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審決分類 審判 一部無効 1項3号刊行物記載  H04N
審判 一部無効 2項進歩性  H04N
管理番号 1388588
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2019-10-10 
確定日 2022-09-21 
事件の表示 上記当事者間の特許第4734471号発明「表示装置、コメント表示方法、及びプログラム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 経緯
1 本件出願の経緯
本件特許第4734471号に係る出願は、平成18年12月11日の出願である特願2006−333851号の一部を平成22年11月30日に新たな特許出願としたものであって、平成23年4月28日に設定登録されたものであり、登録時の請求項の数は10である。

2 本件審判の経緯
本件無効審判における手続の経緯は、概要、以下のとおりである。
なお、請求人及び被請求人のいずれが提出したものであるか、又は合議体が通知したものであるかを括弧書きで示した。

令和元年10月10日(差出日) 審判請求書(請求人)
(証拠説明書及び甲第1〜20号証添付)
令和2年 2月 7日 審判事件答弁書(被請求人)
(証拠説明書及び乙第1号証添付)
令和2年 3月 4日(差出日) 上申書(請求人)
(平成30年(ネ)第10077号の被控訴人準備書面の提出)
令和2年 3月10日 審理事項通知書(合議体)
令和2年 3月17日 上申書(被請求人)
(平成30年(ネ)第10077号の控訴人準備書面等の提出)
令和2年 3月17日 上申書(被請求人)
(証拠説明書及び乙第2号証添付)
令和2年 4月 1日(差出日) 上申書(請求人)
(甲第10号証の差替添付)
令和2年 4月 1日(差出日) 口頭審理陳述要領書(請求人)
(証拠説明書及び甲第21〜24号証添付)
令和2年 4月23日(受付日) 口頭審理陳述要領書(被請求人)
令和2年 5月14日 応対記録(合議体)
令和2年 5月14日 書面審理通知書(合議体)
令和2年 5月14日 口頭審理期日中止通知書(合議体)
令和2年 5月28日 審尋(合議体)
令和2年 6月10日 回答書(請求人)
(証拠説明書及び甲第25〜30号証添付)
令和2年 6月20日(差出日) 上申書(請求人)
令和2年 6月24日 上申書(被請求人)
令和2年 7月 2日 上申書(請求人)
(証拠説明書及び甲第31〜33号証添付)
令和2年 7月 2日 上申書(請求人)
令和2年 7月21日 上申書(被請求人)
令和2年 8月13日(差出日) 上申書(請求人)
(証拠説明書並びに甲第34及び35号証添付)
令和2年 9月 9日 上申書(請求人)
令和2年10月 5日 審理状況伺書(請求人)
令和2年10月23日 応対記録(合議体)

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明10」、又はこれらを総称して「本件特許発明」という。)。
なお、本件特許発明1の各構成の符号(1A)〜(1F)は、当審で付したものであり、以下、構成1A〜構成1Fと称する。

[請求項1](本件特許発明1)
(1A)動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置であって、
(1B)前記コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部と、
(1C)前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生部と、
(1D)前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントを、前記コメントを表示する領域である第2の表示欄に表示するコメント表示部と、を有し、
(1E)前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり、
(1F)前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する
(1A)ことを特徴とする表示装置。

[請求項2](本件特許発明2)
前記コメント表示部は、前記コメントを移動表示させることを特徴とする請求項1記載の表示装置。

[請求項3](本件特許発明3)
前記コメント表示部は、前記コメントを前記第1の表示欄内から当該第1の表示欄外であって前記第2の表示欄内へ移動表示させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の表示装置。

[請求項4](本件特許発明4)
前記コメント表示部が前記コメントを表示する前記第2の表示欄は、前記第1の表示欄よりも大きいサイズである
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の表示装置。

[請求項5](本件特許発明5)
前記コメント表示部は、前記コメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する際、前記第1の表示欄と前記第2の表示欄とにまたがるように表示させる
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の表示装置。

[請求項6](本件特許発明6)
前記コメント表示部によって表示されるコメントが他のコメントと表示位置が重なるか否かを判定する判定部と、
前記判定部がコメントの表示位置が重なると判定した場合に、各コメントが重ならない位置に表示させる表示位置制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の表示装置。

[請求項7](本件特許発明7)
動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置におけるコメント表示方法であって、
動画再生部が、前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示し、
コメント表示部が、コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部に記憶された情報を参照し、前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントをコメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントの一部を、前記コメントを表示する領域であって一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており他の領域が前記第1の表示欄の外側にある第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する
ことを特徴とする表示方法。

[請求項8](本件特許発明8)
前記コメント表示部は、前記コメントを移動表示させることを特徴とする請求項7記載の表示方法。

[請求項9](本件特許発明9)
動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置のコンピュータを、
前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生手段、
コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部に記憶された情報を参照し、前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントをコメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントの一部を、前記コメントを表示する領域であって一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており他の領域が前記第1の表示欄の外側にある第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示するコメント表示手段、
として機能させるプログラム。

[請求項10](本件特許発明10)
前記コメント表示手段は、前記コメントを移動表示させることを特徴とする請求項9記載のプログラム。

第3 当事者の主張及び証拠方法
1 請求人の主張及び証拠方法
(1)請求の趣旨
請求人の主張する請求の趣旨は、
「特許第4734471号発明の特許請求の範囲の請求項1、2、5、6、9及び10に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」
というものである。

(2)無効理由
請求人が主張する無効理由は、以下のとおりである。
なお、令和2年3月10日付け審理事項通知書の「第2 請求人が主張する無効理由について」において確認した、請求項2、5、6及び10についての「(1)無効理由1−1(甲第1号証を主引例とする新規性欠如)」ないし「(3)無効理由1−3(甲第3号証を主引例とする新規性欠如)については、令和2年4月1日差出の口頭審理陳述要領書の第1の「2 主張の撤回についての検討結果」の主張の撤回により、実質的に取下げられたものと認める。

ア 無効理由1−1
本件特許発明1及び9は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許発明1及び9についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

イ 無効理由1−2
本件特許発明1及び9は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許発明1及び9についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

ウ 無効理由1−3
本件特許発明1及び9は、甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許発明1及び9についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

エ 無効理由2−1
本件特許発明1及び9は、甲第1号証(主たる証拠)に記載された発明、甲第4号証(従たる証拠)に記載された発明、甲第5号証(従たる証拠)に記載された発明及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許発明1及び9についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

オ 無効理由2−2
本件特許発明1及び9は、甲第2号証(主たる証拠)に記載された発明、甲第11号証(従たる証拠)に記載された発明、甲第4号証(従たる証拠)に記載された発明及び甲第5号証(従たる証拠)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許発明1及び9についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

カ 無効理由2−3
本件特許発明1及び9は、甲第3号証(主たる証拠)に記載された発明、甲第4号証(従たる証拠)に記載された発明及び甲第5号証(従たる証拠)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許発明1及び9についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

キ 無効理由2−4
本件特許発明2は、無効理由2−1ないし2−3で引用する証拠に記載された発明に加えて、甲第6ないし10号証(従たる証拠)に記載された慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許発明2についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

ク 無効理由2−5
本件特許発明5は、無効理由2−1ないし2−3で引用する証拠に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許発明5についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

ケ 無効理由2−6
本件特許発明6は、無効理由2−1ないし2−3で引用する証拠に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許発明6についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

コ 無効理由2−7
本件特許発明10は、無効理由2−1ないし2−3で引用する証拠に記載された発明に加えて、甲第6ないし10号証(従たる証拠)に記載された慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件特許発明10についての特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

(3)請求人による主張の概要
ア 無効理由1−1について
(ア)主位的主張について
甲第1号証に記載された発明の「ビューワマシン」が本件特許発明1の「表示装置」に、「注釈データ」が「コメント」に、「注釈データ記憶メモリ」が「コメント情報記憶部」に、「映像表示領域」が「第1の表示欄」に、「映像再生部」が「動画再生部」に、「ふきだし」が「第2の表示欄」に、「注釈データ再生部」が「コメント表示部」にそれぞれ相当し、「ふきだし」の一部が「映像表示領域」に重なり合っており、「ふきだし」の残部が「映像表示領域」の一部の外側にあり、かつ、「ふきだし」内の「注釈データ」の少なくとも一部が動画の外側に表示される。
したがって、本件特許発明1は甲第1号証に記載された発明と同一である。(審判請求書第45頁第21行〜第46頁第8行)

(イ)予備的主張について
甲第1号証について、仮に、「注釈データ」の少なくとも一部が動画の外側に表示されていないと解したとしても、図18において動画の表示面積が大きい場合、動画をディスプレイに表示することに伴うアスペクト比の変更に伴い、コメントを表示する領域の一部が動画を表示する領域の一部と重なり合っており、他のコメントを表示する領域が動画を表示する領域の一部の外側にあり、かつ、コメントを表示する領域中のコメントの少なくとも一部が動画の外側に表示される(以下「キヤノンオーバーレイ状態」)ことが十分あり得ることを当業者が甲第1号証の記載から認識できる。(審判請求書第46頁第9〜16行)

イ 無効理由1−2について
甲第2号証に記載された発明の「テキスト」が本件特許発明1の「コメント」に、「テキストデータ」が「コメント情報」に、「コメント情報記憶部」が「ログファイルに格納する格納部」に、「動画を表示する領域」が「第1の表示欄」に、「テキストデータを表示する領域」が「第2の表示欄」に、「テキストデータ表示部」が「コメント表示部」にそれぞれ相当する。(審判請求書第52頁第17〜21行)
したがって、本件特許発明1は甲第2号証に記載された発明と同一である。(審判請求書第54頁第1行)
また、甲第2号証の図4において、動画の表示面積が大きい場合、動画をディスプレイに表示することに伴うアスペクト比の変更に伴い、コメントを表示する領域の一部が動画を表示する領域の一部と重なり合っており、他のコメントを表示する領域が動画を表示する領域の外側にあり、かつ、コメントを表示する領域中のコメントの少なくとも一部が動画の外側に表示されることが十分あり得ることを当業者が甲第2号証の記載から認識できる。(審判請求書第53頁第1〜12行)

ウ 無効理由1−3について
甲第3号証に記載された発明の「コミュニケーション情報」又は「発言」が本件特許発明1の「コメント」に、「発言情報」が「コメント付与時間」に、「チャット情報データベース」が「コメント情報記憶部」に、メディア専用プレイヤー32の動画を表示する領域が「第1の表示欄」に、「メディア専用プレイヤー32の発言を表示する領域」が「第2の表示欄」にそれぞれ相当する。
そして、動画(映像)をディスプレイに表示することに伴うアスペクト比の変更に伴い、発言表示領域の一部が動画表示領域の一部と重なり合っており、他の発言表示領域が動画表示領域の一部の外側にあり、かつ、発言表示領域の発言の少なくとも一部が動画表示領域の外側に表示されることが十分あり得ることを当業者が甲第3号証の記載から認識できる。(審判請求書第56頁第1〜12行)
したがって、本件特許発明1は甲第3号証に記載された発明と同一である。

エ 無効理由2−1について
甲第4号証及び甲第5号証には、視認性向上の観点から、テキスト表示領域又は字幕表示領域の一部が動画表示領域又は映像表示領域の一部と重なり合っており、他のテキスト等表示領域が動画等表示領域の外側にあり、かつ、テキスト又は字幕の一部が動画等表示領域の外側に表示されることが示されている。
したがって、甲第1号証に記載された発明に対し、前記の甲4に記載の技術(以下「甲4技術」)を適用して、及び/又は甲5に記載の技術(以下「甲5技術」。これと甲4技術を併せて「オーバーレイ技術」)を適用する等して本件特許発明1に到達することは容易である。(審判請求書第46頁第21行〜第47頁第10行)
甲第13〜20号証によれば、Web2.0は技術常識であり、甲第4号証の「テキスト」は、ユーザが入力する場合も含むものであるから、本件特許発明1の「コメント」を含む概念である。(審判請求書第48頁第8行〜第50頁第6行)
甲第5号証における「字幕」はユーザが入力するものではないものの、端末に表示させるという局面において、文字列データとして処理されるものであることは明らかである。加えて、Web2.0は技術常識であるから、甲第5号証の「字幕」をユーザが入力する「コメント」に置換することは容易である。(審判請求書第51頁第13行〜第52頁第14行)
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明に対し、甲第4号証に記載された技術、甲第5号証に記載された技術及び技術常識を適用することによって、当業者が容易に想到し得たものである。

オ 無効理由2−2について
仮に、甲第2号証に記載された発明と本件特許発明1との間に相違点があるとしても、その克服は容易である。(審判請求書第54頁第3〜4行)

カ 無効理由2−3について
仮に、甲第3号証に記載された発明のオーバーレイ状態が十分あり得ることを当業者が甲第3号証の記載から認識できないとしても、技術分野の同一性及び課題の共通性に基づき、当業者が甲第3号証に記載された発明に対し甲第4号証等に記載された技術に示されたオーバーレイ状態を適用して本件特許発明1に到達することは容易である。(審判請求書第56頁第14〜19行)

キ 無効理由2−4及び無効理由2−7について
甲第6〜10号証に記載されているように、本件特許発明2及び本件特許発明10において付加されたコメントの移動表示は、プログラミングによりテキストを表示する技術分野において、より多くの文字情報を画面上に表示させるための基礎的手法であり(以下「本件移動表示手法」)、慣用技術であるから、動機付けの有無を検討するまでもなく、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明に対し慣用技術である本件移動表示手法を適用して相違点を克服することは容易である。(審判請求書第57頁第8〜16行)

ク 無効理由2−5について
本件特許発明5の構成は、動画のアスペクト比の調整とコメント表示領域並びに具体的なコメントの表示位置及び長さにより現れるものであるところ、視認性向上の観点から、これを採用することは容易である。(審判請求書第58頁第5〜11行)

ケ 無効理由2−6について
本件特許発明6について、コメントが重なることによる視認性の向上という観点から、コメントの重なり合いを回避するために、コメントが重なるか否かを判定し、重なると判定された場合に、重なり合いを回避するように、各コメントが重ならない位置に表示させるという解決手段は、単なる課題の裏返しにすぎず、自明である。(審判請求書第58頁第18〜21行)
甲第22〜24号証には、動画において文字情報を表示する際、文字列が重複するか否かを判定し、重複する場合には重複しないように位置を変更する技術が開示されており、かかる技術は慣用技術であるといえる。
甲第1〜3号証に記載された発明と甲第22〜24号証に記載された慣用技術とは、技術分野の同一性及び課題の共通性があることから、本件特許発明6は、主引例に当該技術常識を適用することにより、容易に想到し得たものである。(口頭審理陳述要領書第58頁第1行〜第60頁第4行)

(4)証拠方法
甲第1号証:特開2004−193979号公報
甲第2号証:特開2004−297245号公報
甲第3号証:特開2004−15750号公報
甲第4号証:特開2003−111054号公報
甲第5号証:国際公開第2006/059779号
甲第6号証:大重美幸、“FLASH ActionScript 2.0 入門完全ガイド+実践サンプル集”、平成17年11月30日、pp.322〜329
甲第7号証:大河原浩一、笠原淳子、“Final Cut Pro 5 Hyper Handbook”、平成17年12月15日、pp.162〜169
甲第8号証:大重美幸、“FLASH ActionScript スーパーサンプル集”、平成18年11月20日、pp.112〜119、134〜161
甲第9号証:安藤伸彌、“SMILで魅せるストリーミングコンテンツ作成ガイド”、平成14年5月3日、pp.ii〜iii、14〜27、58〜61、102〜113
甲第10号証:鷹野雅弘、できるシリーズ編集部、“できるクリエイター Flash MX 独習ナビ”、平成15年5月11日、pp.30〜35、302
甲第11号証:特許庁総務部技術調査課、“デジタルコンテンツ配信・流通技術に関する特許出願技術動向調査”、平成14年5月17日、pp.1〜38
甲第12号証:特許第6526304号公報
甲第13号証:梅田望夫、“ウェブ進化論”、平成21年7月30日、pp.120〜121
甲第14号証:秋好陽介、“意外と知られていない Web2.0の謎を解く”、平成18年12月4日、pp.10〜11、20〜21、34〜35
甲第15号証:小川浩、後藤康成、“Web2.0が面白いほどわかる本”、平成18年10月7日、pp.2〜3、40〜41、90〜93
甲第16号証:神田敏晶、“Web2.0でビジネスが変わる”、平成18年6月26日、pp.44〜53、88〜93
甲第17号証:EC研究会、“全図解「Web2.0」ビジネスのしくみ”、平成18年10月30日、pp.14〜17、58〜61
甲第18号証:宮▲崎▼哲也、“図解でわかる Web2.0マーケティング”、平成18年7月20日、pp.10〜13、32〜35
甲第19号証:加藤智明、永島穂波、“超図解 日本版Web2.0最前線”、平成18年8月25日、pp.2〜3、8〜13、42〜43、72〜73
甲第20号証:“ニコニコ動画 開発者ブログ(新着情報)”、平成19年10月26日、https://web.archive.org/web/20071026013808/http://blog.nicovideo.jp/2007/08/post_157.php、(平成31年3月15日出力)
甲第21号証:平成30年(ネ)第10077号の控訴理由書
甲第22号証:特開平8−107552号公報
甲第23号証:特開昭59−105788号公報
甲第24号証:特開平6−165139号公報
甲第25号証:(株)アンク、“HTMLタグ辞典第5版”、平成15年3月25日、pp.280〜281、304〜305
甲第26号証:まつむらまきお、たなかまり、“おしえて!! FLASH8”、平成19年3月23日、pp.52〜55
甲第27号証:まつむらまきお、たなかまり、“おしえて!! Macromedia FLASH MX”、平成14年8月31日、pp.54〜57
甲第28号証:蔵守伸一、“すぐ使える ムービーメーカー”、平成12年11月30日、pp.64〜65
甲第29号証:白石俊平、“HTML5&API入門”、平成22年5月12日、pp.80〜83
甲第30号証:森由美、“LCDにおける色表現のしくみ”、トランジスタ技術2004年2月号、平成16年2月、pp.131〜132
甲第31号証:Sony Corporation、“取扱説明書 デジタルHDビデオカメラレコーダー HDR−FX1”、平成16年、p.39
甲第32号証:Adobe、“デジタルビデオ入門”、平成16年3月、pp.2、16
甲第33号証:“小寺信良の週刊「Electric Zooma!」”、“第216回:4Mピクセル越えの縦型コンパクトDV IXY DV M5 〜高画素化、サイズ拡大で感度2倍の新CCD搭載モデル〜”、平成17年8月10日、https://av.watch.impress.co.jp/docs/20050810/zooma216.htm、(令和2年6月25日出力)
甲第34号証:“BRC−300|リモートカメラシステム|法人のお客様|ソニー、商品の特長|BRC−300|リモートカメラシステム|法人のお客様|ソニー”、https://www.sony.jp/brc/products/BRC-300/index.html、https://www.sony.jp/brc/products/BRC-300/feature_1.html、(令和2年8月3日出力)
甲第35号証:““撮る”から“見る”までHD化促進 ソニーが新カンパニー”、https://www.itmedia.co.jp/news/articles/0404/07/news035.html、平成16年4月7日、(令和2年8月3日出力)

2 被請求人の主張及び証拠方法
(1)答弁の趣旨
被請求人の主張する答弁の趣旨は、
「本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は、請求人の負担とするとの審決を求める。」
というものである。

(2)被請求人の主張の概要
ア 無効理由1−1について
(ア)主位的主張について
甲第1号証の明細書中には、ふきだしの一部を動画の外側にはみ出させる旨の記載は何ら存在せず、甲第1号証の図18において、いくつかのふきだしの縁が映像の表示領域の外側にかかっているように図示されているにすぎない。
したがって、甲第1号証には、「前記ふきだしのうち、一部の領域が映像表示領域の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の領域の外側にあり」との事項、及び、「前記読み出した注釈データをそれぞれ含む複数のふきだしの少なくとも一部を、映像表示領域の外側と内側にまたがるように表示する」との事項が記載されているということはできない。(審判事件答弁書第6頁第6〜15行)
また、甲第1号証に記載された発明は、文字列(「注釈」)を動画の内側と外側にまたがって表示する構成を採用するものではない。甲第1号証の図18において、「おめでとう」や「お幸せに!」、「来賓席にズームします」といった文字列は、いずれも映像の表示領域の内側及び外側にまたがって表示される態様とはなっていない。
したがって、甲第1号証に記載された発明は、文字列を映像の表示領域の内側及び外側にまたがって表示することで、「コメントそのものが動画に含まれているものではなく、動画に対してユーザによって書き込まれたものであることが把握可能となり、コメントの読みにくさを低減させる」という、本件特許発明1の技術的思想及び特徴的構成を開示するものではない。(審判事件答弁書第8頁第24行〜第9頁第3行)

(イ)予備的主張について
甲第1号証において、アスペクト比の変更が可能であることは何ら示唆すらなく、注釈データの少なくとも一部が動画の外側に表示されることを当業者が認識し得るとする根拠は何もない。(審判事件答弁書第9頁第14〜16行)

イ 無効理由1−2について
請求人の認定によれば、甲第2号証に記載された発明の「テキストデータ」とは「利用者端末により書込まれたテキストデータ」を意味する。一方、本件特許発明1における「コメント情報」は、「前記コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報」である。
したがって、甲第2号証に記載された発明の「テキストデータ」には、少なくとも本件特許発明1の「コメント付与時間」に相当する情報が含まれていないことから、甲第2号証に記載された発明の「テキストデータ」は本件特許発明1の「コメント情報」には相当しない。(審判事件答弁書第21頁第27行〜第22頁第6行)
また、甲第2号証の図4において、「GOGO!」や「きめろよ〜!」等のメッセージが配置されたふきだしは、動画の表示枠の外側に配置されているから、甲第2号証に記載された発明は、コメントを表示する領域である「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が」動画を表示する領域である「前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり、」「コメントの少なくとも一部を、第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」に相当する構成を備えるともいえない。(審判事件答弁書第24頁第26〜33行)
甲第2号証において、アスペクト比の変更が可能であることは何ら示唆すらなく、コメントの少なくとも一部が動画の内側に表示されることを当業者が認識し得るとする根拠は何もない。また、甲第2号証において、動画の大きさやアスペクト比を変更したとしても、ふきだしも同じ比率で大きさやアスペクト比を変更すれば、表示レイアウトは特に変わらないのであるから、請求人の主張には理由がない。(審判事件答弁書第25頁第8〜15行)

ウ 無効理由1−3について
甲第3号証には、あくまでもライブ画面上、すなわち映像上にメッセージを書き込むことが記載されている。
また、甲第3号証には、映像のアスペクト比を変更しうることの示唆などは何らないのであるから、請求人の主張には理由がない。(審判事件答弁書第35頁第6〜16行)

エ 無効理由2−1について
甲第4号証に記載された「テキスト」は本件特許発明1の「コメント」に相当するものではないことは、乙第1号証においても認定されている。(審判事件答弁書第12頁第15〜25行)
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明と甲第4号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。(審判事件答弁書第16頁第6〜14行)
甲第5号証に記載された「字幕」は本件特許発明1の「コメント」に相当するものではない。(審判事件答弁書第16頁第22〜24行)
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲5技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。(審判事件答弁書第19頁第2〜3行)

オ 無効理由2−2及び無効理由2−3について
甲第4号証及び甲第5号証のいずれにも、本件特許発明1にかかる、コメントを表示する領域である第2の表示欄が、動画を表示する領域である第1の表示欄の少なくとも一部の領域が重なっており、他の領域が当該第1の表示欄の外側にあり、コメントの少なくとも一部を、第1の表示欄の外側であって第2の表示欄の内側に表示する構成は開示されていない。
よって、たとえ甲第2号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明に甲第4号証又は甲第5号証を適用することができたとしても、本件特許発明1の相違点にかかる構成に到達することとはできない。(審判事件答弁書第31頁第32行〜第32頁第5行、第36頁第26行〜33行)

カ 無効理由2−4及び無効理由2−7について
本件特許発明において「コメント」とは、動画の再生開始後の任意の時点において、動画に対してユーザにより付与されるものであるところ、甲第6〜10号証に記載のテキストデータ等はいずれも本件発明の「コメント」には該当し得ないから、これらの文献には、本件特許発明2における「コメント」の移動表示が開示されているとは言えない。(審判事件答弁書第37頁第30行〜第38頁第4行)

キ 無効理由2−5について
甲第1号証〜甲第3号証において、アスペクト比の変更が可能であることは何ら示唆すらなく、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明又は甲第3号証に記載された発明において、コメントの少なくとも一部が動画の外側に表示されることが当業者にとって認識し得ると窺える根拠は何もない。(審判事件答弁書第38頁第22〜25行)

ク 無効理由2−6について
甲第1号証〜甲第3号証には、審判請求人がいう「コメントが重なることによる視認性の向上という観点」については何ら考察されておらず、コメントの重なり合いを回避するという課題は記載も示唆もされていない。(審判事件答弁書第39頁第15〜17行)
甲第22〜24号証のいずれにも、本件特許発明6における「コメント」については何ら考察されておらず、「コメントの表示位置が重なる」ことについて記載も示唆もされていない。(口頭審理陳述要領書第35頁第12〜15行)

(3)証拠方法
乙第1号証:無効2017−800124の審決
乙第2号証:平成31年(行ケ)第10039号の判決及び更正決定

第4 甲号証及び乙号証について
1 甲号証について
(1)甲第1号証について
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証(特開2004−193979号公報)には、「映像配信システム」(発明の名称)として、図面と共に、次に掲げる事項が記載されている。
なお、下線は、強調のために当審で付したものである。

(ア)「【0022】
図1は、本発明の実施の形態を示し、映像配信装置を適用した映像配信システムの構成の一例を示した図である。
101および102はカメラサーバ、200はクライアント端末(ビューワ)である。カメラサーバ101、102と、クライアント端末200とはそれぞれネットワークに接続される。クライアント端末200からネットワークを介してリクエストがカメラサーバ101、102へ送られる。
【0023】
カメラサーバ101、102でこのリクエストが受け入れられると、カメラサーバ101、102からクライアント端末200へ映像データが配送される。これにより、クライアント端末200でカメラ映像を見ることが可能となる。
【0024】
また、クライアント端末200からカメラ制御コマンドがカメラサーバ101、102へ送られる。これにより、カメラのズーム、パン、チルトなどの操作が可能となる。さらに、ネットワーク上には、中継サーバ300が置かれ、クライアント端末200とカメラサーバ101、102との通信を中継することがある。
【0025】
さらに、400は注釈サーバであり、カメラサーバ101、102が提供する映像データに関する注釈を収集および管理する。
また、500はネットワークと携帯電話回線網とを仲介するルータである。601および602は、ビューワプログラムを搭載した携帯電話端末である。このルータ500を介して、ネットワークに接続された機器と携帯電話端末601、602とが通信する。
・・・
【0039】
図4は、ビューワプログラムを動作させるハードウェア構成の一例を示した図である。すなわち、図4は、クライアント端末200のハードウェア構成の一部を示した図である。図4において、ビューワプログラムを動作させるハードウェアは、一般のコンピュータにより構成される。」

(イ)「【図1】



(ウ)「【0045】
同様に、クライアント端末200及び携帯電話端末601、602内には、カメラ制御の指令や状態通知に対応するカメラ制御部503と、カメラ映像の表示を担当する映像表示部504と、コメントなどの音声注釈データを注釈サーバ400に送付する注釈入力部505と、蓄積映像の再生時に対応する注釈などを同期させる同期再生部506とが含まれている。
【0046】
さらに、注釈サーバ400には、得られた注釈を蓄えるデータベース部507と、対応する映像に対する同期記述を生成する同期生成部508とがある。」

(エ)「【0047】
図6は、クライアント端末200や携帯電話端末601、602の動作の一例を説明するフローチャートである。なお、以下では、クライアント端末200及び携帯電話端末601、602を総称してビューワマシンと称する。
【0048】
ステップS601において、ビューワマシン上のWebブラウザが、指示されたURLに対応するWWWサーバ700に接続し、HTML形式で記述されたWebページデータをリクエストする。
【0049】
続いて、ステップS602において、ビューワマシンは、WWWサーバ700からWebページデータを受け取り、これをWebブラウザに表示し始める。ここで受け取ったWebページデータの中には、本実施形態の映像配信システムのビューワを起動し、カメラサーバ101、102や注釈サーバ400などへ接続するための接続情報が含まれる。
・・・
【0052】
次に、ステップS604において、ビューワマシンは、上記取得した接続情報の識別子に対応するプログラム、すなわち本映像配信システムのビューワプログラムを起動する。
【0053】
次に、ステップS605において、上記起動したビューワプログラムにより、上記取得(ダウンロード)した接続情報を読み出す。そして、上記読み出した接続情報に記載されているカメラサーバ101、102を構成する映像サーバ502のアドレスおよび接続ポートの情報に従い、ビューワマシンを映像サーバ502へ接続する。
【0054】
ここで、接続以降の処理を行うための動作プログラム(実現方法としては、スレッドあるいはプロセスの起動となる)が起動され、この映像表示用スレッドは、終了までステップS631の処理を繰り返す。すなわち、ビューワマシンは、映像サーバ502からの映像データが届くたびにそれを受け取り、ディスプレイ装置404cなどに表示する。
【0055】
さらに、ステップS606において、上記起動したビューワプログラムは、上記接続情報に記載されている注釈サーバ400のアドレスおよび接続ポートの情報に従い、ビューワマシンを注釈サーバ400へ接続する。
【0056】
ここで、接続以降の処理を行うための動作プログラムが(スレッドあるいはプロセスとして)起動され、この注釈用スレッドは、終了までステップS621からステップS624までの処理を繰り返す。すなわち、ビューワマシンは、注釈サーバ400との間で注釈データの受け渡しをする。なお、この動作の詳細に関しては、後述する。
・・・
【0062】
ビューワマシンを注釈サーバ400へ接続する処理(ステップS606)で起動する上記注釈用スレッドでは、まず、ステップS621において、ビューワマシン上の音声入出力装置404dを初期化する。
【0063】
次に、ステップS622において、一定時間(例えば、1秒間)音声データを取得(キャプチャ)する。
そして、ステップS623において、上記取得した音声データのホワイトノイズを除去した上で、一定レベル(音量)以上の音声データが所定の処理結果から得られた場合には、それをエンコード/圧縮して、ステップS624に進む。一方、一定レベル(音量)以上の音声データが得られない場合には、ステップS622に戻る。
【0064】
そして、ステップS624において、上記得られた一定レベル以上の音声データと合わせて、映像サーバ502の識別子(典型的には、前記接続情報に記載されている映像サーバのアドレスおよび接続ポート情報である)、映像サーバ502との接続のセッション識別子、現在表示している映像のタイムスタンプ、カメラ制御権の有無、パンやズームや逆光補正などカメラ制御パラメータなどの情報を注釈サーバ400に送信する。そして、最後に、ステップS622に戻る。
【0065】
なお、本実施形態では、ユーザからの音声注釈の有無をレベル(音量)から自動判別しているが、ユーザが明示的に注釈の開始と終了を指定してもよい。この場合、例えば、予め設定したキーボード404b上のキーや、ディスプレイ装置404cの画面上に表示されているボタンを押し下げた(KeyDown)時点で、注釈音声の取得を開始し、キーを上げた(KeyUp)時点で注釈音声の取得を終了するようにすればよい。
【0066】
蓄積映像にアクセスする際のビューワマシンにおける動作の流れも、図6に示したものと同様である。異なる部分は、カメラ制御サーバ501への接続を行わない点と、映像サーバ502への接続に先立って注釈サーバ400に接続し同期記述を取得する点である。
【0067】
一方、ディスプレイ装置404cの表示画面の内容は大きく異なり、カメラ制御インターフェースに変わって、蓄積映像の再生制御インターフェースを表示する(図14を参照)。
【0068】
また、再生映像に関するタイムスケールを表示し、再生している映像が、どの映像であるのかをユーザに伝える。さらに、注釈音声の存在を明示するためのアイコン(図14のビューワ画面1400の左下に表示されているベルのマーク)を表示する。」

(オ)「【図6】



(カ)「【図14】



(キ)「【0115】
図13は、注釈サーバ400の動作の一例を説明するフローチャートである。
・・・
【0121】
リクエスト内容が、音声注釈データの登録である場合には、ステップS1310に進み、リクエストに付随する映像サーバ502とのセッション識別子、タイムスタンプ、カメラ制御権の有無、および音声注釈データなどの情報を取り出す。そして、それらの情報から同期記述を生成し、受け取った音声注釈データとともにデータベース部を介して保存する。
【0122】
この時、カメラ制御権が有であった場合には、予め設定された予鈴音(ジングル)データを、受け取った音声注釈データに前置きするよう合成する。
また、この同期記述の生成に際して、同じ時刻に複数の音声注釈データが発生した場合には、カメラ制御権をもつ注釈を最優先とする。それ以外の場合には、後から登録された注釈を優先し、排他的に再生するような同期記述を生成する。
【0123】
一方、リクエスト内容が、音声注釈データの検索である場合には、ステップS1311に進み、リクエストで要求された映像サーバ識別子に関して、指定された時間帯の注釈データを、データベース部を介して抽出する。そして、得られた同期記述と注釈データとをクライアント(ビューワマシン)に配送する。
【0124】
また、クライアント(ビューワマシン)から接続終了リクエストを受けたならば、ステップS1312に進み、ビューワマシンとの接続終了を主プログラムへ通達し、自身のスレッドを終了する。
【0125】
なお、本実施の形態の映像配信システムで生成される同期記述の一例は、図15に示す通りである。
この図15に示す同期記述1500には、アドレス(bar.xyz.co.jp)に配置されたカメラサーバ101のカメラ装置camera0の2000年10月21日10時30分45秒から2000年10月21日10時45分20秒までの期間の蓄積映像について、アドレス(foo.xyz.co.jp)に配置されている注釈サーバ400から4つの音声注釈データを取り出して同期再生することが記述されている.
【0126】
以上の構成で、携帯電話端末601、602上に実装されたビューワを使う複数のユーザは、映像サーバ502が提供する映像データを携帯電話端末601、602上の画面に見ながら、必要に応じて、リアルタイムで適切な注釈を音声で入力する。そして、ビューワに内蔵された注釈用スレッドが、入力した注釈を注釈サーバ400に転送し、注釈サーバ400が適切な同期記述を生成した上で、入力した注釈を保存する。
【0127】
これによって、蓄積映像を参照するユーザは、映像に同期する形で、それに付随する適切な注釈を得ることが可能となる。
特に、カメラ制御権を取得してカメラ制御を行うユーザの注釈に、予鈴音声を合成するようにしたので、他の傍観者の注釈と区別することができるとともに、カメラ制御を行った意図を示す注釈を、容易に認識することが可能となる。
【0128】
このように本実施形態では、映像に付与された注釈を分別して再生することが可能になり、映像アーカイブの作成や、映像を介したコミュニティ形成を効果的に進めることが可能となる。
【0129】
例えば、本実施形態の映像配信システムを利用して、結婚式会場の映像を中継および蓄積する際に、カメラを制御するユーザによって行われた映像のパンやズームなどの意図と、結婚式映像を見ている傍観者ユーザの祝辞や感想とを、適切に再現し、これらを明確に区別することが可能となる。」

(ク)「【図13】



(ケ)「【図15】



(コ)「【0136】
また、本実施形態では、ライブ映像に音声注釈を付与する例について説明しているが、同様の手法で、テキスト注釈を付与することも可能である。この場合には、ビューワを実装するプログラム上での注釈の扱いにおいて、音声注釈データの処理に加えて(あるいは、代えて)、テキスト注釈データの処理を実装すればよい。
【0137】
近年では、メイルやSMS(Short Message Service)の普及から、多くの携帯電話端末において、テキスト作成/表示機能が実装されており、これを利用してテキスト注釈の入力/再生を実現することができる。」

(サ)「【図18】



イ 甲第1号証の記載事項について
(ア)音声注釈の再生開始時刻について
上記ア(キ)にあるとおり、クライアント端末が取得する同期記述は、上記ア(ケ)の図15のように記述されるものである。
そこで、図15を参照すると、videoタグにおいて参照されるmp4動画データのクエリにおける動画の開始及び終了時刻が「2000oct21.10:30:45」から「2000oct21.10:45:20」のように日付及び時刻によって指定されているのに対して、audioタグにおける開始時刻は「00m08s」、「03m18s」、「03m55s」、「08m06s」の4つの時刻で指定され、10時30分45秒から10時45分20秒の間の時刻ではないから、各音声注釈の再生開始時刻は動画の開始からの時刻によって指定されるものと認められる。

(イ)テキスト注釈の表示について
上記ア(コ)にあるとおり、テキスト注釈の付与は音声注釈の付与と同様に行うことができ、ビューワを実装するプログラム上での注釈の扱いにおいて、音声注釈データの処理に代えてテキスト注釈データの処理を実装することができる。加えて、上記ア(カ)の図14及び(サ)の図18にあるとおり、ビューワ画面における注釈以外の部品(タイムスケール、アイコン及び各種操作用のボタン)の配置は、音声注釈を用いる場合の図14とテキスト注釈を用いる場合の図18とで同様であることが見て取れる。また、図14における「映像表示部(蓄積映像)」との領域は、図18においても同じ位置に配置されていることから、図18における対応する位置の部品も「映像表示部(蓄積映像)」との領域であると認められる。
これらのことに鑑みれば、図18の表示画面1800において、テキスト注釈はふきだしの形態で映像表示部(蓄積映像)の領域に重畳して表示されるものと認められる。

また、図18を参照すると、テキスト注釈のふきだしの一部が映像表示部(蓄積映像)の枠よりも外側まではみ出していることが見て取れる一方、テキスト注釈の文字は映像表示部(蓄積映像)の枠の外側まではみ出しているとは認められない。

ウ 甲第1号証に記載された発明
上記ア(ア)〜(サ)に摘記した記載事項及びイにおける検討結果から、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
なお、各構成の符号(1a)〜(1i2)は説明のために当審において付したものであり、以下、構成1a〜1i2と称する。また、各構成の末尾に、対応する段落番号等を示す。

(甲1発明)
(1a)カメラサーバ101、102と、クライアント端末(ビューワ)200とがそれぞれネットワークに接続された映像配信システムにおけるクライアント端末200であって、【0022】
(1a1)クライアント端末200からネットワークを介してリクエストがカメラサーバ101、102へ送られ、【0022】
(1a2)カメラサーバ101、102でこのリクエストが受け入れられると、カメラサーバ101、102からクライアント端末200へ映像データが配送され、これにより、クライアント端末200でカメラ映像を見ることが可能となり、【0023】

(1b)クライアント端末200内には、カメラ映像の表示を担当する映像表示部504と、コメントなどの音声注釈データを注釈サーバ400に送付する注釈入力部505と、蓄積映像の再生時に対応する注釈などを同期させる同期再生部506とが含まれており、【0045】

(1c1)ここで、400は注釈サーバであり、カメラサーバ101、102が提供する映像データに関する注釈を収集および管理するものであり、【0025】
(1c2)注釈サーバ400には、得られた注釈を蓄えるデータベース部507と、対応する映像に対する同期記述を生成する同期生成部508とがあり、【0046】

(1d)ビューワマシンであるクライアント端末200は、【0047】
(1d1)ステップS601において、ビューワマシン上のWebブラウザが、指示されたURLに対応するWWWサーバ700に接続し、HTML形式で記述されたWebページデータをリクエストし、【0048】
(1d2)ステップS602において、ビューワマシンは、WWWサーバ700からWebページデータを受け取り、これをWebブラウザに表示し始め、ここで受け取ったWebページデータの中には、本実施形態の映像配信システムのビューワを起動し、カメラサーバ101、102や注釈サーバ400などへ接続するための接続情報が含まれ、【0049】
(1d3)ステップS604において、ビューワマシンは、上記取得した接続情報の識別子に対応するプログラム、すなわち本映像配信システムのビューワプログラムを起動し、【0052】
(1d4)ステップS605において、上記起動したビューワプログラムにより、接続情報に記載されているカメラサーバ101、102を構成する映像サーバ502のアドレスおよび接続ポートの情報に従い、ビューワマシンを映像サーバ502へ接続し、【0053】
(1d5)ここで、接続以降の処理を行うための動作プログラム(実現方法としては、スレッドあるいはプロセスの起動となる)が起動され、この映像表示用スレッドは、終了までステップS631の処理を繰り返し、すなわち、ビューワマシンは、映像サーバ502からの映像データが届くたびにそれを受け取り、ディスプレイ装置404cなどに表示し、【0054】
(1d6)ステップS606において、上記起動したビューワプログラムは、上記接続情報に記載されている注釈サーバ400のアドレスおよび接続ポートの情報に従い、ビューワマシンを注釈サーバ400へ接続し、【0055】
(1d7)ここで、接続以降の処理を行うための動作プログラムが(スレッドあるいはプロセスとして)起動され、この注釈用スレッドは、終了までステップS621からステップS624までの処理を繰り返し、すなわち、ビューワマシンは、注釈サーバ400との間で注釈データの受け渡しをし、【0056】
(1d8)ビューワマシンを注釈サーバ400へ接続する処理(ステップS606)で起動する上記注釈用スレッドでは、まず、ステップS621において、ビューワマシン上の音声入出力装置404dを初期化し、【0062】
(1d9)ステップS622において、一定時間(例えば、1秒間)音声データを取得(キャプチャ)し、【0063】
(1d10)ステップS624において、上記得られた一定レベル以上の音声データと合わせて、映像サーバ502の識別子(典型的には、前記接続情報に記載されている映像サーバのアドレスおよび接続ポート情報である)、映像サーバ502との接続のセッション識別子、現在表示している映像のタイムスタンプなどの情報を注釈サーバ400に送信し、【0064】

(1e1)蓄積映像にアクセスする際のビューワマシンにおける動作の流れも同様であり、映像サーバ502への接続に先立って注釈サーバ400に接続し同期記述を取得し、【0066】
(1e2)ディスプレイ装置404cの表示画面の内容は、蓄積映像の再生制御インターフェースを表示し、【0067】
(1e3)再生映像に関するタイムスケールを表示し、再生している映像が、どの映像であるのかをユーザに伝え、さらに、注釈音声の存在を明示するためのアイコン(ビューワ画面1400の左下に表示されているベルのマーク)を表示し、【0068】

(1f)注釈サーバ400の動作の一例を説明するフローチャートは、【0115】
(1f1)リクエスト内容が、音声注釈データの登録である場合には、ステップS1310に進み、リクエストに付随する映像サーバ502とのセッション識別子、タイムスタンプ、および音声注釈データなどの情報を取り出し、そして、それらの情報から同期記述を生成し、受け取った音声注釈データとともにデータベース部を介して保存し、【0121】
(1f2)リクエストで要求された映像サーバ識別子に関して、指定された時間帯の注釈データを、データベース部を介して抽出し、そして、得られた同期記述と注釈データとをクライアント(ビューワマシン)に配送する処理を有し、【0123】

(1g)同期記述の一例は、【0125】
(1g1)同期記述1500には、アドレス(bar.xyz.co.jp)に配置されたカメラサーバ101のカメラ装置camera0の2000年10月21日10時30分45秒から2000年10月21日10時45分20秒までの期間の蓄積映像について、アドレス(foo.xyz.co.jp)に配置されている注釈サーバ400から4つの音声注釈データを取り出して同期再生することが記述されており、【0125】
(1g2)同期記述は、videoタグにおいて参照されるmp4動画データのクエリにおける動画の開始及び終了時刻、「2000oct21.10:30:45」から「2000oct21.10:45:20」に対して、audioタグにおける開始時刻は「00m08s」、「03m18s」、「03m55s」、「08m06s」の4つの時刻で指定されるように、各音声注釈の再生開始時刻は動画の開始からの時刻によって指定され、【上記イ(ア)】

(1h1)これによって、蓄積映像を参照するユーザは、映像に同期する形で、それに付随する適切な注釈を得ることが可能となり、【0127】
(1h2)このように本実施形態では、映像に付与された注釈を再生することが可能になり、映像アーカイブの作成や、映像を介したコミュニティ形成を効果的に進めることが可能となり、【0128】
(1h3)例えば、本実施形態の映像配信システムを利用して、結婚式会場の映像を中継および蓄積する際に、結婚式映像を見ている傍観者ユーザの祝辞や感想を、適切に再現し、【0129】

(1i1)同様の手法で、テキスト注釈を付与することも可能であり、この場合には、ビューワを実装するプログラム上での注釈の扱いにおいて、音声注釈データの処理に加えて(あるいは、代えて)、テキスト注釈データの処理を実装すればよく、【0136】
(1i2)表示画面1800において、テキスト注釈はふきだしの形態で映像表示部(蓄積映像)の領域に重畳して表示され、テキスト注釈のふきだしの一部が映像表示部(蓄積映像)の枠よりも外側まではみ出すが、テキスト注釈の文字は映像表示部(蓄積映像)の枠の外側まではみ出さない、【上記イ(イ)】

(1a)クライアント端末200。

(2)甲第2号証について
ア 甲第2号証の記載事項
甲第2号証(特開2004−297245号公報)には、「ストリーミング配信方法」(発明の名称)として、図面と共に、次に掲げる事項が記載されている。
なお、下線は、強調のために当審で付したものである。

(ア)「【0010】
【発明の実施の形態】
図1はストリーミング配信システム構成図であり、本発明のストリーミング配信方法を実現するストリーミング配信システムの構成を示す。
【0011】
ストリーミング配信システムは、ウェブサーバ1、ストリーミングサーバ2、利用者端末(クライアントであるコンピュータ)4からなる。1個の利用者端末4の1個の画面40において、例えば2個のウィンドウ41及び42が開かれる。ウェブサーバ1とストリーミングサーバ2とは、ネットワーク3により接続され、相互に通信を行う。ストリーミングサーバ2と利用者端末4とは動画データのストリーミング配信が可能なネットワーク3により接続され、本発明に従って前者が後者へのテキストデータを重畳した動画のストリーミング配信を行う。当該動画はウィンドウ41に表示される。利用者端末4とウェブサーバ1とは、ネットワーク3により接続され、相互に通信を行う。即ち、利用者端末4の利用者は、ウェブサーバ1の提供する例えばウェブ掲示板(42)にテキストデータ(文字データ)からなるメッセージを書き込む。ウェブ掲示板はウィンドウ42に表示される(以下、ウェブ掲示板42とも言う)。利用者端末4は、1又は複数であってよい。
【0012】
ストリーミングサーバ2は、動画コンテンツを格納するコンテンツファイル21を備え、これから読み出した動画コンテンツをネットワーク3を介して1又は複数の利用者端末4にストリーミング配信する。コンテンツファイル21は周知の動画像を格納するファイルとされる。この例では、ストリーミング配信は、周知のSMIL(Synchronized Multimedia Integrated Language )を用いて行われる。これにより、ストリーミングサーバ2は、ストリーミング配信する動画コンテンツとテキストデータとを同期させて1個のコンテンツにまとめて配信し、当該映像と文章とを同時に同一のウィンドウ41で表示することができる。
【0013】
利用者端末4は、各々、ストリーミングサーバ2から動画コンテンツの配信を受け、その画面40のウィンドウ41にその動画を表示する。これを見た利用者は、利用者端末4から、同一画面40上において、ウェブサーバ1の提供する例えばウェブ掲示板42のようなテキスト書込部42(以下、テキスト書込部42とも言う)にテキストデータからなるメッセージを書き込む(登録する)。
【0014】
ウェブサーバ1は、ネットワーク3を介して、利用者端末4にテキスト書込部42を提供する。テキスト書込部42は、例えばストリーミング配信中の動画コンテンツに関連付けられたウェブ掲示板42又はチャット書込領域42であり、ウェブサーバ1により予めストリーミング配信中の動画コンテンツに関連付けられている。テキスト書込部42には、利用者端末4によりストリーミング配信中の動画コンテンツに関連する1又は複数のテキストデータが書き込まれる。テキストデータは、ウェブ掲示板42に利用者端末4から書き込まれた(登録された)メッセージ、チャットにおいて利用者端末4から書き込まれた(登録された)メッセージ等である。メッセージは、例えば、当該動画コンテンツがスポーツの試合であれば、選手に対する応援の言葉等である。テキストデータはウェブ掲示板42及びチャット書込領域42以外のテキスト書込部42から収集されてもよい。
【0015】
ウェブサーバ1は、書込ログファイル11を備え、テキスト書込部42に利用者端末4により書き込まれたテキストデータを逐次収集し、当該収集したテキストデータをその収集の順に書込ログファイル11に格納する。
【0016】
ストリーミングサーバ2は、ウェブサーバ1の書込ログファイル11に格納されたテキストデータを収集する。従って、ストリーミングサーバ2により収集されるテキストデータは、ストリーミング配信中の動画コンテンツに関連するテキストデータであって、当該動画コンテンツに関連付けられたテキスト書込部42に対して、1又は複数の利用者端末4により書き込まれたテキストデータである。収集されるテキストデータは1又は複数個である。ウェブサーバ1は複数であってもよい。
【0017】
ストリーミングサーバ2は、ウェブサーバ1からの利用者端末4により書き込まれたテキストデータの収集を周期的に繰り返す。この周期は、後述するログ収集周期設定部223に設定されたログ収集周期とされ、初期設定処理において予め設定される。例えば、この周期はおよそ1〜2秒とされる。
【0018】
ストリーミングサーバ2は、収集されたテキストデータをストリーミング配信中の動画コンテンツに重畳し、テキストデータの重畳された動画コンテンツを利用者端末4に配信する。このために、ストリーミングサーバ2は、ウェブサーバ1からその書込ログファイル11に書き込まれたテキストデータを収集して、一時データ格納部22の書込リスト221に一時的に格納する。また、ストリーミングサーバ2は、テキストデータを収集した後、当該収集により書込リスト221に格納されたテキストデータの数をカウントし、当該カウント値を以下の書込数設定部225に格納する。」

(イ)「【図1】



(ウ)「【0030】
ストリーミングサーバ2は、図5に示すように、収集されたテキストデータ(表示リスト222内のテキストデータ)の少なくとも1個について、その内容に応じて、ウィンドウ41における表示位置又は色(背景色又はフォントの色)を設定する。ウィンドウ41における表示位置又は色は、当該テキストデータ毎に予め定められる。このために、ストリーミングサーバ2は、メッセージ表示DB24を備える。メッセージ表示DB24の一例を図2(C)に示す。メッセージ表示DB24は、テキストデータの中で出現頻度の高いと思われる又は関心の高いと思われる固有名詞をキーワードとして、当該キーワード毎に、その(およその)表示位置、表示色を格納する。
【0031】
例えば、動画コンテンツがサッカーの試合である場合、選手名がキーワードとされる。選手Xの属するチームがウィンドウ41の左側であれば、その表示位置は「左」とされる。これにより、同一チームへの声援が相互に近い位置に表示されるので、重畳されたテキストデータが見易くなる。選手Xの属するチームのチームカラー(ユニフォームの色)が「青」であれば、その表示色(テキストデータを表示するボックスの背景色又はフォントの色)は「青」とされる。表示リスト222内に当該選手名(であるテキストデータ)が存在する場合、これを動画コンテンツに重畳する際、その表示位置又は色は、メッセージ表示DB24に従った表示位置又は色とされる。
【0032】
ウィンドウ41における表示位置又は色は、表示位置又は色の一方のみを設定しても、双方を設定してもよい。また、サッカーの試合のように、前半と後半とでサイド(又はコート)チェンジをする場合、これに伴って表示位置を変えるようにしてもよい。
【0033】
テキストデータの表示位置の指定がない場合、テキストデータは、ウィンドウ41上の予め定められた位置に重畳され表示される。テキストデータの表示位置は、表示可能数と同一の数だけ、予め定められる。テキストデータの表示色の指定がない場合、テキストデータは、当該ウィンドウ41の背景色と同一の背景色に通常のフォント(例えば、黒)で表示される。
【0034】
ストリーミングサーバ2は、図6に示すように、収集されたテキストデータ(表示リスト222内のテキストデータ)の少なくとも1個について、その内容に応じて、当該テキストデータとは異なる内容の新たなテキストデータ(メッセージ)を同時に重畳する。この新たなテキストデータは、当該テキストデータ毎に予め定められる。このために、ストリーミングサーバ2は、応答メッセージDB25を備える。応答メッセージDB25の一例を図2(D)に示す。応答メッセージDB25は、テキストデータの中で出現頻度の高いと思われる又は関心の高いと思われる固有名詞をキーワードとして、当該キーワード毎に、同時に重畳すべき新たなテキストデータを格納する。」

(エ)「【図6】



(オ)「【0042】
ストリーミングサーバ2は、書込数が表示可能数設定部224の表示可能数よりも大きいか否かを調べ(ステップS14)、書込数が表示可能数よりも大きい場合、前述のように、テキストデータを整理した上で、表示リスト222を作成する(ステップS15)。これについては、図8を参照して後述する。ストリーミングサーバ2は、更に、表示リスト222に格納したテキストデータの数をカウントして、これを表示数として取得する、即ち、表示数設定部226に格納する(ステップS16)。ストリーミングサーバ2は、表示数に基づいて、表示時間を設定する、即ち、表示時間設定部227に格納する(ステップS17)。この時、前述のように、表示時間は表示数に比例して短くされる。
【0043】
この後、ストリーミングサーバ2は、表示リスト222内に格納されているメッセージを、その先頭から順に読み出して、当該表示時間に従ってSMILを用いて動画コンテンツに重畳して利用者端末4に配信することにより、そのウィンドウ41に表示し(ステップS18)、ステップS11以下を繰り返す。ステップS14において書込数が表示可能数よりも大きくない場合、ステップS12で作成した書込リスト221内に格納されているメッセージを、その先頭から順に読み出して、当該表示時間に従って動画コンテンツに重畳して利用者端末4に配信することにより、そのウィンドウ41に表示し(ステップS19)、ステップS11以下を繰り返す。」

(カ)「【図7】



イ 甲第2号証に記載された発明
上記ア(ア)〜(カ)に摘記した記載事項から、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。
なお、各構成の符号(2a)〜(2f3)は説明のために当審において付したものであり、以下、構成2a〜2f3と称する。また、各構成の末尾に、対応する段落番号を示す。

(甲2発明)
(2a)ウェブサーバ1、ストリーミングサーバ2、利用者端末(クライアントであるコンピュータ)4からなるストリーミング配信システムにおける利用者端末4であって、【0011】

(2b1)ストリーミングサーバ2と利用者端末4とは動画データのストリーミング配信が可能なネットワーク3により接続され、前者が後者へのテキストデータを重畳した動画のストリーミング配信を行い、当該動画はウィンドウ41に表示され、【0011】
(2b2)ストリーミング配信は、周知のSMIL(Synchronized Multimedia Integrated Language )を用いて行われ、これにより、ストリーミングサーバ2から、ストリーミング配信する動画コンテンツとテキストデータとが同期されて1個のコンテンツにまとめて配信され、当該映像と文章とを同時に同一のウィンドウ41で表示することができ、【0012】

(2c1)利用者端末4は、各々、ストリーミングサーバ2から動画コンテンツの配信を受け、その画面40のウィンドウ41にその動画を表示し、これを見た利用者は、利用者端末4から、同一画面40上において、ウェブサーバ1の提供する例えばウェブ掲示板42のようなテキスト書込部42(以下、テキスト書込部42とも言う)にテキストデータからなるメッセージを書き込み、【0013】
(2c2)テキスト書込部42に利用者端末4により書き込まれたテキストデータはウェブサーバ1により逐次収集され、当該収集したテキストデータはその収集の順にウェブサーバ1が備える書込ログファイル11に格納され、【0015】

(2d1)ストリーミングサーバ2により、ウェブサーバ1の書込ログファイル11に格納されたテキストデータが収集され、【0016】
(2d2)ウェブサーバ1からの利用者端末4により書き込まれたテキストデータの収集が周期的に繰り返され、例えば、この周期はおよそ1〜2秒とされ、【0017】
(2d3)収集されたテキストデータがストリーミング配信中の動画コンテンツに重畳され、テキストデータの重畳された動画コンテンツが利用者端末4に配信され、【0018】

(2e1)収集されたテキストデータ(表示リスト222内のテキストデータ)の少なくとも1個について、その内容に応じて、ウィンドウ41における表示位置が設定され、【0030】
(2e2)例えば、動画コンテンツがサッカーの試合である場合、選手Xの属するチームがウィンドウ41の左側であれば、その表示位置は「左」とされ、【0031】
(2e3)テキストデータの表示位置の指定がない場合、テキストデータは、ウィンドウ41上の予め定められた位置に重畳され表示され、テキストデータの表示位置は、表示可能数と同一の数だけ、予め定められ、【0033】
(2e4)収集されたテキストデータの少なくとも1個について、その内容に応じて、当該テキストデータとは異なる内容の新たなテキストデータ(メッセージ)が同時に重畳され、【0034】

(2f1)ストリーミングサーバ2により、表示リスト222が作成され(ステップS15)、【0042】
(2f2)表示数に基づいて、表示時間を設定する、即ち、表示時間設定部227に格納し(ステップS17)【0042】
(2f3)表示リスト222内に格納されているメッセージが、その先頭から順に読み出されて、当該表示時間に従ってSMILを用いて動画コンテンツに重畳して利用者端末4に配信されることにより、そのウィンドウ41に表示される(ステップS18)、【0043】

(2a)利用者端末4。

(3)甲第3号証について
ア 甲第3号証の記載事項
甲第3号証(特開2004−15750号公報)には、「ライブ配信サーバ、及びライブ配信方法」(発明の名称)として、図面と共に、次に掲げる事項が記載されている。
なお、下線は、強調のために当審で付したものである。

(ア)「【0022】
[ライブ配信システムの構成例]
また、図2は、本発明のライブ配信サーバを用いたライブ配信システムの構成例を示す図であり、本発明に直接関係する部分について示したものである。
【0023】
図2に例示するライブ配信システムは、ライブ配信サーバ100と、クライアントであるライブ配信者10のライブ配信者端末11と、クライアントであるライブ閲覧者20のライブ閲覧者端末21とが通信ネットワーク1を介して接続されて構成される。なお、ライブ配信者10及びライブ閲覧者20は予めライブ配信サーバ100に登録されたユーザであり、ユーザID(識別コード)やユーザ認証情報(パスワードなど)が発行されているユーザである。」

(イ)「【図2】



(ウ)「【0025】
ライブ閲覧者20は、ライブ配信サーバ100から配信されるライブを閲覧し、チャットに参加するクライアントであり、ライブ閲覧者20のライブ閲覧者端末21には、以下の機能(又は装置)が備えられている。
・通信装置22は、ライブ閲覧者端末21を通信ネットワーク1と接続するための装置である。
・メディア再生プレイヤー23は、ライブ配信される映像や音声などを再生する処理部であり、専用のソフトウェアにより再生が行われる。例えば、RealPlayer(登録商標)などがある。
・チャット入力機能24は、メディア再生プレイヤー23によりマルチメディアコンテンツを再生中に、そのコンテンツに対して、チャットの情報を入力するための機能である。
・入力装置25は、キーボード、マウス等の入力装置である。
・表示装置26は、液晶やCRTなどのディスプレイ装置である。」

(エ)「【0034】
また、ライブ配信サーバ100内の各データベースには以下のデータが格納される。なお、図3に各データベースのデータ構成例を示す。
・ライブデータデータベース(ライブデータDB)111は、「ライブを保存する」を選択した場合にコンテンツを保存しておくデータベースである。格納データは、「ライブID」、「レイアウトID」、「コンテンツ情報(ライブデータファイル名、画像データファイル名、チャット情報ID)」などである。
【0035】
・レイアウトデータベース(レイアウトDB)112は、各ライブのレイアウトがどのような属性を持っているかを保持しておくデータベースである。格納データは、「ライブID」、「レイアウトID」、「属性ID」、「属性内容(チャット、静止画、ライブ動画)」等である。
【0036】
・チャット情報データベース(チャット情報DB)113は、ライブ閲覧者端末21のチャット入力機能24によって行われたチャット情報のログを記録しておくデータベースである。格納データは、「ライブID」、「発言者」、「発言時間(ライブ開始からの差分時間)」、「ライブ上での発言場所(レイアウトIDまたは、XY座標での表記)」、「発言及びその他の情報(色、スクロール方法等)」等である。」

(オ)「【0044】
(2)ライブ閲覧者によるレイアウトの選択とチャット入力手順
また、図5は、図2に例示するライブ配信システムにおける「ライブ閲覧者によるレイアウトの選択とチャット入力手順の流れ」を示す図であり、以下、図5を基に、その手順の流れについて説明する。
ライブを閲覧したいユーザ(ライブ閲覧者20)は、ライブ閲覧者端末21かライブ配信サーバ100のライブ配信ページにログインし、閲覧したいコンテンツを選択しているものとする(ステップS21〜ステップS24)。
▲1▼ コンテンツアクセス管理処理部104は、閲覧管理DB114を参照して、コンテンツを選択したユーザ(ライブ閲覧者20)のチェックを行い、アクセス権限があるレイアウト(領域)を確認する(ステップS25)。
【0045】
▲2▼ コンテンツアクセス管理処理部104は、▲1▼で確認したレイアウト(領域)をライブ閲覧者端末21に表示し、ライブ閲覧者20に閲覧するレイアウトを選択させる(ステップS26、S27)。
【0046】
▲3▼ライブ配信サーバ100では、ライブ閲覧者20が表示したいと選択したレイアウト(領域)のデータのみを、ライブ閲覧者端末21に配信する(ステップS28、S29)。この場合、同期マルチメディア言語ファイル生成処理部108は、ライブ閲覧者20が選択指定したレイアウトを持つ同期マルチメディア言語ファイルを生成し、ライブ閲覧者端末21のメディア再生プレイヤー23に向けて送信する。
【0047】
▲4▼コンテンツアクセス管理処理部104は、ライブ閲覧者20がチャット領域にアクセスし、ライブ閲覧者端末21からチャット情報格納処理部105にチャット入力情報が送られてきた場合に(ステップS30、S31)、ライブ閲覧者20がチャット情報を入力した領域(レイアウト)がチャット可能な領域であるかどうか判断し(ステップS32)、チャット情報格納処理部105に送信する。
【0048】
▲5▼チャット情報格納処理部105はコンテンツアクセス管理処理部104によりチャットの許可が得られた場合、ライブ閲覧者端末21のチャット入力機能24から入力されたチャット情報を受け取る(ステップS33)。許可が得られなかった場合は、チャット入力情報の受け取りを拒否する(ステップS34)。
【0049】
▲6▼チャット情報が受け取られると、受信したチャット入力データをライブ映像データに付加して、ライブ閲覧者20の端末21にリアルタイムで配信する(ステップS35、S36)。
【0050】
また、図9は、チャット入力画面の例を示す図であり、チャットに参加するクライアント(例えば、ライブ閲覧者20)が、ライブ閲覧者端末21内のチャット入力機能24によりチャットを行う場合の例を示す図である。
▲1▼あるチャット参加者が、Webブラウザなどのチャット入力用のアプリケーション(AP)画面a中で、レイアウト(領域2)を指定して、チャット文「この人って誰?」を入力する。
▲2▼配信映像b中に、チャット文「この人って誰?」が表示される。
▲3▼別のチャット参加者がチャット入力用のアプリケーション(AP)画面c中で、レイアウト(領域4)を指定して、チャット文「松井じゃない?」を入力する。
▲4▼配信映像b中に、チャット文「松井じゃない?」が表示される。」

(カ)「【図5】



(キ)「【図9】



(ク)「【0060】
[放送したライブチャットの保存と検索]
ライブ放送とコミュニケーション情報(チャットなど)の動画配信は、リアルタイムでライブ放送として配信するほかに、コミュニケーション情報(チャットなど)の入力も含むオンデマンドのビデオクリップとして保存することが可能である。
【0061】
図8は、ライブ放送時のチャットの保存と閲覧の手順を示す図であり、ライブ放送時のチャットの保存と閲覧は以下のようにして行われる。
(1)ライブ配信が開始され(ステップS61〜S63)、ライブ閲覧者端末21のチャット入力機能24によりレイアウトの選択とチャット入力による発言があった場合(ステップS64)、選択されたレイアウトがチャット入力可能な領域であるかが確認される(ステップS65)。
【0062】
(2)チャット入力が可能な領域である場合は、ライブデータとチャット入力情報とを同期させて、リアルタイムで配信する(ステップS66、67)。
(3)また、チャット情報格納処理部105はチャット情報DB113に、「発言のあったライブ放送のライブID」、「発言時刻(ライブの開始時刻からの差分)」、「発言者のユーザID」、「発言場所(領域)」、「発言した内容」などを保存する(ステップS68)。
【0063】
(4)ライブ終了時に(ステップS69)、同期マルチメディア言語ファイル生成処理部108は、生成したファイル(ライブ配信データ)をライブデータDB111に保存する(ステップS70)。
【0064】
(5)また、ライブデータDB111に保存されたライブデータは、ユーザにより後で検索できるように格納される。ライブ閲覧者端末21からライブデータDB111の閲覧(検索)要求があった場合は(ステップS71)、ライブデータDB111を検索し、該当するライブデータをオンデマンドで配信する(ステップS72、S73、S74)。
例えば、動画とチャット情報が保存されたライブデータDB111から、「おはよう」などのテキスト文字を検索できるようにし、「おはよう」を含む部分のライブデータをオンデマンドで閲覧できるようにする。」

(ケ)「【図8】



イ 甲第3号証の記載事項について
上記ア(オ)及び(キ)にあるとおり、図9は、チャット入力画面の例を示す図であり、そのうち、a及びcはWebブラウザなどのチャット入力用のアプリケーション(AP)画面であり、bは配信映像(配信画像)である。
そして、図9のbを参照すると、配信映像(配信画像)との説明用の文字の下にはa及びcと同様の形状の2つの領域からなる枠の上側の内部に、「↓この人って誰?」との文字、野球選手等の画像及び「松井じゃないの?」との文字が表示されていることが見て取れる。
ここで、上記ア(ウ)にあるとおり、「チャット入力機能24は、メディア再生プレイヤー23によりマルチメディアコンテンツを再生中に、そのコンテンツに対して、チャットの情報を入力するための機能である」から、図9のa及びcにおいてチャットを入力するレイアウトとして指定可能な領域1〜6が表示されている、図9のbの上側の領域の枠内が配信映像(配信画像)の表示領域であると認められる。
したがって、甲第3号証には、配信映像bが所定の枠内に表示されることが記載されているものと認められる。

また、上記ア(オ)によれば、「↓この人って誰?」とのチャット及び「松井じゃないの?」とのチャットは、それぞれ領域2及び4を指定して入力されており、図9のa及びcにおける領域2及び4の位置と図9のbにおける各チャットの表示位置は一致していることから、甲第3号証には、チャットが指定された領域に基づいて所定の位置に表示されることが記載されているものと認められる。
さらに、図9のa及びcにおける領域1〜6は、いずれも図9のbの配信映像bの表示領域に重畳している。

他方、図9のbにおける各チャットの表示が、図9のa及びcにおける領域2及び4の矩形領域の右側にはみ出していることまでは把握されるものの、いずれも配信映像bの枠を超える範囲までははみ出していない。

ウ 甲第3号証に記載された発明
上記ア(ア)〜(ケ)に摘記した記載事項及びイにおける検討結果から、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているものと認められる。
なお、各構成の符号(3a)〜(3e)は説明のために当審において付したものであり、以下、構成3a〜3eと称する。また、各構成の末尾に、対応する段落番号等を示す。

(甲3発明)
(3a)ライブ配信サーバ100と、クライアントであるライブ配信者10のライブ配信者端末11と、クライアントであるライブ閲覧者20のライブ閲覧者端末21とが通信ネットワーク1を介して接続されて構成されるライブ配信システムにおけるライブ閲覧者端末21であって、【0023】

(3b)ライブ閲覧者20は、ライブ配信サーバ100から配信されるライブを閲覧し、チャットに参加するクライアントであり、ライブ閲覧者20のライブ閲覧者端末21には、以下の機能(又は装置)が備えられており、【0025】
(3b1)通信装置22は、ライブ閲覧者端末21を通信ネットワーク1と接続するための装置であり、【0025】
(3b2)メディア再生プレイヤー23は、ライブ配信される映像や音声などを再生する処理部であり、専用のソフトウェアにより再生が行われ、【0025】
(3b3)チャット入力機能24は、メディア再生プレイヤー23によりマルチメディアコンテンツを再生中に、そのコンテンツに対して、チャットの情報を入力するための機能であり、【0025】
(3b4)表示装置26は、液晶やCRTなどのディスプレイ装置であり、【0025】

(3c)ライブ配信サーバ100内の各データベースには以下のデータが格納され、各データベースのデータ構成例は、【0034】
(3c1)ライブデータデータベース(ライブデータDB)111は、「ライブを保存する」を選択した場合にコンテンツを保存しておくデータベースであり、格納データは、「ライブID」、「レイアウトID」、「コンテンツ情報(ライブデータファイル名、画像データファイル名、チャット情報ID)」などであり、【0034】
(3c2)レイアウトデータベース(レイアウトDB)112は、各ライブのレイアウトがどのような属性を持っているかを保持しておくデータベースであり、格納データは、「ライブID」、「レイアウトID」、「属性ID」、「属性内容(チャット、静止画、ライブ動画)」等であり、【0035】
(3c3)チャット情報データベース(チャット情報DB)113は、ライブ閲覧者端末21のチャット入力機能24によって行われたチャット情報のログを記録しておくデータベースであり、格納データは、「ライブID」、「発言者」、「発言時間(ライブ開始からの差分時間)」、「ライブ上での発言場所(レイアウトIDまたは、XY座標での表記)」、「発言及びその他の情報(色、スクロール方法等)」等であり、【0036】

(3d)ライブ配信システムにおける「ライブ閲覧者によるレイアウトの選択とチャット入力手順の流れ」は、【0044】
(3d1)ライブ配信サーバ100では、チャット情報が受け取られると、受信したチャット入力データをライブ映像データに付加して、ライブ閲覧者20の端末21にリアルタイムで配信し(ステップS35、S36)【0046】、【0049】
(3d2)チャットに参加するクライアント(例えば、ライブ閲覧者20)が、ライブ閲覧者端末21内のチャット入力機能24によりチャットを行う場合、【0050】
(3d3)あるチャット参加者が、Webブラウザなどのチャット入力用のアプリケーション(AP)画面a中で、レイアウト(領域2)を指定して、チャット文「この人って誰?」を入力し、【0050】
(3d4)配信映像b中に、チャット文「この人って誰?」が表示され、【0050】
(3d5)別のチャット参加者がチャット入力用のアプリケーション(AP)画面c中で、レイアウト(領域4)を指定して、チャット文「松井じゃない?」を入力し、【0050】
(3d6)配信映像b中に、チャット文「松井じゃない?」が表示され、【0050】
(3d7)配信映像bが所定の枠内に表示され、チャットが指定された領域に基づいて所定の位置に表示され、領域1〜6はいずれも配信映像bの表示領域に重畳しており、各チャットの表示は、領域2及び4の矩形領域の右側にはみ出していることまでは把握されるものの、いずれも配信映像bの枠を超える範囲までははみ出しておらず、【上記イ】

(3e)ライブデータDB111に保存されたライブデータは、ユーザにより後で検索できるように格納され、ライブ閲覧者端末21からライブデータDB111の閲覧(検索)要求があった場合は(ステップS71)、ライブデータDB111を検索し、該当するライブデータがオンデマンドで配信される(ステップS72、S73、S74)、【0064】

(3a)ライブ閲覧者端末21。

(4)甲第4号証について
ア 甲第4号証の記載事項
甲第4号証(特開2003−111054号公報)には、「動画配信システム」(発明の名称)として、図面と共に、以下の記載がある(下線は当審が付与した。)。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、動画コンテンツを配信する動画配信システムに係り、特に、動動画コンテンツとその動画の再生に伴って所定のデータコンテンツへアクセスするためのアクセス情報とを放送情報として送信するとともに、前記動画の再生に伴ってアクセス情報に基づき要求されたデータコンテンツを通信データとして送信するサービスを行うサーバおよびそのサービスを受ける情報端末装置からなる動画配信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、デジタル放送技術および通信技術の発達により、従来の放送局からユーザへの一方的な情報伝達のみならず、ユーザからも情報を発信できる双方向の情報伝達が行える環境が整ってきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような背景において、ユーザの情報端末装置に対して、動画コンテンツを放送により配信するとともに、それに関連したデータコンテンツをネットワーク経由で配信するサービスが検討されている。ここでいうデータコンテンツとは、テキストデータや静止画像データ等である。
【0004】このようなサービスでは、情報端末装置のモニタ画面(表示画面)内に動画コンテンツとデータコンテンツとを同時に表示する必要がある。例えば、動画の再生に伴って、その場面に応じたテキスト情報を自動的に画面に表示するなどの用途が考えられる。」

(イ)「【0027】図1に、本発明の一実施の形態に係る動画配信システムの概略構成を示す。この動画配信システムは、サーバ100と情報端末装置200とにより構成される。情報端末装置200は図の例では携帯電話端末を例として説明する。
【0028】サーバ100は、大別して二つの記憶部110,120、およびこれらにそれぞれ対応する二つの通信部130,140を有する。記憶部110は、放送対象の動画コンテンツ112およびこれとともに配信する表示関連コマンド114を格納している。動画コンテンツ112および表示関連コマンド114は、通信部130を介して、放送設備150へ送信される。放送設備150は、地上波、衛星波のいずれの放送設備であってもよい。動画コンテンツ112は、多チャンネル化等を考慮すればデジタル放送であることが好ましいが、アナログ放送を排除するものではない。アナログ放送の場合には、デジタルデータが放送波に混在して送信される。
【0029】この放送された動画コンテンツおよび表示関連コマンドは、情報端末装置200の放送受信手段により受信される。表示関連コマンドには、後述するデータコンテンツ再生スケジュール情報および表示態様コマンドを含む。
【0030】一方、サーバ100内の他方の記憶部120は、HTML(Hyper Text MarkupLanguage)を代表とするマークアップ言語で記述されたデータコンテンツを格納する部位である。このデータコンテンツは、インターネットのホームページのデータに対応するものであり、代表的にはテキストや静止画を含み、場合によっては音声などのデータを含みうる。ここでは、情報端末装置200のモニタ画面280の縦長/横長の別に応じて、実質的に同じ内容の縦長用と横長用の二つのデータコンテンツ122,124を用意している。両者は、単にテキストの1行当たりの文字数が異なるだけでなく、実質的な内容が変わらない範囲で文章の表現を変更したものであってもよい。単に1行当たりの文字数を変更しただけでは、読みやすさが改善されないからである。」

(ウ)「【図1】



(エ)「【0032】図2に示したブロック図により、情報端末装置200の内部構成例を説明する。
・・・
【0035】コマンド解釈エンジン255は、初期的には、デフォルトコマンド222を受けて、動画コンテンツの表示エリアおよびデータコンテンツの表示エリアのサイズや表示態様(重ね合わせ状態、動画エリアの伸縮、コンテンツ間の表示の切替や一方のコンテンツの一時消去等)を定め、その結果をWWWブラウザ260および動画ビューワ265に指示する。例えば、コマンド解釈エンジン255は、動画エリア情報が「アスペクト比保存」を示しているとき、動画のアスペクト比を保存しつつ当該モニタ画面の画面幅に合わせて動画エリアのサイズを決定する。本実施の形態ではモニタ画面の原点位置は画面の左上端の位置であり、動画エリアの位置はモニタ画面の原点位置に動画エリアの左上端を合わせるように設定される。動画エリア情報が特定の動画エリアサイズを指定している場合には、そのサイズ情報(幅wおよび高さh)を動画ビューワ265に与える。すなわち、動画ビューワ265は、指定されたサイズに合うように動画エリア(およびその中に表示する動画)を伸縮する機能を有する。動画エリア情報がアスペクト比保存を指定している場合には、原則的に、その動画エリアサイズは当該モニタ画面に収納される最大サイズに設定される。
【0036】コマンド解釈エンジン255は、また、後に詳述するような、放送により受信されたコマンド内の時刻情報およびURL(Universal Resource Locator)情報(データのアクセス情報)からなるデータコンテンツ再生スケジュール情報に基づいて、動画再生に伴って逐次所定のタイミングでURL情報をWWWブラウザ260に与える。これに加えて、デフォルトの表示態様を、放送により受信されたコマンドに基づいて更新する。これにより、コンテンツ作製者側では、個々の動画に応じて、または、1つの動画内でも個々の場面に応じて相応しいデータコンテンツおよび表示態様を指定することができる。また、コマンド解釈エンジン255は操作パネル210のキー群212(テンキーや矢印キー、スイッチ等)からのユーザ指示または姿勢センサ232の出力を受けて、表示態様を更新することもできる。姿勢センサ232は本発明に必須のものではないが、これを設ければ携帯端末の90°回転の有無を自動的に検知し、モニタ画面の表示を切り替えることができる。これは特に、通常縦長のモニタ画面の場合に、動画エリアを拡大できる点で有意義である。姿勢センサ232としては任意の公知のものを利用できる。例えば、重力に従う光遮蔽部材と光インタラプタ(いずれも図示せず)の組み合わせを利用することができる。この姿勢センサ232は少なくとも動画の表示時に連続的にまたは周期的(例えば数100m秒毎)に作動させれば足りる。
【0037】WWWブラウザ260は、通信部245を介してネットワーク170に接続され、所定のプロトコル(例えばhttp: hyper text transfer protocol)に従って、指定されたURLに存在するデータである例えばHTML(Hyper Text Maukup Language)文書を要求し、そのデータを受信して表示内容を組み立てる機能を有する。また、本実施の形態では、前述したように、そのデータを表示する画面(データエリアまたはブラウザ画面という)の位置やサイズの情報をコマンド解釈エンジン255から受信して、そのデータエリアに対応する表示メモリ272内位置に表示データを展開する機能を有する。
【0038】表示メモリ272は、本実施の形態では、動画コンテンツとデータコンテンツとで展開するメモリプレーンを別としている。これにより、両コンテンツの重ね合わせや一方の一時表示停止などの制御が容易となる。(但し、本発明は両コンテンツを同一のメモリプレーンに書き込む場合を排除するものではない。)表示制御部270は、表示メモリ272の内容を読み出してモニタ(ディスプレイ)280へ表示データ信号および表示制御信号を出力し、目的の画面を表示させる。一方の表示プレーンの非表示などの制御はコマンド解釈エンジン255から表示制御部270を直接制御することで行うことができる。」

(オ)「【図2】



(カ)「【0040】ここで、図3により、動画エリアとデータエリアの重ね合わせの態様について説明する。本実施の形態では、図3(a)は縦長画面の場合の「タイル」表示状態を示している。タイル表示は、両エリアを重ね合わせるのではなく、互いに重複しないように隣接配置するものである。すなわち、図の例では動画エリアは動画のアスペクト比を保存した状態でモニタ画面に収まる最大サイズとし、データエリアはその残りの矩形エリアとしている。具体的には、データエリアの左上座標は動画エリアの左下座標に一致し、データエリアの右下座標はモニタ画面の右下座標に一致する。
【0041】データコンテンツがデータエリアに収納しきれない場合には、ユーザのキー操作に応じてデータ画像のスクロールが可能である。本実施の形態においてデータエリアが動画エリアに隣接する方向(動画エリアの右側か下側か)は、モニタ画面が縦長の場合には動画エリアの下側、モニタ画面が横長の場合には動画エリアの右側である。但し、サーバ側から隣接する方向をタイルコマンドとともに指示し、それに応じるかどうかは端末側で決定するようにしてもよい。
【0042】図3(c)に示すように、動画エリアが具体的なサイズで指定された場合にも、データエリアはその残りの空き領域内の最大矩形エリアとなる。動画エリアがサイズ指定される場合のサイズは通常、比較的小さいサイズで指定されることが想定される。但し、指定サイズがモニタ画面に収納されない場合にはモニタ画面に収納されるように自動的に動画エリアサイズを縮小するようにすることが好ましい。
【0043】図3(b)は両エリアを重ね合わせる「オーバレイ」表示状態を示している。この例では、モニタ画面全体をデータエリアとし、これを動画エリアに重ねている。この場合、データコンテンツと動画コンテンツが同時に見えるように、アルファブレンディングのような表示処理操作を施すことが好ましい。
【0044】図3(d)は動画エリアが具体的なサイズで指定された場合のオーバレイ状態を示している。この場合も、モニタ画面全体をデータエリアとすることに代わりはない。
【0045】ところで、通常、動画はテレビ画面に相当した4:3や16:9のような横長であり、これを横長画面に最大収容した場合には、図3(f)に示すように、モニタ画面内の動画エリアの残りの空き領域はごく狭いエリアとなる。(図では動画エリアの右側に空き領域は発生する場合を示したが、モニタ画面および動画エリアのそれぞれの縦横比によって、空き領域が動画エリアの下側に生じる場合もありうる。)したがって、このような場合は、指示された重ね合わせ態様に関わらず、強制的にオーバレイ表示状態とするようにしてもよい。これに対して、横長画面の場合でも、図3(e)に示すように、比較的小サイズの動画エリアが指定された場合であって、その残りのエリア内に所定の横幅以上の矩形エリアが利用できる場合には、当該矩形エリアをデータエリアとすることができる。」

(キ)「【図3】



(ク)「【0050】図5は、縦長状態で動画コンテンツとして映画を表示しているときに、登場人物のプロフィールをデータコンテンツとして表示している場面を示している。図5(a)はタイル表示状態を示している。このとき、データコンテンツは縦長用をサーバに要求している。この状態から、ユーザのキー(またはスイッチ)の操作による指示またはセンサ出力の変化に応じてモニタ画面が90°回転したとき、モニタ画面全体は横長になる。この例では、アスペクト比保存状態を示しており、動画エリアはモニタ画面に合わせて回転および拡大されている。当然ながら、動画エリアの回転および拡大に合わせてその中に表示される動画も同様に回転・拡大される。図5(b)の例では、動画エリアの残りの空き領域の横幅が小さいためにタイル表示ではデータエリアの横幅が十分ではなく、強制的にタイル表示状態からオーバレイ表示状態に切り替えた状況を示している。図5(c)のオーバレイ表示状態ではデータエリアの横幅はモニタ画面の長辺一杯を利用できるので、横長用のデータコンテンツを選択している。図5(a)での重ね合わせ状態がオーバレイ表示の場合にも、そのモニタ画面回転時は図5(b)のようになる。」

(ケ)「【図5】



イ 甲第4号証に記載された技術
上記ア(ア)〜(ケ)に摘記した記載事項から、甲第4号証には、次の技術(以下、「甲4技術」という。)が記載されているものと認められる。
なお、各構成の符号(4a)〜(4f2)は説明のために当審において付したものであり、以下、構成4a〜4f2と称する。また、各構成の末尾に、対応する段落番号を示す。

(甲4技術)
(4a)動画コンテンツを放送により配信するとともに、それに関連したデータコンテンツをネットワーク経由で配信する動画配信システムに関する技術であって、【0001】、【0003】
(4a1)動画配信システムは、サーバ100と情報端末装置200とにより構成され、【0027】

(4b1)サーバ100において、動画コンテンツ112および表示関連コマンド114は、通信部130を介して、放送設備150へ送信され、【0028】
(4b2)放送された動画コンテンツおよび表示関連コマンドは、情報端末装置200の放送受信手段により受信され、【0029】

(4c1)サーバ100内の記憶部120には、HTML(Hyper Text MarkupLanguage)を代表とするマークアップ言語で記述されたデータコンテンツが格納され、【0030】
(4c2)データコンテンツは、インターネットのホームページのデータに対応するものであり、代表的にはテキストを含み、【0030】

(4d1)情報端末装置200の内部構成では、コマンド解釈エンジン255は、初期的には、デフォルトコマンド222を受けて、動画コンテンツの表示エリアおよびデータコンテンツの表示エリアのサイズや表示態様(重ね合わせ状態、動画エリアの伸縮、コンテンツ間の表示の切替や一方のコンテンツの一時消去等)を定め、その結果をWWWブラウザ260および動画ビューワ265に指示し、【0032】、【0035】
(4d2)コマンド解釈エンジン255は、放送により受信されたコマンド内の時刻情報およびURL(Universal Resource Locator)情報(データのアクセス情報)からなるデータコンテンツ再生スケジュール情報に基づいて、動画再生に伴って逐次所定のタイミングでURL情報をWWWブラウザ260に与え、これに加えて、デフォルトの表示態様を、放送により受信されたコマンドに基づいて更新し、【0036】
(4d3)コマンド解釈エンジン255は姿勢センサ232の出力を受けて、表示態様を更新することもでき、【0036】
(4d4)表示制御部270は、表示メモリ272の内容を読み出してモニタ(ディスプレイ)280へ表示データ信号および表示制御信号を出力し、目的の画面を表示させ、【0038】

(4e)動画エリアとデータエリアの重ね合わせの態様は、【0040】
(4e1)両エリアを重ね合わせる「オーバレイ」表示状態であって、モニタ画面全体をデータエリアとし、これを動画エリアに重ねてもよく、【0043】
(4e2)通常、動画はテレビ画面に相当した4:3や16:9のような横長であり、これを横長画面に最大収容した場合には、モニタ画面内の動画エリアの残りの空き領域はごく狭いエリアとなり、したがって、このような場合は、指示された重ね合わせ態様に関わらず、強制的にオーバレイ表示状態とするようにしてもよく、【0045】
(4e3)オーバレイ表示状態では、データエリアの一部が動画エリアに重なり、他の一部が動画エリアの外側となり、【図3】

(4f1)縦長状態で動画コンテンツとして映画を表示しているときに、登場人物のプロフィールをデータコンテンツとして表示している場面は、タイル表示状態であって、【0050】
(4f2)横長状態では、動画エリアの残りの空き領域の横幅が小さいためにタイル表示ではデータエリアの横幅が十分ではなく、強制的にタイル表示状態からオーバレイ表示状態に切り替えた状況であってもよく、データエリアの一部が動画エリアに重なり、他の一部が動画エリアの外側となる、【0050】、【図5】

(4a)動画配信システムに関する技術。

(5)甲第5号証について
ア 甲第5号証の記載事項
甲第5号証(国際公開第2006/059779号)には、「符号化装置および方法、復号装置および方法、プログラム、記録媒体、ならびに、データ構造」(発明の名称)として、図面と共に、以下の記載がある(下線は当審が付与した。)。

(ア)「技術分野
本発明は、符号化装置および方法、復号装置および方法、プログラム、記録媒体、ならびに、データ構造に関し、主映像のアスペクト比とは独立したアスペクト比で、副映像を表示することができるようにした符号化装置および方法、復号装置および方法、プログラム、記録媒体、ならびに、データ構造に関する。
背景技術
コンテンツの映像(以下、適宜、主映像と称する)に、字幕などの 主映像を補足等する理由で表示される映像(以下、適宜、副映像と称 する)を重ね合わせて表示されることがある。」(第1ページ第5〜15行)

(イ)「また、第8図のフローチャートは、ビデオデコーダ66の一例の処理を概略的に示す。」(第15ページ第2〜4行)

(ウ)「 先ず、第8図のフローチャートを用いてビデオデコーダ66における一例の表示処理を概略的に説明する。」(第15ページ第5〜6行)

(エ)「ステップS10で、多重化分離部71で分離された主映像の符号化データが主映像復号部72で復号化されると共に、符号化時に組み込まれた主映像のアスペクト比等のデータが抽出され、主映像画枠サイズ変換部74で主映像および表示装置のアスペクト比に基づき画枠サイズが変換される。ステップS11で、多重化分離部71で分離された副映像の符号化データが副映像復号部73で復号化されると共に、符号化時に組み込まれた副映像のアスペクト比等のデータが抽出され、副映像画枠サイズ変換部75で副映像および表示装置のアスペクト比に基づき画枠サイズが変換される。そして、次のステップS12で、加算器76により、表示装置のアスペクト比に合わせて決められた主映像に副映像が重ね合わされ、この主映像に副映像が重ね合わされた映像が表示される。」(第15ページ第6〜17行)

(オ)「 主映像画枠サイズ変換部74は、ビデオ出力端子68に接続されている表示装置のアスペクト比と、主映像復号部72から供給された主映像のアスペクト比に基づいて、出力する主映像の画枠サイズを変換し、加算器76に供給する。」(第16ページ第12〜15行)

(カ)「 例えば、表示装置のアスペクト比が16:9である場合において、主映像のアスペクト比が4:3であるときには、主映像画枠サイズ変換部74は、主映像を、横方向(水平方向)に縮小するとともに、左右に黒色を表示させるデータを付加して出力する。」(第16ページ第16〜19行)

(キ)「 次に、第9図のフローチャートを参照して、ビデオデコーダ66の副映像画枠サイズ変換部75の動作を説明する。」(第17ページ第10〜11行)

(ク)「 ステップS21において、副映像画枠サイズ変換部75は、副映像復号部73から、いま副映像画枠サイズ変換部75に供給されている副映像のアスペクト比を示すフラグを取得する。」(第17ページ第12〜14行)

(ケ)「 ステップS22において、副映像画枠サイズ変換部75は、表示装置のアスペクト比が4:3(例えば、360×270)であるか16:9(例えば、480×270)であるかを判定し、」(第17ページ第15〜17行)

(コ)「 第9図に戻りステップS22で、表示装置のアスペクト比が16:9であると判定された場合、ステップS24に進み、副映像画枠サイズ変換部75は、ステップS21で取得したフラグが、副映像のアスペクト比が16:9および4:3のいずれでもよいことを示すフラグであるか、また16:9または4:3のいずれか1つのアスペクト比を示すフラグであるかを判定し、いずれか1つのアスペクト比を示すフラグであると判定した場合、ステップS25に進む。」(第18ページ第26行〜第19ページ第6行)

(サ)「 ステップS25において、副映像画枠サイズ変換部75は、ステップS21で取得したフラグが、副映像のアスペクト比が16:9であることを示すフラグかまたは4:3であることを示すフラグかを判定し、16:9であることを示すフラグであると判定した場合、ステップS26に進む。」(第19ページ第7〜11行)

(シ)「 ステップS26において、副映像画枠サイズ変換部75は、字幕の映像の720×480の画枠サイズを、16:9のアスペクト比に合うように変換し(ピクセルアスペクト比=40:33)、その結果得られた字幕データを、加算器76に出力する。」(第19ページ第12〜15行)

(ス)「 すなわち副映像は、主映像のアスペクト比に関係なく、16:9のアスペクト比で表示される。」(第19ページ第16〜17行)

(セ)「 主映像のアスペクト比が4:3である場合には、第19図に示すように、横方向に縮小されて左右に黒色を表示させるデータが付加された主映像に、16:9のアスペクト比の字幕の映像が重ね合わされて表示される。」(第19ページ第18〜21行)

(ソ)「



(タ)「



(チ)「



イ 甲第5号証に記載された技術
上記ア(ア)〜(チ)に摘記した記載事項から、甲第5号証には、次の技術(以下、「甲5技術」という。)が記載されているものと認められる。
なお、各構成の符号(5a)〜(5c6)は説明のために当審において付したものであり、以下、構成5a〜5c6と称する。また、各構成の末尾に、対応するページ及び行の番号を示す。

(甲5技術)
(5a)コンテンツの映像である主映像のアスペクト比とは独立したアスペクト比で、字幕などの主映像を補足等する理由で表示される映像である副映像を表示することができるようにした復号装置に関する技術であって、(第1ページ第5〜15行)

(5b)ビデオデコーダ66の一例の処理は、(第15ページ第2〜4行)
(5b1)ステップS10で、多重化分離部71で分離された主映像の符号化データが主映像復号部72で復号化されると共に、符号化時に組み込まれた主映像のアスペクト比等のデータが抽出され、主映像画枠サイズ変換部74で主映像および表示装置のアスペクト比に基づき画枠サイズが変換され、ステップS11で、多重化分離部71で分離された副映像の符号化データが副映像復号部73で復号化されると共に、符号化時に組み込まれた副映像のアスペクト比等のデータが抽出され、副映像画枠サイズ変換部75で副映像および表示装置のアスペクト比に基づき画枠サイズが変換され、ステップ12で、加算器76により、表示装置のアスペクト比に合わせて決められた主映像に副映像が重ね合わされ、この主映像に副映像が重ね合わされた映像が表示され、(第15ページ第6〜17行)
(5b2)主映像画枠サイズ変換部74は、ビデオ出力端子68に接続されている表示装置のアスペクト比と、主映像復号部72から供給された主映像のアスペクト比に基づいて、出力する主映像の画枠サイズを変換し、加算器76に供給し、(第16ページ第12〜15行)
(5b3)例えば、表示装置のアスペクト比が16:9である場合において、主映像のアスペクト比が4:3であるときには、主映像画枠サイズ変換部74は、主映像を、横方向(水平方向)に縮小するとともに、左右に黒色を表示させるデータを付加して出力し、(第16ページ第16〜19行)

(5c)ビデオデコーダ66の副映像画枠サイズ変換部75の動作は、(第17ページ第10〜11行)
(5c1)ステップS21において、副映像画枠サイズ変換部75は、副映像復号部73から、いま副映像画枠サイズ変換部75に供給されている副映像のアスペクト比を示すフラグを取得し、(第17ページ第12〜14行)
(5c2)ステップS22において、副映像画枠サイズ変換部75は、表示装置のアスペクト比が4:3(例えば、360×270)であるか16:9(例えば、480×270)であるかを判定し、(第17ページ第15〜17行)
(5c3)表示装置のアスペクト比が16:9であると判定された場合、ステップS24に進み、副映像画枠サイズ変換部75は、ステップS21で取得したフラグが、副映像のアスペクト比が16:9および4:3のいずれでもよいことを示すフラグであるか、また16:9または4:3のいずれか1つのアスペクト比を示すフラグであるかを判定し、いずれか1つのアスペクト比を示すフラグであると判定した場合、ステップS25に進み、(第18ページ第26行〜第19ページ第6行)
(5c4)ステップS25において、副映像画枠サイズ変換部75は、ステップS21で取得したフラグが、副映像のアスペクト比が16:9であることを示すフラグかまたは4:3であることを示すフラグかを判定し、16:9であることを示すフラグであると判定した場合、ステップS26に進み、(第19ページ第7〜11行)
(5c5)ステップS26において、副映像画枠サイズ変換部75は、字幕の映像の720×480の画枠サイズを、16:9のアスペクト比に合うように変換し(ピクセルアスペクト比=40:33)、その結果得られた字幕データを、加算器76に出力し、(第19ページ第12〜15行)
(5c6)主映像のアスペクト比が4:3である場合には、横方向に縮小されて左右に黒色を表示させるデータが付加された主映像に、16:9のアスペクト比の字幕の映像が重ね合わされて表示される、(第19ページ第18〜21行)

(5a)復号装置に関する技術。

(6)甲第6号証について
甲第6号証の第322〜329ページには、「Sample 11-1 テキストフィールドの文字を横に流す」の章に、ActionScriptにより、テキストフィールドの文字を横にスクロールしてテロップを作る技術が記載されている。

(7)甲第7号証について
甲第7号証の第168ページには、「Final Cut Pro」において、テキストが画面内を横に流れる技術及び上下に流れる技術が記載されている。

(8)甲第8号証について
甲第8号証の第112〜118ページには、ActionScriptにより、ムービーを再生すると、「ACTIONSCRIPT test」及び「0123456789」とのテキストが水平方向に流れる技術が記載されている。

(9)甲第9号証について
甲第9号証の第111〜112ページには、SMIL2.0をサポートしたRealSystemのRealTextにより、テキストを縦方向にスクロールさせる技術が記載されている。

(10)甲第10号証について
甲第10号証の第30〜35ページには、Flash MXにおいて、テキストをスライドインさせる技術が記載されている。

(11)甲第11号証について
甲第11号証の第1〜2ページには、デジタルコンテンツの配信・流通方法がダウンロードとストリーミングに大別されることが記載されている。

(12)甲第12号証について
甲第12号証の明細書の段落【0003】には、先行技術文献が列記され、フロントページの続きの参考文献欄には、参考文献が列記されている。
また、先行技術文献には、甲第4号証(特開2003−111054号公報)が【特許文献2】として含まれ、参考文献には、甲第1号証(特開2004−193979号公報)が含まれている。

(13)甲第13号証について
甲第13号証の第120〜121ページには、「Web 2.0 とは何か」との章において、「ネット上の不特定多数の人々(や企業)を、受動的なサービス享受者ではなく能動的な表現者と認めて積極的に巻き込んでいくための技術やサービス開発姿勢」との定義が記載されている。

(14)甲第14号証について
甲第14号証の第10〜11ページには、「そもそもWeb2.0って何?」との章において、Web2.0の解説が記載されている。
また、第20〜21ページには、「多くのユーザーがウェブに参加」との章において、一般ユーザーがウェブで情報を発信し始めたことが記載されている。
さらに、第34〜35ページには、「確かにウェブで変化は起こっている」との章において、「ウェブをとりまく主な変化」が記載されている。

(15)甲第15号証について
甲第15号証の第40〜41ページには、「Web2.0は、なぜ注目されるのか?」との章において、Web2.0を特徴付けている要素が記載されている。
また、第90〜93ページには、「ミクシィはなぜ、Web2.0なのか?」との章において、ミクシィが「ユーザー参加のアーキテクチャ」を採用していることが記載されている。

(16)甲第16号証について
甲第16号証の第45〜53ページには、「マスメディアからCGMへ」との章において、CGM(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア)の解説が記載されている。
また、第88〜93ページには、「秘蔵の映像コレクションを共有」との章において、ユーチューブへのビデオの公開について記載されている。

(17)甲第17号証について
甲第17号証の第14〜17ページには、「『ウェブ2.0』とは何か?」との章において、ウェブ2.0とは何かが記載されている。
また、第59〜61ページには、「CGMを取り入れて『ウェブ2.0』化を進めよう」との章において、CGMについて記載されている。

(18)甲第18号証について
甲第18号証の第10〜13ページには、Web2.0とは何か及びその特徴が記載されている。
また、第32〜35ページには、CGMについて記載されている。

(19)甲第19号証について
第19号証の第2〜3、8〜13、42〜43及び72〜73ページには、Web2.0とは何かが記載されている。

(20)甲第20号証について
甲第20号証には、「ニコニコ動画 開発者ブログ」として、「もともとニコニコ動画のプロジェクトは社内ではパケラジ2.0あるいはネットライブと呼ばれている企画であり、ネット上でどうやってユーザにライブ感覚を共有させるのかというのがテーマでした。」との記載がある。

(21)甲第21号証について
甲第21号証は、本件特許に関する特許侵害差止等請求事件(平成30年(ネ)第10077号)の控訴理由書であり、その第13ページ第25行〜第14ページ第7行には、「むしろ,本件明細書1には,本件発明1における動画について,『ストリーミング配信』されること(段落0014,0025),『WWWシステムを利用している場合』,『インターネット等のネットワーク…を介してプログラムを送信する』(段落0059)など,ネットワークを介して動画の配信がなされることが想定されている旨の記載があるところ,そのような動画を表示するための領域のサイズ等については,ユーザが利用する端末のディスプレイのサイズ,解像度,動画表示用のアプリケーションの仕様や設定等によって様々であり得ることは,当業者にとって技術常識として当然に把握される事項である。」との記載がある。

(22)甲第22号証について
甲第22号証には、「文字放送特殊再生装置及びテレテキスト放送特殊再生装置」の発明が記載され、その段落【0059】には、「(6)前記文字放送番組をワイドアスペクトモニタにて文字放送が重畳されているテレビ放送とは違う映像に表示する場合、該映像がシネスコサイズ等で字幕があり、字幕移動機能で字幕が移動して前記スクロール表示位置と重なり合う場合、字幕位置を検出する字幕位置検出部と、該字幕位置検出部により検出された該字幕の位置を避けて最適位置に待避する特殊再生表示制御部とを有すること」との記載がある。

(23)甲第23号証について
甲第23号証には、「テレビ多重文字放送の受像機」の発明が記載され、その第4頁左上欄第14〜19行には、「そのため、この発明においては、縦スクロール用の機能を利用して横スクロールの位置を縦方向に変更できるようにしたものである。」及び「従つて、横スクロールの文字とメインの放送の文字とが重なることを避けることができ、両者を見ることができる。」との記載がある。

(24)甲第24号証について
甲第24号証には、「クローズド・キャプションデコーダ」の発明が記載され、その段落【0011】には、「本発明に係るクローズド・キャプションデコーダ及びこれを備えたテレビジョン受信機は、映像信号の垂直帰線期間に重畳されている文字信号を抽出して復号化し、文字信号に含まれる文字情報の表示アドレスを、変換プログラム,カーソル等により受信側で指定された表示アドレスに変換し、変換した表示アドレスに文字情報を表示する。」との記載がある。

(25)甲第25号証について
甲第25号証の第280〜281ページには、HTML文書におけるembedタグ及びobjectタグについて記載されている。
また、第304ページには、Flash Playerについて記載されている。

(26)甲第26号証について
甲第26号証の第55ページ右下の「タグについて」との欄には、objectタグ及びembedタグを用いたhtmlファイルの例が記載されている。

(27)甲第27号証について
甲第27号証の第57ページの「6」の欄には、swfを埋め込むタグが記述された「.html」の例が記載されている。

(28)甲第28号証について
甲第28号証の第65ページには、「クリップと違う縦横比の静止画を取り込んだ場合」との欄において、「クリップのサイズに合わせて、上下または左右に黒い余白が入ります。」及び「上下、左右の比率がクリップの比率と同じ場合は、黒い余白は入らずに、クリップのサイズへ縮小/拡大されて表示されます。」との記載がある。

(29)甲第29号証について
甲第29号証の第82ページには、図4.4と共に「widthとheightを利用すると、動画を表示する領域の幅と高さを指定できます。もし動画の縦横比と、video要素に指定した縦横比が異なっていた場合は、動画の縦横比はそのままに、表示領域内で最大の見え方になるよう調整されます。具体的には、動画の幅もしくは高さがvideo要素のwidthもしくはheightと同じになり、動画が表示されない部分は何も表示されません。言葉で説明するよりも、以下の例を見ていただければ一目瞭然でしょう(わかりやすいよう、背景を黒く塗りつぶしています)(図4.4)。」との記載がある。

(30)甲第30号証について
甲第30号証の第131ページには、液晶ディスプレイのしくみとして、「RGB各色とも見せると光の混合で白色となり,すべて見せない場合は黒色となります.」との記載がある。

(31)甲第31号証について
甲第31号証の第39ページには、デジタルHDビデオカメラレコーダーにおいて、ワイドテレビ/4:3テレビで画面いっぱいに映るように撮影できることが記載されている。

(32)甲第32号証について
甲第32号証の第16ページには、「アナモルフィックとは?」との欄において、「カメラおよびカムコーダーは、映画フィルムまたはビデオを国政する画像を標準4:3アスペクト比で録画します。ビデオコーダーにアスペクト比を標準4:3とワイドスクリーン16:9間で切り換えるスイッチが付いている場合、録画するときに画像の上部と下部をマスクオフ(つまり縦横比を調整しない)する場合があります。」との記載がある。

(33)甲第33号証について
甲第33号証の「やけに四角く感じるのは?」の章には、「IXY DV M5」の撮影モードとして「4:3」及び「16:9」が記載された表が記載されている。

(34)甲第34号証について
甲第34号証には、旋回型3CCDカラービデオカメラ「BRC−300」について、「アスペクト比16:9、4:3の切り換えが可能」であることが記載されている。

(35)甲第35号証について
甲第35号証には、2004年4月7日公開の記事として、「BRC−300」が5月12日に発売されることが記載されている。

2 乙号証について
(1)乙第1号証について
乙第1号証は、本件特許に関して平成29年9月11日に請求された無効審判事件の審決であって、特開2003−111054号公報(本件審判事件における甲第4号証)における「テキスト」が本件特許発明における「コメント」とは一致するものとはいえないとの認定が記載されている。

(2)乙第2号証について
乙第2号証は、本件特許に関して平成29年9月11日に請求された無効審判事件の審決取消訴訟の判決及びその更正決定であって、特開2003−111054号公報(本件審判事件における甲第4号証)における「テキスト」が本件特許発明における「コメント」とは異なるとの認定が記載されている。

第5 当審の判断
1 無効理由1−1について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)構成1Aについて
甲1発明は、構成1d〜1d5にあるとおり、「映像サーバ502へ接続」し、「映像サーバ502からの映像データが届くたびにそれを受け取り、ディスプレイ装置404cなどに表示」する。そして、構成1e1〜1e3にあるとおり、「蓄積映像にアクセスする際のビューワマシンにおける動作の流れも同様」であって、「ディスプレイ装置404cの表示画面の内容は、蓄積映像の再生制御インターフェースを表示」するものであるから、蓄積映像にアクセスする際にも、映像サーバ502へ接続する際と同様の動作によって、再生制御インターフェースを用いてディスプレイ装置404cなどに蓄積映像を表示するものである。
したがって、甲1発明は「動画を再生する表示装置」であるといえる。

また、甲1発明は、構成1d6〜1d7にあるとおり、「注釈サーバ400へ接続」し、「注釈データの受け渡し」をし、構成1e1にあるとおり、「蓄積映像にアクセスする際」には、「映像サーバ502への接続に先立って注釈サーバ400に接続し同期記述を取得」する。
そして、甲1発明が取得する同期記述は、構成1g〜1g1にあるとおり、「2000年10月21日10時30分45秒から2000年10月21日10時45分20秒までの期間(特定の期間)の蓄積映像」について、「音声注釈データを取り出して同期再生することが記述され」たものである。また、構成1i1〜1i2にあるとおり、「同様の手法で、テキスト注釈を付与することも可能」なものであり、「表示画面1800」において「映像表示部(蓄積映像)の領域に重畳して表示」される。

さらに、甲1発明のテキスト注釈は、構成1d6〜1d10及び構成1f〜1f2によって生成される音声注釈と同様に、構成1h1〜1h3にあるとおり、「結婚式映像を見ている傍観者ユーザの祝辞や感想を、適切に再現」するものであるから、本件特許発明1の「コメント」に相当するものといえる。
したがって、甲1発明は「動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置」であるといえる。

よって、本件特許発明1と甲1発明とは、「動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置」である点で一致する。

(イ)構成1Bについて
甲1発明は、上記(ア)において検討したとおり、テキスト注釈(「コメント」に相当。)を蓄積映像(「動画」に相当。)の領域に重畳して表示する。
また、甲1発明は、構成1e1にあるとおり、同期記述を「映像サーバ502への接続に先立って注釈サーバ400に接続し同期記述を取得」する。ここで、技術常識に鑑みれば、甲1発明が取得した同期記述を記憶する記憶部を有することは明らかである。
また、構成1g1にあるとおり、音声注釈が同期記述によって参照されることに鑑みれば、テキスト注釈も同様に同期記述によって参照されることは明らかであり、甲1発明がテキスト注釈、すなわちコメントを記憶する記憶部を有することは明らかである。
したがって、甲1発明は「前記コメントと、同期記述を記憶する記憶部」を有するといえる。

また、構成1g2にあるとおり、「各音声注釈の再生開始時刻は動画の開始からの時刻によって指定」される。
また、構成1d10及び構成1f1にあるとおり、同期記述を生成するに当たって用いられる時刻は、音声データを取得した際の、現在表示している映像のタイムスタンプであるから、構成1g2のaudioタグにおける開始時刻は、音声注釈が付与された時刻を表すといえる。
したがって、甲1発明の音声注釈の再生開始時刻である、同期記述に含まれるaudioタグの開始時刻は、「当該音声注釈が付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間である音声注釈付与時間」であるといえる。
そして、構成1i1にあるとおり、テキスト注釈の付与は音声注釈と同様に行われることから、テキスト注釈に関する同期記述の記述も同様のものになるものと認められる。
したがって、同期記述は、本件特許発明1の「当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報」ということができる。

よって、本件特許発明1と甲1発明とは、「前記コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部」を有する点で一致する。

(ウ)構成1Cについて
甲1発明の構成1i2の映像表示部(蓄積映像)の領域は、蓄積映像を表示する領域であることが明らかである。
したがって、甲1発明は「前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生部」を有するといえる。

よって、本件特許発明1と甲1発明とは、「前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生部」を有する点で一致する。

(エ)構成1Dについて
上記(イ)において検討したとおり、甲1発明は、テキスト注釈の再生について、音声注釈と同様に同期記述のタグの情報に基づいて、情報の取得及び再生を行うものと認められ、その際に、記憶部に記憶されたテキスト注釈及び同期記述を読み出すことは明らかである。
したがって、甲1発明は、「前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントを、表示するコメント表示部」を有するといえる。
また、甲1発明は、構成1i2にあるとおり、「テキスト注釈はふきだしの形態で映像表示部(蓄積映像)の領域に重畳して表示」されるから、映像表示部(蓄積映像)の領域とは別のテキスト注釈を表示する領域を有しているといえる。
よって、本件特許発明1と甲1発明とは、「前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントを、前記コメントを表示する領域である第2の表示欄に表示するコメント表示部」を有する点で一致する。

(オ)構成1E及び構成1Fについて
上記(エ)において検討したとおり、甲1発明はテキスト注釈を表示する領域が存在するといえるものの、構成1i2にあるとおり、「テキスト注釈のふきだしの一部が映像表示部(蓄積映像)の枠よりも外側まではみ出すが、テキスト注釈の文字は映像表示部(蓄積映像)の枠の外側まではみ出さない」ものである。
甲1発明は、テキスト注釈を表示する領域についての具体的な特定はなく、構成1i2の表示画面1800が図18から読み取れるのみであって、映像表示部(蓄積映像)の領域とテキスト注釈を表示する領域との位置関係について、何らの特定も有しない。
したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、本件特許発明1は、「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」という構成(構成1E)、及び「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成(構成1F)を備えているのに対し、甲1発明はそのような構成を有しない点で相違する。

(カ)一致点及び相違点について
上記(ア)〜(オ)によれば、本件特許発明1と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
(1A)動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置であって、
(1B)前記コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部と、
(1C)前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生部と、
(1D)前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントを、前記コメントを表示する領域である第2の表示欄に表示するコメント表示部と、を有する
(1A)ことを特徴とする表示装置。

[相違点1−1]
本件特許発明1は、「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」という構成(構成1E)、及び「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成(構成1F)を備えているのに対し、甲1発明はそのような構成を有しない点。

イ 判断
上記ア(カ)のとおり、本件特許発明1と甲1発明には相違点1−1があり、当該相違点1−1は実質的な相違点であるといえる。
したがって、本件特許発明1は甲1発明ではない。

ウ 請求人の主張について
(ア)主位的主張について
請求人は、甲1発明は「ふきだし」内の「注釈データ」の少なくとも一部が動画の外側に表示されるものであると主張するが、上記ア(オ)のとおり、甲1発明は「テキスト注釈の文字は映像表示部(蓄積映像)の枠の外側まではみ出さない」ものであるから、請求人の主張は採用できない。

(イ)予備的主張について
請求人は、甲第1号証について、動画をディスプレイに表示することに伴うアスペクト比の変更に伴い、コメントを表示する領域の一部が動画を表示する領域の一部と重なり合っており、他のコメントを表示する領域が動画を表示する領域の一部の外側にあり、かつ、コメントを表示する領域中のコメントの少なくとも一部が動画の外側に表示されることが十分あり得ると主張している。
しかしながら、ネットワークに接続されたクライアント端末に表示される動画のアスペクト比が変更され得ることが、甲第25〜35号証等の記載から周知の事項であるといえるとしても、上記ア(オ)のとおり、甲第1号証には、映像表示部(蓄積映像)にアスペクト比の異なる蓄積映像を表示する旨の記載も示唆もなく、動画のアスペクト比が変更された際の映像表示部(蓄積映像)の領域とテキスト注釈を表示する領域との位置関係について、何ら特定されていないから、請求人の主張は採用できない。

エ 小括
以上のとおり、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

(2)本件特許発明9について
本件特許発明9は、本件特許発明1の表示装置と対応する、表示装置のコンピュータを動作させるためのプログラムの発明である。
甲1発明は、上記第4の1(1)ア(ア)の甲第1号証の段落【0039】に記載されるように、コンピュータにより構成し、ビューワプログラムを動作させて甲1発明のクライアント端末200として機能させることができるものである。
すなわち、甲第1号証から甲1発明と同様のプログラム発明(甲1プログラム発明)を認定することができる。
そして、本件特許発明9とそのような甲1プログラム発明とを対比すると、上記「(1)本件特許発明1について」において検討したのと同様に、上記(1)カの[相違点1−1]と同様の相違点が存在するといえる。
よって、本件特許発明9は、甲第1号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

(3)まとめ
以上によれば、本件特許発明1及び9に係る特許について、請求人の主張する無効理由1−1は理由がない。

2 無効理由1−2について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)構成1Aについて
甲2発明は、構成2b1,2c1及び構成2d3にあるとおり、「ストリーミングサーバ2と利用者端末4とは動画データのストリーミング配信が可能なネットワーク3により接続され、前者が後者へのテキストデータを重畳した動画のストリーミング配信を行い、当該動画はウィンドウ41に表示」されるものであり、「利用者端末4から、同一画面40上において、ウェブサーバ1の提供する例えばウェブ掲示板42のようなテキスト書込部42(以下、テキスト書込部42とも言う)にテキストデータからなるメッセージを書き込み」、「収集されたテキストデータがストリーミング配信中の動画コンテンツに重畳され、テキストデータの重畳された動画コンテンツが利用者端末4に配信され」るものである。
すなわち、甲2発明は、ウィンドウ41にテキストデータが重畳された動画を再生する「表示装置」であるといえる。
そして、動画に重畳されるテキストデータは、利用者端末4から書き込まれたメッセージであるから、本件特許発明1の「コメント」に相当する。
したがって、本件特許発明1と甲2発明は、「動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置」である点で一致する。

(イ)構成1Bについて
甲2発明は、構成2b2にあるとおり、「ストリーミング配信は、周知のSMIL(Synchronized Multimedia Integrated Language )を用いて行われ、これにより、ストリーミングサーバ2から、ストリーミング配信する動画コンテンツとテキストデータとが同期されて1個のコンテンツにまとめて配信」される。ここで、技術常識に鑑みれば、甲2発明がSMILにより配信されたテキストデータを記憶する記憶部を有することは明らかである。
したがって、甲2発明は「前記コメントを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部」を有するといえる。

他方、甲2発明は、構成2c2〜2d3にあるとおり、「テキスト書込部42に利用者端末4により書き込まれたテキストデータはウェブサーバ1により逐次収集され」、「ストリーミングサーバ2」により「テキストデータの収集が周期的に繰り返され、例えば、この周期はおよそ1〜2秒とされ」、「収集されたテキストデータがストリーミング配信中の動画コンテンツに重畳され、テキストデータの重畳された動画コンテンツが利用者端末4に配信され」るものである。すなわち、配信されるテキストデータは周期的な時刻に収集されたものであるが、テキストデータが書き込まれた時刻が取得されたものではなく、テキストデータが収集された時刻が、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるともいえない。
また、構成2f3にあるとおり、「表示リスト222内に格納されているメッセージが、その先頭から順に読み出されて、当該表示時間に従ってSMILを用いて動画コンテンツに重畳して利用者端末4に配信される」ものであり、テキストデータが収集された時刻をテキストデータとともに配信されるものではなく、利用者端末4に配信される情報に、テキストデータが書き込まれた時刻が含まれないことから、テキストデータが書き込まれた時刻を記憶部に記憶するものでもない。
したがって、本件特許発明1と甲2発明とは、「コメント情報記憶部」において、本件特許発明1は、記憶するコメント情報には「当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間」が含まれるものであるのに対し、甲2発明が記憶するコメント情報には「当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間」が含まれない点で相違する。

(ウ)構成1Cについて
上記(ア)において検討したとおり、甲2発明は配信された動画を画面40のウィンドウ41に表示する。
したがって、甲2発明は「前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生部」を有するといえ、本件特許発明1と甲2発明は、当該「動画再生部」を有する点で一致する。

(エ)構成1Dについて
上記(イ)において検討したとおり、甲2発明は「前記コメントを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部」を有するといえる。
そして、構成2b2、及び構成2e1〜2e3にあるとおり、甲2発明は、「ストリーミング配信する動画コンテンツとテキストデータとが同期されて1個のコンテンツにまとめて配信され、当該映像と文章とを同時に同一のウィンドウ41で表示することができ」、「収集されたテキストデータ(表示リスト222内のテキストデータ)の少なくとも1個について、その内容に応じて、ウィンドウ41における表示位置が設定され、例えば、動画コンテンツがサッカーの試合である場合、選手Xの属するチームがウィンドウ41の左側であれば、その表示位置は「左」とされ、テキストデータの表示位置の指定がない場合、テキストデータは、ウィンドウ41上の予め定められた位置に重畳され表示され」るものである。すなわち、動画を表示する同一のウィンドウ41に、テキストデータの表示位置が設定されるものであるから、テキストデータを表示する領域を有しているといえる。
また、テキストデータを表示する際には、記憶部に記憶されたテキストデータを読み出すことは明らかである。
よって、甲2発明は本件特許発明1と、「コメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントを、前記コメントを表示する領域である第2の表示欄に表示するコメント表示部」を有している点で共通するものといえる。

他方、甲2発明は、構成2b2にあるとおり、「動画コンテンツとテキストデータが同期されて1個のコンテンツにまとめて配信され、当該映像と文章とを同時に同一のウィンドウ41で表示する」ものの、上記(イ)において検討したとおり、甲2発明の配信されるテキストデータは、周期的な時刻に収集されたテキストデータであり、テキストデータが収集された時刻が、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるともいえず、テキストデータが収集された時刻がテキストデータとともに配信されるものではなく、記憶部に記憶されるものでもない。
したがって、甲2発明は、動画コンテンツとテキストデータを同期させて表示するものの、動画コンテンツの再生時間に基づいて、テキストデータを書き込んだ時刻に対応するテキストデータを前記コメント情報記憶部から読み出すものとはいえない。
よって、本件特許発明1と甲2発明とは、「コメント表示部」において、本件特許発明1は、前記コメント情報記憶部からのコメントの読み出しが「前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメント」に対して行われるものであるのに対し、甲2発明は、動画コンテンツとテキストデータを同期させて表示するものの、動画コンテンツの再生時間に基づいて、テキストデータを書き込んだ時刻に対応するテキストデータを読み出すものではない点で相違する。

(オ)構成1E及び構成1Fについて
上記(ア)において検討したとおり、甲2発明は、ウィンドウ41にテキストデータが重畳された動画を再生するものであり、テキストデータを表示する領域は、動画を再生して表示する領域の上に重畳されるものである。
したがって、本件特許発明1と甲2発明とは、本件特許発明1は、「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」という構成(構成1E)、及び「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成(構成1F)を備えているのに対し、甲2発明はそのような構成を有しない点で相違する。

(カ)一致点及び相違点について
上記(ア)〜(オ)によれば、本件特許発明1と甲2発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
なお、構成の一部が共通する構成については、一致点の構成の名称に「’」を付した。

[一致点]
(1A)動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置であって、
(1B’)前記コメントを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部と、
(1C)前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生部と、
(1D’)コメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントを、前記コメントを表示する領域である第2の表示欄に表示するコメント表示部と、を有する
(1A)ことを特徴とする表示装置。

[相違点2−1]
「コメント情報記憶部」において、本件特許発明1は、記憶するコメント情報には「当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間」が含まれるものであるのに対し、甲2発明が記憶するコメント情報には「当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間」が含まれておらず、「コメント表示部」において、本件特許発明1は、前記コメント情報記憶部からのコメントの読み出しが「前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメント」に対して行われるものであるのに対し、甲2発明は、動画コンテンツとテキストデータを同期させて表示するものの、動画コンテンツの再生時間に基づいて、テキストデータを書き込んだ時刻に対応するテキストデータを読み出すものではない点。

[相違点2−2]
本件特許発明1は、「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」という構成(構成1E)、及び「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成(構成1F)を備えているのに対し、甲2発明はそのような構成を有しない点。

イ 判断
上記ア(カ)のとおり、本件特許発明1と甲2発明には相違点2−1及び相違点2−2があり、当該相違点2−1及び相違点2−2は実質的な相違点であるといえる。
したがって、本件特許発明1は甲2発明ではない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、甲第2号証について、動画をディスプレイに表示することに伴うアスペクト比の変更に伴い、コメントを表示する領域の一部が動画を表示する領域の一部と重なり合っており、他のコメントを表示する領域が動画を表示する領域の一部の外側にあり、かつ、コメントを表示する領域中のコメントの少なくとも一部が動画の外側に表示されることが十分あり得ると主張している。
しかしながら、ネットワークに接続されたクライアント端末に表示される動画のアスペクト比が変更され得ることが、甲第25〜35号証等の記載から周知の事項であるとしても、上記ア(オ)のとおり、甲第2号証には、ウィンドウ41にアスペクト比の異なる動画を表示する旨の記載も示唆もない。
たとえ、甲第2号証において、アスペクト比の異なる動画が配信されたとしても、上記ア(オ)のとおり、甲2発明は、ウィンドウ41にテキストデータが重畳された動画を再生するものであり、テキストデータを表示する領域は、動画を再生して表示する領域の上に重畳されるものであるから、テキストデータを表示する領域の一部の領域が、動画を再生して表示する領域の外側にあることにはならず、請求人の主張は採用できない。

エ 小括
以上のとおり、本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

(2)本件特許発明9について
本件特許発明9は、本件特許発明1の表示装置と対応する、表示装置のコンピュータを動作させるためのプログラムの発明である。
甲2発明は、構成2aにあるとおり、クライアントであるコンピュータでもあるから、プログラムを動作させて甲2発明の利用者端末4として機能させることができるものである。
すなわち、甲第2号証から甲2発明と同様のプログラム発明(甲2プログラム発明)を認定することができる。
そして、本件特許発明9とそのような甲2プログラム発明とを対比すると、上記「(1)本件特許発明1について」において検討したのと同様に、上記(1)カの[相違点2−1]及び[相違点2−2]と同様の相違点が存在するといえる。
よって、本件特許発明9は、甲第2号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

(3)まとめ
以上によれば、本件特許発明1及び9に係る特許について、請求人の主張する無効理由1−2は理由がない。

3 無効理由1−3について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲3発明とを対比する。
(ア)構成1Aについて
甲3発明は、構成3b及び構成b2にあるとおり、「メディア再生プレイヤー23」を備え、「メディア再生プレイヤー23は、ライブ配信される映像や音声などを再生する処理部であり、専用のソフトウェアにより再生が行われ」るものである。
ここで、構成3d1及び構成3eにあるとおり、「ライブ配信サーバ100では、チャット情報が受け取られると、受信したチャット入力データをライブ映像データに付加して、ライブ閲覧者20の端末21にリアルタイムで配信」するものであり、「ライブ閲覧者端末21からライブデータDB111の閲覧(検索)要求があった場合は(ステップS71)、ライブデータDB111を検索し、該当するライブデータがオンデマンドで配信」される。
そして、ライブ配信の際、受信したチャットの表示は、構成3d2、3d3及び構成3d7にあるとおり、「チャットに参加するクライアント(例えば、ライブ閲覧者20)が、ライブ閲覧者端末21内のチャット入力機能24によりチャットを行う場合、あるチャット参加者が、Webブラウザなどのチャット入力用のアプリケーション(AP)画面a中で、レイアウト(領域2)を指定して、チャット文「この人って誰?」を入力」するものであり、「配信映像bが所定の枠内に表示され、チャットが指定された領域に基づいて所定の位置に表示され、領域1〜6はいずれも配信映像bの表示領域に重畳しており、各チャットの表示は、領域2及び4の矩形領域の右側にはみ出していることまでは把握されるものの、いずれも配信映像bの枠を超える範囲までははみ出して」いないものである。
すなわち、甲3発明は、配信されるライブ映像データから、配信映像bを所定の枠内に表示するとともに、チャットを配信映像b中の指定された領域に表示する。
以上から、甲3発明は「動画を再生するとともに、前記動画上にチャットを表示する表示装置」であるといえる。

また、甲3発明における「チャット」は、構成3d2にあるとおり、「チャットに参加するクライアント(例えば、ライブ閲覧者20)が、ライブ閲覧者端末21内のチャット入力機能24によりチャットを行う」ものであり、ライブを閲覧するライブ閲覧者のライブ閲覧者端末21から入力される情報であるから、本件特許発明1の「コメント」に相当する。

したがって、甲3発明は「動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置」であるといえ、本件特許発明1と甲3発明は、当該「表示装置」である点で一致する。

(イ)構成1Bについて
甲3発明は、構成3d1にあるように「チャット情報が受け取られると、受信したチャット入力データをライブ映像データに付加して、ライブ閲覧者20の端末21にリアルタイムで配信」されるものである。
そして、構成3c1及び構成3c3にあるとおり、「ライブデータデータベース(ライブデータDB)111」の「格納データは、「ライブID」、「レイアウトID」、「コンテンツ情報(ライブデータファイル名、画像データファイル名、チャット情報ID)」などであり」、「チャット情報データベース(チャット情報DB)113」の「格納データは、「ライブID」、「発言者」、「発言時間(ライブ開始からの差分時間)」、「ライブ上での発言場所(レイアウトIDまたは、XY座標での表記)」、「発言及びその他の情報(色、スクロール方法等)」等」であることから、ライブ閲覧者端末21に配信されるライブ映像データには、チャット情報として「発言時刻(ライブの開始時刻からの差分)」及び「発言及びその他の情報(色、スクロール方法等)」が含まれるものと認められる。
ここで、チャット情報の「発言及びその他の情報(色、スクロール方法等)」はコメントに相当し、「発言時刻」は「ライブの開始時刻からの差分」であるから、ライブ映像データの最初を基準とした経過時間を表すライブ映像データ再生時間におけるチャットの発言時刻である。
以上のことから、甲3発明には、「前記コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報」が配信されるといえる。

そして、技術常識に鑑みれば、甲3発明が、配信されたライブ映像データを記憶する記憶部を有することは明らかである。
したがって、甲3発明は、「前記コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部」を有するといえ、本件特許発明1と甲3発明は、当該「コメント情報記憶部」を有する点で一致する。

(ウ)構成1Cについて
上記(ア)において検討したとおり、甲3発明は、配信されるライブ映像データから、配信映像bを所定の枠内に表示するものである。そして、この所定の枠は、本件特許発明1の「動画を表示する領域である第1の表示欄」に相当する。
したがって、甲3発明は「前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生部」を有するといえ、本件特許発明1と甲3発明は、当該「動画再生部」を有する点で一致する。

(エ)構成1Dについて
上記(ア)において検討したとおり、甲3発明は、配信されるライブ映像データから、チャット(「コメント」に相当。)を配信映像b中の指定された領域に表示するものである。
そして、構成3d7における指定された領域1〜6は、本件特許発明1の「第2の表示欄」に相当する。
したがって、甲3発明におけるチャットの表示は、「前記コメントを表示する領域である第2の表示欄に」行われるものといえる。

また、上記(イ)において検討したとおり、甲3発明には、「前記コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報」が配信されるといえるから、そのコメントの表示を行う際には、「前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメント」を表示することは、明らかである。
したがって、甲3発明は、「前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントを、前記コメントを表示する領域である第2の表示欄に表示するコメント表示部」を有するといえ、本件特許発明1と甲3発明は、当該「コメント表示部」を有する点で一致する。

(オ)構成1E及び構成1Fについて
上記(ウ)及び(エ)において検討したとおり、甲3発明は、配信される映像及びチャットを、それぞれ「第1の表示欄」及び「第2の表示欄」に表示するものである。
また、上記(ア)において検討したとおり、甲3発明は、チャットを配信映像b中の指定された領域に表示するものであるから、チャットを表示する領域は配信される映像の表示される領域に重畳されている。
したがって、本件特許発明1と甲3発明とは、本件特許発明1は、「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」という構成(構成1E)、及び「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成(構成1F)を備えているのに対し、甲3発明はそのような構成を有しない点で相違する。

(カ)一致点及び相違点について
上記(ア)〜(オ)によれば、本件特許発明1と甲3発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

[一致点]
(1A)動画を再生するとともに、前記動画上にコメントを表示する表示装置であって、
(1B)前記コメントと、当該コメントが付与された時点における、動画の最初を基準とした動画の経過時間を表す動画再生時間であるコメント付与時間とを含むコメント情報を記憶するコメント情報記憶部と、
(1C)前記動画を表示する領域である第1の表示欄に当該動画を再生して表示する動画再生部と、
(1D)前記再生される動画の動画再生時間に基づいて、前記コメント情報記憶部に記憶されたコメント情報のうち、前記動画の動画再生時間に対応するコメント付与時間に対応するコメントを前記コメント情報記憶部から読み出し、当該読み出されたコメントを、前記コメントを表示する領域である第2の表示欄に表示するコメント表示部と、を有する
(1A)ことを特徴とする表示装置。

[相違点3−1]
本件特許発明1は、「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」という構成(構成1E)、及び「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成(構成1F)を備えているのに対し、甲3発明はそのような構成を有しない点。

イ 判断
上記ア(カ)のとおり、本件特許発明1と甲3発明には相違点3−1があり、当該相違点3−1は実質的な相違点であるといえる。
したがって、本件特許発明1は甲3発明ではない。

ウ 請求人の主張について
請求人は、甲第3号証について、動画(映像)をディスプレイに表示することに伴うアスペクト比の変更に伴い、発言表示領域の一部が動画表示領域の一部と重なり合っており、他の発言表示領域が動画表示領域の一部の外側にあり、かつ、発言表示領域の発言の少なくとも一部が動画表示領域の外側に表示されることが十分あり得ると主張している。
しかしながら、ネットワークに接続されたクライアント端末に表示される動画のアスペクト比が変更され得ることが、甲第25〜35号証等の記載から周知の事項であるとしても、上記ア(オ)のとおり、甲第3号証には、アスペクト比の異なる動画を配信映像bを表示する枠に表示する旨の記載も示唆もない。
たとえ、甲第3号証においてアスペクト比の異なる動画が配信されたとしても、上記ア(オ)のとおり、甲3発明は、チャットを配信映像b中の指定された領域に表示するものであるから、チャットを表示する領域は配信される映像の表示される領域に重畳されており、発言表示領域の発言の少なくとも一部が動画表示領域の外側に表示されることにはならず、請求人の主張は採用できない。

エ 小括
以上のとおり、本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

(2)本件特許発明9について
本件特許発明9は、本件特許発明1の表示装置と対応する、表示装置のコンピュータを動作させるためのプログラムの発明である。
甲3発明は、構成3b及び構成3b2にあるとおり、「メディア再生プレイヤー23」を備え、「メディア再生プレイヤー23は、ライブ配信される映像や音声などを再生する処理部であり、専用のソフトウェアにより再生が行われ」るものであるから、コンピュータにより構成し、プログラムを動作させて甲3発明のライブ閲覧者端末21として機能させることができるものである。
すなわち、甲第3号証から甲3発明と同様のプログラム発明(甲3プログラム発明)を認定することができる。
そして、本件特許発明9とそのような甲3プログラム発明とを対比すると、上記「(1)本件特許発明1について」において検討したのと同様に、上記(1)カの[相違点3−1]と同様の相違点が存在するといえる。
よって、本件特許発明9は、甲第3号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。

(3)まとめ
以上によれば、本件特許発明1及び9に係る特許について、請求人の主張する無効理由1−3は理由がない。

4 無効理由2−1について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明との対比は、上記1(1)アにて検討したとおりであり、本件特許発明1と甲1発明とには[相違点1−1]が存在する。

イ 判断
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1は、「放送されたテレビ番組などの動画に対してユーザが発言したコメントをその動画と併せて表示するシステム」という背景技術を前提とし(段落【0002】)、「コメントの読みにくさを低減させる」という課題を解決するための発明であり(段落【0005】)、相違点1−1に係る構成1E及び構成1Fによって、「オーバーレイ表示されたコメント等が、動画の画面の外側でトリミングするようにして、コメントそのものが動画に含まれているものではなく、動画に対してユーザによって書き込まれたものであることが把握可能となり、コメントの読みにくさを低減させることができる」(段落【0012】)という効果を奏するものであると認められる。
そして、本件特許発明1の「コメント」とは、表示装置において、動画を閲覧するユーザが、動画の再生開始後の任意の時点に、動画に対して付与するものと解されるものである。

(イ)甲4技術について
甲4技術は、構成4a〜4b2及び構成4d1〜4d4にあるとおり、サーバから情報端末装置に動画コンテンツとそれに関連したデータコンテンツを送信し、情報端末装置において受信した動画コンテンツとデータコンテンツをモニタ(ディスプレイ)に表示する技術である。
また、構成4c1、4c2及び構成4fにあるとおり、データコンテンツは、インターネットのホームページのデータに対応するテキストであり、動画コンテンツが映画のときには、データコンテンツは登場人物のプロフィールである。
なお、甲第4号証の段落【0002】に「【従来の技術】近年、デジタル放送技術および通信技術の発達により、従来の放送局からユーザへの一方的な情報伝達のみならず、ユーザからも情報を発信できる双方向の情報伝達が行える環境が整ってきた。」という記載があるとしても、この記載は技術背景を説明したのみであり、甲第4号証に記載される技術におけるデータコンテンツは、甲4技術として認定したとおり、動画コンテンツが映画のときには、データコンテンツは登場人物のプロフィールであるような、動画コンテンツに関連する、動画コンテンツの配信時に既に存在しているテキスト等のデータコンテンツにほかならない。
そして、甲第13〜20号証に示されるように、WEB2.0が技術常識であったとしても、甲4技術のデータコンテンツであるテキストを、ユーザによって付与可能なコメントとする理由はない。
したがって、甲4技術のデータエリアに表示されるデータコンテンツであるテキストは、本件特許発明1の動画に対して動画の再生開始後の任意の時点にユーザによって付与されるコメントに相当するものではない。

また、構成4e〜4f2にあるとおり、甲4技術は、モニタ画面全体をデータエリアとし、動画エリアはテレビ画面に相当する4:3や16:9のような横長のエリアとするものであり、データエリアを動画エリアに重ねたオーバレイ表示状態では、データエリアの一部が動画エリアに重なり、他の一部が動画エリアの外側となるものである。
このように、甲4技術のオーバレイ表示状態は、モニタ画面のサイズに依存して形成される表示状態であり、本件特許発明1のように、コメントそのものが動画に含まれているものではなく動画に対してユーザによって書き込まれたものであることを把握可能とし、コメントの読みにくさを低減させるために行われるものでもない。

以上のことから、甲4技術の動画コンテンツを表示する動画エリアが、本件特許発明1の「第1の表示欄」に相当するといえるとしても、データコンテンツであるテキストを表示するデータエリアは、本件特許発明1の「コメントを表示する領域である第2の表示欄」に相当するものではなく、甲4技術は、相違点1−1に係る「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」という構成(構成1E)、及び「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成(構成1F)に相当するものではない。

(ウ)甲5技術について
甲5技術は、構成5aにあるとおり、コンテンツの映像である主映像と、字幕などの主映像を補足等する理由で表示される映像である副映像を表示することができるようにした復号装置に関する技術であって、構成5b1、5b2及び構成5c1、5c2にあるとおり、符号化時に組み込まれた主映像のアスペクト比、副映像のアスペクト比及び表示装置のアスペクト比に基づいて主映像に副映像が重ね合わされた映像を表示し、構成5b3及び構成5c1、5c2にあるとおり、表示装置のアスペクト比が16:9である場合において、主映像のアスペクト比が4:3であるときには主映像を横方向(水平方向)に縮小するとともに、左右に黒色を表示させるデータを付加して出力するとともに、16:9のアスペクト比に合うように変換した字幕データを出力することにより、横方向に縮小されて左右に黒色を表示させるデータが付加された主映像に、16:9のアスペクト比の字幕の映像が重ね合わされて表示されるという技術である。
このように、甲5技術は、表示装置の画面上に、左右に黒色を表示させるデータを付加した主映像の上に字幕データの副映像を重ね合わせた映像を表示するものであって、字幕データは、動画に対して動画再生時間の任意の時点にユーザによって付与されるコメントとは異なるものである。
そして、甲第13〜20号証に示されるように、WEB2.0が技術常識であったとしても、甲5技術の字幕データを、ユーザによって付与可能なコメントとする理由はない。
さらに、甲5技術は、本件特許発明1の表示のように、コメントそのものが動画に含まれているものではなく動画に対してユーザによって書き込まれたものであることを把握可能とし、コメントの読みにくさを低減させるためのものでもない。

以上のことから、甲5技術の主映像を表示する領域が、本件特許発明1の「第1の表示欄」に相当するといえるとしても、字幕データの副映像を表示する領域は、本件特許発明1の「コメントを表示する領域である第2の表示欄」に相当するものではなく、甲5技術は、相違点1−1に係る「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」という構成(構成1E)、及び「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成(構成1F)に相当するものではない。

(エ)甲4技術及び甲5技術の適用について
上記(イ)、(ウ)のように、技術常識を踏まえた甲4技術及び甲5技術は、相違点1−1に係る「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」という構成(構成1E)、及び「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成(構成1F)を有するものではなく、甲1発明に、技術常識を踏まえた甲4技術及び/又は甲5技術を適用したとしても、本件特許発明1の構成にはならない。

(オ)まとめ
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術、甲第5号証に記載された技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 小括
以上のとおり、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術、甲第5号証に記載された技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

(2)本件特許発明9について
上記「1 無効理由1−1について」の(2)において検討したように、本件特許発明9と甲1プログラム発明には、[相違点1−1]と同様の相違点が存在する。
そして、相違点1−1は、上記(1)において検討したのと同様に、技術常識を踏まえた甲4技術及び/又は甲5技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件特許発明9は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術、甲第5号証に記載された技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

(3)まとめ
以上によれば、本件特許発明1及び9に係る特許について、請求人の主張する無効理由2−1は理由がない。

5 無効理由2−2について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明には、上記「2 無効理由1−2について」の(1)アにおいて検討したとおり、[相違点2−1]及び[相違点2−2]が存在し、そのうち[相違点2−2]に係る構成は、[相違点1−1]に係る構成と同じである。
そして、上記「4 無効理由2−1について」の(1)において検討したとおり、甲4技術のデータコンテンツ及び甲5技術の字幕データは、本件特許発明1のコメントとは異なるものであって、相違点2−2は、相違点1−1と同様に、甲4技術及び甲5技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
なお、請求人は、甲第11号証を挙げて、ストリーミング配信及びダウンロード配信が公知であった旨を主張するものの、上記「第4 甲号証及び乙号証について」の1(11)に認定したように、甲第11号証には、デジタルコンテンツの配信・流通方法がダウンロードとストリーミングに大別されることが記載されているにとどまり、上述の相違点2−2に係る構成が容易に発明をすることができたものでないという判断に影響を及ぼすものではない。

よって、本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明、甲第11号証に記載された技術、甲第4号証に記載された技術及び甲第5号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

(2)本件特許発明9について
上記「2 無効理由1−2について」の(2)において検討したように、本件特許発明9と甲2プログラム発明には、[相違点2−1]及び[相違点2−2]と同様の相違点が存在する。
そして、そのうちの相違点2−2は、上記(1)において検討したのと同様に、甲第11号証に記載された技術、甲4技術及び甲5技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件特許発明9は、甲第2号証に記載された発明、甲第11号証に記載された技術、甲第4号証に記載された技術及び甲第5号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

(3)まとめ
以上によれば、本件特許発明1及び9に係る特許について、請求人の主張する無効理由2−2は理由がない。

6 無効理由2−3について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明には、上記「3 無効理由1−3について」の(1)アにおいて検討したとおり、[相違点3−1]が存在し、[相違点3−1]に係る構成は、[相違点1−1]に係る構成と同じである。
そして、上記「4 無効理由2−1について」の(1)において検討したとおり、甲4技術のデータコンテンツ及び甲5技術の字幕データは、本件特許発明1のコメントとは異なるものであって、相違点3−1は、相違点1−1と同様に、甲4技術及び甲5技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

よって、本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術及び甲第5号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

(2)本件特許発明9について
上記「3 無効理由1−3について」の(2)において検討したように、本件特許発明9と甲3プログラム発明には、[相違点3−1]と同様の相違点が存在する。
そして、相違点3−1は、上記(1)において検討したのと同様に、甲4技術及び甲5技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件特許発明9は、甲第3号証に記載された発明、甲第4号証に記載された技術及び甲第5号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

(3)まとめ
以上によれば、本件特許発明1及び9に係る特許について、請求人の主張する無効理由2−3は理由がない。

7 無効理由2−4及び2−7について
本件特許発明2は、本件特許発明1を引用する発明である。また、本件特許発明10は、本件特許発明9を引用する発明である。
したがって、本件特許発明2及び10は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明と対比すると、上述のとおり、本件特許発明1及び9と同じ相違点を有する。

そして、本件特許発明1及び9は、上記4〜6において検討したとおり、特許法第29条第2項の規定に該当しない。
また、甲第6〜10号証には、上記「第4 甲号証及び乙号証について」の1(6)〜(10)に認定したように、Webブラウザ等の表示制御技術においてテキストを移動表示する技術が記載されているものの、当該技術は、相違点1−1に係る「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」、「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成に対応するものではなく、当該技術が慣用技術であったとしても、上記の検討に影響を与えるものではない。

したがって、本件特許発明1又は9を引用する本件特許発明2及び10も、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

以上によれば、本件特許発明2及び10に係る特許について、請求人の主張する無効理由2−4及び無効理由2−7は理由がない。

8 無効理由2−5について
本件特許発明5は、本件特許発明1を直接又は間接に引用する発明である。
したがって、本件特許発明5は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明と対比すると、上述のとおり、本件特許発明1と同じ相違点を有する。

そして、本件特許発明1は、上記4〜6において検討したとおり、特許法第29条第2項の規定に該当しない。
したがって、本件特許発明1を直接又は間接に引用する本件特許発明5も、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

以上によれば、本件特許発明5に係る特許について、請求人の主張する無効理由2−5は理由がない。

9 無効理由2−6について
本件特許発明6は、本件特許発明1を直接又は間接に引用する発明である。
したがって、本件特許発明6は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明と対比すると、上述のとおり、本件特許発明1と同じ相違点を有する。

そして、本件特許発明1は、上記4〜6において検討したとおり、特許法第29条第2項の規定に該当しない。
また、甲第22〜24号証には、記「第4 甲号証及び乙号証について」の1(22)〜(24)に認定したように、動画において文字情報を表示する際、文字列が重複するか否かを判定し、重複する場合には重複しないように位置を変更する技術が記載されているものの、当該技術は、相違点1−1に係る「前記第2の表示欄のうち、一部の領域が前記第1の表示欄の少なくとも一部と重なっており、他の領域が前記第1の表示欄の外側にあり」、「前記コメント表示部は、前記読み出したコメントの少なくとも一部を、前記第2の表示欄のうち、前記第1の表示欄の外側であって前記第2の表示欄の内側に表示する」という構成に対応するものではなく、当該技術が慣用技術であったとしても、上記の検討に影響を与えるものではない。

したがって、本件特許発明1を直接又は間接に引用する本件特許発明6も、特許法第29条第2項の規定に該当しない。

以上によれば、本件特許発明6に係る特許について、請求人の主張する無効理由2−6は理由がない。

第6 むすび
以上のとおり、請求人が主張する無効理由1−1ないし2−7は、いずれも理由がなく、特許第4734471号の特許請求の範囲の請求項1、2、5、6、9及び10に係る特許を無効とすることはできない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。

審判長 千葉 輝久
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2020-12-11 
結審通知日 2020-12-16 
審決日 2021-01-15 
出願番号 P2010-267283
審決分類 P 1 123・ 121- Y (H04N)
P 1 123・ 113- Y (H04N)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 川崎 優
清水 正一
登録日 2011-04-28 
登録番号 4734471
発明の名称 表示装置、コメント表示方法、及びプログラム  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 ▲高▼橋 淳  
復代理人 宮田 良子  
代理人 井上 正  
復代理人 森川 元嗣  
復代理人 宮川 利彰  
代理人 野河 信久  
代理人 峰 隆司  
代理人 壇 俊光  

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