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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B01D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B01D
管理番号 1388338
総通号数
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-12-25 
確定日 2022-05-26 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6721802号発明「排ガス洗浄システムおよび排ガス洗浄システムの運用方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6721802号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1−11〕、12、〔13、14〕、〔15、16〕について訂正することを認める。 特許第6721802号の請求項3−6、9、11、12、14、16に係る特許を取り消す。 同請求項7、8、10に係る特許を維持する。 同請求項1、2、13、15に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6721802号の請求項1〜16に係る特許についての出願は、2019年5月27日(優先権主張 平成30年6月1日 日本国)を国際出願日とする出願であり、令和2年6月22日にその特許権の設定登録がされ、同年7月15日に特許掲載公報が発行され、その後、全請求項(請求項1〜16)に係る特許について、令和2年12月25日に特許異議申立人高田真利(以下、「異議申立人1」という。)により、また、令和3年1月12日に特許異議申立人谷口真魚(以下、「異議申立人2」という。)により、特許異議の申立てがなされ、令和3年3月30日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年5月27日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、これに対し、同年7月2日に異議申立人1により、また、同年6月25日に異議申立人2により、意見書の提出がなされ、同年10月12日付けで再度取消理由が通知され、これに対し特許権者から応答がなかったものである。

第2 訂正の適否

1 訂正事項
上記令和3年5月27日になされた訂正の請求は、本件特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜16について訂正することを求めるものであって、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の具体的な訂正事項は次のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記貯留タンクにおける前記循環液の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置と、
前記貯留タンクに前記船外水を補給可能に構成されている船外水補給装置と、
前記貯留量取得装置で取得される前記貯留量に応じて、前記船外水補給装置による前記貯留タンクへの前記船外水の補給量を制御する制御部と、をさらに備える
請求項2に記載の排ガス洗浄システム」とあるのを、「船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システムであって、
前記排ガスに洗浄液を接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、船体の外部から船外水を取水するための取水部と、
前記取水部と前記脱硫塔とを接続する供給路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を循環液として前記供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路と、
前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何れか一方に切り替えるための排出側切替装置と、
前記供給路における前記合流部よりも下流側に設けられた送水ポンプと、
前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンクと、を備え、
前記貯留タンクにおける前記循環液の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置と、
前記貯留タンクに前記船外水を補給可能に構成されている船外水補給装置と、
前記貯留量取得装置で取得される前記貯留量に応じて、前記船外水補給装置による前記貯留タンクへの前記船外水の補給量を制御する制御部と、をさらに備える
排ガス洗浄システム」に訂正する。
(請求項3を直接または間接的に引用する請求項4〜11についても同様に訂正する。)

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項12に「前記脱硫塔は、前記気液接触部よりも下方に位置する液だまり部と、前記液だまり部よりも下方に位置する前記貯留タンクと、をさらに内部に画定する
請求項2乃至11の何れか1項に記載の排ガス洗浄システム」とあるのを、「船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システムであって、
前記排ガスに洗浄液を接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、
船体の外部から船外水を取水するための取水部と、
前記取水部と前記脱硫塔とを接続する供給路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を循環液として前記供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路と、
前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何れか一方に切り替えるための排出側切替装置と、
前記供給路における前記合流部よりも下流側に設けられた送水ポンプと、
前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンクと、を備え、
前記脱硫塔は、前記気液接触部よりも下方に位置する液だまり部と、前記液だまり部よりも下方に位置する前記貯留タンクと、をさらに内部に画定する
排ガス洗浄システム」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項13を削除する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項14に「前記排ガス洗浄システムは、
前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンクと、
前記貯留タンクにおける前記循環液の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置と、をさらに備え、
前記排ガス洗浄システムの運用方法は、
前記貯留量取得装置により前記循環液の前記貯留量を取得する貯留量取得ステップをさらに備え、
前記第1供給源切替ステップは、前記第1流出先切替ステップよりも後、且つ前記貯留量取得ステップにより取得される前記貯留量が所定量を超えた後に行われる
請求項13に記載の排ガス洗浄システムの運用方法」とあるのを、「船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システムの運用方法であって、
前記排ガス洗浄システムは、
前記排ガスに洗浄液を接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、
船体の外部から船外水を取水するための取水部と、
前記取水部と前記脱硫塔とを接続する供給路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を循環液として前記供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路と、
前記供給路における前記合流部よりも下流側に設けられた送水ポンプと、
前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何れか一方に切り替えるための排出側切替装置と、を備え、
前記排ガス洗浄システムの運用方法は、
前記供給側切替装置により前記洗浄液の前記供給源を、前記取水部で取水した前記船外水から前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液に切り替える第1供給源切替ステップと、
前記排出側切替装置により前記洗浄液の前記流出先を、前記排出路から前記循環路に切り替える第1流出先切替ステップと、を備え、
前記排ガス洗浄システムは、
前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンクと、
前記貯留タンクにおける前記循環液の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置と、をさらに備え、
前記排ガス洗浄システムの運用方法は、
前記貯留量取得装置により前記循環液の前記貯留量を取得する貯留量取得ステップをさらに備え、
前記第1供給源切替ステップは、前記第1流出先切替ステップよりも後、且つ前記貯留量取得ステップにより取得される前記貯留量が所定量を超えた後に行われる
排ガス洗浄システムの運用方法」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項15を削除する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項16に「前記排ガス洗浄システムは、
前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンクと、
前記循環液から不純物を除去可能な循環液処理装置と、
前記循環液を前記循環液処理装置により処理される被処理液として前記循環液処理装に送るための被処理液路であって、前記貯留タンクと前記循環液処理装置とを接続する被処理液路と、
前記被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている被処理液流量制御弁と、をさらに備え、
前記排ガス洗浄システムの運用方法は、
前記第2供給源切替ステップおよび前記第2流出先切替ステップよりも後に、前記被処理液流量制御弁を開いて、前記貯留タンクに貯留される前記循環液を前記循環液処理装置に送る循環液排出ステップをさらに備える
請求項15に記載の排ガス洗浄システムの運用方法」とあるのを、「船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システムの運用方法であって、
前記排ガス洗浄システムは、
前記排ガスに洗浄液を接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、
船体の外部から船外水を取水するための取水部と、
前記取水部と前記脱硫塔とを接続する供給路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を循環液として前記供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路と、
前記供給路における前記合流部よりも下流側に設けられた送水ポンプと、
前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何れか一方に切り替えるための排出側切替装置と、を備え、
前記排ガス洗浄システムの運用方法は、
前記供給側切替装置により前記洗浄液の前記供給源を、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液から前記取水部で取水した前記船外水に切り替える第2供給源切替ステップと、
前記排出側切替装置により前記洗浄液の前記流出先を、前記循環路から前記排出路に切り替える第2流出先切替ステップと、を備え、
前記排ガス洗浄システムは、
前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンクと、
前記循環液から不純物を除去可能な循環液処理装置と、
前記循環液を前記循環液処理装置により処理される被処理液として前記循環液処理装に送るための被処理液路であって、前記貯留タンクと前記循環液処理装置とを接続する被処理液路と、
前記被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている被処理液流量制御弁と、をさらに備え、
前記排ガス洗浄システムの運用方法は、
前記第2供給源切替ステップおよび前記第2流出先切替ステップよりも後に、前記被処理液流量制御弁を開いて、前記貯留タンクに貯留される前記循環液を前記循環液処理装置に送る循環液排出ステップをさらに備える
排ガス洗浄システムの運用方法」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1、2、5及び7について
訂正事項1、2、5及び7は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(2)訂正事項3、6及び8について
訂正事項3は、訂正前の請求項1を引用する請求項2をさらに引用する請求項3について、訂正事項6は、訂正前の請求項13を引用する請求項14について、訂正事項8は、訂正前の請求項15を引用する請求項16について、それぞれ、請求項間の引用関係を解消し、他の請求項を引用しない独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、これらの訂正は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(3)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項2〜11を引用する請求項12の内、請求項1を引用する請求項2をさらに引用する請求項12について、請求項間の引用関係を解消し、他の請求項を引用しない独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

3 小括
本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1〜12〕、〔13、14〕、〔15、16〕について訂正することを求めるものであるところ、上記2のとおり、訂正事項1〜8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。また、訂正後の請求項12については、別の訂正単位とする求めがなされているから、訂正後の請求項〔1〜11〕、12、〔13、14〕、〔15、16〕について訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件訂正後の請求項1ないし16に係る発明(以下、各請求項に係る発明及び特許を項番に対応させて「本件発明3」、「本件特許3」などといい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システムであって、
前記排ガスに洗浄液を接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、
船体の外部から船外水を取水するための取水部と、
前記取水部と前記脱硫塔とを接続する供給路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を循環液として前記供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路と、
前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何れか一方に切り替えるための排出側切替装置と、
前記供給路における前記合流部よりも下流側に設けられた送水ポンプと、
前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンクと、を備え、
前記貯留タンクにおける前記循環液の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置と、
前記貯留タンクに前記船外水を補給可能に構成されている船外水補給装置と、
前記貯留量取得装置で取得される前記貯留量に応じて、前記船外水補給装置による前記貯留タンクへの前記船外水の補給量を制御する制御部と、をさらに備える
排ガス洗浄システム。
【請求項4】
前記貯留タンクにおける前記循環液のpH値を検出可能に構成されているpH値検出装置と、
前記貯留タンクに中和剤を添加可能に構成されている中和剤添加装置と、をさらに備え、
前記制御部は、前記pH値検出装置で検出される前記pH値に応じて、前記中和剤添加装置による前記中和剤の添加量の制御を行うように構成されている
請求項3に記載の排ガス洗浄システム。
【請求項5】
前記循環液から不純物を除去可能な循環液処理装置と、
前記循環液を前記循環液処理装置により処理される被処理液として前記循環液処理装置に送るための被処理液路と、
前記被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている被処理液流量制御弁と、をさらに備える
請求項3又は4に記載の排ガス洗浄システム。
【請求項6】
前記排ガスを洗浄後の前記洗浄液の比重を検出可能な比重検出装置をさらに備え、
前記制御部は、前記比重検出装置で検出される前記排ガスを洗浄後の前記洗浄液の比重に応じた、前記被処理液流量制御弁の開度の制御が可能に構成されている
請求項5に記載の排ガス洗浄システム。
【請求項7】
前記被処理液路に設けられるとともに前記被処理液を貯留可能な被処理液貯留タンクをさらに備える
請求項5又は6に記載の排ガス洗浄システム。
【請求項8】
前記被処理液路は、前記供給路の前記送水ポンプよりも下流側に設けられる第1分岐部と前記循環液処理装置とを接続する第1被処理液路を含み、
前記被処理液流量制御弁は、前記第1被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている第1被処理液流量制御弁を含む
請求項5乃至7の何れか1項に記載の排ガス洗浄システム。
【請求項9】
前記被処理液路は、前記貯留タンクと前記循環液処理装置とを接続する第2被処理液路を含み、
前記被処理液流量制御弁は、前記第2被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている第2被処理液流量制御弁を含む
請求項5乃至8の何れか1項に記載の排ガス洗浄システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記貯留量取得装置で取得される前記貯留量が上限閾値を超える場合に、前記第2被処理液流量制御弁を開く制御が可能に構成されている
請求項9に記載の排ガス洗浄システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記貯留量取得装置で取得される前記貯留量が下限閾値に満たない場合に、前記供給側切替装置による前記供給源を前記取水部で取水した前記船外水に切り替える制御が可能に構成されている
請求項3乃至10の何れか1項に記載の排ガス洗浄システム。
【請求項12】
船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システムであって、
前記排ガスに洗浄液を接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、
船体の外部から船外水を取水するための取水部と、
前記取水部と前記脱硫塔とを接続する供給路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を循環液として前記供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路と、
前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何れか一方に切り替えるための排出側切替装置と、
前記供給路における前記合流部よりも下流側に設けられた送水ポンプと、
前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンクと、を備え、
前記脱硫塔は、前記気液接触部よりも下方に位置する液だまり部と、前記液だまり部よりも下方に位置する前記貯留タンクと、をさらに内部に画定する
排ガス洗浄システム。
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システムの運用方法であって、
前記排ガス洗浄システムは、
前記排ガスに洗浄液を接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、
船体の外部から船外水を取水するための取水部と、
前記取水部と前記脱硫塔とを接続する供給路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を循環液として前記供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路と、
前記供給路における前記合流部よりも下流側に設けられた送水ポンプと、
前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何れか一方に切り替えるための排出側切替装置と、を備え、
前記排ガス洗浄システムの運用方法は、
前記供給側切替装置により前記洗浄液の前記供給源を、前記取水部で取水した前記船外水から前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液に切り替える第1供給源切替ステップと、
前記排出側切替装置により前記洗浄液の前記流出先を、前記排出路から前記循環路に切り替える第1流出先切替ステップと、を備え、
前記排ガス洗浄システムは、
前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンクと、
前記貯留タンクにおける前記循環液の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置と、をさらに備え、
前記排ガス洗浄システムの運用方法は、
前記貯留量取得装置により前記循環液の前記貯留量を取得する貯留量取得ステップをさらに備え、
前記第1供給源切替ステップは、前記第1流出先切替ステップよりも後、且つ前記貯留量取得ステップにより取得される前記貯留量が所定量を超えた後に行われる
排ガス洗浄システムの運用方法。
【請求項15】
(削除)
【請求項16】
船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システムの運用方法であって、
前記排ガス洗浄システムは、
前記排ガスに洗浄液を接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、
船体の外部から船外水を取水するための取水部と、
前記取水部と前記脱硫塔とを接続する供給路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を循環液として前記供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路と、
前記供給路における前記合流部よりも下流側に設けられた送水ポンプと、
前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何れか一方に切り替えるための排出側切替装置と、を備え、
前記排ガス洗浄システムの運用方法は、
前記供給側切替装置により前記洗浄液の前記供給源を、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液から前記取水部で取水した前記船外水に切り替える第2供給源切替ステップと、
前記排出側切替装置により前記洗浄液の前記流出先を、前記循環路から前記排出路に切り替える第2流出先切替ステップと、を備え、
前記排ガス洗浄システムは、
前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンクと、
前記循環液から不純物を除去可能な循環液処理装置と、
前記循環液を前記循環液処理装置により処理される被処理液として前記循環液処理装に送るための被処理液路であって、前記貯留タンクと前記循環液処理装置とを接続する被処理液路と、
前記被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている被処理液流量制御弁と、をさらに備え、
前記排ガス洗浄システムの運用方法は、
前記第2供給源切替ステップおよび前記第2流出先切替ステップよりも後に、前記被処理液流量制御弁を開いて、前記貯留タンクに貯留される前記循環液を前記循環液処理装置に送る循環液排出ステップをさらに備える
排ガス洗浄システムの運用方法。」

第4 令和3年10月11日付け、及び同年3月30日付けで通知した取消理由及びこの取消理由において採用しなかった異議申立人1、2による特許異議の申立理由の概要

1 令和3年10月11日付けで通知した取消理由の概要
・特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)(取消理由1)
本件発明3〜6、9、11、12、14及び16は、下記引用例1に記載された発明、下記引用例1、5〜7に記載された事項及び引用例2、4に記載されるような周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2 令和3年3月30日付けで通知した取消理由の概要
・特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如)(取消理由2)
本件訂正前の請求項1、2、13及び15に係る発明は、下記引用例4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。

3 取消理由において採用しなかった異議申立人1による特許異議の申立理由の概要
・特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)
(1)本件訂正前の請求項1、2、7、8、10、13、15に係る発明は、下記引用例1に記載された発明及び下記引用例1、5〜11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(申立理由1−1)。
(2)本件訂正前の請求項1〜16に係る発明は、下記引用例2に記載された発明及び下記引用例2、5〜11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(申立理由1−2)。
(3) 本件訂正前の請求項1〜16に係る発明は、下記引用例3に記載された発明及び下記引用例3、5〜11に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(申立理由1−3)。

4 取消理由において採用しなかった異議申立人2による特許異議の申立理由の概要
・特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)(申立理由2)
本件訂正前の請求項1〜16に係る発明は、下記引用例4に記載された発明及び下記引用例4、9、10、12〜15に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

引用例1:鄭 雄基 他1名「船舶用湿式SOXスクラバーシステムについて−装置の運転モード及びスクラバータイプ別の特徴」、日本マリンエンジニアリング学会誌 第53巻第1号(2018) (異議申立人1の提出した甲第3号証)(J−STAGEによれば発行日:2018年1月1日、https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jime/53/1/_contents/-char/ja)
引用例2:「Application of Exhaust Gas Cleaning Technology for the Great Lakes」、Green Marine Green Tech Conference,2013年5月31日、
https://green-marine.org/wp-content/uploads/2014/05/Algoma.pdf)(異議申立人1の提出した甲第1号証
引用例3:特開2014−233991号公報(異議申立人1の提出した甲第2号証)
引用例4:中国特許出願公開第105749722号明細書(異議申立人2の提出した甲第1号証)
引用例5:特表2018−511723号公報(異議申立人1の提出した甲第4号証)
引用例6:渡辺祐輔 他1名「コンテナパッケージ型ハイブリッドSOXスクラバーシステム」、日本マリンエンジニアリング学会誌 第52巻第5号(2017)(異議申立人1の提出した甲第5号証)
引用例7:深谷一郎「三菱ハイブリッドSOXスクラバーの紹介−舶用燃料の硫黄分規制の代替手段として」、日本マリンエンジニアリング学会誌 第50巻第3号(2015)(異議申立人1の提出した甲第8号証)
引用例8:国際公開第2016/035487号(異議申立人1の提出した甲第9号証)
引用例9:特開2014−188511号公報(異議申立人1の提出した甲第10号証、異議申立人2の提出した甲第5号証)
引用例10:特表2018−507779号公報(異議申立人1の提出した甲第7号証、異議申立人2の提出した甲第6号証)
引用例11:特開2016−168573号公報(異議申立人1の提出した甲第6号証)
引用例12:特開2018−51534号公報(異議申立人2の提出した甲第2号証)
引用例13:特開2017−19415号公報(異議申立人2の提出した甲第3号証)
引用例14:特開2005−66505号公報(異議申立人2の提出した甲第4号証)
引用例15:特開2017−154097号公報(異議申立人2の提出した甲第7号証)

第5 当審の判断

1 各引用例の記載事項
(1)引用例1の記載事項
ア 「1. はじめに
・・・
船舶のエンジン,発電機,ボイラーで使用される船舶燃料に含まれている硫黄分について,ヨーロッパや米国はすでにSECA(SOx Emission Control Area)を指定し,SECA内では2015年から燃料の硫黄分が0.1%を超えない燃料を使用するように規制している.
一方,MEPC70(第70回海洋環境保護委員会)では一般海域で使用する燃料油の硫黄分濃度の上限を2020年1月1日から0.5%に強化する事に決定し,低硫黄燃料の使用が義務付けられた.
主な対策案としては低硫黄燃料を使用することが考えられているが,0.5%硫黄分燃料の供給や適切な品質の確保,今後の価格推移の予測が難しいため,SOx規制の対案としてSOxスクラバーの設置もその選択肢の一つとして考えられる.」(29頁左欄1〜21行)

イ 「2. 湿式スクラバーの脱硫原理
スクラバーを通る排ガスに洗浄水(海水もしくはアルカリ水溶液)を噴射し,排ガスを冷却させることにより排ガスの体積が減少,排ガス流速を下げることで排ガスと洗浄水の接触が増え,硫黄分が中和反応を起こし脱硫するのが湿式スクラバーの原理である.」(29頁右欄1〜6行)

ウ 「3. 湿式スクラバーの運転モードについて
湿式スクラバーは洗浄水量が多く,スクラバーの内部面積が広い程,排ガスと洗浄水の接触時間が長くなるため脱硫効率が上がる.ただし船舶という限られた空間と電力供給状況を考えると洗浄水を最小限に使用し,スクラバーの設置面積を最小限にすることが求められる.特に脱硫に必要とする洗浄水のアルカリ度には下限値があり,洗浄水の取水域(寄港または航行中)に最適なアルカリ度の確保が必要となる.また,スクラバーを通した洗浄水にはすすなどの異物混入による汚染や,酸性度が多少高くなることがあり,洗浄水の排出を禁じている寄港地も存在するため,設置対象になる船舶の主な航路を想定した上で装置の運転モードを決める必要がある.」(29頁右欄24行〜30頁左欄6行)

エ 「3. 1 Open Mode Systemについて
Open Mode Systemは別途の洗浄水供給ポンプを使用し,海水をスクラバーに噴射するシステムである.洗浄水検知装置により洗浄水となる海水中の電解質とアルカリ度を測定し,洗浄水の流量を調整するように考案されたスクラバーを通った洗浄水は水質検知装置により記録され船外に排出される.
Open Mode Systemは主に一般海域での航行が多い船舶をターゲットにして開発された.構成品が少なく,各種補助ポンプを必要としない.よって,消費電力が低く,装置に必要な補助タンクや設置工事に必要とする配管物量が少ないのでClose ModeやHybrid Modeに比べ,装置価格や工事費の負担が少ない.ただし,低アルカリ水域や洗浄水の排出が禁止されている水域では装置の使用に制限があるためOpen Mode Systemの場合,スクラバーは一般海域のみ使用し,SECAでは低硫黄燃料を使用するコンセプトを計画した方が経済的で汎用性が高いと思われる.」(30頁左欄7〜24行)

オ 「

」(30頁左欄)

カ 「3.2 Close Mode Systemについて
Close Mode Systemは洗浄水タンク内に洗浄水を貯め,洗浄水の循環と共にNaOHを持続的に供給し,洗浄水のアルカリ度を維持するシステムである.洗浄水の再利用により汚染度が高くなるため,洗浄水タンク内にセンサーを設置し,汚染度が高まると洗浄水浄化装置から水分とスラッジを分離する.分離された水分は汚染度によって再利用もしくはホールディングタンクに移送され,排出可能な水域で排出する.分離されたスラッジはスラッジタンクに移送され,別途の陸上設備で処理する必要がある.また,洗浄水の循環による温度の上昇を防ぐため,熱交換器を使用し循環水を冷却させる.
Close Mode SystemはSECA内の航行が多い船舶をターゲットにして開発された.取水域の水質やアルカリ度と関係なく運転できるのが大きなメリットである反面,装置構成が複雑で補助タンクの設置や配管物量が多いので設置費用が高い.そして各種補助ポンプにより消費電力がOpen Mode Systemに比べ高く,装置価格や工事費用が高い.また,NaOHの持続的な補充やスラッジの処理費用を必要とするため,Open Mode Systemより運用費用が高いと思われる.」(30頁左欄下から8行〜右欄14行)

キ 「

」(30頁右欄)

ク 「3.3 Hybrid Mode Systemについて
Hybrid Mode SystemはOpen ModeとClose Modeの運転モードの切り替えが可能なため,取水域のアルカリ度や洗浄水排出が禁止された水域でも使用が可能である.基本的にClose Modeの構成品と同じだが,転換バルブと配管を追加することで,Open ModeとClose Modeの運転モードの切り替えができるようになっている.」(30頁下から16〜下から9行)

(2)引用例2の記載事項
ア 「

」(1枚目)

イ 「

」(7枚目)

(3)引用例3の記載事項
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関室に配置されたエンジンと、
除去用水を用いて前記エンジンの排ガスから硫黄分を除去する排ガス処理部と、
前記除去用水の水処理に関する構成要素を有する水処理部と、を備え、
前記水処理部の前記構成要素の少なくとも一部は、舵機室に配置されている、船舶。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排ガスから硫黄分を除去するためのシステムは、排ガスを発生させるエンジン近傍に配置される。また、排ガスから硫黄分を除去するために除去用水が用いられるため、排ガス処理部に対する除去用水の水処理を行うためのシステムも必要となる。そのため、上述したような船舶では、このようなシステム内の機器等が機関室内に配置される場合がある。しかし、機関室は空いたスペースが少なく、各種機器等の配置が困難である一方、当該スペースを確保するために機関室を大きくした場合、その分カーゴスペースが小さくなるという問題が生じる。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、排ガスから硫黄分を除去するためのシステムを容易に配置することができる船舶を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る船舶は、機関室に配置されたエンジンと、除去用水を用いてエンジンの排ガスから硫黄分を除去する排ガス処理部と、除去用水の水処理に関する構成要素を有する水処理部と、を備え、水処理部の構成要素の少なくとも一部は、舵機室に配置されている。
【0007】
この本発明の船舶では、スペースに比較的余裕のある舵機室に、排ガス処理部で硫黄分の除去に用いられる除去用水の水処理に関する構成要素の少なくとも一部を配置することにより、排ガスから硫黄分を除去するためのシステムの配置上の制約を少なくすることができる。また、機関室に配置する場合とは異なり、カーゴスペースが小さくなることも回避できる。以上により、排ガスから硫黄分を除去するためのシステムを容易に配置することが可能となる。」

ウ 「【0019】
次に、図2〜図4を参照して、排ガス処理システム100の具体的な構成の一例について説明する。図2は、クローズドループタイプの水処理部30Aを有する排ガス処理システム100Aのシステム構成を示す概略図である。図3は、オープンループタイプの水処理部30Bを有する排ガス処理システム100Bのシステム構成を示す概略図である。図4は、オープンタイプ機能もクローズドタイプ機能も選択可能としたハイブリッドタイプの水処理部30Cを有する排ガス処理システム100Cのシステム構成を示す概略図である。
【0020】
図2に示すように、排ガス処理部20として、船体2の上甲板11(図1参照)上に設けられたスクラバーが用いられる。排ガス処理部20は、除去用水RWで排ガスEGを洗浄することによって、当該排ガスEG中に含まれるSOxなどの硫黄分を除去する。・・・
【0022】
排ガス処理部20は、排ガス導入部21と、洗浄チャンバー22と、を備えている。排ガス導入部21は、メインエンジン7からの排ガスEGを洗浄チャンバー22へ導入すると共に、内部で除去用水を噴射することで排ガスEGを冷却すると共に煤塵を除去する。洗浄チャンバー22は、内部にノズル部23を備えており、排ガス導入部21を介して導入された排ガスEGに対してノズル部23から除去用水RWを噴射することによって、排ガスEG中からSOxを除去する。SOxが除去された排ガスEGは、洗浄チャンバー22から排出される。なお、各タイプの水処理部30A,30B,30Cでは、共通の構成を有する排ガス処理部20が用いられる。
【0023】
図2に示すクローズドループタイプの水処理部30Aは、構成要素として、プロセスタンク31と、熱交換器32と、ポンプ33,34と、水酸化ナトリウムタンク(水酸化ナトリウム貯留部)36と、浄水装置37と、ホールディングタンク38と、を備えている。プロセスタンク31と熱交換器32とは、ラインL1で接続されている。熱交換器32とポンプ34とは、ラインL2で接続されている。ポンプ34と排ガス処理部20とは、ラインL3で接続されている。排ガス処理部20とプロセスタンク31とは、ラインL4で接続されている。水酸化ナトリウムタンク36とプロセスタンク31とは、ラインL5で接続されている。プロセスタンク31と浄水装置37とは、ラインL6で接続されている。浄水装置37と排水ラインLEとは、ラインL7で接続されている。また、ポンプ33と熱交換器32とは、ラインL8で接続されている。熱交換器32と排水ラインLEとは、ラインL9で接続されている。
【0024】
プロセスタンク31は、除去用水RWとして用いられる清水が供給されると共に、排ガス処理部20での排ガス処理後の除去用水RWの排水EWが供給されるタンクである。プロセスタンク31内の除去用水RWは、ポンプ34に吸引されることによって、ラインL1,L2,L3を介して排ガス処理部20へ供給される。ポンプ34の位置は特に限定されず、L1上に設けられてもよい。なお、プロセスタンク31内の除去用水RWは、排ガス処理後の排水EWが供給されるため高温となっている。従って、熱交換器32は、ラインL1,L2を流れる除去用水RWと、ポンプ33で吸引されてラインL8,L9を流れる冷却水CW(ここでは、冷却水CWとして海水が用いられる)との間で熱交換を行い、除去用水RWを冷却する。なお、冷却後の冷却水CWは、ラインL9及び排水ラインLEを介して海へ排出される。
【0025】
また、排ガス処理部20で硫黄分を除去した後の除去用水RWの排水EWは酸性の水溶液であるため、プロセスタンク31では、水酸化ナトリウムタンク36からラインL5を介して水酸化ナトリウムが供給されることにより、除去用水RWの中和が行われる。なお、水酸化ナトリウムの供給は、ラインL1上で行われてもよい。この場合、予めアルカリ性となった除去用水RWが排ガス処理部20へ供給されるため、排ガス処理に伴って除去用水RWの排水EWは、中和された状態で排出される。
【0026】
ポンプ34は、吸引した除去用水RWを、ラインL3を介して排ガス処理部20へ供給する。除去用水RWは、排ガス処理部20の排ガス導入部21及び洗浄チャンバー22のノズル部23へ供給される。洗浄チャンバー22で排ガスから硫黄分を除去した除去用水RWは、排水EWとしてプロセスタンク31へ供給される。」

エ 「【0029】
図3に示すオープンループタイプの水処理部30Bは、ポンプ33,34と、水酸化ナトリウムタンク(水酸化ナトリウム貯留部)36と、を備えている。海水を引き込むためのポンプ33とポンプ34とは、ラインL11で接続されている。水酸化ナトリウムタンク36は、ラインL12を介してラインL11と接続されている。ポンプ34と排ガス処理部20とは、ラインL3で接続されている。排ガス処理部20と排水ラインLEとは、ラインL13で接続されている。
【0030】
ポンプ34は、吸引した除去用水RWを、ラインL11,L3を介して排ガス処理部20へ供給する。このとき、除去用水RWには、ラインL12を介して水酸化ナトリウムタンク36から水酸化ナトリウムが供給される。このように、水酸化ナトリウム(及び海水に含まれるアルカリ成分)によって予めアルカリ性となった除去用水RWが排ガス処理部20へ供給されるため、排ガス処理に伴って除去用水RWの排水EWは、中和された状態で排出される。なお、水酸化ナトリウムは、排ガス処理部20の下流側で供給されてもよい。除去用水RWは、排ガス処理部20の排ガス導入部21及び洗浄チャンバー22のノズル部23へ供給される。洗浄チャンバー22で排ガスから硫黄分を除去した除去用水RWは、排水EWとして海へ排出される。
・・・
【0032】
図4に示すハイブリッドタイプの水処理部30C(すなわち水循環系110C)は、上述のクローズドループタイプの水処理部30Aの構成要素及びオープンループタイプの水処理部30Bの構成要素を両方有している。すなわち、水処理部30Cは、クローズドループタイプの運転を行うための構成要素として、プロセスタンク31と、熱交換器32と、ポンプ33,34と、水酸化ナトリウムタンク36と、浄水装置37と、ホールディングタンク38と、を備え、各ラインL3,L4,L5,L6,L7,L8,L9を備えている。また、水処理部30Cは、オープンタイプの運転を行うための構成要素として、ポンプ33,34と、水酸化ナトリウムタンク(水酸化ナトリウム貯留部)36と、を備え、各ラインL3,L11,L12,L13を備えている。水処理部30Cは、クローズドループタイプの運転とオープンループタイプの運転とを、図示されない弁などを切り替えることによって、変更可能である。
【0033】
上述のような水処理部30Cの構成要素のうち、プロセスタンク31と、熱交換器32と、ポンプ34と、水酸化ナトリウムタンク36と、浄水装置37と、ホールディングタンク38とは、舵機室4に配置されてよい。なお、これらの構成要素の全てが舵機室4に配置されていなくともよく、一部は他の部分(機関室3など)に配置されてよい。」

オ 「【図2】

【図3】

【図4】



(4)引用例4の記載事項(訳文は異議申立人2によるもの)
ア 「


([0004]
船舶ディーゼル機関の排ガスから排出される硫黄酸化物を規制する有効な方法の一つは、船舶に排ガス洗浄装置を取り付けることである。現在、商品化されている船舶排ガス洗浄装置としては、主としてオープン型、クローズド型、ハイブリッド型の3種類の脱硫方式がある。装置の基本的な動作原理は、アルカリ性洗浄溶液を洗浄器の中に吹き込み、排ガスと逆流接触させ、アルカリ性洗浄液中のアルカリ性成分と煙の中の硫黄酸化物で酸アルカリ中和反応を起こすことにより、排ガス中のSOXを吸収して除去するというものである。オープン型脱硫システムは、天然海水をアルカリ性洗浄液として用い、洗浄後の海水は、処理した後に海に直接排出することができる。クローズド型脱硫システムは、アルカリ性洗浄液としてNaOH淡水溶液を採用し、システム中で循環させて動作する。
[0005]
オープン型脱硫システムの長所は、天然海水を使用するだけでよく、運転コストが低く、経済性がよいことである。しかしながら、このシステムの脱硫効果は海水のアルカリ度に大きく左右され、排出される洗浄廃液のpHが比較的低く、大量の海水を希釈する必要があるため、このシステムの海水消費量は大きく、大量の船舶電気エネルギーを消費する。クローズド型脱硫システムの特徴は、脱硫効果が海水の質と無関係であり、かつシステムが船外に洗浄汚水を排出しないことである。しかしながら、このシステムは、大量の淡水を消費する必要があり、運転時間が比較的短く、船舶が短時間寄港する等の場合にのみ適している。バルチラ社が最近発表した湿式脱硫装置では、クローズド型モードにおいて淡水の代わりに天然海水を採用することをすでに考慮しており、船舶の淡水使用量を減少させているとのことであるが、このシステムは、運転時間が短いという問題を有効に解決できていない。)

イ 「



([0043]
先行技術と比べ、本発明は、以下の有益な効果を有する。
[0044]
1、本発明は、オープン型モードでは、少量のナトリウムアルカリ溶液を天然海水中に加えることにより、噴射する海水のpHおよびアルカリ度を適度に高め、海水のSOX吸収能力を増強するだけでなく、排出汚水の酸度が高いという問題も解決し、排出される洗浄水のpH値を6.5超にして、関連法規で要求される湿式洗浄廃液のpHが6.5よりも高いという規定を満たすようにする。
[0045]
2、本発明は、クローズド型モードでは、2つの並列した循環水タンクが設けられる。循環水タンクを交互に運転する方式を採用して、クローズド型モードにおけるシステムの運転時間を大幅に増加させ、通常のクローズド型システムの運転時間が短い問題を解決し、装置の実用性を極めて大きく増強する。)

ウ 「



([0084] 実施例3
[0085] 図1に示すように、新型船舶ディーゼル機関排ガス脱硫洗浄装置は、主海水管1と、三方弁I2と、三方弁II3と、海水ポンプI4と、海水ポンプII5と、計量ポンプII6と、冷却器7と、アルカリ液タンク8と、淡水タンク9と、副噴射管10と、主噴射管11と、三方弁X12と、計量ポンプI13と、冷却塔14と、三方弁IX15と、循環水タンクI16と、循環水タンクII17と、三方弁VII18と、三方弁VI19と、洗浄塔20と、排水ポンプ21と、三方弁III22と、バイパス管23と、汚泥タンク24と、三方弁IV25と、曝気槽26と、液体サイクロン27と、三方弁V28と、三方弁VIII29と、排水管30と、廃水貯蔵タンク31と、を含む。
[0086] 前記主海水管1上には、三方弁I2、三方弁II3が設けられており、前記三方弁I2、三方弁II3を左の位置にすると、前記新型船舶ディーゼル機関排ガス脱硫洗浄装置がオープン型動作モードになり、前記三方弁I2、三方弁II3を右の位置にすると、前記新型船舶ディーゼル機関排ガス脱硫洗浄装置がクローズド型動作モードになる。)

エ 「



([0103]
前記循環水タンクI16および前記循環水タンクII17上に、いずれも補水ロが設けられている。
[0104]
前記三方弁I2、三方弁II3を左の位置にすると、前記新型船舶ディーゼル機関排ガス脱硫洗浄装置がオープン型動作モードになり、前記アルカリ液タンク8中のアルカリ液が前記計量ポンプII6の作用の下で天然海水と主海水管1中で混合し、ナトリウムアルカリ海水溶液が前記海水ポンプII5を通過し、一部が副噴射管10を経て冷却塔14に入り、排ガスを降温処理し、他の一部が主噴射管11を経て洗浄塔20に入り、冷却塔14で降温処理した排ガスと逆方向に接触して、酸アルカリ中和反応を起こす。
[0105]
洗浄塔20で脱硫処理したガスが基準に達した後、大気中に排出し、洗浄塔20脱硫処理した液体を、排水ポンプ21、三方弁III22を介して曝気槽26に入れて酸化処理し、酸化した溶液が三方弁IV25を経て液体サイクロン27に入り、残渣除去処理を行い、汚泥が液体サイクロン27の残渣排出ロを介して汚泥タンク24に入り、上清液が液体サイクロン27の排水ロ、三方弁V28、三方弁VIII29を経て海に排出されるか、または廃水貯蔵タンク31中に貯蔵される。
[0106]
前記三方弁I2、三方弁II3を右の位置にすると、前記新型船舶ディーゼル機関排ガス脱硫洗浄装置がクローズド型動作モードになり、淡水タンク9中の淡水が、三方弁XI2、計量ポンプI13、三方弁VI19、三方弁VII18を経て、並列運転している循環水タンクI16および循環水タンクII17内に充填され、アルカリ液タンク8中のアルカリ液が、三方弁X12、計量ポンプI13、三方弁VI19、三方弁VII18を経て、並列運転している循環水タンクI16および循環水タンクII17内に充填される。
[0107]
循環水タンクI16中のナトリウムアルカリ洗浄溶液を冷却器7に入れ、主海水管1中の海水が、三方弁I2、海水ポンプI4を経て冷却器6に入り、ナトリウムアルカリ洗浄溶液を冷却する。冷却されたナトリウムアルカリ洗浄溶液は、三方弁II3、海水ポンプII5を経て、一部が副噴射管10を経て冷却塔14に入り、排ガスを降温処理し、他の一部が主噴射管11を経て洗浄塔20に入り、冷却塔14で降温処理した排ガスと逆方向に接触させ、酸アルカリ中和反応を起こす。洗浄塔20で脱硫処理したガスが基準に達した後、大気中に排出され、洗浄塔20で脱硫処理した液体は、排水ポンプ21、三方弁III22、バイパス管23、三方弁IV25を介して、液体サイクロン27に入り、残渣除去処理を行い、汚泥は、液体サイクロン27の残渣排出ロを介して、汚泥タンク27に入り、上清液は、液体サイクロン27の排水ロ、三方弁V28、三方弁VI19、三方弁 VII18を介して、循環水タンクI16内に戻され、前記循環水タンクI16中のナトリウムアルカリ洗浄溶液は、ナトリウムアルカリ洗浄溶液中の硫酸イオンまたは亜硫酸イオンの濃度が過剰になり、かつ脱硝効率に著しい低下が見られるまで循環使用され、ナトリウムアルカリ海水溶液の供給源を循環水タンクI16から循環水タンクII17に切り替えると同時に、前記循環水タンクI16中のナトリウムアルカリ洗浄溶液を廃水貯蔵夕ンク31中に排出し、次いで前記循環水タンクI16に淡水およびアルカリ液を補充する。
[0108]
循環水タンクII17中のナトリウムアルカリ洗浄溶液を冷却器7に入れ、主海水管1中の海水が、三方弁I2、海水ポンプI4を経て冷却器6に入り、ナトリウムアルカリ洗浄溶液を冷却する。冷却されたナトリウムアルカリ洗浄溶液は、三方弁II3、海水ポンプII5を経て、一部が副噴射管10を経て冷却塔14に入り、排ガスを降温処理し、他の一部が主噴射管11を経て洗浄塔20に入り、冷却塔14で降温処理した排ガスと逆方向に接触させ、酸アルカリ中和反応を起こす。洗浄塔20で脱硫処理したガスが基準に達した後、大気中に排出され、洗浄塔20で脱硫処理した液体は、排水ポンプ21、三方弁 III22、バイパス管23、三方弁IV25を介して、液体サイクロン27に入り、残 渣除去処理を行い、汚泥は、液体サイクロン27の残渣排出ロを介して、汚泥タンク27に入り、上清液は、液体サイクロン27の排水口、三方弁V28、三方弁VI19、三方弁VII18を介して、循環水タンクII17内に戻され、前記循環水タンクII17中のナトリウムアルカリ洗浄溶液は、ナトリウムアルカリ洗浄溶液中の硫酸イオンまたは亜硫酸イオンの濃度が過剰になり、かつ脱硝効率に著しい低下が見られるまで循環使用され、ナトリウムアルカリ海水溶液の供給源を循環水タンクII17から循環水タンクI16に切り替えると同時に、前記循環水タンクII17中のナトリウムアルカリ洗浄溶液を廃水貯蔵タンク31中に排出し、次いで前記循環水タンクII17に淡水およびアルカリ液を補充する。
[0109]
前記循環水タンクI16および前記循環水タンクII17は、船舶が停止し排ガスが生成されなくなるまで、交互に運転する。)

オ 「

」(図1)

(5)引用例5の記載事項
ア 「【請求項1】
様々なエンジンからの排気ガスの受領及び洗浄のための洗浄システムであって、
少なくとの1つの構成成分を前記排気ガスから除去するための洗浄機であって、前記洗浄機内への排気ガスを受領するための流入口、及び、前記洗浄機から洗浄された排気ガスを排出するための流出口を有するハウジングを含む、洗浄機と、
排気ミキサであって、前記様々なエンジンの各々から離れた位置にある前記様々なエンジンから前記排気ミキサに入る排気ガスを受領するように構成された複数の流入口、及び、前記排気ミキサからの排気ガスを排出するための流出口を有し、前記排気ミキサの流出口は、前記排気ミキサから前記洗浄機内へ排気ガスを搬送するために、前記洗浄機の前記流入口と流体連通して接続されるように構成され、前記排気ミキサは、前記流入口を通って、前記排気ミキサの流出口を出る、混合流れの中に入る前記排気ガスを混合するように構成されている、ミキサと、を備えた前記洗浄システム。」

イ 「【0015】
図2Bに示す洗浄システム11’は閉ループシステムである。図2Aに示す洗浄システム11の部分に対応する洗浄システム11’の部分は、同じ参照符号とそれに続くプライムで示す。図2Aの開ループの構成と実質的に同じ機能を有する部分は、図2Bの閉ループ構成については、再び詳細には記載しない。循環ポンプ75’は洗浄機29’のために、船の海水箱77’の代わりに滞留タンク85’から水を引き上げる。この実施形態では、循環ポンプ75’が滞留タンク85’から下側吸収器スプレヘッド43、中間吸収器スプレヘッド45、及び上側吸収器スプレヘッド47(図2Bには図示せず)のみに水を供給する。洗浄噴霧器53には、ポンプ(図示せず)を使用してライン96を介して海水箱77’から補給水が供給される。海水箱77’からの補給水はオンデマンドで滞留タンク85’にも供給される。バルブ99’は、洗浄噴霧器53に水を定期的に搬送するために、タイマによって制御される。滞留タンク85’に対する補給水についての要求は、バルブ139を動かすのに使用される滞留タンク上のレベルセンサ101によって制御される。滞留タンク85’内の液体は、洗浄機29’内で排気ガスによって加熱され、洗浄機を通して再利用される場合、排気ガスからの熱の除去には効果が低い場合がある。したがって、滞留タンク85’から下側吸収器スプレヘッド43、中間吸収器スプレヘッド45、及び上側吸収器スプレヘッド47に、ライン79’を通って循環する水は、ライン79’が通過する熱交換器105内で冷却される場合がある。107で示される供給部からのクーラントは、海、川、湖、または他の水の本体の形態である場合がある。クーラントはライン109を通して熱交換器105に搬送され得、次いで冷却水出口111においてライン79’内の水から熱が除去された後に排出される。熱交換器105に搬送される冷却水の量は、洗浄機29’の温度センサ115によって制御されるバルブ113によって調整される。温度センサ115は、洗浄機29’を出る洗浄された排気ガスの温度を検出する。温度センサ115によって測定される洗浄された排気ガスの温度が上がると、より多くの冷却水が熱交換器105に供給される。洗浄された排気ガスの温度が低下すると、使用される水がより少なくなる。
【0016】
下側吸収器スプレヘッド43、中間吸収器スプレヘッド45、及び上側吸収器スプレヘッド47に供給するためのドレイン導管83’による洗浄機29’を出る水の再使用は、再使用される水の監視を必要とする。pHセンサ115は、ポンプ75’によって滞留タンク85’から引き上げられた水を監視する。SO2の経時的な吸収により、水のpHが低下する。このことを相殺するために、pHセンサ115が、ポンプ75’によって滞留タンクから引き上げられた水の中において、pHが十分に低いことを検出した場合、滞留タンク85’内の水に試薬が加えられる。より具体的には、pHセンサ116が試薬ポンプ117を機動して、蓄積タンク119からライン121を通して滞留タンク85’に試薬を搬送する。任意の適切な試薬が使用され得、一例では、滞留タンク85’から再利用される水による洗浄機29’内のSO2の継続的吸収を促進するために、NaOHが試薬として使用される。SO2の吸収及び試薬との反応によっても、水が再使用される場合、滞留タンク85’の水の中に溶解した塩の総量が増大する。溶解した塩の総量のセンサ123により、滞留タンク85’を出る水の中に溶解した塩の総量が検出され得、水をライン79’から洗浄水処理ユニット127にパージするために、バルブ125を開かせ得る。洗浄水処理ユニット127内で水から微粒子が分離され、堆積物として凝縮される。堆積物は、洗浄水処理ユニット127から堆積物蓄積タンク91’に搬送される。分離された水は洗浄され、次いで、海、川、湖、または他の水の本体に、排出流出口97’によって排出される。閉ループの洗浄システム11’では、作動時に、水の本体からより少ない水が取得され、水の本体に再び導入される。

ウ 「【図2B】



(6)引用例6の記載事項
ア 「2. EGCSの開発
当社は2010年から三菱化工機株式会社と共同で燃料油中硫黄分低減の代替手段と成り得る湿式SOXスクラバーの開発に着手した.
図1に当社長崎研究所の2ストロークディーゼル単筒試験機(定格出力762kW)の排ガスを投入して脱硫性能を評価・検証したスクラバー実証プラントの全景を示す.ここでは後述する清水クローズドループ及び海水オープンループという2つの排ガス洗浄方式に係る各種実証試験が行われ,ディーゼル機関の排ガス脱硫に関するデータを蓄積してきた.ハイプリッドSOXスクラバーシステムは,上記実証プラントにより得られた知見をもとに開発された製品である.」(101頁右欄6〜18行)

イ 「3. 排ガス洗浄方法
本システムは排ガス洗浄水を苛性ソーダ(NaOH)で中和しながら循環利用する清水クローズドループモードと,取水した悔水を直接排ガスに散布する海水オープンループモードという2つの排ガス洗浄方式を有する“ハイプリッド型”であり,大洋,河川,港内等多様な航行海域における排ガス洗浄処理が可能な仕様となっている.
3.1 清水クローズドループモード
概略系統図を図2に示す.本モードでは清水をスクラバータワー内に散布して排ガスを洗浄し硫黄酸化物を分離・吸収し,洗浄に使用した清水は循環水タンクに回収し,再度洗浄水として使用する.
排ガス洗浄後の清水は硫黄酸化物を吸収して酸性を帯びるため,循環ライン中のpHを監視しながら適宜苛性ソーダを注入することによりpHを一定の範囲に保つようコントロールされる.また,循環水の比重増加を監視しながら,その一部を適宜排水処理装置に送液して処理するとともに,循環水の減少分を造水装置ユニットで精製した清水で補うことで性状を一定に保持している.さらに高温排ガスに曝される循環水の温度を一定に保つため,海水を低熱源とする熱交換器で循環水を冷却している.
3.2 水オープンループモード
概略系統図を図3に示す.本モードでは船外から取水された海水をスクラバータワー内に散布して排ガスを洗浄し硫黄酸化物を分離・吸収し,洗浄に使用した海水は排水として船外に放出される.」(102頁左欄1〜末行)

ウ 「

」(102頁右欄)

エ 「4.1 スクラバータワー
スクラバータワーは複数機関の排ガスをタワー1基で処理することができる.タワー内部はシンプルな構造で可動部もないため保守性に優れかつ低圧損を実現している.ハイブリッドシステムの場合,一般的にスクラバータワーと循環水タンクは分離独立しているが,当社ではタワー下部に当該タンクを内蔵したハイブリッドシステム専用タワーを開発した(図4).これにより個別に配置・搭載していたこれら大型機器を一体搭載することが可能になり,必要設置スペースの低減,艤装期間の短縮及び搭載費用の削減に寄与する.」(102頁右欄1〜11行)

(7)引用例7の記載事項
ア 「2. 三菱ハイブリッドSOXスクラバーシステム
・・・
本システムは排ガス中のSOXを洗浄水により吸収,除去し,酸性に傾く洗浄水を水酸化ナトリウムで中和しながら循環利用する清水循環モード(図1)と取水した海水をそのまま排ガス洗浄水として用いる海水1パスモード(図2)という二つの洗浄モードを使用する“ハイブリッド型”であり,海洋はもちろん,河川,港湾内等すべての航行海域での使用を可能にしたシステムである.」(57頁右欄20行〜58頁左欄6行)

イ 「


」(58頁左欄)

ウ 「3.1 共通構成機器
各モードに共通して使用されるメインスクラバーは複数機関の排ガスをまとめて1基で処理する集合処理方式であり,主機関及び複数台の発電機関の排ガス管は切り替えダンパーを介してあらかじめ集合し,予冷部を経てメインスクラバーに接続されている.
メインスクラバー内部は気液接触の効率が高く,軽量化を考慮した不規則充填物を組み入れた構造であり,可動部を持たず,シンプルな保守性に優れたものになっている.
このメインスクラバーは,排ガスの吸引や,圧送といった構造を必要としない低圧損型となっており,排ガスエコノマイザーなどの廃熱回収機器の後段に設置される.
メインスクラバー下部は,清水循環モードの基点となる循環水タンクを組み込んだ設計になっており,設置スペースの低減を図っている.」(58頁下から13行〜右欄4行)

エ 「3.2 清水循環モード
清水循環モードでは,排ガスを0.1%以下の規制値相当まで低減することを目的に使用される.
このモードではメインスクラバー下部の循環水タンクに溜められた清水はポンプで送液され,予冷部,メインスクラバー充填材上部への各スプレーにより排ガスの洗浄に使用されたあと,タンクヘ戻る循環が主たる配管経路となる.
循環水は排ガスとの接触に伴い,液温の温度上昇が起こるため,これを安定させるために,循環水の経路には海水によるクーラーが設置される.
また,洗浄に伴い,循環水は排ガス中の硫黄分を取り込むためpHが低下する.循環水のpHは常時監視され,必要に応じ,水酸化ナトリウム水溶液をタンクから供給し中和安定させるシステムが付属する.
弱酸性に調整される循環水はSOXの吸収効率が高く,厳しい低減規制値に十分以上の能力を発揮する.
循環水は洗浄時間の経過と共に,排気中のススなど様々な物質を可溶,不溶を問わず循環水中に取り込む.
この取り込みに起因する汚損や中和塩の上昇を抑えるために,循環水は自動的に系外へ抜き出され,排水処理装置により浄化される.」(58頁右欄21〜42行)

オ 「3.3 海水1パスモード
海水1パスモードはオープンループと呼ばれ,海水ポンプにより汲み上げられる海水をスプレーし排ガスを洗浄する.海水自身が持つアルカリ度により洗浄され,使用された海水は循環使用することなく船外へ放出される.
これら二つの洗浄モードは,使用される燃料,海域毎の規制を勘案し,任意に切り替えて使用される.」(59頁左欄8〜15行)

(8)引用例8の記載事項
ア 「[請求項1] 排ガス中に含まれるSO2を洗浄海水と接触させ、排ガスを浄化して浄化ガスとし、SO2を吸収した前記洗浄海水を排水とするスクラバと、
前記スクラバに導入される前の排ガスの流量を測定する第1測定部と、
前記スクラバに導入される前の排ガスのSO2濃度を測定する第2測定部と、
前記浄化ガスのSO2濃度を測定する第3測定部と、
前記各測定部の測定値に基づいて前記排水のHSO3−の量を演算し、この演算結果に応じた量のアルカリ性物質を前記排水に供給する制御部とを備えることを特徴とする排ガス処理装置。」

イ 「[0031] 排水処理タンク40に導入された排水a2は、海へ放流するために酸を中和する必要がある。そのため、排水処理タンク40では、第2海水ポンプ50によって希釈海水a3が供給され、この希釈海水a3がスクラバ10からの排水a2と混合されて排水a2が希釈される。また、排水処理タンク40では、希釈された排水a2に対し、エア供給装置としてのブロア41を介して空気を混入する曝気(エアレーション)処理が行われる。曝気処理としては、ブロア41から供給される空気を、排水処理タンク40内のノズル42から細かいバブルエアとして噴出し、排水処理タンク40内の希釈された排水a2に接触させることが例示できる。・・・
[0032] 上記反応によって、排水処理タンク40で混合した希釈海水a3及び排水a2においては、亜硫酸イオン(HSO3−)が酸化することで、硫酸イオン(SO42−)が残って中性となり、水質改善した処理水a4となって海への放流が可能となる。なお、排水処理タンク40から放出される処理水a4の排出経路43には、処理水a4中のpHを計測する計測器44が設けられている。」

ウ 「[図1]



(9)引用例9の記載事項
ア 「【請求項1】
ボイラを含む燃焼装置から排出される排ガスを導入する入口と、該入口より下部に循環タンクを設け、該循環タンク内に新規な海水を補給すると同時に前記循環タンク内の海水を繰り返し供給して前記入口から導入される排ガス中の煤塵及び重金属を吸収除去する除塵スプレノズルを設け、該除塵スプレノズルの上方に新規な海水を噴霧して前記入口から導入される排ガス中の硫黄酸化物を吸収除去する脱硫スプレノズルを設け、前記除塵スプレノズルと前記脱硫スプレノズルの間に脱硫スプレノズルから噴霧される海水を回収するコレクタを設けた吸収塔と、除塵スプレノズルに供給する循環タンク内の海水の一部を抜き出して溜める排水処理設備を備えた海水排煙脱硫装置において、
除塵スプレノズルに供給する循環タンク内の海水中の塩素(Cl)イオン濃度と相関のある指標を常時あるいは断続的にモニタリングし、そのモニタリング値から導出される塩素(Cl)イオン濃度が10wt%を超えることのないように排水処理装置へ抜き出す循環タンク内の海水量と循環タンク内へ新規に補給する補給海水量を調整する手段を設けたことを特徴とする海水排煙脱硫装置。」

イ 「【実施例2】
【0067】
本発明の他の実施例を図7に示す。図7に示す装置は図1に示す装置における同一機能を奏する部材は同一番号を付して、その説明は省略する。
本実施例は除塵部Bの循環タンク5からの抜き出し海水量と補給海水量の制御用の指標として、循環タンク5内あるいは除塵用海水送水管L2の液を液質モニタ42により液質を検査し、その検査値に応じて循環タンク5からの抜き出し海水量と循環タンク5への補給海水量を制御する。
【0068】
塩素(Cl)濃度と相関がある液質として下記のいずれかの液質を指標として用いることができる。
・導電率<17S/m(電気伝導率計)
・液粘度<1.6cP(粘度計)
・液比重<1.1(比重計)
・Naイオン<60,000ppm(Naイオンメータ)
・Caイオン<1,600ppm(Caイオンメータ)
ただし、塩素(Cl)濃度と相関があるならば、これら以外のモニタリング手段を利用しても構わない。
【0069】
これらのうち、粘度計、比重計、電気伝導度計については、循環タンク5あるいは除塵用海水送水管L2の液を直接測定することができる。」

ウ 「【図1】



(10)引用例10の記載事項
ア 「【請求項1】
燃焼機関の排気ガスを排出する排気ガス管と、
洗浄水を供給する洗浄水供給管と、
前記排気ガス管を介して流入する排気ガスに、前記洗浄水供給管を介して供給される洗浄水を噴霧するスクラバーと、
前記スクラバー内部の洗浄水を排出してバラスト水タンクへ供給する洗浄水排出管とを含む、汚染物質低減装置。」

イ 「【図1】



(11)引用例11の記載事項
ア 「【請求項1】
タンク本体と、
エンジンエンジンに供給される燃焼用ガスを冷却することで発生した凝縮水を前記タンク本体に供給するドレン水供給管と、
清水を前記タンク本体に供給する清水供給管と、
前記清水供給管に設けられて前記タンク本体の貯水量に応じて開閉する清水バルブと、
前記タンク本体の貯留水をスクラバに供給する給水管と、
を備えることを特徴とする給水タンク。
【請求項2】
前記タンク本体は、貯水量が予め設定された上限値を超えると排水する排水管が設けられることを特徴とする請求項1に記載の給水タンク。
【請求項3】
前記タンク本体は、貯水量を計測する第1計測センサが設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の給水タンク。」

イ 「【0036】
メイクアップウォータタンク50は、タンク本体51と、ドレン水排出ライン(ドレン水供給管)W3と、清水供給ライン(清水供給管)W4と、給水ライン(給水管)W5と、オーバーフローライン(排水管)W6を備えている。
【0037】
タンク本体51は、中空形状をなし、所定量の水(ドレン水と清水)を貯留することができる。タンク本体51は、上部にドレン水排出ラインW3を構成する配管が接続されており、エアクーラ42で発生したドレン水がこのドレン水排出ラインW3を通して供給される。また、タンク本体51は、側部に清水供給ラインW4を構成する配管が接続されており、清水がこの清水供給ラインW4を通して供給される。船舶は、清水を製造するための造水機52が搭載されており、造水機52により製造された清水を貯留する清水タンク53が連結されている。そして、清水タンク53は、清水供給ラインW4によりタンク本体51に連結されており、清水供給ラインW4に清水ポンプ54と清水バルブ55が設けられている。
【0038】
タンク本体51は、側部にオーバーフローラインW6を構成する配管が接続されており、タンク本体51の貯水量が予め設定された上限値を超えると、貯留水がこのオーバーフローラインW6を通して排出される。ドレン水処理ラインW7は、ドレン水タンク56とポンプ57が設けられ、処理装置58に連結されている。この処理装置58は、ドレン水から舶用ディーゼルエンジン11の潤滑油やシステム油などの油分を除去するものであり、処理水はそのまま排水し、分離した廃棄物は図示しない廃棄物容器に収容する。」

ウ 「【図1】



(12)引用例12の記載事項
ア 「【請求項1】
排気ガスの洗浄に使用して排気ガス中の固形成分を含有する液体を貯留するバッファタンクと、このバッファタンクに貯留された前記液体と前記固形成分とを分離する固液分離機と、前記固形成分を貯留するスラッジタンクとを備える排水処理装置において、
前記バッファタンクの中に貯留されている前記液体を撹拌する撹拌機構と、前記バッファタンクの中に貯留されている前記液体の液面に浮遊するスカムを回収する回収機構とを備えることを特徴とする排水処理装置。

イ 「【0066】
バッファタンク3に中和剤を供給する中和剤供給機構17を設置する構成にすることができる。この中和剤供給機構17は、バッファタンク3内のスクラバ排水のpHに応じて中和剤の供給量を調整する機能を備えている。中和剤としては例えば苛性ソーダなどのアルカリ性の物質を採用することができる。
【0067】
バッファタンク3内のpHの数値とスクラバ排水の分離効率(%)との関係を求める実験を行なった。図6に例示するようにpHの値が大きくなるほど(アルカリ性に傾くほど)、分離効率を向上することができる。これはスクラバ排水のpHの値が小さくなるほど(酸性に傾くほど)スカムSが生成されにくくなるためである。
【0068】
pH測定器等でバッファタンク3内のpHの値を監視し、pHが所定の値よりも小さくなったときに、例えば苛性ソーダなどのアルカリ性の物質を中和剤としてバッファタンク3内に供給する。具体的には中和剤供給機構17によりバッファタンク3内のpHの値が6.5以上となる状態に制御する。望ましくはバッファタンク3内のpHの値を9.0以上となる状態に維持する。バッファタンク3内においてスカムSを積極的に発生させて分離効率を向上するには有利である。」

ウ 「【図1】



(13)引用例13の記載事項
ア 「【請求項1】
船体外から取り込んだ洗浄水を排ガス洗浄装置で使用後、船体外へ排出するオープンモードの洗浄水供給系列を備える船舶用の洗浄水供給システムであって、
前記オープンモードの洗浄水供給系列は、
軽荷喫水よりも下に配置され、船体外から取り込まれた洗浄水を汲み上げる第1ポンプと、
前記軽荷喫水よりも上に配置され、前記第1ポンプにより汲み上げられた洗浄水に更に圧を加え前記排ガス洗浄装置へ送出する第2ポンプと
を備えることを特徴とする船舶用の洗浄水供給システム。
【請求項2】
洗浄水を循環利用するクローズドモードの洗浄水供給系列を備え、前記クローズドモードで使用される洗浄水が前記第2ポンプを通して前記排ガス洗浄装置へ供給されることを特徴とする請求項1に記載の洗浄水供給システム。
【請求項3】
前記クローズドモードで使用される洗浄水を冷却するための熱交換器を備えることを特徴とする請求項2に記載の洗浄水供給システム。
【請求項4】
前記クローズドモードで使用される洗浄水が、前記第1ポンプにより汲み上げられ、前記熱交換器を介して前記第2ポンプに供給されることを特徴とする請求項3に記載の洗浄水供給システム。」

イ 「【0014】
第1実施形態の洗浄水供給システム10は、例えば船舶の機関室に配置される排ガス洗浄装置12へ洗浄水を供給するシステムである。排ガス洗浄装置12は、エンジン等における化石燃料の燃焼により排出される排気ガスから例えば硫黄酸化物等を取り除く湿式のスクラバである。本実施形態には、船体外から取り込んだ洗浄水(海水または清水)を排ガス洗浄装置12へ供給し、使用の後船体外へ排出するオープンモードの洗浄水供給系列14と、船体内で洗浄水(海水または清水)を循環させ、冷却して使用するクローズドモードの洗浄水供給系列16が設けられる。オープンモードとクローズドモードは、運航海域により適宜択一的に選択され、切り換えられる。」

(14)引用例14の記載事項
ア 「【請求項1】
排ガス中の硫黄酸化物を処理する方法において、上記排ガスを海水により加湿し、該加湿された排ガスを触媒により反応させて希硫酸を生成し、上記触媒から排出された上記希硫酸と上記海水中に含まれるカルシウムと反応させて硫酸カルシウムを生成し、生成された上記硫酸カルシウムを上記海水から除去し、上記硫酸カルシウムが除去された海水を上記触媒の上方から散水することを特徴とする排ガス処理方法。」

イ 「【0041】
まず、反応塔循環ライン20につき説明する。
反応塔循環ライン20において、反応塔3の下部の貯留槽内に溜まっている硫酸カルシウム等の硫酸塩、希硫酸等を含有する海水は配管22を介して反応塔循環ポンプ21により吸引される。
【0042】
反応塔循環ポンプ21により吸引された海水の一部は、遠隔制御弁26及び配管23を介して、煙道2の途中に配設された循環水散布器6に供給される。またこの海水の一部は、遠隔制御弁27及び配管24を介して反応塔3内に配設された循環水散布器7に供給される。
さらに、反応塔循環ポンプ21の吐出側には、遠隔制御弁28を介してPH調整槽10に海水を排出する配管25が接続されている。
【0043】
反応塔3の下部の貯留槽には、その水位レベルを検出するレベル計71(又は、レベルスイッチ)が設けられている。
そして、図2に示すように、レベル計71からの信号は、制御盤70内の反応塔レベル制御器76a(又は制御回路、制御シーケンス)により設定値と比較されて設定値以下となった場合には、後記する海水供給ライン30の遠隔制御弁35が開いて海水が供給、或いは海水の供給量が増加される。
【0044】
次に、海水供給ライン30につき説明する。
海水は、船舶の船底14に設けられた海水吸入口から、海水供給ポンプ31により、配管32を介して吸入される。吸入された海水は、遠隔制御弁35及び配管34を介して反応塔3の触媒層8より下方の位置に投入される。さらに吸入された海水の一部は遠隔制御弁36及び配管33を介してPH調整槽10へ送付される。」

ウ 「【図1】



(15)引用例15の記載事項
ア 「【請求項1】
スクラバーを備えた排ガス脱硫装置であって、
前記スクラバーは、排ガス入口と、排ガス出口と、少なくとも第1および第2洗浄部とを有し、
前記第1洗浄部は、
前記スクラバー内を進行する排ガスに向けて第1アルカリ水を供給する第1アルカリ水供給部と、
前記第1アルカリ水供給部の下方に設けられ、前記排ガスと接触した前記第1アルカリ水を回収する第1アルカリ水回収部とを有し、
前記第2洗浄部は、
前記排ガスの流れに対して前記第1洗浄部の下流に位置し、
前記スクラバー内を進行する排ガスに向けて第2アルカリ水を供給する第2アルカリ水供給部と、
前記第2アルカリ水供給部の下方に設けられ、前記排ガスと接触した前記第2アルカリ水を回収する第2アルカリ水回収部とを有する、
排ガス脱硫装置。」

イ 「【図1】



2 引用例1〜4に記載の発明
(1)引用例1に記載された発明
引用例1の上記1(1)クの「3.3 Hybrid Mode Systemについて
Hybrid Mode SystemはOpen ModeとClose Modeの運転モードの切り替えが可能なため,取水域のアルカリ度や洗浄水排出が禁止された水域でも使用が可能である.基本的にClose Modeの構成品と同じだが,転換バルブと配管を追加することで,Open ModeとClose Modeの運転モードの切り替えができるようになっている.」との記載によれば、引用例1に記載される「Hybrid Mode System」として、同ア〜クに記載され、下記Close Modeの構成品を前提として、下記Open ModeとClose Modeの両運転モードを行うことができ、追加された転換バルブで「Open Mode」と「Close Mode」の運転モードの切り替えが可能であり、また、Close Modeの構成品を前提としているのであるから、追加された配管で、Open Modeの運転が可能となっているシステム、及びその運用方法(以下、それぞれ、「引用例1発明」、及び「引用例1’発明」という。)が記載されているといえる。



(2)引用例2に記載された発明
引用例2の上記1(2)イは、「Hybrid Scrubber」のシステム図であるが、このシステム図の内容を、本件発明3の記載形式を参考にしながら、文章にしてみると、引用例2には、次の発明(以下、「引用例2発明」という。)が記載されているといえる。

「船舶に搭載され、下図に示され、SOX、CO2が含まれるExhaust Gasを洗浄するためのHybrid Scrubberであり、Exhaust GasにScrubbing waterを接触させるScrubberと、船体の外部と前記Scrubberを接続し、Scrubbing waterが流れる経路と、前記Scrubberと船体の外部を接続し、Residence Tankを経由し、又はProcess Tank、Bleed-off Treatment Unitを経由し、Wash waterが流れる経路と、前記Scrubberと、Scrubbing waterが流れる経路に接続し、前記Process Tankを経由し、Wash waterが流れる経路と、船体の外部と前記Scrubberを接続する経路において前記Process TankからのWash waterが流れる経路が接続する箇所よりも下流側に設けられたScrubbing water Pumpと、前記Process TankにMake-up Waterを供給する経路とを備える、Hybrid Scrubber、及びその運用方法。



(3)引用例3に記載された発明
引用例3の上記1(3)ウの【0019】の記載によれば、オープンタイプ機能もクローズドタイプ機能も選択可能としたハイブリッドタイプの水処理部30Cを有する排ガス処理システム100Cのシステム構成を示す概略図とされる、同オの【図4】で示される排ガス処理部20を有する排ガス処理システムが、引用例3には記載され、同エの【0032】には、この排ガス処理システムについて、「図4に示すハイブリッドタイプの水処理部30C(すなわち水循環系110C)は、上述のクローズドループタイプの水処理部30Aの構成要素及びオープンループタイプの水処理部30Bの構成要素を両方有している。すなわち、水処理部30Cは、クローズドループタイプの運転を行うための構成要素として、プロセスタンク31と、熱交換器32と、ポンプ33,34と、水酸化ナトリウムタンク36と、浄水装置37と、ホールディングタンク38と、を備え、各ラインL3,L4,L5,L6,L7,L8,L9を備えている。また、水処理部30Cは、オープンタイプの運転を行うための構成要素として、ポンプ33,34と、水酸化ナトリウムタンク(水酸化ナトリウム貯留部)36と、を備え、各ラインL3,L11,L12,L13を備えている。水処理部30Cは、クローズドループタイプの運転とオープンループタイプの運転とを、図示されない弁などを切り替えることによって、変更可能である。」と記載されている。
以上より、引用例3には、次の発明(以下、「引用例3発明」という。)が記載されているといえる。

「オープンタイプ機能もクローズドタイプ機能も選択可能としたハイブリッドタイプの水処理部30Cを有し、下図で表される排ガス処理部20を有する排ガス処理システムであって、
水処理部30Cは、クローズドループタイプの運転を行うための構成要素として、プロセスタンク31と、熱交換器32と、ポンプ33,34と、水酸化ナトリウムタンク36と、浄水装置37と、ホールディングタンク38と、各ラインL3,L4,L5,L6,L7,L8,L9と、を備え、また、水処理部30Cは、オープンタイプの運転を行うための構成要素として、ポンプ33,34と、水酸化ナトリウムタンク(水酸化ナトリウム貯留部)36と、各ラインL3,L11,L12,L13と、を備え、
水処理部30Cは、クローズドループタイプの運転とオープンループタイプの運転とを、図示されない弁などを切り替えることによって、変更可能である排ガス処理システム、及びその運用方法。



(4)引用例4に記載された発明
引用例4の上記1(4)ウに記載される実施例3として、引用例4には、オープン型動作モード及びクローズド型動作モードを有し、下図で表される新型船舶ディーゼル機関排ガス脱硫洗浄装置が記載され、この新型船舶ディーゼル機関排ガス脱硫洗浄装置を説明する同エの[0104]〜[0109]の記載を踏まえると、引用例4には、次の発明(以下、「引用例4発明」という。)が記載されているといえる。

「オープン型動作モード及びクローズド型動作モードを有し、下図で表される新型船舶ディーゼル機関排ガス脱硫洗浄装置であって、
オープン型動作モードでは、三方弁I2、三方弁II3を左の位置にすると、アルカリ液タンク8中のアルカリ液が計量ポンプII6の作用の下で天然海水と主海水管1中で混合し、ナトリウムアルカリ海水溶液が海水ポンプII5を通過し、一部が副噴射管10を経て冷却塔14に入り、排ガスを降温処理し、他の一部が主噴射管11を経て洗浄塔20に入り、冷却塔14で降温処理した排ガスと逆方向に接触して、酸アルカリ中和反応を起こし、洗浄塔20で脱硫処理したガスが基準に達した後、大気中に排出し、洗浄塔20脱硫処理した液体を、排水ポンプ21、三方弁III22を介して曝気槽26に入れて酸化処理し、酸化した溶液が三方弁IV25を経て液体サイクロン27に入り、残渣除去処理を行い、汚泥が液体サイクロン27の残渣排出ロを介して汚泥タンク24に入り、上清液が液体サイクロン27の排水ロ、三方弁V28、三方弁VIII29を経て海に排出されるか、または廃水貯蔵タンク31中に貯蔵され、
クローズド型動作モードでは、三方弁I2、三方弁II3を右の位置にすると、淡水タンク9中の淡水が、三方弁XI2、計量ポンプI13、三方弁VI19、三方弁VII18を経て、並列運転している循環水タンクI16および循環水タンクII17内に充填され、アルカリ液タンク8中のアルカリ液が、三方弁X12、計量ポンプI13、三方弁VI19、三方弁VII18を経て、並列運転している循環水タンクI16および循環水タンクII17内に充填され、循環水タンクI16中のナトリウムアルカリ洗浄溶液を冷却器7に入れ、主海水管1中の海水が、三方弁I2、海水ポンプI4を経て冷却器6に入り、ナトリウムアルカリ洗浄溶液を冷却し、冷却されたナトリウムアルカリ洗浄溶液は、三方弁II3、海水ポンプII5を経て、一部が副噴射管10を経て冷却塔14に入り、排ガスを降温処理し、他の一部が主噴射管11を経て洗浄塔20に入り、冷却塔14で降温処理した排ガスと逆方向に接触させ、酸アルカリ中和反応を起こし、洗浄塔20で脱硫処理したガスが基準に達した後、大気中に排出され、洗浄塔20で脱硫処理した液体は、排水ポンプ21、三方弁III22、バイパス管23、三方弁IV25を介して、液体サイクロン27に入り、残渣除去処理を行い、汚泥は、液体サイクロン27の残渣排出ロを介して、汚泥タンク27に入り、上清液は、液体サイクロン27の排水ロ、三方弁V28、三方弁VI19、三方弁 VII18を介して、循環水タンクI16内に戻され、循環水タンクI16中のナトリウムアルカリ洗浄溶液は、ナトリウムアルカリ洗浄溶液中の硫酸イオンまたは亜硫酸イオンの濃度が過剰になり、かつ脱硝効率に著しい低下が見られるまで循環使用され、ナトリウムアルカリ海水溶液の供給源を循環水タンクI16から循環水タンクII17に切り替えると同時に、循環水タンクI16中のナトリウムアルカリ洗浄溶液を廃水貯蔵夕ンク31中に排出し、次いで前記循環水タンクI16に淡水およびアルカリ液を補充し、循環水タンクII17中のナトリウムアルカリ洗浄溶液を、循環水タンクI16の場合と同様に循環し、循環水タンクII17中 のナトリウムアルカリ洗浄溶液は、ナトリウムアルカリ洗浄溶液中の硫酸イオンまたは亜硫酸イオンの濃度が過剰になり、かつ脱硝効率に著しい低下が見られるまで循環使用され、再び、ナトリウムアルカリ海水溶液の供給源を循環水タンクII17から循環水タンクI16に切り替え、循環水タンクI16および循環水タンクII17は、船舶が停止し排ガスが生成されなくなるまで、交互に運転する、新型船舶ディーゼル機関排ガス脱硫洗浄装置、及びその運用方法。



3 取消理由1及び申立理由1−1(引用例1を主引用例とした特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如))について
令和3年10月11日付け取消理由通知で通知した取消理由1は、本件発明3〜6、9、11、12、14及び16を対象とするものであり、申立理由1−1は、請求項1、2、13、15が削除されたので、本件発明7、8、10を対象とするものである。
(1)本件発明3について
ア 本件発明3と引用例1発明との対比
(ア)引用例1の上記1(1)ウの「湿式スクラバーは洗浄水量が多く,スクラバーの内部面積が広い程,排ガスと洗浄水の接触時間が長くなるため脱硫効率が上がる.ただし船舶という限られた空間と電力供給状況を考えると洗浄水を最小限に使用し,スクラバーの設置面積を最小限にすることが求められる.特に脱硫に必要とする洗浄水のアルカリ度には下限値があり,洗浄水の取水域(寄港または航行中)に最適なアルカリ度の確保が必要となる.」との記載によれば、引用例1発明は、船舶において、発生する排ガスを湿式スクラバーにて洗浄水により洗浄し脱硫を行うものであるといえるから、引用例1発明は、本件発明3の「船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システム」に相当するものであることが理解できる。
また、「スクラバー」は、排ガスの脱硫を行うものであるから、本件発明3の「脱硫塔」に相当すると共に、スクラバーでの排ガスと洗浄水の接触は、気液接触であるから、引用例1発明は、本件発明3の「排ガスに洗浄液を接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔」に相当する構成を備えていることが理解できる。

(イ)引用例1発明において、同クでHybrid Mode Systemは、「基本的にClose Modeの構成品と同じ」とされるのであるから、Open ModeとClose Modeの運転モードを可能な限りClose Modeの構成品で行い、追加される配管は、Open Modeの運転モードの機能を果たす上で最小限のものであることが理解できる。そして、転換バルブにて、Open ModeとClose Modeの運転モードを切り替えるということは、Open ModeとClose Modeの運転モードそれぞれの技術的な特徴であるスクラバーに対する洗浄水の取得先を、同オの図1のOpen Mode Systemの「洗浄水取水(海水)」とするか、Close Mode Systemの洗浄水タンクからの洗浄水とするか、またスクラバーからの洗浄水の排出先を、同図1のOpen Mode Systemの「洗浄水排出」とするか、Close Mode Systemの洗浄水タンクとするかを切り替えるものであることも理解できる。
そうすると、Open ModeとClose Modeの運転モードを可能な限りClose Modeの構成品で行い、スクラバーに対する洗浄水の取得先を「洗浄水取水(海水)」とするか、洗浄水タンクからの洗浄水とするか、また、スクラバーからの洗浄水の排出先を「洗浄水排出」とするか、洗浄水タンクとするかを切り替えることができるものとして、引用例1発明は、Open ModeとClose Modeの運転モードでスクラバーに対し洗浄水を供給する経路、スクラバーから洗浄水を排出する経路を共有し、共有経路の端にて、転換バルブにて洗浄水の取得先と排出先を切り替えることができるものであることが理解できる。

(ウ)上記(イ)の理解によれば、引用例1発明は、同オの図1のOpen Mode Systemのように「洗浄水取水(海水)」とスクラバーの間に経路が存在し、また、スクラバーと同図1のOpen Mode Systemの「洗浄水排出」との間に経路が存在することになるから、本件発明3の「船体の外部から船外水を取水するための取水部と、前記取水部と脱硫塔とを接続する供給路、前記脱硫塔から排出される洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路」に相当する構成を備えていることが理解できる。

(エ)上記(イ)及び(ウ)の理解によれば、引用例1発明は、同キの図2のClose Mode Systemの構成品を有すること、及びスクラバーに対する洗浄水の取得先を「洗浄水取水(海水)」とするか、洗浄水タンクからの洗浄水とするかの経路の切り替え箇所は、合流部を形成しているといえることから、本件発明3の「脱硫塔から排出される洗浄液を循環液として供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路」、及び「前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンク」に相当する構成を備えていることが理解できる。

(オ)上記(イ)の理解によれば、引用例1発明は、本件発明3の「前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何れか一方に切り替えるための排出側切替装置」に相当する構成を備えていることが理解できる。

(カ)引用例1発明において、同キの図2によれば、「洗浄水タンク」に対して「洗浄水補充」とされ、この補充される「洗浄水」が船外の水であって良いことは当業者にとり自明であるから、引用例1発明は、本件発明3の「前記貯留タンクに前記船外水を補給可能に構成されている船外水補給装置」に相当する構成を備えていることが理解できる。

(キ)以上を踏まえると、本件発明3と引用例1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違している。
<一致点>
「船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システムであって、
前記排ガスに洗浄液を接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、
船体の外部から船外水を取水するための取水部と、
前記取水部と前記脱硫塔とを接続する供給路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を循環液として前記供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路と、
前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何れか一方に切り替えるための排出側切替装置と、
前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンクと、を備え、
前記貯留タンクに前記船外水を補給可能に構成されている船外水補給装置と、をさらに備える
排ガス洗浄システム。」

<相違点1>
本件発明3は、「前記供給路における前記合流部よりも下流側に設けられた送水ポンプ」を備えているのに対し、引用例1発明は、その様な構成を有しているのか明らかでない点。

<相違点2>
本件発明3は、「前記貯留タンクにおける前記循環液の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置と、前記貯留量取得装置で取得される前記貯留量に応じて、前記船外水補給装置による前記貯留タンクへの前記船外水の補給量を制御する制御部」を備えているのに対し、引用例1発明は、その様な構成を有しているのか明らかでない点。

イ 相違点についての判断
上記各相違点について検討する。
(ア)相違点1について
送水ポンプを設ける位置については、「Close Mode」の運転モードでも、また「Open Mode」の運転モードでも、スクラバーに洗浄水を供給できる限りにおいて、引用例1発明の「ハイブリッドモードシステム」において、送水ポンプは、流路の適宜位置に設けることができるものであるといえるところ、ハイブリッドモードシステムにおいて、取水部と脱硫塔とを接続する供給路における、循環路との合流部よりも下流側に送水ポンプを設けることは、引用例2の上記1(2)イ(Scrubbing Water Pump)及び引用例4の同(4)オ(ポンプ5)に記載されるように周知の事項であるから、引用例1発明の「ハイブリッドモードシステム」において、取水部と脱硫塔とを接続する供給路における、循環路との合流部よりも下流側に送水ポンプを設けることは、当業者ならば容易に想到し得る事項といえる。

(イ)相違点2について
引用例5の上記1(5)イの【0015】の「図2Bに示す洗浄システム11’は閉ループシステムである。・・・循環ポンプ75’は洗浄機29’のために、船の海水箱77’の代わりに滞留タンク85’から水を引き上げる。・・・海水箱77’からの補給水はオンデマンドで滞留タンク85’にも供給される。・・・滞留タンク85’に対する補給水についての要求は、バルブ139を動かすのに使用される滞留タンク上のレベルセンサ101によって制御される。」との記載によれば、同ウの図2Bに示される閉ループシステムは、本件発明3でいう「貯留タンク(滞留タンク85’)における循環液の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置(レベルセンサ101)と、前記貯留タンクに前記船外水を補給可能に構成されている船外水補給装置(海水箱77’等)と、前記貯留量取得装置で取得される前記貯留量に応じて、前記船外水補給装置による前記貯留タンクへの前記船外水の補給量を制御する制御部」からなる構成を有しているといえる。
そして、引用例1発明の洗浄水タンクには洗浄水が補充されるところ、補充に際し、洗浄水タンク内の洗浄水量を適切な量にするため、洗浄水タンクに対して適切な量を補給しようとすることは当業者が通常行う事項であるから、引用例1発明において、洗浄水タンクに対して適切な量を補給する手段として、引用例5の同イに記載の上記の手段を採用すること、すなわち、貯留タンクにおける循環液の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置と、前記貯留量取得装置で取得される前記貯留量に応じて、船外水補給装置による前記貯留タンクへの前記船外水の補給量を制御する制御部を備えるものとすることは、当業者ならば容易に想到し得ることといえる。
さらに、本件発明3の効果は、引用例1発明に、引用例5に記載の事項、及び上記周知事項を適用したものから、当然予測できる効果に過ぎない。

ウ 小括
そうすると、本件発明3は、引用例1発明、引用例1、5に記載の事項及び上記周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明4について
ア 本件発明4と引用例1発明との対比
本件発明4と引用例1発明とを対比すると、上記(1)アで述べた相違点1及び2に加え、以下の点でさらに相違している。
<相違点3>
本件発明4では、貯留タンクにおける循環液のpH値を検出可能に構成されているpH値検出装置と、前記貯留タンクに中和剤を添加可能に構成されている中和剤添加装置と、をさらに備え、前記制御部は、前記pH値検出装置で検出される前記pH値に応じて、前記中和剤添加装置による前記中和剤の添加量の制御を行うように構成されているのに対し、引用例1発明は、その様な構成を有しているのか明らかでない点。

イ 相違点についての判断
相違点1及び2については、上記(1)で述べたとおりである。
引用例5の上記1(5)イの【0016】の「・・・ドレイン導管83’による洗浄機29’を出る水の再使用は、再使用される水の監視を必要とする。pHセンサ115は、ポンプ75’によって滞留タンク85’から引き上げられた水を監視する。SO2の経時的な吸収により、水のpHが低下する。このことを相殺するために、pHセンサ115が、ポンプ75’によって滞留タンクから引き上げられた水の中において、pHが十分に低いことを検出した場合、滞留タンク85’内の水に試薬が加えられる。より具体的には、pHセンサ116が試薬ポンプ117を機動して、蓄積タンク119からライン121を通して滞留タンク85’に試薬を搬送する。任意の適切な試薬が使用され得、一例では、滞留タンク85’から再利用される水による洗浄機29’内のSO2の継続的吸収を促進するために、NaOHが試薬として使用される。」との記載によれば、引用例5には、本件発明4における、「貯留タンク(滞留タンク85’)における循環液のpH値を検出可能に構成されているpH値検出装置(pHセンサ115)と、前記貯留タンクに中和剤(NaOH)を添加可能に構成されている中和剤添加装置(蓄積タンク119)と、をさらに備え、制御部は、前記pH値検出装置で検出される前記pH値に応じて、前記中和剤添加装置による前記中和剤の添加量の制御を行う」ことが記載されているといえる。
そして、引用例1の上記1(1)カの「Close Mode Systemは洗浄水タンク内に洗浄水を貯め,洗浄水の循環と共にNaOHを持続的に供給し,洗浄水のアルカリ度を維持するシステムである.」の記載によれば、引用例1発明は、洗浄水を適切なアルカリ度に維持しようとするものであるから、洗浄水を適切なアルカリ度に維持する手段として、引用例5の【0016】に記載された上記手段を採用すること、すなわち、引用例1発明において、貯留タンクにおける循環液のpH値を検出可能に構成されているpH値検出装置と、前記貯留タンクに中和剤を添加可能に構成されている中和剤添加装置と、をさらに備えるものとし、制御部は、前記pH値検出装置で検出される前記pH値に応じて、前記中和剤添加装置による前記中和剤の添加量の制御を行うものとすることは、当業者ならば容易に想到し得る事項といえる。

ウ 小括
そうすると、本件発明4は、引用例1発明、引用例1、5に記載の事項及び上記周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明5、6、9について
ア 本件発明5と引用例1発明との対比
本件発明5と引用例1発明とを対比すると、少なくとも上記(1)アで述べた相違点1及び2に加え、以下の点でさらに相違している。
<相違点4>
本件発明5では、循環液から不純物を除去可能な循環液処理装置と、前記循環液を前記循環液処理装置により処理される被処理液として前記循環液処理装置に送るための被処理液路と、前記被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている被処理液流量制御弁と、をさらに備えるのに対し、引用例1発明は、その様な構成を有しているのか明らかでない点。

イ 本件発明6と引用例1発明との対比
本件発明6と引用例1発明とを対比すると、少なくとも上記(1)アで述べた相違点1及び2、上記アで述べた相違点4に加え、以下の点でさらに相違している。
<相違点5>
本件発明6では、排ガスを洗浄後の洗浄液の比重を検出可能な比重検出装置をさらに備え、前記制御部は、前記比重検出装置で検出される前記排ガスを洗浄後の前記洗浄液の比重に応じた、前記被処理液流量制御弁の開度の制御が可能に構成されているのに対し、引用例1発明は、その様な構成を有しているのか明らかでない点。

ウ 本件発明9と引用例1発明との対比
本件発明9と引用例1発明とを対比すると、少なくとも上記(1)アで述べた相違点1及び2、上記アで述べた相違点4に加え、以下の点でさらに相違している。
<相違点6>
本件発明9では、被処理液路は、貯留タンクと循環液処理装置とを接続する第2被処理液路を含み、被処理液流量制御弁は、前記第2被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている第2被処理液流量制御弁を含むのに対し、引用例1発明は、その様な構成を有しているのか明らかでない点。

エ 相違点についての判断
相違点1〜3については、上記(1)及び(2)で述べたとおりである。
引用例1の上記1(1)カの「洗浄水の再利用により汚染度が高くなるため,洗浄水タンク内にセンサーを設置し,汚染度が高まると洗浄水浄化装置から水分とスラッジを分離する.」との記載、及び同キの図2によれば、引用例1発明は、洗浄水タンク内のセンサーにより、洗浄水タンク内の洗浄水の汚染度が高くなった場合、洗浄水タンク内の洗浄水を洗浄水浄化装置に供給するものであるから、引用例1発明は、本件発明5の「前記循環液から不純物を除去可能な循環液処理装置と、前記循環液を前記循環液処理装置により処理される被処理液として前記循環液処理装置に送るための被処理液路」、及び本件発明9の「前記被処理液路は、前記貯留タンクと前記循環液処理装置とを接続する第2被処理液路」に相当する構成を有していることが理解できる。
そして、引用例1発明において、洗浄水浄化装置に供給する洗浄水の流量を制御できるものとすることは、システムを構成する上で、当業者が通常行うべき事項であると共に、洗浄水タンク内の洗浄水の汚染度を適正な値にするために、洗浄水浄化装置に供給する洗浄水の流量を制御できるものとすることも、当業者ならば適宜なし得る設計的な事項であるというべきであるから、引用例1発明において、本件発明5、9のように、被処理液路における被処理液の流量を制御可能にすることは、当業者ならば容易に想到し得る事項といえる。
また、引用例6の同(6)イの「また,循環水の比重増加を監視しながら,その一部を適宜排水処理装置に送液して処理するとともに,循環水の減少分を造水装置ユニットで精製した清水で補うことで性状を一定に保持している.」との記載、及び同ウの図2によれば、引用例6には、循環水の比重増加を監視しながら,その一部を適宜排水処理装置に送液して処理することも記載されているといえるから、引用例1発明において、さらに、本件発明6のように、洗浄水タンク内の洗浄水の汚染度を検出する手段を、排ガスを洗浄後の洗浄液の比重を検出可能な比重検出装置とし、制御部を、前記比重検出装置で検出される前記排ガスを洗浄後の前記洗浄液の比重に応じ、被処理液流量制御弁の開度の制御が可能なものとすることは、当業者ならば容易に想到し得るものといえる。

オ 小括
そうすると、本件発明5、6、9は、引用例1発明、引用例1、5、6に記載の事項及び上記周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明7について
ア 本件発明7と引用例1発明との対比
本件発明7と引用例1発明とを対比すると、少なくとも、上記(1)アで述べた相違点1及び2、上記(3)アで述べた相違点4に加え、以下の点でさらに相違している。
<相違点7>
本件発明7では、被処理液路に設けられるとともに被処理液を貯留可能な被処理液貯留タンクをさらに備えるのに対し、引用例1発明は、その様な構成を有しているのか明らかでない点。

イ 相違点についての判断
本件発明7は、少なくとも本件発明5を引用するものであるから、排ガス洗浄システムにおいて、循環液から不純物を除去可能な循環液処理装置と、前記循環液を前記循環液処理装置により処理される被処理液として前記循環液処理装置に送るための被処理液路と、前記被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている被処理液流量制御弁とを備えることに加え、前記被処理液路に前記被処理液を貯留可能な被処理液貯留タンクをさらに備えることを特定するものである。
上記(3)エで述べたように、引用例1発明は、洗浄水タンク内のセンサーにより、洗浄水タンク内の洗浄水の汚染度が高くなった場合、洗浄水タンク内の洗浄水を洗浄水浄化装置に供給するものであるが、被処理液路における被処理液の流量を制御可能とした上で、洗浄水タンクと洗浄水浄化装置とを接続する被処理液路に被処理液貯留タンクを設けることは、引用例1には記載されていないし、また引用例1発明において、その様な技術的要請があることも伺えないから、引用例1発明には、上記相違点7に係る本件発明7の構成を採用しようとする動機付けがない。
また、引用例5〜11にも、この点に関する記載はなく、仮に、引用例5〜11に記載の事項を引用例1発明に組み合わせたとしても、本件発明7には至らないから、上記相違点7に係る本件発明7の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。

ウ 小括
そうすると、本件発明7は、引用例1発明、引用例1、5〜11に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本件発明8について
ア 本件発明8と引用例1発明との対比
本件発明8と引用例1発明とを対比すると、少なくとも、上記(1)アで述べた相違点1及び2、上記(3)アで述べた相違点4に加え、以下の点でさらに相違している。
<相違点8>
本件発明8では、被処理液路は、供給路の送水ポンプよりも下流側に設けられる第1分岐部と循環液処理装置とを接続する第1被処理液路を含み、被処理液流量制御弁は、前記第1被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている第1被処理液流量制御弁を含むのに対し、引用例1発明は、その様な構成を有しているのか明らかでない点。

イ 相違点についての判断
本件発明8は、少なくとも本件発明5を引用するものであるから、排ガス洗浄システムにおいて、循環液から不純物を除去可能な循環液処理装置と、前記循環液を前記循環液処理装置により処理される被処理液として前記循環液処理装置に送るための被処理液路と、前記被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている被処理液流量制御弁とを備えることに加え、前記被処理液路は、供給路の送水ポンプよりも下流側に設けられる第1分岐部と前記循環液処理装置とを接続する第1被処理液路を含み、被処理液流量制御弁は、前記第1被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている第1被処理液流量制御弁を含むことを特定するものである。
上記(3)エで述べたように、引用例1発明は、洗浄水タンク内のセンサーにより、洗浄水タンク内の洗浄水の汚染度が高くなった場合、洗浄水タンク内の洗浄水を洗浄水浄化装置に供給するものであるが、特に、被処理液路を、供給路の送水ポンプよりも下流側に設けられる第1分岐部と循環液処理装置とを接続する第1被処理液路を含むものとすることは、引用例1には記載されていないし、また引用例1発明において、その様な技術的要請があることも伺えないから、引用例1発明には、上記相違点8に係る本件発明8の構成を採用しようとする動機付けがない。
また、引用例5〜11にも、この点に関する記載はなく、仮に、引用例5〜11に記載の事項を引用例1発明に組み合わせたとしても、本件発明8には至らないから、上記相違点8に係る本件発明8の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。

ウ 小括
そうすると、本件発明8は、引用例1発明、引用例1、5〜11に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(6)本件発明10について
ア 本件発明10と引用例1発明との対比
本件発明10と引用例1発明とを対比すると、少なくとも、上記(1)アで述べた相違点1及び2、上記(3)アで述べた相違点4、上記(3)ウで述べた相違点6に加え、以下の点でさらに相違している。
<相違点9>
本件発明9では、制御部は、貯留量取得装置で取得される貯留量が上限閾値を超える場合に、第2被処理液流量制御弁を開く制御が可能に構成されているのに対し、引用例1発明は、その様な構成を有しているのか明らかでない点。

イ 相違点についての判断
本件発明10は、少なくとも本件発明9を引用するものであるから、排ガス洗浄システムにおいて、被処理液路は、貯留タンクと循環液処理装置とを接続する第2被処理液路を含み、被処理液流量制御弁は、前記第2被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている第2被処理液流量制御弁を含み、制御部は、貯留量取得装置で取得される貯留量が上限閾値を超える場合に、前記第2被処理液流量制御弁を開く制御が可能に構成されていることを特定するものである。
上記(3)エで述べたように、引用例1発明は、洗浄水タンク内のセンサーにより、洗浄水タンク内の洗浄水の汚染度が高くなった場合、洗浄水タンク内の洗浄水を洗浄水浄化装置に供給するものであるが、特に、貯留量取得装置で取得される貯留量が上限閾値を超える場合に、第2被処理液路の第2被処理液流量制御弁を開く制御が可能となるようにすることは、引用例1には記載されていないし、また引用例1発明において、その様な技術的要請があることも伺えないから、引用例1発明には、上記相違点9に係る本件発明10の構成を採用しようとする動機付けがない。
また、引用例5〜11にも、この点に関する記載はなく、仮に、引用例5〜11に記載の事項を引用例1発明に組み合わせたとしても、本件発明10には至らないから、上記相違点9に係る本件発明10の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。

ウ 小括
そうすると、本件発明10は、引用例1発明、引用例1、5〜11に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(7)本件発明11について
ア 本件発明11と引用例1発明との対比
本件発明11と引用例1発明とを対比すると、少なくとも、上記(1)アで述べた相違点1及び2に加え、以下の点でさらに相違している。
<相違点10>
本件発明11では、制御部は、貯留量取得装置で取得される貯留量が下限閾値に満たない場合に、供給側切替装置による供給源を取水部で取水した船外水に切り替える制御が可能に構成されているのに対し、引用例1発明は、その様な構成を有しているのか明らかでない点。

イ 相違点についての判断
相違点1、2については、上記(1)及び(2)で述べたとおりである。
上記(1)イ(イ)で述べたように、引用例1発明において、洗浄水タンクにレベルセンサ等の貯留量取得装置を設けることは、当業者ならば容易に想到し得るといえるところ、洗浄水タンク内の洗浄水の貯留量が下限閾値に満たない場合は、洗浄水タンクからスクラバーに洗浄水を供給し排ガスを洗浄することができなくなる恐れがあるということであるから、排ガス洗浄システムの運転を継続するため、洗浄水タンク内の洗浄水の貯留量が下限閾値に満たない場合に、洗浄水の取得先を、もう一方の取得先である、取水部で取水した船外水に切り替えが可能となるようにすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項であるといえる。

ウ 小括
そうすると、本件発明11は、引用例1発明、引用例1、5、6に記載の事項及び上記周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(8)本件発明12について
ア 本件発明12と引用例1発明との対比
本件発明12は、本件発明3の相違点2に係る構成である「貯留タンクにおける循環液の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置と、前記貯留タンクに船外水を補給可能に構成されている船外水補給装置と、前記貯留量取得装置で取得される前記貯留量に応じて、前記船外水補給装置による前記貯留タンクへの前記船外水の補給量を制御する制御部」を備えることに代えて、「脱硫塔は、気液接触部よりも下方に位置する液だまり部と、前記液だまり部よりも下方に位置する貯留タンクと、をさらに内部に画定する」ことを特定するものであり、この点は、引用例1に記載されていないから、本件発明12と引用例1発明は、上記(1)アの相違点1に対応する相違点11の他、以下の相違点12で相違している。

<相違点11>
本件発明12は、「前記供給路における前記合流部よりも下流側に設けられた送水ポンプ」を備えているのに対し、引用例1発明は、その様な構成を有しているのか明らかでない点。

<相違点12>
本件発明12は、脱硫塔は、気液接触部よりも下方に位置する液だまり部と、前記液だまり部よりも下方に位置する貯留タンクと、をさらに内部に画定するものであるのに対し、引用例1発明は、その様な構成を有しているのか明らかでない点。

イ 相違点についての判断
上記各相違点について検討する。
(ア)相違点11について
相違点11は、上記(1)アの相違点1と同じものであるから、同イ(ア)で述べたのと同様の理由により、引用例1発明において、取水部と脱硫塔とを接続する供給路における、循環路との合流部よりも下流側に送水ポンプを設けることは、当業者ならば容易に想到し得ることといえる。

(イ)相違点12について
引用例7において、上記1(7)アの記載によれば、同イの図1及び図2中の「スクラバー本体」は、船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガス中のSOXを洗浄水により吸収、除去するものであることが理解でき、本件発明12の記載形式に則れば、「気液接触部(図1及び図2の充填材の箇所)よりも下方に位置する液だまり部(充填材下部の仕切り上部、図2においては着色されている)と、前記液だまり部よりも下方に位置する貯留タンク(循環水タンク)と、をさらに内部に画定する脱硫塔(スクラバー本体)」が記載されているといえる。そして、この様な「スクラバー本体」について、同ウでは、「メインスクラバー下部は,清水循環モードの基点となる循環水タンクを組み込んだ設計になっており,設置スペースの低減を図っている.」とされている。
一方、引用例1の上記1(1)ウの「湿式スクラバーは洗浄水量が多く,スクラバーの内部面積が広い程,排ガスと洗浄水の接触時間が長くなるため脱硫効率が上がる.ただし船舶という限られた空間と電力供給状況を考えると洗浄水を最小限に使用し,スクラバーの設置面積を最小限にすることが求められる.」等の記載によれば、引用例1発明のような、船舶という限られた空間に配置される排ガス洗浄システムにおいては、その設置面積を最小限にしようとすることは、当業者であれば通常考慮する事項であるいえるから、設置スペースの低減が図られるとする引用例7に記載される事項を採用し、引用例1発明において、脱硫塔(スクラバー)を、気液接触部よりも下方に位置する液だまり部と、前記液だまり部よりも下方に位置する貯留タンク(洗浄水タンク)と、をさらに内部に画定するものとすることは、当業者ならば容易に想到し得る事項といえる。
さらに、本件発明12の効果は、引用例1発明に、引用例7に記載の事項、及び上記周知事項を適用したものから、当然予測できる効果に過ぎない。

ウ 小括
そうすると、本件発明12は、引用例1発明、引用例1、7に記載の事項及び上記周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(9)本件発明14について
ア 本件発明14と引用例1’発明との対比
本件発明14と引用例1’発明を対比する。
(ア)引用例1’発明は、引用例1発明の運用方法に係る発明であり、上記(1)ア(ア)で述べたように、引用例1発明は、「船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システム」であるから、引用例1’発明は、本件発明14の「船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システムの運用方法」に相当するものであることが理解できる。

(イ)運用方法の発明である引用例1’発明の前提となる「排ガス洗浄システム」である引用例1発明が、「前記排ガスに洗浄液を接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、船体の外部から船外水を取水するための取水部と、前記取水部と前記脱硫塔とを接続する供給路と、前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路と、前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を循環液として前記供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路と、前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何れか一方に切り替えるための排出側切替装置と、前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンク」に相当する構成を有するものであることは、上記(1)ア(ア)〜(オ)で述べたとおりであるから、引用例1’発明においても同様の構成を有していると理解できる。

(ウ)引用例1’発明において、Open Modeの運転モードからClose Modeの運転モードに切り替える際には、供給側切替装置において、脱硫塔に供給される洗浄液(洗浄水)の供給源を、取水部で取水した船外水から、循環路を介して供給路に還流された循環液に切り替え、排出側切替装置において、脱硫塔から排出される洗浄液の流出先を、排出路から前記循環路に切り替えることは明らかであるから、引用例1’発明は、「排ガス洗浄システムの運用方法」として、本件発明14の「前記供給側切替装置により前記洗浄液の前記供給源を、前記取水部で取水した前記船外水から前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液に切り替える第1供給源切替ステップと、前記排出側切替装置により前記洗浄液の前記流出先を、前記排出路から前記循環路に切り替える第1流出先切替ステップ」に相当する構成を有していることが理解できる。

(エ)以上を踏まえると、本件発明14と引用例1’発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違している。
<一致点>
「船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システムの運用方法であって、
前記排ガス洗浄システムは、
前記排ガスに洗浄液を接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、
船体の外部から船外水を取水するための取水部と、
前記取水部と前記脱硫塔とを接続する供給路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を循環液として前記供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路と、
前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何れか一方に切り替えるための排出側切替装置と、を備え、
前記排ガス洗浄システムの運用方法は、
前記供給側切替装置により前記洗浄液の前記供給源を、前記取水部で取水した前記船外水から前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液に切り替える第1供給源切替ステップと、
前記排出側切替装置により前記洗浄液の前記流出先を、前記排出路から前記循環路に切り替える第1流出先切替ステップと、を備え、
前記排ガス洗浄システムは、
前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンクと、をさらに備える、
排ガス洗浄システムの運用方法。」

<相違点13>
本件発明14は、排ガス洗浄システムが「前記供給路における前記合流部よりも下流側に設けられた送水ポンプ」を備えているのに対し、引用例1’発明は、その様な構成を有しているのか明らかでない点。

<相違点14>
本件発明14は、排ガス洗浄システムが「前記貯留タンクにおける前記循環液の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置」を備え、排ガス洗浄システムの運用方法が「前記貯留量取得装置により前記循環液の前記貯留量を取得する貯留量取得ステップをさらに備え、前記第1供給源切替ステップは、前記第1流出先切替ステップよりも後、且つ前記貯留量取得ステップにより取得される前記貯留量が所定量を超えた後に行われる」のに対し、引用例1’発明では、貯留量取得装置を有するのか否か、また、上記排ガス洗浄システムの運用方法が行われるのか否かが明らかでない点。

イ 相違点についての判断
上記各相違点について検討する。
(ア)相違点13について
相違点13は、上記(1)アで述べた相違点1と同じであるから、同イ(ア)で述べたのと同様の理由により、引用例1’発明において、取水部と脱硫塔とを接続する供給路における、循環路との合流部よりも下流側に送水ポンプを設けることは、当業者ならば容易に想到し得るといえる。

(イ)相違点14について
上記(1)イ(イ)で述べたのと同様の理由により、引用例1’発明において、貯留タンク(洗浄水タンク)における循環液(循環水)の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置を設けること、さらに、貯留量取得装置を設けることに当然付随する、貯留量取得装置により前記循環液の前記貯留量を取得する貯留量取得ステップを有するものとすることは、当業者ならば容易に想到し得るといえる。
そして、Open Modeの運転モードからClose Modeの運転モードに切り替える際には、供給路、脱硫塔、貯留タンク及び循環路から形成される循環系内に十分な洗浄液が必要であることは、明らかであるから、貯留タンクに十分な循環液が貯留しているかを確認してから、すなわち、貯留量取得ステップにより取得される前記貯留量が所定量を超えた後に行うこと、また、第1供給源切替ステップ及び第1流出先切替ステップのタイミングと、上記循環系内の洗浄液量との関係を考慮すると、仮に、第1供給源切替ステップに先んじて第1流出先切替ステップを行えば、循環系内の洗浄液量が減少してしまうことを意味するから、循環系内の洗浄液量の余裕を考慮して、第1供給源切替ステップを、第1流出先切替ステップよりも後に行うことは、当業者ならば適宜なし得る事項に過ぎないといえる。
よって、上記相違点14に係る事項は、当業者が容易に想到できるものである。
さらに、本件発明14の効果は、引用例1’発明に、引用例5に記載の事項、及び上記周知事項を適用したものから、当然予測できる効果に過ぎない。

ウ 小括
そうすると、本件発明14は、引用例1’発明、引用例1、5に記載の事項及び上記周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(10)本件発明16について
ア 本件発明16と引用例1’発明との対比
本件発明16と引用例1’発明を対比する。
(ア)引用例1’発明は、上記(9)ア(ア)で述べたのと同様に、本件発明16の「船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システムの運用方法」に相当するものであることが理解できる。

(イ)上記(9)ア(イ)で述べたのと同様に、引用例1’発明は、「前記排ガスに洗浄液を接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、船体の外部から船外水を取水するための取水部と、前記取水部と前記脱硫塔とを接続する供給路と、前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路と、前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を循環液として前記供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路と、前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何れか一方に切り替えるための排出側切替装置と、前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンク」に相当する構成を有するものであることが理解できる。

(ウ)引用例1’発明において、Close Modeの運転モードからOpen Modeの運転モードに切り替える際には、供給側切替装置において、脱硫塔に供給される洗浄液(洗浄水)の供給源を、循環路を介して供給路に還流された循環液から、取水部で取水した船外水に切り替え、排出側切替装置において、脱硫塔から排出される洗浄液の流出先を、前記循環路から排出路に切り替えることは明らかであるから、引用例1’発明は、「排ガス洗浄システムの運用方法」として、本件発明16の「前記供給側切替装置により前記洗浄液の前記供給源を、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液から前記取水部で取水した前記船外水に切り替える第2供給源切替ステップと、前記排出側切替装置により前記洗浄液の前記流出先を、前記循環路から前記排出路に切り替える第2流出先切替ステップ」に相当する構成を有していることが理解できる。

(エ)上記(3)エで述べたのと同様の理由により、引用例1’発明は、本件発明16の「前記循環液から不純物を除去可能な循環液処理装置と、前記循環液を前記循環液処理装置により処理される被処理液として前記循環液処理装置に送るための被処理液路であって、前記貯留タンクと前記循環液処理装置とを接続する被処理液路」に相当する構成を有していることが理解できる。
また、それに付随して本件発明16の「前記貯留タンクに貯留される前記循環液を前記循環液処理装置に送る循環液排出ステップ」に相当する構成を有していることが理解できる。

以上を踏まえると、本件発明16と引用例1’発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違している。
<一致点>
「船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システムの運用方法であって、
前記排ガス洗浄システムは、
前記排ガスに洗浄液を接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、
船体の外部から船外水を取水するための取水部と、
前記取水部と前記脱硫塔とを接続する供給路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を循環液として前記供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路と、
前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何れか一方に切り替えるための排出側切替装置と、を備え、
前記排ガス洗浄システムの運用方法は、
前記供給側切替装置により前記洗浄液の前記供給源を、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液から前記取水部で取水した前記船外水に切り替える第2供給源切替ステップと、
前記排出側切替装置により前記洗浄液の前記流出先を、前記循環路から前記排出路に切り替える第2流出先切替ステップと、を備え、
前記排ガス洗浄システムは、
前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンクと、
前記循環液から不純物を除去可能な循環液処理装置と、
前記循環液を前記循環液処理装置により処理される被処理液として前記循環液処理装に送るための被処理液路であって、前記貯留タンクと前記循環液処理装置とを接続する被処理液路と、をさらに備え、
前記排ガスシステムの運用方法は、
前記貯留タンクに貯留される前記循環液を前記循環液処理装置に送る循環液排出ステップをさらに備える
排ガス洗浄システムの運用方法。」

<相違点15>
本件発明16は、排ガス洗浄システムが「前記供給路における前記合流部よりも下流側に設けられた送水ポンプ」を備えているのに対し、引用例1’発明は、その様な構成を有しているのか明らかでない点。

<相違点16>
本件発明16は、排ガス洗浄システムが「前記被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている被処理液流量制御弁」を備え、排ガス洗浄システムの運用方法が「前記第2供給源切替ステップおよび前記第2流出先切替ステップよりも後に、前記被処理液流量制御弁を開いて、前記貯留タンクに貯留される前記循環液を前記循環液処理装置に送る循環液排出ステップを備える」のに対し、引用例1’発明では、被処理液流量制御弁を有するのか否か、また、上記排ガス洗浄システムの運用方法が行われるのか否かが明らかでない点。

イ 相違点についての判断
上記各相違点について検討する。
(ア)相違点15について
相違点15は、上記(1)アで述べた相違点1と同じであるから、上記(1)イ(ア)で述べたのと同様の理由により、引用例1’発明において、取水部と脱硫塔とを接続する供給路における、循環路との合流部よりも下流側に送水ポンプを設けることは、当業者ならば容易に想到し得るものといえる。

(イ)相違点16について
引用例1の上記1(1)カに、「洗浄水の再利用により汚染度が高くなるため,洗浄水タンク内にセンサーを設置し,汚染度が高まると洗浄水浄化装置から水分とスラッジを分離する.」と記載されているように、引用例1’発明において、貯留タンクの循環液の汚染度が上昇した場合に、循環液を循環液処理装置に送るという操作を、被処理液路に設けた被処理液流量制御弁を開くことにより行っていることは明らかである。そして、この操作を、どの運転モードの段階で行うかは、上記操作が行うことができる限りにおいては、当業者が適宜決定し得る事項であるといえる。
そうすると、Close Modeの運転モードからOpen Modeの運転モードに切り替えた後に、上記の操作を行うこと、すなわち、第2供給源切替ステップおよび第2流出先切替ステップよりも後に、被処理液流量制御弁を開いて、上記の操作を行うことは、当業者ならば容易に想到し得る事項といえる。
さらに、本件発明16の効果は、引用例1’発明に、上記周知事項を適用したものから、当然予測できる効果に過ぎない。

ウ 小括
そうすると、本件発明16は、引用例1’発明、引用例1に記載の事項及び上記周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(11)取消理由1に関するまとめ
以上のとおり、本件発明3〜6、9、11、12、14及び16について、取消理由1には理由があり、本件発明7、8、10について、申立理由1−1には理由がない。

4 取消理由2(引用例4を主引用例とした特許法第29条第1項第3号所定の規定違反(新規性欠如))について
取消理由2は、「本件訂正前の請求項1、2、13及び15に係る発明は、引用例4に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。」というものであるが、本件訂正によって、取消理由2の対象となる本件訂正前の請求項1、2、13及び15は削除された。
そうすると、取消理由2には理由がない。

5 申立理由1−2(引用例2を主引用例とした特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如))について
(1)本件発明3について
ア 本件発明3と引用例2発明の対比
引用例2発明の「Exhaust Gas」、「Hybrid Scrubber」、「Scrubbing water」、「Scrubber」、「Process Tank」及び「Scrubbing water Pump」は、それぞれ、本件発明3の「排ガス」、「排ガス洗浄装置」、「洗浄液」、「脱硫塔」、「貯留タンク」及び「送水ポンプ」に相当する。
また、引用例2発明の「船体の外部とScrubberを接続し、Scrubbing waterが流れる経路」は、本件発明3の「取水部と脱硫塔とを接続する供給路」に、前者の「Scrubberと船体の外部を接続し、Residence Tankを経由し、又はProcess Tank、Bleed-off Treatment Unitを経由し、Wash waterが流れる経路」は、本件発明3の「脱硫塔から排出される洗浄液を船体の外部に排出するための排出路」に、前者の「Scrubberと、前記Scrubbing waterが流れる経路に接続し、Process Tankを経由し、Wash waterが流れる経路」は、本件発明3の「脱硫塔から排出される洗浄液を循環液として供給路に還流させるための循環路であって、供給路と合流部において合流する循環路」に相当する。
以上から、引用例2発明は、本件発明3の「排ガス洗浄システム」を形成する基本的な経路である「前記取水部と前記脱硫塔とを接続する供給路と、前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路と、前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を循環液として前記供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路と」を備えるものであるが、少なくとも、以下の点で本件発明3と相違している。
<相違点17>
本件発明3は、「前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何れか一方に切り替えるための排出側切替装置と」を備えているのに対し、引用例2発明は、この様な構成を有しているのか明らかでない点。

イ 相違点についての判断
引用例2発明の「Hybrid Scrubber」は、引用例2発明のシステム図により表されるものであるが、このシステムの制御については、もちろんのこと、このシステムに関する何の説明も、引用例2には記載されていない。
加えて、引用例2発明の「Hybrid Scrubber」について、経路として、供給路と、循環路とが合流すると共に、脱硫塔から排出路と循環路があること、すなわち、洗浄液の供給源としては、船外からのものと、循環路からのもの、洗浄液の排出先としては、循環路と、船外があることが分かるものの、脱硫塔に供給される洗浄液の供給源を、取水部で取水した船外水と、循環路を介して供給路に還流された循環液の何れか一方に切り替えているのか否か、また、脱硫塔から排出される洗浄液の流出先を、排出路、又は、循環路の何れか一方に切り替えているのか否かは明らかでない。例えば、上記システム図に上記の切り替えを行う装置が記載されていないことから、取水部で取水した船外水と、循環路を介して供給路に還流された循環液を同時に脱硫塔に供給し、脱硫塔からの洗浄水を排出路と循環路に同時に排出すること等も考えられる。
また、引用例2には、このシステムに関する何らの説明もなく、このシステムに関する技術的な背景、このシステムがどの様な技術的な意義又は特徴を有するものであるのか、さらには、どの様な技術的な課題があるものであるのか等が不明であるから、このシステムに関し、何らかの改変を行って、上記相違点17に係る本件発明3の構成が付加されたものとする動機付けとなるような事項を見いだすことはできない。
さらに、引用例5〜11には、上記1(5)〜(11)で摘記したような事項が記載されているが、引用例2発明には、上述のように、上記相違点17に関連する何らかの改変を行おうとする動機付けがないのであるから、引用例2発明に、引用例5〜11に記載の事項を、適用しようとすることはない。
そうすると、上記相違点17に係る本件発明3の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。

ウ 小括
そうすると、本件発明3は、引用例2発明及び引用例2、5〜11に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明4〜11について
本件発明4〜11は、少なくとも本件発明3の構成をすべて具備するものであるから、本件発明3と同様に、本件発明4〜11は、引用例2発明及び引用例2、5〜11に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明12、14及び16について
本件発明12は、「排ガス洗浄システム」に係る発明であり、本件発明14及び本件発明16は、「排ガス洗浄システムの運用方法」に係る発明であるが、いずれの発明も、その発明特定事項として、上記(1)アで述べた相違点17に係る本件発明3の構成を有している。
そして、同(1)イで述べたように、上記相違点17に係る本件発明3の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明3と同様に、本件発明12、14及び16も、引用例2発明及び引用例2、5〜11に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)申立理由1−2に関するまとめ
以上のとおり、申立理由1−2には理由がない。

6 申立理由1−3(引用例3を主引用例とした特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如))について
(1)本件発明3について
ア 本件発明3と引用例3発明の対比
本件発明3と引用例3発明を対比すると、少なくとも、引用例3発明の「排ガス処理システム」は、本件発明3の「排ガス洗浄システム」に相当すると共に、引用例3発明の図におけるL4、L1、L2の各ラインで形成されるラインは、本件発明3の「循環路」に、引用例3発明において、前記のラインを流れるRW(EW)(除去用水)は、本件発明3の「循環液」に、引用例3発明の「プロセスタンク31」は、本件発明3の「貯留タンク」にそれぞれ相当する。
そうすると、本件発明3と引用例3発明は、少なくとも以下の点で相違している。
<相違点18>
本件発明3の「排ガス洗浄システム」は、「貯留タンクにおける循環液の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置と、前記貯留タンクに船外水を補給可能に構成されている船外水補給装置と、前記貯留量取得装置で取得される前記貯留量に応じて、前記船外水補給装置による前記貯留タンクへの前記船外水の補給量を制御する制御部と」を備えるのに対し、引用例3発明では、この様な構成を備えるのか明らかでない点。

イ 相違点についての判断
上記相違点について検討するに、上記相違点に係る本件発明3の構成は、循環液が供給されている貯留タンクに、循環液とは別の液体を供給するものであるが、引用例3発明について、プロセスタンク31に、RW(EW)(除去用水)とは、別の液を供給することについては、引用例3の上記1(3)ウの【0024】に「プロセスタンク31は、除去用水RWとして用いられる清水が供給されると共に、排ガス処理部20での排ガス処理後の除去用水RWの排水EWが供給されるタンクである。」との記載があるが、この「清水」は、同オの【図4】において、排ガス処理部22とプロセスタンク31を接続するL4を、排ガス処理部20での排ガス処理後の除去用水RWと同様に流れるものとされ、この排ガス処理部20での排ガス処理後の除去用水RWと異なる液であるのか判然としないし、別の液であるとしても、どの様に供給されるものであるのかも明らかでない。
ここで、引用例3発明は、上記同イの【0004】の記載によれば、除去用水の水処理を行うためのシステムも必要となる、排ガスから硫黄分を除去するためのシステムは、排ガスを発生させるエンジン近傍、すなわち機関室に配置される場合があるが、機関室は空いたスペースが少なく、各種機器等の配置が困難である一方、当該スペースを確保するために機関室を大きくした場合、その分カーゴスペースが小さくなるという問題に対し、同【0005】の記載によれば、前記の問題に対し、排ガスから硫黄分を除去するためのシステムを容易に配置することができる船舶を提供することを課題とし、同【0006】、【0007】の記載によれば、水処理部の構成要素の少なくとも一部を、スペースに比較的余裕のある舵機室に配置し、排ガスから硫黄分を除去するためのシステムの配置上の制約を少なくすることにより、発明の課題を解決したものである。
そうすると、引用例3発明は、「排ガス処理システム」自体は所与のものとして、船舶における舵機室、機関室等におけるスペースを考慮した、「排ガス処理システム」の配置に関心が向けられたものであって、排ガス処理システム内のプロセスタンク31に関連する構成について何ら着目するものではないから、引用例3発明には、プロセスタンク31に船外水を補給可能に構成されている船外水補給装置を設けることや、プロセスタンク31における除去用水の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置、及び前記貯留量取得装置で取得される前記貯留量に応じて、前記船外水補給装置による前記プロセスタンク31への前記船外水の補給量を制御する制御部を備えるものとする動機付けは内在しない。
さらに、引用例5〜11には、上記1(5)〜(11)で摘記したような事項が記載されているが、引用例3発明には、上述のように、上記相違点18に関連する何らかの改変を行おうとする動機付けがないのであるから、引用例3発明に、引用例5〜11に記載の事項を、適用しようとすることはない。
そうすると、上記相違点18に係る本件発明3の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。

ウ 小括
本件発明3は、引用例3発明及び引用例3、5〜11に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明4〜11について
本件発明4〜11は、少なくとも本件発明3の構成をすべて具備するものであるから、本件発明3と同様に、本件発明4〜11は、引用例3発明及び引用例3、5〜11に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明12、14及び16について
ア 本件発明12と引用例3発明の対比
本件発明12と引用例3発明を対比すると、引用例3発明の「排ガス処理部20」は、本件発明12の「脱硫塔」に相当する。
そうすると、本件発明3と引用例3発明は、少なくとも以下の点で相違している。
<相違点19>
本件発明12の「脱硫塔」は、「気液接触部よりも下方に位置する液だまり部と、前記液だまり部よりも下方に位置する貯留タンクと、をさらに内部に画定」しているのに対し、引用例3発明では、この様な構成を備えるのか明らかでない点。

イ 本件発明14と引用例3発明の対比
本件発明14と引用例3発明を対比すると、本件発明14と引用例3発明は、少なくとも以下の点で相違している。
<相違点20>
本件発明14は、排ガス洗浄システムとして、貯留タンクにおける循環液の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置、を備えると共に、前記排ガス洗浄システムの運用方法として、前記貯留量取得装置により前記循環液の前記貯留量を取得する貯留量取得ステップをさらに備えるのに対し、引用例3発明では、この様な構成を備えるのか明らかでない点。

ウ 本件発明16と引用例3発明の対比
本件発明16と引用例3発明を対比すると、本件発明16と引用例3発明は、少なくとも以下の点で相違している。
<相違点21>
本件発明16は、排ガス洗浄システムとして、循環液から不純物を除去可能な循環液処理装置と、前記循環液を前記循環液処理装置により処理される被処理液として前記循環液処理装に送るための被処理液路であって、前記貯留タンクと前記循環液処理装置とを接続する被処理液路と、前記被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている被処理液流量制御弁と、を備え、排ガス洗浄システムの運用方法は、第2供給源切替ステップおよび第2流出先切替ステップよりも後に、前記被処理液流量制御弁を開いて、前記貯留タンクに貯留される前記循環液を前記循環液処理装置に送る循環液排出ステップを備えるのに対し、引用例3発明では、この様な構成を備えるのか明らかでない点。

エ 相違点についての検討
上記(1)イで述べたように、引用例3発明は、「排ガス処理システム」自体は所与のものとして、船舶における舵機室、機関室等におけるスペースを考慮した、船舶内における「排ガス処理システム」の配置に関心が向けられたものであって、本件発明12に関連して、プロセスタンク31との構造的な関係を含めた排ガス処理部20の構造的な構成、本件発明14に関連して、プロセスタンク31の貯留量を把握することに関連する構成及び把握された貯留量を排ガス処理システムの制御に関連付けること、本件発明16に関連して、プロセスタンク31中の除去用水から不純物を除去すると共に、不純物を除去する手段への、除去用水への流量を制御可能とする構成について何ら着目するものではないから、引用例3発明には、上記相違点19〜21に係る本件発明12、14及び16の構成を備えるものとする動機付けとなるような事情は存しない。
さらに、引用例5〜11には、上記1(5)〜(11)で摘記したような事項が記載されているが、引用例3発明には、上述のように、上記相違点19〜21に関連する何らかの改変を行おうとする動機付けがないのであるから、引用例3発明に、引用例5〜11に記載の事項を、適用しようとすることはない。
そうすると、上記相違点19〜21に係る本件発明12、14及び16の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。

オ 小括
本件発明12、14及び16は、引用例3発明及び引用例3、5〜11に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)申立理由1−3に関するまとめ
以上のとおり、申立理由1−3には理由がない。

7 申立理由2(引用例4を主引用例とした特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如))について
(1)本件発明3について
ア 本件発明3と引用例4発明の対比
本件発明3と引用例4発明を対比すると、少なくとも、引用例4発明の「新型船舶ディーゼル機関排ガス脱硫洗浄装置」は、本件発明3の「排ガス洗浄システム」に相当すると共に、引用例4発明のバイパス管23、三方弁IV25から三方弁V28までの経路、三方弁V28から三方弁II3までの経路で形成される経路は、本件発明3の「循環路」に、引用例4発明において、前記のラインを流れる「循環水」は、本件発明3の「循環液」に、引用例4発明の前記三方弁V28から三方弁II3までの経路で形成される経路に並列に設けられている「循環水タンクI16」及び「循環水タンクII17」は、本件発明3の「貯留タンク」にそれぞれ相当する。
そうすると、本件発明3と引用例3発明は、少なくとも以下の点で相違している。
<相違点22>
本件発明3の「排ガス洗浄システム」は、「貯留タンクにおける循環液の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置と、前記貯留タンクに船外水を補給可能に構成されている船外水補給装置と、前記貯留量取得装置で取得される前記貯留量に応じて、前記船外水補給装置による前記貯留タンクへの前記船外水の補給量を制御する制御部と」を備えるのに対し、引用例4発明では、この様な構成を備えるのか明らかでない点。

イ 相違点についての判断
上記相違点について検討するに、引用例4発明における技術的な特徴は、引用例4の上記1(4)イの[0045]に、「クローズド型モードでは、2つの並列した循環水タンクが設けられる。 循環水タンクを交互に運転する方式を採用して、クローズド型モードにおけるシステムの運転時間を大幅に増加させ、通常のクローズド型システムの運転時間が短い問題を解決し、装置の実用性を極めて大きく増強する。」と記載され、引用例4発明でも特定されているとおり、クローズド型動作モードの際、並列に設けられている「循環水タンクI16」及び「循環水タンクII17」の内一方を用いて、洗浄塔20でガスの洗浄を行い、一方のタンクの循環水(ナトリウムアルカリ洗浄溶液)中の硫酸イオンまたは亜硫酸イオンの濃度が過剰になり、かつ脱硝効率に著しい低下が見られるまで循環使用した後、循環水タンクを他方に切り替え、一方の循環水タンク中のナトリウムアルカリ洗浄溶液を廃水貯蔵タンク31中に排出し、一方のタンクに淡水およびアルカリ液を補充し、これを循環水タンク交互に繰り返すというものである。
以上によれば、引用例4発明は、継続的に単一の循環水タンクで、ガスの洗浄処理を行うものではないから、仮に、循環水タンク中の循環液の不足が起こったとしても、並列に設けられた循環液タンクの一方に切り替えれば良く、あえて、循環水タンクにおける循環水の貯留量を取得できるようにし、循環水タンクに船外水を補給可能とし、前記貯留量に応じて、前記循環水タンクへの前記船外水の補給量を制御する必要があるとは必ずしもいえないし、少なくとも、引用例4には、循環水タンク内の循環水の貯留量を制御することに着目することを伺わせる記載はない。
そうすると、引用例4発明には、特に、循環水タンクにおける循環水の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置、及び前記貯留量取得装置で取得される前記貯留量に応じて、船外水補給装置による前記循環水タンクへの前記船外水の補給量を制御する制御部を備えるものとする動機付けはない。
さらに、引用例9、10、12〜15には、上記1(9)、(10)、(12)〜(15)で摘記したような事項が記載されているが、引用例4発明には、上述のように、上記相違点22に関連する何らかの改変を行おうとする動機付けがないのであるから、引用例4発明に、引用例9、10、12〜15に記載の事項を、適用しようとすることはない。
そうすると、上記相違点22に係る本件発明3の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。

ウ 小括
本件発明3は、引用例4発明及び引用例4、9、10、12〜15に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明4〜11について
本件発明4〜11は、少なくとも本件発明3の構成をすべて具備するものであるから、本件発明3と同様に、本件発明4〜11は、引用例4発明及び引用例4、9、10、12〜15に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明12、14及び16について
ア 本件発明12と引用例4発明の対比
本件発明12と引用例4発明を対比すると、引用例4発明の「洗浄塔20」は、本件発明12の「脱硫塔」に相当する。
そうすると、本件発明3と引用例3発明は、少なくとも以下の点で相違している。
<相違点23>
本件発明12の「脱硫塔」は、「気液接触部よりも下方に位置する液だまり部と、前記液だまり部よりも下方に位置する貯留タンクと、をさらに内部に画定」しているのに対し、引用例4発明では、この様な構成を備えるのか明らかでない点。

イ 本件発明14と引用例4発明の対比
本件発明14と引用例4発明を対比すると、本件発明14と引用例4発明は、少なくとも以下の点で相違している。
<相違点24>
本件発明14は、排ガス洗浄システムとして、貯留タンクにおける循環液の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置、を備えると共に、前記排ガス洗浄システムの運用方法として、前記貯留量取得装置により前記循環液の前記貯留量を取得する貯留量取得ステップをさらに備えるのに対し、引用例4発明では、この様な構成を備えるのか明らかでない点。

ウ 本件発明16と引用例4発明の対比
本件発明16と引用例4発明を対比すると、本件発明16と引用例4発明は、少なくとも以下の点で相違している。
<相違点25>
本件発明16は、排ガス洗浄システムとして、循環液から不純物を除去可能な循環液処理装置と、前記循環液を前記循環液処理装置により処理される被処理液として前記循環液処理装に送るための被処理液路であって、前記貯留タンクと前記循環液処理装置とを接続する被処理液路と、前記被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている被処理液流量制御弁と、を備え、排ガス洗浄システムの運用方法は、第2供給源切替ステップおよび第2流出先切替ステップよりも後に、前記被処理液流量制御弁を開いて、前記貯留タンクに貯留される前記循環液を前記循環液処理装置に送る循環液排出ステップを備えるのに対し、引用例4発明では、この様な構成を備えるのか明らかでない点。

エ 相違点についての検討
上記(1)イで述べたように、引用例4発明における技術的な特徴は、クローズド型動作モードの際、並列に設けられている「循環水タンクI16」及び「循環水タンクII17」の内一方を用いて、洗浄塔20でガスの洗浄を行い、一方のタンクの循環水(ナトリウムアルカリ洗浄溶液)中の硫酸イオンまたは亜硫酸イオンの濃度が過剰になり、かつ脱硝効率に著しい低下が見られるまで循環使用した後、循環水タンクを他方に切り替え、一方の循環水タンク中のナトリウムアルカリ洗浄溶液を廃水貯蔵タンク31中に排出し、一方のタンクに淡水およびアルカリ液を補充し、これを循環水タンク交互に繰り返すというものである。
以上によれば、本件発明12に関連して、「循環水タンクI16」及び「循環水タンクII17」という複数の循環水タンクを有し、しかも循環水タンクの切り替え操作を行うシステムを、洗浄塔20内に単純に配置することができるとはいえず、仮にその様なことを行おうとすれば、引用例4発明の「新型船舶ディーゼル機関排ガス脱硫洗浄装置」に対して許容される設計変更の範疇を超える変更を強いることになるといえる。
また、上記(1)イで述べたように、引用例4発明は、継続的に単一の循環水タンクで、ガスの洗浄処理を行うものではないから、仮に、循環水タンク中の循環液の不足や、循環水中の不純物濃度の上昇が起こったとしても、並列に設けられた循環液タンクの一方に切り替えれば良く、あえて、循環水タンクにおける循環水の貯留量を取得できるようにしたり、循環水タンク中の循環水から不純物を除去すると共に、不純物を除去する手段への、循環水の流量を制御可能とすることは予定されていないというべきである。
そうすると、引用例4発明には、上記相違点23〜25に係る本件発明12、14及び16に係る構成を採用しようとする動機付けとなるような事情は見当たらない。
さらに、引用例9、10、12〜15には、上記1(9)、(10)、(12)〜(15)で摘記したような事項が記載されているが、引用例4発明には、上述のように、上記相違点23〜25に関連する何らかの改変を行おうとする動機付けがないのであるから、引用例4発明に、引用例9、10、12〜15に記載の事項を、適用しようとすることはない。
そうすると、上記相違点23〜25に係る本件発明12、14及び16の構成は、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。

オ 小括
本件発明12、14及び16は、引用例4発明及び引用例4、9、10、12〜15に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)申立理由2に関するまとめ
以上のとおり、申立理由2には理由がない。

第6 むすび

上記第5で検討したとおり、本件特許3〜6、9、11、12、14及び16は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
また、本件特許1、2、13及び15は、訂正により削除され、本件特許1、2、13及び15に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
さらに、本件特許7、8及び10は、上記第4に記載の取消理由及び申立理由によっては取り消すことはできないし、他に取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは、この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システムであって、
前記排ガスに洗浄液を接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、
船体の外部から船外水を取水するための取水部と、
前記取水部と前記脱硫塔とを接続する供給路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を循環液として前記供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路と、
前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何れか一方に切り替えるための排出側切替装置と、
前記供給路における前記合流部よりも下流側に設けられた送水ポンプと、
前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンクと、を備え、
前記貯留タンクにおける前記循環液の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置と、
前記貯留タンクに前記船外水を補給可能に構成されている船外水補給装置と、
前記貯留量取得装置で取得される前記貯留量に応じて、前記船外水補給装置による前記貯留タンクへの前記船外水の補給量を制御する制御部と、をさらに備える
排ガス洗浄システム。
【請求項4】
前記貯留タンクにおける前記循環液のpH値を検出可能に構成されているpH値検出装置と、
前記貯留タンクに中和剤を添加可能に構成されている中和剤添加装置と、をさらに備え、
前記制御部は、前記pH値検出装置で検出される前記pH値に応じて、前記中和剤添加装置による前記中和剤の添加量の制御を行うように構成されている請求項3に記載の排ガス洗浄システム。
【請求項5】
前記循環液から不純物を除去可能な循環液処理装置と、
前記循環液を前記循環液処理装置により処理される被処理液として前記循環液処理装置に送るための被処理液路と、
前記被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている被処理液流量制御弁と、をさらに備える
請求項3又は4に記載の排ガス洗浄システム。
【請求項6】
前記排ガスを洗浄後の前記洗浄液の比重を検出可能な比重検出装置をさらに備え、
前記制御部は、前記比重検出装置で検出される前記排ガスを洗浄後の前記洗浄液の比重に応じた、前記被処理液流量制御弁の開度の制御が可能に構成されている
請求項5に記載の排ガス洗浄システム。
【請求項7】
前記被処理液路に設けられるとともに前記被処理液を貯留可能な被処理液貯留タンクを さらに備える
請求項5又は6に記載の排ガス洗浄システム。
【請求項8】
前記被処理液路は、前記供給路の前記送水ポンプよりも下流側に設けられる第1分岐部と前記循環液処理装置とを接続する第1被処理液路を含み、
前記被処理液流量制御弁は、前記第1被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている第1被処理液流量制御弁を含む
請求項5乃至7の何れか1項に記載の排ガス洗浄システム。
【請求項9】
前記被処理液路は、前記貯留タンクと前記循環液処理装置とを接続する第2被処理液路を含み、
前記被処理液流量制御弁は、前記第2被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている第2被処理液流量制御弁を含む
請求項5乃至8の何れか1項に記載の排ガス洗浄システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記貯留量取得装置で取得される前記貯留量が上限閾値を超える場合に、前記第2被処理液流量制御弁を開く制御が可能に構成されている
請求項9に記載の排ガス洗浄システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記貯留量取得装置で取得される前記貯留量が下限閾値に満たない場合に、前記供給側切替装置による前記供給源を前記取水部で取水した前記船外水に切り替える制御が可能に構成されている
請求項3乃至10の何れか1項に記載の排ガス洗浄システム。
【請求項12】
船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システムであって、
前記排ガスに洗浄液を接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、
船体の外部から船外水を取水するための取水部と、
前記取水部と前記脱硫塔とを接続する供給路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を循環液として前記供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路と、
前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何れか一方に切り替えるための排出側切替装置と、
前記供給路における前記合流部よりも下流側に設けられた送水ポンプと、
前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンクと、を備え、
前記脱硫塔は、前記気液接触部よりも下方に位置する液だまり部と、前記液だまり部よりも下方に位置する前記貯留タンクと、をさらに内部に画定する
排ガス洗浄システム。
【請求項13】
(削除)
【請求項14】
船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システムの運用方法であって、
前記排ガス洗浄システムは、
前記排ガスに洗浄液を接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、
船体の外部から船外水を取水するための取水部と、
前記取水部と前記脱硫塔とを接続する供給路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を循環液として前記供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路と、
前記供給路における前記合流部よりも下流側に設けられた送水ポンプと、
前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何れか一方に切り替えるための排出側切替装置と、を備え、
前記排ガス洗浄システムの運用方法は、
前記供給側切替装置により前記洗浄液の前記供給源を、前記取水部で取水した前記船外水から前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液に切り替える第1供給源切替ステップと、
前記排出側切替装置により前記洗浄液の前記流出先を、前記排出路から前記循環路に切り替える第1流出先切替ステップと、を備え、
前記排ガス洗浄システムは、
前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンクと、
前記貯留タンクにおける前記循環液の貯留量を取得可能に構成されている貯留量取得装置と、をさらに備え、
前記排ガス洗浄システムの運用方法は、
前記貯留量取得装置により前記循環液の前記貯留量を取得する貯留量取得ステップをさらに備え、
前記第1供給源切替ステップは、前記第1流出先切替ステップよりも後、且つ前記貯留量取得ステップにより取得される前記貯留量が所定量を超えた後に行われる
排ガス洗浄システムの運用方法。
【請求項15】
(削除)
【請求項16】
船舶に搭載される排ガス発生装置から排出される排ガスを洗浄するための排ガス洗浄システムの運用方法であって、
前記排ガス洗浄システムは、
前記排ガスに洗浄液を接触させる気液接触部を内部に画定する脱硫塔と、
船体の外部から船外水を取水するための取水部と、
前記取水部と前記脱硫塔とを接続する供給路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を前記船体の外部に排出するための排出路と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液を循環液として前記供給路に還流させるための循環路であって、前記供給路と合流部において合流する循環路と、
前記供給路における前記合流部よりも下流側に設けられた送水ポンプと、
前記脱硫塔に供給される前記洗浄液の供給源を、前記取水部で取水した前記船外水、又は、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液の何れか一方に切り替えるための供給側切替装置と、
前記脱硫塔から排出される前記洗浄液の流出先を、前記排出路、又は、前記循環路の何 れか一方に切り替えるための排出側切替装置と、を備え、
前記排ガス洗浄システムの運用方法は、
前記供給側切替装置により前記洗浄液の前記供給源を、前記循環路を介して前記供給路に還流された前記循環液から前記取水部で取水した前記船外水に切り替える第2供給源切替ステップと、
前記排出側切替装置により前記洗浄液の前記流出先を、前記循環路から前記排出路に切り替える第2流出先切替ステップと、を備え、
前記排ガス洗浄システムは、
前記循環路に設けられるとともに前記循環液を貯留可能な貯留タンクと、
前記循環液から不純物を除去可能な循環液処理装置と、
前記循環液を前記循環液処理装置により処理される被処理液として前記循環液処理装置に送るための被処理液路であって、前記貯留タンクと前記循環液処理装置とを接続する被処理液路と、
前記被処理液路における前記被処理液の流量を制御可能に構成されている被処理液流量制御弁と、をさらに備え、
前記排ガス洗浄システムの運用方法は、
前記第2供給源切替ステップおよび前記第2流出先切替ステップよりも後に、前記被処理液流量制御弁を開いて、前記貯留タンクに貯留される前記循環液を前記循環液処理装置に送る循環液排出ステップをさらに備える
排ガス洗浄システムの運用方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-04-12 
出願番号 P2019-558632
審決分類 P 1 651・ 121- ZDA (B01D)
P 1 651・ 113- ZDA (B01D)
最終処分 08   一部取消
特許庁審判長 日比野 隆治
特許庁審判官 原 賢一
金 公彦
登録日 2020-06-22 
登録番号 6721802
権利者 三菱造船株式会社 三菱パワー株式会社
発明の名称 排ガス洗浄システムおよび排ガス洗浄システムの運用方法  
代理人 誠真IP特許業務法人  
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