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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1391271
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-23 
確定日 2022-11-09 
事件の表示 特願2019− 59539「太陽電池及びこれを含む太陽電池パネル」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月11日出願公開、特開2019−114812〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年8月1日(パリ条約による優先権主張2016年12月2日、韓国)に出願(以下「原出願」という。)した特願2017−148887号の一部を平成31年3月27日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

令和 2年 2月19日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 7月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 8月18日付け:拒絶査定(原査定)
令和 2年12月23日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和2年12月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年12月23日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のように補正された(下線は補正箇所である。)。

「【請求項1】
太陽電池パネルであって、
第1太陽電池及び第2太陽電池を含む複数の太陽電池と、
前記第1太陽電池と前記第2太陽電池を連結し、及び、円形の断面を有するワイヤで構成された複数の配線材と、を備えてなり、
前記第1太陽電池及び前記第2太陽電池は、母太陽電池を前記母太陽電池の中心線を切断線として切断し形成されたものであり、
前記複数の太陽電池の各々は、
互いに交差する長軸及び短軸を有する半導体基板、
前記半導体基板の一面に形成される第1導電型領域、
前記半導体基板の他面に形成される第2導電型領域、
前記第1導電型領域に電気的に連結される第1電極、及び、
前記第2導電型領域に電気的に連結される第2電極、を備え、
前記第1電極は、前記長軸と平行する第1方向に位置し、互いに平行する複数のフィンガーライン及び前記短軸と平行する第2方向に位置する複数のパッド部を含む複数のバスバーを備え、
前記複数のバスバーの個数又は前記複数の配線材の個数が6個〜14個であり、
前記複数の配線材は、前記第2方向に沿って延長し、及び、前記複数のパッド部により固定されたものであり、
前記第1太陽電池及び前記第2太陽電池は、切断面と非切断面を備えてなり、
前記第1方向での前記半導体基板の長さに対する前記第2方向での前記半導体基板の幅の割合が0.2〜0.5であり、
前記第2方向での前記半導体基板の幅に対する前記第1方向での前記複数のバスバー又は前記複数の配線材のピッチが0.1〜0.35であり、
前記複数のパッド部は、前記第2方向に配置される第1サイズを有する内側パッドと、前記第1サイズより大きい第2サイズを有する外側パッドを備え、
前記外側パッドは、前記第2方向に前記切断面に隣接する第1最外郭パッドと前記非切断面に隣接した第2最外郭パッドを備え、
前記第1電極は、前記長軸と平行な方向に延び、互いに平行に位置する複数のフィンガーラインを備え、
前記複数のフィンガーラインの内、前記半導体基板の長軸に隣接したフィンガーラインには、前記複数の配線材が位置する領域に、前記フィンガーラインが形成されず、配線材と基板の接着力を高めるエッジ領域がさらに形成され、
前記エッジ領域は、前記第2方向に前記切断面に隣接する第1エッジ領域と前記非切断面に隣接した第2エッジ領域を備え、
前記第1最外郭パッドは、前記第1エッジ領域に隣接して配置され、前記第2の最外郭パッドは、前記第2エッジ領域に隣接して配置される、太陽電池パネル。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
太陽電池パネルであって、
第1太陽電池及び第2太陽電池を含む複数の太陽電池と、
前記第1太陽電池と前記第2太陽電池を連結し、及び、円形の断面を有するワイヤで構成された複数の配線材と、を備えてなり、
前記第1太陽電池及び前記第2太陽電池は、母太陽電池を前記母太陽電池の中心線を切断線として切断し形成されたものであり、
前記複数の太陽電池の各々は、
互いに交差する長軸及び短軸を有する半導体基板、
前記半導体基板の一面に形成される第1導電型領域、
前記半導体基板の他面に形成される第2導電型領域、
前記第1導電型領域に電気的に連結される第1電極、及び、
前記第2導電型領域に電気的に連結される第2電極、を備え、
前記第1電極は、前記長軸と平行する第1方向に位置し、互いに平行する複数のフィンガーライン及び前記短軸と平行する第2方向に位置する複数のパッド部を含む複数のバスバーを備え、
前記複数のバスバーの個数又は前記複数の配線材の個数が6個〜14個であり、
前記複数の配線材は、前記第2方向に沿って延長し、及び、前記複数のパッド部により固定されたものであり、
前記第1太陽電池及び前記第2太陽電池は、切断面と非切断面を備えてなり、
前記第1方向での前記半導体基板の長さに対する前記第2方向での前記半導体基板の幅の割合が0.2〜0.5であり、
前記第2方向での前記半導体基板の幅に対する前記第1方向での前記複数のバスバー又は前記複数の配線材のピッチが0.1〜0.35である、太陽電池パネル。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「複数のパッド部」について、「前記第2方向に配置される第1サイズを有する内側パッドと、前記第1サイズより大きい第2サイズを有する外側パッドを備え、前記外側パッドは、前記第2方向に前記切断面に隣接する第1最外郭パッドと前記非切断面に隣接した第2最外郭パッドを備え」の限定を付加し、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1電極」について、「前記長軸と平行な方向に延び、互いに平行に位置する複数のフィンガーラインを備え、前記複数のフィンガーラインの内、前記半導体基板の長軸に隣接したフィンガーラインには、前記複数の配線材が位置する領域に、前記フィンガーラインが形成されず、配線材と基板の接着力を高めるエッジ領域がさらに形成され、前記エッジ領域は、前記第2方向に前記切断面に隣接する第1エッジ領域と前記非切断面に隣接した第2エッジ領域を備え、前記第1最外郭パッドは、前記第1エッジ領域に隣接して配置され、前記第2の最外郭パッドは、前記第2エッジ領域に隣接して配置される」の限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された原出願の優先日前に頒布された引用文献である、特開2016−72637号公報(平成28年5月9日公開)(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【請求項11】
光電変換部、及び前記光電変換部に接続される第1電極及び第2電極をそれぞれ含む複数の太陽電池と、
前記複数の太陽電池のうちの1つの太陽電池の前記第1電極と、これに隣接する太陽電池の前記第2電極とを接続する複数の配線材と、を含み、
前記電極は、第1方向に形成され、互いに平行な複数のフィンガーライン、及び前記第1方向に交差する第2方向に形成される6個以上のバスバーラインを含み、
前記複数の配線材は、250μm〜500μmの直径又は幅を有し、前記バスバーラインに接続されて前記太陽電池の一面側に6個以上配置され、
前記第2方向での前記バスバーラインの一端部と他端部との間の距離が、前記第2方向での前記複数のフィンガーラインのうち一側最外郭に位置するフィンガーラインと、他側最外郭に位置するフィンガーラインとの間の距離よりも短い、太陽電池パネル。」

「【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池及びそれを含む太陽電池パネルに係り、配線材によって接続される太陽電池及びそれを含む太陽電池パネルに関する。」

「【0025】
図3を参照すると、本実施例に係る太陽電池150は、ベース領域10を含む半導体基板160と、半導体基板160に又は半導体基板160上に形成される導電型領域20,30と、導電型領域20,30に接続される電極42,44とを含む。ここで、導電型領域20,30は、第1導電型を有する第1導電型領域20、及び第2導電型を有する第2導電型領域30を含むことができ、電極42,44は、第1導電型領域20に接続される第1電極42、及び第2導電型領域30に接続される第2電極44を含むことができる。そして、太陽電池150は、第1パッシベーション膜22、反射防止膜24、第2パッシベーション膜32などをさらに含むことができる。これをより詳細に説明する。」

「【0075】
また、本実施例に係る配線材142を構成するワイヤは、円形、楕円形、または曲線からなる断面又はラウンド状の断面を有することで、反射または乱反射を誘導することができる。これによって、配線材142を構成するワイヤのラウンド状の面で反射された光が、太陽電池150の前面又は後面に位置した前面基板110又は後面基板200などに反射又は全反射されて太陽電池150に再入射するようにすることができる。これによって、太陽電池パネル100の出力を効果的に向上させることができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。したがって、配線材142を構成するワイヤが四角形などの多角形の形状を有することができ、その他の様々な形状を有することができる。」

「【0082】
本実施例では、これを考慮して太陽電池150の電極42,44を形成し、これを、図9及び図10を参照して詳細に説明する。以下では、図9及び図10を参照して、第1電極42を基準として詳細に説明した後、第2電極44を説明する。
【0083】
図9は、図1の太陽電池パネルに含まれた太陽電池と、これに接続された配線材を示した平面図である。図10は、図1の太陽電池パネルに含まれた太陽電池を示した平面図である。
【0084】
図9及び図10を参照すると、本実施例において、太陽電池150(又は半導体基板160)は電極領域EAとエッジ領域PAとに区画することができる。このとき、太陽電池150(又は半導体基板160)は、一例として、フィンガーライン42aと平行な第1及び第2縁部161,162と、フィンガーライン42aに交差(一例として、直交または傾斜して交差)する第3及び第4縁部163,164とを備えることができる。第3及び第4縁部163,164は、それぞれ、第1及び第2縁部161,162と実質的に直交し、第3又は第4縁部163,164の大部分を占める中央部163a,164aと、中央部163a,164aから傾斜して第1及び第2縁部161,162にそれぞれ接続される傾斜部163b,163bとを含むことができる。これによって、一例として、平面視で、太陽電池150が略八角形の形状を有することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、太陽電池150の平面形状が様々な形状を有してもよい。
【0085】
本実施例において、電極領域EAは、互いに平行に形成されるフィンガーライン42aが均一なピッチPで配置される領域であってもよい。そして、エッジ領域PAは、フィンガーライン42aが位置しないか、または電極領域EAのフィンガーライン42aの密度よりも低い密度で電極部が位置する領域であってもよい。本実施例では、エッジ領域PAに第1電極42の電極部が位置しない場合を例示した。
【0086】
本実施例において、電極領域EAは、バスバーライン42bまたは配線材142を基準として区画される複数個の電極領域EAを備えることができる。より具体的には、電極領域EAは、隣接する2つのバスバーライン42b又は配線材142の間に位置した第1電極領域EA1と、配線材142と太陽電池150の第3及び第4縁部163,164との間にそれぞれ位置した2つの第2電極領域EA2とを含むことができる。本実施例において、配線材142が太陽電池150の一面を基準として複数個(一例として、6個以上)備えられるので、第1電極領域EA1が複数個(即ち、配線材142の数より1つ少ない数)備えられ得る。
【0087】
このとき、第1電極領域EA1の幅W2が、第2電極領域EA2の幅W3よりも小さくてもよい。本実施例では、配線材142またはバスバーライン42bが多くの数で備えられる。したがって、第3又は第4縁部163,164の傾斜部163b,164bが第2電極領域EA2内に位置するようにするためには、第2電極領域EA2の幅W3を相対的に大きくしなければならず、これによって、バスバーライン42b又は配線材142が第3又は第4縁部163,164に位置しないようにすることができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、第1電極領域EA1の幅W2及び第2電極領域EA2の幅W3が様々な値を有することができる。
【0088】
本実施例において、バスバーライン42b及び配線材142のそれぞれが均一なピッチを持って配置されるので、複数の第1電極領域EA1の幅W2が互いに実質的に同一であり得る。これによって、キャリアが、均一な平均移動距離を有して移動できるので、キャリアの収集効率を向上させることができる。
【0089】
そして、エッジ領域PAは、配線材142が位置する部分に対応し、フィンガー電極42aの間に位置する第1エッジ領域PA1、及び第1エッジ領域PA1以外の部分であって、最外郭のフィンガー電極42aと半導体基板160の第1〜第4縁部161,162,163,164との間で一定の距離だけ離隔する第2エッジ領域PA2を含むことができる。第1エッジ領域PA1は、配線材142が位置した部分において太陽電池150の縁部に隣接する部分にそれぞれ位置し得る。第1エッジ領域PA1は、配線材142が十分な結合力で第1電極42に付着され得るように、第1電極42の端部が太陽電池150の縁部から離隔して位置した領域である。
【0090】
第1電極42は、電極領域EA内でそれぞれ一定の幅W5及びピッチPを持って互いに離隔する複数のフィンガーライン42aを含むことができる。図では、フィンガーライン42aが互いに平行であり、太陽電池150のメイン縁部(特に、第1及び第2縁部)と平行であることを例示したが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0091】
一例として、第1電極42のフィンガーライン42aは、35μm〜120μmの幅W5を有することができる。そして、第1電極42のフィンガーライン42aは、1.2mm〜2.8mmのピッチPを有することができ、フィンガーライン42aと交差する方向において、フィンガーライン42aの数が55個〜130個であってもよい。このような幅W5及びピッチPは、容易な工程条件によって形成でき、光電変換によって生成された電流を効果的に収集しながらも、フィンガーライン42aによるシェーディング損失(shading loss)を最小化するように限定されたものである。そして、フィンガーライン42aの厚さが5μm〜50μmであってもよい。このようなフィンガーライン42aの厚さは、工程時に容易に形成することができ、所望の比抵抗を有することができる範囲であり得る。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、フィンガーライン42aの幅、ピッチ、厚さなどは、工程条件の変化、太陽電池150の大きさ、フィンガーライン42aの構成物質などに応じて多様に変化可能である。
【0092】
このとき、配線材142の幅W1は、フィンガーライン42aのピッチPよりも小さく、フィンガーライン42aの幅よりも大きくすることができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0093】
そして、第1電極42は、電極領域EA内でフィンガーライン42aと交差する方向に形成されてフィンガーライン42aを接続するバスバーライン42bを含むことができる。一例として、バスバーライン42bは、第1縁部161に隣接する部分から第2縁部に隣接する部分まで連続的に形成することができる。上述したように、バスバーライン42bは、隣接する太陽電池150との接続のための配線材142が位置する部分に対応するように位置し得る。このようなバスバーライン42bは、配線材142に一対一に対応するように備えることができる。これによって、本実施例において、太陽電池150の一面を基準として、バスバーライン42bの数が配線材142の数と同一に設けられ得る。本実施例において、バスバーライン42bは、配線材142と隣接する部分に位置し、フィンガーライン42aと直交又は傾斜する方向に形成され、配線材142に接続又は接触する電極部を意味し得る。
【0094】
バスバーライン42bは、配線材142が接続される方向に沿って相対的に狭い幅を持って長く延びるライン部421、及びライン部421よりも広い幅を有して配線材142との接続面積を増加させるパッド部422を備えることができる。狭い幅のライン部421によって、太陽電池150に入射する光を遮断する面積を最小化することができ、広い幅のパッド部422によって、配線材142とバスバーライン42bとの付着力を向上させ、接触抵抗を低減することができる。そして、バスバーライン42bは、第1エッジ領域PA1に隣接するフィンガーライン42aの端部に接続されて、電極領域EAと第1エッジ領域PA1とを区画する延長部423を含むことができる。
【0095】
パッド部422は、ライン部421の端部(即ち、第1電極42と配線部142が接続された部分)の端部に位置する第1パッド部422a、及び第1パッド部422aを除外し、バスバーライン42bの内部領域に位置する第2パッド部422bを含むことができる。上述したように、ライン部421の端部または第1パッド部422aでは、配線材142に、第1電極42から遠ざかる方向(半導体基板160から遠ざかる方向)に力が作用し得る。これによって、当該領域で第1パッド部422aの面積を第2パッド部422bよりも大きくして、配線材142と第1電極42とが強い付着力を有するようにすることができる。このとき、第1パッド部422aの幅を第2パッド部422bの幅より大きくしても、配線材142との付着力を向上させるのに大きく寄与しにくいため、第1パッド部422aの長さ(配線材142の長手方向に測定された長さ)L1を第2パッド部422bの長さ(配線材142の長手方向に測定された長さ)L2よりも大きくすることができる。」

「【0117】
これによって、配線材142が、延長部423に付着されずに第1エッジ領域PA1内に安定的に位置することができる。本実施例において、他の太陽電池150に接続されない配線材142の一端部(図9の上部端部)が、ライン部421の一端部(図9の上部端部)を通って第1エッジ領域PA1の内部まで延びて、配線材142の端部が、ライン部421の一端部と、これに隣接する太陽電池150の縁部(即ち、第1縁部161)との間に位置する第1エッジ領域PA1の内部に位置することができる。これによって、配線材142をライン部421の一端部に安定的に固定することができ、第1パッド部422aによる十分な付着力で第1電極42に固定することができる。反面、配線材142の一端部がライン部421の端部に位置するか、またはライン部421の一端部に到達しない場合、配線材142の一端部が、ライン部421の一端部に位置した第1パッド部422aに安定的に付着されないことがある。または、配線材142が第2エッジ領域PA2まで延びる場合、不必要なショートなどの問題が発生することがある。」

「【0149】
本発明者は、太陽電池150の一面に位置する配線材142の数(又はバスバーライン42bの数)は、配線材142の幅W1と一定の関係を有することも見出した。図13は、配線材142の幅W1及び数を異ならせながら測定された太陽電池パネル100の出力を示した図である。250μm〜500μmの幅W1を有する配線材142が6個〜33個備えられると、太陽電池パネル100の出力が優れた値を有することがわかる。このとき、配線材142の幅W1が増加すると、必要な配線材142の数を減少させることができることがわかる。」

図3から、半導体基板160の一面に第1導電型領域20が形成され、半導体基板160の他面に第2導電型領域30が形成されることが見て取れる。

図9から、ライン部421の端部に位置する第1パッド部422aは、エッジ領域PAに隣接して配置されていること、及び配線材142は、フィンガーライン42aと交差する方向かつバスバーライン42bの延びる方向に沿って配置されていることが見て取れる。

【0095】を参照しつつ、図9、図10を見ると、パッド部422はバスバーライン42bに沿って複数設けられ、ライン部421の端部の両側にそれぞれ位置するパッド部を備えていることが把握できる。

図3は以下のとおりである。

図9は以下のとおりである。

図10は以下のとおりである。

図13は以下のとおりである。

(イ)上記記載及び図面から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。(以下、引用発明の認定に用いた段落番号等を参考までに括弧内に付した。)

引用発明
「第1電極42及び第2電極44をそれぞれ含む複数の太陽電池150と、 前記複数の太陽電池150のうちの1つの太陽電池の前記第1電極42と、これに隣接する太陽電池の前記第2電極44とを接続する複数の配線材142と、を含み、
前記電極は、第1方向に形成され、互いに平行な複数のフィンガーライン42a、及び前記第1方向に交差する第2方向に形成される6個以上のバスバーライン42bを含み、
前記複数の配線材142は、前記バスバーライン42bに接続されて前記太陽電池の一面側に6個以上配置され、(請求項11、【0025】、【0093】)
配線材142を構成するワイヤは、円形の断面を有し、(【0075】)
太陽電池150は、
ベース領域10を含む半導体基板160と、
半導体基板160に形成される導電型領域20,30と、導電型領域20,30は、第1導電型を有する第1導電型領域20、及び第2導電型を有する第2導電型領域30を含むことができ、(【0025】)
半導体基板160の一面に第1導電型領域20が形成され、半導体基板160の他面に第2導電型領域30が形成されており、(図3)
電極42,44は、第1導電型領域20に接続される第1電極42、及び第2導電型領域30に接続される第2電極44を含むことができ、(【0025】)
太陽電池150の平面形状が様々な形状を有してもよく、(【0084】)
第1電極42は、電極領域EA内でそれぞれ一定の幅W5及びピッチPを持って互いに離隔する複数のフィンガーライン42aを含むことができ、フィンガーライン42aが互いに平行であり、太陽電池150のメイン縁部(特に、第1及び第2縁部)と平行であり、(【0090】)
第1電極42は、電極領域EA内でフィンガーライン42aと交差する方向に形成されてフィンガーライン42aを接続するバスバーライン42bを含むことができ、バスバーライン42bは、隣接する太陽電池150との接続のための配線材142が位置する部分に対応するように位置し得、(【0093】)
バスバーライン42bは、配線材142が接続される方向に沿って相対的に狭い幅を持って長く延びるライン部421、及びライン部421よりも広い幅を有して配線材142との接続面積を増加させるパッド部422を備えることができ、(【0094】)
パッド部422はバスバーライン42bに沿って複数設けられ、ライン部421の端部の両側にそれぞれ位置するパッド部を備えており、(図9、図10)
パッド部422は、ライン部421の端部(即ち、第1電極42と配線部142が接続された部分)の端部に位置する第1パッド部422a、及び第1パッド部422aを除外し、バスバーライン42bの内部領域に位置する第2パッド部422bを含むことができ、第1パッド部422aの面積を第2パッド部422bよりも大きくして、配線材142と第1電極42とが強い付着力を有するようにすることができ、(【0095】)
配線材142は、フィンガーライン42aと交差する方向かつバスバーライン42bの延びる方向に沿って配置され、(図9)
配線材142をライン部421の一端部に安定的に固定することができ、第1パッド部422aによる十分な付着力で第1電極42に固定することができ、(【0117】)
エッジ領域PAは、配線材142が位置する部分に対応し、フィンガー電極42aの間に位置する第1エッジ領域PA1、及び第1エッジ領域PA1以外の部分であって、最外郭のフィンガー電極42aと半導体基板160の第1〜第4縁部161,162,163,164との間で一定の距離だけ離隔する第2エッジ領域PA2を含むことができ、第1エッジ領域PA1は、配線材142が十分な結合力で第1電極42に付着され得るように、第1電極42の端部が太陽電池150の縁部から離隔して位置した領域であり、(【0089】)
ライン部421の端部に位置する第1パッド部422aは、エッジ領域PAに隣接して配置され、(図9)
太陽電池150の一面に位置する配線材142の数(又はバスバーライン42bの数)は、配線材142の幅W1と一定の関係を有し、250μm〜500μmの幅W1を有する配線材142が6個〜33個備えられると、太陽電池パネル100の出力が優れた値を有する、(【0149】)
太陽電池パネル。(請求項11)」

イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された原出願の優先日前に頒布された引用文献である、特開2014−33240号公報(平成26年2月20日公開)(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽等の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電システムにおいて、屋根等に複数枚並べて設置される太陽電池モジュールに関するものである。」

「【0020】
また、基板11の受光面には、入射光から変換された電気エネルギーを取り出す受光面側電極として、銀で形成された細線電極であるグリッド電極13と同じく銀で形成された所定幅の受光面バス電極(受光面リード接続電極)14とが形成され、それぞれ底面部において上記n型拡散層と電気的に接続している。受光面バス電極14は、太陽電池セル20の接続方向である第1の方向に沿って2本が平行に形成されている。グリッド電極13は、受光面バス電極14と直交する方向に多数本が細形に形成されている。グリッド電極13は、受光面にて発電した電力を無駄なく取り出すために、できるだけ細く、また受光面(表面)の全体にわたるように形成されている。太陽光が当たることによって、図3の受光面側がマイナス(−)電極、図4の裏面側がプラス(+)電極となる。受光面バス電極14は、受光面側リード線4が接続されて、グリッド電極13によって集められた電気エネルギーをさらに外部に取り出すために設けられている(図3)。なお、図3及び図5等において、受光面バス電極14は、受光面側リード線4より細く記載されているが、これは、受光面バス電極14と受光面側リード線4とが重なる様子をわかりやすく表現するためであり、実際には受光面バス電極14と受光面側リード線4とは同じ幅である。
【0021】
一方、基板11の裏面には、裏面のほぼ全面を覆うようにしてアルミニウムでなる裏面集電電極12が設けられている。また、基板11の裏面のグリッド電極13と対応した位置(グリッド電極13と基板11の厚さ方向に重なる位置)には、銀でなる裏面バス電極(裏面リード接続電極)15が太陽電池セル20の接続方向である第1の方向に延びて形成されている。裏面バス電極15は、裏面側リード線7が接続されて、裏面集電電極12によって集められた電気エネルギーをさらに外部に取り出すために設けられている(図4)。なお、図4及び図6等において、裏面バス電極15は、裏面側リード線7より太く記載されているが、これは、裏面バス電極15と裏面側リード線7とが重なる様子を表現するためであり、実際には裏面バス電極15と裏面側リード線7とは同じ幅である。
【0022】
基板11の裏面は、前面にわたって銀電極にて覆ってもよいがコストが嵩むため、上記のように特に裏面側リード線7を接続する箇所のみ銀製の裏面バス電極15が設けられている。なお、裏面バス電極15は、本実施の形態のように直線状なもののほかに、離散的にドット状(飛び石状)に設けられる場合もある。そして、本実施の形態においては、以上のようにして正方形に作製した太陽電池セルを受光面側リード線4及び裏面側リード線7にて相互に接続する前に、受光面バス電極14が延びる方向に二分割して、短辺長Sと長辺長Lとの比が1/2:1の長方形の太陽電池セル20を得る。
【0023】
分割された太陽電池セル20を得るにあたっては、まず、所定の工程を行うことにより、正方形の基板11に受光面バス電極14、グリッド電極13、裏面集電電極12、及び裏面バス電極15を形成して基礎となる太陽電池セル(第1の太陽電池セル)を作製する。このとき、これら各電極が形成される受光面電極領域と裏面電極領域は、分割する線に合わせて2つの領域に分けて形成しておく、そして、分割線に沿って切断することにより上記長方形の太陽電池セル20を得る。なお、本実施の形態の太陽電池セル20は、正方形に作製した太陽電池セルを二分割しているが、三分割、或いは四分割とさらに多数に分割(n分割)してもよい。n分割する場合には、受光面電極領域と裏面電極領域とをあらかじめn箇所に分けて形成しておく。」

「【0030】
このような構成の太陽電池モジュールにおいては、太陽電池セル20を二分割することにより、太陽電池セル20の1枚あたりの電流を半分にすることができるため、電気接続による抵抗損失を低減できる。したがって、分割しない従来の正方形の太陽電池セルを搭載する太陽電池モジュールよりも高出力の太陽電池モジュールとすることができる。」

図3、図5から、グリッド電極13は太陽電池セル20の長軸と平行に形成され、受光面バス電極14は太陽電池セル20の短軸と平行に形成されていることが見て取れる。

図3は以下のとおりである。

図5は以下のとおりである。

ウ 引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された原出願の優先日前に頒布された引用文献である、特開2016−146373号公報(平成28年8月12日公開)(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
発明は、太陽電池モジュール及びその製造方法に関する。」

「【0036】
太陽電池セル11の平面形状は長方形である。太陽電池セル11における、後述する金属線23の配設方向(金属線23の軸方向:図1における左右方向)の長さは、フィンガー電極20、21の配設方向(フィンガー電極20、21の軸方向:図1における上下方向)の長さの1/2である。すなわち、太陽電池セル11の平面形状は、正方形を一辺方向に二等分割した形状である。通常、太陽電池セルの平面形状は正方形である。一方、上述のように、接続部材12の電気抵抗による電力損失は電流の二乗に比例する。従って、このように太陽電池セル11の面積を通常の半分にし、かつ数を倍にすることにより、出力電力を同一としたままで電流量を小さくすることができ、電力損失を理論上1/4に低減することができる。」

図1は以下のとおりである。

(3)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「太陽電池パネル」は、本件補正発明の「太陽電池パネル」に、
引用発明の「複数の太陽電池150」は、本件補正発明の「第1太陽電池及び第2太陽電池を含む複数の太陽電池」に、
引用発明の「『配線材142を構成するワイヤは、円形の断面を有し、』『前記複数の太陽電池150のうちの1つの太陽電池の前記第1電極42と、これに隣接する太陽電池の前記第2電極44とを接続する複数の配線材142』」は、本件補正発明の「前記第1太陽電池と前記第2太陽電池を連結し、及び、円形の断面を有するワイヤで構成された複数の配線材」に、
引用発明の「半導体基板160」は、本件補正発明の「半導体基板」に、
引用発明の「『半導体基板160の一面に』『形成され』る『第1導電型領域20』」は、本件補正発明の「前記半導体基板の一面に形成される第1導電型領域」に、
引用発明の「『半導体基板160の他面に』『形成され』る『第2導電型領域30』」は、本件補正発明の「前記半導体基板の他面に形成される第2導電型領域」に、
引用発明の「第1導電型領域20に接続される第1電極42」は、本件補正発明の「前記第1導電型領域に電気的に連結される第1電極」に、
引用発明の「第2導電型領域30に接続される第2電極44」は、本件補正発明の「前記第2導電型領域に電気的に連結される第2電極」に、
引用発明の「互いに平行な複数のフィンガーライン42a」は、本件補正発明の「平行する複数のフィンガーライン」に、
引用発明の「『複数設けられ』た『パッド部』」は、本件補正発明の「複数のパッド部」に、
引用発明の「6個以上のバスバーライン42b」は、本件補正発明の「複数のバスバー」に、
引用発明の「バスバーライン42bの内部領域に位置する第2パッド部422b」は、本件補正発明の「第1サイズを有する内側パッド」に、
引用発明の「『第2パッド部422bよりも大き』い『面積』の『ライン部421の端部』『に位置する第1パッド部422a』」は、本件補正発明の「前記第1サイズより大きい第2サイズを有する外側パッド」に、
引用発明の「エッジ領域PA」は、本件補正発明の「エッジ領域」に、
それぞれ相当する。

イ 引用発明は「第1電極42及び第2電極44をそれぞれ含む複数の太陽電池150」と特定されていることから、引用発明は、複数の太陽電池150の各々が、ベース領域10を含む半導体基板160を含み、半導体基板160の一面に第1導電型領域20が形成され、半導体基板160の他面に第2導電型領域30が形成されており、電極42、44は、第1導電型領域20に接続される第1電極42、及び第2導電型領域30に接続される第2電極44を含むことができるといえる。

ウ 引用発明において、「前記電極は、第1方向に形成され、互いに平行な複数のフィンガーライン42a、及び前記第1方向に交差する第2方向に形成される6個以上のバスバーライン42bを含み」、「第1電極42は、電極領域EA内でそれぞれ一定の幅W5及びピッチPを持って互いに離隔する複数のフィンガーライン42aを含むことができ、フィンガーライン42aが互いに平行であり、太陽電池150のメイン縁部(特に、第1及び第2縁部)と平行であり」、「電極領域EA内でフィンガーライン42aと交差する方向に形成されてフィンガーライン42aを接続するバスバーライン42bを含むことができ」、「バスバーライン42bは、配線材142が接続される方向に沿って相対的に狭い幅を持って長く延びるライン部421、及びライン部421よりも広い幅を有して配線材142との接続面積を増加させるパッド部422を備えることができ」るから、引用発明の「フィンガーライン42a」の延びる方向、「フィンガーライン42aと交差する方向」は、それぞれ本件補正発明の「第1方向」、「第2方向」に相当し、本件補正発明の「前記第1電極は、前記長軸と平行する第1方向に位置し、互いに平行する複数のフィンガーライン及び前記短軸と平行する第2方向に位置する複数のパッド部を含む複数のバスバーを備え」、「前記第1電極は、前記長軸と平行な方向に延び、互いに平行に位置する複数のフィンガーラインを備え」との構成と、「前記第1電極は、半導体基板の一方の軸と平行する第1方向に位置し、互いに平行する複数のフィンガーライン及び半導体基板の他方の軸と平行する第2方向に位置する複数のパッド部を備えた複数のバスバーを備え」、「前記第1電極は、前記一方の軸と平行な方向に延び、互いに平行に位置する複数のフィンガーラインを備え」る点で一致する。

エ 引用発明の「6個以上のバスバーライン42bを含み、前記複数の配線材142は、前記バスバーライン42bに接続されて前記太陽電池の一面側に6個以上配置され」は、本件補正発明の「前記複数のバスバーの個数又は前記複数の配線材の個数が6個〜14個であり」に相当する。

オ 引用発明の「配線材142は、フィンガーライン42aと交差する方向かつバスバーライン42bの延びる方向に沿って配置され、配線材142をライン部421の一端部に安定的に固定することができ、」「ライン部421の端部」「に位置する」「第1パッド部422aによる十分な付着力で第1電極42に固定することができ」は、本件補正発明に「前記複数の配線材は、前記第2方向に沿って延長し、及び、前記複数のパッド部により固定されたものであり」に相当する。

カ 引用発明の「第2パッド部422b」は、「フィンガーライン42aと交差する方向」の第2方向「に形成され」た「バスバーライン42bの内部領域に位置する」ことから、引用発明の「バスバーライン42bの内部領域に位置する第2パッド部422b」は、本件補正発明の「第2方向に配置される第1サイズを有する内側パッド」に相当する。

キ 引用発明の「パッド部422はバスバーライン42bに沿って複数設けられ、ライン部421の端部の両側にそれぞれ位置するパッド部を備えており、パッド部422は、ライン部421の端部(即ち、第1電極42と配線部142が接続された部分)の端部に位置する第1パッド部422a」「を含むことができ」と、本件補正発明の「前記外側パッドは、前記第2方向に前記切断面に隣接する第1最外郭パッドと前記非切断面に隣接した第2最外郭パッドを備え」とは、「前記外側パッドは、前記第2方向に第1最外郭パッドと第2最外郭パッドを備え」の点で一致する。

ク 引用発明の「エッジ領域PAは、配線材142が位置する部分に対応し、フィンガー電極42aの間に位置する第1エッジ領域PA1、及び第1エッジ領域PA1以外の部分であって、最外郭のフィンガー電極42aと半導体基板160の第1〜第4縁部161,162,163,164との間で一定の距離だけ離隔する第2エッジ領域PA2を含むことができ、第1エッジ領域PA1は、配線材142が十分な結合力で第1電極42に付着され得るように、第1電極42の端部が太陽電池150の縁部から離隔して位置した領域であり」と、本件補正発明の「前記複数のフィンガーラインの内、前記半導体基板の長軸に隣接したフィンガーラインには、前記複数の配線材が位置する領域に、前記フィンガーラインが形成されず、配線材と基板の接着力を高めるエッジ領域がさらに形成され」とは、「前記複数のフィンガーラインの内、前記半導体基板の一方の軸に隣接したフィンガーラインには、前記複数の配線材が位置する領域に、前記フィンガーラインが形成されず、配線材と基板の接着力を高めるエッジ領域がさらに形成され」る点で一致する。

ケ 引用発明は「エッジ領域PAは、配線材142が位置する部分に対応し、フィンガー電極42aの間に位置する第1エッジ領域PA1、及び第1エッジ領域PA1以外の部分であって、最外郭のフィンガー電極42aと半導体基板160の第1〜第4縁部161,162,163,164との間で一定の距離だけ離隔する第2エッジ領域PA2を含むことができ、第1エッジ領域PA1は、配線材142が十分な結合力で第1電極42に付着され得るように、第1電極42の端部が太陽電池150の縁部から離隔して位置した領域であり」と特定されていることから、エッジ領域PAは、太陽電池150の各縁部に対応する部分も含むといえ、少なくとも第1のエッジ領域PA、第2のエッジ領域PAを備えているといえる。
そうすると、引用発明の「エッジ領域PAは、配線材142が位置する部分に対応し、フィンガー電極42aの間に位置する第1エッジ領域PA1、及び第1エッジ領域PA1以外の部分であって、最外郭のフィンガー電極42aと半導体基板160の第1〜第4縁部161,162,163,164との間で一定の距離だけ離隔する第2エッジ領域PA2を含むことができ、第1エッジ領域PA1は、配線材142が十分な結合力で第1電極42に付着され得るように、第1電極42の端部が太陽電池150の縁部から離隔して位置した領域であり、ライン部421の端部に位置する第1パッド部422aは、エッジ領域PAに隣接して配置され」と、本件補正発明の「前記エッジ領域は、前記第2方向に前記切断面に隣接する第1エッジ領域と前記非切断面に隣接した第2エッジ領域を備え、前記第1最外郭パッドは、前記第1エッジ領域に隣接して配置され、前記第2の最外郭パッドは、前記第2エッジ領域に隣接して配置される」とは、「前記エッジ領域は、第1エッジ領域と第2エッジ領域を備え、前記第1最外郭パッドは、前記第1エッジ領域に隣接して配置され、前記第2の最外郭パッドは、前記第2エッジ領域に隣接して配置される」点で一致する。

コ 以上から、本件補正発明と引用発明は、 以下の点で一致し、相違点1〜6で相違する。

<一致点>
「太陽電池パネルであって、
第1太陽電池及び第2太陽電池を含む複数の太陽電池と、
前記第1太陽電池と前記第2太陽電池を連結し、及び、円形の断面を有するワイヤで構成された複数の配線材と、を備えてなり、
前記複数の太陽電池の各々は、
半導体基板、
前記半導体基板の一面に形成される第1導電型領域、
前記半導体基板の他面に形成される第2導電型領域、
前記第1導電型領域に電気的に連結される第1電極、及び、
前記第2導電型領域に電気的に連結される第2電極、を備え、
前記第1電極は、半導体基板の一方の軸と平行する第1方向に位置し、互いに平行する複数のフィンガーライン及び半導体基板の他方の軸と平行する第2方向に位置する複数のパッド部を含む複数のバスバーを備え、
前記複数のバスバーの個数又は前記複数の配線材の個数が6個〜14個であり、
前記複数の配線材は、前記第2方向に沿って延長し、及び、前記複数のパッド部により固定されたものであり、
前記複数のパッド部は、前記第2方向に配置される第1サイズを有する内側パッドと、前記第1サイズより大きい第2サイズを有する外側パッドを備え、
前記外側パッドは、前記第2方向に第1最外郭パッドと第2最外郭パッドを備え、
前記第1電極は、前記一方の軸と平行な方向に延び、互いに平行に位置する複数のフィンガーラインを備え、
前記複数のフィンガーラインの内、前記半導体基板の一方の軸に隣接したフィンガーラインには、前記複数の配線材が位置する領域に、前記フィンガーラインが形成されず、配線材と基板の接着力を高めるエッジ領域がさらに形成され、
前記エッジ領域は、前記第2方向に第1エッジ領域と第2エッジ領域を備え、前記第1最外郭パッドは、前記第1エッジ領域に隣接して配置され、前記第2の最外郭パッドは、前記第2エッジ領域に隣接して配置される、太陽電池パネル。」

<相違点1>
「半導体基板」について、本件補正発明は「互いに交差する長軸及び短軸を有する」のに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。

<相違点2>
本件補正発明は「フィンガーライン」について、「長軸と平行する第1方向に位置し」、「長軸と平行な方向に延び、互いに平行に位置する複数」「備え」と特定するとともに、「複数のフィンガーラインの内、長軸に隣接したフィンガーラインには、複数の配線材が位置する領域に、前記フィンガーラインが形成されず」と特定したのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。

<相違点3>
「バスバー」について、本件補正発明は「短軸と平行する第2方向に位置する」と特定したのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。

<相違点4>
本件補正発明は、「前記第1方向での前記半導体基板の長さに対する前記第2方向での前記半導体基板の幅の割合が0.2〜0.5であ」るのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。

<相違点5>
本件補正発明は、「第2方向での前記半導体基板の幅に対する前記第1方向での前記バスバーのピッチが0.1〜0.35であ」るのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。

<相違点6>
本件補正発明は、「前記第1太陽電池及び前記第2太陽電池は、母太陽電池を前記母太陽電池の中心線を切断線として切断し形成されたものであり」、「前記第1太陽電池及び前記第2太陽電池は、切断面と非切断面を備えてなり」、「切断面に隣接する第1最外郭パッド」、「非切断面に隣接した第2最外郭パッド」、「切断面に隣接する第1エッジ領域」、「非切断面に隣接した第2エッジ領域」であるのに対し、引用発明の「複数の太陽電池150」は、切断して形成されたものか明らかでなく、それに伴い切断面、非切断面を有するのか明らかでない点。

(4)判断
ア 相違点1〜4について
相違点1〜4は、関連するため併せて検討する。
太陽電池の技術分野において、正方形状の太陽電池を二分割し、長軸、短軸を有する長方形状の太陽電池として用いること、及び長方形状の太陽電池を形成した際に、フィンガーライン(引用文献2の「グリッド電極13」、引用文献3の「フィンガー電極20、21」が相当。)を長軸と平行に配置し、バスバー(引用文献2の「受光面バス電極14」、引用文献3の「金属線23」の一部が相当。)を短軸と平行に配置することは、引用文献2、3に記載されているように周知技術である。また、長軸と短軸を有する太陽電池の短軸方向に配線材を配置すると、正方形に作製した太陽電池よりも、高出力にできることや電力損出を低減することできるという特性・効果に関しても、周知(必要ならば、引用文献2の【0030】の「太陽電池セル20を二分割することにより、太陽電池セル20の1枚あたりの電流を半分にすることができるため、電気接続による抵抗損失を低減できる。したがって、分割しない従来の正方形の太陽電池セルを搭載する太陽電池モジュールよりも高出力の太陽電池モジュールとすることができる。」、引用文献3の【0036】の「このように太陽電池セル11の面積を通常の半分にし、かつ数を倍にすることにより、出力電力を同一としたままで電流量を小さくすることができ、電力損失を理論上1/4に低減することができる。」を参照されたい。)である。なお、太陽電池が長方形状であるということは半導体基板も長方形状であることは明らかである。
そして、引用発明は「太陽電池150の平面形状が様々な形状を有してもよく」と特定され、太陽電池の形状をどのように設定するかは当業者が適宜選択しうる事項であるといえるところ、引用発明においても、太陽電池モジュールとして高出力にすることや電力損出を低減することは求められていることといえるから、当業者にとって、上記周知技術を、引用発明に適用する動機があるというべきである。そうすると、引用発明において、相違点1〜4に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。

イ 相違点5について
引用発明は、「太陽電池150の一面に位置する配線材142の数(又はバスバーライン42bの数)は、配線材142の幅W1と一定の関係を有し、250μm〜500μmの幅W1を有する配線材142が6個〜33個備えられると、太陽電池パネル100の出力が優れた値を有する」との構成を備えるものであるから、配線材142が6個〜19個とする態様、つまりバスバーライン42bを6本〜19本とする態様を含み得るものである。
そして、上記アで説示したように、引用発明に上記周知技術を適用した場合に、上記のようなバスバーライン42bを6本〜19本とする態様を想定すると、バスバーライン42bのピッチは、太陽電池(半導体基板)の長軸の幅の1/7〜1/20程度となり、長軸の幅は短軸の幅の2倍程度であるから、バスバーライン42bのピッチは、短軸の幅(本件補正発明の「第2方向での前記半導体基板の幅)の1/3.5(=0.29)〜1/10(=0.1)程度となり、相違点5に係る数値限定を満たす程度の値となる。
したがって、相違点5に係る数値限定は、上記アで説示したように引用発明に上記周知技術を適用したものにおいて、自然に満たされるものであるといえるから、格別な数値範囲とはいえない。また、本件明細書の記載を見ても、格別の臨界的意義は認められない。
よって、上記数値限定は、当業者が必要に応じて適宜設定しうる設計事項にすぎない。

ウ 相違点6について
本件補正発明は「太陽電池パネル」という物の発明であるところ、「前記第1太陽電池及び前記第2太陽電池は、母太陽電池を前記母太陽電池の中心線を切断線として切断し形成されたものであり」との製造方法に関する特定は、「太陽電池パネルの少なくとも一つの面が、切断により形成された面である」ということを特定するに過ぎない。また、本願の明細書の記載も参酌すると、本件補正発明の「切断面」は、母太陽電池の中心線を切断線として切断する際に形成される面を意味し、「非切断面」は、「切断面」以外の太陽電池の側面を意味すると認められる。ここで、「非切断面」は、あくまで、「母太陽電池の中心線を切断線として切断する際に形成される面ではない面」を意味するのであって、「切断によって形成されたものではない面」を意味するものではない。そして、例えば、太陽電池パネルが単結晶シリコンからなるものである場合、側面は切断によって形成されることは技術常識であり、また、側面を「切断」によって形成することによる技術的な意義も認められないから、太陽電池パネルの少なくとも一つの側面を切断により形成すること、言い換えれば、相違点6に係る本願補正発明の構成とすることは何ら格別のものとはいえない。

エ 作用効果について
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

オ 請求人の主張について
(ア)請求人は、審判請求書において、
a 「本願発明は、上記固有の発明特定事項を採用することにより、本願発明は、パッド部が面積が大きい外側パッドと面積が小さい内側パッドを含むことにより、パッドにより発生されるシェーディングロス(shading loss)を最小化することができ、また、外側パッドは、太陽電池の両端に配置して配線材に結合力を高めて配線材が太陽電池から剥離されることを防止します。また、本願発明は、この外側パッドがエッジ領域に隣接して配置し、配線材と基板の接着力を高い次元において高めることができるのです。」、「第1エッジ領域(PA1)は配線材142が位置した部分で太陽電池150の端に隣接する部分でそれぞれ位置します。第1エッジ領域(PA1)は配線材142が、十分な結合力で、第1電極42に付着することができるよう外側パッド424を太陽電池150の端から離間するための領域として存在しております。」、「本願実施例において、他の太陽電池150に接続されない配線材142の端部が外側パッド424の端部を通って第1エッジ領域(PA1)の内部まで延長されて配線材142の端部が第1エッジ領域(PA1)の内部に位置することができます。これにより、配線材142の端部を安定的に固定することができ、また、外側パッド424a、424bによる十分な付着力で第1電極42に固定しつつ、配線材142が第2エッジ領域(PA2)まで延長される場合に表れるショートなどの問題を防止することができることを実証しております。」、「しかしながら、引用文献1乃至引用文献3には、本願発明固有の発明特定事項は開示も示唆もなされておらず、かつ、当該固有の発明特定事項を当業者が容易に採用してみようとする理論付けとなる事項もまた全く開示も示唆もなされておりません。」

b 「〔3〕発明の効果(1)本願発明」「特に、長軸と短軸を有する太陽電池に配線材を適用して太陽電池の効率及び太陽電池パネルの出力を最大化することができるのです。また、この際、短軸方向に配線材を配置し、短軸方向の両側に外側パッドを各々位置させて配線材を通じての移動経路を最小化し、配線材の付着特性を高い次元において向上させることができるのです(〔0009])。」「本願発明と引用文献2及び3とは発明の効果の点において明らかに異なるものであることが理解されます。」旨主張している。

(イ)当該主張について検討する。
a 上記(ア)aの「内側パッド」の「第1サイズより大きい第2サイズを有する外側パッド」、「最外殻パッド」が「エッジ領域に隣接して配置」、「エッジ領域」の発明特定事項については、上記(3)ア、ケで説示したとおり、引用発明に特定されている事項といえる。

b 上記周知技術として提示した引用文献2には「太陽電池セル20を二分割することにより、太陽電池セル20の1枚あたりの電流を半分にすることができるため、電気接続による抵抗損失を低減できる。したがって、分割しない従来の正方形の太陽電池セルを搭載する太陽電池モジュールよりも高出力の太陽電池モジュールとすることができる。」、引用文献3には「このように太陽電池セル11の面積を通常の半分にし、かつ数を倍にすることにより、出力電力を同一としたままで電流量を小さくすることができ、電力損失を理論上1/4に低減することができる。」と記載され、長軸と短軸を有する太陽電池の短軸方向に配線材を配置すると、正方形に作製した太陽電池よりも、高出力にできることや電力損出を低減することできることが記載されている。また、引用発明に「ライン部421の端部」「に位置する」「第1パッド部422aの面積を第2パッド部422bよりも大きくして、配線材142と第1電極42とが強い付着力を有するようにすることができ」と特定されていることから、ライン部421の端部の両側に外側パッドを各々位置させて配線材の付着特性を向上させることができるといえる。
そうすると、上記エで説示したとおり、本件補正発明の作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎない。

よって、請求人の主張は採用できない。

(5)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する特許法126条7項の規定に違反するので、特許法159条1項の規定において読み替えて準用する特許法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年12月23日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本件補正発明に対応する本件補正前の発明は、令和2年7月27日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜9に係る発明であるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
この出願の請求項1に係る発明は、原出願の優先日前に頒布された引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、原出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

引用文献1.特開2016−72637号公報
引用文献2.特開2014−33240号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3.特開2016−146373号公報(周知技術を示す文献)

進歩性について
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1〜3及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「複数のパッド部」について、「前記第2方向に配置される第1サイズを有する内側パッドと、前記第1サイズより大きい第2サイズを有する外側パッドを備え、前記外側パッドは、前記第2方向に前記切断面に隣接する第1最外郭パッドと前記非切断面に隣接した第2最外郭パッドを備え」の限定事項を省き、本件補正発明から、「第1電極」について、「前記長軸と平行な方向に延び、互いに平行に位置する複数のフィンガーラインを備え、前記複数のフィンガーラインの内、前記半導体基板の長軸に隣接したフィンガーラインには、前記複数の配線材が位置する領域に、前記フィンガーラインが形成されず、配線材と基板の接着力を高めるエッジ領域がさらに形成され、前記エッジ領域は、前記第2方向に前記切断面に隣接する第1エッジ領域と前記非切断面に隣接した第2エッジ領域を備え、前記第1最外郭パッドは、前記第1エッジ領域に隣接して配置され、前記第2の最外郭パッドは、前記第2エッジ領域に隣接して配置される」の限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。

審判長 瀬川 勝久
出訴期間として在外者に対し90日を附加する。
 
審理終結日 2022-06-10 
結審通知日 2022-06-14 
審決日 2022-06-30 
出願番号 P2019-059539
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 吉野 三寛
野村 伸雄
発明の名称 太陽電池及びこれを含む太陽電池パネル  
代理人 堅田 健史  
代理人 小林 英了  

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