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審決分類 審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  H02K
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  H02K
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H02K
管理番号 1388690
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-10-08 
確定日 2022-09-21 
事件の表示 上記当事者間の特許第5357217号発明「回転子積層鉄心の製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 結論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由
第1 手続の経緯
特許第5357217号(以下、「本件特許」という。)の出願は、平成17年1月12日に出願した特願2005−5426号(以下、「最初の親出願」という。)の一部を平成22年12月27日に新たな特許出願とした特願2010−290481号(以下、「原出願」という。)の一部を、平成23年7月4日に新たな特許出願としたものであって、平成25年9月6日に特許権の設定登録(請求項の数1)がされたものである。
そして、令和2年10月8日にトヨタ紡織株式会社(以下、「請求人」という。)から、本件特許の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)についての特許を無効とすることを求める無効審判(以下、「本件無効審判」という。)が請求され、令和3年1月12日に答弁書が株式会社三井ハイテック(以下、「被請求人」という。)から提出された。
本件無効審判の手続の経緯は、概略以下のとおりである。

令和2年10月 8日 本件無効審判の請求
令和3年 1月12日 答弁書の提出
令和3年 3月10日付 審理事項通知
令和3年 4月 9日 口頭審理陳述要領書(請求人)の提出
令和3年 5月 6日 口頭審理陳述要領書(被請求人)の提出
令和3年 5月19日 口頭審理の実施
令和3年 6月 3日受付 上申書(請求人)の提出
令和3年 6月16日 上申書(被請求人)の提出

第2 本件発明
本件発明1は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。

「複数の鉄心片が積層された回転子積層鉄心の複数の磁石挿入孔に挿入する永久磁石を、樹脂を前記磁石挿入孔にのみ注入して固定する回転子積層鉄心の製造方法であって、
前記回転子積層鉄心の上下に、いずれか一方には前記磁石挿入孔に前記樹脂を注入する複数の樹脂ポットと該樹脂ポットにそれぞれ対応するプランジャとを備えた上板部材及び下板部材を配置し、前記上板部材及び前記下板部材とで前記回転子積層鉄心を上下から押圧して、前記永久磁石の樹脂封止を行うことを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。」

第3 当事者の主張
1 請求人の主張及び証拠方法
請求人は、本件発明1についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、概略以下の無効理由1ないし3を主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証を提出している(以下、「甲第1号証」については、「甲1」と省略し、他の甲号証についても、同様に省略する。)。

(1)無効理由1
本件発明1は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲1(特開2006−197693号公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、本件発明1についての特許は同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきである。

本件発明1の「上板部材及び下板部材」は、以下に示すように、最初の親出願の出願時の明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「明細書、特許請求の範囲及び図面」を「明細書等」という。)、及び原出願の明細書等に記載されたものとはいえない。よって、本件特許出願の分割は適法になされたものではなく、本件特許出願は、最初の親出願の時にしたものとみなされず、少なくとも、分割出願日である平成23年7月4日まで、出願日が繰り下がる。
本件発明1の「上板部材及び下板部材」は、
・樹脂ポットが上板部材又は下板部材を貫通していないもの、
も含み得る。
また、本件発明1の「上板部材及び下板部材」は、
・かしめ部が突出する側に位置する上板部材又は下板部材に形成された、かしめ部の逃げ空間を備えないもの、
も含み得る。
最初の親出願の明細書等に記載された発明の技術的思想は、「各鉄心片がかしめ積層された回転子積層鉄心を上型又は下型で押圧しながら磁石挿入孔を閉塞しようとすると、突出したかしめ部が上型又は下型の押圧面と回転子積層鉄心との間に微小な隙間を生じさせて封止樹脂の漏れを引き起こす原因となるため、押圧時に非常に大きな荷重をかけて押し潰す必要があったが、突出したかしめ部を押し潰すための荷重をかけることにより、かしめ部の強度が不安定になったり、設備が大型化する」等の課題を解決するために、「突出するかしめ部が当接する側に位置する上板部材又は下板部材に」、「かしめ部の逃げ空間」を形成し、「表面から突出したかしめ部が逃げ空間内に入りこむ」ことによって、「上板部材及び下板部材によって回転子積層鉄心を押圧する力を最小に」し、「設備を小型化」し、「かしめ部が常時安定したかしめ強度を有する」というものである。したがって、このような技術的思想からすれば、最初の親出願の明細書等に記載された発明においては、突出するかしめ部が当接する側に位置する上板部材又は下板部材に、かしめ部の逃げ空間を備える必要があることは明らかである。
さらに、発明の目的である磁石挿入孔に樹脂ポットの樹脂を注入するためには、樹脂挿入孔に符合する位置又は別位置にポットが設けられるだけではなく、樹脂ポットが上板部材又は下板部材を貫通し、樹脂ポットの樹脂を磁石挿入孔に導く樹脂流路を備える必要があることは明らかである。
最初の親出願、原出願の明細書等に記載された発明は、突出するかしめ部が当接する側に位置する上板部材又は下板部材に形成された、かしめ部の逃げ空間を備えるもの、樹脂ポットが上板部材又は下板部材を貫通するものを必須の要件としたものと理解される。
したがって、これらの構成を備えない本件発明1は、「各鉄心片がかしめ部を介して積層されている回転子積層鉄心において、樹脂漏れのない磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止が可能であるとともに、突出したかしめ部を押し潰すための荷重をかけることにより、かしめ部の強度が不安定になったり、設備が大型化する」という作用効果を奏する構成に対して、異なる技術的意義が実質的に追加されたものである。
したがって、本件発明1は、最初の親出願の明細書等に記載されているとはいえないだけではなく、原出願の明細書等に記載されているともいえない。すなわち、本件発明1は、前記最初の親出願あるいは原出願の一部を分割して特許出願したものに付与された特許発明であるとはいえない。
よって、本件特許出願の分割は適法になされたものではなく、もとの特許出願の時にしたものとみなされない。したがって、少なくとも、分割出願日である平成23年7月4日まで、出願日が繰り下がる。
そうすると、本件発明1は、甲1から新規性がないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、本件特許は無効とすべきものである。

(2)無効理由2
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件発明1を実施できる程度の明確かつ十分な発明内容が記載されているとはいえず、本件発明1についての特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に付与されたものであるから、本件発明1についての特許は、同法第123条第1項第4号の規定に該当し、無効とすべきである。

本件発明1では、「樹脂を前記磁石挿入孔にのみ注入して固定する」という特徴が限定されている。ここで、「樹脂を前記磁石挿入孔にのみ注入して固定する」は、磁石挿入孔以外には樹脂が注入されずに固定される、あらゆる構成を含む上位概念であると理解される。
しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、少なくとも「かしめ部を介してかしめ積層された回転子積層鉄心」及び「かしめ部が突出する側に位置する上板部材又は下板部材に形成された、かしめ部の逃げ空間」という構成を備えることで、磁石挿入孔以外には樹脂が注入されずに固定させる構成のみが記載されている。
また、上位概念である「樹脂を前記磁石挿入孔にのみ注入して固定する」構成に含まれる他の下位概念、例えば「かしめ部を備えない」構成や「かしめ部が突出する側に位置する上板部材又は下板部材にかしめ部の逃げ空間が形成されない」構成については、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載がない。
そのため、他の下位概念において、本件特許明細書の【0005】に記載されたように、「各鉄心片がかしめ部を介して積層されている回転子積層鉄心において、樹脂漏れのない磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止を行う回転子積層鉄心の製造方法を提供する」という課題を解決するための構成が明らかではない。
したがって、当業者が出願時の技術常識を考慮しても実施できる程度に明確かつ十分に説明されているとはいえない。

(3)無効理由3
本件発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであり、本件発明1についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に付与されたものであるから、本件発明1についての特許は、特許法第123条第1項第4号の規定に該当し、無効とすべきである。

ア 「樹脂を前記磁石挿入孔にのみ注入して固定する」について
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、少なくとも「かしめ部を介してかしめ積層された回転子積層鉄心」及び「かしめ部が突出する側に位置する上板部材又は下板部材に形成された、かしめ部の逃げ空間」という構成を備える構成のみが記載されている。
本件特許の図面を参照しても、回転子積層鉄心が「かしめ部を備えない」構成や「かしめ部が突出する側に位置する上板部材又は下板部材にかしめ部の逃げ空間が形成されない」構成が発明の詳細な説明に実質的に記載されているものと理解することはできない。
一方、本件発明1では、「樹脂を前記磁石挿入孔にのみ注入して固定する」と規定している。しかし、「樹脂を前記磁石挿入孔にのみ注入して固定する」は、「かしめ部を備えない」構成や「かしめ部が突出する側に位置する上板部材又は下板部材にかしめ部の逃げ空間が形成されない」構成までも含むものであり、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。

イ 「上板部材及び下板部材」について
本件発明1では、「いずれか一方には前記磁石挿入孔に前記樹脂を注入する複数の樹脂ポットと該樹脂ポットにそれぞれ対応するプランジャとを備え」、「(上板部材及び下板部材とで)回転子積層鉄心を上下から押圧する」ことを除き、「上板部材及び下板部材」の構造を限定していないことから、「樹脂ポットが上板部材又は下板部材を貫通している」構成を備えない「上板部材及び下板部材」をも包含する上位概念であると理解される。
さらに、本件発明1の「上板部材及び下板部材」は、「複数の部材」からなるものをも包含する上位概念であると理解される。
しかしながら、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「上板部材15はバッキングプレート17、上型プレート18及び上押圧プレート19を備え、下板部材16は昇降台14上に載置される下型プレート20及びその上に載置される下押圧プレート21とを有し」(【0011】)、「開口部28に対応する上型プレート18及び上押圧プレート19は、複数(この実施の形態では8)の樹脂ポット(シリンダ)29が貫通状態で形成され」(【0012】)、「樹脂ポット29内の樹脂を樹脂溝35を介して磁石挿入孔30内に注入する」(【0017】)実施の形態のみが記載されている。また、図1及び図3には、「上押圧プレート19」が単一の板状部材からなり、「樹脂ポット29」の底部が回転子積層鉄心22の上面に直接接する実施の形態のみが記載されている。
本件特許明細書の【0018】の記載を考慮しても、磁石挿入孔30と樹脂ポット29の平面的位置を完全に相違させて両者を樹脂溝35によって連結する構成に代えて、樹脂ポットの一部を磁石挿入孔の一部にラップさせるようにして樹脂溝を省略すること、樹脂ポット29を上板部材15に配置する構成に代えて、下板部材16に配置すること、各樹脂ポット29又は各樹脂溝35の一部又は全部を連結するカル(樹脂溜まり)を設けることもできることが理解できるのみである。
したがって、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。

(4)証拠方法
提出された証拠は、以下のとおりである。
甲1 特開2006−197693号公報
甲2 特願2011−148498における平成23年7月25日提出の上申書
甲3 特願2005−005426の出願時の特許請求の範囲及び明細書
甲4 特願2010−290481の出願時の特許請求の範囲及び明細書
甲5 特願2011−148498における平成25年4月16日提出の意見書
甲6 特許・実用新案審査基準の第VI部第1章第1節3.2及び5.1
甲7 東京高等裁判所昭和57年(行ケ)第225号判決
甲8 知的財産高等裁判所平成21年(行ケ)第10049号判決
甲9 知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10042号判決
甲10 特許・実用新案審査基準の第IV部第2章
甲11 特開2001−157394号公報
甲12 特開平5−278079号公報
甲13 JIS工業用語大辞典 第4版 1772ページ
甲14 プラスチック成形加工入門 100ページ
甲15 射出成形事典 273ページ
甲16 よくわかるプラスチック射出成形金型設計 128ないし132ページ

2 被請求人の主張及び証拠方法
被請求人は、本件審判の請求は、成り立たない、審判費用は、請求人の負担とする、との審決を求めている。また、証拠方法として乙第1号証ないし乙第19号証を提出している(枝番を含む。以下、「乙第1号証」については、「乙1」と省略し、他の乙号証についても、同様に省略する。)。

(1)無効理由1について
最初の親出願の明細書(甲3)及び原出願の明細書(甲4)の【0018】には、【0011】ないし【0017】の実施形態の変形例が列挙されているところ、例えば、「前記実施の形態においては、樹脂ポット29を上板部材15に配置したが、下板部材16に配置することもできる」との記載があり、下板部材に樹脂ポットを設ける場合にこれを下板部材の上下に貫通させることまでは限定的に記載されていない。
本件発明1では、「いずれか一方には前記磁石挿入孔に前記樹脂を注入する複数の樹脂ポットと該樹脂ポットにそれぞれ対応するプランジャとを備えた上板部材及び下板部材を配置し、前記上板部材及び前記下板部材とで前記回転子積層鉄心を上下から押圧して、前記永久磁石の樹脂封止を行う」と特定され、上板部材又は下板部材に備えられた樹脂ポットとプランジャを使用して(回転子積層鉄心の)磁石挿入孔に樹脂を注入することが明示されているので、「樹脂ポットが上板部材又は下板部材を貫通する」という限定を加えないと分割要件違反であると主張することは、本件発明1の内容を正しく理解しないものである。
次に、親出願の明細書(甲3)及び原出願の明細書(甲4)の【0018】には、「樹脂溝を省略することもできる」と記載されている。
さらに、最初の親出願及び原出願の明細書の記載に接した当業者は、技術常識を参酌しつつ、かしめで回転子積層鉄心を積層する方法だけではなく、かしめ以外の技術(例えば、かしめ自体を用いない技術、溶接を用いる技術)で積層する方法も当然に理解し、認識する。
最初の親出願の明細書では、「回転子積層鉄心を形成する各鉄心片がかしめ積層された特に鉄心片の板厚が0.5mm以下の薄いものでは」、「各鉄心片がかしめ部を介して積層されている回転子積層鉄心において」という条件が設定され、この条件の下における解決課題が提示されている。
もっとも、複数の磁石挿入孔に永久磁石が挿入される回転子積層鉄心の積層は、かしめを用いるものに限られないのが技術常識である。事実、最初の親出願の明細書で引用されている特許文献1(特開2002−34187号公報、乙4)に「例えば抜きかしめ等で固着一体化することにより積層鉄心3」と繰り返し記載されているように、かしめだけが積層の方式ではない。例えば、積層の際にかしめ自体を使用しない技術(例えば乙5ないし乙10)、溶接する技術(例えば乙11、12)もあり、かしめ以外の積層法を用いることは技術常識である。
したがって、当業者であれば、最初の親出願の明細書の記載に接した場合、かしめで回転子積層鉄心を積層する方法だけではなく、かしめ以外の技術(かしめ自体を用いない技術、溶接を用いる技術)で積層する方法を当然に理解し、認識することになる。そして、当業者は、この理解及び認識に基づき、最初の親出願の明細書においては、「各鉄心片がかしめ部を介して積層されている回転子積層鉄心において」という条件が設定され、この条件の下で解決課題が設定されていることを理解すると共に、そのような条件を設定しない場合もあることも認識、理解して明細書を読み進めることになる。
そして、以上の事情は、最初の親出願の明細書と同様の記載となっている本件特許の原出願の明細書でも同様である(甲3、4)。
最初の親出願の明細書は、「各鉄心片がかしめ部を介して積層されている回転子積層鉄心において」という選択的な条件の下で解決課題、解決手段が記載されており、技術常識に基づきもう一つの選択的な条件(かしめを使用しない積層)も理解できる内容となっている。
したがって、本件発明1について分割要件違反はないので、無効理由1は存在しない。

(2)無効理由2について
本件発明1では、回転子積層鉄心の樹脂封止方法として、
・いずれか一方に磁石挿入孔に樹脂を注入する複数の樹脂ポットと該樹脂ポットにそれぞれ対応するプランジャとを備えた上板部材及び下板部材を配置し(構成要件B)
・上板部材及び下板部材とで回転子積層鉄心を上下から押圧し、(プランジャで樹脂を注入して)永久磁石の樹脂封止を行って(構成要件C)
・樹脂挿入孔に挿入する永久磁石を、樹脂を磁石挿入孔にのみ注入して固定する(構成要件A)
方法を採用する。ここで、「押圧」とは「圧して押え付けること」をいうので(乙2)、上板部材及び下板部材で回転子積層鉄心を上下から押圧して樹脂封止を行うことで樹脂を磁石挿入孔にのみ注入することになる。そうすると、請求項の文言上、当業者がその実施をすることについて過度な試行錯誤を強いられるというようなことはない。
そして、上記の各構成要件の具体例は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の【0011】ないし【0017】に記載され、その変形例については【0018】に記載されており、これらの記載が、当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載されている。
そうすると、本件発明1において実施可能要件の無効理由はない。

(3)無効理由3について
本件発明1の回転子積層鉄心の製造方法においては、各鉄心片がかしめ部を介して積層されている必要はないので、本件発明1の課題を検討するにあたって、「各鉄心片がかしめ部を介して積層されている回転子積層鉄心において」という条件を設定することは不要である。そうすると、本件発明1の課題は、「各鉄心片が積層されている回転子積層鉄心において、樹脂漏れのない磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止が可能な回転子積層鉄心の製造方法を提供する」点にある(本件特許明細書の【0005】)。
そして、当業者であれば、本件発明1において、上記課題を、
・いずれか一方に磁石挿入孔に樹脂を注入する複数の樹脂ポットと該樹脂ポットにそれぞれ対応するプランジャとを備えた上板部材及び下板部材を配置し(構成要件B)
・上板部材及び下板部材とで回転子積層鉄心を上下から押圧し、(プランジャで樹脂を注入して)永久磁石の樹脂封止を行って(構成要件C)
・樹脂挿入孔に挿入する永久磁石を、樹脂を磁石挿入孔にのみ注入して固定する(構成要件A)
することで解決することを十分に理解できる。そして、本件発明1における上記機序は、例えば本件特許明細書の【0017】の記載に裏付けられるとおりである。
そうすると、本件発明1はサポート要件を満たしている。

乙1 知財高裁平成22年2月25日判決(平成21年(行ケ)第10352号)
乙2 特許技術用語集 第2版 10ないし11ページ、奥付
乙3 特願2002−272376号明細書
乙4 特開2002−34187号公報
乙5の1 実開昭59−053679号公報
乙5の2 実願昭57−146329号(実開昭59−053679号)のマイクロフィルム
乙6 特開2000−134836号公報
乙7 特開2002−118994号公報
乙8 特開2002−359942号公報
乙9 特開平07−312837号公報
乙10 特開平09−224338号公報
乙11 特開2002−345189号公報
乙12 特開2003−304670号公報
乙13 特開平6−211240号公報
乙14 実用新案登録第2560550号公報
乙15 井本明著 実用プレス順送り型便覧 513ないし516ページ、奥付
乙16 特開平5−56606号公報
乙17 特開平5−122875号公報
乙18 kikakurui.comに掲載されたJISK6900-1994プラスチック-用語(https://kikakurui.com/k6/K6900-1994-01.html)のウェブページのプリントアウト書面
乙19 化学大辞典4 縮刷版 552ないし553ページ、奥付

第4 当審の判断
1 無効理由1について
請求人は、本件特許出願の分割は適法にされたものではなく、本件特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなされないと主張するので、この点について検討する。
分割要件の適否は、分割出願の明細書等に記載された事項が最初の親出願(甲3)及び原出願(甲4)の出願当初の明細書等に記載されているか否かによって判断され、分割出願が新たな技術的事項を導入するものでない場合には、当該分割出願は適法なものとして認められる。
ここで、被請求人は、最初の親出願の明細書の記載は、技術常識に基づき、かしめを使用しない積層も理解できる内容となっていると主張することから、まず、最初の親出願の出願時の技術常識について確認し、その後、本件特許出願が分割要件を満たしているか否かについて検討する。

(1) 最初の親出願の出願時の技術常識について
被請求人は、乙4ないし乙12を証拠として、「複数の磁石挿入孔に永久磁石が挿入される回転子積層鉄心の積層は、かしめを用いるものに限られない」ことが技術常識であると主張することから、この点について検討する。

ア 乙4について
最初の親出願の出願前に公開された乙4には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0013】そして、後述する積層鉄心の両端部および永久磁石とそれぞれ対応する位置に、例えば第2の板状磁性部材2を3〜4枚程度、残りの位置には第1の板状磁性部材1をそれぞれ配置した組み合わせで積層し、各穴部1aと2a、1bと2b、1cと2cをそれぞれ一致させ例えば抜きかしめ等で固着一体化することにより積層鉄心3が構成され、第2の板状磁性部材2が配置された部分には各スリット部2dにより、板厚の3〜4倍分の深さおよび径を有する連通溝部4および連通穴部5が形成される。
【0014】6は両穴部1a、2aに対をなして嵌挿された永久磁石、7は両軸用穴部1c、2cに嵌合された回転子軸、8は各注入用穴部1b、2bから注入され、連通溝部4および連通穴部5を介して各穴部1a、2aに注入され、各永久磁石6の軸中心側に一部空間を残して装填された熱硬化性樹脂でなる樹脂部材である。・・・」
(イ)これらの記載からみて、乙4には、穴部1a、2aに永久磁石6が嵌挿される積層鉄心3が板状磁性部材を積層し、抜きかしめ等で固着一体化することが記載されている。

イ 乙5の1及び乙5の2(以下、これらを併せて「乙5」という。)について
最初の親出願の出願前に公開された乙5には、次の事項が記載されている。
(ア)「第1図は永久磁石形回転電機の上半分断面図で固定子鉄心1に刻設したスロツト1aに固定子巻線2を収納しその固定子鉄心1をフレーム3の内径に嵌挿して設け、固定子鉄心1の内径に空隙を介して、回転子鉄心4を設ける。この回転子鉄心4のスロツト4aには棒状の永久磁石5を挿着させ回転軸6に嵌着して設け回転軸6の両端に軸受7の内輪を嵌着して設け、其の両側の軸受7を介して、反負荷側のブラケツト8と負荷側ブラケツト9に回転軸6を回転自在に支承して設ける。」(乙5の2 1ページ下から3行ないし2ページ7行)
(イ)「回転子鉄心4にスロツト4aを軸心に対しスキユー角θだけスキユーさせて設け、そのスロツト4aの中に永久磁石5を挿入する。」(乙5の2 3ページ下から3行ないし4ページ1行)
(ウ)これらの記載からみて、乙5には、スロット4aに永久磁石5が挿入される回転子鉄心4については、記載されているが、この回転子鉄心4が積層鉄心であることや回転子鉄心を積層するときの積層鉄心の固定手段については特段記載されていない。

ウ 乙6について
最初の親出願の出願前に公開された乙6には、次の事項が記載されている(下線は、理解のために当審で付けた。)。
(ア)「【0005】一方、回転子3は、積層鋼板からなる回転子鉄心6と、この回転子鉄心6に形成された例えば4個の貫通孔7内に収納された4個の永久磁石8とから構成されている。前記永久磁石8は、図8に示すように、その厚み方向にN極、S極が分布している。また、前記回転子鉄心6の中心部には回転軸9が挿入固定されている。」
(イ)「【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第1実施例を図1乃至図3を参照して説明する。図1において、回転子3は、積層鋼板からなる回転子鉄心6と、この回転子鉄心6に形成された例えば4個の貫通孔7a乃至7dを有し、この貫通孔7a乃至7dに挿入される永久磁石片12、13から構成されている。図1に示す回転子鉄心6の長さをLとし、前記永久磁石片12の長さをL1、永久磁石片13の長さをL2とした場合、L1とL2は、少なくとも積層鋼板1枚分の厚みt以上長さを異ならせている(L1=L2±t)。また、L1とL2との合計は略Lに等しくなるものとする(L=L1+L2)。」
(ウ)「【0027】図6において、20は例えばエポキシ樹脂等の樹脂21を収納した容器で、この容器20内に永久磁石片が挿入された回転子鉄心6からなる回転子3を浸漬することにより貫通孔と永久磁石片の固着を行うとともに積層鋼板からなる回転子鉄心6も強固に固着する。
【0028】このようにすることにより、永久磁石片全面に接着剤を塗布する工程を必要としていた従来に比し、組立工程の大幅な低減が可能となるとともに回転子鉄心に生ずる亀裂を防止でき回転子鉄心が分離するのも防止できるものである。」
(エ)これらの記載からみて、乙6には、貫通孔7に永久磁石8が挿入される回転子鉄心6が積層鋼板からなることについて記載され、さらには、回転子鉄心6の積層鋼板をエポキシ樹脂等の樹脂で強固に固着することが記載されている。

エ 乙7について
最初の親出願の出願前に公開された乙7には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0004】コギングトルクを低減させる有効な手段として回転子を軸方向に積層する際に回転子の回転方向である周方向に等間隔にずらして配置する手法いわゆるスキューが知られている。・・・」
(イ)「【0023】
【実施例】(実施例1)次に本発明の実施例について示す。図1は複数の永久磁石を埋め込んだ回転子と、周方向に均等間隔に並んだ複数のスロットを有する固定子と、前記スロットに巻線を施したコイル部とを備え、マグネットトルクとリラクタンストルクにより回転駆動する電動機を示す。図に示すとおり、回転子内部に埋め込まれた永久磁石の磁極がNからSへ、もしくはNからSへ切り替わる回転子表面の位置が回転子の中心から成す角度を、それぞれの永久磁石について異なる角度で構成していることを特徴とする。
【0024】この図に示す構造を有する電動機の回転子が回転する場合、回転子内部に埋め込まれた永久磁石の磁極がNからSへ、もしくはNからSへ切り替わる回転子表面の位置が、固定子側に並んだスロット部とスロット開口部との間を通過する周期が永久磁石1、永久磁石2、永久磁石3、及び永久磁石4についてそれぞれ別のタイミングで通過することになる。」
(ウ)これらの記載からみて、乙7には、永久磁石が内部に埋め込まれた回転子が積層されたものであることについては、記載されているが、積層された回転子の固定手段については特段記載されていない。

オ 乙8について
最初の親出願の出願前に公開された乙8には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0016】図1に示すように、ロータ1のシャフト2には、ロータコア3が取り付けられており、ロータコア3は積層鋼板により形成されている。ロータコア3には多数の収容孔4が形成されている。この収容孔4は、軸方向に伸びており、ロータコア3の周方向に亘る複数箇所に形成されている。この各収容孔3には界磁となる永久磁石5が挿入して配置されている。
【0017】更に、収容孔4の周方向に関する両端部には、図2にも拡大して示すように、軸方向に伸びるスリット6が形成されている。ここまでは、従来技術と同様の構成になっている。
【0018】更に、本実施の形態では、スリット6に樹脂10を充填している。この樹脂10としては、シリカを充填したエポキシ樹脂等を採用することができる。このように樹脂10を充填しているため、ロータコア3と永久磁石5とが密着する。この結果、永久磁石5の周方向の端部における応力が緩和され、永久磁石5に割れが入る恐れがなくなり、耐遠心力強度が向上する。また、このように機械的な破損を防止することができるため、回転速度の向上やトルクの増加が可能となり、モータの性能向上やコストダウンや小型・軽量化が可能になる。」
(イ)これらの記載からみて、乙8には、収容孔4に永久磁石5が挿入されるロータコア3が積層鋼板により形成されることについては、記載されているが、積層鋼板を積層するときの固定手段については特段記載されていない。

カ 乙9について
最初の親出願の出願前に公開された乙9には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0019】図1、2示すように、硅素鋼板を回転軸1の軸方向に積層してなる回転子鉄心2は、その軸方向に亘り形成された溝2aを周方向に亘り等配に4個有する。各溝2aは、回転子鉄心2の径方向外方に向かって幅が漸減するようテーパ面を有する断面楔状の溝となっている。永久磁石3は、断面形状が溝2aの断面形状と略同形に形成してあり、その外周面が回転子鉄心2の外周面と連続するよう溝2a内に装着してある。溝2b,2cは溝2aの両側で溝2aに連続的に隣接して形成してあり、これらの溝2b,2cも含め回転子鉄心2と永久磁石3との間の空間にはアルミダイカストによりアルミニウム4が充填してある。
【0020】かくして永久磁石3は、溝2aのテーパ面とともにアルミニウム4により回転子鉄心2に強固に固着される。」
(イ)これらの記載からみて、乙9には、断面楔状の溝2aに永久磁石3が装着される回転子鉄心2が硅素鋼板の積層により形成されることについては、記載されているが、硅素鋼板を積層するときの固定手段については特段記載されていない。

キ 乙10について
最初の親出願の出願前に公開された乙10には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0020】一方、ロータ5は、所望の形状に打ち抜かれた珪素鋼板(軟磁性材)の積層体よりなるヨーク6と、ヨーク6に埋設された永久磁石7と、ヨーク6の中心部に嵌入された回転軸8と、永久磁石7が軸方向から脱落するのを防ぐためにヨーク6の軸方向両端面にそれぞれ備えられた端板9とで構成されている。」
(イ)これらの記載からみて、乙10には、永久磁石7が埋設されたヨーク6が珪素鋼板の積層体よりなることについては、記載されているが、珪素鋼板を積層するときの固定手段については特段記載されていない。

ク 乙11について
最初の親出願の出願前に公開された乙11には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0025】一方、ロ一タ3は、複数枚の電磁鋼板を積層してなるロータコア4の内部にロータ回転軸心と平行に複数の磁石挿入孔4aが設けられており、その中にそれぞれ一対の永久磁石片6−1と6−2を1極分の磁石とする永久磁石6が、周方向に偶数個、等間隔に並べて埋め込まれている。」
(イ)「【0066】図7に第6の実施形態を示す。
【0067】本実施形態では、電磁鋼板を積層して構成するロータコア4について、それらを互いに溶接により固定する際に、ロータ周方向において、内部に埋め込まれる永久磁石6が最も外周面に接近する部位を溶接部15としている。
【0068】溶接部15では、積層された鋼板どうしが電気的に接合された導通状態となるため、この部分に溶接深さと同じ厚さの導電性部材を設置したのと同様の効果が生じる。したがって、前述の実施形態と同様の効果が得られる上、溶接部15はロータ外周上にあり、常に外気と接しているので、ロータ3が回転することでその部分で発生した熱は効果的に冷却され、永久磁石6が高温になるのを抑制できる。」
(ウ)これらの記載からみて、乙11には、磁石挿入孔4aに永久磁石6が埋め込まれるロータコア4が電磁鋼板の積層により構成され、電磁鋼板を溶接部15での溶接により固定することが記載されている。

ケ 乙12について
最初の親出願の出願前に公開された乙12には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0017】実施例1.図1は本発明により製造される回転機用ロータのロータコアを示した図である。図1に示すように、本発明により製造される回転機用ロータのロータコア22は、円盤状の電磁鋼板24を複数枚積層して作られている。各電磁鋼板24は、高透磁率材料、例えば軟磁性材料等で構成されており、プレス加工等によって中心部に円筒状の軸スロット26が打ち抜かれ、さらに四つの直方体状の磁石スロット28が軸スロット26を囲むように等間隔で打ち抜かれている。プレス加工された電磁鋼板24は、複数枚密着固定してロータコア22が形成される。電磁鋼板24同士の密着固定は、溶接あるいは接着等、用途に応じて自由に選択可能である。」
(イ)「【0021】ブリッジ部間領域に非磁性領域32が形成された際の磁石による磁界形成の概念図を図3に示す。図3に示すとおり、長辺の外周側をN極、内周側をS極とする磁石34を埋設した場合、ブリッジ部間領域、つまり磁石角部周辺のみ非磁性領域32が形成されているため、磁界は主に磁石長辺の垂直方向にのみ発生し、ブリッジ部において回転磁界、つまりロータ回転に無効となる磁界が発生しない。したがって、磁石34の持つ磁界形成のエネルギーが主に回転トルクに寄与する有効な磁界にのみ費やされる。」
(ウ)これらの記載からみて、乙12には、磁石スロット28に磁石34が埋設されるロータコア22が電磁鋼板24を複数枚積層することにより構成され、電磁鋼板を溶接あるいは接着など用途に応じて選択した手段により密着固定することが記載されている。

コ 上記イ、エないしキに示すように、乙5及び乙7ないし10には、回転子積層鉄心の積層板の固定手段について示されていない。これは、乙5及び乙7ないし10に示される技術が、回転子積層鉄心を構成する積層板の固定手段についての技術ではなく、さらに、この固定手段と技術的に関連するような技術でもないことから、乙5及び乙7ないし10には、回転子積層鉄心の積層板の固定手段については、特段の事項を示さなかったものと解される。このことは、乙5及び乙7ないし10に接した当業者は、乙5及び乙7ないし10に記載された技術を実施するにあたって、回転子積層鉄心の積層板の固定手段は、かしめ等の特定の手段に限られるものではなく、当時知られていた固定手段を任意に使用できると認識するといえる。そうすると、乙5及び乙7ないし10から、複数の磁石挿入孔に永久磁石が挿入される回転子積層鉄心の積層は、当然に、かしめを用いるとはいえず、当時知られていた固定手段から任意の手段が用いられていたといえる。
そして、この当時知られていた回転子積層鉄心の積層の固定手段に関し、乙4には、積層鉄心3が板状磁性部材を積層し、抜きかしめ等で固着一体化することが記載されており、乙6には、回転子鉄心6の積層鋼板をエポキシ樹脂等の樹脂で強固に固着することが記載されている。さらに、乙11には、ロータコア4が電磁鋼板の積層により構成され、電磁鋼板を溶接部15での溶接により固定することが記載され、さらに乙12には、ロータコア22が電磁鋼板24を複数枚積層することにより構成され、電磁鋼板を溶接あるいは接着など用途に応じて選択した手段により密着固定することが記載されている。これらの記載からみて、最初の親出願の出願時に、回転子積層鉄心の積層板をかしめで固定することだけでなく、溶接や接着で固定することも知られていたことがわかり、技術常識であったといえ、また、乙5及び乙7ないし10から、複数の磁石挿入孔に永久磁石が挿入される回転子積層鉄心の積層の固着が、当然にかしめを用いるものではないことがわかる。したがって、「複数の磁石挿入孔に永久磁石が挿入される回転子積層鉄心の積層は、かしめを用いるものに限られない」ことは、最初の親出願の出願時の技術常識であったといえる。

(2) 最初の親出願の明細書等に記載された発明について
ア 最初の親出願の出願当初の明細書等には、甲3によれば、次の事項が記載されている(下線は、理解のために当審で付けた。)。なお、最初の親出願は、原出願の実際の出願日である平成22年12月27日まで、明細書等の補正はされていない。

(ア)「【請求項1】
複数の鉄心片がかしめ部を介してかしめ積層された回転子積層鉄心の複数の磁石挿入孔に挿入する永久磁石を、樹脂を前記磁石挿入孔に注入して固定する回転子積層鉄心の製造装置であって、
前記磁石挿入孔の樹脂注入時に、前記回転子積層鉄心の上下に前記磁石挿入孔を実質的に閉塞する上板部材及び下板部材を備えると共に、前記上板部材及び前記下板部材のいずれか一方に前記磁石挿入孔に前記樹脂を注入する樹脂ポットを備え、
しかも、前記回転子積層鉄心の表面から突出する前記かしめ部が当接する側に位置する前記上板部材又は前記下板部材には、前記かしめ部の逃げ空間が設けられていることを特徴とする回転子積層鉄心の製造装置。」

(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、回転子積層鉄心の外側部分に設けられた複数の磁石挿入孔に永久磁石を挿入し、更に、この永久磁石を樹脂によって封止固定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載されている磁石埋め込み型回転子においては、磁石挿入孔に挿入される永久磁石を、磁石挿入孔内に樹脂を封入して固定することが開示されている。この特許文献1においては、それぞれの磁石挿入孔の半径方向内側位置に更に樹脂注入孔部を設けると共に、磁石挿入孔と樹脂注入孔部とを連通溝部で連通させておき、回転子積層鉄心を上下から上型及び下型で押圧した後、前記樹脂注入孔部から樹脂を所定の圧力によって注入し、磁石挿入孔内の永久磁石を固定するものであった。
【0003】
特開2002−34187号公報」

(ウ)「【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1記載の技術においては、回転子積層鉄心を形成する各鉄心片がかしめ積層された特に鉄心片の板厚が0.5mm以下の薄いものでは、かしめ部の一部が回転子積層鉄心の上下いずれかの面から少しの範囲で突出してしまう。これを上型又は下型で押圧しながら磁石挿入孔を閉塞しようとすると、前記の突出したかしめ部が上型又は下型の押圧面と回転子積層鉄心との間に微小な隙間を生じさせて封止樹脂の漏れを引き起こす原因となるため、押圧時に非常に大きな荷重をかけて押し潰す必要があった。しかし、この突出したかしめ部を押し潰すための荷重をかけることにより、かしめ部の強度が不安定になったり、設備が大型化する等の問題があった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、各鉄心片がかしめ部を介して積層されている回転子積層鉄心において、樹脂漏れのない磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止が可能な回転子積層鉄心の製造装置及び製造方法を提供することを目的とする。」

(エ)「【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る回転子積層鉄心の製造装置は、複数の鉄心片がかしめ部を介してかしめ積層された回転子積層鉄心の複数の磁石挿入孔に挿入する永久磁石を、樹脂を前記磁石挿入孔に注入して固定する回転子積層鉄心の製造装置であって、前記磁石挿入孔の樹脂注入時に、前記回転子積層鉄心の上下に前記磁石挿入孔を実質的に閉塞する上板部材及び下板部材を備えると共に、前記上板部材及び前記下板部材のいずれか一方に前記磁石挿入孔に前記樹脂を注入する樹脂ポットを備え、しかも、前記回転子積層鉄心の表面から突出する前記かしめ部が当接する側に位置する前記上板部材又は前記下板部材には、前記かしめ部の逃げ空間が設けられている。
【0007】
ここで、第1の発明に係る回転子積層鉄心の製造装置において、前記樹脂は熱硬化性樹脂であって、前記上板部材及び前記下板部材にはそれぞれ、これらを加熱する第1、第2の熱源を備え、更に、前記樹脂ポットの樹脂排出口と前記磁石挿入孔との間は樹脂溝によって連結され、かつ、前記上板部材及び前記下板部材のいずれか一方又は双方には、樹脂封入時に前記磁石挿入孔内の空気を外部に逃がすベントが設けられているのが好ましい。
【0008】
また、第2の発明に係る回転子積層鉄心の製造方法は、複数の鉄心片がかしめ部を介してかしめ積層された回転子積層鉄心の複数の磁石挿入孔に挿入する永久磁石を、熱硬化性樹脂を前記磁石挿入孔に注入して固定する回転子積層鉄心の製造方法であって、前記回転子積層鉄心の上下に、いずれか一方には前記磁石挿入孔に前記熱硬化性樹脂を注入する樹脂ポットを備え、それぞれ加熱源によって加熱された上板部材及び下板部材を配置し、更に、前記回転子積層鉄心の前記かしめ部が突出する側に位置する前記上板部材又は前記下板部材には、前記かしめ部の逃げ空間を形成して、前記上板部材及び前記下板部材とで前記回転子積層鉄心を上下から押圧して樹脂封止する際に、封止される前記熱硬化性樹脂の漏洩を防止している。
【発明の効果】
【0009】
請求項1、2記載の回転子積層鉄心の製造装置、及び請求項3記載の回転子積層鉄心の製造方法においては、磁石挿入孔の樹脂注入時に、回転子積層鉄心の上下に磁石挿入孔を実質的に閉塞する上板部材及び下板部材を備え、回転子積層鉄心の表面から突出するかしめ部が当接する側に位置する上板部材又は下板部材には、かしめ部の逃げ空間が設けられているので、表面から突出したかしめ部が逃げ空間内に入りこみ、これによって上板部材及び下板部材によって回転子積層鉄心を押圧する力を最小にすることができる。また、これによって、設備を小型化することができる。そして、突出したかしめ部に大きな荷重が掛からないので、かしめ部が常時安定したかしめ強度を有する。特に、請求項2記載の回転子積層鉄心の製造装置においては、樹脂は熱硬化性樹脂であって、上板部材及び下板部材にはそれぞれ、これらを加熱する第1、第2の熱源を備え、更に、樹脂ポットの樹脂排出口と磁石挿入孔との間は樹脂溝(ランナー)によって連結され、かつ、上板部材及び下板部材のいずれか一方又は双方には、樹脂封入時に磁石挿入孔内の空気を外部に逃がすベントが設けられているので、余分な樹脂を必要とせず、確実強固に永久磁石を磁石挿入孔に固定することができる。」

(オ)「【0011】
図1〜図3に示すように、本発明の一実施の形態に係る回転子積層鉄心の製造装置10は、垂直に立設された4本のガイドポスト11の上下両端に配置される上固定台12及び下固定台13と、上固定台12及び下固定台13の中間に配置され、ガイドポスト11に沿って昇降する昇降台14と、上固定材12及び昇降台14にそれぞれ固定される上板部材15及び下板部材16とを有している。上板部材15はバッキングプレート17、上型プレート18及び上押圧プレート19を備え、下板部材16は昇降台14上に載置される下型プレート20及びその上に載置される下押圧プレート21とを有している。下押圧プレート21の中央には回転子積層鉄心22の中央に形成される軸孔23に装着されるガイド芯24を有している。なお、この実施の形態においては、下押圧プレート21とガイド芯24によって回転子積層鉄心22を載置状態で搬送するトレイを形成している。
【0012】
下固定台13の上部には昇降手段の一例である油圧シリンダ25が設けられ、この油圧シリンダ25によって上部の昇降台14がガイドポスト11に沿って昇降する構造となっている。なお、昇降手段として、エアシリンダ、雌ねじと雄ねじの組み合わせを用いたジャッキ機構、電動シリンダ、トグル機構等も適宜使用できる。バッキングプレート17の中央には開口部28が設けられ、開口部28に対応する上型プレート18及び上押圧プレート19は、複数(この実施の形態では8)の樹脂ポット(シリンダ)29が貫通状態で形成されている。この樹脂ポット29は、図2に示すように回転子積層鉄心22を平面視して、その外周部に形成された8個の磁石挿入孔30の内側位置にある。それぞれの樹脂ポット29内の樹脂を押し出すプランジャ32は共通ベース33に固定され、共通ベース33は上固定台12に固定された油圧シリンダ34によって昇降され、樹脂ポット29内に投入された樹脂を底から排出するようにしている。なお、上型プレート18には第1の熱源(加熱源)の一例である図示しない電熱ヒータが設けられ、樹脂ポット29を約170℃近傍の温度に加熱している。
【0013】
図2(平面的位置を示すのみ)及び図3に示すように、樹脂ポット29の底部には樹脂ポット29の樹脂排出口と磁石挿入孔30との樹脂の通路となる樹脂溝(ランナー)35が形成されている。この樹脂溝35は回転子積層鉄心22に当接する上押圧プレート19(即ち、上板部材15の底部)に形成されている。一方、回転子積層鉄心22の底部には下板部材16を構成する下押圧プレート21が配置され、磁石挿入孔30からの樹脂漏れを防止している。また、下押圧プレート21には、樹脂封入時に磁石挿入孔30からの空気を逃がす図示しないベントが設けられている。このベントは深さが0.03mm程度の溝からなり、空気は逃がすが樹脂は通過しないようになっており、これを上押圧プレート19に形成することもできる。なお、下板部材16を構成する下型プレート20には第2の熱源(加熱源)の一例である電熱ヒータが設けられて、下型プレート20を約170℃に加熱している。従って、樹脂ポット29から排出された樹脂は樹脂溝35を通過し、磁石挿入孔30内に入り、内部に配置されている永久磁石37の周囲を覆い、それぞれの永久磁石37を磁石挿入孔30に固定する。
【0014】
回転子積層鉄心22は複数のプレス加工によって形成された複数枚の鉄心片39がかしめ積層されて形成されているが、鉄心片39の形成時にかしめ部(この実施の形態ではV字状かしめ)40、41が形成されている。そして、図3に示す回転子積層鉄心22では最上部の鉄心片39aは下層の鉄心片39のかしめ部40、41のかしめ突起が突出する抜き孔42がそれぞれ形成されているが、この抜き孔42から僅少の範囲で下層の鉄心片39のかしめ部40、41(詳細にはかしめ突起)が突出している。
【0015】
回転子積層鉄心22の上面を押圧する上板部材15の一部である上押圧プレート19の下面が完全平面である場合、鉄心片39aから突出するかしめ部40、41を押圧することになるので、この上押圧プレート19の底面で、かしめ部40、41が突出する位置に逃げ空間43、44を形成し、突出したかしめ部40、41を上押圧プレート19が押さえつけないようにしている。この逃げ空間は、回転子積層鉄心22のかしめ部が、回転子積層鉄心22の下面から突出する場合には、下押圧プレート21に形成することになる。これによって、上板部材15(具体的には上押圧プレート19)と下板部材16(具体的には下押圧プレート21)を回転子積層鉄心22の上面及び下面に密接させることができるので、回転子積層鉄心22に形成された磁石挿入孔30を確実に上板部材15及び下板部材16が閉塞できて樹脂漏れを防止でき、更には、突出するかしめ部40、41にもかしめ方向とは逆の荷重がかからないので、回転子積層鉄心22のかしめ強度を維持できる。
【0016】
続いて、この回転子積層鉄心の製造装置10の動作及びその作用について説明する。上板部材15及び下板部材16をそれぞれ電熱ヒータで加熱した状態で、油圧シリンダ25を作動させて昇降台14を下降させ、かつ油圧シリンダ34を作動させてプランジャ32を上昇させた状態で、下押圧プレート21に搭載された回転子積層鉄心22を下型プレート20の所定位置(例えば、位置決めピン等を介して)に配置する。ここで、回転子積層鉄心22は150〜170℃近傍に予め予熱されているのが好ましい。なお、下押圧プレート21とガイド芯24で回転子積層鉄心22の搬送用トレイを構成する。
【0017】
次に、油圧シリンダ25を上昇させて、下板部材16を押上げ、回転子積層鉄心22を上板部材15と下板部材16とで押圧挟持する。この時、回転子積層鉄心22の表面から突出するかしめ部40、41は、上板部材15に形成された逃げ空間43、44内にすっぽり入りこみ、上板部材15の上押圧プレート19が回転子積層鉄心22の上面に密着することになる。そして、回転子積層鉄心22が上押圧プレート19によってクランプされている状態で、各樹脂ポット29には所定の熱硬化性樹脂のタブレットを投入しておくものとするが、周囲の熱によってこの樹脂は溶解している。次に油圧シリンダ34を下げて、プランジャ32を押し下げ、樹脂ポット29内の樹脂を樹脂溝35を介して磁石挿入孔30内に注入する。なお、樹脂ポット29又はプランジャ32のいずれか一方には、プランジャ32の下降時に樹脂ポット29内に溜まる空気を逃がす図示しないベントを設けることもできる。これによって、磁石挿入孔30内に樹脂が封入され、内部に配置されている永久磁石37が固定される。なお、図示していないが永久磁石37は、磁石挿入孔30内の所定位置に固定されるように周囲に複数の突起が形成されている。」

イ また、最初の親出願の出願当初の図面には、次の図が図1として記載されている。


ウ 最初の親出願の明細書等に記載された発明について
最初の親出願の明細書等には、上記ア(イ)によれば、「回転子積層鉄心の外側部分に設けられた複数の磁石挿入孔に永久磁石を挿入し、更に、この永久磁石を樹脂によって封止固定する」「方法」が記載(【0001】)されており、同じくア(イ)によれば、「磁石埋め込み型回転子においては、磁石挿入孔に挿入される永久磁石を、磁石挿入孔内に樹脂を封入して固定する」(【0002】)方法として、「磁石挿入孔の半径方向内側位置に更に樹脂注入孔部を設けると共に、磁石挿入孔と樹脂注入孔部とを連通溝部で連通させておき、回転子積層鉄心を上下から上型及び下型で押圧した後、前記樹脂注入孔部から樹脂を所定の圧力によって注入し、磁石挿入孔内の永久磁石を固定する」(【0002】)ことが記載されている。
これらの記載から、「上型」と「下型」は、磁石挿入孔の半径方向内側位置に設けられた樹脂注入孔内に樹脂を注入できるものであることが理解できる。また、ここで記載された回転子積層鉄心は、複数の板を積層した積層鉄心であり、積層した板の固定手段を特定の手段に限定するものではないことは明らかである。そして、上記(1)に示すように、複数の磁石挿入孔に永久磁石が挿入される回転子積層鉄心の積層した板の固定手段は、かしめを用いるものに限られず、溶接や接着を用いることが技術常識であったことから、最初の親出願の明細書等に記載された上記ア(イ)に示される回転子積層鉄心には、かしめにより積層板を固定した鉄心に限られず、溶接や接着などのかしめ以外の手段により固定されたものも含まれているといえる。
最初の親出願の明細書等には、上記ア(イ)に示す記載に続いて、ア(ウ)に示すように「しかしながら、この特許文献1記載の技術においては、回転子積層鉄心を形成する各鉄心片がかしめ積層された特に鉄心片の板厚が0.5mm以下の薄いものでは、かしめ部の一部が回転子積層鉄心の上下いずれかの面から少しの範囲で突出してしまう」(【0004】)と記載されている。この記載から、最初の親出願の明細書等には、回転子積層鉄心を形成する各鉄心片がかしめ積層され、鉄心片の板厚が0.5mm以下の薄いものでは、かしめ部の一部が回転子積層鉄心の上下いずれかの面から少しの範囲で突出してしまうことが示されているといえる。また、この記載から、各鉄心片がかしめ積層されていないもの(すなわち、溶接や接着などにより固定されているもの)やかしめ積層されていても回転子積層鉄心の鉄心片の板厚が0.5mm以下でないものは、かしめ部の一部が回転子積層鉄心の上下いずれかの面から少しの範囲で突出するとはいえないことも理解できる。
そして、最初の親出願の明細書等には、上記ア(イ)に示すように、「回転子積層鉄心の外側部分に設けられた複数の磁石挿入孔に永久磁石を挿入し、更に、この永久磁石を樹脂によって封止固定する装置及び方法に関する」(【0001】)発明が記載されており、ここでいう回転子積層鉄心は、鉄心片の板厚が0.5mm以下のものをかしめ積層したものに限定されていないから、最初の親出願の明細書等には、「回転子積層鉄心を形成する各鉄心片がかしめ積層された特に鉄心片の板厚が0.5mm以下の薄いもので」(【0004】)、「かしめ部の一部が回転子積層鉄心の上下いずれかの面から少しの範囲で突出してしまう」(【0004】)ものと、「かしめ部の一部が回転子積層鉄心の上下いずれかの面から少しの範囲で突出してしまう」(【0004】)ことがないものの両者を含む、複数の鉄心片が積層された回転子積層鉄心に関する発明も記載されていると理解できる。
そして、最初の親出願の明細書等には、上記ア(オ)に示すように「上板部材15(具体的には上押圧プレート19)と下板部材16(具体的には下押圧プレート21)を回転子積層鉄心22の上面及び下面に密接させることができるので、回転子積層鉄心22に形成された磁石挿入孔30を確実に上板部材15及び下板部材16が閉塞できて樹脂漏れを防止でき」(【0015】)ることが示されている。これは、上記ア(オ)に示すように最初の親出願の明細書等に記載された発明は、「(上型プレート18及び上押圧プレート19に形成された)樹脂ポット29内の樹脂を樹脂溝35を介して磁石挿入孔30内に注入する」(【0017】)ものであるが、このとき、上板部材15(上押圧プレート19)と下板部材16(下押圧プレート21)が回転子積層鉄心22の上面及び下面に密接しているため、上板部材15(上押圧プレート19)及び下板部材16(下押圧プレート21)と回転子積層鉄心22との間からの樹脂漏れが防止されていることを示したものと理解できる。
この上記ア(オ)に示されるものは、「上押圧プレート19の底面で、かしめ部40、41が突出する位置に逃げ空間43、44を形成し、突出したかしめ部40、41を上押圧プレート19が押さえつけないようにしている」(【0015】)ものである。これは、「回転子積層鉄心22は・・・複数枚の鉄心片39がかしめ積層されて形成されているが、鉄心片39の形成時にかしめ部(この実施の形態ではV字状かしめ)40、41が形成されている」(【0014】)ことから、「上板部材15(具体的には上押圧プレート19)と下板部材16(具体的には下押圧プレート21)を回転子積層鉄心22の上面及び下面に密接させる」(【0015】)ときに回転子積層鉄心22の上面及び下面にかしめ部がなければ、上板部材15と下板部材16を押圧させることで密接させることができるが、回転子積層鉄心22の上面又は下面にかしめ部があると、「回転子積層鉄心22の上面を押圧する上板部材15の一部である上押圧プレート19の下面が完全平面である場合、鉄心片39aから突出するかしめ部40、41を押圧することになるので、この上押圧プレート19の底面で、かしめ部40、41が突出する位置に逃げ空間43、44を形成し、突出したかしめ部40、41を上押圧プレート19が押さえつけないように」(【0015】)する必要があることを示したものと理解できる。そして、このような対処が必要なものを実施例として示し、鉄心片39aから突出するかしめ部40、41がないものについては、「回転子積層鉄心22の上面を押圧する上板部材15の一部である上押圧プレート19の下面が完全平面で」(【0015】)あっても、上板部材15と下板部材16を回転子積層鉄心22の上面及び下面に密接させることができることは、明らかであるから、「鉄心片39の形成時にかしめ部(この実施の形態ではV字状かしめ)40、41が形成されている」ものに最初の親出願の明細書等に記載された発明が限定されたものではないと理解できる。
そうすると、最初の親出願の明細書等には、回転子積層鉄心22を上板部材15と下板部材16とで上下から押圧して、磁石挿入口30内に樹脂を注入することで、上板部材15及び下板部材16と回転子積層鉄心22との間からの樹脂漏れが防止されることが示され、さらに、回転子積層鉄心22が、複数枚の鉄心片39をかしめ積層して形成したものでは、かしめ部40、41が形成されるので、この場合には、かしめ部40、41が突出する位置に逃げ空間43、44を形成した上板部材15と下板部材16を用いて、回転子積層鉄心22を押圧することが示されているといえる。したがって、最初の親出願の明細書等には、回転子積層鉄心22を上板部材15と下板部材16とで上下から押圧して、磁石挿入口30内に樹脂を注入することで、上板部材15及び下板部材16と回転子積層鉄心22との間からの樹脂漏れが防止されることが記載されているといえる。
また、最初の親出願の明細書等には、上記ア(ア)に示すように、「前記回転子積層鉄心の上下に前記磁石挿入孔を実質的に閉塞する上板部材及び下板部材を備えると共に、前記上板部材及び前記下板部材のいずれか一方に前記磁石挿入孔に前記樹脂を注入する樹脂ポットを備え」ることが記載され、最初の親出願の明細書の発明の詳細な説明には、上記ア(オ)に示すように「プランジャ32を押し下げ、樹脂ポット29内の樹脂を樹脂溝35を介して磁石挿入孔30内に注入する。」)ことも記載されている。これらのことから、最初の親出願の明細書等には、前記回転子積層鉄心の上下に、いずれか一方には前記磁石挿入孔に前記樹脂を注入する複数の樹脂ポットと該樹脂ポットにそれぞれ対応するプランジャとを備えた上板部材及び下板部材を配置することも記載されているといえる。
以上のことから、最初の親出願の明細書等には、回転子積層鉄心22を上板部材15と下板部材16とで上下から押圧して、磁石挿入口30内に樹脂を注入する発明が記載されており、また、前記回転子積層鉄心の上下に、いずれか一方には前記磁石挿入孔に前記樹脂を注入する複数の樹脂ポットと該樹脂ポットにそれぞれ対応するプランジャとを備えた上板部材及び下板部材を配置することも記載されているから、請求人の主張する最初の親出願の明細書等に記載された発明は、「かしめ部が突出する側に位置する上板部材又は下板部材に形成された、かしめ部の逃げ空間を備えるもの、樹脂ポットが上板部材又は下板部材を貫通するものを必須の要件とした発明である」との主張は、採用することができない。また、他に本件発明1が最初の親出願の明細書等に記載されていないとする事項も見当たらない。
したがって、本件発明1は、最初の親出願の明細書等に記載されていたと認められる。

(3) 原出願の明細書等に記載された発明について
ア 原出願の出願当初の明細書等には、甲4によれば、特許請求の範囲に、次の事項が記載され、明細書の発明の詳細な説明には、最初の親出願の出願当初の明細書の発明の詳細な説明の記載と同じ事項が記載されている。

「【請求項1】
複数の鉄心片が積層された回転子積層鉄心の複数の磁石挿入孔に挿入する永久磁石を、熱硬化性樹脂を前記磁石挿入孔に注入して固定する回転子積層鉄心の製造方法であって、
前記回転子積層鉄心の上下に、いずれか一方には上下に貫通して形成され前記磁石挿入孔に前記熱硬化性樹脂を注入する樹脂ポットを備えた上板部材及び下板部材を配置し、前記上板部材及び前記下板部材とで前記回転子積層鉄心を上下から押圧して、前記樹脂ポット内の前記熱硬化性樹脂をプランジャで押し出して、前記磁石挿入孔に充填することを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。

【請求項2】
請求項1記載の回転子積層鉄心の製造方法において、前記上板部材及び前記下板部材は加熱源によって加熱されていることを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。

【請求項3】
請求項1又は2記載の回転子積層鉄心の製造方法において、前記樹脂ポットは、平面視して外周部に配置された前記磁石挿入孔の半径方向内側にあることを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。

【請求項4】
請求項1又は2記載の回転子積層鉄心の製造方法において、前記磁石挿入孔と前記樹脂ポットは樹脂溝によって連結されていることを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。

【請求項5】
請求項1又は2記載の回転子積層鉄心の製造方法において、前記樹脂ポットの一部が前記磁石挿入孔にラップしていることを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。」

イ 上記アに示すように原出願の明細書の発明の詳細な説明には、最初の親出願の明細書の発明の詳細な説明に記載された事項と同じ事項が記載されている。また、本件特許の実際の出願日である平成23年7月4日の時点での原出願の請求項の記載は、下記(ア)に示すようであり(なお、同日に補正されているが、下記記載は、当該補正前のものである。)、また、明細書の発明の詳細な説明の記載は、【0006】、【0007】が削除され、【0008】が下記(イ)のように補正されたが、【0004】、【0005】及び【0011】ないし【0019】の記載は、上記(2)に示す、最初の親出願の記載と同様である。
(ア)「【請求項1】
複数の鉄心片が積層された回転子積層鉄心の複数の磁石挿入孔に挿入する永久磁石を、熱硬化性樹脂を前記磁石挿入孔に注入して固定する回転子積層鉄心の製造方法であって、
前記回転子積層鉄心の上下に、いずれか一方には前記磁石挿入孔に前記熱硬化性樹脂を注入する樹脂ポットを備えた上板部材及び下板部材を配置し、前記上板部材及び前記下板部材とで前記回転子積層鉄心を上下から押圧して、前記樹脂ポット内の前記熱硬化性樹脂をプランジャで押し出して、前記磁石挿入孔に充填し、しかも、前記樹脂ポットは該樹脂ポットが形成されている前記上板部材又は前記下板部材を上下に貫通して形成されていることを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の回転子積層鉄心の製造方法において、前記上板部材及び前記下板部材は加熱源によって加熱されていることを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の回転子積層鉄心の製造方法において、前記樹脂ポットは、平面視して外周部に配置された前記磁石挿入孔の半径方向内側にあることを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の回転子積層鉄心の製造方法において、前記磁石挿入孔と前記樹脂ポットは樹脂溝によって連結されていることを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の回転子積層鉄心の製造方法において、前記樹脂ポットの一部が前記磁石挿入孔にラップしていることを特徴とする回転子積層鉄心の製造方法。」

(イ)「【0008】
本発明に係る回転子積層鉄心の製造方法は、複数の鉄心片が積層された回転子積層鉄心の複数の磁石挿入孔に挿入する永久磁石を、熱硬化性樹脂を前記磁石挿入孔に注入して固定する回転子積層鉄心の製造方法であって、
前記回転子積層鉄心の上下に、いずれか一方には前記磁石挿入孔に前記熱硬化性樹脂を注入する樹脂ポットを備えた上板部材及び下板部材を配置し、前記上板部材及び前記下板部材とで前記回転子積層鉄心を上下から押圧して、前記樹脂ポット内の前記熱硬化性樹脂をプランジャで押し出して、前記磁石挿入孔に充填し、しかも、前記樹脂ポットは該樹脂ポットが形成されている前記上板部材又は前記下板部材を上下に貫通して形成されている。」

ウ これらの事項、特に、原出願の明細書の発明の詳細な説明の【0004】、【0005】及び【0011】ないし【0019】の記載は、上記(2)に示す、最初の親出願の記載と同様であることから、原出願の当初、及び本件特許の出願時点の明細書等には、上記(2)に示す、最初の親出願の明細書等に記載された発明と同様の発明が記載されていたといえる。
したがって、本件発明1は、原出願の出願当初及び本件特許の出願時の明細書等に記載されていたといえる。

(4)無効理由1のまとめ
前記(2)及び(3)に示すように、本件発明1は、最初の親出願及び原出願の明細書等に記載されていたものであって、新たな技術的事項を導入するものとはいえないから、本件特許の出願は、特許法第44条第2項の規定により、最初の親出願の出願日である平成17年1月12日にしたものとみなされる。
これに対し、無効理由1において、本件発明1が記載されているものと請求人が主張する甲1は、本件特許の出願の後である平成18年7月27日に公開されたものであるから、本件発明1は、本件特許の出願前に頒布された刊行物に記載された発明であるとはいえない。
よって、無効理由1により、本件発明1についての特許を無効とすることはできない。

請求人は、最初の親出願の明細書等に記載された発明の技術的思想は、「各鉄心片がかしめ積層された回転子積層鉄心を上型又は下型で押圧しながら磁石挿入孔を閉塞しようとすると、突出したかしめ部が上型又は下型の押圧面と回転子積層鉄心との間に微小な隙間を生じさせて封止樹脂の漏れを引き起こす原因となるため、押圧時に非常に大きな荷重をかけて押し潰す必要があったが、突出したかしめ部を押し潰すための荷重をかけることにより、かしめ部の強度が不安定になったり、設備が大型化する」等の課題を解決するために、「突出するかしめ部が当接する側に位置する上板部材又は下板部材に」、「かしめ部の逃げ空間」を形成し、「表面から突出したかしめ部が逃げ空間内に入りこむ」ことによって、「上板部材及び下板部材によって回転子積層鉄心を押圧する力を最小に」し、「設備を小型化」し、「かしめ部が常時安定したかしめ強度を有する」というものであると主張する。しかし、最初の親出願の明細書等に請求人が主張するような技術的思想が記載されていたとしても、最初の親出願の明細書等に記載されていると当業者が理解できるものは、当該技術的思想に限られるものではなく、上記(2)に示すように、この分野における技術常識をもってみれば、上記(2)及び(3)に示す事項も記載されているといえるから、請求人の主張は採用することができない。

2 無効理由2について
明細書の発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件を充足するためには、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度の記載があることを要する。
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、前記「1 無効理由1について」の(2)ア(イ)及び(ウ)、(オ)と同様の事項が記載(ただし、(オ)の「本発明の一実施の形態に係る回転子積層鉄心の製造装置10は」は、「本発明の一実施の形態を適用した回転子積層鉄心の製造装置10は」とされている。)されており、また、本件特許の図面には、「1 無効理由1について」の(2)イに示す図と同じ図が記載されている。
これらの事項から、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、前記「1 無効理由1について」のウに示すものと同様に、回転子積層鉄心22を上板部材15と下板部材16とで上下から押圧して、磁石挿入口30内に樹脂を注入することで、上板部材15及び下板部材16と回転子積層鉄心22との間からの樹脂漏れが防止されることが示され、さらに、回転子積層鉄心22が、複数枚の鉄心片39をかしめ積層して形成したものでは、かしめ部40、41が突出する位置に逃げ空間43、44を形成した上板部材15と下板部材16を用いて、回転子積層鉄心22を押圧することが示されているといえる。そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明に接した当業者は、鉄心片39aから突出するかしめ部40、41がないものについては、「回転子積層鉄心22の上面を押圧する上板部材15の一部である上押圧プレート19の下面が完全平面で」(【0015】)あっても、上板部材15と下板部材16を回転子積層鉄心22の上面及び下面に密接させることができ、回転子積層鉄心22の上面及び下面にかしめ部があるものについては、「回転子積層鉄心22の上面を押圧する上板部材15の一部である上押圧プレート19の下面が完全平面である場合、鉄心片39aから突出するかしめ部40、41を押圧することになるので、この上押圧プレート19の底面で、かしめ部40、41が突出する位置に逃げ空間43、44を形成し、突出したかしめ部40、41を上押圧プレート19が押さえつけないように」(【0015】)することで、上板部材15と下板部材16を回転子積層鉄心22の上面及び下面に密接させ、樹脂を漏れることなく磁石挿入口にのみに注入できると理解する。
そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件特許明細書の【0005】に記載された「樹脂漏れのない磁石挿入孔への永久磁石の樹脂封止が可能な回転子積層鉄心の製造方法を提供する」という課題を解決する発明がその実施をすることができる程度に記載されているといえる。
また、他に、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が当業者が出願時の技術常識を考慮しても本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に説明されているとはいえないとする事項もない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、無効理由2により、本件発明1についての特許を無効とすることはできない。
請求人は、「樹脂を前記磁石挿入孔にのみ注入して固定する」構成に含まれる、例えば「かしめ部を備えない」構成や「かしめ部が突出する側に位置する上板部材又は下板部材にかしめ部の逃げ空間が形成されない」構成については発明の詳細な説明に記載がないと主張する。しかしながら、「かしめ部を備えない」ものについても発明の詳細な説明の記載から、当業者がその実施をすることができることは、前記のとおりであり、また、「かしめ部が突出する」ものについては、逃げ空間43、44を形成した上板部材15と下板部材16を用いて実施できる程度に発明の詳細な説明に記載されていることも、前記のとおりであるから、請求人の主張は採用することができない。

3 無効理由3について
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明において当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものであるか否かを検討して判断すべきものと解される。
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、前記「1 無効理由1について」の(2)ア(イ)及び(ウ)、(オ)と同様の事項が記載(ただし、(オ)の「本発明の一実施の形態に係る回転子積層鉄心の製造装置10は」は、「本発明の一実施の形態を適用した回転子積層鉄心の製造装置10は」とされている。)されており、また、本件特許の図面には、「1 無効理由1について」の(2)イに示す図と同じ図が記載されている。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「上板部材15(具体的には上押圧プレート19)と下板部材16(具体的には下押圧プレート21)を回転子積層鉄心22の上面及び下面に密接させることができるので、回転子積層鉄心22に形成された磁石挿入孔30を確実に上板部材15及び下板部材16が閉塞できて樹脂漏れを防止でき」(【0015】)ることが示されているから、発明が解決する課題の一つとして、樹脂を磁石挿入孔30内に注入するときの樹脂漏れを防止することが示されているといえる。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、樹脂を磁石挿入孔30内に注入するときの樹脂漏れを防止するために、回転子積層鉄心22の上下に、いずれか一方には磁石挿入孔30に樹脂を注入する複数の樹脂ポット29と該樹脂ポット29にそれぞれ対応するプランジャ32とを備えた上板部材15及び下板部材16を配置するとともに、回転子積層鉄心22を上板部材15と下板部材16とで上下から押圧して、磁石挿入口30内に樹脂を注入することで上記課題を解決するものが示されている(前記「1 無効理由1について」の(2)ウ参照。)。
そして、本件特許の特許請求の範囲の請求項1には、「樹脂を前記磁石挿入孔にのみ注入して固定する回転子積層鉄心の製造方法であって」、「前記回転子積層鉄心の上下に、いずれか一方には前記磁石挿入孔に前記樹脂を注入する複数の樹脂ポットと該樹脂ポットにそれぞれ対応するプランジャとを備えた上板部材及び下板部材を配置し、前記上板部材及び前記下板部材とで前記回転子積層鉄心を上下から押圧して、前記永久磁石の樹脂封止を行う」ことが記載されている。
そうすると、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載したものであるから、無効理由3により、本件発明1についての特許を無効とすることはできない。
請求人は、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないと主張するが、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者が回転子積層鉄心22の上下に、いずれか一方には磁石挿入孔30に樹脂を注入する複数の樹脂ポット29と該樹脂ポット29にそれぞれ対応するプランジャ32とを備えた上板部材15及び下板部材16を配置するとともに、回転子積層鉄心22を上板部材15と下板部材16とで上下から押圧して、磁石挿入口30内に樹脂を注入することで上記課題を解決するものが示されていると認識するのは、前記のとおりであるから、請求人の主張は採用することができない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1の特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2021-09-01 
結審通知日 2021-09-06 
審決日 2021-09-22 
出願番号 P2011-148498
審決分類 P 1 113・ 537- Y (H02K)
P 1 113・ 113- Y (H02K)
P 1 113・ 536- Y (H02K)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 窪田 治彦
特許庁審判官 長馬 望
田合 弘幸
登録日 2013-09-06 
登録番号 5357217
発明の名称 回転子積層鉄心の製造方法  
代理人 黒田 健二  
代理人 中村 恵子  
代理人 杉尾 雄一  
代理人 柳下 彰彦  
代理人 平田 忠雄  
代理人 鮫島 正洋  
代理人 吉村 誠  

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