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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1389274
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-02-01 
確定日 2022-10-18 
事件の表示 特願2020− 26176「生産システム、通信方法、及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月 9日出願公開、特開2021−132280、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和2年2月19日の出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。

令和3年 4月 8日付け:拒絶理由通知書
令和3年 6月 2日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年11月 2日付け:拒絶査定(原査定)
令和4年 2月 1日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年 3月 7日付け:前置報告書


第2 原査定の概要
原査定(令和3年11月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1−7,14,15に係る発明は、以下の引用文献1−2に基づいて、請求項8−13に係る発明は、以下の引用文献1−3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2019−62467号公報
2.特開2018−64245号公報
3.特開2016−63236号公報
4.特開2019−140603号公報
5.特開2019−139631号公報


第3 本願発明
本願請求項1−14(以下、それぞれ「本願発明1」−「本願発明14」という。)は、令和4年2月1日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1−14に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
第1産業装置と、
前記第1産業装置と定周期で通信する第2産業装置と、
を有し、
前記第2産業装置は、1周期内における複数の定周期領域のうちの第1定周期領域を利用して、前記第1産業装置に、制御用の第1データを1の第1フレームの第1データ領域に含み、かつ、自身に関する第2データの一部を前記第1フレームの第2データ領域に含む前記第1フレームを送信し、同じ周期における第2定周期領域を利用して、少なくとも前記第2データの一部を1の第2フレームの所定のデータ領域に含む前記第2フレームを送信する送信部を有する、
生産システム。
【請求項2】
前記第1産業装置と前記第2産業装置との間では、1周期内において少なくとも1回、前記複数の定周期領域のうちの少なくとも1つを利用して、前記第1データが送受信される、
請求項1に記載の生産システム。
【請求項3】
前記第1産業装置は、1周期内で複数の通信相手と通信可能であり、
1周期内には、通信相手ごとに前記定周期領域があり、
前記送信部は、前記第2産業装置の前記定周期領域と、前記第2産業装置に対応する仮想的な産業装置の前記定周期領域と、を含む前記複数の定周期領域の各々を利用する、
請求項1又は2に記載の生産システム。
【請求項4】
前記生産システムは、複数の前記第2産業装置を有し、
前記第1産業装置は、1周期内において、前記複数の第2産業装置の各々と順番に通信し、
前記複数の第2産業装置の各々の前記送信部は、自身の順番が訪れた場合に、自身に応じた数の前記定周期領域を利用して、少なくとも前記第2データを送信する、
請求項1〜3の何れかに記載の生産システム。
【請求項5】
前記送信部は、前記複数の定周期領域の各々を利用して、複数の種類の前記第2データを送信する、
請求項1〜4の何れかに記載の生産システム。
【請求項6】
前記送信部は、1つの前記第2データを、前記複数の定周期領域に分けて送信する、
請求項1〜5の何れかに記載の生産システム。
【請求項7】
前記複数の定周期領域の各々に分けられたデータ部分には、識別情報が付与されており、
前記第1産業装置は、前記識別情報に基づいて、前記複数の定周期領域の各々を利用して受信した前記データ部分を結合する結合部を有する、
請求項6に記載の生産システム。
【請求項8】
前記第1産業装置は、複数の通信相手と通信可能であり、
前記生産システムは、前記送信部が利用する前記定周期領域の数に基づいて、通信相手の上限数を設定する上限数設定部を有する、
請求項1〜7の何れかに記載の生産システム。
【請求項9】
前記生産システムは、前記送信部が利用する前記定周期領域の数に基づいて、周期の長さを設定する周期設定部を有する、
請求項1〜8の何れかに記載の生産システム。
【請求項10】
前記生産システムは、前記定周期通信における周期の長さに基づいて、前記送信部が利用する前記定周期領域の数を決定する決定部を有する、
請求項1〜9の何れかに記載の生産システム。
【請求項11】
前記第2データは、前記第2産業装置により生成されたトレースデータ、前記第2産業装置により解析された解析データ、又は前記第2産業装置に接続された機器に関する機器データである、
請求項1〜10の何れかに記載の生産システム。
【請求項12】
前記第1産業装置は、指令を送信するマスタ機器であり、
前記第2産業装置は、前記指令に応じて動作するスレーブ機器である、
請求項1〜11の何れかに記載の生産システム。
【請求項13】
第1産業装置と、前記第1産業装置と定周期で通信する第2産業装置と、の間における通信方法であって、
前記第2産業装置が、1周期内における複数の定周期領域のうちの第1定周期領域を利用して、前記第1産業装置に、制御用の第1データを1の第1フレームの第1データ領域に含み、かつ、自身に関する第2データの一部を前記第1フレームの第2データ領域に含む前記第1フレームを送信し、同じ周期における第2定周期領域を利用して、少なくとも前記第2データの一部を1の第2フレームの所定のデータ領域に含む前記第2フレームを送信する、
通信方法。
【請求項14】
第1産業装置と定周期で通信する第2産業装置を、
1周期内における複数の定周期領域のうちの第1定周期領域を利用して、前記第1産業装置に、制御用の第1データを1の第1フレームの第1データ領域に含み、かつ、自身に関する第2データの一部を前記第1フレームの第2データ領域に含む前記第1フレームを送信し、同じ周期における第2定周期領域を利用して、少なくとも前記第2データの一部を1の第2フレームの所定のデータ領域に含む前記第2フレームを送信する送信部、
として機能させるためのプログラム。」


第4 引用文献、引用発明

1 引用文献1、引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。

「【0026】
§1 適用例
まず、図1を用いて本発明が適用される場面の一例について説明する。図1は、本実施の形態に従う制御システム1の適用場面の一例を模式的に例示する。本実施の形態に従う制御システム1は、製造装置または生産設備を制御する制御システムである。
【0027】
図1を参照して、制御システム1は、予め定められた周期毎にデータが更新されるネットワーク2に接続される制御装置100および制御装置300を備える。図1の例では、制御装置100はPLCによって具現化され、制御装置300はIPC(産業用コントローラ)によって具現化されている。制御装置100は本発明の「第1の制御装置」の一実施例に対応し、制御装置300は本発明の「第2の制御装置」の一実施例に対応する。
【0028】
制御装置100は、ネットワーク2を介して1または複数のフィールド機器200A〜200Dとの間で、製造装置または生産設備の制御に用いるデータ(制御系データ)を遣り取りする。すなわち、制御装置100は、制御系通信を担う「制御系コントローラ」に相当する。一方、制御装置300は、ネットワーク2上において、例えば、機器の設定および管理に関するデータのような、制御系データのような高速なリアルタイム性は要求されないものの、ある程度の定時性が求められるデータ(制御情報系データ)、および/または、上位の管理装置で利用されるデータ(情報系データ)を伝送する。すなわち、制御装置300は、制御情報系通信(情報系通信を含む)を担う「制御情報系コントローラ」に相当する。」

「【0045】
(2)制御情報系データは、情報系通信において用いられるデータのうち、制御に必要な情報に分類されるものであり、その主旨として、機器の設定・管理に関するデータを含む。すなわち、制御情報系データは、指定された時間内に宛先へ到着させる必要のあるデータに相当する。したがって、制御系データのような高速なリアルタイム性が要求されないものの、ある程度の定時性が求められる。機器の設定・管理に関するデータには、各機器の状態をセンシングしたデータが含まれており、機器の監視のためには、定周期で宛先に到着させる定時性が必要となる。制御情報系データの一例としては、センサデバイスに対するしきい値といった各種パラメータの設定、各機器に格納されている異常情報(ログ)の収集、各機器に対する更新用のファームウェア、各機器の状態を示す統計的データであって定時性が求められるデータなどが挙げられる。このようなネットワーク上で伝送される制御情報系データの内容は多種多様であるが、基本的には、機器の設定・管理に関するデータであるので、データサイズとしては、数kbyte程度が想定される。そのため、制御情報系データの通信周期は100msec未満に設定されることが好ましい。通信周期は比較的長くてもよいが、データの到着時刻は保証される必要がある。なお、到着時間の指定は、ユーザが任意に行なってもよいし、データを生成または要求するアプリケーションもしくは装置が予め定められたルールに従って行なってもよい。」

「【0090】
以下、本実施の形態に従う通信処理(スケジューリング)に関して、具体例を示す。
図8は、本実施の形態に従う通信処理を説明するための模式図である。図8を参照して、本実施の形態に従う通信処理においては、予め定められたシステム周期Tsに対して、制御系データ、制御情報系データ、情報系データの送受信(それぞれ、制御系通信、制御情報系通信、情報系通信と記す)がスケジューリングされる。
【0091】
まず、制御系通信が優先的に割り当てられる。図8(A)に示すように、システム周期Tsに対して、制御系通信に要する処理時間t1が先に割り当てられる。制御系通信は、フィールドネットワーク2を介して制御系コントローラ100とフィールド機器200との間で行なわれる。
【0092】
図8(B)に示すように、必要に応じて、制御系通信を行なっていない空帯域で制御情報系通信が行なわれる。すなわち、システム周期Tsのうち、制御系通信に要する処理時間t1を除いた残りの時間に対して、制御情報系通信に要する処理時間t2が割り当てられる。制御情報系通信は、フィールドネットワーク2を介して制御情報系コントローラ300とフィールド機器200との間で行なわれる。
【0093】
制御情報系通信は、すべてのシステム周期で発生するものではないので、図8(C)に示すように、システム周期Tsのうち、制御系通信に要する処理時間t1を除いた残り時間に対して、情報系通信に要する処理時間t3が割り当てられることもある。すなわち、情報系通信は、制御系通信および制御情報系通信のいずれも存在しない通信帯域で行なわれる。情報系通信は、フィールドネットワーク2を介して制御情報系コントローラ300とフィールド機器200との間で行なわれる。」

「【0095】
図9は、本実施の形態に従う通信処理の手順を説明するための模式図である。
図9を参照して、システム周期Tsのうちの制御系通信に要する時間においては、フィールドネットワーク2に接続される制御系コントローラ100および複数のフィールド機器200の間で制御系データが送受信される。このとき、制御系コントローラ100および複数のフィールド機器200の各々(ノード)においては、送受信コントローラの送信回路(図4参照)から制御系データが出力されるタイミングが制御される。具体的には、各ノードの送信回路においては、タイミング制御回路124がタイミング制御テーブル125(図4参照)に格納されたタイミング情報に基づいて、制御系データが格納されたキュー122から制御系データが出力されるように、複数の出力ゲート123を選択的にアクティブにする。
【0096】
例えば、複数のノードのうちの1つのノード(図9のノード1)においては、タイミング制御テーブル125に従って制御系データを他のノードへ送信し、その後、他のノードからの制御系データを受信可能な状態となる。
【0097】
複数のノードのうちの別のノード(図9のノード2)においては、タイミング制御テーブル125に従って、ノード1が制御系データを送信した後、制御系データを他のノードへ送信する。制御系データを送信するタイミングの前後において、ノード2は他のノードからの制御系データを受信可能な状態となる。
【0098】
このように、フィールドネットワーク2に接続される複数のノードが予め定められたタイミング制御テーブルに従って制御系データを順次送信するとともに、他のノードから送信された制御系データを受信することにより、制御系通信が実現される。
【0099】
システム周期Tsのうちの制御情報系通信に要する時間においては、フィールドネットワーク2を介して制御情報系コントローラ300および複数のフィールド機器200の間で制御情報系データが送受信される。このとき、制御情報系コントローラ300および複数のフィールド機器200の各々(ノード)においては、送受信コントローラの送信回路(図4参照)から制御情報系データが出力されるタイミングが制御される。具体的には、各ノードの送信回路においては、タイミング制御回路124がタイミング制御テーブル125(図4参照)に格納されたタイミング情報に基づいて、制御情報系データが格納されたキュー122から制御情報系データが出力されるように、複数の出力ゲート123を選択的にアクティブにする。
【0100】
例えば、1つのノード(図9のノード1)においては、タイミング制御テーブル125に従って制御情報系データを他のノードへ送信し、その後、他のノードからの制御情報系データを受信可能な状態となる。別のノード(図9のノード2)においては、タイミング制御テーブル125に従って、ノード1が制御情報系データを送信した後、制御情報系データを他のノードへ送信する。制御情報系データを送信するタイミングの前後において、ノード2は他のノードからの制御情報系データを受信可能な状態となる。
【0101】
このように、フィールドネットワーク2に接続される複数のノードが予め定められたタイミング制御テーブル125に従って制御情報系データを順次送信するとともに、他のノードから送信された制御情報系データを受信することにより、制御情報系通信が実現される。」

【図1】



【図8】



【図9】


したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「製造装置または生産設備を制御する制御システムであって、
制御システムは、予め定められた周期毎にデータが更新されるネットワーク2に接続される制御装置100および制御装置300を備え、
制御装置100は、ネットワーク2を介して1または複数のフィールド機器200A〜200Dとの間で、製造装置または生産設備の制御に用いるデータ(制御系データ)を遣り取りし、
制御装置300は、ネットワーク2上において、機器の設定および管理に関するデータのような、制御系データのような高速なリアルタイム性は要求されないものの、ある程度の定時性が求められるデータ(制御情報系データ)を伝送するものであり、
機器の設定・管理に関するデータには、各機器の状態をセンシングしたデータが含まれ、
予め定められたシステム周期Tsに対して、制御系データ、制御情報系データの送受信(それぞれ、制御系通信、制御情報系通信と記す)がスケジューリングされ、
システム周期Tsに対して、制御系通信に要する処理時間t1が先に割り当てられ、制御系通信に要する処理時間t1を除いた残りの時間に対して、制御情報系通信に要する処理時間t2が割り当てられ、
制御系通信に要する時間においては、制御系コントローラ100および複数のフィールド機器200の間で制御系データが送受信され、
このとき、各ノードの送信回路においては、タイミング制御テーブル125に格納されたタイミング情報に基づいて、制御系データが格納されたキュー122から制御系データが出力され、
制御情報系通信に要する時間においては、制御情報系コントローラ300および複数のフィールド機器200の間で制御情報系データが送受信され、
このとき、各ノードの送信回路においては、タイミング制御テーブル125に格納されたタイミング情報に基づいて、制御情報系データが格納されたキュー122から制御情報系データが出力される、
制御システム。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。)。

「【0104】
上述のデバイス管理モード(その1)の場合とは逆に、制御情報系データを受信するデバイスの受信バッファが大きい場合や高速な受信処理が可能な場合には、同一のシステム周期内に、同一のデバイス向け制御情報系データまたは情報系データを複数送信するようにしてもよい。つまり、受信側デバイスの処理に余裕があり、システム周期内に複数回の受信が可能な場合には、図10(B)に示すように、予め定められたシステム周期内に、制御情報系データまたは情報系データを複数回送信するようにしてもよい。すなわち、デバイス管理モード(その2)においては、同一のシステム周期において、同一のデバイス向けの制御情報系データまたは情報系データを複数個送信するようにしてもよい。」

【図10】



3 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている(以下、「引用文献3記載の技術的事項」という。)。

「【0059】
制御装置11(21)は、データ量Vdが所定量Vd1を超えている場合、送信情報に関わるデータを複数に分割する(ステップST7)。データが分割された場合には、分割データ毎に分割識別情報を付与する。その分割識別情報は、それぞれの分割データを結合する際に用いる。尚、このデータの分割は、オペレータの操作部12(22)からの指令によって予め実施しておいてもよい。これに対して、制御装置11(21)は、データ量Vdが所定量Vd1を超えていない場合、そのデータを分割せずにステップST8に進む。」

「【0078】
制御装置11(21)は、分割データではないと判定した場合、このデータ受信に関わる演算処理を終了させる。一方、制御装置11(21)は、分割データであると判定した場合、複数の関連する分割データを受信した後、その複数の分割データを分割識別情報に基づいて結合し、元の送信情報に関わるデータに戻す(ステップST27)。」


4 引用文献4
令和4年3月7日付け前置報告書において、新たに引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている(以下、「引用文献4記載の技術的事項」という。)。

「【0074】
まず、図6を用いて、フレームデータの構成を説明する。図6に示すように、フレームデータは、先頭から、制御データ用のヘッダ、スレーブ装置211に対する第1制御データD01、スレーブ装置212に対する第1制御データD02、スレーブ装置221に対する第1制御データD1、スレーブ装置221に対する第2制御データD21、制御データ用のフッタ、情報系データ用のヘッダ、情報系データDi、情報系データ用のフッタの順に並ぶデータによって構成されている。また、図6では、フレームデータには、制御データ用のフッタと情報系データ用のヘッダとの間、および、情報系データ用のヘッダの後に、データの衝突回避用の待機時間Dtに対応する空データ領域が設定されている。この待機時間Dtは、設定することが好ましいが、省略することも可能である。そして、このような構成からなるフレームデータによって、サイクリック周期の1周期における通信が実行される。」

【図6】


5 引用文献5
令和4年3月7日付け前置報告書において、新たに引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている(以下、「引用文献5記載の技術的事項」という。)。

「【0072】
まず、図4を用いて、フレームデータの構成を説明する。図4に示すように、フレームデータは、先頭から、制御データ用のヘッダ、スレーブ装置211に対する第1制御データD11、スレーブ装置212に対する第1制御データD12、スレーブ装置221に対する第1制御データD13、スレーブ装置221に対する第2制御データD23、制御データ用のフッタ、情報系データ用のヘッダ、情報系データDi、情報系データ用のフッタの順に並ぶデータによって構成されている。また、図4では、フレームデータには、制御データ用のフッタと情報系データ用のヘッダとの間、および、情報系データ用のヘッダの後に、データの衝突回避用の待機時間Dtに対応する空データ領域が設定されている。この待機時間Dtは、設定することが好ましいが、省略することも可能である。そして、このような構成からなるフレームデータによって、サイクリック周期の1周期における通信が実行される。」

【図4】



第5 対比・判断

1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを比較すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「制御装置100」は、「製造装置または生産設備を制御する制御システム」に含まれており「製造装置」と「生産設備」とはいずれも産業に関連するといえるから、引用発明における「制御装置100」は、本願発明1における「第1産業装置」に相当する。

イ 引用発明における「制御系データ」は、「製造装置または生産設備の制御に用いるデータ」であるから、本願発明1における「制御用の第1データ」に相当する。

ウ 引用発明における「複数のフィールド機器200A〜200D」は、「制御装置100」と、「システム周期Ts」に対して割り当てられた「制御系通信に要する処理時間t1」で「製造装置または生産設備の制御に用いるデータ(制御系データ)を遣り取り」しているから、上記アを踏まえると、本願における「第1産業装置と定周期で通信する第2産業装置」に相当する。

エ 引用発明における「制御情報系データ」は、「機器の設定および管理に関するデータのような、制御系データのような高速なリアルタイム性は要求されないものの、ある程度の定時性が求められるデータ」であって、「機器の設定・管理に関するデータには、各機器の状態をセンシングしたデータが含まれ」るから、本願発明1における「自身に関する第2データ」に相当する。

オ 引用発明における「制御系通信に要する処理時間t1」は、「予め定められたシステム周期Tsに対して」「スケジューリングされ」ており、さらに「複数のフィールド機器200の各々(ノード)」に割り当てられているから、本願発明1における「1周期内における複数の定周期領域」に含まれるといえる。

カ 引用発明における「制御系通信に要する時間においては、制御系コントローラ100および複数のフィールド機器200の間で制御系データが送受信され、このとき、各ノードの送信回路においては、タイミング制御テーブル125に格納されたタイミング情報に基づいて、制御系データが格納されたキュー122から制御系データが出力され」ることは、上記ア、イ、オを踏まえると、本願発明1における「1周期内における複数の定周期領域のうちの第1定周期領域を利用して、前記第1産業装置に、制御用の第1データを1の第1フレームの第1データ領域に含み、かつ、自身に関する第2データの一部を前記第1フレームの第2データ領域に含む前記第1フレームを送信し、同じ周期における第2定周期領域を利用して、少なくとも前記第2データの一部を1の第2フレームの所定のデータ領域に含む前記第2フレームを送信する」ことと、「1周期内における複数の定周期領域のうちの第1定周期領域を利用して、前記第1産業装置に、制御用の第1データを送信」する点で共通するといえる。
また、引用発明における「制御情報系通信に要する時間においては、制御情報系コントローラ300および複数のフィールド機器200の間で制御情報系データが送受信され、このとき、各ノードの送信回路においては、タイミング制御テーブル125に格納されたタイミング情報に基づいて、制御情報系データが格納されたキュー122から制御情報系データが出力される」ことは、上記エを踏まえると、本願発明における「1周期内における複数の定周期領域のうちの第1定周期領域を利用して、前記第1産業装置に、制御用の第1データを1の第1フレームの第1データ領域に含み、かつ、自身に関する第2データの一部を前記第1フレームの第2データ領域に含む前記第1フレームを送信し、同じ周期における第2定周期領域を利用して、少なくとも前記第2データの一部を1の第2フレームの所定のデータ領域に含む前記第2フレームを送信する」ことと、「自身に関する第2データを送信する」点で共通するといえる。

キ 引用発明における「複数のフィールド機器200A〜200D」は、「送受信コントローラ」を有しているから、本願発明1の「送信部」に相当する構成を備えるといえる。

ク 引用発明における「制御システム」は「製造装置または生産設備を制御する」ものであるから、本願発明1における「生産システム」に相当する。

(2)一致点・相違点
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「第1産業装置と、
前記第1産業装置と定周期で通信する第2産業装置と、
を有し、
前記第2産業装置は、1周期内における複数の定周期領域のうちの第1定周期領域を利用して前記第1産業装置に制御用の第1データを送信し、自身に関する第2データを送信する送信部を有する、
生産システム。」

[相違点1]
本願発明1において「送信部」は、「1周期内における複数の定周期領域のうちの第1定周期領域を利用して、前記第1産業装置に、制御用の第1データを1の第1フレームの第1データ領域に含み、かつ、自身に関する第2データの一部を前記第1フレームの第2データ領域に含む前記第1フレームを送信し、同じ周期における第2定周期領域を利用して、少なくとも前記第2データの一部を1の第2フレームの所定のデータ領域に含む前記第2フレームを送信する」のに対し、引用発明ではそのように特定されていない点。

[相違点2]
本願発明1において「自身に関する第2データ」の送信先は「第1産業装置」であるのに対し、引用発明では異なる装置である点。

(3)相違点についての判断
相違点1について検討する。
本願発明1の相違点1に係る、「制御用の第1データを1の第1フレームの第1データ領域に含み、かつ、自身に関する第2データの一部を前記第1フレームの第2データ領域に含む前記第1フレームを送信し、同じ周期における第2定周期領域を利用して、少なくとも前記第2データの一部を1の第2フレームの所定のデータ領域に含む前記第2フレームを送信する」構成について、引用文献1−5には記載も示唆もなく、当該構成が周知であったとも認められない。
よって、引用発明および引用文献2−5記載の技術的事項に基づいて、当業者は本願発明1の相違点1に係る構成を容易に想到することはできない。

したがって,上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明および引用文献2−5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2−12について
本願発明2−12は、本願発明1を減縮したものであって、上記相違点1に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明および引用文献2−5に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 本願発明13,14について
本願発明13、14は、概ね、本願発明1の発明のカテゴリをシステムの発明から、単にそれぞれ通信方法の発明、プログラムの発明へと変更したものであり、上記相違点1に係る構成と同様の構成を備えているから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明及び引用文献2−5記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明1−14は、当業者が引用発明及び引用文献2−5記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。




 
審決日 2022-10-04 
出願番号 P2020-026176
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 富澤 哲生
石井 則之
発明の名称 生産システム、通信方法、及びプログラム  
代理人 弁理士法人はるか国際特許事務所  

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