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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1388810
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-19 
確定日 2022-09-13 
事件の表示 特願2016−197926「光検出測距(LIDAR)撮像システムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月15日出願公開、特開2017−106897〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年10月6日を出願日とする外国語書面出願(パリ条約による優先権主張、2015年12月9日、米国特許庁)であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

平成29年 2月28日 :翻訳文の提出
令和 2年 7月17日付け:拒絶理由通知書
同年10月 9日 :意見書及び手続補正書の提出
令和 3年 1月27日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同年2月1日:原査定の謄本の送達)
同年 5月19日 :審判請求書及び手続補正書の提出
同年 7月 5日 :前置報告書
同年10月15日 :上申書の提出
同年11月25日付け:審尋
令和 4年 2月10日 :回答書の提出


第2 令和3年5月19日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年5月19日にされた手続補正を却下する。

[補正の却下の決定の理由]
1 本件補正の概要
令和3年5月19日にされた特許請求の範囲についての補正(以下「本件補正」という。)は、以下の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載に補正することを含むものである。下線は補正箇所を示す。

(1) 本件補正前
「 【請求項1】
複数の反射光信号に基づいてターゲットの画像を形成するように構成された撮像システムであって、
複数の光信号を前記ターゲットに向かって送信するように構成された光送信アセンブリであって、前記複数の光信号の各々は前記複数の光信号の他方と異なる一意な特性を有し、前記複数の光信号の各々は異なる明るさの類似する色を有する、光送信アセンブリと、
前記ターゲットから反射された前記複数の光信号を受信して検出し、前記複数の光信号の各々を、前記複数の光信号の各々の前記一意な特性に基づいて区別するように構成された光検出器アセンブリと、
を備える、撮像システム。」

(2) 本件補正後
「 【請求項1】
複数の反射光信号に基づいてターゲットの画像を形成するように構成された撮像システムであって、
複数の光信号を前記ターゲットに向かって送信するように構成された光送信アセンブリであって、前記複数の光信号の各々は前記複数の光信号の他方と異なる一意な特性を有し、前記複数の光信号の各々は明るさが順に増加または減少する類似する色を有する、光送信アセンブリと、
前記ターゲットから反射された前記複数の光信号を受信して検出し、前記複数の光信号の各々を、前記複数の光信号の各々の前記一意な特性に基づいて区別するように構成された光検出器アセンブリと、
を備える、撮像システム。」

2 本件補正についての当審の判断
本件補正は、「光信号」について、本件補正前に「前記複数の光信号の各々は異なる明るさの類似する色を有する」とされていたものを「前記複数の光信号の各々は明るさが順に増加または減少する類似する色を有する」と補正することにより、前記複数の光信号の各々は異なる明るさであるだけでなく、明るさが順に増加または減少する点を限定するものである。
そして、本件補正前の請求項1に記載された発明と、本件補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、以下では、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか否か、すなわち、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(1) 本件補正発明
本件補正発明は、前記1(2)に摘記した、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

(2) 引用文献及び引用発明の認定
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由において引用された米国特許出願公開第2010/0008588号明細書(以下「引用文献1という。)には、次の事項が記載されている。(日本語訳及び下線は当合議体によるものである。)


「[0045] FIG. 2 illustrates a spectrum-multiplexed multiple-channel locating system 200 in accordance with various embodiments. In system 200, an object 204 that may be in a three-dimensional scene may be illuminated with multiple patterns 206 having different spectra generated using a multiple-channel pattern projector 201. The pattern projector 201 may comprise multiple broadband radiation sources 207 that may be substantially collimated using collimating lenses 208 and filtered using spectral filters 209 to produce first radiations 210 that may have different spectra. The pattern projector 201 may also comprise multiple modulating structures 211 modulating the first radiations 210 to produce the patterns 206, which may be projected onto the object 204 using projecting lenses 212. Object radiations 213 and 214 from a location 205 on the object 204 in response to the illumination 229 may be detected using one or more multiple-channel imaging systems such as 202 and 203. One imaging system 202 may include spectral filters 215 and imaging lenses 216 that may produce images with different spectra of the location 205 on different regions 217 of a single detector array 218. Another imaging system 203 may include a single imaging lens 219 that may produce an image of the location 205 on a multi-color detector array 220 comprising groups of pixels 221 with different spectral filters 222. A controller 223 may be in communication with and pass image data from the detector arrays 218 and 220 to a processor 224. Provided the image data 225 and 226, the projected patterns 206 and the locations and orientations of the multiple-channel pattern projector 201 and the multiple-channel imaging systems 202 and 203, the processor may estimate the location 205 on the object 204 in the three-dimensional scene. By estimating additional locations on the object either in parallel or in sequence, the processor 224 may produce a three-dimensional representation 227 of the object on a display 228.」
(日本語訳:「図2は、様々な実施形態による、スペクトル多重化されたマルチチャネル位置特定システム200を示している。システム200では、3次元シーンにあり得る物体204は、マルチチャネルパターンプロジェクタ201を使用して生成された異なるスペクトルを有する複数のパターン206で照らされ得る。パターンプロジェクタ201は、コリメートレンズ208を使用して実質的にコリメートされ、スペクトルフィルタ209を使用してフィルタリングされて、異なるスペクトルを有しうる第1の放射線210を生成するマルチブロードバンド放射源207を含むことができる。パターンプロジェクタ201は、また、第1の放射210を変調してパターン206を生成する複数の変調構造211を備えてもよく、このパターンは、投影レンズ212を用いて物体204上に投影され得る。照明229に応答する物体204上の位置205からの物体放射213及び214は、202及び203などの一つ又は複数のマルチチャネル画像化システムを使用して検出することができる。一つの画像化システム202は、単一の検出器アレイ218の異なる領域217上の場所205の異なるスペクトルを伴う画像を生成し得る、スペクトルフィルタ215及び撮像レンズ216を含み得る。別の画像化システム203は、異なるスペクトルフィルタ222を備えたピクセル221のグループを含む多色検出器アレイ220上に位置205の画像を生成し得る単一の画像化レンズ219を含み得る。コントローラ223は、検出器アレイ218及び220と通信し、検出器アレイ218及び220から画像データをプロセッサ224へ渡し得る。画像データ225と226、投影されたパターン206、並びにマルチチャネルパターンプロジェクタ201及びマルチチャネル画像化システム202と203の場所及び向きが提供されると、プロセッサは、3次元シーン内の物体204上の位置205を推定し得る。並列又は順次のいずれかでオブジェクト上の追加の位置を推定することによって、プロセッサ224は、ディスプレイ228上に物体の3次元表現227を生成することができる。」)

「[0049] In some embodiments, the spectra associated with the pattern projection and imaging channels may be narrow and closely spaced, to keep the variation in the spectral response of the object 204 from channel to channel to a minimum. Merely by way of example, the radiation sources may be laser diodes with different but closely-spaced emission peaks, and the filters may be narrow-band filters with bandwidths of a few nanometers.」
(日本語訳:「いくつかの実施形態では、パターン投影及び画像化チャネルに関連するスペクトルは、チャネル間の物体204のスペクトル応答の変動を最小限に保つために、狭く、近接して離間されていてもよい。単なる例として、放射線源は、異なるが間隔の狭い発光ピークを有するレーザーダイオードであり得、フィルターは、数ナノメートルの帯域幅を有する狭帯域フィルターであり得る。」)

「FIG.2


また、Fig.2より「照明229」が「第1の放射線210」によるものであることが読み取れる。

引用発明の認定
上記アの記載内容を総合すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「スペクトル多重化されたマルチチャネル位置特定システム200であって、
物体204は、マルチチャネルパターンプロジェクタ201を使用して生成された異なるスペクトルを有する複数のパターン206で照らされ、パターンプロジェクタ201は、異なるスペクトルを有する第1の放射線210を生成するマルチブロードバンド放射源207を含み、
第1の放射線210による照明229に応答する物体204上の位置205からの物体放射214は、203などの一つ又は複数のマルチチャネル画像化システムを使用して検出することができ、
画像化システム203は、異なるスペクトルフィルタ222を備えたピクセル221のグループを含む多色検出器アレイ220上に位置205の画像を生成し得る単一の画像化レンズ219を含み、検出器アレイ220から画像データがプロセッサ224へ渡され、プロセッサ224は、ディスプレイ228上に物体の3次元表現227を生成し、([0045]、FIG.2)
パターン投影及び画像化チャネルに関連するスペクトルは、チャネル間の物体204のスペクトル応答の変動を最小限に保つために、狭く、近接して離間される、([0049])
マルチチャネル位置決めシステム200。」

(3) 対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「マルチチャネル位置特定システム200」は、「第1の放射線210による照明229に応答する物体204上の位置205からの物体放射214」を「マルチチャネル画像化システムを使用して検出すること」により「ディスプレイ228上に物体の3次元表現227を生成」するものであるから、本件補正発明の「複数の反射光信号に基づいてターゲットの画像を形成するように構成された撮像システム」に相当する。

イ 引用発明の「マルチチャネルパターンプロジェクタ201」は、「物体204」を「異なるスペクトルを有する複数のパターン206で照ら」すものであって、「異なるスペクトルを有する第1の放射線210を生成するマルチブロードバンド放射源207を含」むものであるから、本件補正発明の「複数の光信号を前記ターゲットに向かって送信するように構成された光送信アセンブリであって、前記複数の光信号の各々は前記複数の光信号の他方と異なる一意な特性を有し、前記複数の光信号の各々は明るさが順に増加または減少する類似する色を有する、光送信アセンブリ」と、「複数の光信号を前記ターゲットに向かって送信するように構成された光送信アセンブリであって、前記複数の光信号の各々は前記複数の光信号の他方と異なる一意な特性を有する、光送信アセンブリ」である点で共通するといえる。

ウ 引用発明の「画像化システム203」は、マルチチャネル画像化システムであり、「異なるスペクトルを有する複数のパターン206で照らされ」た「物体204上の位置205からの物体放射214」を異なるスペクトルごとに区別して検出していることは明らかである。そうすると、引用発明の「画像化システム203」は、本件補正発明の「前記ターゲットから反射された前記複数の光信号を受信して検出し、前記複数の光信号の各々を、前記複数の光信号の各々の前記一意な特性に基づいて区別するように構成された光検出器アセンブリ」に相当する。

上記ア〜ウの対比内容をまとめると、本件補正発明と引用発明は、以下の一致点において一致し、以下の相違点において相違する。

[一致点]
「複数の反射光信号に基づいてターゲットの画像を形成するように構成された撮像システムであって、
複数の光信号を前記ターゲットに向かって送信するように構成された光送信アセンブリであって、前記複数の光信号の各々は前記複数の光信号の他方と異なる一意な特性を有する、光送信アセンブリと、
前記ターゲットから反射された前記複数の光信号を受信して検出し、前記複数の光信号の各々を、前記複数の光信号の各々の前記一意な特性に基づいて区別するように構成された光検出器アセンブリと、
を備える、撮像システム。」

[相違点]
本件補正発明の「光送信アセンブリ」が送信する「光信号」が、「前記複数の光信号の各々は明るさが順に増加または減少する類似する色を有」するとされているのに対し、引用発明においては「マルチチャネルパターンプロジェクタ201」に含まれる「マルチブロードバンド放射源207」は、「異なるスペクトルを有する第1の放射線210を生成する」ものであるが、「複数の光信号の各々は明るさが順に増加または減少する類似する色を有」するものであるとはされていない点で本件補正発明と一応相違する。

(4)判断
上記相違点について検討する。
審判請求人は、令和2年10月9日付けの意見書において、次のように主張している。
「3.引用文献の開示と本願請求項に係る発明の対比
段落0020に「ターゲットが自然または人工の構造であってもよい。」と記載されていること、一般にターゲットの反射特性は波長に応じて変わることを考えますと、本願請求項に係る発明の「前記複数の光信号の各々は異なる明るさの類似する色を有する」という構成によれば、「複数の光信号」として、ターゲットに対して良好な反射特性を有する類似の色を使用することができます。」
請求人の当該主張を踏まえると、前記「複数の光信号の各々は明るさが順に増加または減少する類似する色を有」するものであるとは、より具体的には、「複数の光信号の各々」が近接類似する波長を有することを指すものであるといえる(すなわち、前記記載におけるの「明るさ」とは輝度(brightness)や光の強度(intensity)の意味ではなく、色合い(shade)を指すものであって、「明るさが順に増加または減少する」とは、単に波長の値が順に増加又はまたは減少することを指すものである。)。
一方、引用発明においては「パターン投影および画像化チャネルに関連するスペクトルは、チャネル間の物体204のスペクトル応答の変動を最小限に保つために、狭く、近接して離間され[ている]」のであって、「チャネル間の物体204のスペクトル応答の変動を最小限に保つため」という目的は本件補正発明と共通する。
確かに、引用発明においては、「狭く、近接して離間され[ている]」波長の相異なる光が「類似する色」であることの特定はないものの、「チャネル間の物体204のスペクトル応答の変動を最小限に保つ」という目的に鑑みれば、着色している物体に対して当該目的を達成しようとすると、反射率が大きく変化しない領域の光を使用することになるから、この場合には「近接類似する波長を有する」こととなるものを含むことは明らかである。
そうすると、「類似する色」であるようにすることは、チャネル間の物体204のスペクトル応答の変動を最小限に保つ」という目的を達成するために当業者が「狭く、近接して離間され[ている]」波長の相異なる光を選択する結果として到達する事項にすぎないから、前記相違点は格別のものではなく、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易になし得たものである。

(5)請求人の主張について
ア 請求人の主張
請求人は、審尋に対する令和4年2月10日付けの回答書において次のように主張している。
「引用文献1(米国特許出願公開第2010/0008588号明細書)の段落[0049]には、「パターン投影および画像化チャネルに関連するスペクトルは、チャネル間のオブジェクト204のスペクトル応答の変動を最小限に保つために、狭く、近接させる」と記載されています。これに関し、一例として、ウィキペディア(https://ja.wikipedia.org)で「可視光線」の記事を参照しますと、色と波長は、短い波長から長い波長の順に、紫380-450nm、青450-485nm、水色485-500nm、緑500-565nm、黄色565-590nm、橙色590-625nm、赤625-780nmとされています。すなわち、可視光線の波長範囲内で波長が変化すると、数種類の色の間で連続的に色が変化しますので、必ずしも陰影(色合い)が単調増加または単調減少する(暗い、中間、明るい、またはその逆)わけではないと考えられます。従って、引用文献1の構成を採用し、近接するスペクトルを選択したとしても、選択された色は、上記1で述べました意味で「明るさが順に増加または減少する類似する色」になる場合もあれば、ならない場合もあると思料致します。
また、「スペクトルは、チャネル間のオブジェクト204のスペクトル応答の変動を最小限に保つために、狭く、近接させる」場合、請求項1、12に記載されたように「前記複数の光信号の各々を、前記複数の光信号の各々の前記一意な特性に基づいて区別する」ことが難しくなると思料致します。
従って、本願請求項に係る発明の構成は、引用文献1に記載された発明の構成とは異なり、引用文献に記載された発明から容易に想到できたものではないと思料致します。」

イ 請求人の主張の検討
請求人の主張するように「色と波長は、短い波長から長い波長の順に、紫380-450nm、青450-485nm、水色485-500nm、緑500-565nm、黄色565-590nm、橙色590-625nm、赤625-780nm」とされているとしても、例えば449nmから451nmに変化した場合に突然、紫から青という全く異なる色に変化する訳ではないのであって(もしそうであれば、450nmの光はどのような色とされるのであろうか。)、近接した波長の変化であれば、類似した色変化となることは明らかである。したがって、「紫380-450nm、青450-485nm、水色485-500nm、緑500-565nm、黄色565-590nm、橙色590-625nm、赤625-780nm」という波長範囲の境界の前後で色合いが大きく変化することを前提とする請求人の主張は採用することはできない。
また、前記(4)において説明したとおり「チャネル間の物体204のスペクトル応答の変動を最小限に保つ」という目的に鑑みれば、着色している物体に対して当該目的を達成しようとすると、反射率が大きく変化しない領域の光を使用することになり、この場合には「近接類似する波長を有する」こととなるものを含むことは明らかであるから、本件補正発明が引用発明から当業者が容易に想到し得たものを含むことは明らかである。請求人は、「引用文献1の構成を採用し、近接するスペクトルを選択したとしても、選択された色は、上記1で述べました意味で「明るさが順に増加または減少する類似する色」になる場合もあれば、ならない場合もある」と主張しているが、どちらの場合も引用発明に基づいて容易に想到できるものである以上、本件補正発明に進歩性を認めるべき理由とはならない。
また、「「スペクトルは、チャネル間のオブジェクト204のスペクトル応答の変動を最小限に保つために、狭く、近接させる」場合、請求項1、12に記載されたように「前記複数の光信号の各々を、前記複数の光信号の各々の前記一意な特性に基づいて区別する」ことが難しくなると思料致します。」という主張をしているが、より高い分解能の性能を有する光デバイスが必要になることを言っているにすぎず、そのようなスペクトルを「波長」という「一意な特性」に基づいて区別できることは明らかであるから、前記(4)の結論を左右するものとは認められない。

(6) 小括
以上検討のとおり、本件補正発明は、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、同法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2において説示したとおり却下されたので、本願の請求項1〜20に係る発明は、令和2年10月9日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜20に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1(1)に摘記した、本件補正前の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明についての理由は、次のとおりである。

理由2(進歩性
本願発明は、下記の引用文献1、2又は3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。



1.米国特許出願公開第2010/0008588号明細書
2.米国特許出願公開第2006/0238742号明細書
3.特開平3−48790号公報

3 引用文献に記載された事項
上記引用文献1には、[引用発明]において認定したとおりの引用発明が記載されていると認められる(第2の2(2)イを参照。)。

4 対比・判断
本願発明は、本件補正発明における「前記複数の光信号の各々」の「明るさ」が「順に増加または減少する」という限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、さらに他の構成を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の2において説示したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。


第4 むすび
以上検討のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 岡田 吉美
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-03-31 
結審通知日 2022-04-04 
審決日 2022-04-18 
出願番号 P2016-197926
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01S)
P 1 8・ 575- Z (G01S)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱本 禎広
中塚 直樹
発明の名称 光検出測距(LIDAR)撮像システムおよび方法  
代理人 村山 靖彦  
代理人 黒田 晋平  
代理人 崔 允辰  
代理人 阿部 達彦  

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