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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G
管理番号 1389168
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-12-03 
確定日 2022-09-15 
事件の表示 特願2020−103050「搬送装置及び放射線検査システム」拒絶査定不服審判事件〔令和3年8月10日出願公開、特開2021−116188〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、令和2年1月27日に出願した特願2020−10836号の一部を同年6月15日に新たな特許出願としたものであって、同日に手続補正書が提出され、令和3年2月18日付け拒絶理由通知(以下「審査時拒絶理由通知」という。)に対して同年4月27日に手続補正(以下「審査時補正」という。)及び意見書の提出がなされたところ、同年8月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月3日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2.本件補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

本件補正を却下する。

[理由]

1 本件補正について
特許請求の範囲は、審査時補正により補正された請求項1〜12(うち、請求項8・9・12について下記(1)に示す。)から、本件補正後の請求項1〜3(下記(2))へと補正された。ここで、下線は補正個所を示す。また、各構成単位冒頭の「A」などは当審で付した分説番号であり、以下該各構成単位について該分説番号を用いて「構成A」などという。

(1)審査時補正による特許請求の範囲
審査時補正による請求項1〜12のうち、本件補正後の特許請求の範囲に関係する請求項8・9・12(以下、それぞれ「査定時請求項8」などという。)を以下に示す。
「【請求項8】
pA 被検物に放射線を照射して前記被検物を検査する放射線検査装置の搬送路の搬送方向に沿って前記搬送路の上流側の延長線上且つ前記放射線検査装置の外側にあり、前記放射線検査装置の内側から前記放射線検査装置の入口を通して漏洩し得る放射線を遮蔽する上流側遮蔽部と、
pB 前記上流側遮蔽部と前記搬送路との間の位置において、前記搬送路の前記搬送方向に対してずれた位置から前記搬送路の前記搬送方向に沿う位置に前記被検物を搬送する上流側搬送部と、 を有する、
pF 搬送装置。
【請求項9】
p9A 前記上流側遮蔽部を有し、前記放射線検査装置の入口から前記搬送路の前記搬送方向の上流側に延び、前記上流側搬送部の少なくとも一部を覆い、前記放射線検査装置からの前記放射線を遮蔽する上流側遮蔽体を備え、
p9B 前記上流側遮蔽体は、前記上流側遮蔽部と前記放射線検査装置の入口との間に、前記搬送路の前記搬送方向に対してずれた搬送方向から前記上流側遮蔽体の内側の前記搬送路の前記搬送方向に沿う位置に前記被検物を通す開口を有する、
p9C 請求項8に記載の搬送装置。
【請求項12】
p12A 被検物を搬送する搬送路を有し、前記搬送路を搬送する前記被検物に放射線を照射して前記被検物を検査する放射線検査装置と、
p12B 請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の搬送装置と、 を備える、
p12C 放射線検査システム。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正後の請求項1〜3(以下、それぞれ「本件請求項1」などという。)は以下のとおり。
「【請求項1】
A 被検物に放射線を照射して前記被検物を検査する放射線検査装置の搬送路の搬送方向に沿って前記搬送路の上流側の延長線上且つ前記放射線検査装置の外側にあり、前記放射線検査装置の内側から前記放射線検査装置の入口を通して漏洩し得る放射線を遮蔽する上流側遮蔽部と、
B 前記上流側遮蔽部と前記搬送路との間の位置において、前記搬送路の前記搬送方向に対してずれた位置から前記搬送路の前記搬送方向に沿う位置に前記被検物を搬送する上流側搬送部と、を有し、
C 前記上流側搬送部は、前記上流側搬送部に前記被検物を搬送し前記搬送路の搬送方向に平行に配置され得る第1搬送部と、前記放射線検査装置の前記搬送路との間にあり、
D 前記搬送路の搬送方向に直交し、前記放射線検査装置が設置された床面に平行な幅方向において、
前記上流側遮蔽部の前記幅方向の一端と他端との間の幅は、前記放射線検査装置の前記入口の前記幅方向の一端と他端との間の幅よりも大きく、
E 前記上流側遮蔽部の前記幅方向の前記一端及び前記他端は、前記放射線検査装置の前記入口の前記幅として規定される領域に対して前記幅方向に沿ってそれぞれ外側にある、
F 搬送装置。
【請求項2】
2A 前記上流側遮蔽部を有し、前記放射線検査装置の前記入口から前記搬送路の前記搬送方向の上流側に延び、前記上流側搬送部の少なくとも一部を覆い、前記放射線検査装置からの前記放射線を遮蔽する上流側遮蔽体を備え、
2B 前記上流側遮蔽体は、前記上流側遮蔽部と前記放射線検査装置の前記入口との間に、前記搬送路の前記搬送方向に対してずれた搬送方向から前記上流側遮蔽体の内側の前記搬送路の前記搬送方向に沿う位置に前記被検物を通す開口を有する、
2C 請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
3A 被検物を搬送する搬送路を有し、前記搬送路を搬送する前記被検物に放射線を照射して前記被検物を検査する放射線検査装置と、
3B 請求項1又は請求項2に記載の搬送装置と、を備える、
3C 放射線検査システム。」

2 本件補正の適否

(1)本件補正により査定時請求項1〜7・10・11を削除したことは、請求項の削除を目的とする補正に該当し、また、新規事項を加入するものではない。

(2)本件請求項1は、査定時請求項8の構成pA・pBに含まれる「上流側搬送部」及び「上流側遮蔽部」について、構成C〜Eなる新たな特定事項を付加して限定したものと位置づけることができる。また、本件補正前の請求項8に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そして、構成Cについては、願書に最初に添付した明細書・特許請求の範囲・図面(以下「当初明細書等」という。)の【0162】及び【図24】(「上流側搬送部」には【0162】及び【図24】の「上流側搬送部292」(第一搬送体292a)が対応すると認められる。)の記載によって裏付けられ、構成D・Eについては当初明細書等の【図24】の記載事項により(「上流側遮蔽部」には【図24】の「遮蔽部256a」が対応すると認められる。)の記載によって裏付けられるから、構成C〜Eを付加したことは、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、これらすべての記載を総合することにより導かれる技術事項との関係において新たな技術事項を導入するものではない。

(3)本件請求項2は、査定時請求項9の「前記放射線検査装置の入口」を「前記放射線検査装置の前記入口」と補正し、引用先請求項を、本件補正による請求項の削除に伴い、請求項8から請求項1へ変更したものであり、前者は「入口」を前記(請求項1)のものに限定するもので、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とする補正に該当し、後者は、請求項を削除する補正に伴って必然的に生じる他の請求項の形式的な補正に該当するから、請求項の削除を目的とするものである。
また、いずれの補正・変更も新規事項を加入するものではない。

(4)本件請求項3は査定時請求項12の引用先請求項を「請求項1ないし請求項11のいずれか1項」から「請求項1又は請求項2」へ変更したもので、請求項の削除を目的とするものであり、また、新規事項を加入するものではない。

(5)小括
上記(1)〜(4)のとおりであるから、本件補正は特許法第17条の2第5項第1号または同第2号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第17条の2第3項の規定に違反しない。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1〜3に係る発明のうち請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下の3においてさらに検討する。

3 本件補正発明の独立特許要件についての検討

(1)本件補正発明について
上記1(2)に請求項1として記載したとおりである。

(2)引用文献の記載事項

(2−1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶理由において引用文献1として提示された、本願の原出願日前に公知となった特開2000−74856号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 発明の詳細な説明の記載事項
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、X線を用いて被検査物内の異物の検出を行う異物検査装置に関し、X線の漏洩防止に関する。
・・・
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図3に示したような装置では、鉛のすだれを押し上げて被検査物を遮蔽領域内へ搬送しなければならないが、すだれを押し上げる際、すだれから押し返されて被検査物がベルト上で移動したり、また、鉛のすだれを押し上げることができず、搬送されないことがあった。特に食品など軽量な被検査物の場合は、このような現象が顕著に発生した。また、図4に示した装置では、被検査物が傾斜したベルト上で滑って、搬送されないなどの問題があった。本発明の目的は、このような課題を解決して、散乱X線の漏洩を防止するとともに、ベルトコンベヤによる被検査物の搬送を潤滑に行うことである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
・・・
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例を、図1の概略構成図を用いて説明する。図1(a)はX線検査装置の平面図、図1(b)はその正面図を示している。
【0007】被検査物Wに検査用のX線を照射するX線管1は、散乱X線Sなど外部へ漏洩するX線(漏洩X線)を遮蔽するために、遮蔽部材からなるフード2内に収納されている。また、被検査物Wを透過したX線を検出するラインセンサ3もこのフード2内に配置されている。そして、被検査物Wに検査用のX線が照射されて発生した散乱X線Sまでも遮蔽するように、被検査物Wを搬送するベルトコンベヤ4も、フード2及びフード5内に配置されている。
【0008】さらに、本実施例では、被検査物WがX線照射領域を通過する方向を、被検査物Wがフード5内へ出入する方向を変えることで、被検査物Wの出入口6、7からは、直接、X線照射領域を見通せないように構成されている。具体的には、ベルトコンベヤ4について、被検査物の入口6側の第2ベルト4bの進行方向を曲線部4dにより90度変えることで、X線照射領域を通過する第1ベルト4aの方向にし、さらに、X線照射領域を通過する第1ベルト4aの方向に対し、被検査物Wの出口7側の第3ベルト4cの進行方向を曲線部4eにより、90度変えている。そして、ベルトコンベヤ4は全域においてフード2及びフード5で囲まれている。
【0009】次に、本実施例におけるX線検査装置の動作について説明する。まず、被検査物Wを入口側の第2ベルト4bに載せる。被検査物Wはまず第2ベルト4bを進んだ後、曲線部4dを経て第1ベルト4aに到達する。そして、被検査物Wは第1ベルト4aを進み、X線照射領域を通過する。この際、X線照射領域の下方に配置されたラインセンサ3に、被検査物Wを透過したX線が検出される。このラインセンサ3からの検出信号に基づき、所定の画像処理を行うことにより、被検査物Wの異物検査が行われる。
【0010】そして、X線が被検査物Wに照射されたとき、特に、被検査物Wの形状や特性により、散乱X線Sの発生が顕著となり、これら散乱X線Sは様々な方向へ発生するが、X線照射領域からは被検査物Wの出入口6、7を臨むことができないようフード5でベルトコンベヤ4を遮蔽しているので、散乱X線Sが直接的に、被検査物Wの出入口6、7から外部へ漏洩することがない。
・・・
【0012】なお、被検査物Wをベルトコンベヤ4で搬送する際の入口6と出口7は、上記した本実施例のように、装置の同一面側でもよいし、また、図2に示したように、互いに反対側面に設けてもよい。これらは、本装置のレイアウトを考慮して選択すればよい。」

イ 図面の記載

・図1の記載





・図3の記載





ウ 看取・認定事項

(ア)【0008】・【0009】の記載事項を参照すると、X線検査装置の平面図である図1(a)、及び、同正面図である図1(b)から、下記(イ)の技術事項を看取できる(以下「看取事項1」という。)。以下、下記看取事項1の各構成単位冒頭の「ka」などの構成番号を用いて該各構成単位を「看取ka」などということがある。

(イ)看取事項1:
「ka 平面視において、
kb フード2内には第1ベルト4aが、被検査物を上流側である左方向から、第1ベルト4aの進行方向に一致する下流側である右方向へ搬送するように設けられ、
kc フード2の左側にはフード5が設けられ、
kd フード5の内部には、第2ベルト4bが、第1ベルト4aの進行方向とは直交する方向である、手前側から奥側へ進行するように設けられ、
ke さらに、フード5の内部には、手前側から奥側へ向かう第2ベルト4bの進行方向を90度右方へ変えることで、左から右へX線照射領域を通過する第1ベルト4aの進行方向にする曲線部4dが設けられ、
kf 第1ベルト4aの上流側(左側)端部と略一致するフード2の左側壁の一部領域と、曲線部4dの下流側(右側)端部と略一致するフード5の右側壁の一部領域とは接しており、
kg フード2の左側壁とフード5の右側壁とは前記接する一部領域で共に開口部となって相互に連通し、その周囲で相互に接合しており、
kh 該開口部付近において曲線部4dの下流側(右側)端部は第1ベルト4aの上流側(左側)端部と接続しており、
ki フード5内で、第2ベルト4bの奥側(下流側)端部と曲線部4dの手前側(上流側)端部とが接続し、
kj 第2ベルト4bの手前側(上流側)端部に略一致するフード5の手前側面には入口6が開口し、
kk フード2の左側壁の前記開口部の左方向である、第1ベルト4aの進行方向と逆方向への、フード2外への延長線上には、該延長線に直交してフード5の左側壁が鉛直面として存在し、
kl 第2ベルト4bと曲線部4dとは、フード5の左側壁と、第1ベルト4aとの間に存在し、
km フード5の左側壁は、フード2の左側壁の前記開口部を左方向へ投影した領域全てにわたると共に、さらに手前方向へ、入口6に至るまで延長しており、
kn フード2の左側壁の前記開口部の奥側端部から、フード5の前記左側壁の奥側端部までの間は、フード5の奥側壁が延びていること。」

(ウ)平面図である引用文献1の図1(a)に当審で加筆した、上記看取事項1の説明図は次のとおり。





エ 引用文献1に記載された発明
上記ア〜ウによれば、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。ここで、分説については上記第2.1と同様。また、各構成単位末尾括弧内には認定の主たる根拠となる記載の個所を示す。

「a 被検査物に検査用のX線を照射するX線管と、被検査物を透過したX線を検出するラインセンサとが、被検査物に検査用のX線が照射されて発生した散乱X線を遮蔽するフード2内に配置されている、X線異物検査装置の、(【0001】・【0006】・【0007】)
フード2内に配置される第1ベルト4aの進行方向と逆方向である、フード2の左側壁の開口部の左方向への、フード2外への延長線上に存在する、被検査物に検査用のX線が照射されて発生した散乱X線を遮蔽するフード5の左側壁と、(【0007】、看取kk)
b フード5の左側壁と、第1ベルト4aとの間に存在する、第2ベルト4b及び曲線部4dであって、(看取kl)
第2ベルト4bは、フード5内部で、第1ベルト4aの進行方向とは直交する方向である、平面視手前側から奥側へ進行するように設けられており、(看取kd)
フード5内で、第2ベルト4bの上側(下流側)端部と曲線部4dの下側(上流側)端部とが接続しており、(看取ki)
c 第2ベルト4bの手前側(上流側)端部に略一致するフード5の手前側面には被検査物を第2ベルト4bに載せるための入口6が開口しており、(【0008】、看取kj)
第2ベルト4bの上側(下流側)端部と曲線部4dの下側(上流側)端部とが接続し、(看取ki)
曲線部4dの下流側(右側)端部は第1ベルト4aの上流側(左側)端部と、フード2とフード5とが接合する一部領域の前記開口部付近で接続し、(【0009】、看取kf・kg・kh)
曲線部4dは、フード5内部で、第2ベルト4bの進行方向を平面視で90度右方へ変えることで、平面視左から右へX線照射領域を通過する第1ベルト4aの進行方向にするよう設けられており、(看取ke)
d 前記フード5の左側壁は、第1ベルト4aの進行方向と逆方向への、フード2外への延長線上に、該延長線に直交して鉛直面として存在し、(看取kk)
フード2の左側壁の前記開口部を左方向へ投影した領域全てにわたると共に、さらに手前方向へ、入口6に至るまで延長しており、(看取km)
e フード2の左側壁の前記開口部の奥側端部から、フード5の前記左側壁の奥側端部までの間は、フード5の奥側壁が延びている、(看取kn)
f 散乱X線の漏洩を防止するとともに、ベルトコンベヤによる被検査物の搬送を潤滑に行う装置。(【0004】)」

(2−2)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶理由において引用文献2として提示された、本願の原出願日前に公知となった特開2011−202979号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。

ア 発明の詳細な説明の記載事項

「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉、魚、加工食品、医薬品等の被検査物中に混入した異物を検出するX線異物検出装置に関し、特に、被検査物を計量する計量手段を備えるX線異物検出装置に関するものである。
・・・
【0080】
(第4の実施の形態)
本実施の形態は、水平方向に搬送空間Sが屈曲するように構成したものである。なお、第1の実施の形態と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
図4に上面図を示すように、本実施の形態のX線異物検出装置100は、第1の実施の形態のX線異物検出装置1のX線コンベア32、計量コンベア33、選別コンベア34および漏洩防止カバー21に代わって、搬送コンベア91、92、95、X線コンベア93、計量コンベア94、選別コンベア96および漏洩防止カバー24を備えている。
【0082】
これらの搬送コンベア91、92、95、X線コンベア93、計量コンベア94、選別コンベア96は、被検査物Wを所定間隔をおいて順次搬送するものであり、例えば筺体4に対して水平で同じ高さに配置されている。
【0083】
搬送コンベア91、92は、図中右側に配置された図示しない前段のコンベアから被検査物WをX線異物検出装置100に搬入するようになっている。X線コンベア93は、搬送コンベア92の後段に隣接して配置され、被検査物WをX線の検査位置P1に通過させるX線検査用のコンベアとして構成されている。計量コンベア94は、下方に配置された図示しない計量手段により支持されており、計量コンベア94上の所定の計量位置P2に被検査物Wを通過させる計量用のコンベアとして構成されている。また、搬送コンベア95は、被検査物Wを計量コンベア94から選別コンベア96に搬送し、選別コンベア96は、被検査物Wをフリッパ13により選別したり、X線異物検出装置1から搬出するようになっている。搬送コンベア92、95は、略扇型に形成されており、被検査物Wの搬送方向を水平方向に変更するようになっている。
【0084】
また、各コンベアは、搬送面を構成する図示しない受板を有している。この受板は、X線を遮断する機能を有しており、X線はX線異物検出装置3の下方には漏洩しないようになっている。X線コンベア93の搬送面を形成する受板の検査位置にはスリットが設けられており、X線発生器9により生成されたX線は、受板のスリットを通過してX線検出器10に検出されるようになっている。
【0085】
搬送コンベア91により形成される搬送路は、X線コンベア93、計量コンベア94により形成される直線状の搬送路に対して水平方向に所定の角度をなして設けられており、また、選別コンベア96により形成される搬送路は、X線コンベア93、計量コンベア94により形成される直線状の搬送路に対して所定の角度をなして設けられている。すなわち、各コンベアにより形成される搬送路は水平方向に屈曲している。
【0086】
漏洩防止カバー24は、各コンベアの上部空間を包囲して検査位置P1から反射するX線を遮蔽するとともに、搬送コンベア91および選別コンベア96の外側端部に被検査物Wが搬入される搬入口90および被検査物Wが搬出される搬出口97をそれぞれ形成するようになっている。漏洩防止カバー24の上面は、所望の大きさの被検査物Wが通過することができるように、各コンベアとの間に高さ方向に一定の間隔を設けて配置されている。搬入口90から搬出口97までの漏洩防止カバー24と各コンベアに包囲されて略閉塞された空間は、搬送空間Sを構成している。このため、X線の検査位置P1における搬送面の高さ、搬入口90における搬送面の高さおよび搬出口97における搬送面の高さが等しく、水平方向に搬送空間Sが屈曲している。」

イ 図4の記載




(2−3)引用文献3の記載事項
審査時拒絶理由通知において通知された、米国特許出願公開第2014/0376692号明細書(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。

ア 明細書の記載事項
「[0001] The present application relates to radiation shielding in a radiation system, or more particularly to the mitigation of radiation leakage from a radiation system. It finds particular application in the context of baggage screening, where objects are translated or conveyed through a radiation system to detect threat items, such as guns, knives, explosives, etc.」
(当審訳:「[0001]本願発明は、放射線システムにおける放射線遮蔽、より詳細には放射線システムからの放射線漏れの軽減に関するものである。手荷物検査において、銃、ナイフ、爆発物などの脅威となるものを検出するために、放射線システムを通して物体が変換または搬送される場合に、特に適用される。」)

「[0004] Aspects of the present application address the above matters, and others. According to one aspect, an object scanner configured to examine an object via radiation is provided. The object scanner comprises a first port through which the object enters or exits the object scanner. The object scanner also comprises an examination region through which the object translates in a first direction, the examination region spatially offset relative to the first port in a second direction substantially perpendicular to the first direction such that there is no linear path parallel to the first direction between the examination region and the first port.」
(当審訳:「[0004]本願発明の側面は、上記の事項、及びその他の事項を扱う。一態様によれば、放射線を介してオブジェクトを検査するように構成されたオブジェクトスキャナが提供される。オブジェクトスキャナは、オブジェクトがオブジェクトスキャナに入り、又はオブジェクトスキャナから出る第1ポートを具備する。オブジェクトスキャナはまた、オブジェクトが第1の方向に並進する検査領域を備え、検査領域は、検査領域と第1のポートとの間に第1の方向に平行な直線経路が存在しないように、第1の方向に対して実質的に垂直な第2の方向に、第1のポートに対して空間的にオフセットしている。」)

「[0005] According to another aspect, an object scanner configured to examine an object via radiation is provided. The object scanner comprises an entry port through which the object enters the object scanner and an exit port through which the object exits the object scanner. The object scanner also comprises an examination region through which radiation is transmitted. The examination region is situated between the entry port and the exit port. The object scanner further comprises a translator configured to translate the object along a non-linear path between the entry port and the exit port.」
(当審訳:「[0005]別の態様によれば、放射線を介して対象物を検査するように構成された対象物スキャナが提供される。オブジェクトスキャナは、オブジェクトがオブジェクトスキャナに入る入口ポートと、オブジェクトがオブジェクトスキャナから出る出口ポートとを備えている。オブジェクトスキャナはまた、放射線が透過する検査領域を備える。検査領域は、入口ポート及び出口ポートの間に位置する。オブジェクトスキャナは、オブジェクトを入口ポートと出口ポートとの間の非線形経路に沿って平行移動させるように構成された平行移動器をさらに具備する。」)

「[0043] With respect to FIG. 3, an internal view of an example object scanner300 (e.g., 200 in FIG. 2) having a first layout is provided. An entry port 302(e.g., 204 in FIG. 2) is located in an upstream portion 304 of the object scanner 300 and an exit port 306 is located in a downstream portion 308of the object scanner 300. An examination feature 310 is located, in the z-direction, between the entry port302 and the exit port 306.
・・・
[0045] A volume of space between the radiation source 312 and the detector array is generally defined as the examination region 314, and thus by spatially off setting the examination feature 310 in the x-direction relative to the entry port 302 and the exit port306, the examination region 314 is also spatially off set in the x-direction relative to the entry port 302 and the exit port 306. In some embodiments, the volume of the examination region314 is substantially equal to the distance between the radiation source312 and the detector array multiplied by a surface area of the detector array.」
(当審訳:「[0043] 図3に関して、第1のレイアウトを有する例示的なオブジェクトスキャナ300(例えば、図2における200)の内部図が提供される。入口ポート302(例えば、図2の204)は、オブジェクトスキャナ300の上流部分304に位置し、出口ポート306は、オブジェクトスキャナ300の下流部分308に位置する。検査機能部310は、z方向において、入口ポート302と出口ポート306との間に配置される。
・・・
[0045]放射線源312と検出器アレイとの間の空間の体積は、一般に検査領域314として定義され、したがって、検査機能部310を入口ポート302及び出口ポート306に対してx方向に空間的にオフセットすることによって、検査領域314も入口ポート302及び出口ポート306に対してx方向に空間的にオフセットされる。いくつかの実施形態では、検査領域314の体積は、放射線源312と検出器アレイとの間の距離に検出器アレイの表面積を乗じたものに実質的に等しい。」)

「[0051] Although not shown, in some embodiments, one or more energy shields may be positioned along the path between the entry port 302 and the exit port 306. For example, a first energy shield may be positioned at the entry port 302 of the object scanner300 and a second energy shield maybe positioned within the first turn 324.As another example, a first energy shield may be positioned along a portion of the path 322 proximate the entry port 302 and a second energy shield may be positioned along a portion of the path proximate the examination region 314. It may be appreciated that any number of energy shields may be located at anyone or more positions, however. Also, the examination region 314 may be off set from merely the entry port 302 or the exit port 306, but not necessarily both.」
(当審訳:「[0051] 図示されていないが、いくつかの実施形態では、1つ以上のエネルギーシールドが、入口ポート302と出口ポート306との間の経路に沿って位置決めされてもよい。例えば、第1のエネルギーシールドは、オブジェクトスキャナ300の入口ポート302に配置されてもよく、第2のエネルギーシールドは、第1のターン324内に配置されてもよい。別の例として、第1のエネルギーシールドは、入口ポート302に近接した経路322の一部に沿って配置されてもよく、第2のエネルギーシールドは、検査領域314に近接した経路の一部に沿って配置されてもよい。しかしながら、任意の数のエネルギーシールドが、任意の位置又は複数の位置に配置されてもよいことが理解され得る。また、検査領域314は、単に入口ポート302又は出口ポート306からオフセットされてもよいが、必ずしも両方である必要はない。」)

「[0054] Turning to FIG. 5, an internal view(e.g., a top-down view) of an example object scanner 500 (e.g., 300 in FIG.3) having a second layout is provided. Similar to the layout shown in FIGS. 3-4, the entry port 302 is located in an upstream portion 304 of the object scanner 500 and an exit port 306 is located in a downstream portion 308of the object scanner 500. An examination feature 310 is located between the entry port 302 and the exit port 306 in the z-direction and is spatially off set from the entry port 302and the exit port 306 in the x-direction. Accordingly, an examination region 314 (e.g., defined at least in part by the examination feature 310)is also spatially off set from the entry port 302 and the exit port 306 in the x-direction.
[0055] A translator 320, which in the illustrated embodiment comprises a plurality of rollers 502 (e.g., ball bearings) and actuators 504, is configured to translate objects along a substantially u-shaped path 506 which extends from the entry port 302 to the exit port 306 and passes through the examination region 314 and/or through a bore in the examination feature 310, for example. By way of example, an object may be conveyed through the entry port 302 of the object scanner 500 via a first conveyor(e.g., 208 in FIG. 2), and the presence and/or position of the object inside the object scanner 500 may be detected by one position sensors, for example. Upon the position sensor detecting the presence of an object, the position sensor may transmit a signal which activates a first actuator 504a (e.g., a linear actuator) configured to propel the object linearly in the x-direction to align the object with an entry port of the examination region 314 (e.g., and/or to align the object with a bore through the examination feature 310).Once aligned with an entry port of the examination region 314, a second actuator 504b may be configured to propel the object linearly in the z-direction to convey the object through the examination region 314, where the object is examined via radiation. Upon exiting the examination region 314, a third actuator 504c may be configured to propel the object linearly in the x-direction to align the object with the exit port 306 of the object scanner500, where a fourth actuator 504d may propel the object through the exit port 306. It may be appreciated that while specific reference is made herein the use of rollers 502 and actuators504 to translate the object along the u-shaped path 506, one or more other mechanisms for translating an object, such as a conveyor belt, power rollers, electro-magnetic propulsion systems, etc. may also or instead be used to convey objects along such a path.」
(当審訳:「[0054] 図5に目を向けると、第2のレイアウトを有する例示的なオブジェクトスキャナ500(例えば、図3の300)の内部図(例えば、トップダウン図)が提供される。図3-4に示されたレイアウトと同様に、入口ポート302は、オブジェクトスキャナ500の上流部分304に位置し、出口ポート306は、オブジェクトスキャナ500の下流部分308に位置する。検査機能部310は、z方向において進入ポート302と出口ポート306との間に位置し、x方向において進入ポート302及び出口ポート306から空間的にずれて設定されている。したがって、検査領域314(例えば、検査機能部310によって少なくとも部分的に画定される)もまた、x方向において進入ポート302及び出口ポート306から空間的にずれて設定される。
[0055] 図示の実施形態では複数のローラ502(例えば、ボールベアリング)及びアクチュエータ504からなる並進器320は、例えば、入口ポート302から出口ポート306に延び、検査領域314を通過し及び/又は検査機能部310のボアを通過する実質的にU形の経路506に沿って物体を並進させるように構成される。例として、オブジェクトは、第1のコンベヤ(例えば、図2の208)を介してオブジェクトスキャナ500の入口ポート302を通って搬送されてもよく、オブジェクトスキャナ500内部のオブジェクトの存在及び/又は位置は、例えば、1つの位置センサによって検知されてもよい。位置センサが物体の存在を検出すると、位置センサは、物体を検査領域314の入口ポートに整合させるために物体をx方向に線形に推進するように構成された第1のアクチュエータ504a(例えば、線形アクチュエータ)を起動する信号を送信してもよい(例えば、及び/又は検査機能部310を通るボアと対象物を整合させるために)。一旦検査領域314の入口ポートと整合されると、第2のアクチュエータ504bは、対象物をz方向に直線的に推進して検査領域314を通って対象物を搬送し、そこで対象物は放射線を通じて検査されるように構成されてもよい。検査領域314を出ると、第3のアクチュエータ504cは、オブジェクトをオブジェクトスキャナ500の出口ポート306に整合させるために、オブジェクトをx方向に直線的に推進するように構成されてもよく、第4のアクチュエータ504dは、出口ポート306を通してオブジェクトを推進してもよい。本明細書では、U字経路506に沿って物体を並進させるためのローラ502及びアクチュエータ504の使用に特定の言及がなされているが、コンベヤベルト、パワーローラ、電磁推進システム等の物体を並進させるための1以上の他の機構も、又はその代わりに、このような経路に沿って物体搬送に使用されてよいことが理解できるだろう。」)

イ 図の記載

(ア)図3(Fig.3)




(イ)図4(Fig.4)の記載



(ウ)図5(Fig.5)の記載





(3)本件補正発明と引用発明との対比

ア(ア)構成aの、「被検物に放射線を照射」して「被検査物を透過したX線を検出する」機能は、構成Aの「被検物に放射線を照射して前記被検物を検査する」機能に相当する。
よって、構成aの「被検査物に検査用のX線を照射するX線管と、被検査物を透過したX線を検出するラインセンサとが、被検査物に検査用のX線が照射されて発生した散乱X線を遮蔽するフード2内に配置されている」要素部分は、遮蔽兼筐体と位置づけ得る該「フード2」も含め、構成Aの「被検物に放射線を照射して前記被検物を検査する放射線検査装置」に相当する。
(イ)構成aの「フード2内に配置される第1ベルト4a」、「第1ベルト4aの進行方向と逆方向」、「フード2の左側壁の開口部」は、それぞれ、構成Aの「搬送路」、「搬送路の搬送方向に沿って前記搬送路の上流側の延長線上」、「放射線検査装置の入口」に相当する。
(ウ)構成aの「被検査物に検査用のX線が照射されて発生した散乱X線を遮蔽する」こと、「フード5の左側壁」は、それぞれ構成Aの「前記放射線検査装置の内側から前記放射線検査装置の入口を通して漏洩し得る放射線を遮蔽する」こと、「上流側遮蔽部」に相当する。

イ(ア)構成bの「フード5の左側壁と、第1ベルト4aとの間」は、上記アの認定をふまえると、構成Bの「前記上流側遮蔽部と前記搬送路との間の位置」に相当する。
(イ)構成bの、「フード5内部で、第1ベルト4aの進行方向とは直交する方向である、平面視手前側から奥側へ進行するように設けられ」る「第2ベルト4b」と、「フード5内部で、第2ベルト4bの進行方向を平面視で90度右方へ変えることで、平面視左から右へX線照射領域を通過する第1ベルト4aの進行方向にするよう設けられ」る「曲線部4d」とが、「フード5内で、第2ベルト4bの上側(下流側)端部と曲線部4dの下側(上流側)端部とが接続し」たコンベヤは、それによって第1ベルト4aより手前側の位置から第1ベルト4aの左端部まで、被検査物が搬送されることになるから、構成Bの「前記搬送路の前記搬送方向に対してずれた位置から前記搬送路の前記搬送方向に沿う位置に前記被検物を搬送する上流側搬送部」に相当するといえる。

ウ(ア)構成dで「フード5の左側壁」が「第1ベルト4aの進行方向と逆方向への、フード2外への延長線上に、該延長線に直交して鉛直面として存在」することは、構成Dで「上流側遮蔽部」が「前記搬送路の搬送方向に直交し、前記放射線検査装置が設置された床面に平行な幅方向において」存在することに相当する。
(イ)構成dで「フード5の左側壁」が「フード2の左側壁の前記開口部を左方向へ投影した領域全てにわたると共に、さらに手前方向へ、入口6に至るまで延長して」いることは、「フード2の左側壁の前記開口部を左方向へ投影した領域」の全幅に加え、幅が「さらに手前方向へ、入口6に至るまで延長して」いるのであるから、構成Dで「上流側遮蔽部」の幅が「前記上流側遮蔽部の前記幅方向の一端と他端との間の幅は、前記放射線検査装置の前記入口の前記幅方向の一端と他端との間の幅よりも大き」いことに相当するといえる。

エ 構成dで、「フード5の左側壁」が「フード2の左側壁の前記開口部を左方向へ投影した領域全てにわたると共に、さらに手前方向へ、入口6に至るまで延長して」いる点は、構成Dの「前記上流側遮蔽部の前記幅方向の前記一端」「は、前記放射線検査装置の前記入口の前記幅として規定される領域に対して前記幅方向に沿って」「外側にある」ことに相当する。

オ 構成fの「散乱X線の漏洩を防止するとともに、ベルトコンベヤによる被検査物の搬送を潤滑に行う装置」は、構成Fの「搬送装置」に相当する。

(4)本件補正発明と引用発明との一致点・相違点
上記(3)によれば、本件補正発明と引用発明とは、下記アの点で一致し、下記イの各点で相違する。

ア 一致点
「A’ 被検物に放射線を照射して前記被検物を検査する放射線検査装置の搬送路の搬送方向に沿って前記搬送路の上流側の延長線上にあり、前記放射線検査装置の内側から前記放射線検査装置の入口を通して漏洩し得る放射線を遮蔽する上流側遮蔽部と、
B 前記上流側遮蔽部と前記搬送路との間の位置において、前記搬送路の前記搬送方向に対してずれた位置から前記搬送路の前記搬送方向に沿う位置に前記被検物を搬送する上流側搬送部と、を有し、
D 前記搬送路の搬送方向に直交し、前記放射線検査装置が設置された床面に平行な幅方向において、
前記上流側遮蔽部の前記幅方向の一端と他端との間の幅は、前記放射線検査装置の前記入口の前記幅方向の一端と他端との間の幅よりも大きく、
E’前記上流側遮蔽部の前記幅方向の前記一端は、前記放射線検査装置の前記入口の前記幅として規定される領域に対して前記幅方向に沿って外側にある、
F 搬送装置。」

イ 相違点

(ア)相違点1(構成C)
上流側搬送部について、本件補正発明では「上流側搬送部に前記被検物を搬送」する「第1搬送部」が「前記搬送路の搬送方向に平行に配置され得る」のに対し、引用発明では、上流側搬送部の搬送路と反対側の端部は、フード5の入口の開口に略一致しており、該端部に対し他の搬送部が接続されていない点。

(イ)相違点2(構成E)
本件補正発明では、上流側遮蔽部の幅方向の両端がそれぞれ、放射線検査装置の入口の幅として規定される領域に対して幅方向に沿って外側にあるのに対し、引用発明では、フード5の入口開口まで延びる上流側遮蔽部の幅方向の平面視手前側端部については前記領域に対し幅方向外側にあるものの、該幅方向の他端については、前記領域の幅方向外側にあるか不明である点。

(ウ)相違点3(構成A)
上流側遮蔽部が、本件補正発明では「放射線検査装置の外側」であるのに対し、引用発明においては、フード2とフード5とが別体であるか一体成形物であるか明確でないため、放射線検査装置に相当するフード2及びその内部構成に対し、フード5の左側壁が放射線検査装置の外側といえるか不明である点。

(5)相違点の検討

ア 相違点1について

(ア)本件補正発明の「第1搬送部」は、構成Cで「前記上流側搬送部に前記被検物を搬送し前記搬送路の搬送方向に平行に配置され得る第1搬送部」と特定されるもので、「配置され得る」、すなわち、外部・周辺構成として「上流側搬送部に前記被検物を搬送」するように配置できれば足りると解するのが相当である。この前提において、相違点1については、以下のa.〜f.のとおりである。
a.引用発明の最上流側にある第2ベルト4bは、構成cに特定されるとおり、その上流側端部が、X線異物検査装置のフード2内の第1ベルト4aとは直交する方向(平面視手前側)に向いて、「フード5」の「被検査物を第2ベルト4bに載せるための入口6」と略一致するように設置されている。
b.ここで、第2ベルト4bの前記上流側端部は前記入口6によりフード5の外部に面していること、ベルトコンベヤを複数接続して長い搬送路を設計することが何らの例示をするまでもなくごく周知慣用の技術であること、及び、引用発明もフード5内での第2ベルトと曲線部4dとを接続していること、に照らし、第2ベルト4bの前記端部に他のコンベヤを接続し、さらに搬送路を延伸することを想起することは、引用発明の構成に基づいて当業者が容易になし得ることであり、引用発明において、第2ベルト4bの前記上流側端部に対し別の搬送ベルトを接続することに格別の阻害要因もない。
c.そして、第2ベルト4bの前記上流側端部はフード5の入口6に露出しているのであるから、上流方向を平面視左側へ90°変える別の曲線部を介すれば、第1ベルト4aと平行な直線状の別のベルト(コンベヤ)と接続することが可能であることは明らかである。
d.よって、引用発明は「前記上流側搬送部に前記被検物を搬送し前記搬送路の搬送方向に平行に配置され得る第1搬送部」に相当するコンベヤなどの搬送手段を第2ベルト4bの前記上流側端部に接続し『得る』といえる。
e.上記d.の場合、第2ベルト4bは、《「前記上流側搬送部に前記被検物を搬送し前記搬送路の搬送方向に平行に配置され得る第1搬送部」に相当するコンベヤなどの搬送手段》と、構成A・Cの「放射線検査装置」に相当する構成a.の「被検査物に検査用のX線を照射するX線管と、被検査物を透過したX線を検出するラインセンサとが、被検査物に検査用のX線が照射されて発生した散乱X線を遮蔽するフード2内に配置されているX線異物検査装置」との間に位置するといえる。
f.以上a.〜e.のとおりであるから、相違点1は実質的な相違点であるとはいえない。

(イ)a.また、仮に、構成Cが、「前記上流側搬送部は、前記上流側搬送部に前記被検物を搬送し前記搬送路の搬送方向に平行に配置され」「る第1搬送部」を、配置できれば足りるのではなく、本件補正発明の「搬送装置」の一構成として備えると解されるべきであるとしても、下記b.〜d.のとおりである。
b.引用発明において、第2ベルト4bの上流側端部に対し、入口6からどのように被検査物を第2ベルト4bに対し載置するか(延伸せず手動で載置するのか、延伸すべく他のコンベヤを接続することによるのか)、さらには、どのように延伸するか(第2ベルト4bをそのまま手前方向に延伸するか、搬送経路を手前方向以外へ屈曲させるか)は、X線異物検査装置周辺の被検査物搬送経路の事情に応じて適宜設計されるべき事項に過ぎない。
c.そして、引用発明においても、構成bで「フード5内で、第2ベルト4bの上側(下流側)端部と曲線部4dの下側(上流側)端部とが接続しており」と特定されるとおり、搬送用ベルトの搬送方向を90°変える曲線部4dを前記第2ベルト4dの下流側(平面視奥側)端部に備えることからも理解されるように、該曲線部4dのような、搬送経路を90°変化(屈曲)させる搬送部材(コンベヤ)は周知慣用であるし、引用発明の第2ベルト4bの上流側端部に対してもこのような、搬送経路を90°変化(屈曲)させる搬送部材(コンベヤ)曲線部を接続することは、必要に応じ当業者が容易になし得ることであるし、該曲線部の接続について格別な阻害要因も存在しない。
d.上記b.・c.のとおりであるから、引用発明において、第2ベルト4dの上流側端部に、搬送方向を90°変える曲線部を形成する搬送手段を介して第1ベルト4aと平行なベルトからなる搬送路を接続することを搬送路設計上の都合に従い行って、相違点1の構成とすることは、当業者にとって容易になし得ることである。

(ウ)さらに、コンベヤなどで搬送される被検査物に対し放射線検査を行う放射線検査装置において、検査領域から外部への放射線漏洩を防止するために、検査装置の検査領域内部の搬送路を、検査装置に対する搬入・搬出を行う一直線の搬送路から、該一直線と直交する方向にオフセットされ、かつ前記一直線と平行な搬送路とすることは、本件出願の審査時拒絶理由通知において引用された引用文献3(上記3(2−3)摘記事項参照)に記載されており、引用発明において、入口6(及び発明認定外の出口7)に対し第1ベルト4aと平行な搬入(・搬出)搬送路を(それぞれ)接続してフード2のX線照射領域であるフード2内の搬送路を、放射線漏洩防止のため搬入(・搬出)搬送路に対しオフセットさせて、相違点1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(エ)以上(ア)〜(ウ)のとおりであるから、相違点1は実質的な相違点ではないか、実質的な相違点であるとしても、設計事項であるか、または周知技術もしくは引用文献3の記載事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について

(ア)a.引用発明においては、構成eで認定するとおり、フード2の左側壁の開口部の奥側端部から、フード5の前記左側壁の奥側端部までの間に、フード5の奥側壁が延びている。
そして、フード5の奥側壁の外壁面左端は、フード5の左側壁の外壁面奥端に一致する。
そうすると、平面視左右方向に直交する手前−奥側方向(本件補正発明の「幅方向」に相当)について、フード5の左側壁は、入口6から、フード5の奥側壁外壁面まで延在するということができる。そして、前記開口部の奥側端の位置は前記奥側壁の内壁面の位置に一致するから、該奥側壁の外壁面は、前記開口部の奥側端よりも奥側、すなわち、本件補正発明にいう「幅方向」において外側にあるといえる。よって、フード5の左側壁の奥側端は、前記開口部の奥側端よりも奥側、すなわち、本件補正発明にいう「幅方向」において外側にあるといえる(下図参照)。





構成eで「フード5の前記左側壁の奥側端部までの間は、フード5の奥側壁が延びている」と認定するように、手前−奥側方向において、「フード5の左側壁」の奥側端部位置は、「フード5の奥側壁」の外壁面の位置と一致する(言い換えると、「フード5の左側壁」の外壁面は、手前−奥側方向において、「フード5の奥側壁」の外壁面位置まで外観上面一に延在している)。
よって、引用発明において、「フード5の左側壁」の平面視手前−奥側方向における奥側端位置は、前記開口部の奥側端位置よりも奥側にある「フード5の奥側壁」の外壁面位置と一致するということができ、前記フード2の開口部の奥側端に対し、フード5の左側壁はフード5の奥側壁の厚みの分、奥側まで延在しているといえるから、引用発明は、構成Eのうち、「前記上流側遮蔽部の前記幅方向の」「前記他端は、前記放射線検査装置の前記入口の前記幅として規定される領域に対して前記幅方向に沿って」「外側にある」ことに相当する構成を備えるといえるから、相違点2は実質的な相違点ではない。

b.また、上記a.において、フード5の奥側壁がフード2の開口内に差し込まれているような接合態様が考え得るとしても(下図参照)、奥側−手前側方向において、開口部の奥端位置がフード5の奥側壁の内壁面位置に一致することにかわりはないから、この態様においても、フード5の左側壁の奥側端は開口部の奥側端よりも外側(奥側)に位置するといえ、やはり、相違点2は実質的な相違点であるとはいえない。




(イ)仮に、引用発明が上記(ア)で説示したとおり認定できず、相違点2が実質的な相違点であるとした場合について、以下に検討する。

a.周知例1
本願の原出願日前に公知となった特公昭42−24640号公報(周知例1)には次の記載がある。

(a)1頁29〜40行
「第1図に於て生物学的に作用する放射線の照射源2に対する室は1によつて表わされている。照射源2は循環搬送装置3によつて囲繞され、照射すべき品物の部分は前記装置によつて照射源に露呈される。残余放射線は厚い壁4によつてその大部分が吸収され、室外の生物に危険を与えないようにされている。照射すべき品物はなるべく部分として包装され(たとえばじやがいもを処理する場合の如く)半円形に延びる二つの通路6、6’内に環状に設置された搬送装置5によつて連続的に受入個所7から循環搬送装置3へ、さらにここから取出個所8に搬送される。」

(b)第1図





(c)看取・認定事項
上記(a)の記載事項を参酌すると、上記(b)の第1図から、以下の技術事項を看取・認定できる(以下「技術事項1」という。)。
「搬送装置5により搬送される品物に対し、照射源2により放射線を照射する装置において、照射源2により放射線を照射する室1の、搬送装置5が通る通路6への出口の開口幅の両端を、幅方向にそれぞれ外側まで覆う範囲にわたり、放射線を吸収する厚い壁4を、出口の対向側に設けて覆い、室外の生物に放射線の悪影響を与えないようにすること。」

b.周知例2
本願の原出願日前に公知となった特表2000−513103号公報(周知例2)には次の記載がある。

(a)7頁21〜27行
「図1乃至3を参照すれば、本発明による照射装置の好ましい実施形態が、放射線源10と、コンベヤ装置12と、放射線遮蔽組立体13と、該放射線遮蔽組立体13の両端に密封された一端をそれぞれ有する一対の直線部分放射線遮蔽モジュール14と、該直線部分放射線遮蔽モジュール14の他端に密封された一端をそれぞれ有する第1の一対のコーナー部分放射線遮蔽モジュール15と、該第1の一対のコーナー部分放射線遮蔽モジュール15の他端に密封された一端をそれぞれ有する第2の一対のコーナー部分放射線遮蔽モジュール16とを含む。」

(b)11頁16行〜12頁23行
「放射線遮蔽材料40、41が近接して取り囲む湾曲した曲り部44であって、該湾曲した曲り部44を近接して取り囲む放射線遮蔽材料40、41がターゲット領域23と載せ区域22及び下ろし区域24との間でターゲット領域23と載せ区域22との間のまっすぐな目視線及びターゲット領域23と下ろし区域24との間のまっすぐな目視線を妨げるような程度の前記曲り部44、を有する経路に配置され、それにより、載せ区域22及び下ろし区域24を放射線源10から放出された放射線から遮蔽する。曲り部44を近接して取り囲む放射線材料40、41がターゲット領域23と載せ区域22及び下ろし区域24との間に構成されるので、ターゲット領域23から発出する放射線は、第2のはね返り箇所と載せ区域22あるいは下ろし区域24との間にまっすぐな目視線がなく、近接して取り囲む遮蔽材料40,41から少なくとも3回はね返る。
・・・
ターゲット領域23からのまっすぐな目視線内にあるコンベヤ装置12の湾曲した曲り部44の外側部分と隣接した第1の一対のコーナー部分遮蔽モジュール15の部分では、放射線遮蔽材料40aは、前記湾曲した曲り部44の内側と隣接した放射線遮蔽材料40bほどコンベヤ装置12の経路に近接せず且つそれよりも厚い。ターゲット領域23からのまっすぐな目視線内にある湾曲した曲り部44の外側部分と隣接したより厚い放射線遮蔽材料40aは、大変厚いコーナー部分47では、ターゲット領域23まで直線をなして延びる放射線遮蔽材料40cから直角に遠い箇所48まで延びる。放射線遮蔽材料40dが、遠い箇所48から大変厚いコーナー部分47と直角にコンベヤ装置12の経路に向って延びる。」

(c)図3の記載





(d)看取・認定事項
上記(a)・(b)の記載事項を参酌すると、上記(c)の図7から、以下の技術事項を看取・認定できる(以下「技術事項2」という。)。
「X線を照射するターゲット領域13にコンベヤで対象物が搬入・搬出されるX線照射装置において、ターゲット領域13の入口幅を規定する一対の直線部分放射線遮蔽モジュール14(放射線遮蔽部材40c・40b)の、前記入口と反対側の端部であるコーナー部分47には、厚い放射線遮蔽材料の放射線遮蔽材料40aが、一対の直線部分放射線遮蔽モジュール14の軸線に直交し、前記入口幅の両端をそれぞれ外方に超える幅方向位置まで延在して、前記入口の対向側に設けられること。」

c.周知例3
本願の原出願日前に公知となった特開2003−166952号公報(周知例3)には次の記載がある。

(a)「【0053】図7は、壁装置20の構成例を示す平面図である。図7及び図2に示すように、コンベア3は筐体5の収容部5a内に設けられ、被検査物Wを略水平に搬送する。収容部5aの周囲は、筐体5及び前後正面のカバー12,13,14によって開口部15、16からのX線の漏洩が少なくなるよう構成されている。
【0054】加えて、この収容部5aには、コンベア3の上面に開口部15、16からのX線の漏洩を防止する壁装置20,21が設けられる。壁装置20は、図4(a)と同様の屈曲形状を有するコンベアの搬送方向前半部である。壁装置21は、図6(a)と同様の屈曲形状を有するコンベア3の搬送方向後半部であり、壁装置20と同様の傾斜を有する壁を配置してなる。
【0055】この壁装置20、21における入口20a、出口20bの開口幅は、被検査物Wが通過し得るできるだけ狭い幅(開口幅W1)を有するよう開口部15,16部分を塞ぐ閉塞壁20C,21Cを備えてなる。
【0056】筐体5内部において、先ず、開口部15〜照射領域Aの前半部には、図4(a)に示したように、屈曲ポイントT3〜T6を設定して、コンベア3の搬送方向Xに対し、所定角度傾斜する壁装置20(20A、20B)を設ける。壁装置20は、照射領域A側と開口部15側にそれぞれコンベア3の搬送方向に沿った壁20Aa、20Ac、20Ba、20Bcを備える。これら壁20Aa、20Ac、20Ba、20Bc間には、屈曲ポイントT同士を結合する壁20Ab、20Bbを設ける。
・・・
【0059】次に、図7を用いて上記構成による被検査物Wの搬送動作、及びX線漏洩防止の作用について説明する。図7には、便宜上、図4(a)、図6(a)の各部に一致する屈曲ポイントT3〜T10を記載してある。被検査物Wは、前段の搬送部によって開口部15部分から筐体5内部のコンベア3上に取り込まれ、コンベア3によって水平状態のまま搬送方向Xに搬送される。被検査物Wは、前半部において、壁装置20の入口20aから壁20Ac,20Bc部分を通過後、壁20Abに接触し、この壁20Abの傾斜に沿ってY方向に移動する。この際、被検査物Wは、コンベア3上を滑る形で移動する。壁20Abの傾斜が終了すると、被検査物Wは再度、搬送方向Xに沿って壁20Aa,20Ba部分を通過する。
【0060】この壁20Aa,20Ba部分でX線の照射領域A部分を通過し、この通過によって被検査物W内の異物の混入の有無が検出される。この後、被検査物Wは、検査後の後半部に移動する。壁21Aa,21Baを通過後、壁21Bbに接触し、この壁21Bbの傾斜に沿ってY方向に移動する。壁21Bbの傾斜が終了すると、被検査物Wは開口部16部分に設けられた壁21Ac,21Bc部分を搬送方向Xに沿って移動し、後段の搬送部(例えば選別機)に排出される。
【0061】そして、被検査物WをX線検査する照射領域AのX線は、入口20a,出口20bの両側にそれぞれ放射状に進行するが、壁装置20,21のいずれかの壁20Aa,20Ab,20Ba,20Bb,20Ac,20Bc,21Aa,21Ab,21Ba,21Bb,21Ac,21Bcに当たり、直接、入口20a,出口20b部分から外部に漏洩することがない。即ち、壁装置20,21の傾斜により、入口20a,出口20b部分から見て、照射領域A上のライン全ての箇所が直接見通せない状態となり、照射領域Aに照射され反射したX線が入口20a,出口20bから外部漏洩することを防止できる。同時に、コンベア3の搬送長(装置の機長)を長くすることなく、短い機長であってもX線の外部漏洩を防止できるようになる。」

(b)図7の記載





(c)看取・認定事項
上記(a)の摘記事項を参酌することで、上記(b)に摘記した図7から、以下の技術事項を看取・認定できる(以下「技術事項3」という。)。
「入口20aからX線照射領域Aを経て出口20bに被検査物が搬送されるX線検査装置において、X線照射領域Aの入口であるT5・T6間の開口の、X線照射領域A内での搬送方向の延長線上に直交して、X線漏洩を防ぐ筐体5の壁面及び閉塞壁20Cからなる壁を、前記開口の幅に対しそれぞれ外側まで延伸した範囲にわたって、開口の対面側に設置すること。」

d.周知例1〜3に示される上記技術事項1〜3から、搬送路の途上にX線検査やその他の目的で被搬送物に対するX線(放射線)照射エリアを備える装置において、X線(放射線)照射エリア(室)の搬送路上流側開口の対面側に、該開口の両端よりも平面視でそれぞれ外側まで延びた放射線遮蔽壁を設けて、前記開口から漏出する放射線を遮蔽するようにすることは、本願の原出願日前に周知であったといえる。
また、これらの周知例を引くまでもなく、開口部から漏れる光や放射線などの直進性の電磁波を開口部から離れた部位で遮蔽・遮断したい場合に、該電磁波の発散性や回折を考慮して、開口部と同幅ではなく、開口部よりもできるだけ幅広の衝立で開口部両端の外方までを覆うようにするようなことは、例えば遮光カーテンを窓の開口部にあたる窓ガラス部分のみならず窓枠やその隣の壁部分までにかかるように引くなど、日常生活においても取り入れられる程度に周知慣用の技術事項であり、技術常識であるともいえる。
よって、引用発明において、X線照射領域(フード2)の開口部の対向面である、X線遮蔽用の「フード5の左側壁」を、その両端が開口部の両端より幅方向で外側となるように配置・設定して相違点2の構成とすることは、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

(ウ)以上(ア)・(イ)のとおりであるから、相違点2は実質的な相違点ではないか、仮に実質的な相違点であるとしても、引用発明において相違点2の構成とすることは、周知技術及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について

(ア)本件補正発明は構成Aにおいて「被検物に放射線を照射して前記被検物を検査する放射線検査装置」と定義され、「放射線検査装置の搬送路」なる要素も特定されていることから、本件補正発明における「放射線検査装置」は、「被検物に放射線を照射して前記被検物を検査する」ものであり、かつ「搬送路」を内部に備えるものと特定されているといえる。
そして、本件補正発明の構成において、放射線検査装置(の枠体)と上流側遮蔽部(を含む枠体)との接続形態(個々に独立した部材であるか否か)について、特段の特定事項はない。

(イ)審判請求書によれば構成C〜Eが本願の図24に基づくことから、本件補正発明には図24の態様が少なくとも含まれるといえるところ、該図24では、「放射線検査装置32」は「遮蔽ボックス50」に囲繞され、その上流側の搬送部は「上流側ボックス256」に囲繞されており、両ボックスの接合形態や両者が別体であることについて本願明細書中に明記はなく、むしろ「放射線検査装置32から搬送方向Dに沿って上流側に延びる上流側ボックス(上流側の遮蔽体)256」(【0177】)なる記載もあって、一体化物である場合も含まれうるといえる。
また、図24に係る態様においては、「放射線検査装置32」とその上流側の搬送路とは、「遮蔽ボックス50」及び「上流側ボックス256」によって連続的に囲繞されており、両者が一体物か否かによらず、全体として少なくとも一体の組み立て体であるといえるのであるから、そのうち何れの部分を「放射線検査装置」と呼ぶのかは任意な取り決めに属する事項であるといえる。

(ウ)一方、引用発明において、フード2とフード5とが一体物であるとの特定事項はなく、引用文献1の記載全体をみても、両者の一体性を示唆する記載は見出せない。
さらに、該両者は、本願の図24に係る態様と同様に、「フード2」・「フード5」なる別の名称を持つ要素として特定されるものであるから、第一義的には別体である場合が少なくとも含まれるといえるし、引用文献1の図1(a)・(b)からも明らかなとおり、個々に直方体形状であり、フード2と2つのフード5とを合わせたものは、内腔の径も場所により異なる複雑な形状を呈していることから、プレス等でシームレスな一体化部材として成形することは技術常識に照らし困難であって、例えば、フード2と5とを個別に直方体の箱体として作成した後、開口を形成して該開口を合わせて両者を接合するなど、各フードを別体に作成した上で接合するか、各壁面を個別に作成して組み立てるような製作形態の方が自然であるということができ、前記図1に触れた当業者は少なくともそのように、フード2・5を別体とする形態を技術常識に照らし容易に想起するといえる。

(エ)また、引用発明において、「被検査物に検査用のX線を照射するX線管と、被検査物を透過したX線を検出するラインセンサと」が備えられるのはフード2の内部であり、フード5内には搬送手段が存在するのみであって、X線検査自体に関係するX線源やセンサーなどの手段は備えない。
よって、上記のとおり引用発明に少なくとも含まれる、または引用発明から想到容易である、フード2及びフード5が別体であるような態様において、フード2に囲まれた部分のみをX線検査装置と呼ぶことは、当業者が任意に選択しうる事項であるといえ、その場合、フード5に囲まれた部分はX線検査装置の外部にあたることとなる。

(オ)さらに、対比に関する上記(3)アにおいて説示したとおり、構成Aにおいて、「上流側遮蔽部」が「放射線検査装置の外側にある」との特定がなされているが、前記のとおり本件補正発明において「放射線検査装置」は「被検物に放射線を照射して前記被検物を検査」し「搬送路」を内部に備えれば足りるから、引用発明の「フード2」内に「被検査物に検査用のX線を照射するX線管と、被検査物を透過したX線を検出するラインセンサと」「第1ベルト4a」とを備える要素が構成Aの「放射線検査装置」に相当すると認定できるものである。

(カ)さらに、引用文献1の【0004】及び図3に記載されるとおり、引用発明は、フード内にX線管とラインセンサとを備え、フードの開口部にはすだれを備える従来技術を改良した発明と位置づけられるところ、図3における「フード」は図1に係る引用発明における「フード2」に対応し、「フード5」はすだれに替えて付加された要素であるといえることからも、前記従来技術を改良するにあたり、そのすだれを取り外し、かわりに「フード5」を「フード」(「フード2」)外に付加的に取り付ける、という機序が容易に想定され、よって、該付加要素である「スード5」を「フード2」とは別体に構成することが、当業者にとって容易に想到しうることといえる。

(キ)以上のとおりであるから、引用発明において、フード2とフード5とを別体に構成することは、引用発明に含まれる態様からの単なる選択、または、当業者が技術常識に照らし容易に想到し得たことであり、該別体とする構成において、フード2に囲まれた部分のみをX線(異物)検査装置と呼び、フード5に囲まれた部分をその外部と認識することは、当業者が任意に選択し得る事項に過ぎない。
よって、引用発明において相違点3の構成とすることは、技術常識に基づいて当業者が容易になし得たことである。

エ また、本件補正発明により奏される効果は、当業者が、引用発明及び周知の技術事項から予測し得た範囲内のものであって、格別のものではない。

(6)請求人の主張について

ア 請求人の主張
審判請求書において請求人は、引用文献1を主引例とする本件補正発明の進歩性について、下記の各主張をする。

(主張ア)引用文献1のフード2,5は、一体的か分離されているか不明であり、本願請求項1に係る発明のように、放射線検査装置と搬送装置とが別物である、とする発明に対する引用文献としては不適当です。なお、審査官殿は、拒絶査定において、「この相違点について検討すると、引用文献1の図1(b)を参照すると、フード2とフード5は別体であり、フード2の部分を放射線検査装置と見なすことができる。」と認定しています。しかしながら、引用文献1の段落[0006]には、「図1(a)はX線検査装置の平面図、図1(b)はその正面図を示している。」と記載され、引用文献1の図1(b)は、引用文献1の図1(a)に対して見る位置を変更しただけです。このため、「フード2とフード5は別体であり、」と認定する根拠は存在しておりません。

(主張イ)引用文献1のX線検査装置の入口を仮に、図1中の符号4a,4d間付近であるとすると、本願請求項1に係る発明とは異なり、符号5の矢印で示す遮蔽部の一端側は、入口の一端に対して外側にはありません。

(主張ウ)引用文献1に記載されている通り、X線検査装置の入口が符号6で示す位置であるとすると、引用文献1に記載の発明と、本願請求項1に係る発明とは、発明特定事項が全く異なります。

イ 当審の見解

(ア)主張アについて
主張アについては、相違点3に関し上記(5)ウにおいて説示したとおりである。
その前提として、構成Aにおいて、「上流側遮蔽部」が「放射線検査装置の外側にある」との特定がなされているが、前記のとおり本件補正発明において「放射線検査装置」は「被検物に放射線を照射して前記被検物を検査」し「搬送路」を内部に備えれば足りるから、引用発明の「フード2」内に「被検査物に検査用のX線を照射するX線管と、被検査物を透過したX線を検出するラインセンサと」「第1ベルト4a」とを備える要素が構成Aの「放射線検査装置」に相当するとした認定に誤りもない。

(イ)主張イについて
主張イについては、相違点2に関し上記(5)イにおいて説示したとおりである。

(ウ)主張ウについて
主張イにおいて請求人が述べるとおり、本件補正発明と引用発明との対比は、上記(3)で説示したとおり、引用発明において、「X線検査装置の入口」は「図1中の符号4a,4d間付近」であることを前提としており、主張ウの前提に立つものでないから、当該主張はその根拠を欠くといえる。

(エ)以上のとおりであるから、上記請求人の主張は何れも採用できない。

(7)小括
したがって、上記(3)〜(6)において検討したように、本件補正発明は、引用発明及び公知・周知の技術事項や技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
上記3において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について

1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜12に係る発明は、審査時補正により補正された、特許請求の範囲の請求項1〜12に記載されたとおりのものであるところ、その請求項8に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2.1(1)に本件補正前の請求項8として記載したとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由

原査定の拒絶の理由のうち本願発明に関するものは概略、次のとおりである。

(1)理由2(進歩性
本願発明は引用文献1または引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 引用例
引用文献1〜3の記載事項は、上記第2.3(2−1)〜(2−3)にそれぞれ記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、概ね、本件補正発明の発明特定事項から、構成C〜Eを省いたものである。

上記第2.3(3)〜(6)で検討したとおり、本件補正発明と引用発明(引用文献1に記載された発明)との相違点1・2は構成C・Eに関するもののみである。
そうすると、これら構成を省いた本願発明と引用発明との間には、相違点3のみが存在する。
しかし、相違点3の容易相当性については、上記第2.3(5)ウで説示したとおりである。
また、他に本願発明と引用発明とに差異があるとしても、それは微差であるから、引用発明において当該微差にあたる構成を想起して本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。
したがって、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明から当業者が容易に想到し得た発明であり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-07-13 
結審通知日 2022-07-19 
審決日 2022-08-02 
出願番号 P2020-103050
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65G)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 石井 哲
特許庁審判官 渡戸 正義
樋口 宗彦
発明の名称 搬送装置及び放射線検査システム  
代理人 金子 早苗  
代理人 峰 隆司  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 直樹  
代理人 金子 早苗  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 河野 直樹  
代理人 峰 隆司  

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