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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D21B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  D21B
管理番号 1387534
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-04-04 
確定日 2022-07-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第6945449号発明「パルパーおよびパルパーロータの刃部構造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6945449号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6945449号の請求項1〜3に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)3月17日(優先権主張2015年(平成27年)7月14日、日本国)を国際出願日とする出願であって、令和3年9月16日にその特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:令和3年10月6日)がされ、その後、その特許に対し、令和4年4月4日に特許異議申立人相川鉄工株式会社(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許6945449号の請求項1〜3に係る発明(以下「本件発明1」等という。まとめて、「本件発明」ということがある。)は、その特許請求の範囲の請求項1〜3に、それぞれ記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
紙と水とを投入する収容槽と、収容槽の底部分に設けられたストレーナと、ストレーナ上で回転する略円盤状のロータと、を備えるパルパーにおいて、ロータの径方向に延伸しつつ回転対称に配され、ロータの回転によりストレーナとの間で紙を離解する刃部であって、
回転方向前側を凸条に形成した基体部と、
基体部に勘合する略コ字状の凹条を長手に沿って二つ割りした、ロータ上面側に位置するL字刃体と、ロータ底面側に位置する、L字刃体の硬度より大きな硬度である均質な素材による板刃体と、
により形成され、
凹条の回転方向前側の面は、ストレーナ側に古紙ないしスラリーを誘導するように前のめりの斜面であり、
L字刃体と板刃体とは、基体部の凸を貫通する孔を介してロータ上面側から螺合させるボルトにより、基体部に対して合着と脱着とを可能としていることを特徴とするロータ刃部。
【請求項2】
板刃体の回転方向後側に連続する位置の基体部底面に、基体部より硬度の高い素材を着けたことを特徴とする請求項1に記載のロータ刃部。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロータ刃部を有することを特徴とするパルパー。」

第3 申立理由の概要
申立人は、以下の証拠を提出し、概略、次の取消理由を主張している(なお、甲第1号証等を、以下「甲1」等という。)。
1 (進歩性
本件発明1〜3は、
(1) 本件特許出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲1に記載された発明、甲1の1、甲1の2、甲2の1〜甲2の9、及び甲3の1〜甲3の4に記載された事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものである、
(2) 甲2の1〜甲2の10による、本件特許出願(優先日)前に日本国内又は外国において公然知られた発明又は公然実施をされた発明である#10−20DHV−C型パルパー用ローター(以下「ローターA」という。)、及び本件特許出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である甲3の1〜甲3の4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第2号の規定に基づき取り消されるべきものである。
2 (サポート要件)
(1) 本件発明1〜3は、L字刃体521の回転方向前側の面Sに垂直方向の力が作用すると、基体部51から容易に離脱し、螺合させるボルトBによりL字刃体521が基体部51に対して機械的に連結された状態を開示していない、
(2) 本件発明2及び3は、「連続」とは「切れ目なくつづくこと。」(広辞苑第7版)で、「板刃体」と素材が切れ目のない溶接等による一体を意味するが、発明の詳細な説明には、板刃体522と補強板(素材)53とは切れ目があるので、発明の課題を解決するための手段が反映されていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定に基づき取り消されるべきものである。
なお、申立人は、特許異議申立書において、「特許法第36条第4項第1号実施可能要件(特許法第113条第4号)」(1ページ下から5行)、「特許法第36条第4項第1号(サポート要件)(特許法第113条第4号)」(2ページ8〜9行)、「特許法第36条第4項第1号違反理由」(21ページ6行)と記載しているが、当該記載は、特許異議申立書の申立人の主張内容(21ページ7行〜23ページ15行)からみて、それぞれ、「特許法第36条第6項第1号サポート要件(特許法第113条第4号)」、「特許法第36条第6項第1号(サポート要件)(特許法第113条第4号)」、「特許法第36条第6項第1号違反理由」の誤記と認めた。
3 (明確性
本件発明1〜3は、
(1) 基体部とパルパーとの関係が何ら特定されていない、
(2) 「勘合」は、「1 考え合わせること。しらべ合わせること。2 中国の明朝が他国との通交の際、正式の使船の証として発行した割符。」(広辞苑第7版)であり、技術用語としてなじまない、
(3) 「基体部に対して合着と脱着とを可能としている」の記載は作用的である、
(4) 「合着と脱着とを可能」は、意味的に重複している、
(5) 基体部における「凸条」と「凸」との関係、差異が規定されていない、
(6) 「凹条の回転方向」は、凹条の開口部の向きが特定されていない、
本件発明2及び3は、
(7) 「連続」とは「切れ目なくつづくこと。」(広辞苑第7版)で、発明の詳細な説明、図面を参照すれば、板刃体522と補強板(素材)53との間には切れ目があり、「板刃体の回転方向後側に連続する位置」は、何を特定しているか不明であり、特許請求の範囲の記載に不備があるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号の規定に基づき取り消されるべきものである。

<甲号証>
甲第1号証:浦田治朗、「第57回−2014年 紙パルプ技術協会年次大会 The 57th-2014 JAPAN TAPPI Annual Meeting 講演要旨集」、紙パルプ技術協会、平成26年10月8日、表紙、目次、171〜173頁、奥付
甲第1号証の1:相川鉄工株式会社が「原質工程における更なる省エネルギーのための最新情報」の講演のために、パワーポイントで作成した資料のプリントアウト、平成26年10月9日前、申立人作成
甲第1号証の2:相川鉄工株式会社が「原質工程における更なる省エネルギーのための最新情報」の講演のために、パワーポイントで作成した資料のプリントアウト、平成26年10月9日前、申立人作成
甲第1号証の3:紙パルプ技術協会、「第57回−2014年紙パルプ技術協会 年次大会 The 57th-2014 JAPAN TAPPI Annual Meeting、 参加者名簿」、紙パルプ技術協会、平成26年10月8日
甲第2号証の1:申立人従業者が作成した受注品部品リスト、2015年4月27日(出図)
甲第2号証の2:申立人従業者が作成した図番LPH-240326-00A、図名#10-20DHV-Cパルパー用90型Maxiローター外形図、2015年4月27日(出図)
甲第2号証の3:申立人従業者が作成した図番LPH-240326-01A、図名90型Helixローター(IV型)ローター本体図、2015年4月27日(出図)
甲第2号証の4:申立人従業者が作成した、甲第2号証の2の一部を分解して作成した一部分解説図
甲第2号証の5:申立人従業者が作成した、図番LPH-240326-05A、図名90型Helixローター(IV型)バッフルプレート(外側)図、2015年4月27日(出図)
甲第2号証の6:申立人従業者が作成した、図番LPH-240326-04A、図名90型Helixローター(IV型)バッフルプレート(内側)図、2015年4月27日(出図)
甲第2号証の7:申立人従業者が作成した図番LPH-240326-02A、図名90型Helixローター(IV型)替え刃図、2015年4月27日(出図)
甲第2号証の8:申立人従業者が作成した図番LPH-240326-03A、図名90型Helixローター(IV型)ポンピングベーン図、2015年4月27日(出図)
甲第2号証の9:相川鉄工株式会社作成の物品受領書、2015年10月6日発行
甲第2号証の10:日本規格協会の「JISハンドブック 1 鉄鋼I 2021」の抜粋、2314〜2321ページ
甲第3号証の1:特開2008−291377号公報
甲第3号証の2:特許第4934881号公報
甲第3号証の3:特許第4691427号公報
甲第3号証の4:特開2011−26715号公報

第4 当審の判断
事案に鑑み、先ず、申立理由3(明確性)について検討し、続いて申立理由2(サポート要件)について、順に検討する。
1 申立理由3(明確性)について
(1) 明確性要件の判断基準
特許法第36条第6項第2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。同号がこのように規定した趣旨は、仮に、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許が付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者の利益が不当に害されることがあり得るので、そのような不都合な結果を防止することにある。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(2) 上記「第3」の「3(1)」、「3(2)」について
請求項1の「回転方向前側を凸条に形成した基体部」について、「基体部に勘合する略コ字状の凹条を長手に沿って二つ割りした、ロータ上面側に位置するL字刃体と、ロータ底面側に位置する、L字刃体の硬度より大きな硬度である均質な素材による板刃体」と特定され、「L字刃体と板刃体とは、基体部の凸を貫通する孔を介してロータ上面側から螺合させるボルトにより、基体部に対して合着と脱着とを可能としている」と特定されている。
そうすると、請求項1には、ロータの刃部を形成する「基体部」、「L字刃体」及び「板刃体」の相互の関係が特定されており、本件の図3及び図4の態様を特定しているものと理解できる。また、本件の図4において、ボルトBが板刃体522のめねじに螺合することにより、基体部を介して、L字刃体を固定する態様も理解できる。
よって、パルパーと、パルパーに備えられたロータの刃部を形成する基体部との関係は不明確とするところはない。また、「勘合」が、その意味からして、「嵌合」の意味で用いられていることは、明らかである。
(3) 上記「第3」の「3(3)」、「3(4)」について
請求項1の「合着と脱着とを可能」は、「更に、ボルトBは鉛直方向の上から螺合させるので、回転方向前側から水平に螺合させる場合と異なり、電動工具を用いて簡単に凹条52を基体部51に合着でき、反対に、脱着もできるので、交換作業性に極めて優れる。なお、ボルトBの数も、図5(b)に示した二枚刃仕様の半分とすることができる(図5(c)参照)。」(【0032】下線は当審で参考のため付与したものである。)との記載されるように、「合着」が「基体部」に「L字刃体」や「板刃体」を取り付けること、「脱着」が「基体部」から「L字刃体」や「板刃体」を取り外すことを意味していると理解できる。
よって、請求項1の「基体部に対して合着と脱着とを可能としている」、「合着と脱着とを可能」との記載は、不明確とするところはない。
(4) 上記「第3」の「3(5)」について
請求項1の「回転方向前側を凸条に形成した基体部」における「凸条」は、断面が「凸」の一定の長さの態様を意味し、請求項1の「L字刃体と板刃体とは、基体部の凸を貫通する孔を介してロータ上面側から螺合させるボルトにより、基体部に対して合着と脱着とを可能としている」の「凸」は、凸の部分を意味しているから、その差異は明確であるといえる。
(5) 上記「第3」の「3(6)」について
請求項1の「凹条の回転方向前側の面」について、請求項1には、「回転方向前側を凸条に形成した基体部と、基体部に勘合する略コ字状の凹条」と特定されていることから、凸状との関係で、凹条の向きも本件の図3及び図4のように、理解できる。
(6) 上記「第3」の「3(7)」について
請求項2の「板刃体の回転方向後側に連続する位置の基体部底面」における「連続」は、「つらなりつづくこと」(広辞苑第6版)の意味と理解でき、必ずしも切れ目の有無をいうものでもないから、不明確とするところはない。
(7) 請求項1を引用する請求項2及び3についても、上記(1)〜(5)の点で、不明確とすることろはなく、他に請求項1〜3を不明確とするところはない。
(8) 以上のとおりであるから、上記「第3」の「3」に示した(1)〜(7)を理由として、また、他を理由として、請求項1〜3の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえず、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第113条第4号に該当せず、取り消すことはできない。

2 申立理由2(サポート要件)について
(1) サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2) 本件発明の課題
本件発明の課題は、本件特許明細書に記載された「本発明は上記に鑑みてなされたものであって、耐摩耗性と交換作業性に優れる経済的な替え刃構造を提供することを目的とする。また、当該構造を採用したパルパーを提供することを目的とする。」(【0008】)というものである。
(3) 本件発明1について
ア 請求項1の記載
上記課題解決の手段として、本件発明1は、「ストレーナ上で回転する略円盤状のロータ」の「ロータの径方向に延伸しつつ回転対称に配され、ロータの回転によりストレーナとの間で紙を離解する刃部」について、「回転方向前側を凸条に形成した基体部と、基体部に勘合する略コ字状の凹条を長手に沿って二つ割りした、ロータ上面側に位置するL字刃体と、ロータ底面側に位置する、L字刃体の硬度より大きな硬度である均質な素材による板刃体と、により形成され」ると特定され、さらに、「L字刃体と板刃体とは、基体部の凸を貫通する孔を介してロータ上面側から螺合させるボルトにより、基体部に対して合着と脱着とを可能としている」ことが特定されていて、そのことによって、ロータ上面側に位置するL字刃体とロータ底面側に位置する板刃体とをロータ上面の方向から、ボルトを螺合等できるから、交換作業を容易にすることができる。また、「ロータ底面側に位置する、L字刃体の硬度より大きな硬度である均質な素材による板刃体」と特定され、「L字刃体」と「板刃体」とを異なる硬度とすることも特定されていて、そのことにより必要な箇所に限定して耐摩耗性を備えたものとすることを可能とする。
イ そうすると、上記アの構成を備えることにより、本件発明1は、耐摩耗性と交換作業性に優れる経済的な替え刃構造を提供することができるから、上記課題を解決し得ることが理解できる。
(4) 本件発明2及び3について
本件発明2及び本件発明3は、本件発明1を引用するものであり、本件発明1の特定事項を全て含むものであり、本件発明1と同様に、上記課題を解決し得るものと理解できる。
(5) 以上のことより、請求項1〜3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第113条第4号に該当せず、取り消すことはできない。

3 申立理由1(進歩性)について
(1) 刊行物の記載
ア. 甲1について
(ア) 甲1に記載された事項






(イ) 上記(ア)の摘記事項からわかることは、以下の事項である。
・後記甲3の1〜甲3の4の記載を踏まえると、一般に、パルパーは、紙と水を投入する溶解槽と、溶解槽の下面に設けられたローターとを備えるものであるから、甲1のパルパーは、紙と水を投入する溶解槽と、溶解槽の下面に設けられたローターとを備えるものであることがわかる。
・甲1の図5からみて、バッフルプレート及び下替え刃は、ローターの径方向に延伸し、回転対称に配されていることがわかる。
・甲1の図5及び甲1の各図、後記甲1の2の図5からみて、内側及び外側のベーン下替え刃、バッフルプレート並びにポンピングベーンが、ベーンの回転方向の前側の段部に嵌合し、段部となっている部分は、ベーンの上側と下側で、回転方向の長さが異なる段部となっていることがわかる。
(ウ) 甲1発明
上記(ア)及び(イ)の事項を総合し、内側及び外側のベーン下替え刃とバッフルプレートをあわせてローターの刃部と呼ぶと、甲1には、以下の「甲1発明」が記載されている。

「紙と水を投入する溶解槽と、溶解槽の下面に設けられたローターとを備えるパルパーにおいて、ローターが内側及び外側のベーン下替え刃、バッフルプレート並びにポンピングベーンを備え、ベーン下面とストレーナー表面でのグラインディング効果による精離解を促進し、
内側及び外側のベーン下替え刃並びにバッフルプレートからなるローターの刃部がローターの径方向に延伸し、回転対称に配され、
内側及び外側のベーン下替え刃、バッフルプレート並びにポンピングベーンが、ベーンの回転方向の前側の段部に嵌合し、段部となっている部分は、ベーンの上側と下側で、回転方向の長さが異なる段部となっていて、
内側と外側のベーン下替え刃は別々に交換が可能である、
ローターの刃部。」

イ.甲1の1について
甲1の1には、以下の事項が記載されている。









ウ.甲1の2について
甲1の2には、以下の事項が記載されている。



エ.甲2の1について
甲2の1には、以下の事項が記載されている。



オ.甲2の2について
甲2の2には、以下の事項が記載されている。



カ.甲2の3について
甲2の3には、以下の事項が記載されている。



キ.甲2の4について
甲2の4には、以下の事項が記載されている。



ク.甲2の5について
甲2の5には、以下の事項が記載されている。




ケ.甲2の6について
甲2の6には、以下の事項が記載されている。





コ.甲2の7について
甲2の7には、以下の事項が記載されている。



サ.甲2の8について
甲2の8には、以下の事項が記載されている。



シ.上記エ〜サの摘記事項からわかることは、以下の事項である。
・後記甲3の1〜甲3の4の記載を踏まえると、一般に、パルパーは、紙と水を投入する溶解槽と、溶解槽の下面に設けられたローターとを備えるものであるから、甲2の1〜甲2の8に記載の#10−200DHV−C型パルパー用ローターは、パルパーの紙と水とを投入する溶解槽の下面に備えられるものであることがわかる。
・甲2の1の部品リスト、甲2の2〜甲2の8の各図からみて、バッフルプレート及び替え刃は、ローターの径方向に延伸し、回転対称に配され、ローターの刃部を形成していることがわかる。
・甲2の1の部品リスト、甲2の2〜甲2の8の各図から見て、バッフルプレート及び替え刃は、#10−200DHV−C型パルパー用ローター本体に、それぞれ、六角穴付ボルトにより固定されていることがわかる。
・甲2の4の各図を参酌すると、内側及び外側のバッフルプレート並びに替え刃が、ローター本体に対して、その上下に、段部に嵌合するように配置され、上下の各段部の回転方向の長さは異なっていることがわかる。
・甲2の1の部品リストより、替え刃は、材質としてSCS24が用いられ、バッフルプレートは、材質としてSCS13が用いられていることがわかる。
ス.上記エ〜シの事項を総合し、内側及び外側のバッフルプレート並びに替え刃をあわせてローターの刃部と呼ぶと、甲2の1〜甲2の10により、以下の「甲2発明」を認めることができる。

「#10−200DHV−C型パルパー用ローターは、パルパーの紙と水を投入する溶解槽の下面に設けられ、
内側及び外側のバッフルプレート並びに替え刃は、#10−200DHV−C型パルパー用ローターの径方向に延伸し、回転対称に配され、
替え刃は、材質としてSCS24が、内側及び外側のバッフルプレートは、材質としてSCS13が用いられ、
内側及び外側のバッフルプレート並びに替え刃は、#10−200DHV−C型パルパー用ローターの刃部を形成し、それぞれ、#10−200DHV−C型パルパー用ローター本体に、六角穴付ボルトにより固定され、
内側及び外側のバッフルプレート並びに替え刃が、ローター本体に対して、その上下に、段部に嵌合するように配置され、上下の各段部の回転方向の長さは異なっている、#10−200DHV−C型パルパー用ローターの刃部。」

セ.甲3の1について
甲3の1には、以下の事項が記載されている。
「【0049】
また、図9に示す他方のカッターブレード片60bを回転翼26の取付け部26gに取付けるには、図8で示すように、カッターブレード片60bの上面に形成された座グリ部70を有する取付け孔71を介して嵌挿される六角レンチボルト72により前記回転翼26の取付け部26gの上面26hに螺着し、そこに固定する。」
「【0053】
このように一枚の回転翼26の下面26aにそれぞれ3枚のカッターブレードを有する本件ロータ21の場合、溶解槽2(図15、図16参照)内で溶解された大きな古紙片11が、図11で示すように、スクリーンプレート50の目孔51内に嵌着すると、まず第1のカッターブレード60が古紙片11と当接して、当該古紙片11を裁断し、これにより図12で示すように、やや小さな古紙片11bに裁断する。」
「【図7】


「【図15】


ソ.甲3の2について
甲3の2には、以下の事項が記載されている。
「【図7】

【図8】


タ.甲3の3について
甲3の3には、以下の事項が記載されている。
「【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明のパルパーの一部を切り欠いて示した斜視図である。図2は、図1に示したパルパーの断面図である。
パルパー1は、収容槽2と、収容槽2の底部分に設けたメッシュ板3と、メッシュ板3上に回転可能に設けられたロータ4と、を備えている。
【0019】
収容槽2は、ほぼ球形状に構成されていて、その上部に古紙および水を投入するための投入口21を有しており、その下部に再生材を排出するための排出口22を有している。また、排出口22は、図示はされないが、開閉自在な構成である。
メッシュ板3は、多数の孔が設けられた板状の部材であって、排出口22を覆うようにして収容槽2に設けられている。
【0020】
ロータ4は、上下方向に延伸する排出管41と、排出管41の上方部分に取り付けられたロータ本体42と、ロータ本体42の上部に取り付けられたロータキャップ43と、排出管41の上端に取り付けられたキャップ体44とを備えている。
排出管41は、垂直な軸線まわりに回転可能な構成であって、排出管41が回転すると、ロータ本体42、ロータキャップ43およびキャップ体44が排出管41と一体となって回転する。また、排出管41の上端とキャップ体44との間には間隙が存在しており、この間隙を通って収容槽2内の軽量異物が排出管41内に流入し得るようになっている。
【0021】
ロータ4には、後述する水平刃423、内側垂直刃432および外側垂直刃424といった各種の刃が設けられており、回転することにより収容槽2内に投入された古紙を破砕することができるようになっている。再生材を製造する際には、まず、収容槽2の排出口22を閉じた状態で投入口21から古紙および水を投入し、ロータ4を回転させる。そして、古紙を破砕して微細化し、古紙および水の混合物をゲル化して再生材を製造する。」
「【0034】
図8は、ロータ4近傍の水の流れを示した図である。
収容槽2内に古紙および水を投入してロータ4を回転させると、収容槽2内を循環する水流が生じる。そして、その水流によってロータ4の上方から下方に向かって流れる古紙は、主としてロータキャップ43側に流れ込み、山形のロータキャップ43に沿って周縁の水平刃423に導かれる。
【0035】
また、内側垂直刃432および外側垂直刃424の前方側に位置する古紙は粗くちぎられ、一部は収容槽2内の大きなうずしおを形成し、一部は内側垂直刃432および外側垂直刃424の後方側に回り込み、周縁の水平刃423に導かれる。そして、内側垂直刃432および外側垂直刃424の後方側に位置した古紙は、負圧により押さえ込まれるようにして下方側かつ外周側に案内されて水平刃423に導かれる。
このようにして、水平刃423に導かれた古紙は、水平刃423とメッシュ板3との間の間隙で細かく砕かれて微細化される。」
「【図1】



【図7】

【図8】


チ.甲3の4について
甲3の4には、以下の事項が記載されている。
「【0011】
本発明の一実施例のパルパーを図面を参照して説明する。
図1に示すPはパルプ、古紙等の製紙原料を離解させるパルパーで、パルパーPは、上部に原料投入口1、下部に排出口2をそれぞれ有する槽3を有する。
4は、槽3の排出口2に設けられたストレーナーで、ストレーナー4は、例えば、丸孔を多数形成した円板状のものである。
【0012】
このストレーナー4の上には、近接して回転可能にローター5が設けられている。ローター5は回転軸6に連結され、該回転軸6は、モーター7によって回転されるようになっている。
回転軸6に接続されたプーリー8とモーター7に接続されたプーリー9とに掛け渡されたベルト10を介して、モーター7の動力が回転軸6に伝達されるようになっている。
【0013】
ローター5は、複数の翼51、52、53、54、55、56を有し、翼51、52、53、54、55、56の裏面には、それぞれ、翼51、52、53、54、55、56の長手方向に沿って複数のディンプルDが設けられている。
ディンプルDは、ディンプルプレート部材50に設けられ、各翼51、52、53、54、55、56の裏面に図示しないボルトで着脱自在に取り付けられている。
ディンプルDは摩耗するため、硬化材料(例えば、ローター5より硬いステンレス材で形成されている。)で形成され、摩耗した場合には、ディンプルプレート部材50を交換できるようになっている。
本実施例のディンプルDの形状は、平面視、円となっているが、本願発明にあっては、これに限らず、例えば、三角形、四角形、菱形等でも良い。
ローター5の各翼51、52、53、54、55、56の回転によって、原料の大きな回流が槽3内に生じ、原料中の有用繊維が離解され、処理原料はストレーナー4を通過して排出管100から槽3外へと排出される。」
「【図1】


(2) 判断
(2−1) 甲1発明を主引例とした進歩性について
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲1発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・甲1発明の「溶解槽」、「下面」、「ローター」、「パルパー」、「内側及び外側のベーン下替え刃」、「ストレーナー」、「ベーン」及び「ローターの刃部」は、それぞれ、本件発明1の「収容槽」、「底部分」、「ロータ」、「パルパー」、「板刃体」、「ストレーナ」、「基体部」及び「刃部」に相当する。
・甲1発明の「基体部」について、「ベーン下面とストレーナー表面でのグラインディング効果による精離解を促進」するため、ベーン下替え刃が設けている側が回転方向で前側といえるから、甲1発明の「内側及び外側のベーン下替え刃、バッフルプレート並びにポンピングベーン」が設けられている側が、回転方向の前側となり、そうすると、本件発明1の「基体部」が「回転方向前側を凸条に形成した」態様と、「回転方向前側を有する」限りで一致する。
・甲1発明の「ベーン下面とストレーナー表面でのグラインディング効果による精離解を促進」することから、ベーンを備えるローターは、ストレーナー上で回転し、甲1の図3、図4からみると略円盤状をなしているから、甲1発明は、本件発明1の「ストレーナ上で回転する略円盤状のロータ」に相当する態様を備えるものであり、また、本件発明1の「ロータの回転によりストレーナとの間で紙を離解する」態様を備えるものである。
・甲1発明の「バッフルプレート並びにポンピングベーン」は、甲1の図5、甲1の1の各図、甲1の2の各図より、ベーンに嵌合する態様で、断面でみるとL字をしていることから、本件発明1の「基体部に勘合する略コ字状の凹条を長手に沿って二つ割りした、ロータ上面側に位置するL字刃体」と、「基体部に勘合するロータ上面側に位置するL字刃体」の限りで一致する。
・甲1発明の「内側及び外側のベーン下替え刃」について「(刃部の)ローターが、内側及び外側のベーン下替え刃、バッフルプレート並びにポンピングベーンを備え」ていることと、本件発明1の「板刃体」について「ロータ底面側に位置する、L字刃体の硬度より大きな硬度である均質な素材による」こととは、「ロータ底面側に位置する」ことの限りで一致する。
・甲1発明の「バッフルプレート並びにポンピングベーン」は、甲1の図5、甲1の1の各図、甲1の2の各図より、回転方向前側の面を有することは明らかであり、本件発明1の「凹条の回転方向前側の面は、ストレーナ側に古紙ないしスラリーを誘導するように前のめりの斜面であ」ることと、「回転方向前側の面」を有する限りで一致する。
・甲1発明の「内側と外側のベーン下替え刃は別々に交換が可能である」ことと、本件発明1の「L字刃体と板刃体とは、基体部の凸を貫通する孔を介してロータ上面側から螺合させるボルトにより、基体部に対して合着と脱着とを可能としていること」とは、「板刃体は、基体部に対して合着と脱着とを可能としていること」の限りで一致する。
したがって、両者は、
「紙と水とを投入する収容槽と、収容槽の底部分に設けられたストレーナと、ストレーナ上で回転する略円盤状のロータと、を備えるパルパーにおいて、ロータの径方向に延伸しつつ回転対称に配され、ロータの回転によりストレーナとの間で紙を離解する刃部であって、
回転方向前側を有する基体部と、
基体部に勘合する、ロータ上面側に位置するL字刃体と、ロータ底面側に位置する板刃体と、
により形成され、
回転方向前側の面を有し、
板刃体は、基体部に対して合着と脱着とを可能としている、ロータ刃部。」の点で一致し、次の点で相違している。

<相違点1>
基体部について、本件発明1は、「回転方向前側を凸条に形成した」ものであるのに対して、甲1発明は、内側及び外側のベーン下替え刃、バッフルプレート並びにポンピングベーンが、ベーンの回転方向の前側の段部に嵌合し、段部となっている部分は、ベーンの上側と下側で、回転方向の長さが異なる段部となっており、凸条とまではいえない点。

<相違点2>
基体部に勘合する、ロータ上面側に位置するL字刃体と、ロータ底面側に位置する板刃体について、本件発明1は、「基体部に勘合する略コ字状の凹条を長手に沿って二つ割りした」ものとされているのに対して、甲1発明は、そのような特定はなされていない点。

<相違点3>
基体部に勘合する、ロータ上面側に位置するL字刃体と、ロータ底面側に位置する板刃体について、本件発明1は、「L字刃体の硬度より大きな硬度である均質な素材による板刃体」とされているのに対して、甲1発明は、そのような特定はなされていない点。

<相違点4>
回転方向前側の面について、本件発明1は、「凹条の回転方向前側の面」とされ、「ストレーナ側に古紙ないしスラリーを誘導するように前のめりの斜面であ」るとされているのに対して、甲1発明は、そのような特定はなされていない点。

<相違点5>
基体部に対して合着と脱着とを可能としていることについて、本件発明1は、「L字刃体と板刃体とは、基体部の凸を貫通する孔を介してロータ上面側から螺合させるボルトにより、基体部に対して合着と脱着とを可能としている」のに対して、甲1発明は、「内側と外側のベーン下替え刃は別々に交換が可能である」ものの、「内側及び外側のベーン下替え刃、バッフルプレート並びにポンピングベーン」を含めて、どのように固定されているかは不明である点。

(イ) 相違点の判断
事案に鑑み、相違点5について、先ず検討する。
本件発明1は、「ロータ底面側に位置する、L字刃体の硬度より大きな硬度である均質な素材による板刃体」とし、「L字刃体と板刃体とは、基体部の凸を貫通する孔を介してロータ上面側から螺合させるボルトにより、基体部に対して合着と脱着とを可能としていること」により、本件特許の課題である「耐摩耗性と交換作業性に優れる経済的な替え刃構造を提供すること」を解決するものである。
他方、甲1発明は、「内側及び外側のベーン下替え刃、バッフルプレート並びにポンピングベーン」について、「内側と外側のベーン下替え刃は別々に交換が可能である」ものの、その具体的な態様については、記載も示唆もない。
そして、甲2の1〜甲2の9に記載の#10−20DHV−Cパルパー用ローターをみても、バッフルプレート及び替え刃は、それぞれ個別に六角穴付きボルトで固定されていることからして(甲2の1、甲2の2、甲2の4)、甲1発明の「バッフルプレート並びにポンピングベーン」と「内側及び外側のベーン下替え刃」とが、「ベーン」を貫通する孔を介して刃部のロータ上面から螺合させるボルトにより、ベーンに対して合着と脱着とを可能とする態様(以下「固定態様A」という。)で固定しているということはできない。この固定態様Aについては、他の甲2の10、甲3の1〜甲3の4にも記載されていない。
また、そのようは固定態様Aを技術常識と言える証拠はない。
さらに、上記課題である「耐摩耗性と交換作業性に優れる経済的な替え刃構造を提供すること」が解決できるという効果は、当業者であっても、予測できるものではない。
そうすると、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ.本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、直接的あるいは間接的に本件発明1を引用するものである。そうすると、本件発明1に特定事項を付加し、限定した本件発明2及び3が、上記ア.に示したように、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ.以上のとおりであるから、本件発明1〜3は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものでないから、同法第113条第2号の規定に基づき取り消すことはできない。
(2−2) 甲2発明を主引例とした進歩性について
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲2発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・甲2発明の「溶解槽」、「下面」、「ローター」、「パルパー」、「替え刃」、「六角穴付ボルト」、及び「ローターの刃部」は、それぞれ、本件発明1の「収容槽」、「底部分」、「ロータ」、「パルパー」、「板刃体」、「ボルト」及び「ロータ刃部」に相当する。
・甲2発明の「#10−200DHV−C型パルパー用ローター」は、甲2の2〜甲2の4の態様からみて、回転する略円盤状のローターといえるので、本件発明1の「回転する略円盤状のロータ」に相当する。
・甲2発明の「替え刃」及び「内側及び外側のバッフルプレート」は「ローターの刃部」をなすものであり、その配置は、甲2の2〜甲2の3からみて、ローターの径方向に延伸しつつ回転対称に配され、ローターの回転により紙を離解するものであるといえ、本件発明1の「ロータの径方向に延伸しつつ回転対称に配され、ロータの回転によりストレーナとの間で紙を離解する刃部」と、「ロータの径方向に延伸しつつ回転対称に配され、ロータの回転により紙を離解する刃部」の限りで一致する。
・甲2発明は、内側及び外側のバッフルプレート並びに替え刃が、ローター本体に対して、その上下に、段部に嵌合するように配置され、上下の各段部の回転方向の長さは異なっており、凸部をなしているとまでいえない。また、ローターの内側及び外側のバッフルプレート並びに替え刃とが嵌合する部分は基体をなすので、基体部と呼べるものである。
よって、甲2発明は、本件発明1の「回転方向前側を凸条に形成した基体部」と、「回転方向前側を有する基体部」との限りで一致する。
・甲2発明の「内側及び外側のバッフルプレート」は、甲2の2〜甲2の4の各図より、ローター本体に嵌合する態様で、断面でみるとL字をしていることから、本件発明1の「基体部に勘合する略コ字状の凹条を長手に沿って二つ割りした、ロータ上面側に位置するL字刃体」とは、「基体部に勘合するロータ上面側に位置するL字体」と限りで一致する。
・甲2発明の「替え刃は、材質としてSCS24が、バッフルプレートは、材質としてSCS13が用いられて」いること、及びSCS24がSCS13より硬度が大きいこと、その材質は均質であること(甲2の10)から、甲2発明の「替え刃」の態様は、本件発明1の「板刃体」が「ロータ底面側に位置する、L字刃体の硬度より大きな硬度である均質な素材による」ことに相当する。
・甲2発明の「内側及び外側のバッフルプレート」は、甲2の2〜甲2の8の各図より、回転方向前側の面を有することは明らかであり、本件発明1の「凹条の回転方向前側の面は、ストレーナ側に古紙ないしスラリーを誘導するように前のめりの斜面であ」ることと、「回転方向前側の面」を有する限りで一致する。
・甲2発明の「内側及び外側のバッフルプレート及び下替え刃」は「それぞれ、#10−200DHV−C型パルパー用ローター本体に、六角穴付ボルトにより固定されている」ことは、バッフルプレート及び下替え刃が六角穴付きボルトを締めたり、緩めたりすることにより、合着(取り付けること)や脱着(取り外すこと)できるものといえ、本件発明1の「L字刃体と板刃体とは、基体部の凸を貫通する孔を介してロータ上面側から螺合させるボルトにより、基体部に対して合着と脱着とを可能としていること」と、「L字刃体と板刃体とは、ロータ上面側から螺合させるボルトにより基体部に対して合着と脱着とを可能としていること」の限りで一致する。

したがって、両者は、
「紙と水とを投入する収容槽と回転する略円盤状のロータと、を備えるパルパーにおいて、ロータの径方向に延伸しつつ回転対称に配され、ロータの回転により紙を離解する刃部であって、
回転方向前側を有する基体部と、
基体部に勘合するロータ上面側に位置するL字体と、ロータ底面側に位置する、L字刃体の硬度より大きな硬度である均質な素材による板刃体と、
により形成され、
回転方向前側の面を有し、
L字刃体と板刃体とは、ロータ上面側から螺合させるボルトにより基体部に対して合着と脱着とを可能としていることを特徴とするロータ刃部。」の点で一致し、次の点で相違している。

<相違点6>
収容槽について、本件発明1は、「収容槽の底部分に設けられたストレーナと、ストレーナ上で回転する略円盤状のロータ」と特定されているのに対して、甲2発明は、ストレーナーを有するのか、また、ローターとストレーナーとの関係については、特定されていない点。

<相違点7>
基体部について、本件発明1は、「回転方向前側を凸条に形成した基体部」とされているのに対して、甲2発明は、内側及び外側のバッフルプレート並びに替え刃が、ローター本体に対して、その上下に、段部に嵌合するように配置され、上下の各段部の回転方向の長さは異なっており、凸条とまではいえない点。

<相違点8>
基体部に勘合する、ロータ上面側に位置するL字刃体と、ロータ底面側に位置する板刃体について、本件発明1は、「基体部に勘合する略コ字状の凹条を長手に沿って二つ割りした」ものとされているのに対して、甲2発明は、そのような特定はなされていない点。

<相違点9>
回転方向前側の面について、本件発明1は、「凹条の回転方向前側の面」とされ、「ストレーナ側に古紙ないしスラリーを誘導するように前のめりの斜面であ」るとされているのに対して、甲2発明は、そのような特定はなされていない点。

<相違点10>
基体部に対して合着と脱着とを可能としていることについて、本件発明1は、「L字刃体と板刃体とは、基体部の凸を貫通する孔を介してロータ上面側から螺合させるボルトにより、基体部に対して合着と脱着とを可能としている」のに対して、甲2発明は、「替え刃」と「バッフルプレート」が「それぞれ、#10−200DHV−C型パルパー用ローター本体に、六角穴付ボルトにより固定されている」点。

(イ) 相違点の判断
事案に鑑み、相違点10について、先ず検討する。
本件発明1は、「ロータ底面側に位置する、L字刃体の硬度より大きな硬度である均質な素材による板刃体」とし、「L字刃体と板刃体とは、基体部の凸を貫通する孔を介してロータ上面側から螺合させるボルトにより、基体部に対して合着と脱着とを可能としていること」により、「耐摩耗性と交換作業性に優れる経済的な替え刃構造を提供すること」ができるものである。
他方、甲2発明は、「替え刃は、材質としてSCS24が、バッフルプレートは、材質としてSCS13が用いられて、#10−200DHV−C型パルパー用ローターの刃部を形成し、それぞれ、#10−200DHV−C型パルパー用ローター本体に、六角穴付ボルトにより固定されている」ものである。
そして、甲2発明は、甲2の1〜甲2の9に記載の#10−20DHV−Cパルパー用ローターをみると、バッフルプレート及び替え刃は、それぞれ個別に六角穴付きボルトで固定されていることからして(甲2の1、甲2の2、甲2の4)、甲2発明の「バッフルプレート」と「替え刃」とが、ロータ本体を貫通する孔を介してロータ上面から螺合させるボルトにより、ローターに対して合着と脱着とを可能とする態様(以下「固定態様B」という。)で固定しているということはできない。この固定態様Bについては、他の、甲1、甲1の1〜甲1の3、甲2の10、甲3の1〜甲3の4にも記載されていない。
また、そのようは固定態様Bを技術常識といえる証拠はない。
さらに、上記「耐摩耗性と交換作業性に優れる経済的な替え刃構造を提供すること」ができるという効果は、当業者であっても、予測できるものではない。
そうすると、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ.本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、直接的あるいは間接的に本件発明1を引用するものである。そうすると、本件発明1に特定事項を付加し、限定した本件発明2及び3が、上記ア.に示したように、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 以上のとおりであるから、本件発明1〜3は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものでないから、同法第113条第2号の規定に基づき取り消すことはできない。
(4) なお、申立人より、「相川鉄工株式会社の製品「#10−20DHV−C型パルパー用ローター」(本件装置)が、本件特許登録の出願前に、公然知られた発明であり、且つ、公然実施された発明である事実。」を証明するとして、証人尋問申立書が提出されているが、仮に、甲2発明の「#10−20DHV−C型パルパー用ローター」が公然知られたものであったとしても、上記相違点5、10の判断に影響するものではないので、申立人の証人尋問の申立を採用しなかった。

第5 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-07-15 
出願番号 P2017-528296
審決分類 P 1 651・ 121- Y (D21B)
P 1 651・ 537- Y (D21B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 山崎 勝司
藤井 眞吾
登録日 2021-09-16 
登録番号 6945449
権利者 ローター工業株式会社
発明の名称 パルパーおよびパルパーロータの刃部構造  
代理人 田邊 義博  
代理人 入江 一郎  
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