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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1390408
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-21 
確定日 2022-11-01 
事件の表示 特願2017−120638「画像形成装置の管理装置、画像形成装置の管理方法、画像形成装置管理用プログラム、画像形成システム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月17日出願公開、特開2019− 9496、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成29年6月20日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

令和3年 4月 5日付け 拒絶理由通知
令和3年 5月13日 意見書・手続補正書 提出
令和3年10月25日付け 拒絶査定
令和4年 1月21日 審判請求書・手続補正書 提出

第2 原査定の概要

原査定(令和3年10月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

・(進歩性)この出願の請求項1−13に係る発明は,下記の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.国際公開第2016/051504号
2.特開2004−30062号公報
3.特開2016−197334号公報

第3 本願発明

本願の請求項1ないし13に係る発明(以下,「本願発明1」ないし「本願発明13」という。)は,令和4年1月21日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項13に記載された事項により特定される,以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
設定データを格納するように構成されたメモリーと,
特定のIPアドレスを設定された画像形成装置と通信するように構成された通信インターフェースと,
前記特定のIPアドレスからアクセスを受けたことに応じて,前記特定のIPアドレスにアクセスすることにより,複数の前記画像形成装置のそれぞれに前記設定データを書き込むように構成されたプロセッサーとを備え,
複数の前記画像形成装置のそれぞれは,前記特定のIPアドレスを設定されており,
前記特定のIPアドレスにアクセスすることは,前記特定のIPアドレスに設定された複数の前記画像形成装置の中の1台の画像形成装置からアクセスを受けたことに応じて実施され,当該1台の画像形成装置にアクセスすることを含み,
前記設定データを書き込むことは,前記1台の画像形成装置に前記設定データを書き込むことを含み,
前記設定データは,前記複数の画像形成装置のそれぞれに割り当てられるIPアドレス,印刷機能に関するデータ,および,スキャン機能に関するデータを含み,
前記特定のIPアドレスにアクセスすることおよび前記設定データを書き込むことは,
1台の画像形成装置ごとに,当該1台の画像形成装置への前記設定データの書き込みの完了後の当該1台の画像形成装置へのリブートの指示とともに,繰り返し実行される,画像形成装置の管理装置。
【請求項2】
前記メモリーは,複数の画像形成装置のそれぞれに関連付けて複数の設定データのそれぞれを格納するように構成されており,
前記プロセッサーは,前記複数の画像形成装置のそれぞれに,各画像形成装置に対応する設定データを書き込むように構成されている,請求項1に記載の画像形成装置の管理装置。
【請求項3】
前記複数の画像形成装置のそれぞれに関連付けて複数の設定データのそれぞれを格納することは,前記複数の画像形成装置の中の設定データを書き込まれるそれぞれの順番に関連付けて,前記複数の設定データのそれぞれを格納することを含み,
前記メモリーは,前記複数の画像形成装置のうち前記設定データの書き込みが完了した台数に対応する数値をさらに格納するように構成されており,
前記プロセッサーは,前記数値に基づいて,前記複数の設定データから次の画像形成装置に対応する設定データを選択し,選択された当該設定データを前記画像形成装置に書き込むように構成されている,請求項2に記載の画像形成装置の管理装置。
【請求項4】
前記通信インターフェースは,有線または無線のネットワークを介して前記画像形成装置と通信するように構成されている,請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置の管理装置。
【請求項5】
前記管理装置は,前記画像形成装置と一体的に構成されている,請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置の管理装置。
【請求項6】
設定データを格納するように構成されたメモリーを備えるコンピューターによって実行される,画像形成装置の管理方法であって,
特定のIPアドレスにアクセスするステップと,
前記特定のIPアドレスにアクセスすることによって接続された複数の画像形成装置のそれぞれに設定データを書き込むステップとを備え,
前記複数の画像形成装置のそれぞれは,前記特定のIPアドレスを設定されており,
前記特定のIPアドレスにアクセスするステップは,前記特定のIPアドレスに設定された前記複数の画像形成装置の中の1台の画像形成装置からアクセスを受けたことに応じて実施され,当該1台の画像形成装置にアクセスすることを含み,
前記設定データを書き込むステップは,前記1台の画像形成装置に前記設定データを書き込むことを含み,
前記設定データは,前記複数の画像形成装置のそれぞれに割り当てられるIPアドレス,印刷機能に関するデータ,および,スキャン機能に関するデータを含み,
前記特定のIPアドレスにアクセスするステップおよび前記設定データを書き込むステップは,1台の画像形成装置ごとに,当該1台の画像形成装置への前記設定データの書き込みの完了後の当該1台の画像形成装置へのリブートの指示とともに,繰り返し実行される,画像形成装置の管理方法。
【請求項7】
前記複数の画像形成装置のそれぞれに設定データを書き込むステップでは,前記特定のIPアドレスを設定された複数の画像形成装置のうち1台の画像形成装置が通信可能な状態にあり,残りの画像形成装置が通信不能な状態にある,請求項6に記載の画像形成装置の管理方法。
【請求項8】
前記設定データを書き込むステップは,前記複数の画像形成装置のそれぞれに,各画像形成装置に対応する設定データを書き込むことを含む,請求項6または請求項7に記載の画像形成装置の管理方法。
【請求項9】
前記設定データの書き込みが完了した画像形成装置の台数に対応する数値を計数するステップをさらに備え,
前記設定データを書き込むステップは,前記複数の画像形成装置の設定データの中から,前記数値に基づいて,各前記画像形成装置に対応する設定データを選択し,選択された当該設定データを前記画像形成装置に書き込むことを含む,請求項8に記載の画像形成装置の管理方法。
【請求項10】
前記設定データを書き込むステップは,有線または無線のネットワークを介して前記画像形成装置と通信することを含む,請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の画像形成装置の管理方法。
【請求項11】
前記コンピューターは,前記画像形成装置と一体的に構成されている,請求項6〜請求項10のいずれか1項に記載の画像形成装置の管理方法。
【請求項12】
複数の画像形成装置を管理する管理装置のコンピューターに,請求項6〜請求項11のいずれか1項に記載の方法に記載の各ステップを実行させるための,画像形成装置管理用プログラム。
【請求項13】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置の管理装置および画像形成装置を含む,画像形成システム。」

第4 引用文献

1 引用文献1および引用発明

(1)引用文献1の記載事項

原査定の拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている(下線は,当審が付加した。以下同様。)。

ア 「技術分野
[0001] 本発明は,IP(Internet Protocol)アドレスをIP機器に設定する技術に関するものである。
背景技術
[0002] 従来,例えば,列車の車両設備である複数のIP機器(ネットワークカメラ等)に対し,それぞれ異なる機器情報(そのIP機器の動作等を指定する情報)を設定する場合,作業者が,最初に各IP機器のIPアドレスを1台ずつ設定し,その後,該設定したIPアドレスを用いて,各IP機器の機器情報を設定していた。
[0003] 量産品であるIP機器(ネットワークカメラ等)では,工場からの出荷時において,同種のIP機器には同一の初期IPアドレスが設定されている。したがって,同種のIP機器を複数使用する場合,工場出荷時のIPアドレスを用いて通信することはできない。そのため,最初に,各IP機器のIPアドレスを設定する必要がある。
[0004] なお,IP機器固有のMACアドレス(Media Access Control address)に基づき,IPアドレスを任意のものに設定することも可能であるが,MACアドレスは6桁の16進数である。そのため,IP機器の数が多い場合は,MACアドレスに基づきIPアドレスを設定する方法は,作業者が間違いを起こし易いので好ましくない。
[0005] 下記の特許文献1には,複数のIP機器(ネットワークカメラ等)を備える列車監視システムにおいて用いられるIP通信技術が記載されている。
先行技術文献
特許文献
[0006] 特許文献1:特開2012‐129908公報
発明の概要
発明が解決しようとする課題
[0007] 本発明の目的は,複数のIP機器に対し,それぞれIPアドレスを設定する技術を提供することにある。」

イ 図2


ウ 「[0021] 図2は,本発明の実施形態に係るIP通信システムの構成図である。
図2の例では,設定装置12は,スイッチングハブ11のポート12(P12:ポート番号12のポート)に接続され,各IP機器は,ポート12以外のポートに接続されている。設定装置12をポート12以外のポートに接続できることは,もちろんである。なお,ポート番号nのポートをポートnと呼ぶ。
[0022] スイッチングハブ11は,SWH制御部11aと,SWH記憶部11bと,ポート1〜16(P1〜P16)とを備える。SWH記憶部11bとポート1〜16は,SWH制御部11aに信号接続されている。ポートとは,スイッチングハブ11が外部との通信を行う出入口(通信ポート)である。
[0023] SWH制御部11aは,ポート1〜16を,それぞれ単独で,クローズ状態(閉じた状態)又はオープン状態(開いた状態)にすることができる。クローズ状態とは,そのポートが外部との通信を行うことのできない状態である。オープン状態とは,そのポートが外部との通信を行うことのできる状態である。
[0024] SWH制御部11aは,ポートがオープン状態において,各ポートに接続されたIP機器に対し,例えば周期的に,各IP機器のIPアドレスを問合せ,各IP機器から,そのIPアドレスを受信して取得する。そして,ポート番号とそのポートに接続されたIP機器のIPアドレスとを対応付けて,SWH記憶部11bに書き込み,記憶させる。なお,IPアドレスではなく,MACアドレス等のIP機器を特定可能な識別情報で対応付けを行ってもよい。
[0025] SWH記憶部11bは,ポート1〜16にそれぞれ対応付けてIPアドレスを記憶する。つまり,ポート1〜16にそれぞれ接続されたIP機器のIPアドレスを記憶する。図2の例では,例えば,ポート1に対応するIPアドレスは,カメラ21のIPアドレスであり,ポート12に対応するIPアドレスは,設定装置12のIPアドレスである。
[0026] したがって,運用開始する前の状態において車両1に各IP機器が搭載され,スイッチングハブ11のポート1〜16にそれぞれIP機器が接続されると,SWH制御部11aは,ポート1〜16に接続されたIP機器の初期IPアドレス(工場出荷IPアドレス)を受信して取得し,ポート番号とそのポートに接続されたIP機器の初期IPアドレスとを対応付けて,SWH記憶部11bに書き込み,記憶させる。
[0027] 図2の例では,カメラ21,NDR22,モニタ23,制御装置24等のIP機器を代表させて,IP機器20として,その構成を示す。IP機器20は,IP機器制御部20aと,IP機器記憶部20bとを備える。IP機器記憶部20bは,IP機器制御部20aに信号接続されている。IP機器記憶部20bには,当該IP機器20のIPアドレスが記憶されている。工場出荷時には,IP機器記憶部20bに,工場出荷時のIPアドレスである工場出荷IPアドレスが記憶されている。
[0028] IP機器制御部20aは,スイッチングハブ11から,IPアドレスの問合せ電文を受信すると,そのIP機器20のIPアドレスを含む応答電文を,スイッチングハブ11へ送信する。スイッチングハブ11が送信するIPアドレスの問合せ電文には,送信元IPアドレス情報(つまり,スイッチングハブ11のIPアドレス)と,情報種別とが含まれる。情報種別は,この電文がIPアドレスの問合せ電文であることを示す。IP機器20が送信する応答電文には,宛先IPアドレス情報(つまり,スイッチングハブ11のIPアドレス)と,送信元IPアドレス情報(つまり,IP機器20のIPアドレス)と,情報種別とが含まれる。情報種別は,この電文がIPアドレスの応答電文であることを示す。
[0029] IP機器制御部20aは,スイッチングハブ11を介して,他のIP機器20から伝送情報を受信すると,該伝送情報の宛先IPアドレスと,IP機器記憶部20bに記憶した当該IP機器20のIPアドレスとを比較し,両IPアドレスが一致した場合に,上記伝送情報を当該IP機器20が受け取るべき情報と判断する。
[0030] IP機器制御部20aは,スイッチングハブ11を介して設定装置12から,当該IP機器20のIPアドレス書き換えを指示する伝送情報を受信すると,該伝送情報の宛先IPアドレスが当該IP機器20のIPアドレスと一致した場合に,上記伝送情報に含まれる書き換え用IPアドレスで,IP機器記憶部20bに記憶した当該IP機器20のIPアドレスを書き換える。
[0031] 設定装置(SU)12は,SU制御部12aと,SU記憶部12bと,操作表示部12cとを備える。SU記憶部12bと操作表示部12cは,SU制御部12aに信号接続されている。操作表示部12cは,操作者からの各種指示を示す入力を受け付ける操作部と,各種表示を行う表示部とを含むように構成される。操作部は,例えば,キーボードやマウス等で構成される。表示部は,例えば,LCD(Liquid Crystal Display)等で構成される。操作表示部12cを,操作部と表示部とが一体となったタッチパネル等で構成してもよい。
[0032] SU記憶部12bは,スイッチングハブ11の各ポートに接続されるIP機器20に設定すべきIPアドレス(設定IPアドレス)を,スイッチングハブ11の各ポート番号に対応付けて,ポート番号・IPアドレス対応テーブル(以下,対応テーブルと略すことがある。)として記憶する。対応テーブルは,例えば,操作表示部12cを介して,操作者により設定され変更される。対応テーブルは,設定IPアドレスの代わりに,設定IPアドレスを特定するIPアドレス情報を記憶するよう構成してもよい。なお,IPアドレス情報は,設定IPアドレスそのものであってもよい。」

エ 「[0052] 次に,本発明の実施形態に係るIPアドレス設定シーケンスを説明する。
[0053] 図4〜図6は,それぞれ,本発明の実施形態に係るIPアドレス設定シーケンス図の,その1,その2,その3である。このIPアドレス設定シーケンスにおいて,設定装置12の動作はSU制御部12aにより制御され,スイッチングハブ11の動作はSWH制御部11aにより制御され,IP機器20の動作は機器制御部20aにより制御される。
図4〜図6のIPアドレス設定シーケンスを行う前に,スイッチングハブ11のIPアドレス設定と,設定装置12のIPアドレス設定とを行う。設定装置12のIPアドレス設定は,操作表示部12cを用いて,従来技術で操作者により行われる。スイッチングハブ11のIPアドレス設定は,スイッチングハブ11の操作表示部(不図示)を用いて,従来技術で操作者が行ってもよいし,スイッチングハブ11に設定装置12だけを接続した状態で,設定装置12を用いて行ってもよい。
[0054] IPアドレス設定が行われると,スイッチングハブ11は再起動され,各ポートに接続されているIP機器20のIPアドレスを受信して取得する。そして,ポート番号とそのポートに接続されたIP機器のIPアドレスとを対応付けて,SWH記憶部11bに記憶する。」

オ 図4


カ 「[0055] その後,図4に示すように,まず,操作表示部12cにおいて,操作者からの車両種別選択を受け付け(図4のステップS1),操作者からの車両番号入力を受け付け(ステップS2),操作者からの機器情報ファイルのバージョン選択を受け付け(ステップS3)た後,操作者からのIPアドレス設定指示,つまり開始ボタン押下を受け付ける(ステップS4)。
[0056] 開始ボタン押下を受け付けると,設定装置12は,操作者に指示された車両種別と車両番号に応じた対応テーブルを選択する。そして,設定装置12は,設定装置12が接続されているポートを除くスイッチングハブ11の全てのポートを閉じる全ポートクローズ指示を,スイッチングハブ11へ送信する。例えば,設定装置12は,設定装置12が接続されているポート12を除くスイッチングハブ11の全てのポート(ポート1〜11,13〜16)に関するポートクローズ指示を,1ポートずつ,順次,送信する。
(中略)
[0062] クローズ対象の全てのポートをクローズした後,設定装置12は,図3の対応テーブルの設定順序に従い,順次,各IP機器20にIPアドレスを設定する。本実施形態では,IPアドレスを設定されると,各IP機器20は,自動的に再起動される。なお,IPアドレスを設定されても再起動しないように構成することも可能である。」

キ 図5


ク 「[0063] まず,設定装置12は,図3の対応テーブルの設定順序が1番目のポート14に対し,IPアドレスを設定する。
具体的には,設定装置12は,まず,図3の対応テーブルを用いて,ポート14に接続されたIP機器20の設定IPアドレスを算出し生成する(ステップS11)。図3の例では,ポート14に接続されたIP機器20は,ネットワークデジタルレコーダ22であり,対応テーブルのIPアドレス情報(第4オクテット)は,“15”である。したがって,ネットワークデジタルレコーダ22の設定IPアドレスは,“10.42.249.15”と算出される。
[0064] 次に,設定装置12は,ポート14に対するポートオープン指示を,スイッチングハブ11へ送信する(ステップS12)。設定装置12が送信するポートオープン指示電文には,宛先IPアドレス情報(つまり,スイッチングハブ11のIPアドレス)と,送信元IPアドレス情報(つまり,設定装置12のIPアドレス)と,オープン対象のポートを指定する指定ポート番号情報と,ポートを開けるよう指示するオープン指示情報とが含まれる。
[0065] 前述した全ポートに対するポートクローズ指示と,ポート14に対するポートオープン指示とにより,ポート14を開いた状態にするとともにポート12とポート14以外のポート(ポート1〜11,13,15,16)を閉じた状態にするポートオープン指示が構成される。つまり,設定装置12は,前述した全ポートに対するポートクローズ指示と,ポート14に対するポートオープン指示とを送信することにより,ポート14を開いた状態にするとともにポート12とポート14以外のポートを閉じた状態にするポートオープン指示を送信することになる。
[0066] スイッチングハブ11では,ポート14のポートオープン指示を受信すると,ポート14のポートオープン処理を行う(ステップS13)。これにより,設定装置12とポート14に接続されたネットワークデジタルレコーダ22との間で,スイッチングハブ11を介して,IP通信が可能となる。
[0067] 次に,設定装置12は,ポート14に接続されたIP機器20(ネットワークデジタルレコーダ22)に対し,PING確認情報(エコー要求)を送信する(ステップS14)。設定装置12が送信するPING確認情報電文には,宛先IPアドレス情報と,送信元IPアドレス情報と,情報種別とが含まれる。情報種別は,この電文がPING確認情報であることを示す。
[0068] PING確認情報は,宛先IPアドレス情報で指定したIP機器20と通信ができるか否かを確認するためのものであり,後述のPING応答情報が返信されるまで,例えば10秒間の間に,繰り返し送信される。所定時間内にPING応答情報が返信されない場合は,宛先IPアドレス情報で指定したIP機器20からの応答が無い旨を,操作表示部12cに表示し,次の設定順序(2番目)のポート1に対するIPアドレス設定処理に移行する。
[0069] PING確認情報電文の宛先IPアドレス情報は,PING確認情報電文の宛先であるIP機器20を指定する情報であり,具体的には,ネットワークデジタルレコーダ22の初期IPアドレス(工場出荷IPアドレス)である。この工場出荷IPアドレスは,図3の対応テーブルから取得される。送信元IPアドレス情報は,PING確認情報電文の送信元であるIP機器20を指定する情報であり,具体的には,設定装置12のIPアドレスである。
[0070] スイッチングハブ11では,設定装置12からPING確認情報電文を受信すると,PING確認情報電文の宛先IPアドレスのIP機器20(ネットワークデジタルレコーダ22)に対してのみ,受信したPING確認情報電文を送信する。詳しくは,SWH記憶部11bに記憶されたポート番号とIPアドレスとの対応表(つまり,ポート番号とそのポートに接続されたIP機器のIPアドレスとの対応表)を参照し,ポート14に対してのみ,PING確認情報電文を送信する。
[0071] ネットワークデジタルレコーダ22では,スイッチングハブ11を介して,設定装置12からPING確認情報を受信すると,受信したPING確認情報が自身宛てである場合に,つまり,受信したPING確認情報の宛先IPアドレスがネットワークデジタルレコーダ22のIPアドレス(工場出荷IPアドレス)である場合に,PING応答情報(エコー応答)を,スイッチングハブ11を介して,設定装置12へ送信する(ステップS15)。
[0072] ネットワークデジタルレコーダ22が送信するPING応答情報電文には,宛先IPアドレス情報と,送信元IPアドレス情報と,情報種別とが含まれる。情報種別は,この電文がPING応答情報であることを示す。
[0032] 宛先IPアドレス情報は,PING応答情報電文の宛先であるIP機器20を指定する情報であり,具体的には,設定装置12のIPアドレスである。この設定装置12のIPアドレスは,PING確認情報電文の送信元IPアドレス情報から取得される。
[0074] 送信元IPアドレス情報は,PING確認情報電文の送信元であるIP機器20を指定する情報であり,具体的には,ネットワークデジタルレコーダ22の工場出荷IPアドレスである。この工場出荷IPアドレスは,ネットワークデジタルレコーダ22の工場出荷時に,ネットワークデジタルレコーダ22の記憶部に設定されたものである。
[0075] 設定装置12は,PING応答情報を適正に受信することにより,所定の番号のポートに所定のIP機器20が正しく接続されていることを確認できる。詳しくは,設定装置12は,PING応答情報の送信元IPアドレス情報が,図3の対応テーブルのポート番号14の工場出荷IPアドレスと一致しているか否かを判定し,一致している場合に,所定の番号のポート(ポート14)に所定のIP機器20(ネットワークデジタルレコーダ22)が適正に接続されていることを確認できる。
[0076] 設定装置12は,PING応答情報を適正に受信できなかった場合は,PING確認情報の宛先IPアドレス情報で指定したIP機器20からの応答が適正でない旨を,操作表示部12cに表示し,次の設定順序(2番目)のポート1に対するIPアドレス設定処理に移行する。
[0077] 設定装置12は,PING応答情報を適正に受信した後,ネットワークデジタルレコーダ22に対し,設定すべきIPアドレスを送信する(ステップS16)。このIPアドレス送信電文には,宛先IPアドレス情報と,送信元IPアドレス情報と,情報種別と,データとが含まれる。情報種別は,この電文がIPアドレス設定情報であることを示す。データには,設定すべきIPアドレスが含まれる。
[0078] 宛先IPアドレス情報は,IPアドレス送信電文の宛先であるIP機器20を指定する情報であり,具体的には,ネットワークデジタルレコーダ22の工場出荷IPアドレスである。この工場出荷IPアドレスは,前述したように,図3の対応テーブルから取得される。送信元IPアドレス情報は,IPアドレス送信電文の送信元であるIP機器20を指定する情報であり,具体的には,設定装置12のIPアドレスである。
[0079] スイッチングハブ11では,設定装置12からIPアドレス送信電文を受信すると,IPアドレス送信電文の宛先IPアドレスのIP機器20(ネットワークデジタルレコーダ22)に対してのみ,受信したIPアドレス送信電文を送信する。
[0080] ネットワークデジタルレコーダ22では,スイッチングハブ11を介して,設定装置12からIPアドレス送信電文を受信すると(ステップS17),ネットワークデジタルレコーダ22の記憶部に記憶されていた工場出荷IPアドレスを,受信したIPアドレス送信電文に含まれる設定IPアドレスに書き換える(ステップS18)。IPアドレスが書き換えられると,ネットワークデジタルレコーダ22は,自動的に再起動される。
[0081] 設定装置12は,IPアドレス送信電文を送信した後,ポート14に対するポートクローズ指示を,スイッチングハブ11へ送信する(ステップS19)。設定装置12が送信するポートクローズ指示電文には,前述したように,宛先IPアドレス情報(つまり,スイッチングハブ11のIPアドレス)と,送信元IPアドレス情報(つまり,設定装置12のIPアドレス)と,対象のポートを指定する指定ポート番号情報と,ポートを閉じるよう指示するクローズ指示情報とが含まれる。
[0082] スイッチングハブ11では,ポート14のポートクローズ指示を受信すると,ポート14のポートクローズ処理を行う(ステップS20)。これにより,設定装置12とポート14に接続されたネットワークデジタルレコーダ22との間で,IP通信が不可能となる。
[0083] 次に,設定装置12は,図3の対応テーブルの設定順序が2番目のポート1に対し,IPアドレスを設定する。
具体的には,設定装置12は,まず,対応テーブルを用いて,ポート1に接続されたIP機器20の設定IPアドレスを算出する(ステップS21)。
[0084] 次に,設定装置12は,ポート1に対するポートオープン指示を,スイッチングハブ11へ送信する(ステップS22)。ポートオープン指示電文の内容は,前述したとおりである。
[0085] スイッチングハブ11では,ポート1のポートオープン指示を受信すると,ポート1のポートオープン処理を行う(ステップS23)。これにより,設定装置12とポート1に接続されたカメラ21(D1)との間で,スイッチングハブ11を介して,IP通信が可能となる。
[0086] 次に,設定装置12は,ポート1に接続されたIP機器20(カメラ21(D1))に対し,スイッチングハブ11を介して,PING確認情報(エコー要求)を送信する(ステップS24)。PING確認情報電文の内容は,前述したとおりである。
[0087] スイッチングハブ11では,設定装置12からPING確認情報電文を受信すると,PING確認情報電文の宛先IPアドレスのIP機器20(カメラ21(D1))に対してのみ,受信したPING確認情報電文を送信する。
[0088] カメラ21(D1)では,スイッチングハブ11を介して,設定装置12からPING確認情報を受信すると,PING応答情報(エコー応答)を,スイッチングハブ11を介して,設定装置12へ送信する(ステップS25)。PING応答情報電文の内容は,前述したとおりである。
[0089] 設定装置12は,前述したように,適正なPING応答情報を受信することにより,所定の番号のポート(ポート1)に所定のIP機器20(カメラ21(D1))が正しく接続されていることを確認できる。
[0090] 設定装置12は,適正なPING応答情報を受信した後,カメラ21(D1)に対し,スイッチングハブ11を介して,設定すべきIPアドレスを含むIPアドレス送信電文を送信する(ステップS26)。IPアドレス送信電文の内容は,前述したとおりである。
[0091] スイッチングハブ11では,設定装置12からIPアドレス送信電文を受信すると,IPアドレス送信電文の宛先IPアドレスのIP機器20(カメラ21(D1))に対してのみ,受信したIPアドレス送信電文を送信する。
[0092] カメラ21(D1)では,スイッチングハブ11を介して,設定装置12からIPアドレス送信電文を受信すると(ステップS27),カメラ21(D1)の記憶部に記憶されていた工場出荷IPアドレスを,受信したIPアドレス送信電文に含まれる設定IPアドレスに書き換える(ステップS28)。IPアドレスが書き換えられると,カメラ21(D1)は,自動的に再起動される。
[0093] 再起動に要する時間(再起動時間)は,IP機器20により異なる。再起動時間は,例えば,ネットワークデジタルレコーダ22の場合は20〜30分間であり,カメラ21の場合は1分程度である。
[0094] 本実施形態では,第1のIP機器(例えばNDR22)の再起動時間が,第2のIP機器(例えばカメラ21)の再起動時間よりも長い場合,第1のIPアドレスを送信した後に第2のIPアドレスを送信するよう送信順序を定める。したがって,本実施形態では,設定順序が1番目のネットワークデジタルレコーダ22へIPアドレスを設定した後,ネットワークデジタルレコーダ22の再起動中に,設定順序が2番目以降のカメラ21(D1〜D4,V1〜V4等)へIPアドレスを設定し,再起動することができる。つまり,ネットワークデジタルレコーダ22の再起動中に,並行して,カメラ21(D1〜D4,V1〜V4等)を再起動することができる。
[0095] このように,本実施形態では,図3の対応テーブルの設定順序に従い,順次,IPアドレスを設定するよう構成したので,再起動時間がより長いIP機器のIPアドレスの設定順序を,再起動時間がより短いIP機器のIPアドレスの設定順序よりも早い順序とすることができ,これにより,IP機器全体の再起動時間を短縮することができる。
[0096] 設定装置12は,IPアドレス情報を送信した後,ポート1に対するポートクローズ指示を,スイッチングハブ11へ送信する(ステップS29)。ポートクローズ指示電文の内容は,前述したとおりである。
[0097] スイッチングハブ11では,ポート1のポートクローズ指示を受信すると,ポート1のポートクローズ処理を行う(ステップS30)。これにより,設定装置12とポート1に接続されたカメラ21(D1)との間で,IP通信が不可能となる。
[0098] こうして,スイッチングハブ11のポートに接続された全てのIP機器20(ただし設定装置12は除く)のIPアドレス書き換えが行われる(ステップS31)。」

(2)引用発明

上記(1)の,特に下線を付加した記載に着目すると,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数のIP機器に対し,それぞれIPアドレスを設定する設定装置12であって,
設定装置12は,スイッチングハブ11のポート12(P12:ポート番号12のポート)に接続され,各IP機器は,ポート12以外のポートに接続されており,
スイッチングハブ11は,SWH制御部11aと,SWH記憶部11bと,ポート1〜16(P1〜P16)とを備えており,
SWH制御部11aは,各ポートに接続されたIP機器に対し,例えば周期的に,各IP機器のIPアドレスを問合せ,各IP機器から,そのIPアドレスを受信して取得し,ポート番号とそのポートに接続されたIP機器のIPアドレスとを対応付けて,SWH記憶部11bに書き込み,記憶させており,
SWH記憶部11bは,ポート1〜16にそれぞれ接続されたIP機器のIPアドレスを記憶しており,
運用開始する前の状態において車両1に各IP機器が搭載され,スイッチングハブ11のポート1〜16にそれぞれIP機器が接続されると,SWH制御部11aは,ポート1〜16に接続されたIP機器の初期IPアドレス(工場出荷IPアドレス)を受信して取得し,ポート番号とそのポートに接続されたIP機器の初期IPアドレスとを対応付けて,SWH記憶部11bに書き込み,記憶させており,
カメラ21,NDR22,モニタ23,制御装置24等のIP機器は,IP機器制御部20aと,IP機器記憶部20bとを備えており,
IP機器記憶部20bには,当該IP機器20のIPアドレスが記憶されており,工場出荷時には,IP機器記憶部20bに,工場出荷時のIPアドレスである工場出荷IPアドレスが記憶されており,
IP機器制御部20aは,スイッチングハブ11から,IPアドレスの問合せ電文を受信すると,そのIP機器20のIPアドレスを含む応答電文を,スイッチングハブ11へ送信しており,
設定装置(SU)12は,SU制御部12aと,SU記憶部12bと,操作表示部12cとを備えており,
SU記憶部12bは,スイッチングハブ11の各ポートに接続されるIP機器20に設定すべきIPアドレス(設定IPアドレス)を,スイッチングハブ11の各ポート番号に対応付けて,ポート番号・IPアドレス対応テーブル(以下,対応テーブル)として記憶しており,
IPアドレス設定シーケンスにおいて,設定装置12の動作はSU制御部12aにより制御され,スイッチングハブ11の動作はSWH制御部11aにより制御され,IP機器20の動作は機器制御部20aにより制御されており,
開始ボタン押下を受け付けると,設定装置12は,対応テーブルを選択し,
設定装置12は,設定装置12が接続されているポートを除くスイッチングハブ11の全てのポートを閉じる全ポートクローズ指示を,スイッチングハブ11へ送信し,
クローズ対象の全てのポートをクローズした後,設定装置12は,対応テーブルの設定順序に従い,順次,各IP機器20にIPアドレスを設定しており,
まず,設定装置12は,対応テーブルの設定順序が1番目のポート14に対し,IPアドレスを設定しており,具体的には,
設定装置12は,対応テーブルを用いて,ポート14に接続されたIP機器20の設定IPアドレスを算出し生成し,ポート14に対するポートオープン指示を,スイッチングハブ11へ送信し,
スイッチングハブ11では,ポート14のポートオープン指示を受信すると,ポート14のポートオープン処理を行い,
設定装置12は,ポート14に接続されたIP機器20(ネットワークデジタルレコーダ22)に対し,PING確認情報(エコー要求)を送信し,PING確認情報電文の宛先IPアドレス情報は,PING確認情報電文の宛先であるIP機器20の初期IPアドレス(工場出荷IPアドレス)であり,スイッチングハブ11では,設定装置12からPING確認情報電文を受信すると,PING確認情報電文の宛先IPアドレスのIP機器20(ネットワークデジタルレコーダ22)に対してのみ,受信したPING確認情報電文を送信し,
ネットワークデジタルレコーダ22では,スイッチングハブ11を介して,設定装置12からPING確認情報を受信すると,受信したPING確認情報が自身宛てのIPアドレス(工場出荷IPアドレス)である場合に,PING応答情報(エコー応答)を,スイッチングハブ11を介して,設定装置12へ送信し,
設定装置12は,PING応答情報を適正に受信することにより,所定の番号のポートに所定のIP機器20が正しく接続されていることを確認でき,
設定装置12は,PING応答情報を適正に受信した後,ネットワークデジタルレコーダ22に対し,設定すべきIPアドレスを送信し,
ネットワークデジタルレコーダ22では,スイッチングハブ11を介して,設定装置12からIPアドレス送信電文を受信すると,ネットワークデジタルレコーダ22の記憶部に記憶されていた工場出荷IPアドレスを,受信したIPアドレス送信電文に含まれる設定IPアドレスに書き換え,IPアドレスが書き換えられると,ネットワークデジタルレコーダ22は,自動的に再起動され,
設定装置12は,IPアドレス送信電文を送信した後,ポート14に対するポートクローズ指示を,スイッチングハブ11へ送信し,
スイッチングハブ11では,ポート14のポートクローズ指示を受信すると,ポート14のポートクローズ処理を行い,
次に,設定装置12は,対応テーブルの設定順序が2番目のポート1に対し,IPアドレスを設定しており,具体的には,
設定装置12は,まず,対応テーブルを用いて,ポート1に接続されたIP機器20の設定IPアドレスを算出し,
次に,設定装置12は,ポート1に対するポートオープン指示を,スイッチングハブ11へ送信し,
スイッチングハブ11では,ポート1のポートオープン指示を受信すると,ポート1のポートオープン処理を行い,これにより,設定装置12とポート1に接続されたカメラ21(D1)との間で,スイッチングハブ11を介して,IP通信が可能となり,
次に,設定装置12は,ポート1に接続されたIP機器20(カメラ21(D1))に対し,スイッチングハブ11を介して,PING確認情報(エコー要求)を送信し,
スイッチングハブ11では,設定装置12からPING確認情報電文を受信すると,PING確認情報電文の宛先IPアドレスのIP機器20(カメラ21(D1))に対してのみ,受信したPING確認情報電文を送信し,
カメラ21(D1)では,スイッチングハブ11を介して,設定装置12からPING確認情報を受信すると,PING応答情報(エコー応答)を,スイッチングハブ11を介して,設定装置12へ送信し,
設定装置12は,適正なPING応答情報を受信することにより,所定の番号のポート(ポート1)に所定のIP機器20(カメラ21(D1))が正しく接続されていることを確認でき,
設定装置12は,適正なPING応答情報を受信した後,カメラ21(D1)に対し,スイッチングハブ11を介して,設定すべきIPアドレスを含むIPアドレス送信電文を送信し,
スイッチングハブ11では,設定装置12からIPアドレス送信電文を受信すると,IPアドレス送信電文の宛先IPアドレスのIP機器20(カメラ21(D1))に対してのみ,受信したIPアドレス送信電文を送信し,
カメラ21(D1)では,スイッチングハブ11を介して,設定装置12からIPアドレス送信電文を受信すると,カメラ21(D1)の記憶部に記憶されていた工場出荷IPアドレスを,受信したIPアドレス送信電文に含まれる設定IPアドレスに書き換え,IPアドレスが書き換えられると,カメラ21(D1)は,自動的に再起動され,
設定装置12は,IPアドレス情報を送信した後,ポート1に対するポートクローズ指示を,スイッチングハブ11へ送信し,
スイッチングハブ11では,ポート1のポートクローズ指示を受信すると,ポート1のポートクローズ処理を行い,これにより,設定装置12とポート1に接続されたカメラ21(D1)との間で,IP通信が不可能となり,
こうして,スイッチングハブ11のポートに接続された全てのIP機器20のIPアドレス書き換えが行われる
設定装置。」

2 引用文献2および3

(1)引用文献2

原査定の拒絶理由において,引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,一般に,ネットワークに接続されたネットワークデバイスを制御する技術に係り,とりわけ,ネットワークに追加された新規のネットワークデバイスを管理設定する管理装置,管理方法および管理プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
コンピュータを相互に接続したローカルエリアネットワーク(LAN)は,ビルのフロアまたはビル全体,ビル群(構内),地域,あるいはさらに大きいエリアにわたって構築することができる。このようなネットワークはさらに相互に接続され,世界的規模のネットワークにも接続することができる。このような相互接続された各LANは,多様なハードウエア相互接続技術といくつものネットワークプロトコルを持つ場合がある。
(中略)
【0010】
このようなLANにおいて,個々のネットワーク機器は,各ネットワークプロトコル特有のネットワークアドレス(以下,アドレス)によって識別され,運営・管理される。しかし,あるネットワーク機器をネットワークに初めて接続する場合(工場出荷状態など)や,ネットワーク機器の再設定を行なう場合は,ネットワークアドレスが未設定であったり,有効なアドレスが設定されていなかったりすることが多い。そのため,ネットワーク管理ソフトウエア等から,ネットワーク機器に対しユーザが適当なアドレスを設定する必要がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
さて,このようなシステムにおいて,ネットワーク管理ソフトウエアを使用してすでに多数のネットワーク機器(例えばプリンタ)が稼動中の環境に新規追加されるネットワーク機器のアドレス設定を行なう場合について考える。
【0012】
ネットワーク管理ソフトウエアからネットワーク機器に対し,LANなどのネットワークを介してアドレスを設定する場合,通信を行なうための何らかのネットワークプロトコルが必要となる。しかし,先に述べたような工場出荷状態のデバイスには,IPアドレスなど標準的なアドレスが使用不可能であるため,SNMPなどの標準的なプロトコルが使用できない。
【0013】
その課題を解決するための方法の一つとして,デバイスの識別にMACアドレスを識別子として使用するような独自プロトコルを実装する方法が考えられる。ここで言うMACアドレスとは,ネットワーク機器に固有の物理アドレスである。IEEE802.3なら6バイト長で,先頭の3バイトはベンダコードとしてIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers,米国電気電子学会)が管理/割り当てを行っている。残りの3バイトは各ベンダで独自に(重複しないように)管理している。結果として世界中で同じ物理アドレスを持つネットワーク機器は存在せず,すべて異なるアドレスが割り当てられていることになる。IEEE802.3規格ではこのアドレスを元にしてフレームの送受信を行っている。
【0014】
本願発明に関連技術として,ネットワークに接続されているデバイスからMACアドレスを獲得し,得られたMACアドレスに係るデバイスをリスト表示するネットワーク管理ソフトウエアがある。図Aは,当該リストの表示例を示している。このように,ネットワーク管理ソフトウエアは,表示されたネットワークデバイスから管理対象となるネットワークデバイスを選択するためのユーザインタフェースを提供する。
【0015】
この関連技術では,稼動中のネットワークデバイスであれば,既存のものであろうと新規に追加されたものであろうと区別なく,それらのMACアドレスが取得されてしまう。その結果,既存のネットワークデバイスと新規のネットワークデバイスが混在し,しかも何らの区別もなく表示されてしまう。
【0016】
従って,新規のネットワークデバイスを選択して設定するためには,予め新規のネットワークデバイスのMACアドレスを把握する必要がある。
【0017】
ところが,MACアドレスはネットワーク機器特有のアドレスであるため,マニュアル等には記述することが困難であり,通常ネットワーク機器にシールなどで記させていることが多い。あるいは機器の基板上に記されている場合もあり,そのような場合は,ネットワーク機器からいったん基板を取り外さなければ,MACアドレスを確認することができない。
【0018】
このように,ネットワーク管理ソフトウエア又はネットワーク機器のユーザが,リスト中から既存のネットワークデバイスと新規のネットワークデバイスとを区別して選択するには,わかりにくく煩雑な作業を伴うという課題があった。
【0019】
そこで,本願発明の目的は,ネットワーク上にあるデバイスのMACアドレスを獲得して,MACアドレスの得られたデバイスのリストを表示する際に,特定のネットワーク設定をもったネットワークデバイスをフィルタリングしてリスト表示させることにより,新規に追加したいネットワークデバイスを探す手間が軽減され,ネットワークデバイスの設定も簡便になるネットワークデバイス制御装置および方法を提供することにある。
【0020】
さらに,本願発明の他の目的は,複数のネットワークデバイスを設定する際の利便性を向上させることにある。」

イ 図1


ウ 「【0046】
[第1の実施形態]
1.ハードウエアの構成例
図1は,開放型アーキテクチャを有するプリンタ102にネットワークボード101を接続して構成されたネットワークデバイス含む例示的なネットワークシステムを示す図である。ネットワークボード101は,例えば,同軸コネクタを持つ10Base−2インタフェースや,RJ−45を持つ10Base−Tインタフェース等のLANインタフェースを介してローカルエリアネットワーク(LAN)200に接続する。
【0047】
パーソナルコンピュータ(PC)103もLAN100に接続されており,ネットワークオペレーティングシステムの制御の下,NB101と通信することができる。このPC103では,ネットワークを管理するためのネットワーク制御プログラムが稼働し,それによってネットワークが制御される。なお,図1における要求パケット,応答パケット及び設定パケットについては後述する。
【0048】
通常,LAN100は,ある建物内の1以上のフロアに存在するユーザグループ等にサービスを提供するLANである。例えば,ネットワークのユーザが,他の建物や他県に存在している場合には,ワイドエリアネットワーク(WAN)を構成してもよい。WANは,基本的に,複数のLANを高速なデジタルラインで接続した集合体である。」

エ 図7


オ 図8


カ 「【0074】
5.動作
図7のフローチャート及び図8のシーケンス図を用いて本実施形態に関するネットワークデバイスの管理処理を説明する。図7は,本実施形態に係るネットワーク管理プログラムの処理ステップを例示したフローチャートである。図8は,本実施形態に係るネットワーク管理装置103とNB101と間でのコンフィグレータパケットの送受信を示すシーケンス図である。
【0075】
ステップS701:ネットワークボード101のネットワーク設定を行なうために,UIモジュール406から起動されたコンフィグレータ403が,Discovery要求パケットを送信する。Discovery要求パケットは,先に述べたように送信先IPアドレス=255.255.255.255に設定されたブロードキャストパケットであるので,同一のサブネットに接続されている全ネットワークデバイスに到達する。
【0076】
ステップS702:Discovery要求パケットを受信した各ネットワークデバイス(コンフィグレータプロトコルを実装している)から送信されたDiscovery応答パケットを,コンフィグレータ403が受信する。その際,受信した各Discovery応答パケットのデータ部はRAM203に記憶しておく。
【0077】
ステップS703:あらかじめ定められた待ち時間が満了したか判定し,満了するまではコンフィグレータ403がステップS702を実行する。その間,UIモジュール406は,図9に示すダイアログボックスを表示する。待ち時間が満了したら,UIモジュール406はダイアログボックス(図9)を閉じ,ステップS704を実行する。
【0078】
ステップS704:受信した各Discovery応答パケットのデータ部をRAM303から読み出し,その内容を参照する。例えば,コンフィグレータ403は,IPアドレスが工場初期値のままであるネットワークデバイスをフィルタリングすることによって新規追加のネットワークデバイスを抽出する。さらに,デバイスリスト表示モジュール201は,抽出されたネットワークボードのMACアドレスと現在のネットワーク設定とを含むリストを作成する。作成されたリストはUIモジュール406に渡され,そのリストが表示される。
【0079】
図10は,本実施形態に係るリスト表示ダイアログボックスの一例を示す図である。”192.168.0.215”という工場初期値のIPアドレスをもったネットワークデバイスを新規追加設定処理の選択対象としてリストアップされている。
【0080】
ステップS705:ユーザが,図10のダイアログボックスのリストから,任意のネットワークボードか,あるいは「再検出」「キャンセル」といったボタンを選択するのを待つ。
【0081】
ステップS706:どのような入力があったかを判定する。ユーザにより,リスト表示されたネットワークボードのうち,いずれかが選択されて「次へ」ボタンが押されたなら,ステップS707に移行する。
【0082】
ステップS707:ユーザにより選択されたネットワークボード101に対するネットワーク設定を入力し,その入力値を元にコンフィグレータ403はSet要求パケットを作成して送信する。
【0083】
図11は,ネットワーク情報を設定するための例示的なダイアログを示す図である。ユーザにより入力された値は,Set要求パケットのデータ部の「Protocol Info」フィールドに,前述したように設定される。また,Set要求パケットは,Discovery応答パケットにより得られているMACアドレスを宛先とするフレームに載せられるため,そのMACアドレスに該当するネットワークボード以外には無視される。そのため,ネットワークボード101にのみSet要求パケットが受信される。Set要求パケットを受信したネットワークデバイス(ここではプリンタ102)は,それが有するコンフィグレータにより,Set要求パケットのデータ部に載せられた各種設定値を,コンフィグレータプロトコルに従って設定する。Set要求パケットに基づいてネットワークデバイスにより設定が終了するとSet応答パケットが返信される(S801)。これによりプリンタ102のネットワーク設定が完了する。
【0084】
一方,ステップS706において,キャンセルボタンが押された場合にはそのままリスト表示を消去して処理を終了し,再検出ボタンが押されたなら,ステップS701に戻って,探索用のパケット(Discovery要求パケット)のブロードキャストから繰り返す。
【0085】
図8に示されているReset要求・応答は,設定を初期化するために交換されるものである(S802,S803)。そのため,ネットワーク上のデバイスについて情報を集め,特定のデバイスに対してネットワーク設定するための図7の手順においてはSet要求・応答パケットも,Reset要求・応答パケットも特に交換されていない。
【0086】
以上説明したように,本実施形態に係るネットワークデバイス管理装置および方法によれば,ネットワーク上にあるデバイスのMACアドレスを獲得して,MACアドレスの得られたデバイスのリストを表示する際に,特定のネットワーク設定情報をもったネットワークデバイスをフィルタリングしてリスト表示させることにより,ユーザ自身が多数のネットワークデバイスがリストされている中から新規追加したいネットワークデバイスを探す必要がなくなり,ネットワークデバイスの設定が簡便にできる。」

(2)引用文献3

原査定の拒絶理由において,引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,情報処理装置およびそれに関連する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,ネットワーク上に設けられたクラウドサーバを複数のユーザで利用する技術が存在する(特許文献1)。
【0003】
たとえば,特許文献1には,ドキュメントをドキュメントサーバにアップロードしたアップロードユーザのみならず,他のユーザもが,当該ドキュメントサーバを利用し,当該ドキュメントサーバ内のドキュメントを参照等できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2014−120018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,このような複数のユーザでクラウドサーバを利用する技術において,管理者等が,特定の設定内容(自身の所望の設定内容)を,各ユーザによって付与され且つクラウドサーバへのファイルのアップロード処理を伴うジョブ(たとえばスキャンジョブ)に設定したいと考えることがある。
【0006】
たとえば,クラウドサーバにアップロードされるファイルのファイル容量を低減するため,比較的低い解像度のファイル(スキャンデータファイル)が生成されてクラウドサーバにアップロードされるような設定内容を,各ユーザからのジョブ(スキャンジョブ)に設定したいと管理者等が考えることがある。
【0007】
また,管理者等が,自身の所望の設定内容を,各ユーザによって付与され且つクラウドサーバからのファイルのダウンロード処理を伴うジョブ(たとえば印刷ジョブ)に設定したいと考えることもある。
【0008】
たとえば,用紙の無駄を防止しコスト低減等を図るため,クラウドサーバ内のファイル(印刷対象ファイル)が両面で印刷されるような設定内容を,各ユーザからのジョブ(印刷ジョブ)に設定したいと管理者等が考えることがある。
【0009】
しかしながら,当該アップロード処理あるいはダウンロード処理を伴うジョブに関する設定処理を制御することは容易ではない。たとえば,従来のクラウドサーバは,その内部領域においてファイルの属性等を管理することはあっても,当該内部領域へのファイルのアップロード処理あるいは当該内部領域からのファイルのダウンロード処理を伴うジョブに関する設定処理を制御することは行わない。そのため,当該クラウドサーバは,各ユーザによって付与され且つ当該アップロード処理あるいはダウンロード処理を伴うジョブに管理者等の所望の設定内容を設定することができない。
【0010】
そこで,本発明は,複数のユーザのうちの一のユーザによって付与され且つクラウドサーバへのファイルのアップロード処理とクラウドサーバからのファイルのダウンロード処理とのいずれかの処理を伴うジョブに,管理者等の所望の設定内容を設定することが可能な技術を提供することを課題とする。」

イ 「【0047】
<3.動作>
この情報処理システム1(1A)においては,アクセス処理を伴うジョブに関してクラウドサーバ90の複数のユーザ(ユーザU1〜U10)に共通して設定されるべき設定内容(共通設定内容)が定められた共通設定ファイルF10が,当該クラウドサーバ90に事前に格納(登録)される。その後,当該複数のユーザのうちの一のユーザ(たとえばユーザU1)によって当該アクセス処理を伴う特定のジョブの実行指示が付与されると,クラウドサーバ90内の当該共通設定ファイルF10がMFP10に読み込まれる。そして,当該共通設定ファイルF10に定められている当該共通設定内容が利用されて,当該ユーザU1からの当該特定のジョブの設定内容が設定される。
【0048】
<共通設定ファイルの事前登録>
管理者U100は,MFP10のタッチパネル25を用いて,アクセス処理を伴うジョブ(印刷ジョブ,スキャンジョブ等)に関する所望の設定内容を,各ユーザ(ユーザU1〜U10)に共通して設定すべき設定内容(共通設定内容)として事前に指定(規定)する。そして,当該共通設定内容が定められた共通設定ファイルF10がクラウドサーバ90内に格納される。
(中略)
【0051】
管理者U100によって共通設定内容が指定され,共通設定ファイルF10がクラウドサーバ90に格納される動作等について,以下に説明する。
【0052】
図5は,MFP10へのログイン画面200(201)を示す図である。管理者U100は,MFP10のタッチパネル25に表示された当該ログイン画面200(201)への操作入力によって管理者用のユーザID(「administraror」)およびパスワードを入力し,MFP10にログインする。
【0053】
その後,いくつかの画面遷移を経て,格納ファイル表示画面210(図6参照)がMFP10のタッチパネル25に表示される。この格納ファイル表示画面210には,クラウドサーバ90内のディレクトリの一覧が表示される。そして,当該一覧の中から共通設定内容を適用すべきディレクトリが操作者(ここでは管理者U100)によって選択されると,選択されたディレクトリ内のファイルが当該格納ファイル表示画面210内に表示される。ここでは,クラウドサーバ90内のディレクトリD11,D12,D20のうち共有ディレクトリD11が選択される。換言すれば,管理者U100は,クラウドサーバ90の格納領域におけるディレクトリ(D11,D12,D20)のうちその内部ファイルに関するジョブに対して共通設定内容を適用すべきディレクトリ(適用対象ディレクトリ)として,当該共有ディレクトリD11を選択する。なお,当該内部ファイルには,ディレクトリ内に格納済のファイルのみならず,アップロード処理によってディレクトリ内にアップロードされるファイルも含まれる。そして,当該共有ディレクトリD11が選択されると,当該共有ディレクトリD11内のファイル(「ABC.pdf」)が当該格納ファイル表示画面210に表示される。」

ウ 図7


エ 「【0054】
また,格納ファイル表示画面210には,共通設定ボタン310が設けられている。当該共通設定ボタン310が管理者U100によって押下されると,機能選択画面220(図7参照)がMFP10のタッチパネル25に表示される。図7に示すように,この機能選択画面220には,印刷機能に関する設定内容の事前登録を行うための印刷設定ボタン321と,スキャン機能に関する設定内容の事前登録を行うためのスキャン設定ボタン322とが設けられている。」


第5 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことが認められる。

ア 引用発明は,「複数のIP機器に対し,それぞれIPアドレスを設定する設定装置12であって,」「設定装置(SU)12は,SU制御部12aと,SU記憶部12bと,操作表示部12cとを備えており,」「SU記憶部12bは,スイッチングハブ11の各ポートに接続されるIP機器20に設定すべきIPアドレス(設定IPアドレス)を,スイッチングハブ11の各ポート番号に対応付けて,ポート番号・IPアドレス対応テーブル(以下,対応テーブル)として記憶して」いるとされている。

ここで,引用発明の「IP機器20に設定すべきIPアドレス(設定IPアドレス)」および「SU記憶部12b」は,それぞれ,本願発明1の「設定データ」および「メモリー」に相当する。

また,引用発明の「設定装置(SU)12」は、「複数のIP機器に対し,それぞれIPアドレスを設定する」点で,「IP機器」を管理する管理装置であるといえる。

さらに,引用発明の「IP機器20」と,本願発明1の「画像形成装置」とは,「装置」である点で共通している。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「設定データを格納するように構成されたメモリー」「を備え」た「管理装置」である点で共通しているといえる。

しかし,本願発明1では,管理(IPアドレスを設定)する対象が,「画像形成装置」であるのに対し,引用発明では,管理(IPアドレスを設定)する対象が,「カメラ21,NDR22,モニタ23,制御装置24等のIP機器」である点で相違している。

イ 引用発明は,「設定装置12は,ポート14に接続されたIP機器20(ネットワークデジタルレコーダ22)に対し,PING確認情報(エコー要求)を送信し,PING確認情報電文の宛先IPアドレス情報は,PING確認情報電文の宛先であるIP機器20の初期IPアドレス(工場出荷IPアドレス)であり,」「ネットワークデジタルレコーダ22では,スイッチングハブ11を介して,設定装置12からPING確認情報を受信すると,受信したPING確認情報が自身宛てのIPアドレス(工場出荷IPアドレス)である場合に,PING応答情報(エコー応答)を,スイッチングハブ11を介して,設定装置12へ送信し,設定装置12は,PING応答情報を適正に受信することにより,所定の番号のポートに所定のIP機器20が正しく接続されていることを確認でき」るとされている。

ここで,引用発明の「設定装置12」は,「IP機器20(ネットワークデジタルレコーダ22)に対し,」「IP機器20の初期IPアドレス(工場出荷IPアドレス)」宛ての「PING確認情報電文」を「送信し」,「ネットワークデジタルレコーダ22では,・・・設定装置12からPING確認情報を受信すると,受信したPING確認情報が自身宛てのIPアドレス(工場出荷IPアドレス)である場合に,PING応答情報(エコー応答)を,・・・設定装置12へ送信し」ているから,引用発明の「初期IPアドレス(工場出荷IPアドレス)」は,本願発明1の「特定のIPアドレス」に相当するといえ,引用発明の「設定装置12」も,本願発明1の「管理装置」と同様に,「特定のIPアドレスを設定された」「装置」(IP機器20(ネットワークデジタルレコーダ22))と通信しているといえる。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「特定のIPアドレスを設定された」「装置と通信するように構成された」「管理装置」である点で共通しているといえる。

しかし,本願発明1では,特定のIPアドレスが設定されている「装置」が,「画像形成装置」であるのに対し,引用発明では,特定のIPアドレスが設定されている「装置」が,「カメラ21,NDR22,モニタ23,制御装置24等のIP機器」である点で相違している。

また,本願発明1の「管理装置」では,通信するための「通信インターフェース」を備えているのに対し,引用発明の「設定装置12」では,通信するための「通信インターフェース」を備えているのか否か明らかでない点で相違している。

ウ 引用発明の「設定装置12」は,「IP機器20(ネットワークデジタルレコーダ22)に対し,」「IP機器20の初期IPアドレス(工場出荷IPアドレス)」宛ての「PING確認情報電文」を「送信し」,「ネットワークデジタルレコーダ22では,・・・設定装置12からPING確認情報を受信すると,受信したPING確認情報が自身宛てのIPアドレス(工場出荷IPアドレス)である場合に,PING応答情報(エコー応答)を,・・・設定装置12へ送信し」「設定装置12は,PING応答情報を適正に受信した後,ネットワークデジタルレコーダ22に対し,設定すべきIPアドレスを送信し,ネットワークデジタルレコーダ22では,・・・設定装置12からIPアドレス送信電文を受信すると,ネットワークデジタルレコーダ22の記憶部に記憶されていた工場出荷IPアドレスを,受信したIPアドレス送信電文に含まれる設定IPアドレスに書き換え,」「設定装置12は,ポート1に接続されたIP機器20(カメラ21(D1))に対し,スイッチングハブ11を介して,PING確認情報(エコー要求)を送信し,」「カメラ21(D1)では,スイッチングハブ11を介して,設定装置12からPING確認情報を受信すると,PING応答情報(エコー応答)を,スイッチングハブ11を介して,設定装置12へ送信し,設定装置12は,適正なPING応答情報を受信することにより,所定の番号のポート(ポート1)に所定のIP機器20(カメラ21(D1))が正しく接続されていることを確認でき,設定装置12は,適正なPING応答情報を受信した後,カメラ21(D1)に対し,スイッチングハブ11を介して,設定すべきIPアドレスを含むIPアドレス送信電文を送信し,」「カメラ21(D1)では,スイッチングハブ11を介して,設定装置12からIPアドレス送信電文を受信すると,カメラ21(D1)の記憶部に記憶されていた工場出荷IPアドレスを,受信したIPアドレス送信電文に含まれる設定IPアドレスに書き換え」るとされている。

ここで,引用発明において,「IP機器20(ネットワークデジタルレコーダ22)」や「IP機器20(カメラ21(D1)」に対して,「IP機器20の初期IPアドレス(工場出荷IPアドレス)」宛ての「PING確認情報電文」を「送信し」,「適正なPING応答情報を受信することにより,所定の番号のポート」「に所定のIP機器20」((ネットワークデジタルレコーダ22)や「(カメラ21(D1))が正しく接続されていることを確認」し,「設定すべきIPアドレスを含むIPアドレス送信電文を送信し」ているから,引用発明において,「初期IPアドレス(工場出荷IPアドレス)」が設定されている「IP機器20」からの「適正なPING応答情報を受信すること」は,本願発明1における「前記特定のIPアドレスからアクセスを受けたこと」に相当し,引用発明において,「IP機器20」へ「設定すべきIPアドレスを含むIPアドレス送信電文を送信」することは,本願発明1における「前記特定のIPアドレスにアクセスすること」に相当するといえ,引用発明の「設定装置12」も,本願発明1の「管理装置」と同様に,「前記特定のIPアドレスからアクセスを受けたことに応じて,前記特定のIPアドレスにアクセス」しているといえる。

また,引用発明において,「ネットワークデジタルレコーダ22の記憶部に記憶されていた工場出荷IPアドレスを,受信したIPアドレス送信電文に含まれる設定IPアドレスに書き換え」ること,および,「カメラ21(D1)の記憶部に記憶されていた工場出荷IPアドレスを,受信したIPアドレス送信電文に含まれる設定IPアドレスに書き換え」ることは,本願発明1の「複数の」「装置のそれぞれに前記設定データを書き込む」ことに相当するといえる。

さらに,引用発明では,「IPアドレス設定シーケンスにおいて,設定装置12の動作はSU制御部12aにより制御され」ることから,引用発明の「設定装置(SU)12」が備える「SU制御部12a」は,本願発明1の「プロセッサー」に対応する。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「前記特定のIPアドレスからアクセスを受けたことに応じて,前記特定のIPアドレスにアクセスすることにより,複数の前記」「装置のそれぞれに前記設定データを書き込むように構成されたプロセッサーとを備え」た「管理装置」である点で共通しているといえる。

しかし,本願発明1では,設定データを書き込まれる「装置」が,「画像形成装置」であるのに対し,引用発明では,設定データを書き込まれる「装置」が,「カメラ21,NDR22,モニタ23,制御装置24等のIP機器」である点で相違している。

エ 上記イおよびウで述べたように,引用発明において,「ネットワークデジタルレコーダ22」や「カメラ21」には,「IP機器20の初期IPアドレス(工場出荷IPアドレス)」が設定されているから,引用発明も,本願発明1と同様に,「複数の前記」「装置のそれぞれは,前記特定のIPアドレスを設定されて」いるといえる。

しかし,上記イで述べたように,本願発明1では,特定のIPアドレスが設定されている「装置」が,「画像形成装置」であるのに対し,引用発明では,特定のIPアドレス(初期IPアドレス(工場出荷IPアドレス))が設定されている「装置」が,「カメラ21,NDR22,モニタ23,制御装置24等のIP機器」である点で相違している。

オ 上記ウで述べたように,引用発明において「初期IPアドレス(工場出荷IPアドレス)」が設定されている「IP機器20」からの「適正なPING応答情報を受信すること」は,本願発明1における「前記特定のIPアドレスからアクセスを受けたこと」に相当し,引用発明において「設定すべきIPアドレスを含むIPアドレス送信電文を送信」することは,本願発明1における「前記特定のIPアドレスにアクセスすること」に相当するといえ,引用発明の「設定装置12」も,本願発明1の「管理装置」と同様に,「前記特定のIPアドレスにアクセスすることは,前記特定のIPアドレスに設定された複数の前記」「装置の中の1台の」「装置からアクセスを受けたことに応じて実施され,当該1台の」「装置にアクセスすることを含」んでいるといえる。

しかし,上記イで述べたように,本願発明1では,特定のIPアドレスが設定されている「装置」が,「画像形成装置」であるのに対し,引用発明では,特定のIPアドレス(初期IPアドレス(工場出荷IPアドレス))が設定されている「装置」が,「カメラ21,NDR22,モニタ23,制御装置24等のIP機器」である点で相違している。

カ 上記ウで述べたように,引用発明において「初期IPアドレス(工場出荷IPアドレス)」が設定されている「IP機器20」に対して,「工場出荷IPアドレスを,受信したIPアドレス送信電文に含まれる設定IPアドレスに書き換え」ているから,引用発明の「設定装置12」も,本願発明1の「管理装置」と同様に,「前記設定データを書き込むことは,前記1台の」「装置に前記設定データを書き込むことを含」み,「前記設定データは,前記複数の」「装置のそれぞれに割り当てられるIPアドレス」「に関するデータを含」んでいるといえる。

しかし,上記ウで述べたように,本願発明1では,設定データを書き込まれる「装置」が,「画像形成装置」であるのに対し,引用発明では,設定データを書き込まれる「装置」が,「カメラ21,NDR22,モニタ23,制御装置24等のIP機器」である点で相違している。

また,本願発明1では,設定データとして,「印刷機能に関するデータ,および,スキャン機能に関するデータを含」んでいるのに対して,引用発明では,このようなデータを含んでいない点で相違している。

キ 引用発明において,「スイッチングハブ11の」「ポート1〜16にそれぞれ接続されたIP機器」に対して,順次,各ポートの「ポートオープン処理を行い,」「スイッチングハブ11の各ポートに接続されるIP機器20に設定すべきIPアドレス(設定IPアドレス)を」設定しており,設定すべきIPアドレス(設定IPアドレス)が設定されたIP機器20は,「自動的に再起動され」るとされている。

ここで,引用発明の「再起動」は,本願発明1の「リブート」に相当するといえる。

したがって,本願発明1と引用発明とは,「前記特定のIPアドレスにアクセスすることおよび前記設定データを書き込むことは,
1台の」「装置ごとに,当該1台の」「装置への前記設定データの書き込みの完了後の当該1台の」「装置」の「リブート」「とともに,繰り返し実行される」点で共通しているといえる。

しかし,上記ウで述べたように,本願発明1では,設定データを書き込まれる「装置」が,「画像形成装置」であるのに対し,引用発明では,設定データを書き込まれる「装置」が,「カメラ21,NDR22,モニタ23,制御装置24等のIP機器」である点で相違している。

また,本願発明1では,リブートされる対象が,「画像形成装置」であるのに対し,引用発明では,「カメラ21,NDR22,モニタ23,制御装置24等のIP機器」である点 で相違している。

さらに,本願発明1では,管理装置が装置へのリブートの指示をしているのに対して,引用発明では,各IP機器が「自動的に再起動」(リブート)している点で相違している。

(2)一致点・相違点

本願発明1と,引用発明とは,以下アの点で一致し,以下イの点で相違する。

ア 一致点

「設定データを格納するように構成されたメモリーと,
特定のIPアドレスを設定された装置と通信するように構成され,
前記特定のIPアドレスからアクセスを受けたことに応じて,前記特定のIPアドレスにアクセスすることにより,複数の前記装置のそれぞれに前記設定データを書き込むように構成されたプロセッサーとを備え,
複数の前記装置のそれぞれは,前記特定のIPアドレスを設定されており,
前記特定のIPアドレスにアクセスすることは,前記特定のIPアドレスに設定された複数の前記装置の中の1台の装置からアクセスを受けたことに応じて実施され,当該1台の装置にアクセスすることを含み,
前記設定データを書き込むことは,前記1台の装置に前記設定データを書き込むことを含み,
前記設定データは,前記複数の装置のそれぞれに割り当てられるIPアドレスに関するデータを含み,
前記特定のIPアドレスにアクセスすることおよび前記設定データを書き込むことは,
1台の装置ごとに,当該1台の装置への前記設定データの書き込みの完了後の当該1台の装置のリブートとともに,繰り返し実行される,画像形成装置の管理装置。」

イ 相違点

(ア) 相違点1

本願発明1では,特定のIPアドレスが設定されており,設定データを書き込まれる「装置」が,「画像形成装置」であるのに対し,引用発明では,特定のIPアドレスが設定されており,設定データを書き込まれる「装置」が,「カメラ21,NDR22,モニタ23,制御装置24等のIP機器」である点。

(イ) 相違点2

本願発明1の「管理装置」では,通信するための「通信インターフェース」を備えているのに対し,引用発明の「設定装置12」では,通信するための「通信インターフェース」を備えているのか否か明らかでない点。

(ウ) 相違点3

本願発明1では,設定データとして,「印刷機能に関するデータ,および,スキャン機能に関するデータを含」んでいるのに対して,引用発明では,このようなデータを含んでいない点。

(エ) 相違点4

本願発明1では,管理装置が装置へのリブートの指示をしているのに対して,引用発明では,各IP機器が「自動的に再起動」(リブート)している点。

(3)相違点についての判断

事案に鑑みて,まず,リブートについて相互に関連する相違点1,3および4について検討する。

本願発明1の相違点1に係る「装置」として,「画像形成装置」である構成,相違点3に係る「設定データ」として,「印刷機能に関するデータ,および,スキャン機能に関するデータを含」んでいる構成,および,相違点4に係る「設定データの書き込みの完了後の当該1台の」「装置へのリブートの指示」について,画像形成装置では,印刷機能に関する設定データ(例えば,「片面/両面」など)や,スキャン機能に関する設定データ(例えば,「解像度」など)は,画像形成装置の使用時に,利用者が個々に設定される設定データであり,画像形成装置をリブート(再起動)すると,初期状態に戻ってしまうことが一般的である。

したがって,引用発明を画像形成装置に適用したとしても,IPアドレスを各画像形成装置に設定した際に,リブート(再起動)すると初期状態に戻ってしまう印刷機能に関する設定データや,スキャン機能に関する設定データをIPアドレスと共に設定した上で,各画像形成装置をリブート(再起動)するように指示するように構成する動機付けはないといえる。

引用文献1ないし3には,相違点1,3および4に係る,印刷機能に関する設定データや,スキャン機能に関する設定データをIPアドレスと共に設定した上で,各画像形成装置をリブート(再起動)するように指示する点について,記載も示唆も無く,当該構成が周知であったとも認められない。

特に,上記第4の2(2)に記載したように,引用文献3には,クラウドサーバ内のディレクトリに,複数のユーザによって共通に利用される共通設定データ(印刷機能およびスキャン機能)を事前登録しておき,MFP10(画像形成装置)の画面を管理者が操作して,クラウドサーバ内のディレクトリから共通設定データを取得する技術が記載されているものの,共通設定データをIPアドレスと共にMFP10(画像形成装置)に設定した上で,MFP10(画像形成装置)をリブート(再起動)する旨の記載も示唆も無い。

したがって,引用発明および引用文献2ならびに3の記載に基づいて,当業者は本願発明1の相違点1,3および4に係る構成を容易に想到することができない。

(4) 小括

したがって,その他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明および引用文献2ならびに3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし本願発明5について

本願発明2ないし本願発明5は,いずれも,本願発明1を減縮したものであって,本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,上記1で述べた本願発明1と同じ理由により,引用発明および引用文献2ならびに3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明6について

本願発明6は,本願発明1の発明のカテゴリを,単に,装置の発明から,方法の発明と変更したものであって,本願発明1と同様の構成を備えるものであるから,上記1で述べた本願発明1と同様の理由により,引用発明および引用文献2ならびに3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

4 本願発明7ないし本願発明13について

本願発明7ないし本願発明13は,いずれも,本願発明1あるいは本願発明6を引用したものであって,本願発明1と同一,あるいは,同様の構成を備えるものであるから,上記1で述べた本願発明1と同じあるいは同様の理由により,引用発明および引用文献2ならびに3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について

上記第5で述べたように,本願発明1ないし本願発明13は,いずれも,原査定において引用された引用文献1ないし3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

したがって,原査定の理由(進歩性)を,維持することができない。

第7 むすび

以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2022-10-18 
出願番号 P2017-120638
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 野崎 大進
富澤 哲生
発明の名称 画像形成装置の管理装置、画像形成装置の管理方法、画像形成装置管理用プログラム、画像形成システム  
代理人 弁理士法人深見特許事務所  

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