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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B29C
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B29C
管理番号 1389379
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-07-12 
確定日 2022-07-15 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6819944号発明「複合容器およびその製造方法,複合プリフォーム,ならびにプラスチック製部材」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 1 特許第6819944号の特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項[1〜5],[11〜15]について訂正することを認める。 2 特許第6819944号の請求項6〜10に係る特許を取り消す。 3 特許第6819944号の請求項1〜5及び11〜15に係る特許を維持する。 
理由 第1 主な手続の経緯等
特許第6819944号(請求項の数は15。以下「本件特許」という。)は,平成26年12月25日にされた特許出願(特願2014−262799号)の一部を新たな特許出願とするもの(特願2019−127567号)に係るものであって,令和3年1月6日にその特許権が設定登録され,同月27日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後,令和3年7月12日に特許異議申立人高橋真哉(以下,単に「申立人」という。)より本件特許の請求項1〜15に係る特許に対して特許異議の申立てがされ,同年10月1日付けで取消理由が通知され,同年12月1日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求書が提出されることで特許請求の範囲の訂正が請求され(決定注:なお,当該請求は,法120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされる。),同月17日付けで申立人に対し特許法(以下,単に「法」という。)120条の5第5項所定の通知がされ,令和4年1月18日に申立人より意見書が提出され,同年2月3日付けで取消理由が通知(以下,この通知を「決定の予告」という。)され,同年4月1日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求書(同月19日付け手続補正書により補正されたもの。以下同じ。)が提出されることで特許請求の範囲の訂正(以下「本件訂正」という。)が請求された。
なお,申立人からは令和4年1月18日に意見書が提出されており,また,下記第2のとおり,本件訂正によって請求項1〜5及び11〜15について特許請求の範囲が相当程度減縮され,さらには,後述のとおり,提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても請求項1〜5及び11〜15に係る特許を維持すべきとの結論となると判断されることから,本件訂正の請求については法120条の5第5項ただし書き所定の「特別の事情」があるものと認め,審判長は申立人に対して再度の意見書の提出の機会を与えないこととする。

第2 本件訂正の可否
1 特許権者の請求の趣旨
結論第1項に同旨。
2 訂正の内容
訂正請求書及びそれに添付された訂正特許請求の範囲によれば,特許権者の求める訂正は,実質的に,以下のとおりである(決定注:訂正事項は,訂正請求書によらず,本決定において整理した。なお,請求項6〜10について,特許権者は以下のとおり訂正を請求していないが,令和3年12月1日付け訂正請求書においては訂正を請求していた経緯があるところ,参考までに付言する。)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を以下のとおり訂正する。また,請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2〜5も同様に訂正する。
・ 本件訂正前
「【請求項1】
複合容器の製造方法において,
プラスチック材料製のプリフォームを準備する工程と,
前記プリフォームの外側に密着して,その全体が所定の色に着色されたプラスチック製部材を設ける工程と,
前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程と,
前記ブロー成形金型内で前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材に対してブロー成形を施すことにより,前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させる工程と,を備え,
前記プラスチック製部材が,樹脂材料と,着色剤とを含んでなり,
前記プラスチック製部材が,前記プリフォームに接着されることなく密着して設けられており,前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線を有することを特徴とする複合容器の製造方法。」
・ 本件訂正後
「【請求項1】
複合容器の製造方法において,
プラスチック材料製のプリフォームを準備する工程と,
前記プリフォームの外側に密着して,その全体が所定の色に着色されたプラスチック製部材を設ける工程と,
前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程と,
前記ブロー成形金型内で前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材に対してブロー成形を施すことにより,前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させ,前記プリフォームに対応する容器本体と,前記容器本体の外側に接着されることなく密着して設けられたプラスチック製部材とを有する複合容器を作成する工程と,を備え,
前記プラスチック製部材が,樹脂材料と,着色剤とを含んでなり,
前記プラスチック製部材が,前記プリフォームに接着されることなく密着して設けられており,前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線を有し,
前記容器本体は,中央に位置する凹部と,前記凹部周囲に設けられた接地部とを有する底部を含み,
前記凹部は,前記容器本体の前記底部の内方に凹み,
ブロー成形後の前記プラスチック製部材は,前記容器本体の前記底部の前記凹部および前記接地部の形状に沿って,前記凹部の底面および前記接地部に密着して設けられていることを特徴とする複合容器の製造方法。」(決定注:下線は,本決定の便宜上付されたものである。以下同じ。)
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項11を以下のとおり訂正する。また,請求項11の記載を直接的又は間接的に引用する請求項12〜15も同様に訂正する。
・ 本件訂正前
「【請求項11】
複合容器において,
プラスチック材料製の容器本体と,
前記容器本体の外側に密着して設けられ,その全体が所定の色に着色されたプラスチック製部材とを備え,
前記容器本体および前記プラスチック製部材は,一体ブロー成形品であり,
前記プラスチック製部材は,樹脂材料と,着色剤とを含んでなり,
前記プラスチック製部材が,前記容器本体に接着されることなく密着して設けられており,前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線を有することを特徴とする複合容器。」
・ 本件訂正後
「【請求項11】
複合容器において,
プラスチック材料製の容器本体と,
前記容器本体の外側に密着して設けられ,その全体が所定の色に着色されたプラスチック製部材とを備え,
前記容器本体は,中央に位置する凹部と,前記凹部周囲に設けられた接地部とを有する底部を含み,
前記凹部は,前記容器本体の前記底部の内方に凹み,
前記容器本体および前記プラスチック製部材は,一体ブロー成形品であり,
前記プラスチック製部材は,樹脂材料と,着色剤とを含んでなり,
前記プラスチック製部材が,前記容器本体に接着されることなく密着して設けられており,前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線を有し,
前記プラスチック製部材は,前記容器本体の前記底部の前記凹部および前記接地部の形状に沿って,前記凹部の底面および前記接地部に密着して設けられていることを特徴とする複合容器。」
3 本件訂正の許否についての判断
(1) 請求項1についての訂正
請求項1についての訂正は,請求項1に係る発明の構成要件である「前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させる工程」について,「前記プリフォームに対応する容器本体と,前記容器本体の外側に接着されることなく密着して設けられたプラスチック製部材とを有する複合容器を作成す」るとの限定を付加し,さらに,製造される「複合容器」について,「前記容器本体は,中央に位置する凹部と,前記凹部周囲に設けられた接地部とを有する底部を含み,前記凹部は,前記容器本体の前記底部の内方に凹み,ブロー成形後の前記プラスチック製部材は,前記容器本体の前記底部の前記凹部および前記接地部の形状に沿って,前記凹部の底面および前記接地部に密着して設けられてい」るとの限定を付加するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
しかも,上述の限定事項については,例えば願書に添付した明細書(以下,「本件明細書」という。)の【0033】,【0039】,【0047】〜【0049】,【図1】などに記載があり,また,上記限定の付加は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないといえる。
よって,請求項1についての訂正は,法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから,同条9項で準用する法126条5項で規定する要件を満たし,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないから,同条6項で規定する要件を満たすと判断される。
(2) 請求項2〜5についての訂正
本件訂正は,請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2〜5について,請求項1についての訂正と同様の訂正をするものである。
よって,請求項2〜5についての訂正は,上記(1)で述べたことと同様に,法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり,同条9項で準用する法126条5項及び同条6項で規定する要件を満たすと判断される。
(3) 請求項11についての訂正
請求項11についての訂正は,請求項11に係る発明の構成要件である「容器本体」について,「前記容器本体は,中央に位置する凹部と,前記凹部周囲に設けられた接地部とを有する底部を含み,前記凹部は,前記容器本体の前記底部の内方に凹み,」との限定をさらに付加するものであり,また,「プラスチック製部材」と「プリフォーム」との関係について,「前記プラスチック製部材は,前記容器本体の前記底部の前記凹部および前記接地部の形状に沿って,前記凹部の底面および前記接地部に密着して設けられている」との限定をさらに付加するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえる。
しかも,上述の限定事項のうち,前者については,例えば本件明細書の【0033】,【0039】,【図1】などに,後者については,【0048】,【0049】,【図1】などに記載があり,また,上記限定の付加は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないといえる。
よって,請求項11についての訂正は,法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであるから,同条9項で準用する法126条5項で規定する要件を満たし,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでもないから,同条6項で規定する要件を満たすと判断される。
(4) 請求項12〜15についての訂正
本件訂正は,請求項11の記載を直接的又は間接的に引用する請求項12〜15について,請求項11についての訂正と同様の訂正をするものである。
よって,請求項12〜15についての訂正は,上記(3)で述べたことと同様に,法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり,同条9項で準用する法126条5項及び同条6項で規定する要件を満たすと判断される。
(5) 小括
上述のとおり,請求項2〜5は請求項1に連動して訂正されるものであるから,訂正前の請求項1〜5に対応する訂正後の請求項1〜5は,法120条の5第4項所定の一群の請求項の関係を有する。同様に,請求項11〜15についても一群の請求項の関係を有する。
よって,結論の第1項のとおり,本件訂正を認める。

第3 本件発明
上記第2で検討のとおり本件訂正は認められるので,本件特許の請求項1〜15に係る発明は,訂正特許請求の範囲の請求項1〜15に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下,請求項の番号に応じて各発明を順に「本件発明1」,「本件発明2」,…といい,これらを併せて「本件発明」という場合がある。)。
「【請求項1】
複合容器の製造方法において,
プラスチック材料製のプリフォームを準備する工程と,
前記プリフォームの外側に密着して,その全体が所定の色に着色されたプラスチック製部材を設ける工程と,
前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程と,
前記ブロー成形金型内で前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材に対してブロー成形を施すことにより,前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させ,前記プリフォームに対応する容器本体と,前記容器本体の外側に接着されることなく密着して設けられたプラスチック製部材とを有する複合容器を作成する工程と,を備え,
前記プラスチック製部材が,樹脂材料と,着色剤とを含んでなり,
前記プラスチック製部材が,前記プリフォームに接着されることなく密着して設けられており,前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線を有し,
前記容器本体は,中央に位置する凹部と,前記凹部周囲に設けられた接地部とを有する底部を含み,
前記凹部は,前記容器本体の前記底部の内方に凹み,
ブロー成形後の前記プラスチック製部材は,前記容器本体の前記底部の前記凹部および前記接地部の形状に沿って,前記凹部の底面および前記接地部に密着して設けられていることを特徴とする複合容器の製造方法。
【請求項2】
前記所定の色が,茶色,黒色,緑色,白色,青色または赤色であることを特徴とする請求項1に記載の複合容器の製造方法。
【請求項3】
前記着色剤が,光反射性着色剤および/または光吸収性着色剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合容器の製造方法。
【請求項4】
前記光反射性着色剤は,チタンホワイト,アルミニウム粉,マイカ粉,硫化亜鉛,亜鉛華,炭酸カルシウム,カオリンおよびタルクからなる群より選択される光反射性顔料であることを特徴とする請求項3に記載の複合容器の製造方法。
【請求項5】
前記光吸収性着色剤は,カーボンブラック,セラミックブラックおよびボーンブラックからなる群より選択される光吸収性顔料であることを特徴とする請求項3または4に記載の複合容器の製造方法。
【請求項6】
複合プリフォームにおいて,
プラスチック材料製のプリフォームと,
前記プリフォームの外側を取り囲むように設けられ,その全体が所定の色に着色されたプラスチック製部材とを備え,
前記プラスチック製部材は,前記プリフォームの外側に密着されており,樹脂材料と,着色剤とを含んでなり,
前記プラスチック製部材が,前記プリフォームに接着されることなく密着して設けられており,前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線を有することを特徴とする複合プリフォーム。
【請求項7】
前記所定の色が,茶色,黒色,緑色,白色,青色または赤色であることを特徴とする請求項6に記載の複合プリフォーム。
【請求項8】
前記着色剤が,光反射性着色剤および/または光吸収性着色剤であることを特徴とする請求項6または7に記載の複合プリフォーム。
【請求項9】
前記光反射性着色剤は,チタンホワイト,アルミニウム粉,マイカ粉,硫化亜鉛,亜鉛華,炭酸カルシウム,カオリンおよびタルクからなる群より選択される光反射性顔料であることを特徴とする請求項8に記載の複合プリフォーム。
【請求項10】
前記光吸収性着色剤は,カーボンブラック,セラミックブラックおよびボーンブラックからなる群より選択される光吸収性顔料であることを特徴とする請求項8または9に記載の複合プリフォーム。
【請求項11】
複合容器において,
プラスチック材料製の容器本体と,
前記容器本体の外側に密着して設けられ,その全体が所定の色に着色されたプラスチック製部材とを備え,
前記容器本体は,中央に位置する凹部と,前記凹部周囲に設けられた接地部とを有する底部を含み,
前記凹部は,前記容器本体の前記底部の内方に凹み,
前記容器本体および前記プラスチック製部材は,一体ブロー成形品であり,
前記プラスチック製部材は,樹脂材料と,着色剤とを含んでなり,
前記プラスチック製部材が,前記容器本体に接着されることなく密着して設けられており,前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線を有し,
前記プラスチック製部材は,前記容器本体の前記底部の前記凹部および前記接地部の形状に沿って,前記凹部の底面および前記接地部に密着して設けられていることを特徴とする複合容器。
【請求項12】
前記所定の色が,茶色,黒色,緑色,白色,青色または赤色であることを特徴とする請求項11に記載の複合容器。
【請求項13】
前記着色剤が,光反射性着色剤および/または光吸収性着色剤であることを特徴とする請求項11または12に記載の複合容器。
【請求項14】
前記光反射性着色剤は,チタンホワイト,アルミニウム粉,マイカ粉,硫化亜鉛,亜鉛華,炭酸カルシウム,カオリンおよびタルクからなる群より選択される光反射性顔料であることを特徴とする請求項13に記載の複合容器。
【請求項15】
前記光吸収性着色剤は,カーボンブラック,セラミックブラックおよびボーンブラックからなる群より選択される光吸収性顔料であることを特徴とする請求項13または14に記載の複合容器。」

第4 申立人の主張に係る申立理由の概要
特許異議申立書における申立人の主張は,概略以下のとおりであって,請求項1〜15に係る特許は法113条2号又は4号に該当し取り消されるべき,というものである。
1 本件発明1〜15は,甲1に記載された発明を主たる引用発明としたとき,この主たる引用発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものである。(以下,「申立理由1」という場合がある。)
2 請求項1〜15についての特許は,以下の点で,法36条4項1号に規定するいわゆる実施可能要件を満たしていない特許出願についてされたものである。すなわち,本件発明の「切断線」について,本件明細書には,その具体的構成が何ら記載されておらず,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。(以下「申立理由2」という場合がある。)
3 証拠方法として書証を申出,以下の文書(甲1〜4)を提出する。
・甲1: 特表2004−532147号公報
・甲2: 特開2006−117269号公報
・甲3: 「指定PETボトルの自主設計ガイドライン 付属書2:ラベル(印刷・接着剤等を含む)評価基準」,平成23年3月1日改訂版,PETボトルリサイクル推進協議会
・甲4: 特表2008−532816号公報

第5 決定の予告における取消理由の概要
本件発明1〜10について,上記申立理由1と同旨である。

第6 当合議体の判断1(本件特許を取り消すべき理由について)
当合議体は,決定の予告における取消理由のうち請求項6〜10に係る特許については,以下述べるように理由があると判断する。
1 証拠の記載及び証拠に記載された発明
(1) 甲1の記載
甲1には,次の記載がある。
・「【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレフォームの外面の少なくとも一部の上にラベルスリーブを配置してスリーブ付きプレフォームを製造せしめ;
そして前記スリーブ付きプレフォームをブロー成形してラベル付き容器を製造することを含んでなる,ブロー成形プロセスを用いてラベル付き容器を製造する方法。…
【請求項20】
請求項1に記載の方法に従って製造されたラベル付き容器。
【請求項21】
前記ラベルスリーブが容器の少なくとも一部の周囲にぴったりとフィットしている請求項20に記載のラベル付き容器。
【請求項22】
容器の製造のためにブロー成形法に有用なプレフォーム;及びプレフォームの外面の少なくとも一部の上にフィットしたラベルスリーブを含んでなる,ラベル付き容器の製造に使用できるスリーブ付きプレフォーム。」
・「【0006】
標準的な輪郭フィットラベリングの重要な特徴は,配向フィルム原料を必要とすることである。この配向は通常,幅出機(及び場合によっては縦方向配向ドラフター)又はダブル−バブル・ブローンフィルムラインによって引き起こされる。いずれも費用のかかる方法であり,フィルムの製造方法及び使用方法にかなりの追加費用を加える。更に,容器の周囲で配向フィルム収縮を行うには,コストも増す収縮トンネルが必要である。この余分な装置もまた,プロセスのコストを増す。」
・「【0014】
一側面において,本発明は,ラベル付き容器の製造方法を提供する。このラベル付き容器は,プレフォームの外面の少なくとも一部の上にラベルスリーブを配置してスリーブ付きプレフォームを形成し,前記スリーブ付きプレフォームをストレッチブロー成形してラベル付き容器を形成することによって製造する。このラベルスリーブは,使用前に配向させる必要がなく,金型内で膨張して容器側壁に「ぴったりとフィット」し,ぴったりとフィットした,即ちタイトフィットしたラベルを有する容器を形成する。本発明は,先行技術の方法によって必要とされる収縮トンネル及びフィルムの配向工程を共に排除することによって,ブロー成形ラベル容器を製造するためのコストを削減し且つ方法の簡便性を増す。
【0015】
別の側面において,本発明は,本発明の方法によって製造されるラベル付き容器を提供する。この容器は,容器の少なくとも一部分の周囲にピッタリとフィットしたラベルを有する。即ち,このラベルは,容器を一般的な方法で取り扱う場合に移動しないように容器にフィットするはずである。
【0016】
更に別の側面において,本発明は,容器を製造するためにブロー成形法において使用できるプレフォーム及び前記プレフォームの外面の少なくとも一部の上にフィットしたラベルスリーブから製造されるスリーブ付きプレフォームを提供する。スリーブ付きプレフォームは,本発明の方法に従って製造されるラベル付き容器の製造に有用である。
【0017】
本発明において有用な好ましいラベルスリーブは,容器を製造するためのプレフォームのブロー成形前にプレフォームの上にフィットするように作られたゆがみ印刷ラベルスリーブである。このラベルスリーブは,インフレート用プレフォームと共に膨張する配向又は非配向(unoriented)ポリマーフィルム原料から製造する。スリーブは非配向フィルム素材から製造するのが好ましいが,これは得られるスリーブは,ブロー成形プロセスの間にプレフォームと共に延伸されることになるからである。ラベルスリーブに非配向ポリマーフィルム原料すると,フィルムの配向に必要な追加の幅出機又はダブル−バブル工程を排除することによって,フィルム原料製造プロセスが単純化される。また,配向工程は実施に費用がかかり,容器の収縮フィルムラベリングプロセスのコストを増す。別の実施態様においては,スリーブは二軸配向又は一軸配向フィルム素材から製造する。」
・「【0020】
この方法で使用するラベルスリーブには,当業者によく知られた方法を用いて所望のラベルデザインを印刷しなければならない。好ましくは,ブロー成形プロセスの間にフィルムが受けるであろう膨張を補正するゆがみ印刷を使用する。膨張は場所によって異なる,即ち,容器のネックは側壁よりも膨張が少ないので,ゆがみ印刷パターンはそれに応じて変化させなければならないであろう。印刷は通常,フラットフィルム上で行い,スリーブチューブを作るにはフラットフィルムの両縁をつなぎ合わせなければならない。しかし,インフレート法を用いてフィルムを形成する場合には,スリッチング(slitting)及び再接着プロセスを経ずに直接チューブに印刷することが可能である。特定用途のための最も望ましいラベルスリーブ印刷法は,所望のパターン及び容器の製造に使用できる装置の型によって異なるであろう。更に,インフレートフィルムは,印刷の必要はなく,機能添加剤が望ましい用途に適している。例えば,着色剤又は顔料をポリマーに添加して,着色ラベルスリーブを作成できる。同様に,UV遮断コンセントレート,バリヤー層又は他の機能添加剤を,ラベルスリーブの作成に使用するポリマーに取り入れることができる。同様に,顔料添加チューブをプレフォームの周囲にフィットさせて,容器の色全体を変化させ,次いで,顔料添加チューブの上部を覆うように従来の貼り付けラベルを適用することができる。」
・「【0034】
ブロー成形法においては,プレフォーム及びスリーブはブロー金型に入り,容器の最終形状にインフレートされる。プレフォームの余熱はスリーブの加熱に役立つので,スリーブは充分に柔軟になり延伸可能であろう。あるいは,プレフォーム及びスリーブの全体に熱風又は輻射熱を吹き込む/又は適用することもできる。スリーブ及びプレフォームは比較的高温においても粘着性であるので,プレフォームを逆さにする(一部のブロー成形機の場合にはそうである)ときにスリーブが滑り落ちる可能性は少ない。必要な場合には,スリーブをプレフォームに関して正しい位置に保持するために割送り又は位置あわせ装置を使用できる。プレフォームが空気圧及び延伸ロッドによって膨張するにつれて,ラベルスリーブも膨張する。ラベルは金型壁にぶつかるまで延伸するので,最終的にはラベルは製品の最終形状を取るであろう。従って,二軸延伸フィルム又は収縮トンネルを必要とせずに,タイトフィットする輪郭ラベルが作られる。」
・「【0036】
ラベルは種々のポリマーから作ることができるので,現位置輪郭フィットラベルの使用はまた,他の機能的可能性を追加する。例えばラベルは容器の透過性の低下を促進するためにEVOH又はメタジレンジアミン(「MXD6」)のような高バリヤーポリマーから作ることができる(単層又は共押出により多層として)。ボトルとラベルとの密着度もまた,樹脂の選択によって左右され得る。PETボトルにPETラベルを用いた試験はかなりの密着を生じたが,ポリプロピレンラベルはPETボトルには貼り付こうとしなかった。密着が必要か否かは通常,リサイクルのための剥離が課題であるか否かによって決まる。」
・「【0042】
例2
ポロプロピレンスリーブを用いた2リットルボトル用輪郭ラベル
前記例1と同様な手法に従って,PETの代わりにポリプロピレンを用いてインフレート法によってスリーブを作った。ポリプロピレンは,低コスト及び低密度のために既にラベルに最適の材料とされているので望ましい。ポリプロピレンは,呼称厚さ3mil及び幅1.6インチとした。例1と同様にボトルをブロー成形後,フィルムはボトルの輪郭にぴったりとフィットしているのがわかった。しかし,PETラベルフィルムとは異なり,このフィルムはベースボトルに密着しなかったので,リサイクルの間に容易に剥がすことができる。」
・「【図2】


(2) 甲1に記載された発明
甲1の記載,特に【請求項1】,【請求項20】〜【請求項22】,段落【0006】,【0014】〜【0017】,【0020】,【0034】,【0036】及び図2とともに,【0042】に例2として記載された事項からみて,甲1には以下の発明がそれぞれ記載されていると認めることができる。
・「プレフォームと,その外面の少なくとも一部の上にこれを取り囲むようにフィットして配置されるラベルスリーブとからなるラベルスリーブ付きプレフォームを製造せしめ,前記ラベルスリーブ付きプレフォームをブロー成形してラベル付き容器を製造する方法であって,
前記ラベルスリーブ付きプレフォームをブロー金型内に挿入する工程と,
前記ブロー金型内で前記ラベルスリーブ付きプレフォームをブロー成形することで,ラベルスリーブと共にプレフォームを膨張させる工程と,を有し,
前記プレフォームはPET製であり,
前記ラベルスリーブは着色剤又は顔料をポリプロピレンに添加して作成されたものである,ラベル付き容器を製造する方法。」(以下,「甲1製法発明」という。)
・「プレフォームと,その外面の少なくとも一部の上にこれを取り囲むようにフィットして配置されるラベルスリーブとからなるラベルスリーブ付きプレフォームであって,
前記プレフォームはPET製であり,
前記ラベルスリーブは着色剤又は顔料をポリプロピレンに添加して作成されたものである,ラベルスリーブ付きプレフォーム。」(以下,「甲1プレフォーム発明」という。)
・「上記「甲1プレフォーム発明」を用い,上記「甲1製法発明」に従って製造されたラベル付き容器であって,ラベルスリーブは容器の周囲にぴったりとフィットしている,ラベル付き容器。」(以下,「甲1容器発明」という。)

2 本件発明6について
(1) 本件発明6と甲1プレフォーム発明とを対比すると,甲1プレフォーム発明の「ラベルスリーブ」は本件発明6の「プラスチック製部材」に相当し,同様に,「プレフォーム」は「プリフォーム」に,「ラベルスリーブ付きプレフォーム」は「複合プリフォーム」にそれぞれ相当する。
また,甲1プレフォーム発明のラベルスリーブは,プレフォームの外面を取り囲むようにフィットしている,すなわち,プレフォームに対して移動又は回転しないほど密着しているものの,ポリプロピレン製ラベルスリーブはPET製プレフォームに貼り付くほど接着していないと解されるから(甲1の【0034】【0036】),このような構成は,本件発明6の「前記プラスチック製部材は,前記プリフォームの外側に密着され」,「前記プラスチック製部材が,前記プリフォームに接着されることなく密着して設けられており」との要件を満たすといえる。
そうすると,本件発明6と甲1プレフォーム発明との一致点及び相違点は,それぞれ次のとおりである。
・一致点
「複合プリフォームにおいて,プラスチック材料製のプリフォームと,前記プリフォームの外側を取り囲むように設けられ,その全体が所定の色に着色されたプラスチック製部材とを備え,前記プラスチック製部材は,前記プリフォームの外側に密着されており,樹脂材料と,着色剤とを含んでなり,前記プラスチック製部材が,前記プリフォームに接着されることなく密着して設けられている複合プリフォーム。」である点。
・相違点6−1
プラスチック製部材(ラベルスリーブ)について,本件発明6は「剥離除去するための切断線を有する」と特定するのに対し,甲1プレフォーム発明はそのような特定を有しない点。
(2) 上記相違点6−1について検討する。
ア 本件特許の出願当時,PETボトル(PET製容器)のリサイクルを円滑に行うことは当業者が当然考慮すべき技術的課題であると認められ(甲2の【0003】,甲3),また,ラベル付きPETボトルについて,ミシン目を設けるなどそのラベルを易剥離性のものとすることでPETボトルのリサイクル性を高めることも周知の技術であったと認められる(甲2の【0099】,甲3)。
そして,上記技術的課題及び甲1の【0036】の記載からすると,PET製の容器とポリプロピレン製のラベルスリーブとからなる甲1プレフォーム発明を用いて製造された複合容器(甲1容器発明)は,PET製容器のリサイクルのためにラベルスリーブを剥離することを前提とするものであると認められるところ,ラベルスリーブの容器からの剥離を容易とするべく,甲1容器発明に上記周知技術を適用すること,すなわち,甲1容器発明のラベルスリーブにこれを剥離容易とするためのミシン目(切断線)を設けることは当業者が容易に想到し得たことであるといえる。さすれば,甲1容器発明を製造するために用いられる甲1プレフォーム発明のラベルスリーブに予めミシン目(切断線)を設けておくこともまた容易に想到し得たことであるといえる。
また,本件発明6の効果は,甲1プレフォーム発明及び周知技術から,当業者が予測し得うる範囲のものである。
イ 特許権者は,本件発明6は相違点6−1に係る構成を有することで,プラスチック製部材をプリフォームに嵌め込む際,切断線が空気の逃げ道となり得るため,プラスチック製部材をプリフォームに対してスムーズに取り付けることができ,また,プリフォームとプラスチック製部材との間に入り込む空気を少なくできるため,ブロー成形後において,容器本体とプラスチック製部材との間に入り込む空気を少なくでき,両者の密着性を高めることができる旨主張する(令和4年4月1日付け意見書9ページ)。
そこで検討するに,上記主張に係る本件発明6が奏する効果はそもそも本件明細書に記載されていないものである。しかも,特許権者が主張するところの,「プラスチック製部材をプリフォームに嵌め込む際,切断線が空気の逃げ道となり得るため,プラスチック製部材をプリフォームに対してスムーズに取り付けることができ」るとの効果については,物を生産する方法が奏する効果として認められるものであって,「複合プリフォーム」という物の発明である本件発明6において奏する効果とはいえず,上記主張は採用することはできない。さらに,プラスチック製部材をプリフォームの外側に設ける手法として,本件明細書(例えば【0102】)には,プラスチック製部材をプリフォームに「嵌め込む」ことで設ける手法以外の手法も開示されていることからすれば,「嵌め込む」旨の構成を有しない本件発明6について,上記主張は本件発明6の構成に基づかないものといわざるを得ない。
(3) 以上のとおりであるから,本件発明6は甲1に対しいわゆる進歩性を有しないといえる。

3 本件発明7について
甲1に記載された発明のラベルスリーブは「着色剤又は顔料をポリプロピレンに添加して作成された」もの,すなわち着色され所定の色を呈するものである。そして,そのような所定の色を茶色,黒色,緑色,白色,青色または赤色とすることは,単なる設計事項にすぎないし,例えば甲2の【0093】に記載されているとおり本件特許の出願時において普通に知られていることでもある。
したがって,本件発明7も甲1に対しいわゆる進歩性を有しないといえる。

4 本件発明8〜10について
複合容器の外面を外部から覆うフィルムを着色するために含有させる着色剤として,本件特許の請求項8〜10に記載のものは,例を挙げるまでもなく普通に知られているものである(なお,容器の底面を外部から覆う遮光性樹脂フィルムに関するものではあるが,甲2の【0078】〜【0079】にもその旨の記載がうかがえる。)。
そして,上述の普通に知られている技術を,甲1に記載された発明のラベルスリーブにおける着色剤として適用することは,当業者にとって容易になしえたことである。
したがって,本件発明8〜10も甲1に対しいわゆる進歩性を有しないといえる。

第7 当合議体の判断2(本件特許を維持すべき理由について)
申立理由1及び2のうち,請求項1〜5及び10〜15に係る特許については,以下述べるとおり,いずれも理由がないものと判断される。(なお,決定の予告における理由のうち請求項1〜5の特許については,申立理由1に包含されるものである。)
1 申立理由1について
(1) 本件発明1について
ア 本件発明1と甲1製法発明とを対比すると,甲1製法発明の「ラベルスリーブ」は本件発明1の「プラスチック製部材」に相当し,同様に,「プレフォーム」は「プリフォーム」に,「ラベル付き容器」は「複合容器」にそれぞれ相当する。
また,甲1製法発明のラベルスリーブは,プレフォームの外面を取り囲むようにフィットしている,すなわち,プレフォームに対して移動又は回転しないほど密着しているものの,ポリプロピレン製ラベルスリーブはPET製プレフォームに貼り付くほど接着していないと解されるから(甲1の【0034】【0036】),このような構成は,本件発明1の「前記プラスチック製部材が,前記プリフォームに接着されることなく密着して設けられており」との要件を満たすといえる。
そうすると,本件発明1と甲1製法発明との一致点及び相違点は,それぞれ次のとおりである。
・一致点
「複合容器の製造方法において,プラスチック材料製のプリフォームを準備する工程と,前記プリフォームの外側に密着してその全体が所定の色に着色されたプラスチック製部材を設ける工程と,前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材をブロー成形金型内に挿入する工程と,前記ブロー成形金型内で前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材に対してブロー成形を施すことにより前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させ,前記プリフォームに対応する容器本体と,前記容器本体の外側に接着されることなく密着して設けられたプラスチック製部材とを有する複合容器を作成する工程と,を備え,前記プラスチック製部材が樹脂材料と着色剤とを含んでなり,前記プラスチック製部材が前記プリフォームに接着されることなく密着して設けられている複合容器の製造方法。」である点
・相違点1−1
プリフォームおよびプラスチック製部材をブロー成形金型内に挿入する工程について,本件発明1は「加熱するとともに」挿入すると特定するのに対し,甲1製法発明はそのような特定を有しない点。
・相違点1−2
プラスチック製部材(ラベルスリーブ)について,本件発明1は「剥離除去するための切断線を有する」と特定するのに対し,甲1製法発明はそのような特定を有しない点。
・相違点1−3
プリフォームに対応する容器本体及びブロー成形後のプラスチック製部材について,本件発明1は「前記容器本体は,中央に位置する凹部と,前記凹部周囲に設けられた接地部とを有する底部を含み,前記凹部は,前記容器本体の前記底部の内方に凹み,ブロー成形後の前記プラスチック製部材は,前記容器本体の前記底部の前記凹部および前記接地部の形状に沿って,前記凹部の底面および前記接地部に密着して設けられている」と特定するのに対し,甲1製法発明はそのような特定を有しない点。
イ 事案に鑑み,まず上記相違点1−3について検討する。
甲1の【0042】や図2などからも明らかなように,甲1製法発明のラベルスリーブ(プラスチック製部材)は,インフレート法により成形された円筒状のものであるところ,このようなラベルスリーブを用いて製造されたラベル付き容器(複合容器)のラベル(プラスチック製部材)について,これを容器本体の底部の凹部および接地部の形状に沿って,前記凹部の底面および前記接地部に密着して設けられるような構成とすることには技術上無理があるといわざるを得ない。すなわち,甲1製法発明において,相違点1−3の構成を採用することには阻害事由がある。
ウ 申立人は,甲4のオーバーモールド層72は本体52のベース部64の凹部及び接地部の形状に沿って凹部の底面及び接地部に密着して設けられているものであり,甲1のラベルスリーブに代えて甲4の上記オーバーモールド層を採用することは想到容易である旨主張する(令和4年1月18日意見書15ページ)。
しかし,上記アで検討のとおり,甲1製法発明のラベルスリーブは,プレフォームの外面を取り囲むようにフィットしている,すなわち,プレフォームに対して移動又は回転しないほど密着しているものの,ポリプロピレン製ラベルスリーブはPET製プレフォームに貼り付くほど接着していないと解されるものであるところ,プレフォームとラベルスリーブとが貼り付くほど接着していない甲1製法発明において,貼り付くほど接着してしまうような甲4の技術を採用すること,すなわち甲1製法発明のラベルスリーブをオーバーモールド層とする動機は見当たらない。上記主張は採用できない。
エ 以上のとおりであるから,他の相違点について検討するまでもなく,本件発明1は甲1に対しいわゆる進歩性を有するといえる。
(2) 本件発明2〜5について
請求項2〜5の記載は請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから,本件発明2〜5については,本件発明1についての上記判断と同様に,甲1に対しいわゆる進歩性を有するといえる。
(3) 本件発明11について
本件発明11と甲1容器発明とを対比すると,両者の間には少なくとも上記相違点1−3と同旨の相違点があると認めることができる。
そして,上記相違点1−3が想到容易であるといえないのは上記(1)で検討のとおりであるから,本件発明11についても同様に,甲1に対しいわゆる進歩性を有するといえる。
(4) 本件発明12〜15について
請求項12〜15の記載は請求項11を直接又は間接的に引用するものであるから,本件発明12〜15については,本件発明11についての上記判断と同様に,甲1に対しいわゆる進歩性を有するといえる。
(5) 小括
以上のとおりであるから,請求項1〜5及び11〜15に係る特許について,申立理由1には理由がない。

2 申立理由2について
本件発明の「切断線」について,本件明細書にその具体的構成が記載されていないからといって,訂正特許請求の範囲1〜15に記載された発明が実施できないということにはならない。そして,このような切断線については,申立人自らも主張するように(特許異議申立書24ページ),例えばミシン目が周知技術として知られているところである。
よって,申立理由2は理由がない。

第8 むすび
以上のとおり,本件発明6〜10は,法29条2項の規定により特許を受けることができないから,請求項6〜10に係る特許は,法113条2号に該当し,取り消すべきものである。
他方,請求項1〜5及び11〜15に係る特許については,決定の予告における取消理由,申立理由1あるいは申立理由2によっては取り消すことはできない。さらに,これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。

 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この決定に対する訴えは,この決定の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は,その日数を附加します。)以内に,特許庁長官を被告として,提起することができます。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合容器の製造方法において、
プラスチック材料製のプリフォームを準備する工程と、
前記プリフォームの外側に密着して、その全体が所定の色に着色されたプラスチック製部材を設ける工程と、
前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を加熱するとともにブロー成形金型内に挿入する工程と、
前記ブロー成形金型内で前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材に対してブロー成形を施すことにより、前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させ、前記プリフォームに対応する容器本体と、前記容器本体の外側に接着されることなく密着して設けられたプラスチック製部材とを有する複合容器を作製する工程と、を備え、
前記プラスチック製部材が、樹脂材料と、着色剤とを含んでなり、
前記プラスチック製部材が、前記プリフォームに接着されることなく密着して設けられており、前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線を有し、
前記容器本体は、中央に位置する凹部と、前記凹部周囲に設けられた接地部とを有する底部を含み、
前記凹部は、前記容器本体の前記底部の内方に凹み、
ブロー成形後の前記プラスチック製部材は、前記容器本体の前記底部の前記凹部および前記接地部の形状に沿って、前記凹部の底面および前記接地部に密着して設けられていることを特徴とする複合容器の製造方法。
【請求項2】
前記所定の色が、茶色、黒色、緑色、白色、青色または赤色であることを特徴とする請求項1に記載の複合容器の製造方法。
【請求項3】
前記着色剤が、光反射性着色剤および/または光吸収性着色剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の複合容器の製造方法。
【請求項4】
前記光反射性着色剤は、チタンホワイト、アルミニウム粉、マイカ粉、硫化亜鉛、亜鉛華、炭酸カルシウム、カオリンおよびタルクからなる群より選択される光反射性顔料であることを特徴とする請求項3に記載の複合容器の製造方法。
【請求項5】
前記光吸収性着色剤は、カーボンブラック、セラミックブラックおよびボーンブラックからなる群より選択される光吸収性顔料であることを特徴とする請求項3または4に記載の複合容器の製造方法。
【請求項6】
複合プリフォームにおいて、
プラスチック材料製のプリフォームと、
前記プリフォームの外側を取り囲むように設けられ、その全体が所定の色に着色されたプラスチック製部材とを備え、
前記プラスチック製部材は、前記プリフォームの外側に密着されており、樹脂材料と、着色剤とを含んでなり、
前記プラスチック製部材が、前記プリフォームに接着されることなく密着して設けられており、前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線を有することを特徴とする複合プリフォーム。
【請求項7】
前記所定の色が、茶色、黒色、緑色、白色、青色または赤色であることを特徴とする請求項6に記載の複合プリフォーム。
【請求項8】
前記着色剤が、光反射性着色剤および/または光吸収性着色剤であることを特徴とする請求項6または7に記載の複合プリフォーム。
【請求項9】
前記光反射性着色剤は、チタンホワイト、アルミニウム粉、マイカ粉、硫化亜鉛、亜鉛華、炭酸カルシウム、カオリンおよびタルクからなる群より選択される光反射性顔料であることを特徴とする請求項8に記載の複合プリフォーム。
【請求項10】
前記光吸収性着色剤は、カーボンブラック、セラミックブラックおよびボーンブラックからなる群より選択される光吸収性顔料であることを特徴とする請求項8または9に記載の複合プリフォーム。
【請求項11】
複合容器において、
プラスチック材料製の容器本体と、
前記容器本体の外側に密着して設けられ、その全体が所定の色に着色されたプラスチック製部材とを備え、
前記容器本体は、中央に位置する凹部と、前記凹部周囲に設けられた接地部とを有する底部を含み、
前記凹部は、前記容器本体の前記底部の内方に凹み、
前記容器本体および前記プラスチック製部材は、一体ブロー成形品であり、
前記プラスチック製部材は、樹脂材料と、着色剤とを含んでなり、
前記プラスチック製部材が、前記容器本体に接着されることなく密着して設けられており、前記プラスチック製部材を剥離除去するための切断線を有し、
前記プラスチック製部材は、前記容器本体の前記底部の前記凹部および前記接地部の形状に沿って、前記凹部の底面および前記接地部に密着して設けられていることを特徴とする複合容器。
【請求項12】
前記所定の色が、茶色、黒色、緑色、白色、青色または赤色であることを特徴とする請求項11に記載の複合容器。
【請求項13】
前記着色剤が、光反射性着色剤および/または光吸収性着色剤であることを特徴とする請求項11または12に記載の複合容器。
【請求項14】
前記光反射性着色剤は、チタンホワイト、アルミニウム粉、マイカ粉、硫化亜鉛、亜鉛華、炭酸カルシウム、カオリンおよびタルクからなる群より選択される光反射性顔料であることを特徴とする請求項13に記載の複合容器。
【請求項15】
前記光吸収性着色剤は、カーボンブラック、セラミックブラックおよびボーンブラックからなる群より選択される光吸収性顔料であることを特徴とする請求項13または14に記載の複合容器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-06-03 
出願番号 P2019-127567
審決分類 P 1 651・ 113- ZDA (B29C)
P 1 651・ 121- ZDA (B29C)
P 1 651・ 536- ZDA (B29C)
最終処分 08   一部取消
特許庁審判長 細井 龍史
特許庁審判官 植前 充司
須藤 康洋
登録日 2021-01-06 
登録番号 6819944
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 複合容器およびその製造方法、複合プリフォーム、ならびにプラスチック製部材  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 中村 行孝  
代理人 柏 延之  
代理人 柏 延之  
代理人 中村 行孝  
代理人 宮嶋 学  
代理人 塙 和也  
代理人 高田 泰彦  
代理人 高田 泰彦  
代理人 塙 和也  
代理人 宮嶋 学  
代理人 堀田 幸裕  

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