• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C02F
管理番号 1391390
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-19 
確定日 2022-11-22 
事件の表示 特願2020− 23619「超純水製造装置及び超純水製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月 2日出願公開、特開2021−126624、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和 2年 2月14日の出願であって、その経緯は、次の通りである。
令和 2年10月 6日付け : 拒絶理由通知
同年12月 7日提出 : 手続補正書及び意見書
令和 3年 2月15日付け : 拒絶査定
同年 5月19日提出 : 拒絶査定不服審判の審判請求書
同年 6月 1日提出 : 審判請求書の手続補正書
令和 4年 5月23日提出 : 刊行物等提出書

第2 本願発明
本願の請求項1〜2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明2」とい、これらを総称して「本願発明」という。)は、令和 2年 12月 7日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

【請求項1】
原水を処理する前処理システムと、該前処理システムの処理水を処理する一次純水システムと、該一次純水システムの処理水を処理するサブシステムとを備え、
該一次純水システムが、構成装置として逆浸透膜分離装置、脱気装置、紫外線酸化装置、及びイオン交換装置をこの順で備える超純水製造装置であって、該一次純水システムにおける水量及び/又は水質を監視するモニターと、該モニターで検出した値に応じて1以上の前記構成装置の運転条件を制御する制御手段とを有し、
前記脱気装置は、脱気膜と、該脱気膜により区画された液体室及び気体室と、該気体室へのスイープ用窒素ガスの導入手段と、該気体室を真空引きする真空ポンプとを有した膜脱気装置であり、
前記イオン交換装置は、電気再生式脱イオン装置を1段又は複数段直列に接続した電気再生型イオン交換装置である超純水製造装置を用いて超純水を製造する超純水製造方法において、
前記一次純水システムの処理水の比抵抗が所定値よりも低下した場合、以下のa〜dの制御を行うことを特徴とする超純水製造方法。
a:前記逆浸透膜分離装置への給水量を増やすとともに、逆浸透膜分離装置の処理水の回収率を下げる。
b:脱気装置では、窒素ガスの導入量を増やし、また、真空ポンプの出力を上げて脱気装置の真空度を上げる。
c:紫外線酸化装置では、紫外線酸化装置への供給電流値を上昇させて有機物の分解を促進する。
d:電気再生型イオン交換装置では、濃縮水の流量を増やし、また、電気再生型イオン交換装置への供給電流値を上昇させて脱塩効率を上げる。
【請求項2】
前記イオン交換装置の処理水として、比抵抗値18MΩcm以上、TOC濃度2μm/L以下、ホウ素濃度1ng/L以下、及びシリカ濃度0.1μg/L以下の処理水を得る請求項1に記載の超純水製造方法。」

第3 原査定の拒絶理由
1 原査定における拒絶理由の概要
この出願の請求項1〜2に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の引用文献1〜4に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2016−117001号公報
2.特開平10−180254号公報
3.特開2018−079447号公報
4.特開2012−205989号公報

第4 当審の判断
1 引用文献1を主たる引用文献とする場合の本願発明の進歩性
(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、「超純水製造装置及び超純水製造方法」に関し、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。以下同じ。
ア 「
【0007】
しかしながら、近年、半導体等の電子デバイスの高集積化、回路パターンの微細化に伴い、洗浄水として用いられる超純水の水質に対する水質向上の要求が更に高まっているのが現状である。超純水製造装置又は超純水製造システムにおいて、ユースポイントにおける到達水質及び水質安定性を決定づけるのは一次純水システムである。逆浸透膜分離装置、脱気装置及びイオン交換装置のそれぞれが単段に設置されるのが一次純水システムの一般的な態様である。ところが、この水質向上の要求が高まる中で、上記の一次純水システムの一般的な態様では水質向上の要求に応えられない問題がある。このため、近年の最先端の半導体工場等において、下記の(A)〜(C)の一次純水システムのように逆浸透膜分離装置及び/又はイオン交換装置(塔)を複数段に設置し、超純水の高純度化を図っている。
【0008】
(A)複数の逆浸透膜(RO膜)分離装置からなる多段ROシステム
・逆浸透膜(RO膜)分離装置⇒混床式イオン交換装置(塔)(MB)⇒紫外線殺菌装置(UVst)⇒逆浸透膜(RO膜)分離装置⇒紫外線酸化装置(UVox)⇒非再生型イオン交換装置(塔)⇒脱気装置(MDG)、
構成ユニット数は7である。
(B)カチオン及びアニオン交換塔を複数段組み合わせた多段イオン交換システム
・陽イオン交換樹脂(H1)装置(塔)⇒脱炭酸塔 ⇒陰イオン交換樹脂(OH1)装置(塔)⇒陽イオン交換樹脂(H2)装置(塔)⇒陰イオン交換樹脂(OH2)装置(塔)⇒紫外線殺菌装置(UVst)⇒逆浸透膜(RO膜)分離装置⇒脱気装置(MDG)⇒紫外線酸化装置(UVox)⇒非再生型イオン交換装置(塔)、
構成ユニット数は10である。
・陽イオン交換樹脂(H1)装置(塔) ⇒脱炭酸塔 ⇒陰イオン交換樹脂(OH1)装置(塔) ⇒紫外線殺菌装置(UVst)⇒逆浸透膜(RO膜)分離装置⇒紫外線酸化装置(UVox)⇒混床式イオン交換装置(塔)(MB)⇒非再生型イオン交換装置(塔)、
構成ユニット数は8である。
(C)複数の電気再生型イオン交換装置からなる多段電気再生式イオン交換純水装置(CDI)システム
・逆浸透膜(RO膜)分離装置⇒逆浸透膜(RO膜)分離装置⇒脱気装置(MDG)⇒紫外線酸化装置(UVox)⇒多段電気再生式イオン交換純水装置(CDI)⇒多段電気再生式イオン交換純水装置(CDI)、
構成ユニット数は6である。
上記の(A)〜(C)の一次純水システムに用いられている逆浸透膜(RO膜)分離装置において、超低圧型逆浸透膜(RO膜)分離装置(標準運転圧:0.75MPa)が使用されるのが一般的である。
【0009】
ここで、本明細書における、ユニットとは、一次純水システムでの除去の主目的である脱塩、脱気、有機物除去の何れか或いは複数の処理が可能な装置を意味し、構成ユニット数とは、システム、例えば一次純水システムに備えられるユニットの数を意味する。
【0010】
例えば、原水(工業用水、水道水、井水、電子デバイス製造工程から排出される使用済みの超純水等)を前処理システムによって処理した被処理水は、上記の(A)〜(C)の一次純水システムで処理することで、被処理水の水質(一次純水システムの出口における水質)を、比抵抗18MΩcm以上、TOC濃度2μg/L以下、ホウ素(B)濃度1ng/L以下、シリカ(SiO2)濃度0.1μg/L以下の高純度な水質にすることが可能となる。
【0011】
しかしながら、上記の(A)〜(C)の一次純水システムの構成ユニット数(6〜10)が多いため、フットプリントが大きく、かつ、設備コスト(イニシャルコスト)及び運営コスト(ランニングコスト)が高くなるといった問題がある。
【0012】
また、超純水の水質の要求レベルは、今後益々高まり、一次純水システムのユニット数は更に増加する傾向にある。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、要求水質を充分に満足した高純度の超純水を、フットプリントを軽減させて、かつ、安価に製造することができる超純水製造装置及び超純水製造方法を提供することを主目的とする。」

イ 「
【0021】
1.超純水製造装置
本発明に係る実施形態の超純水製造装置は、前処理システムと、一次純水システムと、サブシステムとを備え、一次純水システムが、高圧型逆浸透膜分離装置と、脱気装置と、紫外線酸化装置と、イオン交換装置とをこの順で備える、超純水製造装置である。本実施形態の超純水製造装置によれば、要求水質を充分に満足した高純度の超純水を、フットプリントを軽減させて製造することができ、さらに設備コスト(イニシャルコスト)及び運営コスト(ランニングコスト)を抑えながら安価に製造することができる。」

ウ 「
【0022】
<一次純水システム>
本発明に係る実施形態の超純水製造装置に備えられる一次純水システムは、高圧型逆浸透膜分離装置と、脱気装置と、紫外線酸化装置と、イオン交換装置とをこの順で備える、僅か4ユニット構成のシステムである。一次純水システムは、原水(工業用水、水道水、井水、電子デバイス製造工程から排出される使用済みの超純水等)を前処理システムによって処理した被処理水中のイオンや有機成分の除去を行う。そして、一次純水システムが僅か4ユニット構成であるにもかかわらず、本発明に係る実施形態の超純水製造装置によって製造された超純水の水質は、例えば、上記で述べた(A)〜(C)の一次純水システムのように逆浸透膜分離装置及び/又はイオン交換装置(塔)を複数段に設置した一次純水システムを備える超純水製造装置によって製造された超純水の水質に対して同等以上の水質を示す。したがって、本発明に係る実施形態の超純水製造装置によって製造された超純水は、要求水質を充分に満足した高純度の超純水である。
【0023】
本発明に係る実施形態の超純水製造装置によって製造された超純水が、要求水質を充分に満足するかどうかは、原水(工業用水、水道水、井水、電子デバイス製造工程から排出される使用済みの超純水等)を前処理システムによって処理した被処理水が、本発明に係る実施形態の超純水製造装置に備えられる一次純水システムによって処理することで、被処理水の水質(一次純水システムの出口における水質)が、比抵抗値18MΩcm以上、TOC(TotalOrganicCarbon)濃度2μg/L以下、ホウ素(B)濃度1ng/L以下、シリカ(SiO2)濃度0.1μg/L以下を示すかどうかで判断することができる。したがって、本発明に係る実施形態の超純水製造装置に備えられる一次純水システムによって処理された被処理水の水質が上記のような値を示せば、最終的には後述するサブシステムによって処理された超純水は、要求水質を充分に満足した高純度の超純水となる。」

エ 「
【0027】
本発明の実施形態における脱気装置は、IC(無機炭素)、溶存酸素の除去を行う。高圧型逆浸透膜分離装置処理後に脱気装置(脱ガス装置)を備える理由は以下の通りである。すなわち、高圧型逆浸透膜分離装置の前段に脱気装置の設備を入れた場合、原水中に存在する濁質あるいはAl、SiO2等により脱気装置に備えられている脱気膜あるいは充填材(真空脱気等)が汚れ、脱気効率が低下するおそれがある。上記の濁質あるいはAl、SiO2等は高圧型逆浸透膜にて除去可能であるため、高圧型逆浸透膜分離装置によって処理した後、脱気装置に被処理水を通水することにより脱気効率の低下を防止する。
【0028】
また、脱気装置をイオン交換装置、及び紫外線酸化装置の前段に設置する理由は脱気装置にて除去可能であるIC(無機炭素)成分は紫外線酸化装置に対してはラジカルスカベンジャー、一方イオン交換装置に対してはアニオン負荷となる。また、同様に、脱気装置にて除去可能である溶存酸素が過剰に存在する場合、溶存酸素は、上記のIC(無機炭素)成分と同様に、紫外線酸化装置に対してはラジカルスカベンジャーとなり、一方、イオン交換装置に対しては、溶存酸素は樹脂酸化劣化を引き起こす要因物質となる。したがって、脱気装置は紫外線酸化装置、及びイオン交換装置の前段に設置する(備える)必要性がある。脱気装置は、本発明の目的を達成し、本発明の効果を奏すれば、任意の脱気装置でよいが、例えば、脱炭酸塔、膜脱気装置、真空脱気塔、窒素脱気装置、触媒樹脂脱酸素装置等が挙げられる。」

オ 「
【0029】
脱気装置の後段、及びイオン交換装置(塔)の前段に紫外線酸化装置を設置する理由は以下の通りである。すなわち紫外線酸化装置においては水(被処理水)中の有機物をOHラジカルの酸化力によりCO2と有機酸に分解する。紫外線酸化装置にて生成したCO2あるいは有機酸は後段のイオン交換装置(塔)にて除去を行うことができる。
【0030】
本発明の実施形態における紫外線酸化装置は、185nm波長光を放出するものであって、本発明の目的を達成し、本発明の効果を奏すものであれば、特に限定されるものではない。本発明の実施形態において、有機物分解効率の観点からランプ及び外管共、不純物が極めて少ない合成石英で構成された紫外線酸化装置を使用することが好ましい。」

カ 「
【0031】
本発明の実施形態におけるイオン交換装置は塩類を除去すると共に荷電性有機物の除去を行う。イオン交換装置は、本発明の目的を達成し、本発明の効果を奏すものであれば、特に限定されるものではないが、本発明の実施形態におけるイオン交換装置としては、再生型イオン交換装置(塔)又は非再生型イオン交換装置(塔)がよい。再生型イオン交換装置(塔)としては、例えば、ア)強酸性カチオン交換樹脂が充填されたカチオン交換塔と、強塩基性アニオン交換樹脂が充填されたアニオン交換塔とを直列に接続した2床2塔式再生型イオン交換装置、イ)強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とが別々の異なる層となるように1つの塔内に強酸性カチオン交換樹脂と該強塩基性アニオン交換樹脂とを充填した2床1塔式再生型イオン交換装置、ウ)強酸性カチオン交換樹脂と強塩基性アニオン交換樹脂とを均一に混合して1つの塔内に充填した混床型再生式イオン交換装置、エ)電気再生式脱イオン装置を1段又は複数段直列に接続した再生型イオン交換装置等が挙げられる。」

キ 「
【0034】
2.超純水製造方法
本発明に係る実施形態の超純水製造方法は、原水を前処理システムによって処理した被処理水を一次純水システム及びサブシステムの順によって処理し、一次純水システムによる処理方法が、高圧型逆浸透膜分離装置に被処理水を通水する工程と、通水された被処理水中のガスを脱気する工程と、脱気された被処理水中の有機物を紫外線酸化装置によって分解する工程と、有機物が分解された被処理水を、イオン交換装置によって処理する工程とを含む、超純水製造方法である。本実施形態の超純水製造方法によれば、要求水質を充分に満足した高純度の超純水を、フットプリントを軽減させて製造することができ、さらに設備コスト(イニシャルコスト)及び運営コスト(ランニングコスト)を抑えながら安価に製造することができる。」

ク 「
【0037】
(実施例1)
電気伝導率30mS/m, TOC2mg/L、SiO210mg/L及びB30μg/Lを含む工業用水、凝集ろ過水をpH6の条件にて高圧型逆浸透膜(SWC4Max、膜面有効圧力2.0MPa、温度25℃における純水透過流束0.78m3/m2/day;有効圧2.0MPa、温度25℃、NaCl濃度32000mg/LにおけるNaCl除去率99.8%、日東電工製)(回収率85%)に通水した後、脱気装置(脱気膜、X−50ポリポア社製)、紫外線酸化装置(JPW、日本フォトサイエンス製)、次いで1塔内でカチオン交換樹脂層、及びアニオン交換樹脂層を分離したDBP(Double−BedPolisher、栗田工業製)に通水した。」

(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)ア〜クから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「原水を処理する前処理システムと、前記前処理システムによって処理された被処理水を処理する一次純水システムと、前記一次純水システムの処理水を処理するサブシステムとを備え、
前記一次純水システムが、高圧型逆浸透膜分離装置と、脱気装置と、紫外線酸化装置と、イオン交換装置とをこの順で備える、超純水製造装置であって、前記脱気装置は、膜脱気装置であり、前記イオン交換装置は、電気再生式脱イオン装置を1段又は複数段直列に接続した再生型イオン交換装置である超純水製造装置を用いて超純水を製造する超純水製造方法において、一次純水システムによる処理方法が、高圧型逆浸透膜分離装置に被処理水を通水する工程と、通水された被処理水中のガスを脱気する工程と、脱気された被処理水中の有機物を紫外線酸化装置によって分解する工程と、有機物が分解された被処理水を、イオン交換装置によって処理する工程とを含む超純水製造方法。」

(3)本願発明1と引用発明1の対比及び判断
ア 引用発明1の「高圧型逆浸透膜分離装置」は、本願発明1の「逆浸透膜分離装置」に相当する。

イ 引用発明1の「膜脱気装置」は、脱気膜を用いるものであることは明らかであるから、本願発明1の「脱気膜」「を有した膜脱気装置」に相当する。

ウ そうすると、本願発明1と引用発明1は、次の点で一致する。
<一致点>
「原水を処理する前処理システムと、該前処理システムの処理水を処理する一次純水システムと、該一次純水システムの処理水を処理するサブシステムとを備え、
該一次純水システムが、構成装置として逆浸透膜分離装置、脱気装置、紫外線酸化装置、及びイオン交換装置をこの順で備える超純水製造装置であって、
前記脱気装置は、脱気膜を有した膜脱気装置であり、
前記イオン交換装置は、電気再生式脱イオン装置を1段又は複数段直列に接続した電気再生型イオン交換装置である超純水製造装置を用いて超純水を製造する超純水製造方法。」

エ そして、本願発明1と引用発明1は、次の点で相違する。
<相違点1>
本願発明1では、一次純水システムにおける水量及び/又は水質を監視するモニターと、該モニターで検出した値に応じて1以上の前記構成装置の運転条件を制御する制御手段とを有する超純水製造装置を用いる超純水製造方法であるのに対し、引用発明1では、超純水製造方法に用いる超純水製造装置において、一次純水システムにおける水量及び/又は水質を監視するモニター及び該モニターで検出した値に応じて1以上の前記構成装置の運転条件を制御する制御手段について記載されておらず、不明である点。

<相違点2>
本願発明1では、脱気装置が、脱気膜と、該脱気膜により区画された液体室及び気体室と、該気体室へのスイープ用窒素ガスの導入手段と、該気体室を真空引きする真空ポンプとを有した膜脱気装置を備える超純水製造装置を用いる超純水製造方法であるのに対し、引用発明1では、超純水製造方法に用いる超純水製造装置において、脱気膜により区画された液体室及び気体室、該気体室へのスイープ用窒素ガスの導入手段、及び該気体室を真空引きする真空ポンプについて記載されておらず、これらを有しているか不明である点。

<相違点3>
本願発明1では、一次純水システムの処理水の比抵抗が所定値よりも低下した場合、以下のa〜dの制御を行うのに対し、引用発明1では、前記制御を行うことについて記載されておらず、前記制御を行うか不明である点。
a:前記逆浸透膜分離装置への給水量を増やすとともに、逆浸透膜分離装置の処理水の回収率を下げる。
b:脱気装置では、窒素ガスの導入量を増やし、また、真空ポンプの出力を上げて脱気装置の真空度を上げる。
c:紫外線酸化装置では、紫外線酸化装置への供給電流値を上昇させて有機物の分解を促進する。
d:電気再生型イオン交換装置では、濃縮水の流量を増やし、また、電気再生型イオン交換装置への供給電流値を上昇させて脱塩効率を上げる。

オ 以下、事案に鑑み、相違点3について検討する。
上記制御のうち、dに相当するもの、すなわち、電気再生型イオン交換装置において、濃縮水の流量を増やし、また、電気再生型イオン交換装置への供給電流値を上昇させて脱塩効率を上げることは、いずれの引用文献にも記載乃至示唆されておらず、さらに、令和 4年 5月23日提出の刊行物等提出書において提示されたいずれの刊行物にも記載乃至示唆されていない。
さらに、上記dの制御が逆浸透膜分離装置及び電気再生型イオン交換装置における技術常識若しくは周知技術であると認めるに足る証拠もない。

カ したがって、引用発明1において、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項とすることを動機付ける記載は、いずれの引用文献及び刊行物にも記載されておらず、さらに、上記dの制御が逆浸透膜分離装置及び電気再生型イオン交換装置における技術常識若しくは周知技術であるとも認められないから、上記相違点3に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。

キ さらに、本願の願書に添付された明細書の、特に、段落【0014】、【0055】〜【0061】の記載によれば、本願発明は、上記a〜dの制御を行うことにより、一次純水の水質低下に応じて、水質を回復させた上で、一次純水システムの処理水としての一次純水を安定に供給することができるという引用発明1よりも優れた効果を奏する。

ク そうすると、本願発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本願発明2と引用発明1の対比及び判断
本願の請求項2は、本願の請求項1を直接に引用するものであるから、本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
ここで、上記(3)で検討したとおり、本願発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そうすると、本願発明2は、新たな一致点及び相違点の検討を行うまでもなく、引用発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 引用文献2を主たる引用文献とする場合の本願発明の進歩性
(1)引用文献2の記載事項
引用文献2には、「純水の製造方法及び製造装置」に関し、次の事項が記載されている。なお、「・・・」は記載の省略を表す。以下同じ。
ア 「
【0002】
【従来の技術】従来から純水製造プラントにおいては、常圧脱気装置、逆浸透膜装置、フィルタ装置、真空脱気装置、紫外線照射有機物分解装置、イオン交換装置、限外濾過膜装置などを用いて、被処理水の溶存成分や微粒子成分を除去して、比抵抗値18MΩcm以上、TOC1ppb以下、0.05μm粒径の微粒子数個/cc程度までに純度を高めることが行われている。
・・・
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように従来の純水の製造方法及び純水製造装置では、冬季水温が低下したときに、被処理水を加温して透過水量を一定に保つため、熱交換器とそれに伴うスチームのために処理コストが高くなってしまうという問題があった。
【0008】また、ユースポイントで使用される純水量に応じてポンプを断続運転するため、稼動電力が過大になり(回収率70%の超純水製造装置において、ランニングコストが400円/m3 とすると、電力コストは100円/m3 であり、ランニングコストの1/4を占める。)、ポンプの急回転、急停止によりポンプ自体の寿命が短くなり、かつ、ポンプからの発塵により純水が汚染を受ける恐れが生じ、さらに、ポンプを停止させる時間が長くなると生菌が繁殖するようになるという問題もあった。
【0009】本発明は、かかる従来の難点を解消すべくなされたもので、第1の目的は、水温の変動による透過水量の変化のない純水の製造方法及び製造装置を提供することにある。
【0010】また、本発明の第2の目的は、ユースポイントで使用される水量に応じて透過水量を連続的に増減可能な純水の製造方法及び製造装置を提供することにある。本発明の他の目的は以下の説明から明らかになるであろう。」

イ 「
【0011】
【課題を解決するための手段】本明細書中では、一次系において逆浸透膜装置を中心としてその前段の水を被処理水、後段を処理水とし、二次系においては限外濾過膜装置を中心としてその前段の水を被処理水、後段を処理水とする。
【0012】上記目的は、被処理水を加圧下に逆浸透膜装置または限外濾過膜装置に供給して濾過操作を行う工程を含む純水の製造方法において、前記逆浸透膜装置の下流側で処理水の流量を測定し、該処理水の流量を必要量に応じた量に増減すべく、被処理水を加圧する圧力を制御することによって達成される。
【0013】さらに、上記目的は、被処理水を加圧下に逆浸透膜装置に供給して濾過操作を行って得た一次処理水を貯水槽に一旦貯留させ、この一次処理水を加圧下に限外濾過膜装置に供給して濾過操作を行い、得られた二次処理水をユースポイントに供給するようにした純水の製造方法において、(a)前記貯水槽の水位を測定し、該水位が所定の範囲を維持するよう、前記逆浸透膜装置に供給する被処理水を加圧する圧力を制御すること、(b)前記ユースポイントの前段の流量を測定し、この流量に基づいて前記限外濾過膜に供給する被処理水を加圧する圧力及び前記逆浸透膜装置に供給する被処理水を加圧する圧力を制御すること、(c)ユースポイントの前段の流量を測定し、この流量が所定の流量を維持するよう、前記限外濾過膜に供給する被処理水を加圧する圧力を制御するとともに、前記貯水槽の水位を測定し、この水位が所定のレベルを維持するよう、前記逆浸透膜装置に供給する被処理水を加圧する圧力を制御することによって達成される。」

ウ 「
【0019】本発明においては、ポンプは複数設置してもよく、特に、逆浸透膜装置を使用する一次処理系と限外濾過膜装置を使用する二次処理系とを貯水槽を介して連結してなる系では、第1のポンプを逆浸透膜装置の上流側に設置し、第2のポンプを限外濾過膜装置の上流側に設置し、ユースポイントからの還流を逆浸透膜装置と限外濾過膜装置の間に設置した貯水槽に供給する構成を採用することができる。このような構成を採用した場合には、逆浸透膜装置の下流側に第1の流量計、ユースポイントからの還流ラインに第2の流量計、貯水槽に水位計、例えばレベル計を設置して次のような任意の運転形態を採ることができる。
【0020】
▲1▼(当審注:原文での「1」を丸囲いした記号を意味する。以下同様。) 第1の流量計により流量を測定し、この流量が一定となるよう第1のポンプの回転数(圧力)を制御して透過水量を一定にする。
【0021】
▲2▼第2のポンプの回転数を一定として第2の流量計又は貯水槽の水位計を測定し第2の流量計又は水位計が一定範囲となるように第1のポンプの回転数を制御してユースポイントにおける使用量に応じた透過水量とする。
【0022】▲3▼第2の流量計で還流ラインの流量を測定しこの流量が一定範囲となるよう第2のポンプの回転数を制御するとともに、貯水槽の水位計で貯水槽の水位を測定し、この水位が一定範囲となるよう第1のポンプの回転数を制御してユースポイントにおける使用量に対応させて第1及び第2のポンプの回転数を制御してユースポイントで使用された分だけ純水を供給する。」

エ 「
【0027】
【実施例1】図1は、本発明の第1の実施例の構成を示すブロック図である。
【0028】同図において、タンク1には例えば市水のような原水が収容されており、この原水は第1の交流ポンプ2により逆浸透膜装置3に圧送されるようになっている。逆浸透膜装置3の下流側の配管には、第1の超音波流量計4が配設されている。第1の超音波流量計4の信号出力は第1のインバータ制御装置5に供給され、第1のインバータ制御装置5は予め必要量に応じた流量となるよう第1の交流ポンプ2の回転数を連続的に制御する。
【0029】真空脱気装置6は、真空度35Torr以下において、窒素ガスのような不活性ガスを被処理水の体積基準にして0.001〜11.0、好ましくは0.01〜0.05の体積流量比で送入しながら真空脱気して溶存揮発成分を除去する。紫外線照射装置7は、180〜190nmの波長を有する紫外線酸化用低圧紫外線ランプであり、この紫外線の照射により、被処理水中に溶存する有機物は有機酸あるいは二酸化炭素にまで分解される。
【0030】イオン交換装置8は、例えば、アニオン交換樹脂として強塩基性アニオン交換樹脂デュオライトA−113Plus(ローム&ハース杜)と、カチオン交換樹脂として強酸性カチオン交換樹脂デュオライトC−20(ローム&ハース社)とを使用し、これらを予め再生してOH型とH型とに変換した後に混合充填した混床式イオン交換装置が好適に使用される。
【0031】イオン交換装置8の下流には貯水槽9が配設されており、後述する第2の配管系10により還流された純水を一旦貯溜するようになっている。この貯水槽9にはレベル計11が設けられて貯水槽9内の純水の量を測定するようになっている。 第2の配管系10には第2の超音波流量計12が配設され還流される純水の量を測定するようになっている。
【0032】貯水槽9の下流は二次純水系となっており、貯水槽9の下流には、第2の交流ポンプ13、および第2のインバータ制御装置14が配設されている。第2の配管系10に設けた第2の超音波流量計12からの流量信号は、第2のインバータ制御装置14に供給され、第2のインバータ制御装置14により必要量に応じた流量となるよう第2の交流ポンプ13の回転数を制御する。
【0033】第2の交流ポンプ13の下流には、第2の紫外線照射装置15、第2のイオン交換装置16が配置され、さらに、その下流には限外濾過膜装置17が配設されている。限外濾過膜装置17としては、ポリアクリルニトリル、ポリアミド、ポリスルフオン等を主体とする種々の高分子を限外濾過膜として用いたものが使用可能である。
【0034】限外濾過膜装置17の下流にユースポイント18が配置され、これらの各装置は第1の配管系19により連結されている。
【0035】また、ユースポイント17の未使用水は第2の配管系10により貯水槽9に還流される。
【0036】このように構成された実施例の装置では、第1の貯水槽1に一旦貯溜された原水は第1の交流ポンプ2により加圧されて逆浸透膜装置3でイオン成分と微粒子成分が除去され、次いで真空脱気塔6で揮発成分が留去された後、紫外線照射装置7により有機物が分解され、分解により生じた有機酸成分はイオン交換装置8により除去されて一旦第2の貯水槽9に貯留される。
【0037】貯水槽9に貯留された純水は、第2の交流ポンプ13により紫外線照射装置15、イオン交換装置16、限外濾過膜装置17を順に経てユースポイント18に供給され、未使用純水は第2の配管系10を経て第2の貯水槽に還流される。」

オ 「
【0038】この実施例においては、次のモードにより運転を行うことができる。
【0039】(1)第1の流量計4の流量信号を第1のインバータ制御装置5に供給して必要量に応じた流量となるよう交流ポンプ2の回転数を制御する。
【0040】(2)第2のポンプの回転数を一定として第2の流量計又は貯水槽の水位計によりユースポイントで使用された分に対応する流量となるよう交流ポンプ2の回転数を制御する。
【0041】(3)第2の流量計及び貯水槽の水位計によりユースポイントでの使用に対応させて第2のポンプの回転数を制御する。その際、ユースポイントで使用された超純水を水位計で測定し、その信号を受けて第1のポンプの回転数を制御する。
【0042】(1)の運転モードでは、一次純水系内の流量が一定となるので、水温の変化による一次系の透過水量の変動がなくなる。
【0043】また、(2)の運転モードでは、二次純水系内の流量が一定の場合に、ユースポイントで使用された分の純水をユースポイントから戻る流量、及び貯水槽の水量を測定して逆浸透膜装置の透過水量をポンプの回転数を制御することにより対応させるため1次系内での循環及び間欠運転をしないで済み、これによってポンプ運転の電気代の削減及び逆浸透膜装置の運転停止による生菌の増加やポンプ急回転、急停止を防ぐことができる。
【0044】さらに、(3)の運転モードでは、ユースポイントで使用される分に対応して二次系のポンプが運転される。その際、貯水槽の水量を測定してユースポイントで使用された分に対応して一次純水系の逆浸透膜装置を運転するため、一次系、2次系ポンプの消費電力を抑えることが可能である。さらに、一次系のサークルラインは必要なく逆浸透膜装置が間欠運転しないため、生菌の増加やポンプの急回転、急停止がなくポンプ寿命を長くすることができる。」

カ 「
【図1】



(2)引用文献2に記載された発明
上記(1)ア〜カから、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「原水が収容されるタンク1と、第1の交流ポンプ2と、逆浸透膜装置3と、第1の超音波流量計4と、真空脱気装置6と、紫外線照射装置7と、イオン交換装置8とをこの順で配設され、イオン交換装置8の下流には貯水槽9が配設され、貯水槽9の下流は二次純水系となっており、第2の交流ポンプ13、第2の紫外線照射装置15、第2のイオン交換装置16、限外濾過膜装置17がこの順で配設され、限外濾過膜装置17の下流にユースポイント18が配置され、これらの各装置は第1の配管系19により連結されており、未使用純水は第2の配管系10を経て第2の貯水槽9に還流される純水の製造装置であって、第1の超音波流量計4の信号出力が供給され、予め必要量に応じた流量となるよう第1の交流ポンプ2の回転数を連続的に制御する第1のインバータ制御装置5、及び第2の配管系10に設けた第2の超音波流量計12の流量信号が供給され、必要量に応じた流量となるよう第2の交流ポンプ13の回転数を制御する第2のインバータ制御装置14とを有した純水の製造装置を用いて純水を製造する純水の製造方法において、
第1の流量計4の流量信号を第1のインバータ制御装置5に供給して必要量に応じた流量となるよう交流ポンプ2の回転数を制御する純水の製造方法。」

(3)本願発明1と引用発明2の対比及び判断
ア 引用発明2の「逆浸透膜装置3」、「真空脱気装置6」、「イオン交換装置8」は、それぞれ、本願発明1の「逆浸透膜分離装置」、「脱気装置」、「イオン交換装置」に相当する。

イ 上記(1)エ(段落【0029】)から、引用発明2の「紫外線照射装置7」は、紫外線酸化用低圧紫外線ランプから紫外線を照射し、被処理水中に溶存する有機物は有機酸あるいは二酸化炭素にまで分解(酸化)するものであるから、本願発明1の「紫外線酸化装置」に相当する。

ウ 引用発明2の「逆浸透膜装置3」、「真空脱気装置6」、「紫外線照射装置7」、及び「イオン交換装置8」は、この順に配設されるものであるから、本願発明1の「一次純水システム」に相当する。

エ 上記(1)エ(段落【0031】〜【0032】)及び(1)カから、引用発明2において、イオン交換装置8で処理された水が貯水槽9を介して、二次純水系である第2の交流ポンプ13、第2の紫外線照射装置15、第2のイオン交換装置16、及び限外濾過膜装置17で処理されていることは明らかであるから、引用発明2の「貯水槽9」及びその下流の「二次純水系」、すなわち、「第2の交流ポンプ13、第2の紫外線照射装置15、第2のイオン交換装置16、限外濾過膜装置17」は、本願発明1の「一次純水システムの処理水を処理するサブシステム」に相当する。

オ 引用発明2の「第1の超音波流量計4」は、本願発明1の「一次純水システムにおける水量及び/又は水質を監視するモニター」に相当する。

カ 引用発明2の「第1のインバータ制御装置5」は、第1の超音波流量計4の信号出力に応じて、第1の交流ポンプ2の回転数、すなわち、逆浸透膜装置3の運転条件を制御するものであるから、本願発明1の「該モニターで検出した値に応じて1以上の前記構成装置の運転条件を制御する制御手段」に相当する。

キ 引用発明2の「純水の製造装置」と本願発明1の「超純水製造装置」は、「純水製造装置」との点で一致し、引用発明2の「純水を製造する純水の製造方法」と本願発明1の「超純水を製造する超純水製造方法」は、「純水を製造する純水の製造方法」との点で一致する。

ク そうすると、本願発明1と引用発明2は、次の点で一致する。
<一致点>
「一次純水システムと、該一次純水システムの処理水を処理するサブシステムとを備え、
該一次純水システムが、構成装置として逆浸透膜分離装置、脱気装置、紫外線酸化装置、及びイオン交換装置をこの順で備える純水製造装置であって、該一次純水システムにおける水量及び/又は水質を監視するモニターと、該モニターで検出した値に応じて1以上の前記構成装置の運転条件を制御する制御手段とを有した純水製造装置を用いて純水を製造する純水の製造方法。」

ケ そして、本願発明1と引用発明2は、次の点で相違する。
<相違点4>
本願発明1では、原水を処理する前処理システムを有している超純水製造装置を用いる超純水製造方法であるのに対し、引用発明2では、純水の製造方法に用いる純水製造装置において、前記前処理システムを有していない点。

<相違点5>
本願発明1は超純水製造装置を用いる超純水製造方法であるのに対し、引用発明2は、純水の製造方法に用いる純水製造装置が超純水製造装置であるか不明である点。

<相違点6>
本願発明1では、脱気装置は、脱気膜と、該脱気膜により区画された液体室及び気体室と、該気体室へのスイープ用窒素ガスの導入手段と、該気体室を真空引きする真空ポンプとを有した膜脱気装置を備える超純水製造装置を用いる超純水製造方法であるのに対し、引用発明2では、純水の製造方法に用いる純水製造装置において、真空脱気装置6の具体的な構造が、前記脱気膜、気体室、導入手段、及び真空ポンプを有したものでない点。

<相違点7>
本願発明1では、電気再生式脱イオン装置を1段又は複数段直列に接続した電気再生型イオン交換装置を備える超純水製造装置を用いる超純水製造方法であるのに対し、引用発明2では、純水の製造方法に用いる純水製造装置において、イオン交換装置8の具体的な構造が前記電気再生型イオン交換装置でない点。

<相違点8>
本願発明1は超純水を製造する超純水製造方法であるのに対し、引用発明2は超純水を製造する超純水製造方法であるのか不明である点。

<相違点9>
本願発明1では、一次純水システムの処理水の比抵抗が所定値よりも低下した場合、以下のa〜dの制御を行うのに対し、引用発明2では、前記制御を行うことについて記載されておらず、前記制御を行うか不明である点。
a:前記逆浸透膜分離装置への給水量を増やすとともに、逆浸透膜分離装置の処理水の回収率を下げる。
b:脱気装置では、窒素ガスの導入量を増やし、また、真空ポンプの出力を上げて脱気装置の真空度を上げる。
c:紫外線酸化装置では、紫外線酸化装置への供給電流値を上昇させて有機物の分解を促進する。
d:電気再生型イオン交換装置では、濃縮水の流量を増やし、また、電気再生型イオン交換装置への供給電流値を上昇させて脱塩効率を上げる。

コ 以下、事案に鑑み、相違点9について検討する。
上記1(3)オ〜クにおける検討と同内容の理由で、引用発明2において、上記相違点9に係る本願発明1の発明特定事項とすることを動機付ける記載は、いずれの引用文献及び刊行物にも記載されておらず、さらに、上記dの制御が逆浸透膜分離装置及び電気再生型イオン交換装置における技術常識若しくは周知技術であるとも認められないから、上記相違点9に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえず、その結果、本願発明1は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本願発明2と引用発明2の対比及び判断
本願の請求項2は、本願の請求項1を直接に引用するものであるから、本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
ここで、上記(3)で検討したとおり、本願発明1は、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そうすると、本願発明2は、新たな一致点及び相違点の検討を行うまでもなく、引用発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3 引用文献3を主たる引用文献とする場合の本願発明の進歩性
(1)引用文献3の記載事項
引用文献3には、「水処理方法および装置」に関し、次の事項が記載されている。
ア 「
【0002】
従来より、半導体装置の製造工程や液晶表示装置の製造工程における洗浄水等の用途として、有機物、イオン成分、微粒子、細菌等が高度に除去された超純水等の純水が使用されている。特に、半導体装置を含む電子部品を製造する際には、その洗浄工程において多量の純水が使用されており、その水質に対する要求も年々高まっている。電子部品製造の洗浄工程等において使用される純水では、純水中に含まれる有機物がその後の熱処理工程において炭化して絶縁不良等を引き起こすことを防止するため、水質管理項目の一つである全有機炭素(TOC;Total Organic Carbon)濃度を極めて低いレベルとすることが求められている。
【0003】
このような純水水質への高度な要求が顕在化するに伴って、近年、純水中に含まれる微量の有機物(TOC成分)を分解し除去する様々な方法の検討がなされている。そのような方法の代表的なものとして、紫外線酸化処理による有機物の分解除去工程が用いられている。
・・・
【0006】
TOCの分解効率を上げるため、例えば特許文献1では、低圧紫外線酸化装置(低圧紫外線ランプによる酸化装置)を用いて被処理水中のTOCを除去する水処理装置として、低圧紫外線酸化装置の前段に、被処理水中に酸素ガスを添加する溶存酸素濃度調整工程を設けたものが提案されている。また特許文献2では、低圧紫外線酸化装置の前段において被処理水に所定量の過酸化水素(H2O2)を添加することが提案されている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
被処理水中のTOC成分を分解除去するために、一般に紫外線を照射してTOC成分を酸化させる処理が行われるが、被処理水中のTOCをどれだけ除去できたかという観点で検討すると、これまでの技術は必ずしも最適化されているとは言えない。特に、特許文献2に示されるように過酸化水素を添加した上で紫外線酸化処理を行う場合に、過酸化水素の添加量あるいは濃度以外の要因がTOC除去率に与える影響について、十分な検討がなされてきたとは言えない。そのため、被処理水でのTOC除去率を高めるようとするときに、過度に紫外線照射量を大きくすることとなって、必要電力量が大きくなり、エネルギーコストが上昇し、また装置規模も大きくなるという課題がある。
【0010】
本発明の目的は、装置の小型化が可能であって、エネルギーコストを含むランニングコストを抑えることができ、有機物の分解効率を向上させることができる水処理方法および装置を提供することにある。」

イ 「
【0016】
図1は、本発明に基づく水処理装置の基本的な構成を示している。図1に示す水処理装置は、被処理水に含まれる有機物を分解処理する水処理装置であり、被処理水が供給されて被処理水の溶存酸素(DO;Disolved oxygen)濃度を低減する脱酸素装置10と、脱酸素装置10の出口に接続され、被処理水に過酸化水素(H2O2)を添加する過酸化水素添加装置20と、過酸化水素添加装置20の出口に接続され、溶存酸素濃度が低減されて過酸化水素が添加された被処理水に対し紫外線を照射する紫外線照射装置30と、を備えている。紫外線照射装置30としては、185nm以下の波長を含む紫外線を照射して紫外線酸化処理を行う紫外線酸化装置を用いることが好ましい。図1に示す水処理装置では、紫外線照射装置30からの出口水が、この水処理装置によって処理されて外部に供給される水ということになる。
・・・
【0018】
脱酸素装置10としては、水に溶存する酸素(O2)を除去できるものであれば任意のものを用いることができるが、例えば、真空脱気装置、膜脱気装置および窒素脱気装置のいずれかを用いることができる。真空脱気装置、膜脱気装置および窒素脱気装置は、水中の溶存酸素濃度を低減すると同時に揮発性有機物や炭酸などを気相中に除去し、これらの水中の濃度を低減することができる点で好ましい。その他の脱酸素装置として、水素(H2)を添加した上でパラジウム(Pd)触媒によって酸素を水素と反応させて水とすることにより酸素を除去するものを用いることもできる。」

ウ 「
【0025】
図2に示した水処理装置では、脱酸素装置10の前段に逆浸透膜装置15を設けているが、紫外線酸化処理の負荷を低減するための逆浸透膜装置15の位置は、過酸化水素添加装置20の入口側であればいずれであってもよい。したがって、図3に示すように、脱酸素装置10と逆浸透膜装置15の位置を入れ替え、被処理水がまず脱酸素装置10に供給され、脱酸素装置10の出口水が逆浸透膜装置15を経て過酸化水素添加装置20に供給されるようにしてもよい。
【0026】
本発明においては、紫外線照射装置の出口側に、紫外線酸化処理での分解生成物や被処理水に由来するイオン性不純物を除去するためのイオン交換装置を設けるようにしてもよい。図4に示す水処理装置では、図2に示す水処理装置に対し、さらに、紫外線酸化装置31の出口水が供給されるイオン交換装置35が設けられている。イオン交換装置35からの出口水が、この水処理装置で処理されて外部に供給される水ということになる。
【0027】
被処理水に含まれる有機物には、紫外線酸化処理を受ける前の段階からイオン性である物質も含まれるが、H2O2を添加して行う紫外線酸化処理によって、各種の有機酸や炭酸などのイオン性物質が生成する。イオン交換装置35は、これらのイオン性物質を除去する。イオン交換装置35は、例えば、イオン交換樹脂が充填されたイオン交換塔で構成される。紫外線酸化装置31の出口水におけるイオン性不純物の濃度が大きい場合には、再生型のイオン交換装置を用いることが好ましい。紫外線酸化処理による反応生成物である有機酸や炭酸は水中では陰イオンの形態をとるので、イオン交換装置35に用いられるイオン交換樹脂は、少なくとも陰イオン交換樹脂である。有機酸や炭酸は弱酸であるため、これらを確実に除去するために、陰イオン交換樹脂として強塩基性陰イオン交換樹脂を用いることが好ましい。さらに、イオン交換樹脂として、陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂との混合樹脂を用いたり、イオン交換塔として、混合樹脂が充填された混床式イオン交換塔を用いることによって、高純度の処理水を得ることができる。」

エ 「
【図4】



(2)引用文献3に記載された発明
上記(1)ア〜エから、引用文献3には、図4に示す水処理装置に注目すると、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「逆浸透膜装置15、膜脱気装置を用いた脱酸素装置10、紫外線酸化装置を用いた紫外線照射装置31、再生型のイオン交換装置を用いたイオン交換装置35をこの順で備える水処理装置を用いて水を製造する水製造方法。」

(3)本願発明1と引用発明3の対比及び判断
ア 引用発明3の「逆浸透膜装置15」、「膜脱気装置を用いた脱酸素装置10」、「紫外線酸化装置を用いた紫外線照射装置30」、「再生型のイオン交換装置を用いたイオン交換装置35」は、それぞれ、本願発明1の「逆浸透膜分離装置」、「脱気装置」、「紫外線酸化装置」、「イオン交換装置」に相当する。

イ 引用発明3の「逆浸透膜装置15」、「膜脱気装置を用いた脱酸素装置10」、「紫外線酸化装置を用いた紫外線照射装置31」、「再生型のイオン交換装置を用いたイオン交換装置35」は、この順で備えるものであるから、本願発明1の「一次純水システム」に相当する。

ウ 引用発明3の「膜脱気装置」は、脱気膜を用いるものであることは明らかであるから、本願発明1の「脱気膜」「を有した膜脱気装置」に相当する。

エ 引用発明3の「水処理装置」と本願発明1の「超純水製造装置」は、「水処理装置」との点で一致し、引用発明3の「水を製造する水製造方法」と本願発明1の「超純水を製造する超純水製造方法」は、「水を製造する水製造方法」との点で一致する。

オ そうすると、本願発明1と引用発明3は、次の点で一致する。
<一致点>
「一次純水システムを備え、
該一次純水システムが、構成装置として逆浸透膜分離装置、脱気装置、紫外線酸化装置、及びイオン交換装置をこの順で備え、脱気装置は、脱気膜を有した膜脱気装置である水処理装置を用いて水を製造する水製造方法。」

カ そして、本願発明1と引用発明3は、次の点で相違する。
<相違点10>
本願発明1では、原水を処理する前処理システムを有している超純水製造装置を用いる超純水製造方法であるのに対し、引用発明3では、水の製造方法に用いる水処理装置において、前記前処理システムを有していない点。

<相違点11>
本願発明1では、一次純水システムの処理水を処理するサブシステムを有している超純水製造装置を用いる超純水製造方法であるのに対し、引用発明3では、水の製造方法に用いる水処理装置において、前記サブシステムを有していない点。

<相違点12>
本願発明1は超純水製造装置を用いる超純水製造方法であるのに対し、引用発明3は、水の製造方法に用いる水処理装置が超純水製造装置であるか不明である点。

<相違点13>
本願発明1では、脱気装置が、脱気膜と、該脱気膜により区画された液体室及び気体室と、該気体室へのスイープ用窒素ガスの導入手段と、該気体室を真空引きする真空ポンプとを有した膜脱気装置を備える超純水製造装置を用いる超純水製造方法であるのに対し、引用発明3では、水の製造方法に用いる水処理装置において、脱気膜により区画された液体室及び気体室、該気体室へのスイープ用窒素ガスの導入手段、及び該気体室を真空引きする真空ポンプについて記載されておらず、これらを有しているか不明である点。

<相違点14>
本願発明1では、電気再生式脱イオン装置を1段又は複数段直列に接続した電気再生型イオン交換装置を備える超純水製造装置を用いる超純水製造方法であるのに対し、引用発明3では、水の製造方法に用いる水処理装置において、再生型のイオン交換装置を用いたイオン交換装置35が、前記電気再生型イオン交換装置でない点。

<相違点15>
本願発明1は超純水を製造する超純水製造方法であるのに対し、引用発明3は超純水を製造する超純水製造方法であるのか不明である点。

<相違点16>
本願発明1では、一次純水システムの処理水の比抵抗が所定値よりも低下した場合、以下のa〜dの制御を行うのに対し、引用発明3では、前記制御を行うことについて記載されておらず、前記制御を行うか不明である点。
a:前記逆浸透膜分離装置への給水量を増やすとともに、逆浸透膜分離装置の処理水の回収率を下げる。
b:脱気装置では、窒素ガスの導入量を増やし、また、真空ポンプの出力を上げて脱気装置の真空度を上げる。
c:紫外線酸化装置では、紫外線酸化装置への供給電流値を上昇させて有機物の分解を促進する。
d:電気再生型イオン交換装置では、濃縮水の流量を増やし、また、電気再生型イオン交換装置への供給電流値を上昇させて脱塩効率を上げる。

カ 以下、事案に鑑み、相違点16について検討する。
上記1(3)オ〜クにおける検討と同内容の理由で、引用発明3において、上記相違点16に係る本願発明1の発明特定事項とすることを動機付ける記載は、いずれの引用文献及び刊行物にも記載されておらず、さらに、上記dの制御が逆浸透膜分離装置及び電気再生型イオン交換装置における技術常識若しくは周知技術であるとも認められないから、上記相違点16に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえず、その結果、本願発明1は、引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本願発明2と引用発明3の対比及び判断
本願の請求項2は、本願の請求項1を直接に引用するものであるから、本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
ここで、上記(3)で検討したとおり、本願発明1は、引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そうすると、本願発明2は、新たな一致点及び相違点の検討を行うまでもなく、引用発明3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 引用文献4を主たる引用文献とする場合の本願発明の進歩性
(1)引用文献4の記載事項
引用文献4には、「純水製造装置」に関し、次の事項が記載されている。
ア 「
【0001】
本発明は、RO装置(逆浸透膜装置)及びイオン交換装置を用いた純水製造装置に関する。」

イ 「
【0010】
本発明は、RO処理した後イオン交換処理して純水を製造する装置において、イオン交換装置から高水質のイオン交換処理水を得ることができる純水製造装置を提供することを目的とする。」

ウ 「
【0032】
本発明の純水製造装置は、RO装置とイオン交換装置のみで構成されてもよいが、さらにUV酸化装置や脱気装置を備えてもよい。例えば、前記RO装置の後段にUV酸化器が設置されており、有機物を有機酸、重炭酸イオン、炭酸イオン化することによりアニオン交換樹脂への流入水のトータルアニオン量を0.5mg/L−asCaCO3以上(望ましくは1.6mg/L−asCaCO3以上)にするように構成されていてもよい。
【0033】
本発明の純水製造装置の好適なフローを例示すると次の(i)〜(vi)の通りである。
(i) RO → イオン交換装置
(ii) RO → UV酸化 → イオン交換装置
(iii) RO → 脱気装置 → イオン交換装置
(iv) RO → 脱気装置 − UV酸化 → イオン交換装置
(v) 脱気装置 → RO → イオン交換装置
(vi) 脱気装置 → RO → UV酸化 → 新イオン交換装置
【0034】
脱気装置としては脱炭酸塔、真空脱気装置、膜脱気装置、窒素脱気装置などを用いることができる。」

(2)引用文献4に記載された発明
上記(1)ア〜ウから、引用文献4には、(iv)に示される純水製造装置のフローにおける純水製造方法に注目すると、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「逆浸透膜装置、膜脱気装置を用いた脱気装置、UV酸化装置、イオン交換装置をこの順で備える純水製造装置を用いて純水を製造する純水製造方法。」

(3)本願発明1と引用発明4の対比及び判断
ア 引用発明4の「逆浸透膜装置」、「膜脱気装置を用いた脱気装置」、「UV酸化装置」、「イオン交換装置」は、それぞれ、本願発明1の「逆浸透膜分離装置」、「脱気装置」、「紫外線酸化装置」、「イオン交換装置」に相当する。

イ 引用発明4の「逆浸透膜装置」、「膜脱気装置を用いた脱気装置」、「UV酸化装置」、「イオン交換装置」は、この順で備えるものであるから、本願発明1の「一次純水システム」に相当する。

ウ 引用発明4の「膜脱気装置」は、脱気膜を用いるものであることは明らかであるから、本願発明1の「脱気膜」「を有した膜脱気装置」に相当する。

エ 引用発明4の「純水製造装置」と本願発明1の「超純水製造装置」は、「純水製造装置」との点で一致し、引用発明4の「純水を製造する純水製造方法」と本願発明1の「超純水を製造する超純水製造方法」は、「純水を製造する純水製造方法」との点で一致する。

オ そうすると、本願発明1と引用発明4は、次の点で一致する。
<一致点>
「一次純水システムを備え、
該一次純水システムが、構成装置として逆浸透膜分離装置、脱気装置、紫外線酸化装置、及びイオン交換装置をこの順で備え、脱気装置は、脱気膜を有した膜脱気装置である純水製造装置を用いて純水を製造する純水製造方法。」

カ そして、本願発明1と引用発明3は、次の点で相違する。
<相違点17>
本願発明1では、原水を処理する前処理システムを有している超純水製造装置を用いる超純水製造方法であるのに対し、引用発明4では、純水の製造方法に用いる純水製造装置において、前記前処理システムを有していない点。

<相違点18>
本願発明1では、一次純水システムの処理水を処理するサブシステムを有している超純水製造装置を用いる超純水製造方法であるのに対し、引用発明4では、純水の製造方法に用いる純水製造装置において、前記サブシステムを有していない点。

<相違点19>
本願発明1は超純水製造装置を用いる超純水製造方法であるのに対し、引用発明4は、純水の製造方法に用いる純水製造装置が、超純水製造装置であるか不明である点。

<相違点20>
本願発明1では、脱気装置が、脱気膜と、該脱気膜により区画された液体室及び気体室と、該気体室へのスイープ用窒素ガスの導入手段と、該気体室を真空引きする真空ポンプとを有した膜脱気装置を備える超純水製造装置を用いる超純水製造方法であるのに対し、引用発明4では、純水の製造方法に用いる純水製造装置において、脱気膜により区画された液体室及び気体室、該気体室へのスイープ用窒素ガスの導入手段、及び該気体室を真空引きする真空ポンプについて記載されておらず、これらを有しているか不明である点。

<相違点21>
本願発明1では、電気再生式脱イオン装置を1段又は複数段直列に接続した電気再生型イオン交換装置を備える超純水製造装置を用いる超純水製造方法であるのに対し、引用発明4では、純水の製造方法に用いる純水製造装置において、イオン交換装置が、前記電気再生型イオン交換装置であるか不明である点。

<相違点22>
本願発明1は超純水を製造する超純水製造方法であるのに対し、引用発明4は超純水を製造する超純水製造方法であるのか不明である点。

<相違点23>
本願発明1では、一次純水システムの処理水の比抵抗が所定値よりも低下した場合、以下のa〜dの制御を行うのに対し、引用発明4では、前記制御を行うことについて記載されておらず、前記制御を行うか不明である点。
a:前記逆浸透膜分離装置への給水量を増やすとともに、逆浸透膜分離装置の処理水の回収率を下げる。
b:脱気装置では、窒素ガスの導入量を増やし、また、真空ポンプの出力を上げて脱気装置の真空度を上げる。
c:紫外線酸化装置では、紫外線酸化装置への供給電流値を上昇させて有機物の分解を促進する。
d:電気再生型イオン交換装置では、濃縮水の流量を増やし、また、電気再生型イオン交換装置への供給電流値を上昇させて脱塩効率を上げる。

カ 以下、事案に鑑み、相違点23について検討する。
上記1(3)オ〜クにおける検討と同内容の理由で、引用発明4において、上記相違点23に係る本願発明1の発明特定事項とすることを動機付ける記載は、いずれの引用文献及び刊行物にも記載されておらず、さらに、上記dの制御が逆浸透膜分離装置及び電気再生型イオン交換装置における技術常識若しくは周知技術であるとも認められないから、上記相違点23に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえず、その結果、本願発明1は、引用発明4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本願発明2と引用発明4の対比及び判断
本願の請求項2は、本願の請求項1を直接に引用するものであるから、本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
ここで、上記(3)で検討したとおり、本願発明1は、引用発明4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
そうすると、本願発明2は、新たな一致点及び相違点の検討を行うまでもなく、引用発明4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5 結論
以上から、本願発明は、引用発明1〜4に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、原査定の拒絶理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2022-11-07 
出願番号 P2020-023619
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C02F)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 粟野 正明
太田 一平
発明の名称 超純水製造装置及び超純水製造方法  
代理人 重野 剛  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ