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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05H
管理番号 1389112
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-11-05 
確定日 2022-10-05 
事件の表示 特願2018−536861「プラズマ処理装置、プラズマ処理装置のための分離格子および基板処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月20日国際公開、WO2017/123589、平成31年 3月14日国内公表、特表2019−507465、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)1月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年1月15日、米国)を国際出願日とする出願であって、その主な経緯は次のとおりである。
令和元年 6月14日付け:拒絶理由通知書
令和元年 9月20日 :意見書・手続補正書の提出
令和2年 1月30日付け:拒絶理由通知書
令和2年 5月8日 :意見書・手続補正書
令和2年10月12日付け:拒絶理由通知書(最後)
令和3年 1月15日 :意見書・手続補正書
令和3年 6月21日付け:令和3年1月15日付けの手続補正の却下の決定・拒絶査定(原査定)
令和3年11月 5日 :審判請求書・手続補正書(以下、この手続補正書によりなされた補正を「本件補正」という。)

第2 原査定の拒絶の理由の概要
1 本件補正前の本願の請求項1〜4、6〜13、15〜19に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 本件補正前の本願の請求項5及び14に係る発明は、引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2015−65434号公報
2.特開2015−119177号公報
3.特開2012−156261号公報

第3 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1〜19に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明19」という。)は、本件補正後の請求項1〜19に記載された事項により特定される発明であるところ、そのうち、独立項に係る本願発明1、12及び17は以下のとおりである。
[本願発明1]
「プラズマ処理装置であって、
プラズマチャンバと、
前記プラズマチャンバから分離される処理チャンバと、
前記プラズマチャンバおよび前記処理チャンバを分離する可変パターン分離格子と、
を備え、
前記可変パターン分離格子は、
第1の格子パターンを有する第1の格子プレートと、
前記第1の格子プレートに対して平行関係で間隔を置かれた第2の格子プレートであって、前記第1の格子パターンとは異なる第2の格子パターンを有する第2の格子プレートと、
を備え、
前記可変パターン分離格子は、中性種を透過するが、プラズマからの荷電粒子を透過せず、
前記第1の格子プレートおよび前記第2の格子プレートの各々は、1つまたは複数のホールを有する格子パターンを有し、
前記第2の格子プレートは、前記第1の格子プレートに対して並進可能であり、
前記可変パターン分離格子は、前記第1の格子プレートのホールの配置が前記第2の格子プレートのホールの配置と異なる複数の異なる複合格子パターンを提供することができる、
プラズマ処理装置。」

[本願発明12]
「プラズマ処理装置のための分離格子であって、前記分離格子は、
第1の格子パターンを有する第1の格子プレートと、
前記第1の格子プレートに対して平行関係で間隔を置かれた第2の格子プレートであって、前記第1の格子パターンとは異なる第2の格子パターンを有する第2の格子プレートと、
を備え、
前記分離格子は、中性種を透過するが、プラズマからの荷電粒子を透過せず、
前記第2の格子プレートは、前記第1の格子プレートに対して並進可能であり、
前記第2の格子プレートが前記第1の格子プレートに対して第1の位置にあるとき、前記分離格子は、第1の複合格子パターンを提供し、
前記第2の格子プレートが第2の位置にあるとき、前記分離格子は、第2の複合格子パターンを提供し、
前記第2の複合格子パターンは、前記第1の格子プレートおよび前記第2の格子プレートのホールの配置が前記第1の複合格子パターンと異なる、
分離格子。」

[本願発明17]
「基板をプラズマ処理装置内で処理する方法であって、
第1の基板を処理チャンバ内で受け取るステップであって、前記処理チャンバは、プラズマチャンバから可変パターン分離格子によって分離され、前記可変パターン分離格子は、第1の格子パターンを有する第1の格子プレートと、前記第1の格子プレートに対して平行関係で間隔を置かれた第2の格子プレートであって、前記第1の格子パターンとは異なる第2の格子パターンを有する第2の格子プレートと、を備え、前記可変パターン分離格子は、中性種を透過するが、プラズマからの荷電粒子を透過しないステップと、
前記第2の格子プレートを前記第1の格子プレートに対して少なくとも横または縦方向に並進し、前記可変パターン分離格子に関連付けられた複合格子パターンを第1の複合格子パターンから第2の複合格子パターンまで調整するステップであって、前記第2の複合格子パターンは、前記第1の格子プレートおよび前記第2の格子プレートのホールの配置が前記第1の複合格子パターンと異なるステップと、
前記第1の基板を前記処理チャンバ内で中性種を用いて処理するステップであって、前記中性種は、前記プラズマチャンバから前記可変パターン分離格子を通り前記処理チャンバに移動するステップと、
を含む方法。」

なお、従属項に係る本願発明2〜11、13〜16、18及び19の概要は以下のとおりである。
本願発明2〜11は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明13〜16は、本願発明12を減縮した発明である。
本願発明18及び19は、本願発明17を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1(特開2015−65434号公報)について
(1)原査定が引用した引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は、一部を除き、当審が付した。以下同じ。)。
ア 「【特許請求の範囲】」、
「基板をエッチングするための装置であって、
(a)反応チャンバと、
(b)前記反応チャンバ内に配置され、前記反応チャンバを上側サブチャンバおよび下側サブチャンバに分割するプレートアセンブリであって、
(i)第1のプレートと、
(ii)前記第1のプレートに対して独立的に回転可能な少なくとも2つの略同心プレートセクションを備える第2のプレートであって、前記第1のプレートおよび前記第2のプレートは、各プレートの厚さを貫通する開口部を有する、第2のプレートと、を備える、プレートアセンブリと、
(c)前記上側サブチャンバへの1 または複数のガス流入口と、
(d)前記反応チャンバからガスを除去するよう設計または構成された前記反応チャンバへの1または複数のガス流出口と、
(e)前記上側サブチャンバ内でプラズマを生成するよう設計または構成されているプラズマ発生源と、
を備える、装置。」(【請求項1】)、
「基板をエッチングする方法であって、
(a)エッチング装置の反応チャンバ内に基板を受け入れ、前記エッチング装置は、
(i)前記反応チャンバ内に配置され、前記反応チャンバを上側サブチャンバおよび下側サブチャンバに分割するプレートアセンブリであって、第1のプレートおよび第2のプレートを備えるプレートアセンブリと、前記第2のプレートは、少なくとも2つの同心セクションを備え、前記同心セクションは、前記第1のプレートに対して独立して回転可能であり、前記第1のプレートおよび前記第2のプレートは、各プレートの厚さを貫通する開口部を有し、
(ii)前記上側サブチャンバへの1または複数のガス流入口と、
(iii)前記下側サブチャンバからガスを除去するよう設計または構成されている前記下側サブチャンバへの1または複数のガス流出口と、
(iv)前記上側サブチャンバ内でプラズマを生成するよう設計または構成されているプラズマ発生源とを備え、
(b)プラズマ生成ガスを前記上側サブチャンバ内に流して、プラズマを生成し、
(c)前記プラズマ内に存在する中性種を前記上側サブチャンバから前記プレートアセンブリを通して前記下側サブチャンバ内に流し、
(d)前記基板をエッチングすること、
を備える、方法。」(【請求項18】)

イ 「【背景技術】」、
「半導体製造にしばしば用いられる1つの操作(工程)は、エッチング操作である。エッチング操作では、1または複数の材料が、製造途中の集積回路から部分的または全体的に除去される。関係する形状が小さい場合、高アスペクト比が用いられる場合、または、正確なパターン転写が必要とされる場合は特に、プラズマエッチングがしばしば利用される。通例、プラズマは、電子、イオン、および、ラジカルを含む。ラジカルおよびイオンは、基板と相互作用して、基板上のフィーチャ、表面、および、材料をエッチングする。」(【0001】)

ウ 「【発明を実施するための形態】」、
「本明細書の実施形態は、一般に、半導体処理方法および装置を扱う。より具体的には、実施形態は、半導体基板をエッチングするための方法および装置に関する。開示された技術を実施する際、基板が、処理チャンバ内に準備される。図1は、適切な処理装置100の断面図を示す。反応チャンバは、プレートアセンブリ150によって上側サブチャンバ132および下側サブチャンバ134に分割されている。プレートアセンブリ150は、上側プレート116および下側プレート130を備える。上側および下側プレート116および130の各々は、プレートの厚さを貫通して伸びる開口部を有する。上側および下側プレート116および130の開口部が整列されると、上側サブチャンバから下側サブチャンバへのイオンおよび中性種の通過が可能になる。上側および下側プレート116および130の開口部が整列されていない時、中性種は、ずれた開口部を通過できるが、イオンは、実質的に通過を妨げられる。」(【0023】)、
「この概念は、図2A〜図2Cに示されている。図2Aでは、プレートアセンブリ250の上側プレート216および下側プレート230の開口部が整列されており、イオン(実線矢印)および中性種(点線矢印)の両方が、下側サブチャンバへと通過できる。図2Bでは、プレートアセンブリ250の上側および下側プレート216および230は整列されておらず、中性種だけが通過できる。図2Cは、上側および下側プレートの開口部が整列された時(見通し時:点線)ならびに開口部が整列されていない時(非見通し時:実線)の下側プレートの出口での中性種の流束を示す。中性種の全流束は、非見通し時には小さくなるが、その減少は約16%にすぎない。見通し時と非見通し時との間の中性種流束の差は、これらの2つの場合の間でのイオン流束の差と比べるとかなり小さい。」(【0024】)、
「図1の実施形態に戻り、処理装置100のさらなる詳細について説明する。上側サブチャンバ132は、誘導結合プラズマを含むよう構成され、下側サブチャンバ134は、容量結合プラズマを含むよう構成されている。さらに、下側サブチャンバ134の体積は調節可能であり、下側プレート130は、ガス供給部104から下側サブチャンバ134に処理ガスを供給するためのガス供給シャワーヘッドとして動作するよう構成されている。処理ガスが、上側シャワーヘッドプレート112への供給を行うガス供給部106を通して上側サブチャンバ132に別個に供給される。一部の例では、上側シャワーヘッドプレート112は、シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン、または、石英などの材料で製造される。上側シャワーヘッドプレート112には、スロットが設けられてよい。さらに、上側シャワーヘッドプレート112は、上側および下側プレート116および130の間の空間の量を増減させるために、基板に近づいたり離れたりするように移動しうる。この動きは、特定の実施形態において、プレートアセンブリ150を通るラジカルの流束を制御するのに役立ちうる。」(【0025】)、

エ 「方法
図3Aは、本明細書の様々な実施形態に従って材料をエッチングするためのフローチャートである。処理300Aは、除去すべき材料を有する基板が処理装置の下側サブチャンバ内に受け入れられるブロック301から始まる。処理チャンバの一例は、図1を参照して上述した。ブロック303では、プラズマが、処理装置の上側サブチャンバ内で生成される。ブロック305では、バイアスが、基板支持体に印加される。一部の例では、このバイアスは、下側サブチャンバ内でプラズマを形成させる。他の例では、バイアスは、下側サブチャンバ内にプラズマが実質的に存在しないように、(例えば、周波数および/または印加電力の点で)十分に弱くてもよい。いずれの例においても、バイアスは、処理のためにイオンを基板に向かって引き寄せるよう作用する。ブロック307では、上側サブチャンバからイオン抽出プレートを通して下側サブチャンバ内に至るイオンおよび中性種の相対流束が制御される。イオンの流束は、主に、プレートアセンブリ開口面積の量を変化させることによって制御される。プレートアセンブリ開口面積の量が増大すると、それに正比例して実質的に、プレートアセンブリを通るイオンの流束が増加する。プレートアセンブリ開口面積を増大させると中性種の流束も増加するが、図2Cに示すように、中性種の流束は、イオンの流束と比べて、この開口面積による影響が著しく小さい。」(【0029】)、
「中性種の流束は、主に、上側および下側プレート間の距離の影響を受ける。2つのプレート間の距離が増大すると、通過できる中性種の量が増加する。プレート間のギャップが広いほど、中性種が通過して下側プレートの開口部に達しうる開けた入り組んでいない通路ができる。いくつかの実装例において、プレートアセンブリ開口面積および/または上側プレートと下側プレートとの間の距離は、基板の処理中に変化しうる。もちろん、これらの変数は、様々なタイプの用途に必要とされうる通りに、異なる基板の処理の合間に変化してもよい。処理300Aは、基板がエッチングされるブロック309に続く。一部の例では、反応性エッチング剤が、エッチングの達成を助けるために、上側および/または下側サブチャンバに供給されてよい。他の例では、エッチングは、反応性の化学物質の助けなしにイオンエッチングによって実現される。」(【0030】)、
「プレートアセンブリは、貫通した開口部を有する2つのプレート/グリッドを備える。プレートは、短い距離(例えば、約1〜6mm)だけ分離された上側プレートおよび下側プレートとなるように、互いに重ねて配置される。上側および下側プレートは、実質的に互いに平行である(例えば、約10°以内)。いくつかの実施形態において、プレートは、約3〜20mmの厚さ、例えば、約5〜15mmの厚さまたは約6〜10mmの厚さを有する。プレートが厚すぎる場合、または、プレートの穿孔が小さすぎる場合、プレートは、イオンの通過を遮断しすぎることがある(すなわち、イオンは、プレートを通過する代わりに、プレートと衝突し、時にプレートの開口部の側壁に衝突する)。グリッドが薄すぎると、硬さが不十分で、プラズマ処理に耐えることができず、かなり頻繁に交換する必要がありうる。グリッドは、反応チャンバ内に配置された時に撓むなどして曲がらないように、十分に硬いことが好ましい。そのことが、均一なエッチング結果を保証する助けとなる。」(【0046】)、
「一方のプレートの他方のプレートに対する配置を変化させることにより、イオン流束対ラジカル流束の比(流束比とも呼ばれ、イオン流束/中性種流束として定義される)が制御されうる。この制御を行う1つの方法は、上側および下側プレートの開口部が整列するように、プレートを回転させることによる方法である。図2A〜図2Bに関して述べたように、整列した開口部は、イオンおよび中性種の両方の移動を可能にするが、整列していない開口部は、主に、中性種の移動のみを可能にする。この制御を行う別の方法は、2つのプレート間の距離を変化させることによる方法である。プレート間の距離が広くなるほど、プレートアセンブリを通るラジカルの流束が大きくなるが、距離が狭くなると、ラジカル流束が小さくなる。」(【0049】)、
「プレートの開口部は、様々な形状を取り得る。例えば、開口部は、円形の穴、スロット、C字形の開口部、T字形の開口部などであってよい。開口部は、開口部の中心を通る軸がプレートの面と垂直になるように方向付けられてよい。特定の一実施形態では、開口部すべてが、このように方向付けられる。別の実施形態では、開口部の一部が、プレートに対して垂直ではない角度に方向付けられる。上側および下側プレートの開口部は、同じ形状であってもよいし、異なっていてもよい。上側および下側プレートの開口部の配列は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。開口部は、プレートが互いに対して回転した時にプレートアセンブリ開口面積の量が変化するように設計される。一部の例において、穿孔は、プラズマ生成中に電流がほとんどまたは全くプレート内で誘導されないように設計されうる。この結果を保証する1つの設計は、放射状に向けられたスロットを有するプレートである。装置がこの種の問題を防ぐように設計されていない場合、電流が誘導されて、プレートの周りで実質的に円形に流れるか、または、グリッド上で小さい渦電流として流れ、寄生電力消費の増大につながる。」(【0050】)

オ 「動作モードの例
本明細書に開示された方法および装置は、異なる基板の処理の合間または複数工程のエッチング処理の異なる工程の合間ならびに単一処理の単一基板の処理中の両方に、幅広いエッチング条件を達成することを可能にする。したがって、開示された技術は、多くの異なる種類のエッチング動作を実施するために利用できる。明確にして理解しやすくするために、いくつかのタイプまたはモードの動作について言及する。・・・」(【0084】)、
「エッチャントのみ
この動作モードでは、プラズマは上側サブチャンバ内でのみ生成され、下側サブチャンバには実質的にプラズマが存在しない。プレートアセンブリ開口面積は、ゼロに設定される(すなわち、上側および下側プレートの開口部は、完全または実質的に完全にずらされる)。このように、中性種(例えば、ラジカル化されたエッチャント種)は、プレートアセンブリを通して上側サブチャンバから下側サブチャンバに通過しうるが、イオンは、完全または実質的に完全に下側サブチャンバに入るのを妨げられる。中性種の流束は、例えば、プレートアセンブリの上側および下側プレートの間の距離を変化させることによって制御されてよい。」(【0088】)

カ 請求項1及び18に記載された「第1のプレート」及び「第2のプレート」は、それぞれ、実施形態に記載された「上側プレート」及び「下側プレート」に対応するものと解される。

(2)ア 上記(1)によれば、引用文献1には、基板をエッチングするための装置に係る請求項1に記載された発明に関連して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考までに引用発明等の認定に関連する記載箇所を括弧内に示してある(以下同じ)。

「基板をエッチングするための装置であって、
反応チャンバと、
前記反応チャンバ内に配置され、前記反応チャンバを上側サブチャンバおよび下側サブチャンバに分割するプレートアセンブリであって、
上側プレートと、
前記上側プレートに対して独立的に回転可能な少なくとも2つの略同心プレートセクションを備える下側プレートであって、前記上側プレートおよび前記下側プレートは、各プレートの厚さを貫通する開口部を有する、下側プレートと、を備える、プレートアセンブリと、
前記上側サブチャンバへの1または複数のガス流入口と、
前記反応チャンバからガスを除去するよう設計または構成された前記反応チャンバへの1または複数のガス流出口と、
前記上側サブチャンバ内でプラズマを生成するよう設計または構成されているプラズマ発生源と、
を備え、(【請求項1】、上記(1)カ)
上側および下側プレート116および130の開口部が整列されると、上側サブチャンバから下側サブチャンバへのイオンおよび中性種の通過が可能になり、上側および下側プレート116および130の開口部が整列されていない時、中性種は、ずれた開口部を通過できるが、イオンは、実質的に通過を妨げられ、(【0023】)
上側および下側プレートは、短い距離だけ分離され、実質的に互いに平行であり、(【0046】)
上側および下側プレートの開口部の配列は、異なっており、(【0050】)
エッチャントのみの動作モードでは、プラズマは上側サブチャンバ内でのみ生成され、下側サブチャンバには実質的にプラズマが存在しないものであり、プレートアセンブリ開口面積は、ゼロに設定され(すなわち、上側および下側プレートの開口部は、完全または実質的に完全にずらされる)、このように、中性種は、プレートアセンブリを通して上側サブチャンバから下側サブチャンバに通過しうるが、イオンは、完全または実質的に完全に下側サブチャンバに入るのを妨げられ、中性種の流束は、例えば、プレートアセンブリの上側および下側プレートの間の距離を変化させることによって制御される、(【0088】)
装置。」

イ さらに、引用文献1には、引用発明における「プレートアセンブリ」に係る次の発明(以下「引用発明B」という。)が記載されていると認められる。
「基板をエッチングするための装置に備えられた反応チャンバ内に配置され、前記反応チャンバを上側サブチャンバおよび下側サブチャンバに分割するプレートアセンブリであって、
上側プレートと、
前記上側プレートに対して独立的に回転可能な少なくとも2つの略同心プレートセクションを備える下側プレートであって、前記上側プレートおよび前記下側プレートは、各プレートの厚さを貫通する開口部を有する、下側プレートと、を備える、プレートアセンブリであり、
前記装置は、前記上側サブチャンバ内でプラズマを生成するよう設計または構成されているプラズマ発生源を備えており、(【請求項1】、上記(1)カ)
上側および下側プレート116および130の開口部が整列されると、上側サブチャンバから下側サブチャンバへのイオンおよび中性種の通過が可能になり、上側および下側プレート116および130の開口部が整列されていない時、中性種は、ずれた開口部を通過できるが、イオンは、実質的に通過を妨げられ、(【0023】)
上側および下側プレートは、短い距離だけ分離され、実質的に互いに平行であり、(【0046】)
上側および下側プレートの開口部の配列は、異なっており、(【0050】)
エッチャントのみの動作モードでは、プラズマは上側サブチャンバ内でのみ生成され、下側サブチャンバには実質的にプラズマが存在しないものであり、プレートアセンブリ開口面積は、ゼロに設定され(すなわち、上側および下側プレートの開口部は、完全または実質的に完全にずらされる)、このように、中性種は、プレートアセンブリを通して上側サブチャンバから下側サブチャンバに通過しうるが、イオンは、完全または実質的に完全に下側サブチャンバに入るのを妨げられ、中性種の流束は、例えば、プレートアセンブリの上側および下側プレートの間の距離を変化させることによって制御される、(【0088】)
プレートアセンブリ。」

ウ また、引用文献1には、基板をエッチングするための方法に係る請求項18に記載された発明に関連して、引用発明と同様に「上側プレート」及び「下側プレート」並びに「エッチャントのみの動作モード」を備えた次の発明(以下「引用発明C」という。)が記載されていると認められる。
「基板をエッチングする方法であって、
エッチング装置の反応チャンバ内に基板を受け入れ、前記エッチング装置は、
前記反応チャンバ内に配置され、前記反応チャンバを上側サブチャンバおよび下側サブチャンバに分割するプレートアセンブリであって、上側プレートおよび下側プレートを備えるプレートアセンブリと、前記下側プレートは、少なくとも2つの同心セクションを備え、前記同心セクションは、前記上側プレートに対して独立して回転可能であり、前記上側プレートおよび前記下側プレートは、各プレートの厚さを貫通する開口部を有し、
前記上側サブチャンバへの1または複数のガス流入口と、
前記下側サブチャンバからガスを除去するよう設計または構成されている前記下側サブチャンバへの1または複数のガス流出口と、
前記上側サブチャンバ内でプラズマを生成するよう設計または構成されているプラズマ発生源とを備え、
プラズマ生成ガスを前記上側サブチャンバ内に流して、プラズマを生成し、
前記プラズマ内に存在する中性種を前記上側サブチャンバから前記プレートアセンブリを通して前記下側サブチャンバ内に流し、
前記基板をエッチングすること、
を備え、(【請求項18】、上記(1)カ)
上側および下側プレート116および130の開口部が整列されると、上側サブチャンバから下側サブチャンバへのイオンおよび中性種の通過が可能になり、上側および下側プレート116および130の開口部が整列されていない時、中性種は、ずれた開口部を通過できるが、イオンは、実質的に通過を妨げられ、(【0023】)
上側および下側プレートは、短い距離だけ分離され、実質的に互いに平行であり、(【0046】)
上側および下側プレートの開口部の配列は、異なっており、(【0050】)
エッチャントのみの動作モードでは、プラズマは上側サブチャンバ内でのみ生成され、下側サブチャンバには実質的にプラズマが存在しないものであり、プレートアセンブリ開口面積は、ゼロに設定され(すなわち、上側および下側プレートの開口部は、完全または実質的に完全にずらされる)、このように、中性種は、プレートアセンブリを通して上側サブチャンバから下側サブチャンバに通過しうるが、イオンは、完全または実質的に完全に下側サブチャンバに入るのを妨げられ、中性種の流束は、例えば、プレートアセンブリの上側および下側プレートの間の距離を変化させることによって制御される、(【0088】)
方法。」

2 引用文献2(特開2015−119177号公報)について
(1)原査定が引用した引用文献2には、次の事項が記載されている。
ア 「【発明が解決しようとする課題】」、
「本発明の目的は1つのバッフルアセンブリーを利用して1つの装備で最適のプラズマ又はガスの噴射均一度を調節できる基板処理装置を提供することにある。」(【0009】)

イ 「【課題を解決するための手段】」、
「本発明は基板処理装置を提供する。一実施形態によれば、基板処理装置は、工程チャンバーと、前記工程チャンバー内で基板を支持するように提供された基板支持ユニットと、前記工程チャンバー内の前記基板支持ユニットの上部に位置され、互いに上下に積層された第1噴射板と第2噴射板、及び前記第2噴射板をその中心を軸として回転させるための駆動ユニットを有するバッフルアセンブリーと、前記第1噴射板及び前記第2噴射板の上部にガスを供給するガス供給ユニットと、を具備し、前記バッフルアセンブリーは、前記第2噴射板の回転角度によって前記基板の領域別にプラズマ又はガスの噴射量を調節できるように提供される。」(【0012】)、
「なお、前記第1噴射板の中央領域には、上下方向に貫通する第1固定ホールが形成され、前記第1噴射板の縁領域には、上下方向に貫通する第2固定ホールが形成される。」(【0013】)、
「なお、前記第2噴射板には、前記第2噴射板の中央領域及び縁領域に配置された第1可変ホールと、前記第2噴射板の中央領域に配置された第2可変ホールと、前記第2噴射板の縁領域に配置された第3可変ホールと、が形成され、前記第2噴射板の中央領域は、前記第1噴射板の中央領域に対向され、前記第2噴射板の縁領域は、前記第1噴射板の縁領域に対向され、前記第2噴射板が第1位置に位置する場合、前記第1可変ホールは、前記第1固定ホール及び前記第2固定ホールと対向されるように提供され、前記第2噴射板が前記第1位置と異なる第2位置に位置する場合、前記第2可変ホールは、前記第1固定ホールと対向されるように提供され、前記第2噴射板が前記第1位置及び前記第2位置と異なる第3位置に位置する場合、前記第3可変ホールは、前記第2固定ホールと対向されるように提供され、前記第1位置、前記第2位置、及び前記第3位置は、前記第2噴射板の回転によって変更される前記第2噴射板の位置である。」(【0014】)

(2)上記(1)によれば、引用文献2には、
「1つのバッフルアセンブリーを利用して1つの装備で最適のプラズマ又はガスの噴射均一度を調節できる基板処理装置において、(【0009】)
互いに上下に積層された第1噴射板と第2噴射板、及び前記第2噴射板をその中心を軸として回転させるための駆動ユニットを有するバッフルアセンブリーを備え、
前記バッフルアセンブリーは、前記第2噴射板の回転角度によって前記基板の領域別にプラズマ又はガスの噴射量を調節できるように提供されており、(【0012】)
前記第1噴射板の中央領域には、上下方向に貫通する第1固定ホールが形成され、前記第1噴射板の縁領域には、上下方向に貫通する第2固定ホールが形成され、(【0013】)
前記第2噴射板には、前記第2噴射板の中央領域及び縁領域に配置された第1可変ホールと、前記第2噴射板の中央領域に配置された第2可変ホールと、前記第2噴射板の縁領域に配置された第3可変ホールと、が形成され、前記第2噴射板の中央領域は、前記第1噴射板の中央領域に対向され、前記第2噴射板の縁領域は、前記第1噴射板の縁領域に対向され、
前記第2噴射板が第1位置に位置する場合、前記第1可変ホールは、前記第1固定ホール及び前記第2固定ホールと対向されるように提供され、前記第2噴射板が前記第1位置と異なる第2位置に位置する場合、前記第2可変ホールは、前記第1固定ホールと対向されるように提供され、前記第2噴射板が前記第1位置及び前記第2位置と異なる第3位置に位置する場合、前記第3可変ホールは、前記第2固定ホールと対向されるように提供される(【0014】)」という技術的事項が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明との対比
ア 引用発明の「基板をエッチングするための装置」は、「上側サブチャンバ内でプラズマを生成するよう設計または構成されているプラズマ発生源」を備えるから、本願発明1の「プラズマ処理装置」に相当する。

イ 引用発明の上記「基板をエッチングするための装置」は「上側サブチャンバ」を備えるところ、当該「上側サブチャンバ」は、「前記上側サブチャンバ内でプラズマを生成するよう設計または構成されている」から、本願発明1の「プラズマチャンバ」に相当する。

ウ 引用発明の上記「基板をエッチングするための装置」は「下側サブチャンバ」を備えるところ、当該「下側サブチャンバ」は、そこに「基板」が配置されていると解されるから、本願発明1の「処理チャンバ」に相当するのが明らかである。
さらに、引用発明には、「前記反応チャンバ内に配置され、前記反応チャンバを上側サブチャンバおよび下側サブチャンバに分割するプレートアセンブリ」が備わっていることに照らせば、当該「下側サブチャンバ」は、本願発明1でいう「前記プラズマチャンバから分離される」ものといえる。

エ 引用発明の「プレートアセンブリ」は、「上側プレート」と「前記上側プレートに対して独立的に回転可能な少なくとも2つの略同心プレートセクションを備える下側プレート」とを備えており、「前記上側プレートおよび前記下側プレートは、各プレートの厚さを貫通する開口部を有」し、「上側および下側プレート116および130の開口部が整列されると、上側サブチャンバから下側サブチャンバへのイオンおよび中性種の通過が可能になり、上側および下側プレート116および130の開口部が整列されていない時、中性種は、ずれた開口部を通過できるが、イオンは、実質的に通過を妨げられ」るものであるところ、このことに、当該「プレートアセンブリ」が「前記反応チャンバを上側サブチャンバおよび下側サブチャンバに分割する」ことを併せれば、当該「プレートアセンブリ」は、本願発明1の「可変パターン分離格子」に相当する。

オ 引用発明の上記「プレートアセンブリ」が備える「上側プレート」及び「下側プレート」は、「開口部を有」しており、当該「開口部の配列は、異なって」いるから、それぞれ、本願発明1の「第1の格子パターンを有する第1の格子プレート」及び「前記第1の格子パターンとは異なる第2の格子パターンを有する第2の格子プレート」に相当する。
そして、引用発明の「上側および下側プレートは、短い距離だけ分離され、実質的に互いに平行であ」るから、当該「下側プレート」(本願発明1の「第2の格子プレート」に相当。)は、本願発明1でいう「前記第1の格子プレートに対して平行関係で間隔を置かれた」ものといえる。

カ 引用発明の「中性種」及び「イオン」は、それぞれ、本願発明1の「中性種」及び「プラズマからの荷電粒子」に相当することが明らかである。
そして、引用発明の「エッチャントのみの動作モード」においては、「プラズマは上側サブチャンバ内でのみ生成され、下側サブチャンバには実質的にプラズマが存在しないものであり、プレートアセンブリ開口面積は、ゼロに設定され」るから、引用発明の「プレートアセンブリ」(本願発明1の「可変パターン分離格子」に相当。)は、本願発明1でいう「中性種を透過するが、プラズマからの荷電粒子を透過せず」を満たしている。

キ 引用発明の「上側プレート」及び「下側プレート」は、上記エによれば、本願発明1でいう「1つまたは複数のホールを有する格子パターンを有し」ているといえる。

ク 引用発明は、「中性種の流束は、例えば、プレートアセンブリの上側および下側プレートの間の距離を変化させることによって制御される」ものであるから、本願発明1でいう「前記第2の格子プレートは、前記第1の格子プレートに対して並進可能であ」るものといえる。

(2)一致点及び相違点の認定
上記(1)によれば、本願発明1と引用発明とは、
「プラズマ処理装置であって、
プラズマチャンバと、
前記プラズマチャンバから分離される処理チャンバと、
前記プラズマチャンバおよび前記処理チャンバを分離する可変パターン分離格子と、
を備え、
前記可変パターン分離格子は、
第1の格子パターンを有する第1の格子プレートと、
前記第1の格子プレートに対して平行関係で間隔を置かれた第2の格子プレートであって、前記第1の格子パターンとは異なる第2の格子パターンを有する第2の格子プレートと、
を備え、
前記可変パターン分離格子は、中性種を透過するが、プラズマからの荷電粒子を透過せず、
前記第1の格子プレートおよび前記第2の格子プレートの各々は、1つまたは複数のホールを有する格子パターンを有し、
前記第2の格子プレートは、前記第1の格子プレートに対して並進可能である、
プラズマ処理装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)「可変パターン分離格子」が、本願発明1は、「前記第1の格子プレートのホールの配置が前記第2の格子プレートのホールの配置と異なる複数の異なる複合格子パターンを提供することができる」のに対し、引用発明は、「プレートアセンブリ開口面積は、ゼロに設定され(すなわち、上側および下側プレートの開口部は、完全または実質的に完全にずらされる)」ものであり、「中性種の流束は、例えば、プレートアセンブリの上側および下側プレートの間の距離を変化させることによって制御される」ものである点。

(3)相違点についての判断
ア 引用発明から出発した当業者が相違点1を含む本願発明1の構成に至るためには、「前記可変パターン分離格子は、中性種を透過するが、プラズマからの荷電粒子を透過せず」という一致点に係る構成を維持しつつ、相違点1に係る本願発明1の構成に至る必要がある。

イ そこで検討すると、まず、引用文献2に記載された技術的事項(第4の2(2))は、相違点1に係る本願発明1の構成を開示しているといえる。
すなわち、当該技術的事項は、基板の領域別にプラズマ又はガスの噴射量を調節できるようにするために、第1固定ホール及び第2固定ホールが形成された第1噴射板に対して、第1可変ホール、第2可変ホール及び第3可変ホールが形成された第2噴射板の回転角度を調節するものであって、「前記第2噴射板が第1位置に位置する場合、前記第1可変ホールは、前記第1固定ホール及び前記第2固定ホールと対向されるように提供され、前記第2噴射板が前記第1位置と異なる第2位置に位置する場合、前記第2可変ホールは、前記第1固定ホールと対向されるように提供され、前記第2噴射板が前記第1位置及び前記第2位置と異なる第3位置に位置する場合、前記第3可変ホールは、前記第2固定ホールと対向されるように提供される」ものであるから、当該技術的事項は、第2噴射板が、第1位置、第2位置及び第3位置のいずれに位置するかに応じて、第1噴射板に形成された、どの固定ホールに対して、第2噴射板に形成された、どの可変ホールが対向するのかが異なる結果、当該対向する固定ホール及び可変ホールの集合体として観念できるパターンも変化することを意味している。したがって、当該技術的事項は、相違点1に係る本願発明1の構成を開示しているといえる。

ウ しかしながら、次のとおり、当業者が、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用して本願発明1の構成に至るとはいえない。
引用発明は、「エッチャントのみの動作モード」に係るものであって、「上側および下側プレートの開口部は、完全または実質的に完全にずらされる」ものであり、そして、そのようなものであるからこそ、上記(1)カのとおり、引用発明が本願発明1の「前記可変パターン分離格子は、中性種を透過するが、プラズマからの荷電粒子を透過せず」という構成を満たしているといえるものであった。これに対して、仮に、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用するとすれば、上側プレートのいずれかの開口部と下側プレートのいずれかの開口部とが対向ないし整列することになるのであり、その結果、「上側サブチャンバから下側サブチャンバへのイオンおよび中性種の通過が可能にな」ることになる。このように、引用発明に引用文献2に記載された技術的事項を適用するということは、エッチャントのみの動作モード、つまり、中性種のみを透過させる動作モードの引用発明から出発した当業者が、わざわざ、中性種のみならずプラズマからの荷電粒子をも透過させるように変更するということを意味するのであり、そうである以上、当業者が当該変更をする動機をもつとはいえないし、さらにいえば、当該変更を行うと、当該変更後の引用発明は、「前記可変パターン分離格子は、中性種を透過するが、プラズマからの荷電粒子を透過せず」という構成を満たさなくなる結果、当業者は、本願発明1の構成に至らないことになる。
したがって、当業者が、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて本願発明1の構成に至ることはなく、このことは、引用文献1の他の記載及び引用文献3の記載をみても左右されるものではない。

エ なお、原査定は、引用文献1に記載された発明において、プラズマ処理の効率向上等に鑑みて、引用文献2に記載された技術的事項を適用することは、当業者であれば容易になし得た旨説示するが、上記ウで説示したとおりである。
この点、原査定は、本願発明1の「前記可変パターン分離格子は、中性種を透過するが、プラズマからの荷電粒子を透過せず」との特定事項を、可変パターン分離格子が中性種のみを透過する状態があり得れば足り、プラズマからの荷電粒子を透過する状態が存在しても差し支えない旨解しているようであるが、当該特定事項の文言に照らせば、プラズマからの荷電粒子を透過する状態があり得ないことを特定していると解するのが自然である(なお、請求人も、審判請求書において、可変パターン分離格子は、常に中性種のみを透過する旨主張する。)。そして、その理解は、本願の発明の詳細な説明の【0004】の「フォトレジストストリップ(例えば、ドライクリーン)除去処理のために、基板と直接的にプラズマ相互作用することが望ましくない場合がある。むしろ、プラズマを、ガス組成の修正のための中間体として主に用いて、基板を処理するための化学的活性基を作成することができる。したがって、フォトレジスト塗布のためのプラズマ処理装置は、基板が処理される処理チャンバを含むことができ、処理チャンバは、プラズマが生成されるプラズマチャンバから分離される。」の記載や、同【0033】の「荷電粒子は、可変パターン分離格子200内の各格子プレート210、220のホールを通るそれらの経路における壁上で再結合することができる。中性種は、比較的自由に第1の格子プレート210および第2の格子プレート220内のホールを通って流れることができる。各格子プレート210および220のホールのサイズおよび厚さは、荷電粒子および中性粒子の両方のための透過性に影響を及ぼしうるが、荷電粒子により強く影響を及ぼしうる。」の記載からも首肯できるものである。

オ 以上のとおり、当業者が、引用発明及び引用文献1〜3に記載された技術的事項に基づいて、本願発明1に係る構成に至ることはなく、そのように構成することにより、本願発明1は、基板と直接的にプラズマ相互作用をすることを防ぎつつ、処理チャンバを開ける必要なく、プラズマ処理装置内の分離格子の格子パターンを変えることができ、基板、例えば、半導体ウェハーの処理におけるコスト及び効率に関する大きな利点を有する(本願の発明の詳細な説明の【0004】・【0021】)という格別の効果を奏するものといえる。

(4)本願発明1についての小括
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献1〜3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2〜11について
本願発明2〜11は、本願発明1を減縮した発明であるから、上記1と同じ理由により、当業者が、引用発明及び引用文献1〜3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 本願発明12について
(1)対比、一致点及び相違点の認定
本願発明12と引用発明Bとは、上記1(1)と同様に対比すると、
「プラズマ処理装置のための分離格子であって、前記分離格子は、
第1の格子パターンを有する第1の格子プレートと、
前記第1の格子プレートに対して平行関係で間隔を置かれた第2の格子プレートであって、前記第1の格子パターンとは異なる第2の格子パターンを有する第2の格子プレートと、
を備え、
前記分離格子は、中性種を透過するが、プラズマからの荷電粒子を透過せず、
前記第2の格子プレートは、前記第1の格子プレートに対して並進可能である、
分離格子。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点2)分離格子が、本願発明12は、「前記第2の格子プレートが前記第1の格子プレートに対して第1の位置にあるとき、前記分離格子は、第1の複合格子パターンを提供し、前記第2の格子プレートが第2の位置にあるとき、前記分離格子は、第2の複合格子パターンを提供し、前記第2の複合格子パターンは、前記第1の格子プレートおよび前記第2の格子プレートのホールの配置が前記第1の複合格子パターンと異なる」のに対し、引用発明Bは、「プレートアセンブリ開口面積は、ゼロに設定され(すなわち、上側および下側プレートの開口部は、完全または実質的に完全にずらされる)」ものであり、「中性種の流束は、例えば、プレートアセンブリの上側および下側プレートの間の距離を変化させることによって制御される」ものである点。

(2)相違点についての判断
引用発明Bから出発した当業者が相違点2に係る本願発明12の構成に至るためには、上記1(3)アと同様に、「前記分離格子は、中性種を透過するが、プラズマからの荷電粒子を透過せず」という一致点とされた構成を維持しつつ、相違点2に係る本願発明12の構成に至る必要がある。
しかるに、上記1(3)イと同様の理由で、引用文献2に記載された技術的事項は、相違点2に係る本願発明12の構成を開示しているといえるものの、同ウ及びオと同様の理由で、当業者が、引用発明B及び引用文献1〜3に記載された技術的事項に基づいて、本願発明12に係る構成に至ることはない。

(3)本願発明12についての小括
したがって、本願発明12は、引用発明B及び引用文献1〜3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

4 本願発明13〜16について
本願発明13〜16は、本願発明12を減縮した発明であるから、上記3と同じ理由により、当業者が、引用発明B及び引用文献1〜3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

5 本願発明17について
(1)対比、一致点及び相違点の認定
本願発明17と引用発明Cとは、引用発明Cが実質的に引用発明を方法発明的に表現したものといえることから、上記1(1)と同様に対比すると、
「基板をプラズマ処理装置内で処理する方法であって、
第1の基板を処理チャンバ内で受け取るステップであって、前記処理チャンバは、プラズマチャンバから可変パターン分離格子によって分離され、前記可変パターン分離格子は、第1の格子パターンを有する第1の格子プレートと、前記第1の格子プレートに対して平行関係で間隔を置かれた第2の格子プレートであって、前記第1の格子パターンとは異なる第2の格子パターンを有する第2の格子プレートと、を備え、前記可変パターン分離格子は、中性種を透過するが、プラズマからの荷電粒子を透過しないステップと、
前記第1の基板を前記処理チャンバ内で中性種を用いて処理するステップであって、前記中性種は、前記プラズマチャンバから前記可変パターン分離格子を通り前記処理チャンバに移動するステップと、
を含む方法。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点3)本願発明17は、「前記第2の格子プレートを前記第1の格子プレートに対して少なくとも横または縦方向に並進し、前記可変パターン分離格子に関連付けられた複合格子パターンを第1の複合格子パターンから第2の複合格子パターンまで調整するステップであって、前記第2の複合格子パターンは、前記第1の格子プレートおよび前記第2の格子プレートのホールの配置が前記第1の複合格子パターンと異なるステップ」を含むのに対し、引用発明Cは、「プレートアセンブリ開口面積は、ゼロに設定され(すなわち、上側および下側プレートの開口部は、完全または実質的に完全にずらされる)」ものであり、「中性種の流束は、例えば、プレートアセンブリの上側および下側プレートの間の距離を変化させることによって制御される」ものである点。

(2)相違点についての判断
引用発明Cから出発した当業者が相違点3に係る本願発明17の構成に至るためには、上記1(3)アと同様に、「前記分離格子は、中性種を透過するが、プラズマからの荷電粒子を透過せず」という一致点とされた構成を維持しつつ、相違点3に係る本願発明17の構成に至る必要がある。
しかるに、上記1(3)イと同様の理由で、引用文献2に記載された技術的事項は、相違点3に係る本願発明17の構成のうち「前記可変パターン分離格子に関連付けられた複合格子パターンを第1の複合格子パターンから第2の複合格子パターンまで調整するステップ」を開示しているといえるものの、同ウ及びオと同様の理由で、当業者が、引用発明C及び引用文献1〜3に記載された技術的事項に基づいて、本願発明17に係る構成に至ることはない。

(3)本願発明17についての小括
したがって、本願発明17は、引用発明C及び引用文献1〜3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

6 本願発明18及び19について
本願発明18及び19は、本願発明17を減縮した発明であるから、上記5と同じ理由により、当業者が、引用発明C及び引用文献1〜3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1〜19は、当業者が引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-09-22 
出願番号 P2018-536861
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05H)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 山村 浩
野村 伸雄
発明の名称 プラズマ処理装置、プラズマ処理装置のための分離格子および基板処理方法  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 森田 拓  
代理人 永島 秀郎  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 前川 純一  
代理人 前川 純一  
代理人 上島 類  
代理人 永島 秀郎  
代理人 森田 拓  
代理人 上島 類  

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