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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B63H
管理番号 1387525
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-03-01 
確定日 2022-07-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第6931097号発明「エンジンのための燃料処理システムおよびシステムを使用する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6931097号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6931097号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし13に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)6月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2017年6月28日 欧州特許庁(EP))を国際出願日として特許出願され、令和3年8月16日に特許権の設定登録がされ、同年9月1日に特許掲載公報が発行された。
その後、請求項1ないし13に係る特許に対して、令和4年3月1日に、三菱化工機株式会社(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。

2 本件発明について
本件特許の請求項1ないし13に係る発明(以下、各請求項の項番号に合わせて、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明13」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
エンジンのための燃料処理システムであって、
− エンジンのための燃料油を洗浄するための、少なくとも第1および第2の遠心分離機と、
− 少なくとも第1および第2の可変フィードポンプであって、前記第1のフィードポンプは、洗浄すべき燃料油を前記第1の遠心分離機に供給するために配置され、前記第2のフィードポンプは、洗浄すべき燃料油を前記第2の遠心分離機に供給するために配置される、少なくとも第1および第2の可変フィードポンプと、
− 前記第1の遠心分離機の動作と、前記第1の分離機への洗浄すべき燃料油の流量を制御するための前記第1の可変フィードポンプの速度と、を制御するように構成される第1の分離機制御ユニットと、
− 前記第2の遠心分離機の動作と、前記第2の分離機への洗浄すべき燃料油の流量を制御するための前記第2の可変フィードポンプの速度と、を制御するように構成される第2の分離機制御ユニットと、
− 前記遠心分離機の下流に配置される前記燃料処理システム内のユニットから、または前記システムによって処理される燃料を使用するために配置されるエンジンから、情報を受け取り、受け取られた前記情報に基づいて、動作要求を前記分離機制御ユニットに送るように構成される、前記分離機制御ユニット以外のシステム制御ユニットと、
を備え、
前記システム制御ユニットは、前記遠心分離機の動作状態に関係する戻り情報を前記分離機制御ユニットから受け取るようにさらに構成されており、
前記戻り情報は、前記分離機の動作状態、前記分離機の最大容量、前記分離機の現在の処理量、分離機ロータの温度、および/または前記遠心分離機の各々の分離機フレームの振動、についての情報を含む、エンジンのための燃料処理システム。
【請求項2】
前記分離機制御ユニットへの前記動作要求は、前記可変フィードポンプを動作させる方法についての命令、および前記遠心分離機を動作させる方法についての命令、を含む、請求項1に記載の燃料処理システム。
【請求項3】
前記動作要求は、特定の分離機処理量を要求すること、前記遠心分離機の少なくとも1つの始動を要求すること、前記遠心分離機の少なくとも1つの停止を要求すること、および前記遠心分離機の少なくとも1つの放出を要求すること、から選択される少なくとも1つの要求を含む、請求項1または2に記載の燃料処理システム。
【請求項4】
前記遠心分離機の1つ以上の下流に配置される前記燃料処理システム内の少なくとも1つのユニットは、タンクを備え、前記遠心分離機の少なくとも1つによって処理された燃料が、前記タンクに送られる、請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料処理システム。
【請求項5】
前記分離機の下流に配置される前記燃料処理システム内の少なくとも1つのユニットは、エンジン内への噴射直前の温度、粘度、および/または流量の観点から、燃料の特性を高めるために配置される燃料コンディショニングモジュールを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料処理システム。
【請求項6】
前記システム制御ユニットは、前記遠心分離機の少なくとも1つの上流の前記燃料処理システム内の少なくとも1つのユニットから情報を受け取り、前記受け取られた情報に基づいて、前記分離機制御ユニットに動作要求を送るようにさらに構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の燃料処理システム。
【請求項7】
前記エンジンは、船の推進のために船上に位置する、請求項1から6のいずれか一項に記載の燃料処理システム。
【請求項8】
前記情報は、前記エンジンの燃料消費量であり、前記燃料消費量は、流量計を用いて測定される実際の燃料消費量であるか、または前記燃料消費量は、設定値に基づく想定される燃料消費量である、請求項1から7のいずれか一項に記載の燃料処理システム。
【請求項9】
− エンジンのための燃料処理システム、および洗浄すべき燃料油を用意するステップと、
− 少なくとも第1および第2の可変フィードポンプをそれぞれ使用して、少なくとも第1および第2の遠心分離機に洗浄すべき前記燃料油を供給するステップと、
− 前記燃料油を前記遠心分離機内で洗浄して、清浄な油相を提供するステップと、
− 少なくとも第1および第2の分離機制御ユニットをそれぞれ使用して、前記遠心分離機の動作と、前記可変フィードポンプの速度と、を制御するステップと、
− 前記分離機の下流の前記燃料処理システム内の少なくとも1つのユニットからの、または前記システムによって処理される燃料を使用するために配置されるエンジンからの情報をシステム制御ユニットに送るステップと、
− 前記システム制御ユニットを使用して受け取られた前記情報に基づいて、前記分離機制御ユニットに動作要求を送るステップと、
を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の燃料処理システムを使用して、エンジンのための燃料油を処理するための方法。
【請求項10】
前記分離機制御ユニットからの前記遠心分離機の動作状態に関係する戻り情報を、前記システム制御ユニットに送るステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記遠心分離機の上流の前記燃料処理システム内の少なくとも1つのユニットからの情報を送るステップをさらに含み、前記分離機制御ユニットへの前記動作要求は、前記受け取られた情報にさらに基づいている、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
ディーゼルエンジンのための燃料油を処理するためのプロセスを制御するための方法であって、
− 前記燃料油を洗浄するための少なくとも1つの分離機の下流にある燃料処理システム内の、少なくとも1つのユニットから情報を受け取るステップと、
− 受け取られた前記情報に基づいて少なくとも2つの分離機制御ユニットに動作要求を送るステップであって、前記動作要求は、洗浄すべき燃料油を少なくとも2つの遠心分離機に供給するために少なくとも2つの可変フィードポンプを動作させる方法についての命令、および前記遠心分離機を動作させる方法についての命令、を含む、ステップと、
− 前記遠心分離機の動作状態に関係する戻り情報を前記分離機制御ユニットから受け取るステップであって、前記戻り情報は、前記分離機の動作状態、前記分離機の最大容量、前記分離機の現在の処理量、分離機ロータの温度、および/または前記遠心分離機の各々の分離機フレームの振動、についての情報を含む、前記分離機制御ユニットから受け取るステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記分離機の上流の前記燃料処理システム内の少なくとも1つのユニットから情報を受け取るステップをさらに含み、前記分離機制御ユニットに送られる前記動作要求もまた、そのような受け取られた情報に基づいている、請求項12に記載の方法。」

3 異議申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証ないし甲第4号証を提出し、以下の異議申立理由(以下「異議申立理由」という。)によって、本件発明1ないし13に係る特許は取り消されるべきものである旨を主張している。
<異議申立理由>
1.特許法第29条第2項(同法第113条第2号)(進歩性)について
甲第1号証:特表2016−509075号公報
甲第2号証:阿部武夫,外2名,“油清浄機の運転環境変化への対応”,日本舶用機関学会誌,1993年6月、第28巻,第6号,p.376−386
甲第3号証:特表2017−509479号公報
甲第4号証:実願平2−112259号(実開平4−69664号)のマイクロフィルム

本件発明1、12及び13は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明2ないし4は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明5ないし11は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明1ないし13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
よって、本件特許は、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。

4 甲号証の記載事項について
(1)甲第1号証について
甲第1号証には、「重油燃料を処理するための方法」に関して、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下、同様である。)。

ア 「【請求項1】
特にディーゼルエンジン用の燃料として利用される重油を船上処理するための方法であって、
(a) 処理用の重油(OIL1)を供給するステップと、
(b) ステップ(a)により供給された前記処理用の重油(OIL1)が遠心分離機(7)に到達する前に、前記処理用の重油(OIL1)を98°Cを超える分離温度(T2)まで少なくとも断続的または継続的に加熱して、前記処理用の重油(OIL1)を少なくとも1つのポンプ(4)を用いて前記遠心分離機(7)の方に前方に送るステップと、
(c) 前記遠心分離機(7)の中でクリーンオイル相(OIL2)から水相(W)およびスラッジ相(S)を分離するステップとを備える
方法。」

イ 「【0001】
本発明は、燃料として使われる、特にディーゼルエンジン用の重油を船上処理するための方法に関する。」

ウ 「【0013】
すなわち、請求項1から10のいずれか一項に記載の有利な方法、または、ディーゼルエンジン用の燃料として利用される重油を船上処理するための方法であって、(a)処理用の重油(OIL1)を供給するステップと、(b)ステップ(a)により供給された処理用の重油(OIL1)が遠心分離機に到達する前に、処理用の重油(OIL1)を好ましくは98°Cを超える分離温度まで加熱して、処理用の重油(OIL1)を、特に少なくとも1つのポンプを用いて、遠心分離機の方に前方に送るステップと、(c)遠心分離機の中でクリーンオイル相(OIL2)から水相およびスラッジ相を分離するステップとを備える方法において、(d)入ってくる処理用の、特に加熱前の重油の触媒粒子含有率(CatFinesIN)が、センサデバイス(11)を用いて求められるステップと、(e)出ていく、浄化または処理されたクリーンオイルの触媒粒子含有率(CatFinesOUT)が、上記センサデバイスまたは第2のセンサデバイスを用いて求められるステップと、(f)ステップ(d)および/またはステップ(e)から求められた触媒粒子含有率が、閉ループ制御プロセスの処理変数として用いられ、求められた処理変数が、特に分離温度(T2)、および/または、ポンプのスループットにおける閉ループ制御に向けて閉ループ制御デバイスによって用いられるステップとのうちの1つまたは複数のステップをさらに有する方法が提供される。」

エ 「【0018】
図1のプラントでは、タンクHT1から(ここでは導管1に接続された弁2を有する)導管1を通って流れる、処理用の重油OIL1は、最初に、ふるいなどの土壌捕集器3によって粗い粒子が取り除かれることが好ましい。
【0019】
次に処理用の重油OIL1は、好ましくはポンプ4によって、タンクT1から出て、特に第1の熱交換器5Aである第1の加熱デバイスを通って流れる。
処理用の重油OIL1は、タンクT1の中では、たとえば40°Cから60°Cの開始温度T0を有している。
第1の加熱デバイスの中では、重油が、好ましくは95°C未満、とりわけ60°Cから80°Cである、開始温度に比べて高い第1の温度T1>T0まで加熱される。
【0020】
第1の温度T1まで加熱された重油は、特に第1の熱交換器5Aである第1の加熱デバイスを出ると、導管部分6を通り、好ましくは第2の熱交換器5Bである第2の加熱デバイスの中に流れ込む。
第2の加熱デバイスの中では、重油が、第1の上昇温度T1に比べてさらに高い第2の温度T2まで、少なくとも断続的または継続的に加熱される。
この温度T2は、98°C、好ましくは100°C、とりわけ105°C、好ましくはさらに110°Cより高い。
現在のところでは125°Cまでの分離温度が望ましいと考えられるが、特に好ましいのは、100°Cと115°Cとの間の範囲である。
これは、この範囲内であれば装置の複雑さを依然として効率的に調節することができ、また一方では触媒粒子の除去に関して特に良好な分離結果が得られるためである。
【0021】
第2の温度T2まで加熱された重油OIL1は、第2の熱交換器5Bを出ると、ここでは三相セパレータ7である少なくとも1つの遠心分離機の中に直接に流れ込む。
遠心分離機の中では、重油から土壌/水相Wが分離され、その土壌/水相Wは、放出口8を通って流れ去る。
また遠心分離機の中では、固形物相Sを取り除くために重油が浄化され、その固形物相Sは、放出口9を通じて除去される。固形物を取り除くための浄化と、オイル相からの水相の分離とは、直列に接続された2つの遠心分離機(浄化器と相セパレータ)で行われてもよい。
さらに図2によれば、セパレータ7にはプロセス用水の供給器Pが設けられている。」

オ 「【0023】
OIL2、または以降では同じ意味で「クリーンオイル」とも呼ばれる処理済みの重油相は、セパレータ7を出ると、さらなる使用に向けて放出口10を通って流れる。」

カ 「【0027】
入ってくる処理用の重油については、たとえば加熱前に、センサデバイス11を用いて、セパレータの中に入る処理用の未浄化オイルにおける触媒粒子含有率(Cat Fines IN)の測定を行うことが有利である。
触媒粒子含有率(Cat Fines IN)の測定は、外に出ていく、浄化または処理されたクリーンオイル、たとえば、セパレータの外に流れるクリーンオイルにおいて直接に、同じセンサデバイス11または第2のセンサデバイス12を用いて行われることも好ましい。
この場合には、たとえば、制限値を下まわる(特に10μm未満の)平均径を有する粒子の割合が求められてもよい。
これらの測定は、リアルタイムで直接に行われる必要はない。
その代わりに、(たとえば、それぞれ数時間の間隔で)サンプルをとり、次いでそれらのサンプルが、触媒粒子含有率に向けた、基本的には市販の好適なセンサシステムを用いて分析されてもよい。
【0028】
次いで、求められた測定値は、ここでは図示されていないコンピュータ装置に送られ、そのコンピュータ装置が、図1に示されているプラントを制御するための(閉ループ式の)制御デバイスとして利用されるとともに、特に分離温度T1における閉ループ制御、および/または、求められた処理変数を用いるポンプ4のスループットにおける閉ループ制御に用いられることが有利である。
閉ループ制御は、上記の通りに行われてもよく、あるいは任意選択で、触媒粒子含有率におけるオンラインの測定値を用いてリアルタイムで行われてもよい。」

キ 「【0030】
用いられる閉ループ制御の変数は、設置値を下まわって保たれることになる上記の触媒粒子含有率であってもよく、処理変数としての現在の内燃機関における燃料消費量であってもよく、かつ/または、クリーンオイルタンクにおける現在のレベルであってもよい。」

ク 「【0033】
このため、供給ポンプの速度を、好ましくは閉ループ制御のもとで簡単に変更し得るように、特に周波数コンバータである制御デバイスをポンプ4に割り当てることが有利である。
【0034】
このように、この処理方法におけるスループットは、以下の測定パラメータまたは処理変数のうちの1つまたは複数の関数として、閉ループ制御用に簡単に用いることができる。
(b) エンジンにおける現在の燃料消費量、
(c) クリーンオイルタンクにおける現在の燃料のレベル、
(d) 現在の触媒粒子含有率(クリーンオイル放出口における「cat粒子含有率」)。」

ケ 「【0037】
以下では、本発明の方法の機能の仕方を、船上で行われた実証試験の結果を参照してさらに詳しく説明する。
【0038】
この試験では、セパレータの中に流れ込む、入ってくる処理用の未浄化オイルの触媒粒子含有率(Cat Fines IN)と、セパレータの外に流れるクリーンオイルの触媒粒子含有率(cat fines OUT)との測定が、図2によるタイプのプラントが備えられた船の上で行われた。
【表1】



コ 「【0040】
図3は、特に有利な方法で互いと図2のプラントとに接続されたいくつかのタンクを有する、特に有利なタンク装置を示す。
図3では、理解しやすいように、図1の熱交換器と、さらなる細部とは示されていない。
【0041】
ここでは2つのセトリングタンク(settling tank)ST1、ST2と、2つのサービスタンク(service tank)ST3、ST4とが設けられており、これらのタンクの中にはクリーンオイルOIL2、または処理用の他の重油OIL1が必要に応じて導入され得る。
このため、導管10は、これらすべてのタンクST1〜ST4に分岐している。
【0042】
タンクST1〜ST4は、それぞれが少なくとも1つの放出口を有している。
これらの放出口は、弁V1〜V4によってそれぞれ望み通りに開くことができる。
また、すべての放出口は、図2の吸入口1の方に開く。
この装置は、特にフレキシブルな方法で管理することができ、様々な品質のオイルの貯蔵と、長期間タンクに貯蔵されていたオイルの前処理とに向けた選択肢を与え得る。
この前処理は、まずタンクからオイルを「循環」させ、次にオイルをたとえば98°Cまでの低温で「前処理」し、次でそのオイルを同じタンクに戻すことによって行われる。
【0043】
図4の動作例は、図3の動作例に実質的に対応しているが、オーバフローによる閉ループ型のポンプ制御システムが補われている。
このため、サービスタンクST3、ST4は、サービスタンクST1、ST2への少なくとも1つのオーバフロー導管201、202を有している。
【0044】
これらのオーバフロー導管201、202は、可能なすべての沈殿物をサービスタンクST1およびST2に再循環させることができるように、サービスタンクST3およびST4の下側の部分に配置されていることが好ましい。
【0045】
それぞれのオーバフロー導管の内部には、フローインジケータFICが接続されている。
これらのフローインジケータFICは、閉ループ制御デバイス203に接続されている。
閉ループ制御デバイス203は、ここではオーバフロー導管への流量を、唯一の処理変数、または複数の処理変数のうちの一つとして用いる。
また、閉ループ制御デバイス203は、それらの処理変数を有利に用い、ポンプ204の閉ループ制御において処理変数を考慮している。
【0046】
ポンプ104のスループットは、オーバフロー導管の内部に接続されたフローインジケータ203を介した閉ループ制御によって決定される。」

以上の記載事項及び図1、4から、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明1」という。)が記載されている。

〔甲1発明1〕
「ディーゼルエンジン用の燃料として利用される重油を船上処理するための方法であって、
処理用の重油OIL1を、少なくとも1つの供給ポンプを用いて少なくとも1つの遠心分離機の方に前方に送るステップと、
前記少なくとも1つの遠心分離機の中で重油OIL1を浄化するステップと、
閉ループ制御デバイス203により前記供給ポンプを閉ループ制御するステップと、
オーバフロー導管の内部に接続されたフローインジケータFICが前記閉ループ制御デバイス203に接続されるステップと、
前記閉ループ制御デバイス203が、オーバフロー導管への流量を、唯一の処理変数、または複数の処理変数のうちの一つとして用い、ポンプ204の閉ループ制御において処理変数を考慮するステップと、
を備える、
ディーゼルエンジン用の燃料として利用される重油を船上処理するための方法。」

また、甲1発明1の「ディーゼルエンジン用の燃料として利用される重油を船上処理するための方法」は、供給ポンプ、遠心分離機及び閉ループ制御デバイスを備えたシステムを用いて重油を船上処理するものであるから、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明2」という。)も記載されている。

〔甲1発明2〕
「ディーゼルエンジン用の燃料として利用される重油を船上処理するためのシステムであって、
処理用の重油OIL1を遠心分離機の方に前方に送る、少なくとも1つの供給ポンプと、
重油OIL1を浄化する、少なくとも1つの前記遠心分離機と、
前記供給ポンプを閉ループ制御する、閉ループ制御デバイス203と、
を備える、
ディーゼルエンジン用の燃料として利用される重油を船上処理するためのシステム。」

(2)甲第2号証について
甲第2号証には、「油清浄機の運転環境変化への対応」に関して、次の事項が記載されている。

ア 「3. 2 自動制御装置 近代化(省人数)船が増加する中で,油清浄機の自動化仕様の割合が益々進む傾向にある.
エクセレントシリーズでは,発表と同時にそれまでのリレー式の制御盤から,いわゆるソリッドステートタイプのプログラマブルコントローラ(図14参照)を標準採用することで,信頼性を向上させるとともに,運転モードの切り替えや,オプション警報の追加も容易となった.
また,油清浄機の警報の発生を減少させるため,最初の警報では,アラーム表示させないで,アラームを記憶させておき,一度スラッジ排出させた後,清浄運転を行ない,再度警報がでた場合にのみ外部出力する警報確認回路を標準採用した.
その後,保守作業面で従来使い慣れているリレー式の制御盤の要望もあり,現在では両方式で対応している.」

イ 「



ウ 「3. 3 油清浄機運転監視システム−MONIXシステム 現在,機関室の機器には種々の診断システムが開発されているが,図15に示すMONIXシステムは当社清浄機用に開発された運転監視システムである.
本システムでは,図16のように運転データをコンピュータのCRT画面に,表示,記録し,各データから運転状態を診断し不具合の早期処置が可能なシステムである.
運転中,油清浄機の振動を常時監視し,定期的に(1日1回程度)周波数分析を行い,分析結果をCRT画面に表示すると共に,処置方法を指示することができる.
船内乗組員の負荷を軽減しながら,スケジュールメンテナンスやプリベンティブメンテナンスの手助けとなるものである.
1985年に開発され,陸上発電所で機能確認を行い,その後,実船にも搭載されている.
MONIXシステムの特長としては,
・市販のパーソナルコンピュータ1台(NEC PC9800シリーズ)で,6台の清浄機の監視並びに振動診断が可能.
(監視項目はモータ電流,回転数,振動,温度処理量等)
・主要部品の運転時間管理
・警報時の処置方法の確認
・周波数分析により回転体バランスの良否,軸受の管理が出来るシステムである.」

エ 「



オ 「



(3)甲第3号証について
甲第3号証には、「遠心分離機の排出タイミング制御方法及び遠心分離機」に関して、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は請求項1の前提部分に従った遠心分離機の排出事象(discharge event)のタイミング制御方法に関する。本発明は、また遠心分離機に関係する。」

イ 「【0009】
図1は、異なる密度を持つ2つの液体の相互の分離及び/又は液体からスラッジ及び他の固形物の分離に使用される遠心分離機1の例を示す。遠心分離機1には、2つの主なタイプがある。1つは液体からの固形物及びスラッジの分離に使用されるクラリファイア分離機(clarifier separator)である。もう1つは、より軽い液体からより重い液体及び固形物・スラッジを分離するのに利用されるピュリファイア分離機(purifier separator)である。発電所エンジンにおいて、遠心分離機1は、燃料又は潤滑油から水及び/又はスラッジ及び他の固形物の分離に使用される。遠心分離機1は、上述のタイプのいずれであっても良い。」

ウ 「【0011】
分離機1は、注入口、すなわちボウル2へ分離される液体を導入するための固定された注入管8を有する。注入管8は、液体をボウル2へ注入するためのポンプ9を有する。ポンプ9の回転速度は、周波数変換器10によって調節される。ボウル2は、より軽い液体からより重い液体及び/又はスラッジ又は他の固形物が分離されるディスク間のディスクスタック13を備える。注入管8は、回転軸3と平行にボウル2の中心部分に位置し、その注入開口部は、回転軸3上にあり、それによって分離された液体は、ディスクスタック13の下に位置する分配器28の下にあるボウル2の下の部分に案内される。分離機1は、また、分離された、すなわちより軽い液体、すなわち低い密度を持つ液体をボウル2から排出するための排出口、すなわち固定された排出管11を有する。排出管11の開口部分は、ボウルの内側部分7に位置する。排出管11は、分離された、すなわちより軽い、分離機1から排出される液体の圧力を測定する圧力センサ12を備える。」

エ 「【0014】
ボウル2は、遠心分離機1の動作の間、回転軸3の回りを回転する。分離される液体は、注入管8を経由してボウル2にポンプ9を使って注入される。ボウル2に導入される液体の流量は、周波数変換器10によりポンプ9の回転速度を変化させて適合するように調整される。分離機1は、電気制御ユニット22を備え、電気制御ユニット22は、周波数変換器10の出力周波数を変化させ、すなわち、実際にはポンプ9の回転速度を分離される液体の目標とする利用のニーズに基づいて変化させる。ボウル2において、より重い液体、すなわちより重い密度の液体、及び/又はスラッジ及び他の固形物は、ボウル2の外側部分、すなわちスラッジ容積6に移動させられる。より軽い液体、すなわちより軽い密度の液体は、ディスクスタック13を介して、内側部分7に移動させられる。ピュリファイアタイプの分離機で、より重い液体は、いわゆる重力ディスク(図示せず)を経由して外側部分6から連続的に排出される。」

オ 「【0017】
置換液の注入管19は、置換液の圧力を測定する圧力センサ21を備える。センサ21は、置換液注入管19の置換液の流れの方向に閉バルブ20の前に位置する。電気制御ユニット22は、圧力センサ21からデータを受信するように配置されている。制御ユニット22は、また排出管圧力センサ12及び/又は他のセンサからのデータを受信することができる。制御ユニット22は、閉バルブ20及びポンプ9の回転速度を制御する。」

カ 「【図1】



(4)甲第4号証について
甲第4号証には、「燃料油供給装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「低質油を用いるエンジンの一つに舶用主機ディーゼルエンジンがあり、C重油などのスラッジを除去した後、エンジンに供給して燃焼するようにしている。
このため燃料油供給装置は、燃料油の清浄系と燃料供給系とで構成されており、第2図に示すように、燃料油の清浄系Aとして燃料油澄タンク1及び油清浄機2,3が設けられ、燃料油を燃料油澄タンク1に人れて12時間程度放置して固形分を沈降分離した後、油清浄機2,3に送って遠心分離によりスラッジを除去し、これを燃料油常用タンク4に一旦溜め、この燃料油常用タンク4から燃料供給ポンプ5及び圧力調整弁6を介して燃料供給系Bに送るようにしている。
この燃料供給系Bでは、清浄な燃料油を所定の圧力及び粘度に調整してエンジン7の各シリンダに設けられた燃料噴射ポンプ(図示せず)等で構成された燃料噴射系Cに燃料油を供給するようになっている。」(明細書第2頁第2ないし20行)

イ 「この燃料油供給装置10は、例えば低質油としてのC重油を用いる舶用主機ディーゼルエンジンに適用されるものであり、燃料油の清浄系Aと燃料供給系Bで構成されるが、燃料供給系B及び燃料噴射系Cについては、例えば第2図で説明した構成と同一で良く、その説明は省略する。
この燃料油供給装置10の燃料油の清浄系Aでは、燃料油澄タンク11を備えており、船底のタンク等から移送された燃料油が12時間程度放置されて固形分を沈降分離できるようになっている。
この燃料油澄タンク11には、ポンプ12,13及び加熱器14,15を介して2台併設された油清浄機16,17がそれぞれ接続されている。
2台の油消浄機16,17は交互に運転され、燃料油澄タンク11で固形分が分離された燃料油を送って遠心分離により燃料油中のスラッジを除去するようになっている。
これら油清浄機16,17の出口配管18には、スラッジが除去された燃料油を燃料供給系Bに直接供給することができるように供給配管19が連通されて燃料供給系Bと接続されている。」(明細書第5頁第11行ないし第6頁第11行)

ウ 「この非常用タンク23には、非常用の燃料供給ポンプ(非常用ポンプ)24及び圧力調整弁25を介して非常用配管26が接続され、さらに仕切弁27を介して供給配管19の仕切弁20の下流側に連通するようになっている。」(明細書第7頁第10ないし14行)

5 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明2との対比
本件発明1と甲1発明2とを対応すると、甲1発明2の「ディーゼルエンジン用の燃料として利用される重油を船上処理するためのシステム」は、本件発明1の「エンジンのための燃料処理システム」に相当する。
また、甲1発明2の「重油OIL1を浄化する、少なくとも1つの前記遠心分離機」は、本件発明1の「エンジンのための燃料油を洗浄するための、少なくとも第1および第2の遠心分離機」と、「エンジンのための燃料油を洗浄するための、少なくとも第1の遠心分離機」という限りにおいて一致する。
そして、甲1発明2の「供給ポンプ」について、甲第1号証の段落【0033】には供給ポンプの速度を変更し得ることが記載されているから、甲1発明2の「供給ポンプ」は、可変フィードポンプである。そうすると、甲1発明2の「処理用の重油OIL1を遠心分離機の方に前方に送る、少なくとも1つの供給ポンプ」は、本件発明1の「少なくとも第1の可変フィードポンプであって、前記第1のフィードポンプは、洗浄すべき燃料油を前記第1の遠心分離機に供給するために配置され、前記第2のフィードポンプは、洗浄すべき燃料油を前記第2の遠心分離機に供給するために配置される、少なくとも第1および第2の可変フィードポンプ」と、「少なくとも第1の可変フィードポンプであって、前記第1のフィードポンプは、洗浄すべき燃料油を前記第1の遠心分離機に供給するために配置される、少なくとも第1の可変フィードポンプ」という限りにおいて一致する。
さらに、甲1発明2の「前記供給ポンプを閉ループ制御する、閉ループ制御デバイス203」は、本件発明1の「前記第1の遠心分離機の動作と、前記第1の分離機への洗浄すべき燃料油の流量を制御するための前記第1の可変フィードポンプの速度と、を制御するように構成される第1の分離機制御ユニット」と、「前記第1の分離機への洗浄すべき燃料油の流量を制御するための前記第1の可変フィードポンプの速度を制御するように構成される第1の分離機制御ユニット」という限りにおいて一致する。

したがって、本件発明1と甲1発明2とは、
「エンジンのための燃料処理システムであって、
− エンジンのための燃料油を洗浄するための、少なくとも第1の遠心分離機と、
− 少なくとも第1の可変フィードポンプであって、前記第1のフィードポンプは、洗浄すべき燃料油を前記第1の遠心分離機に供給するために配置される、少なくとも第1の可変フィードポンプと、
− 前記第1の分離機への洗浄すべき燃料油の流量を制御するための前記第1の可変フィードポンプの速度を制御するように構成される第1の分離機制御ユニットと、
を備えた、
エンジンのための燃料処理システム。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1では、
「 − エンジンのための燃料油を洗浄するための、少なくとも第1および第2の遠心分離機と、
− 少なくとも第1および第2の可変フィードポンプであって、前記第1のフィードポンプは、洗浄すべき燃料油を前記第1の遠心分離機に供給するために配置され、前記第2のフィードポンプは、洗浄すべき燃料油を前記第2の遠心分離機に供給するために配置される、少なくとも第1および第2の可変フィードポンプと、
− 前記第1の遠心分離機の動作と、前記第1の分離機への洗浄すべき燃料油の流量を制御するための前記第1の可変フィードポンプの速度と、を制御するように構成される第1の分離機制御ユニットと、
− 前記第2の遠心分離機の動作と、前記第2の分離機への洗浄すべき燃料油の流量を制御するための前記第2の可変フィードポンプの速度と、を制御するように構成される第2の分離機制御ユニットと、」
を備えているのに対して、
甲1発明2では、
「処理用の重油OIL1を遠心分離機の方に前方に送る、少なくとも1つの供給ポンプと、
重油OIL1を浄化する、少なくとも1つの前記遠心分離機と、
前記供給ポンプを閉ループ制御する、閉ループ制御デバイス203と、」
を備えているものの、第2の遠心分離機、第2の可変フィードポンプ、及び、第2の分離機制御ユニットを備えているか不明な点。

<相違点2>
本件発明1では、
「 − 前記遠心分離機の下流に配置される前記燃料処理システム内のユニットから、または前記システムによって処理される燃料を使用するために配置されるエンジンから、情報を受け取り、受け取られた前記情報に基づいて、動作要求を前記分離機制御ユニットに送るように構成される、前記分離機制御ユニット以外のシステム制御ユニットと、
を備え、
前記システム制御ユニットは、前記遠心分離機の動作状態に関係する戻り情報を前記分離機制御ユニットから受け取るようにさらに構成されており、
前記戻り情報は、前記分離機の動作状態、前記分離機の最大容量、前記分離機の現在の処理量、分離機ロータの温度、および/または前記遠心分離機の各々の分離機フレームの振動、についての情報を含む、」
のに対して、甲1発明2では、そのような構成を備えていない点。

イ 相違点の検討
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
甲第1号証の明細書及び図面には、本件発明1の「システム制御ユニット」に相当する、閉ループ制御デバイス203に対して動作要求を送る制御ユニットの記載はない。また、4(1)カの段落【0028】に記載されているように、閉ループ制御デバイス203はプラントを制御するためのものであるから、閉ループ制御デバイス203に動作要求を送るための制御ユニットを新たに設ける動機を見出すこともできない。
また、甲第2号証には、油清浄機の自動制御装置としてプログラマブルコントローラが開示され、さらに油清浄機と接続するパーソナルコンピュータについても開示されているものの、4(2)ウに記載されたとおり、パーソナルコンピュータは監視ないし振動診断を行うものであるから、プログラマブルコントローラに対して動作要求を送る制御ユニットではない。つまり、甲第2号証には、本件発明1における「システム制御ユニット」を備えることについて明記されていない。
そして、甲第3号証及び甲第4号証においても、本件発明1の「システム制御ユニット」を設けることについて、開示ないし示唆されていない。
以上より、甲第1号証ないし甲第4号証には、本件発明1の「システム制御ユニット」に相当する制御ユニットの記載がないから、仮に甲1発明2に甲第2号証に記載された事項を組み合わせたとしても、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を備えることとはならない。加えて、甲1発明2において当該制御ユニットを設ける動機付けもない。そうすると、甲1発明2について、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明2及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

申立人は、申立ての根拠において、甲第1号証の段落【0028】等を根拠として、甲第1号証の「閉ループ制御デバイス203」が本件発明1の「第1および第2の分離機制御ユニット」に相当し、前者の「コンピュータ装置」が後者の「システム制御ユニット」に相当する旨主張している。
しかしながら、段落【0028】の「そのコンピュータ装置が、図1に示されているプラントを制御するための(閉ループ式の)制御デバイスとして利用されるとともに、特に分離温度T1における閉ループ制御、および/または、求められた処理変数を用いるポンプ4のスループットにおける閉ループ制御に用いられる」との記載からすれば、コンピュータ装置は閉ループ制御デバイスとして機能していると理解するのが相当であり、閉ループ制御デバイスとコンピュータ装置は異なるものと考える合理的な理由はないから、申立人の上記主張は当を得ないものである。
また、申立人は甲第2号証の「信号変換器パネル」が本件発明1の「分離機制御ユニット」に相当し、前者の「パーソナルコンピュータ」が後者の「システム制御ユニット」に相当する旨主張している。
しかしながら、甲第2号証の図15には、複数の油清浄機に対して1つのパーソナルコンピュータが信号変換器パネルを介して接続されている様子が示されているが、当該信号変換器パネルが油清浄機を制御することについては明記されておらず、また、信号変換器パネルは、センサの信号を変換するためのものであるから、甲第2号証の「信号変換器パネル」を本件発明1の「分離機制御ユニット」に相当するとする合理的な理由はない。また、甲第2号証の「パーソナルコンピュータ」は、監視並びに振動診断のためのものであって油清浄機から得た情報を表示しているに過ぎず、油清浄機や信号変換器パネルに対して動作要求を送ることも示されていないから、本件発明1の「システム制御ユニット」に相当するものではないことは、上述したとおりである。したがって、申立人の当該主張も当を得ない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2ないし11について
本件発明2ないし11と甲1発明2とを対比すると、少なくとも上記相違点2で相違するから、本件発明2ないし11は、前記(1)に示した理由と同様の理由により、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明12について
ア 本件発明12と甲1発明1との対比
本件発明12と甲1発明1とを対応すると、甲1発明1の「ディーゼルエンジン用の燃料として利用される重油を船上処理するための方法」は、供給ポンプや遠心分離機を用いた重油を船上処理するプロセスを制御するものであるから、本件発明12の「ディーゼルエンジンのための燃料油を処理するためのプロセスを制御するための方法」に相当する。
また、甲1発明1の「オーバフロー導管の内部に接続されたフローインジケータFICが前記閉ループ制御デバイス203に接続されるステップ」は、オーバフロー導管が遠心分離機の下流に配置されているものと言えるから、本件発明12の「前記燃料油を洗浄するための少なくとも1つの分離機の下流にある燃料処理システム内の、少なくとも1つのユニットから情報を受け取るステップ」に相当する。

したがって、本件発明12と甲1発明1とは、
「ディーゼルエンジンのための燃料油を処理するためのプロセスを制御するための方法であって、
− 前記燃料油を洗浄するための少なくとも1つの分離機の下流にある燃料処理システム内の、少なくとも1つのユニットから情報を受け取るステップと、
を含む、方法。」
という点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点3>
本件発明12では、
「受け取られた前記情報に基づいて少なくとも2つの分離機制御ユニットに動作要求を送るステップであって、前記動作要求は、洗浄すべき燃料油を少なくとも2つの遠心分離機に供給するために少なくとも2つの可変フィードポンプを動作させる方法についての命令、および前記遠心分離機を動作させる方法についての命令、を含む、ステップと、
− 前記遠心分離機の動作状態に関係する戻り情報を前記分離機制御ユニットから受け取るステップであって、前記戻り情報は、前記分離機の動作状態、前記分離機の最大容量、前記分離機の現在の処理量、分離機ロータの温度、および/または前記遠心分離機の各々の分離機フレームの振動、についての情報を含む、前記分離機制御ユニットから受け取るステップと、」
を含んでいるのに対して、
甲1発明1では、
「前記閉ループ制御デバイス203が、オーバフロー導管への流量を、唯一の処理変数、または複数の処理変数のうちの一つとして用い、ポンプ204の閉ループ制御において処理変数を考慮するステップ」
を含んでいる点。

イ 相違点の検討
上記相違点3について、本件発明12は受け取られた前記情報に基づいて少なくとも2つの分離機制御ユニットに動作要求を送るステップを含むものであるところ、前記(1)イで検討したのと同様に、甲第1号証ないし甲第4号証の記載を参酌しても、甲1発明1において、閉ループ制御デバイス203に動作要求を送るシステム制御ユニットを備えるようにすること、つまり、閉ループ制御デバイス203に動作要求を送るステップを含むようにすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明12は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明13について
本件発明13と甲1発明1とを対比すると、少なくとも上記相違点3で相違するから、本件発明13は、前記(3)に示した理由と同様の理由により、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)申立理由に対する判断の結論
以上で検討したとおりであるから、異議申立理由に理由はない。

6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-07-05 
出願番号 P2019-572589
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B63H)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 水野 治彦
特許庁審判官 沼生 泰伸
鈴木 充
登録日 2021-08-16 
登録番号 6931097
権利者 アルファ−ラヴァル・コーポレート・アーベー
発明の名称 エンジンのための燃料処理システムおよびシステムを使用する方法  
代理人 実広 信哉  
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所  
代理人 村山 靖彦  
代理人 阿部 達彦  

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