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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 F21S
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F21S
管理番号 1387409
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-06 
確定日 2022-08-15 
事件の表示 特願2017−158399「カードリーダー」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月 7日出願公開、特開2019− 36493、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成29年8月21日の出願であって、令和3年7月5日付けで拒絶理由通知がなされ、同年9月6日に意見書とともに手続補正書が提出され、同年10月4日付けで拒絶査定(謄本送達日同年10月11日)がなされ、これに対して令和4年1月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ、同年2月8日付けで審査官により特許法164条3項の規定に基づく報告がなされ、同年6月9日付けで当審により拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)がなされ、同年6月17日に意見書とともに手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明

本願請求項1〜5に係る発明(以下、「本願発明1」〜「本願発明5」といい、これらをまとめて「本願発明」という。)は、令和4年6月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された、次のとおりのものと認める。

「 【請求項1】
電気錠により施解錠される扉の外側の壁面に設置され、カード媒体に記録された情報を読み取って前記電気錠を解錠させるカードリーダーであって、
建物の床面から所定の高さを有すると共に前記壁面から突出するように設置される本体部を有し、
前記本体部は、前記カード媒体の情報を読み取るカード読取部と、火災発生時には非常出口に向かう方向を表示する方向表示を床面に投影する避難方向表示部とを有し、
前記避難方向表示部は、床面に向かって光を投影照射する投影部であって、
前記投影部は、前記本体部内に設けられる発光部と、前記本体部の底面に設けられ前記発光部からの光を透過させる透過部とを有し、
前記透過部は、前記方向表示の形を有した透過領域を有し、
前記発光部は、前記本体部から斜め下方に向かう方向に沿って光を照射すると共に、前記透過領域のうち少なくとも前記方向表示が示す方向に沿う全長に渡り光を照射するように配置されることを特徴とするカードリーダー。
【請求項2】
前記透過部は、前記方向表示の向きが異なる透過領域を有する複数種類から選択的に前記本体部に対して取付可能であることを特徴とする請求項1に記載のカードリーダー。
【請求項3】
前記投影部は前記本体部に複数設けられ、複数の前記投影部は、それぞれ前記方向表示の向きが異なると共に、いずれか1つの前記投影部が選択的に機能することを特徴とする請求項1に記載のカードリーダー。
【請求項4】
前記本体部は、前記カード媒体の読み取り状況に応じて発光する表示部を有し、該表示部は、前記投影部が前記方向表示を床面に投影する際には、前記カード媒体の読み取り状況に応じた発光状態とは異なる所定の発光状態となることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカードリーダー。
【請求項5】
前記本体部は、前記避難方向表示部用の電源部を独立して有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカードリーダー。」


第3 引用例

1 引用例1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用した、本願の出願前に既に公知である、特開2014−26329号公報(平成26年2月6日公開。以下、これを「引用例1」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。)

A 「【0009】
次に、本発明を実施するための形態(以降、「本実施形態」と称す。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
はじめに、本実施形態における避難支援システム1の比較例として、その避難支援システム1のベースとなる入退出管理システム1aの構成例について、図1を用いて説明する。
図1に示す比較例の入退出管理システム1aは、入退出情報管理装置10a、入退出制御装置20a、認証装置30aおよび電気錠31で構成されている。入退出情報管理装置10aと入退出制御装置20aとはネットワーク40を介して接続される。なお、図1では、1台の入退出制御装置20aしか記載していないが、2台以上の入退出制御装置20aがネットワーク40に接続される構成であっても構わない。また、図1では、入退出制御装置20aは、複数台の認証装置30aおよび電気錠31と接続しているように記載しているが、1台の認証装置30aおよび電気錠31と接続している構成であっても構わない。
【0011】
入退出管理システム1aは、数多くの従業員や来客者が出入する建物内の扉位置に、非接触IC(Integrated Circuit)カード等を用いて認証を行う認証装置30aを設置し、認証判定結果に基づいて扉の電気錠31の解錠または施錠を制御して、入退出管理を実現する。具体的には、入退出制御装置20aの制御部212は、認証装置30aからICカード等の認証情報を取得し、認証が成功した場合には、電気錠駆動部211を介して当該認証装置30aに対応する扉の電気錠31を解錠する。
【0012】
入退出制御装置20aは、少なくとも制御部212および電気錠駆動部211を有する。制御部212は、非接触IC(Integrated Circuit)カード等から認証装置30aが読み取った認証情報を取得し、認証処理を実行し、認証が成功した場合には、電気錠駆動部211を介して当該認証装置30aに対応する扉の電気錠31を解錠する。電気錠駆動部211は、電気錠31の施錠または解錠を制御する。
【0013】
認証装置30aは、表示部331a、音声出力部332a、スピーカ333、ランプ表示部334およびカード読取部335を備える。
表示部331aは、液晶パネル等の表示画面を有し、入退出制御装置20aから認証処理の進行に沿って操作情報を取得し、取得した操作情報に対応する操作ガイダンスを表示する機能を有する。
【0014】
音声出力部332aは、定型の音声メッセージを記憶しており、スピーカ333に当該音声メッセージを出力して、音声ガイダンスを流す機能を有する。
スピーカ333は、音声メッセージを出力する機能を有する。
ランプ表示部334は、認証が成功したか否かをLED(Light Emitting Diode)の点灯で認証者に知らせる機能を有する。
カード読取部335は、非接触ICカードに記憶されている認証情報を読み取って、その認証情報を入退出制御装置20aに送信する機能を有する。」

B 「【0017】
次に、本実施形態における避難支援システム1の構成例について、図2を用いて説明する。
避難支援システム1を構成する入退出情報管理装置(第1の装置)10、入退出制御装置(第2の装置)20および認証装置(第3の装置)30は、少なくとも、それぞれ図1に示す比較例の入退出管理システム1aにおける入退出情報管理装置10a、入退出制御装置20aおよび認証装置30aの機能を有している。そして、避難支援システム1は、入退出管理システム1aの機能に加えて、避難経路の案内を支援するための機能を新たに備えているので、その新たに備えられた機能に焦点を当てて、以下に説明する。ただし、避難支援システム1と入退出管理システム1aとで同じ機能には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0018】
入退出情報管理装置10は、災害情報を取得する機能を新たに有する。災害情報とは、例えば、火事の火元位置/爆発の危険性/風向きおよび風力、地震の震度/液状化等の被害状況、河川の堤防の決壊位置/洪水の被害状況、事件発生位置等である。入退出情報管理装置10は、災害情報を、不図示のネットワークから自動的に取得しても、操作者によって不図示の入力装置から入力されたものを取得しても構わない。」

C 「【0023】
入退出制御装置20は、サブ避難経路情報221を新たに記憶している。入退出制御装置20は、入退出情報管理装置10から避難識別情報を受信したとき、サブ避難経路情報221を参照して、避難識別情報に関連付けられた電気錠31に対して、解錠または施錠することを示す解錠情報を送信する機能を有する。また、入退出制御装置20は、避難識別情報の示す避難経路に面している認証装置30に避難方向を表示するための方向表示情報、およびその避難経路に適した音声メッセージの種類を指定するための音声識別情報を認証装置30に送信する機能を有する。なお、入退出制御装置20は、UPS(Uninterruptible Power Supply)によって電源がバックアップされているので、停電時においても、所定の時間は、認証装置30および電気錠31を駆動することができる。
【0024】
認証装置30の表示部331は、入退出制御装置20から方向表示情報を受信したとき、受信した方向表示情報の示す方向を表示する機能を有する。」

D 「【0037】
図7は、認証装置30の表示部331に避難方向の矢印を表示した例を示している。」

E 「

図1,図2」

F 「

図7」

2 引用発明
ア 上記記載事項Aの「本実施形態における避難支援システム1の比較例として、その避難支援システム1のベースとなる入退出管理システム1aの構成例について、図1を用いて説明する…比較例の入退出管理システム1aは、入退出情報管理装置10a、入退出制御装置20a、認証装置30aおよび電気錠31で構成されている」(【0010】)との記載、上記記載事項Bの「本実施形態における避難支援システム1の構成例について、図2を用いて説明する…避難支援システム1を構成する入退出情報管理装置…10、入退出制御装置…20および認証装置…30は、…それぞれ図1に示す比較例の入退出管理システム1aにおける入退出情報管理装置10a、入退出制御装置20aおよび認証装置30aの機能を有している」(【0017】)との記載、及び「そして、避難支援システム1は、入退出管理システム1aの機能に加えて、避難経路の案内を支援するための機能を新たに備えている」(【0017】)との記載、並びに上記記載事項Eの図1及び図2の態様から、引用例1には、“入退出情報管理装置、入退出制御装置、認証装置および電気錠で構成される入退出管理システムの機能に加えて、避難経路の案内を支援するための機能を新たに備えた避難支援システムにおける認証装置”が記載されているといえる。

イ 上記記載事項Aの「入退出管理システム1aは、…(中略)…建物内の扉位置に、非接触IC…カード等を用いて認証を行う認証装置30aを設置し、認証判定結果に基づいて扉の電気錠31の解錠または施錠を制御して、入退出管理を実現する」(【0011】)との記載から、引用例1には、“入退出管理システムは、建物内の扉位置に、非接触ICカード等を用いて認証を行う認証装置を設置し、認証判定結果に基づいて扉の電気錠の解錠または施錠を制御して、入退出管理を実現”することが記載されているといえる。

ウ 上記記載事項Aの「入退出制御装置20aは…制御部212および電気錠駆動部211を有する。制御部212は、非接触IC…カード等から認証装置30aが読み取った認証情報を取得し、認証処理を実行し、認証が成功した場合には、電気錠駆動部211を介して当該認証装置30aに対応する扉の電気錠31を解錠する。」(【0012】)との記載から、引用例1には、“入退出制御装置は、制御部および電気錠駆動部を有し、制御部は、非接触ICカード等から認証装置が読み取った認証情報を取得し、認証処理を実行し、認証が成功した場合には、電気錠駆動部を介して当該認証装置に対応する扉の電気錠を解錠”することが記載されているといえる。

エ 上記記載事項Aの「認証装置30aは、表示部331a、音声出力部332a、スピーカ333、ランプ表示部334およびカード読取部335を備える…表示部331aは、液晶パネル等の表示画面を有し…(中略)…カード読取部335は、非接触ICカードに記憶されている認証情報を読み取って、その認証情報を入退出制御装置20aに送信する機能を有する」(【0013】〜【0014】)との記載から、引用例1には“認証装置は、表示部、音声出力部、スピーカ、ランプ表示部およびカード読取部を備え、表示部は、液晶パネル等の表示画面を有し、カード読取部は、非接触ICカードに記憶されている認証情報を読み取って、その認証情報を入退出制御装置に送信”することが記載されているといえる。

オ 上記記載事項Bの「入退出情報管理装置10は、災害情報を取得する機能を…有する。災害情報とは、…火事の火元位置…(中略)…等である」(【0018】)との記載から、引用例1には“入退出情報管理装置は、火事の火元位置等の災害情報を取得する機能を有”することが記載されているといえる。

カ 上記記載事項Cの「入退出制御装置20は、入退出情報管理装置10から避難識別情報を受信したとき…(中略)…電気錠31に対して、解錠または施錠することを示す解錠情報を送信する機能を有する…入退出制御装置20は、避難識別情報の示す避難経路に面している認証装置30に避難方向を表示するための方向表示情報…(中略)…を認証装置30に送信する機能を有する…(中略)…認証装置30の表示部331は、入退出制御装置20から方向表示情報を受信したとき、受信した方向表示情報の示す方向を表示する機能を有する」(【0023】〜【0024】)との記載から、引用例1には、“入退出制御装置は、入退出情報管理装置から避難識別情報を受信したとき、電気錠に対して、解錠または施錠することを示す解錠情報を送信する機能を有し、避難識別情報の示す避難経路に面している認証装置に避難方向を表示するための方向表示情報を送信し、認証装置の表示部は、入退出制御装置から方向表示情報を受信したとき、受信した方向表示情報の示す方向を表示する機能を有する”ことが記載されているといえる。

キ 以上、ア〜カの認定から、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「入退出情報管理装置、入退出制御装置、認証装置および電気錠で構成される入退出管理システムの機能に加えて、避難経路の案内を支援するための機能を新たに備えた避難支援システムにおける認証装置であって、
入退出管理システムは、建物内の扉位置に、非接触ICカード等を用いて認証を行う認証装置を設置し、認証判定結果に基づいて扉の電気錠の解錠または施錠を制御して、入退出管理を実現し、
入退出制御装置は、制御部および電気錠駆動部を有し、制御部は、非接触ICカード等から認証装置が読み取った認証情報を取得し、認証処理を実行し、認証が成功した場合には、電気錠駆動部を介して当該認証装置に対応する扉の電気錠を解錠し、
認証装置は、表示部、音声出力部、スピーカ、ランプ表示部およびカード読取部を備え、表示部は、液晶パネル等の表示画面を有し、カード読取部は、非接触ICカードに記憶されている認証情報を読み取って、その認証情報を入退出制御装置に送信し、
入退出情報管理装置は、火事の火元位置等の災害情報を取得する機能を有し、
入退出制御装置は、入退出情報管理装置から避難識別情報を受信したとき、電気錠に対して、解錠または施錠することを示す解錠情報を送信する機能を有し、避難識別情報の示す避難経路に面している認証装置に避難方向を表示するための方向表示情報を送信し、認証装置の表示部は、入退出制御装置から方向表示情報を受信したとき、受信した方向表示情報の示す方向を表示する機能を有する
認証装置。」

3 引用例2に記載された事項
本願の出願前に既に公知である、特開平3−222093号公報(平成3年10月1日公開。以下、これを「引用例2」という。)には、関連する図面と共に、次の事項が記載されている。

A 「〔産業上の利用分野〕
この発明は、誘導装置に関するものである。」(1ページ左下欄11〜12行)

B 「この発明の一実施例を第1図に基づいて説明する。この誘導装置1は、反射板2を備えたランプ3と、避難方向を指示した誘導表示部4と、レンズ5とを備え、誘導表示部4がレンズ5とランプ3との間に介在するように筒体6の中に設置されている。また、ランプ3は非常時にのみ点灯するように構成され、これに伴い誘導表示部4がレンズ5にて拡大されて壁等に投影される。
また、この誘導装置1は一般に壁面等に設置され、この壁面に対向する壁面に誘導表示部4を投影するものであるが、設置場所が天井に近いと誘導表示部4が火災時の煙によって遮られて投影さないこともあり得るので、床面に近いほうがよい。また、対向する壁面が誘導装置1の能力に比べて遠い場合は、床面に設置して投影すればよい。」(2ページ左上欄10行〜右上欄4行)

B 「

第1図」


第4 対比・判断

1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「電気錠」、「扉」、及び「非接触ICカード」は、それぞれ本願発明1の「電気錠」、「扉」、及び「カード媒体」に相当する。
引用発明の「認証装置」は、「建物内の扉位置に、非接触ICカード等を用いて認証を行う」ものであるから、当該「認証装置」は、「建物内の扉位置」、すなわち当該扉の外側の壁面に設置されることは自明である。
また引用発明の「認証装置」は、「カード読取部を備え、…(中略)…カード読取部は、非接触ICカードに記憶されている認証情報を読み取って、その認証情報を入退出制御装置に送信」して、「入退出制御装置は、入退出情報管理装置から避難識別情報を受信したとき、電気錠に対して、解錠または施錠することを示す解錠情報を送信する機能を有」することから、以上を総合すると、引用発明の「認証装置」と本願発明1の「カードリーダー」とは、“電気錠により施解錠される扉の外側の壁面に設置され、カード媒体に記録された情報を読み取って前記電気錠を解錠させるカードリーダー”の点で一致する。

イ 引用発明の「建物内の扉位置」に「設置」される、「非接触ICカード等を用いて認証を行う認証装置」が、所定の本体部を有することは自明である。
引用発明の「認証装置」の「カード読取部」は、「非接触ICカードに記憶されている認証情報を読み取って、その認証情報を入退出制御装置に送信」するものであるから、上記アの認定を踏まえると、本願発明1の「カード媒体の情報を読み取るカード読取部」に相当するものといえる。
また、引用発明の「入退出制御装置」は、「避難識別情報の示す避難経路に面している認証装置に避難方向を表示するための方向表示情報を送信し」、引用発明の「認証装置」が備える「表示部」は、当該「入退出制御装置から方向表示情報を受信したとき、受信した方向表示情報の示す方向を表示する機能を有する」ものであるから、本願発明1の「火災発生時には非常出口に向かう方向を表示する方向表示を床面に投影する避難方向表示部」とは、少なくとも、“火災発生時には非常出口に向かう方向を表示する方向表示を行う避難方向表示部”である点で共通する。
以上を総合すると、引用発明と本願発明1とは、下記の点(相違点1)で相違するものの、“本体部”を有すると共に、“前記本体部は、前記カード媒体の情報を読み取るカード読取部と、火災発生時には非常出口に向かう方向を表示する方向表示を行う避難方向表示部とを有する”点で一致する。

ウ 以上、ア及びイの検討から、引用発明と本願発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。

〈一致点〉
電気錠により施解錠される扉の外側の壁面に設置され、カード媒体に記録された情報を読み取って前記電気錠を解錠させるカードリーダーであって、
本体部を有し、
前記本体部は、前記カード媒体の情報を読み取るカード読取部と、火災発生時には非常出口に向かう方向を表示する方向表示を行う避難方向表示部とを有する
ことを特徴とするカードリーダー。

〈相違点1〉
本願発明1の「カードリーダー」が、「建物の床面から所定の高さを有すると共に前記壁面から突出するように設置される本体部を有」するものであるのに対し、引用発明の「認証装置」は、その旨の特定がない点。

〈相違点2〉
本願発明1が、「方向表示」が「床面に投影」されると共に、「前記避難方向表示部は、床面に向かって光を投影照射する投影部であって、」「前記投影部は、前記本体部内に設けられる発光部と、前記本体部の底面に設けられ前記発光部からの光を透過させる透過部とを有し、」「前記透過部は、前記方向表示の形を有した透過領域を有し、」「前記発光部は、前記本体部から斜め下方に向かう方向に沿って光を照射すると共に、前記透過領域のうち少なくとも前記方向表示が示す方向に沿う全長に渡り光を照射するように配置される」のに対し、引用発明の「認証装置」は、方向表示を「液晶パネル等の表示画面を有」する「表示部」に表示するものである点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、先に相違点2について検討する。
本願発明は、カード媒体の情報を読み取って電気錠を解錠させる入退出管理システムに設けられるカードリーダーに関し(【0001】)、オフィスビル等において、カードリーダー及び電気錠を用いた入退室管理システムが設置されていて、入退室管理システムは、例えば、複数の会議室がフロアに並設されている場合に、各会議室の入退室管理を行うために設置され、この場合、会議室の入口毎にカードリーダーが設置され、カードリーダーは、建物の階毎に設置されるローカル制御盤に接続され、ローカル制御盤は、会議室の扉に設けられる電気錠に接続され、カードリーダーからの通信により電気錠の開錠等の動作を行い、ローカル制御盤は、伝送路を介して警備室などに設置されたセンター装置や総務部等の管理部門に設置されたクライアント装置に接続され(【0002】)、会議室に出入りするユーザーは、利用者識別情報を登録した例えば非接触ICカードを携帯しており、カードリーダーに非接触ICカードをかざすことで、利用者識別情報を読み取ってローカル制御盤に送り、ローカル制御盤で事前登録している利用者識別情報との照合一致が得られた場合に電気錠を解錠し、扉を開いて出入りできるようにしていて、このように、非接触ICカードをかざすことで、電気錠の解錠を行うようにしたカードリーダーが従来知られていたことを背景とし(【0003】)、カードリーダーは、建物の各所に設けられることから、入退室管理システムだけでなく、防災システムにも活用することが望まれるところ(【0005】)、防災システムにおいて活用できるカードリーダーを提供することを目的としてなされたものである。(【0006】)
他方、引用発明の「認証装置」は、「火事の火元位置等の災害情報を取得」した後、当該「認証装置」自体が有する「表示部」に「入退出制御装置から方向表示情報を受信したとき、受信した方向表示情報の示す方向を表示する」ものであり(第3 1の記載事項D及びF参照。)、この表示を床面に対して投影することを想定しておらず、引用発明の「表示部」を投影部に置換することについての動機付けは存在しない。
なお、上記第3の3に示した引用例2には、“誘導装置に関し、ランプ3と、避難方向を指示した誘導表示部4と、レンズ5とを備え、ランプ3は非常時にのみ点灯するように構成され、これに伴い誘導表示部4がレンズ5にて拡大されて壁等に投影され、この誘導装置1は一般に壁面等に設置され、この壁面に対向する壁面に誘導表示部4を投影するものであるが、設置場所が天井に近いと誘導表示部4が火災時の煙によって遮られて投影さないこともあり得るので、床面に近いほうがよく、また、対向する壁面が誘導装置1の能力に比べて遠い場合は、床面に設置して投影すればよい”ことの開示はあるものの、上記相違点2に係る構成、すなわち、「前記避難方向表示部は、床面に向かって光を投影照射する投影部であって、」「前記投影部は、前記本体部内に設けられる発光部と、前記本体部の底面に設けられ前記発光部からの光を透過させる透過部とを有し、」「前記透過部は、前記方向表示の形を有した透過領域を有し、」「前記発光部は、前記本体部から斜め下方に向かう方向に沿って光を照射すると共に、前記透過領域のうち少なくとも前記方向表示が示す方向に沿う全長に渡り光を照射するように配置される」構成までは開示しておらず、またこの点は本願出願前に周知な構成であるとまではいえない。
したがって、上記その余の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2〜5について
本願発明2〜5は、本願発明1を直接または間接的に引用するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用例2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断

原査定は、請求項1〜5について、上記引用例1(原査定における「引用文献1」)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、令和4年6月17日の手続補正により補正された請求項1〜5は、上記のとおり、上記引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について

<特許法36条6項2号について>
当審では、請求項1〜5に記載された、「本体部」の「避難方向表示部」につき、構成が不明確である旨の拒絶の理由を通知しているが、令和4年6月17日の手続補正によって上記第2に示すとおり補正された結果、「本体部」の「避難方向表示部」の構成は明確となり、この拒絶の理由は解消した。


第7 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-07-29 
出願番号 P2017-158399
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F21S)
P 1 8・ 537- WY (F21S)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 篠原 功一
特許庁審判官 山崎 慎一
須田 勝巳
発明の名称 カードリーダー  
代理人 広川 浩司  

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