ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 D01F 審判 全部申し立て 特29条の2 D01F 審判 全部申し立て 2項進歩性 D01F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 D01F 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 D01F |
---|---|
管理番号 | 1387546 |
総通号数 | 8 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-08-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-05-06 |
確定日 | 2022-07-29 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6963539号発明「セルロース微細繊維及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6963539号の請求項1〜7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6963539号の請求項1〜7に係る特許についての出願は、平成29年2月28日に出願した特願2017−35663号の出願の一部を、平成30年9月12日に新たな特許出願としたものであって、令和3年10月19日にその特許権の設定登録がされ、令和3年11月10日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和4年5月6日に特許異議申立人吉田淳一(以下「申立人」という。)により、本件特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 特許第6963539号の請求項1〜7に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1〜7を「本件発明」と総称することもある。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 セルロース繊維に、亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)、並びに尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方からなる添加物(B)を添加し、加熱及び洗浄した後に、解繊して、セルロース微細繊維を固形分0.2%(w/v)溶液とした場合における分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)が40.0%以上となるように亜リン酸のエステル及びカルバメートを導入する、 ことを特徴とするセルロース微細繊維の製造方法。 【請求項2】 セルロース繊維のヒドロキシ基の一部に、置換度0.01〜0.50となるようにカルバメートが導入されている、 請求項1に記載のセルロース微細繊維の製造方法。 【請求項3】 前記解繊により、セルロース微細繊維の軸比(繊維長/繊維幅)を3〜1,000,000として、セルロース微細繊維の濃度を1質量%(w/w)とした場合における分散液のJIS−Z8803(2011)に準拠して測定したB型粘度を10〜300,000cpsとする、 請求項1又は請求項2に記載のセルロース微細繊維の製造方法。 【請求項4】 前記加熱を、100〜210℃で行う、 請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロース微細繊維の製造方法。 【請求項5】 前記添加物(A)が亜リン酸水素ナトリウムからなる、 請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロース微細繊維の製造方法。 【請求項6】 繊維幅が1〜1000nmであり、 セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、下記構造式(1)に示す官能基で置換されて、亜リン酸のエステルが導入され、 かつ前記セルロース繊維のヒドロキシ基の一部に置換度0.01〜0.50となるようにカルバメートが導入されて、 セルロース微細繊維を固形分0.2%(w/v)溶液とした場合における分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)が40.0%以上とされている、 ことを特徴とするセルロース微細繊維。 【化1】 構造式(1)において、αは、なし、R、及びNHRのいずれかである。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基のいずれかである。βは有機物又は無機物からなる陽イオンである。 【請求項7】 繊維幅が1〜1000nmであり、 セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、下記構造式(2)に示す官能基で置換されて、亜リン酸エステルのナトリウム塩が導入され、 かつ前記セルロース繊維のヒドロキシ基の一部に置換度0.01〜0.50となるようにカルバメートが導入されて、 セルロース微細繊維を固形分0.2%(w/v)溶液とした場合における分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)が40.0%以上とされている、 ことを特徴とするセルロース微細繊維。 【化2】 構造式(2)において、αは、なし、R、及びNHRのいずれかである。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和-分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基のいずれかである。」 第3 申立理由の概要 申立人は、以下に示す甲第1号証〜甲第6号証(以下「甲1」等という。)を提出し、本件発明1〜7に係る特許は、以下の理由により、取り消すべきものである旨を主張する。 1 申立理由1(新規性) 本件発明1〜7は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2 申立理由2(進歩性) 本件発明1〜7は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 3 申立理由3(拡大先願) (1)本件発明1〜7は、その出願の日前の特許出願(特願2015−193327号。甲5に係る特許出願。)であって、本件特許の出願後に出願公開がされた願書に最初に添付された明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 (2)本件発明1〜7は、その出願の日前の特許出願であって、特許法第41条第1項の規定による優先権の基礎とされ、同法第184条の15第2項の規定により読み替えて適用される同法第41条第3項の規定により、本件特許の出願後に国際公開がされた時に出願公開がされたものとみなされる特許出願(特願2016−71161号。甲6に係る日本語特許出願の優先権の基礎とされた特許出願。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者がその出願の日前の上記特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。 4 申立理由4(サポート要件) 亜リン酸水素ナトリウム以外の亜リン酸金属塩類や亜リン酸類も包含する本件発明1〜4、6の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないため、本件特許は、本件発明1〜4、6が発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合しないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。 5 申立理由5(実施可能要件) 本件特許明細書の実施例においては、リンオキソ酸化試薬の水分量が明らかにされておらず、本件特許明細書の表2に記載されたカルバメート基量(置換率)を達成するために、いかなるリンオキソ酸化試薬を用いてよいのか理解することができないため、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件発明1〜7の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものに適合しないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 [引用文献等一覧] 甲1:特開2015−189698号公報 甲2:国際公開第2014/185505号 甲3:古畑朋彦,外2名,“高温雰囲気中における尿素の熱分解挙動”,日本機械学会論文集(B編),2011年(平成23年)9月,77巻781号,170〜179ページ 甲4:国際公開第2006/035696号 甲5:特開2017−66272号公報 甲6:国際公開第2017/170908号 第4 当審の判断 1 申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)について (1)引用文献の記載 甲1には、次の事項が記載されている。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 1000nm以下の繊維幅を有し、かつ繊維を構成するセルロースのヒドロキシ基の一部がリンオキソ酸基で置換された微細繊維状セルロースを含む増粘剤。 ・・・ 【請求項3】 微細繊維状セルロースが、セルロースのヒドロキシ基の一部が、下記構造式(1): 【化1】 [式中、 a、b、m、nは自然数であり(ただし、a=b×mである)、 α1、α2、・・・、αn及びα’のうちの少なくとも1つはO−であり、残りはR又はORであり、 Rは、各々独立して、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基又はこれらの誘導基であり、 βは有機物又は無機物からなる1価以上の陽イオンである] で表されるリンオキソ酸基で置換されたものである、請求項1又は2に記載の増粘剤。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、セルロース系水溶性増粘剤、ならびにセルロース系水溶性増粘剤を含む組成物及び化粧料組成物に関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 特許文献2のセルロース系の増粘剤は、塩類等の電解質や高濃度のイオン性界面活性剤の共存下では増粘性が低下するだけでなく、セルロース粒子が沈降し、分散体としての形を取ることができないなどの難点がある。特許文献3のゲル状組成物は、塩やイオン性界面活性剤等の共存下でも高い粘性を保持することができるが、カルボキシル基を有する化合物はpH5以下の酸性化では、カルボキシル基の乖離が抑えられ、粘度が極端に低下してしまうという問題がある。このため、酸性条件が要求される処方では使用することができない。 【0006】 特に使用感が重要なポイントを占める化粧料のゲル化剤としては、この特徴は致命的な欠点となることがある。例えば、pH5以下の酸性条件下では、増粘剤として用いられる架橋ポリ(メタ)アクリル酸は急激な粘度低下を起こすため、十分な粘度を保持するためにはその配合量を大幅に増やさなければならず、その結果、使用感が悪くなるという問題がある。 【0007】 したがって、本発明は、様々な用途に適用可能な、耐酸性を有する水溶性増粘剤を提供することを目的とする。」 「【0011】 <微細繊維状セルロース> 本発明の増粘剤は、1000nm以下の繊維幅を有し、かつ繊維を構成するセルロースのヒドロキシ基の一部がリンオキソ酸基で置換された微細繊維状セルロースを含む。微細繊維状セルロースは、通常製紙用途で用いるパルプ繊維よりもはるかに細いセルロース繊維又は棒状粒子をさす。 【0012】 リンオキソ酸基は、リン原子にヒドロキシ基とオキソ基が結合した基をさし、例えば、下記構造式(1)で表すことができる。 【0013】 【化2】 【0014】 構造式(1)において、a、b、m、nは自然数である(ただし、a=b×mである。)。α1、α2、・・・、αn及びα’のうちの少なくとも1つはO−であり、残りはR又はORである。αn及びα’の全てがO−であっても構わない。nが2以上であり、α’がR又はORである場合には、各αnのうちの少なくとも1つがO−で残りがR又はORである。nが2以上であり、α’がO−である場合には、各αnは全てRであってもよいし、全てORであってもよいし、少なくとも1つがO−で残りがR又はORであってもよい。好ましくは、αn及びα’の全てがO−であり、nは1であり、βb+はアルカリ金属イオン、特にNa+であり、mは2であり、aは2である。 ・・・ 【0019】 βは有機物又は無機物からなる1価以上の陽イオンである。有機物からなる1価以上の陽イオンとしては、脂肪族アンモニウム、芳香族アンモニウムが挙げられ、無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属のイオンや、カルシウム、マグネシウム等の2価金属の陽イオン、水素イオン等が挙げられる。これらは1種又は2種類以上を組み合わせて適用することもできる。有機物又は無機物からなる1価以上の陽イオンとしては、βを含む繊維原料を加熱した際に黄変しにくく、また工業的に利用し易いナトリウム、カリウムのイオンが好ましい。」 「【0022】 本発明の微細繊維状セルロースの繊維幅は電子顕微鏡で観察して1nm〜1000nmが好ましく、より好ましくは2nm〜500nm、さらに好ましくは4nm〜100nmである。微細繊維状セルロースの繊維幅が1nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細繊維状セルロースとしての物性(良好な増粘性)が発現しなくなる。一方、1000nmを超えると微細繊維状セルロースとは言えず、通常のパルプに含まれる繊維にすぎないため、ゲル状とならず十分な増粘効果を発揮しない。」 「【0028】 本発明の微細繊維状セルロースの繊維長及びアスペクト比は、繊維が長ければ長いほど、アスペクト比は高ければ高いほど、増粘剤として用いるために好ましい。繊維長は、TEMやSEM、AFMの画像解析より求めることができる。上記繊維長は、微細繊維の30質量%以上を占める繊維長である。」 「【0034】 <微細繊維状セルロースの製造> 上記の微細繊維状セルロースは、セルロースを含む繊維原料を、リンのオキソ酸又はその塩から選ばれる少なくとも1種の化合物(以下、「化合物A」という)により処理して、セルロースにリンオキソ酸基を導入するリンオキソ酸基導入工程(a)と、該工程(a)終了後に、リンオキソ酸基を導入したセルロース(以下、「リンオキソ酸基導入セルロース」という)を解繊処理する解繊処理工程(b)により製造できる。」 「【0039】 本発明で使用する化合物Aとしては、リン酸及びポリリン酸などのリン酸基を有する化合物、亜リン酸、ホスホン酸、ポリホスホン酸又はこれらの塩若しくはエステルが挙げられる。」 「【0044】 工程(a)においては加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度は、セルロースの熱分解温度の点から、250℃以下であることが好ましい。また、セルロースの加水分解を抑える観点から、加熱処理温度は100〜170℃であることが好ましい。さらに、加熱処理の際に化合物Aを添加した繊維原料スラリーに水が含まれている間の加熱については、好ましくは130℃以下、より好ましくは110℃以下で加熱して充分にスラリーの水分を除去乾燥した後、100〜170℃で加熱処理することが好ましい。また、スラリー中の水分を除く際には減圧乾燥機を用いてもよい。」 「【実施例】 【0080】 (製造例1) リン酸化微細セルロース(微細セルロース1)の調製: 尿素100g、リン酸二水素ナトリウム二水和物55.3g、リン酸水素二ナトリウム41.3gを109gの水に溶解させてリン酸化試薬を調製した。 【0081】 乾燥した針葉樹晒クラフトパルプの抄上げシートをカッターミル及びピンミルで処理し、綿状の繊維にした。この綿状の繊維を絶乾質量で100g取り、リン酸化試薬をスプレーでまんべんなく吹きかけた後、手で練り合わせ、薬液含浸パルプを得た。 【0082】 得られた薬液含浸パルプを140℃に加熱したダンパー付きの送風乾燥機にて、80分間加熱処理し、リン酸化パルプを得た。 【0083】 得られたリン酸化パルプをパルプ質量で100g分取し、10Lのイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。次いで、得られた脱水シートを10Lのイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加し、pHが12〜13のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、10Lのイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。 【0084】 脱水洗浄後に得られたセルロース繊維にイオン交換水を添加し、0.5質量%のスラリーを調製した。このスラリーを、解繊処理装置(エムテクニック社製、クレアミックス−11S)を用いて、6900回転/分の条件で180分間解繊処理した。その後、イオン交換水を添加してスラリー固形分濃度0.25質量%に調整し、冷却高速遠心分離機(コクサン社、H−2000B、RNローター、CKN1コレクタ)を用いて連続遠心を行った。この時、解繊液を送液ポンプにて100ml/分で送液し、18000G条件で遠心分離を行った。得られた上澄み液を回収し、微細セルロース繊維含有スラリーを得た。得られた微細セルロース繊維を「微細セルロース1」とした。また、X線回折により、セルロースはセルロースI型結晶を維持しており、FT−IRによる赤外線吸収スペクトルの測定により、1230〜1290cm−1にリン酸基に基づく吸収が見られ、リン酸基の付加が確認された。よって、得られたリン酸オキソ酸導入セルロースは、セルロースのヒドロキシ基の一部が下記構造式(2)の官能基で置換されたものであった。 【0085】 【化3】 」 「【0094】 【表1】 」 「【0097】 【表2】 」 甲1の上記記載から、特に、製造例1(【0080】〜【0085】)に着目すると、甲1には、次の発明(以下「甲1方法発明」という。)が記載されているものと認められる。 「尿素100g、リン酸二水素ナトリウム二水和物55.3g、リン酸水素二ナトリウム41.3gを109gの水に溶解させてリン酸化試薬を調製し、 乾燥した針葉樹晒クラフトパルプの抄上げシートをカッターミル及びピンミルで処理し、綿状の繊維にし、この綿状の繊維を絶乾質量で100g取り、リン酸化試薬をスプレーでまんべんなく吹きかけた後、手で練り合わせ、薬液含浸パルプを得て、 得られた薬液含浸パルプを140℃に加熱したダンパー付きの送風乾燥機にて、80分間加熱処理し、リン酸化パルプを得て、 得られたリン酸化パルプをパルプ質量で100g分取し、10Lのイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返し、次いで、得られた脱水シートを10Lのイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加し、pHが12〜13のパルプスラリーを得て、その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、10Lのイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返し、 脱水洗浄後に得られたセルロース繊維にイオン交換水を添加し、0.5質量%のスラリーを調製し、このスラリーを、解繊処理装置(エムテクニック社製、クレアミックス−11S)を用いて、6900回転/分の条件で180分間解繊処理し、その後、イオン交換水を添加してスラリー固形分濃度0.25質量%に調整し、冷却高速遠心分離機(コクサン社、H−2000B、RNローター、CKN1コレクタ)を用いて連続遠心を行い、この時、解繊液を送液ポンプにて100ml/分で送液し、18000G条件で遠心分離を行い、得られた上澄み液を回収し、微細セルロース繊維含有スラリーを得て、 リン酸基が付加され、セルロースのヒドロキシ基の一部が、下記構造式(2)の官能基で置換されたリン酸導入セルロースである、 微細セルロース繊維の製造方法。 」 また、甲1の上記記載から、特に、請求項1に係る増粘剤に含まれる微細繊維状セルロースにおいて、【0022】の記載を参照しつつ、リンオキソ酸基の陽イオンとしてNa+を選択し(【0012】〜【0014】、【0019】)、リンオキソ酸基で置換するための処理に用いられる化合物Aとして亜リン酸又はその塩を選択した(【0034】、【0039】)ものに着目すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「1nm〜1000nm以下の繊維幅を有し、かつ繊維を構成するセルロースのヒドロキシ基の一部がリンオキソ酸基で置換された微細繊維状セルロースであって、 リンオキソ酸基の陽イオンが、Na+であり、 セルロースを含む繊維原料を、亜リン酸又はその塩により処理して、セルロースにリンオキソ酸基を導入した、 微細繊維状セルロース。」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1方法発明とを対比すると、甲1方法発明の「加熱処理」は「加熱」することに、以下同様に、「脱水洗浄」は「洗浄」することに、「解繊処理」は「解繊」することに、「微細セルロース繊維」は「セルロース微細繊維」に、それぞれ相当する。 甲1方法発明の「尿素」は、「109gの水に溶解させてリン酸化試薬を調製」するものなので、本件発明1の「尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方からなる添加物(B)」に相当する。 甲1方法発明の「109gの水に溶解させてリン酸化試薬を調製」する「リン酸二水素ナトリウム二水和物」、「リン酸水素二ナトリウム」と本件発明1の「亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)」とは、「添加物(A)」の限りで一致する。 そして、甲1方法発明の「綿状の繊維を絶乾質量で100g取り、リン酸化試薬をスプレーでまんべんなく吹きかけた後、手で練り合わせ、薬液含浸パルプを得」ることは、セルロース繊維に添加物を添加しているといえ、本件発明1の「セルロース繊維」に「添加物(A)」及び「添加物(B)を添加」する態様に相当する。 また、セルロースにリン酸基が付加され、ヒドロキシ基の一部が甲1方法発明における構造式(2)の官能基で置換されることは、リン酸のエステルが導入されることといえるから、甲1方法発明の「リン酸基が付加され、セルロースのヒドロキシ基の一部が」、構造式(2)の「官能基で置換されたリン酸導入セルロースである」ことと、本件発明1の「セルロース微細繊維を固形分0.2%(w/v)溶液とした場合における分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)が40.0%以上となるように亜リン酸のエステル及びカルバメートを導入する」こととは、「添加物(A)に由来するエステルを導入する」ことの限りで一致する。 そうすると、本件発明1と甲1方法発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点1] 「セルロース繊維に、添加物(A)、並びに尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方からなる添加物(B)を添加し、加熱及び洗浄した後に、解繊して、添加物(A)に由来するエステルを導入する、 セルロース微細繊維の製造方法。」 [相違点1] 「添加物(A)」及び「添加物(A)に由来するエステルを導入する」ことに関して、本件発明1は、「添加物(A)」が「亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)」であり、「セルロース微細繊維を固形分0.2%(w/v)溶液とした場合における分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)が40.0%以上となるように亜リン酸のエステル及びカルバメートを導入する」のに対して、甲1方法発明は、「添加物(A)」が「リン酸二水素ナトリウム二水和物」、「リン酸水素二ナトリウム」であり、「リン酸基が付加され、セルロースのヒドロキシ基の一部が」、構造式(2)の「官能基で置換されたリン酸導入セルロースである」点。 イ 新規性についての判断 相違点1について検討するに、「リン酸二水素ナトリウム二水和物」、「リン酸水素二ナトリウム」は「亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)」ではなく、相違点1は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1方法発明ではない。 ウ 進歩性についての判断 相違点1について検討する。 相違点1に係る本件発明1の構成について、本件特許の発明の詳細な説明には次の記載がある(下線は、参考のため当審が付与したものである。)。 「(セルロース微細繊維)本形態のセルロース微細繊維は、セルロース繊維のヒドロキシ基(−OH基)の一部が、下記構造式(1)、好ましくは下記構造式(2)に示す官能基で置換されて、亜リン酸のエステル、好ましくは亜リン酸エステルのナトリウム塩が導入(修飾、変性)された(エステル化された)ものである。より好ましくは、セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、カルバメート基で置換されて、カルバメート(カルバミン酸のエステル)も導入されたものである。」(【0013】) 「亜リン酸のエステルは、リン原子にヒドロキシル基(ヒドロキシ基)(−OH)及びオキソ基(=O)が結合しており、かつそのヒドロキシル基が酸性プロトンを与える化合物である。故に、亜リン酸のエステルは、リン酸基を有する化合物と同様にマイナス電荷が高い。したがって、亜リン酸のエステルを導入すると、セルロース分子間の反発が強くなり、セルロース繊維の解繊が容易になる。また、亜リン酸のエステルを導入すると、分散液の透明度や粘度が向上する。特に、亜リン酸のエステルと共にカルバメートをも導入すると、透明度や粘度がより向上する。この点、カルバメートは、アミノ基を有する。したがって、カルバメートを導入すると、プラス電荷をも有することになる。故に、カルバメートをも導入すると、亜リン酸のエステル及びカルバメートによる電荷的相互作用が高まり、粘度が向上するものと考えられる。なお、カルバメートは、同時にリン酸基を有する化合物を導入する場合よりも、亜リン酸のエステルを導入する場合の方が、より導入し易くなる。」(【0016】) 「さらに、亜リン酸のエステルを導入した場合は、リン酸基を有する化合物を導入した場合と異なり、得られるセルロース微細繊維の黄変化が防止される。この点、この黄変化が防止されるとの効果は、リンのオキソ酸一般を導入することで得られる効果ではなく、亜リン酸のエステルを導入した場合のみに得られる効果である。したがって、黄変化を防止するとの観点では、リンのオキソ酸という概念は意味を有しない。亜リン酸のエステルに黄変化防止効果が存在することは、本発明者等が独自に発見したものである。」(【0017】) 「なお、本発明者等は、リン酸基を有する化合物を導入した場合に黄変化し易いのは、メイラード反応や還元反応によってセルロースに二重結合が生じ易くなるためではないかと考える。亜リン酸のエステルよりもリン酸基を有する化合物の方が水素の数が多いため、pHが低くなる。そして、pHが低い方が、アミンと糖との反応が生じ易くなり、又はセルロースが還元し易くなる。したがって、リン酸基を有する化合物を導入しようとすると、加熱時にセルロースが分解して糖が生成し易くなり、又はセルロースが還元し易くなる。結果、リン酸基を有する化合物を導入する場合の方が、黄変化し易くなるのである。」(【0018】) すなわち、相違点1に係る本件発明1の構成は、セルロース微細繊維の黄変化を防止するために選択されたものである。 一方、甲1方法発明は、「耐酸性を有する水溶性増粘剤を提供すること」(甲1の【0007】)を課題とする発明であり、そのために「リン酸基が付加され、セルロースのヒドロキシ基の一部が」、構造式(2)の「官能基で置換されたリン酸導入セルロース」としたものである。 甲1方法発明は、「尿素100g、リン酸二水素ナトリウム二水和物55.3g、リン酸水素二ナトリウム41.3gを109gの水に溶解させてリン酸化試薬を調製」したものであって、相違点1に係る本件発明1の構成に至るためには、「カルバメートを導入する」ために「尿素」を用いつつ、「リン酸二水素ナトリウム二水和物」又は「リン酸水素二ナトリウム」に替えて「亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)」を用い、さらに、「亜リン酸のエステル及びカルバメート」の導入を「セルロース微細繊維を固形分0.2%(w/v)溶液とした場合における分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)が40.0%以上となるように」する必要があるが、甲1方法発明を、そのように換える動機付けがない。 したがって、甲1方法発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、本件発明1は、当業者が甲1方法発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件発明2〜5について 本件発明2〜5は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)で検討したのと同じ理由により、本件発明2〜5は、甲1方法発明ではなく、また、当業者が甲1方法発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明6について ア 対比 本件発明6と甲1発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点2] 「繊維幅が1〜1000nmであり、 セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、下記構造式(1)に示す官能基で置換されて、亜リン酸のエステルが導入された、 セルロース微細繊維。 【化1】 構造式(1)において、αは、なし、R、及びNHRのいずれかである。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基のいずれかである。βは有機物又は無機物からなる陽イオンである。」 [相違点2] 本件発明6は、「前記セルロース繊維のヒドロキシ基の一部に置換度0.01〜0.50となるようにカルバメートが導入されて」いるのに対して、甲1発明は、そのようなものではない点。 [相違点3] 本件発明6は、「セルロース微細繊維を固形分0.2%(w/v)溶液とした場合における分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)が40.0%以上とされている」のに対して、甲1発明は、そのようなものであるか不明である点。 イ 新規性についての判断 相違点2について検討するに、相違点2は実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は甲1発明ではない。 ウ 進歩性についての判断 相違点2について検討する。 相違点2に係る本件発明6の構成について、本件特許の発明の詳細な説明には次の記載がある。 「(セルロース微細繊維)本形態のセルロース微細繊維は、セルロース繊維のヒドロキシ基(−OH基)の一部が、下記構造式(1)、好ましくは下記構造式(2)に示す官能基で置換されて、亜リン酸のエステル、好ましくは亜リン酸エステルのナトリウム塩が導入(修飾、変性)された(エステル化された)ものである。より好ましくは、セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、カルバメート基で置換されて、カルバメート(カルバミン酸のエステル)も導入されたものである。」(【0013】) 「特に、亜リン酸のエステルと共にカルバメートをも導入すると、透明度や粘度がより向上する。この点、カルバメートは、アミノ基を有する。したがって、カルバメートを導入すると、プラス電荷をも有することになる。故に、カルバメートをも導入すると、亜リン酸のエステル及びカルバメートによる電荷的相互作用が高まり、粘度が向上するものと考えられる。なお、カルバメートは、同時にリン酸基を有する化合物を導入する場合よりも、亜リン酸のエステルを導入する場合の方が、より導入し易くなる。」(【0016】) 「カルバメート基の置換度は、好ましくは0.01〜0.50、より好ましくは0.05〜0.45、特に好ましくは0.10〜0.40である。置換度が0.01未満であると、透明度や粘度が十分に高まらないおそれがある。他方、置換度が0.50を超えると、セルロース繊維が黄変化するおそれがある。」(【0022】) すなわち、相違点2に係る本件発明6の構成は、セルロース繊維が黄変化を抑制しつつ、セルロース微細繊維の分散液の透明度や粘度をより向上させるために、セルロース微細繊維に亜リン酸のエステルと共に、置換度0.01〜0.50となるようにカルバメートを導入するものである。 一方、甲1発明は、「耐酸性を有する水溶性増粘剤を提供すること」(甲1の【0007】)を課題とする発明であり、そのために「亜リン酸又はその塩により処理して、セルロースにリンオキソ酸基を導入した」ものである。 甲1には、セルロース繊維の黄変化を抑制しつつ、セルロース微細繊維の分散液の透明度や粘度をより向上させるために、セルロース微細繊維に亜リン酸のエステルと共に、置換度0.01〜0.50となるようにカルバメートを導入することについて記載も示唆もされていない。 したがって、甲1発明において、相違点2に係る本件発明6の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本件発明7について ア 対比 本件発明7と甲1発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点3] 「繊維幅が1〜1000nmであり、 セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、下記構造式(2)に示す官能基で置換されて、亜リン酸エステルのナトリウム塩が導入された、 セルロース微細繊維。 【化2】 構造式(2)において、αは、なし、R、及びNHRのいずれかである。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和-分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、及びこれらの誘導基のいずれかである。」 [相違点4] 本件発明7は、「前記セルロース繊維のヒドロキシ基の一部に置換度0.01〜0.50となるようにカルバメートが導入されて」いるのに対して、甲1発明は、そのようなものではない点。 [相違点5] 本件発明7は、「セルロース微細繊維を固形分0.2%(w/v)溶液とした場合における分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)が40.0%以上とされている」のに対して、甲1発明は、そのようなものであるか不明である点。 イ 新規性についての判断 相違点4について検討するに、相違点4は実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は甲1発明ではない。 ウ 進歩性についての判断 相違点4について検討するに、上記(4)ウにおいて示した理由と同様であり、本件発明7は、他の相違点について検討するまでもなく、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 申立理由3(拡大先願)について (1)先願明細書等の記載 ア 甲5に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「甲5明細書等」という。) 甲5明細書等には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 (A)リン酸基又はリン酸基に由来する置換基と、(B)ウレタン結合を有する基とを有する微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース含有物であって、 前記(B)ウレタン結合を有する基の含有量CBは、前記微細繊維状セルロース1gあたり0.05mmol/g以上である微細繊維状セルロース含有物。 【請求項2】 前記(A)リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、下記式(1)で表される置換基であり、 前記(B)ウレタン結合を有する基は、下記式(2)で表される置換基である請求項1に記載の微細繊維状セルロース含有物; 【化1】 式(1)中、a、b、m及びnはそれぞれ独立に整数を表す(ただし、a=b×mである);αn(n=1〜nの整数)およびα’はそれぞれ独立にR又はORを表す。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、又はこれらの誘導基整数である;βは有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。」 「【0022】 本願明細書において、ウレタン結合を有する基は、尿素由来の基であることが好ましく、後述するようなカルバメート基であることが好ましい。 【0023】 本発明では、(A)リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、下記式(1)で表される置換基であることが好ましく、(B)ウレタン結合を有する基は、下記式(2)で表される置換基であることが好ましい。」 「【0041】 微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、電子顕微鏡で観察して、1000nm以下である。平均繊維幅は、好ましくは2〜1000nm、より好ましくは2〜100nmであり、より好ましくは2〜50nmであり、さらに好ましくは2〜10nmであるが、特に限定されない。微細繊維状セルロースの平均繊維幅が2nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細繊維状セルロースとしての物性(強度や剛性、寸法安定性)が発現しにくくなる傾向がある。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば繊維幅が1000nm以下である単繊維状のセルロースである。」 「【0059】 リン酸基導入工程においては加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理温度は、繊維の熱分解や加水分解反応を抑えながら、置換基(A)及び置換基(B)を効率的に導入できる温度を選択することが好ましい。具体的には50〜300℃であることが好ましく、100〜250℃であることがより好ましく、150〜200℃であることがさらに好ましい。また、加熱には減圧乾燥機、赤外線加熱装置、マイクロ波加熱装置を用いてもよい。」 「【0069】 アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液使用量を減らすために、アルカリ処理工程の前に、リン酸基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄しても構わない。アルカリ処理後には、取り扱い性を向上させるために、解繊処理工程の前に、アルカリ処理済みリン酸基導入繊維を水や有機溶媒により洗浄することが好ましい。」 「【0079】 (製造例1) 針葉樹クラフトパルプとして、王子製紙製のパルプ(固形分93%、米坪208g/m2シート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)700ml)を使用した。上記針葉樹クラフトパルプ(絶乾質量)100質量部に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を含浸し、リン酸二水素アンモニウム45質量部、尿素200質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを165℃の熱風乾燥機で200秒間乾燥・加熱処理し、パルプ中のセルロースに置換基を導入した。 【0080】 得られたリン酸化パルプ(絶乾質量)100質量部に対して10000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返した。次いで、得られた脱水シートを10000質量部のイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加し、pHが12〜13のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、10000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返して、リン酸化パルプの脱水シートを得た。」 「【0085】 (実施例1) 製造例1で得たリン酸化パルプの脱水シートにイオン交換水を添加後、攪拌し、固形分濃度が0.5質量%のスラリーにした。このスラリーを、解繊処理装置(エムテクニック社製、クレアミックス−2.2S)を用いて、21500回転/分の条件で30分間解繊処理し、微細繊維状セルロース含有スラリーを得た。この微細繊維状セルロース含有スラリーの粘度、微粒子分散安定性を下記方法により測定した。また、セルロースに導入されたリン酸基に由来する強酸性基と弱酸性基の導入量、置換基(B)の含有量を求めた。」 「【0092】 【表1】 」 甲5明細書等の上記記載から、特に、【0022】、【0023】の記載を参照しつつ、実施例1に着目すると、甲5明細書等には、次の発明(以下「甲5方法発明」という。)が記載されているものと認められる。 「針葉樹クラフトパルプ(絶乾質量)100質量部に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を含浸し、リン酸二水素アンモニウム45質量部、尿素200質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得て、得られた薬液含浸パルプを165℃の熱風乾燥機で200秒間乾燥・加熱処理し、パルプ中のセルロースに置換基を導入し、 得られたリン酸化パルプ(絶乾質量)100質量部に対して10000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返し、次いで、得られた脱水シートを10000質量部のイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加し、pHが12〜13のパルプスラリーを得て、その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、10000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して、脱水シートを得る工程を2回繰り返して、リン酸化パルプの脱水シートを得て、 リン酸化パルプの脱水シートにイオン交換水を添加後、攪拌し、固形分濃度が0.5質量%のスラリーにし、このスラリーを、解繊処理装置(エムテクニック社製、クレアミックス−2.2S)を用いて、21500回転/分の条件で30分間解繊処理し、微細繊維状セルロース含有スラリーを得て、 リン酸基に由来する強酸性基と弱酸性基、カルバメート基が導入された、 微細繊維状セルロースの製造方法。」 また、甲5明細書等の上記記載から、特に、【0041】の記載を参照しつつ、請求項1を引用する請求項2に着目すると、甲5明細書等には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているものと認められる。 「微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、2〜1000μmであり、 (A)リン酸基又はリン酸基に由来する置換基と、(B)ウレタン結合を有する基とを有する微細繊維状セルロースを含む微細繊維状セルロース含有物であって、 前記(B)ウレタン結合を有する基の含有量CBは、前記微細繊維状セルロース1gあたり0.05mmol/g以上であり、 前記(A)リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、下記式(1)で表される置換基であり、 前記(B)ウレタン結合を有する基は、下記式(2)で表される置換基である、 微細繊維状セルロース含有物; 【化1】 式(1)中、a、b、m及びnはそれぞれ独立に整数を表す(ただし、a=b×mである);αn(n=1〜nの整数)およびα’はそれぞれ独立にR又はORを表す。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、又はこれらの誘導基整数である;βは有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。」 イ 特願2016−71161号(甲6に係る日本語特許出願の優先権の基礎とされた特許出願)の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「甲6明細書等」という。) 甲6明細書等には、次の事項が記載されている。 「【0014】 (繊維状セルロースの製造方法) 本発明は、繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース(微細繊維状セルロースともいう)の製造方法に関する。本発明の繊維状セルロースの製造方法は、セルロース繊維にリン酸基を導入し、リン酸基を介して架橋構造を形成することで架橋リン酸化セルロース繊維を得る工程(A)と、架橋構造の一部又は全部を切断することで架橋切断リン酸化セルロース繊維を得る工程(B)と、架橋切断リン酸化セルロース繊維に機械処理を施すことで繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースを得る工程(C)と、を含む。ここで、工程(A)では、0.05mmol/g以上2.0mmol/g以下の架橋構造が形成される。また、工程(B)は、pHが3以上の水系溶媒中で架橋構造の加水分解を行う工程である。」 「【0021】 リン酸基導入工程は、セルロースを含む繊維原料に対し、リン酸基を有する化合物及びその塩から選択される少なくとも1種(リン酸化試薬又は化合物A)を反応させることにより行うことができる。なお、この反応は、尿素及びその誘導体から選択される少なくとも1種(以下、「化合物B」という)の存在下で行ってもよい。」 「【0037】 工程(a2)は、加熱処理工程であることが好ましい。このような加熱処理工程における加熱温度は、50℃以上300℃以下であることが好ましく、100℃以上250℃以下であることがより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱処理工程における加熱時間は、1秒以上300分以下であることが好ましく、1秒以上1000秒以下であることがより好ましく、10秒以上800秒以下であることがさらに好ましい。」 「【0063】 アルカリ処理工程におけるアルカリ溶液使用量を減らすために、アルカリ処理工程の前に、上述したような洗浄工程を設けることが好ましい。さらに、アルカリ処理後には、取り扱い性を向上させるために、アルカリ処理済みセルロース繊維を水や有機溶剤により洗浄することが好ましい。」 「【0067】 微細繊維状セルロースの平均繊維幅は、電子顕微鏡で観察して、1000nm以下である。平均繊維幅は、好ましくは2nm以上1000nm以下、より好ましくは2nm以上100nm以下であり、さらに好ましくは2nm以上50nm以下であり、よりさらに好ましくは2nm以上10nm以下であるが、特に限定されない。微細繊維状セルロースの平均繊維幅が2nm未満であると、セルロース分子として水に溶解しているため、微細繊維状セルロースとしての物性(強度や剛性、寸法安定性)が発現しにくくなる傾向がある。なお、微細繊維状セルロースは、たとえば繊維幅が1000nm以下である単繊維状のセルロースである。」 「【0075】 本発明では、リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は、下記式構造式で表される基であってもよい。 【0076】 【化1】 【0077】 上記構造式中、a、b、m及びnはそれぞれ独立に整数を表す(ただし、a=b×mである)。αn(n=1〜nの整数)およびα’はそれぞれ独立にR又はORを表す。Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、又はこれらの誘導基整数である;βは有機物または無機物からなる1価以上の陽イオンである。 【0078】 微細繊維状セルロースのリン酸基量は1.00mmol/g以上であることが好ましく、1.20mmol/g以上であることがより好ましく、1.65mmol/g以上であることがさらに好ましく、1.80mmol/g以上であることが特に好ましい。また、微細繊維状セルロースのリン酸基量は、5.0mmol/g以下であることが好ましい。リン酸基量を上記範囲内とすることにより、繊維原料の微細化を容易にし、微細繊維状セルロースの安定性を高めることができる。また、リン酸基の導入量を上記範囲内とすることにより、微細化が容易でありながらも、微細繊維状セルロース同士の水素結合も残すことが可能で、良好な強度発現が期待できる。」 「【0081】 上述したように、工程(A)において、セルロース繊維にリン酸基を導入し、リン酸化セルロース繊維を得る際には、リン酸化剤として、リン酸基を有する化合物に加えて、尿素及び/又はその誘導体が用いられる場合、尿素及び/又はその誘導体に由来する基として、ウレタン結合を有する基がセルロースに導入される。本発明で得られる微細繊維状セルロースにおいては、ウレタン結合を有する基の導入量は、微細繊維状セルロース1gに対して、ウレタン結合を有する基の含有量が0.3mmol/g以下であることが好ましく、0.2mmol/g以下であることがより好ましく、0.1mmol/g以下であることがさらに好ましい。ウレタン結合を有する基の含有量は、0mmol/gであってもよい。 【0082】 なお、ウレタン結合を有する基としては、例えば下記の構造式で表される基が挙げられる。 【0083】 【化2】 【0084】 上記構造式中、Rは、水素原子、飽和−直鎖状炭化水素基、飽和−分岐鎖状炭化水素基、飽和−環状炭化水素基、不飽和−直鎖状炭化水素基、不飽和−分岐鎖状炭化水素基、芳香族基、又はこれらの誘導基である。」 「【0120】 (実施例1) <リン酸化反応工程> 針葉樹クラフトパルプとして、王子製紙製のパルプ(固形分93質量%、坪量208g/m2シート状、離解してJIS P 8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)が700ml)を原料として使用した。上記針葉樹クラフトパルプ(絶乾質量)100質量部に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を加え、リン酸二水素アンモニウム48質量部、尿素130質量部、イオン交換水165質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得た。得られた薬液含浸パルプを165℃の熱風乾燥機で200秒間乾燥・加熱処理し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化セルロース繊維Aを得た。 【0121】 <洗浄・アルカリ処理工程> 得られたリン酸化セルロース繊維Aに、イオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の薬液を十分に洗い流した。次いで、セルロース繊維濃度が2質量%となるようイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1N水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加して、pHが12±0.2のパルプスラリーを得た。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の水酸化ナトリウムを十分に洗い流して、リン酸化セルロース繊維Bを得た。 【0122】 <リン酸基導入工程(2回目)> 得られたリン酸化セルロース繊維Bを原料として、上述した<リン酸化反応工程>を繰返し行い、パルプ中のセルロースに、さらにリン酸基を導入し、リン酸化セルロース繊維Cを得た。 【0123】 <架橋工程> 得られたリン酸化セルロース繊維Cを、165℃の熱風乾燥機で200秒間加熱処理し、パルプ中のセルロースに、さらにリン酸基を導入し、また、リン酸基を介してセルロースに架橋構造を導入し、架橋リン酸化セルロース繊維Aを得た。 なお、この架橋工程はリン酸基導入工程(2回目)の乾燥・加熱時間をそのまま延長して行った(165℃の熱風乾燥機で計400秒間加熱処理を行った)。 【0124】 <洗浄・アルカリ処理工程(2回目)> 得られた架橋リン酸化セルロース繊維Aに対し、上述した<洗浄・アルカリ処理工程>を行い、架橋リン酸化セルロース繊維Bを得た。 【0125】 <架橋切断工程> 得られた架橋リン酸化セルロース繊維Bの固形分濃度が2.0質量%、pHが12.5になるように、イオン交換水とNaOHを添加してパルプスラリーを調整した。得られたパルプスラリーを内温90℃の条件で1時間静置加熱した。その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の水酸化ナトリウムを十分に洗い流して、架橋切断リン酸化セルロース繊維Aを得た。得られた架橋切断リン酸化セルロース繊維Aの重合度を後述する方法により測定した。 【0126】 <機械処理> 得られた架橋切断リン酸化セルロース繊維Aにイオン交換水を添加して、固形分濃度が2.0質量%の懸濁液にした。この懸濁液を、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、アルティマイザー)を用いて機械処理し、微細繊維状セルロース含有スラリーを得た。湿式微粒化装置を用いた処理においては、200MPaの圧力にて処理チャンバーを1回(上澄み収率、ヘーズ、粘度、ウレタン結合量測定用)通過させたものと、5回(リン酸基量、架橋構造量測定用)通過させたものを得た。 得られた微細繊維状セルロース含有スラリーの、上澄み収率、ヘーズ、粘度、ウレタン結合量、リン酸基量、架橋構造の含有量を後述の方法により測定した。」 「【0148】 【表1】 【0149】 【表2】 」 「【請求項7】 リン酸基を有する繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロースであって、 前記繊維状セルロースのリン酸基量が1.65mmol/g以上であり、前記繊維状セルロースの重合度が390以上であり、 前記繊維状セルロースは、前記リン酸基を介した架橋構造を含む繊維幅が1000nm以下の繊維状セルロース。 【請求項8】 ウレタン結合を有する基の含有量が0.3mmol/g以下である請求項7に記載の繊維状セルロース。」 甲6明細書等の上記記載から、特に、実施例1に着目すると、甲6明細書等には、次の発明(以下「甲6方法発明」という。)が記載されているものと認められる。 「<リン酸化反応工程>針葉樹クラフトパルプ(絶乾質量)100質量部に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を加え、リン酸二水素アンモニウム48質量部、尿素130質量部、イオン交換水165質量部となるように圧搾し、薬液含浸パルプを得て、得られた薬液含浸パルプを165℃の熱風乾燥機で200秒間乾燥・加熱処理し、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入し、リン酸化セルロース繊維Aを得て、 <洗浄・アルカリ処理工程>得られたリン酸化セルロース繊維Aに、イオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の薬液を十分に洗い流し、次いで、セルロース繊維濃度が2質量%となるようイオン交換水で希釈し、攪拌しながら、1N水酸化ナトリウム水溶液を少しずつ添加して、pHが12±0.2のパルプスラリーを得て、その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の水酸化ナトリウムを十分に洗い流して、リン酸化セルロース繊維Bを得て、 <リン酸基導入工程(2回目)>得られたリン酸化セルロース繊維Bを原料として、上述した<リン酸化反応工程>を繰返し行い、パルプ中のセルロースに、さらにリン酸基を導入し、リン酸化セルロース繊維Cを得て、 <架橋工程>得られたリン酸化セルロース繊維Cを、165℃の熱風乾燥機で200秒間加熱処理し、パルプ中のセルロースに、さらにリン酸基を導入し、また、リン酸基を介してセルロースに架橋構造を導入し、架橋リン酸化セルロース繊維Aを得て、 <洗浄・アルカリ処理工程(2回目)>得られた架橋リン酸化セルロース繊維Aに対し、上述した<洗浄・アルカリ処理工程>を行い、架橋リン酸化セルロース繊維Bを得て、 <架橋切断工程>得られた架橋リン酸化セルロース繊維Bの固形分濃度が2.0質量%、pHが12.5になるように、イオン交換水とNaOHを添加してパルプスラリーを調製し、得られたパルプスラリーを内温90℃の条件で1時間静置加熱し、その後、このパルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、再びイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水して脱水シートを得る操作を繰り返すことにより、余剰の水酸化ナトリウムを十分に洗い流して、架橋切断リン酸化セルロース繊維Aを得て、 <機械処理>得られた架橋切断リン酸化セルロース繊維Aにイオン交換水を添加して、固形分濃度が2.0質量%の懸濁液にし、この懸濁液を、湿式微粒化装置(スギノマシン社製、アルティマイザー)を用いて機械処理し、微細繊維状セルロース含有スラリーを得る、 微細繊維状セルロースの製造方法。」 また、甲6明細書等の上記記載から、特に、【0067】の記載を参照しつつ、請求項7を引用する請求項8に着目すると、甲6明細書等には、次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているものと認められる。 「リン酸基を有する繊維幅が2nm以上1000nm以下の微細繊維状セルロースであって、 前記微細繊維状セルロースのリン酸基量が1.65mmol/g以上であり、前記微細繊維状セルロースの重合度が390以上であり、 前記微細繊維状セルロースは、前記リン酸基を介した架橋構造を含む繊維幅が2nm以上1000nm以下の微細繊維状セルロースであって、 ウレタン結合を有する基の含有量が0.3mmol/g以下である微細繊維状セルロース。」 (2)甲5方法発明、甲5発明に基づく理由について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲5方法発明とを対比すると、甲5方法発明の「乾燥・加熱処理」は本件発明1の「加熱」することに、以下同様に、「解繊処理」は「解繊」することに、「カルバメート基」は「カルバメート」に、「微細繊維状セルロース」は「セルロース微細繊維」に、それぞれ相当する。 甲5方法発明の「尿素」は、「針葉樹クラフトパルプ(絶乾質量)100質量部に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を含浸」するものなので、本件発明1の「尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方からなる添加物(B)」に相当する。 甲5明細書等の【0069】の記載を参照すると、甲5方法発明の「リン酸化パルプ(絶乾質量)100質量部に対して10000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水」すること、及び「パルプスラリーを脱水し、脱水シートを得た後、10000質量部のイオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水」することは、本件発明1の「洗浄」することに相当する。 甲5方法発明の「針葉樹クラフトパルプ(絶乾質量)」に「含浸」される「リン酸二水素アンモニウム」と本件発明1の「亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)」とは、「添加物(A)」の限りで一致する。 そして、甲5方法発明の「針葉樹クラフトパルプ(絶乾質量)100質量部に、リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を含浸」することは、セルロース繊維に添加物を添加しているといえ、本件発明1の「セルロース繊維」に「添加物(A)」及び「添加物(B)を添加」する態様に相当する。 また、リン酸基に由来する強酸性基と弱酸性基が導入されることは、リン酸のエステルが導入されることといえるから、甲5方法発明の「リン酸基に由来する強酸性基と弱酸性基、カルバメート基が導入され」ることと、本件発明1の「セルロース微細繊維を固形分0.2%(w/v)溶液とした場合における分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)が40.0%以上となるように亜リン酸のエステル及びカルバメートを導入する」こととは、「添加物(A)に由来するエステル及びカルバメートを導入する」ことの限りで一致する。 そうすると、本件発明1と甲5方法発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点4] 「セルロース繊維に、添加物(A)、並びに尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方からなる添加物(B)を添加し、加熱及び洗浄した後に、解繊して、添加物(A)に由来するエステル及びカルバメートを導入する、 セルロース微細繊維の製造方法。」 [相違点6] 「添加物(A)」及び「添加物(A)に由来するエステル及びカルバメートを導入する」ことに関して、本件発明1は、「添加物(A)」が「亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)」であり、「セルロース微細繊維を固形分0.2%(w/v)溶液とした場合における分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)が40.0%以上となるように亜リン酸のエステル及びカルバメートを導入する」のに対して、甲5方法発明は、「添加物(A)」が「リン酸二水素アンモニウム」であり、「リン酸基に由来する強酸性基と弱酸性基、カルバメート基が導入された」点。 (イ)判断 相違点6について検討するに、「リン酸二水素アンモニウム」は「亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)」ではなく、相違点6は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲5方法発明ではない。 イ 本件発明2〜5について 本件発明2〜5は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記アで検討したのと同じ理由により、本件発明2〜5は、甲5方法発明ではない。 ウ 本件発明6について (ア)対比 本件発明6と甲5発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点5] 「繊維幅が1〜1000nmであり、 セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、官能基で置換されて、エステルが導入され、 かつ前記セルロース繊維のヒドロキシ基の一部にカルバメートが導入された、 セルロース微細繊維。」 [相違点7] 「セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が官能基で置換されて、エステルが導入され」ることに関して、本件発明6は、「セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が」、構造式(1)に「示す官能基で置換されて、亜リン酸のエステルが導入され」ているのに対して、甲5発明は、「リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は」、式(1)で「表される置換基であ」る点。 [相違点8] 「セルロース繊維のヒドロキシ基の一部にカルバメートが導入された」ことに関して、本件発明6は「前記セルロース繊維のヒドロキシ基の一部に置換度0.01〜0.50となるようにカルバメートが導入され」ているのに対して、甲5発明は、「前記(B)ウレタン結合を有する基の含有量CBは、前記微細繊維状セルロース1gあたり0.05mmol/g以上であ」る点。 [相違点9] 本件発明6は、「セルロース微細繊維を固形分0.2%(w/v)溶液とした場合における分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)が40.0%以上とされている」のに対して、甲5発明は、そのようなものであるか不明な点。 (イ)判断 相違点7は実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は甲5発明ではない。 エ 本件発明7について (ア)対比 本件発明7と甲5発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点6] 「繊維幅が1〜1000nmであり、 セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、官能基で置換されて、エステルが導入され、 かつ前記セルロース繊維のヒドロキシ基の一部にカルバメートが導入された、 セルロース微細繊維。」 [相違点10] 「セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が官能基で置換されて、エステルが導入され」ることに関して、本件発明7は、「セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が」、構造式(2)に「示す官能基で置換されて、亜リン酸エステルのナトリウム塩が導入され」ているのに対して、甲5発明は、「リン酸基又はリン酸基に由来する置換基は」、式(1)で「表される置換基であ」る点。 [相違点11] 「セルロース繊維のヒドロキシ基の一部にカルバメートが導入された」ことに関して、本件発明7は「前記セルロース繊維のヒドロキシ基の一部に置換度0.01〜0.50となるようにカルバメートが導入され」ているのに対して、甲5発明は、「前記(B)ウレタン結合を有する基の含有量CBは、前記微細繊維状セルロース1gあたり0.05mmol/g以上であ」る点。 [相違点12] 本件発明7は、「セルロース微細繊維を固形分0.2%(w/v)溶液とした場合における分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)が40.0%以上とされている」のに対して、甲5発明は、そのようなものであるか不明な点。 (イ)判断 相違点10は実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は甲5発明ではない。 (3)甲6方法発明、甲6発明に基づく理由について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲6方法発明とを対比すると、甲6方法発明の「乾燥・加熱処理」は本件発明1の「加熱」することに相当し、以下同様に、「イオン交換水を注ぎ、攪拌して均一に分散させた後、濾過脱水」することは「洗浄」することに、「微細繊維状セルロース含有スラリーを得る」「機械処理」は「解繊」することに、「微細繊維状セルロース」は「セルロース微細繊維」に、それぞれ相当する。 甲6方法発明の「尿素」は、「針葉樹クラフトパルプ(絶乾質量)100質量部に」、「尿素の混合水溶液を加え」るものであるから、本件発明1の「尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方からなる添加物(B)」に相当する。 甲6方法発明の「針葉樹クラフトパルプ(絶乾質量)」に「加え」る「リン酸二水素アンモニウム」と本件発明1の「亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)」とは、「添加物(A)」の限りで一致する。 そうすると、甲6方法発明の「針葉樹クラフトパルプ(絶乾質量)100質量部に」、「リン酸二水素アンモニウム」と「尿素の混合水溶液を加え」ることは、本件発明1の「セルロース繊維に」「添加物(A)」と「添加物(B)を添加」する態様に相当する。 また、パルプ中のセルロースにリン酸基を導入することは、リン酸のエステルが導入されることといえ、また、【0081】を参照すると、甲6方法発明は、尿素に由来するウレタン結合を有する基であるカルバメートが導入されるから、甲6方法発明の「リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を加え」、「パルプ中のセルロースにリン酸基を導入」することと、本件発明1の「セルロース微細繊維を固形分0.2%(w/v)溶液とした場合における分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)が40.0%以上となるように亜リン酸のエステル及びカルバメートを導入する」こととは、「添加物(A)に由来するエステル及びカルバメートを導入する」ことの限りで一致する。 そうすると、本件発明1と甲6方法発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点7] 「セルロース繊維に、添加物(A)、並びに尿素及び尿素誘導体の少なくともいずれか一方からなる添加物(B)を添加し、加熱及び洗浄した後に、解繊して、添加物(A)に由来するエステル及びカルバメートを導入する、 セルロース微細繊維の製造方法。」 [相違点13] 「添加物(A)」及び「添加物(A)に由来するエステル及びカルバメートを導入する」ことに関して、本件発明1は、「添加物(A)」が「亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)」であり、「セルロース微細繊維を固形分0.2%(w/v)溶液とした場合における分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)が40.0%以上となるように亜リン酸のエステル及びカルバメートを導入する」のに対して、甲6方法発明は、「添加物(A)」が「リン酸二水素アンモニウム」であり、「リン酸二水素アンモニウムと尿素の混合水溶液を加え」、「パルプ中のセルロースにリン酸基を導入」する点。 (イ)判断 相違点13について検討するに、「リン酸二水素アンモニウム」は「亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)」ではなく、相違点13は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲6方法発明ではない。 イ 本件発明2〜5について 本件発明2〜5は、本件発明1の特定事項を全て含み、さらに限定を加えるものであるから、上記アで検討したのと同じ理由により、本件発明2〜5は、甲6方法発明ではない。 ウ 本件発明6について (ア)対比 本件発明6と甲6発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点8] 「繊維幅が1〜1000nmであり、 セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、官能基で置換されて、エステルが導入され、 かつ前記セルロース繊維のヒドロキシ基の一部にカルバメートが導入された、 セルロース微細繊維。」 [相違点14] 「セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が官能基で置換されて、エステルが導入され」ることに関して、本件発明6は、「セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が」、構造式(1)に「示す官能基で置換されて、亜リン酸のエステルが導入され」ているのに対して、甲6発明は、「前記微細繊維状セルロースのリン酸基量が1.65mmol/g以上であ」る点。 [相違点15] 「セルロース繊維のヒドロキシ基の一部にカルバメートが導入された」ことに関して、本件発明6は「前記セルロース繊維のヒドロキシ基の一部に置換度0.01〜0.50となるようにカルバメートが導入され」ているのに対して、甲6発明は、「ウレタン結合を有する基の含有量が0.3mmol/g以下である」る点。 [相違点16] 本件発明6は、「セルロース微細繊維を固形分0.2%(w/v)溶液とした場合における分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)が40.0%以上とされている」のに対して、甲6発明は、そのようなものであるか不明な点。 (イ)判断 相違点14は実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は甲6発明ではない。 エ 本件発明7について (ア)対比 本件発明7と甲6発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点9] 「繊維幅が1〜1000nmであり、 セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が、官能基で置換されて、エステルが導入され、 かつ前記セルロース繊維のヒドロキシ基の一部にカルバメートが導入された、 セルロース微細繊維。」 [相違点17] 「セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が官能基で置換されて、エステルが導入され」ることに関して、本件発明7は、「セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が」、構造式(2)に「示す官能基で置換されて、亜リン酸エステルのナトリウム塩が導入され」ているのに対して、甲6発明は、「前記繊維状セルロースのリン酸基量が1.65mmol/g以上であ」る点。 [相違点18] 「セルロース繊維のヒドロキシ基の一部にカルバメートが導入された」ことに関して、本件発明7は「前記セルロース繊維のヒドロキシ基の一部に置換度0.01〜0.50となるようにカルバメートが導入され」ているのに対して、甲6発明は、「ウレタン結合を有する基の含有量が0.3mmol/g以下である」る点。 [相違点19] 本件発明7は、「セルロース微細繊維を固形分0.2%(w/v)溶液とした場合における分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)が40.0%以上とされている」のに対して、甲6発明は、そのようなものであるか不明な点。 (イ)判断 相違点17は実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は甲6発明ではない。 3 申立理由4(サポート要件)について (1)発明の詳細な説明の記載 本件発明が解決しようとする課題は、「得られるセルロース微細繊維が黄色くなるとの問題が解決されたセルロース微細繊維の製造方法、及びセルロース微細繊維を提供すること」(【0006】)である。 当該課題を解決する手段に関して、発明の詳細な説明には次の記載がある。 「【0017】 さらに、亜リン酸のエステルを導入した場合は、リン酸基を有する化合物を導入した場合と異なり、得られるセルロース微細繊維の黄変化が防止される。この点、この黄変化が防止されるとの効果は、リンのオキソ酸一般を導入することで得られる効果ではなく、亜リン酸のエステルを導入した場合のみに得られる効果である。したがって、黄変化を防止するとの観点では、リンのオキソ酸という概念は意味を有しない。亜リン酸のエステルに黄変化防止効果が存在することは、本発明者等が独自に発見したものである。 【0018】 なお、本発明者等は、リン酸基を有する化合物を導入した場合に黄変化し易いのは、メイラード反応や還元反応によってセルロースに二重結合が生じ易くなるためではないかと考える。亜リン酸のエステルよりもリン酸基を有する化合物の方が水素の数が多いため、pHが低くなる。そして、pHが低い方が、アミンと糖との反応が生じ易くなり、又はセルロースが還元し易くなる。したがって、リン酸基を有する化合物を導入しようとすると、加熱時にセルロースが分解して糖が生成し易くなり、又はセルロースが還元し易くなる。結果、リン酸基を有する化合物を導入する場合の方が、黄変化し易くなるのである。」 (2)判断 本件発明1は、「セルロース繊維に、亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類の少なくともいずれか一方からなる添加物(A)、・・・を添加し、加熱及び洗浄した後に、解繊して、セルロース微細繊維を固形分0.2%(w/v)溶液とした場合における分散液の透明度(350〜880nm光の透過率)が40.0%以上となるように亜リン酸のエステル及びカルバメートを導入する」ことを発明特定事項としており、本件発明6は、「セルロース繊維のヒドロキシ基の一部が」、構造式(1)に「示す官能基で置換されて、亜リン酸のエステルが導入され」ることを発明特定事項としており、上記(1)に示した発明の詳細な説明の記載を総合すると、これら発明特定事項により、本件発明の課題を解決できることが当業者であれば認識することができるといえる。 よって、本件発明1〜4、6は、発明の詳細な説明に記載したものである。 (3)申立人の主張について 申立人は、亜リン酸水素ナトリウム以外の亜リン酸金属塩類や亜リン酸類も包含する本件発明1〜4、6の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない旨を主張している。 この点について、上記(2)で示したとおり、本件発明の発明特定事項により、本件発明の課題を解決できることが当業者であれば認識することができるから、申立人が主張する亜リン酸類及び亜リン酸金属塩類を特定することまで要しない。 4 申立理由5(実施可能要件)について (1)発明の詳細な説明の記載について 本件特許の発明の詳細な説明には、本件発明が解決しようとする課題(【0006】)、当該課題を解決するための手段(【0007】〜【0010】)、本件発明の効果(【0011】)、本件発明を実施するための形態(【0012】〜【0075】)、実施例(【0076】〜【0080】)が記載されており、これら記載を参照することで、本件発明を実施することが可能である。 よって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1〜7の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 (2)申立人の主張について 申立人は、本件特許明細書の実施例においては、リンオキソ酸化試薬の水分量が明らかにされておらず、本件特許明細書の表2に記載されたカルバメート基量(置換率)を達成するために、いかなるリンオキソ酸化試薬を用いてよいのか理解することができない旨を主張している。 確かに実施例には、リンオキソ酸化試薬の水分量について直接は記載されていないものの、発明の詳細な説明には、「添加物(A)及び添加物(B)を添加したセルロース繊維を加熱する際のpHは、好ましくは3〜12、より好ましくは4〜11、特に好ましくは6〜9である。pHが低い方が亜リン酸のエステル及びカルバメートが導入され易くなる。ただし、pHが3未満であると、セルロースの劣化が急速に進行してしまうおそれがある。」(【0042】)と記載されており、当該記載を参照すると、添加物(A)及び添加物(B)に応じた適切な水分量とすることができる。 第5 むすび 以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜7に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1〜7に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2022-07-19 |
出願番号 | P2018-170668 |
審決分類 |
P
1
651・
536-
Y
(D01F)
P 1 651・ 113- Y (D01F) P 1 651・ 16- Y (D01F) P 1 651・ 121- Y (D01F) P 1 651・ 537- Y (D01F) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
山崎 勝司 |
特許庁審判官 |
稲葉 大紀 藤井 眞吾 |
登録日 | 2021-10-19 |
登録番号 | 6963539 |
権利者 | 大王製紙株式会社 |
発明の名称 | セルロース微細繊維及びその製造方法 |
代理人 | 弁理士法人永井国際特許事務所 |