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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B65G
管理番号 1390055
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-11-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2020-11-09 
確定日 2022-09-30 
事件の表示 上記当事者間の特許第6165455号発明「商品管理システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第6165455号の請求項1〜3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6165455号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成25年2月8日を出願日とする出願であって、平成29年6月30日に請求項1〜3に係る発明について特許権の設定登録がされ、その後令和2年11月9日に請求人上海云拿智能科技有限公司(以下、「請求人」という。)から特許無効審判が請求されたものである。
これに対して、当審から被請求人株式会社フロウ及びサイバーコム株式会社(以下、「被請求人」という。)に対し答弁を求めたところ、被請求人からの答弁はなかったため、本件の審理は、職権により書面審理とし、請求人及び被請求人に、令和3年3月19日付け書面審理通知書を送付し、被請求人に、令和3年3月24日付け無効理由通知書を送付し、請求人に同日付け職権審理結果通知書を送付したところ、被請求人及び請求人からは何ら応答がなかった。
その後、令和3年8月18日付けで審決の予告をしたが、被請求人及び請求人からは応答がなかった。
さらにその後令和4年4月11日付けで審決の予告をしたが、被請求人及び請求人からは応答がなかったものである。

第2 本件発明
本件特許の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明3」という。)は、次のとおりのものである。

[本件発明1]
「商品を陳列することができる複数の商品棚と、該複数の商品棚にそれぞれ備えられ、陳列された商品の重量を測定することができる重量センサと、該重量センサで測定した重量データをインターネットを介して送信する送信手段と、該送信手段によって送信された重量データを受信するwebサーバと、該webサーバにアクセスすることができる管理端末からなる商品管理システムにおいて、前記webサーバは、受信した重量データを時系列に記憶する記憶装置と、該記憶装置に記憶された重量データから重量の増減データを算出する重量増減データ算出装置と、複数種の商品の重量及び商品の陳列されている商品棚を記憶した商品重量データベースと、前記重量増減データ算出装置で算出された重量増減データと前記商品重量データベースに記録された商品の重量に基いて、販売あるいは補充された商品の数量および種類を算出する商品数算出装置とを備えることを特徴とする商品管理システム。」
[本件発明2]
「前記送信手段は、重量データが変化し、かつ、変化後の重量データが一定時間変化しない場合に、重量データをwebサーバに送信することを特徴とする請求項1記載の商品管理システム。」
[本件発明3]
「前記送信手段は、所定時間毎にwebサーバに重量データを送信することを特徴とする請求項1または2記載の商品管理システム。」

第3 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張
請求人は、「特許第6165455号発明の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、審判請求書とともに甲第1号証〜甲第6号証を提出し、以下の無効理由を主張している。

[無効理由]
・本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2〜4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
・本件特許の請求項2に係る発明は、甲第1号証及び甲第2〜5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
・本件特許の請求項3に係る発明は、甲第1号証及び甲第2〜6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

2 証拠方法
請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開2000−48262号公報
甲第2号証:特開2011−76351号公報
甲第3号証:特開2005−276059号公報
甲第4号証:特開2002−316706号公報
甲第5号証:特開平10−162244号公報
甲第6号証:特開2010−277521号公報

第4 当審で通知した無効理由(職権無効理由)の概要
本件発明1〜3は、請求人が証拠方法として提出した甲第1号証に記載された発明、甲第5号証に記載の技術的事項及び周知・慣用の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。

第5 甲各号証に記載の事項
1 甲第1号証
甲第1号証には、以下の記載がある(下線は当審で付した。以下同様。)。
「【0001】
【産業上の利用分野】開示技術は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアー(ディスカントストアーを含む)等の小売り店舗の陳列棚の商品と全店舗の在庫の適正な管理システムの技術分野に属する。」
「【0015】図示態様はスーパーマーケットやコンビニエンスストアー(ディスカントストアーを含む)等の複数の小売店舗を有する情報システム本部における管理態様であり、1はこの出願の発明の要旨の中心を成す当該店舗の商品在庫管理システムであり、当該態様においては、該本部の商品在庫管理システムの態様であり、該店舗のバックヤード等に所定設置されているコンピューター2には、在来態様同様にPoS(Point of Sales)レジ3及び発注端末4が有線又は無線方式にて該コンピューター2にデータ送受信可能に接続されている。
【0016】而して、この出願の発明においては、当該店舗の陳列棚5は次述する如くコンピューター2に対してデータ送信自在に接続されており、
各、店舗のコンピューター2には本部のホストコンピューター6にも電気的に各データを送受信自在に接続されている。
【0017】而して、図1に示す態様においては、陳列棚5は一つのみ示されているが、周知の如く、当該各店舗内には多数の陳列棚5,5…が配列されており、各陳列棚5は各々次述する如くそのデータをコンピューター2に送受信自在に接続されているものである。
【0018】而して、各陳列棚5の所定段数の棚板7には図2の
【イ】,
【ロ】に示す様に該各棚板7に置かれている各商品に対応して当該商品の取出し等による重量変化を個別に検出出来る小型のロードセル等の重量センサー8,8が埋め込み式に
【イ】に示す様に配列セットされており、又、同図2の【ロ】に示す様に、小型のCCDカメラ9,9…が重量センサー8,8同様に個別に商品の移動等の変化を検出出来る様に配列セットされており、又、該各棚板7の前端の端面には、在来態様等の単体で数値を表すディスプレーではなく、当該棚板7の長さと同じ長さのフレキシブルなフリーでロングサイズのプラズマ又は液晶のディスプレー10が添設されており、該ディスプレー10と商品の移動変化を検出するセンサー8,9とはリード線11により、電気的に接続されており、又、当該図2の【ハ】に示す様にディスプレー12には商品各の文字の表示場所11や数字の表示場所12が各商品に対し表示することが出来るように形成され、又、バッファリング(当該文字や数字11,12を記憶することが可能である)機能を有し、コンピューター2にそのデータを送受信自在に接続されている。
【0019】したがって、当該在来態様においては前述した如く発注作業に際し各陳列棚5,5…に多数回の巡回をして商品の売り上げによる欠品状態の検出をすることなく、又、盗難や万引き等によるロス発生の時点も何時誰が当該ロスつながる事態の発生に関わったかをキャッチすることは出来難いものの、当該商品の変化状態を、即ち、棚板7における各商品の陳列状態を常に把握出来る様にされており、又、レジにおける精算のデータをPoS(Point of Sales)3によるコンピューター2への送信と連動させるようにすることが出来るようにされている。
【0020】又、各棚板7に置かれてる商品の総重量又は総形態(CCDカメラの場合)バッファリング機能により、記憶も出来、当該記憶データをコンピューター2に送信することも出来、各陳列棚5の棚板7から商品を顧客が取りだした場合には、当該商品の取りだしによる重量変化や商品の設置形態の変化の変化データをコンピューター2に送信することが出来るようになり、コンピューター2はディスプレー10からの記憶された商品移動情報を受信しそれを時間ごとにファイルする。
【0021】しかして、顧客がレジで購入商品を精算した時に当該商品名や数量のデータがPoS(Point of Sales)3からコンピューター2に送信される、こととディスプレー10からの在庫商品の変化データが送信されることで、その時、当該商品移動データと販売データの照合チェックが行われ、購入商品がレジを通過したことのチェックも行える。」
【図1】

【図2】


2 甲第2号証
甲第2号証には、以下の記載がある。
「【0001】
本発明は、商品重量ファイルを備えるセルフチェックアウトシステム、商品重量ファイル更新方法、および商品重量特定プログラムに関する。」

「【0004】
その不正対策の1つに商品重量のチェックがある。セルフチェックアウト端末は、商品重量ファイルと呼ばれる商品ごとの重量を記録したデータファイル(PLUファイル)を備える。そして、セルフチェックアウト端末は、商品をレジ袋に納める都度、商品の重量と、レジ袋計量値の増分とを比較して比較結果が許容範囲外にあれば警告を発する(たとえば、特許文献1参照)。」
「【0008】
このような、入荷情報として商品重量を予め得ることが困難な商品や、キャンペーンなどを理由に商品重量が変化する商品について、セルフチェックアウトシステムが商品重量を適切に把握することができれば、無用なエラーの発生を防止することができる。
【0009】
そこで、商品重量の適切な把握が困難な商品について、商品重量を適切に把握して商品重量のチェックが可能なセルフチェックアウトシステム、商品重量ファイル更新方法、および商品重量特定プログラムの提供を目的とする。」
「【0024】
そこで、セルフチェックアウトシステム1は、セルフチェックアウト端末100、POS(Point Of Sale)サーバ200、陳列棚サーバ300、陳列棚310、これらを通信可能に接続するネットワーク400を備えて構成される。

「【0048】
陳列棚310は、通信制御部61、商品計量部62を有する。商品計量部62は、陳列棚310にある商品の重量を計量する。通信制御部61は、ネットワーク400と接続し、ネットワーク400と接続するその他の機器との通信を制御する。通信制御部61は、特に、陳列棚サーバ300との間の通信を制御し、陳列棚サーバ300に対して、陳列棚310を特定する情報と、商品計量部62が計量した商品の重量とを、自律的にあるいは陳列棚サーバ300からの要求により通知する。」
【図2】


3 甲第3号証
甲第3号証には、以下の記載がある。
「【0001】
本発明は商品情報の提供システムに関し、特にネットワークを利用した通信販売に好適な商品情報提供システムに関する。」
「【0014】
次に、図2に商品撮像装置104の概略構成も含め、本商品情報提供システムの概略システム構成例を示す。同図によれば、インターネット等のネットワーク201を介して接続された利用者のパーソナルコンピュータ(PC)やホームサーバ等の情報端末202とネット通販のWebサイトを提供するWebサーバ203とがそれぞれ接続され、Webサーバ203には商品撮像装置104と無線通信可能な送受信機204が接続される。」
「【0016】
また、Webサーバ203には、上述したように店舗11が管理運営するネット通販のWebサイトが格納される。そして、店舗11が保有する各商品102についての商品説明、性能、品質、価格、写真画像、映像、音声アナウンス等の商品情報がデジタルデータ化されて構成されたデータベースも格納されており、前記Webサイトからバーコード103にデータ化された前記認識情報に基づく検索が可能である。
【0017】
また、情報端末202は、端末全体を制御する制御手段とネットワーク201との接続をするためのネットワークインターフェースとを有したPC部202aと、PC部202aの状態を表示させたり商品撮像装置104やWebサーバ203から得た各種情報を表示させるための表示部202bと、利用者の話す音声を入力するマイク部202c(第1のマイクロフォン)と、PC部202aで処理されて音声として出力される音声データを拡声させるためのスピーカ部202dとから構成される。」
【図2】


4 甲第4号証
甲第4号証には、以下の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は在庫管理システムに関し、
特に冷蔵庫など家庭用の収納庫における在庫管理システムに関する。」
「【0004】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、この発明は、
収納部内における全ての被収納物を特定する情報及びその重量の情報を記録する記録部と、収納部内における被収納物の総重量の増減変化を検出する検出手段と、検出手段による総重量の減少変化と記録部の記録とに基いて収納部から取出された被収納物を推定する処理部とを有することを特徴とする在庫管理システムを提供する。この構成によれば、初期状態において収納部内における全ての被収納物の情報を記録しておけば、収納部から取出された被収納物が容易に推定できる。」
「【0016】商品の配達先である冷蔵庫5は、商品を冷蔵する収納部6を有し、配達部から配達されるA商品7、B商品8などを収納している。収納部6は区分していないが冷蔵室、チルド室、野菜室、冷凍室などからなる。秤量部9は、収納されている商品を含む収納部6全体の重量を秤量しており、冷蔵室、チルド室、野菜室、冷凍室のいずれにおいて商品の出し入れがあっても、その変化が処理部10に送られる。図1の実施の形態では、各室を区別せず、収納部6全体の重量を秤量しているので、総重量変化があった場合、いずれかの室において商品の出し入れがあったことはわかるが、具体的にどの室におけるものかはわからない。
【0017】なお、別の実施の形態として、各室別に独立してそれぞれ重量変化を秤量するよう構成すれば、各室に入れられる商品の属性から、商品の出し入れの推定はより容易になる。冷蔵庫が大きくなり、かつ収納される商品が多彩になるとともに出し入れも頻繁な場合は、このような実施の形態としてもよい。
【0018】図1の実施の形態に戻って、処理部10は収納部6全体の重量変化を分析し、収納部6における商品の出入り、つまり在庫変化を推定する。処理部10はこの分析および推定を行うためのCPU11および記憶部12を有する。記憶部12は、収納部6内の商品名とその個々の重量を記憶するもので、CPU11に対して分析のための情報を提供するとともに、分析により推定された在庫変化も記憶する。」
「【0073】以上のように、この発明によれば、通常の冷蔵庫の使用に近い商品の出し入れを行うだけでその把握を容易に行うことができる。なお、実施の形態は、家庭の冷蔵庫に基いて説明したが、この発明は任意の収納庫の在庫管理に適用可能である。」
【図1】


5 甲第5号証
甲第5号証には、以下の記載がある。
「【請求項5】重量変化量算出手段は、いずれか1つの計量器の重量測定データが変化したことを検知してからその計量器の重量測定データに一定時間変化がないとき変化量を算出することを特徴とする請求項1,2または3記載の買上商品登録装置。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スーパーマーケット,コンビニエンスストア等の販売店において、売場に陳列されている商品を客が買い求めている間にその買上商品を決済装置に自動登録するようにして決済業務の省力化を図った買上商品登録装置及びこの登録装置を用いた買上商品決済システム
に関する。」
「【0035】ST8にて各計量器12のうちいずれか1つの計量器の重量計測データが変化したことを確認した場合には、その計量器12の重量計測値M1を取込み、収納部別情報ファイル70における当該計量器12のIDコードに対応した確定重量エリアに書込む。そして、この計量器12の重量計測値が一定時間(例えば3秒間)変化しないか監視する。
【0036】ここで、一定時間以内にその計量器12の重量計測データがさらに変化した場合には、その変化後の重量計測値M1を再び取込み、同確定重量エリアに書込むとともに、その確定重量エリアに対応した処理前重量M0を読込む。そして、重量計測値M1と処理前重量M0とを照合し、両者がほぼ一致する場合には、客が商品陳列棚11の当該計量器12が設置されている商品収納エリアに収納された商品を一旦取り上げたが直ぐに元に戻したので、ST6〜ST9の監視状態に戻る。これに対し、重量計測値M1と処理前重量M0とが異なる場合には、再びその重量計測値が一定時間変化しないか監視する。
【0037】こうして、いずれかの計量器12の重量計測データの変化を検知した後、その計測値が一定時間変化しなかった場合には、客が商品陳列棚11の当該計量器12が設置されている商品収納エリアに収納された商品を取出したか、あるいはこの商品収納エリアに商品を戻したので、収納部別情報ファイル70を検索して、当該計量器12のIDコードに対応した商品単位重量Mn,処理前重量M0及び確定重量M1を読込む。そして、処理前重量M0から確定重量M1を減じることにより、当該計量器12が設置された商品収納エリアでの重量変化量ΔMを算出する(重量変化量算出手段)。
【0038】次に、この重量変化量ΔMを商品単位重量Mnで除算し、その商の整数部を、商品収納エリアから取出した商品または商品収納エリアに戻した商品の数量Xとして算出する。さらに、重量変化量ΔMを数量Xで除算し、その商の整数部を、商品収納エリアから取出した商品または商品収納エリアに戻した商品の1個当たりの重量(実単位重量)Mmとして算出する。しかる後、この実単位重量Mmと商品単位重量Mnとを比較する。そして、その重量差が予め設定した許容値(例えば10グラム)以下の場合には、商品収納エリアから取出した商品または商品収納エリアに戻した商品がそのエリアに正規に収納されるべき商品、つまりは収納部情報ファイル70に重量変化した計量器のIDコードに対応して設定された商品コードの商品であると特定されるので、次に、重量変化量ΔMの正負を判断する。
【0039】ここで、重量変化量ΔMが正の場合、つまりは処理前重量M0に対して確定重量Mnが減少方向を示す場合には、商品収納エリアから該当商品を数量Xだけ取出したので、この商品の商品コードと数量Xを客が買い求めた商品のデータとして取得する(買上商品データ取得手段)。そして、この商品コードでRAM43の買上商品登録バッファ63を検索する。ここで、同一の商品コードを含むRF=0のデータが格納されていない場合には、買上商品登録バッファ63に商品コードと、数量Xと、この商品の単価に数量Xを乗じて算出した金額と、戻しフラグRF=0の買上商品登録データを格納する。これに対し、同一の商品コードを含む戻しフラグRF=0の買上商品登録データが格納されていた場合には、その買上商品登録データの数量と金額に今回取得した数量Xと金額を加算する。」
【図1】

【図2】


6 甲第6号証
甲第6号証には、以下の記載がある。
「【0001】
この発明は、店舗内に陳列された複数の商品を管理する商品管理システムに関する。」
「【0032】
ただし、ハカリ11は、重量値データの送信を定期的(例えば、1〜3分おきに)に行う。すなわち、ハカリ11は、タイマ(図示省略)を備え、制御部は、通信部111から無線信号を送信した時点からこのタイマによるカウントを開始し、所定時間(例えば、1〜3分)が経過した時点で、再び重量値データの送信を行う。」

第6 当審の判断
1 甲第1号証に記載の技術的事項
上記甲第1号証に記載の事項より、甲第1号証には次の技術的事項が記載されているといえる。

・店舗内には、商品を陳列することができる多数の陳列棚5が配列されている(【図1】)。
・各陳列棚5の所定段数の棚板7には、各棚板7に置かれている各商品に対応して商品の取出し等による重量変化を個別に検出できる重量センサー8、8・・・がセットされている(段落【0018】)。
・重量センサー8、8・・・は、ディスプレー10と電気的に接続されており、ディスプレー10は、重量センサー8、8・・・により検出された商品の総重量をデータとして記憶するバッファリング機能を有し、当該記憶データをコンピューター2に送信する送信手段を備えている(段落【0018】、【0020】、【0021】)。
・コンピューター2はディスプレー10から送信されたディスプレー10のバッファリング機能に記憶されている記憶データである商品の総重量を受信し、それを時間毎にファイルする(段落【0020】)。
・コンピューター2は、PoS3から送信された販売データとディスプレー10から送信された商品の総重量から得られる商品移動情報とを照合する(段落【0020】、【0021】)。

2 甲第1号証に記載の発明
上記1より、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

[甲1発明]
「商品を陳列することができる多数の陳列棚5と、
各陳列棚5の所定段数の棚板7には、各棚板7に置かれている各商品に対応して商品の取出し等による重量変化を個別に検出できる重量センサー8、8・・・がセットされており、
重量センサー8、8・・・は、ディスプレー10と電気的に接続されており、
ディスプレー10は、重量センサー8、8・・・によって検出された各棚板7に置かれている商品の総重量をデータとして記憶するバッファリング機能を有し、当該記憶データをコンピューター2に送信する送信手段を備え、
コンピューター2はディスプレー10から送信された前記記憶データである商品の総重量を受信し、それを時間毎にファイルし、
コンピューター2は、PoS3から送信された販売データとディスプレー10から送信された商品の総重量から得られる商品移動情報とを照合する、
陳列棚の商品の在庫管理を行うシステム。」

3 甲第4号証に記載の技術的事項
甲第4号証に記載の事項、特に、段落【0001】、【0004】、【0016】及び【0018】より、甲第4号証には、収納部内における全ての被収納物を特定する情報及びその重量情報を記録する記録部と、収納部内における被収納物の総重量の増減変化を検出する検出手段と、検出手段による総重量の減少変化(増減データ)と記録部との記録に基いて収納部から取出された被収納物を推定する処理部とを有する在庫管理システムが記載されているといえる。
また、甲第4号証には、被収納物の特定を容易にするために、上記在庫管理システムにおいて、収納庫を複数に区分し、各区分毎に被収納物の総重量の増減変化を検出する手段を設けたものが、別の実施形態とし記載されている(甲第4号証の段落【0016】及び【0017】を参照。)。
したがって、甲第4号証には、次の技術的事項(以下、「甲4技術的事項」という。)が記載されているといえる。

[甲4技術的事項]
「収納部内における全ての被収納物を特定する情報及びその重量情報を記録する記録部と、収納部内における被収納物の総重量の増減変化を検出する検出手段と、検出手段による総重量の減少変化(増減データ)と記録部との記録に基いて収納部から取出された被収納物を推定する処理部とを有する在庫管理システムであって、
収納部が複数に区分され、各区分毎に被収納物の総重量の増減変化を検出する手段を設けた在庫管理システム」

4 甲第5号証に記載の技術的事項
甲第5号証に記載の事項、特に、甲第5号証の【請求項5】、段落【0035】〜【0038】より、甲第5号証には、次の技術的事項(以下、甲5技術的事項1」という。)が記載されているといえる。

[甲5技術的事項1]
「買上商品登録装置において、重量計測データが変化したことを検知してから一定時間変化がないときに重量変化を算出する技術的事項」

また、甲第5号証の段落【0035】〜【0039】及び【図1】より、甲第5号証には、次の技術的事項(以下、甲5技術的事項2」という。)も記載されているといえる。

[甲5技術的事項2]
「計量器12を設置した商品陳列棚11を備えた買上商品登録装置10において、計量器12によって商品の増減を検出した場合、商品の単位重量(商品の重量)及び商品収納エリア(商品の陳列されている商品棚)を記憶したファイルを備えたストアコンピュータ21(サーバ)が、係る商品の単位重量と、商品の移動情報(重量の増減データ)とに基づいて、増減した商品の商品名と個数を特定する技術的事項」

5 請求人の主張する無効理由について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「多数」、「陳列棚5」、「重量センサー8、8・・・」及び「商品の総重量」の「データ」は、それぞれ、本件発明1の「複数」、「商品棚」、「重量センサ」及び「重量データ」に相当する。
甲1発明の「各陳列棚5の所定段数の棚板7には、各棚板7に置かれている各商品に対応して商品の取出し等による重量変化を個別に検出できる重量センサー8、8・・・がセットされて」いることは、重量センサー8、8・・・が商品取りだしによる重量の変化、すなわち、取りだされた商品の重量を検出し、それを重量変化としてとらえているといえるから(甲第1号証の段落【0018】、【0020】を参照。)、本件発明1の「該複数の商品棚にそれぞれ備えられ、陳列された商品の重量を測定することができる重量センサ」を備えることに相当する。
甲1発明の「記憶データ」は、「ディスプレー10」の「バッファリング機能」によって、商品の総重量をデータとして記憶したものであるから、本件発明1の「重量データ」に相当する。
したがって、甲1発明の「ディスプレー10は、重量センサー8、8・・・によって検出された各棚板7に置かれている商品の総重量をデータとして記憶するバッファリング機能を有し、当該記憶データをコンピューター2に送信する送信手段を備え」ることは、本件発明1の「該重量センサで測定した重量データをインターネットを介して送信する送信手段」が備えられていることとの対比において、「該重量センサで測定した重量データを送信する送信手段」が備えられているとの限度で一致する。
甲1発明の「コンピューター2」は、本件発明1の「webサーバ」との対比において、「サーバ」の限度で一致する。
したがって、甲1発明の「前記記憶データである商品の総重量を受信」する「コンピューター2」は、本件発明1の「該送信手段によって送信された重量データを受信するwebサーバ」との対比において、「該送信手段によって送信された重量データを受信するサーバ」との限度で一致する。
甲1発明の「コンピューター2」が「商品の総重量を受信し、それを時間毎にファイル」することは、コンピューター2が商品の総重量というデータを時系列的に記憶装置に記憶することといえるから、本件発明1の「前記Webサーバは、受信した重量データを時系列的に記憶する記憶装置」「を備える」こととの対比において、「サーバは、受信した重量データを時系列的に記憶する記憶装置」「を備える」との限度で一致する。
甲1発明の「陳列棚の商品の在庫管理を行うシステム」は、本件発明1の「商品管理システム」に相当する。
以上のとおりであるので、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりとなる。

[一致点]
「商品を陳列することができる複数の商品棚と、該複数の商品棚にそれぞれ備えられ、陳列された商品の重量を測定することができる重量センサと、該重量センサで測定した重量データを送信する送信手段と、該送信手段によって送信された重量データを受信するサーバとからなる商品管理システムにおいて、前記サーバは、受信した重量データを時系列に記憶する記憶装置を備える商品管理システム。」

[相違点1]
本件発明1では、「サーバ」が「Webサーバ」であり、当該Webサーバとの通信を「インターネットを介して」行っているのに対し、甲1発明では「サーバ」が「コンピューター2」であり、当該コンピューター2との通信手段については特定されていない点。
[相違点2]
本件発明1では、「webサーバにアクセスすることができる管理端末」を有するのに対し、甲1発明ではコンピューター2にアクセスすることができる管理端末に相当する構成を有しているとは特定されていない点。
[相違点3]
本件発明1では、「webサーバ」が「該記憶装置に記憶された重量データから重量の増減データを算出する重量増減データ算出装置と、複数種の商品の重量及び商品の陳列されている商品棚を記憶した商品重量データベースと、前記重量増減データ算出装置で算出された重量増減データと前記商品重量データベースに記録された商品の重量に基いて、販売あるいは補充された商品の数量および種類を算出する商品数算出装置とを備える」ものであるのに対し、甲1発明では「コンピューター2」は「PoS3から送信された販売データとディスプレー10から送信された商品の総重量から得られる商品移動情報を照合する」ものである点。

イ 判断
(ア)相違点1について
遠隔した場所にあるコンピューターに対して、インターネットを介して通信する技術は、甲第3号証にもあるように、当業者には広く採用されている周知・慣用の技術的事項である。
とするならば、甲1発明のディスプレー10とコンピューター2との間の通信手段をインターネットを介したものとすることは、当業者であれば容易に採用しうる、単なる周知・慣用の技術的事項の適用にすぎないことといえる。
そして、甲1発明のディスプレー10とコンピューター2との間の通信手段をインターネットを介したものとすると、コンピューター2はwebサーバとして構成されることとなる。
(イ)相違点2について
ネットワーク上に設置されたサーバにアクセスすることができる管理用の端末を設けることは、当業者には、周知・慣用の技術的事項であるといえるから(請求人の提出した、甲第2号証及び甲第3号証を参照。)、甲1発明において、コンピューター2にアクセスすることができる管理用端末を有するよう構成することは、当業者であれば容易に想到し得たことといえる。
(ウ)相違点3について
甲1発明の「コンピューター2」は、「商品の総重量」「を時間毎にファイルし」、「PoS3から送信された販売データと」商品の総重量から得られる商品移動情報を照合することによって、陳列棚5の商品の在庫管理、すなわち商品の特定を行っている。ここで、商品の特定のためには、取りだされた重量、すなわち、減少重量を算出する必要があるから、甲1発明においても、取りだされた商品の特定のために、時間毎に時系列に記憶された商品の総重量から減少重量を算出する算出装置を備えているといえる。
一方、上記3のとおり、甲第4号証には、甲4技術的事項、すなわち、「収納部内における全ての被収納物を特定する情報及びその重量情報を記録する記録部と、収納部内における被収納物の総重量の増減変化を検出する検出手段と、検出手段による総重量の減少変化(増減データ)と記録部との記録に基いて収納部から取出された被収納物を推定する処理部とを有する在庫管理システムであって、収納部が複数に区分され、各区分毎に被収納物の総重量の増減変化を検出する手段を設けた在庫管理システム」が記載されている。
甲1発明も甲4技術的事項も、商品棚の品物を商品棚の重量変化を利用して特定するという技術であるから、甲1発明において甲4技術的事項を適用し、陳列棚5の被収容商品を特定する情報及び商品の重量に関する情報(商品重量データベース)を備え、甲1発明の商品の総重量に基づいて取りだされた減少重量を算出し、この減少重量と陳列棚5の被収容商品を特定する情報及び商品の重量に関する情報とに基づいて、陳列棚5の商品を特定(取りだされた商品の数量と種類を特定)する構成となすことは当業者であれば容易に想到し得たものであるといえる。
ここで、甲1発明は、「多数の陳列棚5」を持つ陳列棚の商品の在庫管理を行うシステムである。これに対し、甲4技術的事項も、甲1発明と同様に「収納部が複数に区分され、各区分毎に被収納物の総重量の増減変化を検出する手段を設け」ているものでもある。かかる甲4技術的事項において、被収納物の総重量の増減変化を検出する手段が各区分毎に設けられていることを勘案すると、被収納物がどの区分に収納されているかという情報、すなわち、各区分の被収納物を特定する情報があれば効率よく被収納物を特定することができることが当業者には容易に認識できるといえる。
してみれば、甲1発明に甲4技術的事項を適用する際に、複数に区分された陳列棚5の被収容商品を特定する情報について、どの棚にどの商品が陳列されているかという情報を加味することは、当業者であれば容易に想到し得たことであるといえる(なお、在庫管理システムにおいて商品棚が複数である場合に、被収納物に関する情報として収納先の商品棚に関する情報を含むものとすることは、例えば、甲第5号証の段落【0019】及び【図2】にあるように、当業者には周知・慣用であるといえる。)。
したがって、甲1発明において、相違点3に係る本件発明1の構成と成すことは、甲4技術的事項に基いて当業者が容易に想到し得たことといえる。
(エ)作用効果について
本件発明1の奏する作用効果は、甲1発明、甲4技術的事項及び周知・慣用の技術的事項の奏する作用効果から当業者であれば予測しうるものであって、格別顕著なものとはいえない。
(オ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明、甲4技術的事項及び周知・慣用の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更に「前記送信手段は、重量データが変化し、かつ、変化後の重量データが一定時間変化しない場合に、重量データをwebサーバに送信すること」という発明特定事項を付加したものである。
そうすると、本件発明2と甲1発明とは、上記(1)アの一致点で一致し、相違点1〜3で相違するとともに、さらに、次の点で相違する。

[相違点4]
本件発明2は、「前記送信手段は、重量データが変化し、かつ、変化後の重量データが一定時間変化しない場合に、重量データをwebサーバに送信する」ものであるのに対し、甲1発明の「送信手段」は、かかる点について特定されていない点。

イ 判断
相違点1〜3については、上記(1)イのとおりである。
相違点4について、上記4のとおり甲第5号証には、甲5技術的事項1が記載されているといえる。
甲5技術的事項1は、買上商品登録装置という、商品を管理する商品管理システムにおける商品重量の計測を行う技術に関するものであり、甲1発明の陳列棚の商品の在庫管理を行うシステムにおける「重量センサー8、8・・・」が、商品の重量を計測するものであるという点で、その技術分野及び機能が同じであるといえる。
したがって、甲1発明において、甲5技術的事項1を適用し、相違点4に係る本件発明2の構成となすことは当業者であれば容易に想到し得たものである。
よって、本件発明2は、甲1発明、甲4技術的事項、甲5技術的事項1及び周知・慣用の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明3について
ア 対比
本件発明3は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を全て含み、更に、「前記送信手段は、所定時間毎にwebサーバに重量データを送信すること」という発明特定事項を付加したものである。
そうすると、本件発明3と甲1発明とは、上記(1)アの一致点で一致し、上記(1)アの相違点1〜3、又は、上記(2)アの相違点4を加えた相違点1〜4で相違するとともに、さらに、次の点で相違する。

[相違点5]
本件発明3は、「前記送信手段は、所定時間毎にwebサーバに重量データを送信する」ものであるのに対し、甲1発明の「送信手段」は、かかる点について特定されていない点。

イ 判断
相違点1〜3については、上記(1)イ、相違点4については、上記(2)イのとおりである。
相違点5について、甲1発明において、商品の総重量の変化がない場合に加え、「送信手段」が故障を起こしている場合にも、「送信手段」からの送信がないことは当業者であれば容易に認識しうる事項といえる。そして、そのどちらかを判別する必要があることも当業者であれば容易に認識しうる事項であり、そのために、甲1発明において、商品の総重量の変化がない場合にも、所定時間毎に商品の総重量データを送信するように構成することは、当業者であれば容易に想到しうることである。
なお、甲第6号証には、商品管理システムにおいて、ハカリ11で取得した商品6の重量データを定期的に送信する技術的事項が記載されている(段落【0001】、【0032】を参照。)。
したがって、本件発明3は、甲1発明、甲4技術的事項及び周知・慣用の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。あるいは、甲1発明、甲4技術的事項、甲5技術的事項1及び周知・慣用の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 当審で通知した無効理由(職権無効理由)について
(1)本件発明1について
ア 対比
甲1発明は、上記2のとおりであるから、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は上記5(1)アのとおりとなる。

イ 判断
(ア)相違点1について
相違点1については、上記5(1)イ(ア)と同じ理由により、甲1発明において、ディスプレー10とコンピューター2との間の通信手段をインターネットを介したものとすることは、当業者であれば容易に採用しうる、単なる周知・慣用の技術的事項の適用にすぎないことといえる。
(イ)相違点2について
相違点2については、上記5(1)イ(イ)と同じ理由により、甲1発明において、コンピューター2にアクセスすることができる管理用端末を有するよう構成することは、当業者であれば容易に想到し得たことといえる。
(ウ)相違点3について
甲1発明の「コンピューター2」は、「商品の総重量」「を時間毎にファイルし」、「PoS3から送信された販売データと」商品移動情報を照合することによって、陳列棚5の商品の在庫管理、すなわち商品の特定を行っている。ここで、商品の特定には、取りだされた重量、すなわち、減少重量を算出する必要があるから、甲1発明においても、取りだされた商品の特定のために、時間毎に時系列に記憶された商品の総重量から減少重量を算出する算出装置を備えているといえる。
また、甲1発明は、「多数の陳列棚5」を持つ陳列棚の商品の在庫管理を行うシステムであるところ、多数の陳列棚5のうちのどの棚にどの商品が陳列されているかという情報、すなわち、商品が陳列されている商品棚に関する情報を記録しておけば、効率のよい商品の特定が可能であることは、当業者であれば容易に認識できるといえる。
ここで、上記4のとおり甲第5号証には、「計量器12を設置した商品陳列棚11を備えた買上商品登録装置10において、計量器12によって商品の増減を検出した場合、商品の単位重量(商品の重量)及び商品収納エリア(商品の陳列されている商品棚)を記憶したファイルを備えたストアコンピュータ21(サーバ)が、係る商品の単位重量と、商品の移動情報(重量の増減データ)とに基づいて、増減した商品の商品名と個数を特定する技術的事項」という甲5技術的事項2が記載されている。
甲1発明も甲5技術的事項2も、商品棚の品物を商品棚の重量変化を利用して特定するという技術であるから、甲1発明において甲5技術的事項2を応用し、陳列棚5毎の被収容商品を特定する情報及び商品の重量に関する情報(商品重量データベース)を備え、甲1発明の商品の総重量に基づいて取りだされた減少重量を算出し、この減少重量と陳列棚5毎の被収容商品を特定する情報及び商品の重量に関する情報とに基づいて、陳列棚5の商品の特定(取りだされた商品の数量と種類を特定)する構成となすことは当業者であれば容易に想到し得たものであるといえる。
(エ)作用効果について
本件発明1の奏する作用効果は、甲1発明、甲5技術的事項2及び周知・慣用の技術的事項の奏する作用効果から当業者であれば予測しうるものであって、格別顕著なものとはいえない。
(オ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明、甲5技術的事項2及び周知・慣用の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明2について
本件発明2と甲1発明との一致点及び相違点は、上記5(1)ア及び5(2)アの一致点及び相違点1〜4となる。
そして、相違点1及び2についての判断は上記5(1)イ(ア)及び(イ)、相違点3についての判断は上記(1)イ(ウ)、及び相違点4についての判断は上記5(2)イのとおりとなる。
したがって、本件発明2は、甲1発明、甲5技術的事項1、2及び周知・慣用の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明3について
本件発明3と甲1発明との一致点及び相違点は、上記5(1)ア、5(2)ア及び5(3)アの一致点及び相違点1〜5となる。
そして、相違点1及び2についての判断は上記5(1)イ(ア)及び(イ)、相違点3についての判断は上記(1)イ(ウ)、相違点4についての判断は上記5(2)イ、及び相違点5についての判断は上記5(3)イのとおりとなる。
したがって、本件発明3は、甲1発明、甲5技術的事項2及び周知・慣用の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。あるいは、本件発明3は、甲1発明、甲5技術的事項1、2及び周知・慣用の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 まとめ
以上のとおりであるから、請求人の主張した無効理由及び当審で通知した無効理由により本件発明1〜3についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるといえるから、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。


 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-08-03 
結審通知日 2022-08-08 
審決日 2022-08-19 
出願番号 P2013-023238
審決分類 P 1 113・ 121- Z (B65G)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 平田 信勝
特許庁審判官 段 吉享
尾崎 和寛
登録日 2017-06-30 
登録番号 6165455
発明の名称 商品管理システム  
代理人 幸谷 泰造  

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