• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08J
管理番号 1387535
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-08-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-04-08 
確定日 2022-08-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第6949111号発明「高吸水性樹脂およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6949111号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6949111号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)10月16日を国際出願日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2017年11月7日 大韓民国(KR))とする特願2019−520363号に係るものであって、令和3年9月24日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年10月13日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和4年4月8日に特許異議申立人 日本触媒株式会社(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされたものである。

第2 本件発明
本件特許の請求項1ないし8に係る発明(以下、順に「本件発明1」のようにいい、総称して「本件発明」という場合がある。)は、それぞれ、本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の第1架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および
前記ベース樹脂粉末上に形成されており、前記第1架橋重合体が表面架橋剤を媒介にさらに架橋された第2架橋重合体を含む表面架橋層を含む高吸水性樹脂であって、
前記表面架橋剤は、複数種の環状アルキレンカーボネートの混合物を含み、前記混合物は、水素結合成分(hydrogen bonding component)によるハンセン溶解度パラメーター(Hansen solubility parameter)が13MPa1/2以上であり、
前記混合物は、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが10〜13MPa1/2の第1環状アルキレンカーボネートと、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが16〜20MPa1/2の第2環状アルキレンカーボネートとを含み、
前記混合物の水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターは、前記混合物に含まれた各環状アルキレンカーボネートのパラメーター値の重量平均値で算出され、
前記高吸水性樹脂は、27g/g〜37g/gの遠心分離保持容量(CRC)を示し、23〜35darcyのゲルベッド透過率(GBP)を示す、高吸水性樹脂。
【請求項2】
前記第1環状アルキレンカーボネートは、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートを含み、前記第2環状アルキレンカーボネートは、グリセロールカーボネートを含む、請求項1に記載の高吸水性樹脂。
【請求項3】
前記第1および第2環状アルキレンカーボネートは、0.9:1〜1:2の重量比で含まれる、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法であって、
内部架橋剤の存在下に少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して第1架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階と、
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階と、
表面架橋剤の存在下に前記ベース樹脂粉末を熱処理して表面架橋する段階とを含み、
前記表面架橋剤は、複数種の環状アルキレンカーボネートの混合物を含み、前記混合物は、水素結合成分(hydrogen bonding component)によるハンセン溶解度パラメーター(Hansen solubility parameter)が13MPa1/2以上であり、
前記混合物は、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが10〜13MPa1/2の第1環状アルキレンカーボネートと、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが16〜20MPa1/2の第2環状アルキレンカーボネートとを含み、
前記混合物の水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターは、前記混合物に含まれた各環状アルキレンカーボネートのパラメーター値の重量平均値で算出される、高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−アクリロイルエタンスルホン酸、2−メタクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたは(N,N)−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項4に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記内部架橋剤は、炭素数8〜12のビス(メタ)アクリルアミド、炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アクリレートおよび炭素数2〜10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルからなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項4または5に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記ベース樹脂粉末は、150〜850μmの粒径を有するように粉砕および分級される、請求項4〜6のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記表面架橋段階は、20℃〜130℃の初期温度で10分〜30分にかけて140℃〜200℃の最高温度に昇温し、前記最高温度を5分〜60分間維持して熱処理することにより行われる、請求項4〜7のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法。」

第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和4年4月8日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

1 申立理由1−1(甲第1号証に基づく新規性
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 申立理由1−2(甲第6号証に基づく新規性
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

3 申立理由1−3(甲第9号証に基づく新規性
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第9号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

4 申立理由2−1(甲第1号証に基づく進歩性
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明、甲第5号証及び甲第8号証に記載の技術事項に基づいて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

5 申立理由2−2(甲第2号証に基づく進歩性
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明並びに甲第5号証、甲第7号証及び甲第8号証に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

6 申立理由2−3(甲第3号証に基づく進歩性
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明並びに甲第2号証、甲第5号証及び甲第7号証に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

7 申立理由2−4(甲第4号証に基づく進歩性
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明並びに甲第2号証及び甲第5号証に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすること4できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

8 申立理由2−5(甲第6号証に基づく進歩性
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明並びに甲第5号証、甲第7号証及び甲第8号証に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

9 申立理由2−6(甲第9号証に基づく進歩性
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第9号証に記載された発明並びに甲第5号証及び甲第8号証に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすること4できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

10 申立理由3(実施可能要件
本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・請求項1にはGBPが特定されていて、GBPは特定の粒径で測定されるものであるにもかかわらず、請求項1には粒径が特定されていない。そうすると、GBPを測定できない発明が本件発明1には包含されているから、発明の詳細な説明は当業者が本件発明1を実施できる程度に記載されていない。請求項1を引用する本件発明2ないし8についても同様。

11 証拠方法
甲第1号証:特開2006−116535号公報
甲第2号証:特開2005−154758号公報
甲第3号証:特表2016−516877号公報
甲第4号証:米国公開特許公報第2016/0151531号
甲第5号証:Modern Superabsorbent Polymer Technology (発行1998) P59
甲第6号証:国際公開第2012/102407号
甲第7号証:特開2016−196659号公報
甲第8号証:欧州特許第2643392号明細書
甲第9号証:特表平9−502221号公報
なお、証拠の表記は、おおむね特許異議申立書の記載に従った。
以下、順に「甲1」のようにいう。

第4 当審の判断
1 主な証拠の記載事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤」に関して、おおむね次の事項が記載されている。(下線については当審において付与した。)

・「【請求項2】
カルボキシル基とエステル結合しうる表面架橋剤で表面架橋処理されたポリカルボン酸系吸水性樹脂粒子を主成分とする粒子状吸水剤であって、
上記表面架橋剤がアルキレンカーボネートを含む表面架橋剤であり、
下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(g)を満たす粒子状吸水剤、
(a)生理食塩水の無加圧下吸収倍率(CRC)が27g/g以上
(b)生理食塩水の4.8kPa荷重下での加圧下吸収倍率(AAP)が20g/g以上
(c)質量平均粒子径(D50)が200〜450μm
(d)粒子状吸水剤中の150μm未満の粒子が0〜5質量%
(e)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20〜0.40
(g)粒子状吸水剤中の残存エチレングリコール含有量(HPLC定量)が0〜40ppm。
【請求項3】
さらに、アミノアルコール、アルキレンカーボネートおよび多価アルコールから選ばれるアルコール系化合物(ただしエチレングリコールを除く)を含有する、請求項1または2記載の粒子状吸水剤。」
・「【請求項5】
上記表面架橋剤が、グリセリン、1,3−プロパンジオール、エチレンカーボネート、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、および、エタノールアミンからなる群より選ばれる1種類以上の化合物である、請求項1〜4の何れか1項に記載の粒子状吸水剤。」
・「【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の粒子状吸水剤の製造方法であって、
未中和アクリル酸および/またはその塩を単量体の主成分とする不飽和単量体水溶液を内部架橋剤の存在下に架橋重合し架橋重合体を得る工程と、
得られた架橋重合体を乾燥し、整粒して下記(a)、(b)、(c)および(d)を満たす吸水性樹脂を得る工程と、
(a)生理食塩水への無加圧下吸収倍率(CRC)が30g/g以上
(b)質量平均粒子径(D50)が200〜450μm
(c)150μm未満の粒子が0〜8質量%
(d)粒度分布の対数標準偏差(σζ)が0.20〜0.50
上記吸水性樹脂の表面近傍を、エステル結合を形成する表面架橋剤を添加後さらに加熱処理する工程と、
上記加熱処理中および/または加熱処理後の吸水性樹脂を雰囲気温度60℃以上の気流下に暴露する工程と、
を含む、粒子状吸水剤の製造方法。」
・「【0033】
本発明において、吸水性樹脂は、本発明を達成する上で、酸基および/またはその塩含有不飽和単量体を架橋重合して得られる架橋重合体を乾燥した吸水性樹脂であればよく、ポリカルボン酸系吸水性樹脂をより好適に用いることができる。中でも、さらに好ましくは、アクリル酸及び/又はその塩(中和物)を主成分とする不飽和単量体を重合・架橋することにより得られるポリアクリル酸部分中和物重合体が用いられる。」
・「【0050】
(4)架橋性単量体(内部架橋剤)
本発明で用いられる吸水性樹脂は上記不飽和単量体を重合することにより得られる架橋重合体を乾燥することにより得られるが、かかる架橋重合体は、架橋性単量体を使用しない自己架橋型のものであってもよいが、物性面から好ましくは、一分子中に2個以上の重合性不飽和基、2個以上の反応性基を有する架橋性単量体(吸水性樹脂の内部架橋剤とも言う)を共重合又は反応させることによって得られる。なお、架橋重合体であることは、上記水不溶性であることでも規定される。
【0051】
上記内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N´−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。」
・「【0072】
本発明の粒子状吸水剤に用いるために好ましい上記吸水性樹脂の粒径は、質量平均粒子径が通常150〜600μm、好ましくは180〜500μm、より好ましくは200〜450μm、特に好ましくは220〜430μmに狭く制御され、かつ、150μm未満の粒子の割合が、0〜8質量%、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜3質量%、特に好ましくは0〜1質量%に制御される。
・・・
【0074】
粒度の調整は、架橋重合体を逆相縣濁重合で製造した場合には、粒子状で分散重合および分散乾燥させて調整してもよいが、通常、特に水溶液重合の場合、乾燥後に粉砕および分級し、相反する質量平均粒子径D50と、粒子径150μm未満の粒子の割合を制御しながら、特定粒度に調整する。例えば、質量平均粒子径D50を400μm以下と小さくしながら、150μm未満の微粒子量を少なくするという特定粒度への調製では、必要により、上記粉砕後に粗粒子と微粒子とをふるい等の一般的な分級装置で除去してもよい。その際に除去される粗粒子としては、好ましくは5000μm〜400μmの粒子径を有する粒子、より好ましくは2000μm〜400μmの粒子径を有する粒子、さらに好ましくは1000μm〜400μmの粒子径を有する粒子である。また、粒度の調整により除去される微粒子としては、好ましくは200μm未満の粒子径を有する粒子、より好ましくは150μm未満の粒子径を有する粒子である。なお、除去された粗粒子はそのまま廃棄してもよいが、一般的には、再度、上記の粉砕工程で粉砕する。また、除去された微粒子は、次項(10)の、微粒子の大粒径化工程を行なえば、ロスを低減することができる。このようにして粉砕工程を経て特定の粒度に調整して得られた吸水性樹脂の形状は、不定形破砕状の形状を示す。」
・「【0090】
表面架橋剤を混合後の吸水性樹脂は加熱処理されることが好ましい。加熱温度(熱媒温度または材料温度)は、好ましくは120〜250℃の範囲内、より好ましくは150〜250℃の範囲内であり、加熱時間は、1分〜2時間の範囲内が好ましい。加熱温度と加熱時間の組み合わせの好適例としては、180℃で0.1〜1.5時間、200℃で0.1〜1時間である。」
・「【0170】
〔アクリル酸の製造例〕
市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm、p−メトキシフェノール200ppm)酸を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)などの除去後、さらに晶析を行なうことで、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm、フルフラール1ppm以下、プロトアネモニン1ppm以下)を得て、さらに蒸留後にp−メトキシフェノールを50ppm添加した。
【0171】
〔アクリル酸ナトリム水溶液の製法〕
上記アクリル酸1390gを米国特許5210298号の実施例9に従い、48%苛性ソーダを用いて20〜40℃で中和して、濃度37%で100%中和のアクリル酸ナトリウム水溶液を得た。
【0172】
〔参考例1〕
上記アクリル酸の製造例で得られたアクリル酸、該アクリル酸を用いて上記アクリル酸ナトリウム水溶液の製法で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)4.3gを溶解し反応液とした。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、反応液中の溶存酸素を除去した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液28.3g及びL−アスコルビン酸の1質量%水溶液1.5gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合開始後17分で重合ピーク温度86℃を示し、重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約1〜4mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、160℃で60分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂(a)を得た。得られた吸水性樹脂(a)の粒度分布を表2に示す。
・・・
【0174】
〔参考例3〕
上記アクリル酸の製造例で得られたアクリル酸、該アクリル酸を用いて上記アクリル酸ナトリウム水溶液の製法で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)7.5gを溶解し反応液とした。次に、この反応液を参考例1と同様に脱気したのち、参考例1の反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液28.3g及びL−アスコルビン酸の1質量%水溶液1.5gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。重合開始後17分で重合ピーク温度86℃を示し、重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は約1〜4mmの粒子に細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、160℃で60分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂(c)を得た。得られた吸水性樹脂(c)の粒度分布を表2に示す。
【0175】
〔実施例1〕
参考例1で得られた吸水性樹脂(a)100質量部に、エチレンカーボネート0.2質量部、グリセリン0.2質量部、水3質量部からなる表面架橋剤水溶液3.4質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度195℃で45分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(1)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(1)をさらに目開き710μmのふるいを通過させることにより、粒子状吸水剤(1)を得た。粒子状吸水剤(1)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率、吸収速度評価、粒度分布、白度を示すL値、a値およびb値、アルコール系揮発性物質の含有量、硫黄系揮発性物質量、残存モノマー量、残存エチレングリコール含有量を表1、表2に示した。
・・・
【0181】
〔実施例4〕
参考例3で得られた吸水性樹脂(c)100質量部に、エチレンカーボネート0.2質量部、グリセリン0.2質量部、水3質量部とからなる表面架橋剤水溶液3.4質量部を噴霧混合した。上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度200℃で45分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(4)を得た。得られた表面架橋された吸水性樹脂(4)をさらに目開き710μmのふるいを通過させることにより、粒子状吸水剤(4)を得た。粒子状吸水剤(4)の無加圧下吸収倍率、4.8kPaでの加圧下吸収倍率、吸収速度評価、粒度分布、白度を示すL値、a値およびb値、アルコール系揮発性物質の含有量、硫黄系揮発性物質量、残存モノマー量、残存エチレングリコール含有量を表1、表2に示した。」
・「【表1】

【表2】



イ 甲1に記載された発明
甲1には、実施例1の粒子状吸水剤(1)が記載されており、表1の記載内容も合わせみれば、下記の甲1実施例1発明が記載されていると認める。

<甲1実施例1発明>
「市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm、p−メトキシフェノール200ppm)酸を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)などの除去後、さらに晶析を行なうことで、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm、フルフラール1ppm以下、プロトアネモニン1ppm以下)を得て、さらに蒸留後にp−メトキシフェノールを50ppm添加し、上記アクリル酸1390gを米国特許5210298号の実施例9に従い、48%苛性ソーダを用いて20〜40℃で中和して、濃度37%で100%中和のアクリル酸ナトリウム水溶液を得、上記アクリル酸の製造例で得られたアクリル酸、該アクリル酸を用いて上記アクリル酸ナトリウム水溶液の製法で得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)4.3gを溶解し反応液とし、次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、反応液中の溶存酸素を除去し、続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液28.3g及びL−アスコルビン酸の1質量%水溶液1.5gを添加し、重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体は約1〜4mmの粒子に細分化されて、この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、160℃で60分間熱風乾燥し、次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂(a)を得、得られた吸水性樹脂(a)100質量部に、エチレンカーボネート0.2質量部、グリセリン0.2質量部、水3質量部からなる表面架橋剤水溶液3.4質量部を噴霧混合した混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度195℃で45分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(1)を得、得られた表面架橋された吸水性樹脂(1)をさらに目開き710μmのふるいを通過させることにより得られた粒子状吸水剤(1)であって、
その生理食塩水の無加圧下吸収倍率(CRC)が34g/gである、粒子状吸収剤(1)。」

(2)甲6に記載された発明
甲6には、甲6の[0579]〜[0584]、[0587]、[0589]、「0590]、[0598]、[0599]の記載から、実施例8として吸水性樹脂粉末(8)が記載されており、表3の記載内容も合わせみれば、下記の甲6実施例8発明が記載されていると認める。

<甲6実施例8発明>
「容量2Lのポリプロピレン製容器に、アクリル酸351.6g、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液144.9g、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)2.17g、キレート剤として0.1重量%のジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液94.6g、界面活性剤として1.0重量%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート水溶液(花王(株)製)6.45g、及び脱イオン水236.0gを投入した後、攪拌して単量体水溶液(c’)を作製し、次いで、上記単量体水溶液(c’)を攪拌しながら冷却し、液温が53℃となった時点で、30℃に調温した48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液148.9gを加えて単量体水溶液(c)を作製し、続いて、上記単量体水溶液(c)の液温が83℃に低下した時点で、当該単量体水溶液(c)を攪拌しながら3.8重量%の過硫酸ナトリウム水溶液15.3gを加え、直ぐにステンレス製バッド型重合容器に大気開放系で注いでおり、当該ステンレス製バッド型重合容器は、その大きさが底面340mm×340mm、高さ25mm、内面にテフロン(登録商標)を張り付けた容器であり、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1−1000/(株)井内盛栄堂製)を用いて、表面温度を40℃に加熱したもので、上記単量体水溶液(c)がバッド型重合容器に注がれて15秒後に重合が開始し、重合開始から3分経過後に、含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称する)(c)として取り出し、次に、上記重合工程で得られた含水ゲル(c)を、ミートチョッパー(MEAT−CHOPPER TYPE:12VR−400KSOX/飯塚工業(株)製;ダイ孔径:6.4mm、孔数:38、ダイ厚み:8mm)を用いてゲル粉砕し、粒子状の含水ゲル(c)を得、当該ゲル粉砕工程での含水ゲル(c)の投入量は350[g/分]であり、含水ゲル(c)の投入と並行して、90℃に調温した脱イオン水を80[g/分]で添加しており、続いて、上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(c)を、目開き850μmのステンレス製金網上に拡げて載せ、180℃で30分間、熱風乾燥し、次いで、ロールミル(WML型ロール粉砕機/(有)井ノ口技研社製)を用いて粉砕した後、目開き850μm及び45μmのJIS標準篩を用いて分級し、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(c)を得、容量120mLのポリプロピレン製容器にグリセリンカーボネート30gを投入した後、30℃のウォーターバスに浸漬して内容物のグリセリンカーボネートを加熱し、ウォーターバスで加熱した状態で貯蔵し、次に、前記操作で得られた溶融グリセリンカーボネート0.47重量部、プロピレングリコール0.75重量部及び脱イオン水4.0重量部からなる表面架橋剤溶液(8)を15g作製し、続いて、容量5Lレーディゲミキサー(レーディゲ社製)に前記吸水性樹脂粒子(c)300gを投入した後、高速回転させながら当該表面架橋剤溶液(8)12.3gを均一にスプレーし、混合し、その後、当該混合物全量を熱風乾燥機(熱風温度;180℃)に入れ、30分間加熱処理を行い、次いで、目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで粉砕を行って、表面が架橋された吸水性樹脂粒子(8)を得、その後、上記操作で得られた表面が架橋された吸水性樹脂粒子(8)100重量部に対して、多価金属カチオンとして27重量%(酸化アルミニウム換算で8重量%)の硫酸アルミニウム水溶液0.80重量部、α−ヒドロキシカルボン酸として60重量%の乳酸ナトリウム水溶液0.134重量部及びプロピレングリコール0.016重量部からなる水性液(8)を作製し、当該水性液(8)を表面が架橋された吸水性樹脂粒子(8)に均一にスプレーして混合し、無風条件下で60℃、1時間乾燥し、次いで、目開き850μmのJIS標準篩に通過させて得られた、吸水性樹脂粉末(8)であって、
そのSFCが78(×10−7・cm3・s・g−1)である、吸水性樹脂粉末(8)。」

(3)甲9に記載された発明
甲9の第14頁第7行〜第16頁には、実施例2として、実施例2の粉末状ポリマーが記載されているから、甲9には、下記の甲9実施例2発明が記載されていると認める。

<甲9実施例2発明>
「溶液内での重合により得られ、トリアリルアミンで架橋され、そして70モル%中和されてナトリウム塩として存在するポリアクリル酸を、乾燥、粉砕後、90〜850μmへ篩別し、そしてDE4020780に従って50%エチレンカーボネート溶液1重量%で後処理したもの1000kgを、二成分ノズルを用いて、グリセリン2kg、水10kgおよびエタノール12kgからなる溶液と連続的に混合し、すぐに貯蔵し、180℃の蒸気で加熱された鎌(sickle)型の混合エレメントを備えたパドルミキサーの中へ、表面架橋処理に供した該ポリマー粉末80kgを連続して絶え間なく投入し、およそ30分の平均滞在時間の後に、低温スクリューコンベヤー内で冷却して得られた粉末状ポリマーであって、
その保持量は36.5g/gである、粉末状ポリマー。」

(4)甲2に記載された発明
ア 甲2には以下の記載がある。
・「【0078】
OH/C比=[フッ素元素の元素百分率値]/[炭素元素の元素百分率値]/3
〔参考例1〕
シグマ型羽根を2本有する内容積10リットルのジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、71.3モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5438g(単量体濃度39重量%)にポリエチレングリコールジアクリレート(エチレングリコール繰り返し単位数:9)11.7g(0.10モル%)を溶解させて反応液とした。次に、この反応液から溶存酸素を窒素ガス雰囲気下で30分間除去した。続いて、反応液に10重量%過硫酸ナトリウム水溶液29.34gおよび0.1重量%L−アスコルビン酸水溶液24.45gを攪拌しながら添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、生成したゲルを粉砕しながら、20〜95℃で重合を行い、重合が開始して30分後に約1−3mmに細分化された含水ゲル状架橋重合体(1)を取り出した。この含水ゲル状架橋重合体(1)を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、175℃で50分間熱風乾燥した。このようにして、不定形で、容易に粉砕される粒子状乾燥物凝集体からなる吸水性樹脂塊状物を得た。
【0079】
得られた吸水性樹脂塊状物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級した。次に、前記の操作で600μmを通過した粒子を目開き150μmのJIS標準篩で分級することで、目開き150μmのJIS標準篩を通過した吸水性樹脂粒子を除去し、得られた吸水性樹脂粒子を吸水性樹脂粒子(a)とした。吸水性樹脂粒子(a)の可溶分量は7重量%であった。
〔参考例2〕
参考例1のポリエチレングリコールジアクリレート(エチレングリコール繰り返し単位数:9)量を6.39g(0.05モル%)に変更した以外は参考例1と同じ方法で吸水性樹脂塊状物を得た。
【0080】
得られた吸水性樹脂塊状物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き850μmのJIS標準篩で分級した。次に、前記の操作で850μmを通過した粒子を目開き150μmのJIS標準篩で分級することで、目開き150μmのJIS標準篩を通過した吸水性樹脂粒子を除去し、得られた吸水性樹脂粒子を吸水性樹脂粒子(b)とした。吸水性樹脂粒子(b)の可溶分量は10.5重量%であった。
〔実施例1〕
前記参考例1で得られた吸水性樹脂粒子(a)500gにD−ソルビトール10g、純水10gの混合液からなる表面処理剤を均一に混合し、得られた混合物(1)を攪拌器付きモルタルミキサーに入れ、210℃に調温したオイルバスに浸漬し、20分間、加熱架橋条件下で、攪拌下加熱架橋した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕することで粒子状吸水性樹脂組成物(1)を得た。諸物性を測定し、その結果を表1に示した。
【0081】
〔実施例2〕
前記参考例1で得られた吸水性樹脂粒子(a)500gにD−ソルビトール2.5g、1,4−ブタンジオール1.6g、純水15gの混合液からなる表面処理剤を均一に混合し、得られた混合物(2)を実施例1と同様に210℃で20分間加熱架橋した。さらに、同様に目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕することで粒子状吸水性樹脂組成物(2)を得た。諸物性を測定し、結果を表1に示した。」
・「【0085】
上記表1で示すように、本発明の粒子状吸水性樹脂組成物は液吸い上げ速度(WR)が格段に優れている上に、通液性と液吸い上げ特性とのバランス(SFC/WR)、ないし、加圧下吸水倍率と液吸い上げ特性とのバランス(AAP/WR)にも優れている。
本発明の粒子状吸水性樹脂組成物はCRC、AAP、SFCも高く、かつ、液吸い上げ速度(WR)が120秒以下と早い。しかも、通液吸い上げ効率(SFC/WR)が0.15以上と従来(0.1前後)に比べて格段に高く、加圧倍率吸い上げ効率(AAP/WR)が0.50以上と従来(0.4前後)に比べて格段に高い。
〔実施例4〜9、比較例3〜9〕
前記実施例1に記載の、参考例で得られた吸水性樹脂粒子、表面処理剤、加熱架橋条件、および、用いた標準篩を表2に示す条件に変更することで、粒子状吸水性樹脂組成物(4)〜(9)、比較粒子状吸水性樹脂組成物(3)〜(8)を得た。また、市販品としての吸水性樹脂粒子IM−1000(三洋化成社製)を比較粒子状吸水性樹脂組成物(9)とした。得られた粒子状吸水性樹脂組成物(4)〜(9)、比較粒子状吸水性樹脂組成物(3)〜(9)の性能を表2、3、4に示した。また、実施例4で得られた粒子状吸水性樹脂組成物(4)の含水率は0.2重量%であった。
【0086】

【0087】
【表3】



イ 甲2に記載された発明
甲2の上記アの記載から、実施例5として記載されている粒子状吸水性樹脂組成物(5)として、「甲2実施例5発明」が記載されていると認める。

(5)甲3に記載された発明
甲3の特許請求の範囲の請求項1ないし4、6及び7の記載から、甲3には、以下の高吸水性樹脂の発明が記載されていると認める。

<甲3発明>
「生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)が28g/g以上であり、生理食塩水に対する0.7psiの加圧吸水能(AUP)が22g/g以上であり、溶液透過度(SFC)が20×10-7cm3*sec/g以上であり、ゲル強度が7,000乃至11,000Paである高吸水性樹脂であって、
前記高吸水性樹脂は、酸性基を含み少なくとも一部が中和された水溶性エチレン系不飽和単量体を炭素数2乃至20のポリオールのジ(メタ)アクリレート、および炭素数2乃至20のポリオールのポリ(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上の内部架橋剤で重合させた粉末形態のベース樹脂を、ハンセン溶解度パラメータによって定義されるδpがδp<12(J/cm3)1/2を満たす物質、δHが4<δH<6(J/cm3)1/2を満たす物質、およびδtotがδtot>31(J/cm3)1/2を満たす物質からなる群より選択される1種以上で表面架橋させた架橋重合体を含むものであり、
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2−アクリロイルエタンスルホン酸、2−メタクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたは(N,N)−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体とその4級化物;からなる群より選択された1種以上であり、
前記内部架橋剤は、ポリエチレングリコールジアクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリントリアクリレート、およびトリメチロールトリアクリレートからなる群より選択される1種以上であり、
前記δHが4<δH<6(J/cm3)1/2を満たす物質は、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートからなる群より選択される1種以上であり、
前記δtotがδtot>31(J/cm3)1/2を満たす物質は、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、およびグリセロールからなる群より選択される1種以上である、
高吸水性樹脂。」

(6)甲4に記載された発明
甲4の特許請求の範囲の請求項1の記載から、甲4には、以下の発明が記載されていると認める。

<甲4発明>
「粉末状のベースポリマーを、炭素数2〜8のジオール系化合物または炭素数2〜8のグリコール系化合物を用いて表面架橋することにより得られる架橋ポリマーを含み、前記粉末状のベースポリマーは、少なくとも一部が中和された酸基を含有する水溶性エチレン系不飽和単量体を、2種類以上の内部架橋剤を用いて重合することによって得られ、遠心分離保持容量(CRC)が28g/g以上、0.9psi加重下吸水倍率(AUL)が18g/g以上、ゲルベッド透過率(GBP)が45Darcy以上、0.3psiの荷重下で、0.9重量%の生理食塩水を3度注入させた際の吸水速度が30〜200秒である、高吸水性ポリマー。」

2 申立理由1−1及び申立理由2−1(甲1に基づく新規性進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1実施例1発明を対比する。
甲1実施例1発明の「不定形破砕状の吸水性樹脂(a)」、「粒子状吸水剤(1)」は、それぞれ、本件発明1における「少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の第1架橋重合体を含むベース樹脂粉末」、「高吸水性樹脂」に相当する。
また、甲1実施例1発明においても、「エチレンカーボネート0.2質量部、グリセリン0.2質量部、水3質量部からなる表面架橋剤水溶液3.4質量部を噴霧混合した混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度195℃で45分間加熱処理して表面架橋」させているから、本件発明1の「前記ベース樹脂粉末上に形成されており、前記第1架橋重合体が表面架橋剤を媒介にさらに架橋された第2架橋重合体を含む表面架橋層を含む」との発明特定事項を有しているといえる。
甲1実施例1発明の「その生理食塩水の無加圧下吸収倍率(CRC)が34g/gである」「粒子状吸水剤(1)」は、甲1の段落【0153】と本件明細書の段落【0035】及び【0036】の記載から、本件発明1の「27g/g〜37g/gの遠心分離保持容量(CRC)を示し」との発明特定事項を満足している。

そうすると、本件発明1と甲1実施例1発明とは
「少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の第1架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および
前記ベース樹脂粉末上に形成されており、前記第1架橋重合体が表面架橋剤を媒介にさらに架橋された第2架橋重合体を含む表面架橋層を含む高吸水性樹脂。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。

<相違点1−1>
「表面架橋剤」に関し、本件発明1は、
「前記表面架橋剤は、複数種の環状アルキレンカーボネートの混合物を含み、前記混合物は、水素結合成分(hydrogen bonding component)によるハンセン溶解度パラメーター(Hansen solubility parameter)が13MPa1/2以上であり、
前記混合物は、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが10〜13MPa1/2の第1環状アルキレンカーボネートと、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが16〜20MPa1/2の第2環状アルキレンカーボネートとを含み、
前記混合物の水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターは、前記混合物に含まれた各環状アルキレンカーボネートのパラメーター値の重量平均値で算出され」と特定するのに対し、甲1実施例1発明は、「エチレンカーボネート0.2質量部、グリセリン0.2質量部、水3質量部からなる」ものである点

<相違点1−2>
「高吸水性樹脂」の物性に関し、本件発明1は「27g/g〜37g/gの遠心分離保持容量(CRC)を示し、23〜35darcyのゲルベッド透過率(GBP)を示す」と特定するのに対し、甲1実施例1発明は、「生理食塩水の無加圧下吸収倍率(CRC)が34g/gである」ものの、GBPについての特定がない点

イ 判断
まず、新規性について判断する。
相違点1−1について
甲1実施例1発明の表面架橋剤は、「エチレンカーボネート」と「グリセリン」であるから、本件発明1の相違点1−1に係る発明特定事項で特定する表面架橋剤の要件を満たさない。
特許異議申立人は、甲1実施例1発明の「エチレンカーボネート」と「グリセリン」であっても、甲5によれば、同じ表面架橋構造となる旨主張するが、まず、異なる化合物による表面架橋により得られる構造が同じ構造となるとはいえない。また、部分構造として同じ構造ができるとしても、架橋構造全体が同じものになることとは全く異なる。よって、特許異議申立人の主張は採用できない。
そうすると、相違点1−1は、実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1実施例1発明、すなわち、甲1に記載された発明であるとはいえない。
次に、進歩性について検討する。
相違点1−1に係る発明特定事項を開示する証拠は提示されておらず、当業者において、相違点1−1に係る発明特定事項が周知であったものともいえない。
そして、甲1実施例1発明の表面架橋剤として、相違点1−1に係る発明特定事項とする動機もない。
してみれば、甲1実施例1発明において、相違点1−1に係る発明特定事項とすることは当業者といえども容易に想到し得たことではない。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1実施例1発明、すなわち、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明2ない8について
本件発明2ないし8は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものでもない。

(3)まとめ
よって、申立理由1−1及び申立理由2−1には理由がない。

3 申立理由1−2及び申立理由2−5(甲6に基づく新規性進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲6実施例8発明を対比すると、
「少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の第1架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および
前記ベース樹脂粉末上に形成されており、前記第1架橋重合体が表面架橋剤を媒介にさらに架橋された第2架橋重合体を含む表面架橋層を含む高吸水性樹脂。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。

<相違点6−1>
「表面架橋剤」に関し、本件発明1は、
「前記表面架橋剤は、複数種の環状アルキレンカーボネートの混合物を含み、前記混合物は、水素結合成分(hydrogen bonding component)によるハンセン溶解度パラメーター(Hansen solubility parameter)が13MPa1/2以上であり、
前記混合物は、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが10〜13MPa1/2の第1環状アルキレンカーボネートと、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが16〜20MPa1/2の第2環状アルキレンカーボネートとを含み、
前記混合物の水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターは、前記混合物に含まれた各環状アルキレンカーボネートのパラメーター値の重量平均値で算出され」と特定するのに対し、甲6実施例8発明は、「溶融グリセリンカーボネート0.47重量部、プロピレングリコール0.75重量部及び脱イオン水4.0重量部からなる表面架橋剤溶液(8)」を用いるものである点

<相違点6−2>
「高吸水性樹脂」の物性に関し、本件発明1は「27g/g〜37g/gの遠心分離保持容量(CRC)を示し、23〜35darcyのゲルベッド透過率(GBP)を示す」と特定するのに対し、甲6実施例8発明は、「SFCは78(×10−7・cm3・s・g−1)」であるものの、CRC及びGBPについての特定はない点

イ 判断
まず、新規性について判断する。
相違点6−1について
甲6実施例8発明の表面架橋剤は、「溶融グリセリンカーボネート」と「プロピレングリコール」であるから、本件発明1の相違点6−1に係る発明特定事項で特定する表面架橋剤の要件を満たさない。
特許異議申立人は、甲6実施例8発明の「溶融グリセリンカーボネート」と「プロピレングリコール」であっても、甲5によれば、同じ表面架橋構造となる旨主張するが、この点は、上記2(1)と同様に判断される。
そうすると、相違点6−1は、実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6実施例8発明、すなわち、甲6に記載された発明であるとはいえない。
次に、進歩性について検討する。
相違点6−1に係る発明特定事項を開示する証拠は提示されておらず、当業者において、相違点6−1に係る発明特定事項が周知であったものともいえない。
そして、甲6実施例8発明の表面架橋剤として、相違点6−1に係る発明特定事項とする動機もない。
してみれば、甲6実施例8発明において、相違点6−1に係る発明特定事項とすることは当業者といえども容易に想到し得たことではない。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲6実施例8発明、すなわち、甲6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明2ない8について
本件発明2ないし8は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に、甲6に記載された発明でないし、甲6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものでもない。

(3)まとめ
よって、申立理由1−2及び申立理由2−5には理由がない。

4 申立理由1−3及び申立理由2−6(甲9に基づく新規性進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲9実施例2発明を対比すると、
「少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の第1架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および
前記ベース樹脂粉末上に形成されており、前記第1架橋重合体が表面架橋剤を媒介にさらに架橋された第2架橋重合体を含む表面架橋層を含む高吸水性樹脂。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。

<相違点9−1>
「表面架橋剤」に関し、本件発明1は、
「前記表面架橋剤は、複数種の環状アルキレンカーボネートの混合物を含み、前記混合物は、水素結合成分(hydrogen bonding component)によるハンセン溶解度パラメーター(Hansen solubility parameter)が13MPa1/2以上であり、
前記混合物は、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが10〜13MPa1/2の第1環状アルキレンカーボネートと、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが16〜20MPa1/2の第2環状アルキレンカーボネートとを含み、
前記混合物の水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターは、前記混合物に含まれた各環状アルキレンカーボネートのパラメーター値の重量平均値で算出され」と特定するのに対し、甲9実施例2発明は、「エチレンカーボネート溶液1重量%で後処理し、」その後「グリセリン2kg、水10kgおよびエタノール12kgからなる溶液」で行うものである点

<相違点9−2>
「高吸水性樹脂」の物性に関し、本件発明1は「27g/g〜37g/gの遠心分離保持容量(CRC)を示し、23〜35darcyのゲルベッド透過率(GBP)を示す」と特定するのに対し、甲9実施例2発明は、「保持量は36.5g/g」であるものの、GBPについての特定はない点

イ 判断
まず、新規性について判断する。
相違点9−1について
甲9実施例2発明の表面架橋剤は、最初に「エチレンカーボネート」で行い、次に「グリセリン」でおこなうものであって本件発明1のように2種類で同時に行うものではないし、その2種類の種類についても本件発明1の相違点9−1に係る発明特定事項で特定する表面架橋剤の要件を満たさない。
特許異議申立人は、甲9実施例2発明の順次行う「エチレンカーボネート」と「グリセリン」であっても、当業者の技術常識及び甲5によれば、同じ表面架橋構造となる旨主張するが、この点は、上記2(1)と同様に判断される。
そうすると、相違点9−1は、実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲9実施例2発明、すなわち、甲9に記載された発明であるとはいえない。
次に、進歩性について検討する。
相違点9−1に係る発明特定事項を開示する証拠は提示されておらず、当業者において、相違点9−1に係る発明特定事項が周知であったものともいえない。
そして、甲9実施例2発明の表面架橋剤として、相違点9−1に係る発明特定事項とする動機もない。
してみれば、甲9実施例2発明において、相違点9−1に係る発明特定事項とすることは当業者といえども容易に想到し得たことではない。
したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲9実施例2発明、すなわち、甲9に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明2ない8について
本件発明2ないし8は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に、甲9に記載された発明でないし、甲9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものでもない。

(3)まとめ
よって、申立理由1−3及び申立理由2−6には理由がない。

5 申立理由2−2(甲2に基づく進歩性)、申立理由2−3(甲3に基づく進歩性)及び申立理由2−4(甲4に基づく進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2実施例5発明、甲3発明及び甲4発明とを、それぞれ対比すると、いずれも少なくとも次の相違点を有する。

<相違点>
「表面架橋剤」に関し、本件発明1は、
「前記表面架橋剤は、複数種の環状アルキレンカーボネートの混合物を含み、前記混合物は、水素結合成分(hydrogen bonding component)によるハンセン溶解度パラメーター(Hansen solubility parameter)が13MPa1/2以上であり、
前記混合物は、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが10〜13MPa1/2の第1環状アルキレンカーボネートと、前記水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターが16〜20MPa1/2の第2環状アルキレンカーボネートとを含み、
前記混合物の水素結合成分によるハンセン溶解度パラメーターは、前記混合物に含まれた各環状アルキレンカーボネートのパラメーター値の重量平均値で算出され」と特定するのに対し、甲2実施例5発明、甲3発明及び甲4発明には、いずれにもそのような特定はない点

上記相違点について検討する。
甲2実施例5発明、甲3発明及び甲4発明の表面架橋剤は、いずれも本件発明1のものとは全く異なるものであって、本件発明1の相違点に係る発明特定事項で特定する表面架橋剤の要件を満たさない。
そして、相違点に係る発明特定事項を開示する証拠は提示されておらず、当業者において、相違点に係る発明特定事項が周知であったものともいえない。
また、甲2実施例5発明、甲3発明及び甲4発明の表面架橋剤として、相違点に係る発明特定事項とする動機もない。
してみれば、甲2実施例5発明、甲3発明及び甲4発明において、相違点に係る発明特定事項とすることは当業者といえども容易に想到し得たことではない。
したがって、本件発明1は、甲2実施例5発明、甲3発明及び甲4発明、すなわち、甲2に記載された発明、甲3に記載された発明及び甲4に記載された発明のいずれに基づいても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本件発明2ない8について
本件発明2ないし8は、いずれも、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、請求項1に記載された発明特定事項を全て備えるものであるから、本件発明1と同様に、甲2に記載された発明、甲3に記載された発明及び甲4に記載された発明のいずれに基づいても当業者が容易に発明をすることできたものでもない。

(3)まとめ
よって、申立理由2−2、申立理由2−3及び申立理由2−4には、いずれも理由がない。

6 申立理由3(実施可能要件)について
(1)判断基準
上記第2のとおり、本件発明1ないし3は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
また、本件発明4〜8は本件発明1ないし3を製造する方法の発明であるところ、物の製造方法の発明において、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その製造方法を使用し、その製造方法により生産した物を使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。

(2)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明1の各発明特定事項及びその製造方法について具体的に記載されており、また、本件発明1の実施例である実施例1ないし4についても、その製造方法を含め具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。また、本件発明2及び3についても、本件発明1と同様である。
また、本件発明4の製造方法にかかる発明についても、当業者は、発明の詳細な説明の記載内容及び出願時の技術常識に基づき、その製造方法を使用し、かつ、その製造方法により生産した高吸水性樹脂を使用することができるものであり、当業者がその実施にあたり、過度の試行錯誤を要するものともいえない。本件発明5ないし8も同様である。
特許異議申立人は、上記第3 10において記載するように主張するが、たとえそのような粒子径のものが入っていない高吸水性樹脂であったとしても、粉砕等を行ってそのような大きさにして測定すればよいのであって、上記主張は、実施可能要件の判断とは関係がない主張であり、採用できない。
よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足するものといえる。

(3)まとめ
よって、申立理由3には理由がない。

第5 むすび
上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。


 
異議決定日 2022-07-25 
出願番号 P2019-520363
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C08J)
P 1 651・ 113- Y (C08J)
P 1 651・ 536- Y (C08J)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 植前 充司
大島 祥吾
登録日 2021-09-24 
登録番号 6949111
権利者 エルジー・ケム・リミテッド
発明の名称 高吸水性樹脂およびその製造方法  
代理人 特許業務法人池内アンドパートナーズ  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ