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審決分類 |
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 E06B 審判 一部申し立て 1項2号公然実施 E06B 審判 一部申し立て 1項1号公知 E06B |
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管理番号 | 1390562 |
総通号数 | 11 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-11-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-09-29 |
確定日 | 2022-09-09 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6869863号発明「建具及び建具の施工方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6869863号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4〕、3、5について訂正することを認める。 特許第6869863号の請求項1、2、4に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6869863号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成29年9月22日に出願され、令和3年4月16日にその特許権の設定登録がされ、同年5月12日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和3年9月29日に特許異議申立人中川賢治(以下「申立人」という。)により、請求項1、2及び4に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、当審は、令和4年1月31日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、その指定期間内である令和4年3月25日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)を行った。 なお、当審より令和4年5月23日付けで、上記意見書及び訂正の請求に対して、申立人に期間を指定して意見を述べる機会を与えたが、上記期間内に何らの応答はなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求は、本件特許の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1〜5について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容(以下「本件訂正」という。)は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所を示す。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「柱又は耐力壁を挟んで位置する2つの開口のうちの一方の前記開口に設けられる開口枠と、 前記開口枠に囲まれた空間を閉塞可能に設けられ、スライドして他方の前記開口側に移動可能な障子と、 透光性を有する面材を備え、前記他方の開口を閉塞する面材ユニットと、 を有し、 前記障子は、前記面材ユニットの屋外側に位置する状態まで移動可能であることを特徴とする建具。」とあるのを、 「柱又は耐力壁を挟んで位置する2つの開口のうちの一方の前記開口に設けられる開口枠と、 前記開口枠に囲まれた空間を閉塞可能に設けられ、スライドして他方の前記開口側に移動可能な障子と、 透光性を有する面材を備え、前記他方の開口を閉塞する面材ユニットと、 を有し、 前記開口枠は、矩形状に枠組みされた状態で前記一方の開口に挿入され、 前記障子は、前記面材ユニットの屋外側に位置する状態まで移動可能であることを特徴とする建具。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2、4も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に、 「請求項1または請求項2に記載の建具であって、 前記障子がスライドするレールを備え前記一方の開口側から前記他方の開口側に亘って設けられるレール枠を有し、 前記面材ユニットは、前記面材を保持して駆体に固定される面材枠を有し、 前記レール枠は、前記面材枠に載置されていることを特徴とする建具。」とあるのを、 「柱又は耐力壁を挟んで位置する2つの開口のうちの一方の前記開口に設けられる開口枠と、 前記開口枠に囲まれた空間を閉塞可能に設けられ、スライドして他方の前記開口側に移動可能な障子と、 透光性を有する面材を備え、前記他方の開口を閉塞する面材ユニットと、 を有し、 前記障子は、前記面材ユニットの屋外側に位置する状態まで移動可能であり、 前記障子がスライドするレールを備え前記一方の開口側から前記他方の開口側に亘って設けられるレール枠を有し、 前記面材ユニットは、前記面材を保持して駆体に固定される面材枠を有し、 前記レール枠は、前記面材枠に載置されていることを特徴とする建具。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に 「請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の建具であって、 前記障子の幅は、前記柱及び前記耐力壁の幅より広いことを特徴とする建具。」とあるのを、 「請求項1または請求項2に記載の建具であって、 前記障子の幅は、前記柱及び前記耐力壁の幅より広いことを特徴とする建具。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に 「請求項4に記載の建具の施工方法であって、 前記一方の開口の内周に前記開口枠を取り付ける開口枠取付ステップと、 前記他方の開口の内周に前記面材ユニットを取り付ける面材ユニット取付ステップと 上下に配置される前記レール枠が方立により連結された枠ユニットを前記開口枠及び前記面材ユニットに取り付ける枠ユニット取付ステップと、 を有することを特徴とする建具の施工方法。」とあるのを、 「柱又は耐力壁を挟んで位置する2つの開口のうちの一方の前記開口に設けられる開口枠と、 前記開口枠に囲まれた空間を閉塞可能に設けられ、スライドして他方の前記開口側に移動可能な障子と、 透光性を有する面材を備え、前記他方の開口を閉塞する面材ユニットと、 を有し、 前記障子は、前記面材ユニットの屋外側に位置する状態まで移動可能であり、 前記障子がスライドするレールを備え前記一方の開口側から前記他方の開口側に亘って設けられるレール枠を有し、 前記障子の幅は、前記柱及び前記耐力壁の幅より広い、 建具の施工方法であって、 前記一方の開口の内周に前記開口枠を取り付ける開口枠取付ステップと、 前記他方の開口の内周に前記面材ユニットを取り付ける面材ユニット取付ステップと 上下に配置される前記レール枠が方立により連結された枠ユニットを前記開口枠及び前記面材ユニットに取り付ける枠ユニット取付ステップと、 を有することを特徴とする建具の施工方法。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否等について (1)訂正事項1 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、発明を特定する事項である「開口枠」について、「前記開口枠は、矩形状に枠組みされた状態で前記一方の開口に挿入され」るものに限定する訂正であるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張、変更の有無について 訂正事項1は、上記アのとおり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、請求項1に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 ウ 新規事項の追加について 本件特許の明細書の段落【0026】に、「矩形状に枠組みされた開口枠30は、全周に開口固定部31a、32a、33aが外周側に突出しており、柱6、8及び窓まぐさ9により形成される、建物の開口1bに屋外側から挿入される。」と記載されていることからみて、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものである。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的、特許請求の範囲の拡張、変更、新規事項の有無について 訂正事項2は、訂正前の請求項3が請求項1または請求項2の記載を引用するものであるところ、請求項2を引用しないものとした上で、請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改める訂正であるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする」ことを目的とするものである。 そして、当該目的を勘案すると、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであることも明らかである。 イ 独立特許要件について 上記アのとおり、訂正事項2は「特許請求の範囲の減縮」も目的とするものであるところ、訂正事項2により訂正された請求項3は、特許異議の申立てがなされていないから、本件訂正後の請求項3に係る発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものでなくてはならない(特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第7項)、つまり、独立特許要件を満たす必要がある。 そこで、本件訂正後の請求項3に係る発明が、独立特許要件を満たすか否かについて、以下検討する。 本件訂正後の請求項3に係る発明の発明特定事項のうち、少なくとも「前記障子がスライドするレールを備え前記一方の開口側から前記他方の開口側に亘って設けられるレール枠」と「前記面材ユニットは、前記面材を保持して駆体に固定される面材枠」との関係において、「前記レール枠は、前記面材枠に載置されていること」については、本件特許の出願前に周知又は公知技術であったことを示す証拠は存在しないから、本件訂正後の請求項3に係る発明の新規性や進歩性(特許法29条1項、2項)を否定することはできず、また、本件訂正後の請求項3に係る発明が、独立特許要件を満たさないとする他の理由も存在しない。 よって、本件訂正後の請求項3に係る発明は、独立特許要件を満たしているものと認める。 (3)訂正事項3 訂正事項3は、訂正前の請求項4が請求項1乃至3のいずれかを引用するところ、請求項3を引用しないものとする訂正であるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものであることも明らかである。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的 訂正事項4は、訂正前の請求項5が請求項1乃至3のいずれかを引用する請求項4を引用する記載であるところ、請求項2、3を引用しないものとするとともに、請求項1、4を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるものであるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 さらに、訂正前の請求項5に「前記レール枠」とあるのに対し、訂正前の請求項1、4には「レール枠」の前出がないことから、「前記レール枠」の前に「前記障子がスライドするレールを備え前記一方の開口側から前記他方の開口側に亘って設けられるレール枠を有し、」を加入する訂正であるから、「特許請求の範囲の減縮」及び「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。 イ 特許請求の範囲の拡張、変更の有無について 訂正事項4は、上記アのとおりの「特許請求の範囲の減縮」等を目的とするものであって、請求項1に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 ウ 新規事項の追加について 本件特許の明細書の段落【0009】に、「前記障子がスライドするレールを備え前記一方の開口側から前記他方の開口側に亘って設けられるレール枠を有し、」と記載されていることからみて、訂正事項4のうち、「前記障子がスライドするレールを備え前記一方の開口側から前記他方の開口側に亘って設けられるレール枠を有し、」を加入する訂正は、本件明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものである。 また、訂正事項4のその他の訂正事項については、上記アのとおりであるから、本件明細書等に記載された事項の範囲内の訂正であることは明らかである。 エ 独立特許要件 上記アのとおり、訂正事項4は「特許請求の範囲の減縮」も目的とするものであるところ、訂正事項4により訂正された請求項5は、特許異議の申立てがなされていないから、本件訂正後の請求項5に係る発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものでなくてはならない(特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第7項)、つまり、独立特許要件を満たす必要がある。 そこで、本件訂正後の請求項5に係る発明が、独立特許要件を満たすか否かについて、以下検討する。 本件訂正後の請求項5に係る発明の発明特定事項のうち、少なくとも、 「前記一方の開口の内周に前記開口枠を取り付ける開口枠取付ステップと、 前記他方の開口の内周に前記面材ユニットを取り付ける面材ユニット取付ステップと 上下に配置される前記レール枠が方立により連結された枠ユニットを前記開口枠及び前記面材ユニットに取り付ける枠ユニット取付ステップと、 を有すること」については、本件特許の出願前に周知又は公知技術であったことを示す証拠は存在しないから、本件訂正後の請求項5に係る発明の新規性や進歩性(特許法29条1項、2項)を否定することはできず、また、本件訂正後の請求項5に係る発明が、独立特許要件を満たさないとする他の理由も存在しない。 よって、本件訂正後の請求項5に係る発明は、独立特許要件を満たしているものと認める。 (5)訂正の単位について 訂正前の請求項1〜5について、請求項2〜5は直接または間接的に請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1〜5に対応する訂正後の請求項1〜5は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 なお、特許権者は、訂正後の請求項3及び請求項5について、当該請求項についての訂正が認められる場合は、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。 3 訂正請求のまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とし、同法第126条第9項の規定により準用する同法第126条第5項、第6項及び第7項の規定を満たしている。 よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4〕、3、5について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記第2のとおり本件訂正請求は認められるから、本件特許の請求項1〜5に係る発明は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により特定されるところ、そのうち請求項1、2、4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等といい、全ての発明を合わせて「本件発明」という。)は、以下のとおりである。 【請求項1】 柱又は耐力壁を挟んで位置する2つの開口のうちの一方の前記開口に設けられる開口枠と、 前記開口枠に囲まれた空間を閉塞可能に設けられ、スライドして他方の前記開口側に移動可能な障子と、 透光性を有する面材を備え、前記他方の開口を閉塞する面材ユニットと、 を有し、 前記開口枠は、矩形状に枠組みされた状態で前記一方の開口に挿入され、 前記障子は、前記面材ユニットの屋外側に位置する状態まで移動可能であることを特徴とする建具。 【請求項2】 請求項1に記載の建具であって、 前記面材ユニットは、前記他方の開口において、前記柱又は前記耐力壁の屋外側の面より屋内側に位置する部位を有していることを特徴とする建具。 【請求項4】 請求項1または2に記載の建具であって、 前記障子の幅は、前記柱及び前記耐力壁の幅より広いことを特徴とする建具。 第4 取消理由の概要及び証拠の記載 1 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1、2、4に係る発明に対して、令和4年1月31日付けで通知した取消理由の概要は以下のとおりである。 (1)新規性 請求項1、2、4に係る発明は、本件特許出願前に頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 〔証拠〕 甲第1号証:砺波の工務店フラグシップシャチョーの家づくり、 「木製サッシはこんなテクニックが可能」 [オンライン]、2015年5月27日、[検索日2021年 7月9日]、インターネット:<https://flower76.blog.fc2. com/blog-entry-955.html>、1〜4頁 2 証拠の記載 (1)甲第1号証 ア 甲第1号証の記載 甲第1号証には、以下の写真及び記載がある。 (ア)(第1頁) ![]() (第2頁) ![]() (第3頁) ![]() (第4頁) ![]() (イ)1頁1行の「木製サッシはこんなテクニックが可能」との記載、3頁上段の写真下の「こちらが仕上り。真ん中の柱の向かって右側が引き戸になっていて、左側はFIXガラス。・・・引き戸は閉まって状態ですが、開いているように見えませんか?」との記載、同中段の写真下の「引き戸を半分だけ開けるとこんな感じ。おぉ〜。ほらガラスあるでしょ。」との記載、同下段の写真下の「とりあえずフルオープンにしてみます。閉まっていた状態と見た感じが同じ!」との記載を勘案して、上記3枚の写真をみると、 ・手前が室内側、奥が室外側であって、室内側と屋外側との境界に左右方向に3本の柱が並列し、木製サッシが設けられていること、 ・真ん中の柱を挟んで左右に開口が形成されていること、 ・右側の開口を閉塞可能な透明なガラスを嵌めたガラス引き戸が設けられていること、 ・左側の開口を閉塞可能な透明なFIXガラスが固定されていること、 ・ガラス引き戸は、左側の開口側であってその屋外側に位置する状態まで移動可能であること、 ・FIXガラスは、左側の柱の奥行き内に位置していること、 ・ガラス引き戸の幅は、柱の幅より広いこと、 が看取できる。 また、右側の開口は、ガラス引き戸により閉塞可能であるから、右側の開口には開口枠が設けられていることは自明な事項である。そして、右側の開口は、ガラス引き戸により閉塞可能であれば、開口枠に囲まれた空間も、ガラス引き戸により閉塞可能であることは明らかである。 さらに、左側の開口には、FIXガラスを保持するガラス枠が設けられていることも自明な事項である。 イ 甲第1号証に記載の発明 上記アからみて、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。 「室内側からみて、真ん中の柱を挟んで形成された左右の開口のうち、右側の開口に設けられる開口枠と、 前記開口枠に囲まれた空間を閉塞可能に設けられ、スライドして左側の開口側に移動可能なガラス引き戸と、 左側の開口を閉塞する透明なFIXガラスと、FIXガラスを固定するガラス枠と、 を有し、 前記ガラス引き戸は、FIXガラスとガラス枠の屋外側に位置する状態まで移動可能であって、 FIXガラスは、左側の柱の奥行き内に位置しており、 ガラス引き戸の幅は、中央の柱の幅よりも広い、 木製サッシ。」 第5 当審の判断 1 本件発明1について (1)対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「真ん中の柱」、「右側の開口」、「左側の開口」、「ガラス引き戸」、「透明なFIXガラス」、「透明なFIXガラスとガラス枠」、「木製サッシ」は、それぞれ本件発明1の「柱」、「一方の前記開口」、「他方の前記開口」、「障子」、「透光性を有する面材」、「面材ユニット」、「建具」に相当するから、本件発明1と甲1発明とは、 「柱を挟んで位置する2つの開口のうちの一方の前記開口に設けられる開口枠と、 前記開口枠に囲まれた空間を閉塞可能に設けられ、スライドして他方の前記開口側に移動可能な障子と、 透光性を有する面材を備え、前記他方の開口を閉塞する面材ユニットと、 を有し、 前記障子は、前記面材ユニットの屋外側に位置する状態まで移動可能である建具。」で一致し、以下の点で相違する。 〔相違点1〕 開口枠について、本件発明1は、「矩形状に枠組みされた状態で前記一方の開口に挿入され」るのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。 (2)判断 ア 上記相違点1について検討する。 上記相違点1に係る構成について、申立人からさらなる証拠は示されておらず、また、本件特許の出願前に周知の技術であったことを示唆する証拠も存在しないから、上記相違点1は実質的な相違点である。よって、本件発明1は甲1発明と同一ではない。 イ 付加的に、さらに以下検討する。 上記のとおりさらなる証拠は存在しないから、上記相違点1に係る構成を採用する動機付けも存在せず、よって、甲1発明において、上記相違点1に係る本件発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことではない。 仮に、上記相違点1に係る構成が、本件特許の出願前に公知又は周知の技術であったとしても、上記第4の2(1)アにおいて、甲第1号証の写真及び記載から、開口や開口枠を看取したように、あくまで開口や開口枠の存在が認定できるに過ぎず、その開口や開口枠の詳細な構造は不明であるし、甲1発明は「木製サッシ」であることを踏まえると、このような木製サッシの開口や開口枠に適用できるとはただちにいうことはできない。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1は甲1発明と同一ではない。 2 本件発明2、4について 本件発明2、4は、本件発明1の構成を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記1で検討した理由と同じ理由により、甲1発明と同一ではない。 第6 採用しなかった特許異議申立理由について 1 採用しなかった申立理由 甲1発明が施工された家は、甲第3号証(株式会社おおみ設計、プライベートデッキの家、[オンライン][検索日令和3年8月25日]、インターネット:<URL://www.osekkei.com/work/jyuutaku/o/o.htm>)に紹介されている一般の民家であって、甲第3号証の「プライベートデッキの家」として紹介される写真に写る部屋は、甲第1号証の第2頁の一番上の写真で、竣工写真として写された部屋であり、甲第3号証で紹介される「プライベートデッキの家」は、甲第1号証に記載される甲1発明が施工された家であるから、甲1発明は、本願出願日前に、一般の民家において、施主、設計事務所、施工業者等、不特定多数の者が知り得る状態で施工(実施)されたことから、甲1発明は、公然実施された発明であり、本件発明1、2、4は、甲第3号証から公然実施された発明か公然知られた発明である旨、申立人は主張する(特許異議申立書10頁下から2行〜11頁末行、14頁4〜5行)。 2 検討 上記1の主張について検討する。 (1)甲第3号証 甲第3号証の記載は以下のとおりである。 ![]() (2)検討 まず、甲第3号証は、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった時期が不明である。そして、甲第1号証と甲第3号証との関係は、両記載からは不明であって、申立人が主張するような関係を理解することはできないから、甲1発明が甲第3号証に示したように施工されたものかどうか不明と言わざるを得ない。 仮に、甲1発明が甲第3号証に示したように本件特許の出願前に施工されたものであったとしても、上記第5で検討したとおり、本件発明1、2、4と甲1発明とは、上記相違点1で相違するから、本件発明1、2、4は、公然実施されたか公然知られた発明ということはできない。 よって、申立人の主張は採用できるものではない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1、2、4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 柱又は耐力壁を挟んで位置する2つの開口のうちの一方の前記開口に設けられる開口枠と、 前記開口枠に囲まれた空間を閉塞可能に設けられ、スライドして他方の前記開口側に移動可能な障子と、 透光性を有する面材を備え、前記他方の開口を閉塞する面材ユニットと、 を有し、 前記開口枠は、矩形状に枠組みされた状態で前記一方の開口に挿入され、 前記障子は、前記面材ユニットの屋外側に位置する状態まで移動可能であることを特徴とする建具。 【請求項2】 請求項1に記載の建具であって、 前記面材ユニットは、前記他方の開口において、前記柱又は前記耐力壁の屋外側の面より屋内側に位置する部位を有していることを特徴とする建具 【請求項3】 柱又は耐力壁を挟んで位置する2つの開口のうちの一方の前記開口に設けられる開口枠と、 前記開口枠に囲まれた空間を閉塞可能に設けられ、スライドして他方の前記開口側に移動可能な障子と、 透光性を有する面材を備え、前記他方の開口を閉塞する面材ユニットと、 を有し、 前記障子は、前記面材ユニットの屋外側に位置する状態まで移動可能であり、 前記障子がスライドするレールを備え前記一方の開口側から前記他方の開口側に亘って設けられるレール枠を有し、 前記面材ユニットは、前記面材を保持して躯体に固定される面材枠を有し、 前記レール枠は、前記面材枠に載置されていることを特徴とする建具。 【請求項4】 請求項1または請求項2に記載の建具であって、 前記障子の幅は、前記柱及び前記耐力壁の幅より広いことを特徴とする建具。 【請求項5】 柱又は耐力壁を挟んで位置する2つの開口のうちの一方の前記開口に設けられる開口枠と、 前記開口枠に囲まれた空間を閉塞可能に設けられ、スライドして他方の前記開口側に移動可能な障子と、 透光性を有する面材を備え、前記他方の開口を閉塞する面材ユニットと、 を有し、 前記障子は、前記面材ユニットの屋外側に位置する状態まで移動可能であり、 前記障子がスライドするレールを備え前記一方の開口側から前記他方の開口側に亘って設けられるレール枠を有し、 前記障子の幅は、前記柱及び前記耐力壁の幅より広い、 建具の施工方法であって、 前記一方の開口の内周に前記開口枠を取り付ける開口枠取付ステップと、 前記他方の開口の内周に前記面材ユニットを取り付ける面材ユニット取付ステップと、 上下に配置される前記レール枠が方立により連結された枠ユニットを前記開口枠及び前記面材ユニットに取り付ける枠ユニット取付ステップと、 を有することを特徴とする建具の施工方法。 |
異議決定日 | 2022-08-31 |
出願番号 | P2017-182023 |
審決分類 |
P
1
652・
112-
YAA
(E06B)
P 1 652・ 111- YAA (E06B) P 1 652・ 113- YAA (E06B) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
長井 真一 |
特許庁審判官 |
住田 秀弘 西田 秀彦 |
登録日 | 2021-04-16 |
登録番号 | 6869863 |
権利者 | YKK AP株式会社 |
発明の名称 | 建具及び建具の施工方法 |
代理人 | 一色国際特許業務法人 |
代理人 | 一色国際特許業務法人 |