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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1390110
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-31 
確定日 2022-10-13 
事件の表示 特願2017−531408「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日国際公開、WO2017/170211〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)3月24日(優先権主張 2016年(平成28年)3月31日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年 4月23日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 8月25日 :意見書
令和 2年12月23日付け:拒絶査定
令和 3年 3月31日 :審判請求書

2 本願発明の認定
本願の請求項に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「バックライト光源、光源側偏光板、液晶セル、及び視認側偏光板を有する液晶表示装置であって、
前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、各ピークの半値幅が5nm以上であり、
視認側偏光板は、1500〜30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムA、及びポリエステルフィルムAの少なくとも一方の面に積層された反射防止層及び/又は低反射層を含み
光源側偏光板は、ポリエステルフィルムBを含み、
ポリエステルフィルムBのリタデーションをReBとし、バックライト光源の600nm以上780nm以下の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をRx、半値幅をRyとした場合に、
Ry/〔Rx/(ReB/Rx)〕が0.55以上である、
液晶表示装置。」

3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった文献である特開2015−215577号公報(以下「引用文献」という。)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものを含むものである。

4 引用文献の記載事項及び引用発明の認定
(1)原査定が引用した本願の優先日前に頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった文献である引用文献(特開2015−215577号公報)には、次の記載がある。
ア 「【特許請求の範囲】」、
「少なくとも400〜500nmの波長帯域に発光中心波長を有する青色の発光ピークと500〜600nmの波長帯域に発光中心波長を有する緑色の発光ピークと600〜680nmの波長帯域に発光中心波長を有する赤色の発光ピークを有する光を出射する光源ユニットと、光源ユニット側の偏光板と、液晶セルと、視認側の偏光板とをこの順で含む液晶表示装置であって、
前記光源ユニットが出射する光は、緑色および赤色の発光ピークの半値全幅が20nm以上であり、波長460nm〜520nmの間に少なくともひとつの極小値L1を有し、波長520nm〜560nmの間に少なくともひとつの極大値L2を有し、波長560nm〜620nmの間に少なくともひとつの極小値L3を有し、
前記極小値L1および前記極小値L3の値が前記極大値L2の35%未満であり、
前記光源ユニット側の偏光板および前記視認側の偏光板のうち少なくとも一方が偏光子と、前記偏光子の液晶セルから遠い側の表面に配置された第1の保護フィルムとを有し、
前記第1の保護フィルムの波長589nmにおける面内方向のレタデーションRe(589)が5000nm以上であり、
前記第1の保護フィルムの温度40℃、相対湿度90%における透湿度が100g/m2/day以下である液晶表示装置。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】」、
「しかしながら、特許文献2および3に開示されている液晶表示装置は、連続的な発光スペクトルを有する白色LEDを光源としているため、表示画像の色再現性が低いという問題があった。
このように、液晶表示装置の表示品位向上のために色再現性を高め、液晶表示装置を高温高湿環境下に保存した後に点灯した場合の表示ムラを抑制し、虹ムラの発生を抑制された液晶表示装置は、これまでのところ見出されていない。」(【0009】)、
「本発明が解決しようとする課題は、色再現性が高く、液晶表示装置を高温高湿環境に保存した後に点灯した場合に生じる表示ムラが抑制され、虹ムラの発生抑制された液晶表示装置を提供することである。」(【0010】)

ウ 「【発明の効果】」、
「本発明によれば、色再現性が高く、液晶表示装置を高温高湿環境に保存した後に点灯した場合に生じる表示ムラが抑制され、虹ムラの発生が抑制された液晶表示装置を提供することができる。」(【0013】)

エ 「【発明を実施するための形態】」、
「本発明の液晶表示装置は、少なくとも400〜500nmの波長帯域に発光中心波長を有する青色の発光ピーク(以下、青色の発光ピークと略す)と500〜600nmの波長帯域に発光中心波長を有する緑色の発光ピーク(以下、緑色の発光ピークと略す)と600〜680nmの波長帯域に発光中心波長を有する赤色の発光ピーク(以下、赤色の発光ピークと略す)を有する光を出射する光源ユニットと、光源ユニット側の偏光板と、液晶セルと、視認側の偏光板とをこの順で含む液晶表示装置であって、光源ユニットが出射する光は、緑色および赤色の発光ピークの半値全幅が20nm以上であり、波長460nm〜520nmの間に少なくともひとつの極小値L1を有し、波長520nm〜560nmの間に少なくともひとつの極大値L2を有し、波長560nm〜620nmの間に少なくともひとつの極小値L3を有し、極小値L1および極小値L3の値が極大値L2の35%未満であり、光源ユニット側の偏光板および視認側の偏光板のうち少なくとも一方が偏光子と、偏光子の液晶セルから遠い側の表面に配置された第1の保護フィルムとを有し、第1の保護フィルムの波長589nmにおける面内方向のレタデーションRe(589)が5000nm以上であり、第1の保護フィルムの温度40℃、相対湿度90%における透湿度が100g/m2/day以下である。
このような構成により、本発明の液晶表示装置は、色再現性が高く、液晶表示装置を高温高湿環境に保存した後に点灯した場合に生じる表示ムラが抑制され、虹ムラの発生が抑制される。
通常の液晶表示装置においては、高湿環境下で水分を含んだ偏光板が乾燥していく過程において、偏光板が収縮することで液晶セルの反りが発生し、液晶セルの一部が液晶表示装置の筐体に接触する等し、表示ムラを発生させる場合がある。本発明の液晶表示装置は、透湿度の低い保護フィルムを有することによって、偏光子への水分の浸入を抑制、または偏光子からの水分の抜けを抑制し、偏光板の収縮を抑えることができるため、高温高湿環境下での保存した後に点灯したときの液晶セルの反りを抑制し、それに起因する表示ムラを抑制することができる。
また、偏光子を透過した光は直線偏光となるが、保護フィルムが大きなReを有する場合、光は保護フィルムの位相差によって、波長毎に種々の位相変動を受ける。さらに保護フィルムと空気との界面において、光はその位相に応じて異なる反射率を有するため、波長毎に光の透過率が異なることになり、これが虹ムラの原因となる。これに対し、本発明では、上述の第1の保護フィルムのReを特定の範囲以上とすることによって、虹ムラを抑制することができる。」(【0016】)、
「<光源ユニット>
本発明の液晶表示装置は、少なくとも青色と緑色と赤色の発光ピークを有する光を出射する光源ユニット(バックライトユニットと呼ばれることもある)を有する。
本発明の液晶表示装置の光源ユニットが出射する光(言い換えると光源ユニットの発光スペクトル)は、少なくとも青色と緑色と赤色の発光ピークを有する光であり、緑色、および赤色の発光ピークの半値全幅が20nm以上であり、波長460nm〜520nmの間に少なくともひとつの極小値L1を有し、波長520nm〜560nmの間に少なくともひとつの極大値L2を有し、波長560nm〜620nmの間に少なくともひとつの極小値L3を有し、極小値L1および極小値L3の値が極大値L2の35%未満である。
緑色および赤色の発光ピークの半値全幅は20nm以上60nm以下であることが好ましく、20nm以上40nm以下であることがより好ましく、25nm以上40nm以下であることが特に好ましい。緑色および赤色の発光ピークの半値全幅が小さいと、液晶表示装置の色再現性を向上させることができるため、好ましい。また、半値全幅が20nm以上であると、5000nm以上のReを有する第1の保護フィルムを用いることによって、虹ムラの発生を抑制することができるため、好ましい。
なお、青色の発光ピークの半値全幅は10nm以上40nm以下であることが好ましく、20nm以上40nm以下であることがより好ましい。
極小値L1および極小値L3の値は極大値L2の20%未満であることが好ましく、10%未満であることがより好ましい。極小値L1および極小値L3の値が極大値L2の35%未満であると、光源ユニットが出射する光の青色、緑色、および赤色の発光ピークがそれぞれ分離され、このように各色の発光ピークがそれぞれ分離された光を用いることで液晶表示装置の色再現性を向上させることができるため、好ましい。」(【0017】)、
「上記光源ユニットは本発明の趣旨に反しない限り、光源ユニットが有する発光部材に制限はない。光源ユニットは発光部材として、青色発光ダイオード、緑色発光ダイオードおよび赤色発光ダイオードを有している三色LED方式としてもよいし、青色発光ダイオードまたは紫外線発光ダイオードと、青色発光ダイオードまたは紫外線発光ダイオードからの光によって励起されて発光できる蛍光体とを有していてもよい。その中でも、コスト低減の観点から、光源ユニットは発光部材として、青色発光ダイオードまたは紫外線発光ダイオードと、青色発光ダイオードまたは紫外線発光ダイオードからの光によって励起されて発光できる蛍光体とを有していることが好ましい。光源ユニットに青色発光ダイオードを使用する場合には、蛍光体として青色発光ダイオードからの光によって励起されてそれぞれ緑色に発光する蛍光体および赤色に発光できる蛍光体を有していることが好ましい。一方、光源ユニットに紫外線発光ダイオードを使用する場合には、蛍光体として紫外線色発光ダイオードからの光によって励起されてそれぞれ青色に発光する蛍光体、緑色に発光する蛍光体および赤色に発光できる蛍光体を有していることが好ましい。
光源ユニットの内部では、前述の蛍光体は青色発光ダイオードまたは紫外線発光ダイオードの内部に封入されていてもよいし、ガラスチューブの内部に封入した蛍光体を青色発光ダイオードまたは紫外線発光ダイオードの発光が当たるように配置してもよいし、蛍光体を含むフィルムを青色発光ダイオードまたは紫外線発光ダイオードの発光が当たるように配置してもよい。その中でも、光源ユニットの内部では、熱による蛍光体の劣化を防止するため、ガラスチューブの内部に封入した蛍光体を青色発光ダイオードまたは紫外線発光ダイオードの発光が当たるように配置するか、または、蛍光体を含むフィルムを青色発光ダイオードまたは紫外線発光ダイオードの発光が当たるように配置することが好ましい。
前述の蛍光体は量子ドットを含んでいることが好ましい。量子ドットは、ナノメートルサイズの半導体粒子である。量子ドットを含む蛍光体は、その蛍光体が発光する色の光の発光ピークの半値全幅を小さくすることが可能であり、そのため量子ドットを含む蛍光体を光源ユニットの内部に用いると液晶表示装置の色再現性を向上させることができ、好ましい。」(【0019】)、
「図2は、一般的な白色LEDを用いた光源ユニットの発光スペクトルである。白色LEDは通常、青色発光ダイオードの内部に、黄色に発光する蛍光体、または緑色と赤色に発光する蛍光体(好ましくは有機蛍光体)を封入して作製される。この場合、白色LEDを用いた光源ユニットの発光スペクトルは、緑色および赤色の発光ピークの半値全幅は20nm以上となり、そのため一般に白色LEDを用いた液晶表示装置では、第1の保護フィルムとして高いReを有するフィルムを用いた場合に、虹ムラが抑制される。一方、波長460nm〜520nmの間、および波長560nm〜620nmの間に極小値を有さないか、もしくは極小値が波長520nm〜560nmの間の極大値L2に比べて大きいため、青色、緑色および赤色の発光の分離が不十分となり、その結果、一般的な白色LEDを用いた光源ユニットを有する液晶表示装置よりも、本発明の液晶表示装置に用いる液晶表示装置の方が色再現性が良好となる。」(【0023】)、

「図3は、量子ドットを含む蛍光体を用いた光源ユニットの発光スペクトルである。量子ドット蛍光体を含む光源ユニットの発光スペクトルは、一般的に、緑色および赤色の発光ピークの半値全幅が20nm以上であり、波長460nm〜520nmの間に少なくともひとつの極小値L1を有し、波長520nm〜560nmの間に少なくともひとつの極大値L2を有し、波長560nm〜620nmの間に少なくともひとつの極小値L3を有し、L1、およびL3の値がL2の35%未満であるため、本発明の液晶表示装置の光源ユニットとして好適に使用することができる。
なお、発光部材として青色発光ダイオード、緑色発光ダイオードおよび赤色発光ダイオードを有する光源ユニットの発光スペクトルは図示していないが、量子ドットを含む蛍光体を用いた光源ユニットの発光スペクトルに類似する発光スペクトルとなるように調整することができる。」(【0024】)、

「<偏光板>
本発明の液晶表示装置は、光源ユニット側の偏光板および視認側の偏光板を有し、光源ユニット側の偏光板および視認側の偏光板のうち少なくとも一方が偏光子と、偏光子の液晶セルから遠い側の表面に配置された第1の保護フィルムとを有する。
本発明の液晶表示装置は、少なくとも視認側の偏光板が第1の保護フィルムを有することが好ましい。
なお、本発明の液晶表示装置は、光源ユニット側の偏光板が第1の保護フィルムを有していても、有していなくてもよい。また、光源ユニット側の偏光板として、公知の液晶表示装置に用いられている光源ユニット側の偏光板を用いてもよい。」(【0025】)、
「本発明の液晶表示装置の偏光板は、第1の保護フィルムが後述の偏光子側易接着層を有する場合、第1の保護フィルムの偏光子側易接着層側と偏光子とを接着剤を介して貼り合わせて作製することができる。
接着剤としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリブチルアクリレート等のアクリル系化合物、グリシジル基やエポキシシクロヘキサンに例示される脂環式エポキシ基を有するエポキシ系化合物等が挙げられる。
以下、第1の保護フィルムを含む偏光板を構成する各部材の好ましい態様について説明する。」(【0026】)、
「(第1の保護フィルム)
第1の保護フィルムは、液晶表示装置の液晶セルの両面に配置された光源ユニット側の偏光板と視認側の偏光板の少なくとも一方における、偏光子の液晶セルから遠い側の表面に配置され、波長589nmにおける面内方向のレタデーションRe(589)が5000nm以上であり、温度40℃、相対湿度90%における透湿度が100g/m2/day以下である。
以下、第1の保護フィルムの好ましい態様について説明する。」(【0027】)、
「−特性−
−−位相差−−
第1の保護フィルムは、波長589nmにおける面内方向のリターデーションRe(589)が5000nm以上であり、7000〜30000nmの範囲であることが好ましく、8000〜30000nmであることがさらに好ましい。
Re(589)を上記範囲内とすることにより、第1の保護フィルムを液晶表示装置に組み込んだ際に、虹ムラの発生を抑制することができる。なお、虹ムラの発生を抑制するための第1の保護フィルムのRe(589)には上限がないが、一般にRe(589)を30000nmより大きくするためにはフィルムを厚くする必要があり、近年の液晶表示装置の薄型化のトレンドの観点からは30000nm以下であることが好ましい。
また、光源ユニットの緑色および赤色の発光ピークの半値全幅が小さい場合(例えば20〜30nm程度の場合)に虹ムラの発生を抑制する観点からは、Re(589)が10000〜30000nmであることが好ましく、12000〜30000nmであることがより好ましく、14000〜30000nmであることが特に好ましい。」(【0028】)、
「−−ポリエステル樹脂−−
第1の保護フィルムは、ポリエステル樹脂を主成分として含むポリエステルフィルムであることが好ましい。また、第1の保護フィルムが、少なくとも一軸方向に延伸されたポリエステルフィルムであることが好ましい。
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。中でも、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましく用いられる。材料コストの観点からは、ポリエチレンテレフタレートを用いることがより好ましく、すなわち本発明の液晶表示装置は、第1の保護フィルムが、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。一方、薄膜化したときに同じ膜厚での透湿度をより小さくでき、湿熱経時後の表示ムラをより改善できる観点からは、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを用いることがより好ましい。」(【0037】)、
「−ハードコート層−
第1の保護フィルムは、少なくとも片面にハードコート層を有していてもよい。この場合、フィルムの耐傷性を向上させることができる。また、第1の保護フィルムは反射防止フィルムの支持体として用いることもできる。高精細、高品位化された液晶表示装置の場合には、上記の防塵性の他に、表示面での外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するため反射防止フィルムを用いることが好ましい。
ハードコート層の組成および形成方法としては、特開2000−111706号公報を参考にすることができ、この公報の内容は本発明に組み込まれる。」(【0054】)

(2)上記(1)によれば、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付してある。)。
「少なくとも400〜500nmの波長帯域に発光中心波長を有する青色の発光ピーク(以下、青色の発光ピークと略す)と500〜600nmの波長帯域に発光中心波長を有する緑色の発光ピーク(以下、緑色の発光ピークと略す)と600〜680nmの波長帯域に発光中心波長を有する赤色の発光ピーク(以下、赤色の発光ピークと略す)を有する光を出射する光源ユニットと、光源ユニット側の偏光板と、液晶セルと、視認側の偏光板とをこの順で含む液晶表示装置であって、光源ユニットが出射する光は、緑色および赤色の発光ピークの半値全幅が20nm以上であり、波長460nm〜520nmの間に少なくともひとつの極小値L1を有し、波長520nm〜560nmの間に少なくともひとつの極大値L2を有し、波長560nm〜620nmの間に少なくともひとつの極小値L3を有し、極小値L1および極小値L3の値が極大値L2の35%未満であり、光源ユニット側の偏光板および視認側の偏光板のうち少なくとも一方が偏光子と、偏光子の液晶セルから遠い側の表面に配置された第1の保護フィルムとを有し、第1の保護フィルムの波長589nmにおける面内方向のレタデーションRe(589)が5000nm以上であり、第1の保護フィルムの温度40℃、相対湿度90%における透湿度が100g/m2/day以下である液晶表示装置であって、(【0016】)
青色の発光ピークの半値全幅は10nm以上40nm以下であり、(【0017】)
光源ユニット側の偏光板および視認側の偏光板を有し、光源ユニット側の偏光板および視認側の偏光板のうち少なくとも一方が偏光子と、偏光子の液晶セルから遠い側の表面に配置された第1の保護フィルムとを有し、
少なくとも視認側の偏光板が第1の保護フィルムを有し、
光源ユニット側の偏光板が第1の保護フィルムを有し、(【0025】)
第1の保護フィルムは、光源ユニットの緑色および赤色の発光ピークの半値全幅が小さい場合(例えば20〜30nm程度の場合)に虹ムラの発生を抑制する観点からは、Re(589)が10000〜30000nmであることが好ましく、12000〜30000nmであることがより好ましく、14000〜30000nmであることが特に好ましく、(【0028】)
第1の保護フィルムは、ポリエステル樹脂を主成分として含むポリエステルフィルムであり、(【0037】)
第1の保護フィルムは反射防止フィルムの支持体として用いる、(【0054】)
液晶表示装置。」

5 対比・判断
(1)本願発明と引用発明との対比
ア 本願発明の「バックライト光源、光源側偏光板、液晶セル、及び視認側偏光板を有する液晶表示装置であって、」との特定事項について
引用発明の「液晶表示装置」は、「光源ユニット」、「光源ユニット側の偏光板」、「液晶セル」、「視認側の偏光板」を「この順で含む」ことから、引用発明の「光源ユニット」、「光源ユニット側の偏光板」、「液晶セル」、「視認側の偏光板」及び「液晶表示装置」は、それぞれ、本願発明の「バックライト光源」、「光源側偏光板」、「液晶セル」、「視認側偏光板」及び「液晶表示装置」に相当する。
そして、引用発明の「液晶表示装置」は、本願発明の上記特定事項を備える。

イ 本願発明の「前記バックライト光源は、400nm以上495nm未満、495nm以上600nm未満及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、各ピークの半値幅が5nm以上であり、」との特定事項について
引用発明の「光源ユニット」は、「少なくとも400〜500nmの波長帯域に発光中心波長を有する青色の発光ピーク(以下、青色の発光ピークと略す)」と「500〜600nmの波長帯域に発光中心波長を有する緑色の発光ピーク(以下、緑色の発光ピークと略す)」と「600〜680nmの波長帯域に発光中心波長を有する赤色の発光ピーク(以下、赤色の発光ピークと略す)」を有する「光を出射する」ところ、引用発明の「400〜500nmの波長帯域」及び「500〜600nmの波長帯域」は、それぞれ、本願発明の「400nm以上495nm未満」の「波長領域」及び「495nm以上600nm未満」の「波長領域」とは、青の波長領域及び緑の波長領域である点で一致し、引用発明の「600〜680nmの波長帯域」は、本願発明の「600nm以上780nm以下」の「波長領域」(以下「本願赤波長領域」という。)に相当する。そして、引用発明の「光源ユニット」による「青色の発光ピーク」、「緑色の発光ピーク」及び「赤色の発光ピーク」は、それぞれ、青の波長領域、緑の波長領域及び本願赤波長領域に「発光中心波長を有する」ものであるから、引用発明の「光源ユニット」は、本願発明でいう「各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有」するといえる。
引用発明の「青色」は、「発光ピークの半値全幅は10nm以上40nm以下」であり、「緑色および赤色の発光ピークの半値全幅」は、「20nm以上」であって、「20〜30nm程度」であるから、引用発明は、本願発明でいう「各ピークの半値幅が5nm以上であ」るものである。
よって、本願発明と引用発明とは、「前記バックライト光源は」、青の波長領域、緑の波長領域及び「600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、各ピークの半値幅が5nm以上であ」る点で一致する。

ウ 本願発明の「視認側偏光板は、1500〜30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムA、及びポリエステルフィルムAの少なくとも一方の面に積層された反射防止層及び/又は低反射層を含み」との特定事項について
引用発明の「視認側の偏光板」は、「第1の保護フィルム」を有しており、「第1の保護フィルム」は、「虹ムラの発生を抑制する観点からは、Re(589)が10000〜30000nmであることが好ましく、12000〜30000nmであることがより好ましく、14000〜30000nmであることが特に好まし」く、「ポリエステル樹脂を主成分として含むポリエステルフィルム」であるから、当該「第1の保護フィルム」は、本願発明の「ポリエステルフィルムA」に相当し、本願発明でいう「1500〜30000nmのリタデーションを有する」ものといえる。
引用発明の「視認側の偏光板」の「第1の保護フィルム」は、「反射防止フィルムの支持体」として用いるものであるから、「反射防止」のための構造が「少なくとも一方の面に積層された」ものである。
よって、本願発明と引用発明とは、「視認側偏光板は、1500〜30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムA、及びポリエステルフィルムAの少なくとも一方の面に積層された反射防止」構造「を含」む点で一致する。

エ 本願発明の「光源側偏光板は、ポリエステルフィルムBを含み、」との特定事項について
引用発明の「光源ユニット側の偏光板」は「第1の保護フィルム」を有しており、「第1の保護フィルム」は、「ポリエステル樹脂を主成分として含むポリエステルフィルム」であるから、当該「第1の保護フィルム」は、本願発明の「ポリエステルフィルムB」に相当する。
よって、引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。

オ 本願発明の「ポリエステルフィルムBのリタデーションをReBとし、バックライト光源の600nm以上780nm以下の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をRx、半値幅をRyとした場合に、Ry/〔Rx/(ReB/Rx)〕が0.55以上である、」との特定事項について
本願発明の上記特定事項のうち、「Ry/〔Rx/(ReB/Rx)〕が0.55以上である」を数式で表現すると、「Ry/〔Rx/(ReB/Rx)〕≧0.55」となるところ、以下、この不等式を「本件不等式」といい、本件不等式の左辺を「本件数式」ということにする。
引用発明の「光源側偏光板」の「第1の保護フィルム」(本願発明の「ポリエステルフィルムB」に相当。)は、「光源ユニットの緑色および赤色の発光ピークの半値全幅が小さい場合(例えば20〜30nm程度の場合)虹ムラの発生を抑制する観点からは、Re(589)が10000〜30000nmであることが好ましく、12000〜30000nmであることがより好ましく、14000〜30000nmであることが特に好まし」いものであり、「赤色の発光ピーク」は、「600〜680nmの波長帯域に発光中心波長を有する」ものである。
そして、引用発明の「Re(589)」は、「第1の保護フィルムの波長589nmにおける面内方向のレタデーション」であるから、本願発明の「ポリエステルフィルムBのリタデーション」である「ReB」に相当する。
引用発明の「赤色の発光ピーク」のピークトップに対応する波長は、本願発明の本願赤波長領域「に存在するピークのピークトップの波長」「Rx」に相当する。
引用発明の「赤色の発光ピークの半値全幅」は、本願発明の本願赤波長領域「に存在するピークのピークトップの」「半値幅」「Ry」に相当する。
しかし、引用発明が、本件不等式を満たすのかは不明である。

カ 本願発明の「液晶表示装置。」との特定事項について
引用発明は、本願発明の上記特定事項を備える。

(2)一致点及び相違点の認定
上記(1)によれば、本願発明と引用発明とは、
「バックライト光源、光源側偏光板、液晶セル、及び視認側偏光板を有する液晶表示装置であって、
前記バックライト光源は、青の波長領域、緑の波長領域及び600nm以上780nm以下の各波長領域にそれぞれ発光スペクトルのピークトップを有し、各ピークの半値幅が5nm以上であり、
視認側偏光板は、1500〜30000nmのリタデーションを有するポリエステルフィルムA、及びポリエステルフィルムAの少なくとも一方の面に積層された反射防止構造を含み
光源側偏光板は、ポリエステルフィルムBを含む、
液晶表示装置。」である点で一致し、次の点で相違又は一応相違する。

[相違点1]
「バックライト光源」が、本願発明は、「400nm以上495nm未満」及び「495nm以上600nm未満」の「各波長領域に」「発光スペクトルのピークトップを有」するのに対し、引用発明は、「青色の発光ピーク」が「400〜500nmの波長帯域に発光中心波長を有」しており、「緑色の発光ピーク」が「500〜600nmの波長帯域に発光中心波長を有」している点。

[相違点2]
「ポリエステルフィルムAの少なくとも一方の面に積層された反射防止構造」が、本願発明は「反射防止層」であるのに対し、引用発明は「反射防止フィルム」である点。

[相違点3]
「ポリエステルフィルムBのリタデーションをReBとし、バックライト光源の600nm以上780nm以下の波長領域に存在するピークのピークトップの波長をRx、半値幅をRyとした場合」に、本願発明は、「Ry/〔Rx/(ReB/Rx)〕が0.55以上である」のに対し、引用発明は、「Ry」が「例えば20〜30nm程度」であり、「Rx」が「600〜680nm」であり、「ReB」が「虹ムラの発生を抑制する観点からは、」「10000〜30000nmであることが好ましく、12000〜30000nmであることがより好ましく、14000〜30000nmであることが特に好まし」いものである点。

(3)相違点の判断
ア 相違点1について
引用発明の「青色の発光ピーク」及び「緑色の発光ピーク」は、そのピークトップの波長を、本願発明のような「400nm以上495nm未満」及び「495nm以上600nm未満」の範囲にもつことが通常であるといえる(例えば、引用文献の図3もそのようになっている。)し、いずれにせよ、そのようにすることは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。

イ 相違点2について
引用発明の「反射防止フィルム」は、「第1の保護フィルム」を当該「反射防止フィルム」の「支持体として用いる」ものであるから、(「第1の保護フィルム」の少なくとも一方の面に積層された)「反射防止層」といえるものであるし、仮にそうではないとしても、反射防止構造として反射防止層を用いることは例示するまでもなく周知技術であるから、「反射防止フィルム」に代えて反射防止層を採用することは、当業者が適宜なし得たことである。

ウ 相違点3について
(ア)引用発明において相違点3に係る構成に至るためには、本件不等式を満たせばよいところ、その左辺に当たる本件数式は、Ry(引用発明でいえば、「赤色の発光ピーク」の「半値全幅」)が大きいほど、Rx(引用発明でいえば、「赤色の発光ピーク」のピークトップの波長)が小さいほど、ReB(引用発明でいえば、「光源ユニット側の偏光板」の「第1の保護フィルム」の「Re(589)」)が大きいほど、大きな値となるものである。
そして、本件不等式は、本件数式が取り得る値の下限のみを特定するものであるから、相違点3に係る構成の容易想到性を検討するためには、引用発明における本件数式の最小値を検討するのが合理的である。

(イ)そこで、引用発明における本件数式の最小値がどのようなときに実現するのかをみると、「赤色の発光ピークの半値全幅」(本願発明の「Ry」に相当するので、以下「Ry」と表記する。)を最小値とし、「赤色の発光ピーク」のピークトップの波長(本願発明の「Rx」に相当するので、以下「Rx」と表記する。)を最大値とし、「Re(589)」(本願発明の「ReB」に相当するので、以下「ReB」と表記する。)を最小値としたときに、本件数式の最小値が実現するのが明らかである。
しかるに、まず、引用発明のRyは「例えば20〜30nm程度」であり、Rxは「600〜680nm」であるから、それぞれ、最小値及び最大値をとって、Ry=20nm、Rx=680nmのときに、本件数式の最小値が実現する。
次に、引用発明のReBについて、「虹ムラの発生を抑制する観点からは、」「10000〜30000nmであることが好ましく、12000〜30000nmであることがより好ましく、14000〜30000nmであることが特に好まし」いものであって、虹ムラの発生抑制の観点においては、より好ましいとされる範囲ほどリタデーションの下限が大きくなっていることからも明らかなとおり、ReBの値が大きいことが好ましいことが明らかである。そのため、当業者であれば、引用発明のReBとして「特に好まし」い範囲(14000〜30000nm)を選択することは自然なことであり、よって、その範囲の最小値であるReB=14000nmのときに、本件数式の最小値が実現する。
これらのRy、Rx及びReBでは、本件数式の値は、20/680/(14000/680)=0.605・・・となるから、本件数式の最小値が実現する場合であっても、本件不等式を満たしていることになる。

(ウ)このように、引用発明においては、虹ムラの発生抑制の観点においてReBとして「特に好ましい」範囲をとれば、必然的に、本件不等式を満たすことになる。そして、上記(イ)でも説示したとおり、当業者が、引用発明のReBとして「特に好まし」い範囲(14000〜30000nm)を選択することは、自然なことであり、なんら格別のものではない。
そうすると、引用発明において、本件不等式を満たすようにすることは、当業者が容易に至ることであるというべきである。

エ 本願発明の効果について
本願発明の効果は、発光スペクトルの各ピークの半値幅が比較的狭いバックライト光源を有する液晶表示装置において、偏光子保護フィルムとしてポリエステルフィルムを用いた場合にも、虹斑が抑制された液晶表示装置を提供できることにあると解される(【0009】)。
他方、引用発明は、色再現性が高く、表示ムラが抑制され、虹ムラの発生が抑制された液晶表示装置を提供することを課題とするところ(【0009】・【0010】・【0013】)、表示ムラを抑制するための解決手段は、透湿度の低い保護フィルムを有することにあり(【0016】)、色再現性を高くするための解決手段は、緑色および赤色の発光ピークの半値全幅が小さいことにあり(【0017】)、虹ムラの発生を抑制するための解決手段は、ReBを大きくすることにある(【0028】)。
引用発明がこのような技術的意義を備えたものであることに照らすと、本願発明の上記効果は、引用文献の記載に基づいて当業者が予測し得たものにすぎないといえる。

オ 請求人の主張について
(ア)a 請求人は、原査定が、引用文献に記載された光学特性値として通常想定される数値を用いると、本件不等式を満たし得る旨説示したことに対し、引用文献に記載された発明において、ReBとして通常想定される範囲が「5000〜10260nm」であり、Ryとして通常想定される範囲が「20〜60nm」であるとしつつ、これらの範囲においては、必ずしも本件不等式が満たされない旨主張する。そして、ReBの通常想定される範囲の下限及び上限がそれぞれ「5000nm」及び「10260nm」であることの根拠として、引用文献の「第1の保護フィルムは、波長589nmにおける面内方向のリターデーションRe(589)が5000nm以上であり、・・・」(【0028】)の記載を挙げるとともに、実施例(表1)で主にReBが10260nmであるものが使用されていることを挙げる。また、Ryの通常想定される範囲の下限及び上限がそれぞれ「20nm」及び「60nm」である根拠として、引用文献の「赤色の発光ピークの半値全幅は、・・・25nm以上40nm以下であることが特に好ましい。」(【0017】)の記載を挙げるとともに、実施例(表1)の光源ユニットのRyが「20nm」、「31nm」、「40nm」及び「60nm」であることを挙げる。

b しかしながら、引用文献の記載に基づいて上記(2)の引用発明を認定できるのであり、そのような引用発明に基づいて相違点3が容易に想到し得ることも上記ウで説示したとおりである。

c 請求人は、引用文献に記載された発明のReBの通常想定される範囲の上限として、実施例で記載された10260nmの値を挙げるものの、実施例には19156nm(実施例7)の値も記載されている。そして、引用文献に記載された発明として、この例に係るReBとすれば、本件数式の最小値は、20/680/(19156/680)=0.828・・・であって、本件不等式を満たすことになる。
また、仮に、請求人が主張するように、引用文献に記載された発明のReBの通常想定される範囲の上限として、実施例記載の10260nmの値を想定し、かつ、Ryとして20〜60nmの値を想定するとしても、本願発明は進歩性を欠如するというべきである。すなわち、Ryが25nmのときの本件数式の最小値は、25/680/(10260/680)=0.554・・・となることから、Ryが25nm以上の値であれば、本件不等式が満たされることになる。そして、Ryが25nm以上の値は当業者が通常選択し得るものであって、しかも、本願発明の効果は予測できるのであるから、やはり、本願発明は引用文献に記載された発明に基づいて進歩性を欠如するといえる。

(イ)請求人は、原査定が本件数式及びその0.55という下限並びにそれぞれの光学特性値の組合せに格別な技術的意味があるとはいえない旨説示したのに対し、本件不等式には、虹斑を抑制するための明確な技術的意味があり、しかも、本件不等式を満たした場合の効果も実施例で示されている旨主張する。
しかしながら、本願発明は、あくまで、本件不等式を満たす液晶表示装置に係るものであって、例えば、本件不等式を用いた液晶表示装置の設計方法に係る発明のように、本件不等式を用いた評価プロセスを必須の特定事項として含むものではない。そして、上記エで説示したとおり、本願発明の効果は、引用文献の記載に基づいて当業者が予測し得るものである。よって、このような本願発明においては、本件数式及びその0.55という下限並びにそれぞれの光学特性値の組合せに格別な技術的意味があるとはいえない。

(ウ)請求人は、引用文献には「第1の保護フィルム」のReBを光源の半値幅に合わせる必要があることが記載されていないから、本件不等式を満たさないものが多数含まれる引用文献に記載された発明において、光源側偏光板に用いた場合に虹斑が抑制できるものを選出し、本件不等式を導き出すことは困難である旨主張する。
しかしながら、上記(イ)で説示したとおり、本願発明は、液晶表示装置に係るものであって、本件不等式を用いた評価プロセスを必須の特定事項として含むものではないから、本願発明の進歩性を否定するために、本件不等式それ自体の容易想到性を論理づける必要はない。
そして、引用発明も、「第1の保護フィルム」を光源側偏光板に用いた場合に虹斑を抑制するという意味では、本願発明と同様なのであり、しかも、色再現性を高くしつつ、「第1の保護フィルム」のReBにおいて虹斑を抑制する方向性を採用すれば、本件不等式を満たす液晶表示装置にたやすく至ることになるから、引用発明において、「第1の保護フィルム」を光源側偏光板に用いた場合に虹斑が抑制できるものを選出することには、格別の困難性がない。

(エ)したがって、請求人の主張は失当である。

カ 小括
よって、本願発明は、引用発明及び必要ならば引用文献の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-06-30 
結審通知日 2022-07-05 
審決日 2022-08-31 
出願番号 P2017-531408
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 加々美 一恵
特許庁審判官 山村 浩
瀬川 勝久
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 弁理士法人三枝国際特許事務所  

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