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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1391541
総通号数 12 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2022-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-17 
確定日 2022-10-31 
事件の表示 特願2017−149454「ゲームプログラム、記録媒体、ゲーム処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年2月21日出願公開、特開2019−25149〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、特許法第30条第2項(発明の新規性喪失の例外)の規定を受けようとする旨を願書に記載して平成29年8月1日にされた出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年 3月19日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 5月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年 7月 5日付け:拒絶査定(謄本送達日:令和3年7月12日)
令和 3年 9月17日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 令和3年9月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
令和3年9月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正は、特許請求の範囲の全文を対象とする補正であり、本件補正により、特許請求の範囲は次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「 【請求項1】
情報処理装置を、
プレイヤが操作可能な第1オブジェクトを前記プレイヤの操作入力に連動してリアルタイムに行動させる第1オブジェクト行動処理部、
所定の条件が満たされた場合に、前記第1オブジェクトと行動を共にする少なくとも1つの第2オブジェクトを前記プレイヤの操作入力に基づいて選択するオブジェクト選択処理部、
選択された少なくとも1つの前記第2オブジェクトを、前記第2オブジェクトごとに設定された固有の動作により前記第1オブジェクトと同じ種類の行動を行うように、前記第1オブジェクトと連動させ、前記第1オブジェクト及び前記少なくとも1つの第2オブジェクトのそれぞれに前記プレイヤの操作入力に連動してリアルタイムに当該操作入力に対応した前記同じ種類の行動を実行させることにより、前記プレイヤが前記第1オブジェクトを操作することによって前記少なくとも1つの第2オブジェクトを間接的に操作することを可能とするオブジェクト連動処理部、
として機能させる、ゲームプログラム。
【請求項2】
前記情報処理装置を、
前記オブジェクト選択処理部により選択された際に、選択された前記第2オブジェクトを前記第1オブジェクトに切り替えると共に、当該切り替え前の前記第1オブジェクトを前記第2オブジェクトに切り替えるオブジェクト切替処理部、
としてさらに機能させる、
請求項1に記載のゲームプログラム。
【請求項3】
前記情報処理装置を、
前記第2オブジェクトを前記ゲームプログラムにより規定される所定のアルゴリズムに基づいて行動させる第2オブジェクト行動処理部、
前記オブジェクト選択処理部により選択された際に、選択された前記第2オブジェクトの制御を前記第2オブジェクト行動処理部から前記第1オブジェクト行動処理部に切り替える制御切替処理部、
としてさらに機能させる、
請求項2に記載のゲームプログラム。
【請求項4】
前記情報処理装置を、
前記オブジェクト連動処理部により連動される前記第1オブジェクトと少なくとも1つの前記第2オブジェクトとを、前記第1オブジェクトが画面の略中央位置となる所定の陣形となるように配置させるオブジェクト配置処理部、
としてさらに機能させ、
前記オブジェクト連動処理部は、
前記所定の陣形の配置を維持した状態で前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトとを連動させる、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のゲームプログラム。
【請求項5】
前記情報処理装置を、
前記オブジェクト配置処理部により前記第1オブジェクトと前記所定の陣形となるように配置された前記第2オブジェクトが障害物と接触した場合に、前記第2オブジェクトの位置を前記第1オブジェクト側にスライドするように補正する位置補正処理部、
としてさらに機能させる、
請求項4に記載のゲームプログラム。
【請求項6】
前記情報処理装置を、
前記オブジェクト配置処理部により前記所定の陣形となるように配置された前記第1オブジェクト及び前記第2オブジェクトの相互間に、連動していることを表す連動表示を行う連動表示処理部、
としてさらに機能させる、
請求項4又は5に記載のゲームプログラム。
【請求項7】
前記情報処理装置を、
前記オブジェクト連動処理部により前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトとが連動して攻撃を行う場合に、前記第1オブジェクトによる攻撃が敵オブジェクトに当たるタイミングと前記第2オブジェクトによる攻撃が前記敵オブジェクトに当たるタイミングとが略同時となるように、前記第1オブジェクトの動作と前記第2オブジェクトの動作の同期をとる動作同期処理部、
としてさらに機能させる、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のゲームプログラム。
【請求項8】
情報処理装置を、
プレイヤが操作可能な第1オブジェクトを前記プレイヤの操作入力に基づいて行動させる第1オブジェクト行動処理部、
所定の条件が満たされた場合に、前記第1オブジェクトと行動を共にする少なくとも1つの第2オブジェクトを前記プレイヤの操作入力に基づいて選択するオブジェクト選択処理部、
選択された少なくとも1つの前記第2オブジェクトを、前記第2オブジェクトごとに設定された固有の動作により前記第1オブジェクトと同じ種類の行動を行うように、前記第1オブジェクトと連動させることにより、前記プレイヤが前記第1オブジェクトを操作することによって前記少なくとも1つの第2オブジェクトを間接的に操作することを可能とするオブジェクト連動処理部、
前記オブジェクト選択処理部による選択対象である前記第2オブジェクトごとに設定された第1ゲージ及び第2ゲージを制御するゲージ制御処理部、
として機能させ、
前記オブジェクト選択処理部は、
前記ゲージ制御処理部により前記第1ゲージが所定量以上となった場合に前記第2オブジェクトの選択を可能とし、
前記オブジェクト連動処理部は、
前記ゲージ制御処理部により前記第2ゲージが所定量以下となった場合に連動を解除し、
前記ゲージ制御処理部は、
前記オブジェクト選択処理部により前記第2オブジェクトが選択される度に全ての前記第2ゲージを満タンにする、
ゲームプログラム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のゲームプログラムを記録した、情報処理装置が読み取り可能な記録媒体。
【請求項10】
情報処理装置によって実行されるゲーム処理方法であって、
プレイヤが操作可能な第1オブジェクトを前記プレイヤの操作入力に連動してリアルタイムに行動させるステップと、
所定の条件が満たされた場合に、前記第1オブジェクトと行動を共にする少なくとも1つの第2オブジェクトを前記プレイヤの操作入力に基づいて選択するステップと、
選択された少なくとも1つの前記第2オブジェクトを、前記第2オブジェクトごとに設定された固有の動作により前記第1オブジェクトと同じ種類の行動を行うように、前記第1オブジェクトと連動させ、前記第1オブジェクト及び前記少なくとも1つの第2オブジェクトのそれぞれに前記プレイヤの操作入力に連動してリアルタイムに当該操作入力に対応した前記同じ種類の行動を実行させることにより、前記プレイヤが前記第1オブジェクトを操作することによって前記少なくとも1つの第2オブジェクトを間接的に操作することを可能とするステップと、
を有する、ゲーム処理方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和3年5月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
情報処理装置を、
プレイヤが操作可能な第1オブジェクトを前記プレイヤの操作入力に基づいて行動させる第1オブジェクト行動処理部、
所定の条件が満たされた場合に、前記第1オブジェクトと行動を共にする少なくとも1つの第2オブジェクトを前記プレイヤの操作入力に基づいて選択するオブジェクト選択処理部、
選択された少なくとも1つの前記第2オブジェクトを、前記第2オブジェクトごとに設定された固有の動作により前記第1オブジェクトと同じ種類の行動を行うように、前記第1オブジェクトと連動させることにより、前記プレイヤが前記第1オブジェクトを操作することによって前記少なくとも1つの第2オブジェクトを間接的に操作することを可能とするオブジェクト連動処理部、
として機能させる、ゲームプログラム。
【請求項2】
前記情報処理装置を、
前記オブジェクト選択処理部により選択された際に、選択された前記第2オブジェクトを前記第1オブジェクトに切り替えると共に、当該切り替え前の前記第1オブジェクトを前記第2オブジェクトに切り替えるオブジェクト切替処理部、
としてさらに機能させる、
請求項1に記載のゲームプログラム。
【請求項3】
前記情報処理装置を、
前記第2オブジェクトを前記ゲームプログラムにより規定される所定のアルゴリズムに基づいて行動させる第2オブジェクト行動処理部、
前記オブジェクト選択処理部により選択された際に、選択された前記第2オブジェクトの制御を前記第2オブジェクト行動処理部から前記第1オブジェクト行動処理部に切り替える制御切替処理部、
としてさらに機能させる、
請求項2に記載のゲームプログラム。
【請求項4】
前記情報処理装置を、
前記オブジェクト連動処理部により連動される前記第1オブジェクトと少なくとも1つの前記第2オブジェクトとを、前記第1オブジェクトが画面の略中央位置となる所定の陣形となるように配置させるオブジェクト配置処理部、
としてさらに機能させ、
前記オブジェクト連動処理部は、
前記所定の陣形の配置を維持した状態で前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトとを連動させる、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のゲームプログラム。
【請求項5】
前記情報処理装置を、
前記オブジェクト配置処理部により前記第1オブジェクトと前記所定の陣形となるように配置された前記第2オブジェクトが障害物と接触した場合に、前記第2オブジェクトの位置を前記第1オブジェクト側にスライドするように補正する位置補正処理部、
としてさらに機能させる、
請求項4に記載のゲームプログラム。
【請求項6】
前記情報処理装置を、
前記オブジェクト配置処理部により前記所定の陣形となるように配置された前記第1オブジェクト及び前記第2オブジェクトの相互間に、連動していることを表す連動表示を行う連動表示処理部、
としてさらに機能させる、
請求項4又は5に記載のゲームプログラム。
【請求項7】
前記情報処理装置を、
前記オブジェクト連動処理部により前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトとが連動して攻撃を行う場合に、前記第1オブジェクトによる攻撃が敵オブジェクトに当たるタイミングと前記第2オブジェクトによる攻撃が前記敵オブジェクトに当たるタイミングとが略同時となるように、前記第1オブジェクトの動作と前記第2オブジェクトの動作の同期をとる動作同期処理部、
としてさらに機能させる、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のゲームプログラム。
【請求項8】
前記情報処理装置を、
前記オブジェクト選択処理部による選択対象である前記第2オブジェクトごとに設定された第1ゲージ及び第2ゲージを制御するゲージ制御処理部、
としてさらに機能させ、
前記オブジェクト選択処理部は、
前記ゲージ制御処理部により前記第1ゲージが所定量以上となった場合に前記第2オブジェクトの選択を可能とし、
前記オブジェクト連動処理部は、
前記ゲージ制御処理部により前記第2ゲージが所定量以下となった場合に連動を解除する、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のゲームプログラム。
【請求項9】
前記ゲージ制御処理部は、
前記オブジェクト選択処理部により前記第2オブジェクトが選択される度に全ての前記第2ゲージを満タンにする、
請求項8に記載のゲームプログラム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のゲームプログラムを記録した、情報処理装置が読み取り可能な記録媒体。
【請求項11】
情報処理装置によって実行されるゲーム処理方法であって、
プレイヤが操作可能な第1オブジェクトを前記プレイヤの操作入力に基づいて行動させるステップと、
所定の条件が満たされた場合に、前記第1オブジェクトと行動を共にする少なくとも1つの第2オブジェクトを前記プレイヤの操作入力に基づいて選択するステップと、
選択された少なくとも1つの前記第2オブジェクトを、前記第2オブジェクトごとに設定された固有の動作により前記第1オブジェクトと同じ種類の行動を行うように、前記第1オブジェクトと連動させることにより、前記プレイヤが前記第1オブジェクトを操作することによって前記少なくとも1つの第2オブジェクトを間接的に操作することを可能とするステップと、
を有する、ゲーム処理方法。」

(3)補正事項
上記(1)及び(2)のとおり、本件補正は、請求項1における下記の補正事項を含む。

ア 本件補正前の請求項1の「プレイヤが操作可能な第1オブジェクトを前記プレイヤの操作入力に基づいて行動させる第1オブジェクト行動処理部」との記載に対して、「基づいて」を「連動してリアルタイムに」と限定すること(以下、「補正事項1」という)。

イ 本件補正前の請求項1の「選択された少なくとも1つの前記第2オブジェクトを、前記第2オブジェクトごとに設定された固有の動作により前記第1オブジェクトと同じ種類の行動を行うように、前記第1オブジェクトと連動させること」との記載における「同じ種類の行動」を行うように「連動」することに関して、その対象を「前記第1オブジェクト及び前記少なくとも1つの第2オブジェクトのそれぞれ」に、その契機を「プレイヤの操作入力」に、その態様を「リアルタイムに当該操作入力に対応した」態様に限定する特定を加えること(以下、「補正事項2」という)。

2 補正の適否
本件補正の補正事項1〜2は、願書に最初に添付した明細書の段落【0017】、【0026】、【0113】の記載に基づくものであり、新たな技術事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、本件補正の補正事項1〜2は、本件補正前の請求項1〜2に記載された発明特定事項について、上記第2の[理由]1(3)のとおりの限定を付加するものであって、補正前の請求項1〜2に記載された発明と補正後の請求項1〜2に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項2に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、再掲すると「1(1)」において示した、次のとおりのものであると認める(記号A〜Hは分節するため当審判合議体で付した。)。

「A 情報処理装置を、
B プレイヤが操作可能な第1オブジェクトを前記プレイヤの操作入力に連動してリアルタイムに行動させる第1オブジェクト行動処理部、
C 所定の条件が満たされた場合に、前記第1オブジェクトと行動を共にする少なくとも1つの第2オブジェクトを前記プレイヤの操作入力に基づいて選択するオブジェクト選択処理部、
D 選択された少なくとも1つの前記第2オブジェクトを、前記第2オブジェクトごとに設定された固有の動作により前記第1オブジェクトと同じ種類の行動を行うように、前記第1オブジェクトと連動させ、
E 前記第1オブジェクト及び前記少なくとも1つの第2オブジェクトのそれぞれに前記プレイヤの操作入力に連動してリアルタイムに当該操作入力に対応した前記同じ種類の行動を実行させることにより、
F 前記プレイヤが前記第1オブジェクトを操作することによって前記少なくとも1つの第2オブジェクトを間接的に操作することを可能とするオブジェクト連動処理部、
として機能させる、ゲームプログラムであって、
G 前記情報処理装置を、前記オブジェクト選択処理部により選択された際に、選択された前記第2オブジェクトを前記第1オブジェクトに切り替えると共に、当該切り替え前の前記第1オブジェクトを前記第2オブジェクトに切り替えるオブジェクト切替処理部、
H としてさらに機能させる、ゲームプログラム。」

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2013−13450号公報(平成25年1月24日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は当審が付したものである。

「【0022】
1.構成
図1に本実施形態の端末10(画像生成装置、ゲーム装置、携帯電話、携帯端末、携帯型ゲーム装置、スマートフォン)の機能ブロック図の例を示す。なお本実施形態の端末は図1の構成要素(各部)の一部を省略した構成としてもよい。」
「【0026】
情報記憶媒体180(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、その機能は、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、或いはメモリ(ROM)などにより実現できる。処理部100は、情報記憶媒体180に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う。情報記憶媒体180には、本実施形態の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム(各部の処理をコンピュータに実行させるためのプログラム)を記憶することができる。」
「【0031】
処理部100(プロセッサ)は、入力部160からの入力データやプログラムなどに基づいて、ゲーム処理、画像生成処理、或いは音生成処理などの処理を行う。」
「【0034】
受け付け部110は、プレーヤの入力情報を受け付ける処理を行う。例えば、プレーヤオブジェクト(プレーヤの操作対象のオブジェクト)の移動を制御するための移動用の入力情報を受け付ける処理や、プレーヤオブジェクトが敵オブジェクトに対して攻撃を行う攻撃用入力情報を受け付ける処理や、複数のオブジェクトの中から、プレーヤの操作対象のオブジェクト(プレーヤオブジェクト)の選択を受け付ける処理、ターゲット(目標、攻撃対象)とする一の敵オブジェクトの選択を受け付ける処理や、主従関係(リンク)の対象のオブジェクトを選択する処理を受け付ける処理、攻撃技の選択を受け付ける処理を行う。また、受け付け部110は、主従関係を解除する入力情報を受け付ける処理、主従関係の切り替えの入力情報を受け付ける処理を行う。」
「【0037】
オブジェクト制御部112は、オブジェクトの位置制御、移動制御、攻撃制御、防御制御等を行う。例えば、オブジェクト制御部112は、オブジェクト空間にあるオブジェクトの移動・動作演算を行う。すなわち入力部160から受け付けた入力情報や、プログラム(移動・動作アルゴリズム)や、各種データ(モーションデータ)などに基づいて、オブジェクトをオブジェクト空間内で移動させたり、オブジェクトを動作(モーション、アニメーション)させたりする処理を行う。」
「【0039】
本実施形態のオブジェクト制御部112は、決定された行動パターンに基づいて、従オブジェクトを自動制御する。例えば、オブジェクト制御部112は、主オブジェクトの位置と敵オブジェクトの位置とに基づき求められる線に基づいて、従オブジェクトの位置制御又は移動制御を行う。本実施形態では、「主オブジェクトの位置と敵オブジェクトの位置とに基づき求められる線」は、主オブジェクトの位置と敵オブジェクトの位置とを通る線であり、直線である。なお、「主オブジェクトの位置と敵オブジェクトの位置とに基づき求められる線」は、障害物などのオブジェクトを迂回する線、曲線、折れ線等でもよい。」
「【0047】
また、主従関係設定部113は、第1のプレーヤの操作対象の第1のプレーヤオブジェクトと第2のプレーヤの操作対象の第2のプレーヤオブジェクトとのうち、入力情報に基づき主従関係の申し込みを先に行ったオブジェクトを従オブジェクトとして設定し、他方のオブジェクトを主オブジェクトとして設定するようにしてもよい。」
「【0050】
行動決定部114は、主オブジェクトの状態を参照して、複数種類の行動パターンの中から従オブジェクトの行動パターンを決定する。例えば、主オブジェクトのパラメータを参照して、複数種類の行動パターンの中から従オブジェクトの行動パターンを決定する。」
「【0111】
また、本実施形態では、第1のプレーヤの操作対象の第1のプレーヤオブジェクトと第2のプレーヤの操作対象の第2のプレーヤオブジェクトとのうち、入力情報に基づき主従関係の申し込みを先に行ったオブジェクトを従オブジェクトとして設定し、他方のオブジェクトを主オブジェクトとして設定する。」
「【0112】
例えば、第1のプレーヤの操作対象のオブジェクトがCH1であり、第2のプレーヤの操作対象のオブジェクトがCH2であるとすると、CH1と同じグループであるオブジェクトCH2〜CH4の中から、第1のプレーヤの入力情報に基づき、第2のプレーヤよりも先にオブジェクトCH2を主従関係の対象とする選択を受け付けると、CH1が従オブジェクト、CH2が主オブジェクトとなるように設定する。つまり、第1のプレーヤの操作対象のオブジェクトCH1は従オブジェクトになると自動制御されることになるが、第1のプレーヤ自身が申込みをすることによって、従オブジェクトCH1として自動制御することになるから、第1のプレーヤに不満を与えることはない。また、主従関係が成立した場合に、主オブジェクトCH2を主に制御することができるから、第2のプレーヤの満足度の高いゲーム環境を提供できる。」
「【0115】
4.行動パターンに基づくオブジェクトの制御
本実施形態では、主従関係が設定されると、主オブジェクトの状態を参照して、複数種類の行動パターンの中から、従オブジェクトの行動パターンを決定する処理を行う。そして、決定された行動パターン(行動類型)に基づいて、従オブジェクトの制御を行っている。例えば、主オブジェクトがCH1、従オブジェクトがCH2、主オブジェクトの標的(ターゲット、攻撃目標)が敵オブジェクトE1である場合を例にとり、以下、説明する。」
「【0141】
4.6 行動パターンの例6
4.6.1 通常攻撃
本実施形態では、主オブジェクトCH1が敵オブジェクトE1から攻撃を受けている場合、又は、主オブジェクトCH1が敵オブジェクトE1を攻撃している場合に、従オブジェクトCH2の行動パターンを、通常攻撃パターン(広義には、「攻撃制御パターン」)に決定する。例えば、主オブジェクトCH1のHP値、或いは、AC値を参照し、HP値、或いは、AC値が減少している場合に、従オブジェクトCH2に攻撃を行わせる。」
「【0142】
つまり、図15に示すように、通常攻撃パターンの場合は、敵オブジェクトE1又は主オブジェクトCH1の位置に基づき、従オブジェクトCH2の位置制御又は移動制御を行い、当該敵オブジェクトE1に対して攻撃する従オブジェクトの攻撃制御を行う。
【0143】
例えば、従オブジェクトCH2を、敵オブジェクトE1に向かって、従オブジェクトCH2を移動させる移動制御を行い、従オブジェクトCH2が敵オブジェクトE1に対して攻撃を行う攻撃制御を行う。
【0144】
また、本実施形態では、従オブジェクトCH2、主オブジェクトCH1の周囲に位置させる位置制御又は移動制御を行い、主オブジェクトCH1の有する攻撃、従オブジェクトCH2の有する攻撃を合わせた合体攻撃を、敵オブジェクトE1に対して行う攻撃制御を行うようにしてもよい。」

「【図15】



(イ)認定事項
上記(ア)から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されていると認められる。

ア プログラムは、オブジェクト制御部112、主従関係設定部113として端末10を機能させること(【0022】、【0026】、【0037】、【0047】)(認定事項ア)。

イ オブジェクト制御部112は、プレーヤの操作対象のオブジェクトを前記プレーヤの入力情報に基づいて移動させたり動作させたりすること(【0034】、【0037】)(認定事項イ)。

ウ 第1のプレーヤの操作対象のオブジェクトがCH1であり、第2のプレーヤの操作対象のオブジェクトがCH2であるとすると、主従関係設定部113は、第1のプレーヤの入力情報に基づき、第2のプレーヤよりも先にオブジェクトCH2を主従関係の対象とする選択を受け付けると、CH1が従オブジェクト、CH2が主オブジェクトとなるように設定すること(【0047】、【0112】)(認定事項ウ)。

エ オブジェクト制御部112は、主オブジェクトの状態を参照して決定された行動パターンに基づいて従オブジェクトを自動制御すること(【0039】、【0050】、【0112】)(認定事項エ)。

オ オブジェクト制御部112は、通常攻撃パターンの場合は、主オブジェクトCH2の位置に基づき、主オブジェクトCH2とは異なる種類のオブジェクトである従オブジェクトCH1の位置制御又は移動制御を行うこと(【0037】、【0142】、【図15】)(認定事項オ)。

カ 従オブジェクトCH1を、主オブジェクトCH2の周囲に位置させる位置制御又は移動制御を行い、主オブジェクトCH2の有する攻撃、従オブジェクトCH1の有する攻撃を合わせた合体攻撃を、敵オブジェクトE1に対して行う攻撃制御を行うこと(【0144】)(認定事項カ)。

ここで、認定事項オ、カについて、段落【0144】の「従オブジェクトCH2、」が文理からみて「位置制御又は移動制御」の対象であることが明らかであり、また、認定事項ウにより主オブジェクトと従オブジェクトが入れ替わっているため、「主オブジェクトCH2」、「従オブジェクトCH1」として認定した。また、同記載に対して、上述の趣旨から「を」を補って認定した。
また、認定事項オの「従オブジェクトCH1」が「主オブジェクトCH2とは異なる種類のオブジェクトである」という事項は、【図15】において「CH1」とされた画像のキャラクタと「CH2」とされた画像のキャラクタの種類が異なるものとして描かれていることに基づき認定を行った。

(ウ)上記(ア)、(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる(符号a〜hは、本件補正発明の分節A〜Hに対応させて当審判合議体により付した。)。

「a 端末10(【0022】、認定事項ア)を、
b プレーヤの操作対象のオブジェクトをプレーヤの入力情報に基づいて移動させたり動作させたりするオブジェクト制御部112(【0034】、【0037】、認定事項イ)、
c、g 端末10を、第1のプレーヤの入力情報に基づき、第2のプレーヤよりも先に第2のプレーヤの操作対象のオブジェクトCH2を主従関係の対象とする選択を受け付けると、第1のプレーヤの操作対象のオブジェクトCH1が従オブジェクト、CH2が主オブジェクトとなるように設定する主従関係設定部113(【0047】、【0112】、認定事項ウ)、
d、e、f 主オブジェクトCH2が敵オブジェクトE1を攻撃している場合に、従オブジェクトCH1の行動パターンを、通常攻撃パターンに決定して自動制御し(【0039】、【0050】、【0112】、【0141】、認定事項エ)、主オブジェクトCH2の位置に基づき、主オブジェクトCH2とは異なる種類のオブジェクトである従オブジェクトCH1の位置制御又は移動制御を行い(【0037】、【0142】、認定事項オ)、主オブジェクトCH2の有する攻撃、従オブジェクトCH1の有する攻撃を合わせた合体攻撃を、敵オブジェクトE1に対して行う攻撃制御を行うオブジェクト制御部112(【0144】、認定事項カ)、
h として機能させる、ゲーム処理を行うためのプログラム(【0022】、【0026】、【0031】、認定事項ア)。」

(3)引用発明との対比・判断
ア 本件補正発明と引用発明1とを対比する。
(ア)構成Aについて
引用発明1の構成aの「端末10」は、本件補正発明の構成Aの「情報処理装置」に相当する。
したがって、引用発明1の構成aは、本件補正発明の構成Aに相当する。

(イ)構成Bについて
引用発明1の構成bの「プレーヤの操作対象のオブジェクト」は、本件補正発明の「プレイヤが操作可能な第1オブジェクト」に相当する。
また、引用発明1の構成bにおいて、「オブジェクトを」「前記プレーヤの入力情報に基づいて」「移動させたり動作させたりする」ところ、ゲームプログラムは、プレーヤの操作入力に基づいて、操作対象オブジェクトを移動動作させるものであり、当該移動動作は、プレーヤの操作に対して即時に行われることは技術常識であるから、引用発明1の構成bの「プレーヤの入力情報に基づいて移動させたり動作させたりする」ことは、本件補正発明の構成Bの「プレイヤの操作入力に連動してリアルタイムに行動させる」ことに相当する。
さらに、引用発明1の構成bの「オブジェクト制御部112」は、「プレーヤの入力情報に基づいて」「オブジェクトを」「移動させたり動作させたりする」というオブジェクトの行動を処理する制御を行っているといえるから、本件補正発明の構成Bの「第1オブジェクト行動処理部」に相当する。
したがって、引用発明1の構成bは、本件補正発明の構成Bに相当する。

(ウ)構成Cについて
引用発明1の構成c、gの「第1のプレーヤの操作対象のオブジェクトCH1が従オブジェクト、CH2が主オブジェクトとなるように設定する」ことは、本件補正発明の構成Cの「前記第1オブジェクトと行動を共にする少なくとも1つの第2オブジェクトを」「選択する」ことに相当する。
また、引用発明1の構成c、gの「第1のプレーヤの入力情報に基づき」は、本件補正発明の構成Cの「前記プレイヤの操作入力に基づき」に相当する。
さらに、「第2のプレーヤよりも先に第2のプレーヤの操作対象のオブジェクトCH2を主従関係の対象とする選択を受け付ける」ことについてみると、そのような「選択を受け付け」たことを前提として「第1のプレーヤの操作対象のオブジェクトCH1が従オブジェクト、CH2が主オブジェクトとなるように設定」されるものであるといえる。
してみると、当該「選択を受け付け」ることを「設定」を行うための条件とみることができるから、引用発明1の構成c、gの「第2のプレーヤよりも先に第2のプレーヤの操作対象のオブジェクトCH2を主従関係の対象とする選択を受け付け」たことは、本件補正発明の構成Cの「所定の条件が満たされた場合」に相当する。
引用発明1の構成c、gの「主従関係設定部113」は、「第1のプレーヤの入力情報に基づき」「選択を受け付けると、第1のプレーヤの操作対象のオブジェクトCH1が従オブジェクト、CH2が主オブジェクトとなるように設定する」ことによりオブジェクトを選択するための処理を行っていることが明らかであるから、本件補正発明の構成Cの「オブジェクト選択処理部」に相当する。
したがって、引用発明1の構成c、gは、本件補正発明の構成Cに相当する。

(エ)構成Dについて
引用発明1の構成d、e、fの「主オブジェクトCH2」は、「第1のプレーヤの入力情報に基づき」、「主従関係の対象とする選択」がなされる対象であるから、本件補正発明の構成Dの「選択された少なくとも1つの前記第2オブジェクト」に相当する。
また、引用発明1では「自動制御し」て「主オブジェクトCH2の位置に基づき、従オブジェクトCH1の位置制御又は移動制御を行」うことから、「主オブジェクトCH2」が移動すると「従オブジェクトCH1」がその位置の変化に基づいて移動制御される、すなわち「主オブジェクトCH2」と「従オブジェクトCH1」は、「移動」という同じ種類の行動を行うように連動するといえる。
さらに、「移動」の観点に加えて「合体攻撃」の観点からも、引用発明1の構成d、e、fの「主オブジェクトCH2の有する攻撃、従オブジェクトCH1の有する攻撃を合わせた合体攻撃」において、「主オブジェクトCH2」と「従オブジェクトCH1」それぞれが同じ種類の行動である「攻撃」を行う結果として、「合体攻撃」を行うように連動するといえる。
また、電子ゲームに関する技術分野においては通常、オブジェクトの種類ごとに設定された固有の動作を行うように構成されており、引用発明1の「従オブジェクトCH1」は「主オブジェクトCH2とは異なる種類のオブジェクトである」から、引用発明1の「従オブジェクトCH1」も当該「従オブジェクトCH1」ごとに設定された固有の動作により、「決定」された「行動パターン」で自動制御されるといえる。
したがって、引用発明1の構成d、e、fは、本件補正発明の構成Dに相当する構成を備えている。

(オ)構成Eについて
引用発明1の構成d、e、fにおいて、「主オブジェクトCH2の位置に基づき」、「従オブジェクトCH1の位置制御又は移動制御を行」うのであるから、「主オブジェクトCH2」の移動があればそれに追従して「従オブジェクトCH1」の位置制御や移動制御が行われる、すなわち「主オブジェクトCH2」及び「従オブジェクトCH1」はプレーヤの入力情報に連動してリアルタイムに移動するといえる。
さらに、一般的に「合体攻撃」の「合体」とは、「二つ以上のものが一つに合わさること」を意味するから、「合体攻撃」において同一の攻撃対象に対し同時に攻撃が行われると解されることに鑑みると、「移動」に加えて「合体攻撃」についても、引用発明1の構成d、e、fの「主オブジェクトCH2の有する攻撃、従オブジェクトCH1の有する攻撃を合わせた合体攻撃」は、「主オブジェクトCH2」と「従オブジェクトCH1」とが同時に、すなわち、「リアルタイム」に攻撃を行うことであるといえる。
したがって、引用発明1の構成d、e、fは、上記の2つの観点のいずれからみても、本件補正発明の構成Eに相当する構成を備えている。

(カ)構成Fについて
引用発明1の構成d、e、fの「従オブジェクトCH1」は、「主オブジェクトCH2の位置」の移動や「主オブジェクトCH2の有する攻撃」という動作に基づいて「自動制御」されるものであり、そのような「自動制御」によって、プレイヤによる操作「主オブジェクトCH2」の操作により、「従オブジェクトCH1」は「間接的に操作」されるものであるといえる。
したがって、引用発明1の構成d、e、fは、本件補正発明の構成Fに相当する。

(キ)構成Gについて
引用発明1の構成c、gの「第1のプレーヤの操作対象のオブジェクトCH1が従オブジェクト、CH2が主オブジェクトとなるように設定する」ことは、本件補正発明の「選択された前記第2オブジェクトを前記第1オブジェクトに切り替えると共に、当該切り替え前の前記第1オブジェクトを前記第2オブジェクトに切り替える」ことに相当する。
したがって、引用発明1の構成c、gは、本件補正発明の構成Gに相当する。

(ク)構成Hについて
引用発明1の構成hの「ゲーム処理を行うためのプログラム」は、本件補正発明の構成Hの「ゲームプログラム」に相当する。
したがって、引用発明1の構成hは、本件補正発明の構成Hに相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明1とは、
「情報処理装置を、
プレイヤが操作可能な第1オブジェクトを前記プレイヤの操作入力に連動してリアルタイムに行動させる第1オブジェクト行動処理部、
所定の条件が満たされた場合に、前記第1オブジェクトと行動を共にする少なくとも1つの第2オブジェクトを前記プレイヤの操作入力に基づいて選択するオブジェクト選択処理部、
選択された少なくとも1つの前記第2オブジェクトを、前記第2オブジェクトごとに設定された固有の動作により前記第1オブジェクトと同じ種類の行動を行うように、前記第1オブジェクトと連動させ、前記第1オブジェクト及び前記少なくとも1つの第2オブジェクトのそれぞれに前記プレイヤの操作入力に連動してリアルタイムに当該操作入力に対応した前記同じ種類の行動を実行させることにより、前記プレイヤが前記第1オブジェクトを操作することによって前記少なくとも1つの第2オブジェクトを間接的に操作することを可能とするオブジェクト連動処理部、
として機能させる、ゲームプログラムであって、
前記情報処理装置を、前記オブジェクト選択処理部により選択された際に、選択された前記第2オブジェクトを前記第1オブジェクトに切り替えると共に、当該切り替え前の前記第1オブジェクトを前記第2オブジェクトに切り替えるオブジェクト切替処理部、
としてさらに機能させる、ゲームプログラム。」
である点で一致し、両者の間に発明特定事項の差異は無い。
よって、本件補正発明は、引用発明1と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和3年9月17日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明は、令和3年5月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1を引用する請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1を引用する請求項2に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び所定の条件としてキャラの使用条件などを設定するというゲームに関する技術分野における周知慣用技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2013−13450号公報

3 引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、前記第2の[理由]2(2)ア(ウ)に示したとおり、引用文献1には、次の発明(「引用発明1」)が記載されていると認められる。

「a 端末10(【0022】、認定事項ア)を、
b プレーヤの操作対象のオブジェクトをプレーヤの入力情報に基づいて移動させたり動作させたりするオブジェクト制御部112(【0034】、【0037】、認定事項イ)、
c、g 端末10を、第1のプレーヤの入力情報に基づき、第2のプレーヤよりも先に第2のプレーヤの操作対象のオブジェクトCH2を主従関係の対象とする選択を受け付けると、第1のプレーヤの操作対象のオブジェクトCH1が従オブジェクト、CH2が主オブジェクトとなるように設定する主従関係設定部113(【0047】、【0112】、認定事項ウ)、
d、e、f 主オブジェクトCH2が敵オブジェクトE1を攻撃している場合に、従オブジェクトCH1の行動パターンを、通常攻撃パターンに決定して自動制御し(【0039】、【0050】、【0112】、【0141】、認定事項エ)、主オブジェクトCH2の位置に基づき、主オブジェクトCH2とは異なる種類のオブジェクトである従オブジェクトCH1の位置制御又は移動制御を行い(【0037】、【0142】、認定事項オ)、主オブジェクトCH2の有する攻撃、従オブジェクトCH1の有する攻撃を合わせた合体攻撃を、敵オブジェクトE1に対して行う攻撃制御を行うオブジェクト制御部112(【0144】、認定事項カ)、
h として機能させる、ゲーム処理を行うためのプログラム(【0022】、【0026】、【0031】、認定事項ア)。」

4 対比・判断
ア 本願発明と引用発明1とを対比すると、上記「第2の[理由]2(3)」によれば、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「情報処理装置を、
プレイヤが操作可能な第1オブジェクトを前記プレイヤの操作入力に基づいて行動させる第1オブジェクト行動処理部、
前記第1オブジェクトと行動を共にする少なくとも1つの第2オブジェクトを前記プレイヤの操作入力に基づいて選択するオブジェクト選択処理部、
選択された少なくとも1つの前記第2オブジェクトを、前記第2オブジェクトごとに設定された固有の動作により前記第1オブジェクトと同じ種類の行動を行うように、前記第1オブジェクトと連動させることにより、前記プレイヤが前記第1オブジェクトを操作することによって前記少なくとも1つの第2オブジェクトを間接的に操作することを可能とするオブジェクト連動処理部、
前記オブジェクト選択処理部により選択された際に、選択された前記第2オブジェクトを前記第1オブジェクトに切り替えると共に、当該切り替え前の前記第1オブジェクトを前記第2オブジェクトに切り替えるオブジェクト切替処理部、
として機能させる、
ゲームプログラム。」

(相違点)
本願発明は、前記第1オブジェクトと行動を共にする少なくとも1つの第2オブジェクトを前記プレイヤの操作入力に基づいて選択するのが、「所定の条件が満たされた場合」であるのに対し、引用発明1では、グループに含まれる複数のオブジェクトのうち、CH1を主オブジェクト、CH2〜CH4のうち一つのオブジェクトを従オブジェクトとして選択する条件が明らかではない点。

イ 以下、相違点について検討する。
プレイヤがキャラクタを操作可能である電子ゲームに関する技術分野において、所定のキャラクタの使用条件を設定することは、例示するまでもなく周知慣用技術である(例えば、特開2016−185345号公報(平成28年10月27日出願公開。)の段落【0033】、特開2008−125847号公報(平成20年6月5日出願公開。)の段落【0135】、【0143】、特開2007−229205号公報(平成19年9月13日出願公開。)の【0057】〜【0058】等をみても明らかである)。
そして、引用発明1も、プレイヤがキャラクタを操作可能である電子ゲームに関する技術分野に属するから、引用発明1に前記周知慣用技術を適用し、第1のプレーヤの操作対象のオブジェクトCH1が従オブジェクト、CH2が主オブジェクトとなるように設定するための所定の条件を設定することとし、本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

5 請求人の主張について
ア 請求人は、令和3年5月20日に提出された意見書において、引用文献1には、本願発明のように「プレイヤの操作入力に基づいて選択された第2オブジェクトを第1オブジェクトと連動させることによって、プレイヤが第2オブジェクトを間接的に操作することを可能とする」処理は、記載も示唆もされていない旨主張している。
しかし、前記第2の[理由]2(3)ア(エ)〜(カ)に記載したとおり、引用発明1では、「主オブジェクトCH2」に連動して「従オブジェクトCH1」を「移動」または「合体攻撃」させているのであるから、「主オブジェクトCH2」を操作することによって「従オブジェクトCH1」を間接的に操作することが可能であるといえる。よって、請求人の上記主張は採用できない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2022-08-31 
結審通知日 2022-09-02 
審決日 2022-09-13 
出願番号 P2017-149454
審決分類 P 1 8・ 537- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 藤本 義仁
特許庁審判官 比嘉 翔一
古屋野 浩志
発明の名称 ゲームプログラム、記録媒体、ゲーム処理方法  
代理人 特許業務法人第一テクニカル国際特許事務所  

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