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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する A24F
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する A24F
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A24F
管理番号 1389341
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-10-28 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2022-02-24 
確定日 2022-07-22 
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第5978303号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第5978303号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5978303号(以下、「本件特許」という。)は、2012年8月8日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2011年8月9日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2014−525108号の請求項1ないし45に係る発明について、平成28年7月29日に特許権の設定登録がなされたところ、令和2年2月12日に先の訂正審判(訂正2020−390011号)が請求され、令和2年8月21日付けの審決により、先の訂正審判の請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することが認められ、令和2年9月2日に審決が確定した。
そして、新たに令和4年2月24日に本件訂正審判の請求がなされたところである。

第2 審判請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし45について訂正すること(以下、「本件訂正」という。)を認める、との審決を求めるものである。

第3 訂正の内容
本件訂正の内容は審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載されたとおり訂正するものであって、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す。なお、以下で「請求項1」とは先の訂正審判により訂正された特許請求の範囲の請求項1を意味する。)。

1 訂正事項1
請求項1の冒頭に、「カートリッジと、電気加熱部材と、制御ハウジングと、を含む電気喫煙物品であって、前記カートリッジは、」との記載を追加する訂正を行う(請求項1の記載を引用する請求項2ないし45も同様に訂正する。)。

2 訂正事項2
請求項1に「前記カートリッジ本体内に配置されている吸引可能な物質媒体と、」とあるのを、「前記カートリッジ本体内に配置されている、前記カートリッジ本体の一端部と近接する第1端部及び前記カートリッジ本体の他端部と近接する第2端部を有し、前記カートリッジ本体とほぼ同じ長さの吸引可能な物質媒体と、」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2ないし45も同様に訂正する。)。

3 訂正事項3
請求項1の「吸引可能な物質媒体と、」との記載の後に、「前記カートリッジ本体より長く、前記カートリッジ本体を取り囲むオーバーラップ部であって、前記オーバーラップ部における前記カートリッジ本体から突出した部分が、前記カートリッジの吸い口端と、前記吸引可能な物質媒体の吸い口側の端部と、の間に設けられたフィルター材料を囲う、オーバーラップ部と、を有し、」との記載を挿入する訂正を行う(請求項1の記載を引用する請求項2ないし45も同様に訂正する。)。

4 訂正事項4
請求項1に「電気加熱部材と、」とあるのを、「前記電気加熱部材は、前記カートリッジのオーバーラップ部内に配置され、」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2ないし45も同様に訂正する。)。

5 訂正事項5
請求項1に「前記カートリッジに機能可能に連結されている嵌合端部を有するとともに、前記電気加熱部材に電力を供給する電気エネルギー源を含む制御ハウジングと、」とあるのを、「前記制御ハウジングは、前記カートリッジに機能可能に連結されている嵌合端部を有するとともに、前記電気加熱部材に電力を供給する電気エネルギー源を含み、」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2ないし45も同様に訂正する。)。

6 訂正事項6
請求項1に、「前記カートリッジは、前記制御ハウジングヘの必要な挿入深さを示す1つ以上のマーキングを外面に有する、電気喫煙物品」とあるのを、「前記カートリッジの前記オーバーラップ部は、前記制御ハウジングヘの必要な挿入深さを示す1つ以上のマーキングを外面に有する、電気喫煙物品」と訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2ないし45も同様に訂正する。)。

第4 当審の判断
1 訂正事項1について
(1)訂正の目的
訂正前の請求項1の第6行目には「前記カートリッジ」と記載されているが、これより前に「カートリッジ」との語句が記載されておらず、「前記」との語句が何を指すのか明瞭でなかった。
訂正事項1は、「カートリッジと、電気加熱部材と、制御ハウジングと、を含む電気喫煙物品であって」を追加することで、当該「前記カートリッジ」よりも前に「カートリッジ」を特定して記載を明瞭にするとともに、「電気喫煙物品」が「電気加熱部材」、「制御ハウジング」に加えて、新たに「カートリッジ」を含むことを限定するものである。
さらに、訂正事項1は、「前記カートリッジは、」を追加することで、後に続く「カートリッジ本体」及び「吸引可能な物質媒体」は、「電気喫煙物品」に含まれる「カートリッジ」が有するものであることを限定するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同法第126条第1項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(2)新規事項の追加の有無について
明細書の段落【0034】には「本発明による物品10は、制御ハウジング200とカートリッジ300を含むことができる。」と記載されており、また、図4の記載から、「カートリッジ300」が「カートリッジ本体305」、「吸引可能な物質媒体350」を有するものであることが分かるため、訂正事項1は願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「願書に添付した明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであるといえる。
よって、訂正事項1は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないこと
訂正事項1は、上記(1)のように訂正前の請求項1に記載された事項をさらに限定するとともに、請求項1の記載を明瞭にするものであるので、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
よって、訂正事項1は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

2 訂正事項2について
(1)訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の「吸引可能な物質媒体」について、「カートリッジ本体の一端部と近接する第1端部及びカートリッジ本体の他端部と近接する第2端部を有し、カートリッジ本体とほぼ同じ長さ」であることを限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項の追加の有無について
明細書の段落【0056】には、「吸引可能な物質媒体350の管状の壁352は、カートリッジ本体305の吸い口端315に近接する第1の端部353と、カートリッジ本体305の嵌合端部310に近接する第2の端部354という対向末端部を有する。」との記載があり、図4において、「カートリッジ本体305」と「吸引可能な物質媒体350」とがほぼ同じ長さであることが分かるため、訂正事項2は願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるといえる。
よって、訂正事項2は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないこと
訂正事項2は、上記(1)のように訂正前の請求項1に記載された事項をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
よって、訂正事項2は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 訂正事項3について
(1)訂正の目的
訂正事項3は、訂正事項1と合わせて「カートリッジ」が「オーバーラップ部」を有しているものであるとの限定を行い、また、当該「オーバーラップ部」は「カートリッジ本体より長く、カートリッジ本体を取り囲む」ものであり、「カートリッジの吸い口端と、吸引可能な物質媒体の吸い口側の端部と、の間に設けられたフィルター材料を囲う」ものであることを限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項の追加の有無について
明細書の段落【0063】には、「カートリッジ本体と吸引可能な物質媒体の長さはそれぞれ、オーバーラップ部の長さよりも最大で約50%、最大で約30%、または最大で約10%短い。」との記載、段落【0025】には、「カートリッジ本体を取り囲むオーバーラップ部をさらに含むことができ」との記載があり、また、図4の記載からカートリッジ300がオーバーラップ部380を有していることが分かる。
また、段落【0009】には、「オーバーラップ部は、カートリッジの吸い口端に近接して配置されたフィルター材料を含んでよい。」との記載があり、段落【0069】には、「本発明の物品のこの区域(カートリッジ本体305の吸い口端315とオーバーラップ部380の吸い口末端(図6に示されているようなもの)との間に配置されている区域など)にフィルター材料を含むのが望ましいことがある。」と記載されているので、フィルター材料は「カートリッジ本体305の吸い口端315」と「オーバーラップ部380の吸い口末端」との間に配置されることが記載されていると認められる。
ここで、「2(2)」で上述したとおり、吸引可能な物質媒体350は「カートリッジ本体とほぼ同じ長さ」で、「カートリッジ本体の一端部と近接する第1端部及びカートリッジ本体の他端部と近接する第2端部を有し」ていることが分かり、また、図4の記載から、「カートリッジ本体305の吸い口端315」と「吸引可能な物質媒体の吸い口側の端部」は、物品10の長手方向のほぼ同じ位置に近接して配置されていることが分かる。
また、上述のとおり、カートリッジ300がオーバーラップ部380を有していることが分かり、図4の記載から「オーバーラップ部380の吸い口末端」とは「カートリッジの吸い口端」であると認められる。
そうしてみると、フィルター材料は「前記カートリッジの吸い口端と、前記吸引可能な物質媒体の吸い口側の端部と、の間に設けられた」ものであると認められる。
そして、図4の記載を参酌すると、カートリッジの吸い口端と吸引可能な物質媒体の吸い口側の端部との間の空間はオーバーラップ部380に囲まれているものであることが分かることから、訂正事項3は願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるといえる。
よって、訂正事項3は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないこと
訂正事項3は、上記(1)のように訂正前の請求項1に記載された事項をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
よって、訂正事項3は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

4 訂正事項4について
(1)訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の「電気加熱部材」について、「カートリッジのオーバーラップ部内に配置され」るものであることを限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項の追加の有無について
図1ないし図3、図7の記載を参酌すると、「電気加熱部材400」が「カートリッジ300」の「オーバーラップ部380」内に配置されることが分かるので、訂正事項4は願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるといえる。
よって、訂正事項4は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないこと
訂正事項4は、上記(1)のように訂正前の請求項1に記載された事項をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
よって、訂正事項4は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

5 訂正事項5について
(1)訂正の目的
訂正事項5は、訂正事項1の「電気喫煙物品」が「制御ハウジング」を含むことを冒頭で特定することで、請求項1の記載を明瞭にすることに伴う形式的な訂正であり、特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(2)新規事項の追加の有無について
上記(1)で述べたように、訂正事項5は形式的な訂正にすぎないから、訂正事項5は願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるといえる。
よって、訂正事項5は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないこと
上記(1)で述べたように、訂正事項5は形式的な訂正にすぎないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
よって、訂正事項5は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

6 訂正事項6について
(1)訂正の目的
訂正事項6は、「マーキング」について、カートリッジの「オーバーラップ部」が有するものであることを限定するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(2)新規事項の追加の有無について
明細書の段落【0090】の「例えば、カートリッジは、その外側(例えばカートリッジオーバーランプ部380の外面)に1つ以上のマーク(または目盛り尺)を含んでよい。」と記載されていることから、訂正事項6は願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるといえる。
よって、訂正事項6は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでないこと
訂正事項6は、上記(1)のように訂正前の請求項1に記載された事項をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
よって、訂正事項6は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

7 独立特許要件
本件訂正の訂正事項1ないし4及び6は特許法第126条第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(1)本件訂正発明について
訂正後の請求項1ないし45に係る発明は審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
カートリッジと、電気加熱部材と、制御ハウジングと、を含む電気喫煙物品であって、
前記カートリッジは、
実質的に筒状のカートリッジ本体と、
吸引可能な物質をともに含む実質的に筒状の吸引可能な物質媒体であって、前記吸引可能な物質媒体と前記カートリッジ本体との間にポリマー材料を含む環状空間を定めるように、前記カートリッジ本体内に配置されている、前記カートリッジ本体の一端部と近接する第1端部及び前記カートリッジ本体の他端部と近接する第2端部を有し、前記カートリッジ本体とほぼ同じ長さの吸引可能な物質媒体と、
前記カートリッジ本体より長く、前記カートリッジ本体を取り囲むオーバーラップ部であって、前記オーバーラップ部における前記カートリッジ本体から突出した部分が、前記カートリッジの吸い口端と、前記吸引可能な物質媒体の吸い口側の端部と、の間に設けられたフィルター材料を囲う、オーバーラップ部と、を有し、
前記電気加熱部材は、前記カートリッジのオーバーラップ部内に配置され、
前記制御ハウジングは、前記カートリッジに機能可能に連結されている嵌合端部を有するとともに、前記電気加熱部材に電力を供給する電気エネルギー源を含み、
前記吸引可能な物質を含む蒸気を前記環状空間内に形成させるのに充分に、前記吸引可能な物質媒体の少なくとも一部を加熱するように、前記吸引可能な物質媒体が前記電気加熱部材と機能可能に配置され、
前記カートリッジの前記オーバーラップ部は、前記制御ハウジングへの必要な挿入深さを示す1つ以上のマーキングを外面に有する、電気喫煙物品。
【請求項2】
前記カートリッジ本体が実質的に円筒状の形である、請求項1に記載の電気喫煙物品。
【請求項3】
前記カートリッジ本体が、前記制御ハウジングの前記嵌合端部に機能可能に連結される嵌合端部を含み、前記カートリッジ本体の前記嵌合端部が、前記電気エネルギー源の少なくとも1つの構成要素を受容するような大きさおよび形を有する開口部含む、請求項1または請求項2に記載の電気喫煙物品。
【請求項4】
前記吸引可能な物質がタバコ由来の材料を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項5】
前記吸引可能な物質がエアロゾル形成材料を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項6】
前記エアロゾル形成材料が多価アルコールを含む、請求項5に記載の電気喫煙物品。
【請求項7】
前記多価アルコールがグリセリンである、請求項6に記載の電気喫煙物品。
【請求項8】
前記吸引可能な物質媒体が固体基材を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項9】
前記固体基材がタバコを含む、請求項8に記載の電気喫煙物品。
【請求項10】
前記固体基材がタバコ由来の材料を含む、請求項8に記載の電気喫煙物品。
【請求項11】
前記固体基材が紙材料である、請求項8に記載の電気喫煙物品。
【請求項12】
前記固体基材がタバコ紙チューブである、請求項8に記載の電気喫煙物品。
【請求項13】
前記固体基材がエアロゾル形成材料をさらに含む、請求項8〜12のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項14】
前記吸引可能な物質媒体が蒸気バリアを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項15】
前記蒸気バリアが前記電気加熱部材に隣接するように、前記蒸気バリアが、前記吸引可能な物質媒体の壁に配置されている、請求項14に記載の電気喫煙物品。
【請求項16】
前記吸引可能な物質媒体が、前記カートリッジ本体に、前記吸引可能な物質媒体の対向端部のみで取り付けられている、請求項1〜15のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項17】
前記吸引可能な物質媒体と前記カートリッジ本体との間の前記環状空間の容積が約5ml〜約100mlである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項18】
前記制御ハウジングの前記嵌合端部が、開口端部を有するチャンバーを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項19】
周囲空気を前記チャンバーの中に侵入させる1つ以上の開口部を含む壁で、前記チャンバーが形成されている、請求項18に記載の電気喫煙物品。
【請求項20】
前記電気エネルギー源が突出部を含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項21】
前記突出部の長さが約10mm〜約50mmである、請求項20に記載の電気喫煙物品。
【請求項22】
前記電気加熱部材が、前記電気エネルギー源の前記突出部に取り付けられている、請求項20に記載の電気喫煙物品。
【請求項23】
前記電気加熱部材が抵抗線である、請求項22に記載の電気喫煙物品。
【請求項24】
前記電気加熱部材の上に配置された放熱部材をさらに含む、請求項22に記載の電気喫煙物品。
【請求項25】
前記放熱部材の幅が、前記吸引可能な物質媒体の長さの約10%〜約30%である、請求項24に記載の電気喫煙物品。
【請求項26】
前記カートリッジ本体が、前記電気加熱部材をその上に有する突出部の一区域を通って、ある距離だけ割り送られるように構成されている、請求項20〜25のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項27】
前記物品が、前記割り送りを手動で制御するように適合されている、請求項26に記載の電気喫煙物品。
【請求項28】
前記突出部区域を通り越すように、前記カートリッジ本体を自動的に割り送る吸煙始動式コントローラーを前記物品が含む、請求項26に記載の電気喫煙物品。
【請求項29】
前記割り送り距離が、吸煙の持続時間に直接関連する、請求項28に記載の電気喫煙物品。
【請求項30】
前記電気加熱部材を有する前記突出部区域の長さが、前記吸引可能な物質媒体の長さの約75%〜約125%である、請求項26に記載の電気喫煙物品。
【請求項31】
前記電気加熱部材が前記カートリッジ本体内に配置されている、請求項1に記載の電気喫煙物品。
【請求項32】
前記電気エネルギー源が突出部を含み、加熱を始動させると、前記電気加熱部材の全長に沿って加熱が行われるように、前記電気加熱部材が、前記突出部上の対応する接点と相互作用するように適合された電気接点を含む、請求項31に記載の電気喫煙物品。
【請求項33】
前記電気加熱部材が前記カートリッジ本体内に、前記吸引可能な物質媒体の長さの約75%〜約100%である部分に沿って存在する、請求項32に記載の電気喫煙物品。
【請求項34】
前記電気エネルギー源の前記突出部が導電体を含む、請求項32に記載の電気喫煙物品。
【請求項35】
加熱が行われているときに、前記突出部と電気的に接続している、前記電気加熱部材の区域に近接する、前記吸引可能な物質媒体の部分のみが加熱されるように、前記導電体が、前記電気加熱部材の別個の区域と電気的接続を形成する、請求項34に記載の電気喫煙物品。
【請求項36】
前記突出部の前記導電体と電気的に接続している、前記電気加熱部材の区域が、前記吸引可能な物質媒体の長さの約5%〜約50%を含む、請求項35に記載の電気喫煙物品。
【請求項37】
前記カートリッジ本体が、導電体をその上に有する前記突出部区域を通って、ある距離だけ割り送られるように構成されている、請求項36に記載の電気喫煙物品。
【請求項38】
前記物品が、前記割り送りを手動で制御するように適合されている、請求項37に記載の電気喫煙物品。
【請求項39】
前記物品が、前記突出部区域を通って、前記カートリッジ本体を自動的に割り送る吸煙始動式コントローラーを含む、請求項37に記載の電気喫煙物品。
【請求項40】
前記割り送り距離が、吸煙の持続時間に直接関連する、請求項39に記載の電気喫煙物品。
【請求項41】
前記吸引可能な物質媒体の対応する別個の区域に個別に熱を供給する複数の個別のヒーター要素を前記電気加熱部材が含む、請求項1に記載の電気喫煙物品。
【請求項42】
前記電気加熱部材が、所定の抵抗率を有する導電性材料であって、前記吸引可能な物質媒体と一体形成されている導電性材料である、請求項1に記載の電気喫煙物品。
【請求項43】
前記制御ハウジングが、前記電気エネルギー源から前記電気加熱部材への電流流動を始動させる構成要素をさらに含む、請求項1に記載の電気喫煙物品。
【請求項44】
前記制御ハウジングが、前記電気エネルギー源から前記電気加熱部材への、すでに開始済みの電流流動を調節する構成要素さらに含む、請求項1に記載の電気喫煙物品。
【請求項45】
前記吸引可能な物質媒体を含む前記カートリッジ本体の長さ沿いの流体経路が、前記カートリッジ本体と前記吸引可能な物質媒体との間の環状空間を通る経路に実質的に限定されるような流路を前記カートリッジが含む、請求項1に記載の電気喫煙物品。

以下、上記請求項1ないし45に係る発明を「本件訂正発明1ないし45」という。

(2)「独立特許要件」についての審判請求人の主張の概要
審判請求人は東京地方裁判所において令和2年(ワ)第25892号特許権侵害に基づく差止等請求事件(以下、「侵害事件」という。)を提起しているところ、同事件において被告らが主張する特許無効の抗弁(無効理由1ないし3(以下、「理由1ないし3」という。))はいずれも理由がなく、本件訂正発明1ないし45は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

(3)理由1ないし3の概要
理由1:乙第19号証を主引例として当業者が容易に想到できる発明であり進歩性を欠く。
理由2:乙第20号証を主引例として当業者が容易に想到できる発明であり進歩性を欠く。
理由3:カートリッジに機能可能に連結されている「嵌合端部」(制御ハウジングが有するものとして規定されている「嵌合端部」)は、本件特許の明細書に記載されていない部材であり、また、その意義が不明確であるとのサポート要件違反及び明確性違反並びに「前記カートリッジ」との前に「カートリッジ」との語句は記載されておらず、「前記カートリッジ」との語句の意義が不明であるとの明確性違反。

(4)審判請求人が提出した参考資料1ないし10
審判請求人は審判請求書に添付して、次の参考資料1ないし10を提出している。
なお、参考資料2ないし9は被告らによって、無効の主張の根拠とされている乙第19号証ないし26号証である。
参考資料1:東京地方裁判所令和2年(ワ)第25892号特許権侵害に基づく差止等請求事件の令和3年9月21日付けの被告ら第3準備書面
参考資料2:乙第19号証(国際公開第2011/060961号)
参考資料3:乙第20号証(国際公開第2007/085830号)
参考資料4:乙第21号証(特表平11−503912号公報)
参考資料5:乙第22号証(米国特許第5388594号明細書)
参考資料6の1:乙第23号証の1(米国特許第6810883号明細書)
参考資料6の2:乙第23号証の2(特表2006−505281号公報)
参考資料7の1:乙第24号証の1(Accord Owner’s Guide)
参考資料7の2:乙第24号証の2(Quick Tips Guide Accord)
参考資料8:乙第25号証(デジタルライターNHA-PL3(N)の取扱説明書)
参考資料9:乙第26号証(heatbarのマニュアル)
参考資料10:東京地方裁判所令和2年(ワ)第25892号特許権侵害に基づく差止等請求事件の令和4年1月13日付けの原告ら第2準備書面

ア 乙第19号証の記載事項及び乙第19号証に記載の発明
乙第19号証には、以下の事項が記載されている(下線は理解の一助のため当審が付与したものである。以下同様。)。
(ア)Filter segments according to the invention may advantageously be used in filters for filter cigarettes and other smoking articles in which material is combusted to form smoke. Filter segments according to the invention may also be used in smoking articles in which material is heated to form an aerosol, rather than combusted. In one type of heated smoking article, tobacco material or another aerosol forming material is heated by one or more electrical heating elements to produce an aerosol. In another type of heated smoking article, an aerosol is produced by the transfer of heat from a combustible fuel element or heat source to a physically separate aerosol forming material, which may be located within, around or downstream of the heat source.
(第2頁第5行−第13行)
[当審訳]
“本発明によるフィルタセグメントは、有利には、材料を燃焼させて煙を形成するフィルタシガレットおよび他の喫煙物品用のフィルタに使用することができる。本発明によるフィルタセグメントは、材料が燃焼されるのではなく、エアロゾルを形成するために加熱される喫煙品に使用することもできる。加熱式喫煙物品の1つのタイプでは、タバコ材料または別のエアロゾル形成材料は、1つまたは複数の電気加熱要素によって加熱されてエアロゾルを生成する。別の種類の加熱式喫煙具では、エアロゾルは、可燃性燃料要素または熱源から、熱源内、周囲、または下流に位置する物理的に分離したエアロゾル形成材料への熱伝達によって生成される。”

(イ)Preferably, the non-laminar substrate is a thread. As used herein, the term 'thread' is used to describe any elongate non-laminar substrate. For example, the non-laminar substrate may be a thread formed from one or more twisted, Filter segments according to the invention laminar strips of filter plug wrap.
(第5頁第19行−第22行)
[当審訳]
“好ましくは、非薄板状基材はスレッドである。本明細書で使用する場合、「スレッド」という用語は、任意の細長い非層状基材を説明するために使用される。例えば、非層状基材は、1つ以上のねじれた、本発明によるフィルタセグメントの層状ストリップのフィルタプラグラップから形成されるスレッドであってもよい。”

(ウ)Alternatively or in addition to one or more additional flavour release segments, multi- segment filters according to the invention may comprise a rod end filter segment upstream of the filter segment according to the invention. Preferably, the rod end filter segment comprises filtration material, more preferably a fibrous filtration material. The rod end filter segment may, for example, comprise cellulosic material, such as cellulose acetate tow, or other suitable fibrous filtration materials such as paper. The inclusion of a rod end filter segment comprising 5 filtration material advantageously provides additional filtration efficiency. The inclusion of a rod end filter segment comprising a fibrous filtration material is particularly preferred in multi- segment filters according to the invention for use in filter cigarettes having a total tar delivery of about 6 mg or less.
(第10頁第19行−第28行)
[当審訳]
“代替的にまたは追加的に、1つまたは複数の追加のフレーバーリリースセグメント、本発明によるセグメントフィルタは、本発明によるフィルタセグメントの上流にロッドエンドフィルターセグメントを含んでいてよい。好ましくは、ロッドエンドフィルターセグメントは、濾過材料、より好ましくは繊維状濾過材料からなる。ロッドエンドフィルターセグメントは、例えば、セルロースアセテートトウなどのセルロース系材料、又は紙などの他の適切な繊維状濾過材料から構成されてもよい。5 の濾過材は、有利に追加の濾過効率を提供する。繊維状濾過材料からなるロッドエンドフィルターセグメントを含むことは、約6mg以下の総タール送達量を有するフィルタシガレットに使用するための本発明によるマルチセグメントフィルタにおいて特に好ましい。”

(エ)Each filter cigarette generally comprises an elongate, cylindrical wrapped tobacco rod 12 attached at one end to an axially aligned, elongate, cylindrical, filter 14. The wrapped tobacco rod 12 and the filter 14 are joined in a conventional manner by tipping paper (not shown), which circumscribes the entire length of the filter and an adjacent portion of the wrapped tobacco rod 12. A plurality of annular perforations (not shown) is provided through the tipping paper at a location along filter 14 to ventilate mainstream smoke drawn through the filter 14 with ambient air.
The single segment filter 14 of the filter cigarette 10 according to the first embodiment of the invention includes a single filter segment 16 according to the invention adjacent to and abutting the wrapped tobacco rod 12. As shown in Figure 1 , the filter segment 16 comprises a plug of cellulose acetate tow 18 and a central flavour-bearing thread 20 that extends axially through the plug of cellulose acetate tow 18 parallel to the longitudinal axis of the filter 14 and wrapped tobacco rod 12. The central flavour-bearing thread 20 is of substantially the same length as the plug of cellulose acetate tow 18, so that the ends of the central flavour-bearing thread 20 are visible at the ends of the filter segment 16. The central flavour-bearing thread 20, which is loaded with menthol, is formed from twisted filter plug wrap having an air permeability of at least about 3000 Coresta units.
During smoking of the filter cigarette 10, mainstream smoke is drawn downstream from the lit end of the wrapped tobacco rod 12 through the single segment filter 14 by the consumer. As the mainstream smoke enters the single segment filter 14 it passes through the filter segment 16 according to the invention, where the cellulose acetate tow filters out particulate phase components of the smoke and menthol is released into the mainstream smoke from the central flavour-bearing thread 20 extending axially through the cellulose acetate tow. The menthol loaded on the central flavour-bearing thread 20 of the filter segment 16 according to the invention thus provides flavour enhancement to the mainstream smoke.
(第16頁第1行−第25行)
[当審訳]
“各フィルタシガレットは、一般に、軸方向に整列した細長い円筒形の、フィルタ14に一端が取り付けられた細長い円筒形の巻きタバコロッド12から構成されている。巻きタバコロッド12とフィルタ14は、フィルタの全長と巻きタバコロッド12の隣接部分を周回するチッピングペーパー(図示せず)によって、従来の方法で接合されている。フィルタ14を介して吸い込まれた主流煙を周囲空気と通気させるために、フィルタ14に沿った位置でチッピングペーパーを介して複数の環状穿孔(図示せず)が設けられている。
本発明の第1の実施形態によるフィルタシガレット10の単一セグメントフィルタ14は、巻きタバコロッド12に隣接し、かつこれに隣接する本発明による単一フィルタセグメント16を含む。図1 に示すように、フィルタセグメント16は、セルロースアセテートトウプラグ18と、フィルタ14および巻きタバコロッド12 の長手方向軸に平行にセルロースアセテートトウプラグ18を通って軸方向に延びる中央フレーバ担持スレッド20とから構成されている。中央フレーバー担持スレッド20 は、セルロースアセテートトウプラグ18と実質的に同じ長さであり、中央フレーバ担持スレッド20の端部がフィルタセグメント16の端部で見えるようにする。メントールを担持する中央フレーバ担持スレッド20は、少なくとも約3000コアスタ単位の空気透過性を有する撚りフィルタプラグラップから形成されている。
フィルターシガレット10の喫煙中、主流煙は消費者によって単一セグメントフィルタ14を通って巻きタバコロッド12の着火端から下流に引き込まれる。主流フィルタシガレットフィルタ14に入ると、本発明によるフィルタセグメント16を通過し、そこでセルロースアセテートトウが煙の粒子相成分を濾過し、メントールがセルロースアセテートトウを通って軸方向に延びる中央フレーバ担持スレッド20から主流煙に放出される。本発明によるフィルタセグメント16の中央フレーバ担持スレッド20に担持されたメントールは、このようにして主流煙にフレーバ増強を提供する。”

(オ)「



上記(ア)には、乙第19号証記載のフィルタセグメントが、タバコ材料または別のエアロゾル形成材料を電気加熱要素によって加熱してエアロゾルを生成する、加熱式喫煙物品に使用されることが示唆されている。乙第19号証には、この加熱式喫煙物品の具体的な構成については明記されていないが、上記(イ)ないし(オ)の記載及び技術常識に鑑みると、当該加熱式喫煙物品には、Figure1のフィルタシガレット10のタバコロッド12に相当する部分が、上記「タバコ材料または別のエアロゾル形成材料」からなる部材(以下「加熱ロッド」という。)に代替され、これが電気加熱要素によって加熱されるものが含まれることは明らかである。
また、上記(エ)、(オ)からは、フィルタ14が、セルロースアセテートトウプラグ18と吸引可能なメントールを含む中央フレーバ担持スレッド20を備えることが分かる。さらに、上記(イ)、(オ)の記載からは、中央フレーバ担持スレッド20が細長い形状であることが、上記(エ)、(オ)の記載からは、中央フレーバ担持スレッド20が、吸引可能なメントールを含み、柱状のセルロースアセテートトウプラグ18内に配置されていることが分かる。

上記の記載事項を整理すると、乙第19号証には次の発明(以下、「乙第19号証発明」という。)が記載されていると認められる。
「フィルタ14と、加熱ロッドと、電気加熱要素とを含む加熱式喫煙物品であって、
前記フィルタ14は、
柱状のセルロースアセテートトウプラグ18と、
細長い吸引可能なメントールを含む中央フレーバ担持スレッド20とを有する加熱式喫煙物品。」

イ 乙第20号証の記載事項及び乙第20号証に記載の発明
乙第20号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)The smoking article of the present invention comprises smokable material (sometimes referred to as "smoking material") wrapped in a wrapper.
The term 'smokable material' means any material which can be used in a smoking article. It does not necessarily mean that the material itself will necessarily sustain combustion. The smokable material may be tobacco material or may, alternatively be a tobacco substitute material. A tobacco substitute material is usually produced as a sheet, and then cut to resemble cut tobacco. The smokable material may then be blended with other materials to produce a smokable filler material.
The smokable material is typically retained in the form of a rod, commonly known as a smokable material rod or a smoking material rod. These terms are merely intended to mean that part of the smoking article which is contained within the wrapper (which may be a paper or other wrapper, which other wrapper may or may not be combustible) and should not have imported therein any association as to the combustibility or otherwise of individual components of the rod of the smoking material.
The smoking article of the present invention may take any form. For example the smoking article may be one in which the tobacco is smoked by igniting the smoking material and inhaling the products of combustion, as for example in a cigarette, cigar or cigarillo. Alternatively the smoking article may be one in which the smoking material is heated to a temperature at which decomposition in to pyrolysis products occurs without combustion. Such articles are well known and incorporate electrical or other heating means such as a charcoal element.
(第2頁第17行−第3頁第7行)
[当審訳]
“本発明の喫煙物品は、喫煙可能な材料(以下、「喫煙材料」という場合がある)をラッパーで包んで構成される。
喫煙可能な材料」という用語は、喫煙具に使用することができるあらゆる材料を意味する。この用語は、材料自体が必ずしも燃焼を維持することを意味するものではない。喫煙可能な材料は、タバコ材料であってもよいし、代替的にタバコ代替材料であってもよい。タバコ代替材料は、通常、シートとして製造され、次に、カットタバコに類似するようにカットされる。喫煙可能な材料は、その後、他の材料と混合して喫煙可能な充填材を製造することができる。
喫煙可能材料は、一般に、喫煙可能材料ロッドまたは喫煙材料ロッドとして知られているロッドの形態で保持される。これらの用語は、単にラッパー(紙または他のラッパーであってもよく、その他のラッパーは可燃性であってもなくてもよい)内に含まれる喫煙物品の部分を意味することを意図しており、そこに喫煙材料のロッドの個々の構成要素の可燃性またはその他に関するいかなる関連性も輸入すべきではない。本発明の喫煙物品は、任意の形態をとることができる。例えば、喫煙物品は、例えばタバコ、葉巻、シガリロのように、喫煙材料に点火し、燃焼生成物を吸入することによってタバコを喫煙するものであってよい。あるいは、喫煙具は、燃焼させずに熱分解生成物への分解が起こる温度まで喫煙材を加熱するものであってもよい。このような物品はよく知られており、電気または炭素のような他の加熱手段を組み込んでいる。”

(イ)The preferred smoking article of the present invention is a cigarette comprising a rod of tobacco, a wrapper, and a smoke filter wherein the filter comprises the rod of the present invention.
(第3頁第9行−第11行)
[当審訳]
“本発明の好ましい喫煙物品は、タバコロッドと、ラッパーと、フィルタが本発明のロッドからなるスモークフィルターとからなるシガレットである。”

(ウ)Additives for the Smoking Article
Preferably the solid support and/or the smoking material comprises additives. In a highly preferred aspect, at least the solid support is coated with an additive. The coated additive may be applied by impregnation of the support with the desired additive(s).
Examples of additives for use in the preparation of the smoking article of the present invention include (but are not limited to) burn additives, colourants, flavourants, filler materials, binders, aerosol generating means, ash improvers, catalysts, adsorbents, etc. Combinations of additives may be used. Mixtures of inert organic fillers and inorganic fillers may be used.
Flavourant means any substance which releases, produces, neutralises, masks or alters odours, for example a perfume or deodorant.
(第18頁第11行−第24行)
[当審訳]
“喫煙物品のための添加剤
好ましくは、固体支持体および/または喫煙材料は、添加剤を含む。更に好ましい態様では、少なくとも固体支持体は添加剤で被覆されている。コーティングされた添加剤は、支持体に所望の添加剤(複数可)を含浸させることによって適用することができる。
本発明の喫煙物品の調製に使用するための添加物の例としては、燃焼添加剤、着色剤、香味剤、充填材、結合剤、エアロゾル発生手段、灰分改良剤、触媒、吸着剤などが挙げられる(ただし、これらに限定されるものではない)。添加剤を組み合わせて使用してもよい。不活性な有機充填剤と無機充填剤の混合物を使用してもよい。
香料とは、例えば香水や消臭剤のように、臭いを放出、生成、中和、マスクまたは変化させる物質を意味する。”

(エ)Fillers for the filter include organic material(s) and/or inorganic filler material(s). Examples of filler materials for the filter include polymers, preferably having a large surface area, such as branched polymer. Preferred polymers include fibrous cellulose- based material, partially oxidized cellulose, polyaniline, regenerated cellulose, cellulose acetate and the like.
[当審訳]
“フィルター用の充填材は、有機材料(複数可)及び/又は無機充填材(複数可)を含む。フィルターのための充填材の例には、ポリマー、好ましくは分岐ポリマーのような大きな表面積を有するポリマーが含まれる。好ましいポリマーとしては、繊維状セルロース系材料、部分酸化セルロース、ポリアニリン、再生セルロース、セルロースアセテートなどが挙げられる。”
(第20頁第20行−第24行)

(オ)Solid Support
The solid support provides a suitable matrix for supporting agents - such as chemicals. Preferably the agent is one or more smoke-modifying agent(s).
The support may be made from any suitable material - such as natural or un-natural fibres; or combinations thereof.
Preferably the shape of the support is substantially similar along its longitudinal axis.
The support may be coated with additional agents that facilitate the coating of the smoke- modifying agent(s) thereto - or ease the impregnation thereof.
The support may be in the form of a thread of a tape.
In a preferred aspect, the solid support is coloured. In this respect, consumer preference is to see the solid support in the rods - if the rods are filters.
In a preferred aspect, the colour of the solid support is indicative or suggestive of the smoke modifying agent. For example, if the agent is menthol, then preferably the colour is green. Other examples could be yellow for vanillin, dark green for mint, brown for cocoa etc.
Positioning of Solid Support
The solid support extends longitudinally within said rod. In a highly preferred aspect, the solid support is positioned along the central longitudinal axis of the rod. With the method of the present invention, manufacturers can achieve this with a higher degree of accuracy and reliability than before.
Preferably, at least one end of the solid material is at one end of the rod. More preferably, the ends of the solid material are at opposite ends of the rod. In other words, all of the solid support extends from the first end of said rod to the second end of said rod. Alternatively expressed, the lengths of the solid material and the rod are the same.
(第27頁第6行−第28頁第8行)
[当審訳]
“固体支持体
固体支持体は、化学物質などの薬剤を支持するのに適したマトリックスを提供する。好ましくは、薬剤は1つまたは複数の煙改質剤である。
支持体は、天然繊維、非天然繊維、またはそれらの組み合わせなど、任意の適切な材料で作ることができる。
好ましくは、支持体の形状は、その長手方向軸に沿って実質的に類似している。
支持体には、煙改質剤のコーティングを促進する、あるいは含浸を容易にする薬剤をさらに塗布することができる。
支持体は、テープの糸状であってもよい。
好ましい態様では、固体支持体は着色されている。ロッドがフィルタである場合、この点の消費者の嗜好は、ロッドの中に固体支持体があることである。
好ましい態様において、固体支持体の色は、煙害防止剤を示すかまたは示唆するものである。例えば、薬剤がメントールである場合、好ましい色は緑色である。他の例としては、バニリンの場合は黄色、ミントの場合は深緑、カカオの場合は茶色などが考えられる。
固体支持体
固体支持体は、前記ロッド内で長手方向に延びる。非常に好ましい態様では、固体支持体は、ロッドの中央長手方向軸に沿って位置決めされる。本発明の方法により、製造業者は、従来よりも高い精度と信頼性でこれを達成することができる。
好ましくは、固体材料の少なくとも1つの端部は、ロッドの一端にある。より好ましくは、固体材料の端部は、前記ロッドの反対側の端部にある。言い換えれば、固体支持体の全てが、前記ロッドの第1の端部から前記ロッドの第2の端部まで延びている。あるいは、固体材料とロッドの長さは同じである。”

(カ)Smoke-modifying agent
Preferably the additive is a smoke modifiying agent.
The agent may be a single agent or may be a mixture of agents.
Preferably the smoke modifying agent is at least one flavourant. Preferably the flavourant is used in a substantially pure form for coating the support material.
In a preferred embodiment the additive for the support material is menthol.
It is to be noted that the tobacco for the smoking article may also be coated with smoke- modifying agents - of the type just described.
The smoke-modifying agent may be any suitable agent. Examples include agents that affect the taste or aroma to the smoke. The agents may suppress or enhance one or more taste or aroma component(s). The agents may themselves impart taste or aroma characteristics. Specific examples include agents such as fiavourants - such as menthol, liquorice, tobacco (extract) flavours, mint, vanillin, clove, cocoa, toffee, chocolate, caramel, molasses, malt extract, coffee extract, tea resinoids, prune extract, peppermint, spearmint, isopinocampheol, isomenthone, mint cooler (obtained from the flavour house IFF), neomenthol, dill seed oil etc.
(第28頁第27行−第29頁第16行)
[当審訳]
“煙改質剤
好ましくは、添加剤は、煙改質剤である。
薬剤は単体でもよいし、複数の薬剤を混合してもよい。
好ましくは、煙改質剤は少なくとも1つの香味剤である。好ましくは、香味料は、支持体材料をコーティングするために、実質的に純粋な形態で使用される。
好ましい実施形態では、支持体用添加剤はメントールである。
喫煙用品のタバコは、先ほど説明したタイプの煙改質剤でコーティングされていることもあることに留意されるべきである。
煙改質剤は、任意の適切な薬剤であってよい。例としては、煙に対する味または香りに影響を与える薬剤が挙げられる。薬剤は、1つ以上の味または香りの成分(複数可)を抑制または増強することができる。薬剤は、それ自体が味や香りの特徴を付与することもある。具体的な例としては、メントール、甘草、タバコ(エキス)フレーバ、ミント、バニリン、クローブ、ココア、タフィー、チョコレート、キャラメル、糖蜜、麦芽エキス、コーヒーエキス、茶レジノイド、プルーンエキス、ペパーミント、スペアミント、イソピノカンフェノール、イソメントン、ミントクーラー(IFF 社から得られる)、ネオメントン、ディル種子油などの香料のような剤を挙げることができる。”

(キ)With reference to Figure 1 : The rod (100) of the present invention has a first end (105) and a second end (110). The rod has located therein a solid support (115). The solid support (115) extends in a linear fashion from the first end (105) of said rod to the second end of said rod (110). At least a portion of said solid support is coated and/or impregnated with an additive (not shown).
(第38頁第4行−第8行)
[当審訳]
“図1を参照すると:本発明のロッド(100)は、第1の端部(105)と第2の端部(110)を有する。このロッドは、その中に固体支持体(115)を配置している。前記固体支持体(115)は、前記ロッドの第1の端部(105)から前記ロッドの第2の端部(110)へ直線的に延びている。前記固体支持体の少なくとも一部は、添加剤(図示せず)でコーティングされ、及び/又は含浸されている。”

(ク)「



上記(ク)のとおり、FIG.1Aには、柱状のロッド(100)、固体支持体(115)が記載されている。以下では、柱状のロッド(100)と固体支持体(115)とを合わせたものを「棒状部材」ということにする。
また、上記(ア)の記載によれば、ロッド(100)はラッパー(不図示)で覆われているから、上記(キ)の記載を考慮すると、喫煙物品は、棒状部材と、電気の加熱手段と、ラッパーとを有することが分かる。さらに、上記(ウ)、(オ)、(カ)、(キ)の記載から、固体支持体(115)は吸引可能な薬剤を有することが分かる。

上記の記載事項を整理すると、乙第20号証には次の発明(以下、「乙第20号証発明」という。)が記載されていると認められる。
「棒状部材と、電気の加熱手段と、ラッパーとを含む喫煙物品であって、
前記棒状部材は、
柱状のロッド(100)と、
吸引可能な薬剤を含む固体支持体(115)とを有し、
前記ロッド(100)はラッパーによって覆われている、
喫煙物品。」

ウ 乙第21号証の記載事項
乙第21号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)「ライター25は正面および後方ハウジング部33と35を有するハウジング31を含む。一つまたはそれ以上のバッテリ35aが後方ハウジング部35内に除去可能に配置されておりそして口27に隣接して正面ハウジング部33内に配列された複数の電気抵抗加熱素子37へエネルギーを供給する。正面ハウジング部33における制御回路41はバッテリ35aと加熱素子37との間の電気的連絡を樹立する。」
(第24頁第12行−第17行)

(イ)「



エ 乙第22号証の記載事項
乙第22号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)A smoking system 21 according to the present invention is seen with reference to FIGS. 1 and 2. The smoking system 21 includes a cigarette 23 and a reusable lighter 25. The cigarette 23 is adapted to be inserted in and removed from an orifice 27 at a front end 29 of the lighter 25. The smoking system 21 is used in much the same fashion as a conventional cigarette. The cigarette 23 is disposed of after one or more puff cycles. The lighter 25 is preferably disposed of after a greater number of puff cycles as the cigarette 23.
(第4欄第62行−第5欄第3行)
[当審訳]
“本発明による喫煙システム21が、図1および図2を参照して見られる。喫煙システム21は、シガレット23と再利用可能なライター25を含む。シガレット23は、ライター25の前端部29にあるオリフィス27に挿入され、そこから取り出されるように適合されている。喫煙システム21は、従来のシガレットとほぼ同じ方法で使用される。シガレット23は、1回以上のパフサイクルの後に廃棄される。ライター25は、好ましくは、シガレット23よりも多くのパフサイクルの後に処分される。”

(イ)「



オ 乙第23号証の1の記載事項
乙第23号証の1には、以下の事項が記載されている。
(ア)An electrically heated cigarette smoking device 200 according to an embodiment of the invention is shown in an assembled condition in FIG. 1 and in an exploded view in FIG. 2. The entire electrically heated cigarette smoking device 200 includes an upper heater case cap 20, a front housing 22, and left and right battery case portions 26, 24. As shown in the exploded view of FIG. 2, a heater unit 30 is positioned below the heater case cap 20, with the heater unit 30 fitting inside of a partition 40 that positions the heater unit relative to the front housing 22 of the cigarette smoking device. An opening 18 at the top of the heater case cap 20 allows for the insertion of a cigarette into the top opening 30a of the heater unit 30. When the cigarette has been inserted through the opening 18 and into opening 30a of the heater unit 30, it is positioned in proximity to a plurality of heater blades (not shown) arranged around the circumference of the cigarette.
(第5欄第55行−第6欄第4行)
[当審訳]
“本発明の一実施形態による電気加熱式たばこ喫煙装置200は、図1に組み立てた状態を、図2に分解図を示している。電気加熱式たばこ喫煙装置200の全体は、上部ヒーターケースキャップ20と、フロントハウジング22と、左右のバッテリーケース部分26,24とを含む。図2の分解図に示すように、ヒーターケースキャップ20の下方には、ヒーターユニット30が配置されており、ヒーターユニット30は、タバコ喫煙装置の前部ハウジング22に対してヒーターユニットを位置決めする仕切り40の内側に嵌め込まれている。ヒーターケースキャップ20の上部の開口部18は、ヒーターユニット30の上部開口部30aにタバコを挿入することができるようになっている。シガレットが開口部18からヒーターユニット30の開口部30aに挿入されると、シガレットの円周上に配置された複数のヒーターブレード(図示せず)に近接して配置される。”

(イ)「



カ 乙第23号証の2の記載事項
乙第23号証の2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0021】
本発明の実施形態による電気加熱式タバコ喫煙装置200は、組み立てられた状態が図1に示され、分解組立図が図2に示されている。全体の電気加熱式タバコ喫煙装置200は、上部加熱器ケースキャップ20、前部ハウジング22、左及び右バッテリケース部26及び24を含む。図2の分解組立図に示すように、加熱器ユニット30は、加熱器ケースキャップ20の下部に配置され、この加熱器ユニット30は、タバコ喫煙装置の前部ハウジング22に対して加熱器ユニットを配置する仕切り40の内部に勘合する。加熱器ケースキャップ20の上部にある開口部18は、加熱器ユニット30の上部開口部30aへのタバコの挿入を可能にする。タバコは、開口部18を通じて加熱器ユニット30の開口部30aに挿入された後は、タバコの周囲の周りに配列された複数の加熱器ブレード(図示しない)に隣接して配置される。」

(イ)「



キ 乙第24号証の1の記載事項
乙第24号証の1には、以下の事項が記載されている。
(ア)Push the tabaco end of the Accord Cigarette straight down into the Puff Activated Lighter until only the filter and brand name are visible(Fig1).
(8頁の下の写真における左欄)
[当審訳]
“フィルタ及びブランド名のみが見えるようになるまで、アコードシガレットのタバコ端を、パフ・アクティベーティッドライター内にまっすぐ押し下げて下さい(図1)。”

ク 乙第24号証の2の記載事項
乙第24号証の2には、以下の事項が記載されている。
(ア)Lighter, there’s a cartridge with electrical heating elements that heat the tabaco to just the right temperature for full, rich taste. But they only work when you puff.
(7頁の上の写真中の記載)
[当審訳]
“より軽く、より豊かに味わうために、タバコをちょうどよい温度に加熱する電熱線付きのカートリッジです。これは吸引時のみ作動します。”

ケ 乙第25号証の記載事項
乙第25号証には、以下の事項が記載されている。
「デジタルライターはたばこの葉を燃やすことなく電気的に加熱し、たばこの味と薫りを引き出しています。あなたがたばこを吸うと同時にデジタルライターのヒーターが作動し、たばこを加熱します。火を使わずにたばこをおいしく味わえる最適の温度まで加熱できるのはデジタルライターだけです。」
(4頁の左欄)

コ 乙第26号証の記載事項
乙第26号証には、以下の事項が記載されている。
(ア)WELCOME TO HEATBAR THE BATTERY-OPERATED SMOKING DEVICE
(第1頁)
[当審訳]
“ヒートバーへようこそ。電池により作動する喫煙具です。”

(イ)2. Push the THS cigarette into the HEATBAR to the first printed line.
(3頁左欄)
[当審訳]
“2.第1の印刷された線まで、THSシガレットをヒートバーに押し込んでください。”

(5)理由1(乙第19号証発明を主引例とした場合の進歩性の欠如)の検討及び判断
ア 本件訂正発明1
上記第4の7(4)アに示したように、乙第19号証には、加熱式喫煙物品に関してみると、本件訂正発明1に特定される、電気加熱部材の配置関係や、オーバーラップ部に対応する構成は記載されていない。そうすると、本件訂正発明1と乙第19号証発明とは、少なくとも、本件訂正発明1の「吸引可能な物質媒体」が、「実質的に筒状」であって、この「一部を加熱するように」、「カートリッジのオーバーラップ部内に配置され」る「電気加熱部材と機能可能に配置され」るのに対して、乙第19号証発明の「加熱ロッド」は、こうした構成でない点で相違しているといえる。
そして、当該相違点に係る本件訂正発明1の構成は、乙第19号証ないし乙第26号証のいずれにも記載されておらず、また、乙第19号証発明をそのように変更することが設計的事項であるという理由もない。
したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は乙第19号証発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件訂正発明2ないし45について
本件訂正発明2ないし45は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、同様に、乙第19号証発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 付記
参考資料1の第9頁では、侵害事件の被告らが、乙第19号証の「中央フレーバ担持スレッド(中心香味担持スレッド)が「吸引可能な物質媒体」に相当する旨主張しているので、この点について検討しておく。
乙第19号証発明(加熱式喫煙物品)のフィルタ14は、加熱ロッド側から流入してくるエアロゾルに対して濾過等を行うものであり、電気加熱要素によって加熱されるものではない。
したがって、その内部の中央フレーバ担持スレッド20もまた電気加熱要素によって加熱されるものではないから、本件訂正発明1の吸引可能な物質媒体に相当するものとは認められない。

(6)理由2(乙第20号証発明を主引例とした場合の進歩性の欠如)の検討及び判断
ア 本件訂正発明1
上記第4の7(4)イに示したように、乙第20号証には、本件訂正発明1に特定される、電気加熱部材の配置関係や、オーバーラップ部に対応する構成は記載されていない。
そうすると、本件訂正発明1と乙第20号証発明とは、少なくとも、本件訂正発明1の「吸引可能な物質媒体」は、「実質的に筒状」であって、この「一部を加熱するように」、「カートリッジのオーバーラップ部内に配置され」る「電気加熱部材と機能可能に配置され」るのに対して、乙第20号証発明の固体支持体(115)は、こうした構成でない点で相違している。
そして、当該相違点に係る本件訂正発明1の構成は、乙第19号証ないし乙第26号証のいずれにも記載されておらず、また、乙第20号証発明をそのように変更することが設計的事項であるという理由もない。
したがって、その余の点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は乙第20号証発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件訂正発明2ないし45について
本件訂正発明2ないし45は、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、同様に、乙第20号証発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(7)理由3(サポート要件違反及び明確性要件違反)の検討及び判断
本件特許の明細書の段落【0008】には、「本発明の物品は、カートリッジの嵌合端部と嵌合する受容端部を有する制御ハウジングも含むことができる。」との記載があり、制御ハウジングは、カートリッジの嵌合端部と嵌合する端部を有していると認められ、当該端部は、請求項1に係る発明の「嵌合端部」であると認められるので、請求項1に係る発明の「嵌合端部」は発明の詳細な説明に記載したものであり、かつ、明確でもある。
また、本件訂正の訂正事項1によって、「カートリッジ」に係る記載は明確となった。
よって、本件訂正発明1は発明の詳細な説明に記載したものであり、かつ、明確である
また、同様に、本件訂正発明1を直接又は間接的に引用する本件訂正発明2ないし45も発明の詳細な説明に記載したものであり、かつ、明確である。

(8)まとめ
したがって、審判請求人の主張するとおり、本件訂正発明1ないし45は、侵害事件で被告らが主張している理由1ないし3によって、特許出願の際独立して特許を受けることができないものではない。
また、他に、本件訂正発明1ないし45について、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。
よって、本件訂正は、特許法第126条第7項の規定に適合する。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって、結論の通り審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カートリッジと、電気加熱部材と、制御ハウジングと、を含む電気喫煙物品であって、
前記カートリッジは、
実質的に筒状のカートリッジ本体と、
吸引可能な物質をともに含む実質的に筒状の吸引可能な物質媒体であって、前記吸引可能な物質媒体と前記カートリッジ本体との間にポリマー材料を含む環状空間を定めるように、前記カートリッジ本体内に配置されている、前記カートリッジ本体の一端部と近接する第1端部及び前記カートリッジ本体の他端部と近接する第2端部を有し、前記カートリッジ本体とほぼ同じ長さの吸引可能な物質媒体と、
前記カートリッジ本体より長く、前記カートリッジ本体を取り囲むオーバーラップ部であって、前記オーバーラップ部における前記カートリッジ本体から突出した部分が、前記カートリッジの吸い口端と、前記吸引可能な物質媒体の吸い口側の端部と、の間に設けられたフィルター材料を囲う、オーバーラップ部と、を有し、
前記電気加熱部材は、前記カートリッジのオーバーラップ部内に配置され、
前記制御ハウジングは、前記カートリッジに機能可能に連結されている嵌合端部を有するとともに、前記電気加熱部材に電力を供給する電気エネルギー源を含み、
前記吸引可能な物質を含む蒸気を前記環状空間内に形成させるのに充分に、前記吸引可能な物質媒体の少なくとも一部を加熱するように、前記吸引可能な物質媒体が前記電気加熱部材と機能可能に配置され、
前記カートリッジの前記オーバーラップ部は、前記制御ハウジングへの必要な挿入深さを示す1つ以上のマーキングを外面に有する、電気喫煙物品。
【請求項2】
前記カートリッジ本体が実質的に円筒状の形である、請求項1に記載の電気喫煙物品。
【請求項3】
前記カートリッジ本体が、前記制御ハウジングの前記嵌合端部に機能可能に連結される嵌合端部を含み、前記カートリッジ本体の前記嵌合端部が、前記電気エネルギー源の少なくとも1つの構成要素を受容するような大きさおよび形を有する開口部含む、請求項1または請求項2に記載の電気喫煙物品。
【請求項4】
前記吸引可能な物質がタバコ由来の材料を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項5】
前記吸引可能な物質がエアロゾル形成材料を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項6】
前記エアロゾル形成材料が多価アルコールを含む、請求項5に記載の電気喫煙物品。
【請求項7】
前記多価アルコールがグリセリンである、請求項6に記載の電気喫煙物品。
【請求項8】
前記吸引可能な物質媒体が固体基材を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項9】
前記固体基材がタバコを含む、請求項8に記載の電気喫煙物品。
【請求項10】
前記固体基材がタバコ由来の材料を含む、請求項8に記載の電気喫煙物品。
【請求項11】
前記固体基材が紙材料である、請求項8に記載の電気喫煙物品。
【請求項12】
前記固体基材がタバコ紙チューブである、請求項8に記載の電気喫煙物品。
【請求項13】
前記固体基材がエアロゾル形成材料をさらに含む、請求項8〜12のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項14】
前記吸引可能な物質媒体が蒸気バリアを含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項15】
前記蒸気バリアが前記電気加熱部材に隣接するように、前記蒸気バリアが、前記吸引可能な物質媒体の壁に配置されている、請求項14に記載の電気喫煙物品。
【請求項16】
前記吸引可能な物質媒体が、前記カートリッジ本体に、前記吸引可能な物質媒体の対向端部のみで取り付けられている、請求項1〜15のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項17】
前記吸引可能な物質媒体と前記カートリッジ本体との間の前記環状空間の容積が約5ml〜約100mlである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項18】
前記制御ハウジングの前記嵌合端部が、開口端部を有するチャンバーを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項19】
周囲空気を前記チャンバーの中に侵入させる1つ以上の開口部を含む壁で、前記チャンバーが形成されている、請求項18に記載の電気喫煙物品。
【請求項20】
前記電気エネルギー源が突出部を含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項21】
前記突出部の長さが約10mm〜約50mmである、請求項20に記載の電気喫煙物品。
【請求項22】
前記電気加熱部材が、前記電気エネルギー源の前記突出部に取り付けられている、請求項20に記載の電気喫煙物品。
【請求項23】
前記電気加熱部材が抵抗線である、請求項22に記載の電気喫煙物品。
【請求項24】
前記電気加熱部材の上に配置された放熱部材をさらに含む、請求項22に記載の電気喫煙物品。
【請求項25】
前記放熱部材の幅が、前記吸引可能な物質媒体の長さの約10%〜約30%である、請求項24に記載の電気喫煙物品。
【請求項26】
前記カートリッジ本体が、前記電気加熱部材をその上に有する突出部の一区域を通って、ある距離だけ割り送られるように構成されている、請求項20〜25のいずれか一項に記載の電気喫煙物品。
【請求項27】
前記物品が、前記割り送りを手動で制御するように適合されている、請求項26に記載の電気喫煙物品。
【請求項28】
前記突出部区域を通り越すように、前記カートリッジ本体を自動的に割り送る吸煙始動式コントローラーを前記物品が含む、請求項26に記載の電気喫煙物品。
【請求項29】
前記割り送り距離が、吸煙の持続時間に直接関連する、請求項28に記載の電気喫煙物品。
【請求項30】
前記電気加熱部材を有する前記突出部区域の長さが、前記吸引可能な物質媒体の長さの約75%〜約125%である、請求項26に記載の電気喫煙物品。
【請求項31】
前記電気加熱部材が前記カートリッジ本体内に配置されている、請求項1に記載の電気喫煙物品。
【請求項32】
前記電気エネルギー源が突出部を含み、加熱を始動させると、前記電気加熱部材の全長に沿って加熱が行われるように、前記電気加熱部材が、前記突出部上の対応する接点と相互作用するように適合された電気接点を含む、請求項31に記載の電気喫煙物品。
【請求項33】
前記電気加熱部材が前記カートリッジ本体内に、前記吸引可能な物質媒体の長さの約75%〜約100%である部分に沿って存在する、請求項32に記載の電気喫煙物品。
【請求項34】
前記電気エネルギー源の前記突出部が導電体を含む、請求項32に記載の電気喫煙物品。
【請求項35】
加熱が行われているときに、前記突出部と電気的に接続している、前記電気加熱部材の区域に近接する、前記吸引可能な物質媒体の部分のみが加熱されるように、前記導電体が、前記電気加熱部材の別個の区域と電気的接続を形成する、請求項34に記載の電気喫煙物品。
【請求項36】
前記突出部の前記導電体と電気的に接続している、前記電気加熱部材の区域が、前記吸引可能な物質媒体の長さの約5%〜約50%を含む、請求項35に記載の電気喫煙物品。
【請求項37】
前記カートリッジ本体が、導電体をその上に有する前記突出部区域を通って、ある距離だけ割り送られるように構成されている、請求項36に記載の電気喫煙物品。
【請求項38】
前記物品が、前記割り送りを手動で制御するように適合されている、請求項37に記載の電気喫煙物品。
【請求項39】
前記物品が、前記突出部区域を通って、前記カートリッジ本体を自動的に割り送る吸煙始動式コントローラーを含む、請求項37に記載の電気喫煙物品。
【請求項40】
前記割り送り距離が、吸煙の持続時間に直接関連する、請求項39に記載の電気喫煙物品。
【請求項41】
前記吸引可能な物質媒体の対応する別個の区域に個別に熱を供給する複数の個別のヒーター要素を前記電気加熱部材が含む、請求項1に記載の電気喫煙物品。
【請求項42】
前記電気加熱部材が、所定の抵抗率を有する導電性材料であって、前記吸引可能な物質媒体と一体形成されている導電性材料である、請求項1に記載の電気喫煙物品。
【請求項43】
前記制御ハウジングが、前記電気エネルギー源から前記電気加熱部材への電流流動を始動させる構成要素をさらに含む、請求項1に記載の電気喫煙物品。
【請求項44】
前記制御ハウジングが、前記電気エネルギー源から前記電気加熱部材への、すでに開始済みの電流流動を調節する構成要素さらに含む、請求項1に記載の電気喫煙物品。
【請求項45】
前記吸引可能な物質媒体を含む前記カートリッジ本体の長さ沿いの流体経路が、前記カートリッジ本体と前記吸引可能な物質媒体との間の環状空間を通る経路に実質的に限定されるような流路を前記カートリッジが含む、請求項1に記載の電気喫煙物品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2022-06-22 
結審通知日 2022-06-28 
審決日 2022-07-13 
出願番号 P2014-525108
審決分類 P 1 41・ 856- Y (A24F)
P 1 41・ 853- Y (A24F)
P 1 41・ 851- Y (A24F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 平城 俊雅
特許庁審判官 田村 佳孝
槙原 進
登録日 2016-07-29 
登録番号 5978303
発明の名称 喫煙物品、および吸引材をもたらすためにその喫煙物品を用いること  
代理人 大野 聖二  
代理人 小林 英了  
代理人 井深 大  
代理人 井深 大  
代理人 松野 知紘  
代理人 大野 聖二  
代理人 松野 知紘  
代理人 小林 英了  

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