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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正しない C04B
審判 訂正 判示事項別分類コード:857 訂正しない C04B
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正しない C04B
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正しない C04B
管理番号 1388251
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-09-30 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2021-10-31 
確定日 2022-07-25 
事件の表示 特許第5606596号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5606596号(請求項の数は1。以下、「本件特許」という。)は、平成25年7月2日を出願日とする出願であって、平成26年9月5日にその請求項1に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年10月15日に特許掲載公報が発行されたものである。
そして、令和3年10月31日に本件訂正審判が請求され、同年12月1日付で手続補正指令書(方式)が通知され、同年同月8日に手続補正書(方式)が提出され、令和4年2月1日付で審尋がされ、同年同月10日に、同手続補正書(方式)に対する手続補正書及び回答書が提出され、その後、同年3月1日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年同月5日に意見書が提出されたものである。

第2 訂正請求の内容
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第5606596号の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項のとおりである。

・訂正事項
願書に添付した明細書の発明の名称の欄に「製鋼スラグ炭酸固化体ブロックの製造方法」とあるのを、「環境に優しい石炭」に訂正する。

第3 本件訂正の適否
訂正審判における訂正の目的について、特許法第126条第1項では、
「特許権者は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をすることについて訂正審判を請求することができる。ただし、その訂正は、次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一 特許請求の範囲の減縮
二 誤記又は誤訳の訂正
三 明瞭でない記載の釈明
四 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」
と定められているので、以下、本件訂正が、これらの目的のいずれかに合致するものであるか否かについて検討する。
まず、同条同項ただし書第1号及び第4号は、特許請求の範囲の訂正をするにあたっての目的を定めるものであるところ、前記訂正事項は、願書に添付した明細書の発明の名称の欄の記載を訂正するものであり、特許請求の範囲の記載を訂正するものではないから、その訂正の目的が、同条同項ただし書第1号で定められる「特許請求の範囲の減縮」及び同条同項ただし書第4号で定められる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」に該当しないことは明らかである。
また、同条同項ただし書第2号は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をするにあたり、「誤記又は誤訳の訂正」との目的を定めるものであるところ、本件訂正前の発明の名称である「製鋼スラグ炭酸固化体ブロックの製造方法」との記載に誤記又は誤訳は認められないから、本件訂正の目的が、同条同項ただし書第2号で定められる「誤記又は誤訳の訂正」に該当しないことは明らかである。
さらに、同条同項ただし書第3号は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正をするにあたり、「明瞭でない記載の釈明」との目的を定めるものであるところ、本件訂正前の発明の名称である「製鋼スラグ炭酸固化体ブロックの製造方法」との記載について、「製鋼スラグ」、「炭酸固化体」、「ブロック」のそれぞれの用語は、その技術的な意味が一般に知られていることからして明瞭であり、各用語の技術的な意味を以てすれば、本件訂正前の発明の名称に係る上記記載も、製鋼スラグを炭酸固化した炭酸固化体のブロックを製造する方法であることが理解でき、当該記載自体の意味は明瞭といえる。加えて、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、「第1次処理として、粉末化した製鋼スラグを所定量の純水に接触させて炭酸化し、スラグ粒子表面にアラゴナイトを析出させた上で加熱溶融し、その後、同加熱溶融された製鋼スラグ溶融物を所定の形状の型枠内に詰め、二酸化炭素を含む排ガスを通して製鋼スラグ中の酸化カルシウムに排ガス中の二酸化炭素を反応させることにより、当該製鋼スラグ中に炭酸カルシウムのアラゴナイト構造を形成するようにしてなる製鋼スラグ炭酸固化体ブロックの製造方法において、さらに第2次処理として、上記アラゴナイト構造を形成した炭酸固化体を海水又は人工海水に接触させ、該海水又は人工海水による弱アルカリ性の環境下で上記酸化カルシウムと二酸化炭素を反応させることにより、発生する炭酸カルシウムのカルサイト構造形成作用を促進させるとともに、その開気孔率を向上させるようにしたことを特徴とする製鋼スラグ炭酸固化体ブロックの製造方法」であって、「製鋼スラグ炭酸固化体ブロックの製造方法」に係る発明であるところ、本件訂正前の発明の名称に係る上記記載は、請求項1に係る発明の末尾と一致し、その内容を表すのに適切な表現であり、同発明の内容と何ら矛盾するものではなく、本件訂正前の発明の名称に係る上記記載と本件特許の請求項1の記載との関係で不合理は生じていない点からみても、明瞭といえる。そうすると、本件訂正前の発明の名称に係る上記記載は、明瞭でない記載とはいえないから、本件訂正の目的は、同条同項ただし書第3号で定められる「明瞭でない記載の釈明」に該当しない。
したがって、訂正事項に係る訂正は、特許法126条第1項ただし書第1号ないし第4号に掲げる事項のいずれを目的とするものともいえないから、同条同項ただし書の規定に違反するものである。

ここで、審判請求人からの意見についてみておく。
審判請求人は、意見書において、
「請求項1からは、炭酸カルシウムがブロック内に張り巡らされており、本件特許、図5では炭酸カルシウムでカルサイトが溶融し、本件特許、図8から、その周辺水域のpHは8を示しており、海域環境を考えたブロックであることには間違いない。
論点として、「環境に優しい石炭」に名称を変更するにあたり、実質燃焼させても、二酸化炭素がでない石としても用途があり、これは無煙炭としての基準は石炭としては最もランクが高い石炭であり、また、炭素量は、93〜95%。炭酸カルシウムが製鋼スラグ炭酸固化体ブロック内で張り巡らされており、その充填率は、本件特許、図13から、10.20%とデータがでている。つまり、燃焼させても二酸化炭素を排出しない本特許権ブロックは、石炭の最低レベルである基準の、原料炭の炭素量10%をクリアしている。つまり、低コストで環境に優しい石炭が得られることになる。鉄が主成分のスラグのエネルギー化は、十分に新規性に富んでおり、これは、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」に対し、本件特許請求の範囲内の論述である。
「誤記又は誤訳の訂正」、「明瞭でない記載の解釈」には該当しない。」
と主張する。
しかしながら、訂正の適否は、まずは、特許法第126条第1項ただし書第1号ないし第4号に掲げる事項のいずれかの目的に合致しているか否かを判断するものであって、この判断に、審判請求人が主張するような、「十分に新規性に富んで」いること、「本件特許請求の範囲内の論述である」ことは関係がないから、審判請求人の主張は採用することができない。
念のため、「石炭」に係る主張について検討しても、同様である。
すなわち、まず、本件発明についてみるに、本件発明は、製鋼スラグを用いたブロック材の製造に際し、カルシウムイオンの溶出や炭酸カルシウムの析出メカニズムを含めた製鋼スラグ固化時における物理化学的反応機構が明確に解明されておらず、ブロック材の有効性、耐久性について懸念が残されているとの事情に鑑みてなされたものであり(本件明細書の段落【0016】〜【0017】)、製鋼スラグ固化時の物理化学的反応機構を解明することにより、二酸化炭素吸収能力が高く、かつブロック材の耐久性を決定するカルサイト構造が炭酸固化体内部に十分に張り巡らされて、耐久性にも優れた製鋼スラグ炭酸固化体ブロックを提供することを課題とすることが分かる(本件明細書の段落【0018】)。そして、当該課題を解決するために、製鋼スラグ炭酸固化体ブロックの製造にあたり、第1次処理として、粉末化した製鋼スラグを所定量の純水に接触させて炭酸化し、スラグ粒子表面にアラゴナイトを析出させた上で加熱溶融し、その後、同加熱溶融された製鋼スラグ溶融物を所定の形状の型枠内に詰め、二酸化炭素を含む排ガスを通して製鋼スラグ中の酸化カルシウムに排ガス中の二酸化炭素を反応させることにより、当該製鋼スラグ中に炭酸カルシウムのアラゴナイト構造を形成するとともに、さらに第2次処理として、上記アラゴナイト構造を形成した炭酸固化体を海水又は人工海水に接触させ、該海水又は人工海水による弱アルカリ性の環境下で上記酸化カルシウムと二酸化炭素を反応させることにより、発生する炭酸カルシウムのカルサイト構造形成作用を促進させ、その開気孔率を向上させるもので(本件明細書の段落【0019】〜【0025】)、これにより、一層軽量で設置し易くなり、また、より海中での貝類や海草、藻などの着生が良くなり、海中環境の改善、復元に一層有効に寄与するようになること、海水自体のpH値をも改善することができ、魚類の生育環境の改善にもなること、海中でも、大気中でも一層安定度が増し、二酸化炭素吸収性能が向上するとともに、従来のもののように膨張して崩壊したり、アルカリ性を強めたりすることもなくなり、耐久性が大きく向上すること、製鋼スラグ内からの二酸化炭素漏出による地球温暖化作用をも防止することができること等の効果を奏するものであることを理解することができる(本件明細書の【0026】〜【0030】)。
上記の本件発明の内容からすると、本件発明は、審判請求人の主張するような、燃焼させても二酸化炭素を排出しない石炭についてのものではないというほかないから、請求人の「石炭」に係る主張は、本件発明の内容に基づくものではなく採用できない。
以上の検討のとおり、上記意見書での審判請求人の主張はいずれも採用できない。

第4 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とするものではないから、同条第5項から第7項までの規定に適合するか否かを検討するまでもなく、認めることができない。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-05-31 
結審通知日 2022-06-03 
審決日 2022-06-16 
出願番号 P2013-139029
審決分類 P 1 41・ 851- Z (C04B)
P 1 41・ 852- Z (C04B)
P 1 41・ 853- Z (C04B)
P 1 41・ 857- Z (C04B)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 原 賢一
特許庁審判官 金 公彦
山田 倍司
登録日 2014-09-05 
登録番号 5606596
発明の名称 製鋼スラグ炭酸固化体ブロックの製造方法  

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