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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
管理番号 1387530
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-03-29 
確定日 2022-08-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第6945916号発明「樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6945916号の請求項1ないし16に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6945916号の請求項1ないし16に係る特許についての出願は、2019年(平成31年)3月19日を国際出願日(優先権主張 2018年3月28日、2019年3月14日、韓国(KR))とする特願2020−515118号であって、令和3年9月17日にその特許権の設定登録(請求項の数16)がされ、同年10月6日に特許掲載公報が発行された。
その後、この特許に対し、令和4年3月29日に申立人 中野 圭二(以下、「申立人」という。)は、特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし16)を行った。

第2 本件特許発明
特許第6945916号の請求項1ないし16の特許に係る発明は、それぞれ、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明16」といい、これらをあわせて「本件特許発明」という。)。
「【請求項1】
エステル系ポリオール樹脂含有主剤成分;ポリイソシアネート含有硬化剤成分;及びフィラーを含む二液型ウレタン系組成物であって、
前記エステル系ポリオール樹脂は、DSC(Differential Scanning calorimetry)分析で結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)が観察されない非結晶性ポリオールであるか溶融温度(Tm)が15℃未満であり、
前記ポリイソシアネートは、非芳香族ポリイソシアネートであることを特徴とする、二液型ウレタン系組成物。
【請求項2】
前記エステル系ポリオール樹脂と非芳香族ポリイソシアネートの混合物は、硬化後0℃未満のガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とする、請求項1に記載の二液型ウレタン系組成物。
【請求項3】
前記エステル系ポリオール樹脂及び非芳香族ポリイソシアネートは、それぞれ10,000cP未満の粘度を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の二液型ウレタン系組成物。
【請求項4】
前記エステル系ポリオール樹脂及び非芳香族ポリイソシアネートは、それぞれ2,000cP以下の粘度を有することを特徴とする、請求項3に記載の二液型ウレタン系組成物。
【請求項5】
前記エステル系ポリオール樹脂は、下記化学式1又は2で表示されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の二液型ウレタン系組成物。
【化1】


【化2】


ただし、前記化学式1及び2で、Xは、カルボン酸由来の単位であり、Yは、ポリオール由来の単位であり、nは、2〜10の範囲内の数であり、mは、1〜10の範囲内の数である。
【請求項6】
化学式1において、カルボン酸由来の単位Xは、フタル酸単位、イソフタル酸単位、テレフタル酸単位、トリメリット酸単位、テトラヒドロフタル酸単位、ヘキサヒドロフタル酸単位、テトラクロロフタル酸単位、シュウ酸単位、アジピン酸単位、アゼライン酸単位、セバシン酸単位、コハク酸単位、リンゴ酸単位、グルタル酸単位、マロン酸単位、ピメリン酸単位、スベリン酸単位、2,2−ジメチルコハク酸単位、3,3−ジメチルグルタル酸単位、2,2−ジメチルグルタル酸単位、マレイン酸単位、フマル酸単位、イタコン酸単位及び脂肪酸単位からなる群より選択された一つ以上の単位であることを特徴とする、請求項5に記載の二液型ウレタン系組成物。
【請求項7】
化学式1及び2において、前記ポリオール由来の単位Yは、エチレングリコール単位、プロピレングリコール単位、1,2−ブチレングリコール単位、2,3−ブチレングリコール単位、1,3−プロパンジオール単位、1,3−ブタンジオール単位、1,4−ブタンジオール単位、1,6−ヘキサンジオール単位、ネオペンチルグリコール単位、1,2−エチルへキシルジオール単位、1,5−ペンタンジオール単位、1,9−ノナンジオール単位、1,10−デカンジオール単位、1,3−シクロヘキサンジメタノール単位、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位、グリセリン単位及びトリメチロールプロパン単位からなる群より選択されるいずれか一つ又は2個以上の単位であることを特徴とする、請求項5に記載の二液型ウレタン系組成物。
【請求項8】
非芳香族ポリイソシアネートは、脂環族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートのカルボジイミド変性ポリイソシアネート又は脂環族ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネートであることを特徴とする、請求項1に記載の二液型ウレタン系組成物。
【請求項9】
前記フィラーは、アルミナ、AlN(aluminum nitride)、BN(boron nitride)、窒化ケイ素(silicon nitride)、SiC又はBeOを含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の二液型ウレタン系組成物。
【請求項10】
前記エステル系ポリオール樹脂及び非芳香族ポリイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して、50〜2,000重量部のフィラーを含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の二液型ウレタン系組成物。
【請求項11】
前記エステル系ポリオール樹脂及び非芳香族ポリイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して、100〜2,000重量部のフィラーを含むことを特徴とする、請求項9に記載の二液型ウレタン系組成物。
【請求項12】
硬化後に常温で測定された接着力(S1)が150gf/10mm以上であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の二液型ウレタン系組成物。
【請求項13】
硬化後に40〜100℃及び75%の相対湿度条件で10日間保管された後に測定された接着力(S2)の前記接着力(S1)に対する割合が70%以上であることを特徴とする、請求項12に記載の二液型ウレタン系組成物。
【請求項14】
上部板、下部板及び側壁を有し、前記上部板、下部板及び側壁により内部空間が形成されているモジュールケース;
前記モジュールケースの内部空間に存在する複数のバッテリセル;及び
請求項1から13のいずれか一項に規定の二液型ウレタン系組成物が硬化されて形成され、前記複数のバッテリセルと接触する樹脂層を含むことを特徴とする、バッテリモジュール。
【請求項15】
請求項14に規定のバッテリモジュールを一つ以上含むことを特徴とする、バッテリパック。
【請求項16】
請求項14に規定のバッテリモジュール又は請求項15に規定のバッテリパックを含むことを特徴とする、自動車。」

第3 申立理由の概要
1 特許異議申立理由の要旨
申立人が提出した特許異議申立書において主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
(1)申立理由1(サポート要件違反)
本件特許の請求項1ないし16についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
具体的理由は以下のとおり。
<主張ア>「本件明細書の比較例1では、エーテル系ポリオールであるPPG (溶融温度(Tm)=15 ℃未満)を主剤成分として100質量%含有する場合には本件特許発明の課題が解決できないことが実証されているので、上記実施例で使用したエステル系ポリオール樹脂を主剤成分として含有する場合であっても、例えば、当該比較例1のエーテル系ポリオールを主剤成分として50質量%以上含有する場合には、本件特許発明の課題を解決できるものであると当業者であっても本件明細書の記載から出願時の技術常識を参酌しても認識することができない。とりわけ、当該比較例1のエーテル系ポリオールを主剤成分として90質量%以上含有する場合(上記実施例で使用したエステル系ポリオール樹脂を主剤成分として10質量%以下含有する場合)には、本件特許発明の課題を解決できない蓋然性が高いと言わざるを得ない。」(特許異議申立書第13ページ下から第2行〜第14ページ第10行)
「したがって、上記の実施例で実証された実施態様以外の場合、例えば、主剤成分として上記エステル系ポリオール樹脂を50質量%未満含有する場合・・・においては、本件特許発明の課題を解決できない蓋然性が高い。」(特許異議申立書第14ページ第21〜24行)
<主張イ>「構造が異なれば同じ特性を示すとは限らないから、本件特許発明1の構成要件Bの「DSC (Differentia1 Scanning calorimetry)分析で結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)が観察されない非結晶性ポリオールであるか溶融温度(Tm)が15℃未満であり」を満たしてさえいれば、いかなる構造のエステル系ポリオール樹脂であっても、例えば、化学式2とはまったく構造が異なり、実施例でも何ら実証がなされていない本件特許発明5の化学式1で示されるエステル系ポリオール樹脂であっても、本件特許発明の課題を解決できるものであるとは当業者であっても本件明細書の記載から出願時の技術常識を参酌しても認識することができない。」(特許異議申立書第14ページ第11〜24行)
「したがって、上記の実施例で実証された実施態様以外の場合、例えば、・・・化学式2以外のエステル系ポリオール樹脂を使用した場合においては、本件特許発明の課題を解決できない蓋然性が高い。」(特許異議申立書第14ページ第21〜24行)
「なお、化学式2のエステル系ポリオール樹脂を使用した場合であっても、本件明細書の比較例3では、化学式2 (m=11、Y=1,4-ブタンジオール)のエステル系ポリオール樹脂(溶融温度(Tm)=20℃超過)を主剤成分として100質量%含有する場合には本件特許発明の課題が解決できないことが実証されているので、実施例1で使用した 化学式2 (m=約1〜3程度、Y=1,4-ブタンジオール)のエステル系ポリオール樹脂の溶融温度(Tm)が11℃であることをも鑑みれば、化学式2において少なくともm=10の場合には上記m=11の場合と近い値になると推認できるところ、溶融温度(Tm)が20℃超過と近い値、少なくとも15℃以上である蓋然性が高く、m=11の場合と同様に本件特許発明の課題が解決できないことが実証されているに等しい、少なくとも本件特許発明の課題を解決できない蓋然性が高いと言える(本件明細書の段落【0041】)。
したがって、化学式2(m=10、Y=1,4-ブタンジオール)のエステル系ポリオール樹脂は、本件明細書にサポートがあるとは言えない。」(特許異議申立書第14ページ下から第1行〜第15ページ第15行)

(2)申立理由2(甲第1号証を主引用例とする進歩性欠如)
本件特許発明1、5ないし9は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

2 証拠方法
申立人は、証拠として、以下の文献等を提出する。
・甲第1号証:国際公開2008/026513号
なお、甲第1号証を「甲1」という。

第4 当審の判断
当審は、申立人がした申立ての理由によっては、本件特許発明1ないし16に係る特許を取り消すことはできないと判断する。その理由は以下のとおりである。

1 申立理由1(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は、上記第2のとおりである。

(3)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明には次の記載がある。なお、下線については当審において付与した。
「【0006】
バッテリモジュールやバッテリパックを構成するためには、多様な締結部品や冷却装備などが要求されるが、このような締結部品又は冷却装備などは、バッテリモジュール又はバッテリパックの製造コストの上昇を誘発し、体積及び重量を増加させる。それによって、増加した体積及び重量対比バッテリモジュールやバッテリパックの出力も低下する問題がある。
【0007】
また、バッテリパックが自動車などに用いられる場合には、振動など外部衝撃にたくさん露出されるので、優れた耐久性が確保される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願の一つの目的は、上述した問題点を解決することができる樹脂組成物を提供することである。
【0009】
本出願の他の目的は、バッテリモジュールやバッテリパックに用いられる場合において、放熱性、接着力及び接着信頼性だけではなく工程性に優れた樹脂組成物を提供することである。
【0010】
本出願の他の目的は、バッテリモジュール及びバッテリパックを提供することである。
【0011】
本出願の前記目的及びその他の目的は、以下に詳しく説明する本出願により全て解決され得る。」
「【0013】
本出願で、前記組成物としては、ウレタン系組成物が用いられ得る。具体的に、本出願では、二液型ウレタン系組成物が用いられ得る。二液型ウレタンは、イソシアネート系化合物及びポリオール系化合物を混合して形成されるポリウレタンを意味することで、単一組成内にウレタン基を有する一液型ポリウレタンとは区別される。
【0014】
前記二液型ポリウレタンの場合、ポリオールなどを含む主剤とイソシアネートなどを含む硬化剤が常温で反応して硬化され得る。すなわち、本出願の組成物は、常温硬化型であってもよい。本出願で用語「常温」は、特に加温又は減温されない状態であって、約10℃〜30℃の範囲内のいずれか一つの温度、例えば、約15℃以上、約18℃以上、約20℃以上又は約23℃以上であり、約27℃以下の温度を意味することができる。前記硬化反応は、例えば、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL:dibutyltin dilaurate)のような触媒の助けを受けることができる。それによって、前記二液型ウレタン系組成物は、主剤成分(ポリオール)と硬化剤成分(イソシアネート)の物理的な混合物を含むことができ、そして/又は主剤成分と硬化剤成分の反応物(硬化物)を含むことができる。
【0015】
本出願の二液型ウレタン系組成物は、少なくともポリオール樹脂を含む主剤成分(又は主剤部)及び少なくともイソシアネートを含む硬化剤成分(又は硬化剤部)を含むことができる。それによって、前記樹脂組成物の硬化物は、前記ポリオール由来の単位と前記ポリイソシアネート由来の単位を全て含むことができる。このとき、前記ポリオール由来の単位は、ポリオールがポリイソシアネートとウレタン反応して形成される単位であり、ポリイソシアネート由来の単位は、ポリイソシアネートがポリオールとウレタン反応して形成される単位であってもよい。
【0016】
また、前記組成物は、フィラーを含むことができる。 例えば、工程上必要に応じて揺変性を確保するために、そして/又はバッテリモジュールやバッテリパック内で放熱性(熱伝導性)を確保するために、下記説明するように、本出願の組成物には、過量のフィラーが含まれ得る。具体的な内容は、下記と関連された説明で詳しく記述する。
【0017】
前記ウレタン系組成物に含まれるポリオール樹脂とイソシアネート成分は、硬化後に0℃未満のガラス転移温度(Tg)を有する。本出願で「硬化後のガラス転移温度」とは、常温及び30〜70%の相対湿度条件で24時間の硬化状態を基準で、FT−IR分析によって確認される2250cm−1近所でのNCOピーク基準転換率(conversion)が80%以上である硬化物に対して測定されたガラス転移温度であってもよい。
【0018】
前記ガラス転移温度範囲を満足する場合、バッテリモジュールやバッテリパックが用いられる低い温度でも脆い(brittle)特性を比較的短時間内に確保することができ、それによって、耐衝撃性や耐振動特性が保障され得る。一方、前記範囲を満足しない場合には、硬化物の粘着特性(tacky)が過度に高いか熱安定性が低下される可能性がある。一つの例示で、前記硬化後にウレタン系組成物が有するガラス転移温度の下限は、
−70℃以上、−60℃以上、−50℃以上、−40℃以上又は−30℃以上であってもよく、その上限は、−5℃以下、−10℃以下、−15℃以下又は−20℃以下であってもよい。」
「【0019】
一つの例示で、前記主剤成分に含まれるポリオール樹脂としては、エステル系ポリオール樹脂が用いられ得る。エステル系ポリオールを用いる場合、樹脂組成物の硬化後にバッテリモジュール内で優れた接着性と接着信頼性を確保するのに有利である。
【0020】
一つの例示で、前記エステル系ポリオールとしては、例えば、カルボン酸系ポリオールやカプロラクトン系ポリオールが用いられ得る。
【0021】
前記カルボン酸系ポリオールは、カルボン酸とポリオール(例:ジオール又はトリオールなど)を含む成分を反応させて形成することができ、カプロラクトン系ポリオールは、カプロラクトンとポリオール(例:ジオール又はトリオールなど)を含む成分を反応させて形成することができる。このとき、前記カルボン酸は、ジカルボン酸であってもよい。
【0022】
一つの例示で、前記ポリオールは、下記化学式1又は2で表示されるポリオールであってもよい。
【0023】
【化1】

【0024】
【化2】

【0025】
化学式1及び2で、Xは、カルボン酸由来の単位であり、Yは、ポリオール由来の単位である。ポリオール由来の単位は、例えば、トリオール単位又はジオール単位であってもよい。また、n及びmは、任意の数であってもよい。
【0026】
前記化学式で、カルボン酸由来の単位は、カルボン酸がポリオールと反応して形成された単位であり、ポリオール由来の単位は、ポリオールがカルボン酸又はカプロラクトンと反応して形成された単位である。
【0027】
すなわち、ポリオールのヒドロキシ基とカルボン酸のカルボキシル基が反応すると、縮合反応により水(H2O)分子が脱離しながらエステル結合が形成されるが、前記化学式1のXは、前記カルボン酸が前記縮合反応によってエステル結合を形成した後に前記エステル結合部分を除いた部分を意味する。また、Yは、前記縮合反応によってポリオールがエステル結合を形成した後にそのエステル結合を除いた部分である。前記エステル結合は、化学式1に表示されている。
【0028】
また、化学式2のYもポリオールがカプロラクトンとエステル結合を形成した後にそのエステル結合を除いた部分を示す。前記エステル結合は、化学式2に表示されている。
【0029】
一方、前記化学式でYのポリオール由来の単位がトリオール単位のように3個以上のヒドロキシ基を含むポリオールに由来した単位である場合、前記化学式構造でY部分には、分枝が形成された構造が具現され得る。
【0030】
前記化学式1で、Xのカルボン酸由来の単位の種類は特に制限されないが、目的とする物性の確保のために、フタル酸単位、イソフタル酸単位、テレフタル酸単位、トリメリット酸単位、テトラヒドロフタル酸単位、ヘキサヒドロフタル酸単位、テトラクロロフタル酸単位、シュウ酸単位、アジピン酸単位、アゼライン酸単位、セバシン酸単位、コハク酸単位、リンゴ酸単位、グルタル酸単位、マロン酸単位、ピメリン酸単位、スベリン酸単位、2,2−ジメチルコハク酸単位、3,3−ジメチルグルタル酸単位、2,2−ジメチルグルタル酸単位、マレイン酸単位、フマル酸単位、イタコン酸単位及び脂肪酸単位からなる群より選択されたいずれか一つの単位であってもよい。上述した範囲の低いガラス転移温度を考慮すると、芳香族カルボン酸由来の単位よりは脂肪族カルボン酸由来の単位が好ましい。
【0031】
一方、化学式1及び2で、Yのポリオール由来の単位の種類は特に制限されないが、目的とする物性の確保のために、エチレングリコール単位、ジエチレングリコール単位、プロピレングリコール単位、1,2−ブチレングリコール単位、2,3−ブチレングリコール単位、1,3−プロパンジオール単位、1,3−ブタンジオール単位、1,4−ブタンジオール単位、1,6−ヘキサンジオール単位、ネオペンチルグリコール単位、1,2−エチルへキシルジオール単位、1,5−ペンタンジオール単位、1,9−ノナンジオール単位、1,10−デカンジオール単位、1,3−シクロヘキサンジメタノール単位、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位、グリセリン単位及びトリメチロールプロパン単位からなる群より選択されるいずれか一つ以上であってもよい。
【0032】
一方、前記化学式1で、nは、任意の数であり、その範囲は、樹脂組成物又はその硬化物である樹脂層が目的とする物性を考慮して選択され得る。例えば、nは、約2〜10又は2〜5であってもよい。
【0033】
また、前記化学式2で、mは、任意の数であり、その範囲は、樹脂組成物又はその硬化物である樹脂層が目的とする物性を考慮して選択され得る。例えば、mは、約1〜10又は1〜5であってもよい。
【0034】
化学式1及び2で、nとmが前記範囲を脱すると、ポリオールの結晶性発現が強くなって組成物の注入工程性に悪影響を及ぼすことがある。
【0035】
前記ポリオールの分子量は、下記説明する低粘度特性や、耐久性又は接着性などを考慮して調節され得、例えば、約300〜2,000の範囲内であってもよい。特に異に規定しない限り、本明細書で「分子量」は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)を用いて測定した重量平均分子量(Mw)であってもよい。前記範囲を脱する場合、硬化後に樹脂層の信頼性が良くないか揮発成分と関連した問題が発生しうる。」
「【0036】
本出願で「ポリイソシアネート」とは、イソシアネート基を2以上含む化合物を意味することができる。
【0037】
本出願で、硬化剤成分に含まれるポリイソシアネートの種類は特に制限されないが、目的とする物性の確保のために芳香族基を含まない非芳香族イソシアネート化合物を用いることができる。すなわち、脂肪族又は脂環族系列を用いることが有利である。芳香族ポリイソシアネートを用いる場合、反応速度が過度に速く、硬化物のガラス転移温度が高くなる恐れがあるので、本出願の組成物の使用用途に適合な工程性と物性を確保しにくい場合がある。
【0038】
例えば、脂肪族又は脂肪族環状ポリイソシアネートやその変性物が用いられ得る。具体的に、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート又はテトラメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンジイソシアネート又はジシクロへキシルメタンジイソシアネートなどの脂肪族環状ポリイソシアネート;又は上記のうちいずれか一つ以上のカルボジイミド変性ポリイソシアネートやイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;などが用いられ得る。また、前記羅列された化合物のうち2個以上の混合物が用いられ得る。
【0039】
樹脂組成物内で前記ポリオール由来の樹脂成分とポリイソシアネート由来の樹脂成分の割合は、特に制限されず、これらの間のウレタン反応が可能になるように適切に調節され得る。」
「【0040】
上述したように、放熱性(熱伝導性)を確保するために又は工程上必要による揺変性の確保のために、過量のフィラーが組成物に含まれ得るが、過量のフィラーが用いられる場合、組成物の粘度が高くなってバッテリモジュールのケース内に前記組成物を注入するときの工程性が悪くなることがある。したがって、過量のフィラーを含むと共に、工程性に妨害にならないほどの十分な低粘度特性が必要である。また、単純に低粘度のみを示すと、やっぱり工程性の確保が困るので、適切な揺変性が要求され、硬化されながら優れた接着力を示し、硬化自体は常温で進行される必要がある。そして、エステル系ポリオールは、硬化後に接着性の確保には有利であるが、結晶性が強い方であるので、常温でワックス(wax)状態になる可能性が高く、粘度上昇によって適切な注入工程性の確保に不利な側面がある。たとえ、メルティング(melting)を通じて粘度を低めて用いる場合であっても、保存過程で自然的に発生する結晶性によりフィラーと混合した以後につながる組成物の注入又は塗布工程で結晶化による粘度上昇が発生し、結果的に工程性が低下され得る。このような点を考慮して、本出願で用いられるエステル系ポリオールは、下記特性を満足することができる。
【0041】
本出願で、前記エステル系ポリオールは、非結晶性であるか、充分に結晶性が低いポリオールであってもよい。上記で「非結晶性」とは、DSC(Differential Scanning calorimetry)分析で結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)が観察されない場合を意味する。このとき、前記DSC分析は、10℃/分の速度で−80〜60℃の範囲内で行うことができ、例えば、前記速度で25℃から50℃に昇温した後に−70℃に減温し、更に50℃に昇温する方式で行うことができる。また、上記で「充分に結晶性が低い」とは、DSC分析で観察される溶融点又は溶融温度(Tm)が15℃未満であって、約10℃以下、5℃以下、0℃以下、−5℃以下、−10℃以下又は約−20℃以下程度である場合を意味する。このとき、溶融点の下限は特に制限されないが、例えば、前記溶融点は、約−80℃以上、約−75℃以上又は約−70℃以上であってもよい。ポリオールが結晶性であるか前記溶融点の範囲を満足しない場合のように(常温)結晶性が強い場合には、温度による粘度差が大きくなりやすいので、フィラーと樹脂を混合する工程でフィラーの分散度と最終混合物の粘度に良くない影響を与えることがあり、工程性を低下し、その結果、バッテリモジュール用接着組成物に要求される耐寒性、耐熱性及び耐水性を満足しにくくなる。
【0042】
図1は、前記エステル系ポリオールの非結晶特性又は充分に結晶性が低い特性を判断する例示として、いくつかのポリオールに対するDSC分析結果を示したグラフである。本出願によると、試料#1は、非結晶性と判断でき、試料#2及び#3は、充分に結晶性が低いと判断できる。一方、溶融温度(Tm)が33.52℃である試料#4の場合には、結晶性が高いと言える。」
「【0057】
本出願の組成物は、硬化後に下記説明する用途に適合な物性を有する。本明細書で言及する物性のうち測定温度がその物性に影響を及ぼす場合、特に異に言及しない限り、その物性は常温で測定した物性であってもよい。また、物性と関連して「硬化後」という表現は、ガラス転移温度と関連して上述した内容と同一な意味で用いられ得る。
【0058】
一つの例示で、前記樹脂組成物は、硬化後に常温で所定の接着力(S1)を有する。具体的に、前記樹脂層は、約150gf/10mm以上、200gf/10mm以上、250gf/10mm以上、300gf/10mm以上、350gf/10mm以上又は400gf/10mm以上の接着力を有する。接着力が前記範囲を満足する場合、適切な耐衝撃性と耐振動性を確保することができる。前記樹脂層の接着力の上限は特に制限されず、例えば、約1,000gf/10mm以下、900gf/10mm以下、800gf/10mm以下、700gf/10mm以下、600gf/10mm以下又は500gf/10mm以下程度であってもよい。接着力が過度に高い場合には、硬化された組成物と付着されるパウチ部分が破れる危険がある。具体的に、自動車の走行中に事故によりバッテリモジュールの形態が変形される程度の衝撃が発生する場合、バッテリセルが硬化された樹脂層を通じて過度に強く付着されている場合、パウチが破れながらバッテリ内部の危険物質が露出されるか爆発しうる。前記接着力は、後述する実施例に開示された方法によってアルミニウムパウチに対して測定され得る。
【0059】
また一つの例示で、前記樹脂組成物の硬化後の接着力は、下記実施例で説明するように、高温/高湿下でも相当レベルに維持され得る。具体的に、本出願で、前記常温で測定された硬化後の接着力(S1)に対して、所定の条件で行われる高温/高湿の加速化テストを進行した後、同一な方法で測定された接着力(S2)が有する%割合[(S2/ S1)x 100]は、70%以上又は80%以上であってもよい。一つの例示で、前記高温/高湿加速化テストは、前記常温接着力を測定するために用いられる試片と同一な試片を、40〜100℃の温度及び75%RH以上の湿度条件で、10日間保管した後に測定され得る。前記接着力及び関係を満足する場合、バッテリモジュールの使用環境が変わっても優れた接着耐久性を維持することができる。
【0060】
一つの例示で、前記樹脂組成物は、硬化後に優れた耐熱性を有する。これと関連して、本出願の組成物は、フィラーを含まない状態で、樹脂成分のみの硬化物に対して測定された熱重量分析(TGA)を行うとき、5%の重量損失(5% weight loss)の温度が120℃以上であってもよい。また、本出願の組成物は、フィラーを含んだ状態で、樹脂組成物の硬化物に対して測定された熱重量分析(TGA)を行うとき、800℃の残量が70重量%以上であってもよい。前記800℃の残量は、他の例示で、約75重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上又は約90重量%以上であってもよい。前記800℃の残量は、他の例示で、約99重量%以下であってもよい。このとき、熱重量分析(TGA)は、60cm3/分の窒素(N2)雰囲気下で20℃/分の昇温速度で、25〜800℃の範囲で測定され得る。前記熱重量分析(TGA)と関連された耐熱特性は、樹脂及び/又はフィラーの種類やこれらの含量を調節することで確保できる。
【0061】
一つの例示で、前記樹脂組成物は、硬化後に優れた電気絶縁性を有する。下記説明するバッテリモジュールの構造で樹脂層が所定の電気絶縁性を示す場合、バッテリモジュールの性能が維持され、安定性が確保され得る。例えば、前記樹脂組成物の硬化物は、ASTM D149に準拠して測定した絶縁破壊電圧が約10kV/mm以上、15kV/mm以上又は20kV/mm以上であってもよい。前記絶縁破壊電圧は、その数値が高いほど樹脂層が優れた絶縁性を示すもので、特に制限されるものではないが、樹脂層の組成などを考慮すると、約50kV/mm以下、45kV/mm以下、40kV/mm以下、35kV/mm以下又は30kV/mm以下であってもよい。前記範囲の絶縁破壊電圧は、例えば、上述したフィラー及び樹脂成分の含量を調節して確保され得る。」
「【発明の効果】
【0113】
本出願は、バッテリセルをモジュールケース内で効果的に固定し、バッテリモジュールの放熱性と製造工程性を改善することができる組成物を提供する発明の効果を有する。また、本出願によると、耐寒性、耐熱性、絶縁性及び接着信頼性に優れた樹脂層を有するバッテリモジュール及びバッテリパックが提供される。それによって、体積対比出力に優れるだけでなく放熱特性及び耐久性が改善されたバッテリモジュール及びバッテリパックが提供され得る。」
「【発明を実施するための形態】
【0115】
以下、実施例及び比較例を通じて本出願のバッテリモジュールを説明する。しかし、本出願の範囲は下記提示された範囲によって制限されるものではない。
【0116】
評価方法
1.Tm(溶融点)に根拠した非結晶性
10℃/分(min)の昇温速度で、25℃→50℃→−70℃―>50℃順序に温度を変化させながら、実施例及び比較例で用いられたポリオール樹脂に対するTmをQ2000(TA instruments社)を用いたDSC分析を通じて測定した。
【0117】
2.接着力(S1)(単位:gf/10mm)
バッテリセルの製作に用いられるアルミニウムパウチを約10mmの幅で切断した。ガラス板上に実施例及び比較例でそれぞれ用いられた樹脂組成物をローディングし、その上に前記切断したアルミニウムパウチをそのパウチのPET(poly(ethylene terephthalate))面と前記樹脂組成物が接触するようにローディングした後、25℃及び50%RHの条件で、24時間の間樹脂組成物を硬化させた。その後、前記アルミニウムパウチを引張試験器(Texture analyzer)で180゜の剥離角度と300mm/minの剥離速度で剥離しながら接着力を測定した。
【0118】
3.接着信頼性
前記接着力の測定と同一に樹脂組成物が硬化された試片を製作し、85℃及び85%RHの条件で10日間保管した。以後、前記2番の項目と同一の方法で接着力(S2)を測定した。
【0119】
4.Tg(ガラス転移温度)
実施例及び比較例で用いられたものと同一の樹脂の混合物(フィラーを含まない)を24時間の間常温で硬化し、10℃/分の昇温速度で−75℃から50℃範囲に温度を変化しながら前記硬化物のTgをDSC分析で測定した。
【0120】
実施例及び比較例
<実施例1>
二液型ウレタン系組成物の製造
ポリオール:主剤組成物には、前記化学式2で表示されるカプロラクトン系ポリオールとして、繰り返し単位の数(化学式2のm)が約1〜3程度のレベルであり、ポリオール由来の単位(化学式2のY)としては、1,4−ブタンジオールを含むポリオールを含む樹脂(Brookfield LV type粘度計で測定するとき、約280cPの粘度を有する)を所定量用いた。
【0121】
イソシアネート:硬化剤組成物には、HDI(Hexamethylene diisocyanate)とHDI trimerの混合物(Brookfield LV type粘度計で測定するとき、170cPの粘度を有する)を用いた。このとき、NCO indexが約100になるようにイソシアネート化合物の使用量を調節した。
【0122】
フィラー:アルミナを用いた。その含量は、前記ポリオールとイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して1,000重量部の割合になるようにし、主剤成分及び硬化剤成分に前記アルミナを同量に分割配合した。
【0123】
触媒: ジブチル錫ジラウレート(DBTDL:dibutyltin dilaurate)を所定量用いた。
【0124】
物性測定結果
前記製造された組成物に対して、上述した方式で測定したガラス転移温度(Tg)は、0℃未満であった。そして、上述した方式で測定された溶融点(Tm)は、11℃であった。また、接着力(S1)は、449gf/10mmであり、接着力間の割合(S2/S1)は、70%以上であった。これから、実施例1の組成物は、過量のフィラーを含む場合にもバッテリモジュールに対する注入時に適切な工程性を提供することができ、硬化後には優れた接着性及び接着信頼性を有することが分かる。
【0125】
<実施例2>
二液型ウレタン系組成物の製造
ポリオール化学式2のY単位の形成時にネオペンチルグリコール(neopentyl glycol)を変更して用いたこと以外は(製造されたポリオールの粘度はBrookfield LV type粘度計で測定するとき、約300cPの粘度を有する)、実施例1と同一に組成物を製造した。
【0126】
物性測定結果
前記製造された組成物に対して、上述した方式で測定したガラス転移温度(Tg)は、0℃未満であった。上記用いられたポリオールは、結晶性が弱くて(非結晶性)DSC上で結晶化温度(Tc)及び溶融温度(Tm)が測定されなかった。また、接着力(S1)は、467gf/10mmであり、接着力間の割合(S2/S1)は、70%以上であった。これから、実施例2の組成物は、過量のフィラーを含む場合にもバッテリモジュールに対する注入時に適切な工程性を提供することができ、硬化後には優れた接着性及び接着信頼性を有することが分かる。
【0127】
<比較例1>
二液型ウレタン系組成物の製造
主剤成分に用いられる樹脂として、エーテル系ポリオールであるPPG(水酸基が360mgKOH/g)を用いたこと以外は、実施例1と同一に組成物を製造した。
【0128】
物性測定結果
前記製造された組成物に対して、上述した方式で測定したガラス転移温度は、0℃未満であり、溶融点は、15℃未満で観察された。また、接着力(S1)は、116gf/10mmであり、接着力間の割合(S2/S1)は、70%以上であった。これから、本願の構成のうちエステル系ポリオールを有しない比較例1の組成物は、バッテリモジュールにおいてバッテリセルをケースに接着させるために必要な十分な接着力を提供できない点が分かる。
【0129】
<比較例2>
二液型ウレタン系組成物の製造
硬化剤成分に芳香族ジイソシアネートであるメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI、Methylene Diphenyl Diisocyanate)を用いたこと以外は、実施例1と同一に組成物を製造した。
【0130】
物性測定結果
前記製造された組成物に対して、上述した方式で測定したガラス転移温度(Tg)は、0℃超過であり、溶融点(Tm)は、15℃以下であった。また、接着力(S1)は、666gf/10mmであり、接着力間の割合(S2/S1)は、70%以上であった。これから、芳香族イソシアネートを硬化成分で用いる比較例2の組成物は、硬化速度が速くて注入工程性と保存安定性が良くなく、その硬化物が高いガラス転移温度を有するので、低温での耐衝撃特性や耐振動特性などが要求されるバッテリモジュール用素材として不適合であることが分かる。
【0131】
<比較例3>
二液型ウレタン系組成物の製造
主剤成分で化学式2の繰り返し単位mが11であること以外は、実施例1と同一に組成物を製造した。
【0132】
物性測定結果
前記製造された組成物に対して、上述した方式で測定したガラス転移温度(Tg)は、0℃以下であり、溶融点(Tm)は、20℃を超過した。また、接着力(S1)は、467gf/10mmであり、接着力間の割合(S2/S1)は、70%以上であった。これから、本願で要求される十分に低い結晶性を有しないポリオールを用いた比較例3の組成物は、常温での結晶性によりバッテリモジュール内で接着剤で用いられる組成物に対する注入工程性が良くないことが分かる。」

(4) サポート要件の判断
ア 本件特許発明の課題
本件特許発明の解決しようとする課題は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0006】ないし【0010】等より見て、主として、「バッテリモジュールやバッテリパックに用いられる場合において、放熱性、接着力及び接着信頼性だけではなく工程性に優れた樹脂組成物を提供すること」である。

イ 検討
(ア)発明の詳細な説明について
まず、本件特許発明1に係る二液型ウレタン系組成物の「エステル系ポリオール樹脂含有主剤成分」について見てみるに、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0019】に、「一つの例示で、前記主剤成分に含まれるポリオール樹脂としては、エステル系ポリオール樹脂が用いられ得る。エステル系ポリオールを用いる場合、樹脂組成物の硬化後にバッテリモジュール内で優れた接着性と接着信頼性を確保するのに有利である。」と記載され、主剤成分として、エステル系ポリオール樹脂を用いることにより、樹脂組成物の硬化後にバッテリ、モジュール内で優れた接着性と接着信頼性を確保することが有利である旨が示されている。
そして、同段落【0040】及び【0041】に、「・・・エステル系ポリオールは、硬化後に接着性の確保には有利であるが、結晶性が強い方であるので、常温でワックス(wax)状態になる可能性が高く、粘度上昇によって適切な注入工程性の確保に不利な側面がある。・・・このような点を考慮して、本出願で用いられるエステル系ポリオールは、下記特性を満足することができる。
本出願で、前記エステル系ポリオールは、非結晶性であるか、充分に結晶性が低いポリオールであってもよい。・・・上記で「充分に結晶性が低い」とは、DSC分析で観察される溶融点又は溶融温度(Tm)が15℃未満であって・・・ポリオールが結晶性であるか前記溶融点の範囲を満足しない場合のように(常温)結晶性が強い場合には、温度による粘度差が大きくなりやすいので、フィラーと樹脂を混合する工程でフィラーの分散度と最終混合物の粘度に良くない影響を与えることがあり、工程性を低下し、その結果、バッテリモジュール用接着組成物に要求される耐寒性、耐熱性及び耐水性を満足しにくくなる。」と記載されていることから、エステル系ポリオール樹脂が、DSC分析で結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)が観察されない非結晶性ポリオールであるか溶融温度(Tm)が15℃未満であることにより、工程性と物性を確保し易くなる旨が示されている。
ついで、本件特許発明1に係る二液型ウレタン系組成物の「ポリイソシアネート含有硬化剤成分」について見てみるに、本件特許明細書の段落【0037】には、「本出願で、硬化剤成分に含まれるポリイソシアネートの種類は特に制限されないが、目的とする物性の確保のために芳香族基を含まない非芳香族イソシアネート化合物を用いることができる。すなわち、脂肪族又は脂環族系列を用いることが有利である。芳香族ポリイソシアネートを用いる場合、反応速度が過度に速く、硬化物のガラス転移温度が高くなる恐れがあるので、本出願の組成物の使用用途に適合な工程性と物性を確保しにくい場合がある。」と記載されていることから、硬化剤成分として、「非芳香族ポリイソシアネート」を用いることにより、工程性と物性を確保し易くなる旨が示されている。

(イ)実施例について
本件特許明細書の実施例について見てみるに、実施例1は、主剤として化学式2で表示されるエステル系ポリオール(繰り返し単位の数(化学式2のm)が約1〜3程度のレベルであり、ポリオール由来の単位(化学式2のY)としては、1,4−ブタンジオールを含む)で、溶融点(Tm)が11℃と15℃未満であるものと、硬化剤成分として、HDI(Hexamethylene diisocyanate)とHDI trimer、フィラーとしてアルミナを用いた組成物であって、その物性測定結果が、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満、接着力(S1)が449gf/10mmであり、接着力間の割合(S2/S1)が70%以上であることが記載されている。また、実施例2は、エステル系ポリオールの化学式2のY単位をネオペンチルグリコール(neopentylglycol)に変更(当該ポリオールは、結晶性が弱くて(非結晶性)DSC上で結晶化温度(Tc)及び溶融温度(Tm)が測定されなかった。)して用いたこと以外は、実施例1と同様に製造した組成物であって、その物性測定結果が、Tgが0℃未満、S1が467gf/10mmであり、S2/S1が70%以上であることが記載されている。
そうすると、実施例1及び2の組成物は、過量のフィラーを含む場合にもバッテリモジュールに対する注入時に適切な工程性を提供することができ、硬化後には優れた接着性及び接着信頼性を有することが理解できる。
これに対し、主剤成分に用いられる樹脂として、エーテル系ポリオールであるPPG(水酸基が360mgKOH/g)を用いたこと以外は実施例1と同一に組成物を製造した比較例1は、S1が116gf/10mmと接着力が実施例1に比して低くなっていることから、エステル系ポリオールではない、エーテル系ポリオールを使用した場合、バッテリモジュールにおいてバッテリセルをケースに接着させるために必要な十分な接着力を提供できないことが理解できる。
また、硬化剤成分として、芳香族ジイソシアネートであるメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI、Methylene Diphenyl Diisocyanate)を用いたこと以外は実施例1と同一に組成物を製造した比較例2は、硬化速度が速くて注入工程性や保存安定性が良くないことが示されている。
さらに、主剤成分で化学式2の繰り返し単位mが11であること以外は実施例1と同一に組成物を製造した比較例3は、エステル系ポリオールのTmが20℃を超過しており、注入工程性が良くないことが示されている。
そうすると、実施例・比較例の対比から、ポリオール樹脂含有主剤成分が、「DSC(Differential Scanning calorimetry)分析で結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)が観察されない非結晶性ポリオールであるか溶融温度(Tm)が15℃未満である、ポリエステル系」、ポリイソシアネート含有硬化剤成分が、「非芳香族ポリイソシアネート」であることにより、過量のフィラーを含む場合にもバッテリモジュールに対する注入時に適切な工程性を提供することができ、硬化後には優れた接着性及び接着信頼性を確保できることが理解でき、当該結果は、上記(ア)の発明の詳細な説明の記載を裏付けるものとなっている。

(ウ)まとめ
上記(ア)及び(イ)の検討をふまえると、当業者は、「エステル系ポリオール樹脂含有主剤成分;ポリイソシアネート含有硬化剤成分;及びフィラーを含む二液型ウレタン系組成物」において、「前記エステル系ポリオール樹脂は、DSC(Differential Scanning calorimetry)分析で結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)が観察されない非結晶性ポリオールであるか溶融温度(Tm)が15℃未満であり、前記ポリイソシアネートは、非芳香族ポリイソシアネート」である特定事項により、本件特許発明の課題を解決できると認識するものである。
そして、本件件特許発明1は、上記特定事項を有するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できるものである。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
また、本件特許発明1を引用する本件特許発明2ないし16についても同様である。

(5)申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、上記<主張ア>及び<主張イ>の主張をしているので、以下検討する。
<主張ア>について
上記(4)のアで示したように、本件特許発明の解決しようとする課題は、主として、「バッテリモジュールやバッテリパックに用いられる場合において、放熱性、接着力及び接着信頼性だけではなく工程性に優れた樹脂組成物を提供すること」と、あくまで定性的なものであって、具体的な数値目標を求めるものではない。
そして、本件特許発明1の発明特定事項を満たすポリエステルポリオールを用いた実施例1のものは、接着力(S1)が449gf/10mmであり、同様に実施例2のものは467gf/10mmと接着力が強いのであるから、主剤成分として、例えば、実施例2のポリエステル系ポリオールを50質量%、比較例1のエーテル系ポリオールを50質量%含有するものは、比較例1のエーテル系ポリオールを100質量%のものよりも接着力は向上することは明らかであることから、本件特許発明の課題は解決できるものである。
よって、申立人の主張する<主張ア>は首肯することができない。

<主張イ>について
申立人の主張するように、化学構造が異なることにより、同じ特性を示すかは定かでないものの、本件特許発明1のポリエステルポリオールは、「DSC(Differential Scanning calorimetry)分析で結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)が観察されない非結晶性ポリオールであるか溶融温度(Tm)が15℃未満」という「特性」により特定されるものであり、上記(4)で示したように、当該特性を有するポリオール樹脂含有主剤成分により、過量のフィラーを含む場合にもバッテリモジュールに対する注入時に適切な工程性を提供することができ、硬化後には優れた接着性及び接着信頼性を有することが、実施例でも確認されている。
そして、申立人は、化学式2(m=10、Y=1,4-ブタンジオール)のエステル系ポリオール樹脂の融点が15℃以上になる蓋然性が高いことを主張するものの、融点が15℃以上であれば本件特許発明1の範囲外であるし、また、申立人は実験成績証明書等の具体的な証拠をもって、特定の化学構造のものが融点が15℃以上となることを主張するものではない。
よって、申立人の主張する<主張イ>も首肯することができない。

(6)申立理由1についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし16に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、申立理由1によっては取り消すことはできない。

2 申立理由2(甲1を主引用例とする進歩性欠如)について
(1)証拠等の記載等
ア 甲1の記載事項等
(ア)甲1の記載事項
甲1には、「反応性ホットメルト組成物及びそれを用いた成形品」について、以下の記載がされている。なお、下線については当審において付与した。
「[0001] 本発明は、成形サイクルを短縮化でき、かつ金属等との接着性に優れた反応性ホットメルト組成物、及びそれを用いた成形品に関する。
背景技術
[0002] 近年、ホットメルト材料を金型内に射出して成形品を得る、いわゆるホットメルトモー ルディングと呼ばれる成形法が、電気'電子部品の封止用途等に採用されている。ホットメルトモールディング用の成形材料としては、ポリアミド樹脂(特許文献1参照)やポリエステル樹脂(特許文献2参照)等が知られているが、これらの材料は熱可塑性の材料であり、成形品の耐熱性や力学的特性に乏しい等の問題があった。
[0003] 一方、ホットメルト材料の中で、分子末端にイソシアネート又はシランを持ち、製造 工程後に空気中の水分と反応することにより高分子量化及び架橋する反応性ホットメルト材料がある。反応性ホットメルト材料は比較的低分子量の材料であり、ポリアミド、 ポリエステル等の非反応性材料と比べると溶融温度が低く、流動性に優れ、かつ吸湿硬化後には高い力学特性と耐熱性を得ることが可能である。
・・・略・・・
発明の開示
[0005] 本発明は、金型内で素早く固化し、成形サイクルを短縮化でき、かつアルミニウム等の金属等との接着性に優れた反応性ホットメルト組成物、及びそれを用いた成形品を提供することを課題とする。
本発明者は、反応性ホットメルト組成物の結晶化特性を検討した結果、結晶性ポリエステルポリオールと非晶性ポリエステルポリオールを含み、特定の結晶化速度と結晶化熱を有するものを用いることにより、また、特定割合の結晶性ポリエステルポリオールと非晶性ポリエステルポリオールを含むポリオールに対して、結晶核剤を特定量添加することにより、上記課題を解決しうることを見出した。」
「[0007] 本発明の反応性ホットメルト組成物は、(1)結晶性ポリエステルポリオール(A)及び 非晶性ポリエステルポリオール(B)を含む組成物とポリイソシアネート(F)とを反応させてなり、示差熱分析法により溶融温度から50℃まで500℃/minの降温速度で冷却し、その後 50℃で保持する温度条件において、半結晶化時間が150秒以下であり、かつ結晶化熱が30〜90J/gであること、及び
(2)結晶性ポリエステルポリオール(A)30〜95質量%及び非晶性ポリエステルポリオール(B)5〜70質量%を含むポリオール100質量部に対して、結晶核剤(E)0.05〜5質量部を添加してなる組成物と、ポリイソシアネート(F)とを反応させてなること、を特徴とする。
本発明の反応性ホットメルト組成物は、ウレタン系反応性ホットメルト組成物であり、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート基を末端に有するオリゴマーである。本組成物を金型内に射出し、冷却固化すれば成形品を得ることができるが、この際、電機・電子部品等を金型内に設置すれば、それらと一体化した成形品を得ることができる。金型から取り出された成形品は、その後、大気中の湿気を吸収し、イソシアネート基が水分と反応することによって、高分子量化及び架橋し、優れた力学的性質、耐熱性、接着性を有するものとなる。」
「[0012]〔非晶性ポリエステルポリオール(B)〕
非晶性ポリエステルポリオール(B)としては、芳香族ポリカルボン酸と脂肪族ポリオールを主成分として重縮合して製造されるポリエステルポリオールが好ましい。
芳香族ポリカルボン酸としては、炭素数8〜20の芳香族ポリカルボン酸が好ましく、具体的には、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフエニルジカルボン酸が挙げられる。芳香族ポリカルボン酸は、そのポリアルキルエステル、ポリアリールエステルや酸無水物という誘導体の形で使用してもよい。好ましくは、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸、及びこれらのジアルキルエステル化合物やジアリールエステル化合物及びフタル酸無水物である。
なお、ポリアルキルエステルのアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜8、特に炭素数1〜5の脂肪族飽和炭化水素基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基,プロピル基、ブチル基等が挙げられる。ポリアリールエステルのアリール基としては、 炭素数が 6〜12個の芳香族炭化水素基が好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、クロ口フェニル基等が挙げられる。
脂肪族ポリオールとしては、好ましくは炭素数 2〜12、特に炭素数 2〜8の脂肪族ジ オールが好ましく、その具体例は前記と同様である。好適例としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−へキサンジオールが挙げられる。
[0013] 非晶性ポリエステルポリオール(B)は、芳香族ポリカルボン酸の使用モル数が全ポリカルボン酸のモル数の 50モル%以上、好ましくは60モル%以上、更に好ましくは70モル%以上を占めることが好ましく、他のジカルボン酸として脂肪族ポリカルボン酸を含有することができる。
脂肪族ポリカルボン酸としては、好ましくは炭素数 4〜12、特に炭素数 4〜8のカルボン酸が好ましく、具体的にはアジピン酸が特に好ましい。より具体的には、芳香族ポリカルボン酸としてフタル酸とアジピン酸の組み合わせ、対応する脂肪族ポリオールとしてエチレングリコールとネオペンチルグリコールの組み合わせが好ましい。上記の芳香族ポリカルボン酸及び脂肪族ポリオールは、単独で又は2種以上を混合して使用することができる。」
「[0020]〔結晶核剤(Ε)〕
本発明の結晶核剤(Ε)としては、無機系結晶核剤及び有機系結晶核剤が使用できる。
無機系結晶核剤の具体例としては、カーボンブラック、グラファイト、タルク、力オリナイト、モンモリロナイト、合成マイ力、クレー、ゼオライト、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン、硫化カルシウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、 酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、フェニルホスホネートの金属塩等が挙げられる。
これら無機系結晶核剤の中では、結晶化促進の観点から、カーボンブラック、ダラファイトが好ましく、カーボンブラックがより好ましく、カーボンブラックマスターバッチが特に好ましい。」
「[0024]〔ポリイソシアネート(F)〕
ポリイソシアネート(F)としては、公知の芳香族、脂肪族及び脂環族のジイソシアネートや高官能性又は高分子ポリイソシアネートを用いることができる。具体的には、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4'−ジベンジルジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、 1,3−フェ二レンジイソシアネート、1,4 −フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1, 4−ジイソシアネート、へキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルへキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルへキサメチレンジイソシアネート、シクロへキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、」イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタン−4, 4'−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロへキサン、メチルシクロへキサンジイソシアネート等が挙げられる。
これらの中では、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが好ましい。」
「[0027]〔成形品〕
本発明で得られる反応性ホットメルト組成物は、アルミニウム、銅、マグネシウム等、特にアルミニウム等の金属等との優れた接着性を有しており、かつ金型内で短時間 に冷却固化して成形品が得られる特徴をもつため、連続作業で他部品との接着加工や封止作業等を兼ねる成形加工に好適に使用できる。例えば、金属工業、樹脂加工工業、自動車製造工業、電気・電子部品製造工業、半導体部品製造工業等の分野の成形品の製造に好適である。
より具体的には、半導体封止製品;コンピューター、ビデオ、カメラ、ゲーム機、テレビ、ラジオや携帯電話部品等の回路板、素子、スィッチ、配線、プラグコネクター;表示装置;電池を挿入し反応性ホットメルト組成物で封止し、一体化させた電気・電子部品等が挙げられる。
また、本発明で得られる反応性ホットメルト組成物は、部品の挿入物や接着、封止を行わずに、反応性ホットメルト組成物のみを用いて成形品を作製することもできる。」
「実施例
[0029] 以下、本発明の実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例及び比較例で使用した結晶性ポリエステルポリオール(A)、非晶性ポリエステルポリオール(B)、ポリカーボネートジオール(C)、及びポリエーテルポリオール(D)の数平均分子量、融点、結晶化温度、半結晶化時間、及び結晶化熱(ΔΗ)の測定結果を表1に示す。
[0030] 表1中の記号の詳細は下記のとおりである。
結晶性PEPO:結晶性ポリエステルポリオール(A)
・A−1;ΕΤ3010:宇部興産株式会社製、 ETERNACOLL3010[ドデカン二酸/1,6−へキサンジオール系ポリエステルジオール]、数平均分子量3500
・Α−2;ΕΤ3040:宇部興産株式会社製、 ETERNACOLL3040[ドデカン二酸/エチレングリコール系ポリエステルジオール]、数平均分子量3500
・Α−3;ΕΤ3030:宇部興産株式会社製、 ETERNACOLL3030[アジピン酸/1,6 −へキサンジオール系ポリエステルジオール]、数平均分子量3500
・Α−4;テレフタル酸/ドデカン二酸(60/40)−1,6−へキサンジオール系ポリエステルジオール]、数平均分子量5000
アモルファスPEPO:非晶性ポリエステルポリオール(B)
・B−1;ΕΤ5011:宇部興産株式会社製、ETERNACOLL5011[エチレングリコール/ネオペンチルダリコール−アジピン酸/フタル酸系ポリエステルポリオール]、平均分子量2500
・B−2;ΕΤ5010:宇部興産株式会社製、 ETERNACOLL5010 [エチレングリコール/ネオペンチルダリコール−アジピン酸/フタル酸系ポリエステルポリオール]、数平均分子量2000
PCD:ポリカーボネートジオール(C)
・C−1;UH−100:宇部興産株式会社製、UH−CARB100[1,6−へキサンジオール/ジメチルカーボネート系ポリカーボネートジオール]、平均分子量1000
・C−2;UX−2:宇部興産株式会社製、 UX−2[1,3−プロパンジオールのエチレンオキサイド付加物(付加比率1,3−プロパンジオール/エチレンオキサイド(mol比): 1/1.27)/ジメチルカーボネート系ポリカーボネートジオール]、数平均分子量2000
ポリエーテルポリオール(D)
・D−1;PTMG:和光純薬工業株式会社製、ポリテトラメチレングリコール、平均分子量1000
・D−2;PPG:和光純薬工業株式会社製、ポリプロピレングリコール[ジオール型]、平均分子量 1000
[0031] 表1中の物性測定法は下記のとおりである。
(1)数平均分子量
ポリオールの水酸基価を JIS K1557に準拠して測定し、この水酸基価から数平均分子量を算出した。
(2)融点
示差熱分析法(DSC)により、昇温速度 10℃/minで−100℃から100℃まで昇温し、融解ピークの温度を融点として求めた。
(3)結晶化温度
示差熱分析法(DSC)により、冷却速度10℃/minで−100℃から100℃まで冷却し、結晶化ピークの温度を結晶化温度として求めた。
(4)結晶化熱(ΔΗ)、半結晶化時間
示差熱分析法 (DSC)により、溶融温度120℃で試料を5分間保持し、その後120℃から 50℃まで 500℃/minの降温速度で冷却し、その後 50℃で保持し結晶化熱(ΔH)を測定した。冷却開始時間から結晶化熱(ΔH)が全発熱量の1/2に到達するまでの時間を測定し、半結晶化時間とした。
[0032] [表1]

[0033]実施例1(反応性ホットメルト組成物の製造)
結晶性ポリエステルポリオール (宇部興産株式会社製、ETERNACOLL (登録商標)3010)60質量部、非晶性ポリエステルポリオール (宇部興産株式会社製、ETERNACOLL (登録商標)5011)15質量部、ポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製、UH−CARB (登録商標)100)25質量部をセパラブルフラスコに入れ、窒素置換し、これを120℃で加熱溶融した。更に、250rpmで攪拌しながら120℃、50mmHgで1時間脱水処理し、10分間の窒素置換を行なった。その後、ポリオール混合物を80℃まで冷却し、カーボンブラックマスターバッチ(住化カラー株式会社製、ブラックSHPA−817、カーボンブラック含有量40%)1質量部を投入し、150rpmで1時間攪拌混合した。前もって 60℃に加温しておいた4, 4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI) (仕込みのポリエステルポリオール混合物のOH基に対し、1.1倍モル)を一度に添加し、窒素雰囲気下、更に 120℃、1.5時間攪拌して反応性ホットメルト組成物を得た。
得られた反応性ホットメルト組成物について、上記の測定法により、数平均分子量、融点、結晶化温度、粘度、結晶化熱(ΔΗ)、半結晶化時間の測定を行った。また、 固化時間、接着性の評価を行った。その結果を表2及び表3に示す。
[0034] 表2中の記号の詳細は下記のとおりであり、その他は前記と同様である。
・CBM:カーボンブラックマスターバッチ、住化カラー株式会社製、ブラックSHPA−817、カーボンブラック含有量40wt%
・NA−11:旭電化工業株式会社製、アデカスタブNA−11、リン酸2, 2'−メチレンビス(4, 6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム
ポリイソシアネート(F)
・MDI: 4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート
[0035] 表3中の評価法は下記のとおりであり、その他は前記と同様である。
(1)粘度
試料を120℃で溶融し、B型粘度計で測定した。
(2)固化時間
厚さ1.6mmのアルミ板の上に、中央を直径2cmの円形に切り抜いた厚さ2mmのテフロン板を固定し、固化時間測定用の型とした。 120℃で溶融した反応性ホットメルト組成物を、テフロン板の切り抜いた円形穴内に0.63mL流し込み、その上から別のアルミ板を重ねて圧締めし、反応性ホットメルト組成物が固まるまでの時間(室温23℃)を測定した。
(3)接着性
120℃で溶融したホットメルトを、厚さ1. 6mmのアルミ板上に直径約2cm、厚さ約2mmの大きさに塗布し、室温で放冷して固化させた。10分間の放置の後、固化した 反応性ホットメルト組成物の端部にスパチェラの先端で力を加え、アルミ板と反応性 ホットメルト組成物を剥離させ、次の評価基準で接着性を評価した。
(評価基準)
◎:固化物が変形するほど力を加えても剥離しなかった。
〇:強い力を加えると剥離した。
△:軽い力で剥離した。
×:静置後自然に剥離が生じた。
[0036] 実施例2〜14及び比較例1〜3(反応性ホットメルト組成物の製造)
実施例1の配合処方の代わりに、表2に示す配合を行った他は、実施例2と同様に各成分を配合し、同様に処理して、反応性ホットメルト組成物を得た。結果を表2及び表3に示す。
[0037] [表2]

[0038] [表3]

[0039] 表3から、実施例に示す本発明の反応性ホットメルト組成物と比較例1〜3の組成物を比較すると、融点、結晶化温度、粘度に大差はないが、半結晶化時間が150秒以下であるため、冷却固化時間が40秒以下と短く、成形サイクルを短縮化することができる。また、結晶化熱(ΔΗ)が30〜80J/g、特に 30〜75J/gの範囲にあるため、成形性及び金属材料との接着性が優れており、接着界面に剥離が発生する等の問題が生じない。」

(イ)甲1に記載された発明
甲1の記載について、特に実施例1(段落[0038]、[表1]〜[表3])に着目すると共に、段落[0007]の記載を参酌して整理すると、甲1には、以下の発明が記載されているといえる。
「結晶性ポリエステルポリオール (宇部興産株式会社製、ETERNACOLL (登録商標)3010)60質量部、非晶性ポリエステルポリオール (宇部興産株式会社製、ETERNACOLL (登録商標)5011)15質量部、ポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製、UH−CARB (登録商標)100)25質量部をセパラブルフラスコに入れ、窒素置換し、これを120℃で加熱溶融し、更に、250rpmで攪拌しながら120℃、50mmHgで1時間脱水処理し、10分間の窒素置換を行なった後、ポリオール混合物を80℃まで冷却し、カーボンブラックマスターバッチ(住化カラー株式会社製、ブラックSHPA−817、カーボンブラック含有量40%)1質量部を投入し、150rpmで1時間攪拌混合し、前もって 60℃に加温しておいた4, 4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI) (仕込みのポリエステルポリオール混合物のOH基に対し、1.1倍モル)を一度に添加し、窒素雰囲気下、更に 120℃、1.5時間攪拌して得られたウレタン系反応性ホットメルト組成物」(以下、「甲1発明」という。)

(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「ウレタン系反応性ホットメルト組成物」は、本件特許発明1のおける「ウレタン系組成物」に相当する。
甲1発明の「結晶性ポリエステルポリオール (宇部興産株式会社製、ETERNACOLL (登録商標)3010)60質量部、非晶性ポリエステルポリオール (宇部興産株式会社製、ETERNACOLL (登録商標)5011) 15質量部、ポリカーボネートポリオール(宇部興産株式会社製、UH−CARB (登録商標)100)25質量部」の「ポリオール混合物」は、ポリエステルポリオールを含有するものであり、ポリイソシアネートと反応させるものであるから、本件特許発明1の「エステル系ポリオール樹脂含有主剤成分」に相当する。
また、甲1発明における「非晶性ポリエステルポリオール (宇部興産株式会社製、ETERNACOLL (登録商標)5011)」は、表1より示差熱分析法(DSC)による融点、結晶化温度が検出できなかったことから、本件特許発明1における「DSC(Differential Scanning calorimetry)分析で結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)が観察されない非結晶性ポリオール」である「エステル系ポリオール樹脂」に相当する。
そして、甲1発明における「4, 4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)」は、ポリオールと反応させるものであるから、本件特許発明1における「ポリイソシアネート含有硬化剤成分」に相当する。

してみると、両発明は、以下の<一致点>で一致し、以下の<相違点>で相違する。
<一致点>
「エステル系ポリオール樹脂含有主剤成分;ポリイソシアネート含有硬化剤成分;を含むウレタン系組成物であって、
前記エステル系ポリオール樹脂は、DSC(Differential Scanning calorimetry)分析で結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)が観察されない非結晶性ポリオールである、ウレタン系組成物」

<相違点1>
ウレタン系組成物が、本件特許発明1では「二液型」であるのに対して、甲1発明では「反応性ホットメルト」である点
<相違点2>
ポリイソシアネートが、本件特許発明1では「非芳香族ポリイソシアネート」であるのに対して、甲1発明では「4, 4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)」である点
<相違点3>
本件特許発明1は「フィラーを含む」のに対して、甲1発明は「カーボンブラックマスターバッチ」を含む点

上記<相違点1>について検討する。
本件特許明細書の段落【0013】には、「本出願で、前記組成物としては、ウレタン系組成物が用いられ得る。具体的に、本出願では、二液型ウレタン系組成物が用いられ得る。二液型ウレタンは、イソシアネート系化合物及びポリオール系化合物を混合して形成されるポリウレタンを意味することで、単一組成内にウレタン基を有する一液型ポリウレタンとは区別される。」と記載され、段落【0122】には、「フィラー:アルミナを用いた。その含量は、前記ポリオールとイソシアネートの含量を合わせた100重量部に対して1,000重量部の割合になるようにし、主剤成分及び硬化剤成分に前記アルミナを同量に分割配合した。」と記載されている。
そうすると、「二液型」ウレタン系組成物とは、施工をするに際して、現場でイソシアネート系化合物及びポリオール系化合物を混合して形成されるものを意味するものであって、単一組成内にウレタン基を有する「一液型」とは区別されるものである。
一方、甲1発明の「ウレタン系反応性ホットメルト組成物」とは、甲1の段落[0007]に、「本発明の反応性ホットメルト組成物は、ウレタン系反応性ホットメルト組成物であり、ポリオールとポリイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート基を末端に有するオリゴマーである。・・・略・・・金型から取り出された成形品は、その後、大気中の湿気を吸収し、イソシアネート基が水分と反応することによって、高分子量化及び架橋し、優れた力学的性質、耐熱性、接着性を有するものとなる。」と記載され、「単一組成内にウレタン基を有する」ものであることから、「一液型」である。
してみると、当該相違点は実質的な相違点である。

ついで、当該相違点の容易想到性について検討する。
単一組成内にウレタン基を有するとともに、末端にイソシアネート基を有するオリゴマーが、大気中の水分と反応することによって、高分子量化及び架橋させる「一液型」ウレタン系組成物と、現場で、ポリオールとイソシアネートを混合し、反応させてウレタンを形成する「二液型」は、「反応機構」、それに基因するウレタンの「化学構造」、さらには「使用態様」も異なるものである。
そうすると、「一液型」で使用することしか意図していない甲1発明において、現場で、ポリオールとイソシアネートを反応させてウレタンを形成する「二液型」に変更する動機付けはない。
よって、甲1発明において、<相違点1>に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たものではない。
また、本件特許発明1は、「バッテリモジュールやバッテリパックに用いられる場合において、放熱性、接着力及び接着信頼性だけではなく工程性に優れた樹脂組成物を提供すること」ができる効果を奏するものである。
したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易になし得たものではない。

イ 本件特許発明5ないし9について
本件特許発明5ないし9は、本件特許発明1を引用するものであるから、上記アで検討したのと同様、本件特許発明5ないし9は、甲1発明に基いて当業者が容易になし得たものではない。

(3)申立人の主張について
申立人は、甲1の実施例1〜12から、甲1発明を下記のように認定し、本件特許発明の進歩性を否定している。
「A 非晶性ポリエステルポリオール含有主剤成分;ポリイソシアネート含有硬化剤成分;及びフィラーであるカーボンブラックマスターバッチを含む二液型ウレタン系組成物であって、
B 前記非晶性ポリエステルポリオールは、DSC(示差熱分析法)分析で結晶化温度(Tc)と溶融温度(Tm)が観察されない非結晶性ポリオールである、ET5011(宇部興産株式会社製、ETERNAC0LL5011[エチレングリコール/ネオペンチルグリコール−アジピン酸/フタル酸系ポリステルポリオール]、平均分子量2 5 0 0 ) (実施例:1〜5、7〜12)又はET5010(宇部興産株式会社製、ETERNACOLL5010[エチレングリコール/ネオペンチルグリコール−アジ ピン酸/フタル酸系ポリエステルポリオール]、数平均分子量2000(実施例6)であり、
C 前記ポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネートである4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)である、
D 二液型ウレタン系組成物であるウレタン系反応性ホットメルト組成物。」
すなわち、申立人は、甲1発明として「二液型」ウレタン系組成物であることを前提として、本件特許発明の進歩性を否定している。
しかしながら、上記(2)で検討したように、甲1発明は、「一液型」であって、「二液型」のウレタン系組成物ではない。
よって、申立人の主張は首肯できない。

(4)申立理由2についてのむすび
そうすると、本件特許発明1、5ないし9は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、5ないし9に係る特許は、申立理由2によっては取り消すことはできない。

第5 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1ないし16に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件特許の請求項1ないし16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2022-07-28 
出願番号 P2020-515118
審決分類 P 1 651・ 537- Y (C08G)
P 1 651・ 121- Y (C08G)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 杉江 渉
特許庁審判官 藤代 亮
細井 龍史
登録日 2021-09-17 
登録番号 6945916
権利者 エルジー・ケム・リミテッド
発明の名称 樹脂組成物  
代理人 渡部 崇  
代理人 実広 信哉  
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