメイン名へ変換することにより,ドメイン名の要素を,そして時には要求者の位置を,決定することが可能となる。合衆国内において,一般的なドメイン名拡張子は,教育(edu),商用(com),政府(gov),及びその他(us)を含む。合衆国外において,国々は,典型的にはISO3166(1993)による2文字国コード,またはネットワーク(net)拡張子を用いる。これら2文字の国コードを利用することによって,要求の起点としての国を特定することができる。後に分かるように,IPアドレスとドメイン名は,要求を特定の緯度及び経度に写像することを含む,より精細な地理的識別に向けた出発点である。)

(オ)「Unlike users of WWW browsers, those who deploy WWW servers have a growing interest in understanding the geographic dispersion of access patterns. As digital cash makes electronic commerce via the WWW practical, providers of products can gain a competitive advantage by mining access patterns, much as large retail organizations currently mine point-of-sale information. For example, understanding which parts of the country (or world) most frequently purchase particular items from an online catalog is a major advantage --- given the geographic location of an incoming IP address, one can tailor the WWW server response by highlighting particular product types. Likewise, data on requester demographics [19] and correlation of this data with geographic information systems would permit selected targeting of product information. Finally, commercial Internet service providers could exploit knowledge of user access patterns to add new services in selected geographic regions.」(第4ページ第27〜36行)

(訳: WWWブラウザのユーザとは異なり,WWWサーバを運営する人々は,アクセスパターンの地理的な広がりを理解することに,ますます関心を高めている。ディジタルキャッシュがWWWを経由した電子商取引を実用化したように,製品の提供者は,アクセスパターンを解析することによって,大型小売店組織が現在POS情報を解析して得ているよりも大いに,競争的優位性を得ることが可能となる。例えば,その国(または世界)のどの部分が,オンラインカタログから最も頻繁に特定の商品を購入しているかを理解することは,主要な優位点であり,到来したIPアドレスの地理的位置が与えられると,特定の製品タイプをハイライトすることによって,WWWサーバの応答を適合させることができる。同様に,要求者の人口比率に関するデータと,このデータと地理的情報システムとの相関関係は,製品情報の選択されたターゲティングを可能とするであろう。最後に,商用インターネットサービスプロバイダ(ISP)は,選択された地域に新しいサービスを追加するために,ユーザのアクセスパターンの知識を利用することができる。)

(カ)「To understand the temporal and geographic patterns of WWW server access, we developed a set of heuristics for mapping IP addresses to latitude and longitude. These heuristics rely on the domain names and the InterNIC whois database. The whois database contains information on domains, hosts, networks, and other Internet administrators. The information usually, though not always, includes a postal address.

To map IP addresses to geographic location, we first determine the domain name. For locations outside the United States, the suffix of the domain name typically is an abbreviation of the country name. In these cases, we map the request to the capital of the country. For all other cases, we query the whois database, retrieving the textual data associated with the IP address. We then search this data for city and country names. If a city or country name is found, we then retrieve the latitude and longitude from a local database of city and country names.」(第4ページ第38行〜第5ページ第3行)

(訳: 時間的及び地理的なWWWサーバアクセスのパターンを理解するために,我々はIPアドレスを緯度及び経度へ写像するための経験則のセットを開発した。これらの経験則は,ドメイン名とInterNICのwhoisデータベースに依存している。whoisデータベースは,ドメイン,ホスト,ネットワーク,そして他のインターネット管理者に関する情報を含んでいる。この情報は,常時ではないが通常,郵便アドレスを含む。
IPアドレスを地理的位置へ写像するために,我々はまずドメイン名を決定する。合衆国外の位置について,ドメイン名の接尾語は典型的に国名の略記号である。これらの場合,我々はその要求を当該国の首都に写像する。他の全ての場合は,我々はwhoisデータベースに問い合わせ,そのIPアドレスに関連付けられたテキストデータを取得する。その後我々は,このデータから都市及び国の名を検索する。もし都市又は国の名前が見つかると,我々は都市と国の名前のローカルデータベースから,緯度及び経度を取得する。)

(キ)「Because querying the whois database is expensive, often requiring a second or more to retrieve the desired data, we store the latitudes and longitudes of previously matched IP addresses to avoid repeated and unnecessary whois queries. If the whois query returns information that does not contain a city or country name, we record the IP address to avoid further, fruitless queries. Off-line, many of these failed queries can be identified and corrected in the database.

With our current database (35,000+ entries), about 95 percent of all requests to the NCSA WWW server can be successfully matched to latitude and longitude using only local data, 4.5 percent have undetermined latitudes and longitudes, and the remaining 0.5 percent must be found in the remote whois database. As our database continues to expand, the fraction of unresolvable requests continues to decline.」(第5ページ第4〜13行)

(訳: whoisデータベースへの問い合わせは高価であり,所望のデータを取得するためにしばしば2回以上の問い合わせを要するから,我々は,繰り返しの不要なwhois問い合わせを避けるべく,以前に照合したIPアドレスの緯度及び経度を保存する。もしwhois問い合わせが都市名も国名も含まない情報を返すならば,我々は,更に効果的でない問い合わせを行わないために,そのIPアドレスを記録する。オフラインで,多数のこうした失敗問い合わせを特定し,データベース内で修正することができる。
我々の現在のデータベース(3万5千以上の項目)を用いると,NCSAWWWサーバへの全要求のおよそ95%は,ローカルデータのみを使用して緯度及び経度へ対応付けることができ,4.5%は緯度及び経度を決定することができず,残る0.5%が遠隔のwhoisデータベースから発見されなければならない。我々のデータベースが拡張し続けるにつれて,要求の未解決部分は,減少し続ける。)

(ク)「Despite our high success rate, network firewalls and national online services limit the accuracy of the latitudes and longitudes. For instance, an America Online (AOL) user might connect via modem from Irvine, California and access the NCSA What’s New page. That person’s IP address (aol.com) would yield Vienna, Virginia as its location because that is the site of the AOL headquarters. Similar problems arise with large, geographically disperse corporations that maintain a single Internet point of contact. Fortunately, such cases can be identified by name and can often be parsed by decomposing the domain name (e.g., intgate.raleigh.ibm.com is easily identified as an IBM site at Raleigh, North Carolina).」(第5ページ第14〜20行)

(訳: 我々の高い成功率にも関わらず,ネットワークファイアウォールと全国的オンラインサービスが,緯度と経度の正確さを制限する。例えば,アメリカオンライン(AOL)のユーザは,カリフォルニア州アーバインからモデムを介して接続し,NCSAの“What’s New”ページにアクセスするかもしれない。その人のIPアドレス(aol.com)はその位置としてヴァージニア州ヴィエンナをもたらすであろう。なぜならそれこそAOL本社の場所だからである。単一のインターネット接続点を保有し,地理的に広がった大規模な会社について同様の問題が生じる。幸運にも,そのようなケースは名前により識別可能であって,時折,ドメイン名を分解することによって解析されうる(例えば,intgate.raleigh.ibm.comはノースカロライナ州ラレーにあるIBMの場所として容易に特定される。)

イ 上記アの記載(特に下線部の記載)について,次のことがいえる。

(ア)上記ア(オ)によれば,甲4は,「WWWサーバ」に「到来したIPアドレスの地理的位置が与えられると,特定の製品タイプをハイライトすることによって,WWWサーバの応答を適合させる」方法を開示するものであり,ここで,「到来したIPアドレス」は,同(ウ)によれば,「要求クライアントのIPアドレス」である。

(イ)上記ア(ア)及び同(エ)によれば,同(オ)の「到来したIPアドレスの地理的位置が与えられる」ことは,上記(ア)で述べた「要求クライアントのIPアドレス」を,「緯度及び経度」からなる「地理的位置」に「写像する」ことによってなされるものであり,当該「地理的位置」は,「WWWサーバアクセス」の「起点」である。

(ウ)上記ア(イ)によれば,「WWWサーバ」は,「ハイパーテキスト転送プロトコルデーモン(httpd)を実行」して,「文書アクセスログ」を「保持」するものである。

(エ)上記ア(ウ)によれば,「アクセスログ」の「項目」は,「要求クライアントのIPアドレス」の「フィールド」を含んで「構成され」る。

(オ)上記ア(カ)によれば,「要求クライアントのIPアドレス」(上記(ア))から「地理的位置への写像」は,「まずドメイン名を決定」し,「ドメイン名の接尾語」が「国名の略記号である」場合,「そのIPアドレスを当該国の首都に写像」し,「他の全ての場合」,「whoisデータベースに問い合わせ,そのIPアドレスに関連付けられたテキストデータを取得し」,「このテキストデータから都市及び国の名を検索」し,「都市又は国の名前が見つかると,都市と国の名前のローカルデータベースから,緯度及び経度を取得する」ことにより行われる。

(カ)「地理的位置への写像」(上記(オ))は,上記ア(キ)によれば,「不要なwhois問い合わせを避けるべく,以前に照合したIPアドレスの緯度及び経度を保存」し,「オフライン」で,「失敗した問い合わせを特定し,ローカルデータベース内で修正することができ」るものである。
また,上記ア(キ)の「我々の現在のデータベース(3万5千以上の項目)を用いると,NCSAWWWサーバへの全要求のおよそ95%は,ローカルデータのみを使用して緯度及び経度へ対応付けることができ」るとの記載は,同(カ)の末尾の「ローカルデータベース」に関する記載であり,当該「ローカルデータベース」を「用いると」,「WWWサーバへの全要求のおよそ95%は,ローカルデータのみを使用して」,「要求クライアントのIPアドレス」(上記(ア))を「緯度及び経度へ対応付けることができ」るというものである。

(キ)「地理的位置への写像」(上記(オ))は,上記ア(ク)によれば,「全国的オンラインサービス」の場合,「緯度と経度の正確さ」が「制限」され,「例えば,アメリカオンライン(AOL)のユーザ」は,「その人のIPアドレス(aol.com)」が,「その位置として」,「AOL本社の場所」である「ヴァージニア州ヴィエンナをもたらす」という「問題」,すなわち,「全国的オンラインサービス」の「ユーザ」の「IPアドレス」については,「緯度及び経度の正確さ」が「制限される」という「問題が生じる」ものの,「そのようなケースは名前により識別可能であって,時折,ドメイン名を分解することによって解析されうる」ことから,「例えば,intgate.raleigh.ibm.comはノースカロライナ州ラレーにあるIBMの場所として容易に特定される」ので,この「問題」に対処することができる。

ウ したがって,甲4には,以下の発明(以下,「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。

「WWWサーバに到来した要求クライアントのIPアドレスを,WWWサーバアクセスの起点としての緯度及び経度からなる地理的位置へ写像し,地理的位置が与えられると,特定の製品タイプをハイライトすることによって,WWWサーバの応答を適合させる方法において,
WWWサーバは,ハイパーテキスト転送プロトコルデーモン(httpd)を実行して,文書アクセスログを保持し,
アクセスログの項目は,要求クライアントのIPアドレスのフィールドを含んで構成され,
要求クライアントのIPアドレスから地理的位置への写像は,
まずドメイン名を決定し,
ドメイン名の接尾語が国名の略記号である場合,そのIPアドレスを当該国の首都に写像し,
他の全ての場合,whoisデータベースに問い合わせ,そのIPアドレスに関連付けられたテキストデータを取得し,
このテキストデータから都市及び国の名を検索し,
都市又は国の名前が見つかると,都市と国の名前のローカルデータベースから,緯度及び経度を取得することにより行われ,
不要なwhois問い合わせを避けるべく,以前に照合したIPアドレスの緯度及び経度を保存し,
オフラインで,失敗した問い合わせを特定し,ローカルデータベース内で修正することができ,
ローカルデータベースを用いると,WWWサーバへの全要求のおよそ95%は,ローカルデータのみを使用して,要求クライアントのIPアドレスを緯度及び経度へ対応付けることができ,
全国的オンラインサービスのユーザのIPアドレスについては,緯度及び経度の正確さが制限されるものの,時折,ドメイン名を分解することによって解析されうる,
方法。」

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲4発明とを対比すると,次のことがいえる。

(ア)甲4には,次の事項についての記載がある(上記(1)ア(オ))。
「WWWブラウザのユーザとは異なり,WWWサーバを運営する人々は,アクセスパターンの地理的な広がりを理解することに,ますます関心を高めている。ディジタルキャッシュがWWWを経由した電子商取引を実用化したように,製品の提供者は,アクセスパターンを解析することによって,大型小売店組織が現在POS情報を解析して得ているよりも大いに,競争的優位性を得ることが可能となる。例えば,その国(または世界)のどの部分が,オンラインカタログから最も頻繁に特定の商品を購入しているかを理解することは,主要な優位点であり,到来したIPアドレスの地理的位置が与えられると,特定の製品タイプをハイライトすることによって,WWWサーバの応答を適合させることができる。」
ここで,「オンラインカタログ」から「商品を購入」するのは顧客であること,「最も頻繁に特定の商品を購入しているかを理解する」のは「製品の提供者」であること,「特定の製品タイプをハイライト」した表示がなされるのは,「WWWサーバの応答」により表示したウェブサイトの画面上であること,がそれぞれ明らかである。
一方,オンラインカタログ等において,どの商品が人気であるかといった,商品に関する情報を顧客に提供することは,一般的に行われていることである。
そうすると,甲4の上記記載は,そのような情報を顧客に提供する目的で,多数の顧客が「オンラインカタログ」にアクセスして商品を購入する際の「アクセスパターン」を「製品の提供者」が「解析する」ことで,「その国(または世界)のどの部分が,オンラインカタログから最も頻繁に特定の商品を購入しているかを理解」した上で,それにより得られた知識等を用いて,その後,ある顧客の端末がオンラインカタログにアクセスする際,当該顧客について把握される「到来したIPアドレスの地理的位置」に基づいて,当該顧客の端末の画面上で「特定の製品タイプをハイライトする」の表示がなされるように,当該顧客に対応する「WWWサーバの応答」としての「オンラインカタログ」を作成して,「WWWサーバ」が当該「オンラインカタログ」を提供することができることについて記載したものと理解するのが自然である。
なお,「オンラインカタログ」上の特定の商品について,「最も頻繁に特定の商品を購入している」「国(または世界)」の「部分」を「理解する」ためには,商品を特定して,当該商品に対応する地域に関する情報を得ることが必要であるのに対して,「到来したIPアドレスの地理的位置が与えられると,特定の製品タイプをハイライトする」こと,すなわち,(「到来したIPアドレス」の「写像」によって)地域を特定して,当該地域に対応する商品に関する情報を得ることは,逆の動作であるから,甲4の上記記載が,「製品の提供者」が「理解する」ために,「製品の提供者」の端末の画面上で「特定の製品タイプをハイライトする」表示を行うことについて記載したものとは考えにくい。

(イ)上記(ア)で検討した点を踏まえると,甲4発明の「要求クライアント」は,顧客の端末であって,本件発明1の「ユーザ端末」に相当し,「特定の製品タイプをハイライトする」ことは,「WWWサーバ」による,当該顧客に対応するように作成した「WWWサーバの応答」の,当該顧客の「要求クライアント」への提供であって,「WWWサーバの応答」は,本件発明1の「ウェブ情報」に相当する。
また,当該提供は,「通信ネットワークを介し」た送信により行われることが明らかである。
したがって,甲4発明の「WWWサーバに到来した要求クライアントのIPアドレスを,WWWサーバアクセスの起点としての緯度及び経度からなる地理的位置へ写像し,地理的位置が与えられると,特定の製品タイプをハイライトすることによって,WWWサーバの応答を適合させる方法」は,後述する相違点は別として,本件発明1の「通信ネットワークを介して,ウェブ情報をユーザ端末に提供するウェブ情報提供方法」に相当する。

(ウ)甲4発明の「要求クライアントのIPアドレス」は,当該「要求クライアント」に「割り当てた」ものであることが明らかである。

(エ)甲4発明は,
「要求クライアントのIPアドレスから地理的位置への写像は,
まずドメイン名を決定し,
ドメイン名の接尾語が国名の略記号である場合,そのIPアドレスを当該国の首都に写像し,
他の全ての場合,whoisデータベースに問い合わせ,そのIPアドレスに関連付けられたテキストデータを取得し,
このテキストデータから都市及び国の名を検索し,
都市又は国の名前が見つかると,都市と国の名前のローカルデータベースから,緯度及び経度を取得することにより行われ,
不要なwhois問い合わせを避けるべく,以前に照合したIPアドレスの緯度及び経度を保存し,
オフラインで,失敗した問い合わせを特定し,ローカルデータベース内で修正することができ,
ローカルデータベースを用いると,WWWサーバへの全要求のおよそ95%は,ローカルデータのみを使用して,要求クライアントのIPアドレスを緯度及び経度へ対応付けることができ」る
ものである。
ここで,「以前に照合したIPアドレスの緯度及び経度を保存」する保存先は,「ローカルデータベース」であることが明らかであって,これにより,「要求クライアントのIPアドレスから地理的位置への写像」において,「IPアドレス」と「緯度及び経度」とが対応したデータベースである「ローカルデータベース」の「ローカルデータのみを使用して,要求クライアントのIPアドレスを緯度及び経度へ対応付けることができ」るといえる。
また,「緯度及び経度」は,本件発明1の「アクセスポイントに対応する地域」と,「地理的位置」という点で共通している。
以上のことから,甲4発明の「ローカルデータベース」と,本件発明1の「IPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベース」とは,「IPアドレスと地理的位置とが対応したデータベース」である点で共通している。

(オ)上記(エ)で述べた,「ローカルデータベース」の「ローカルデータのみを使用して,要求クライアントのIPアドレスを緯度及び経度へ対応付けることができ」ることから,甲4発明は,「要求クライアントのIPアドレス」,および「ローカルデータベース」を用いて,前記「要求クライアントのIPアドレス」に関連する「緯度及び経度」を「判別する」ものであるといえる。

(カ)上記(ウ)〜(オ)について上記(イ)も踏まえると,甲4発明と,本件発明1の
「ユーザ端末に接続されたアクセスポイントが該ユーザ端末に割り当てた前記アクセスポイントのIPアドレス,およびIPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベースを用いて,前記ユーザ端末に割り当てられたIPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域を判別する第1の判別ステップ」
を「有した」こととは,
「ユーザ端末に割り当てたIPアドレス,およびIPアドレスと地理的位置とが対応したデータベースを用いて,前記ユーザ端末に割り当てられたIPアドレスに関連する地理的位置を判別する第1の判別ステップ」
を「有した」ことにおいて共通している。

(キ)甲4発明の「WWWサーバに到来した要求クライアントのIPアドレスを,WWWサーバアクセスの起点としての緯度及び経度からなる地理的位置へ写像し,地理的位置が与えられると,特定の製品タイプをハイライトする」ことにおいて,「緯度及び経度」は,上記(オ)で述べた,「ローカルデータベース」を用いて「判別する」ことにより得られるものであり,「特定の製品タイプをハイライトする」ことは,上記(イ)で述べたように,「WWWサーバ」による,当該顧客に対応するように作成した「WWWサーバの応答」の,当該顧客の「要求クライアント」への提供であり,当該提供は送信により行われることが明らかである。
ここで,「WWWサーバの応答」を作成することに関して,「作成」と,本件発明1の「選択」とは,「処理」である点で共通している。
以上の点について,上記(イ)で更に検討した点及び上記(ウ),(カ)も踏まえると,甲4発明と,本件発明1の
「前記判別された地域に基づいて,該地域に対応したウェブ情報を選択する第1の選択ステップと,
前記選択されたウェブ情報を,前記IPアドレスが割り当てられたユーザ端末に送信する送信ステップと,
を有した」
こととは,
「前記判別された地理的位置に基づいて,該地理的位置に対応したウェブ情報を処理する第1の処理ステップと,
前記処理されたウェブ情報を,前記IPアドレスが割り当てられたユーザ端末に送信する送信ステップと,
を有した」
ことにおいて共通している。

(ク)上記(イ),(カ),(キ)から,本件発明1と甲4発明とは以下の点で一致し,また,相違する。
(一致点)
「通信ネットワークを介して,ウェブ情報をユーザ端末に提供するウェブ情報提供方法において,
ユーザ端末に割り当てたIPアドレス,およびIPアドレスと地理的位置とが対応したデータベースを用いて,前記ユーザ端末に割り当てられたIPアドレスに関連する地理的位置を判別する第1の判別ステップと,
前記判別された地理的位置に基づいて,該地理的位置に対応したウェブ情報を処理する第1の処理ステップと,
前記処理されたウェブ情報を,前記IPアドレスが割り当てられたユーザ端末に送信する送信ステップと,
を有したウェブ情報提供方法。」

(相違点4)
ユーザ端末に割り当てたIPアドレスについて,本件発明1では,「ユーザ端末に接続されたアクセスポイント」が「割り当てた前記アクセスポイントのIPアドレス」であるのに対して,甲4発明では,どのような通信装置または組織が割り当てた,どのようなアドレスであるのか特定されない点。

(相違点5)
第1の判別ステップにおける判別で用いる「IPアドレスと地理的位置とが対応したデータベース」について,本件発明1では,「IPアドレスとアクセスポイントに対応する地域とが対応したIPアドレス対地域データベース」であるのに対して,甲4発明では,「要求クライアントのIPアドレスを緯度及び経度へ対応付けることができ」る「ローカルデータベース」である点。

(相違点6)
第1の判別ステップにおける判別の対象及び第1の選択ステップにおける処理の基となる「IPアドレスに関連する地理的位置」について,本件発明1では,「IPアドレスを所有するアクセスポイントが属する地域」であるのに対し,甲4発明では,「IPアドレス」に対して「対応付け」た「緯度及び経度」である点。

(相違点7)
ウェブ情報に対して「第1の処理ステップ」で行う「処理」について,本件発明1では,「第1の選択ステップ」で行う「選択」であるのに対して,甲4発明では,「特定の製品タイプをハイライトする」ことがなされた「WWWサーバの応答」のための処理が「選択」であるとは特定されない点。

イ 判断
そこで,相違点4〜7について検討する。

(ア)相違点4について
ユーザ端末に接続されたアクセスポイントが,当該アクセスポイントが所持するIPアドレスをユーザ端末に割り当てることは,上記2(3)イ(ア)のとおり周知技術であり,甲4発明におけるユーザ端末(要求クライアント)へのIPアドレスの割り当てのために,当該周知技術を適用して,ユーザ端末に接続されたアクセスポイントが,アクセスポイントのIPアドレスを割り当てるものとすることは,当業者が容易に想到し得ることである。

(イ)相違点5,6について
上記2(3)イ(イ)と同様に,相違点5,6は関連しているから,それらについてまとめて検討する。
上記2(3)イ(イ)bで述べたように,甲3発明の「テーブル」は,「プライベートIPアドレス」又は「グローバルIPアドレス」,及び地域に固有の情報を含むデータベースであるものと理解することができるものの,甲3には,IPアドレス,および「テーブル」を用いて地域を判別することは記載されていない。
結局のところ,「IPアドレス対地域データベース」を用いて地域を判別することについては,甲3及び甲4のいずれにも記載されていないから,甲4発明に甲3発明を適用しても,本件発明1の相違点5,6に係る構成には至らない。
よって,本件発明1の相違点4に係る構成は,甲3発明及び甲4発明(甲4発明が主たる発明である。以下同様。)に基づいて当業者が容易に想到し得るとはいえない。

(ウ)相違点7について
予め作成された複数の異なるウェブ情報の中から,適切なものを選択してユーザ端末に提供することは,例えば,甲2発明の「情報コンテンツを選択して情報検索クライアント端末1100に提供する」との構成にもあるように周知技術である。
一方,甲4発明は,「地理的位置が与えられると,特定の製品タイプをハイライトすることによって,WWWサーバの応答を適合させる」ものであるが,ここで,「特定の製品タイプをハイライトする」ことについては,上記ア(ア)で検討したように,ある顧客の端末がオンラインカタログにアクセスする際,当該顧客について把握される「到来したIPアドレスの地理的位置」に基づいて,当該顧客の端末の画面上で「特定の製品タイプをハイライトする」の表示がなされるものと理解することができる。
この点は,アクセス元の顧客に関する「IPアドレスの地理的位置」によって,「WWWサーバの応答」として顧客の端末に提供されるウェブ情報が,「ハイライト」された「特定の製品タイプ」に関して異なり得ることを意味する。
そして,甲4発明において,「ハイライト」された「特定の製品タイプ」が異なるウェブ情報を提供するために,上記周知技術を適用して,ウェブ情報を選択するものとすることは,当業者が容易に想到し得ることである。

ウ 小括
したがって,本件発明1は,甲3発明及び甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件発明2について
本件発明2のウェブ情報提供装置は,本件発明1のウェブ情報提供方法と発明のカテゴリが相違するのみであるところ,それぞれ方法の発明である甲3発明及び甲4発明についても,甲3及び甲4の記載に基づき,装置の発明として認定することができる。そうすると,本件発明2も,本件発明1と同様の理由により,甲3に記載された発明及び甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)請求人の主張について
請求人は,甲4及び甲3は,いずれも,IPアドレスと地理的情報とが対応づけられたデータベースを用いて,ユーザ端末のIPアドレスを地理的情報へ対応付けることが可能な通信ネットワークシステムが記載された文献であり,技術分野も共通しており,また,甲4の「ローカルデータベース」及び甲3の「DNSサーバ」の作用・機能は基本的に共通し,さらに,甲4,甲3の公開時期は,近接しているから,当業者において,甲4発明に甲3に記載された技術を組み合わせることについて動機付けがあったことは明らかである旨,主張する(審判請求書59頁)。
しかしながら,仮に,甲4発明に甲3発明を適用する動機付けがあるとしても,当該適用によっては本件発明1の構成には至らないことは,上記(2)イ(イ)で検討したとおりであるから,そのような主張は採用できない。

(5)無効理由3についてのまとめ
以上のとおりであるから,無効理由3によっては,本件発明1,2についての特許を無効とすることはできない。

第6 むすび
以上のとおり,請求人の主張する無効理由にはいずれも理由がなく,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件発明1,2についての特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については,特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により,請求人の負担とする。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-01-06 
結審通知日 2022-01-12 
審決日 2022-02-02 
出願番号 P1998-180815
審決分類 P 1 123・ 121- Y (G06F)
P 1 123・ 55- Y (G06F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 角田 慎治
特許庁審判官 ▲高▼瀬 健太郎
富澤 哲生
登録日 2001-11-22 
登録番号 3254422
発明の名称 ウェブページ閲覧方法およびこの方法を用いた装置  
代理人 阪 和之  
代理人 東京UIT国際特許業務法人  
代理人 濱田 慧  
代理人 椙山 敬士  
代理人 松山 智恵  
代理人 片山 史英  
代理人 ▲高▼梨 義幸  
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