• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H02N
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H02N
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H02N
管理番号 1387496
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-08-11 
確定日 2022-06-03 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6829916号発明「圧電モータ及び注入機器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6829916号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−12〕について訂正することを認める。 特許第6829916号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6829916号の請求項1〜12に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、2019年(令和元年)8月2日(優先権主張 平成30年8月10日)を国際出願日とする特願2020−527130号の一部を令和2年8月17日に新たな特許出願としたものであって、令和3年1月27日にその特許権の設定登録がされ、令和3年2月17日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和3年 8月11日 : 特許異議申立人 高橋 真哉(「高」は、正しくは「はしごだか」。以下、「特許異議申立人」という。)による請求項1〜12に係る特許に対する特許異議の申立て
令和3年11月 5日付け: 取消理由通知書
令和3年12月27日 : 特許権者 株式会社Piezo Sonic(以下、「特許権者」という。)による意見書及び訂正請求書の提出
なお、令和4年2月2日付けで通知書(訂正請求があった旨の通知)を特許異議申立人に送付したが、特許異議申立人による意見書の提出はされていない。

第2 訂正の適否
1.訂正の内容
特許権者が令和3年12月27日にした訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである(下線は、訂正箇所を示すため当審で付与した。)。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「前記ロータの半径方向において、前記固定部の長さは、前記皿バネ部分の長さよりも長い」とあるのを、「前記ロータの半径方向において、前記固定部の長さは、前記皿バネ部分の長さよりも長く、前記ロータには、前記皿バネ部分と、前記ロータと共に回転する前記シャフトとの間に環状溝が形成されている」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2,4,6−8,12も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に「前記固定部の剛性は、前記環状部材の剛性よりも低い、請求項1又は2に記載の圧電モータ。」とあるうち、請求項1の記載を引用するものについて、独立形式に改め、「弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを有する環状部材と、前記環状部材が固定される固定部とを有するロータと、前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、前記環状部材の前記皿バネ部分は、前記シャフトに固定された前記固定部に固定されており、前記ロータの半径方向において、前記固定部の長さは、前記皿バネ部分の長さよりも長く、前記固定部の剛性は、前記環状部材の剛性よりも低い、圧電モータ。」と訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4,6−8,10−12も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に「前記固定部を前記シャフトに固定するときのねじ止め方向は、前記皿バネ部分を前記固定部に固定するときのねじ止め方向と同一方向である、請求項1から4のいずれか一項に記載の圧電モータ。」とあるうち、請求項1の記載を引用するものについて、独立形式に改め、「弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを有する環状部材と、前記環状部材が固定される固定部とを有するロータと、前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、前記環状部材の前記皿バネ部分は、前記シャフトに固定された前記固定部に固定されており、前記ロータの半径方向において、前記固定部の長さは、前記皿バネ部分の長さよりも長く、前記固定部を前記シャフトに固定するときのねじ止め方向は、前記皿バネ部分を前記固定部に固定するときのねじ止め方向と同一方向である、圧電モータ。」と訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6−8,12も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4
(訂正事項4−1)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6に「mm3/N・M」とあるのを、「mm3/N・m」と訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7,8,12も同様に訂正する。)。
(訂正事項4−2)
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6に「前記摺動材は、強化繊維を含み、滑り摩耗試験によって測定した場合の比摩耗量が、・・・である架橋フッ素樹脂からなる」とあるのを、「前記摺動材は、強化繊維を含み、JISK7218A法に準拠した滑り摩耗試験によって測定した場合の比摩耗量が、・・・である架橋フッ素樹脂からなり、前記滑り摩耗試験は、算術平均粗さが0.2μmのADC12を相手材とし、128m/minの速度及び0.4MPaの荷重で、50時間行うという試験条件である」と訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7,8,12も同様に訂正する。)。

(5)訂正事項5
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9に「前記ステータは、前記弾性体とは別の弾性体と、前記圧電素子とは別の圧電素子と、前記摺動材とは別の摺動材とをさらに有しており、前記ロータは、前記基体部分とは別の基体部分と、前記皿バネ部分とは別の皿バネ部分とを含む別の環状部材をさらに有しており、前記皿バネ部分は、前記固定部の一方側に固定されており、前記別の皿バネ部分は、前記固定部の他方側に固定されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の圧電モータ。」とあるうち、請求項1の記載を引用するものについて、独立形式に改め、「弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを有する環状部材と、前記環状部材が固定される固定部とを有するロータと、前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、前記環状部材の前記皿バネ部分は、前記シャフトに固定された前記固定部に固定されており、前記ロータの半径方向において、前記固定部の長さは、前記皿バネ部分の長さよりも長く、前記ステータは、前記弾性体とは別の弾性体と、前記圧電素子とは別の圧電素子と、前記摺動材とは別の摺動材とをさらに有しており、前記ロータは、前記基体部分とは別の基体部分と、前記皿バネ部分とは別の皿バネ部分とを含む別の環状部材をさらに有しており、前記皿バネ部分は、前記固定部の一方側に固定されており、前記別の皿バネ部分は、前記固定部の他方側に固定されている、圧電モータ。」と訂正する(請求項9の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。)。

(6)訂正事項6
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10に「請求項1から9のいずれか一項に記載の圧電モータ。」とあるのを、「請求項3に記載の圧電モータ。」と訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11,12も同様に訂正する。)。

(7)訂正事項7
願書に添付した明細書の段落【0016】、【0074】、【0076】に記載された「mm3/N・M」を「mm3/N・m」に訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、本件訂正前の請求項1に記載された「ロータ」について、「前記皿バネ部分と、前記ロータと共に回転する前記シャフトとの間に環状溝が形成されている」という限定を付加するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件訂正前の請求項10には、「前記ロータには、前記皿バネ部分と、前記ロータと共に回転するシャフトとの間に環状溝が形成されている」と記載されているから、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてされたものである。
さらに、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正は、本件訂正前の請求項3について、引用する請求項を請求項1のみに削減するとともに独立形式に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項2に係る訂正が、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

(3)訂正事項3について
訂正事項3に係る訂正は、本件訂正前の請求項5について、引用する請求項を請求項1のみに削減するとともに独立形式に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項3に係る訂正が、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

(4)訂正事項4について
ア.訂正事項4−1について
比摩耗量を表す単位として「mm3/N・m」を用いることが、本件特許の優先日における技術常識であることを考慮すると、本件訂正前の「mm3/N・M」は、「mm3/N・m」の誤りであることが明らかであるから、訂正事項4−1に係る訂正は、本件訂正前の特許請求の範囲に存在した誤記を本来の記載に正すものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。
そして、前記したように、本件訂正前の「mm3/N・M」が、「mm3/N・m」の誤りであることは明らかであるから、訂正事項4−1に係る訂正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

イ.訂正事項4−2について
訂正事項4−2に係る訂正は、訂正前の請求項6に記載された「滑り摩耗試験によって測定した場合の比摩耗量」が明瞭でない(令和3年11月5日付け取消理由通知 理由3参照。)ところ、これを釈明するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、願書に添付した明細書の段落【0016】には、「また、摺動材114は、架橋フッ素樹脂(上記強化繊維を含む架橋フッ素樹脂を含む)として、JISK7218A法(リング対ディスク)に準拠した滑り摩耗試験によって測定した場合の比摩耗量が、1×10−6mm3/N・M未満である架橋フッ素樹脂によって形成できる。より望ましくは、摺動材114は、比摩耗量が、1×10−7mm3/N・M未満である架橋フッ素樹脂によって形成できる。ここで、試験条件は、相手材:算術平均粗さ(Ra)が0.2μmのADC12、速度:128m/min、時間:50時間、荷重:0.4MPaである。」(下線は当審で付与した。以下、同様である。)と記載されているから、訂正事項4−2に係る訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものである。
そして、訂正事項4−2に係る訂正は、本件訂正前の請求項6に記載された「滑り摩耗試験」を具体化するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5に係る訂正は、本件訂正前の請求項9について、引用する請求項を請求項1のみに削減するとともに独立形式に改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮、及び同項ただし書第4号に規定する他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項5に係る訂正が、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

(6)訂正事項6について
訂正事項6に係る訂正は、本件訂正前の請求項10について、引用する請求項を請求項3のみに削減するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項6に係る訂正が、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

(7)訂正事項7について
比摩耗量を表す単位として「mm3/N・m」を用いることが、本件特許の優先日における技術常識であることを考慮すると、本件訂正前の「mm3/N・M」は、「mm3/N・m」の誤りであることが明らかであるから、訂正事項7に係る訂正は、本件訂正前の明細書に存在した誤記を本来の記載に正すものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。
そして、前記したように、本件訂正前の「mm3/N・M」が、「mm3/N・m」の誤りであることは明らかであるから、訂正事項7に係る訂正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

3.一群の請求項について
本件訂正前の請求項1〜12について、請求項2〜12は請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1〜12は一群の請求項を構成する。
そして、本件訂正請求は、訂正事項1〜6により、訂正前の請求項1〜12の記載を訂正しようとするものであり、一群の請求項1〜12に対して請求されているから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、明細書に係る訂正事項7は、一群の請求項1〜12について請求されたものであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。

4.まとめ
前記のとおり、訂正事項1〜7に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号、第3号、第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに同条第9項で準用する同法第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合する。なお、本件においては、本件訂正前の全ての請求項1〜12について特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1−12〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1〜12に係る発明(以下、請求項順に「本件特許発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
[本件特許発明1]
弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、
前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを有する環状部材と、前記環状部材が固定される固定部とを有するロータと、
前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、
前記環状部材の前記皿バネ部分は、前記シャフトに固定された前記固定部に固定されており、
前記ロータの半径方向において、前記固定部の長さは、前記皿バネ部分の長さよりも長く、
前記ロータには、前記皿バネ部分と、前記ロータと共に回転する前記シャフトとの間に環状溝が形成されている、圧電モータ。

[本件特許発明2]
前記固定部は、前記皿バネ部分よりも前記シャフトに近い位置において、前記シャフトに固定されている、請求項1に記載の圧電モータ。

[本件特許発明3]
弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、
前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを有する環状部材と、前記環状部材が固定される固定部とを有するロータと、
前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、
前記環状部材の前記皿バネ部分は、前記シャフトに固定された前記固定部に固定されており、
前記ロータの半径方向において、前記固定部の長さは、前記皿バネ部分の長さよりも長く、
前記固定部の剛性は、前記環状部材の剛性よりも低い、圧電モータ。

[本件特許発明4]
前記固定部は、金属からなる、請求項1から3のいずれか一項に記載の圧電モータ。

[本件特許発明5]
弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、
前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを有する環状部材と、前記環状部材が固定される固定部とを有するロータと、
前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、
前記環状部材の前記皿バネ部分は、前記シャフトに固定された前記固定部に固定されており、
前記ロータの半径方向において、前記固定部の長さは、前記皿バネ部分の長さよりも長く、
前記固定部を前記シャフトに固定するときのねじ止め方向は、前記皿バネ部分を前記固定部に固定するときのねじ止め方向と同一方向である、圧電モータ。

[本件特許発明6]
前記摺動材は、強化繊維を含み、JISK7218A法に準拠した滑り摩耗試験によって測定した場合の比摩耗量が、1×10−6mm3/N・m未満である架橋フッ素樹脂からなり、
前記滑り摩耗試験は、算術平均粗さが0.2μmのADC12を相手材とし、128m/minの速度及び0.4MPaの荷重で、50時間行うという試験条件である、請求項1から5のいずれか一項に記載の圧電モータ。

[本件特許発明7]
前記摺動材は、スリットを挟んで対向する複数の摺動片と、前記複数の摺動片を連結す
るブリッジとを備えている、請求項1から6のいずれか一項に記載の圧電モータ。

[本件特許発明8]
前記ステータは、前記弾性体とは別の弾性体と、前記圧電素子とは別の圧電素子と、前記摺動材とは別の摺動材とをさらに有しており、
前記ロータは、前記基体部分とは別の基体部分と、前記皿バネ部分とは別の皿バネ部分とを含む別の環状部材と、前記固定部とは別の固定部とをさらに有しており、
前記別の皿バネ部分は、前記別の固定部に固定されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の圧電モータ。

[本件特許発明9]
弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、
前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを有する環状部材と、前記環状部材が固定される固定部とを有するロータと、
前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、
前記環状部材の前記皿バネ部分は、前記シャフトに固定された前記固定部に固定されており、
前記ロータの半径方向において、前記固定部の長さは、前記皿バネ部分の長さよりも長く、
前記ステータは、前記弾性体とは別の弾性体と、前記圧電素子とは別の圧電素子と、前記摺動材とは別の摺動材とをさらに有しており、
前記ロータは、前記基体部分とは別の基体部分と、前記皿バネ部分とは別の皿バネ部分とを含む別の環状部材をさらに有しており、
前記皿バネ部分は、前記固定部の一方側に固定されており、
前記別の皿バネ部分は、前記固定部の他方側に固定されている、圧電モータ。

[本件特許発明10]
前記ロータには、前記皿バネ部分と、前記ロータと共に回転するシャフトとの間に環状溝が形成されている、請求項3に記載の圧電モータ。

[本件特許発明11]
前記環状溝の底に対応する部分は、前記皿バネ部分の薄肉部よりも厚い、請求項10に記載の圧電モータ。

[本件特許発明12]
薬液を注入するための注入機器であって、
請求項1から11のいずれか一項に記載の圧電モータと、
前記圧電モータによって駆動される駆動機構と、
前記圧電モータを制御する制御装置とを備える、注入機器。

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
当審が令和3年11月5日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
新規性)請求項1,2に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定された発明に該当するから、請求項1,2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
進歩性)請求項1,2,4に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1,2,4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献5に記載された事項に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び引用文献3に記載された事項に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項7に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明、引用文献4に記載された事項及び引用文献5に記載された事項に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
請求項8,12に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献6に記載された事項に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項8,12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
明確性)請求項6−12に係る発明が明確でないため、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

引用文献1:特開平7−298652号公報(甲第1号証)
引用文献2:大島、宇田川、森田,“短繊維を充填したポリテトラフルオロエチレンの放射線架橋”,JAERI-Tech,日本原子力研究所,1999年2月,99-012(甲第2号証)
引用文献3:山本、瀬戸川、西,“架橋PTFEおよびその応用製品”,日本ゴム協会誌,2003年5月,第76巻,第5号,p.173-177(甲第3号証)
引用文献4:特開2004−266912号公報(甲第4号証)
引用文献5:特開2009−201319号公報(甲第5号証)
引用文献6:特許第4907738号公報(甲第6号証)

2.引用文献の記載
(1)引用文献1
ア.引用文献1の記載
特許異議申立人が提出し、令和3年11月5日付け取消理由通知で引用した前記引用文献1には以下の事項が記載されている。
(ア)「【0003】図5は本発明者により提案されている振動波モータの構造を示した図である。
【0004】図5(a)において、1は振動波モータの動力発生源となる振動体で、該振動体1は図5(b)に示される形状を有し、中央のボス部1cにおいてねじ4によりモータ端板3に締結固定されている。該振動体1はステンレス鋼で構成され、一方の端面の外周縁には図5(b)に示すように放射状に多数のスリット1bが形成されるとともに該スリットにより多数の歯状突部1aが形成されている。また、該振動体1の他方の端面には該歯状突部1aの配置されている環状部分に対応して環状の圧電素子2が接着固定されており、該圧電素子に駆動電圧を印加するための不図示のフレキシブルプリント基板が該圧電素子に接着されている。
【0005】モータ端板3の中心には軸受5が固定され、該軸受5には回転軸6が回転可能に支持されている。また、モータ端板3には他方の端板部を有しているモータケース12がねじ13で固定され、該モータケース12の端板部に固定された軸受14にも該回転軸6が回転可能に支持されている。回転軸6の両軸受間の位置には焼きばめ等で該回転軸6に嵌着されたフランジ6aが設けられ、該フランジ6aには図5(b)に示すような移動体支持体としての中間部材8がねじ7で固着されていて該中間部材8は回転軸6とともに回転するようになっている。該中間部材8は図示のように振動体1の歯状突部1aに対向する外周フランジ部8aを有しており、この外周フランジ部8aの端面(振動体1の歯状突部1aに対向する端面)には環状のゴム製弾性シート材9を介してアルミ合金製の環状の摺動体支持体10が取り付けられている。
【0006】摺動体支持体10は図5(c)のように中間部材8のフランジ部8aに固着される固定部10aと、該固定部10aの外周縁に沿って形成された周方向の段部10bにより構成されるとともに該フランジ部8aから外側へ突出した環状のフランジ部10cと、を有しており、フランジ部10cの振動体対向面には複合樹脂から成る環状の摺動体11が接着されている。該摺動体11は振動体1の歯状突部1aに圧接され、該歯状突部1aに生じる周方向への進行波振動により該歯状突部1aとの相互摩擦で該歯状突部1aに沿って相対移動し、その結果、該支持体10を介して中間部材8が回転駆動される。
【0007】なお、本明細書では摺動体11と摺動体支持体10との結合体を移動体と称することにする。
【0008】15は摺動体11を摺動体1の歯状突部1aに圧接させるための円錐形の加圧ばねで、図5(d)の如き平面形状をしており、軸受14と該中間部材8との間に配置されていて該中間部材8を振動体1側へ付勢している。」

(イ)「【0026】〈実施例1〉図1に本発明を適用して構成された振動波モータの縦断面図を示す。この振動波モータにおいては移動体支持体に取付けられている移動体を除いては前述した先行技術の振動波モータの構造と同じであるから以下には簡単に各部の構成を説明する。
・・・(中略)・・・
【0028】中間部材8の外周のフランジ部8aにはゴム製弾性シート材9を介して環状の摺動体支持体20が固着されており、該支持体20の第一の端面(すなわち振動体1に対向する面)の外周部には環状の摺動体30が固着されている。
・・・(中略)・・・
【0032】該連結部分20cは軸線方向(図において上下方向)に弾性的にたわみ得るため、ばねとしての機能を有するものとなっており、従って、摺動体30と振動体1との接触部分には加圧ばね15のばね力に加えて該連結部20cのばね力が加えられるため、摺動体30は振動体1の歯状突部1aの振動によく追従するようになり、その結果、本発明の振動波モータは前記先行技術の振動波モータよりもよい特性を示すものとなる。」

(ウ)「【0045】〈実施例2〉図3及び図4に示す本発明の第二実施例は、前記振動体側に摺動体を取付け、移動体側の構成要素を少なくしたものである。
【0046】図3は図4に示す移動体と振動体とを有する本発明の第二実施例の振動波モータの縦断面図であり、該モータの移動体と振動体とを除いた構成は図1の振動波モータと同じであるから、図3において図1と同じ符号で表示した構成要素の説明を省略する。」

(エ)「【0047】図3に示す振動波モータは図4(a)に示した移動体32と振動体1とを有している。移動体32は図2の実施例の移動体の如き摺動体を有しておらず、図2の摺動体支持体に相当する部分のみで構成されている。該移動体32は図2の摺動体支持体と同じくアルミ合金製であり、中間部材8のフランジ8aに接着固定される環状の固定部32aと、振動体1の歯状突部1aに摺動接触する円筒状の摺動部32bと、該固定部32aと該摺動部32bとを連結する可撓性の連結部32cと、を有しており、振動体1の歯状突部1aに摺動接触する摺動部32bの一端面すなわち摺動接触面32gには弗素樹脂共析のニッケル燐基合金膜が形成されるとともに該合金膜を熱処理してビッカース硬さが800程度になるように硬化されている。該連結部32cの振動体対向面側には深さ一定の周方向溝32eが形成され、また、該連結部32cの反対側の面には半径方向外向きに深さが大きくなる三角形断面状の周方向溝32dが形成され、従って該連結部32cの軸線方向の肉厚は半径方向外側に向かって減少しており、該連結部32cは軸線方向に弾性的にたわみ得るばねとして機能している。また、固定部32aの振動体対向面32fは摺動部32bの摺動面32gよりもわずかに振動体1の面から遠くなるように両面32f及び32gの間には段差がある。
【0048】本実施例の振動波モータでは、振動体1の歯状突部1aの表面に前記実施例の摺動体30と同じ複合樹脂の摺動体34が形成されている。該摺動体34は該移動体32の摺動面32gに接する部分(この部分は図に示されるように他の部分にくらべて厚みが少し厚くなっている)の厚みが0.7mmで表面の硬さがロックウェルのMスケールで90になっており、前記摺動体と同じくPEEKにガラス状カーボンを強化材として混入した複合樹脂で構成されている。」

(オ)「【0049】図4(b)は図3の振動波モータに組込んだ本発明の別の実施例の移動体と振動体の構成を示したものである。本実施例の移動体33も前記移動体32と同じくアルミ合金製であり、中間部材8のフランジ部8aに接着固定される環状の固定部33aと、振動体1の歯状突部1aに摺動接触する円筒状の摺動部33bと、該固定部33aと該摺動部33bとを連結する連結部33cと、を有しており、摺動部33bの摺動接触面33gには弗素樹脂共析のニッケル−燐基合金膜が形成されるとともに該合金膜を熱処理してビッカース硬さが800程度になるように硬化処理されている。該連結部33cの振動体非対向面側には半径方向外向きに深さが大きくなる三角形断面形状の周方向溝33dが形成され、固定部33a及び連結部33cの振動体対向面33eは摺動部33bの摺動接触面33gよりも振動体1の面から遠くなるように段差がつけられている。また、摺動接触面33gとは反対側の端面33fは固定部33aの端面33hよりも振動体側に近くなるように該面33hと該面33fとは段差を以て形成されている。
【0050】振動体1の歯状突部1aの表面には前記摺動体31と同じ構成材料から成る摺動体35が固着されている。該摺動体35は移動体33の摺動面33gに接する部分(この部分は図に示されるように他の部分にくらべて厚みが少し厚くなっている)の厚みが0.3mmで表面の硬さがロックウェルのMスケールで82になるように構成されており、PTFE(弗素樹脂)とPOB(ポリオキシベンゾイル)との複合樹脂から成るスクライビングシートを打ち抜いたものを該歯状突部1aの表面に固着させたものである。」

(カ)図3には、次の事項が図示されている。


(キ)図4(b)には、次の事項が図示されている。

(ク)前記(オ)によると、図4(b)に関する実施例において、振動体1の歯状突部1aの表面に摺動体35が固着されているといえるが、摺動体35を振動体1側に固着していること以外の振動体1及び圧電素子2の構造は、前記(ウ)の段落【0046】、前記(イ)の段落【0026】によると、先行技術の振動波モータの構造と同じであると解される。したがって、前記(ア)も考慮すると、図4(b)に関する実施例の振動波モータは、一方の端面の外周縁に多数の歯状突部1aが形成された振動体1と、振動体1の他方の端面に接着固定された圧電素子2と、振動体1の歯状突部1aの表面に固着された摺動体35とを備えているといえる。

(ケ)前記(オ)によると、移動体33は、環状の固定部33aと、摺動体35と摺動接触面33gで接する摺動部33bと、固定部33aと摺動部33bとを連結する連結部33cとを有するといえる。また、該連結部33cは、前記(イ)の連結部20c及び前記(エ)の連結部32cと同様に、ばねとして機能していると解される。

(コ)前記(オ)の図4(b)に関する実施例において、移動体33及び振動体1以外の構造は、前記ウの段落【0046】、前記イの段落【0026】によると、先行技術の振動波モータの構造と同じであると解される。したがって、前記アも考慮すると、図4(b)に関する実施例の振動波モータは、外周フランジ部8aを有しており、この外周フランジ部8aの端面に環状のゴム製弾性シート材9を介して、移動体33の固定部33aを接着固定する中間部材8と、中間部材8を振動体1側に付勢する加圧ばね15と、中間部材8とともに回転する回転軸6とを備えているといえる。同様に、中間部材8は、回転軸6に嵌着されたフランジ6aにねじ7で固着されているといえるから、移動体33の連結部33cは、回転軸6に嵌着されたフランジ6aにねじ7で固着された中間部材8にゴム製弾性シート材9を介して接着固定された固定部33aと、摺動部33bとを連結しているといえる。

(サ)図3及び図4(b)の図示内容によると、移動体33及び中間部材8の半径方向において、中間部材8の長さが、連結部33cの長さよりも長いことが看取できる。

イ.引用発明
前記ア(ア)〜(サ)及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、図4(b)に関する実施例として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「一方の端面の外周縁に多数の歯状突部1aが形成された振動体1と、前記振動体1の他方の端面に接着固定された圧電素子2と、前記振動体1の前記歯状突部1aの表面に固着された摺動体35と、
環状の固定部33aと、前記摺動体35と摺動接触面33gで接する摺動部33bと、前記固定部33aと前記摺動部33bとを連結しばねとして機能している連結部33cとを有する移動体33と、外周フランジ部8aを有しており、この外周フランジ部8aの端面に環状のゴム製弾性シート材9を介して、前記移動体33の前記固定部33aを接着固定する中間部材8と、前記中間部材8を前記振動体1側に付勢する加圧ばね15と、
前記中間部材8とともに回転する回転軸6とを備え、
前記移動体33の前記連結部33cは、前記回転軸6に嵌着されたフランジ6aにねじ7で固着された前記中間部材8に前記ゴム製弾性シート材9を介して接着固定された前記固定部33aと、前記摺動部33bとを連結しており、
前記移動体33及び前記中間部材8の半径方向において、前記中間部材8の長さは、前記連結部33cの長さよりも長い、振動波モータ。」

(2)引用文献2
特許異議申立人が提出し、令和3年11月5日付け取消理由通知で引用した前記引用文献2には以下の事項が記載されている。
ア.「1.はじめに
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は耐熱性、耐薬品性が必要とされる様々な工業分野で利用されているが、・・・(中略)・・・、繊維強化樹脂(FRP)としての利用はない。現状では、軸受け等の耐摩耗性能を要求される部品や耐クリープ特性を要求される部品に、ガラス繊維や炭素繊維等の短繊維をPTFE樹脂の粉末に混合し焼成した材料が用いられているのみである。・・・(中略)・・・。その他、放射線架橋したPTFEは力学特性、光学特性、耐クリープ特性や耐摩耗特性などが改善される。・・・(中略)・・・。本報告は、その第1報として、市販されているガラス繊維および炭素繊維の短繊維を充填したPTFEの放射線架橋を検討し、連続長繊維強化複合材料の開発にあたっての問題点を探った。」(第1ページ第1行〜第16行)

(3)引用文献3
特許異議申立人が提出し、令和3年11月5日付け取消理由通知で引用した前記引用文献3には以下の事項が記載されている。
ア.「3.架橋PTFEの特長
架橋PTFEの代表的な特長について以下で述べる。
3.1 しゅう動特性
第1の特長は耐摩耗性である。図2に耐摩耗性評価法(リングオンディスク法)、図3に架橋PTFEの耐摩耗性をPTFEおよびしゅう動材料として代表的なガラス繊維充てんPTFEと比較して示す、ここでしゅう動相手材(以下相手材と称す)としては機械部品等で代表的なステンレスとアルミを取り上げた。」(第173ページ右欄下から7行〜第174ページ左欄第2行)

(4)引用文献4
特許異議申立人が提出し、令和3年11月5日付け取消理由通知で引用した前記引用文献4には以下の事項が記載されている。
ア.「【0085】
図9は、本第9の実施の形態に係る振動体1の斜視図である。
【0086】
図9において、摩擦部材3は薄肉円筒状の連結部14で連結されており、連結部14の内径は振動体1の外径と嵌合している。連結部14から上方へ延出し、くし歯部1aの上面を覆うように配置された摩擦部材3は、上記した第5の実施形態と同様に、振動体1に溶接固定され、外周部側に接触部4を形成している。
【0087】
連結部14は、振動体1の外周面の、くし歯部でない部分に周上を溶接固定されている。
【0088】
本第9の実施の形態では、摩擦部材3の配置上の便宜性に加え、摩擦部材3が連結されているために、仮に1つのくし歯上で剥離が生じたとしても、剥離したチップが連結部で固定されたままなので、金属であるチップがモータ筐体内を移動して電気的短絡の原因となることを防ぐことができる。」

(5)引用文献5
特許異議申立人が提出し、令和3年11月5日付け取消理由通知で引用した前記引用文献5には以下の事項が記載されている。
ア.「【0003】
図9は、従来例に係るリング型振動波モータの構成を示す断面図である。リング型振動波モータを構成する弾性体101の一方の端面(図中の左側面)には、分極処理された2群の圧電素子を配置した構造の圧電素子102が同心円状に接着されている。弾性体101及び圧電素子102により振動体が構成されている。圧電素子102における弾性体101との接着面とは反対側の面には、圧電素子102に印加する駆動信号を入力するためのフレキシブル基板104が固着されている。
【0004】
弾性体101における圧電素子102との接着面とは反対側の面には、駆動効率を上げることを目的とした複数の溝が径方向に沿って形成されると共に周方向に規則的に(等間隔で)配置されている。複数の溝は櫛歯を形成している。弾性体101の各櫛歯の端面には、樹脂、金属、セラミックス等により構成される摩擦部材103が設けられている。弾性体101の内周部は、薄肉の円盤状に形成されており、円盤状部の内周側の弾性体固定部は、ベース105に接着あるいはネジにより固定されている。摩擦部材103の表面には、移動体106が接触している。
【0005】
ディスクフランジ109は、シャフト110に嵌合されている。板ばね108の内周部は、ディスクフランジ109により固定されており、板ばね108の外周部は、防振ゴム107を介して移動体106に当接している。これにより、移動体106は、板ばね108の付勢力により摩擦部材103を介して弾性体101に加圧接触される。また、シャフト110は、ベース105に取り付けられた軸受111、112により回転自在に支持されており、更に止め輪113により軸方向の移動が規制されることで板ばね108からの加圧反力を受けている。スペーサ114は、軸受111に予圧を与えてシャフト110の振れ回り量を低減している。」

イ.「【0025】
摩擦部材3は、金属材料から形成されており、リング形状に形成された取付け部3cと、取付け部3cから外周側へ放射状に延出された複数の腕部3dと、複数の腕部3dからそれぞれ延出された複数の摩擦部3bを備えている。摩擦部材3の取付け部3cからは、可撓性を有する複数の腕部3dが周方向にスリットを介して放射状に延出され一体に設けられている。摩擦部材3の複数の腕部3dの先端には、複数の摩擦部3bがそれぞれ一体に設けられている。」

ウ.「【0029】
摩擦部材3と弾性体1とは、摩擦部材3の周方向にスリットを介して各々分離されている複数の摩擦部3bの先端により形成される円と、弾性体1の複数の櫛歯部1aの先端により形成される円とが同心円状になるように位置決めされ重ね合わせられる。弾性体1の弾性体固定部1dには、摩擦部材3の取付け部3cがネジによる締結あるいは止め輪による拘束などの容易な固定手段により固定される。これにより、摩擦部材3の容易な交換を可能としている。」

(6)引用文献6
特許異議申立人が提出し、令和3年11月5日付け取消理由通知で引用した前記引用文献6には以下の事項が記載されている。
ア.「【0020】
図3は本実施例の超音波モータ部3の概略展開図であり、図4は超音波モータ部3の中央断面図である。
【0021】
図3に示すように、本実施例の超音波モータ部3は、略左右対称となるように配置された同じ構造の超音波モータ31を複数有する。すなわち、超音波モータ部3は、第1の超音波モータ311と、第1の超音波モータ311と同軸である第2の超音波モータ312とを有する。また、超音波モータ部3は、第1の超音波モータ311及び第2の超音波モータ312を貫通するシャフト35と、一対のベース341が固定されるケース34とを有する。一対のベース341はそれぞれ板状の形状を有し、ケース34に対してネジによって固定されている。第1の超音波モータ311及び第2の超音波モータ312は、このケース34内の略円柱状のスペースに格納される。また、第1の超音波モータ311及び第2の超音波モータ312は、それぞれ円盤状のステータ32及びロータ33を有する。そして、第1の超音波モータ311及び第2の超音波モータ312は、一対のベース341に挟まれた状態でケース34内に格納されている。一対のベース341には、外部と接続するためのコネクタが搭載された端子支持板344が、ネジによって取り付けられている。
【0022】
ステータ32は、ベース341側からロータ33側に向かって、ピエゾ素子等の圧電素子322と、弾性体323と、摺動材324とを有する。圧電素子322及び摺動材324は弾性体323に接着されている。また、ステータ32にはフレキシブル基板36が接着されており、両者は電気的に接続されている。このフレキシブル基板36を介して、圧電素子322に高周波電圧が印可されると、圧電素子322の伸縮によって弾性体323にたわみ振動が生じ、円周方向に進行波が発生する。ロータ33は、摺動材324を介して弾性体323と接触しているので、進行波が発生すると進行波とは反対の方向に回転する。この回転に伴い、シャフト35がロータ33と同じ方向に回転する。なお、本実施例では、薬液を押し出す場合のロータ33の回転を正転といい、正転方向と逆方向のロータ33の回転を逆転という。例えば、アクチュエータ413を前進させる場合におけるロータ33の回転が正転である。そして、アクチュエータ413を後進させる場合におけるロータ33の回転が逆転である。また、圧電素子322には、注入プロトコルに従った通常制御時に予め定められた範囲の通常電圧が印可されている。
【0023】
図4に示すように、ステータ32はネジ321によってベース341に固定されており、ロータ33はネジによってシャフト35のつば351に固定されている。ベース341にはシャフト35が貫通する穴が形成されており、この穴にはブッシュ343が圧入により取り付けられている。ブッシュ343はシャフト35の軸受けとして機能し、シャフト35の両端はそれぞれブッシュ343を貫通している。また、第1の超音波モータ311及び第2の超音波モータ312のロータ33は、円盤状の形状を有する皿バネ部332を有する。この皿バネ部分332は、ロータ33をステータ32に対して付勢するためのスプリングとして機能する。また、ロータ33は、ステータ32の摺動体324に接触する基体部分333を有する。そして、この基体部分333とロータ33の中心との間に、皿バネ部332が設けられている。そして、皿バネ部332が基体部分333をステータ32に対して付勢することにより、ロータ33がステータ32に密着する。これにより、ロータ33とステータ32とを密着させるために別途のスプリングを設ける必要がないので、超音波モータ部3のサイズを小さくすることができる。
【0024】
また、図3から明らかなように、第1の超音波モータ311のロータ33は、第2の超音波モータ312のロータ33に対向するように配置される。すなわち、第1の超音波モータ311及び第2の超音波モータ312は、シャフト35のつば351を挟んで略左右対称に配置される。そして、第1の超音波モータ311及び第2の超音波モータ312とシャフト35のつば351との間には、スペーサ37として、例えば円盤状のワッシャーが配置される。これにより、スペーサ37の厚み又はスペーサ37の数を増減させることにより、ステータ32に対するロータ33の加圧力を容易に増減させることができる。具体的には、スペーサ37の数を増やすことによりロータ33の加圧力を高めることができる。また、ロータ33とステータ32とが十分に密着していれば、スペーサ37を配置しなくともよい。
【0025】
このように、第1の超音波モータ311及び第2の超音波モータ312のロータ33同士が対向している。そのため、本実施例では、第1の超音波モータ311のロータ33と第2の超音波モータ312のロータ33とが同じ方向を向く場合と比較して、超音波モータ部3のサイズを小さくできる。すなわち、ロータ33とステータ32とが対向するように配置すると、二つの超音波モータ31のそれぞれのロータ33に対応して二つのつば351を設ける必要がある。さらに、ケース34内にステータ32を固定するための追加のベースを設ける必要がある。その結果、超音波モータ部3のサイズが大きくなってしまう。これに対して、本実施例によれば、一つのつば351の両側に第1の超音波モータ311と第2の超音波モータ312のロータ33を配置することができる。また、ステータ32を固定するためのベース341をケース34内に設ける必要がない。そのため、超音波モータ部3のサイズを小さくできる。」

3.当審の判断
(1)特許法第29条第1項第3号新規性)及び同条第2項(進歩性)について
ア.本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「振動体1」は、多数の歯状突部1aが形成され、前記2(1)ア(ア)の段落【0006】によると、該歯状突部1aに周方向への進行波振動が生じることから、弾性を備えた部材と解され、本件特許発明1の「弾性体」に相当する。
引用発明の「圧電素子2」及び「摺動体35」は、それぞれ本件特許発明1の「圧電素子」及び「摺動材」に相当し、引用発明の「前記振動体1の他方の端面に接着固定された圧電素子2と、前記振動体1の前記歯状突部1aの表面に固着された摺動体35」は、本件特許発明1の「前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材」に相当する。
そして、引用発明の「振動体1」、「圧電素子2」及び「摺動体35」を合わせたものは、本件特許発明1の「ステータ」に相当するから、引用発明の「一方の端面の外周縁に多数の歯状突部1aが形成された振動体1と、前記振動体1の他方の端面に接着固定された圧電素子2と、前記振動体1の前記歯状突部1aの表面に固着された摺動体35」を備えるという事項は、本件特許発明1の「弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータ」を備えるという事項に相当する。
引用発明の「摺動部33b」は、摺動体35と摺動接触面33gで接するものであるから、本件特許発明1の「基体部分」に相当し、引用発明の「前記摺動体35と摺動接触面33gで接する摺動部33b」は、本件特許発明1の「前記摺動材と当接する基体部分」に相当する。また、引用発明の「連結部33c」は、ばねとして機能しているから、本件特許発明1の「皿バネ部分」に相当する。さらに、引用発明の「移動体33」は、環状の固定部33a、摺動部33b及び連結部33cを有するものであり、本件特許発明1の「環状部材」に相当する。
引用発明の「中間部材8」は、外周フランジ部8aの端面に環状のゴム製弾性シート材9を介して、移動体33の固定部33aを接着固定するものであるから、本件特許発明1の「固定部」に相当し、引用発明の「外周フランジ部8aを有しており、この外周フランジ部8aの端面に環状のゴム製弾性シート材9を介して、前記移動体33の前記固定部33aを接着固定する中間部材8」は、本件特許発明1の「前記環状部材が固定される固定部」に相当する。
そして、引用発明の「移動体33」及び「中間部材8」を合わせたものは、本件特許発明1の「ロータ」に相当するから、引用発明の「環状の固定部33aと、前記摺動体35と摺動接触面33gで接する摺動部33bと、前記固定部33aと前記摺動部33bとを連結しばねとして機能している連結部33cとを有する移動体33と、外周フランジ部8aを有しており、この外周フランジ部8aの端面に環状のゴム製弾性シート材9を介して、前記移動体33の前記固定部33aを接着固定する中間部材8」を備えるという事項は、本件特許発明1の「前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを有する環状部材と、前記環状部材が固定される固定部とを有するロータ」を備えるという事項に相当する。
引用発明の「回転軸6」は、本件特許発明1の「シャフト」に相当し、引用発明の「前記中間部材8とともに回転する回転軸6」は、中間部材8に接着固定された移動体33とも、共に回転すると解されるから、本件特許発明1の「前記ロータと共に回転するシャフト」に相当する。
引用発明の「前記移動体33の前記連結部33cは、前記回転軸6に嵌着されたフランジ6aにねじ7で固着された前記中間部材8に前記ゴム製弾性シート材9を介して接着固定された前記固定部33aと、前記摺動部33bとを連結して」いるという事項は、移動体33の連結部33cが、回転軸6に嵌着されたフランジ6aに固着された中間部材8に、ゴム製弾性シート材9及び固定部33aを介して固定されているといえるから、本件特許発明1の「前記環状部材の前記皿バネ部分は、前記シャフトに固定された前記固定部に固定されて」いるという事項に相当する。
引用発明の「前記移動体33及び前記中間部材8の半径方向において、前記中間部材8の長さは、前記連結部33cの長さよりも長い」という事項は、本件特許発明1の「前記ロータの半径方向において、前記固定部の長さは、前記皿バネ部分の長さよりも長い」という事項に相当する。
引用発明の「振動波モータ」は、圧電素子2を備えたモータであり、本件特許発明1の「圧電モータ」に相当する。

そうすると、本件特許発明1と引用発明とは、
「弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、
前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを有する環状部材と、前記環状部材が固定される固定部とを有するロータと、
前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、
前記環状部材の前記皿バネ部分は、前記シャフトに固定された前記固定部に固定されており、
前記ロータの半径方向において、前記固定部の長さは、前記皿バネ部分の長さよりも長い、圧電モータ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本件特許発明1は、「前記ロータには、前記皿バネ部分と、前記ロータと共に回転する前記シャフトとの間に環状溝が形成されている」のに対し、引用発明は、移動体33及び中間部材8における、連結部33cと回転軸6との間に環状溝が形成されているとはいえない点。

(イ)判断
a.相違点1について
引用発明は、ばねとして機能している連結部33cと回転軸6との間に、固定部33a、ゴム製弾性シート材9、中間部材8、加圧ばね15及びフランジ6aを有しているものの、引用文献1には、これら部材に環状溝を形成することについて、何ら記載も示唆もされていない。すると、引用発明において、連結部33cと回転軸6との間の部材に環状溝を形成する動機はないといえる。
そして、引用文献2〜引用文献6の記載をみても、圧電モータのロータにおける、皿バネ部分と回転シャフトとの間に環状溝を形成することは、何ら記載も示唆もされておらず、圧電モータの技術分野において、該環状溝を形成することが、本件特許の優先日前から周知の事項であるなどと解される事情もない。
そうすると、当業者といえども、引用発明に基いて、若しくは引用発明及び引用文献2〜引用文献6に記載された事項に基いて、本件特許発明1の相違点1に係る発明特定事項を容易に想到できるものではない。

b.特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲1発明において、連結部を有する移動体と回転軸に固定されている中間部材との間にはゴム製弾性シート材が設けられており、他の部材よりも低剛性であるこのゴム製弾性シート材は、移動体の振動を抑制する機能を有することは明らかである。支持体である弾性部材の剛性を下げることで振動を抑制することができることは技術常識であり、部材の一部を削ることでその部材の剛性が低下することもまた技術常識である。したがって、甲1発明においてゴム製弾性シート材を設けた動機に基づいて、甲1発明のゴム製弾性シート材に代えて又はゴム製弾性シート材に加えて、振動を抑制するために、甲1発明の中間部材の剛性を下げることは、均等物による置換又は設計変更等に過ぎない。中間部材の剛性を下げるにあたって、中心軸に対して均等となるように環状に削って、中間部材に環状の溝を形成することは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。このように、ロータにおいて、皿バネ部分とシャフトとの間に環状溝を形成することは、当業者が容易になし得ることである。」と主張している(特許異議申立書第42ページ第7行〜第20行)。
しかしながら、引用文献1には、ゴム製弾性シート材9の機能について、何ら記載されていないから、ゴム製弾性シート材9が、移動体33の振動を抑制するために設けられたものであるのか否かは不明である。また、仮に、ゴム製弾性シート材9が、ゴム製であり弾性を備えたものである以上、移動体33の振動を抑制する機能を内在するものであるとしても、引用文献1には、連結部33cの振動を抑制し、異音の低減や、連結部33cの損傷の抑制を図るという技術思想について、何ら記載も示唆もされていないから、ゴム製弾性シート材9の剛性をさらに低下させる動機はないといえる。また、ゴム製弾性シート材9の剛性をさらに低下させ、連結部33cの振動を抑制しようとしたところで、中間部材8の外周フランジ部8aの端面と、移動体33の固定部33aとの間に介在されているゴム製弾性シート材9の配置からみて、該ゴム製弾性シート材9に環状溝を形成しても連結部33cの振動を抑制できるとは考えられないし、ましてや、ゴム製弾性シート材9とは別部材である中間部材8で移動体33の振動を抑制すべく、該中間部材8に環状溝を形成することまで、当業者といえども容易に想到できるものではない。
したがって、特許異議申立人の前記主張は採用できない。

(ウ)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明1は、引用文献1に記載された発明ではない。また、本件特許発明1は、引用発明に基いて、若しくは引用発明及び引用文献2〜引用文献6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ.本件特許発明2について
請求項2は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明2も、「前記ロータには、前記皿バネ部分と、前記ロータと共に回転する前記シャフトとの間に環状溝が形成されている」という発明特定事項を備えるものであるから、前記アで検討した本件特許発明1と同じ理由により、本件特許発明2は、引用文献1に記載された発明ではない。同様に、本件特許発明2は、引用発明に基いて、若しくは引用発明及び引用文献2〜引用文献6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ.本件特許発明3について
(ア)対比
本件特許発明3と引用発明とを対比すると、前記ア(ア)に示した、本件特許発明1と引用発明との対比と同様に対比をとることができる。

そうすると、本件特許発明3と引用発明とは、
「弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、
前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを有する環状部材と、前記環状部材が固定される固定部とを有するロータと、
前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、
前記環状部材の前記皿バネ部分は、前記シャフトに固定された前記固定部に固定されており、
前記ロータの半径方向において、前記固定部の長さは、前記皿バネ部分の長さよりも長い、圧電モータ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点2]
本件特許発明3は、「前記固定部の剛性は、前記環状部材の剛性よりも低い」のに対し、引用発明は、中間部材8の剛性と、移動体33の剛性との関係が不明である点。

(イ)判断
a.相違点2について
引用文献1には、移動体33をアルミ合金製とすることが記載されている(前記2(1)ア(オ)参照。)ものの、中間部材8を形成する材料については、何ら記載されていないから、中間部材8の剛性が、移動体33の剛性よりも低いか否かは不明である。
また、引用文献5には、前記2(5)アによると、板ばね108の内周部をシャフト110に嵌合されているディスクフランジ109に固定し、板ばね108の外周部を防振ゴム107を介して移動体106に当接させたリング型振動波モータが記載されているものの、該板ばね108の剛性が、該移動体106の剛性よりも低いか否かは不明である。
そして、引用発明の中間部材8と加圧ばね15とを合わせたものは、ばね力を移動体33に作用させるものである点で、引用文献5に記載された板ばね108と作用・機能が共通しているとしても、引用発明の中間部材8及び加圧ばね15に代えて、引用文献5に記載された板ばね108を採用する積極的な動機はないといえ、また、仮に、引用発明の中間部材8及び加圧ばね15に代えて、引用文献5に記載された板ばね108を採用したとしても、引用文献1及び引用文献5には、中間部材8及び加圧ばね15や、板ばね108により、連結部の振動を抑制し、異音の低減や、連結部の損傷の抑制を図るという技術思想について、何ら記載も示唆もされていないから、該板ばね108の剛性を、引用発明の移動体33(アルミ合金製)の剛性よりも低くすることまで、当業者といえども容易に想到できるものではない。
また、引用文献2〜引用文献4又は引用文献6の記載をみても、圧電モータのロータにおいて、回転シャフト側の中間部材の剛性を、該中間部材の外周側に固定された移動体の剛性よりも低くすることは、何ら記載も示唆もされておらず、圧電モータの技術分野において、該中間部材の剛性を該移動体の剛性よりも低くすることが、本件特許の優先日前から周知の事項であるなどと解される事情もない。
そうすると、当業者といえども、引用発明及び引用文献5に記載された事項に基いて、若しくは引用発明及び引用文献2〜引用文献6に記載された事項に基いて、本件特許発明3の相違点2に係る発明特定事項を容易に想到できるものではない。

b.特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲1発明において、アルミ合金製の移動体よりも剛性が低いことが明らかであるゴム製弾性シート材が、その剛性の低さゆえに振動を吸収することもまた明らかである。このように、甲1は、固定部に相当する部材の一部であるゴム製弾性シート材の剛性を低くすることで振動を吸収することを開示している。このことに基づけば、甲1発明において、振動を吸収するために、固定部に相当する部材の一部のみならず全体の剛性を、移動体の剛性よりも低くすること、すなわち、固定部の剛性を環状部材の剛性よりも低くすることは、当業者が適宜なし得る均等物による置換又は設計変更等であり、当業者であれば容易に想到できたことである。」と主張している(特許異議申立書第34ページ第13行〜第21行)。
しかしながら、引用文献1には、ゴム製弾性シート材9の機能について、何ら記載されていないから、ゴム製弾性シート材9が、振動を吸収するために設けられたものであるのか否かは不明であり、その剛性についても不明である。また、仮に、ゴム製弾性シート材9が、ゴム製であり弾性を備えたものである以上、振動を吸収する機能を内在するものであり、剛性が低いものであるとしても、そのことをもって、中間部材8の剛性を、移動体33(アルミ合金製)の剛性よりも低くすることまで、当業者といえども容易に想到できるものではない。
したがって、特許異議申立人の前記主張は採用できない。

(ウ)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明3は、引用発明及び引用文献5に記載された事項に基いて、若しくは引用発明及び引用文献2〜引用文献6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ.本件特許発明4,6〜8,12について
本件特許発明4は、請求項1から3のいずれか一項の記載を引用して発明を特定するものであり、「前記ロータには、前記皿バネ部分と、前記ロータと共に回転する前記シャフトとの間に環状溝が形成されている」という発明特定事項、又は「前記固定部の剛性は、前記環状部材の剛性よりも低い」という発明特定事項を備えるものであるから、前記アで検討した本件特許発明1、又は前記ウで検討した本件特許発明3と同じ理由により、引用発明に基いて、引用発明及び引用文献5に記載された事項に基いて、若しくは引用発明及び引用文献2〜引用文献6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件特許発明6〜8,12のうち、令和3年11月5日付け取消理由通知で取消理由が通知された発明(請求項5、請求項9、請求項10又請求項11の記載を直接的又は間接的に引用して発明を特定するもの以外)は、請求項1又は請求項3の記載を直接的又は間接的に引用して発明を特定するものであり、「前記ロータには、前記皿バネ部分と、前記ロータと共に回転する前記シャフトとの間に環状溝が形成されている」という発明特定事項、又は「前記固定部の剛性は、前記環状部材の剛性よりも低い」という発明特定事項を備えるものであるから、前記アで検討した本件特許発明1、又は前記ウで検討した本件特許発明3と同じ理由により、引用発明に基いて、引用発明及び引用文献5に記載された事項に基いて、若しくは引用発明及び引用文献2〜引用文献6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)特許法第36条第6項第2号明確性)について
まず、本件訂正により、請求項6の記載は、本件訂正前の「mm3/N・M」から、比摩耗量を示す単位として一般的な「mm3/N・m」に訂正された。
したがって、本件特許発明6における比摩耗量を示す単位は明確といえる。
また、本件訂正により、請求項6には、滑り摩耗試験について、JISK7218A法に準拠したものであり、試験条件が、算術平均粗さが0.2μmのADC12を相手材とし、128m/minの速度及び0.4MPaの荷重で、50時間行うものであることが記載されることとなった。
したがって、本件特許発明6における「滑り摩耗試験」の内容は明確であり、「滑り摩耗試験によって測定した場合の比摩耗量が1×10−6mm3/N・m未満である架橋フッ素樹脂」も明確といえる。
そうすると、本件特許発明6は明確である。請求項6の記載を直接的又は間接的に引用して発明を特定する本件特許発明7,8,12についても同様に明確である。
なお、本件特許発明9,10,11は、本件訂正により、請求項6の記載を直接的又は間接的に引用して発明を特定するものではなくなったため、特許法第36条第6項第2号明確性)の取消理由は解消された。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1.本件特許発明5について
(1)対比
本件特許発明5と引用発明とを対比すると、前記第4 3(1)ア(ア)に示した、本件特許発明1と引用発明との対比と同様に対比をとることができる。

そうすると、本件特許発明5と引用発明とは、
「弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、
前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを有する環状部材と、前記環状部材が固定される固定部とを有するロータと、
前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、
前記環状部材の前記皿バネ部分は、前記シャフトに固定された前記固定部に固定されており、
前記ロータの半径方向において、前記固定部の長さは、前記皿バネ部分の長さよりも長い、圧電モータ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点3]
本件特許発明5は、「前記固定部を前記シャフトに固定するときのねじ止め方向は、前記皿バネ部分を前記固定部に固定するときのねじ止め方向と同一方向である」のに対し、引用発明は、中間部材8を回転軸6に嵌着されたフランジ6aにねじ7で固着するものであるものの、連結部33cを有する移動体33は、その固定部33aが中間部材8の外周フランジ部8aの端面にゴム製弾性シート材9を介して接着固定されるものであり、ねじ止めされておらず、そのため前記のようにねじ止め方向が同一方向であるともいえない点。

(2)判断
ア.相違点3について
引用発明は、連結部33cを有する移動体3を、その固定部33aが中間部材8の外周フランジ部8aの端面にゴム製弾性シート材9を介して接着固定されるものであり、引用文献1には、移動体33を中間部材8にねじ止めすることについては何ら記載されていない。したがって、引用文献1には、該ねじ止めの方向と、中間部材8を回転軸6に嵌着されたフランジ6aに固着するねじ7のねじ止め方向とを同一方向とすることにより、両ねじによる締め付け方向を一致させ、移動体33及び中間部材8を回転軸6に強固に固定することができるという技術思想についても、何ら記載も示唆もされていない。
そして、固着手段として、ねじを用いること自体は、本件特許の優先日前から周知慣用の技術であるとしても、引用発明の移動体33と中間部材8とを固定する手段として、接着固定に代えて、前記周知慣用の技術であるねじを採用する積極的な動機はないといえ、また、仮に、引用発明の接着固定に代えて、ねじを採用したとしても、引用文献1には、前記したように、該ねじのねじ止め方向と、中間部材8を回転軸6に嵌着されたフランジ6aに固着するねじ7のねじ止め方向とを同一方向とすることにより、両ねじによる締め付け方向を一致させ、移動体33及び中間部材8を回転軸6に強固に固定するという技術思想について、何ら記載も示唆もされていないから、中間部材8をフランジ6aに固着するときのねじ止め方向と、連結部33cを有する移動体33を中間部材8に固定するときのねじ止め方向とを同一方向とすることまで、当業者といえども容易に想到できるものではない。
また、引用文献2〜引用文献6の記載をみても、圧電モータのロータにおいて、回転シャフトとその外周側の中間部材との固定と、該中間部材とその外周側の移動体との固定とを共にねじで行うことについて、何ら記載も示唆もされておらず、圧電モータの技術分野において、該2つの固定箇所におけるねじのねじ止め方向を同一方向とすることが、本件特許の優先日前から周知の事項であるなどと解される事情もない。
そうすると、当業者といえども、引用発明に基いて、若しくは引用発明及び引用文献2〜引用文献6に記載された事項に基いて、本件特許発明5の相違点3に係る発明特定事項を容易に想到できるものではない。

イ.特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「また、甲1発明において、中間部材に皿バネ部分に相当する移動体を固定するのにねじ止めによってもよいことは周知である。このねじ止めの方向を、固定部に相当する中間部材をシャフトに相当する回転軸に設けたフランジに固定するときのねじ止め方向と同一方向とすることは、当業者が装置の構成や組立ての容易性等を考慮して適宜に決定し得る設計的事項である。」と主張している(特許異議申立書第35ページ第20行〜第24行)。
しかしながら、引用文献1には、移動体33を中間部材8にねじ止めすることについては何ら記載されていない。そして、本件特許発明5は、「前記固定部を前記シャフトに固定するときのねじ止め方向は、前記皿バネ部分を前記固定部に固定するときのねじ止め方向と同一方向である」とすることにより、ねじによる締め付け方向を一致させ、ロータをシャフトに強固に固定することができるという作用効果を奏するものであるから、引用発明において、移動体33と中間部材8とをねじを用いて固定し、さらに、その際、該ねじのねじ止め方向と、中間部材8を回転軸6に嵌着されたフランジ6aに固着するねじ7のねじ止め方向とを同一方向とすることについて、何らの証拠にも基づかず、当業者が適宜に決定し得る設計的事項であるとはいえない。
したがって、特許異議申立人の前記主張は採用できない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明5は、引用発明に基いて、若しくは引用発明及び引用文献2〜引用文献6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2.本件特許発明9について
(1)対比
本件特許発明9と引用発明とを対比すると、前記第4 3(1)ア(ア)に示した、本件特許発明1と引用発明との対比と同様に対比をとることができる。

そうすると、本件特許発明9と引用発明とは、
「弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、
前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを有する環状部材と、前記環状部材が固定される固定部とを有するロータと、
前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、
前記環状部材の前記皿バネ部分は、前記シャフトに固定された前記固定部に固定されており、
前記ロータの半径方向において、前記固定部の長さは、前記皿バネ部分の長さよりも長い、圧電モータ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点4]
本件特許発明9は、「前記ステータは、前記弾性体とは別の弾性体と、前記圧電素子とは別の圧電素子と、前記摺動材とは別の摺動材とをさらに有しており、前記ロータは、前記基体部分とは別の基体部分と、前記皿バネ部分とは別の皿バネ部分とを含む別の環状部材をさらに有しており、前記皿バネ部分は、前記固定部の一方側に固定されており、前記別の皿バネ部分は、前記固定部の他方側に固定されている」のに対し、引用発明は、振動体1とは別の振動体と、圧電素子2とは別の圧電素子と、摺動体35とは別の摺動体とを有しておらず、摺動部33bとは別の摺動部と、連結部33cとは別の連結部とを含む別の移動体を有しておらず、そのため前記のように、別の連結部が中間部材8の他方側に固定されているともいえない点。

(2)判断
ア.相違点4について
引用発明は、振動体1、圧電素子2及び摺動体35を備えるとともに、摺動部33b及び連結部33cを含む移動体33を備えるものであるが、引用文献1には、これらと別の振動体、圧電素子及び摺動体や、これらと別の摺動部及び連結部を含む移動体をさら設けることについて、何ら記載も示唆もされていない。
また、引用文献6には、前記第4 2(6)アによると、超音波モータ部3が同じ構造の第1の超音波モータ311及び第2の超音波モータ312を有し、第1の超音波モータ311及び第2の超音波モータ312は、それぞれ弾性体323、圧電素子322及び摺動材324を有するステータ32と、基体部分333及び皿バネ部322を有するロータ33とを有することが記載され、また、第1の超音波モータ311及び第2の超音波モータ312のそれぞれのロータ33がネジによってシャフト35のつば351を挟んで固定されることが記載されている。
しかしながら、引用文献1には、前記したように、振動体1、圧電素子2及び摺動体35や、摺動部33b及び連結部33cを含む移動体33と別に、さらにこれらの部材を設けることについて、何ら記載も示唆もされていないから、引用文献6に記載された事項を考慮したとしても、引用発明の振動波モータにおいて、振動体1、圧電素子2及び摺動体35や、摺動部33b及び連結部33cを含む移動体33として別のものをさらに設ける積極的な動機はないといえる。また、仮に、引用発明の振動波モータに、引用文献6に記載された事項を適用したとしても、引用文献6に記載された第1の超音波モータ311及び第2の超音波モータ312は、それぞれのロータ33をネジによってシャフト35のつば351に固定するものであるから、引用発明においてロータを構成しているといえる移動体及び中間部材が2組設けられることとなり、2つの中間部材のそれぞれが回転軸6に嵌着されたフランジにねじで固着されるものが想到されるにとどまり、それぞれが連結部を有する2つの移動体を、単一の中間部材の一方側と他方側とに固定することまで、当業者といえども容易に想到できるものではない。
また、引用文献2〜引用文献5の記載をみても、圧電モータのロータにおいて、回転シャフトに固定された単一の中間部材の一方側と他方側のそれぞれに連結部を有する移動体を固定することは、何ら記載も示唆もされておらず、圧電モータの技術分野において、該構成が、本件特許の優先日前から周知の事項であるなどと解される事情もない。
そうすると、当業者といえども、引用発明及び引用文献6に記載された事項に基いて、若しくは引用発明及び引用文献2〜引用文献6に記載された事項に基いて、本件特許発明9の相違点4に係る発明特定事項を容易に想到できるものではない。

イ.特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲1発明と甲6発明Aとは、何れもステータとロータとを有する進行波を利用した振動波モータ(超音波モータ)であり、甲1発明に甲6発明Aを適用する動機付けがある。ここで、甲1発明の移動体とゴム製弾性シート材及び中間部材とからなるロータを有する振動波モータに甲6発明Aを適用して、この振動波モータを対称となるように配置する際に、一の中間部材の一方側にゴム製弾性シート材を介して移動体を固定し、他方側にゴム製弾性シート材を介して別の移動体を固定して、本件特許発明9を発明することは、当業者が装置の組立ての容易性等を考慮して適宜に決定し得る設計的事項である。」と主張している(特許異議申立書第41ページ第13行〜第21行)。
しかしながら、引用発明と引用文献6に記載された事項とが、ともにステータとロータとを有する進行波を利用した振動波モータ(超音波モータ)に関するものであり、発明の属する技術分野が共通するとしても、そのことをもって、引用発明に引用文献6に記載された事項を適用する動機があるとはいえない。また、一の中間部材の一方側に移動体を固定し、他方側に別の移動体を固定することは、引用文献6の他、引用文献2〜引用文献5のいずれの文献にも記載も示唆もされていないところ、何らの証拠にも基づかず、当業者が適宜に決定し得る設計的事項であるとはいえない。
したがって、特許異議申立人の前記主張は採用できない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件特許発明9は、引用発明及び引用文献6に記載された事項に基いて、若しくは引用発明及び引用文献2〜引用文献6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3.本件特許発明10,11について
本件特許発明10は、請求項3の記載を引用して発明を特定するものであり、本件特許発明11は、請求項10の記載を引用して発明を特定するものであるから、本件特許発明10及び本件特許発明11は、「前記固定部の剛性は、前記環状部材の剛性よりも低い」という発明特定事項、及び「前記ロータには、前記皿バネ部分と、前記ロータと共に回転するシャフトとの間に環状溝が形成されている」という発明特定事項を備えるものである。すると、本件特許発明10及び本件特許発明11は、前記第4 3(1)ウで検討した本件特許発明3、及び前記前記第4 3(1)アで検討した本件特許発明1と同じ理由により、引用発明に基いて、若しくは引用発明及び引用文献2〜引用文献6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.本件特許発明6〜8,12について
本件特許発明6〜8,12のうち、令和3年11月5日付け取消理由通知で取消理由が通知されていない発明(請求項5,請求項9,請求項10又請求項11の記載を直接的又は間接的に引用して発明を特定するもの)は、請求項5、請求項9又は請求項10の記載を直接的又は間接的に引用して発明を特定するものであり、「前記固定部を前記シャフトに固定するときのねじ止め方向は、前記皿バネ部分を前記固定部に固定するときのねじ止め方向と同一方向である」という発明特定事項、「前記ステータは、前記弾性体とは別の弾性体と、前記圧電素子とは別の圧電素子と、前記摺動材とは別の摺動材とをさらに有しており、前記ロータは、前記基体部分とは別の基体部分と、前記皿バネ部分とは別の皿バネ部分とを含む別の環状部材をさらに有しており、前記皿バネ部分は、前記固定部の一方側に固定されており、前記別の皿バネ部分は、前記固定部の他方側に固定されている」という発明特定事項、若しくは「前記固定部の剛性は、前記環状部材の剛性よりも低い」という発明特定事項及び「前記ロータには、前記皿バネ部分と、前記ロータと共に回転するシャフトとの間に環状溝が形成されている」という発明特定事項を備えるものであるから、前記1で検討した本件特許発明5、前記2で検討した本件特許発明9、若しくは前記第4 3(1)ウで検討した本件特許発明3及び前記第4 3(1)アで検討した本件特許発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2〜引用文献6に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、令和3年11月5日付け取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立理由によっては、請求項1〜12に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1〜12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】圧電モータ及び注入機器
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電モータ、及び圧電モータを備える注入機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図3及び図4には、圧電素子を利用して駆動力を生じさせる圧電モータ(例えば、超音波モータ)が記載されている。この圧電モータは、ベースに固定されたステータと、シャフトのつばに固定されたロータとを備えている。そして、ステータは、順に配置された、圧電素子、弾性体及び摺動材を有している。また、ロータは、皿バネ部分と、ステータの摺動体に接触する基体部分とを有している。この皿バネ部分は、ロータをステータに対して付勢するためのスプリングとして機能すると共に、基体部分からロータの中心まで延在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−005712号公報
【0004】
ステータの圧電素子に高周波電圧が印可されると、圧電素子の伸縮によって弾性体にたわみ振動が生じ、円周方向に進行波が発生する。ロータは、摺動材を介して弾性体と接触しているので、進行波が発生すると進行波とは反対の方向に回転する。この回転に伴い、シャフトがロータと同じ方向に回転する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ロータの基体部分は、弾性体のたわみによって一方向に移動した後に、皿バネ部分の付勢力によって反対方向に移動する。そのため、基体部分と一体的に形成されている皿バネ部分には、基体部分の往復運動に起因する振動が生じることがある。そして、皿バネ部分の振動が継続する場合には、異音が生じる原因となる。さらに、振動によって皿バネ部分が損傷する可能性があるため、圧電モータの寿命が短くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一例としての圧電モータは、弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを有する環状部材と、前記環状部材が固定される固定部とを有するロータと、前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、前記環状部材の前記皿バネ部分は、前記シャフトに固定された前記固定部に固定されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の他の例としての注入機器は、薬液を注入するための注入機器であって、上記圧電モータと、前記圧電モータによって駆動される駆動機構と、前記圧電モータを制御する制御装置とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のさらなる特徴は、添付図面を参照して例示的に示した以下の実施例の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る圧電モータの概略斜視図である。
【図2】圧電モータの概略断面図である。
【図3】摺動材の概略斜視図である。
【図4】圧電モータのロータの概略斜視図である。
【図5】注入機器の概略ブロック図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る圧電モータの概略斜視図である。
【図7】圧電モータの概略断面図である。
【図8】圧電モータのロータの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態において説明する寸法、材料、形状及び構成要素の相対的な位置は任意に設定でき、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されるものではない。
【0011】
[第1実施形態]
図1から図4を用いて第1実施形態の圧電モータ100について説明する。図1は、第1実施形態の圧電モータ100の斜視図であり、ケース134側から見た外観を示している。図2は、シャフト135の長手方向に沿った概略断面図であり、シャフト135の回転軸を通る断面を示している。図3は、摺動材114の概略斜視図である。図4は、圧電モータ100のロータ121の概略斜視図である。
【0012】
図1に示すように、圧電モータ100は、ベース141と、ベース141にねじ止めされているケース134を備えている。さらに、圧電モータ100は、ベース141及びケース134を貫通してベース141及びケース134から突出するシャフト135を備えている。また、略板状のベース141の側面には、外部と接続するためのコネクタ144が、端子支持板を介して取り付けられている。
【0013】
続いて図2に示すように、圧電モータ100は、シャフト135の回転軸を中心に略回転対称の構成を備えている。この圧電モータ100は、ベース141に固定されたステータ111と、ステータ111に対向するロータ121とを備えている。そして、ステータ111及びロータ121は、ケース134内の略円柱状のスペースに格納されている。このステータ111は、弾性体113と、弾性体113に貼り付けられた圧電素子112及び摺動材114とを有している。また、ロータ121は、摺動材114と当接する基体部分122と、当該基体部分122と一体的に形成されている皿バネ部分123とを有している環状部材120を備えている。また、シャフト135は、それぞれ略リング状のステータ111及びロータ121を貫通しており、ステータ111とロータ121はシャフト135の回転軸と同軸である。
【0014】
また、圧電モータ100は、圧電素子112と電気的に接続されているフレキシブル基板115を備えている。このフレキシブル基板115は、コネクタ144と電気的に接続されている。そして、圧電素子112には、コネクタ144及びフレキシブル基板115を介して、外部電源から高周波電圧が印可される。高周波電圧が印可されると、圧電素子112の伸縮によって弾性体113にたわみ振動が生じ、円周方向に進行波が発生する。この進行波の各頂点において、ロータ121は、摺動材114を介して弾性体113と接触している。そして、各頂点は楕円運動しており、当該楕円運動の軌跡は、進行波の進む方向とは逆方向である。そのため、ロータ121は、進行波とは反対の方向に回転する。
【0015】
ベース141からロータ121に向かって、ピエゾ素子等の圧電素子112と、圧電素子112が貼り付けられた弾性体113と、弾性体113に貼り付けられた摺動材114とが、この順に配置されている。この摺動材114は、基体部分122を強く押し付けても変形を抑制できるように構成してもよい。一例として、摺動材114は、強化繊維を含む架橋フッ素樹脂により形成できる。フッ素樹脂としては、PTFE、PFA、又はFEPを用いることができ、2種以上のフッ素樹脂を用いることもできる。また強化繊維としては、例えば炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維、炭化ケイ素繊維、窒化ケイ素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、セラミック繊維、PTFE繊維、又はボロン繊維を用いることができる。強化繊維を含む架橋フッ素樹脂を用いることによって、ロータ121の基体部分122が摺動材114に押し付けられた際に、強化繊維が摺動材114の変形を抑制する。これにより、ロータ121がステータ111に押し付けられる際の押し付け力(両者の間の摩擦力)をより強くして、圧電モータ100を高トルク化することができる。
【0016】
また、摺動材114は、架橋フッ素樹脂(上記強化繊維を含む架橋フッ素樹脂を含む)として、JISK7218A法(リング対ディスク)に準拠した滑り摩耗試験によって測定した場合の比摩耗量が、1×10−6mm3/N・m未満である架橋フッ素樹脂によって形成できる。より望ましくは、摺動材114は、比摩耗量が、1×10−7mm3/N・m未満である架橋フッ素樹脂によって形成できる。ここで、試験条件は、相手材:算術平均粗さ(Ra)が0.2μmのADC12、速度:128m/min、時間:50時間、荷重:0.4MPaである。比較例として、未架橋のPTFEを同条件で測定した場合の比摩耗量は、1×10−3mm3/N・mであった。この架橋フッ素樹脂を用いることにより、耐摩耗性を向上させて、摺動材114の寿命、ひいては圧電モータ100の寿命を長くできる。また、弾性体113は、複数の櫛歯を備えている。そして、当該櫛歯同士の間には、弾性体113の中心から弾性体113の外周に向かって放射状に延在する矩形状の溝が形成されている。一例として、弾性体113は、鉄、鋼、ジュラルミン、銅合金及びチタン合金等の金属によって形成できる。
【0017】
図3に示すように、摺動材114は、略半円形の外形を有する第1摺動部分114A及び第2摺動部分114Bを備えている。そして、第1摺動部分114A及び第2摺動部分114Bのそれぞれは、スリットを挟んで対向する複数の摺動片114Cと、複数の摺動片114Cを連結するブリッジ114Dとを備えている。また、第1摺動部分114A及び第2摺動部分114Bは、図3中点線で示す分割ラインDを境に分割されている。代替的に、分割せずに略円形の外形を有するような摺動材114を形成し、当該摺動材114が複数の摺動片114Cとブリッジ114Dとを有するように構成してもよい。また、摺動材114を3つ以上に分割して、略円弧状の外形を有するような複数の摺動部分を形成してもよい。
【0018】
複数の摺動片114Cは、摺動材114の内側の縁部であるブリッジ114Dによって連結されている。そして、第1摺動部分114A及び第2摺動部分114Bのブリッジ114Dの位置を合わせることにより、2つのブリッジ114Dが略リング状に配置されている。また、図2に示すように、ブリッジ114Dは、基体部分122と接触しない位置に設定されている。そのため、ブリッジ114Dにスリットが形成されていなくとも、摺動材114の楕円運動に与える影響を少なくすることができる。代替的に、ブリッジ114Dは、摺動材114の外側の縁部に形成してもよい。さらに、ブリッジ114Dは、摺動材114の外側の縁部及び内側の縁部の両方に形成してもよい。この場合、摺動材114には、略矩形状の外形を有するスリットが形成される。
【0019】
一例として、摺動材114の貼り付けは、以下のように行うことができる。まず、摺動材114のシート状の母材を準備する。次に、第1摺動部分114A及び第2摺動部分114Bとなる複数の部分を、それぞれが略半円形の外形を有するように母材から切り抜く。そして、弾性体113の複数の櫛歯上に複数の摺動片114Cがそれぞれ位置するように、第1摺動部分114A及び第2摺動部分114Bを位置合わせして、摺動材114を弾性体113に接着剤によって貼り付ける。このとき、ブリッジ114Dによって複数の摺動片114Cが連結されているため、貼り付けの作業性が向上する。
【0020】
その後、接着剤によって圧電素子112を弾性体113に貼り付け、さらに接着剤によって圧電素子112にフレキシブル基板115を貼り付ける。そして、弾性体113をベース141にねじ止めする。代替的に、圧電素子112を弾性体113に貼り付けた後に、摺動材114の貼り付けを行ってもよい。ここで、摺動材114には貼り付け前にスリットが形成されている。そのため、貼り付け後に、基体部分122と接触する部分の周辺にスリットを形成することによって摺動材114の表面が歪んでしまうことを抑制できる。ただし、弾性体113の櫛歯同士の間の溝に対応する位置においてブリッジ114Dが分割されるように、摺動材114の貼り付け後にプレス加工を施してもよい。この場合、基体部分122と接触する部分にはスリットを形成する必要がないので、当該部分において摺動材114の表面が歪むことは防止される。
【0021】
図2に戻り、シャフト135は、ロータ121の回転に伴い、ロータ121と同じ方向に回転する。また、ベース141にはシャフト135が貫通する穴が形成されており、この穴にはブッシュ137が圧入により取り付けられている。代替的に、このブッシュ137に代えてベアリングを用いてもよい。さらに、ケース134にもシャフト135が貫通する穴が形成されており、この穴に対応する位置にはベアリング138が取り付けられている。シャフト135は、ブッシュ137及びベアリング138をそれぞれ貫通している。
【0022】
ステータ111は、複数のステータネジ116によってベース141に固定されている。具体的に、弾性体113のシャフト135側の縁部は、不図示のネジ穴を有している。また、ベース141は、弾性体113のネジ穴に対応するネジ穴を有している。そして、ステータネジ116が両ネジ穴と螺合することにより、ステータ111がベース141に固定されている。
【0023】
ロータ121は、環状部材120の皿バネ部分123が固定される固定部の一例として、シャフト135に固定されるスタビライザー125を有している。図4に示すように、この環状部材120の中央には穴が形成されており、環状部材120とスタビライザー125とは別体である。そして、ロータ121は、複数の第1ロータネジ124と、スタビライザー125と、複数の第2ロータネジ126とを介して、シャフト135のフランジ136に固定されている。そして、環状部材120の皿バネ部分123のシャフト135側に位置する内縁部127は、ネジ穴を有している。また、スタビライザー125の外縁部は、当該ネジ穴に対応するネジ穴を有している。そして、第1ロータネジ124(図2)が両ネジ穴と螺合することにより、皿バネ部分123がスタビライザー125に固定されている。
【0024】
皿バネ部分123は、ロータ121をステータ111に対して付勢するためのスプリングとして機能する。これにより、基体部分122が、ステータ111の摺動材114に押し付けられている。すなわち、皿バネ部分123が基体部分122をステータ111に対して付勢することにより、ロータ121が摺動材114に密着する。皿バネ部分123がスプリングとして機能することにより、圧電モータ100のサイズを小さくすることができる。
【0025】
また、図2に示すように、皿バネ部分123は、圧電モータ100の半径方向において、基体部分122とスタビライザー125との間に設けられている。換言すると、スタビライザー125は、皿バネ部分123よりもシャフト135に近い位置において、シャフト135に固定されている。具体的に、スタビライザー125の内縁部及びシャフト135のフランジ136には、それぞれ対応するネジ穴が形成されている。そして、第2ロータネジ126が両ネジ穴と螺合することにより、スタビライザー125がフランジ136に固定されている。
【0026】
このスタビライザー125は、皿バネ部分123の湾曲した薄肉部よりも厚く形成されている。すなわち、シャフト135の回転軸方向において、スタビライザー125は、皿バネ部分123の薄肉部よりも厚い。そして、スタビライザー125は、皿バネ部分123の振動が伝搬するように構成されている。これにより、皿バネ部分123の振動を抑制し、異音を低減することができる。また、振動を抑制する結果、圧電モータ100の寿命をより長くすることができる。なお、スタビライザー125は厚いため、皿バネ部分123から振動が伝搬しても損傷する可能性は低い。また、スタビライザー125は、環状部材120よりも質量が大きくなるように形成してもよい。なお、スタビライザー125には、アルマイト処理、又はアニール処理を施してもよい。
【0027】
さらに、スタビライザー125によって、皿バネ部分123の内縁部127から皿バネ部分123の外縁部128までの距離をより短くできる。換言すると、ロータ121の半径方向における皿バネ部分123の長さを、従来よりも短くできる。これにより、損傷しやすい薄肉部を短くできるため、皿バネ部分123が損傷する可能性を減少させることができる。その結果、圧電モータ100の寿命をより長くすることができる。また、より強い力でロータ121をステータ111に押し付けても損傷しないため、圧電モータ100を高トルク化することができる。さらに、高精度の加工を要する薄肉部を短くできるため、皿バネ部分123の製造コストを削減することもできる。また、皿バネ部分123の変形量を低く抑えて、圧電モータ100を高トルク化することができる。また、スタビライザー125より外側に位置する環状部材120の質量が低くなる結果、ロータ121の慣性モーメントを下げることができる。そのため、圧電モータ100の応答性を向上させることができる。
【0028】
ここで、皿バネ部分123は、第1ロータネジ124によって、スタビライザー125にねじ止めされている。そして、スタビライザー125は、第2ロータネジ126によって、シャフト135のフランジ136にねじ止めされている。ねじ止めにより、皿バネ部分123をスタビライザー125に強固に固定できると共に、スタビライザー125をシャフト135に強固に固定できる。
【0029】
図2における第2ロータネジ126のねじ止め方向は、第1ロータネジ124のねじ止め方向とは反対方向である。すなわち、第1ロータネジ124は、ケース134側からベース141側に向かってねじ込まれている。これに対して、第2ロータネジ126は、ベース141側からケース134側に向かってねじ込まれている。一例として、まず一方向から螺入される第1ロータネジ124によって、ロータ121をスタビライザー125に取り付けられる。次に、反対方向から螺入される第2ロータネジ126によって、スタビライザー125をシャフト135に取り付ける。
【0030】
ただし、スタビライザー125をシャフト135に固定するときのねじ止め方向は、皿バネ部分123をスタビライザー125に固定するときのねじ止め方向と同一方向であってもよい。すなわち、第2ロータネジ126をケース134側からベース141側に向かってねじ込めるように、スタビライザー125及びフランジ136にネジ穴を形成してもよい。第2ロータネジ126及び第1ロータネジ124を同一方向にねじ込むことにより、両ネジによる締め付け方向が一致する。そのため、ロータ121をシャフト135により強固に固定できる。
【0031】
ここで、スタビライザー125は、金属製であってもよい。一例として、スタビライザー125は、5000系アルミニウム合金(例えばA5052)によって形成できる。これにより、ケース134をベース141に取り付ける際に、スタビライザー125の変形量を低く抑えることができる。そのため、ロータ121がステータ111に押し付けられる際の押し付け力(両者の間の摩擦力)をより強くして、圧電モータ100を高トルク化することができる。さらに、両者の間の押し付け力がばらつくことも抑制できる。すなわち、ケース134を取り付ける際に、スタビライザー125は、ベース141(ステータ111)側に押し付けられる。これにより、ロータ121がステータ111に押し付けられるが、その際にスタビライザー125の大きな変形に起因して、押し付け力がばらつくことを抑制できる。なお、環状部材120は、一例として、7000系アルミニウム合金(例えばA7075)によって形成できる。
【0032】
また、スタビライザー125は、環状部材120よりも低剛性となるように(縦弾性係数が低くなるように)構成してもよい。これにより、スタビライザー125が振動を吸収することによって、皿バネ部分123の振動をより抑制することができる。そのために、スタビライザー125は、図4に点線で示したシャフト135の回転軸Rを中心とする環状溝129を有している。この環状溝129は、断面略U字状の形状を有しており、環状溝129の底はスタビライザー125の他の部分よりも薄い。この環状溝129により、スタビライザー125の剛性をより低くできる。その結果、皿バネ部分123の振動をより抑制することができる。このようにスタビライザー125を低剛性に構成することにより、ロータ121をステータ111に押し付ける際にスタビライザー125がわずかに変形する。その結果、ロータ121をステータ111に押し付ける力を均等に分散させることができる。なお、スタビライザー125は、環状部材120と同じ剛性、または環状部材120よりも高剛性となるように構成してもよい。ただし、低剛性となるように構成することにより、皿バネ部分123の振動をより抑制することができる。なお、図4においては、環状溝129が1つであるが、2つ以上の環状溝129を形成してもよい。
【0033】
また、略リング状のスタビライザー125の半径方向における幅は、同じく略リング状の皿バネ部分123の半径方向における幅よりも長く設定されている。これにより、皿バネ部分123の全周に渡って、スタビライザー125の質量を、皿バネ部分123の対応する部分よりも大きくできる。そのため、皿バネ部分123の全周に渡って、スタビライザー125の剛性を、皿バネ部分123よりも低くできる。ただし、一変形例として、スタビライザー125の形状はリング状には限定されず、多角形等の他の形状であってもよい。
【0034】
なお、ベアリング138とスタビライザー125との間には、スペーサーを配置してもよい。これにより、ケース134をベース141に取り付ける際に、ロータ121がステータ111に押し付けられる際の押し付け力を調整することができる。さらに、このスペーサーに代えてまたはスペーサーに加えて、ベアリング138とスタビライザー125との間にスプリング、例えば皿バネを配置してもよい。これにより、ロータ121がステータ111に押し付けられる際の押し付け力をより強くして、圧電モータ100を高トルク化することができる。具体的には、スタビライザー125に向かって凸状の皿バネを配置することによって、ロータ121をステータ111に押し付けることができる。
【0035】
上記第1実施形態に係る圧電モータ100によれば、スタビライザー125を備えることにより、基体部分122と一体的に形成されている皿バネ部分123の振動を抑制できる。そのため、異音を低減できると共に、皿バネ部分123の損傷を抑制して、圧電モータ100の寿命をより長くできる。
【0036】
[注入機器]
続いて、ブロック図である図5を参照して、注入機器201について説明する。なお、圧電モータ100の構成は上述しているため、その説明は省略する。
【0037】
図5に示すように、薬液を注入するための注入機器201は、圧電モータ100と、圧電モータ100によって駆動される駆動機構204と、圧電モータ100を制御する制御装置205とを備えている。この駆動機構204は、圧電モータ100が正転するときに薬液を送り出すように駆動される。また、駆動機構204及び圧電モータ100は、注入機器201の注入ヘッド202のフレーム221内に格納されている。そして、圧電モータ100は、フレーム221内においてシリンジホルダー292が位置する側を前側とした場合に、後側に配置されている。
【0038】
フレーム221は、2つのシリンダ291を保持するために2つのシリンジホルダー292を有している。さらに、注入機器201は、薬液の注入状況等が表示されるコンソール206を有している。このコンソール206は光ケーブルを介して制御装置205に接続されており、制御装置205は注入ヘッド202に接続されている。また、制御装置205及びコンソール206は検査室内又は検査室外の外部電源に接続されており、制御装置205はパワーサプライとしても機能している。
【0039】
制御装置205は、圧電モータ100を制御するCPU251と、圧電モータ100に高周波電圧を印可する駆動回路252とを有している。このCPU251は、駆動信号を圧電モータ100に送信するために駆動回路252に電気的に接続されている。また、駆動回路252は、圧電モータ100に電気的に接続されている。圧電モータ100にはエンコーダ239が接続されており、圧電モータ100の回転数及び回転の有無等の情報を制御装置205に送信している。
【0040】
駆動機構204は、伝達機構241と、ボールネジ軸211と、ボールネジナット212と、アクチュエータ213とを備えている。この駆動機構204は、シリンジホルダー292と圧電モータ100との間に配置されている。伝達機構241は圧電モータ100のシャフト135に接続されており、ボールネジ軸211は伝達機構241に接続されている。また、ボールネジナット212はボールネジ軸211に取り付けられており、アクチュエータ213はボールネジナット212に接続されている。
【0041】
伝達機構241は、シャフト135に接続されたピニオンギアと、ボールネジ軸211に接続されたスクリューギアとを有している(不図示)。そして、伝達機構241は、圧電モータ100からの回転をボールネジ軸211に伝達する。そのため、圧電モータ100のシャフト135の回転は、ピニオンギア及びスクリューギアを介してボールネジ軸211に伝達される。
【0042】
ボールネジ軸211は、シャフト135から伝達された回転に従って回転する。そして、ボールネジナット212は、ボールネジ軸211の回転に伴い前進方向(前側方向)又は後進方向(後側方向)に摺動する。その結果、ボールネジナット212の摺動に伴い、アクチュエータ213が前進又は後進する。すなわち、シャフト135が正転するとアクチュエータ213が前進し、シャフト135が逆転するとアクチュエータ213が後進する。
【0043】
シリンジホルダー292に搭載される各シリンダ291には、シリンダ291内において摺動可能であるピストン293が取り付けられている。そして、シリンダ291は、ピストン293のロッドがアクチュエータ213の先端に当接するように搭載される。これにより、シリンダ291が搭載された状態でボールネジナット212が前進方向に摺動すると、アクチュエータ213がピストン293を前進方向に押すことになる。そして、ピストン293が前進するとシリンダ291内の薬液が押し出され、シリンダ291の先端に接続されるカテーテル等を介して患者の体内に注入される。また、ボールネジナット212が後進方向に摺動すると、アクチュエータ213がピストン293を後進方向に引くことになる。
【0044】
薬液を注入する場合、使用者は、薬液が充填された2つのシリンダ291をシリンジホルダー292に搭載し、注入機器201の電源をオンする。その後、使用者が注入ボタンを押すと、制御装置205は圧電モータ100に駆動信号として正転信号を送る。この正転信号に応じて圧電モータ100が駆動し、シャフト135が正転する。シャフト135が正転すると薬液が注入され、エンコーダ239は回転を検出して制御装置205にパルス信号を送る。
【0045】
注入が終了しシリンダ291を外す場合、ピストン293を後進させるために、制御装置205は圧電モータ100に駆動信号として逆転信号を送る。この逆転信号に応じて圧電モータ100が駆動し、シャフト135が逆転する。なお、圧電モータ100に送信される駆動信号は交流信号であり、位相が異なる2種類の信号のうち一方が他方に対して遅れている場合を正転信号としたときに、他方が一方に対して遅れている場合が逆転信号となる。
【0046】
制御装置205は予め注入プロトコルを記憶しており、薬液の注入は注入プロトコルに従って自動的に行われる。この注入プロトコルは、例えば、注入時間、注入速度、注入量及び注入圧力リミット値を含んでいる。そして、制御装置205は注入状況を監視し、注入圧力の低下等の異常を検知した場合には薬液の注入を自動で停止する。なお、注入圧力は、アクチュエータ213の先端に取り付けられているロードセルによって検出できる。
【0047】
ここで圧電モータ100は、非磁性体材料を用いて構成できる。非磁性体材料の一例として、弾性体113の材料はリン青銅であり、シャフト135、第2ロータネジ126、第1ロータネジ124、及びステータネジ116の材料は真鍮である。また、ケース134、ベース141、皿バネ部分123、及びスタビライザー125の材料はアルミニウムであり、ブッシュ137の材料はフッ素樹脂である。
【0048】
非磁性体材料を用いて圧電モータ100を構成することにより、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等の、磁気を利用する機器の近傍で注入機器201を使用できる。また、注入機器201は、例えば、CT(Computed Tomography)装置、アンギオ撮像装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、CTアンギオ装置、MRアンギオ装置、超音波診断装置、又は血管撮像装置と共に用いてもよい。この場合、圧電モータ100は、磁性体材料を用いて構成できる。
【0049】
上記注入機器201においても、圧電モータ100がスタビライザー125を備えることにより、皿バネ部分123の振動を抑制できる。そのため、異音を低減できると共に、皿バネ部分123の損傷を抑制して、圧電モータ100の寿命をより長くできる。ひいては、注入機器201の寿命をより長くすることができる。
【0050】
[第2実施形態]
図6から図8を用いて第2実施形態の圧電モータ300について説明する。図6は、第2実施形態の圧電モータ300の斜視図である。図7は、シャフト335の長手方向に沿った概略断面図であり、シャフト335の回転軸を通る断面を示している。図8は、圧電モータ300のロータ321の概略斜視図である。第2実施形態においては、ステータが、別の弾性体と、別の圧電素子と、別の摺動材とをさらに有している。また、ロータも、別の基体部分と、別の皿バネ部分とをさらに有している。
【0051】
図6に示すように、圧電モータ300は、一対のベース341に固定されるケース334を有する。一対のベース341はそれぞれ略板状であり、ケース334に対してネジ止めされている。さらに、圧電モータ300は、ベース341及びケース334を貫通してベース341及びケース334から突出するシャフト335を備えている。そして、シャフト335は、それぞれ略リング状のステータ311及びロータ321を貫通しており、ロータ321と共に回転する。また、一対のベース341のそれぞれの側面には、外部と接続するためのコネクタ344が、端子支持板を介して取り付けられている。
【0052】
続いて図7に示すように、圧電モータ300は、シャフト335の回転軸を中心に略回転対称の構成を備えている。この圧電モータ300は、ベース341に固定されたステータ311と、ステータ311に対向するロータ321とを備えている。そして、ステータ311及びロータ321は、ケース334内の略円柱状のスペースに格納されている。また、シャフト335は、それぞれ略リング状のステータ311及びロータ321を貫通しており、ステータ311とロータ321はシャフト335の回転軸と同軸である。
【0053】
第2実施形態のステータ311は、2つの弾性体313と、2つの圧電素子312と、2つの摺動材314とを有している。そして、各圧電素子312及び各摺動材314は、各弾性体313に貼り付けられている。また、ロータ321は、それぞれ基体部分322と皿バネ部分323とを有している2つの環状部材320を備えている。各基体部分322は各摺動材314と当接し、皿バネ部分323はそれぞれ基体部分322と一体的に形成されている。さらに、ロータ321は、2つの環状部材320の皿バネ部分323が固定されると共に、シャフト335に固定される固定部の一例として、スタビライザー325を有している。
【0054】
圧電モータ300の両側において、圧電素子312と、弾性体313と、摺動材314とは、ベース341からロータ321に向かってこの順に配置されている。さらに、圧電モータ300は、各圧電素子312と電気的に接続されているフレキシブル基板315を備えている。この2つのフレキシブル基板315は、コネクタ344と電気的に接続されている。そして、圧電素子312には、コネクタ344及びフレキシブル基板315を介して、外部電源から高周波電圧が印可される。
【0055】
一対のベース341にはシャフト335が貫通する穴が形成されており、各穴にはブッシュ337が圧入により取り付けられている。そして、シャフト335は、2つのブッシュ337をそれぞれ貫通している。代替的に、ブッシュ337に代えてベアリングを用いてもよい。また、各ステータ311は、複数のステータネジ316によって各ベース341に固定されている。具体的に、弾性体313のシャフト335側の縁部は、ネジ穴を有している。また、ベース341は、弾性体313のネジ穴に対応するネジ穴を有している。そして、ステータネジ316が両ネジ穴と螺合することにより、ステータ311がベース341に固定されている。
【0056】
ロータ321は、複数の第1ロータネジ324と、スタビライザー325と、複数の第2ロータネジ326とを介して、シャフト335のフランジ336に固定されている。また、ロータ321は、2つの皿バネ部分323が固定される1つのスタビライザー325を有している。具体的に、各皿バネ部分323のシャフト335側に位置する内縁部327(図8)は、ネジ穴を有している。また、スタビライザー325の外縁部は、当該ネジ穴に対応するネジ穴を有している。そして、第1ロータネジ324が両ネジ穴と螺合することにより、各皿バネ部分323がスタビライザー325に固定されている。
【0057】
皿バネ部分323の一方はスタビライザー325の一方側に固定されており、当該一方側とは反対の他方側に皿バネ部分323の他方が固定されている。そして、スタビライザー325の外縁部は、2つの皿バネ部分323の内縁部327に挟まれている。また、皿バネ部分323は、圧電モータ300の半径方向において、基体部分322とスタビライザー325との間に設けられている。換言すると、スタビライザー325は、皿バネ部分323よりもシャフト335に近い位置において、シャフト335に固定されている。具体的に、スタビライザー325の内縁部及びシャフト335のフランジ336には、それぞれ対応するネジ穴が形成されている。そして、第2ロータネジ326が両ネジ穴と螺合することにより、スタビライザー325がフランジ336に固定されている。
【0058】
代替的に、ロータ321は、別のスタビライザー325をさらに有していてもよい。この場合、皿バネ部分323の一つは、別のスタビライザー325に固定される。すなわち、2つのスタビライザー325が、それぞれ弾性体313と対向する位置に配置される。また、シャフト335には、2つのスタビライザー325がねじ止めされる2つのフランジ336が形成される。別のスタビライザー325を設ける場合、第1実施形態のスタビライザー125を用いることができるため、部品点数を削減できる。一方、ロータ321がスタビライザー325を1つのみ備える場合には、圧電モータ300を小型化することができる。
【0059】
シャフト335の回転軸方向において、スタビライザー325は、皿バネ部分323の薄肉部よりも厚い。そして、スタビライザー325は、皿バネ部分323の振動が伝搬するように構成されている。これにより、皿バネ部分323の振動を抑制し、異音を低減することができる。また、振動を抑制する結果、圧電モータ300の寿命をより長くすることができる。さらに、スタビライザー325は、皿バネ部分323よりも剛性が低くなるように構成してもよい。これにより、スタビライザー325によって、皿バネ部分323の振動をより抑制することができる。
【0060】
スタビライザー325によって、皿バネ部分323の内縁部327から皿バネ部分323の外縁部328までの距離を従来よりも短くできる。これにより、損傷しやすい薄肉部を短くできるため、皿バネ部分323が損傷する可能性を減少させることができる。その結果、圧電モータ300の寿命をより長くすることができる。さらに、高精度の加工を要する薄肉部を短くできるため、皿バネ部分323の製造コストを削減することもできる。また、皿バネ部分323の変形量を低く抑えて、圧電モータ300を高トルク化することができる。
【0061】
図7における第2ロータネジ326のねじ止め方向は、第1ロータネジ324のねじ止め方向と同一方向である。すなわち、スタビライザー325をシャフト335に固定するときのねじ止め方向は、皿バネ部分323をスタビライザー325に固定するときのねじ止め方向と同一方向である。これにより、両ネジによる締め付け方向が一致する。そのため、ロータ321をシャフト335により強固に固定できる。
【0062】
ここで、スタビライザー325は、金属製であってもよい。これにより、ケース334をベース341に取り付ける際に、スタビライザー325の変形量を低く抑えることができる。そのため、ロータ321がステータ311に押し付けられる際の押し付け力(両者の間の摩擦力)をより強くして、圧電モータ300を高トルク化することができる。さらに、両者の間の押し付け力がばらつくことも抑制できる。
【0063】
さらに、スタビライザー325は、図8に点線で示したシャフト335の回転軸Rを中心とする環状溝329を有している。この環状溝329は、断面略U字状の形状を有しており、環状溝329の底はスタビライザー325の他の部分よりも薄い。この環状溝329により、スタビライザー325の剛性をより低くできる。その結果、皿バネ部分323の振動をより抑制することができる。なお、図8においては、環状溝329が1つであるが、2つ以上の環状溝329を形成してもよい。
【0064】
圧電モータ300の半径方向において、スタビライザー325の幅は、皿バネ部分323の幅よりも長く設定されている。これにより、皿バネ部分323の全周に渡って、スタビライザー325の質量を、皿バネ部分323の対応する部分よりも大きくできる。そのため、皿バネ部分323の全周に渡って、スタビライザー325の剛性を、皿バネ部分323よりも低くできる。
【0065】
なお、シャフト335のフランジ336とスタビライザー325との間にスペーサーを配置してもよい。これにより、ケース334をベース341に取り付ける際に、ロータ321がステータ311に押し付けられる際の押し付け力を調整することができる。さらに、このスペーサーに代えてまたはスペーサーに加えて、フランジ336とスタビライザー325との間にスプリング、例えば皿バネを配置してもよい。これにより、ロータ321がステータ311に押し付けられる際の押し付け力をより強くして、圧電モータ300を高トルク化することができる。
【0066】
上記第2実施形態に係る圧電モータ300は、スタビライザー325を備えることにより、皿バネ部分323の振動を抑制できる。そのため、異音を低減できると共に、皿バネ部分323の損傷を抑制して、圧電モータ300の寿命をより長くできる。さらに、第1実施形態と比較して、圧電モータ300のトルクをより高くすることができる。
【0067】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、各実施形態及び各変形形態は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0068】
例えば、スタビライザー125と、基体部分122と、皿バネ部分123とを有する複数のロータ121を設けてもよい。この場合、圧電素子112と、弾性体113と、摺動材114とを有する複数のステータ111を、複数のロータ121の数に対応して設けることができる。また、シャフト135には、スタビライザー125の数に対応する数のフランジ136を形成できる。例えば、3つのロータ121を設ける場合、3つのステータ111を設けると共に、シャフト135には3つのフランジ136を形成する。なお、4つ以上のロータ121及びステータ111を設けてもよい。
【0069】
また、皿バネ部分123、323の固定と、スタビライザー125、325の固定は、ねじ止めには限定されず、それぞれ溶接等の他の固定方法を用いることもできる。また、上記実施形態では、基体部分122、322と皿バネ部分123、323とが一体的に形成されている。ただし、基体部分122、322と皿バネ部分123、323とをそれぞれ形成した後に、両者を溶接等の方法によって一体化させてもよい。また、環状溝129、329に代えて、格子状、放射状、又は同心円状に配列されるように複数の穴又は凹部を形成してもよい。さらに、多数の穴又は凹部を等間隔で形成してもよく、スタビライザー125、325内に多数の中空の空間又はリング状の空間を形成してもよい。この場合、金属材料を使用した三次元造形によってスタビライザー125、325を形成できる。
【0070】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。なお、振動を抑制する必要がない場合(例えば、異音を無視できる場合)、ロータ121、321は、スタビライザー125、325を備えていなくともよい。この場合、皿バネ部分123、323は、シャフト135、335まで延在し、フランジ136、336に直接固定される。
【0071】
(付記1)
弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、
前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを含む環状部材を有するロータと、
前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、
前記摺動材は、スリットを挟んで対向する複数の摺動片と、前記複数の摺動片を連結するブリッジとを備えている、圧電モータ。
【0072】
(付記2)
前記複数の摺動片は、前記基体部分と接触する位置に配置されており、
前記ブリッジは、前記基体部分と接触する位置を避けて配置されている、付記1に記載の圧電モータ。
【0073】
(付記3)
前記摺動材は、強化繊維を含む架橋フッ素樹脂からなる、付記1又は2に記載の圧電モータ。
【0074】
(付記4)
前記摺動材は、比摩耗量が1×10−6mm3/N・m未満である、付記1から3のいずれか一つに記載の圧電モータ。
【0075】
(付記5)
弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、
前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを含む環状部材を有するロータと、
前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、
前記摺動材は、強化繊維を含む架橋フッ素樹脂からなる、圧電モータ。
【0076】
(付記6)
前記摺動材は、比摩耗量が1×10−6mm3/N・m未満である、付記5に記載の圧電モータ。
【0077】
この出願は2018年8月10日に出願された日本国特許出願第2018−151666号からの優先権を主張し、その全内容を引用してこの出願の一部とする。
【符号の説明】
【0078】
100:圧電モータ、111:ステータ、112:圧電素子、113:弾性体、114:摺動材、121:ロータ、122:基体部分、123:皿バネ部分、125:固定部、129:環状溝、135:シャフト、201:注入機器、204:駆動機構、205:制御装置、300:圧電モータ、311:ステータ、312:圧電素子、313:弾性体、314:摺動材、321:ロータ、322:基体部分、323:皿バネ部分、325:固定部、329:環状溝、335:シャフト
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、
前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを有する環状部材と、前記環状部材が固定される固定部とを有するロータと、
前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、
前記環状部材の前記皿バネ部分は、前記シャフトに固定された前記固定部に固定されており、
前記ロータの半径方向において、前記固定部の長さは、前記皿バネ部分の長さよりも長く、
前記ロータには、前記皿バネ部分と、前記ロータと共に回転する前記シャフトとの間に環状溝が形成されている、圧電モータ。
【請求項2】
前記固定部は、前記皿バネ部分よりも前記シャフトに近い位置において、前記シャフトに固定されている、請求項1に記載の圧電モータ。
【請求項3】
弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、
前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを有する環状部材と、前記環状部材が固定される固定部とを有するロータと、
前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、
前記環状部材の前記皿バネ部分は、前記シャフトに固定された前記固定部に固定されており、
前記ロータの半径方向において、前記固定部の長さは、前記皿バネ部分の長さよりも長く、
前記固定部の剛性は、前記環状部材の剛性よりも低い、圧電モータ。
【請求項4】
前記固定部は、金属からなる、請求項1から3のいずれか一項に記載の圧電モータ。
【請求項5】
弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、
前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを有する環状部材と、前記環状部材が固定される固定部とを有するロータと、
前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、
前記環状部材の前記皿バネ部分は、前記シャフトに固定された前記固定部に固定されており、
前記ロータの半径方向において、前記固定部の長さは、前記皿バネ部分の長さよりも長く、
前記固定部を前記シャフトに固定するときのねじ止め方向は、前記皿バネ部分を前記固定部に固定するときのねじ止め方向と同一方向である、圧電モータ。
【請求項6】
前記摺動材は、強化繊維を含み、JISK7218A法に準拠した滑り摩耗試験によって測定した場合の比摩耗量が、1×10−6mm3/N・m未満である架橋フッ素樹脂からなり、
前記滑り摩耗試験は、算術平均粗さが0.2mμのADC12を相手材とし、128m/minの速度及び0.4MPaの荷重で、50時間行うという試験条件である、請求項1から5のいずれか一項に記載の圧電モータ。
【請求項7】
前記摺動材は、スリットを挟んで対向する複数の摺動片と、前記複数の摺動片を連結するブリッジとを備えている、請求項1から6のいずれか一項に記載の圧電モータ。
【請求項8】
前記ステータは、前記弾性体とは別の弾性体と、前記圧電素子とは別の圧電素子と、前記摺動材とは別の摺動材とをさらに有しており、
前記ロータは、前記基体部分とは別の基体部分と、前記皿バネ部分とは別の皿バネ部分とを含む別の環状部材と、前記固定部とは別の固定部とをさらに有しており、
前記別の皿バネ部分は、前記別の固定部に固定されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の圧電モータ。
【請求項9】
弾性体と、前記弾性体に貼り付けられた圧電素子及び摺動材とを有しているステータと、
前記摺動材と当接する基体部分と皿バネ部分とを有する環状部材と、前記環状部材が固定される固定部とを有するロータと、
前記ロータと共に回転するシャフトとを備え、
前記環状部材の前記皿バネ部分は、前記シャフトに固定された前記固定部に固定されており、
前記ロータの半径方向において、前記固定部の長さは、前記皿バネ部分の長さよりも長く、
前記ステータは、前記弾性体とは別の弾性体と、前記圧電素子とは別の圧電素子と、前記摺動材とは別の摺動材とをさらに有しており、
前記ロータは、前記基体部分とは別の基体部分と、前記皿バネ部分とは別の皿バネ部分とを含む別の環状部材をさらに有しており、
前記皿バネ部分は、前記固定部の一方側に固定されており、
前記別の皿バネ部分は、前記固定部の他方側に固定されている、圧電モータ。
【請求項10】
前記ロータには、前記皿バネ部分と、前記ロータと共に回転するシャフトとの間に環状溝が形成されている、請求項3に記載の圧電モータ。
【請求項11】
前記環状溝の底に対応する部分は、前記皿バネ部分の薄肉部よりも厚い、請求項10に記載の圧電モータ。
【請求項12】
薬液を注入するための注入機器であって、
請求項1から11のいずれか一項に記載の圧電モータと、
前記圧電モータによって駆動される駆動機構と、
前記圧電モータを制御する制御装置とを備える、注入機器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-05-25 
出願番号 P2020-137603
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (H02N)
P 1 651・ 121- YAA (H02N)
P 1 651・ 537- YAA (H02N)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 小川 恭司
特許庁審判官 長馬 望
柿崎 拓
登録日 2021-01-27 
登録番号 6829916
権利者 株式会社Piezo Sonic
発明の名称 圧電モータ及び注入機器  
代理人 小田原 敬一  
代理人 山本 晃司  
代理人 山本 晃司  
代理人 内田 浩輔  
代理人 内田 浩輔  
代理人 小田原 敬一  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ