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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C12Q
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C12Q
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C12Q
管理番号 1390571
総通号数 11 
発行国 JP 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2022-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2021-11-17 
確定日 2022-09-12 
異議申立件数
訂正明細書 true 
事件の表示 特許第6874244号発明「身体状態の評価方法、情報の提示方法、および身体状態を改善又は予防する物質のスクリーニング方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6874244号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〜12〕、〔13、33〕、〔14、35〕、〔15、37〕、34、36、38について訂正することを認める。 特許第6874244号の請求項1〜6、12に係る特許を維持する。 特許第6874244号の請求項7〜11に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯及び証拠方法
1 手続の経緯
特許第6874244号(請求項の数32。以下、「本件特許」という。)は、平成28年5月19日に出願された特願2016−100475号(以下、「原出願」という。国内優先権主張;平成27年7月21日)の一部を、平成28年11月16日に新たな特許出願としたものであって、令和3年4月26日にその特許権の設定登録がされ、同年5月19日に特許掲載公報が発行された。
その後、同年11月17日に、本件特許の請求項1〜12に係る特許に対して、特許異議申立人である永井 望(以下、「申立人」という。)から特許異議の申立てがされたものである。
よって、本件特許異議申立てに係る審理対象は、請求項1〜12に係る特許についてであり、請求項13〜32に係る特許は、本件審理の対象外である。
手続の経緯は以下のとおりである。

令和3年11月17日 特許異議申立書の提出
令和4年 3月 2日付け 取消理由通知書
同年 4月28日 訂正請求書、意見書(特許権者)の提出
同年 5月19日付け 通知書(申立人宛)
同年 6月22日 意見書(申立人)の提出

2 証拠方法
申立人が特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に添付した証拠方法は、以下のとおりである。

甲第1号証(A):株式会社ワールドフュージョン、「肌フローラ:常在菌で美肌チェック」、2015年、インターネット
甲第1号証(B):株式会社ワールドフュージョン、「肌フローラ:常在菌で美肌チェック|肌チェック利用流れ」、2015年、インターネット
甲第1号証(C):株式会社ワールドフュージョン、「肌フローラ:常在菌で美肌チェック|検査結果からわかること」、2015年、インターネット
甲第1号証(D):株式会社ワールドフュージョン、「肌フローラ:常在菌で美肌チェック|肌フローラからのお勧めコスメ」、2015年、インターネット
甲第1号証(E):株式会社ワールドフュージョン、「皮膚菌叢解析」、2015年、インターネット
甲第1号証(F):株式会社ワールドフュージョン、「皮膚菌叢解析」、2015年、インターネット
甲第1号証(G):株式会社ワールドフュージョン、「肌フローラ:常在菌で美肌チェック|ニュース」、2015年、インターネット
甲第1号証(H):株式会社ワールドフュージョン、「肌フローラ:常在菌で美肌チェック|見積から納品まで」、2015年、インターネット
甲第1号証(I):株式会社ワールドフュージョン、「皮膚菌叢解析」、2015年、インターネット
甲第2号証:株式会社ワールドフュージョン、「日本人皮膚菌叢解析と皮膚状態との関連性」プレゼンテーション資料
甲第3号証:Si,J., Lee,S., Park,J.M. et al. Genetic associations and shared environmental effects on the skin microbiome of Korean twins. BMC Genomics 16, 992(2015).
甲第4号証:株式会社秀和システム「世界一やさしくわかる医療統計」(2011)第146〜150頁
甲第5号証(A):丸善株式会社「化粧品事典」(2003)第591頁
甲第5号証(B):丸善株式会社「化粧品事典」(2003)第515〜516頁
(以下、上記甲第1号証(A)〜(I)を「甲1(A)」〜「甲1(I)」といい、甲第2号証〜甲第5号証(B)を「甲2」〜「甲5(B)」という。)

第2 訂正の適否
1 訂正事項
令和4年4月28日付けの訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の請求は、特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりのものである。

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記身体状態は、肌年齢、または肌のたるみの状態である」とあるのを、
「前記身体状態は、肌年齢、または肌のたるみの状態であり、
前記身体状態が肌のたるみの状態である場合、
(i)前記相関性基準は、実年齢による影響の排除後における、前記身体状態と前記存在割合又は前記パラメータとの相関性基準である、
(ii)前記相関性基準は、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものである、
(iii)前記パラメータは、複数の皮膚常在微生物の存在割合の差、和、積、比またはそれらの組合せである(皮膚常在微生物の多様性指数ではない)、
又は
(iv)前記存在割合またはパラメータは、検体の細菌叢間の非類似度を分析して得られる座標軸と相関する(Propionibacterium acnes菌の存在割合ではない)ものである」に、
訂正する。
請求項1を引用する請求項2についても、同様に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記身体状態は、肌年齢、または肌のたるみの状態である」とあるのを、
「前記身体状態は、肌年齢、または肌のたるみの状態であり、
前記身体状態が肌のたるみの状態である場合、
(i)前記相関性基準は、実年齢による影響の排除後における、前記身体状態と前記存在割合又は前記パラメータとの相関性基準である、
(ii)前記相関性基準は、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものである、
(iii)前記パラメータは、複数の皮膚常在微生物の存在割合の差、和、積、比またはそれらの組合せである(皮膚常在微生物の多様性指数ではない)、
又は
(iv)前記存在割合またはパラメータは、検体の細菌叢間の非類似度を分析して得られる座標軸と相関する(Propionibacterium acnes菌の存在割合ではない)ものである」に、
訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に、
「前記身体状態は、老化肌指数、脂性肌、肌のそばかす、きめ、黄ばみ、かさつき、てかり、しみ、くすみ、しわ、はりの状態、毛穴の状態の少なくとも1種である肌の状態である」とあるのを、
「前記身体状態は、老化肌指数、脂性肌、肌のそばかす、きめ、黄ばみ、かさつき、てかり、しみ、くすみ、しわ、はりの状態、毛穴の状態の少なくとも1種である肌の状態であり、
前記身体状態が脂性肌、肌のそばかす、かさつき、てかり、しみ、くすみ、しわ、はりの状態又は毛穴の状態である場合、
(i)前記相関性基準は、実年齢による影響の排除後における、前記身体状態と前記存在割合又は前記パラメータとの相関性基準である、
(ii)前記相関性基準は、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものである、
(iii)前記パラメータは、複数の皮膚常在微生物の存在割合の差、和、積、比またはそれらの組合せである(皮膚常在微生物の多様性指数ではない)、
(iv)前記存在割合またはパラメータは、検体の細菌叢間の非類似度を分析して得られる座標軸と相関する(Propionibacterium acnes菌の存在割合ではない)ものである、又は
(v)前記存在割合としてPropionibacterium acnes菌の存在割合と、前記パラメータとして皮膚常在微生物の多様性指数と、を併用する(ただし(v)は前記身体状態がしみ、くすみの場合に限る)」に、
訂正する。
請求項4を引用する請求項5、12についても、同様に訂正する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に、
「前記身体状態は、老化肌指数、脂性肌、肌のそばかす、きめ、黄ばみ、かさつき、てかり、しみ、くすみ、しわ、はりの状態、毛穴の状態の少なくとも1種である肌の状態である」とあるのを、
「前記身体状態は、老化肌指数、脂性肌、肌のそばかす、きめ、黄ばみ、かさつき、てかり、しみ、くすみ、しわ、はりの状態、毛穴の状態の少なくとも1種である肌の状態であり、
前記身体状態が脂性肌、肌のそばかす、かさつき、てかり、しみ、くすみ、しわ、はりの状態又は毛穴の状態である場合、
(i)前記相関性基準は、実年齢による影響の排除後における、前記身体状態と前記存在割合又は前記パラメータとの相関性基準である、
(ii)前記相関性基準は、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものである、
(iii)前記パラメータは、複数の皮膚常在微生物の存在割合の差、和、積、比またはそれらの組合せである(皮膚常在微生物の多様性指数ではない)、
(iv)前記存在割合またはパラメータは、検体の細菌叢間の非類似度を分析して得られる座標軸と相関する(Propionibacterium acnes菌の存在割合ではない)ものである、又は
(v)前記存在割合としてPropionibacterium acnes菌の存在割合と、前記パラメータとして皮膚常在微生物の多様性指数と、を併用する(ただし(v)は前記身体状態がしみ、くすみの場合に限る)」に、
訂正する。
請求項6を引用する請求項12についても、同様に訂正する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7、請求項8、請求項9、請求項10及び請求項11を削除する。

カ 訂正事項6
(訂正事項6−1)
特許請求の範囲の請求項12に、
「前記身体状態は、脂性肌であり、」とあるのを、
「前記相関性基準は、皮膚常在微生物の存在割合と前記身体状態との相関性基準であり、
前記身体状態は、脂性肌であり、」に、
訂正する。

(訂正事項6−2)
特許請求の範囲の請求項12に、
「請求項4から8いずれか」とあるのを、
「請求項4から6いずれか」に、
訂正する。

キ 訂正事項7
(訂正事項7−1)
特許請求の範囲の請求項13に
「前記身体状態は、そばかすの状態であり、
前記存在割合は、Corynebacterium kroppenstedti 菌の存在割合である請求項4から6いずれか記載の方法。」とあるうち、請求項4を引用するものについて、独立形式に改め、
「被験者の身体状態を評価する方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し、前記相関性基準と対比する工程を有し、
前記身体状態は、そばかすの状態であり、
前記存在割合は、Corynebacterium kroppenstedti 菌の存在割合である
方法。」に、
訂正する。

(訂正事項7−2)
特許請求の範囲の請求項13に
「前記身体状態は、そばかすの状態であり、
前記存在割合は、Corynebacterium kroppenstedti 菌の存在割合である請求項4から6いずれか記載の方法。」とあるうち、請求項5を引用するものについて、上記訂正事項7−1によって独立形式に訂正した請求項13を引用するように改め、
「被験者に情報を提示する方法であって、
請求項13記載の方法により、被験者の身体状態を評価する工程と、
前記身体状態が目標状態にないと評価された場合、前記身体状態が目標状態にあるときに前記相関性基準に基づいて前記存在割合又は前記パラメータが示す数値範囲の方に、前記存在割合又は前記パラメータの値を誘導可能な成分としてデータベースに登録されている情報を提示する工程と、を有する方法。」
と記載し、新たに請求項33とする。

(訂正事項7−3)
特許請求の範囲の請求項13に、
「前記身体状態は、そばかすの状態であり、
前記存在割合は、Corynebacterium kroppenstedti 菌の存在割合である請求項4から6いずれか記載の方法。」とあるうち、請求項6を引用するものについて、独立形式に改め、
「身体状態を改善又は予防する物質をスクリーニングする方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータの値に関する、候補物質による変化に基づいて、前記候補物質を選抜する工程を有し、
前記身体状態は、そばかすの状態であり、
前記存在割合は、Corynebacterium kroppenstedti 菌の存在割合である
方法。」
と記載し、新たに請求項34とする。

ク 訂正事項8
(訂正事項8−1)
特許請求の範囲の請求項14に
「前記身体状態は、肌のキメの状態であり、
前記存在割合は、Propionibacterium acnes菌、またはPropionibacterium granulosum菌の存在割合である請求項4から6いずれか記載の方法。」とあるうち、請求項4を引用するものについて、独立形式に改め、
「被験者の身体状態を評価する方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し、前記相関性基準と対比する工程を有し、
前記身体状態は、肌のキメの状態であり、
前記存在割合はPropionibacterium acnes菌、またはPropionibacterium granulosumの存在割合である
方法。」に、
訂正する。

(訂正事項8−2)
特許請求の範囲の請求項14に、
「前記身体状態は、肌のキメの状態であり、
前記存在割合は、Propionibacterium acnes菌、またはPropionibacterium granulosum菌の存在割合である請求項4から6いずれか記載の方法。」とあるうち、請求項5を引用するものについて、上記訂正事項8−1によって独立形式に訂正した請求項14を引用するように改め、
「被験者に情報を提示する方法であって、
請求項14記載の方法により、被験者の身体状態を評価する工程と、
前記身体状態が目標状態にないと評価された場合、前記身体状態が目標状態にあるときに前記相関性基準に基づいて前記存在割合又は前記パラメータが示す数値範囲の方に、前記存在割合又は前記パラメータの値を誘導可能な成分としてデータベースに登録されている情報を提示する工程と、を有する方法。」
と記載し、新たに請求項35とする。

(訂正事項8−3)
特許請求の範囲の請求項14に
「前記身体状態は、肌のキメの状態であり、
前記存在割合はPropionibacterium acnes菌、またはPropionibacterium granulosum菌の存在割合である請求項4から6いずれか記載の方法。」とあるうち、請求項6を引用するものについて、独立形式に改め、
「身体状態を改善又は予防する物質をスクリーニングする方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータの値に関する、侯補物質による変化に基づいて、前記候補物質を選抜する工程を有し、
前記身体状態は、肌のキメの状態であり、
前記存在割合はPropionibacterium acnes菌、またはPropionibacterium granulosum菌の存在割合である
方法。」
と記載し、新たに請求項36とする。

ケ 訂正事項9
(訂正事項9−1)
特許請求の範囲の請求項15に
「前記身体状態は、肌の黄ばみであり、
前記存在割合は、Bacillus属、Actinomyces属あるいはRothia属に含まれる菌、またはRothia dentocariosa菌の存在割合である請求項4から6いずれか記載の方法。」とあるうち、請求項4を引用するものについて、独立形式に改め、
「被験者の身体状態を評価する方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し、前記相関性基準と対比する工程を有し、
前記身体状態は、肌の黄ばみであり、
前記存在割合は、Bacillus属、Actinomyces属あるいはRothia属に含まれる菌、またはRothia dentocariosa菌の存在割合である
方法。」に、
訂正する。

(訂正事項9−2)
特許請求の範囲の請求項15に、
「前記身体状態は、肌の黄ばみであり、
前記存在割合は、Bacillus属、Actinomyces属あるいはRothia属に含まれる菌、またはRothia dentocariosa菌の存在割合である請求項4から6いずれか記載の方法。」とあるうち、請求項5を引用するものについて、上記訂正事項9−1によって独立形式に訂正した請求項15を引用するように改め、
「被験者に情報を提示する方法であって、
請求項15記載の方法により、被験者の身体状態を評価する工程と、
前記身体状態が目標状態にないと評価された場合、前記身体状態が目標状態にあるときに前記相関性基準に基づいて前記存在割合又は前記パラメータが示す数値範囲の方に、前記存在割合又は前記パラメータの値を誘導可能な成分としてデータベースに登録されている情報を提示する工程と、を有する方法。」
と記載し、新たに請求項37とする。

(訂正事項9−3)
特許請求の範囲の請求項15に、
「前記身体状態は、肌の黄ばみであり、
前記存在割合は、Bacillus属、Actinomyces属あるいはRothia属に含まれる菌、またはRothia dentocariosa菌の存在割合である請求項4から6いずれか記載の方法。」とあるうち、請求項6を引用するものについて、独立形式に改め、
「身体状態を改善又は予防する物質をスクリーニングする方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータの値に関する、候補物質による変化に基づいて、前記候補物質を選抜する工程を有し、
前記身体状態は、肌の黄ばみであり、
前記存在割合は、Bacillus属、Actinomyces属あるいはRothia属に含まれる菌、またはRothia dentocariosa菌の存在割合である
方法。」
と記載し、新たに請求項38とする。

2 一群の請求項について
訂正前の請求項2、7〜11は、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用する関係にあり、訂正事項1により記載が訂正される訂正前の請求項1に連動して訂正されるから、訂正前の請求項1〜2、7〜11は一群の請求項に該当するものである。
訂正前の請求項7〜11は、訂正前の請求項3を直接的又は間接的に引用する関係にあり、訂正事項2により記載が訂正される訂正前の請求項3に連動して訂正されるから、訂正前の請求項3、7〜11は一群の請求項に該当するものである。
訂正前の請求項5、7〜15は、訂正前の請求項4を直接的又は間接的に引用する関係にあり、訂正事項3により記載が訂正される訂正前の請求項4に連動して訂正されるから、訂正前の請求項4、5、7〜15は一群の請求項に該当するものである。
訂正前の請求項7〜15は、訂正前の請求項6を直接的又は間接的に引用する関係にあり、訂正事項4により記載が訂正される訂正前の請求項6に連動して訂正されるから、訂正前の請求項6、7〜15は一群の請求項に該当するものである。
訂正前の請求項9〜12は、訂正前の請求項7を直接的又は間接的に引用する関係にあり、訂正事項5により記載が訂正される訂正前の請求項7に連動して訂正されるから、訂正前の請求項7、9〜12は一群の請求項に該当するものである。
訂正前の請求項9〜12は、訂正前の請求項8を直接的又は間接的に引用する関係にあり、訂正事項5により記載が訂正される訂正前の請求項8に連動して訂正されるから、訂正前の請求項8、9〜12は一群の請求項に該当するものである。
そして、これらの「一群の請求項」は、請求項7〜11で共通するため、訂正前の請求項1〜12は、特許法第120条の5第4項に規定する1つの「一群の請求項」といえる。
また、訂正事項7〜9は、当該訂正が認められるときに、訂正前の請求項13〜15を、上記の一群の請求項とは別の訂正単位として扱われることを求めるものである。
以上からすると、本件訂正は、訂正後の請求項〔1〜12〕、〔13、33〕、〔14、35〕、〔15、37〕、34、36、38を訂正単位とする訂正を請求するものである。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1、2において、身体状態が肌のたるみの状態である場合に、相関性基準、存在割合、又は前記存在割合に基づくパラメータが(i)〜(iv)のいずれかの要件を満たすことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項1、2の発明特定事項を限定するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
さらに、訂正事項1により追加される(i)〜(iv)のうち、「(i)前記相関性基準は、実年齢による影響の排除後における、前記身体状態と前記存在割合又は前記パラメータとの相関性基準である」は、訂正前の請求項1、2を引用する請求項7に記載された発明特定事項であり、本件特許の設定登録時の明細書(以下、「本件明細書」という。)の段落【0040】に対応する記載がある。
同「(ii)前記相関性基準は、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものである」は、訂正前の請求項1、2を引用する請求項8に記載された発明特定事項であり、本件明細書の段落【0041】に対応する記載がある。
同「(iii)前記パラメータは、複数の皮膚常在微生物の存在割合の差、和、積、比またはそれらの組合せである(皮膚常在微生物の多様性指数ではない)」は、訂正前の請求項1、2を引用する請求項9に記載された発明特定事項であり、本件明細書の段落【0037】に対応する記載がある。
同「(iv)前記存在割合またはパラメータは、検体の細菌叢間の非類似度を分析して得られる座標軸と相関する(Propionibacterium acnes菌の存在割合ではない)ものである」は、訂正前の請求項1、2を引用する請求項11に記載された発明特定事項であり、本件明細書の段落【0053】、【0054】に対応する記載がある。
よって、訂正事項1により追加される、(i)〜(iv)は、本件明細書(願書に添付した明細書)、特許請求の範囲または図面に記載した事項であるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
以上のとおりであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項3において、訂正事項1と同じく、身体状態が肌のたるみの状態の場合に、相関性基準、存在割合、又は前記存在割合に基づくパラメータが(i)〜(iv)のいずれかであることを限定するものである。
そうすると、訂正事項1の上記(1)と同様の理由により、当該訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項4、5、12において、身体状態が脂性肌、肌のそばかす、かさつき、てかり、しみ、くすみ、しわ、はりの状態又は毛穴の状態である場合に、相関性基準、存在割合、又は前記存在割合に基づくパラメータが(i)〜(v)のいずれかの要件を満たすことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項3は、訂正前の請求項4、5、12の発明特定事項を限定するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
さらに、訂正事項3により追加される(i)〜(v)のうち、(i)〜(iv)は、訂正事項1と同じものであるので、上記(1)と同様の理由により、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載したものである。
そして、「(v)前記存在割合としてPropionibacterium acnes菌の存在割合と、前記パラメータとして皮膚常在微生物の多様性指数と、を併用する(ただし(v)は前記身体状態がしみ、くすみの場合に限る)」は、訂正前の請求項4、5を引用する請求項10に記載された発明特定事項において、さらに、身体状態がしみ、くすみの場合に限ることを特定したものである。ここで、身体状態をしみ、くすみの場合に限定することについて、本件明細書の段落【0062】には、多様性指数(Simpson指数)とP.acnes菌の2つのパラメータを用いて各検体の細菌叢の構造を3つのグループに分類し、皮膚の加齢によるシミ、そばかす、皮膚のくすみの3つのスコア合計値(“シミ・くすみ”指数)が、該グループと相関を示すことが記載されており、上記箇所には、上記(v)に対応する事項が具体的に記載されているといえる。
したがって、訂正事項3により追加される(i)〜(v)は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載したものであるから、当該訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
以上のとおりであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項6、12において、訂正事項3と同じく、身体状態が脂性肌、肌のそばかす、かさつき、てかり、しみ、くすみ、しわ、はりの状態又は毛穴の状態である場合に、相関性基準、存在割合、又はパラメータが(i)〜(v)のいずれかの要件を満たすことを限定するものである。
そうすると、訂正事項3の上記(3)と同様の理由により、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は訂正前の請求項7、請求項8、請求項9、請求項10及び請求項11を削除するものである。よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえないことは明らかである。

(6)訂正事項6について
訂正事項6−1は、訂正前の請求項4を引用する訂正前の請求項12において、訂正前の請求項4に記載されていた、身体状態との相関性基準が作成済みである二つの選択肢(「皮膚常在微生物の存在割合」又は「前記存在割合に基づくパラメータ」)のうち、前者の「皮膚常在微生物の存在割合」のみに限定するべく「前記相関性基準は、皮膚常在微生物の存在割合と前記身体状態との相関性基準であ」るとの発明特定事項を訂正前の請求項12に追加するものである。
よって、訂正事項6−1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。
訂正事項6−2は、訂正前の請求項12において、「請求項4から8のいずれか」という記載を「請求項4から6のいずれか」に訂正することで、引用する請求項数を減少させるものである。
よって、訂正事項6−2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものともいえない。

(7)訂正事項7について
訂正前の請求項13は、請求項4〜6を引用するものであるところ、訂正事項7は、以下の訂正事項7−1〜訂正事項7−3から構成されるものである。

訂正事項7−1:訂正前の請求項13のうち請求項4を引用するものについて、独立形式に改める。
訂正事項7−2:訂正前の請求項13のうち請求項5を引用するものについて、請求項5の引用をやめ、訂正後の請求項13を引用する形式に改め、新たに請求項33とする。
訂正事項7−3:訂正前の請求項13のうち請求項6を引用するものについて、独立形式に改め、新たに請求項34とする。

ここで、上記の訂正事項7−1〜7−3は、訂正前の請求項13において、訂正前の請求項4〜6を引用しない形式に書き起こすととともに(訂正事項7−1〜7−3)、訂正前の請求項5と訂正後の請求項13の関係を明瞭にすること(訂正事項7−2)を目的としたものである。
そうすると、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、同条同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(8)訂正事項8、9について
訂正事項8及び9は、それぞれ、訂正事項8−1〜8−3及び訂正事項9−1〜9−3から構成されるものであり、訂正事項7と同様に、訂正前の請求項14及び15において、訂正前の請求項4〜6を引用しない形式に書き起こすととともに(訂正事項8−1〜8−3及び訂正事項9−1〜9−3)、訂正前の請求項5と訂正後の請求項14の関係及び訂正前の請求項5と訂正後の請求項15の関係を明瞭にすること(訂正事項8−2及び訂正事項9−2)を目的としたものである。
よって、訂正事項8及び9は、訂正事項7と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、同条同項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

4 独立特許要件
本件特許異議の申立ては、訂正前の請求項1〜12に対してされているので、訂正事項1〜6により記載が訂正されることとなる請求項1〜12に関して、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
また、訂正事項7〜9により記載が訂正されることとなる訂正前の請求項13〜15(訂正後の請求項13〜15、33〜38)については特許異議の申立てがされていないが、訂正事項7〜9は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

5 小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正事項は特許法第120条の5第2項ただし書第1号(特許請求の範囲の減縮)、第3号(明瞭でない記載の釈明)又は第4号(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること)に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合している。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを認める。

第3 訂正後の本件発明
本件特許の請求項1〜38に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1〜38に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、本件審理の対象である本件特許の請求項1〜12に係る発明は、以下のとおりのものである(下線は、訂正箇所を示す。なお、第1の1で述べたとおり、訂正前の請求項13〜32に係る特許は、本件審理の対象外であるため、これらに対応する訂正後の請求項13〜38も、本件審理の対象ではない。)。
以下、訂正後の請求項1に係る発明を、項番に従い、「本件発明1」などといい、「本件発明1」〜「本件発明12」を総称して、「本件発明」という。また、訂正前の本件発明を、「訂正前本件発明1」などといい、これらを総称して、「訂正前本件発明」という。

「【請求項1】
被験者の身体状態を評価する方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し、前記相関性基準と対比する工程を有し、
前記身体状態は、肌年齢、または肌のたるみの状態であり、
前記身体状態が肌のたるみの状態である場合、
(i)前記相関性基準は、実年齢による影響の排除後における、前記身体状態と前記存在割合又は前記パラメータとの相関性基準である、
(ii)前記相関性基準は、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものである、
(iii)前記パラメータは、複数の皮膚常在微生物の存在割合の差、和、積、比またはそれらの組合せである(皮膚常在微生物の多様性指数ではない)、
又は
(iv)前記存在割合またはパラメータは、検体の細菌叢間の非類似度を分析して得られる座標軸と相関する(Propionibacterium acnes菌の存在割合ではない)ものである
方法。
【請求項2】
被験者に情報を提示する方法であって、
請求項1記載の方法により、被験者の身体状態を評価する工程と、
前記身体状態が目標状態にないと評価された場合、前記身体状態が目標状態にあるときに前記相関性基準に基づいて前記存在割合又は前記パラメータが示す数値範囲の方に、前記存在割合又は前記パラメータの値を誘導可能な成分としてデータベースに登録されている情報を提示する工程と、を有する方法。
【請求項3】
身体状態を改善又は予防する物質をスクリーニングする方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータの値に関する、候補物質による変化に基づいて、前記候補物質を選抜する工程を有し、
前記身体状態は、肌年齢、または肌のたるみの状態であり、
前記身体状態が肌のたるみの状態である場合、
(i)前記相関性基準は、実年齢による影響の排除後における、前記身体状態と前記存在割合又は前記パラメータとの相関性基準である、
(ii)前記相関性基準は、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものである、
(iii)前記パラメータは、複数の皮膚常在微生物の存在割合の差、和、積、比またはそれらの組合せである(皮膚常在微生物の多様性指数ではない)、
又は
(iv)前記存在割合またはパラメータは、検体の細菌叢間の非類似度を分析して得られる座標軸と相関する(Propionibacterium acnes菌の存在割合ではない)ものである
方法。
【請求項4】
被験者の身体状態を評価する方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し、前記相関性基準と対比する工程を有し、
前記身体状態は、老化肌指数、脂性肌、肌のそばかす、きめ、黄ばみ、かさつき、てかり、しみ、くすみ、しわ、はりの状態、毛穴の状態の少なくとも1種である肌の状態であり、
前記身体状態が脂性肌、肌のそばかす、かさつき、てかり、しみ、くすみ、しわ、はりの状態又は毛穴の状態である場合、
(i)前記相関性基準は、実年齢による影響の排除後における、前記身体状態と前記存在割合又は前記パラメータとの相関性基準である、
(ii)前記相関性基準は、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものである、
(iii)前記パラメータは、複数の皮膚常在微生物の存在割合の差、和、積、比またはそれらの組合せである(皮膚常在微生物の多様性指数ではない)、
(iv)前記存在割合またはパラメータは、検体の細菌叢間の非類似度を分析して得られる座標軸と相関する(Propionibacterium acnes菌の存在割合ではない)ものである、又は
(v)前記存在割合としてPropionibacterium acnes菌の存在割合と、前記パラメータとして皮膚常在微生物の多様性指数と、を併用する(ただし(v)は前記身体状態がしみ、くすみの場合に限る)
方法。
【請求項5】
被験者に情報を提示する方法であって、
請求項4記載の方法により、被験者の身体状態を評価する工程と、
前記身体状態が目標状態にないと評価された場合、前記身体状態が目標状態にあるときに前記相関性基準に基づいて前記存在割合又は前記パラメータが示す数値範囲の方に、前記存在割合又は前記パラメータの値を誘導可能な成分としてデータベースに登録されている情報を提示する工程と、を有する方法。
【請求項6】
身体状態を改善又は予防する物質をスクリーニングする方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータの値に関する、候補物質による変化に基づいて、前記候補物質を選抜する工程を有し、
前記身体状態は、老化肌指数、脂性肌、肌のそばかす、きめ、黄ばみ、かさつき、てかり、しみ、くすみ、しわ、はりの状態、毛穴の状態の少なくとも1種である肌の状態であり、
前記身体状態が脂性肌、肌のそばかす、かさつき、てかり、しみ、くすみ、しわ、はりの状態又は毛穴の状態である場合、
(i)前記相関性基準は、実年齢による影響の排除後における、前記身体状態と前記存在割合又は前記パラメータとの相関性基準である、
(ii)前記相関性基準は、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものである、
(iii)前記パラメータは、複数の皮膚常在微生物の存在割合の差、和、積、比またはそれらの組合せである(皮膚常在微生物の多様性指数ではない)、
(iv)前記存在割合またはパラメータは、検体の細菌叢間の非類似度を分析して得られる座標軸と相関する(Propionibacterium acnes菌の存在割合ではない)ものである、又は
(v)前記存在割合としてPropionibacterium acnes菌の存在割合と、前記パラメータとして皮膚常在微生物の多様性指数と、を併用する(ただし(v)は前記身体状態がしみ、くすみの場合に限る)
方法。
【請求項7】削除
【請求項8】削除
【請求項9】削除
【請求項10】削除
【請求項11】削除
【請求項12】
前記相関性基準は、皮膚常在微生物の存在割合と前記身体状態との相関性基準であり、
前記身体状態は、脂性肌であり、
前記存在割合は、Xanthomonadaceae科、Sphingomonas属、Vibrio属、Aeromonadaceae科、Pseudoalteromonas属、Gammaproteobacteria綱、Streptococcus属、Gemellaceae科、Acidocella属、Planococcaceae科、Lautropia属、Shewanella属、あるいはGranulicatella属に含まれる菌、またはPseudoalteromonas porphyrae菌あるいはRoseomonas mucosa菌の存在割合である請求項4から6いずれか記載の方法。」

第4 当審が通知した取消理由及び特許異議申立ての理由の概要
1 当審が通知した取消理由通知の概要
当審が令和4年3月2日付け取消理由通知書で通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は、以下のとおりである。

(1)本件特許の国内優先権の主張の効果について
優先権書類には「皮膚表面の細菌叢を解析し、該皮膚表面に存在する特定の常在菌の存在割合から肌状態を評価する肌状態の評価方法」(特許請求の範囲)、及び、実施例において、被験者の皮膚常在微生物叢を解析し、特定の門に属する常在菌の割合や微生物菌叢のクラスタリング分析結果等と、実年齢、ニキビ、毛穴の広がり等の「肌状態」との相関を調べたことが記載されているに留まり、何らかの身体状態と皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、「相関性基準」を作成したことや、作成済みの「相関性基準」と被験者の皮膚微生物叢の値を対比することにより身体状態を評価することは開示されていない。
一方、訂正前本件発明1〜12はいずれも、何らかの身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータを使用する発明に関する発明であり、優先権書類中に記載されているものとはいえない。
よって、訂正前本件発明1〜12は優先権主張の効果を享受できず、各発明についての新規性進歩性の判断の基準日は、本件分割出願の原出願の出願日である平成28年5月19日となる。

(2)取消理由
ア 取消理由3(サポート要件)
訂正前本件発明1の課題を解決するためには、「作成済み」の「相関性基準」の存在が発明の詳細な説明又は出願時の技術常識によって明らかである必要があるが、発明の詳細な説明における、「作成済み」の「相関性基準」に相当すると認められる開示は、特定の「身体状態」と特定「皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータ」の組み合わせに限られている。また、本件特許権者は、本件特許の出願の経緯において、令和2年9月4日に意見書(以下、単に「本件意見書」ということがある。)を提出し、訂正前本件発明1、4に記載の肌のたるみ、くすみ、しみ、しわ、及びはりの状態について相関を示しているが、当該追加の開示を考慮しても、相関が開示されている「身体状態」と「皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータ」の組み合わせは限定的である。
そして、本件特許出願時に、訂正前本件発明1、4で特定される身体状態を客観的に評価できる「相関性基準」が存在したともいえず、本件特許の発明の詳細な説明には、訂正前本件発明1の課題を解決するための手段が記載されているということができない。
よって、訂正前本件発明1、4は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものであって、「身体状態」と「皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータ」の相関を発明特定事項とすることで共通する訂正前本件発明1〜12に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、訂正前本件発明12について、菌の存在割合は発明の詳細な説明に記載された範囲を超えないが、菌の存在割合に基づくパラメータは発明の詳細な説明に記載された範囲を超えていると認められる。

イ 取消理由1、2A(引用文献1(申立人が提出した甲1)を主引例とする新規性進歩性
訂正前本件発明1、4、10、12は、本件特許出願前である平成27年12月1日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
また、訂正前本件発明1〜8、10、12は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

ウ 取消理由1、2B(引用文献2(申立人が提出した甲2)を主引例とする新規性進歩性
訂正前本件発明1、4、10、12は、本件特許出願日前である平成27年9月8日以前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能であった資料である引用文献2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
また、訂正前本件発明1、4、7、8、10、12は、引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
さらに、訂正前本件発明2、3、5、6、7、8、10、12は、引用文献2及び1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

2 特許異議申立ての理由の概要
申立人が特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に記載した特許異議申立ての理由(以下、「申立理由」という。)は、以下のとおりである。

(1)本件特許の国内優先権の主張の効果について
上記1(1)と同じ理由により、訂正前本件発明1〜12は優先権主張の効果を享受できず、各発明についての新規性進歩性の判断の基準日は、本件分割出願の原出願の出願日である平成28年5月19日となる。

(2)申立理由
ア 申立理由1(甲1ないし甲3を主引例とする新規性
訂正前本件発明1、2、4、5、10、12は、甲1ないし甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

イ 申立理由2(甲1ないし甲3を主引例とする進歩性
訂正前本件発明1〜8、10、12は、甲1ないし甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

ウ 申立理由3(サポート要件)
訂正前本件発明では、「前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し、前記相関性基準と対比する工程を有」することが特定されるのみであり、1000名以上もの皮膚細菌叢を採取することやその細菌叢中に同定された各細菌種の相対量と、数値化・点数化したアンケート結果の相関係数を評価すること、年齢と細菌叢指標の2つの変数で近似する重回帰分析を行うことなどの具体的な条件ないし方法について何ら特定されていないのであるから、訂正前本件発明に含まれるあらゆる条件ないし方法において、訂正前本件発明に係る肌状態に関して、「客観的な評価が可能であって、洗顔等による肌質の変動に左右され難い肌状態の評価方法を提供する」という課題を解決できるとは到底認識できない。
よって、訂正前本件発明1〜11に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

第5 当審の判断
本件発明1〜6、12に係る特許は、以下のとおり、当審が通知した取消理由通知書に記載した取消理由及び申立人による申立理由によっては、取り消すことができない、と判断する。
その理由は、以下のとおりである。

1 本件特許の国内優先権主張の効果について
本件特許の優先権書類(優先権主張の基礎となる特願2015−143583号の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面)の特許請求の範囲には、「皮膚表面の細菌叢を解析し、該皮膚表面に存在する特定の常在菌の存在割合から肌状態を評価する肌状態の評価方法」、及び、実施例には、被験者の皮膚常在微生物叢を解析し、特定の門に属する常在菌の割合や微生物菌叢のクラスタリング分析結果等と、実年齢、ニキビ、毛穴の広がり等の「肌状態」との相関を調べたことが記載されているが、何らかの身体状態と皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、「相関性基準」を作成したことや、作成済みの「相関性基準」と被験者の皮膚微生物叢の値を対比することにより身体状態を評価することは開示されていない。
一方、本件発明1〜6、12はいずれも、何らかの身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータを使用する発明に関する発明であり、優先権書類中に記載されているものとはいえない。
よって、本件発明1〜6、12は優先権主張の効果を享受できず、各発明についての新規性進歩性の判断の基準日は、原出願の出願日である平成28年5月19日であると認められる(この点について、特許権者は、令和4年4月28日付け意見書において争っていない。)。

2 取消理由3(サポート要件)について
(1)発明の詳細な説明に記載された事項
本件明細書には、以下の事項が記載されている。下線は当審による。

(本ア)
「【0001】
本発明は、身体状態の評価方法、有用成分の提示方法、および身体状態を改善又は予防する物質のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
・・・
【0003】
しかし、アンケート調査では、被験者の主観に大きく影響されるため、客観的な評価が得られ難いという問題がある。これに対して、画像解析では、客観的な指標を得ることができるが、洗顔の有無、ファンデーションやスキンクリームの塗布等によって肌質が変化するため、的確な肌状態の評価を行うことが困難であるという問題があった。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、客観的な評価が可能であって、洗顔等による肌質の変動に左右され難い肌状態の評価方法を提供することを解決すべき1つの課題としている。
【0007】
また、本発明は、種々の身体状態を的確に評価可能な方法、当該方法を利用した情報の提示方法、および身体状態を改善又は予防する物質のスクリーニング方法を提供することも、解決すべき課題とする。」

(本イ)
「身体状態の多くは、皮膚微生物叢だけでなく、他の事象(例えば実年齢)との相関性も有する。このため、相関性基準は、身体状態と相関することが既知の事象の少なくとも1つによる影響の排除後におけるものであることが好ましい。これにより、被験者に関する上記他の事象の有無や程度に影響を抑え、皮膚微生物叢の存在割合またはパラメータの値に基づき、より正確な身体状態の評価が可能である。・・・」(段落【0040】)

(本ウ)
「また、相関性基準は、母集団の年齢、性別、居住地域、国籍および人種からなる群より選ばれる少なくとも1種で分類した準母集団に関して作成されたものであってよい。これにより、被験者の年齢、性別、居住地域、国籍および人種等までも考慮した、身体状態の正確な評価が可能である。・・・」(段落【0041】)

(本エ)
「【0043】
<実施例1>
沖縄を除くすべての都道府県から任意に選ばれた18歳〜69歳の日本女性1,100人に対し、年齢、肌質等のアンケート調査を行った。また、アンケート調査を行った女性に対し、アンケートと同時に、以下に示す方法により、顔の皮膚の細菌叢を解析した。
・・・
【0045】
(細菌叢の解析)
細菌叢の解析は図1に示すフローチャートに従って行った。
・接触工程S1及び剥離工程S2
図2に示す粘着テープ1を用意する。この粘着テープ1はベースとなる薄片状のテープ基材2に粘着剤からなる塗布層3が設けられた構造とされている。このため、通常の絆創膏やドレッシングテープと同様にして、ヒトの皮膚に貼付けることによって、簡単に接触工程S1を行うことができる。粘着テープ1は図示しない剥離紙に貼り付けられており、密封可能な乾燥剤入りのアルミ袋に封入された状態でラテックス手袋と共に被験者に送付された。被験者は、起床直後ラテックス手袋を装着し、アルミ袋を開封して粘着テープ1が貼られた剥離紙を取り出し、粘着テープ1を剥がして被験者の額に貼り付ける。そして、5分間接着させた状態を保ったのち、粘着テープ1を剥がし、剥離紙の上に張り戻し、これを乾燥剤と共にアルミ袋に入れて密封した。その後、DNA解析試験を行うまでの間冷凍保存した。
【0046】
・抽出工程S3
DNAの抽出は、森田らの方法(MicrobesEnviron. Vol22,No.3,214−222, 2007)に従って粘着テープ1から直接行い、DNA溶液を調製した。
【0047】
・ゲノム解析工程S4
上記のようにして得られたDNA溶液を用い、溶液内に含まれる16SリボゾームRNA遺伝子をPCR法を用いて増幅した後、シークエンサー(NGS)(illumina社製、商品名:Miseq)を用いてDNA解析を行った。」(段落【0043】〜【0047】)

(本オ)
「門より下位の分類群である“種”の情報と身体症状の相関関係についても解析を行った。細菌叢中に同定された各細菌種の相対量と数値化・点数化したアンケート結果の相関関係を評価した。この際、身体症状の中には実年齢と相関することが明らかなものがあるため、細菌量と実年齢という2つの変数と身体症状の関係を重回帰分析で調べることにより、年齢による効果を別にしてみられる細菌量−身体症状の相関関係を検出した。多重検定となるため偽陽性検出率をBenjamini−Hochberg法を用いて10%となるように調節した。その結果、p=6x10−4以下という統計的に非常に有意差の高い相関関係のみが抽出された。得られた結果を図16にまとめる。ここには、様々な皮膚ならびに身体の疾患・症状ごとに相関を示した細菌種がまとめられている。例えば、・・・。細菌叢データから有益な情報を抽出することで、様々な身体疾患・症状との関係を見いだすことができることがわかった。」(段落【0061】)

(本カ)
「各種細菌の量の他に、細菌叢の多様性という指標も身体症状と相関をしめすことがわかった。各検体の内部での細菌叢の多様性はSimpson指数という指標で表し得ることが知られている。まずSimpson指数と実年齢との相関を調べたところ、年齢が上昇すると共にSimpson指数も上昇する、すなわち細菌叢の多様性が上昇することが見いだされた(図17)。・・・」(段落【0062】)

(本キ)
本件発明1、4で特定される各「身体状態」と「皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータ」との相関について、実施例及び図面には、以下の事項が具体的に開示されている。

(ア)肌年齢:実年齢とP.acnesの相対量の相関(実施例3、図10左)
(イ)肌のたるみ:「たるみによる毛穴の目立ち」とP.acnes細菌量の相関(実施例4、図16)
(ウ)老化肌指数:
“老化肌”指数と(Gammaproteobacteria綱の細菌量)+(P.granulosumの細菌量)×10の相関(実施例4、図20)
(エ)脂性肌:
肌質(脂性、普通、乾燥肌)とP.acnes菌量の相関(実施例3、図10右)
肌のタイプ[乾燥(0)<->脂性(2)]とP.acnes種、Xanthomonadaceae科、Sphingomonas属、Pseudoalteromonas porphyrae種、Vibrio属、Aeromonadaceae科、Pseudoalteromonas属、Gammaproteobacteria綱、Streptococcus属、Gemellaceae科、Roseomonas mucosa種、Acidocella属、Planococcaceae科、Lautropia属、Shewanella属、及びGranulicatella属の細菌量の相関(実施例4、図16)
(オ)肌のそばかす:「そばかす」とCorynebacterium kroppenstedtiiの相関(実施例4、図16)
(カ)きめ:「肌のキメがなめらかでない/均一でない」とP.acnes種及びP.granulosum種の相関(実施例4、図16)
(キ)黄ばみ:「肌の黄ばみ」とBacillus属、Rothia dentocariosa種、Actinomyces属、及びRothia属の細菌量の相関(実施例4、図16)
(ク)かさつき:「肌の乾燥・かさつき」とP.acnes種の細菌量の相関(実施例4、図16)
(ケ)てかり:「肌の脂っぽさ・てかり」とP.acnes種、Xanthomonadaceae科、及びStreptococcus属の細菌量の相関(実施例4、図16)
(コ)毛穴の状態:
「毛穴の広がり」とP.acnes量の相関(実施例3、図12)
「毛穴の広がり・皮脂づまり」とP.acnes種、Xanthomonadaceae科、Pseudoalteromonas属、Shewanella属、Streptococcus属、Pseudoalteromonas porphyrae種、Novosphingobium属、Vibrio属、及びLautropia属の細菌量(実施例4、図16)

ここで、(ウ)老化肌指数に関する図20、(エ)脂性肌に関する図10右、(コ)毛穴の状態に関する図12はいずれも、母集団を年齢で分類した準母集団に関して相関が示されたものである。また、(イ)肌のたるみ、(エ)脂性肌、(オ)肌のそばかす、(カ)きめ、(キ)黄ばみ、(ク)かさつき、(ケ)てかり、及び、(コ)毛穴の状態に関する図16は、細菌量と実年齢という2つの変数と身体症状の関係を重回帰分析で調べたものであり、年齢による効果を除いた細菌量と身体症状の相関関係であるといえる。
さらに、本件明細書の段落【0062】には、しみ、そばかす、くすみに関し、皮膚の加齢によるシミ、そばかす、皮膚のくすみの3つのアンケート結果によるスコア合計値(“シミ・くすみ”指数)が、P.acnes菌の量と多様性指数の2つのパラメータを用いて分類したグループと、有意に相関していたことが記載されている。

(2)令和2年9月4日付け意見書に開示された事項
本件特許の審査段階で提出された令和2年9月4日付け意見書には、上記発明の詳細な説明の開示内容を補足するものとして、本件明細書の開示内容と同じ手順を踏むことで、以下を確認したことが記載されている。

(イ)肌のたるみ:「目の下、まぶた、目尻のたるみ・ゆるみ、ほほのたるみ、口角のたるみ・口角が下がっている、フェースラインのたるみ・ゆるみ」とP.granulosumの存在割合の相関
(サ)しみ:「しみ」とN.subflava及びGammaproteobacteria綱の存在割合の相関
(シ)くすみ:「肌のくすみ」とRothia sp.の存在割合の相関
(ス)しわ:「目もとのしわ・小じわ」とNeisseriaceae科及びActinomyces属の存在割合の相関
(セ)肌のハリ:「肌のハリのなさ」とStenotrophomonas sp.の存在割合の相関

ここで、上記意見書では、(イ)「肌のたるみ」とP.granulosum、(サ)「しみ」とGammaproteobacteria綱、(ス)「しわ」とNeisseriaceae科及びActinomyces属、並びに、(セ)「肌のハリ」とStenotrophomonas sp.に関し、年齢と細菌叢指標の2つの説明変数で近似する重回帰分析を行うと、年齢の影響を排除した後にも有意に相関が示されたことが記載されている。

(3)本件発明のサポート要件の判断
本件発明が解決しようとする課題は、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載(特に、上記(1)の(本ア))からみて、客観的な評価が可能であって、洗顔等による肌質の変動に左右され難い肌状態(身体状態)の評価方法、具体的には、「身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し、前記相関性基準と対比する工程を有する、客観的な評価が可能であって、洗顔等による肌質の変動に左右され難い肌状態の評価方法」を提供することであると認められる。
次に、本件発明が、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かについて検討する。
上記(1)のとおり、本件の発明の詳細な説明には、約1,100名の被験者から皮膚細菌叢を回収し、そのゲノムを解析することにより皮膚細菌叢の解析を行うことが記載されており(本エ)、細菌叢中に同定された各細菌種の相対量と数値化・点数化したアンケート結果の相関関係を評価すること、及び、実年齢と相関することが明らかである身体症状に関し、年齢による効果を排除して細菌量と身体症状の関係を解析するために、細菌量と実年齢という2つの説明変数と身体症状の関係を重回帰分析で調べて相関関係を抽出する方法が記載されている(本オ)。さらに、発明の詳細な説明には、実年齢の影響を排除し、母集団を年齢で分類した準母集団に関して相関性基準を作成することによって、より正確な評価が可能であることが記載されている((本イ)及び(本ウ))。
そして、これらの事項を裏付けるものとして、発明の詳細な説明及び上記意見書では、本件明細書に開示された手順により、肌状態と細菌叢の関係を解析することによって、本件発明1、4に列挙される特定の肌状態が、特定の皮膚細菌の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータと有意な相関を有することを確認できることが具体的に開示されている((1)の(本カ)及び(本キ)、(2))。
そうすると、当業者は、発明の詳細な説明に開示された方法に従えば、本件発明1、4で特定される肌状態と検体の皮膚細菌叢の関係を解析し、当該肌状態と相関を示す皮膚細菌叢を決定して「相関性基準」を作成することができるから、「身体状態」と「皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータ」の全ての場合の例示やそれらに基づき予め「相関性基準」が作成されていることが、上記の課題の解決において、必ずしも必要であるとは認められない。
加えて、発明の詳細な説明には、肌状態が年齢による影響を受ける場合に、実年齢の影響を排除し、母集団を年齢で分類した準母集団に関して相関性基準を作成することによって、より正確に皮膚細菌叢と肌状態の相関を評価できることが記載されており、図16には、各肌状態と年齢の相関係数及びp値が一覧として示されている。そうすると、当業者は、本件発明1、4で特定される一部の肌状態について、相関性基準を作成する際に、発明の詳細な説明の記載から当該肌状態と年齢の関係性を把握し、年齢の影響を考慮するかどうかを決定のうえ、相関性基準を作成して当該肌状態を評価することも可能といえる。
したがって、本件発明1、4は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が上記の課題を解決できると認識し得る範囲のものと認められる。
また、本件発明1、4をそれぞれ引用する本件発明2、5、身体状態、相関性基準、及び皮膚常在微生物の存在割合やそれに基づくパラメータに関して本件発明1、4とそれぞれ同じ特定を有する本件発明3、6、及び、本件発明4〜6を引用する本件発明12についても、本件発明1、4と同様の理由により、当業者が上記の課題を解決できると認識し得る範囲のものと認められる。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1〜6、12に係る特許は、取消理由3(サポート要件)によって取り消すべきものではない。

3 取消理由1、2A(引用文献1を主引例とする新規性進歩性)について
(1)引用文献1(A)〜(I)に記載された内容
引用文献1(A)〜(I)(以下まとめて「引用文献1」ということがある。他の引用文献も同様とする。)は、平成27年12月1日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、株式会社ワールドフュージョンの肌チェック事業「S−KIN」のウェブサイトであると認められる(この点について、特許権者は、令和4年4月28日付け意見書において争っていない。)。このうち引用文献1(A)〜(D)は「お肌バランスチェック」に関する内容を開示し、引用文献1(E)、(F)、(H)、(I)は、引用文献1(A)において「研究機関のお客様へのサービス ・肌研究、化粧品開発向けのキット「S−KIN Pro」を準備しています。」と述べられ、リンクされた「S−KIN Pro」に関する内容を開示するものである。また、引用文献1(G)は、「肌フローラ:常在菌で美肌チェック|ニュース」として、上記サービスの実施について開示している。
それぞれの開示内容は、次のとおりである。

ア 「お肌バランスチェック」に関する開示
(引1−1)「肌フローラ検査キット
肌フローラを検査することにより、お肌の善玉菌、悪玉菌の状態や四季を通して変化するお肌のコンディションを正確に把握出来ます。」(引用文献1(A)第1頁第2〜4行)

(引1−2)登録、お申込み、常在菌の採取キットのお届け、キット付属綿棒で常在菌の採取、分析結果の郵送の順に、肌チェック利用の流れが開示されている。また、常在菌の採取について、綿棒を生理食塩水につけ、「おでこ」と「頬」をこすることが説明されている。(引用文献1(B))

(引1−3)「S−KINホーム>検査結果からわかること
2つのポイントで評価
Point1 常在菌のバランスを評価
肌常在菌は、一般的には250種以上だと言われます。しかし、当社の実験調査では日本人で2000種以上の菌が見つかっています。
この検査では、ある程度の占有率で検出された菌をすべて利用してバランス判定を行っています。
菌バランスと肌健康の状態を考えると、平衡状態が保たれているほど肌健康状態が良く、さまざまなバリア機能、保湿や皮膚の炎症などに対しても良い効果が現れます。
ここでは、菌のバランスを「多様性」(集団で存在する菌のバリエーション)としてスコア化して評価に使う基本データを作ります。

Point2 肌に影響がある菌の含有率から評価
お肌に影響のある主な菌の状態を評価します。スキンケアの指標として利用してください。
主に評価に利用するのはアクネ菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、サーモフィルス菌の4つですが、もっと肌や健康に関連のある菌が高い占有率を示す場合もあります。これら以外に多くの意味ある菌も検出されてくるのがこの検査の特徴です。随時更新されるデータから「どうすればよいか」、「どの状態がベストか」というアドバイスを作成します。」(引用文献1(C)第1頁第1〜20行)

(引1−4)「肌タイプを予測してみます
常在菌の多様性や、それぞれの菌の特性や基礎検査データから作られた、当社独自の肌タイプデータベースを基に、あなたの肌状態を予測した結果を示します。」(引用文献1(C)第2頁下から第6〜4行)

(引1−5)「

」(引用文献1(C)第2頁)

(引1−6)「肌に影響がある善玉菌や悪玉菌による評価
一般的に着目している菌はアクネ菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、サーモフィルス菌の4つですが、もっと肌や健康に関連のある菌が高い占有率を示す場合もあります。
菌情報はつねにアップデートされています。これら4つ以外の菌も見逃さずに評価することから多くのメリットがあります。
・着目4菌種以外のお肌や健康にまた疾患のリスクとなる菌も同時に検出。
・常在菌の分布を「見える化」して、良い菌バランスを目指せる。
・お肌に影響のある菌のデータは医学文献を基にアップデートされ、一部はホームページやFacebookで公開し、自分が着目しなければならない新しい菌情報を常に参照できる。
・2回目以降の検査では、前の検査データも新しいデータベースで再評価し、併せてお返し。」(引用文献1(A)第2頁第8〜19行)

(引1−7)「どうすればもっと良くなるというヒントを得ることが出来ます
ヒントは最新の医学文献から作成したアドバイスレポートにあります。全ての人が当てはまるわけではありませんが、美肌、もしくは健康を目指すためのヒントがここに書かれています。」(引用文献1(A)第2頁第20〜23行)

(引1−8)「自宅で簡単に、性別や年齢を問わずお肌健康チェック
・・・
性別、年齢を問わず利用いただけます。
男女、年齢を問わずご利用いただけます。
お友達と一緒に、家族全員でなど、幅広くお使いいただける検査キットです。
・・・
こんな方に使っていただきたい
・・・
・年齢、性別の区別はありません。男性にも是非利用してください」(引用文献1(A)第2頁第24〜37行)

イ 「S−KIN Pro」に関する開示
(引1−9)「S−Kin Proは、肌研究を支援するキットです。皮膚の常在菌を顔から収集し、疾患や症状と関連する菌、またスキンケアに強く関連する菌などを分析してレポートします。」(引用文献1(I)第1頁第9〜12行)

(引1−10)「基本解析とレポート
着目菌種による分析
機能がよく知られているS.epidermidis、S.aureus、P.acnesを代表とする美肌、肌トラブル、肌炎症制御などの関連報告のある着目菌種の含有率を表示(当社で調査した肌状態が良い人と比較したグラフを表示することも可能)。その他、疾患に関係のある菌、治療薬や化合物との相互作用が報告されている菌など当社ではさまざまな菌に関する情報データベースを保持しています。リクエストに基づいた着目菌種でのレポートを作成します。(レポートの形式は菌種によって異なります)

」(引用文献1(I)第1頁下から第4〜第2頁第4行、引用文献1(F)第1頁第1〜7行)

(引1−11)「常在菌の多様性
健康状態を肌で反映するのは全体の菌のバランスにあります。肌状態と細菌叢の多様性には大きな関係があります。これを数値化した多様性指数と、Speciesレベルでの分布円グラフと、占有率が0.1%以上を占めるトップ100菌種を報告します。

」(引用文献1(I)第2頁第5〜8行、引用文献1(F)第1頁第8〜10行、第2頁上部表)

(引1−12)「肌タイプの予測
当社で調査した、肌状態に関する背景情報と常在菌の菌叢データを使い、検体データがどのような背景情報であるかを予測します」(引用文献1(I)第3頁第1〜3行、引用文献1(F)第2頁第1〜3行)

(引1−13)「

」(引用文献1(I)第3頁、引用文献1(F)第2頁)

(引1−14)「微生物のアノテーション探索
微生物の研究用アノテーションの収集には手間がかかります。しかも、情報が得にくい菌と情報が豊富な菌が極端です。Speciesレベルでは情報が無くても、Genusレベルでは情報が豊富かも知れません。当社では以下に表示するような形で微生物の情報源と情報量をデータベース化していて、それぞれ着目したい情報を取り出す仕組みを持っています。これを利用し、可能な限りの菌の情報を研究者の方へお届けするオプションサービスです。」(引用文献1(I)第5頁第5〜10行、引用文献1(F)第4頁第4〜8行)

(引1−15)「表中の数字はそれぞれの菌が持っている情報量を示しています。この情報量が多いほど研究対象になっているということを示しています。

」(引用文献1(I)第5頁第11〜12行、引用文献1(F)第4頁第9行)

(引1−16)「化合物の探索も可能です。この例ではアクネ菌で実験されている代表的な化合物とその活性値を探索した例

このオプション解析では、ご要望に応じ高度な探索を提供します。」(引用文献1(F)第4頁最終行〜第5頁最終行)

(2)引用発明1−1、引用発明1−2の認定
上記(1)アの「お肌バランスチェック」に関する開示から、引用文献1には、次の発明が記載されていると認定することができる(以下、「引用発明1−1」という。)。

引用発明1−1:
「被験者の肌タイプを予測する方法であって、被験者の「おでこ」または「頬」から採取した肌常在菌について、アクネ菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、サーモフィルス菌を含む肌常在菌の種類と占有率、又は前記占有率のバランスを「多様性」としてスコア化し、常在菌の多様性や、それぞれの菌の特性や基礎検査データから作られた独自の肌タイプデータベースを基に、被験者の肌状態を予測する工程を有し、前記肌タイプは、肌のシミ、ソバカス、シワ、毛穴、目元・口元の乾燥、ニキビ、脂浮き、肌のハリ、肌が疲れて暗い等の少なくとも1種である肌の状態である方法。」

また、上記(1)イの「S−KIN Pro」に関する開示から、引用文献1には、次の発明が記載されていると認定することができる。(以下、「引用発明1−2」という。)

引用発明1−2:
「被験者の肌タイプを予測する方法であって、被験者の顔から採取した皮膚の常在菌の検体について、皮膚表面のS.epidermidis、S.aureus、P.acnesを含む皮膚常在微生物の種類と占有率、又は前記占有率に基づく細菌叢の多様性を数値化した多様性指数について菌叢データを決定し、調査済みの肌状態に関する背景情報と常在菌の菌叢データを使い、検体データがどのような背景情報であるかを予測することにより、被験者の肌タイプを予測する工程を有し、前記肌タイプは、肌のシミ、ソバカス、シワ、毛穴、目元・口元の乾燥、ニキビ、脂浮き、肌のハリ、肌が疲れて暗い等の少なくとも1種である肌の状態である方法。」

(3)本件発明1〜3と引用発明1−1の対比・判断
ア 本件発明1〜3のうち、身体状態が「肌のたるみ」の状態である発明について
(ア)対比
引用発明1−1の「被験者の肌タイプを予測する方法」、「被験者の「おでこ」または「頬」から採取した肌常在菌について、アクネ菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、サーモフィルス菌を含む肌常在菌の種類と占有率、又は前記占有率のバランスを「多様性」としてスコア化し」は、本件発明1の「被験者の身体状態を評価する方法」、「皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し」に相当する。また、本件明細書の【0039】によると、本件発明1の「相関性基準」は、皮膚微生物叢から求めた存在割合またはパラメータの値に基づいて、評価すべき身体状態の良好度または重篤度を定性的または定量的に特定可能とする基準であるから、引用発明1−1の「常在菌の多様性や、それぞれの菌の特性や基礎検査データから作られた独自の肌タイプデータベース」は、本件発明1における「作成済み」の「相関性基準」に相当すると認めることができる。
また、本件発明1の「肌のたるみ」の状態について、甲5(A)から、「肌のたるみ」とは、皮膚のはりが失われるために垂れ下がりが生じる皮膚の膨らみのことであるから、評価される身体状態として、引用発明1−1の「肌のハリ」を評価することは、本件発明1の「肌のたるみ」を評価することに相当するものと認められる。
さらに、引用文献1には、(引1−4)において「常在菌の多様性や、それぞれの菌の特性や基礎検査データから作られた、当社独自の肌タイプデータベースを基に、あなたの肌状態を予測した結果を示します。」と記載され、(引1−5)の「2000種の菌バランスから肌タイプを予測」と題した表において、肌の状態に関する項目として「肌にハリがない」との項目が記載されている。そうすると、引用発明1−1の「常在菌の多様性や、それぞれの菌の特性や基礎検査データから作られた独自の肌タイプデータベースを基に、被験者の肌状態を予測する工程」を有し、前記肌タイプが肌のハリである方法は、本件発明1における、予め作成された「肌のハリ」についての「常在菌の多様性や、それぞれの菌の特性や基礎検査データから作られた独自の肌タイプデータベース」の値、すなわち肌のハリについての「作成済み」の「相関性基準」の値と、被験者の値を対比することによって、肌のハリについての被験者の肌状態を予測する工程であると認められる。

以上からすると、本件発明1と引用発明1−1は、
「被験者の身体状態を評価する方法であって、前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し、前記相関性基準と対比する工程を有し、前記身体状態は、肌のたるみの状態」である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
本件発明1では、「前記身体状態が肌のたるみの状態である場合、(i)前記相関性基準は、実年齢による影響の排除後における、前記身体状態と前記存在割合又は前記パラメータとの相関性基準である、(ii)前記相関性基準は、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものである、(iii)前記パラメータは、複数の皮膚常在微生物の存在割合の差、和、積、比またはそれらの組合せである(皮膚常在微生物の多様性指数ではない)、又は(iv)前記存在割合またはパラメータは、検体の細菌叢間の非類似度を分析して得られる座標軸と相関する(Propionibacterium acnes菌の存在割合ではない)ものである」のに対して、引用発明1−1では、相関性基準又は皮膚常在微生物の存在割合若しくはパラメータについて、上記(i)〜(iv)のいずれかであることの特定がない点

(イ)判断
まず、上記相違点1の(i)〜(iv)に係る特定のうち、(i)、(ii)について検討する。
上記(i)および(ii)はいずれも、本件発明1に係る「相関性基準」が、被験者の年齢を考慮して作成されたものであることが記載されている点で共通しており、(i)は、前記相関性基準が実年齢による影響の排除後における相関性基準であることを特定し、(ii)は、前記相関性基準が、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものであることを特定するものである。
一方、引用文献1において、常在菌の多様性やそれぞれの菌の特性や基礎検査データから肌タイプデータベースを構築する際に、被験者の実年齢の影響を排除してデータベースを構築したことや、母集団を年齢に応じた準母集団に分類して当該データベースを構築したことは記載されていない。ここで、(引1−8)には、引用文献1に開示される肌フローラ検査キットが年齢を問わずに利用できるキットであることが記載されているものの、当該記載は、上記検査キットがどの年齢層においても使用できることを意味するにとどまり、上記データベースの構築において年齢の影響が考慮されたことは記載されていないし、仮に年齢の影響を考慮するとしても、どのように年齢の情報を組みこんで、肌常在菌の種類や占有率から肌タイプを予測するデータベースを構築するのかを示唆する記載もない。
そして、肌の状態と肌常在菌との相関関係に対して、実年齢がどのような影響を与えるものであったかが本件特許の原出願日において、当業者に自明であったとも認められないので、上記相違点1の(i)および(ii)に係る本件発明1の発明特定事項を引用発明1−1で採用することが当業者に容易に想到し得たものとはいえない。

なお、申立人は、令和4年6月22日付け意見書で、医療統計において、説明変数と結果変数の双方に対して影響を与える交絡要因を考慮し、その効果を排除して統計解析を行うことは、当業者の間で技術常識であったといえ(甲4の第149頁第11行〜第150頁最下行)、「肌のハリ」の状態は、年齢によって変化するであろうことも自明であることなどを述べて、本件発明1は、引用発明1−1に基づき、当業者が容易に想到し得たものである旨を主張する。
しかしながら、上記のとおり、引用文献1には、肌の状態と肌常在菌の相関関係における実年齢の影響は記載も示唆もされていないし、当該影響が生じることやその内容を、本件特許の原願日当時の当業者が技術常識として知悉していた事実も認められないので、上記の申立人の主張は理由がない。

次に、上記相違点1の(i)〜(iv)に係る特定のうち、(iii)、(iv)について検討する。
本件発明1の(iii)、(iv)は、引用文献1に、複数の皮膚常在微生物の存在割合の差、和、積、比またはそれらの組合せであるパラメータ(皮膚常在微生物の多様性指数ではない)を用いること、及び、検体の細菌叢間の非類似度を分析して得られる座標軸と相関する(Propionibacterium acnes菌の存在割合ではない)存在割合またはパラメータを用いることが記載も示唆もされてないことから、取消理由を通知しないこととした訂正前の請求項9、11に記載されたものである。
そうすると、上記相違点1の(iii)及び(iv)に係る本件発明1の発明特定事項を、引用発明1−1で採用することが当業者に容易に想到し得たものとはいえない。

以上のとおりであるから、本件発明1のうち、身体状態が「肌のたるみ」の状態である発明については、引用発明1−1及び本件特許の原願日の技術常識に基づいて当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
また、本件発明2、3のうち、身体状態が「肌のたるみ」の状態である発明についても、相違点1の発明特定事項を備えているから、本件発明1と同様の理由により、引用発明1−1及び本件特許の原願日の技術常識に基づいて当業者が容易に想到することができたとはいえない。

イ 本件発明1〜3のうち、身体状態が「肌年齢」である発明について
本件発明1のうち、身体状態が「肌年齢」である発明は、引用文献1に、肌年齢と肌常在菌の相関関係について記載も示唆もされていないことから、取消理由を通知しないこととしたものである。
したがって、本件発明1のうち、身体状態が「肌年齢」である発明は、引用発明1−1による取消理由1、2Aは存在しない。
本件発明1を引用する本件発明2、及び、身体状態、相関性基準、及び皮膚常在微生物の存在割合やそれに基づくパラメータに関して、本件発明1と同じ発明特定事項を有する本件発明3についても、本件発明1と同様の理由により、引用発明1−1による取消理由1、2Aは存在しない。

(4)本件発明1〜3と引用発明1−2の対比・判断
ア 本件発明1〜3のうち、身体状態が「肌のたるみ」の状態である発明について
(ア)対比
引用発明1−2の「被験者の肌タイプを予測する方法」、「被験者の顔から採取した皮膚の常在菌の検体について、皮膚表面のS.epidermidis、S.aureus、P.acnesを含む皮膚常在微生物の種類と占有率、又は前記占有率に基づく細菌叢の多様性を数値化した多様性指数について菌叢データを決定し」は、本件発明1の「被験者の身体状態を評価する方法」、「皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し」に相当する。
さらに、本件明細書の【0039】によると、引用発明1−2の「調査済みの肌状態に関する背景情報と常在菌の菌叢データ」は、本件発明1における「作成済み」の「相関性基準」に相当すると認めることができる。
また、本件発明1の「肌のたるみ」の状態については、上記(3)ア(ア)のとおり、引用発明1−2の「肌のハリ」を評価することは、本件発明1の「肌のたるみ」を評価することに相当するものと認められる。
さらに、引用文献1には、(引1−12)において「肌状態に関する背景情報と常在菌の菌叢データを使い、検体データがどのような背景情報であるかを予測します」と記載され、(引1−13)において、肌の状態に関する項目として「肌にハリがない」との項目が記載されている。そうすると、引用発明1−2の「調査済みの肌状態に関する背景情報と常在菌の菌叢データを使い、検体データがどのような背景情報であるかを予測することにより、被験者の肌タイプを予測する工程」を有し、前記肌タイプが肌のハリである方法は、本件発明1における、予め作成された「肌のハリ」についての「常在菌の菌叢データ」、すなわち肌のハリについての「作成済み」の「相関性基準」のデータと、検体データを対比し、肌のハリについて背景情報を予測することにより、肌のハリについての被験者の肌タイプを予測する方法であると認められる。

以上からすると、本件発明1と引用発明1−2は、上記(3)ア(ア)で検討した一致点と同じ点で一致し、上記相違点1と同じ点で相違している。

(イ)判断
上記(3)ア(イ)で検討したのと同様の理由より、相違点1の(i)〜(iv)に係る本件発明1の発明特定事項を、引用発明1−2で採用することが当業者に容易に想到し得たものとはいえない。
よって、本件発明1のうち、身体状態が「肌のたるみ」の状態である発明については、引用発明1−2及び本件特許の原願日の技術常識に基づいて当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
また、本件発明2、3のうち、身体状態が「肌のたるみ」の状態である発明についても、相違点1の発明特定事項を備えていることが明らかであるから、本件発明1と同様の理由により、引用発明1−2及び本件特許の原願日の技術常識に基づいて当業者が容易に想到することができたとはいえない。

イ 本件発明1〜3のうち、身体状態が「肌年齢」の状態である発明について
上記(3)イと同様の理由により、本件発明1のうち、身体状態が「肌年齢」である発明は、引用発明1−2による取消理由1、2Aは存在しない。
また、本件発明1を引用する本件発明2、及び、身体状態、相関性基準、及び皮膚常在微生物の存在割合やそれに基づくパラメータに関して、本件発明1と同じ特定を有する本件発明3についても、本件発明1と同様の理由により、引用発明1−2による取消理由1、2Aは存在しない。

(5)本件発明4〜6、12と引用発明1−1の対比・判断
ア 本件発明4〜6、12のうち、身体状態が「脂性肌」、「肌のそばかす」、「かさつき」、「てかり」、「しみ」、「くすみ」、「しわ」、「はりの状態」又は「毛穴の状態」である発明について
(ア)対比
上記(3)ア(ア)の記載の対比に加え、引用発明1−1の「肌のシミ」、「ソバカス」、「シワ」、「毛穴」、「目元・口元の乾燥」、「脂浮き」、「肌のハリ」、「肌が疲れて暗い」との肌の状態は、それぞれ、本件発明4の「しみ」、「肌のそばかす」、「しわ」、「毛穴の状態」、「かさつき」、「脂性肌及びてかり」、「はり」、「くすみ」に相当する。

以上からすると、本件発明4と引用発明1−1は、
「被験者の身体状態を評価する方法であって、前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し、前記相関性基準と対比する工程を有し、前記身体状態は、脂性肌、肌のそばかす、かさつき、てかり、しみ、くすみ、しわ、はりの状態又は毛穴の状態」である点で一致し、以下の点で相違している。

(相違点2)
本件発明4では、「前記身体状態が脂性肌、肌のそばかす、かさつき、てかり、しみ、くすみ、しわ、はりの状態又は毛穴の状態である場合、(i)前記相関性基準は、実年齢による影響の排除後における、前記身体状態と前記存在割合又は前記パラメータとの相関性基準である、(ii)前記相関性基準は、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものである、(iii)前記パラメータは、複数の皮膚常在微生物の存在割合の差、和、積、比またはそれらの組合せである(皮膚常在微生物の多様性指数ではない)、(iv)前記存在割合またはパラメータは、検体の細菌叢間の非類似度を分析して得られる座標軸と相関する(Propionibacterium acnes菌の存在割合ではない)ものである、又は(v)前記存在割合としてPropionibacterium acnes菌の存在割合と、前記パラメータとして皮膚常在微生物の多様性指数と、を併用する(ただし(v)は前記身体状態がしみ、くすみの場合に限る)」のに対して、引用発明1−1では、相関性基準又は皮膚常在微生物の存在割合若しくはパラメータについて、上記(i)〜(v)のいずれかであることの特定がない点

(イ)判断
上記相違点2の(i)〜(v)のうち、(i)〜(iv)については、上記(3)ア(イ)で検討したのと同様の理由より、(i)〜(iv)に係る本件発明4の発明特定事項を引用発明1−1で採用することは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
次に、上記相違点2の(v)について検討する。上記(v)に係る「併用する」について、本件明細書段落【0062】、図18、図19には、多様性指数(Simpson指数)とP.acnes菌を2つのパラメータとして各検体の細菌叢を3つのグループに分類し、当該グループが、皮膚の加齢によるシミ、そばかす、皮膚のくすみの3つのアンケート結果のスコア合計値(“シミ・くすみ”指数)と相関を示したことが記載されている。このように、上記本件発明4の(v)に係る「併用する」とは、身体状態がしみ、くすみの場合に、P.acnes菌の存在割合と、皮膚常在微生物の多様性指数とを、「互いに独立した説明変数として併せ使うこと」を意味するものと認められる。
一方、引用文献1には、(引1−3)において、肌状態を2つのポイントで評価することが記載されており、1つめのポイントとして、菌のバランスを「多様性」としてスコア化して評価に使うこと、及び、2つめのポイントとして、アクネ菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、サーモフィルス菌等、肌に影響がある菌の含有率から評価することが記載されている。しかしながら、当該記載は、菌のバランスの多様性スコアとアクネ菌の含有率をそれぞれ独立した説明変数として組み合わせて特定の肌状態を予測できることを意味するものとはいえず、ましてや、当該2つの説明変数によって、しみ及びくすみの状態を評価できることを示唆するものともいえない。そして、引用文献1の他の記載及び本件特許の原出願日の技術常識を参酌しても、P.acnes菌の存在割合と、皮膚常在微生物の多様性指数とを、互いに独立した説明変数として併せ使うことが当業者にとって容易であったとはいえない。
よって、上記相違点2の(v)に係る本件発明4の発明特定事項を、引用発明1−1で採用することも当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
以上のとおりであるから、本件発明4のうち、身体状態が「脂性肌」、「肌のそばかす」、「かさつき」、「てかり」、「しみ」、「くすみ」、「しわ」、「はりの状態」又は「毛穴の状態」である発明については、引用発明1−1による取消理由1、2Aは存在しない。
また、本件発明5、6、12のうち、身体状態が「脂性肌」、「肌のそばかす」、「かさつき」、「てかり」、「しみ」、「くすみ」、「しわ」、「はりの状態」又は「毛穴の状態」の状態である発明についても、相違点2の発明特定事項を備えていることが明らかであるから、本件発明4と同様の理由により、引用発明1−1による取消理由1、2Aは存在しない。

イ 本件発明4〜6、12のうち、身体状態が「老化肌指数」、「きめ」又は「黄ばみ」である発明について
本件発明4のうち、身体状態が「老化肌指数」、「きめ」又は「黄ばみ」である発明は、引用文献1に、これらの状態と肌常在菌の相関関係について記載も示唆もされていないことから、取消理由を通知しないこととしたものである。
したがって、本件発明4のうち、身体状態が「老化肌指数」、「きめ」又は「黄ばみ」である発明は、引用発明1−1による取消理由1、2Aは存在しない。
本件発明4を引用する本件発明5、12、及び、身体状態、相関性基準、及び皮膚常在微生物の存在割合やそれに基づくパラメータに関して、本件発明4と同じ特定を有する本件発明6、及び、本件発明6を引用する本件発明12についても、本件発明4と同様の理由により、引用発明1−1による取消理由1、2Aは存在しない。

(6)本件発明4〜6、12と引用発明1−2の対比・判断
ア 本件発明4〜6、12のうち、身体状態が「脂性肌」、「肌のそばかす」、「かさつき」、「てかり」、「しみ」、「くすみ」、「しわ」、「はりの状態」又は「毛穴の状態」である発明について
(ア)対比
引用発明1−2の「肌のシミ」、「ソバカス」、「シワ」、「毛穴」、「目元・口元の乾燥」、「脂浮き」、「肌のハリ」、「肌が疲れて暗い」との肌の状態は、それぞれ、本件発明4の「しみ」、「肌のそばかす」、「しわ」、「毛穴の状態」、「かさつき」、「脂性肌及びてかり」、「はり」、「くすみ」に相当する。
本件発明4と引用発明1−2を対比すると、両者は、上記(5)ア(ア)で検討した一致点と同じ点で一致し、相違点2と同じ点で相違している。

(イ)判断
上記(5)ア(イ)で検討したのと同様の理由より、相違点2の(i)〜(v)に係る本件発明4の発明特定事項を、引用発明1−2で採用することが当業者に容易に想到し得たものとはいえない。
よって、本件発明4のうち、身体状態が「脂性肌」、「肌のそばかす」、「かさつき」、「てかり」、「しみ」、「くすみ」、「しわ」、「はりの状態」又は「毛穴の状態」である発明については、引用発明1−2及び本件特許の原願日の技術常識に基づいて当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
また、本件発明5、6、12のうち、身体状態が「脂性肌」、「肌のそばかす」、「かさつき」、「てかり」、「しみ」、「くすみ」、「しわ」、「はりの状態」又は「毛穴の状態」の状態である発明についても、相違点2の発明特定事項を備えていることが明らかであるから、本件発明4と同様の理由により、引用発明1−2及び本件特許の原願日の技術常識に基づいて当業者が容易に想到することができたとはいえない。

イ 本件発明4−6、12のうち、身体状態が「老化肌指数」、「きめ」又は「黄ばみ」である発明について
上記第(5)イと同様の理由により、本件発明4のうち、身体状態が「老化肌指数」、「きめ」又は「黄ばみ」である発明については、引用発明1−2による取消理由1、2Aは存在しない。
本件発明4を引用する本件発明5、12、及び、身体状態、相関性基準、及び皮膚常在微生物の存在割合やそれに基づくパラメータに関して、本件発明4と同じ特定を有する本件発明6、及び、本件発明6を引用する本件発明12についても、本件発明4と同様の理由により、引用発明1−2による取消理由1、2Aは存在しない。

(7)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1〜6、12に係る特許は、取消理由1、2A(引用文献1を主引例とする進歩性)によって取り消すべきものではない。

4 取消理由1、2B(引用文献2を主引例とする新規性進歩性)について
(1)引用文献2に記載された事項
引用文献2は、平成27年9月8日以前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、株式会社ワールドフュージョンによる「日本人皮膚菌叢解析と皮膚健康状態との関連性」と題する資料であると認められる(この点について、特許権者は、令和4年4月28日付け意見書において争っていない。)。
引用文献2は全31頁の資料であり、頁数が開示されていないが、提出された証拠の頁順に基づき当審で頁数を示す。

(引2−1)被験者の額と頬から皮膚表面の細菌叢を回収し、16s rRNA遺伝子を解析し、サンプルの菌叢を解析した。クラスタ分類、主座標分析、多様性指数(Simpson’s Index)の算出を行った。(第1〜12頁)

(引2−2)菌叢の多様性指数と肌状態の関係を調べたところ、菌叢多様性と強く相関する肌状態項目があった。(第13頁)

(引2−3)アンケート項目(アトピー性皮膚炎、シミやソバカスが目立つ、化粧品かぶれ、額や鼻のテカリ感、シミ、肌のくすみ、肌のハリ、毛穴の汚れ等)の回答により有意差のあった菌種の一覧(第15頁)

(引2−3の1)変動細菌−その他アンケート項目で有意差のある菌。特に、「肌がくすんで透明感がない」なるアンケート項目に関し、Propionibacterium acnesが多い状態と有意な相関があったことが示され、「額や鼻にテカリ感がある」、「肌がくすんで透明感がない」、「肌にツヤがない」、及び「毛穴の汚れが目立つ」のアンケート項目に対し、「Propionibacteriumが多いことが共通する肌の状態→多様性の欠如が原因?」と記載されている。(第17〜18頁)

(引2−4)皮膚の状態についてのアンケートの回答と菌叢のパターンを関連づけ、検査サンプルの菌叢情報とアンケートの回答(Yes/No)の菌叢情報を対比し、いずれの菌叢情報に似ているかによって皮膚状態を予測する。(第20〜22頁)

(引2−5)(1)細菌叢回収キットの郵送、(2)16s amplicon sequence、(3)菌叢解析・レポート自動作成の工程からなるサービスを展開する。レポートとしては、肌の細菌叢分析結果として、被験者の肌にいる細菌の種類と割合、参考情報として肌状態が良いヒトの菌叢分析結果、及び皮膚の細菌叢及び多様性指数から類推される肌症状として、毛穴の汚れ、額や鼻のテカリ、Tゾーンのニキビ、額や鼻の油浮き等が開示されている。また、肌にいる細菌として、P. acnesやS. epidermidis、Xanthomonas axonopodis等も開示されている。(第23頁)

(引2−6)日本人と米国人の菌叢を対比した結果、それぞれに特徴的に見られる菌種や共通して存在する菌種が存在し、両者の菌叢は著しい違いがある。(第24〜25頁)

(2)引用発明2の認定
上記(1)の開示から、引用文献2には、次の発明が記載されていると認定することができる(以下、「引用発明2」という。)。

引用発明2:
「検体の肌の菌叢解析を行い、細菌の種類と割合及び多様性指数を算出し、アンケートの回答と関連づけられた皮膚表面の皮膚常在微生物の菌叢のパターン又は多様性に基づく判定基準と対比することにより検体の肌状態を予測する方法であって、肌状態は、シミ、肌のくすみ、肌のハリ、毛穴の汚れ、ニキビ、額や鼻の油浮き等である方法。」

(3)本件発明1〜3と引用発明2の対比・判断
ア 本件発明1〜3のうち、身体状態が「肌のたるみ」の状態である発明について
(ア)対比
引用発明2の「検体の肌の菌叢解析を行い、細菌の種類と割合及び多様性指数を算出し」、「検体の肌状態を予測する方法」は、本件発明1の「皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し」、「被験者の身体状態を評価する方法」に相当する。また、本件明細書の【0039】によると、引用発明2の「アンケートの回答と関連づけられた皮膚表面の皮膚常在微生物の菌叢のパターン又は多様性に基づく判定基準」は、本件発明1における「作成済み」の「相関性基準」に相当すると認めることができる。
さらに、本件発明1の「肌のたるみ」の状態について、上記3(3)ア(ア)と同様に、引用発明2の「肌のハリ」を評価することは、本件発明1の「肌のたるみ」を評価することに相当するものと認めることができる。そして、引用文献2には、(引2−3)のとおり、「肌のハリ」を含む肌の状態のアンケート項目に対して有意差のあった菌が一覧として記載されているから、本件発明1における、「肌のハリ」について、「アンケートの回答と関連づけられた皮膚表面の皮膚常在微生物の菌叢のパターン又は多様性に基づく判定基準」、すなわち肌のハリについての「作成済み」の「相関性基準」と検体の値を対比することによって、肌のハリについての検体の肌状態を予測することが記載されているといえる。
以上からすると、本件発明1と引用発明2は、上記3(3)ア(ア)で検討した一致点と同じ点で一致し、上記相違点1と同じ点で相違している。

(イ)判断
上記相違点1の(i)〜(iv)に係る特定のうち、上記(i)および(ii)はいずれも、本件発明1に係る「相関性基準」が、被験者の年齢を考慮して作成されたものであることが記載されている点で共通しており、(i)では、前記相関性基準が実年齢による影響の排除後における相関性基準であることが特定され、(ii)は、前記相関性基準が、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものであることが特定されている。
一方、引用文献2には、アンケートの回答と皮膚表面の皮膚常在微生物の菌叢のパターンを関連付け、多様性に基づく判定基準を作成する際に、被験者の実年齢の影響を排除して判定基準を作成したことや、母集団を年齢に応じた準母集団に分類して当該判定基準を作成したことは記載されていない。そして、肌の状態と肌常在菌との相関関係に対して、実年齢がどのような影響を与えるものであったかが本件特許の原出願日において、当業者に自明であったとも認められないので、上記相違点1の(i)および(ii)に係る本件発明1の発明特定事項を引用発明2で採用することが当業者に容易に想到し得たものとはいえない。

なお、申立人は、引用文献1の場合と同様に、令和4年6月22日付け意見書で、医療統計において、説明変数と結果変数の双方に対して影響を与える交絡要因を考慮し、その効果を排除して統計解析を行うことは、当業者の間で技術常識であったといえ(甲4の第149頁第11行〜第150頁最下行)、「肌のハリ」の状態は、年齢によって変化するであろうことも自明であることなどを述べて、本件発明1は、引用発明2に基づき、当業者が容易に想到し得たものである旨を主張する。
しかしながら、上記のとおり、引用文献2には、肌の状態と肌常在菌の相関関係における実年齢の影響は記載も示唆もされていないし、当該影響が生じることやその内容を、本件特許の原願日当時の当業者が技術常識として知悉していた事実も認められないので、上記の申立人の主張は理由がない。

次に、上記相違点1の(i)〜(iv)に係る特定のうち、(iii)、(iv)について検討する。
本件発明1の(iii)、(iv)は、引用文献2に、複数の皮膚常在微生物の存在割合の差、和、積、比またはそれらの組合せであるパラメータ(皮膚常在微生物の多様性指数ではない)を用いること、及び、検体の細菌叢間の非類似度を分析して得られる座標軸と相関する(Propionibacterium acnes菌の存在割合ではない)存在割合またはパラメータを用いることが記載も示唆もされてないことから、取消理由を通知しないこととした訂正前の請求項9、11に記載されたものである。
よって、上記相違点1の(iii)及び(iv)に係る本件発明1の発明特定事項を、引用発明2で採用することが当業者に容易に想到し得たものとはいえない。

以上のとおりであるから、本件発明1のうち、身体状態が「肌のたるみ」の状態である発明については、引用発明2及び本件特許の原出願日の技術常識に基づいて当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
また、本件発明2、3のうち、身体状態が「肌のたるみ」の状態である発明についても、相違点1の発明特定事項を備えていることが明らかであるから、本件発明1と同様の理由により、引用発明2及び本件特許の原出願日の技術常識に基づいて当業者が容易に想到することができたとはいえない。

イ 本件発明1〜3のうち、身体状態が「肌年齢」の状態である発明について
本件発明1のうち、身体状態が「肌年齢」である発明は、引用文献2に、肌年齢と肌常在菌の相関関係について記載も示唆もされていないことから、取消理由を通知しないこととしたものである。
したがって、本件発明1のうち、身体状態が「肌年齢」である発明については、引用発明2による取消理由1、2Bは存在しない。
本件発明1を引用する本件発明2、及び、身体状態、相関性基準、及び皮膚常在微生物の存在割合やそれに基づくパラメータに関して、本件発明1と同じ発明特定事項を有する本件発明3についても、本件発明1と同様の理由により、引用発明2による取消理由1、2Bは存在しない。

(4)本件発明4〜6、12と引用発明2の対比・判断
ア 本件発明4〜6、12のうち、身体状態が「脂性肌」、「肌のそばかす」、「かさつき」、「てかり」、「しみ」、「くすみ」、「しわ」、「はりの状態」又は「毛穴の状態」である発明について
(ア)対比
上記(3)ア(ア)に記載の対比に加え、引用発明2の「シミ」、「肌のくすみ」、「肌のハリ」、「毛穴の汚れ」、「額や鼻の脂浮き」は、本件発明4の「しみ」、「くすみ」、「はり」、「毛穴の状態」、「脂性肌」に相当する。

以上からすると、本件発明4と引用発明2は、
「被験者の身体状態を評価する方法であって、前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し、前記相関性基準と対比する工程を有し、前記身体状態は、脂性肌、しみ、くすみ、はりの状態又は毛穴の状態」である点で一致し、上記3(5)ア(ア)で検討した相違点2と同じ点で相違している。

(イ)判断
上記相違点2の(i)〜(v)に係る特定のうち、(i)〜(iv)については、上記3(3)ア(イ)で検討したのと同様の理由より、(i)〜(iv)に係る本件発明4の発明特定事項を引用発明2で採用することは、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
次に、上記相違点2の(v)について検討する。上記3(5)ア(イ)で検討したとおり、当該(v)における「併用する」とは、身体状態がしみ、くすみの場合に、P.acnes菌の存在割合と、皮膚常在微生物の多様性指数とを、「互いに独立した説明変数として併せ使うこと」を意味するものと認められる。
一方、引用文献2には、(引2−2)において菌叢の多様性指数と肌状態の関係が記載され、(引2−3)において肌状態と有意差のあった菌の一覧が記載され、(引2−4)において菌叢のパターンをもとに肌状態を予測することが記載され、(引2−5)には、皮膚の細菌叢から類推される肌症状が記載されている。さらに、(引2−3の1)には、「肌がくすんで透明感がない」なるアンケート項目に関し、Propionibacterium acnesが多い状態と有意な相関があったことが示され、他のアンケート項目とともに、「Propionibacteriumが多いことが共通する肌の状態→多様性の欠如が原因?」と記載されている(第18頁)。
しかしながら、上記(引2−3の1)は、「肌がくすんで透明感がない」という肌状態に関して、アクネ菌の含有率が高いことに付随して多様性指数が低くなっていることを示すものにすぎず、アクネ菌の含有率と多様性指数を2つの独立した説明変数として、しみ及びくすみの状態を評価できることを示唆するものとはいえない。そして、引用文献2の他の記載及び本件特許の原出願日の技術常識を参酌しても、P.acnes菌の存在割合と、皮膚常在微生物の多様性指数とを、互いに独立した説明変数として併せ使うことが当業者にとって容易であったとはいえない。
よって、上記相違点2の(v)に係る本件発明4の発明特定事項を、引用発明2で採用することも当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

以上のとおりであるから、本件発明4のうち、身体状態が「脂性肌」、「肌のそばかす」、「かさつき」、「てかり」、「しみ」、「くすみ」、「しわ」、「はりの状態」又は「毛穴の状態」である発明については、引用発明2による取消理由1、2Bは存在しない。
また、本件発明5、6、12のうち、身体状態が「脂性肌」、「肌のそばかす」、「かさつき」、「てかり」、「しみ」、「くすみ」、「しわ」、「はりの状態」又は「毛穴の状態」の状態である発明についても、相違点2の発明特定事項を備えていることが明らかであるから、本件発明4と同様の理由により、引用発明2による取消理由1、2Bは存在しない。

イ 本件発明4〜6、12のうち、身体状態が「老化肌指数」、「きめ」又は「黄ばみ」である発明について
上記3(5)イと同様の理由により、本件発明4のうち、身体状態が「老化肌指数」、「きめ」又は「黄ばみ」である発明について、引用発明2による取消理由1、2Bは存在しない。
本件発明4を引用する本件発明5、12、及び、身体状態、相関性基準、及び皮膚常在微生物の存在割合やそれに基づくパラメータに関して、本件発明4と同じ特定を有する本件発明6、及び、本件発明6を引用する本件発明12についても、本件発明4と同様の理由により、引用発明2による取消理由1、2Bは存在しない。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1〜6、12に係る特許は、取消理由1、2B(引用文献2を主引例とする進歩性)によって取り消すべきものではない。

5 取消理由通知書において採用しなかった申立理由
申立理由1、2(甲1ないしは甲2を主引例とする新規性進歩性)は、取消理由1、2(引用文献1ないしは引用文献2を主引例とする新規性進歩性)と同趣旨のものであり、申立理由3(サポート要件)は取消理由3(サポート要件)と同趣旨のものである。よって、申立理由1、2(甲1ないしは甲2を主引例とする新規性進歩性)及び申立理由3(サポート要件)は検討を要しない。
よって、以下では、申立理由1、2(甲3を主引例とする新規性進歩性)について、検討する。

(1)申立理由1、2(甲3を主引例とする新規性進歩性
甲3は、本件特許の原出願日前の平成27年11月23日に頒布された刊行物であり、以下の記載がある。なお、甲3は英文で記載されているため、異議申立人及び当審による訳文を示す。下線は、当審が付した。

(甲3−1)
「背景:・・・ここでは、皮膚微生物叢の遺伝的要素および宿主の遺伝的要因との関連について調査した。
結果:26歳から55歳までの一卵性及び二卵性の双子及びその母親を含む45人の微生物叢の分析に基づき、皮膚微生物の多様性が年齢及び色素沈着によって重大な影響を受けていることが判明した。遺伝性解析により、皮膚微生物叢に対する遺伝的影響と共有環境による影響が明らかになった。さらに、Corynebacterium jeikeiumの存在量と表皮バリア機能に関連する宿主FLG遺伝子の一塩基多型(SNPs)の間に強い関連性があることが観察された。
結論:本研究により、ヒト皮膚微生物叢と宿主遺伝子の密接な関連性が明らかになり、体の表面における微生物生態系の確立におけるヒト遺伝的要因の役割について理解が深まる。」(要約)

(甲3−2)
「双子の遺伝率や連鎖研究は、一卵性双生児は遺伝的に同一であるため、その表現型の違いは環境由来であるという仮定に基づいて、遺伝と環境の影響を分離している。さらに、一卵性双生児(MZ)と二卵性双生児(DZ)、および親と子のペアから、共有される環境による影響を決定することができる[13]。」(第1頁右欄下から第4行〜第2頁左欄第4行)

(甲3−3)
「本研究では、26歳から55歳までの一卵性双生児16名と二卵性双生児8名、およびその母親(n=16)の皮膚微生物叢を解析し、皮膚微生物叢の遺伝的要素および宿主遺伝因子との関連性を明らかにした。」(第2頁左欄第7〜11行)

(甲3−4)
「ヒトの皮膚微生物叢の多様性
対象となる集団の「内」および「間」の細菌の多様性は、それぞれアルファおよびベータ多様性として表される。種の豊富さの評価において、アルファ多様性を反映する希薄化曲線は、35歳以上の年齢で、著しく高いレベルの細菌多様性を示した(Wilcoxon順位和検定、W=109、P<0.001;図2)。個人を均等に2群に分けるために、35歳のカットオフ値として中央値が用いられた。」(第3頁左欄下から第6行〜右欄第4行)

(甲3−5)


」(図2)

(甲3−6)
「興味深いことに、皮膚の色素沈着は皮膚の細菌に有意な影響を与え、中間的な色調の皮膚を持つ個人において多様性が増加した(Wilcoxon順位和検定、W=176、P=0.045;追加ファイル1:図S1)。」(第4頁左欄下から第5行〜最下行)

(甲3−7)
「年齢、性別、皮膚湿度、色素沈着の異なる状態におけるβ多様性プロファイルを比較するために、微生物群集間の距離を系統情報に基づいて算出し、加重および非加重UniFrac指標を用いて主座標分析(PCoA)を行った(追加ファイル1:図S2)。その結果、宿主の表現型に基づく微生物群の完全な分離は認められず(ANOSIM、すべての宿主形質でP>0.05)、年齢、性別、皮膚湿度、色素沈着によって分けられたグループは有意に異なる微生物組成を含まないことが示された。」(第4頁右欄第6〜18行)

(甲3−8)
「本研究では、皮膚微生物叢の構成に直接影響を与える宿主の遺伝的要因やその他の宿主の内在的特性を示した。さらに、皮膚微生物叢の構成と皮膚バリア機能に関連するヒトの遺伝的要因との間に強い関連があることを明らかにした。遺伝的に同一の一卵性双生児と半同一の二卵性双生児の分析は、微生物叢に対する遺伝的および環境的影響を特定し、識別するために使用することができる[42]。双子のペアの調査は、皮膚微生物叢が宿主の遺伝とその環境要因の両方によって形成されていることを証明した。さらに、皮膚微生物叢に関連するヒトの遺伝形質の解析は、候補遺伝子アプローチを用いて行われた。」(第8頁左欄第16〜29行)

上記、(甲3−1)〜(甲3−3)及び(甲3−8)より、甲3は、一卵性双生児や二卵性双生児並びにその母親の皮膚微生物叢を解析することにより、皮膚微生物叢に対して影響を与える遺伝的要因及び環境的要因を識別して評価したことを報告した文献であるといえる。そして、(甲3−4)〜(甲3−6)より、甲3には、宿主の形質と皮膚微生物叢の多様性の関係について、35歳以上の年齢で皮膚微生物叢の多様性が高かったことや、中間的な色調の皮膚を持つ個人において多様性が増加したことが記載されている。
しかしながら、甲3は、皮膚微生物叢の多様性に影響を与える要素として年齢及び色素の沈着を報告するにとどまり、甲3には、本件発明1、4の発明特定事項である、「身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータ」に基づいて「被験者の身体状態を評価する」ことが記載も示唆もされていない。
特に、(甲3−7)に、年齢、性別、皮膚湿度、色素沈着によって分けられたグループ間で微生物の組成に有意差が確認できなかったことが記載されていることに照らすと、肌の状態と肌常在菌の相関関係における年齢の影響も甲3に示唆されているとは認められない。
そうしてみると、甲3を主引例として、本件発明1〜6、12に係る「身体状態を評価する方法」を当業者が容易に想到し得たとすることはできないから、本件発明1〜6、12は、申立理由1、2(甲3を主引例とする新規性進歩性)によって取り消すべきものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、当審で通知した取消理由および申立人による申立理由によっては、本件発明1〜6、12に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件発明1〜6、12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項7〜11に係る特許に対する申立は、その対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の身体状態を評価する方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し、前記相関性基準と対比する工程を有し、
前記身体状態は、肌年齢、または肌のたるみの状態であり、
前記身体状態が肌のたるみの状態である場合、
(i)前記相関性基準は、実年齢による影響の排除後における、前記身体状態と前記存在割合又は前記パラメータとの相関性基準である、
(ii)前記相関性基準は、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものである、
(iii)前記パラメータは、複数の皮膚常在微生物の存在割合の差、和、積、比またはそれらの組合せである(皮膚常在微生物の多様性指数ではない)、又は
(iv)前記存在割合またはパラメータは、検体の細菌叢間の非類似度を分析して得られる座標軸と相関する(Propionibacterium acnes菌の存在割合ではない)ものである
方法。
【請求項2】
被験者に情報を提示する方法であって、
請求項1記載の方法により、被験者の身体状態を評価する工程と、
前記身体状態が目標状態にないと評価された場合、前記身体状態が目標状態にあるときに前記相関性基準に基づいて前記存在割合又は前記パラメータが示す数値範囲の方に、前記存在割合又は前記パラメータの値を誘導可能な成分としてデータベースに登録されている情報を提示する工程と、を有する方法。
【請求項3】
身体状態を改善又は予防する物質をスクリーニングする方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータの値に関する、候補物質による変化に基づいて、前記候補物質を選抜する工程を有し、
前記身体状態は、肌年齢、または肌のたるみの状態であり、
前記身体状態が肌のたるみの状態である場合、
(i)前記相関性基準は、実年齢による影響の排除後における、前記身体状態と前記存在割合又は前記パラメータとの相関性基準である、
(ii)前記相関性基準は、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものである、
(iii)前記パラメータは、複数の皮膚常在微生物の存在割合の差、和、積、比またはそれらの組合せである(皮膚常在微生物の多様性指数ではない)、又は
(iv)前記存在割合またはパラメータは、検体の細菌叢間の非類似度を分析して得られる座標軸と相関する(Propionibacterium acnes菌の存在割合ではない)ものである
方法。
【請求項4】
被験者の身体状態を評価する方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し、前記相関性基準と対比する工程を有し、
前記身体状態は、老化肌指数、脂性肌、肌のそばかす、きめ、黄ばみ、かさつき、てかり、しみ、くすみ、しわ、はりの状態、毛穴の状態の少なくとも1種である肌の状態であり、
前記身体状態が脂性肌、肌のそばかす、かさつき、てかり、しみ、くすみ、しわ、はりの状態又は毛穴の状態である場合、
(i)前記相関性基準は、実年齢による影響の排除後における、前記身体状態と前記存在割合又は前記パラメータとの相関性基準である、
(ii)前記相関性基準は、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものである、
(iii)前記パラメータは、複数の皮膚常在微生物の存在割合の差、和、積、比またはそれらの組合せである(皮膚常在微生物の多様性指数ではない)、
(iv)前記存在割合またはパラメータは、検体の細菌叢間の非類似度を分析して得られる座標軸と相関する(Proionibacterium acnes菌の存在割合ではない)ものである、又は
(v)前記存在割合としてPropionibacterium acnes菌の存在割合と、前記パラメータとして皮膚常在微生物の多様性指数と、を併用する(ただし(v)は前記身体状態がしみ、くすみの場合に限る)
方法。
【請求項5】
被験者に情報を提示する方法であって、
請求項4記載の方法により、被験者の身体状態を評価する工程と、
前記身体状態が目標状態にないと評価された場合、前記身体状態が目標状態にあるときに前記相関性基準に基づいて前記存在割合又は前記パラメータが示す数値範囲の方に、前記存在割合又は前記パラメータの値を誘導可能な成分としてデータベースに登録されている情報を提示する工程と、を有する方法。
【請求項6】
身体状態を改善又は予防する物質をスクリーニングする方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータの値に関する、候補物質による変化に基づいて、前記候補物質を選抜する工程を有し、
前記身体状態は、老化肌指数、脂性肌、肌のそばかす、きめ、黄ばみ、かさつき、てかり、しみ、くすみ、しわ、はりの状態、毛穴の状態の少なくとも1種である肌の状態であり、
前記身体状態が脂性肌、肌のそばかす、かさつき、てかり、しみ、くすみ、しわ、はりの状態又は毛穴の状態である場合、
(i)前記相関性基準は、実年齢による影響の排除後における、前記身体状態と前記存在割合又は前記パラメータとの相関性基準である、
(ii)前記相関性基準は、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものである、
(iii)前記パラメータは、複数の皮膚常在微生物の存在割合の差、和、積、比またはそれらの組合せである(皮膚常在微生物の多様性指数ではない)、
(iv)前記存在割合またはパラメータは、検体の細菌叢間の非類似度を分析して得られる座標軸と相関する(Propionibacterium acnes菌の存在割合ではない)ものである、又は
(v)前記存在割合としてPropionibacterium acnes菌の存在割合と、前記パラメータとして皮膚常在微生物の多様性指数と、を併用する(ただし(v)は前記身体状態がしみ、くすみの場合に限る)
方法。
【請求項7】削除
【請求項8】削除
【請求項9】削除
【請求項10】削除
【請求項11】削除
【請求項12】
前記相関性基準は、皮膚常在微生物の存在割合と前記身体状態との相関性基準であり、
前記身体状態は、脂性肌であり、
前記存在割合は、Xanthomonadaceae科、Sphingomonas属、Vibrio属、Aeromonadaceae科、Pseudoalteromonas属、Gammaproteobacteria綱、Streptococcus属、Gemellaceae科、Acidocella属、Planococcaceae科、Lautropia属、Shewanella属、あるいはGranulicatella属に含まれる菌、またはPseudoalteromonas porphyrae菌あるいはRoseomonas mucosa菌の存在割合である請求項4から6いずれか記載の方法。
【請求項13】
被験者の身体状態を評価する方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し、前記相関性基準と対比する工程を有し、
前記身体状態は、そばかすの状態であり、
前記存在割合は、Corynebacterium kroppenstedti 菌の存在割合である
方法。
【請求項14】
被験者の身体状態を評価する方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し、前記相関性基準と対比する工程を有し、
前記身体状態は、肌のキメの状態であり、
前記存在割合は、Propionibacterium acnes菌、またはPropionibacterium granulosum菌の存在割合である
方法。
【請求項15】
被験者の身体状態を評価する方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し、前記相関性基準と対比する工程を有し、
前記身体状態は、肌の黄ばみであり、
前記存在割合は、Bacillus属、Actinomces属あるいはRothia属に含まれる菌、またはRothia dentocariosa菌の存在割合である
方法。
【請求項16】
被験者の身体状態を評価する方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し、前記相関性基準と対比する工程を有し、
前記身体状態は、ニキビ肌であり、
前記相関性基準は、Proteobacteria門に属する細菌種とFirmicutes門に属する細菌種の相対量の差であるか、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものである方法。
【請求項17】
被験者に情報を提示する方法であって、
請求項16記載の方法により、被験者の身体状態を評価する工程と、
前記身体状態が目標状態にないと評価された場合、前記身体状態が目標状態にあるときに前記相関性基準に基づいて前記存在割合又は前記パラメータが示す数値範囲の方に、前記存在割合又は前記パラメータの値を誘導可能な成分としてデータベースに登録されている情報を提示する工程と、を有する方法。
【請求項18】
身体状態を改善又は予防する物質をスクリーニングする方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータの値に関する、候補物質による変化に基づいて、前記候補物質を選抜する工程を有し、
前記身体状態は、ニキビ肌であり、
前記相関性基準は、Proteobacteria門に属する細菌種とFirmicutes門に属する細菌種の相対量の差であるか、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものである方法。
【請求項19】
被験者の身体状態を評価する方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータについて、被験者の皮膚表面から採取した皮膚微生物叢の値を決定し、前記相関性基準と対比する工程を有し、
前記身体状態は、毛髪、歯、尿、骨、内臓、血液、もしくは神経に関する状態である方法。
【請求項20】
被験者に情報を提示する方法であって、
請求項19記載の方法により、被験者の身体状態を評価する工程と、
前記身体状態が目標状態にないと評価された場合、前記身体状態が目標状態にあるときに前記相関性基準に基づいて前記存在割合又は前記パラメータが示す数値範囲の方に、前記存在割合又は前記パラメータの値を誘導可能な成分としてデータベースに登録されている情報を提示する工程と、を有する方法。
【請求項21】
身体状態を改善又は予防する物質をスクリーニングする方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータの値に関する、候補物質による変化に基づいて、前記候補物質を選抜する工程を有し、
前記身体状態は、毛髪、歯、尿、骨、内臓、血液、もしくは神経に関する状態である、方法。
【請求項22】
前記存在割合は、Actinobacteria門に属する細菌、Proteobacteria門に属する細菌およびFirmicutes門に属する細菌からなる群より選ばれる少なくとも1種の細菌の存在割合である請求項19から21いずれか記載の方法。
【請求項23】
前記パラメータは、前記存在割合の差、和、積、比またはそれらの組合せ、および皮膚常在微生物の多様性指数からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項19から22いずれか記載の方法。
【請求項24】
前記相関性基準は、母集団の年齢で分類した準母集団に関して作成されたものである請求項19から23いずれか記載の方法。
【請求項25】
前記身体状態は、薄毛および脱毛の少なくとも1種である請求項19から24いずれか記載の方法。
【請求項26】
前記身体状態は、歯周病および歯槽膿漏の少なくとも1種である請求項19から24いずれか記載の方法。
【請求項27】
前記身体状態は、閉経である請求項19から24いずれか記載の方法。
【請求項28】
肝機能、高尿酸、膝の痛み、骨粗鬆症、自律神経失調症、および糖尿病の少なくとも1種である請求項19から24いずれか記載の方法。
【請求項29】
前記身体状態は、肝機能であり、
前記存在割合は、Campylobacter属あるいはBacillus属に含まれる菌、またはStreptococcus anginosus菌の存在割合である請求項19から21いずれか記載の方法。
【請求項30】
前記身体状態は、高尿酸値であり、
前記存在割合は、Rothia属、Brevibacterium属、Erythrobacteraceae科あるいはRhodobacteraceae科に含まれる菌、またはPropionibacterium granulosum菌の存在割合である請求項19から21いずれか記載の方法。
【請求項31】
前記身体状態は、自律神経失調症であり、
前記存在割合は、Oxalobacteraceae科に含まれる菌の存在割合である請求項19から21いずれか記載の方法。
【請求項32】
前記身体状態は、糖尿病であり、
前記存在割合は、Actinomycetales目に含まれる菌の存在割合である請求項19から21いずれか記載の方法。
【請求項33】
被験者に情報を提示する方法であって、
請求項13記載の方法により、被験者の身体状態を評価する工程と、
前記身体状態が目標状態にないと評価された場合、前記身体状態が目標状態にあるときに前記相関性基準に基づいて前記存在割合又は前記パラメータが示す数値範囲の方に、前記存在割合又は前記パラメータの値を誘導可能な成分としてデータベースに登録されている情報を提示する工程と、を有する方法。
【請求項34】
身体状態を改善又は予防する物質をスクリーニングする方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータの値に関する、候補物質による変化に基づいて、前記候補物質を選抜する工程を有し、
前記身体状態は、そばかすの状態であり、
前記存在割合は、Corynebacterium kroppenstedti 菌の存在割合である
方法。
【請求項35】
被験者に情報を提示する方法であって、
請求項14記載の方法により、被験者の身体状態を評価する工程と、
前記身体状態が目標状態にないと評価された場合、前記身体状態が目標状態にあるときに前記相関性基準に基づいて前記存在割合又は前記パラメータが示す数値範囲の方に、前記存在割合又は前記パラメータの値を誘導可能な成分としてデータベースに登録されている情報を提示する工程と、を有する方法。
【請求項36】
身体状態を改善又は予防する物質をスクリーニングする方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータの値に関する、候補物質による変化に基づいて、前記候補物質を選抜する工程を有し、
前記身体状態は、肌のキメの状態であり、
前記存在割合は、Propionibacterium acnes菌、またはPropionibacterium granulosum菌の存在割合である
方法。
【請求項37】
被験者に情報を提示する方法であって、
請求項15記載の方法により、被験者の身体状態を評価する工程と、
前記身体状態が目標状態にないと評価された場合、前記身体状態が目標状態にあるときに前記相関性基準に基づいて前記存在割合又は前記パラメータが示す数値範囲の方に、前記存在割合又は前記パラメータの値を誘導可能な成分としてデータベースに登録されている情報を提示する工程と、を有する方法。
【請求項38】
身体状態を改善又は予防する物質をスクリーニングする方法であって、
前記身体状態との相関性基準が作成済みである、皮膚表面の皮膚常在微生物の存在割合又は前記存在割合に基づくパラメータの値に関する、候補物質による変化に基づいて、前記候補物質を選抜する工程を有し、
前記身体状態は、肌の黄ばみであり、
前記存在割合は、Bacillus属、Actinomyces属あるいはRothia属に含まれる菌、またはRothia dentocariosa菌の存在割合である
方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2022-09-01 
出願番号 P2016-223014
審決分類 P 1 652・ 537- YAA (C12Q)
P 1 652・ 113- YAA (C12Q)
P 1 652・ 121- YAA (C12Q)
最終処分 07   維持
特許庁審判長 長井 啓子
特許庁審判官 福井 悟
宮岡 真衣
登録日 2021-04-26 
登録番号 6874244
権利者 国立大学法人 東京大学 MySkin株式会社
発明の名称 身体状態の評価方法、情報の提示方法、および身体状態を改善又は予防する物質のスクリーニング方法  
代理人 新山 雄一  
代理人 正林 真之  
代理人 正林 真之  
代理人 滝口 尚良  
代理人 渡辺 仁  
代理人 滝口 尚良  
代理人 新山 雄一  
代理人 新山 雄一  
代理人 滝口 尚良  
代理人 新山 雄一  
代理人 正林 真之  
代理人 正林 真之  
代理人 渡辺 仁  
代理人 滝口 尚良  

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