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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G03B |
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管理番号 | 1390346 |
総通号数 | 11 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2022-11-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-11-30 |
確定日 | 2022-10-06 |
事件の表示 | 特願2019−236088「反射スクリーン、映像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 4月23日出願公開、特開2020− 64319〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成28年1月27日にされた特願2016−13047号の一部を令和元年12月26日に新たな特許出願としたものであって、本願の手続の経緯の概略は、次のとおりである。 令和2年 2月20日 :手続補正書、上申書の提出 令和3年 2月 3日付け:拒絶理由通知書 同年 3月23日 :手続補正書、意見書の提出 同年 9月 7日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同月14日 :原査定の謄本の送達) 同年11月30日 :審判請求書、手続補正書の提出 2 本願発明の認定 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和3年11月30日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。 「 【請求項1】 映像源から投射された映像光を反射して映像を表示する反射スクリーンであって、 光透過性を有し、映像光が入射する第1の面と、これに対向する第2の面とを有する単位光学形状が、背面側の面に複数配列された光学形状層と、 前記単位光学形状の少なくとも第1の面に形成された反射層と、 光透過性を有し、前記光学形状層の前記単位光学形状が形成された側の面に、前記単位光学形状の間の谷部を充填するように積層された第2光学形状層と、 を備え、 前記反射層は、入射した光の一部を反射し、その他を透過する半透過型の反射層であり、 前記第2光学形状層の屈折率は、前記光学形状層の屈折率と同等であり、 前記単位光学形状は、その表面に微細な凹凸形状を有し、 前記反射層の前記単位光学形状との界面となる反射面は、前記凹凸形状に対応した凹凸形状を有し、 前記反射層は、入射した光の一部を正反射し、さらに、その表面の前記凹凸形状により光の反射する方向を拡散することにより、前記入射した光の一部を拡散反射すること、 を特徴とする反射スクリーン。」 3 原査定における拒絶の理由の概要 原査定における本願発明についての拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 理由1(新規性) 本願発明は、下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。 理由2(進歩性) 本願発明は、下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:中国特許出願公開第104298063号明細書 4 引用文献1及び引用発明の認定 (1) 引用文献1の記載事項 原査定の拒絶の理由において引用された、上記引用文献1には、以下の記載がある。括弧内に、当合議体による日本語訳を付す。下線は、当合議体において付したものであり、後述の引用発明の認定に直接用いるところに付してある。 ア 段落[0001]-[0002] 「 」 (技術分野 [0001] 本発明は透明投影画面に関し、具体的にはマイクロナノ構造を採用して高い利得の投影表示を実現する透明投影画面に関する。 背景技術 [0002] 現在、市場で一般的な投影画面には、白色スクリーン生地投影画面、ガラス投影画面およびシルバー投影画面がある。このような画面は反射と散乱の原理を基にしており、透明投影表示を実現できず、利得が低く、S/N比が低く、環境光の干渉を受けやすい等の弱点が存在する。) イ 段落[0006] 「 」 ([0006] 本発明の前記集束構造はV字形溝構造、周波数変換回折格子構造、マイクロプリズムアレイ構造のうちの一つである。それぞれ具体的な構造は、前記V字形溝構造の分布、方向、溝深さおよび溝幅は連続して変化し、その構造パラメータは入射する投影光線を観察者の所在位置に焦点を合わせるということを満たし、前記周波数変換回折格子構造の分布、方向、周波数変換パラメータは入射する投影光線を観察者の所在位置に焦点を合わせるということを満たし、前記マイクロプリズムアレイ構造はプリズムユニットを含み、プリズムユニットの断面は直角三角形であり、そのうち1つの直角の辺はアレイが所在する平面と直角であり、別の一つの辺はマトリックス平面内にあり、プリズムユニットの頂角は鋭角であり、頂角の角度とプリズムの方向は入射する投影光線を観察者の所在位置に焦点を合わせるということを満たしている。) ウ 段落[0026]-[0032] 「 」 ([0026] 実施例2 付属図3を参照すると、これは本実施例中のマイクロレンズ拡散透明投影画面およびその投影表示構造の概略図である。 [0027] 透明投影画面1は第1基材層2、集束構造3、拡散構造4、部分反射薄膜構造5、屈折率整合層6、第2基材層7で構成されている。集束構造3はV字形溝構造として第1基材層2の下表面に位置し、拡散構造4はマイクロレンズマトリックス構造として集束構造3表面に位置し、部分反射薄膜構造5は金属薄膜としてマイクロレンズ構造4表面にメッキされており、屈折率整合層6は第2基材層7と部分反射薄膜構造5との間に充填され、その材料の屈折率は前記集束構造および拡散構造の材料の屈折率と一致している。 [0028] 投影機8は出力光線9を出力し、画像を透明投射画面1上に投射し、画面中の部分反射膜5の反射により散乱光線10を形成し、散乱光線10は観察者12の所在方向(画面中心法線13に対して)において明瞭で均一な観察エリアを形成する。観察者12は観察エリア内で投影画像と画面後方の物体11を同時に見ることができる。 [0029] 本実施例中の集束構造3中のV字形溝構造の方向、溝深さおよび溝幅は連続的に変化し、パラメータは投影光線の方向、観察者の方向、画面中心法光線の方向の通過光線を追跡することで確定する。 [0030] 本実施例中の拡散構造4はマイクロレンズマトリックス構造を採用し、その拡散性能は拡散角度分布およびエネルギー分布を含み、レンズユニットの口径、曲率により、観察エリアの大きさ、形状、観察者と画面との間の距離で確定する。 [0031] 本実施例中の投影システムは連続する可視光スペクトルの光線を出力し、設計された部分反射膜構造は前記投影システムが出力するスペクトル範囲内において30%の反射率を備えている。 [0032] 本実施例中の第1基材層と第2基材層の材料は、屈折率が1.58のポリカーボネート(PC)であり、集束構造3と拡散構造4の材料は、屈折率が1.56の紫外線硬化ゴムであり、屈折率整合層6の材料も屈折率が1.56紫外線硬化ゴムである。」) エ 図3 「 」 オ 図面からの認定事項 明細書の段落[0026]-[0032]の記載を踏まえて図3を参照すると、以下の事項(以下「図3からの認定事項」という。)が認定できる。 <図3からの認定事項> 「集束構造3のV字形溝構造は複数の溝からなり、一つの溝は拡散構造4が設けられる面と設けられない面を有し、 屈折率整合層6は、集束構造3側において、集束構造3の拡散構造4が設けられる面に位置する面と、集束構造3の拡散構造4が設けられない面に位置する面を有する。」 (2) 引用発明の認定 前記(1)において摘記した事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 <引用発明> 「第1基材層2、集束構造3、拡散構造4、部分反射薄膜構造5、屈折率整合層6、第2基材層7で構成されている透明投影画面1であって、 集束構造3はV字形溝構造として第1基材層2の下表面に位置し、 拡散構造4はマイクロレンズマトリックス構造として集束構造3表面に位置し、 部分反射薄膜構造5は金属薄膜としてマイクロレンズ構造4表面にメッキされており、 屈折率整合層6は第2基材層7と部分反射薄膜構造5との間に充填され、その材料の屈折率は前記集束構造および拡散構造の材料の屈折率と一致し、([0027]) 投影機8は出力光線9を出力し、画像を透明投射画面1上に投射し、画面中の部分反射膜5の反射により散乱光線10を形成し、散乱光線10は観察者12の所在方向(画面中心法線13に対して)において明瞭で均一な観察エリアを形成し、 観察者12は観察エリア内で投影画像と画面後方の物体11を同時に見ることができ、([0028]) 投影システムは連続する可視光スペクトルの光線を出力し、設計された部分反射膜構造は前記投影システムが出力するスペクトル範囲内において30%の反射率を備え、([0031]) 集束構造3と拡散構造4の材料は、屈折率が1.56の紫外線硬化ゴムであり、([0032]) 集束構造3のV字形溝構造は複数の溝からなり、一つの溝は拡散構造4が設けられる面と拡散構造4が設けられない面を有し、 屈折率整合層6は、集束構造3側において、集束構造3の拡散構造4が設けられる面に位置する面と、集束構造3の拡散構造4が設けられない面に位置する面を有する(図3からの認定事項) 透明投影画面1。」 5 対比・判断 (1) 対比分析 請求項1の記載の順に沿って、本願発明と引用発明を対比する。 ア(ア) 引用発明における「投影機8」及び「出力光線9」は、それぞれ本願発明における「映像源」及び「映像光」に相当する。 (イ)a 引用発明において、「投影機8は出力光線9を出力し、画像を透明投射画面1上に投射し、画面中の部分反射膜5の反射により散乱光線10を形成し、散乱光線10は観察者12の所在方向(画面中心法線13に対して)において明瞭で均一な観察エリアを形成[する]」から、引用発明における「透明投射画面1」は、投影機8からの出力光線9を透明投射画面1上において反射させて観察者12に観察させるもの、すなわち、反射スクリーンである。 b したがって、引用発明における「透明投影画面1」は、本願発明における「映像光を反射して映像を表示する反射スクリーン」に相当する。 (ウ) よって、本願発明と引用発明は、「映像源から投射された映像光を反射して映像を表示する反射スクリーン」の発明である点で一致する。 イ(ア) 引用発明における「屈折率整合層6」は、本願発明における「光学形状層」に相当する。 (イ) 引用発明において「観察者12は観察エリア内で投影画像と画面後方の物体11を同時に見ることができ[る]」から、引用発明における「屈折率整合層6」が、光透過性を有することは明らかである。 (ウ)a 引用発明において、「出力光線9」は「部分反射膜5」において反射するところ、「部分反射薄膜構造5」は「マイクロレンズ構造4表面」に位置するから、引用発明において、「出力光線9」は「屈折率整合層6」の「集束構造3の拡散構造4が設けられる面に位置する面」に入射するものであると認められる。 b したがって、引用発明における「屈折率整合層6」の「集束構造3の拡散構造4が設けられる面に位置する面」及び「屈折率整合層6」の「集束構造3の拡散構造4が設けられない面に位置する面」は、本願発明における「映像光が入射する第1の面」及び「これに対向する第2の面」に相当する。 c また、引用発明において、「集束構造3」の「一つの溝は拡散構造4が設けられる面と拡散構造4が設けられない面を有[する]」ところ、当該一つの溝に対する、「屈折率整合層6」の「集束構造3の拡散構造4が設けられる面に位置する面」及び「集束構造3の拡散構造4が設けられない面に位置する面」を含む部分(以下「単位部分」という。)は、本願発明における「単位光学形状」に相当する。 (エ) 引用発明において、「集束構造3のV字形溝構造は複数の溝からな[る]」から、引用発明における単位部分も複数設けられる。 (オ) 引用発明において、「屈折率整合層6は、集束構造3側において、集束構造3の拡散構造4が設けられる面に位置する面と、集束構造3の拡散構造4が設けられない面に位置する面を有する」から、引用発明における単位部分は「屈折率整合層6」の「集束構造3側」に設けられると認められる。 (カ) 前記(ア)〜(オ)を総合すると、本願発明と引用発明は「光透過性を有し、映像光が入射する第1の面と、これに対向する第2の面とを有する単位光学形状が、背面側の面に複数配列された光学形状層」を備える点で一致する。 ウ(ア) 引用発明における「部分反射薄膜構造5」は、本願発明における「反射層」に相当する。 (イ) 引用発明において「部分反射薄膜構造5は金属薄膜としてマイクロレンズ構造4表面にメッキされて[いる]」から、「部分反射薄膜構造5」は「屈折率整合層6」の「集束構造3の拡散構造4が設けられる面に位置する面」に位置すると認められる。 (ウ) 本願の請求項1における「反射層」が「第1の面に形成された」という事項は、「反射層」と「第1の面」の位置関係を特定するものにすぎず、本願発明が、反射層を第1の面に形成するという方法によって製造されたもののみを含むことを特定するものであるとは認められない。 (エ) 以上の点をまとめると、本願発明と引用発明は「前記単位光学形状の少なくとも第1の面に形成された反射層」を備える点で一致する。 エ(ア) 引用発明における、それぞれ「屈折率が1.56の紫外線硬化ゴムであ[る]」「集束構造3」と「拡散構造4」の組合せは、本願発明における「第2光学形状層」に相当する。 (イ) 引用発明において「観察者12は観察エリア内で投影画像と画面後方の物体11を同時に見ることができ[る]」から、引用発明における「集束構造3」と「拡散構造4」の組合せが、光透過性を有することは明らかである。 (ウ) 引用発明において「屈折率整合層6は、集束構造3側において、集束構造3の拡散構造4が設けられる面に位置する面と、集束構造3の拡散構造4が設けられない面に位置する面を有する」から、引用発明における「集束構造3」と「拡散構造4」の組合せは、前記単位部分の「集束構造3側」に位置すると認められる。 (エ) また、引用発明において、「屈折率整合層6は第2基材層7と部分反射薄膜構造5との間に充填され[る]」ところ、「拡散構造4はマイクロレンズマトリックス構造として集束構造3表面に位置し」、「部分反射薄膜構造5は金属薄膜としてマイクロレンズ構造4表面にメッキされて[いる]」から、引用発明において「屈折率整合層6」と「拡散構造4」と「集束構造3」はこの順に積層関係にあると認められる。 (オ) 本願の請求項1における「第2光学形状層」が「前記単位光学形状の間の谷部を充填するように積層された」という事項は、「第2光学形状層」と「前記単位光学形状」の位置や構造の関係を特定するものにすぎず、本願発明が、単位光学形状の間の谷部を充填するように第2光学形状層を積層するという方法によって製造されたもののみを含むことを特定するものであるとは認められない。 (カ) 前記(ア)〜(オ)をまとめると、本願発明と引用発明は「光透過性を有し、前記光学形状層の前記単位光学形状が形成された側の面に、前記単位光学形状の間の谷部を充填するように積層された第2光学形状層」を備える点で一致する。 オ(ア) 引用発明において「部分反射膜構造は前記投影システムが出力するスペクトル範囲内において30%の反射率を備え[る]」から、引用発明における「部分反射薄膜構造5」は、入射した光の一部を反射すると認められる。 (イ) 引用発明において「観察者12は観察エリア内で投影画像と画面後方の物体11を同時に見ることができ[る]」から、引用発明における「部分反射薄膜構造5」が、光透過性を有することは明らかである。 (ウ) よって、本願発明と引用発明は「前記反射層は、入射した光の一部を反射し、その他を透過する半透過型の反射層であ[る]」点で一致する。 カ(ア) 引用発明において、「屈折率整合層6は第2基材層7と部分反射薄膜構造5との間に充填され、その材料の屈折率は前記集束構造および拡散構造の材料の屈折率と一致[する]」から、「屈折率整合層6」の屈折率と「集束構造」の屈折率は同等であると認められる。 (イ) よって、本願発明と引用発明は「前記第2光学形状層の屈折率は、前記光学形状層の屈折率と同等であ[る]」点で一致する。 キ(ア) 引用発明における、「拡散構造4」として機能する構造である「マイクロレンズマトリックス構造」は、本願発明における「微細な凹凸形状」に相当する。 (イ) 引用発明において、「拡散構造4はマイクロレンズマトリックス構造として集束構造3表面に位置し」、「屈折率整合層6は、集束構造3側において、集束構造3の拡散構造4が設けられる面に位置する面」「を有する」から、引用発明における単位部分は「集束構造3の拡散構造4が設けられる面に位置する面」において「マイクロレンズマトリックス構造」を有すると認められる。 (ウ) よって、本願発明と引用発明は「前記単位光学形状は、その表面に微細な凹凸形状を有[する]」点で一致する。 ク(ア) 引用発明において、「部分反射薄膜構造5は金属薄膜としてマイクロレンズ構造4表面にメッキされて[いる]」から、引用発明における「部分反射薄膜構造5」は、「マイクロレンズ構造4」に対応した形状を有すると認められる。 (イ) よって、本願発明と引用発明は、「前記反射層の前記単位光学形状との界面となる反射面は、前記凹凸形状に対応した凹凸形状を有[する]」点で一致する。 ケ(ア) 引用発明において、「部分反射膜構造は前記投影システムが出力するスペクトル範囲内において30%の反射率を備え[る]」から、引用発明における「部分反射薄膜構造5」は、入射した光の一部を正反射するものであると認められる。 (イ) 引用発明において、「部分反射薄膜構造5は金属薄膜としてマイクロレンズ構造4表面にメッキされており」、「画面中の部分反射膜5の反射により散乱光線10を形成し、散乱光線10は観察者12の所在方向(画面中心法線13に対して)において明瞭で均一な観察エリアを形成[する]」から、引用発明における「部分反射薄膜構造5」は、その表面のマイクロレンズ構造により光の反射する方向を拡散することにより、入射した光の一部を拡散反射するものであると認められる。 (ウ) よって、本願発明と引用発明は「前記反射層は、入射した光の一部を正反射し、さらに、その表面の前記凹凸形状により光の反射する方向を拡散することにより、前記入射した光の一部を拡散反射する」点で一致する。 (2) 一致点及び相違点 前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明は、以下の一致点において一致し、相違点は存在しない <一致点> 「映像源から投射された映像光を反射して映像を表示する反射スクリーンであって、 光透過性を有し、映像光が入射する第1の面と、これに対向する第2の面とを有する単位光学形状が、背面側の面に複数配列された光学形状層と、 前記単位光学形状の少なくとも第1の面に形成された反射層と、 光透過性を有し、前記光学形状層の前記単位光学形状が形成された側の面に、前記単位光学形状の間の谷部を充填するように積層された第2光学形状層と、 を備え、 前記反射層は、入射した光の一部を反射し、その他を透過する半透過型の反射層であり、 前記第2光学形状層の屈折率は、前記光学形状層の屈折率と同等であり、 前記単位光学形状は、その表面に微細な凹凸形状を有し、 前記反射層の前記単位光学形状との界面となる反射面は、前記凹凸形状に対応した凹凸形状を有し、 前記反射層は、入射した光の一部を正反射し、さらに、その表面の前記凹凸形状により光の反射する方向を拡散することにより、前記入射した光の一部を拡散反射すること、 を特徴とする反射スクリーン。」 (3) 小括 したがって、本願発明と引用発明は、同一である。また、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえる。 (4) 請求人の主張について ア 請求人の主張の内容 請求人は審判請求書において、次の主張を行っている。 本願発明は、本願明細書の[0041]に単位光学形状の配列ピッチが100μmで一定である例が記載されており、単位光学形状の配列ピッチが光の波長に対して十分大きいものを想定しているから、反射層における光の幾何光学的な反射及び拡散を用いている。 一方、引用発明については、集束構造3の拡散面の映像源に対する角度や傾斜方向(引用文献1の集束構造3の拡散構造4及び部分反射膜構造5が、幾何光学的な拡散反射を行った場合には、拡散構造4及び部分反射膜構造5が形成されている面の傾斜方向により、映像光は、特にスクリーン下部では観察者よりも下方側へ反射されてしいまい、観察者12の位置に合焦させることは困難である。)、引用文献の図1、図3、図4に示される集束構造3の配列ピッチが配列方向に沿って変化している様子、引用文献1の[0006]の記載などを考えると、引用発明は、回折現象を利用した拡散反射を用いている。 したがって、本願発明は引用発明と異なる。 イ 請求人の主張についての検討 (ア)a 請求人は、本願発明は、反射層における光の幾何光学的な反射及び拡散を用いていると主張しているが、その根拠が不明である。 b 本願発明においては、単位光学形状の表面にある微細な凹凸形状に対応する、反射層表面の凹凸形状が光の拡散反射の要因となっているが、反射層表面における光の拡散反射が幾何光学的な現象として記述できるか否かは、凹凸の大きさと光の波長の大きさの関係に依存する。凹凸のピッチが十分に大きければ、したがって、光の波長に対して反射面の変化が十分になだらかであれば、光の拡散反射は幾何光学的な現象といえるが、凹凸のピッチが非常に小さい場合には、ミー散乱やレイリー散乱のように、電磁光学的に考えなければならないのであって、幾何光学的には理解できない現象である。 c 請求人は、本願明細書の[0041]に単位光学形状の配列ピッチが100μmで一定である例が記載されていることを当該根拠としているが、前記bにおいて説明したとおり、拡散の要因は反射層表面の凹凸形状であって、100μmである単位光学形状の配列ピッチは拡散の要因ではないから、本願明細書の[0041]を根拠として、本願発明が反射層における光の幾何光学的な反射及び拡散を用いているとの主張は、受け入れることができない。 d また、光が入射する対象である反射層の大きさについて、本願明細書には、次の(a)及び(b)の記載がある。 (a) 「この反射層13の反射面の表面粗さ(即ち、第1斜面121aの表面粗さ)は、算術平均粗さRa(JIS B0601−2001)が約0.15〜0.3μmであることが、反射光により映像を良好に表示する観点から好ましい。」(段落【0021】) (b) 「反射層13は、光反射性の高い金属、例えば、アルミニウム、銀、ニッケル等により形成され、その厚さは、数10Å程度である。」(段落【0023】) e 前記d(a)及び(b)の本願明細書の記載から、反射層は、その算術平均粗さRaが150nm〜300nmであるにも関わらず、厚さは数nm程度しかなく、具体的にどのような構造であるのか判然としないものの、可視光の波長が380nm〜780nmであることに照らせば、明細書の前記記載箇所からは、本願発明における光の反射及び拡散は、幾何光学的な反射及び拡散というよりも、むしろ、電磁光学的な反射及び拡散と考える方が妥当であると考えられる。 f よって、本願発明は反射層における光の幾何光学的な反射及び拡散を用いている旨の請求人の主張は、採用できない。 (イ)a 請求人は、引用発明は、回折現象を利用した拡散反射を用いていると主張しているが、その根拠が不明である。 b(a) 請求人は、集束構造3の拡散面の映像源に対する角度や傾斜方向を当該根拠としており、仮に、引用文献1の集束構造3の拡散構造4及び部分反射膜構造5が、本願の新請求項1の発明と同様に、幾何光学的な拡散反射を行った場合には、拡散構造4及び部分反射膜構造5が形成されている面の傾斜方向により、映像光は、特にスクリーン下部では観察者よりも下方側へ反射されてしまい、観察者12の位置に合焦させることは困難である旨主張している。 (b) しかしながら、引用発明において拡散構造4及び部分反射膜構造5が形成されているから、拡散構造4及び部分反射膜構造5で十分な拡散が生じれば、映像光は全方位的に拡散され、必ずしも下方側だけに反射されるものではない。したがって、集束構造3の拡散面の映像源に対する角度や傾斜方向を当該根拠とする請求人の主張は採用できない。 c(a) また、請求人は、集束構造3の配列ピッチが配列方向に沿って変化している様子を当該根拠としている。 (b) しかしながら、引用発明において、集束構造3の配列ピッチが配列方向に沿って変化していたとして、そのことは、引用発明が拡散反射の作用をしていることと矛盾するものではなく、そのことをもって引用発明が回折現象を利用しているとする理由が不明である。 d(a) さらに、請求人は引用文献1の[0006]の記載を当該根拠としている。 (b) しかしながら、引用文献1の段落[0006]に「本発明の前記集束構造はV字形溝構造、周波数変換回折格子構造、マイクロプリズムアレイ構造のうちの一つである」と記載されているとおり、引用文献1の段落[0006]に開示されているのは、集束構造として「V字形溝構造、周波数変換回折格子構造、マイクロプリズムアレイ構造のうちの一つ」を採用できることにすぎず、引用発明において集束構造として回折格子が必須の構成であるといったことが開示されているわけではない。 また、引用発明として認定した実施例2のものは、集束構造として「V字形溝構造、周波数変換回折格子構造、マイクロプリズムアレイ構造のうちの一つ」である「V字形溝構造」を明示的に採用しているものであり、「周波数変換回折格子構造」を採用しているものではない。 e 以上のとおりであるから、引用発明は回折現象を利用した拡散反射を用いているとの請求人の主張は、採用できない。 6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。 |
審理終結日 | 2022-08-08 |
結審通知日 | 2022-08-09 |
審決日 | 2022-08-22 |
出願番号 | P2019-236088 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03B)
P 1 8・ 113- Z (G03B) |
最終処分 | 02 不成立 |
特許庁審判長 |
岡田 吉美 |
特許庁審判官 |
濱本 禎広 佐藤 久則 |
発明の名称 | 反射スクリーン、映像表示装置 |
代理人 | 芝 哲央 |
代理人 | 林 一好 |
代理人 | 正林 真之 |