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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B65D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D |
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管理番号 | 1387797 |
総通号数 | 9 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-09-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-12-24 |
確定日 | 2022-08-09 |
事件の表示 | 特願2017−511590「取り外し可能部分を持つラッパーを備えた容器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月 3日国際公開、WO2016/030520、平成29年10月 5日国内公表、特表2017−529288〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2015(平成27)年8月28日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年8月29日、欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成30年8月16日に手続補正書が提出され、令和元年8月29日付けで拒絶理由通知がされ、令和2年3月5日に意見書が提出されたが、令和2年8月31日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされた。 これに対して同年12月24日に審判請求書が提出されると同時に手続補正されたものである。 第2 令和2年12月24日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年12月24日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「【請求項1】 消費財の容器であって、 ボックスおよび前記ボックスを閉じるリッドを備えるハウジングと、 ラッパーに包まれかつ前記ハウジング内に含まれる1つ以上の消費財であって、前記ラッパーが、前記リッドが開いている時に部分的に露出し、また前記リッドが開いて前記消費財が露出された時に取り外すことができる取り外し可能部分を持つものとを備え、 前記ラッパーの前記取り外し可能部分が、前記リッドが開いている時に見える第一の部分、および前記ボックスの1つ以上の壁の下にあり前記リッドが開いている時には見えない第二の部分を持ち、 前記ラッパーの前記取り外し可能部分の前記第一の部分に1つ以上のしるしが記載され、 前記ラッパーの前記取り外し可能部分の前記第二の部分に1つ以上のしるしが記載され、 前記ラッパーの前記取り外し可能部分の前記第二の部分にある前記1つ以上のしるしが、前記リッドが開いている時に露出される前記ラッパーの前記取り外し可能部分の前記第一の部分にある前記1つ以上のしるしとは視覚的に区別される、容器。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の記載 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、平成30年8月16日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の記載によって特定される次のとおりである。 「【請求項1】 消費財の容器であって、 ボックスおよび前記ボックスを閉じるリッドを備えるハウジングと、 ラッパーに包まれかつ前記ハウジング内に含まれる1つ以上の消費財であって、前記ラッパーが、前記リッドが開いている時に部分的に露出し、また前記リッドが開いて前記消費財が露出された時に取り外すことができる取り外し可能部分を持つものとを備え、 前記ラッパーの前記取り外し可能部分が、前記リッドが開いている時に見える第一の部分、および前記ボックスの1つ以上の壁の下にあり前記リッドが開いている時には見えない第二の部分を持ち、 前記ラッパーの前記取り外し可能部分の前記第二の部分には、前記リッドが開いている時に露出される前記ラッパーの前記部分とは視覚的に区別される1つ以上のしるしが記載される、容器。」 2 本件補正の適否 請求項1について、「前記ラッパーの前記取り外し可能部分の前記第二の部分には、前記リッドが開いている時に露出される前記ラッパーの前記部分とは視覚的に区別される1つ以上のしるしが記載される」を、本件補正により、「前記ラッパーの前記取り外し可能部分の前記第一の部分に1つ以上のしるしが記載され、前記ラッパーの前記取り外し可能部分の前記第二の部分に1つ以上のしるしが記載され、前記ラッパーの前記取り外し可能部分の前記第二の部分にある前記1つ以上のしるしが、前記リッドが開いている時に露出される前記ラッパーの前記取り外し可能部分の前記第一の部分にある前記1つ以上のしるしとは視覚的に区別される」と補正することは、「リッドが開いている時に見える第一の部分」及び「リッドが開いている時には見えない第二の部分」に、それぞれ「1つ以上のしるしが記載」されることに加えて、それぞれの「しるし」が「視覚的に区別される」ことを限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項、引用文献に記載された発明 ア 引用文献の記載事項 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特開平6−191572号公報には、図面とともに、次の記載がある。 「【請求項1】 引き出しフラップ(34)が、前部壁26の表側区域において、印刷文または印刷イメージ(36)の担体として、特に、広告目的のクーポン等として機能することを特徴とする、 紙巻きタバコの集合体のための紙または紙状材料製の内部包装紙(21)を有し、 前記内部包装紙(21)が、前部壁(26)の区域に、横断方向に向くミシン目によって規定される引き出しフラップ(34)を有する紙巻きタバコ用パック、特にヒンジ蓋付きパケット。 【請求項2】 引き出しフラップ(34)の表側全部が印刷イメージ(36)の担体として機能することを特徴とする請求項1記載のパック。 【請求項3】 引き出しフラップ(34)の下限を規定するミシン目(35)が、パケット前部壁(15)の上縁の下方区域、特に、カラー(13)のトング(20)の下方であって、両側タブ(31,32) の区域に形成される傾斜縁部(37)の上方、少なくとも底部壁(25)の上方に配設されることを特徴とする請求項1または2記載のパック。 【請求項4】 内部包装紙(21)用のブランク(22)を製造するための材料ウエブ(23)が、製造される引き出しフラップ(34)の表側と対応する区域内に連続的に印刷イメージ(36)を備えること、およびその後ブランク(22)が、材料ウエブ(23)から切断され、引き出しフラップ(34)を規定するミシン目を付与されることを特徴とする、 請求項1−3のいずれか1に記載の紙巻きタバコの集合体用の内部包装紙を有するパックの製造方法。 【請求項5】 印刷イメージ(36)またはそのマークが、少なくとも部分的には、包装機内において、特に包装機の制御された印刷ユニット(40)によって付与されることを特徴とする請求項4記載のパックの製造方法。」 「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、紙巻きタバコ用パック、特に、紙巻きタバコの集合体のための紙または紙状物で作られ、その前壁区域において、横断方向に向くミシン目によって規定される引き出しフラップを備える内部包装材を有するヒンジ蓋付きパケットに関する。」 「【0005】この発明の目的は、その他の目的に適う内部包装紙の引き出しフラップを提供することである。 【0006】 【課題を解決するための手段】この目的を達成するための解決手段においては、引き出しフラップが、その表側の前部区域において、刻印の担体、特に広告を目的とするクーポンなどの担体としての役割を果たす。少なくとも引き出しフラップの前面の一部、好ましくは引き出しフラップの前部壁の全部が文字および/または図柄の刻印を備える。刻印の内容は宣伝物の形をとることが可能である。しかしながら、このように設計された引き出しフラップは、クーポン特に、競争や告示などへの参加資格証明書として好適である。」 「【0011】 【実施例】添付図面に示す細部は、紙巻タバコ用ヒンジ蓋付きパケットのデザインに係わる。これは、従来通り下部パケット10および蓋11からなる。蓋11は、後部壁12の区域でパケット部10に旋回自在に接続している。 【0012】ヒンジ蓋付きパケットの内部には、カラー13がある。これは、カラー前部壁14が、パケット部10のパケット前部壁15の内面と対向して下方部分を支持するように設計されており、パケット前部壁15と接続する。カラー側面タブ16は、パックのパケット側壁17,18 の区域に位置する。カラー13は、パケット部10の下方区域に納まっている。パケット部10から突出する上方部は、閉鎖位置において蓋11により囲まれている。カラー前部壁14は、湾曲した外形によって規定される凹部19が、パケット部10から突出するカラー前部壁の区域に形成されるように設計される。パケット部10におけるカラー前部壁14の下方域は、適宜設計されるトング20によって形成される。 【0013】パックの内容物、すなわちブロック形状をなす紙巻きタバコの集合体は、内部包装紙21によって取り囲まれる。…」 「【0016】内部包装紙21の前部壁26の上部は、引き出しフラップ34として設計される。引き出しフラップ34は、前部壁26とこれに隣接する側タブ31の区域に連続して延在する下部の横断方向のミシン目35によって規定される。ヒンジ蓋付きパケットが用いられるとき、引き出しフラップ34は取り除かれる、すなわち開いたパケット部10から引き出される。このために、引き出しフラップ34は、端部壁30の長いタブ33の区域において、把持されて上に引っ張られる。ミシン目35はこの操作によって切り離される。 【0017】引き出しフラップ34は、印刷されたイメージ36を備えており、このイメージは、現模範実施例においては、端部壁の表側にあって引き出しフラップ34の前部全面に亘って存在する。この印刷イメージは、広告情報であってよい。しかし、印刷イメージ36は、クーポンすなわち競争などへの参加資格証明書を意図することが好ましい。 【0018】現模範実施例においては、引き出しフラップ34が、通常のものよりも特別に大きく作られる。そのために、ミシン目35が、カラー13の下またはカラー前部壁14のトング20の下に配設される。ミシン目35が取り得る最下限位置は、両側タブ31,32 の区域に形成される傾斜した縁部37によって規定される。ミシン目35は、この傾斜縁部37の情報に(わずかな)間隔を置いて配置される。引き出しフラップ34が、このように設計されるので、前部壁26のより大きな帯域が印刷イメージ36に利用できる。もし、内部包装紙が"bottom-folding"原理に基づいて折り曲げられるならば、前記傾斜縁部は両側壁の区域にはない。この場合は、フラップもまた底部壁まで直接延在する。」 「【0020】図5は、従来型の包装機の細部を線図的に示しており、…マーキングステーションまたは印刷ユニット40に続いて、切断ステーション39が配設されている。…ブランクはここで材料ウエブから切断されて紙巻きタバコ集合体の包装に供給される。 【0021】印刷ユニット40の機能は、印刷イメージ36または付加的マークの区域内において、同イメージ等に、クーポン等としての有効性に臨界を与えることである。この目的で、印刷ユニット40は、すでに印刷されている印刷マークと一致する正確な位置に材料ウエブ23を搬送する制御ローラ41からなる。制御ローラ41は、もっぱら印刷ヘッド42を回転して、すでに印刷されている印刷イメージまたは付加的マークに、クーポンとしての臨界的有効性を付与する。このことによって、真にパックから引き出された引き出しフラップだけが所期の目的に使用できることを保証する。」 「 」 (イ)上記記載から、引用文献には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 【請求項1】の「紙巻きタバコの集合体のための…内部包装紙(21)を有し、前記内部包装紙(21)が、前部壁(26)の区域に、横断方向に向くミシン目によって規定される引き出しフラップ(34)を有する」こと、「【0016】…ヒンジ蓋付きパケットが用いられるとき、引き出しフラップ34は取り除かれる、すなわち開いたパケット部10から引き出される。このために、引き出しフラップ34は、端部壁30の長いタブ33の区域において、把持されて上に引っ張られる。ミシン目35はこの操作によって切り離される。」ことから、「紙巻きタバコの集合体」の「内部包装紙(21)」は、「ヒンジ蓋」が開いたときに部分的に露出されるものであり、露出時に「内部包装紙(21)」から「引き出しフラップ(34)」が「取り除かれる」ものであることが分かる。 b 「【0016】内部包装紙21の前部壁26の上部は、引き出しフラップ34として設計される。引き出しフラップ34は、前部壁26とこれに隣接する側タブ31の区域に連続して延在する下部の横断方向のミシン目35によって規定される。」こと、【請求項3】の「引き出しフラップ(34)の下限を規定するミシン目(35)が、パケット前部壁(15)の上縁の下方区域、特に、カラー(13)のトング(20)の下方であって、両側タブ(31,32) の区域に形成される傾斜縁部(37)の上方、少なくとも底部壁(25)の上方に配設されること」、「【0012】…カラー13は、パケット部10の下方区域に納まっている。パケット部10から突出する上方部は、閉鎖位置において蓋11により囲まれている。カラー前部壁14は、湾曲した外形によって規定される凹部19が、パケット部10から突出するカラー前部壁の区域に形成されるように設計される。パケット部10におけるカラー前部壁14の下方域は、適宜設計されるトング20によって形成される。」こと、並びに、図1及び2に示された内容から、「引き出しフラップ34」は「前部壁26」を備えるものであり、「ヒンジ蓋」が開いたときの「引き出しフラップ34」の部分的な露出態様として、パケット部10から突出するカラー13の凹部19において「前部壁26」が見える部分を有するとともに、パケット部10の壁の下に配されることで「前部壁26」が見えない部分を有するものであることが分かる。 c 段落【0006】並びに印刷に係る段落【0017】及び【0021】の記載から、引き出しフラップは、前部壁26の全部が文字および/または図柄を備え、広告を目的とするクーポン特に、競争や告示などへの参加資格証明書として好適であるものであることが分かる。 イ 引用文献に記載された発明 上記ア(ア)及び(イ)から、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「パケット部10およびパケット部10を閉じる蓋11を備え、 内部包装紙21に包まれかつパケット部10及び蓋11内に含まれる紙巻きタバコの集合体であって、紙巻きタバコの集合体を包む内部包装紙21が、蓋11が開いている時に部分的に露出し、露出時に内部包装紙21から取り除かれる引き出しフラップ34を備え、 内部包装紙21の引き出しフラップ34が、蓋11が開いている時に見える部分、およびパケット部10の壁の下にあり蓋が開いている時には見えない部分を持ち、 内部包装紙21の引き出しフラップ34の前部壁26の全部が文字および/または図柄を備え、広告を目的とするクーポン特に、競争や告示などへの参加資格証明書として好適である、 紙巻きタバコの集合体のヒンジ蓋付きパケット。」 (3)対比 ア 対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「紙巻きタバコの集合体」は本件補正発明の「消費財」及び「1つ以上の消費財」に相当し、以下同様に、「ヒンジ蓋付きパケット」は「容器」に、「パケット部10」は「ボックス」に、「蓋11」は「リッド」に、「パケット部10」及び「蓋11」は「ハウジング」に、「内部包装紙21」は「ラッパー」に、「引き出しフラップ34」は「取り外し可能部分」に、「取り除かれる」は「取り外すことができる」に、「見える部分」は「第一の部分」に、「見えない部分」は「第二の部分」にそれぞれ相当する。 イ 以上から、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「消費財の容器であって、 ボックスおよび前記ボックスを閉じるリッドを備えるハウジングと、 ラッパーに包まれかつ前記ハウジング内に含まれる1つ以上の消費財であって、前記ラッパーが、前記リッドが開いている時に部分的に露出し、また前記リッドが開いて前記消費財が露出された時に取り外すことができる取り外し可能部分を持つものとを備え、 前記ラッパーの前記取り外し可能部分が、前記リッドが開いている時に見える第一の部分、および前記ボックスの1つ以上の壁の下にあり前記リッドが開いている時には見えない第二の部分を持つ、容器。」 [相違点] 本願補正発明が、「前記ラッパーの前記取り外し可能部分の前記第一の部分に1つ以上のしるしが記載され、 前記ラッパーの前記取り外し可能部分の前記第二の部分に1つ以上のしるしが記載され、 前記ラッパーの前記取り外し可能部分の前記第二の部分にある前記1つ以上のしるしが、前記リッドが開いている時に露出される前記ラッパーの前記取り外し可能部分の前記第一の部分にある前記1つ以上のしるしとは視覚的に区別される」のに対し、 引用発明が、「内部包装紙21の引き出しフラップ34の前部壁26の全部が文字および/または図柄を備え、広告を目的とするクーポン特に、競争や告示などへの参加資格証明書として好適であ」り、「引き出しフラップ34が、蓋11が開いている時に見える部分、およびパケット部10の壁の下にあり蓋が開いている時には見えない部分を持」つ点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 本件補正発明の「しるし」について、本願明細書を参照すると、「【0007】ラッパーの第二の部分にある1つ以上のしるしは、1つ以上の抽象的または比喩的な絵、色付きパターン、活字体、文字、ロゴ、これらの組み合わせまたはその他の任意のしるしでもよい。」とあるから、引用発明の「文字および/または図柄」は本願補正発明の「しるし」に該当する。 そして、引用発明の「文字および/または図柄」は「引き出しフラップ34」における「蓋11が開いている時に見える部分」および「見えない部分」にそれぞれ備えられており、当該「文字および/または図柄」が「広告を目的とするクーポン特に、競争や告示などへの参加資格証明書として好適である」ことからすれば、それは一様の模様ではなく、「内部包装紙21から取り除かれる」方向において、異なる情報、すなわち異なる文字が配置されるものであり、「見える部分」と「見えない部分」とにおける異なる文字が視覚的に区別されるものであることは自明である。 また、引用発明の「見える部分」に図柄が配置され、「見えない部分」に文字が配置される態様、またその逆の配置態様であっても、図柄及び文字は視覚的に区別されるものである。 したがって、上記相違点は実質的な相違点とはいえず、本件補正発明は、引用発明である。 イ また、引用文献の「【0021】…すでに印刷されている印刷イメージまたは付加的マークに、クーポンとしての臨界的有効性を付与する。このことによって、真にパックから引き出された引き出しフラップだけが所期の目的に使用できることを保証する。」との記載から、例えば、「引き出しフラップ34」の「見えない部分」に、真に引き出された際に所期の目的に使用できるクーポンとしての臨界的有効性に係る情報、すなわちクーポンの有効期限やクーポンの適用範囲などの情報を付与することで、「見える部分」に対し視覚的に区別される「しるし」となる構成とすることは、当業者であれば容易になし得ることである。 したがって、上記相違点に係る本件補正発明の構成は、引用発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ よって、本件補正発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するものであり、又は、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和2年12月24日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜14に係る発明は、平成30年8月16日にした手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1〜14に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、次のとおりである。 (新規性)この出願の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (進歩性)この出願の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 特開平6−191572号公報 3 引用文献の記載事項 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「消費財の容器であって、 ボックスおよび前記ボックスを閉じるリッドを備えるハウジングと、 ラッパーに包まれかつ前記ハウジング内に含まれる1つ以上の消費財であって、前記ラッパーが、前記リッドが開いている時に部分的に露出し、また前記リッドが開いて前記消費財が露出された時に取り外すことができる取り外し可能部分を持つものとを備え、 前記ラッパーの前記取り外し可能部分が、前記リッドが開いている時に見える第一の部分、および前記ボックスの1つ以上の壁の下にあり前記リッドが開いている時には見えない第二の部分を持つ、容器。」 [相違点] 本願発明が、「前記ラッパーの前記取り外し可能部分の前記第二の部分には、前記リッドが開いている時に露出される前記ラッパーの前記部分とは視覚的に区別される1つ以上のしるしが記載される」のに対し、 引用発明が、「内部包装紙21の引き出しフラップ34の前部壁26の全部が文字および/または図柄を備え、広告を目的とするクーポン特に、競争や告示などへの参加資格証明書として好適であ」り、「引き出しフラップ34が、蓋11が開いている時に見える部分、およびパケット部10の壁の下にあり蓋が開いている時には見えない部分を持」つ点。 そうすると、前記第2の[理由]2(3)(4)の記載と同様に、本願発明も、引用発明であり、又は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当するものであり、又は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 審判長 井上 茂夫 出訴期間として在外者に対し90日を附加する。 |
審理終結日 | 2022-03-09 |
結審通知日 | 2022-03-14 |
審決日 | 2022-03-25 |
出願番号 | P2017-511590 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D) P 1 8・ 113- Z (B65D) |
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
井上 茂夫 |
特許庁審判官 |
藤井 眞吾 藤原 直欣 |
発明の名称 | 取り外し可能部分を持つラッパーを備えた容器 |
代理人 | 那須 威夫 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 上杉 浩 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 豊島 匠二 |
代理人 | 近藤 直樹 |
代理人 | 須田 洋之 |