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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G05B
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G05B
管理番号 1389441
総通号数 10 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-10-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2022-07-15 
確定日 2022-09-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第7000295号発明「送り軸およびウォームギヤ異常判定システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第7000295号の請求項5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第7000295号の請求項5に係る特許についての出願は、平成30年10月31日に出願され、令和3年12月27日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月19日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和4年7月15日に特許異議申立人 山田 芳男(以下「申立人」という。)により、請求項5に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
特許第7000295号の請求項5の特許に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項5】
割出を実行する主軸と、前記主軸に設けられるウォームギヤと、前記ウォームギヤと噛合するウォームねじと、前記ウォームねじを駆動するサーボモータと、前記サーボモータの駆動トルクを制御する数値制御部と、前記主軸の速度または位置を検出するエンコーダとを備える割出ユニットに設けられ、前記主軸の異常を判定するシステムであって、
前記数値制御部によって前記主軸を割出角度0°から360°まで所定速度で正回転させるコマンド生成部と、
前記コマンド生成部による前記主軸の正回転中に前記数値制御部から前記サーボモータへ出力される駆動トルク指令および/または位置フィードバックをモニタし、前記正回転中のモニタ結果と駆動トルク指令および/または位置フィードバックの正常値を対比し、前記正回転中のモニタ結果が前記正常値から逸脱する場合を異常と判定して該判定結果を出力するウォームギヤ異常判定部とを備え、
前記ウォームギヤ異常判定部は、前記サーボモータの前記所定速度と、前記主軸の前記正回転開始時から前記逸脱時までの時間に基づき、もしくは前記位置フィードバックに基づき、前記主軸の割出角度を算出し、前記正常値から逸脱する前記駆動トルク指令に係る割出角度を、異常割出角度として出力する、ウォームギヤ異常判定システム。」

第3 特許異議申立理由及び申立人が提出した証拠
1 特許異議申立理由の概要
(1)申立理由1(進歩性
本件発明は、甲第1号証記載の発明及び甲第2〜3号証記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2)申立理由2(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の請求項5の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 申立人が提出した証拠
甲第1号証:特開2018−17689号公報
甲第2号証:特開平5−285788号公報
甲第3号証:特開2018−25295号公報
甲第4号証:令和2年11月17日付起案の拒絶理由通知書
(特願2018−204791号)
(以下、各甲号証を「甲1」などという。)

第4 特許異議申立理由の当審の判断
1 申立理由1(進歩性)について
(1)甲1の記載事項及び甲1発明
ア 甲1の記載事項
甲1には、以下の記載がある(下線は当審で付したものである。以下同じ。)。

「【0001】
本発明は、たとえばボールねじ等の送り軸の回転により移動体をねじ送りして特定位置へ位置決めするねじ送り装置において、送り軸の異常を判定する方法に関する。」
「【0010】
図1は、本発明を適用する工作機械の送り軸の位置制御装置のブロック図の一例である。位置指令7と位置検出器15からの現在位置が加算器8に入力され、演算された位置偏差が位置制御器9に入力される。位置制御器9は前記位置偏差に応じた速度指令値を生成する。速度制御器12は前記速度指令値と現在位置を微分器13により演算された速度検出値が加算器11に入力され演算された速度偏差に応じてトルク指令値を生成する。電流制御器14は、入力されるトルク指令に基づき電流を制御する。電流制御器14にてトルク指令値に応じた電流をモータ16に出力し、モータ16はトルクを出力する。モータ16から出力されるトルクは継手17を介してボールねじ20に伝達され、ボールねじ20のナットが移動する。位置検出器15はモータ16の回転に同期されており、検出した位置をフィードバックしていることにより所定の位置へ制御するクローズド制御がなされている。ボールねじ20のネジ軸はブラケット18に組み付けられたサポート軸受19によって支持されており、ボールねじ20には予張力が掛けられている。」
「【0015】
第2の実施形態の異常判定方法について述べる。図4には異常判定を行う手順について示している。周波数特性演算手段5では特定の周波数のみで加振された速度指令値と速度偏差によって得られた応答は検出器から送られてくる送り軸の位置Xに関連付けられる。軸の位置Xに関する応答性G1(X)は所定の軸範囲内で、一定速度で送り軸の移動体を移動させながら測定し、前記範囲内の応答性G1(X)が算出される。予め当該部品の初期状態時の軸の位置Xに関する応答性G0(X)が記憶されている初期状態記憶部22からゲイン特性変化量演算部21に送られ、測定した応答性G1(X)との差分をとることにより、軸の位置Xにおけるゲイン特性変化量G(X)が算出される。これを異常判定部23にて設定されているしきい値Gth(X)と比較照合され、比較して大きい場合は異常の判定、小さい場合は正常の判定とされ、その結果を判定結果記憶部24に送り、上位コントローラに記憶・表示される。
【0016】
判定結果記録部24に記録されている判定結果は上位コントローラにて判定結果のみを表示させることに限られる必要はなく、初期状態の演算データG0(X)、ゲイン特性変化量G(X)、しきい値Gth(X)を必要に応じて周波数系列または軸位置系列データとともに判定結果を表示・警告してもよい。」
「【0020】
1・・上位コントローラ、2・・スイープ信号生成手段、3・・制御部、4・・アクチュエータ、5・・伝達関数または周波数特性演算手段、6・・異常判定手段、7・・位置指令、8・・加算器、9・・位置制御器、10・・加算器、11・・加算器、12・・速度制御器、13・・微分器、14・・電流制御器、15・・位置検出器、16・・モータ、17・・継手、18・・ブラケット、19・・サポート軸受、20・・ボールねじ、21・・ゲイン特性変化量演算部、22・・初期状態記録部、23・・異常判定部、24・・判定結果記録部、25・・適切な予圧が掛かっている初期の状態、26・・サポート軸受が摩耗している状態、27・・送り軸の軸上の摩耗の異常判定される範囲、28・・ボールねじのネジ軸の一部範囲が摩耗している状態、29・・サポート軸受の摩耗やボールねじのナットもしくは玉が摩耗している状態。」

図1


図4


イ 甲1に記載された技術的事項
上記アの記載事項から、次の技術的事項を理解できる。
(ア)工作機械は、ボールねじ20等の送り軸と、送り軸にトルクを出力するモータ16と、モータ16に出力するトルク指令値に応じた電流を制御する電流制御器14、送り軸の位置を検出する位置検出器15、及び、送り軸の現在位置から速度検出値を演算する微分器13を含む制御部3とを備えること(【0001】、【0010】、【0020】、図1)。
(イ)工作機械は、送り軸の異常判定手段6を備えること(【0015】、図4)から、送り軸の異常を判定するシステムが設けられているといえること。
(ウ)周波数特性演算手段5は、所定の軸範囲内で、一定速度で送り軸を移動させながら、制御部3から送られてくる速度指令値と速度偏差によって得られた応答を位置検出器15から送られてくる送り軸の位置Xに関連付けることで応答性G1(X)を算出すること(【0015】)。
(エ)異常判定手段6は、上記(ウ)で算出された応答性G1(X)と、初期状態時の送り軸の位置Xに関する応答性G0(X)との差分をとることにより算出する送り軸の位置Xにおけるゲイン特性変化量G(X)を、しきい値Gth(X)と比較して、大きい場合は、異常の判定とし、その結果を上位コントローラに出力すること(【0015】、図4)。
(オ)異常判定手段6は、軸位置系列データとともに、上記(エ)で判定した判定結果を上位コントローラに出力すること(【0016】)。

ウ 甲1発明
上記イの技術的事項を整理すると、甲1には次の発明が記載されているということができる。

「ボールねじ20等の送り軸と、送り軸にトルクを出力するモータ16と、モータ16に出力するトルク指令値に応じた電流を制御する電流制御器14、送り軸の位置を検出する位置検出器15、及び、送り軸の現在位置から速度検出値を演算する微分器13を含む制御部3とを備える工作機械に設けられ、送り軸の異常を判定するシステムであって、
所定の軸範囲内で、一定速度で送り軸を移動させながら、制御部3から送られてくる速度指令値と速度偏差によって得られた応答を位置検出器15から送られてくる送り軸の位置Xに関連付けることで周波数特性演算手段5にて算出される応答性G1(X)と、初期状態時の送り軸の位置Xに関する応答性G0(X)との差分をとることにより算出する送り軸の位置Xにおけるゲイン特性変化量G(X)を、しきい値Gth(X)と比較して、大きい場合は異常の判定とし、その結果を上位コントローラに出力する異常判定手段6とを備え、
異常判定手段6は、軸位置系列データとともに判定結果を上位コントローラに出力する、送り軸の異常を判定するシステム。」
(以下「甲1発明」という。)

(2)甲2〜3の記載事項
ア 甲2の記載事項
甲2には、送り軸の異常判定について、次の記載がある。
「【0018】この点検サイクルの間、状態監視手段26は、各動作の時間的要素や負荷を監視する。例えば、タレット2をX軸方向に移動させるときの移動開始から等速状態になるまでの加速時間や、等速状態から停止までの減速時間を監視し、かつ点検サイクルの全体または一部の動作が行われる間のサイクルタイムを監視する。また、各軸の負荷電流値を監視する。
【0019】この監視により得た各データを、正常判断手段30により正常状態データ記憶手段29の記憶データと比較し、設定基準に基づいて機械が正常状態であるかどうかを判断する。不具合があると、報知手段31に報知する。」

イ 甲3の記載事項
甲3には、送り軸の異常判定について、次の記載がある。
「【0017】
また、診断を行うにあたっては、送りねじ8に正常な予張力が付与されている状態での所定のストローク動作における第1位置情報と第2位置情報との差の傾き(基準値)Sl(s)を予め測定しておき、診断部13に記憶させておく。それから、送りねじ装置の状態を診断したい所望のタイミング(定期的であってもよいし、不定期であってもよい)において、同様のストローク動作を実行し、その際の第1位置情報と第2位置情報との差の傾きSl(e)を算出する。そして、今回算出したSl(e)が予め記憶しているSl(s)から所定の閾値を超えて低下していると、送りねじ8の予張力が低下した異常状態にあると判断し、たとえばNC装置のモニター等で異常状態にある旨を通知する。なお、送りねじ8の熱変形の影響を避けるため、上述したような測定・診断は、送りねじ装置を停止させてから一定時間以上静止させた状態か、当該状態から所定の態様で所定時間にわたり連続運転した直後を基準状態とし、その基準状態において実施することが望ましい。」

(3)本件発明と甲1発明の対比
本件発明と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「送り軸」、「モータ16」、「モータ16に出力するトルク指令値に応じた電流を制御する電流制御器14を含む制御部3」、「送り軸の位置を検出する位置検出器15」、「送り軸の異常を判定するシステム」はそれぞれ、本件発明の「主軸」、「サーボモータ」、「サーボモータの駆動トルクを制御する数値制御部」、「主軸の速度または位置を検出するエンコーダ」、「主軸の異常を判定するシステム」と、「軸」、「モータ」、「モータの駆動トルクを制御する制御部」、「軸の位置を検出するエンコーダ」、「軸の異常を判定するシステム」である限りにおいて一致する。
そうすると、本件発明と甲1発明とは、「軸と、モータと、前記モータの駆動トルクを制御する制御部と、前記軸の位置を検出するエンコーダを備えた装置に設けられ、前記軸の異常を判定するシステム」という点において一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本件発明は、割出を実行する主軸と、前記主軸に設けられるウォームギヤと、前記ウォームギヤと噛合するウォームねじと、前記ウォームねじを駆動するサーボモータと、前記サーボモータの駆動トルクを制御する数値制御部と、前記主軸の速度または位置を検出するエンコーダとを備える割出ユニットに設けられ、前記主軸の異常を判定するシステムであって、
前記数値制御部によって前記主軸を割出角度0°から360°まで所定速度で正回転させるコマンド生成部と、
前記コマンド生成部による前記主軸の正回転中に前記数値制御部から前記サーボモータへ出力される駆動トルク指令および/または位置フィードバックをモニタし、前記正回転中のモニタ結果と駆動トルク指令および/または位置フィードバックの正常値を対比し、前記正回転中のモニタ結果が前記正常値から逸脱する場合を異常と判定して該判定結果を出力するウォームギヤ異常判定部とを備え、
前記ウォームギヤ異常判定部は、前記サーボモータの前記所定速度と、前記主軸の前記正回転開始時から前記逸脱時までの時間に基づき、もしくは前記位置フィードバックに基づき、前記主軸の割出角度を算出し、前記正常値から逸脱する前記駆動トルク指令に係る割出角度を、異常割出角度として出力する、ウォームギヤ異常判定システムとの発明特定事項を有するのに対し、
甲1発明は、本件発明の上記発明特定事項を有しない点。

(4)相違点の判断
相違点について検討すると、本件発明の発明特定事項とされた、「割出を実行する主軸と、前記主軸に設けられるウォームギヤと、前記ウォームギヤと噛合するウォームねじと、前記ウォームねじを駆動するサーボモータと、前記サーボモータの駆動トルクを制御する数値制御部と、前記主軸の速度または位置を検出するエンコーダとを備える割出ユニットに設けられ、前記主軸の異常を判定するシステム」が、そもそも甲1〜甲3のいずれにも示されておらず、送り軸の異常を判定する甲1発明を「割出ユニット」における「ウォームギヤ」の異常の判定に変更することについての記載も示唆もないから、このような変更をする動機があるといえないのはもちろんのこと、「ウォームギヤ」の異常判定のための具体的な構成である「コマンド生成部」や「ウォームギヤ異常判定部」についての記載も示唆も甲1〜甲3にはないし、このような「コマンド生成部」や「ウォームギヤ異常判定部」を備えるように構成することの動機があるともいえない。
したがって、相違点は、甲1発明及び甲2〜3記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到できたものとはいえない。

(5)申立人の主張について
ア 申立人の主張の概要
申立人は、令和2年6月25日付け手続補正書により補正された請求項1に係る発明(以下、「補正発明1」という。)と、本件発明とは、異常判定の対象に違いが存在するものの、上位概念と下位概念の関係で、発明の趣旨としては実質的に同じである旨を主張している(申立書第6ページ第6行〜第11ページ第18行:空白行を行数に含める。)。
そして、令和2年11月17日付け拒絶理由通知書(甲4)にて、補正発明1に対して拒絶理由(以下「拒絶理由1」という。)が通知されているところ、本件発明と補正発明1とは、発明の趣旨である異常判定の観点において実質的に同じであることから、拒絶理由1は、当然ながら、本件発明にも当て嵌まる旨を主張している(申立書第11ページ第12行〜第14ページ第16行:空白行を行数に含める。)。

イ 申立人の主張の検討
申立人は、本件発明と補正発明1は、実質的に同じである旨主張しているが、異常判定の対象(例えば、ウォームギヤ等。)の違いが存在する以上、実質的に同じと判断することはできない。さらに、本件発明と補正発明1は、異常判定の具体的な内容(例えば、主軸を割出角度0°から360°まで所定速度で正回転させた際の駆動トルク指令や位置フィードバックを正常値と対比すること、及び、異常割出角度を出力すること等。)においても相違するのであるから、なおさら両者が実質的に同じであるということはできない。そうすると、本件発明に拒絶理由1が存在しないことは明らかである。
この点、申立人は、本件発明の発明特定事項とされた「主軸」、「ウォームギヤ」、「ウォームねじ」、「割出ユニット」、「コマンド生成部」、「ウォームギヤ異常判定部」、「ウォームギヤ異常判定システム」について、甲1発明が異常判定の対象とする「ボールねじ20等の送り軸」と同様の現象が「割出ユニット(ロータリーテーブル装置)の主軸に設けられるウォームギヤ」にも発生し得ることを裏付ける文献等の証拠をまったく示していない。そのため、送り軸の異常を判定する甲1発明について、「割出ユニット」における「ウォームギヤ」の異常を判定するよう変更することを動機づけることができない。さらに、仮に甲1発明から「ボールねじ20等の送り軸」と同様に「工作機械」に含まれる「割出ユニットのウォームギヤ」の異常判定を行うこと自体を着想し得たとしても、本件発明として特定されるような異常判定に適した「コマンド生成部」や「ウォームギヤ異常判定部」を備えるように構成することを容易になし得ることを裏付ける「ウォームギヤ」の異常判定の具体的構成を開示した文献等の証拠が示されていない以上、甲1発明及び甲2〜3記載の技術的事項からでは、本件発明を当業者が容易に想到することができたということもできない。
したがって、申立人の主張は採用できない。

(6)申立理由1(進歩性)の小括
以上から、本件発明は、甲1発明及び甲2〜3記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2 申立理由2(サポート要件)について
(1)申立人の主張の概要
申立人は、本件発明が含む「駆動トルク指令および/または位置フィードバックをモニタし、前記正回転中のモニタ結果と駆動トルク指令および/または位置フィードバックの正常値を対比し、」という要件は、例えば、駆動トルク指令のモニタ結果と位置フィードバックの正常値を対比するパターン(以下「パターンA」という。)、位置フィードバックのモニタ結果と駆動トルク指令の正常値を対比する場合(以下「パターンB」という。)を包含しているが、発明の詳細な説明には、パターンA、または、パターンBが記載も示唆もされておらず、本件発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない旨を主張している(申立書第14ページ第19行〜第15ページ第13行:空白行を行数に含める。)。

(2)申立人の主張の検討
上記(1)の本件発明の要件について検討すると、モニタ対象として、「駆動トルク指令および/または位置フィードバック」があり、正常値との対比の対象として、「駆動トルク指令および/または位置フィードバック」があるところ、モニタされるものと対比されるものが同じであり、上記パターンA、パターンBは含まないと解すのが自然といえる。

この点、発明の詳細な説明には、以下の記載がある。

「【0035】
図2に示す位置指令PCMD、速度指令VCMD、駆動トルク指令TCMD、速度フィードバックSPEED、位置フィードバックPOSFといったサーボデータは、少なくとも1種類を対象として、ウォームギヤ異常判定部19のモニタ部によりモニタされる。モニタとは連続して監視することである。
【0036】
ウォームギヤ異常判定部19はサーボデータのモニタ結果に基づき、主軸12が所定の精度を満足するよう割り出されているか否か判定する。ウォームギヤ異常判定部19は、ロータリテーブル装置に内蔵されるものであってもよいし、あるいはロータリテーブル装置外部に設けられ、ネットワーク手段等のデータ通信手段を介して数値制御部18に接続されるものであってもよい。」
「【0041】
駆動トルク指令TCMDの正常値のデータは、正回転の場合と、逆回転の場合と、予め記憶されている。ウォームギヤ異常判定部19は、モニタ結果と正常値を対比してモニタ結果の乱れを発見する。」

これらの記載から、発明の詳細な説明には、駆動トルク指令のモニタ結果と駆動トルク指令の正常値を対比するパターン(以下「パターンC」という。)、位置フィードバックのモニタ結果と位置フィードバックの正常値を対比するパターン(以下「パターンD」という。)、または、駆動トルク指令および位置フィードバックのモニタ結果と駆動トルク指令および位置フィードバックの正常値を対比するパターン(以下「パターンE」という。)が記載されていることを理解できる。
そうすると、本件発明から理解される事項と、発明の詳細な説明に記載される上記の要件が示すパターンC〜Eとは整合するから、本件発明は、発明の詳細な説明に開示された内容といえる。

(3)申立理由2(サポート要件)の小括
以上から、特許請求の範囲の請求項5の記載は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

第5 むすび
以上のとおり、請求項5に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由1〜2によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2022-09-21 
出願番号 P2018-204791
審決分類 P 1 652・ 537- Y (G05B)
P 1 652・ 121- Y (G05B)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 見目 省二
特許庁審判官 中里 翔平
鈴木 貴雄
登録日 2021-12-27 
登録番号 7000295
権利者 株式会社日研工作所
発明の名称 送り軸およびウォームギヤ異常判定システム  
代理人 弁理士法人アイミー国際特許事務所  

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