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審決分類 |
審判 全部申し立て 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 C04B 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C04B 審判 全部申し立て 2項進歩性 C04B 審判 全部申し立て 4号2号請求項の限定的減縮 C04B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C04B |
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管理番号 | 1389397 |
総通号数 | 10 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-10-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-10-25 |
確定日 | 2022-06-27 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6870767号発明「銅/セラミックス接合体、及び、絶縁回路基板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6870767号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜4〕、〔5〜8〕について訂正することを認める。 特許第6870767号の請求項1〜8に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6870767号に係る出願は、令和2年8月6日(優先権主張 令和1年9月2日)を出願日とする出願であって、令和3年4月19日にその請求項1〜8に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年5月12日に特許掲載公報が発行され、その後、全請求項に係る特許に対して、同年10月25日に特許異議申立人 佐々木 毅(以下、「申立人佐々木」という。)により甲第1〜7号証を証拠方法として特許異議の申立てがされ、同年11月10日に特許異議申立人 渋谷 都(以下、「申立人渋谷」という。)により甲第1〜3号証を証拠方法として特許異議の申立てがされ、令和4年1月11日に申立人佐々木より上申書が提出され、同年1月18日付で当審より取消理由が通知され、その指定期間内である同年3月10日に特許権者より意見書(以下、「特許権者意見書」という。)の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされたので、特許法第120条の5第5項の規定に基づき、訂正請求書等を送付して申立人佐々木及び申立人渋谷に意見書を提出する機会を与えたところ、同年4月21日に申立人佐々木より意見書(以下、「佐々木意見書」という。)が提出されたが、申立人渋谷からは応答がなかったものである。 第2 本件訂正請求による訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、以下の訂正事項1〜4からなるものである(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。 (1)訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、 「銅又は銅合金からなる銅部材と、セラミックス部材とが接合されてなる銅/セラミックス接合体であって、」 と記載されているのを、 「銅又は銅合金からなる銅部材と、セラミックス部材とが、Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材を用いて接合されてなる銅/セラミックス接合体であって、」 に訂正する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2〜4も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 本件特許明細書の段落【0009】に、 「銅又は銅合金からなる銅部材と、セラミックス部材とが接合されてなる銅/セラミックス接合体であって、」 と記載されているのを、 「銅又は銅合金からなる銅部材と、セラミックス部材とが、Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材を用いて接合されてなる銅/セラミックス接合体であって、」 に訂正する。 (3)訂正事項3 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に、 「セラミックス基板の表面に、銅又は銅合金からなる銅板が接合されてなる絶縁回路基板であって、」 と記載されているのを、 「セラミックス基板の表面に、銅又は銅合金からなる銅板が、Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材を用いて接合されてなる絶縁回路基板であって、」 に訂正する(請求項5を直接的又は間接的に引用する請求項6〜8も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 本件特許明細書の段落【0014】に、 「セラミックス基板の表面に、銅又は銅合金からなる銅板が接合されてなる絶縁回路基板であって、」 と記載されているのを、 「セラミックス基板の表面に、銅又は銅合金からなる銅板が、Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材を用いて接合されてなる絶縁回路基板であって、」 に訂正する。 (5)一群の請求項について 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2〜4は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件訂正前の請求項1〜4は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項であり、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6〜8は、請求項5を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件訂正前の請求項5〜8は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。 訂正事項2及び4に係る訂正は、願書に添付した明細書を訂正するものであるが、いずれも一群の請求項である本件訂正前の請求項1〜4、5〜8に対応する訂正後の請求項1〜4、5〜8に関係する訂正である。 そして、本件訂正は、本件特許明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行われるものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1及び3について 訂正事項1及び3に係る訂正は、それぞれ、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「銅/セラミックス接合体」及び同請求項5の「絶縁回路基板」を、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「願書に添付した明細書」という。)の段落【0033】、【0057】の記載に基づいて、「Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材を用いて接合されてなる」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 そして、この訂正は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (2)訂正事項2及び4について 訂正事項2及び4に係る訂正は、それぞれ、前記訂正事項1及び3に係る訂正に伴い、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び5の記載と願書に添付した明細書の段落【0009】及び【0014】の記載とが不整合となっていたのを、これらを整合させて記載を明瞭にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、前記(1)に記載したのと同様の理由により、訂正事項2及び4に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内においてなされたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)独立特許要件について 本件訂正請求においては、全ての請求項に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。 3 小括 以上のとおりであるので、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、かつ、特許法120条の5第9項において準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 したがって、訂正後の請求項〔1〜4〕、〔5〜8〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件訂正が認められることは前記第2に記載のとおりであるので、本件特許の請求項1〜8に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明8」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 銅又は銅合金からなる銅部材と、セラミックス部材とが、Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材を用いて接合されてなる銅/セラミックス接合体であって、 前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度が3原子%以下とされていることを特徴とする銅/セラミックス接合体。 【請求項2】 前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Alの濃度が2原子%以下とされていることを特徴とする請求項1に記載の銅/セラミックス接合体。 【請求項3】 前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Siの濃度が2原子%以下とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の銅/セラミックス接合体。 【請求項4】 前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、ZnとMnの合計濃度が2原子%以下とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の銅/セラミックス接合体。 【請求項5】 セラミックス基板の表面に、銅又は銅合金からなる銅板が、Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材を用いて接合されてなる絶縁回路基板であって、 前記銅板と前記セラミックス基板との接合界面から前記銅板側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度が3原子%以下とされていることを特徴とする絶縁回路基板。 【請求項6】 前記銅板と前記セラミックス基板との接合界面から前記銅板側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Alの濃度が2原子%以下とされていることを特徴とする請求項5に記載の絶縁回路基板。 【請求項7】 前記銅板と前記セラミックス基板との接合界面から前記銅板側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Siの濃度が2原子%以下とされていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の絶縁回路基板。 【請求項8】 前記銅板と前記セラミックス基板との接合界面から前記銅板側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、ZnとMnの合計濃度が2原子%以下とされていることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の絶縁回路基板。」 第4 特許異議申立理由の概要 1 申立人佐々木による特許異議申立理由の概要 (1)特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2〜5号証に記載された本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について ア 本件特許に係る発明の課題とその解決手段について 本件特許明細書の段落【0003】〜【0005】、【0007】、【0008】、【0029】によれば、本件特許に係る発明は、従来技術である活性金属ろう付け法による接合では、セラミックス基板と銅板との接合界面のTiN層に起因して、セラミックス基板に割れが発生する、という課題、Cu−Mg−Ti系ろう材を用いた場合のセラミックス基板の割れは、接合界面におけるCuとMgの液相に起因する、という課題、接合界面に不純物が多く存在すると、接合界面の液相が凝固した際に金属間化合物が析出し、セラミックス基板と銅板との接合界面近傍が析出硬化し、セラミックス基板の割れの原因となる、という課題を解決するものであって、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度を3原子%以下とすることで、接合時の接合界面に生じた液相が凝固する際、接合界面において微細な金属間化合物の析出を抑えることができ、セラミックス基板と回路層との接合界面近傍が析出硬化することを抑制し、冷熱サイクル負荷時のセラミックス基板の割れを抑制するものである。 ところが、本件特許明細書には、Mg以外に、接合時に接合界面に液相を生じさせる材料は記載されていないし、接合時に接合界面に液相を生じさせない材料を用いた場合においても、接合界面における不純物元素を低減することでセラミックス基板の割れの発生を抑制できるか否かについても記載されていない。 また、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜8では、「接合材」について何ら特定されていないから、前記請求項1〜8に係る発明は、「接合材」が接合時に接合界面に液相を生じさせる材料を含まない形態を包含するが、その場合にどのように課題が解決されるのかを把握できないので、本件特許明細書の記載事項を、前記請求項1〜8まで拡張ないし一般化できない。 イ 甲第6号証及び甲第7号証との対比について 本件特許明細書の段落【0055】〜【0057】には、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜8に係る発明について、冷熱サイクル負荷後にセラミックス基板の割れが発生しなかったことが記載されているが、甲第6号証及び甲第7号証によれば、前記段落【0055】〜【0057】の冷熱サイクルにおける温度差(428℃)と同程度の冷熱サイクルにおいて、更に多くのサイクル数を経てもセラミックス基板の割れが発生しないことが記載されているので、前記請求項1〜8に係る発明による効果は、従来周知であるAg、Cu及び活性金属を含むろう材を使ったセラミックス回路基板と比べても、有利な効果を有しているとはいえない。 また、本件特許明細書には、Ag、Cu及び活性金属を含むろう材を使ったセラミックス回路基板について、どのようにセラミックス基板の割れの発生が抑制されるかについても記載されていないので、本件特許明細書の記載事項を、前記請求項1〜8まで拡張ないし一般化できない。 (3)特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたとき」について、接合界面から銅部材側へ1000nm離間した位置でのエネルギー分散X線分析法により濃度測定したときに、これらの元素の全てが含まれるのか、一部だけが含まれてもよいのか、これらの元素以外のほかの元素が更に含まれてもよいのかが明確でないから、前記請求項1に係る発明、及び、前記請求項1を直接的又は間接的に引用する本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2〜4に係る発明は明確でない。 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に係る発明、及び、前記請求項5を直接的又は間接的に引用する本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6〜8に係る発明についても同様である。 (4)特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について 本件特許明細書の実施例において、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度が最低でも1.0原子%の接合体の製造方法しか開示されておらず、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度を0原子%以上1.0原子%未満にする方法は、本件特許の出願時当時に周知でもないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1〜8に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでない。 (5)証拠方法 甲第1号証:国際公開第2018/199060号 甲第2号証:特開平5−156302号公報 甲第3号証:特開2003−129149号公報 甲第4号証:株式会社大阪チタニウムテクノロジーズのカタログ,[online],[出力日:令和3年10月7日],株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ,インターネット<URL:https://www.osaka-ti.co.jp/product/pdf/spec_hunmatu.pdf> 甲第5号証:三津和化学薬品株式会社のカタログ,[online],[出力日:令和3年10月7日],三津和化学薬品株式会社,インターネット<URL:http://www.eonet.ne.jp/~mitsuwa-chem/products/Sn.html> 甲第6号証:特開2013−48294号公報 甲第7号証:特開2017−130686号公報 2 申立人渋谷による特許異議申立理由の概要 (1)特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について 本件特許に係る発明においては、銅部材とセラミックス部材との間に接合層が形成されるものといえ、その場合、銅部材とセラミックス部材との接合界面がどこであるのかが不明であるから、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の「前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置」が不明確であるので、本件訂正前の特許請求の範囲の記載は明確でない。 (2)特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について 本件特許明細書の段落【0003】、【0004】、【0007】、【0008】、【0033】〜【0036】の記載からみれば、本件特許に係る発明の課題は、接合界面にCuとMgの液相が生じることを前提とした課題であるにもかかわらず、本件訂正前の特許請求の範囲においては、接合界面にCu及びMgを含まない場合が含まれる。 そして、接合界面にCu及びMgを含まない場合、そもそも本件特許に係る発明の課題が生じないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明及び本件特許の出願時の技術常識を参酌しても、当業者は、前記課題を解決できることを認識できないので、本件訂正前の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たしていない。 (3)証拠方法 甲第1号証:特開2013−211546号公報 甲第2号証:特開2003−34585号公報 甲第3号証:再表2017/213207号公報 第5 取消理由の概要 1 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について 本件特許に係る発明の課題は、絶縁回路基板のセラミックス基板と銅板の接合にCuとMgの液相が生じるろう材を用いることで引き起こされるものであるから、本件特許に係る発明は、前記接合にCuとMgの液相が生じるろう材を用いることを前提として、接合界面における不純物元素(Al,Si,Zn,Mn)の濃度を十分に低くすることで、セラミックス部材と銅部材との接合界面近傍が析出硬化することを抑制して、前記課題を解決するものである。 ところが、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明においては、絶縁回路基板のセラミックス基板と銅板の接合にろう材を用いること自体、特定されていないので、前記請求項1に係る発明は、前記接合にろう材を用いないものや、前記接合にCuとMgの液相が生じるろう材以外のろう材を用いるものを包含するものである。 そしてその場合、そもそも接合界面にCuとMgの液相が生じることはないので、前記請求項1に係る発明は、解決しようとする本件課題の前提となる特定事項を有しないものを包含するから、当業者は、前記請求項1に係る発明の発明特定事項により本件課題を解決できることを理解できないので、前記請求項1の記載はサポート要件に適合しない。 更に、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2〜8の記載について検討しても事情は同じであるから、本件訂正前の特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合しない。 2 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について 本件特許に係る発明は、絶縁回路基板のセラミックス基板と銅板の接合にCuとMgの液相が生じるろう材を用いることを前提としたものであり、その場合、接合された「銅部材」と「セラミックス部材」の間には、所定の厚さを有するろう材の接合層が存在することが推認される。 すると、「銅部材」と「セラミックス部材」の接合部には、「セラミックス部材」と接合層との接合界面と、「銅部材」と接合層との接合界面とが形成されると推認されるのであり、このとき「銅部材とセラミックス部材との接合界面」は形成されないから、「銅部材とセラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置」が「銅部材」におけるいかなる位置をいうのかが明らかでない。 また、仮に、「銅部材とセラミックス部材との接合界面」が、「銅部材」または「セラミックス部材」と接合層との接合界面をいうものであるとしても、「セラミックス部材」と接合層との接合界面と、「銅部材」と接合層との接合界面のどちらの界面を意味しているのかが明らかでないから、「銅部材とセラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置」が、「セラミックス部材」と接合層との接合界面から「銅部材側へ1000nm離間した位置」をいうのか、「銅部材」と接合層との接合界面から「銅部材側へ1000nm離間した位置」をいうのかが明らかでない。 これらのことから、「銅部材とセラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置」が「銅部材」におけるいかなる位置をいうのかが明らかでないので、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は明確でない。 更に、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2〜8に係る発明について検討しても事情は同じである。 第6 取消理由についての当審の判断 1 特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について (1)サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであるから、以下、この観点に立って検討する。 (2)判断 ア 本件特許明細書には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。 「【0001】 この発明は、銅又は銅合金からなる銅部材と、セラミックス部材とが接合されてなる銅/セラミックス接合体、及び、セラミックス基板の表面に、銅又は銅合金からなる銅板が接合されてなる絶縁回路基板に関するものである。・・・ 【0005】 そこで、特許文献2においては、Cu−Mg−Ti系ろう材を用いて、セラミックス基板と銅板とを接合した絶縁回路基板が提案されている。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 ところで、最近では、絶縁回路基板に搭載される半導体素子の発熱温度が高くなる傾向にあり、絶縁回路基板には、従来にも増して、厳しい冷熱サイクルに耐えることができる冷熱サイクル信頼性が求められている。 ここで、特許文献2のように、Cu−Mg−Ti系ろう材を用いた場合には、接合界面にはCuとMgの液相が生じることになる。ここで、接合界面において不純物元素が多く存在すると、接合界面の液相が凝固した際に微細な金属間化合物が析出し、セラミックス基板と銅板との接合界面近傍が析出硬化することになる。このため、厳しい冷熱サイクルを負荷した際に、セラミックス基板に割れが発生するおそれがあった。 【0008】 この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、厳しい冷熱サイクルを負荷した場合であっても、セラミックス部材における割れの発生を抑制でき、冷熱サイクル信頼性に優れた銅/セラミックス接合体、及び、この銅/セラミックス接合体からなる絶縁回路基板を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 前述の課題を解決するために、本発明の銅/セラミックス接合体は、銅又は銅合金からなる銅部材と、セラミックス部材とが接合されてなる銅/セラミックス接合体であって、前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度が3原子%以下とされていることを特徴としている。 【0010】 本発明の銅/セラミックス接合体によれば、接合界面において、不純物元素(Al,Si,Zn,Mn)の濃度が十分に低く、接合界面において微細な金属間化合物の析出を抑えることができ、セラミックス部材と銅部材との接合界面近傍が析出硬化することを抑制できる。よって、厳しい冷熱サイクルを負荷した場合でも、セラミックス部材における割れの発生を抑制することが可能となる。」 イ 前記アによれば、本件発明は、銅又は銅合金からなる銅部材と、セラミックス部材とが接合されてなる銅/セラミックス接合体、及び、セラミックス基板の表面に、銅又は銅合金からなる銅板が接合されてなる絶縁回路基板に関するものであって、従来、Cu−Mg−Ti系ろう材を用いて、セラミックス基板と銅板とを接合した絶縁回路基板が提案されているのであるが、前記Cu−Mg−Ti系ろう材を用いた場合には、接合界面にCuとMgの液相が生じることになり、このとき接合界面において不純物元素が多く存在すると、接合界面の液相が凝固した際に微細な金属間化合物が析出し、セラミックス基板と銅板との接合界面近傍が析出硬化することになるので、厳しい冷熱サイクルを負荷した際に、セラミックス基板に割れが発生するおそれがあった、という課題(以下、「本件課題」という。)を解決しようとするものである。 ウ そして、本件発明は、接合界面にCuとMgの液相が生じるろう材を用いた場合であっても、当該接合界面における不純物元素(Al,Si,Zn,Mn)の濃度を十分に低くすることで、微細な金属間化合物の析出を抑えることができ、セラミックス部材と銅部材との接合界面近傍が析出硬化することを抑制できるので、厳しい冷熱サイクルを負荷した場合でも、セラミックス部材における割れの発生を抑制することが可能となるものである。 エ 一方、本件発明1における「Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材」は、「銅部材」と「セラミックス部材」の接合時に、接合界面にCuとMgの液相を生じるろう材といえるから、本件発明1の「銅又は銅合金からなる銅部材と、セラミックス部材とが、Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材を用いて接合されてなる」、との発明特定事項は、本件発明1が、接合界面にCuとMgの液相が生じるろう材を用いることを特定するものにほかならず、また、本件発明1の「前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度が3原子%以下とされている」、との発明特定事項は、接合界面における不純物元素(Al,Si,Zn,Mn)の濃度を十分に低くすることを特定するものにほかならないのであり、このことと、前記ウの事項を併せてみれば、本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1の前記発明特定事項により、絶縁回路基板のセラミックス基板と銅板の接合にCuとMgの液相が生じるろう材を用いることで引き起こされる本件課題は、接合界面における不純物元素(Al,Si,Zn,Mn)の濃度を十分に低くすることで解決できることを理解することができるものである。 そして、このことを前記(1)の判断手法に照らせば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載はサポート要件に適合するものであり、本件特許請求の範囲の請求項2〜8の記載について検討しても事情は同じである。 (3)佐々木意見書の主張について ア 佐々木意見書における申立人佐々木のサポート要件違反についての主張は、概略、以下のとおりである。 本件訂正により追加された発明特定事項に含まれる「からなる」という語句は多義的に解釈されうるものであり、本件発明1は、接合材が「Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材」のみからなる場合だけでなく、これに加えてほかの材料を含有する場合を包含すると解釈できる。 そして、甲第1号証の段落[0031]の記載及び甲第4号証の「TSH−350」の記載からみれば、従来周知であるAg、Cu及び活性金属を含むろう材はMgを含有するから、本件発明1は、依然として、前記従来周知であるろう材を使ったセラミックス回路基板において、単に一般的な純度の材料を使用して作製されたものを包含する発明となっており、そのような場合に接合時に接合界面に液相を生じさせることは、本件特許明細書には何ら記載されていないから、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されていない発明を包含するし、本件発明2〜8についても同様であるので、本件特許請求の範囲の請求項1〜8の記載はサポート要件に適合しない。 イ 以下、申立人佐々木の前記アの主張について検討すると、本件発明1は、「銅部材」と「セラミックス部材」との接合界面を有するものであり、更に、本件特許明細書の記載からみれば、本件発明1において、セラミックス基板と回路層(及び金属層)の接合界面にろう材の接合層が存在するとは認められないことは、後記2(2)イに記載のとおりである。 すると、本件発明1は、「銅部材」と「セラミックス部材」との接合界面を有し、セラミックス基板と回路層(及び金属層)の接合界面にろう材の接合層が存在しないものであるが、そのような「銅/セラミックス接合体」の製造の際に、接合界面にCuとMgの液相が生じないろう材を用いることは技術常識からみて考え難いから、本件発明1においては、従来周知であるAg、Cu及び活性金属を含むろう材のような、接合界面にCuとMgの液相が生じないろう材は排除されていると解するのが妥当である。 そうすると、仮に、「からなる」という語句が多義的に解釈されうるものであるとしても、本件特許明細書の記載からみれば、本件発明1が、前記従来周知であるろう材を使ったセラミックス回路基板において、単に一般的な純度の材料を使用して作製されたものを包含する発明となっているとはいえないから、申立人佐々木の前記アの主張は採用できない。 (4)小括 したがって、本件特許請求の範囲の請求項1〜8の記載は、特許法第36条第6項第1号所定の規定に適合するので、前記第5の1の取消理由は理由がない。 2 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について (1)明確性要件の判断手法 請求項に係る発明が明確性要件に適合するか否かは、当該請求項の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、当該請求項の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断すべきであるから、以下、この観点に立って検討する。 (2)判断 ア 本件特許明細書には、更に以下(a)〜(d)の記載がある。 (a)「【0021】 以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。 本実施形態に係る銅/セラミックス接合体は、セラミックスからなるセラミックス部材としてのセラミックス基板11と、銅又は銅合金からなる銅部材としての銅板22(回路層12)及び銅板23(金属層13)とが接合されてなる絶縁回路基板10である。図1に、本実施形態である絶縁回路基板10を備えたパワーモジュール1を示す。 【0022】 このパワーモジュール1は、回路層12及び金属層13が配設された絶縁回路基板10と、回路層12の一方の面(図1において上面)に接合層2を介して接合された半導体素子3と、金属層13の他方側(図1において下側)に配置されたヒートシンク30と、を備えている。 ・・・ 【0025】 そして、本実施形態である絶縁回路基板10は、図1に示すように、セラミックス基板11と、このセラミックス基板11の一方の面(図1において上面)に配設された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面(図1において下面)に配設された金属層13と、を備えている。 ・・・ 【0027】 回路層12は、図4に示すように、セラミックス基板11の一方の面(図4において上面)に、銅又は銅合金からなる銅板22が接合されることにより形成されている。 ・・・ 【0028】 金属層13は、図4に示すように、セラミックス基板11の他方の面(図4において下面)に、銅又は銅合金からなる銅板23が接合されることにより形成されている。 ・・・ 【0029】 そして、セラミックス基板11と回路層12(金属層13)との接合界面においては、図2に示すように、セラミックス基板11と回路層12(及び金属層13)の接合界面から回路層12(及び金属層13)側へ1000nm離間した位置においてエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度が3原子%以下とされている。これにより、接合界面において微細な金属間化合物の析出を抑えることができ、セラミックス基板11と回路層12(及び金属層13)との接合界面近傍が析出硬化することを抑制し、冷熱サイクル負荷時のセラミックス基板11の割れの発生を抑制することが可能となる。 ・・・ 【0031】 以下に、本実施形態に係る絶縁回路基板10の製造方法について、図3及び図4を参照して説明する。 【0032】 (セラミックス基板洗浄工程S01) まず、セラミックス基板11を準備し、このセラミックス基板11の接合面の洗浄を行う。・・・ 【0033】 (接合材配置工程S02) 次に、図4に示すように、回路層12となる銅板22とセラミックス基板11との間、及び、金属層13となる銅板23とセラミックス基板11との間に、それぞれ接合材を配置する。 接合材としては、Mg単独、Mgと活性金属(Ti,Zr,Hf,Nbから選択される1種又は2種以上)の組み合わせや、MgとCuの組み合わせた接合材を用いることができる。 ・・・ 【0036】 本実施形態では、銅板22とセラミックス基板11との間、及び、銅板23とセラミックス基板11との間に、それぞれMg箔25を配置している。 ここで、Mg箔25においては、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度が1mass%以下に制限されている。 また、この接合材配置工程S02では、配置するMg量を7μmol/cm2以上143μmol/cm2以下の範囲内としている。 【0037】 (積層工程S03) 次に、銅板22とセラミックス基板11を、Mg箔25を介して積層するとともに、セラミックス基板11と銅板23を、Mg箔25を介して積層する。 【0038】 (接合工程S04) 次に、積層された銅板22、Mg箔25、セラミックス基板11、Mg箔25、銅板23を、積層方向に加圧するとともに、真空炉内に装入して加熱し、銅板22とセラミックス基板11と銅板23を接合する。 ・・・ 【0039】 以上のように、セラミックス基板洗浄工程S01、接合材配置工程S02と、積層工程S03と、接合工程S04とによって、本実施形態である絶縁回路基板10が製造されることになる。 ・・・ 【0042】 以上のような構成とされた本実施形態の絶縁回路基板10(銅/セラミックス接合体)によれば、回路層12(及び金属層13)とセラミックス基板11との接合界面から回路層12側(及び金属層13側)へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度が3原子%以下とされているので、接合界面において、不純物元素(Al,Si,Zn,Mn)の濃度が十分に低く、接合界面において微細な金属間化合物の析出を抑えることができ、セラミックス基板11と回路層12(及び金属層13)との接合界面近傍が析出硬化することを抑制できる。よって、厳しい冷熱サイクルを負荷した場合でも、セラミックス基板11における割れの発生を抑制することが可能となり、冷熱サイクル信頼性に優れた絶縁回路基板10を得ることができる。」 (b)「【図1】 」 (c)「【図2】 」 (d)「【図4】 」 イ そして、前記ア(a)〜(d)によれば、本件特許明細書には、セラミックス基板と回路層(及び金属層)の接合界面にろう材の接合層が存在することは記載されていないし、ほかに、前記ろう材の接合層が存在することが記載も示唆もされるものではなく、更に、そのことを示す証拠もないから、本件発明1において、セラミックス基板と回路層(及び金属層)の接合界面にろう材の接合層が存在するとは認められないのであって、このことは、特許権者意見書4頁1行〜18行及び【図1】の記載からも裏付けられるものである。 ウ してみれば、接合された「銅部材」と「セラミックス部材」の間に、所定の厚さを有するろう材の接合層が存在することが推認されることを前提とした前記第5の2の取消理由は前提において誤っており、「前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置」は明らかであるので、本件発明1が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 そして、このことを前記(1)の判断手法に照らせば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は明確性要件に適合するというべきであって、本件特許請求の範囲の請求項2〜8の記載について検討しても事情は同じである。 (3)佐々木意見書の主張について ア 佐々木意見書における申立人佐々木の明確性違反についての主張は、概略、以下のとおりである。 (ア)本件発明1及び5において、「接合材」にMgがどの程度含有されるかについて記載されておらず、微量のMgでは接合時の接合界面に液相が生じないと解されるから、本件発明1及び5において、液相を生じさせるに足る相当量のMgが含有されていることを明確にするべきである。 (イ)本件発明1及び5において、接合層が形成されないことや、銅部材とセラミックス部材との位置関係が記載されていないから、接合層が形成されないのであれば、銅部材とセラミックス部材の位置が一義的に定まることを明確にすべきである。 加えて、特許権者が特許権者意見書で主張する「銅部材とセラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置の起点が不明確となる厚さ」とは、どのような厚さをいうのかが不明であり、また、本件発明のように、「接合材」に「Mgおよび活性金属の組合せ」を用いた場合においても、Mgのみを接合材に用いた場合と同様に、所定の厚さの接合層が形成されない点について具体的な言及はないので、「Mgおよび活性金属の組合せ」を「接合材」に用いた場合に所定の厚さの接合層が形成されるのか否かが不明である。 (ウ)本件発明1では濃度測定の対象にCuが限定されており、仮に、「接合材」が銅を含むと、銅部材のCuと接合材のCuの区別ができないため、「所定の厚さの接合層が存在しない」とすることができないので、本件発明1及び5においては、接合材にCuを用いないことが必要である。 (エ)特許権者意見書の4頁の【図1】を拡大すると、銅とは異なった色をしている箇所が存在し、前記【図1】は所定の厚さの接合層が存在していない証拠ではなく、本件発明1及び5では所定の厚さの接合層が存在していると考えられるので、「銅部材とセラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置」が依然として不明確である。 「 」(佐々木意見書7頁) イ 以下、申立人佐々木の前記アの主張について検討する。 (ア)本件発明1においては、接合界面にCuとMgの液相が生じないろう材は排除されていると解するのが妥当であることは、前記1(3)イに記載のとおりであるから、仮に、本件発明1において、「接合材」にMgがどの程度含有されるかが記載されていないとしても、そもそも、本件発明1における「接合材」が液相を生じさせるものであることは明確であり、本件発明5についても同様であるので、前記ア(ア)の主張は採用できない。 (イ)本件発明1において、セラミックス基板と回路層(及び金属層)の接合界面にろう材の接合層が存在するとは認められないことは、前記(2)イに記載のとおりであるから、本件発明1において、銅部材とセラミックス部材の位置が一義的に定まることはもとより明らかであり、本件発明5についても同様であるので、前記ア(イ)の主張は前提において誤っている。 そして、仮に、特許権者意見書の記載が不明確であり、また、「接合材」に「Mgおよび活性金属の組合せ」を用いた場合に、所定の厚さの接合層が形成されない点について具体的な言及がないとしても、本件発明において、セラミックス基板と回路層(及び金属層)の接合界面にろう材の接合層が存在するとは認められないことに変わりはないので、これらの事情にかかわらず、前記ア(イ)の主張は採用できない。 (ウ)本件発明1は、「Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材」を用いるものであるから、そもそも接合材が銅を含むものではなく、本件発明5についても同様であるので、前記ア(ウ)の主張もまた前提において誤っており、採用できない。 (エ)本件発明において、セラミックス基板と回路層(及び金属層)の接合界面にろう材の接合層が存在するとは認められないことは、前記(2)イに記載のとおりである。 また、仮に、特許権者意見書の4頁の【図1】を拡大すると、銅とは異なった色をしている箇所が存在するとしても、当該箇所が所定の厚さの接合層であることを示す証拠はなく、そのことを裏付ける技術常識も存在しない。 そして、前記(2)に記載のとおり、「銅部材とセラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置」は明確であるから、前記ア(エ)の主張も採用できない。 (オ)前記(ア)〜(エ)によれば、前記ア(ア)〜(エ)の申立人佐々木の主張はいずれも採用できない。 (3)小括 したがって、本件特許請求の範囲の請求項1〜8の記載は、特許法第36条第6項第2号所定の規定に適合するので、前記第5の2の取消理由も理由がない。 3 まとめ よって、前記第5の取消理由はいずれも理由がない。 第7 特許異議申立理由についての当審の判断 1 申立人佐々木による特許異議申立理由について (1)特許法第29条第2項所定の規定違反(進歩性欠如)について ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 (ア)甲第1号証には、以下(1a)〜(1c)の記載がある。 (1a)「請求の範囲 [請求項1] セラミックス基板と銅板が、Ag、Cu及び活性金属を含むろう材を介して接合してなるセラミックス回路基板において、接合ボイド率が1.0%以下であり、ろう材成分であるAgの拡散距離が5〜20μmであるセラミックス回路基板。」 (1b)「[0013] 本発明のセラミックス回路基板は、セラミックス基板の一方の面に銅回路板、他方の面に銅放熱板を、Ag、Cu及び活性金属を含むろう材を介して接合してなるセラミックス回路基板である。 ・・・ [0015] 本発明のセラミックス回路基板は、ろう材成分であるAgの拡散距離が5〜20μmであることを特徴とする。・・・本発明者は耐熱サイクル特性を向上させるために鋭意検討を行った結果、ろう材層の厚みではなく、銅板中へのAgの拡散を制御することにより、熱サイクル時に発生する熱応力を緩和させ、セラミックス基板へのクラックの発生や銅板の剥離を抑制することができることを見出した。Agの拡散距離を5μm以上とすることにより、セラミックス基板と銅板の接合が不十分となり、熱サイクル時に銅板が剥離してしまうのを抑制することができる。Agの拡散距離を20μm以下とし、銅板の機械的性質が変化して熱応力を受け易くなることを抑制することで、熱サイクル時にセラミックス基板にクラックが発生したり、銅板が剥離してしまうのを抑制することができる。・・・」 (1c)「[0031]実施例1 厚み0.32mmの窒化ケイ素基板に、Ag粉末(福田金属箔粉工業社製「AgC−BO」)88質量部及びCu粉末(福田金属箔粉工業社製「SRC−Cu−20」)12質量部の合計100質量部に対して、TiH2粉末(大阪チタニウムテクノロジーズ社製「TSH−350」)を2.5質量部、Sn粉末(三津和薬品化学社製「すず粉末(−325mesh)」)を4質量部混合したろう材ペーストを塗布量8mg/cm2となるようにロールコーターで塗布した。その後、窒化ケイ素基板の一方の面に回路形成用銅板を、他方の面に放熱板形成用銅板(いずれも厚み0.8mmの無酸素銅板)を重ね、窒素雰囲気下のローラー搬送式連続加熱炉(開口部寸法W500mm×H70mm、炉長3m)へ投入した。搬送速度は10cm/分とし、表1に示す接合条件となるようにヒーターの設定温度を調整して窒化ケイ素基板と銅板を接合した。接合した銅板にエッチングレジストを印刷し、塩化第二銅溶液でエッチングして回路パターンを形成した。さらにフッ化アンモニウム/過酸化水素溶液でろう材層、窒化物層を除去した。」 (イ)前記(ア)(1a)によれば、甲第1号証には、「セラミックス回路基板」が記載されている。 そして、前記(ア)(1c)によれば、当該「セラミックス回路基板」は、厚み0.32mmの窒化ケイ素基板に、Ag粉末(福田金属箔粉工業社製「AgC−BO」)88質量部及びCu粉末(福田金属箔粉工業社製「SRC−Cu−20」)12質量部の合計100質量部に対して、TiH2粉末(大阪チタニウムテクノロジーズ社製「TSH−350」)を2.5質量部、Sn粉末(三津和薬品化学社製「すず粉末(−325mesh)」)を4質量部混合したろう材ペーストを塗布量8mg/cm2となるようにロールコーターで塗布し、その後、窒化ケイ素基板の一方の面に回路形成用銅板を、他方の面に放熱板形成用銅板(いずれも厚み0.8mmの無酸素銅板)を重ね、窒素雰囲気下のローラー搬送式連続加熱炉(開口部寸法W500mm×H70mm、炉長3m)へ投入し、搬送速度は10cm/分とし、ヒーターの設定温度を調整して窒化ケイ素基板と銅板を接合し、接合した銅板にエッチングレジストを印刷し、塩化第二銅溶液でエッチングして回路パターンを形成し、さらにフッ化アンモニウム/過酸化水素溶液でろう材層、窒化物層を除去して得られたものである。 (ウ)前記(イ)によれば、甲第1号証には、 「厚み0.32mmの窒化ケイ素基板に、Ag粉末(福田金属箔粉工業社製「AgC−BO」)88質量部及びCu粉末(福田金属箔粉工業社製「SRC−Cu−20」)12質量部の合計100質量部に対して、TiH2粉末(大阪チタニウムテクノロジーズ社製「TSH−350」)を2.5質量部、Sn粉末(三津和薬品化学社製「すず粉末(−325mesh)」)を4質量部混合したろう材ペーストを塗布量8mg/cm2となるようにロールコーターで塗布し、 その後、窒化ケイ素基板の一方の面に回路形成用銅板を、他方の面に放熱板形成用銅板(いずれも厚み0.8mmの無酸素銅板)を重ね、 窒素雰囲気下のローラー搬送式連続加熱炉(開口部寸法W500mm×H70mm、炉長3m)へ投入し、搬送速度は10cm/分とし、ヒーターの設定温度を調整して窒化ケイ素基板と銅板を接合し、接合した銅板にエッチングレジストを印刷し、塩化第二銅溶液でエッチングして回路パターンを形成し、さらにフッ化アンモニウム/過酸化水素溶液でろう材層、窒化物層を除去して得られた、セラミックス回路基板。」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 イ 対比・判断 (ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「回路形成用銅板」及び「放熱板形成用銅板」は、本件発明1における「銅又は銅合金からなる銅部材」に相当し、甲1発明における「窒化ケイ素基板」は、本件発明1における「セラミックス部材」に相当し、甲1発明における「セラミックス回路基板」は、本件発明1における「銅又は銅合金からなる銅部材と、セラミックス部材とが」「接合されてなる銅/セラミックス接合体」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「銅又は銅合金からなる銅部材と、セラミックス部材とが接合されてなる銅/セラミックス接合体。」の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1:本件発明1は、「銅/セラミックス接合体」が、「銅又は銅合金からなる銅部材と、セラミックス部材とが、Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材を用いて接合されてなる」、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明は、「Ag粉末(福田金属箔粉工業社製「AgC−BO」)88質量部及びCu粉末(福田金属箔粉工業社製「SRC−Cu−20」)12質量部の合計100質量部に対して、TiH2粉末(大阪チタニウムテクノロジーズ社製「TSH−350」)を2.5質量部、Sn粉末(三津和薬品化学社製「すず粉末(−325mesh)」)を4質量部混合したろう材ペースト」により接合されている点。 ・相違点2:本件発明1は、「銅/セラミックス接合体」が、「前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度が3原子%以下とされている」、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明が前記発明特定事項を有するか否かが明らかでない点。 (イ)まず、前記(ア)の相違点1について検討すると、前記ア(ア)(1b)によれば、甲1発明は、セラミックス基板の一方の面に銅回路板、他方の面に銅放熱板を、Ag、Cu及び活性金属を含むろう材を介して接合してなるセラミックス回路基板であって、ろう材成分であるAgの拡散距離が5〜20μmであることを特徴とするものである。 すなわち、甲1発明は、セラミックス回路基板の耐熱サイクル特性を向上させるために、銅板中へのAgの拡散を制御することにより、熱サイクル時に発生する熱応力を緩和させ、セラミックス基板へのクラックの発生や銅板の剥離を抑制するものであり、Agの拡散距離を5μm以上とすることにより、セラミックス基板と銅板の接合が不十分となり、熱サイクル時に銅板が剥離してしまうのを抑制することができ、Agの拡散距離を20μm以下とし、銅板の機械的性質が変化して熱応力を受け易くなることを抑制することで、熱サイクル時にセラミックス基板にクラックが発生したり、銅板が剥離してしまうのを抑制することができるものである。 そして、甲1発明において、「接合材」を、Agを含まない「Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材」とすることは、銅板中へのAgの拡散を制御することにより、熱サイクル時に発生する熱応力を緩和させ、セラミックス基板へのクラックの発生や銅板の剥離を抑制する、という甲1発明の特徴を損なうこととなり、阻害要因を有するから、甲1発明において、「接合材」を「Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材」とすることは、当業者が容易になし得ることではなく、更に、このことは、甲第2〜5号証に記載された本件特許の優先日当時の周知技術に左右されるものでもない。 したがって、甲1発明において、「銅/セラミックス接合体」を、「銅又は銅合金からなる銅部材と、セラミックス部材とが、Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材を用いて接合されてなる」、との前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、甲第2〜5号証に記載された本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易になし得ることではない。 (ウ)よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2〜5号証に記載された本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 そして、本件発明2〜4について検討しても事情は同じであり、更に、「接合材」について前記相違点1と同じ発明特定事項を有する本件発明5〜8について検討しても事情は同じである。 ウ 小括 以上のとおり、本件発明1〜8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2〜5号証に記載された本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第4の1(1)の特許異議申立理由は理由がない。 (2)特許法第36条第6項第1号所定の規定違反(サポート要件違反)について ア 本件特許に係る発明の課題とその解決手段について 本件特許明細書の記載に接した当業者は、本件発明1〜8の発明特定事項により本件課題を解決できることを理解することができることは、前記第6の1(2)ウに記載のとおりであるから、前記第4の1(2)アの特許異議申立理由は理由がない。 イ 甲第6号証及び甲第7号証との対比について 前記第6の1(1)のサポート要件の判断手法に照らせば、特許請求の範囲に記載された発明の公知技術に対する有利な効果の有無は、サポート要件の判断を左右しないので、仮に、本件発明1〜8が、甲第6号証及び甲第7号証に対して有利な効果を有しないとしても、本件特許請求の範囲の請求項1〜8の記載はサポート要件に適合することに変わりはない。 また、本件発明における「接合材」は、「Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる」ものであって、Ag、Cu及び活性金属を含むろう材を含まないから、本件特許明細書の記載事項は、「接合材」について本件発明1〜8まで拡張ないし一般化できるので、前記第4の1(2)イの特許異議申立理由は理由がない。 ウ 小括 したがって、本件特許請求の範囲の請求項1〜8の記載は、特許法第36条第6項第1号所定の規定に適合するので、前記第4の1(2)の特許異議申立理由はいずれも理由がない。 (3)特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について ア 本件特許明細書には、更に以下の記載がある。 「【0054】 (接合界面における不純物濃度) 走査型透過電子顕微鏡(FEI社製Titan ChemiSTEM)及びEDS検出器(サーモサイエンティフィック社製NSS7)を用いて、銅板とセラミック基板の接合界面近傍の濃度測定を実施した。 加速電圧200kVにおいて、接合界面から銅板側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%とし、活性金属(Ti,Zr,Nb,Hf),Al,Si,Zn,Mnの各濃度を測定した。測定は5箇所で行い、測定した5箇所の平均を、各元素の接合界面の濃度とした。評価結果を表1,2に示す。」 イ そして、前記第6の1(2)ア(a)(段落【0009】)及び前記アによれば、本件発明1においては、エネルギー分散X線分析法による濃度測定の測定結果に「Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mn」が全て含まれるか否かにかかわらず、また、そのほかの元素が含まれるか否かにかかわらず、検出された「Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値」を「100原子%」とするものであることが明らかであるから、本件発明1が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 そして、このことを前記第6の2(1)の判断手法に照らせば、本件特許請求の範囲の請求項1の記載は明確性要件に適合するというべきであって、本件特許請求の範囲の請求項2〜8の記載について検討しても事情は同じであるので、本件特許請求の範囲の請求項1〜8の記載は、特許法第36条第6項第2号所定の規定に適合するから、前記第4の1(3)の特許異議申立理由は理由がない。 (4)特許法第36条第4項第1号所定の規定違反(実施可能要件違反)について ア 実施可能要件の判断手法 物の発明における実施とは、物の生産、使用等の行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その物を生産し、かつ、その物を使用できる程度の記載があれば、実施可能要件を満たすということができるから、以下、この観点に立って検討する。 イ 判断 (ア)本件特許明細書には、更に以下の記載がある。 「【実施例】 【0049】 以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。 【0050】 まず、表1,2に記載のセラミックス基板(40mm×40mm)を準備した。なお、厚さは、AlN及びAl2O3は0.635mm、Si3N4は0.32mmとした。 そして、表1,2に示す処理液を用いて以下の条件で、セラミックス基板の表面を洗浄処理した。 ・・・ 【0052】 上述のように、洗浄処理を実施したセラミックス基板の両面に、無酸素銅からなる銅板(37mm×37mm×厚さ0.3mm)を、表1,2に示す接合材を用いて、銅板とセラミックス基板とを接合し、絶縁回路基板(銅/セラミックス接合体)を得た。なお、接合時の真空炉の真空度は3×10−3Pa、接合温度を800℃、保持時間を60分、加圧荷重を0.98MPaとした。接合材は箔材を用いた。 また、接合材として用いた各元素の原料の純度を表1,2に示す。 ・・・ 【0056】 【表1】 【0057】 【表2】 」 (イ)そして、前記(ア)の【表1】における本発明例1に注目すれば、本発明例1は、「銅又は銅合金からなる銅部材と、セラミックス部材とが、Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材を用いて接合されてなる銅/セラミックス接合体」といえるものである。 また、本発明例1においては、前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Alが1.3原子%、Siが0.4原子%、Znが0.7原子%、Mnが0.5原子%であって、このとき、「Al,Si,Zn,Mnの合計濃度」は1.3原子%+0.4原子%+0.7原子%+0.5原子%=2.9原子%であるから、本発明例1は、「Al,Si,Zn,Mnの合計濃度が3原子%以下とされている」ものといえるので、本件発明1の発明特定事項を全て満足するものである。 同様に、本発明例1は、「前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Alの濃度が2原子%以下とされている」ものといえ、「前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Siの濃度が2原子%以下とされている」ものといえ、「前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、ZnとMnの合計濃度が2原子%以下とされている」ものといえるから、本件発明2〜4の発明特定事項も全て満足するものであり、更に本発明例2〜8、11〜18についても同様である。 (ウ)そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1〜4について、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その物を生産し、かつ、その物を使用できる程度の記載があるといえ、このことを前記アの判断手法に照らせば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1〜4について実施可能要件に適合するのであり、本件発明5〜8について検討しても事情は同じである。 (エ)ここで、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「Al,Si,Zn,Mnの合計濃度」を0原子%以上1.0原子%未満にする方法は記載されていないが、前記(ア)の【表2】の本発明例11の「Al,Si,Zn,Mnの合計濃度」は1.0原子%であり、当該本発明例11における接合材や銅板の純度を更に高めれば、「Al,Si,Zn,Mnの合計濃度」を1.0原子%未満にできるといえるから、当業者は、「Al,Si,Zn,Mnの合計濃度」を0原子%以上1.0原子%未満の銅/セラミックス接合体」の製造方法を理解することができる。 そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、「Al,Si,Zn,Mnの合計濃度」が0原子%以上1.0原子%未満の場合についても、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものといえるので、実施可能要件に適合する。 エ 小括 したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号所定の規定に適合するから、前記第4の1(4)の特許異議申立理由は理由がない。 (5)まとめ よって、申立人佐々木の特許異議申立理由はいずれも理由がない。 2 申立人渋谷による特許異議申立理由について 前記第4の2(1)及び(2)の申立人渋谷の特許異議申立理由は、いずれも、前記第5の1及び2取消理由で採用され、前記第5の取消理由はいずれも理由がないことは前記第6の3に記載のとおりであるので、申立人渋谷の特許異議申立理由も、いずれも理由がない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1〜8に係る特許を取り消すことはできない。 また、ほかに本件発明1〜8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】銅/セラミックス接合体、及び、絶縁回路基板 【技術分野】 【0001】 この発明は、銅又は銅合金からなる銅部材と、セラミックス部材とが接合されてなる銅/セラミックス接合体、及び、セラミックス基板の表面に、銅又は銅合金からなる銅板が接合されてなる絶縁回路基板に関するものである。 【背景技術】 【0002】 パワーモジュール、LEDモジュール及び熱電モジュールにおいては、絶縁層の一方の面に導電材料からなる回路層を形成した絶縁回路基板に、パワー半導体素子、LED素子及び熱電素子が接合された構造とされている。 例えば、風力発電、電気自動車、ハイブリッド自動車等を制御するために用いられる大電力制御用のパワー半導体素子は、動作時の発熱量が多いことから、これを搭載する基板としては、セラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面に導電性の優れた金属板を接合して形成した回路層と、を備えた絶縁回路基板が、従来から広く用いられている。なお、絶縁回路基板としては、セラミックス基板の他方の面に金属板を接合して金属層を形成したものも提供されている。 【0003】 例えば、特許文献1には、セラミックス基板の一方の面及び他方の面に、銅板を接合することにより回路層及び金属層を形成した絶縁回路基板が提案されている。この特許文献1においては、セラミックス基板の一方の面及び他方の面に、Ag−Cu−Ti系ろう材を介在させて銅板を配置し、加熱処理を行うことにより銅板が接合されている(いわゆる活性金属ろう付け法)。この活性金属ろう付け法では、活性金属であるTiが含有されたろう材を用いているため、溶融したろう材とセラミックス基板との濡れ性が向上し、セラミックス基板と銅板とが良好に接合されることになる。 【0004】 ここで、特許文献1に記載された活性金属ろう付け法によってセラミックス基板と銅板とを接合した場合には、セラミックス基板と銅板との接合界面にTiN層が形成されることになる。このTiN層は硬く脆いため、冷熱サイクル負荷時にセラミックス基板に割れが発生するおそれがあった。 【0005】 そこで、特許文献2においては、Cu−Mg−Ti系ろう材を用いて、セラミックス基板と銅板とを接合した絶縁回路基板が提案されている。 この特許文献2においては、窒素ガス雰囲気下にて560〜800℃で加熱することによって接合する構成とされており、Cu−Mg−Ti合金中のMgは昇華して接合界面には残存せず、かつ、窒化チタン(TiN)が実質的に形成しないものとされている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 【特許文献1】特許第3211856号公報 【特許文献2】特許第4375730号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 ところで、最近では、絶縁回路基板に搭載される半導体素子の発熱温度が高くなる傾向にあり、絶縁回路基板には、従来にも増して、厳しい冷熱サイクルに耐えることができる冷熱サイクル信頼性が求められている。 ここで、特許文献2のように、Cu−Mg−Ti系ろう材を用いた場合には、接合界面にはCuとMgの液相が生じることになる。ここで、接合界面において不純物元素が多く存在すると、接合界面の液相が凝固した際に微細な金属間化合物が析出し、セラミックス基板と銅板との接合界面近傍が析出硬化することになる。このため、厳しい冷熱サイクルを負荷した際に、セラミックス基板に割れが発生するおそれがあった。 【0008】 この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、厳しい冷熱サイクルを負荷した場合であっても、セラミックス部材における割れの発生を抑制でき、冷熱サイクル信頼性に優れた銅/セラミックス接合体、及び、この銅/セラミックス接合体からなる絶縁回路基板を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0009】 前述の課題を解決するために、本発明の銅/セラミックス接合体は、銅又は銅合金からなる銅部材と、セラミックス部材とが、Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材を用いて接合されてなる銅/セラミックス接合体であって、前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度が3原子%以下とされていることを特徴としている。 【0010】 本発明の銅/セラミックス接合体によれば、接合界面において、不純物元素(Al,Si,Zn,Mn)の濃度が十分に低く、接合界面において微細な金属間化合物の析出を抑えることができ、セラミックス部材と銅部材との接合界面近傍が析出硬化することを抑制できる。よって、厳しい冷熱サイクルを負荷した場合でも、セラミックス部材における割れの発生を抑制することが可能となる。 【0011】 ここで、本発明の銅/セラミックス接合体においては、前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Alの濃度が2原子%以下とされていることが好ましい。 この場合、接合界面において不純物元素であるAlの濃度が上述のように規制されているので、セラミックス部材と銅部材との接合界面近傍が析出硬化することをさらに抑制できる。 【0012】 また、本発明の銅/セラミックス接合体においては、前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Siの濃度が2原子%以下とされていることが好ましい。 この場合、接合界面において不純物元素であるSiの濃度が上述のように規制されているので、セラミックス部材と銅部材との接合界面近傍が析出硬化することをさらに抑制できる。 【0013】 さらに、本発明の銅/セラミックス接合体においては、前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、ZnとMnの合計濃度が2原子%以下とされていることが好ましい。 この場合、接合界面において不純物元素であるZnとMnの合計濃度が上述のように規制されているので、セラミックス部材と銅部材との接合界面近傍が析出硬化することをさらに抑制できる。 【0014】 本発明の絶縁回路基板は、セラミックス基板の表面に、銅又は銅合金からなる銅板が、Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材を用いて接合されてなる絶縁回路基板であって、前記銅板と前記セラミックス基板との接合界面から前記銅板側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度が3原子%以下とされていることを特徴としている。 【0015】 本発明の絶縁回路基板によれば、接合界面において、不純物元素(Al,Si,Zn,Mn)の濃度が十分に低く、接合界面において微細な金属間化合物の析出を抑えることができ、セラミックス基板と銅板との接合界面近傍が析出硬化することを抑制できる。よって、厳しい冷熱サイクルを負荷した場合でも、セラミックス基板における割れの発生を抑制することが可能となり、冷熱サイクル信頼性に優れている。 【0016】 ここで、本発明の絶縁回路基板においては、前記銅板と前記セラミックス基板との接合界面から前記銅板側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Alの濃度が2原子%以下とされていることが好ましい。 この場合、接合界面において不純物元素であるAlの濃度が上述のように規制されているので、セラミックス基板と銅板との接合界面近傍が析出硬化することをさらに抑制できる。 【0017】 また、本発明の絶縁回路基板においては、前記銅板と前記セラミックス基板との接合界面から前記銅板側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Siの濃度が2原子%以下とされていることが好ましい。 この場合、接合界面において不純物元素であるSiの濃度が上述のように規制されているので、セラミックス基板と銅板との接合界面近傍が析出硬化することをさらに抑制できる。 【0018】 さらに、本発明の絶縁回路基板においては、前記銅板と前記セラミックス基板との接合界面から前記銅板側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、ZnとMnの合計濃度が2原子%以下とされていることが好ましい。 この場合、接合界面において不純物元素であるZnとMnの合計濃度が上述のように規制されているので、セラミックス基板と銅板との接合界面近傍が析出硬化することをさらに抑制できる。 【発明の効果】 【0019】 本発明によれば、厳しい冷熱サイクルを負荷した場合であっても、セラミックス部材における割れの発生を抑制でき、冷熱サイクル信頼性に優れた銅/セラミックス接合体、及び、この銅/セラミックス接合体からなる絶縁回路基板を提供することができる。 【図面の簡単な説明】 【0020】 【図1】本発明の実施形態に係る絶縁回路基板を用いたパワーモジュールの概略説明図である。 【図2】本発明の実施形態に係る絶縁回路基板の回路層(金属層)とセラミックス基板との接合界面の拡大説明図である。 【図3】本発明の実施形態に係る絶縁回路基板の製造方法のフロー図である。 【図4】本発明の実施形態に係る絶縁回路基板の製造方法の概略説明図である。 【発明を実施するための形態】 【0021】 以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。 本実施形態に係る銅/セラミックス接合体は、セラミックスからなるセラミックス部材としてのセラミックス基板11と、銅又は銅合金からなる銅部材としての銅板22(回路層12)及び銅板23(金属層13)とが接合されてなる絶縁回路基板10である。図1に、本実施形態である絶縁回路基板10を備えたパワーモジュール1を示す。 【0022】 このパワーモジュール1は、回路層12及び金属層13が配設された絶縁回路基板10と、回路層12の一方の面(図1において上面)に接合層2を介して接合された半導体素子3と、金属層13の他方側(図1において下側)に配置されたヒートシンク30と、を備えている。 【0023】 半導体素子3は、Si等の半導体材料で構成されている。この半導体素子3と回路層12は、接合層2を介して接合されている。 接合層2は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材で構成されている。 【0024】 ヒートシンク30は、前述の絶縁回路基板10からの熱を放散するためのものである。このヒートシンク30は、銅又は銅合金で構成されており、本実施形態ではりん脱酸銅で構成されている。このヒートシンク30には、冷却用の流体が流れるための流路31が設けられている。 なお、本実施形態においては、ヒートシンク30と金属層13とが、はんだ材からなるはんだ層32によって接合されている。このはんだ層32は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材で構成されている。 【0025】 そして、本実施形態である絶縁回路基板10は、図1に示すように、セラミックス基板11と、このセラミックス基板11の一方の面(図1において上面)に配設された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面(図1において下面)に配設された金属層13と、を備えている。 【0026】 セラミックス基板11は、絶縁性および放熱性に優れた窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al2O3)等のセラミックスで構成されている。本実施形態では、セラミックス基板11は、特に放熱性の優れた窒化アルミニウム(AlN)で構成されている。また、セラミックス基板11の厚さは、例えば、0.2mm以上1.5mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.635mmに設定されている。 【0027】 回路層12は、図4に示すように、セラミックス基板11の一方の面(図4において上面)に、銅又は銅合金からなる銅板22が接合されることにより形成されている。 本実施形態においては、回路層12は、無酸素銅の圧延板がセラミックス基板11に接合されることで形成されている。 なお、回路層12となる銅板22の厚さは0.1mm以上2.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.6mmに設定されている。 回路層12となる銅板22における不純物(Al,Si,Zn,Mn)の合計濃度は、0.1mass%以下が好ましく、0.04mass%以下がより好ましい。また、銅板22として、タフピッチ銅を用いることもできる。 【0028】 金属層13は、図4に示すように、セラミックス基板11の他方の面(図4において下面)に、銅又は銅合金からなる銅板23が接合されることにより形成されている。 本実施形態においては、金属層13は、無酸素銅の圧延板がセラミックス基板11に接合されることで形成されている。 なお、金属層13となる銅板23の厚さは0.1mm以上2.0mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.6mmに設定されている。 金属層13となる銅板23における不純物(Al,Si,Zn,Mn)の合計濃度は、0.1mass%以下が好ましく、0.04mass%以下がより好ましい。また、銅板23として、タフピッチ銅を用いることもできる。 【0029】 そして、セラミックス基板11と回路層12(金属層13)との接合界面においては、図2に示すように、セラミックス基板11と回路層12(及び金属層13)の接合界面から回路層12(及び金属層13)側へ1000nm離間した位置においてエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度が3原子%以下とされている。これにより、接合界面において微細な金属間化合物の析出を抑えることができ、セラミックス基板11と回路層12(及び金属層13)との接合界面近傍が析出硬化することを抑制し、冷熱サイクル負荷時のセラミックス基板11の割れの発生を抑制することが可能となる。 なお、より厳しい環境下でもセラミックス基板11割れの発生を抑制するためには、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度は、2原子%以下であることが好ましい。 【0030】 また、本実施形態においては、上述のように測定されたAlの濃度が2原子%以下とされていることが好ましく、1.5原子%以下とされていることがより好ましい。 さらに、上述のように測定されたSiの濃度が2原子%以下とされていることが好ましく、1.5原子%以下とされていることがより好ましい。 また、上述のように測定されたZnとMnの合計濃度が2原子%以下とされていることが好ましく、1原子%以下とされていることがより好ましい。 【0031】 以下に、本実施形態に係る絶縁回路基板10の製造方法について、図3及び図4を参照して説明する。 【0032】 (セラミックス基板洗浄工程S01) まず、セラミックス基板11を準備し、このセラミックス基板11の接合面の洗浄を行う。本実施形態においては、図4に示すように、処理液51を用いてセラミックス基板11の表面を洗浄する。セラミックス基板11の表面は、処理液51にセラミックス基板11を浸漬させることで、洗浄してもよい。処理条件は、使用する処理液51に応じて処理条件を設定することが好ましい。以下に、各種処理液を使用した場合の処理条件を示す。 塩酸を用いる場合には、HClの濃度を8mass%以上20mass%以下、処理温度を28℃以上40℃以下、処理時間を3分以上10分以下とする。 硝酸を用いる場合には、HNO3の濃度を5mass%以上30mass%以下とした水溶液とし、処理温度を28℃以上40℃以下、処理時間を3分以上10分以下とする。 水酸化ナトリウム水溶液を用いる場合には、NaOHの濃度を1mass%以上4mass%以下、処理温度を28℃以上40℃以下、処理時間を1分以上5分以下とする。 炭酸水素ナトリウム水溶液を用いる場合には、NaHCO3の濃度を1mass%以上4mass%以下、処理温度を28℃以上40℃以下、処理時間を1分以上5分以下とする。 【0033】 (接合材配置工程S02) 次に、図4に示すように、回路層12となる銅板22とセラミックス基板11との間、及び、金属層13となる銅板23とセラミックス基板11との間に、それぞれ接合材を配置する。 接合材としては、Mg単独、Mgと活性金属(Ti,Zr,Hf,Nbから選択される1種又は2種以上)の組み合わせや、MgとCuの組み合わせた接合材を用いることができる。 接合材は、ペーストや箔材として銅板とセラミックス基板との間に配置することができる。ペーストを用いる場合、ペーストのフィラーとしてMg(Mg粉末)や活性金属(活性金属粉末)を用いることができる。フィラーとしてこれらの水素化物を用いることもできる。 【0034】 箔材を用いる場合、Mg箔と活性金属箔をそれぞれ重ねて配置することができる。また、Mgと活性金属の合金箔を用いることもできる。さらに、Mg箔と活性金属箔をクラッドとして用いることもできる。 また、銅板とセラミックス基板との間に、Mg蒸着膜、又は、Mgと活性金属の蒸着膜を配置し、これを接合材としてもよい。蒸着膜は、銅板又はセラミックス基板の少なくとも一方に設けることもできるし、両方に設けることもできる。Mgと活性金属の蒸着膜とする場合、共蒸着としてもよいし、Mgと活性金属をそれぞれ蒸着し、積層した膜としてもよい。なお、蒸着膜は、例えば、スパッタ法や蒸着法で形成することができる。 【0035】 接合材として活性金属を用いる場合、活性金属の量が0.4μmol/cm2以上18.8μmol/cm2以下となるよう配置するとよい。また、この場合、Mgの量は14μmol/cm2以上86μmol/cm2以下とするとよい。 なお、活性金属を配設した場合には、セラミックス基板との反応によって接合界面におけるAl濃度及びSi濃度が上昇するおそれがあるため、セラミックス基板の清浄や配置するMg、活性金属、Cuにおける不純物量を十分に制御する必要がある。 配置するMgにおける純度は99.0mass%以上とすることが好ましく、不純物(Al,Si,Zn,Mn)の合計濃度は1.0mass%以下が好ましく、0.3mass%以下がより好ましい。 配置する活性金属における純度は99.2mass%以上とすることが好ましく、不純物(AI,Si,Zn,Mn)の合計濃度は0.5mass%以下が好ましく、0.3mass%以下がより好ましい。 これらの不純物の濃度及び純度はICP発光分光分析法で測定することができる。 MgとCuの組み合わせた接合材を用いる場合には、活性金属を用いる場合と同様にして用いることができる。 【0036】 本実施形態では、銅板22とセラミックス基板11との間、及び、銅板23とセラミックス基板11との間に、それぞれMg箔25を配置している。 ここで、Mg箔25においては、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度が1mass%以下に制限されている。 また、この接合材配置工程S02では、配置するMg量を7μmol/cm2以上143μmol/cm2以下の範囲内としている。 【0037】 (積層工程S03) 次に、銅板22とセラミックス基板11を、Mg箔25を介して積層するとともに、セラミックス基板11と銅板23を、Mg箔25を介して積層する。 【0038】 (接合工程S04) 次に、積層された銅板22、Mg箔25、セラミックス基板11、Mg箔25、銅板23を、積層方向に加圧するとともに、真空炉内に装入して加熱し、銅板22とセラミックス基板11と銅板23を接合する。 ここで、接合工程S04における加圧荷重は、0.049MPa以上3.4MPa以下の範囲内とすることが好ましい。 また、接合工程S04における加熱温度は、500℃以上850℃以下の範囲内とすることが好ましい。加熱温度での保持時間は、5min以上180min以下の範囲内とすることが好ましい。 さらに、接合工程S04における真空度は、1×10−6Pa以上5×10−2Pa以下の範囲内とすることが好ましい。 【0039】 以上のように、セラミックス基板洗浄工程S01、接合材配置工程S02と、積層工程S03と、接合工程S04とによって、本実施形態である絶縁回路基板10が製造されることになる。 【0040】 (ヒートシンク接合工程S05) 次に、絶縁回路基板10の金属層13の他方の面側にヒートシンク30を接合する。 絶縁回路基板10とヒートシンク30とを、はんだ材を介して積層して加熱炉に装入し、第2はんだ層32を介して絶縁回路基板10とヒートシンク30とをはんだ接合する。 【0041】 (半導体素子接合工程S06) 次に、絶縁回路基板10の回路層12の一方の面に、半導体素子3をはんだ付けにより接合する。 上述の工程により、図1に示すパワーモジュール1が製出される。 【0042】 以上のような構成とされた本実施形態の絶縁回路基板10(銅/セラミックス接合体)によれば、回路層12(及び金属層13)とセラミックス基板11との接合界面から回路層12側(及び金属層13側)へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度が3原子%以下とされているので、接合界面において、不純物元素(Al,Si,Zn,Mn)の濃度が十分に低く、接合界面において微細な金属間化合物の析出を抑えることができ、セラミックス基板11と回路層12(及び金属層13)との接合界面近傍が析出硬化することを抑制できる。よって、厳しい冷熱サイクルを負荷した場合でも、セラミックス基板11における割れの発生を抑制することが可能となり、冷熱サイクル信頼性に優れた絶縁回路基板10を得ることができる。 【0043】 また、本実施形態において、上述の接合界面におけるAlの濃度が2原子%以下に制限されている場合、あるいは、上述の接合界面におけるSiの濃度が2原子%以下に制限されている場合、さらに、上述のZnとMnの合計濃度が2原子%以下に制限されている場合には、セラミックス基板11と回路層12(及び金属層13)との接合界面近傍が析出硬化することをさらに抑制できる。 【0044】 また、本実施形態においては、セラミックス基板洗浄工程S01において、セラミックス基板11の接合面を洗浄するとともに、接合材配置工程S02において、配設するMgにおける不純物(Al,Si,Zn,Mn)の合計濃度を1mass%以下に制限しているので、上述の接合界面における不純物(Al,Si,Zn,Mn)の合計濃度を3原子%以下とすることが可能となる。 【0045】 さらに、本実施形態では、接合材配置工程S02において、Mg量を7μmol/cm2以上143μmol/cm2以下の範囲内としているので、界面反応に必要な液相を十分に得ることができる。 よって、銅板22,23とセラミックス基板11とが確実に接合された絶縁回路基板10(銅/セラミックス接合体)を得ることができる。 【0046】 以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。 例えば、本実施形態では、絶縁回路基板に半導体素子を搭載してパワーモジュールを構成するものとして説明したが、これに限定されることはない。例えば、絶縁回路基板の回路層にLED素子を搭載してLEDモジュールを構成してもよいし、絶縁回路基板の回路層に熱電素子を搭載して熱電モジュールを構成してもよい。 【0047】 また、本実施形態の絶縁回路基板では、回路層と金属層がともに銅又は銅合金からなる銅板によって構成されたものとして説明したが、これに限定されることはない。 例えば、回路層とセラミックス基板とが本発明の銅/セラミックス接合体で構成されていれば、金属層の材質や接合方法に限定はなく、金属層がなくてもよいし、金属層がアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されていてもよく、銅とアルミニウムの積層体で構成されていてもよい。 一方、金属層とセラミックス基板とが本発明の銅/セラミックス接合体で構成されていれば、回路層の材質や接合方法に限定はなく、回路層がアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されていてもよく、銅とアルミニウムの積層体で構成されていてもよい。 【0048】 さらに、本実施形態の絶縁回路基板では、セラミックス基板として、窒化アルミニウム(AlN)で構成されたものを例に挙げて説明したが、これに限定されることはなく、アルミナ(Al2O3)、窒化ケイ素(Si3N4)等の他のセラミックス基板を用いたものであってもよい。 【実施例】 【0049】 以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。 【0050】 まず、表1,2に記載のセラミックス基板(40mm×40mm)を準備した。なお、厚さは、AIN及びAl2O3は0.635mm、Si3N4は0.32mmとした。 そして、表1,2に示す処理液を用いて以下の条件で、セラミックス基板の表面を洗浄処理した。 表1,2において「HCl」は、HClの濃度が12mass%の塩酸を用いて、処理温度35℃、処理時間5分の条件で実施した。 表1,2において「HNO3」は、HNO3の濃度が10mass%の水溶液を用いて、処理温度35℃、処理時間7分の条件で実施した。 表1,2において「NaOH」は、NaOHの濃度が1mass%の水溶液を用いて、処理温度30℃、処理時間1分の条件で実施した。 表1,2において「NaHCO3」は、NaHCO3の濃度が1.5mass%の水溶液を用いて、処理温度30℃、処理時間1分の条件で実施した。 【0051】 比較例1、3、11、13では、セラミックス基板の洗浄処理を実施しなかった。 比較例2、12では、HNO3の濃度が2mass%の水溶液を用いて、処理温度35℃、処理時間20分の条件で実施した。 比較例4では、NaOHの濃度が8mass%の水溶液を用いて、処理温度30℃、処理時間3分の条件で実施した。 比較例5、14では、HClの濃度が3mass%の塩酸を用いて、処理温度35℃、処理時間1分の条件で実施した。 比較例15では、NaHCO3の濃度が0.5mass%の水溶液を用いて、処理温度30℃、処理時間3分の条件で実施した。 【0052】 上述のように、洗浄処理を実施したセラミックス基板の両面に、無酸素銅からなる銅板(37mm×37mm×厚さ0.3mm)を、表1,2に示す接合材を用いて、銅板とセラミックス基板とを接合し、絶縁回路基板(銅/セラミックス接合体)を得た。なお、接合時の真空炉の真空度は3×10−3Pa、接合温度を800℃、保持時間を60分、加圧荷重を0.98MPaとした。接合材は箔材を用いた。 また、接合材として用いた各元素の原料の純度を表1,2に示す。 【0053】 得られた絶縁回路基板(銅/セラミックス接合体)について、接合界面近傍の不純物濃度、及び、冷熱サイクル負荷後のセラミックス基板の割れについて、以下のようにして評価した。 【0054】 (接合界面における不純物濃度) 走査型透過電子顕微鏡(FEI社製Titan ChemiSTEM)及びEDS検出器(サーモサイエンティフィック社製NSS7)を用いて、銅板とセラミック基板の接合界面近傍の濃度測定を実施した。 加速電圧200kVにおいて、接合界面から銅板側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%とし、活性金属(Ti,Zr,Nb,Hf),Al,Si,Zn,Mnの各濃度を測定した。測定は5箇所で行い、測定した5箇所の平均を、各元素の接合界面の濃度とした。評価結果を表1,2に示す。 【0055】 (冷熱サイクル負荷後のセラミックス基板の割れ) セラミックス基板の材質に応じて下記の雰囲気を通炉させた後、SAT検査により、銅板とセラミックス基板の接合界面を検査し、セラミックス割れの有無を判定した。評価結果を表1に示す。 AlN,Al2O3の場合:−78℃×2min←→350℃×2minを10回 Si3N4の場合:−78℃×2min←→350℃×2minを20回 【0056】 【表1】 【0057】 【表2】 【0058】 接合界面においてAl,Si,Zn,Mnの合計濃度が3原子%を超えた比較例1−5および比較例11−15においては、冷熱サイクル負荷後にセラミックス基板の割れが確認された。 比較例1、3、11、13では、セラミックス基板の表面の洗浄処理を実施せず、また、接合材における元素の純度が低かったため、接合界面においてAl,Si,Zn,Mnの合計濃度が3原子%を超え、冷熱サイクル負荷後にセラミックス基板の割れが確認された。 比較例2、4、5、12、14、15では、セラミックス基板の表面処理を実施したものの、接合材における元素(Mg)の純度が低かったため、接合界面においてAl,Si,Zn,Mnの合計濃度が3原子%を超え、冷熱サイクル負荷後にセラミックス基板の割れが確認された。 【0059】 これに対して、接合界面においてAl,Si,Zn,Mnの合計濃度が3原子%以下に制限された本発明例1−8および本発明例11−18においては、冷熱サイクル負荷後にセラミックス基板の割れが確認されなかった。 【0060】 以上の結果、本発明例によれば、厳しい冷熱サイクルを負荷した場合であっても、セラミックス部材における割れの発生を抑制でき、冷熱サイクル信頼性に優れた銅/セラミックス接合体、及び、この銅/セラミックス接合体からなる絶縁回路基板を提供する可能であることが確認された。 【符号の説明】 【0061】 10 絶縁回路基板(銅/セラミックス接合体) 11 セラミックス基板(セラミックス部材) 12 回路層(銅部材) 13 金属層(銅部材) (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 銅又は銅合金からなる銅部材と、セラミックス部材とが、Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材を用いて接合されてなる銅/セラミックス接合体であって、 前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度が3原子%以下とされていることを特徴とする銅/セラミックス接合体。 【請求項2】 前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Alの濃度が2原子%以下とされていることを特徴とする請求項1に記載の銅/セラミックス接合体。 【請求項3】 前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Siの濃度が2原子%以下とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の銅/セラミックス接合体。 【請求項4】 前記銅部材と前記セラミックス部材との接合界面から前記銅部材側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、ZnとMnの合計濃度が2原子%以下とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の銅/セラミックス接合体。 【請求項5】 セラミックス基板の表面に、銅又は銅合金からなる銅板が、Mg単独,または、Mgおよび活性金属の組み合わせ、からなる接合材を用いて接合されてなる絶縁回路基板であって、 前記銅板と前記セラミックス基板との接合界面から前記銅板側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Al,Si,Zn,Mnの合計濃度が3原子%以下とされていることを特徴とする絶縁回路基板。 【請求項6】 前記銅板と前記セラミックス基板との接合界面から前記銅板側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Alの濃度が2原子%以下とされていることを特徴とする請求項5に記載の絶縁回路基板。 【請求項7】 前記銅板と前記セラミックス基板との接合界面から前記銅板側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、Siの濃度が2原子%以下とされていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の絶縁回路基板。 【請求項8】 前記銅板と前記セラミックス基板との接合界面から前記銅板側へ1000nm離間した位置でエネルギー分散X線分析法により濃度測定を行い、Cu,Mg,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Si,Zn,Mnの合計値を100原子%としたときに、ZnとMnの合計濃度が2原子%以下とされていることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の絶縁回路基板。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2022-06-17 |
出願番号 | P2020-134070 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(C04B)
P 1 651・ 572- YAA (C04B) P 1 651・ 536- YAA (C04B) P 1 651・ 537- YAA (C04B) P 1 651・ 574- YAA (C04B) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
河本 充雄 |
特許庁審判官 |
金 公彦 関根 崇 |
登録日 | 2021-04-19 |
登録番号 | 6870767 |
権利者 | 三菱マテリアル株式会社 |
発明の名称 | 銅/セラミックス接合体、及び、絶縁回路基板 |
代理人 | 寺本 光生 |
代理人 | 大浪 一徳 |
代理人 | 大浪 一徳 |
代理人 | 松沼 泰史 |
代理人 | 細川 文広 |
代理人 | 寺本 光生 |
代理人 | 細川 文広 |
代理人 | 松沼 泰史 |