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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1390437
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-02-25 
確定日 2022-11-01 
事件の表示 特願2017−191388「情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 4月25日出願公開、特開2019− 67104、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年9月29日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年 7月 9日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 8月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 9月 9日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
令和 3年10月 7日 :意見書の提出
令和 4年 1月11日付け:拒絶査定
令和 4年 2月25日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提

令和 4年 7月28日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和 4年 8月10日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和4年1月11日付け拒絶査定)の概要は、次のとおりである。
本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1,3に記載された発明に基づいて、本願請求項2,3に係る発明は、以下の引用文献1〜3に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:米国特許出願公開第2011/0240281号明細書
引用文献2:特開2012−98916号公報
引用文献3:米国特許出願公開第2004/0050231号明細書

第3 本願発明
本願請求項1〜3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明3」という。)は、令和4年8月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は次のとおりの発明である。

「【請求項1】
高さ方向に積層された複数の電子機器を冷却液で冷却する情報処理装置であって、
前記冷却液を複数階層で分配する分配器を備え、
前記分配器の各階層は、前記冷却液を一時的に蓄える分配用配管と、前記分配用配管から分岐された複数の分配用連絡管とを有する分配層分配器を備え、下流側の階層ほど前記分配用配管が増し、最終階層の前記分配用連絡管が前記電子機器に接続される情報処理装置において、前記分配器が前記冷却液を分配する総分岐数をRとして、階層数をTとした場合、
第N階層の分配用配管それぞれから分岐される分岐数は、以下の式、
α=R^(1/T) ・・・(Rの1/T乗)
ただし、R、Tは2以上の整数、により求められた値αに最も近い総分岐数の因数であって、前記因数が±α/2以内の範囲内にあって、給水管の上流側にある分配用配管の本数が少ない方の因数とする、
情報処理装置。」

なお、本願発明2,3は、本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献の記載、引用発明等
1 引用文献1
(1)原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審による。以下同様。)。

「[0027]FIG. 1 illustrates a typical server cabinet 101 comprising one or more chassis 103, each chassis 103 having multiple server blades 104, each server blade 104 having multiple heat generating electronic components (not shown in FIG. 1) disposed therein. Server cabinets 101 generally have an open rear (not shown) to allow access for wires, power cords and other physical attachments to the server blades 104. Latches 105 or other connectors hold server blades 104 to the carrying chassis 103, and chassis 103 may be configured as drawers in the server cabinet 101. A typical data center will contain multiple server cabinets 101.」
(当審訳: [0027]図1は、1又は複数のシャーシ103を備える典型的なサーバキャビネット101であって、各シャーシ103が複数のサーバブレード104を有し、各サーバブレード104が、その内部に配置された複数の発熱電子部品(図1には図示せず)を有するものを示す。サーバキャビネット101は、一般的には、電線、電源コード及び他のサーバブレード104への物理的な接続のためのアクセスを可能にする開放後部(図示せず)を有する。ラッチ105または他のコネクタは、ブレードサーバ104をシャーシ103に保持し、シャーシ103は、キャビネット101において、引出しとして構成されてもよい。典型的なデータセンターは、複数のサーバキャビネット101を含むだろう。)

「[0036]FIG. 3 is a schematic representation of a rear view of a chassis 103 having a chassis-level header assembly 301. Each chassis 103 carries multiple server blades 104. A chassis-level header assembly 301 according to the present invention is disposed proximate to the open rear of the chassis 103. Chassis-level header assembly 301 comprises one or more blade fluid inlet ports 304 which mate with the corresponding inlet port 204 of the dripless quick disconnect connector 203 of the frame-level input assembly 210 of each server 104 carried by the chassis 103. Each blade fluid inlet port 304 is in fluid communication with a chassis header inlet port 309, such as being connected by tubing.
[0037]Chassis-level header assembly 301 further comprises one or more blade fluid outlet ports 305 which mate with the corresponding outlet port 205 of the dripless quick disconnect connector 203 of the frame-level output assembly 211 of each server 104 carried by the chassis 103. Each blade fluid outlet port 305 is in fluid communication with a chassis header outlet port 310, such as being connected by tubing.
[0038]FIG. 4 is a schematic representation of a rear view of a server cabinet 101 having a cabinet-level header assembly 402. Each server cabinet 101 typically carries multiple chassis 103. A cabinet-level header assembly 402 according to the present invention is disposed proximate to the open rear of the cabinet 101. Cabinet-level header assembly 402 comprises a cabinet inlet header 403 and a cabinet return header 411. Cabinet inlet header 403 comprises one or more chassis inlet lines 404 which mate with the chassis header inlet port 309 of the chassis-level header assembly 301 of each chassis 103 carried by the cabinet 101. Each chassis inlet line 404 is in fluid connection with a cabinet header inlet port 412, such as being connected by cabinet header inlet tubing 409. Each chassis inlet line 404 may be equipped with a chassis inlet valve 406 to selectively open, close or partially restrict the flow of coolant fluid into the chassis inlet line 404. In a preferred embodiment, cabinet header inlet tubing 409 is joined with chassis inlet lines 404 through a corresponding inlet branch connection 405. The cabinet inlet header 403 is also preferably equipped with an inlet vacuum break valve 407 and an inlet air vent valve 408 to assist in the efficient flow of coolant fluid and for removal of entrapped air. Finally, a cabinet inlet header valve 410 may be provided on the cabinet inlet header 403 to selectively open, close or partially restrict the flow of coolant fluid into the cabinet inlet header 403 from the cabinet header inlet port 412.」
(当審訳: [0036]図3は、シャーシレベルヘッダ組立体301を有するシャーシ103の後部外観の概略図である。各シャーシ103は、複数のサーバブレード104を保持する。本発明に係るシャーシレベルヘッダ組立体301は、シャーシ103の開放後部に近接して配置される。シャーシレベルヘッダ組立体301は、シャーシ103によって保持された各サーバ104のフレームレベル入力組立体210の無滴構造迅速着脱コネクタ203の対応する入口ポート204につながる、1又は複数のブレード液体入口ポート304を備えている。各ブレード液体入口ポート304は、配管で接続されているといった状態で、シャーシヘッダ入口ポート309と液体で連通している。
[0037]シャーシレベルヘッダ組立体301は更に、シャーシ103によって担持される各サーバ104のフレームレベル出力組立体211の無滴構造迅速着脱コネクタ203の対応する出口ポート205につながる、1又は複数のブレード液体出口ポート305を備えている。各ブレード液体出口ポート305は、配管で接続されているといった状態で、シャーシヘッダ出口ポート310と液体で連通している。
[0038]図4は、キャビネットレベルヘッダ組立体402を有するサーバキャビネット101の後部外観の概略図である。各サーバキャビネット101は、典型的には、複数のシャーシ103を保持する。本発明に係るキャビネットレベルヘッダ組立体402は、キャビネット101の開放後部に近接して配置される。キャビネットレベルヘッダ組立体402は、キャビネット入口ヘッダ403及びキャビネット戻りヘッダ411を備えている。キャビネット入口ヘッダ403は、シャーシ101によって保持される各シャーシ103のシャーシレベルヘッダ組立体301のシャーシヘッダ入口ポート309につながる、1又は複数のシャーシ入口ライン404を備えている。各シャーシ入口ライン404は、キャビネットヘッダ入口配管409により接続されるといった状態で、ヘッダ入口ポート412と液体で連通している。各シャーシ入口ライン404は、シャーシ入口ライン404への冷却液の流れを選択的に開く、閉じる、又は部分的に制限するシャーシ入口弁406を備えていてもよい。好ましい実施態様においては、キャビネットヘッダ入口配管409は、対応する入口分岐接続405を介してシャーシ入口ライン404に結合されている。キャビネット入口ヘッダ403はまた、好ましくは、冷却液の効率的な流れの支援及び取り込まれた空気の除去のために、入口真空断絶弁407及び通気弁408を備えている。最後に、キャビネットヘッダ入口ポート412からキャビネット入口ヘッダ403への冷却液の流れを選択的に開く、閉じる、又は部分的に制限するために、キャビネット入口ヘッダ弁410が、キャビネット入口ヘッダ403の上に提供されてもよい。)

(図1)「



(図3)「



(図4)「



(2)上記(1)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数のシャーシ103を備えるサーバキャビネット101であって、
各シャーシ103は、複数のサーバブレード104を有し、各サーバブレード104は、その内部に配置された複数の発熱電子部品を有し、
シャーシ103は、シャーシレベルヘッダ組立体301を有し、シャーシレベルヘッダ組立体301は、シャーシ103によって保持された各サーバ104の対応する入口ポート204につながる、複数のブレード液体入口ポート304を備え、 各ブレード液体入口ポート304は、シャーシヘッダ入口ポート309と液体で連通し、
サーバキャビネット101は、キャビネットレベルヘッダ組立体402を有し、
キャビネットレベルヘッダ組立体402は、キャビネット入口ヘッダ403を備え、
キャビネット入口ヘッダ403は、シャーシ101によって保持される各シャーシ103のシャーシレベルヘッダ組立体301のシャーシヘッダ入口ポート309につながる、複数のシャーシ入口ライン404を備え、
各シャーシ入口ライン404は、ヘッダ入口ポート412と液体で連通し、
キャビネットヘッダ入口ポート412からキャビネット入口ヘッダ403へ冷却液が流れる、
サーバキャビネット101。」

2 引用文献3
原査定の拒絶の理由にて引用された引用文献3には、図面とともに、次の記載がある。

「[0022] A cooling unit similar to that depicted in FIG. 1 was used to cool IBM's large bipolar systems back in the 1980s and early 1990s. The cooling unit 11 was relatively large and occupied more than what would now be considered as two full electronics frames. Within the cooling unit was a power/control element 12, a reservoir/expansion tank 13, a heat exchanger 14, a pump 15 (often accompanied by a redundant second pump), customer water (or site or facility service water or coolant) in 16 and out 17 supply pipes, a supply manifold 18 directing water to the electronics frames 20, and a return manifold 19 directing water from the electronics frames 20.」
(当審訳: [0022]図1に示されたものと同様の冷却装置が、IBMの大型二極システムを冷却するために1980年代の後半と1990年代の初期に使用された。冷却ユニット11は相対的に大きく、現在2つのフルの電子機器フレームと考えられるであろう以上を占める。冷却装置内は、電力/制御要素12、貯留層/拡張タンク13、熱交換器14、ポンプ15(しばしば冗長の第2ポンプを伴う)、顧客の水(又は場所又は施設サービスの水又は冷却液)流入16及び流出17供給パイプ、水を電子機器フレーム20に導く供給マニホールド18、及び水を電子機器フレーム20から導く戻りマニホールド19であった。)

「[0024] FIGS. 3, 4, and 5 illustrate different ranges of operation for the SCCU. FIG. 3 shows a minimal number of MPU's 27 coupled to manifolds 24 and 25, to accommodate a low system flow requirement (note the minimal number of connections to manifolds 18 and 19 because of low number of electronic frames 20 and the low heat load associated with these frames). FIG. 4 shows a greater number of MPU's 27 coupled to manifolds 24 and 25, to accommodate a moderate coolant flow requirement (note the greater number of connections to manifolds 18 and 19 because of an increased number of frames 20 and the greater heat load associated with these frames 20). FIG. 5 shows the maximum number (for this configuration) of MPU's 27 coupled to manifolds 24 and 25, to accommodate the high coolant flow (note the maximum (for this configuration) number of connections to manifolds 18 and 19 and maximum heat load associated with the maximum number of frames this configuration will support.」
(当審訳: [0024]図3,4及び5は、SCCUのための異なる動作範囲を示している。図3は、システムの低い流量要件に対応することができる、マニホールド24及び25に接続されたMPU's 27の最小数を示す(低い電子フレーム20の数及びこれらのフレームと関連する低い熱負荷に起因するマニホールド18及び19との最小の接続数に留意されたい)。図4は、中程度の冷却剤の流量条件を対応することができる、マニホールド24及び25に接続されたより多くのMPU's 27の数を示す(増加した数のフレーム20及びフレーム20に関連付けられたより大きい熱負荷に起因する、マニホールド18及び19とのより大きな接続数に留意されたい)。図5は、大きな冷却剤の流量条件を対応することができる、マニホールド24及び25に接続された最大数(この構成の場合)のMPU's 27の数を示す(マニホールド18及び19との最大(この構成の場合)の接続数及びこの設定がサポートするであろう最大数のフレーム20に関連する最大の熱負荷に留意されたい)。)

(図1)「



(図4)「



第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(ア)引用発明の「サーバキャビネット101」が備える「複数のシャーシ103」における、「各シャーシ103」の「複数のサーバブレード104」の配置について、図1を参照すると、複数の「サーバブレード104」は、少なくとも高さ方向に積層されているといえる。
そして、「各サーバブレード104は、その内部に配置された複数の発熱電子部品を有」するから、引用発明の「サーバブレード104」は、本願発明1の「電子機器」に相当する。

(イ)引用発明の「サーバキャビネット101」において、「キャビネットヘッダ入口ポート412からキャビネット入口ヘッダ403へ冷却液が流れる」ことは、「サーバブレード104」の「発熱電子部品」を「冷却液」で冷却するためであることが明らかであり、ここで、引用発明の「冷却液」は、本願発明1の「冷却液」に相当する。
また、引用発明の「サーバキャビネット101」は、「複数のサーバブレード104」を含むものであり、サーバとしての情報処理の機能を果たすことが明らかであるから、本願発明1の「情報処理装置」に相当する。
以上の点について、上記(ア)を踏まえると、引用発明における「複数のサーバブレード104」を含む「サーバキャビネット101」と、本願発明1とは、
「高さ方向に積層された複数の電子機器を冷却液で冷却する情報処理装置」
である点で一致する。

(イ)引用発明では、「サーバキャビネット101」における「キャビネットレベルヘッダ組立体402」の「キャビネット入口ヘッダ403」が、「シャーシ101によって保持される各シャーシ103のシャーシレベルヘッダ組立体301のシャーシヘッダ入口ポート309につながる、複数のシャーシ入口ライン404を備え」るとともに、「各シャーシ入口ライン404」が「ヘッダ入口ポート412と液体で連通」するから、「キャビネットヘッダ入口ポート412からキャビネット入口ヘッダ403へ」と流れる「冷却液」は、「複数のシャーシ入口ライン404」へ分配されるといえる。
また、引用発明では、「シャーシ103」における「シャーシレベルヘッダ組立体301」が、「シャーシ103によって保持された各サーバ104の対応する入口ポート204につながる、複数のブレード液体入口ポート304を備え」るとともに、「各ブレード液体入口ポート304」が「シャーシヘッダ入口ポート309と液体で連通」するから、上記の「複数のシャーシ入口ライン404」へと分配された個々の「シャーシ入口ライン404」の「冷却液」は、「複数のブレード液体入口ポート304」のそれぞれに「対応する」、「各サーバ104」の「入口ポート204」へ更に分配されるといえる。
よって、引用発明の「サーバキャビネット101」における「キャビネットレベルヘッダ組立体402」及び「シャーシレベルヘッダ組立体301」は、「冷却液」を2階層で分配する分配手段を備えているということができ、当該手段は、本願発明1の「分配器」に相当する。また、ここで、分配の階層数が「2階層」であることは、本願発明1の「複数階層」に含まれる。
以上のことから、引用発明は、本願発明1の
「前前記冷却液を複数階層で分配する分配器」
に相当する構成を備えるものである。

(ウ)上記(イ)で検討した引用発明の構成において、「冷却液」は、まず、「キャビネットヘッダ入口ポート412」を含む分配用の配管と、当該配管から分岐された複数の配管であって、2階層目への分配及び連絡用の配管である「シャーシ入口ライン404」とを有する分配手段により1階層目の分配がなされ、その後、分配用の配管である各「シャーシ入口ライン404」と、当該「シャーシ入口ライン404」から分岐された複数の配管であって、「各サーバ104」への分配及び連絡用の配管である「ブレード液体入口ポート304」を含む配管とを有する分配手段により最終の2階層目の分配がなされるといえる。
すなわち、引用発明の「キャビネットレベルヘッダ組立体402」及び「シャーシレベルヘッダ組立体301」は、「冷却液」を2階層で分配する分配手段の各階層が、分配用の配管と、当該配管から分岐された複数の分配及び連絡用の配管とを有する1階層当たりの分配手段を備え、最終の2階層目の分配及び連絡用の配管が「各サーバ104」に接続されるものであって、ここで、分配用の配管、分配及び連絡用の配管、1階層当たりの分配手段は、それぞれ、本願発明1の「分配用配管」、「分配用連絡管」、「分配層分配器」に相当する。
また、分配用の配管の本数が、下流側の階層ほど増すことは当然である(具体的には、「キャビネットヘッダ入口ポート412」を含む配管が1本であるのに対して、「シャーシ入口ライン404」は4本に増加することが、引用文献1の図4から見て取れる。)。
以上のことについて、上記(ア)を踏まえると、引用発明の「キャビネットレベルヘッダ組立体402」及び「シャーシレベルヘッダ組立体301」と、本願発明1の
「前記分配器の各階層は、前記冷却液を一時的に蓄える分配用配管と、前記分配用配管から分岐された複数の分配用連絡管とを有する分配層分配器を備え、下流側の階層ほど前記分配用配管が増し、最終階層の前記分配用連絡管が前記電子機器に接続される」
こととは、
「前記分配器の各階層は、分配用配管と、前記分配用配管から分岐された複数の分配用連絡管とを有する分配層分配器を備え、下流側の階層ほど前記分配用配管が増し、最終階層の前記分配用連絡管が前記電子機器に接続される」
という点で共通している。

イ したがって、本願発明1と引用発明とは以下の点で一致する。
(一致点)
「高さ方向に積層された複数の電子機器を冷却液で冷却する情報処理装置であって、
前前記冷却液を複数階層で分配する分配器を備え、
前記分配器の各階層は、分配用配管と、前記分配用配管から分岐された複数の分配用連絡管とを有する分配層分配器を備え、下流側の階層ほど前記分配用配管が増し、最終階層の前記分配用連絡管が前記電子機器に接続される情報処理装置。」

ウ また、本願発明1と引用発明とは以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1の「分配用配管」は、「前記冷却液を一時的に蓄える」のに対して、引用発明の「キャビネットヘッダ入口ポート412」を含む配管や、「シャーシ入口ライン404」は、そのような機能を有することが特定されるものではない点。

(相違点2)
本願発明1は、
「前記分配器が前記冷却液を分配する総分岐数をRとして、階層数をTとした場合、
第N階層の分配用配管それぞれから分岐される分岐数は、以下の式、
α=R^(1/T) ・・・(Rの1/T乗)
ただし、R、Tは2以上の整数、により求められた値αに最も近い総分岐数の因数であって、前記因数が±α/2以内の範囲内にあって、給水管の上流側にある分配用配管の本数が少ない方の因数とする」
というものであるのに対して、引用発明の「キャビネットヘッダ入口ポート412」を含む配管や「シャーシ入口ライン404」における分岐数は、そのような数値であると特定されるものではない点。

(2)判断
事案に鑑みて、相違点2について先に検討する。
複数の電子機器を冷却液で冷却するために分配器を用いて2以上の階層で冷却液を分配する際に、前記分配器が前記冷却液を分配する総分岐数をRとして、階層数をTとした場合の、第N階層の分配用配管それぞれから分岐される分岐数について、
α=R^(1/T) ・・・(Rの1/T乗)
ただし、R、Tは2以上の整数、により求められた値αに最も近い総分岐数の因数であって、前記因数が±α/2以内の範囲内にあって、給水管の上流側にある分配用配管の本数が少ない方の因数とする、という条件を満足するように設定することは、引用文献1,3のいずれにも記載されておらず、本願の出願日前において周知技術であったともいえない。
引用文献3には、上記第4の2のとおりの記載があるものの、上記条件を満足する分配器の分岐数の関係を開示するものとは認められない。同文献の図4から、「供給マニホールド18」における分岐数が6であることが見て取れるが、これを2階層における1階層目の分岐であるとみなした上で、「電子機器フレーム20」において、2階層目の分岐がなされているものと直ちに認めることはできない。
また、仮に、引用文献3が、「電子機器フレーム20」にける2階層目の分岐数が8であることを開示するものであるとしても、引用発明において、そのような分岐数の関係を適用する動機付けは見出せない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1,3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2,3について
本願発明2,3は、本願発明1を減縮した発明であるから、いずれも、相違点2に係る技術的事項を有する。
したがって、本願発明2,3も本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1〜3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定についての判断
本願発明1〜3は相違点2に係る技術的事項を有するものであり、上記第5のとおり、引用文献1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第7 当審拒絶理由について
当審が令和4年7月28日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
請求項1の記載によれば、請求項1に係る発明には、「第N階層の分配用配管それぞれから分岐される分岐数」を、(「給水管の上流側にある分配用配管の本数」とは無関係に)「排水管の下流側にある合流用配管の本数」に基づいて規定する場合が含まれるが、のような場合については、発明の詳細な説明に記載も示唆もなく、本願出願日前の技術常識を参酌しても自明とはいえない。

これに対して、令和4年8月10日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1では、択一的記載の一方の選択肢である「排水管の下流側にある合流用配管の本数」に関する記載が削除されている。
よって、当審拒絶理由は解消した。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-10-18 
出願番号 P2017-191388
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 富澤 哲生
▲高▼瀬 健太郎
発明の名称 情報処理装置  
代理人 河野 努  
代理人 宮本 哲夫  
代理人 青木 篤  

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